数学オリンピックの問題と教訓集

数学オリンピックの問題と教訓集
マスオ
2015 年 1 月 6 日
1
目次
はじめに
3
各問題の難易度と分野 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
5
2
IMO 問題
6
3
SLP 問題
15
4
APMO 問題
16
5
IMO 解答と教訓
18
6
SLP 解答と教訓
91
7
APMO 解答と教訓
105
8
付録
115
1
1.1
8.1
記号,用語,定理 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 115
8.2
参考文献 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 118
2
1 はじめに
「数学オリンピックの問題と教訓集」をダウンロードしていただき誠にありがとうござい
ます!
本書は国際数学オリンピックの過去の問題の中から数オリ対策に効果が高いと思われるも
のを厳選して解説したものです.
扱う問題の出典は以下の三つです:
・IMO(国際数学オリンピック)で出題された問題
・IMO Shortlist (国際数学オリンピックで出題される問題候補だったもの,SLP と略記し
ます)
・APMO(アジア太平洋数学オリンピック)で出題された問題
数学オリンピックは良問の宝庫ですが,天才しか思いつかないような突飛な発想が必要な
超難問もたくさんあります.超難問の解答を読んでも「正しいのは分かるがなぜそれが思い
つくのか?」という疑問を拭い去ることができません.
本書ではできるだけ突飛な発想を使わない問題を厳選し,他の問題にも使えるような「共
通の手法,道具」を使ったできるだけ自然な解法にこだわりました.「突飛な発想」よりも
「自然な解法,共通の手法や道具」を意識した方が演習効果が高いためです.そこで,各問
題の解説には,解答だけでなくなぜそのように考えるのかを説明した「方針」と共通の手法
を端的に表現した「教訓」を添えました.また,共通の手法が比較的多い不等式,幾何の問
題を多めに採用しました.一方で典型的な手法があまりない組み合わせ分野の問題がやや少
なめになっています.
とはいえ,突飛な発想は数学オリンピックの醍醐味でもあり,全てを「共通の手法,道具」
で解説するのは無理があります.そのため本書にも「自然な解法」と言いがたい少々強引な
部分や突飛な発想を要求する難問も含まれています.それでも「単なる問題と解答の羅列」
よりははるかに納得しやすい内容だと自負しています.
数学オリンピック対策の演習書としてはもちろんのこと,本書を通じてより多くの人に数
学オリンピックの美しい世界に感動していただけることを願っています!
∼本書の活用方法∼
解答を見る前に最低30分(最高は何時間でも)は考えていただきたいです.そうすれば
解答を見たときに,自分がなぜ解答を思いつかなかったのか,どこまではできていたのか,
などを分析する際の材料が得られます.重要なのは,出来なかった問題に対する「分析」で
す.分析をもとに自分なりのポイントや補題を集めてノートにまとめるとよいでしょう.
問題を解く順番は以下の二通りのいずれかがおすすめです.
3
・パターン1:数オリ対策初心者用
まず平均点の高い問題(IMO の問 1,問 4)から解いていくのがオススメです.IMO の
各問題の平均点はこの章の最後に載せています.IMO の問題は難問ぞろいで,問 1,問 4 で
も十分に歯ごたえがあります.なので,やみくもに難しい問題に手を出すのではなくて,ま
ずは問1,問4で基本的な解き方,IMO のパターンを掴んで下さい.ちなみに問1,問4
がほぼ確実に解ければ IMO で銅メダルです.
・パターン2:単純に美しい問題を解きたい人,IMO をガッツリ対策したい人
ランダムにガンガン解いていって下さい.たまに模試形式で,適当に三問選んで四時間半
測って解くのもよいでしょう.
∼前提知識について∼
数学 1A,およびシグマ記号の意味を理解していれば読める部分が多いです.しかし,数
学 1A 範囲外で「因数定理,ベクトル,三角関数の加法定理,微分,座標平面,複素数平面」
などの分野の基礎的な事柄を用いている部分もあります.
また,高校で習わないが数学オリンピック受験の際に知っておくべき道具もたくさんあり
ます.そのような道具や用語に関しては解答後の「補足」および巻末にまとめておきまし
た.解説中で分からない定理などが出てきたらまずは巻末を参照して下さい.巻末の定理の
証明や背景など詳しいことはウェブサイト(http://mathtrain.jp)で解説しているのでそち
らも参照して下さい.
∼著作権について∼
「数学オリンピックの問題と教訓集」の著作権はマスオにあります.常識の範囲内で家族
や友達に見せたりするのは構いません.自分用に印刷するのも構いません(というか印刷推
奨)
.しかし,ファイルを丸ごとコピーして他人に配布したりは絶対にしないでください!
今回取り扱った問題は,利用・販売が容認されている「IMO, IMO Shortlist, APMO の
問題」に限りました.USAMO などの問題は著作権の関係上取り扱っておりません.
また,問題の解答は全て筆者が作成しましたが,半分くらいの問題で「解き方の方針」に
ついて海外のサイト,本を参考にしました.本来なら問題ごとに参考にした部分と参照元を
載せるのが望ましいのですが,「文献を参考にした部分」と「筆者オリジナルの発想による
もの」の線引きが難しく現実的ではありません.そのため,他の数学関連の書籍と同様に巻
末に参考文献リストを載せることで替えさせていただきました.
∼お問い合わせ∼
質問,誤植,意見,依頼などあれば遠慮無くマスオまでメール(mathelegant@gmail.com)
してください!特に誤植の指摘が助かります!
