新製品紹介

新製品紹介
高性能コネクタ用銅合金 EFCUBE®-STの開発
Development of High Performance Copper Alloy EFCUBE-ST for Connectors.
1. はじめに
表 2 EFCUBE-ST の基本特性
Characteristics of EFCUBE-ST.
近年,スマートフォンやタブレット端末などの小型電子機器
の高性能化に伴い,回路基板間やモジュール間の接続に用いら
れる小型 BtoB コネクタにおいても,小型化,高密度化が進ん
でいます。小型コネクタに使用される銅合金条には,高いバネ
性と良好な曲げ加工性という,相反する特性が要求されていま
す。更に,コネクタの短小化と断面積の減少に伴い,永久変形
しにくい良好な弾力性(低ヤング率)および高い導電性が求め
られます。従来,コネクタ用の高強度銅合金は Cu-Ti 系,りん
青銅系が代表的でしたが,ヤング率や導電性などの特性が犠牲
になっていました。そこで,当社では Ni,Si 濃度を高めた高
EFCUBE-ST
質別 Temper
EH
引張強さ
MPa
910
950
0.2% 耐力
MPa
880
930
伸び
%
ヤング率
GPa
5
引張試験
JIS Z 2241
準拠
3
110
ビッカース硬さ Hv
導電率
評価方法
SH
―
275
%IACS
295
JIS Z 2244 準拠
35
JIS H 0505 準拠
濃度コルソン合金に対し,図 1 に示すように,合金中の結晶方
位を一定方向に揃える(集合組織制御)技術を適用し,各特性
【曲げ加工性】
を バ ラ ン ス よ く 満 足 さ せ た 新 合 金 条 EFCUBE-ST(UNS:
図 2 に強度と曲げ加工性の関係を示します。EFCUBE-ST は
C64790)を開発しました。なお,表 1 に示すように有害な元素
一般コルソン合金,10% りん青銅(以下,りん青銅)に比べて
を含有していないため,グリーン調達を推進されているお客様
高強度化(0.2% 耐力:880 ~ 930 MPa)しながらも,良好な曲げ
にも好適です。
加工性(10 mm 幅,板厚 0.15 mmt,90°W 曲げ:2 ~ 5 t)を維
持しており,Cu-Ti 系合金に匹敵する特性を有しています。ま
た,90°W 曲げの断面観察結果を図 3 に示します。りん青銅で
集合組織制御技術
を適用
同様,クラックなく加工できていることが分かります。
Normal
Direction
ND
結晶粒
Longitudinal
Direction
TD
結晶方位はランダム
LD
10 mm
一定の方位に制御
表 1 EFCUBE-ST の化学組成
Chemical composition of EFCUBE-ST.
成分 Elements
Ni
含有量(mass%)
3.8
Content (mass%)
Si
0.9
Zn
0.5
Sn
0.1
Mg
0.1
Cr
Cu
0.2
残
Bal.
2. 特長
表 2 に EFCUBE-ST の基本特性を示します。EFCUBE-ST に
は EH と SH の 2 質別があり,2 つの強度帯をラインナップして
います。
t : 板厚
0.15 mm
曲げ半径
図 1 EFCUBE-ST の集合組織制御技術
Texture control of EFCUBE-ST.
←良
曲げ加工性 BW
(最小曲げ半径:板厚の倍数)
Transverse
Direction
クラックが入っているのに対し,EFCUBE-ST は Cu-Ti 系合金
5t
4t
SH
10%りん青銅
一般コルソン合金
EFCUBE-ST
3t
EH
2t
Cu-Ti 系合金
1t
0t
650
EFCUBE-820
700
750
800
850
900
950
1000
0.2% 耐力 /MPa
(圧延平行方向)
図 2 強度 - 曲げ加工性の関係
Correlation between strength and bending
workability.
古河電工時報第 130 号(平成 24 年 7 月) 15
新製品紹介 高性能コネクタ用銅合金 EFCUBE ®
-ST の開発
EFCUBE-ST
Cu-Ti系合金
高強度
10%りん青銅
[0.2%耐力]
-ST
EFCUBE-ST
(EH))
880MPa
840
800
低弾性 100GPa
図 3 曲げ加工断面
Cross sectional areas of bend specimens.
[ヤング率]
110
760
120
130
140
720
3t
4t
2t
1t
曲げ加工性
[限界曲げ半径]
50
10
10%りん青銅
【ヤング率】
30
20
30
図 4 に,EFCUBE-ST と Cu-Ti 系合金,りん青銅の応力 - ひず
の低ヤング率を示し,高ヤング率の材料と同等の強度帯で比較
すると,弾性領域を広くとることができ,一定の変位をとって
も永久変形しにくくなるため,コネクタの小型化によるバネ部
0%
高導電
耐熱性
[電気伝導性]
[応力緩和率(150℃で1000時間)]
図 5 EFCUBE-ST と他合金の特性
Characteristics of EFCUBE-ST and other alloys.
の短小化に対応しています。また,低ヤング率化により,コネ
3. おわりに
クタの加工などで発生する寸法ばらつきによる荷重変位が小さ
くなり,コネクタの接圧が安定して,接続信頼性に寄与します。
10
40%IACS
み曲線(S-S カーブ)を示します。EFCUBE-ST はりん青銅並み
Cu-Ti系合金
Cu-Ti
40
20
EFCUBE-ST は強度,曲げ加工性,高温環境下での信頼性に
優れ,小型化・高性能化の進行するコネクタ用の材料として好
適です。
1100
1000
Nominal stress /MPa
900
EFCUBE-ST(EH)
Cu-Ti 系合金
金属カンパニー 営業統括部
800
700
<製品お問い合わせ先>
10%りん青銅
600
500
400
TEL:03-3286-3866 FAX:03-3286-3289
メールアドレス:kinzoku@furukawa.co.jp
EFCUBE-ST の UNS 番号:C64790
300
200
100
0
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5
Nominal strain(%)
図 4 圧延平行の応力 - ひずみ曲線
Stress-Strain curves in rolling directions.
図 5 に EFCUBE-ST と他合金の特性の比較をレーダーチャー
トで示します。EFCUBE-ST は Cu-Ti 系合金に比べてヤング率
が低く,りん青銅に比べて強度,曲げ加工性,耐熱性に優れて
います。また,導電率は Cu-Ti 系合金,りん青銅と比較して 3
倍以上あり,高い優位性を持っています。
以上のように,EFCUBE-ST は従来合金よりも特性をバラン
ス良く満足し,次世代の超小型コネクタの設計,およびコネク
タの技術革新に貢献します。
古河電工時報第 130 号(平成 24 年 7 月) 16