ISSN0535-1405 2014. Nov No.468

ISSN0535-1405
目 次
随 想
随 想 血圧計が虚血障害の治療に使われる?
医療法人ホスピア宇都宮施設長 熊 坂 高 弘 先生 …………………… p.2
第 416 回国際治療談話会例会
時 / 平成 26 年 9 月 18 日(木) 所 / 学士会館
司 会/ (公財 )日本国際医学協会理事 市 橋 光 ……………… p.4(12)
《第1部》
食と睡眠;生活の基本の問題点を探る
【講演Ⅰ】 我が国の食の問題と対応―食育の重要性―
帝京平成大学 メディカル学部健康栄養学科 教授
児
玉
浩
子 先生 ……………… p.5(13)
【講演Ⅱ】 眠りは快? 義務?
(公社)地域医療振興協会 東京ベイ・浦安市川医療センター CEO
神 山 潤 先生 ……………… p.7(15)
《第2部》
感想
【感 想】 ロシア、まあるいものさし
ピアニスト、桐朋学園大学講師 朴 久 玲 先生 …………… p.10(18)
※( )の数字は英文抄録の頁数
No.468
2014. Nov
Page 2
International Medical News
随想
血圧計が虚血障害の治療に使われる?
医療法人ホスピア宇都宮 施設長 熊坂 高弘
すでに、ご存知の先生方も多いこととは存じますが、最近、日経メデイカル講座:
駒村和雄(国立循環器病センター心臓血管内科)の「総説・論説を読む」Circulation
Research誌review(2013.10.2.)に載っている「どこにでもある血圧計で心筋虚血障
害を治す」を読み大変興味を覚えましたので駒村先生のお話を要約して簡単にご紹介しま
す。
「1986年にMurry(Charles Murry:UW Bioengineering –University of Washington)
らによって発表された虚血プレコンデイショニング、すなわち、長時間の心筋虚血の直
前に短時間の虚血再潅流操作を行うことによる虚血耐性の獲得という概念は、その後10
年以上にわたり、世界中の循環器研究を席巻した」
と言われています。
さらに、
「この虚血プレコンデイショニングの効果とは心筋梗塞サイズを対照の半分程
度にまで縮小させることなのだが、この効果はいかなる動物種においても、心臓のみな
らず、脳、腎臓、肝臓など他の臓器においても、同様のプレコンデイショニング効果が
確認された」ということ、さらに、
「虚血再潅流術直後の操作(ポストコンデイショニング)
や虚血臓器とことなる部位での操作(遠隔プレコンデイショニング)によっても、プレ
コンデイショニングと同様な虚血再潅流障害の抑制効果が確認された」
のです。
この虚血再潅流障害に対する治療効果を薬剤で再現しようと世界的規模の研究が行わ
れてきましたが、有望な薬剤はまだ見つかっていません。「ところがつい最近、血圧計の
カフを上腕に巻くというごく単純な方法による心筋プレコンデイショニングで心臓手術
患者の予後効果まで期待できるようになった」。「ドイツのEssen大学病院が冠動脈バイ
パス術(CABG)を受ける患者について同方法により行った遠隔虚血プレコンデイショニ
ング(remote ischemic preconditioning:RIP)の効果を検討したところ、CABG後の
心筋障害が大幅に軽減され、1年後の総死亡や心血管イベントが有意に減少した」ことを
報告しています。「具体的には介入群(RIP実施群)では麻酔導入後、皮膚切開前に、左
上腕に血圧計のカフを巻き付け、200mmHgの圧力で5分間上腕虚血とし、その後5分
間再潅流を行うことを3回繰り返した。対照群では、左上腕にカフを巻き付けるだけと
した。CRT法で、術後72時間後までの血清心筋トロポニンI(cTnI)値の濃度曲線下面
積(AUC)の幾何平均値は、介入群が266ng/ml, 対照群は321ng/mlと有意に介入群が
International Medical News
Page 3
低く、また総死亡数も、1年後のハザード比が0.27と有意に介入群が低かった」
。
「心筋
梗塞の起こる前に、それを予測してプレコンデイショニングを実施することは臨床現場
では不可能なので、ポストコンデイショニングと遠隔コンデイショニング(これをまと
めてコンデイショニングと総称されています)の臨床応用が注目されてきた」
。
我が国においても「岡山大学循環器内科が、24時間以内のSTEMI(ST上昇心筋梗塞)
患者に対して自動血圧計を改造した上腕虚血装置を用いたRIPのCRTを実施して、再潅
流性の不整脈発生率や造影剤腎症発生率の低下を報告している」
。
この記事の「虚血」という文字を見たとき偶然昨年読んだ “タンパク質の一生 永田
和弘 岩波新書 赤1139 2012”のことを想い出しました。その中に脳虚血という項
目(P89~92)がありますが、ここで行われた実験というのはラットの脳へ行く血管(総
頸動脈)を30分間だけしばって虚血し、そのあと血管を開いてやり。ラットは死ぬこと
はないが、その後7日目に解剖して海馬の領域をしらべてみると、海馬の神経細胞は死
んで脱落していることが分かりました。ところが先ず、5分間虚血してしばりを解き、
2日間そのまま再潅流させ、2日後に今度は30分間虚血して、再潅流させ、7日経った
ところで解剖、観察すると海馬の神経細胞は正常のラットと見分けがつかないほど元気
であったということです。このラットでは、5分間の前虚血がポイントです。30分間と
いうような虚血(強いストレス)を与えると、タンパク質の変性が起こって、神経細胞
は死ぬ。しかし、5分間虚血のような弱いストレスがあたえられたことによって、細胞