4
IMO 2005 P2(組合せ)普通 3.0
1.1 各問題の難易度と分野
IMO 2005 P3(不等式)難 0.9
IMO 2006 P1(図形)易 5.6
・IMO1980 年以前のものは平均点があて
IMO 2006 P4(整数)普通 5.0
にならないので載せていません.難易度は
IMO 2007 P5(整数)難 1.9
主観的なものです,参考程度にどうぞ.
IMO 2008 P1(図形)やや易 5.0
IMO50 問,SLP8 問,APMO7 問.
IMO 2008 P2(不等式)やや難 2.6
IMO 2008 P4(関数方程式)普通 4.4
大会 年 問題番号 難易度 平均点 (7 点満点)
IMO 2009 P1(整数)普通 4.8
IMO 1964 P4(組合せ)易
IMO 2009 P2(図形)やや難 3.7
IMO 1970 P4(組合せ)やや易
IMO 2009 P4(図形)普通 2.9
IMO 1972 P1(組合せ)やや易
IMO 2010 P1(関数方程式)やや易 5.5
IMO 1972 P3(整数)普通
IMO 2010 P2(図形)やや難 2.6
IMO 1976 P1(図形)やや易
IMO 2010 P4(図形)普通 5.3
IMO 1984 P2(整数)普通 3.2
IMO 2011 P1(組合せ)やや易 5.4
IMO 1985 P1(図形)やや易 4.1
IMO 2011 P4(組合せ)やや易 4.1
IMO 1987 P2(図形)やや易 4.7
IMO 2011 P5(整数)やや難 3.3
IMO 1987 P5(組合せ)普通 4.2
IMO 2012 P1(図形)やや易 5.6
IMO 1988 P4(代数)やや難 2.3
IMO 2012 P4(関数方程式)普通 3.8
IMO 1989 P4(図形)やや易 4.0
IMO 2013 P4(図形)やや易 5.4
IMO 1991 P5(図形)やや難 3.8
IMO 2014 P1(代数)やや易 5.3
IMO 1992 P1(整数)普通 3.6
SLP 1988 P3(図形)普通
IMO 1992 P3(組合せ)難 1.9
SLP 1995 A4(不等式)やや難
IMO 1994 P4(整数)普通 3.3
SLP 1998 A3(不等式)やや易
IMO 1996 P4(整数)やや難 2.1
SLP 2005 G1(図形)普通
IMO 1997 P5(整数)やや難 3.4
SLP 2006 N5(整数)普通
IMO 1998 P1(図形)普通 3.2
SLP 2009 A2(不等式)やや難
IMO 1998 P2(組合せ)普通 2.7
SLP 2010 A2(不等式)普通
IMO 2001 P4(組合せ)普通 3.2
SLP 2010 G1(図形)やや難
IMO 2002 P4(整数)やや難 3.9
APMO 1994 P2(図形)易
IMO 2003 P1(組合せ)普通 3.6
APMO 1997 P1(代数)やや易
IMO 2003 P2(整数)やや難 2.3
APMO 2004 P2(図形)やや易
IMO 2003 P4(図形)やや易 4.6
APMO 2004 P5(不等式)やや難
IMO 2003 P5(不等式)やや難 1.6
APMO 2005 P5(図形)普通
IMO 2004 P1(図形)普通 4.6
APMO 2007 P2(図形)普通
IMO 2004 P4(不等式)普通 4.1
APMO 2010 P2(整数)やや難
IMO 2004 P5(図形)難 2.5
IMO 2005 P1(図形)やや難 2.6
5
2 IMO 問題
IMO 1964 P4
17 人それぞれが他の全員と互いに手紙をやりとりしている.その手紙では三つの話題
のみがやりとりされている.そして,同じ二人組の間でなされる話題は常に同じ(一つ
の)話題である.このとき,互いに同じ話題の手紙をやりとりした三人組が存在するこ
とを証明せよ.
IMO 1970 P4
以下の条件を満たす正の整数 n を全て求めよ:
「集合 {n, n + 1, n + 2, n + 3, n + 4, n + 5} をうまく二つの部分集合に分割して,一
方の集合の要素の積を他方の集合の要素の積と一致させることができる」
IMO 1972 P1
10 個の異なる二桁の整数からなる集合がある.このとき,共通部分を持たない二つの
部分集合をうまく選べばそれらの要素の和が等しくなるようにできることを証明せよ.
IMO 1972 P3
任意の非負整数 m, n に対して
(2m)!(2n)!
が整数であることを証明せよ(ただし,
m!(m + n)!
0! = 1).
IMO 1976 P1
面積が 32 である凸四角形 ABCD において,AB + CD + BD = 16 のとき,AC の長
さとして考えられる値を全て求めよ.
IMO 1984 P2
正の整数の組 (a, b) で,ab(a + b) が 7 で割り切れず,(a + b)7 − a7 − b7 が 77 で割り
切れるようなものを一組求めよ.
IMO 1985 P1
円に内接する四角形 ABCD において,中心が辺 AB 上の点 O であり他の三辺と接す
る円がある.このとき AD + BC = AB を証明せよ.
6
IMO 1987 P2
鋭角三角形 ABC において,̸ A の二等分線と BC の交点を L,̸ A の二等分線と三角
形 ABC の外接円の (A 以外の) 交点を N とおく.また,L から AB, AC に下ろした
垂線の足を K, M とおく.このとき四角形 AKN M の面積と三角形 ABC の面積が等
しいことを証明せよ.
