新たな決済システムの構築に向けて 自民党IT戦略特命委員会 資金決済に関する小委員会 小委員長 福田峰之 2015年3月11日 目次 1. トータルウォレット導入の目的 2. トータルウォレット機能全体像 3. トータルウォレット導入による影響 4. トータルウォレット実現に向けた取組方法 1. トータルウォレット導入の目的 トータルウォレットは、①決済システム利用者の利便性向上、②高度な情報セキュリティ、③有効な情報分 析・活用、④訪日外国人の利便性向上の実現を目的としています。 導入の目的 ① 決済手段に依存しない柔軟な決済プラットフォームによる決済システム利用者の利便性向上 ② 最新テクノロジーを導入し、高度な情報セキュリティを備えた、陳腐化しない決済ネットワークを構築 ③ 日本国内における決済情報の蓄積・管理、及び社会的に有効な情報分析・活用 ④ 2020年開催予定の東京オリンピック・パラリンピックでは、世界各国から多くの外国人が訪日するた め、日本の高い技術力を存分に発揮した、訪日外国人にとっても、利用しやすい決済環境を整備 3 1. トータルウォレット導入の目的 ① 利便性向上 トータルウォレットは、クレジットカード、デビットカード、電子マネー、キャッシュカード、ポイント、チケット、 クーポン、価値記録といった、全ての決済手段に対応し、利用者の利便性向上を図ります。 既存の主要デジタルウォレット 利用可能 概要 決済手段 • iPhone6以降に対 クレジットカード Apple 応したモバイル決済 デビットカード “Apple Pay” • 現在米国でのみ利 用可能 NTTドコモ “おサイフ ケータイ” KDDI “au Wallet” トータルウォレット 既存のデジタル ウォレットは、部 分的な決済手段 のみに対応 トータル ウォレット • Felicaチップを搭載 電子マネー したAndroid端末で ポイント 利用可能なモバイ クーポン ル決済 • au IDと連動した カード型ウォレット (モバイル未対応) 電子マネー クレジットカード ポイント トータルウォレッ トは、全ての決 済手段に対応 UCカード • NFC(TypeA/B)、 クレジットカード “UC Mobile QRに対応したモバ デビットカード Wallet” (仮) イル決済 プリペイドカード 三菱UFJ ニコス “eさいふ” 4 利用可能 決済手段 概要 • ネットショッピング専 プリペイドカード 用のカードレスの バーチャルプリペイ ドカード Apple Payは現在、米国でも広く利用されている。iPhoneの日 本での普及状況を踏まえると、Apple Payが今後日本に導入 された場合、急速に普及する可能性あり • NFC(Felica、 TypeA/B)、BLE、 QRに対応したモバ イル決済 • 1台の端末(スマート フォン/タブレット/専 用端末)で全ての決 済手段に対応 クレジットカード デビットカード 電子マネー (プリペイド/ ポストペイ) ポイント チケット クーポン 価値記録 (ビットコイン等) 加盟店側のコスト(端末設置料、加盟店手数料)が低減 されるため、小規模事業者でもトータルウォレットの導 入が可能 1. トータルウォレット導入の目的 ② 高度な情報セキュリティ 個人情報セキュリティ強化の観点から、従来の加盟店主導型の決済処理プロセスを利用せず、会員主導型 の決済処理プロセス(加盟店に個人情報が渡らない会員主導型プロセス)を導入します。 従来の決済処理プロセス (加盟店主導型) 新たな決済処理プロセス (会員主導型) ② 会員 会員 ⑤ ① ④ ③ 金融機関/ 関連会社 決済システ ム運営機能 ① ③ 金融機関/ 関連会社 ④ 加盟店 ① 決済手段情報の送信 ② 決済情報送信・決済依頼 ⑤ ② 加盟店 ③ 決済結果の送信 ④ 決済結果の送信 会員が加盟店に個人情報を渡し、その後加盟店か ら金融機関/関連会社に決済情報を送信する決済処 理プロセス(加盟店主導型) 5 ④ 決済結果の送信 ① 請求情報の送信 ② 決済手段情報・請求情報(決済情報) ⑤ 決済結果の送信 の送信 ③ 決済情報送信・決済依頼 会員が、決済システム運営機能経由で、直接金融 機関/関連会社に決済情報を送信し、加盟店側に カード番号等の個人情報を送信しない決済処理プロ セス(会員主導型) 1. トータルウォレット導入の目的 ③ 有効な情報分析・活用 トータルウォレットは、既存事業者よりも広範囲、かつ、多くの決済情報の蓄積が可能なため、民間企業/ 政府にとって、より効果的で精度の高い情報分析が可能となります。 既存事業者との情報量の比較 電子マネー 事業者 決 済 情 報 • 加盟店情報 • 決済金額 (少額) • 決済日時 • 決済方法 • 移動情報 カード単位 = 自社単位 個 人 情 報 • 氏名 • 生年月日 • 性別 • 住所 (登録している 場合のみ) • 加盟店情報 • 決済金額 (少額~高額) • 決済日時 • 決済方法 〈 自社単位 = • 氏名 • 生年月日 • 性別 • 住所 複数カード・ 自店単位 • 加盟店情報 • 決済金額 (少額~高額) • 決済日時 • 決済方法 • 商品情報 《 = • 氏名 • 生年月日 • 性別 • 住所 • 加盟店情報 • 決済金額 (少額~高額) • 決済日時 • 決済方法 • 商品情報 • 移動情報 トータル ウォレット 決済/個人情報 自店単位 = • 氏名 • 生年月日 • 性別 • 住所 分析 民 間 企 業 複数カード・ 複数店単位 自店単位 外資の参入が今後加速し、国内の決済情報 が海外でも蓄積される可能性あり 6 トータル ウォレット 事業体 小売業者 カード会社 カード単位 情報蓄積 • 与信 ⇒行動分析深化によ る高精度モデリング • 政策投資 ⇒特定地域におけるモ デルケースを他地 域に展開可能 政 府 外部情報 • マーケティング ⇒ライフイベント予測 • 投資評価 ⇒特定の産業に対す る投資の効果検証・ 評価 • 事務負担軽減 ⇒税金還付 国内で情報 蓄積 民間共同出資の会社で運営 1. トータルウォレット導入の目的 ④ 訪日外国人の利便性向上 トータルウォレットを導入することで、訪日外国人(観光客)の決済に関わる利便性を向上させることが可能と なります。 