はストレスタンパク質を造ってため込む機会を得て、ストレスタンパク質が蓄積されて
いたために、その後で強いストレスを受けても細胞は死ななかったのです。これを「ス
トレス耐性」この場合は「虚血耐性」というと組織写真とともに説明されています。
ストレスタンパク質はストレスがかかった状態で発現してくるのは勿論ですが、通常
の細胞の中でもある程度発現しており、生成途上のポリペプチドに作用して、その成熟
を助けていることが明らかにされています。このような機能を称して「分子シャペロン:
一群のタンパク質でストレスタンパク質もその一つ」といいます。「シャペロン」という
名前はフランス語のシャッポ(帽子)から来た言葉で正装して社交界にデビューする若
いレデイの「介添え役」女性をさす言葉だそうです。私たちの身体のホメオスタシスを
保つため、ストレスタンパク質や分子シャペロンは日夜働いているのです。
血圧計による虚血再潅流障害の抑制機序については常識的には、血管内皮細胞からの
いろいろな血管作動物質が考えられますが、直接的細胞修復にはストレスタンパク質と
分子シャペロンも大いに関係しているのではないかなと、その証明される日を楽しみに
しています。
Page 4
International Medical News
第 1 部 食と睡眠;生活の基本の問題点を探る
■
講演Ⅰでは帝京平成大学健康栄養学科教授・学科長
司会のことば
の児玉浩子先生に、「わが国の食の問題と対応-食育
の重要性」のご講演をしていただく。肥満・やせの現
状、食生活の問題点、食育の重要性と実践例を教えて
いただく予定である。講演Ⅱでは東京ベイ・浦安市川
医療センター CEO の神山潤先生に、「眠りは快? 義務?」のご講演をお願いした。日本人の睡眠の現状
(公財)日本国際医学協会理事
市橋 光 先生
市橋 光
と世界との比較、睡眠の心身への影響、眠りの重要性
と健康な生活の実践について教えていただく。2つの
講演は医療従事者だけでなく、広く国民にも知っても
第 416 回国際治療談話会例会のテーマを「食と睡
らいたい有益で重要な情報である。
眠;生活の基本の問題点を探る」とした。食と睡眠は
「感想」はピアニストで桐朋学園大学講師の朴久玲
生活の基本であり健康のバロメータとも言えるが、日
先生に、「ロシア、まあるいものさし」というご講演
常ではおろそかにしがちである。特に日本では、次世
をしていただく。ソ連崩壊というロシアの激動期にモ
代を担う子どもの食と睡眠の多くの問題点が指摘され
スクワ音楽院に留学し、その後世界的に活躍している
ている。
ピアニストの貴重なお話しを興味深く拝聴したい。
International Medical News
■
Page 5
生活習慣病の代表的疾患は 2 型糖尿病、高血圧、
講演Ⅰ
我が国の食の問題と対応―食
育の重要性―
脂質異常症である。2 型糖尿病に関しては 1955 年
の患者数を1とした場合、2007 年には 35 倍に増加
している。平成 24 年には、「糖尿病が強く疑われる
者(HbA1c が 6.5% 以上)」は 950 万人、「糖尿病の
可能性を否定できない者(HbA1c が 6.0 ~ 6.5% 未
満)」は 1100 万人で、合わせて 2050 万人と報告さ
れており、特に 60 歳以上の年齢層では、HbA1c 6.0%
以上の者は、約 30 ~ 40% と非常に高い(図1)。高
帝京平成大学
健康メディカル学部
健康栄養学科
児玉浩子 先生
児玉浩子
血圧症患者は推定 4,000 万人、脂質異常症患者数は
推定 3,000 万人と言われており、高齢者は生活習慣
病を合わせ持っている者も多い。しかし、ここ 10 年
間では、生活習慣病患者は微減している。国をあげて
の食育推進活動や「健康日本 21」活動等の効果と思わ
1.肥満・生活習慣病患者の現状
肥満者(BMI25 以上)の割合は、20 歳~ 60 歳代
の平均は男性で 29.1%、女性で 19.4% と男性に多く、
れる。
2.やせの者の現状
一方、やせの者(BMI が 18.5 未満)が増加している
男性では 40 ~ 49 歳の 36.6% が肥満者である。肥
ことも深刻で、20 ~ 29 歳女性の 21.8% はやせてお
満は生活習慣病の根源である。
り、やせ女性が妊娠・出産すると低出生体重児(出生
Page 6
International Medical News
図1 「糖尿病が強く疑われる者」及び「糖尿病の可能性を否定でき
ない者」の割合
(20歳以上、性・年齢階級別、全国補正値)
(%)
100
80
一方、塩分摂取量は徐々に減少しているが、平成
糖尿病の可能性を否定できない者
24 年国民健康栄養調査では、男性 11.3g/ 日、女性
糖尿病が強く疑われる者
9.6g/ 日であり、
「日本人の食事摂取基準 2015 年版」
の目標量である男性 8.0g/ 日未満、女性 7.0g/ 日未
60
36.2 30.0 40.9 37.5
40
20
量は、推奨量の半分以下である。
12.1
15.2
0
男
15.5
13.1
8.7
0.6
0.5
0.8
0.0
1.8
1.4
3.1
1.1
女
男
女
男
女
総数
20-29歳
30-39歳
10.2
17.7
17.4
20.8
7.2
5.4
12.1 20.7
23.2
16.7
12.6
7.5 12.2 6.2
1.7
男
女
40-49歳
男
女
50-59歳
男
女
60-69歳
男
女
70歳以上
(平成24年度国民健康・栄養調査結果より引用)
満に比較するとまだ多い。
4.小児での現状
学童の肥満小児出現率は、平成 18 年をピークに