IMO 1987 P5
3 以上の任意の正の整数 n に対して,以下の条件を満たす n 点が平面上にとれること
を証明せよ:
・どの二点間の距離も無理数である.
・どの三点も一直線上にない.
・どの三点が作る三角形の面積も有理数である.
IMO 1988 P4
以下の不等式を満たす実数 x の集合を数直線上に共通部分をもたない区間の和として
表わすとき,これらの区間の長さの和が 1988 であることを証明せよ:
70
∑
k=1
k
5
≥
x−k
4
IMO 1989 P4
凸四角形 ABCD において,AB = AD + BC が成立している.また,四角形内に CD
からの距離が h であるような点 P があり,AP = h + AD, BP = h + BC が成立して
いる.このとき以下を証明せよ:
1
1
1
√ ≥√
+√
AD
BC
h
IMO 1991 P5
三角形 ABC の内部に点 M がある.̸ M AB,
̸
M BC,
̸
M CA のいずれか一つは 30◦
以下であることを証明せよ.
7
IMO 1992 P1
1 < a < b < c なる整数 a, b, c の組で (a − 1)(b − 1)(c − 1) が abc − 1 の約数となるよ
うなものを全て求めよ.
IMO 1992 P3
空間に九点あり,どの四点も同一平面上にはない.どの二点間も線分で結ばれており
「青色に塗られている,または赤色に塗られている,または色が塗られていない」のい
ずれかである.「ちょうど n 本の線分を塗ると必ず同色で塗られた三角形が存在する」
という条件を満たす最小の n を求めよ.
IMO 1994 P4
n3 + 1
が整数となるような自然数 m, n の組を全て求めよ.
mn − 1
IMO 1996 P4
「15a + 16b と 16a − 15b のいずれもが正の整数の平方となる」という条件を満たしな
がら正の整数の組 (a, b) が動く.これら二つの平方数の中で小さい方の値として考えら
れるものの最小値を求めよ.
IMO 1997 P5
以下を満たす正の整数 a, b の組を全て求めよ:
2
ab = ba
IMO 1998 P1
凸四角形 ABCD において,対角線 AC と BD は直交しており AB と DC は平行でな
い.線分 AB と DC の垂直二等分線の交点を P とおくとき,P は四角形 ABCD の内
側にあった.このとき以下を証明せよ:
四点 A, B, C, D は同一円周上にある ⇐⇒ 三角形 ABP と CDP の面積が等しい
8
IMO 1998 P2
a 人の選手と b 人の審判がいるコンテストを考える.ここで b は 3 以上の奇数である.
各審判は選手それぞれに対して「可」か「不可」の評価を与える.どの二人の審判を選
んでもその二人が同じ評価を下した選手は k 人以下であったとする.このとき以下の
不等式を証明せよ:
k
b−1
≥
a
2b
IMO 2001 P4
n を 1 より大きい奇数とし,k1 , k2 , · · · , kn を与えられた整数とする.1, 2, · · · , n の
順列(全部で n! 個ある)a = (a1 , a2 , · · · , an ) に対して,それぞれ
S(a) =
n
∑
ki ai
i=1
とおく.このとき,S(b) − S(c) が n! で割り切れるような二つの異なる順列 b, c が存
在することを証明せよ.
IMO 2002 P4
n を正の整数とし,その約数を小さい順に 1 = d1 < d2 < · · · < dk = n とおく.この
とき S = d1 d2 + d2 d3 + · · · + dk−1 dk は n2 より小さいことを証明せよ.また,S が
n2 の約数となる n を全て求めよ.
IMO 2003 P1
S を集合 {1, 2, 3, · · · , 1000000} とし,A を要素数が 101 であるような S の部分集合
とする.このとき,S から異なる 100 個の元 xi (i = 1, 2, · · · , 100) をうまく選べば
集合 {a + xi | a ∈ A} たちがどの二つも共通部分を持たないようにできることを証明
せよ.
IMO 2003 P2
正の整数の組 (a, b) で,
a2
が正の整数となるようなものを全て求めよ.
2ab2 − b3 + 1
9
IMO 2003 P4
円に内接する四角形 ABCD において,D から直線 BC, CA, AB におろした垂線の足
をそれぞれ P, Q, R とおく.このとき「P Q = QR」 ⇐⇒ 「̸ ABC と ̸ ADC の二等
分線が AC 上に共有点を持つ」を証明せよ.
IMO 2003 P5
正の整数 n と x1 ≤ x2 ≤ · · · ≤ xn を満たす実数 x1 , x2 , · · · , xn に対して以下の不等
式を証明せよ:
n ∑
n
n
n
∑
2(n2 − 1) ∑ ∑
2
(
|xi − xj |) ≤
(xi − xj )2
3
i=1 j=1
i=1 j=1
また,この不等式において等号が成立する必要十分条件が,「x1 , x2 , · · · , xn が等差数
列をなす」であることを証明せよ.
IMO 2004 P1
AB ̸= AC なる鋭角三角形 ABC において,線分 BC を直径とする円と AB, AC の交
点をそれぞれ M, N とおく.BC の中点を O とおく.また,̸ BAC と ̸ M ON の二
等分線の交点を R とおく.このとき,三角形 BM R と CN R の外接円は BC 上に交
点を持つことを証明せよ.