訪日外国人(観光客)からの要望 * 31.7% 23.9% クレジットカード等多様な決済手段に対応し た加盟店が増加 両替の必要性が低下 券売機で乗車券を購入することなく、公共交 通機関を利用することが可能 17.5% 7.3% 9.1% トータルウォレット導入による効果 10.5% 訪日外国人からのトータルウォレットに対する利 便性・機能の評価が高まれば、海外へトータル ウォレットの決済インフラを輸出することも可能 無線公衆無線LAN環境 コミュニケーション 目的地までの公共交通の経路情報の入手 両替・クレジットカード利用 公共交通の利用方法(乗り方)、利用料金 その他 7 * 観光庁「外国人旅行者に対するアンケート調査結果」(平成23年)より作成 © 2015. For information, contact Deloitte Tohmatsu Consulting Co., Ltd. 2. トータルウォレット機能全体像 決済機能、及び決済情報分析機能を備えた新たな決済システム(トータルウォレット)は、主に「会員」、「加盟 店」、「決済システム運営機能」、「金融機関/関連会社」、「政府/企業」によって運用されます。 ① 会員 ② 決済システム運営機能 【日本人/外国人】 個人情報 クレジットカード デビットカード 登録 スマート フォン 決済アプリ NFC*1 決済ネット ワーク キャッシュカード ③ 加盟店 スマートフォン 決済アプリ 専用端末 オンライン 決済 顔認証 店リ 舗ア ル オ 店ン 舗ラ イ ン / 電子マネー 決済情報 金融機関/ 関連会社*2 顔認証 情報 分析 価値記録 • ビットコイン 等 8 顔認証 顔認証 移 銀 動行 電信送金 業資 24時間365日 者金 0000 000 12345678 チケット/クーポン • 観光施設 • リアル店舗 リアル 決済 *1 NFC:Near field communication (TypeA/B、Felica) *2 電子マネー運営会社、チケット/クーポン運営会社、価値記録交換所を想定 政府/企業 入場 観 光 施 設 乗車/ 搭乗 交 通公 機共 関 3. トータルウォレット導入による影響 既存事業者への影響 トータルウォレット導入により、既存事業者と競合しますが、①利便性向上、②高度な情報セキュリティ、③有 効な情報分析・活用、④訪日外国人の利便性向上を実現できます。 アクワイアラ 会カ 社ー ド • • • • JCB 三菱UFJニコス UCカード 三井住友カード 等 事マ 業ネ電 者ー子 • 楽天Edy • nanaco • 鉄道系(Suica) 等 決 業済 者代 行 • GMOペイメント ゲートウェイ • ソフトバンクペイメ ントサービス 等 決ス 済マ 端ー 末ト 業フ ォ 者ン • • • • 9 イシュア Coiny 楽天スマートペイ PayPal Here SQUARE 等 加盟店の 奪い合い 加盟店手数料 低下による 収益減少 トータル ウォレット ①利便性向上 ②高度な情報セキュリティ ③有効な情報分析・活用 ④訪日外国人の利便性向上 会員の奪い合い 提ウ 供ォデ 事レジ 業ッタ 者トル • • • • • Apple NTTドコモ KDDI UCカード 三菱UFJニコス 等 4. トータルウォレット実現に向けた取組方法 トータルウォレットの方向性を鑑みると、国家プロジェクトによって推進される必要があります。 トータルウォレットの方向性 国家プロジェクト のあるべき姿 民間事業の現実 10 世界的な共通課題 誰もが真似できない 革新的な技術 国際標準取得や インフラ輸出を睨んだ 事業化 解決する 課題 活用する 技術 事業化の 水準 近視眼的な課題 既存インフラを活用した 一歩進んだ技術 個社の成果に留まる 限定的な事業化 【参考】関連する主要な特許 関連する特許については、今後入念な調査が必要ですが、現時点で抵触する可能性のある特許は、 Apple、Amazonのモバイルペイメントに関する3つの特許となります*。 関連する主要な特許項目 出願 特許公告番号 (NFC回路制御方法) Methods for Adjusting Near Field Communications Circuitry during Mobile Payment Transactions Apple US 20140304094 A1 (個人情報を保護したデータ送信方法) Method to send payment data through various air interfaces without compromising user data Apple US 20140019367 A1 Amazon US 8682802 B1 (トークン化) Mobile payments using payment tokens 日本については、特許出願は行われているが、ほとんどが審査請求されず無効になっているため、直接侵害する可能 性がある特許は今のところ見つからず * 11
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