徐々に減少しているが、今なお男子で約 10%、女子
で約 8% は肥満小児である。さらに 2 型糖尿病の発
症率は 10 人当たり 5,6 人で、その多くは肥満が原因
体重が 2,500g 未満)を出生する率が高い。近年の我
である。高度肥満小児の 19.2% は血清総コレステロー
が国では全出生児の約 9.6% が低出生体重児である。
ル値が 200mg/dL 以上である。一方、やせ傾向児(肥
低出生体重児は将来、肥満や生活習慣病に罹患しやす
満度− 20% 以下)の出現率も年々増加しており、小
く、
若年女性のやせに対する対応は喫緊の課題である。
学校高学年~中学生のやせ傾向児の出現率は、3 ~
さらに、近年、問題になっているのが高齢者のやせ・
4% である。朝食欠食児は、朝食摂取児に比べて、学力、
栄養不良である。75 歳以上の者の 18.8% は低栄養
体力が劣っている。孤食も小児の食の問題として重要
状態(BMI が 20 以下)であり、高齢者の栄養不良は、
である。孤食習慣の小児は、偏食が強くなり、意欲が
サルコペニアやコロモティブシンドロームの最大要因
希薄で、コミュニケーション能力が育たないと指摘さ
で、高齢者の QOL を著しく低下させる。これに対し
れている。
ても喫緊の対策が必要である。
5.食育の重要性
3.食生活習慣の現状
朝食欠食率は、全年齢の平均では、男性 12.8%、
食育とは「食に関する様々な知識と判断力を習得
し、健全な食生活を実践できる人を育てること」と定
女性 9.0% で、男性に多い。特に 20 ~ 29 歳男性の
義されている。平成 17 年に食育基本法が策定され、
29.5% は朝食欠食者である。朝食欠食率も近年微減
同年に栄養教諭制度も発足した。平成 18 年に食育基
している。
本計画、平成 23 年に第 2 次食育基本計画が発表され、
食事内容では、野菜と果物の摂取量は、推奨量より
明らかに少なく、特に 20 ~ 40 歳では、果物の摂取
重点 3 課題と平成 27 年度までに達成すべき目標が示
されている(表1)。内閣府、厚生労働省、文部科学省、
International Medical News
表1 第 2 次食育推進基本計画
(平成 23 年 4 月発表、平成 27 年までの 5 年間)
重点課題
1)生涯にわたるライフステージに応じた間断ない食育の推進
2)生活習慣病の予防および改善に繋がる食育の推進
3)家庭における共食を通じた子どもへの食育の推進
Page 7
■ 講演Ⅱ
眠りは快?義務?
第2食育の推進の目標に関する事項(抜粋)
・朝食または夕食を家族と一緒に食べる「共食」の回数の増加(週当たり
回以上)
・朝食を欠食する子どもの割合の減少(10%)1.6% → 0
・バランスガイドに配慮した食生活を送っている国民の割合の増加
(50.2%→ 60%以上)
・適切な運動、食事を継続している者の割合(41.5% → 50% 以上)
・食育に関心のある者の割合(70.5% → 90% 以上)
・よく噛むなどの食べ方に関心がある者の割合(70.2% → 80% 以上)
・推進計画を作成・実施している市町村の割合の増加(40% → 100%)
(公社)地域医療振興協会
東京ベイ・浦安市川医療センター
CEO
神山 潤 先生
神山 潤
農林水産省が関連施策事業で食育推進を図っている。
このように国をあげての食育に関する取り組みで、上
睡眠不足は神経機能、記憶、学習、遺伝子発現、神
記の肥満・生活習慣病・やせ・食生活等がやや改善傾
経発生のほか認知行動健康に悪影響を及ぼす。動物で
向にあると思われる。さらなる活動が必要である。
は 3-4 日の睡眠奪取で神経生理あるいは神経発生に恒
久的な悪影響をもたらす。慢性の睡眠不足にある小児、
参考文献
特に若年では、望ましい神経発達に必要とされる良好
1)厚生労働省 平成 24 年国民健康栄養調査
な環境は内因性の脳刺激を奪取されるという。最近睡
2)厚生労働省 日本人の食事摂取基準 2015 年版
眠奪取が肥満をもたらす原因として食欲が増し、その
3)内閣府 平成 24 年食育白書
際前頭皮質と島皮質の活性が低下する一方扁桃体の活
性が高まることが示された。肥満はメタボリック症候
群をもたらすが、寝ないと太ることの一因は脳機能に
因る。睡眠不足は遺伝子発現に影響する。また夜ふか
しは睡眠時間を短縮する。
しかしながら日本は乳児から成人まで世界で最も
寝ていない国だ。平均睡眠時間は過去 50 年減り続
け、10 歳以上の平均睡眠時間は 1960 年の 493 分が
Xarelto A4 1/4.1C. 65×180
「効能・効果」、「用法・用量」、「警告・禁忌を含む使用上の注意」、「用法・用量に関連する使用上の注意」等
詳細については、製品添付文書をご参照ください。
2014年2月作成
Page 8
International Medical News
2010 年には 434 分になっている。2009 年の OECD
演者は 2002 年以降子どもの早起き早寝、充分な睡
の調査では英国の平均睡眠時間は 503 分に対し日本は
眠時間を啓発するウエブ構築に参画した。この活動は
470 分であった。
文部科学省や東京都からも注目された。これはこの媒
日本は世界で唯一週 50 時間以上労働する長時間労
働者が 25%を越える。一方で労働生産性は工業国 30
体が早起き早寝、睡眠の重要さに関し、簡単・単純で
かつ科学的な説明をしたことによると考えている。
カ国の平均以下で、先進国では最下位だ。日本の労働
18-83 か 月 児 で 就 床 が 22 時 以 降 の 児 の 割 合 は