IMO 2004 P4
n を 3 以上の整数,t1 , t2 , · · · , tn を正の実数とする.また,
n2 + 1 > (t1 + t2 + · · · + tn )(
1
1
1
+ + ··· + )
t1
t2
tn
を満たすとする.このとき,1 ≤ i < j < k ≤ n を満たす任意の整数 i, j , k に対して
ti , tj , tk を三辺の長さとする三角形が存在することを証明せよ.
IMO 2004 P5
凸四角形 ABCD において,対角線 BD は ̸ ABC の二等分線でも ̸ CDA の二等分線
でもないとする.四角形 ABCD 内にある点 P が ̸ P BC = ̸ DBA, ̸ P DC = ̸ BDA
を満たすとき,以下を証明せよ:
A, B, C, D は同一円周上にある ⇐⇒ AP = CP
10
IMO 2005 P1
正三角形 ABC の辺 BC 上に点 A1 , A2 を,CA 上に点 B1 , B2 を,AB 上に点 C1 , C2
を A1 A2 = A2 B1 = B1 B2 = B2 C1 = C1 C2 = C2 A1 となるようにとる.このとき,
三直線 A1 B2 , B1 C2 , C1 A2 が一点で交わることを証明せよ.
IMO 2005 P2
各項が整数であるような数列 a1 , a2 , · · · において正の項も負の項もともに無限回現れ
るとする.また,任意の正の整数 n に対して,a1 , a2 , · · · , an を n で割った余りは全
て異なるとする.以上のとき,この数列に全ての整数がちょうど 1 回ずつ現れることを
証明せよ.
IMO 2005 P3
正の実数 x, y, z が xyz ≥ 1 を満たすとき以下の不等式を証明せよ:
x5 − x2
y5 − y2
z5 − z2
+
+
≥0
x5 + y 2 + z 2
y 5 + z 2 + x2
z 5 + x2 + y 2
IMO 2006 P1
三角形 ABC の内心を I とし,三角形内にある点 P が ̸ P BA + ̸ P CA =
̸
P BC +
P CB を満たしている.このとき,AP ≥ AI を証明せよ.また,P と I が一致する
̸
ことがこの不等式で等号が成立するための必要十分条件であることを証明せよ.
IMO 2006 P4
以下の等式を満たす整数の組 (x, y) を全て求めよ:
1 + 2x + 22x+1 = y 2
IMO 2007 P5
正の整数 a, b について,4ab − 1 が (4a2 − 1)2 を割り切るとき a = b であることを証
明せよ.
11
IMO 2008 P1
鋭角三角形 ABC の垂心を H とする.A0 , B0 , C0 をそれぞれ BC, CA, AB の中点
とする.H を通り,中心がそれぞれ A0 , B0 , C0 である円を ωa , ωb , ωc とおく.ωa と
BC の交点を A1 , A2 ,ωb と CA の交点を B1 , B2 ,ωc と AB の交点を C1 , C2 とする
とき,A1 , A2 , B1 , B2 , C1 , C2 が同一円周上にあることを証明せよ.
IMO 2008 P2
(i) 1 と異なる実数 x , y , z が xyz = 1 を満たすとき,以下の不等式を証明せよ:
x2
y2
z2
+
+
≥1
(x − 1)2
(y − 1)2
(z − 1)2
(ii) 上記の不等式で等号が成立するような有理数の組 (x, y, z) が無数に存在すること
を証明せよ.
IMO 2008 P4
f : (0, ∞) 7→ (0, ∞)(定義域が正の実数全体であり正の実数値をとる関数)で,
wx = yz を満たす任意の正の実数 w, x, y, z に対して
w 2 + x2
(f (w))2 + (f (x))2
=
f (y 2 ) + f (z 2 )
y2 + z2
を満たすものを全て求めよ.
IMO 2009 P1
n を正の整数とし,a1 , a2 , · · · , ak (k ≥ 2) を 1 以上 n 以下の相異なる整数とする.
また,i = 1, · · · , k − 1 に対して ai (ai+1 − 1) が n で割り切れるとする.このとき
ak (a1 − 1) は n で割り切れないことを証明せよ.
IMO 2009 P2
三角形 ABC の外心を O とする.線分 CA, AB 上(端点とは異なる点)にそれぞれ
P, Q を取る.線分 BP, CQ, P Q の中点を全て通る円 Γ が直線 P Q と接するとき
OP = OQ であることを証明せよ.
12
IMO 2009 P4
AB = AC なる三角形 ABC において,̸ CAB の二等分線と辺 BC の交点を D,
̸
ABC の二等分線と辺 CA の交点を E とおく.また,三角形 ADC の内心を K とお
く.̸ BEK = 45◦ のとき ̸ CAB としてとりうる値を全て求めよ.
IMO 2010 P1
定義域が実数全体で実数値をとるような関数 f で,
f (⌊x⌋y) = f (x)⌊f (y)⌋
を満たすものを全て求めよ.ただし,⌊x⌋ は x を超えない最大の整数を表す.
IMO 2010 P2
三角形 ABC の外接円を Γ,内心を I とし,AI と Γ の交点のうち A でないものを D
1
̸ BAC を
2
満たすようにとる.また,F I の中点を G とする.このとき,直線 DG と EI の交点
とする.弧 BDC 上に点 E を,線分 BC 上に点 F を ̸ BAF = ̸ CAE <
が Γ 上にあることを証明せよ.
IMO 2010 P4
三角形 ABC の内部に点 P がある.AP, BP, CP が三角形 ABC の外接円 Γ と再び
交わる点をそれぞれ K, L, M とおく.点 C における Γ の接線と直線 AB の交点を S
とおく.SC = SP のとき M K = M L を証明せよ.
