短波近赤外(SWIR)波長帯域における 画像応用

Pick-up プロダクツ
短波近赤外(SWIR)波長帯域における
画像応用
株式会社ブルービジョン
当社は、プリズムによる分光を用いた400nmから1,600nmの特殊波長カメラならびに専
用レンズの製造販売を行っている。本稿では、900 〜 2,500nmであるSWIR波長帯域(短
波赤外線)を用いた画像検査を紹介する。
1. SWIR とは
2. 波長とエネルギーの関係
SWIR
(Short Wave Infra-Red)
帯域とは、1,000
Photonがもっているエネルギーと波長の関係は
〜2,500nmの帯域を指す。可視域は、400〜750nm
図 2 である。
であり、NIR
(近赤外:Near Infra-Red)
域は、750
波長(nm)= 1,240 / Photon のエネルギー(eV)
〜1,000nm である
(図1)
。
・・・
(1)
図 1 可視域と SWIR 帯域
図 2 Photon のエネルギーと波長の関係
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2.1 参考
ジウム)、Gallium(ガリウム)、Arsenide(ひそ)の
光子(こうし、photon)
は、光を粒子として扱う
化合物を使用している。可視光用のセンサはシリ
場合の呼び名である。電磁相互作用を媒介する
コンフォトダイオードが使用され、1 種類の元素
ゲージ粒子であり、素粒子物理学においては記号
である。本センサのバンドギャップエネルギーは、
γ(ガンマ線に由来する)
、光科学においては記号
常温で 0.73eVである。したがってカットオフ波長
hν(後述する光子のもつエネルギーを表す式から
は、
( 1)式より、以下のとおりである。
波長(nm)= 1,240/Photon のエネルギー(eV)
来ている)
で表されることが多い。Photon1 個がも
つエネルギーE は、以下の式で示すことができる。
= 1,240/0.73
E=hν=hc/λ ・・・
(2)
= 1,700nm
h:プランクの定数
図 4 は、シリコンフォトダイオードを使用した
ν:振動数で、単位は
(1/s)
=
(Hz)
一般的な分光特性であり、可視光帯域に分光感度
8
c:光速 3 × 10(m/s)
をもっている。シリコンのバンドギャップエネル
λ:光の波長 (m)
ギーは、1.2eV である。したがってカットオフ波
素粒子を扱う物理学では、エネルギーを表すと
長は、
( 1)式より、以下のとおりである。
き「電子ボルト」の単位を使用し、
(eV)
を使用する。1Vの電位差がある自由空
間内で電子 1 個が得るエネルギーが 1
(eV)である。ジュールに換算すると、
以下の式で示すことができる。
1(eV)≒ 1.602 × 10-19 (J)
この単位系でプランク定数を表すと、
以下のとおりである。
h ≒ 6.626 × 10-34(Js)
≒ 4.136 × 10-15(eVs)
こ れ を(2)に 代 入 す る と、 波 長
1,240nm の 光 が も つ エ ネ ル ギ ー は
1(eV)
になる。
図 3 SWIR センサの分光特性
(BV-C3100)
3. SWIR センサと分光特性
900〜2,500nm の広帯域をカバーす
る SWIR センサの製造は困難である。
そのような広帯域の光電変換ができる
光電変換材料がないからである。図 3
は、弊社の BV-C3100 に使用されてい
る SWIR センサの分光特性である。本
SWIR センサは、浜松ホトニクス製
G11135 センサを使用している。光電
変換材料はInGaAsでありIndium
(イン
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図 4 可視光センサの分光特性例
(BV-C3350)
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波長
(nm)= 1,240/Photon のエネルギー
(eV)
= 1,240/1.2
= 1,033nm
4. 先行研究
このように光電変換の材料によって、分光特性
図 6 は、針葉樹(Conifers)、広葉樹(Broadleaf)、
に違いがある。
芝生(Grass)等の SWIR 波長帯における反射率を
当社では、2,500nm まで帯域を伸ばした SWIR
示している。多くの物体が 1,450nm 付近にて反射
センサ G9208 を使用したラインスキャンカメラも
率が落ちている。これは物体のもっている水分の
計画中である。図 5 は、G9208 センサの分光特性
影響である。水(Water)は、SWIR 帯域を吸収す
である。本センサは、InGaAsの混合比を変えるこ
る特性をもっている。図 7 は、被写体の水分を撮
とによりバンドギャップエネルギーを変え、カッ
像したときの特徴的な画像である。水は可視光に
トオフ波長を伸ばしている。
おいては透過率が高いのでコップの底面を撮像し
ているが、SWIR 光は吸収するので、SWIR カメ
図 5 G9208 の分光特性
図 6 物体と水分(文献 2 より引用)
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ラで撮像すると暗い画面になる。
図 8 は、全フッ素化ポリイミ
ドと部分フッ素化ポリイミドの
分光特性である。部分フッ素化
ポ リ イ ミ ド が、1,120nm と
1,400nmにおいて大きな光吸収
特性をもっていることが測定で
きる。
図 9 は、緑葉の太陽光に対す
る反射の度合いを示している。
1,450nm の SWIR 帯域において
大きな吸収がある。
図 7 水の入ったコップと空のコップ
図 8 ポリイミドの分光特性
(文献 3 より引用)
図 9 緑葉の反射スペクトル(文献 4 より引用)
大気の水吸収:970nm、1,190nm、1,450nm、1,940nm
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査の幅広いニーズに対応するつもりである。その
5. 製品仕様