者は睡眠時間を犠牲にして効率の悪い労働に長時間携
2010 年には 30%へと減少した。20 年来の増加傾
わっていることとなる。また日本では自分のために使
向に終止符が打たれたかに見えるが、2006 年から
う時間が少ない。
2008 年に行われた調査でも、日本の子どもの睡眠時
1998 年、演者は東京での小児の睡眠時無呼吸の調
間は世界 18 の国と地域の中では最短だった。
査において、一人の母が記載した驚くべき調査票を目
日本人は眠りよりも労働を好み、真面目で、しばし
にした。彼女の 3 歳のお子さんは午前 3 時に眠り、午
ば眠りを犠牲にしても働く演者が眠りを大切に、と訴
後 1 時に目覚めるが、彼女はお子さんの眠りについて
えても、訴えた途端、人々は眠らなければと感じてし
何も心配をしていないと書かれていたのだ。この調査
まう。演者の思いとは裏腹に、眠りは本来ヒトが希求
では 3 歳児の 43.6%の就床が 22 時以降であった。日
すべき 4 つの快(眠り、食、排泄、活動)の一つであ
本小児保健協会によると 18-83 か月児で就床が 22
るにも拘らず、眠りが快から義務へと変わってしまう。
時以降の児の割合は 1980 年の約 30%から 2000 年
人々が快を義務に変えてしまうことが気がかりだ。演
には約 50%に増加した。演者は 2000 年に 3 歳児の
者は義務感を感じることなく人々が眠りを大切にでき
49.6%の就床が 22 時以降との調査結果を得た。
る方法を模索中だ。
International Medical News
Page 9
第 2 部 感 想
■
その後、日本でも活躍され、ロシアでの留学生活を
紹 介
綴ったエッセイ「まあるいものさし」を㈱ショパン社
(公財)
日本国際医学協会理事
市橋 光
本日はピアニストで桐朋学園大学講師を務められて
いる朴 久玲先生にご講演をお願いしました。
先生は、桐朋女子高等学校音楽科を経て、桐朋学園
大学在学中にモスクワ音楽院へ留学され、本科を主席
でご卒業後、同大学院を卒業されました。ミハイル・
ヴォスクレセンスキー氏に師事、マリア・カナルス国
際コンクール特別賞(スペイン)
、ハン・ロマンソン
国際コンクール3位(韓国)
、ポントワーズ国際コン
クール1位(フランス)など輝かしい成績を残されて
いらっしゃいます。
から出版されています。また、トライエム、ビクター・
エンターテイメント、㈱全音楽譜出版社からCDをリ
リースされ、第 11 回村松賞を受賞されました。
Page 10
International Medical News
ロシア、まあるいものさし
いだろう。ではその幸せとは、いったい何か。
ロシアに留学していた時、日本で「モスクワでの娯
楽は?」と聞かれたことがある。
「コンサート鑑賞、読書、美術館、散歩」と答えると、
文部省の模範解答みたい!と笑われた。しかし、美味
しいカフェや美しいショウウィンドウなどなかった当
時のモスクワでは、本当にこれらが娯楽だったのだ。
ピアニスト、桐朋学園大学講師
朴 久玲 先生
朴 久玲
私がすごしたのは、ソ連末期のペレストロイカ時代
の 1 年と、ロシアになってからの 8 年ほどだ。音楽
院と寮はクレムリンからほど近いモスクワの中心地に
イメージとは、
わかりやすいが表面的なものである。
あり、ソ連が崩壊し冷戦に幕を閉じた世界の巨大なう
ロシアといえば、おおむね冷たくて暗いというイ
ねりを目の当たりにした。ちなみに今現在モスクワの
メージだろう。ピアノを学ぶために 10 年ほど過ごし
街は様変わりしており、東京より物価も高い。この秋
たモスクワという地で、日本で生まれ 21 歳まで育っ
からモスクワ音楽院に留学した私の生徒たちは、物質
た私の価値観が 180 度ひっくり返り、人生の根幹を
的な日本とのギャップは全く感じないだろう。
築くことになる深く力強い精神世界が広がっていたこ
とを、本日は皆様にお伝えしたい。
私の留学は日本のバブル絶頂期と重なった。不必要
なまでに豊富な物の洪水と、体中を撫でまわされるよ
先日 TV で、人間の脳についての非常に興味深い番
うなサービスの行き届いた日本とは、モスクワはあま
組を観た。脳の中には太古の昔からある部位が一番奥
りに別世界だった。日本の典型的な女子大生だった私
深くにあり、死ぬ瞬間その部位が、偉大で聖なる光に
は、物質的に貧困を極め食料もいよいよ配給となった
自分は導かれていくという幸福な感覚にさせる機能を
モスクワ留学の 1 年目、ホームシックもあり、這っ
持っているというのだ。いつか必ず来る死という未知
てでも日本に帰りたかった。
の世界を思うと、私は救われた思いがした。
幸せになりたい、それはすべての人間の本能的な願
そんな中、色彩に飢えて駆け込んだ美術館。そこで
観たピカソの青い色がなんて目に眩しかっただろう。
International Medical News
Page 11
気楽に楽しめる娯楽がない分、現実から離れ架空の世
ろう。ロシアのインテリゲンチア層はヨーロッパでも
界にどっぷり浸れる読書は、目くるめく楽しみだった。
一種独特なほど、驚異的に幅広く深い知識をもち、芸
市場で手を真っ黒にしながら腐っていないジャガイモ
術全般に対する好奇心と興味、底知れない愛情と畏敬
を探していた長い冬を越し、外人だけが買えるドル
の念を持っている。かと思いきやブラックユーモアの
ショップで半年ぶりに発見した生野菜、緑色のきゅう
センスと超楽観主義な土臭さが混じり、チャーミング
りの瑞々しかったこと。零下 15 度近くの続く冬が過
で憎めない。真の芸術にだけに頭を垂れる彼らは、平