IMO 2011 P1
四つの相異なる正の整数からなる集合 A = {a1 , a2 , a3 , a4 } に対して SA = a1 + a2 +
a3 + a4 とする.また,ai + aj が SA を割り切るような 1 ≤ i < j ≤ 4 なる (i, j) の組
の個数を pA とおく.pA が最大となるような集合 A を全て求めよ.
IMO 2011 P4
てんびんと,重さがそれぞれ 20 , 21 , · · · , 2n−1 であるような n 個のおもりがある.こ
れらのおもりを1つずつ「右の皿に乗っているおもりの重さの和が左の皿に乗ってい
るおもりの重さの和より大きくなることはない」という条件を常に満たすように n 個
順々に乗せていく.このようにおもりを乗せる方法は何通りあるか求めよ.
13
IMO 2011 P5
定義域が整数全体で正の整数値をとる関数 f がある.任意の整数 m, n に対して
f (m) − f (n) が f (m − n) で割り切れるとする.このとき,任意の整数 m, n に対して
f (m) ≤ f (n) ならば f (n) が f (m) で割り切れることを証明せよ.
IMO 2012 P1
三角形 ABC において J を ̸ A 内の傍心とする.また,傍接円と直線 BC, AB, AC
の接点をそれぞれ M, K, L とおく.LM と BJ の交点を F ,KM と CJ の交点を G
とおく.また,AF と BC の交点を S ,AG と BC の交点を T とおく.このとき M
が線分 ST の中点であることを証明せよ.
IMO 2012 P4
整数全体の集合で定義され整数値を取る関数 f がある.a + b + c = 0 を満たす任意の
整数 a, b, c に対して,
f (a)2 + f (b)2 + f (c)2 = 2f (a)f (b) + 2f (b)f (c) + 2f (c)f (a)
が成立するような f を全て求めよ.
IMO 2013 P4
鋭角三角形 ABC の垂心を H とする.辺 BC 上に W がある.また,M を B から
AC に下ろした垂線の足,N を C から AB に下ろした垂線の足とする.ω1 を三角形
BW N の外接円とし,W X が ω1 の直径となるような点を X とする.同様に ω2 を三
角形 CW M の外接円とし,W Y が ω2 の直径となるような点を Y とする.このとき,
X, Y, H が同一直線上にあることを証明せよ.
IMO 2014 P1
各項が正の整数で狭義単調増加な無限列 a0 , a1 , a2 , · · · がある.このとき,以下の不等
式を満たす正の整数 n がただ一つ存在することを証明せよ:
an <
a0 + a1 + · · · + an
≤ an+1
n
14
3 SLP 問題
SLP 1988 P3
三角形 ABC の外接円を Γ とおく.角 A の二等分線と Γ の A 以外の交点を A′ とお
く.同様に角 B, C の二等分線と Γ の B, C 以外の交点を B ′ , C ′ とおく.このとき三
角形 A′ B ′ C ′ の面積は三角形 ABC の面積以上であることを証明せよ.
SLP 1995 A4
a, b, c を定数とするとき,以下の方程式を満たす実数 x, y, z を全て求めよ:
x+y+z =a+b+c
4xyz = a2 x + b2 y + c2 z + abc
SLP 1998 A3
xyz = 1 を満たす任意の正の実数 x, y, z に対して以下の不等式が成立することを証明
せよ:
x3
y3
z3
3
+
+
≥
(1 + y)(1 + z) (1 + z)(1 + x) (1 + x)(1 + y)
4
SLP 2005 G1
AB + BC = 3AC なる三角形 ABC において,内心を I ,内接円と AB, BC の接点を
それぞれ D, E とおく.D, E と I に関して対称な点をそれぞれ K, L とする.このと
き A, C, K, L が同一円周上にあることを証明せよ.
SLP 2006 N5
x7 − 1
= y 5 − 1 を満たす整数の組 (x, y) を全て求めよ.
x−1
SLP 2009 A2
a+b+c =
1 1 1
+ + を満たす任意の正の実数 a, b, c に対して以下の不等式が成立
a
b
c
することを証明せよ:
1
1
3
1
+
+
≤
2
2
2
(2a + b + c)
(a + 2b + c)
(a + b + 2c)
16
15
SLP 2010 A2
a + b + c + d = 6, a2 + b2 + c2 + d2 = 12 を満たす任意の実数 a, b, c, d に対して以下
の不等式が成立することを証明せよ:
36 ≤ 4(a3 + b3 + c3 + d3 ) − (a4 + b4 + c4 + d4 ) ≤ 48
SLP 2010 G1
鋭角三角形 ABC において,A, B, C から対辺に下ろした垂線の足を D, E, F とおく.
EF と三角形 ABC の外接円の交点のうちの片方を P とおく.また,BP と DF の交
点を Q とおく.このとき AP = AQ を証明せよ.
4 APMO 問題
APMO 1994 P2
三角形 ABC において外心を O ,垂心を H ,外接円の半径を R とするとき,OH < 3R
を証明せよ.
APMO 1997 P1
S = 1+
1
1+
1
3
+
1
1+
項目の分母は Ti =
1
3
+
1
6
+···+
i(i + 1)
として
2
1+
k
∑ 1
i=1
1
3
Ti
1
+ ··· +
1
1993006
とする.ただし,S の第 k
であり,S は 1996 項からなる.このとき,
S > 1001 を証明せよ.