表 1 は、512 画素SWIRラインスキャンセンサカ
メラ BV-C3100 の仕様であり、写真 1 は、その外
観である。被写体からの入射光は、画素サイズ 25
概要は表 2 のとおりである。
6. プリズム使用カメラに特化した
SWIR 用レンズのラインナップ
μm、512 画素のSWIR光用ラインセンサに結像し、
当社では、プリズムを使用したラインセンサカ
電気信号に変換される。それぞれの信号は A/D 変
メラに適合したレンズを供給している。広範囲な
換され、DSNU 補正、PRNU 補正、シェーディン
被写体の大きさに対応するため可視光用として焦
グ補正、Gain 制御、露光制御、黒レベル制御等が
点距離 20mm から 105mm までの 6 機種を製品化し
されたのちカメラリンク信号として出力する。
ている(図10)。また、SWIR光に対応したレンズ
当社では SWIR ラインスキャンカメラのライン
として焦点距離 28mm から 50mm の M52 マウント
ナップ強化に加え、さらにエリアセンサを使用し
レンズを準備している。M52 マウントはスクリュー
たカメラも企画検討中で SWIR 領域での非破壊検
マウント方式を採用しているので、レンズとカメ
表 1 SWIRラインスキャンカメラ「BV-C3100」製品仕様
表 2 VGA SWIR エリアセンサカメラ製品仕様
項 目
ラインセンサ
光学系
ピクセルサイズ
波長帯域
仕 様 0.5K ラインセンサ
ビームスプリッタ
(F 2.8 )
25μm×25μm, 512 pixels 900nm~1,600nm SWIR 光:量子効率 75%、
感度
1,500nm 時
S/N
52dB 以上
入力
外部トリガ
(ランダムトリガ)
CameraLink 8/10bit 出力
Base configuration 1 系統
同期
内部同期、外部トリガ
DC12V
入力電圧
VV
サイズ(W×D×H)95mm×95mm×95mm
レンズマウント
M52 mount 項 目
仕 様 有効画素数:640 H×512 V
撮像素子
画素サイズ:20μm×20μm
露光時間 1クロック時:62 fps
フレームレート
露光時間 16 msec 時:31 fps
シャッタ
グローバルシャッタ方式
波長帯域
900 nm~1 , 680 nm
SWIR 光:量子効率 80 %、
感度
1 , 600 nm 時
S/N
52 dB 以上
補正
PRNU 補正、DSNU 補正、欠陥補正
CameraLink 8 / 10 bit 出力
Base configuration 1 系統
同期
内部同期
冷却
センサにペルチェ内臓
DC 12 V
入力電圧
VV
サイズ(W×D×H)58 mm×58 mm×105 mm
レンズマウント
C-mount
写真 1 BV-C3100 外観
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ラ間にスペーサを使用することにより最短撮影距
場合は、事前に性能確認が必要である)。
離を短くすることができる
(注意:ただし、ディス
図 11 は、SWIR 光用に特殊コーティングを施
トーション、色収差が変化するので実際に使用の
したレンズの分光特性である。
Model Name
BV-L1020
BV-L1024
BV-L1028
Image Sensor Length
30mm
30mm
30mm
f = 20mm
f = 24mm
f = 28mm
BV-L1035
BV-L1050
BV-L1105
30mm
30mm
30mm
f = 35mm
f = 50mm
f = 105mm
対応イメージセンサ長
Focal length
(焦点距離)
Model Name
Image Sensor Length
対応イメージセンサ長
Focal length
(焦点距離)
図 10 製品群
図 11 SWIR 帯域に対応した焦点距離 35mm レンズの分光特性
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図 12 ペットボトルの各種画像
図 13 USB メモリ画像
■ 参考資料および文献 7. SWIR 光の画像事例
1)浜
松ホトニクス社データシート
2)竹
内渉、安岡善文: 衛星リモートセンシングデータ
図 12 は、ペットボトルの撮像例である。反射
SWIR光画像では印刷の特殊性が検出でき、SWIR
透過画像では、残量の検出ができる。
を用いた正規化植生、土壌、水指数の開発. 写真
測量とリモートセンシング, pp.7-19, 2005-01-05
3)安
藤慎冶: ポリイミドの光学特性. 東京工業大学,
図 13 は、USB メモリの可視光画像と SWIR 光
pp.113, http://www.op.titech.ac.jp/polymer/lab/
反射画像である。SWIR 光の特長として長波長で
sando/Book_10/Ando_LatestPIs_Optical.pdf
あるために、内部構造が見える場合がある。
4)小
出肇 : 温暖湿潤気候高稙被率地域を対象とし
た土壌水理特性の推定と地質工学的応用に関す
る地植物学的リモートセンシング研究. 熊本大学,
8. 今後のロードマップ
印刷物検査、食品検査、分光検査のように広帯
pp.41, 2011
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域の波長分析が必要な市場はこれから拡大してい
E-mail:sales@bluevision.jp
くと考える。当社ではプリズム分光技術を用いた
http://www.bluevision.jp/
特殊カメラに特化した製品の提供企業として、今
後も製品のラインナップを拡大してく所存である。
■販売・お問い合わせ先
また、プリズムカメラ用レンズを準備し、かつ
ダイトエレクトロン株式会社
SWIR領域にも拡大した製品の開発も行っている。
画像機器グループ
TEL03-3264-0326 FAX.03-3261-3984
http://www.daitron.co.jp/
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