ぎ、待ちに待った春の訪れとともに芽を吹く樹木の生
和に慣れ切った温室育ちの日本の若者にとって、想像
命の吐息を感じながら、毛皮外套の襟首をはだけ散歩
を絶する生きる力を持っていた。実力・才能主義で絶
する喜び。無限に自由で爆発的エネルギーを放つ、音
対にお世辞を言わない彼らとの人間関係は、自分を高
色豊かな演奏家のコンサートを聴いた時の興奮。外は
めないと相手にされないスリルに満ちているが、一度
モノトーンでも、夢のようにきらびやかな舞台装置と
友人になると家族のように暖かく信頼の絆は厚い。
衣装のボリショイ劇場で観た、くるみ割り人形。
最初のピアノレッスンの時、日本で仕上げてきた
もうお気付きだろう。これらの” 娯楽” は、反対に言
十八番の曲を弾くと「一度ミスしてでもいいから、自
うと、それなしでは生きていけなかったのである。そ
分の(演奏の)顔を見せてくれる?」と師匠に酷評さ
して、これらの喜びを一回味わうと、心は日本の物質
れ、” 綺麗にまとめる” という日本での価値観は崩れ
的豊かさだけでは到底満たされなくなった。星の王子
去った。
様のキツネの言う、
「大事なものは目に見えない」の
世界のトップレベルの学生たちにもまれ、不便で非
である。いつの間にかホームシックは消え去り、水を
合理な社会生活を切り盛りするには、自分の価値観・
得た魚のように精神と感覚の世界を泳ぎ回るように
個性・思考・努力だけが頼りだ。それは人間が本来持
なっていた。
つ野生的本能が鋭くなり、自分の中で「自家発電」が
回り出したなと感じるプロセスだった。人からエネル
ロシア人は 3 層に分かれており、95%の労働者と
ギーをもらわなくても、血がめぐり生きている限り自
4%のインテリゲンチアと 1%の中枢の共産党員だと、
分で回り続ける発電所だ。そう、私がいま一番日本の
当時のロシア人友人たちは自らを揶揄していた。今は
学生に持ってほしいと願う、「生きる力」である。
そこに、新興ビジネスマンと市民階級が加わったのだ
発 行 人
柳澤正義
編集委員
石橋健一、山田 明、細田瑳一
市橋 光、伊藤公一、北島政樹、首藤紘一、谷口郁夫、浦部晶夫
編集事務
石橋長孝、長崎孝枝、櫻井玲子
発 行 所
公益財団法人日本国際医学協会
〒 154-0011 東京都世田谷区上馬 1-15-3 MK 三軒茶屋ビル 3F
TEL  03(5486)0601 FAX   03(5486)0599
E-mail:admin@imsj.or.jp URL:http://www.imsj.or.jp/
印 刷 所
有限会社 祐光
発 効 日
平成 26 年 11 月 30 日
No.468
Page 12
International Medical News
ISSN 0535-1405
INTERNATIONAL MEDICAL NEWS
International Medical Society of Japan
Since 1925
Nov 30, 2014
Published by International Medical Society of Japan,
Chairman, Board of Directors: Masayoshi Yanagisawa, MD, PhD
Editors: K. Ishibashi, MD, PhD, A. Yamada, MD, PhD,
S. Hosoda, MD, PhD, K. Ichihashi, MD, PhD, K. Ito, MD, PhD,
M. Kitajima, MD, PhD, K. Shudo, PhD, I. Taniguchi, MD, PhD,
And A. Urabe, MD, PhD
3F MK Sangenjaya Building, 1-15-3 Kamiuma, Setagaya-ku, Tokyo154-0011, Japan.
TEL03(5486)0601 FAX03(5486)0599 E-mail:admin@imsj.or.jp http://www.imsj.or.jp/
The 416th International Symposium on Therapy
The 416th International Symposium on Therapy
human s life and can be compared to a barometer”
was held at the Gakushi Kaikan in Tokyo on Sep 18.
to measure levels of a human s health. But in the
2014. Dr. K. Ichihashi, Director of the International
day-to-day life of many people, the issues have
Medical Society of Japan(IMSJ), presided over the
been treated carelessly and neglectfully. Especially in
meeting.
Japan, intelligent circles have sought to call attention
to numerous problems relating to the dietary and
sleeping habits of children who will be major players
Eating and sleeping: search for
problems of bases of life
in the next generation.