APMO 2004 P2
鋭角三角形 ABC において外心を O,垂心を H とする.このとき,三角形 AOH ,
BOH ,COH のいずれかの面積が残り二つの面積の和に等しいことを証明せよ.
APMO 2004 P5
任意の正の実数 a, b, c に対して以下の不等式が成立することを証明せよ:
(a2 + 2)(b2 + 2)(c2 + 2) ≥ 9(ab + bc + ca)
16
APMO 2005 P5
三角形 ABC において,辺 AB 上に点 M を,辺 AC 上に点 N を M B = BC = CN
となるようにとる.
MN
を R と r で表わせ.ただし,R は三角形 ABC の外接円の
BC
半径,r は内接円の半径とする.
APMO 2007 P2
AB > AC,
̸
BAC = 60◦ なる鋭角三角形 ABC の内心を I ,垂心を H とおく.この
とき 2̸ AHI = 3̸ ABC を証明せよ.
APMO 2010 P2
正の整数 m と k を用いて,mk と表される数を k 乗数と呼ぶ.任意の正の整数 n に対
して,和が 2009 乗数で積が 2010 乗数であるような n 個の相異なる正の整数が存在す
ることを証明せよ.
17
5 IMO 解答と教訓
IMO 1964 P4
17 人それぞれが他の全員と互いに手紙をやりとりしている.その手紙では三つの話題
のみがやりとりされている.そして,同じ二人組の間でなされる話題は常に同じ(一つ
の)話題である.このとき,互いに同じ話題の手紙をやりとりした三人組が存在するこ
とを証明せよ.
参考(ヒント):ラムゼーの定理 http://mathtrain.jp/ramsey
方針:グラフ理論の言葉を使って考えるとよい.ラムゼー問題の有名な定理「六人いると,
互いに知り合いである三人組か,互いに知らない三人組が存在する」を知っていると簡単.
鳩ノ巣原理を用いる.
解答:人を頂点とする完全グラフ(どの頂点間も辺で結ばれているグラフ)を考える.そし
て全ての辺を赤,青,黄の三色に塗り分けることを考える.色が各話題に対応している.こ
のとき,どのように塗っても同色三角形ができてしまうことを証明すればよい.塗り分ける
色が二色の場合は以下の補題が有名である.
補題:頂点数が 6 の完全グラフの各辺を赤か青に塗り分けると必ず青い三角形か赤い三角
形ができる.証明は補足参照.この事実を使うとともに,問題の証明に際してこの証明方法
を真似する.
さて,ある頂点に注目すると,16 本の枝が出ているので,鳩ノ巣原理により同じ色で塗ら
れている 6 本の枝が存在する.その色を赤としても一般性を失わない.その 6 本の枝で結ば
れている相手側の頂点たちの集合を V とする.
・V の要素どうしが一組でも赤で結ばれていたら赤色の三角形ができる.
・V の要素どうしが全て青か黄のいずれかで塗られているとき,V の要素数は 6 なので,上
記の補題より青か黄の三角形ができる.
いずれの場合も同色三角形ができてしまう.
教訓:
・
「頂点」と「辺」でモデル化できるときはグラフ理論の言葉で考えたほうが簡潔.思考が整
理され,解答も書きやすい.
・上記の補題は証明方法も含めて覚えておくべき.
18
補足:
・頂点数が 6 の完全グラフの各辺を赤か青に塗り分けると必ず青い三角形か赤い三角形がで
きる.
証明:ある頂点に注目すると,5 本の枝が出ているので,鳩ノ巣原理により同じ色で塗ら
れている 3 本の枝が存在する.その色を赤としても一般性を失わない.その 3 本の枝で結ば
れている相手側の頂点たちの集合を V とする.
・V の要素どうしが一組でも赤で結ばれていたら赤色の三角形ができる.
・V の要素どうしが全て青で塗られているとき,V の要素数は 3 なので,その三点によって
青色の三角形ができる.
19
IMO 1970 P4
以下の条件を満たす正の整数 n を全て求めよ:
「集合 {n, n + 1, n + 2, n + 3, n + 4, n + 5} をうまく二つの部分集合に分割して,一
方の集合の要素の積を他方の集合の要素の積と一致させることができる」
方針:実験していくと条件を満たすような n は存在しないと予想できるだろう.その証明に
は様々な方法がある.
解答:分割の方法を考えてみる.まず 1 個と 5 個に分割するときは明らかに偏るので無理そ
う.実際,任意の正の整数 n に対して n(n + 1)(n + 2)(n + 3)(n + 4) > n + 5 なので 5 個
のグループの方が要素の積が大きくなってしまう.同様に,2 個と 4 個に分割するときは,
n ≥ 2 のときは n(n + 1)(n + 2)(n + 3) > (n + 4)(n + 5) なので不適であり n = 1 でも 6!
は平方数でないので不適.
3 個と 3 個に分割するときは 10 通り全て試してもよいが,以下のように工夫すれば楽.
・n から n + 5 のうち 5 の倍数は 1 個か 2 個.1 個だと 2 個のグループのうち片方のみが 5
の倍数となり矛盾.よって n と n + 5 が 5 の倍数であり n と n + 5 は別のグループ (注1).
・n と n + 5 を別々にすると,n + 5 のグループが必ず大きくなってしまう:
n(n + 3)(n + 4) = n3 + 7n2 + 12n < n3 + 8n2 + 17n + 10 = (n + 1)(n + 2)(n + 5)
以上より,どのように分けても条件を満たすのは不可能.
別解1:n から n + 5 のうち 7 の倍数は 0 個か 1 個.1 個のみだと 2 個のグループのうち片
方のみが 7 の倍数となり矛盾 (注2).よって n − 1 と n + 6 が 7 の倍数であり,
n(n + 1)(n + 2)(n + 3)(n + 4)(n + 5) ≡ 6! ≡ −1
mod 7
なお,最後の ≡ は普通に計算してもよいし,ウィルソンの定理を知っていれば一発.
ここで,条件を満たすためには n から n + 5 までの積が平方数であることが必要だが,7
で割って 6 余る平方数は存在しない (※) ので,条件を満たすのは不可能.
※平方剰余の第一補充法則を知っていれば一発だが,7 通り確かめればよい(0 ≡ 0, 12 ≡
1, 22 ≡ 4, 32 ≡ 2, 42 ≡ 2, 52 ≡ 4, 62 ≡ 1).
別解2:条件を満たすとき,(注1),(注2) と同じ議論により,n + 1 から n + 4 までは全
て 2 か 3 以外の素因数を持たない.さらに,n + 1 から n + 4 までのうち二つは奇数でかつ
2 以上であるので 3 以外の素因数を持たず,3k (k ≥ 1) という形である.ところが,差が 2
でいずれも 3 の倍数となるような二つの整数は存在しない.
教訓:
・整数同士の大小関係に関する大雑把な感覚が重要.
・平方剰余の第一補充法則:奇素数 p に対して,
p ≡ 3 mod 4 ⇐⇒ n2 ≡ −1 mod p を満たす整数 n は存在しない.
20
IMO 1972 P1
10 個の異なる二桁の整数からなる集合がある.このとき,共通部分を持たない二つの
部分集合をうまく選べばそれらの要素の和が等しくなるようにできることを証明せよ.
参考(ヒント):鳩ノ巣原理 http://mathtrain.jp/pigeon
方針:あからさまに鳩ノ巣原理を使う問題.要素数 n の集合の部分集合は 2n 個(指数個→
たくさん)あるので和が重なってしまいそう.「共通部分を持たない」というのが関係ない
という事実に気づけるかがポイント.
解答:要素の和が等しい二つの集合 A1 , A2 が得られたとき,その共通部分を消したもの
A1 ∩ A2 ,A2 ∩ A1 も和が等しい二つの集合となる.(例えば,11 + 13 + 15 = 12 + 13 + 14
ならば 11 + 15 = 12 + 14 である.
)よって,共通部分があってもよいので,とにかく要素の
和が等しい二つの部分集合が存在することを証明すればよい.
要素数が 10 である集合の部分集合の個数は,空集合を除くと 210 − 1 = 1023 個となる.
そして,部分集合の要素の和は最小で 10,最大で 90 + 91 + · · · + 99 = 945 となるので,と
りうる値の個数は 945 − 10 + 1 = 936 通りである.よって,鳩ノ巣原理により要素の和が
等しいような二つの部分集合が存在するので題意は証明された.
教訓:
・
「うまく選べば∼∼にできることを証明せよ」という問題の多くは鳩ノ巣原理を用いる.何
を鳩に,何を巣に見立てるのか考えるのが問題の核心.
・部分集合の数はたくさん(指数個)ある.
・要素の和が等しい→共通部分を除いても要素の和が等しい.
補足:
・鳩ノ巣原理(ディリクレの原理):
n
⌉ 人以上いるグループが少なくとも一つは存在する(⌈x⌉
m
n
は x 以上の最小の整数を表す).特に本問のように,⌈ ⌉ = 2 となるような例が多い.
m
n 人を m グループに分けると ⌈
21
IMO の残りの問題の解答と教訓は本編で!
6 SLP 解答と教訓
本編で!
7 APMO 解答と教訓
本編で!
8 付録
8.1 記号,用語,定理
解答中で分からない記号,用語,定理が出てきたらここを参照してください.定理の証明
や背景など詳しいことはウェブサイト(http://mathtrain.jp)で解説しているのでそちらも
参照して下さい.
∑
・
f (a, b, c):
sym
f (a, b, c) + f (a, c, b) + f (b, a, c) + f (b, c, a) + f (c, a, b) + f (c, b, a) のこと.
・[a1 , a2 , a3 ] ⪰ [b1 , b2 , b3 ]:
Muirhead の不等式や Karamata の不等式を使うときに登場する記号.a1 ≥ b1 かつ
a1 + a2 ≥ b1 + b2 かつ a1 + a2 + a3 = b1 + b2 + b3 であるという意味.
・斉次式(同次式):
全ての項の次数が等しい式.
・ラグランジュの恒等式:
n
n
n
∑
∑
∑
2
2
(
ai )(
bi ) = (
ai bi )2 +
i=1
i=1
i=1
∑
(ai bj − aj bi )2
1≤i<j≤n
・Ravi 変換:
不等式証明のときによく使う a = x + y, b = y + z, c = z + x という変換.
・イェンゼンの不等式:
f (x) が上に凸な関数で a + b + c = 1 のとき,以下の不等式が成立する:
af (x) + bf (y) + cf (z) ≤ f (ax + by + cz)
22
特に a = b = c =
1
の場合が頻出.下に凸な場合は不等号が逆向き.上記は三変数の場合
3
だが一般に n 変数で成立する.