As the first lecture of today s conference,
Introductory Message from the Chair
Professor Hiroko Kodama, chair of the Department
Ko Ichihashi, MD, PhD
of the Health and Nutrition at Teikyo Heisei
Director, IMSJ
University, is sharing her insights with us under
the title of the Dietary Habits-related Problems
We have chosen the The Diet and Sleep:
in Our Country and Possible Solutions – The
Observations on Problems relating to the Basics of
Importance of Education on Food.” We will listen
Human Life ” as the theme of the 416th regular
to her presentation on cases of obesity and weight
meeting of the International Symposium on Therapy.
loss in today s Japan, the problems of modern
The diet and sleep are fundamental components of a
Japanese people s dietary habits, the importance
International Medical News
Page 13
of education on food and how the professor has
the tumultuous period when turbulence swept
endeavored for her education on this subject.
through Russia following the collapse of the Soviet
Union. She has since kept a high profile on the
As the second lecture of today s conference, Dr.
international musical scene.
Jun Koyama, chief executive officer of the Tokyo
Bay Urayasu/Ichikawa Medical Center, is giving
us a talk under the title of
Is sleep a pleasure or
duty?” We will listen to his precious observations
on modern Japanese people s sleeping behaviors,
their comparisons with those of foreigners, the
effects of sleep on a human s body and spirit, the
importance of sleep and on how we should try to
lead a healthy life. Through the two lectures, the
speakers will give useful and important information
which we hope not only medical practitioners
Lecture I
Problem on Japanese diets: the
approach for the improvement from
dietary education
Hiroko Kodama, MD, PhD
Chairman and Professor of Department of
Health and Dietetics,
Faculty of Health and Medical Sciences,
Teikyo Heisei University
but the entire Japanese people will obtain and
appreciate.
Diets and nutrition are serious problems among
Japanese people. People with obesity, diabetes
As the Discourse” part of today s conference,
mellitus(DM), hypertension or hypercholesterolemia
Ms. Park Koo Ryeong, a pianist who has taught as
have been increasing. The surveillance study in 2012
a lecturer at Toho Gakuen College, will give us a
showed that the number of patients with DM whose
talk under the title, Russia and the Round Ruler.”
hemoglobin A1c(HbA1c)is higher than 6.5% is
Let us listen to the precious talk of this pianist
950 million, and reserve of DM whose HbA1c is 6.0-
who studied at the Moscow Conservatory during
6.5% is 1100 million. Peoples with hypertension and
Page 14
International Medical News
with hypercholesterolemia are estimated to be 4,000
with adequate food and nutrition knowledge and
million, and 3,000 million, respectively.
food choice skills in order to practice healthy dietary
The present study also showed that 21.8% of
habits. The Shokuiku Promotion Basic Plan and the
young women are thin, and 18.8% of peoples aged
second one were implemented in 2005 and 2011,
75 or older are under-nutrition(BMI <20.0). The ratio
respectively, by which various activities have been
of peoples who skip breakfast is 12.8% and 9.0%
implemented not only the national government,
in male and female, respectively. In addition, intake
but also local government, schools, kindergartens,
of vegetables and fruits are insufficient, whereas
farmers and fishers, food industries, and other
that of salts is excessive. It is also true in Japanese
volunteer organizations, etc.
children. Increase of children who take meals alone
As the results, signs of improvement in these
is also getting a serious problem, because it has
problems are shown. The number of reserve of DM
been pointed out that eating meal together as a
decreased from 1,320 million at 2007 to 1,100
family is very important for the development of
million at 2012. The prevalence of hypertension or
communication skills for children.
hypercholesterolemia has been slightly decreasing.
These problems described above show that dietary
The percentage of men who skip breakfast also
education is necessary. The Shokuiku Basic Act
decreased from 14% at 2008 to 12.8% at 2013.
was passed in 2005 to promote Shokuiku for all,
Intake of salt also decreased from 11.7g/day at 2003
throughout their lives to raise children and adults
to 10.4g/day at 2013, although the level is much
International Medical News
Page 15
more than 8.0g/day in men and 7.0g/day in women
Sleep loss causes widespread deterioration of
which are tentative dietary goal for preventing life-
neuronal functions, memory and learning, gene
style related diseases(DG). These results suggest that
expression, and neurogenesis, as well as numerous
the activities of Shokuiku promotion are effective
other changes that cause declines in cognition,
for the improvement of diets and nutrition among
behavior and health. In animals, sleep loss even for
Japanese. These activities should be continued to get
3 or 4 days can adversely and permanently affect
healthy dietary habits in Japan.
neurophysiological functions and neurogenesis.
Children with chronic sleep difficulties, particularly
when very young, are deprived of good-quality
Lecture II
environmental and endogenous brain stimulation
needed for optimal neuronal development. Recently,
Is sleep pleasure or duty?
Jun Kohyama, MD, PhD
Public Interest Incorporated Association, Japan
Association for Development of Community
Medicine,
Tokyo Bay Urayasu Ichikawa Medical Center
sleep deprivation has been reported to produce
obesity through a significant increase in food
desire based upon decreased activity in appetitive
evaluation regions within the human frontal cortex
and insular cortex during food desirability choices,
combined with a converse amplification of activity
within the amygdala. Sleep loss-induced obesity,
Page 16
International Medical News
which often results in the occurrence of metabolic
she had no concerns about her 3-year-old child’s sleep
syndrome, could also be seen as an expression of
pattern of going to bed at 3 am and waking up at 1
brain dysfunction, although it should be noted that
pm. In this survey, 43.6% of 3-year-old children went
insufficient sleep also affects gene expression. It
to bed at 10 pm or later. According to the Japanese
should also be noted that late sleep onset is known
Society of Child Health, the proportion of children
to produce sleep deficits.
in Japan aged 18 to 83 months who go to sleep at
However, from infancy to adulthood, Japan is one
10 pm or later increased from approximately 30%
of the most sleepless” or sleep-deprived societies
to 50% between 1980 and 2000. We later found in
in the world. In Japan, average sleep duration has
2000 that 49.6% of 3-year old children in Japan went
continuously decreased for at least the past 50 years.
to bed at 10 pm or later.