・Schur の不等式:
任意の実数 r と , x, y, z ≥ 0 に対して以下の不等式が成立する:
xr (x − y)(x − z) + y r (y − z)(y − x) + z r (z − x)(z − y) ≥ 0
23
・Muirhead の不等式:
[a1 , a2 , a3 ] ⪰ [b1 , b2 , b3 ],x, y, z ≥ 0 のとき,以下の不等式が成立する:
∑
∑
xa1 y a2 z a3 ≥
xb1 y b2 z b3
sym
sym
・並べ替え不等式:
x1 ≥ x2 ≥ · · · ≥ xn , y1 ≥ y2 ≥ · · · ≥ yn ,1, 2, · · · , n の並べ替え σ(1), σ(2), · · · , σ(n) に
対して,
n
∑
xi yi ≥
n
∑
xi yσ(i) ≥
i=1
i=1
n
∑
xi yn−i
i=1
・ヘルダーの不等式:
各変数が非負のとき,
(a31 + a32 + · · · + a3n )(b31 + b32 + · · · + b3n )(c31 + c32 + · · · + c3n )
≥ (a1 b1 c1 + a2 b2 c2 + · · · + an bn cn )3
(a41 + a42 + · · · + a4n )(b41 + b42 + · · · + b4n )(c41 + c42 + · · · + c4n )(d41 + d42 + · · · + d4n )
≥ (a1 b1 c1 d1 + a2 b2 c2 d2 + · · · + an bn cn dn )4
・累乗平均の不等式:
(
任意の非負の実数 xk たちと正の実数 p に対して f (p) =
n
1∑ p
xk
n
) p1
とおくと f (p) は単
k=1
調増加.また,p と q が異なるときに f (p) = f (q) となる条件は,全ての xi たちが等しい
こと.
・Karamata の不等式:
[a1 , a2 , · · · , an ] ⪰ [b1 , b2 , · · · , bn ] かつ f (x) が下に凸な関数のとき,
n
∑
f (ai ) ≥
i=1
n
∑
f (bi )
i=1
上に凸な関数のときは不等号が逆向き.
・三角形の内角の和における和積公式:
A + B + C = π のとき以下の関係式が成立する:
A
B
C
(sin 和積)sin A + sin B + sin C = 4 cos cos cos
2
2
2
1
(sin 積和)sin A sin B sin C = (sin 2A + sin 2B + sin 2C)
4
A
B
C
(cos 和積)cos A + cos B + cos C = 4 sin sin sin
+1
2
2
2
1
(cos 積和)cos A cos B cos C = − (cos 2A + cos 2B + cos 2C + 1)
4
24
・オイラーの不等式:
三角形 ABC の外接円の半径を R,内接円の半径を r とおくと R ≥ 2r
・外接円の半径と内接円の半径の関係:
r = 4R sin
A
B
C
sin sin
2
2
2
・Klamkin の不等式:
任意の実数 x, y, z と非負整数 n,三角形の内角 A, B, C に対して以下の不等式が成立する:
x2 + y 2 + z 2 ≥ 2(−1)n+1 (yz cos nA + zx cos nB + xy cos nC)
y
x
=
=
等号成立条件は,sin nA, sin nB, sin nC がいずれも 0 でないもとで,
sin nA
sin nB
z
である.
sin nC
・Weitzenbock の不等式:
√
三角形 ABC の面積を S とおくと,a2 + b2 + c2 ≥ 4 3S
・エルデスモーデルの定理:
三角形 ABC において,その内部の任意の点 O から各辺に下ろした垂線の足を P, Q, R と
おくとき,OA + OB + OC ≥ 2(OP + OQ + OR)
・方べきの値:
円 C と点 P がある.P を通り円 C と交わる直線 l を適当に引き,円との交点を X, Y とお
く(l が接線の場合は X = Y となる)
.このとき P X × P Y は l の取り方によらず一定であ
り(方べきの定理),その値を k 倍したものを円 C に関する P の方べきの値と呼ぶ.(ただ
し,P が C の外側にあるときは k = 1, 内側にあるときは k = −1)
・フェルマーの小定理:
p が素数,a が任意の正の整数のとき ap ≡ a mod p
特に,a が p と互いに素な正の整数のとき ap−1 ≡ 1 mod p
・位数:
xA ≡ 1 mod p となる最小の自然数 A を( mod p における)x の位数と言う.
・中国剰余定理:
ni (i = 1, 2, · · · , k) たちが互いに素なとき,k 本の連立合同式
x ≡ ai
mod ni (i = 1, 2, · · · , k)
を満たす x が 0 ≤ x < n1 n2 · · · nk の範囲にただ一つ存在する.
25
・ルジャンドルの定理:
n! に含まれる素因数 p の数は以下のように表される:
∞ ⌊
∑
n⌋
i=1
pi
=
⌊n⌋
p
+
⌊n⌋
p2
+
⌊n⌋
p3
+ ···
・平方剰余の第一補充法則:
奇素数 p に対して,
p ≡ 3 mod 4 ⇐⇒ n2 ≡ −1 mod p を満たす整数 n は存在しない.
・鳩ノ巣原理(ディリクレの原理):
n 人を m グループに分けると ⌈
n
⌉ 人以上いるグループが少なくとも一つは存在する.
m
8.2 参考文献
・Djukic, D., Jankovic, V., Matic, I., & Petrovic, N. (2006). The IMO compendium.
Springer Science+ Business Media, Incorporated.
・高校数学の美しい物語,http://mathtrain.jp
・IMO 公式ホームページ,http://www.imo-official.org/
・Art of Problem Solving,http://www.artofproblemsolving.com/
・Mathematical Excalibur http://www.math.ust.hk/excalibur/
26