The average sleep duration of people in Japan age 10
In 2002, the author participated in the design
years and older was 493 minutes in 1960 and 434
of a website promoting the importance of an early
in 2010. It should be noted that the average sleep
bedtime, an early wake-up time, and sufficient
duration in 2009 reported by the OECD was 503
sleep duration for children was initiated. This social
minutes in the UK and 470 minutes in Japan
movement has received considerable attention
Japan is the only nation in the world in which
from the Ministry of Education, Culture, Sports,
>25% of employed people are categorized as long-
Science and Technology(MEXT)as well as many
hour workers (working 50 hours or more per week).
local governments including the Tokyo metropolitan
Conversely, labor productivity in Japan is below the
government. This success might be due to fact that
average level of 30 industrialized nations, with the
the site has provided an easy and simple but scientific
lowest value among developed nations. This indicates
explanation for the importance of going to bed and
that workers in Japan are likely to be sleep-deprived
waking up early, and sufficient sleep duration.
and work long hours with lowefficacy. In addition,
Japanese people devote little time to themselves.
The proportion of children in Japan aged 18
to 83 months who go to sleep at 10 pm or later
In 1998, the author encountered a surprising
decreased to 30% in 2010. The 20-year-long trend
answer sheet written by a mother in our survey on
of increasing numbers of late sleepers appears to
sleep apnea among children in Tokyo. She wrote that
have stopped. However, in a study performed from
International Medical News
Page 17
2006 to 2008, children in Japan showed the short
High School, she went to study at the Moscow
sleep duration among 18 countries/areas.
Conservatory. She studied under Professor Mikhail
People in Japan tend to prefer waking to sleep,
Voskresensky of the conservatory. After graduating
and generally like to be industrious, and often work
head of the year at Toho Gakuen College, she
at the expense of sleep. Then, I have asked ones
continued her study at Toho Gakuen Graduate
for respecting sleep. But when I declare this hope,
School, graduating afterwards. She has since
people feel that they should take sleep. Unwillingly,
followed a brilliant professional career as a pianist
sleep changes from a pleasure into a duty, although
during which time she won prizes at various
sleep is essentially one of four delights (sleep, eat,
international music competitions, including the
defecate, move) that human being should long for.
special prize at the Maria Canals International Music
I am afraid that people in Japan often take these
Competition in Barcelona, Spain, third place at the
pleasures into duties. I am searching the way how
Han Romanson International Piano Competition
people can respect sleep without feeling sense of
in Seoul, South Korea, and the Grand Prix at the
duty.
Pontoise International Concours in Pontoise, France.
She has also played an active part on the classical
Discourse
music scene in Japan. In 1997, publishing house
Introduction of the speaker of
discourse
ko Ichihashi, MD, PhD
Director, IMSJ
Now, let me introduce today s speaker, Ms. Park
Koo Ryeong, a pianist who is a lecturer at Toho
Gakuen College. When she was still studying at the
college after graduating from Toho Gakuen Music
Chopin Co. published her book The Round Ruler,
which consists of essays depicting her life as a music
student in Russia. She has released three CDs from
Tri-M, Victor Entertainment Corp. and Zen-On Music
Co. In addition, she won the 11th Muramatsu Award.
Page 18
International Medical News
Russia and the Round Ruler
Kuryon Paku
Lecture, Toho Gakuen School of Music
passes away. I felt as if I were freed from my anxiety
when I was watching the program, because I am
aware of the fact that a death -- an experience that
cannot be known beforehand -- would inevitably
A human mind is quick to formulate an
put an end to all men’s earthly life someday.
i m p re s s i o n a b o u t a n o b j e c t , b u t s u c h a n
A desire to become happy is probably an essential
impression is often superficial. The word Russia
desire shared by all human beings. Then, what does
must conjure up the pre-conception of a cold,
happiness which all humans covet so deeply signify?
gloomy country in the mind of most people. I
Even during the years when I was still studying in
was born and raised in Japan until I became 21
Russia, there were some occasions when I returned
years old. And then in Moscow, where I spent
to Japan temporarily. During one of such occasions,
the subsequent 10 years to improve my piano
a person asked me what I may be doing to entertain
skills and become a professional pianist, my
myself, while in Russia. My reply was, listening to
values underwent a hundred-and-eighty-degree
concerts, reading, going to museums and taking a
shift. I acquired this new philosophy because
walk.
of the strong and profound spiritual influence
answer sounds like a model answer prepared by the
which some Russians I met in Moscow exerted
Education Ministry. But I was speaking out my heart
on me. I would like to discuss the philosophy
and I used to rejoice at these pastimes in Moscow in
which has become a foundation for my life.
those years when the city had neither cafes serving
The other day, I watched a very interesting
tasty beverages nor stores offering shoppers their
television program about the brain of a human
merchandises through their beautifully adorned
being. The program said a human being’s brain has
display windows. I spent one year during the era of
retained in its innermost region a segment which
perestroika, which marked the closing phase of the
has remained from time immemorial and that the
Soviet Union, as well as some eight more years after
very segment has the function of giving the human
that country readopted the name of Russia.
The person burst into a laugh, saying,
Your
being a happy sensation that he will be led to the
My conservatory and its student dormitory, located
great and sacred light at the moment when he
in downtown Moscow, were in the vicinity of the
International Medical News
Page 19
Kremlin, so I became an eye-witness of those gigantic
painters’ masterpieces. I was deeply moved and
historic waves of the world which just observed the
dazzled at the beauty of the blue color which I found
demise of the Soviet Union and bid farewell to the
in the oil paintings of Pablo Picasso.
Cold War. If this tells you anything, I have to add here
I also found reading books to be a source of
that Moscow’s appearances have since undergone
rapturous joys because it enabled me to distance
an enormous change and that prices in Russia are
myself from the harsh reality of my life and to
now higher than Tokyo’s. Therefore, my students who
immerse myself in a world of fiction. I found reading
began studying in the Moscow Conservatory from this
books to be a source of even more genuine joys
autumn must not have recognized any gap between
because my access to types of entertainments that
Japan and Russia at least in materialistic dimensions.
can be easily enjoyed was severely limited. Then, I
The period of my study in Russia corresponded
went through that year’s long winter during which
with the years when Japan’s bubble economy was
time I had to search for potatoes that had not yet
flourishing at its zenith. Moscow then belonged to
gone rotten when shopping at a market, with each
a world entirely different from that of Japan which
search blackening my hands.
was then seeing an affluent over-abundance of
The fresh vegetables I finally found for the first
commodities and merchandise and where consumers
time in six months (by the way, they were green
were being offered all sorts of services as if they were
cucumbers) at a dollar shop where only foreigners
being given a massage all over their bodies.
were allowed in actuality to buy commodities indeed
I was a typical Japanese female university student
looked very fresh in my eyes. When the Russian
in those days, so I developed a very strong desire to
winter, during which time the mercury stayed in the
return to Japan due partly to homesickness during
vicinity of minus 15 degrees Celsius, finally passed
that first year of my stay in Moscow, which, in a
and the spring whose arrival I had longed for so
materialistic sense, slipped into extremely serious
dearly came, I felt strong joys when having an outing
poverty, which then prompted the government to
in the town in a fur overcoat after being freed from
introduce a food rationing system. Amidst such
the need to cover my neck and nape with a scarf. I
conditions, I scrambled to take refuge at a museum
was taking a walk while feeling the breath of life of
as my soul was longing for beautiful colors of great
trees which shot out buds in response to the arrival of
Page 20
International Medical News
the spring.
this observation based on sarcasm about their own
How excited I was when I listened to performances
society to me. It appears to me that the current
of musicians who emitted infinitely free and explosive
Russian society has obtained two more classes of
energy and played music pieces with their music’s
people – newly emerging businessmen and middle-
rich tone colors at their concerts ! I was also touched
classes.
at Bolshoi Theater ballet dancers’ performances of
The Russian intelligentsia has a surprisingly wide
Tchaikovsky’s Nutcracker on the stage embellished
stretch of knowledge about numerous subjects and is
with incredibly resplendent stage settings, theatrical
curious about and interested in a wide range of arts.
pieces as well as costumes, all of which stood in sharp
The Russian intelligentsia also has an inestimably deep
contrast with the city’s monotonous landscape that
affection and a sense of reverence for arts in general.
stretched over outside the theater. When you are
The Russian intelligentsia’s knowledge, affection
listening to my talk, you may have recognized that
and reverence in these regards are so deep that
entertainments”
the Russian intelligentsia can be described as being
for me. They have since become something without
unique, even when compared with the corresponding
which it was no longer possible for me to go on
intellectual classes of other European countries. On
living. Once I tasted the joys these experiences gave
the other hand, they have a sense of black humor
me, my soul became a venue whose longings could
as well as great optimism that exudes a sort of rustic
no longer be satisfied merely with materialistic wealth
flavor. And they are charming and have a personality
I used to enjoy while in Japan. My experiences in
that it is impossible to dislike.
these experiences were more than
Moscow corroborate the truthfulness of what a fox
The Russian intelligentsia bows their heads only to
said to Little Prince” in that famous book of Antoine
high levels of genuine arts. It would defy imagination
de Saint-Exupery. What is essential is invisible to
of Japan’s modern young people who have a
the eye.” As months went by, my homesickness
sheltered upbringing and take it for granted to have
disappeared and I began to feel that I was like a fish
a peaceful society to fathom how strong the Russian
that was returned to the sea after being caught by an
intelligentsia’s strength to live is.
angler and taken out of the water, so I began to swim
The Russian intelligentsia recognizes others only
about freely in the world of the spirit and musical
for their abilities, qualifications and talents held by
sensibility.”
the others and they never flatter the others. When
During my years in Moscow, my Russian friends
a person seeks to establish a human relationship
used to tell me that Russia has a three-class social
with them, the person would be snubbed unless the
structure under which working-class people
person strives to improve his or her spiritual qualities.
accounted for 95% of its populace and intelligentsia
In this sense, it’s a thrilling reality. But once you
4% with the remainder being Communist Party
establish a friendly tie with them, they would treat
members who occupy key positions with political
you warmly and your bonds of trust with them would
powers as the nucleus of society. They used to convey
become firm and strong.