平成25年度 研 究 紀 要 学び合い・高め合う子どもの育成 ~伝え合い,考えを深める活動の充実をめざして~ 平 成 26 年 3 月 秋 田 市 立 浜 田 小 学 校 「みんなが みんなで 続けられること」 校長 石川 政昭 今年度の研究の反省をまとめる時期になりました。このことは単に研究の足跡を振り返 るにとどまらず、既に来年度へ向けての第一歩を踏み出していることになります。 1 目線をそろえる 年 度 初 め に 、 全 員 で 研 究の 方 向 性 を 確 認 し 、 決定 す る場 面 があ り まし た。「学 び 合い 」 を基軸にしながらも、研究教科については、昨年度の「国語」から「算数」へと変更され ました。 研究主任からなぜ「算数」なのかの意味付けと、何をどうやって進めるのか。進めた結 果子どもたちにどのような力の定着が期待できるのかという提案がありました。子どもの 現状からスタートし、全員で言葉遊びではなく、具体的に何をどうやるのかについて確認 でき た こ と は 大 事 な こ と でし た 。 し か し 、 欲 を 言え ば、「子 ど もの 現 状」 に つい て 、も う 少し客観的な分析が必要だったと思っています。 2 子どもの姿に始まり子どもの姿にかえる 研究のための研究であってはならないことは今さら言うまでもないことです。実践した 結果が子どもにどう反映されているのか。その小さな積み重ねが大事です。日々の営みが 子どもの姿をどう変えてきているのか子どもの姿からはなれない研究(実践)の取組をし てきました。 3 進化する 全員が少なくとも1回は算数科の授業を行いました。計画訪問を含めて4回の授業研究 会を行いましたが、回を重ねるごとに間口の広かった研究が少しずつ整理されてきたよう に思いました。併せて、それぞれの研究会で「明日からの授業に生かせるもの」を議論し、 具体的なアクションにつなげられたのが良かったと思います。 4 楽をして実をとる 一 人 一 人が 思 い を も ち 学 校 全 体 とし て 研究 を 進め て いく た めに は、「み ん なが で きる も ので あ るこ と」「継 続 して で きる も ので あ るこ と」「『 実 をあ げて も疲れ がた まる 一方で は やれる人しかやらない』そんなやり方ではないものであること」という点を配慮していく ことが大事だと思います。なすべきことは、できるだけシンプルに、ただし、やるべきこ とは全員がもれなく続ける。当たり前のことですが、日々、地道にやることだと思います。 1年間を通して、子どもはプラスに変わってきていると主観的に思っています。子ども 自身もそして、職員もそのことについては実感できていると思ます。まだまだ一人一人そ して 集 団 と し て 鍛 え る べ きと こ ろ は 多 々 あ る 子 ども た ちで す が、「 良 さを の ばす 」 の精 神 で「日々の足音が肥やしになる」の思いで、全職員で「あと一歩」を踏み出せるよう努め ていきたいと思っておりますので、各方面からのご指導・ご助言をよろしくお願いいたし ます。 < 「みんなが みんなで 第Ⅰ章 研究の概要 第Ⅱ章 各学年の実践 目 次 続けられること」 校 長 石 川 政 昭 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ○ 5 年生 「 小 数 の わ り 算 」 の実 践 ○6年生 「円の面積」の実践 ○1年生 「10よりおおきいかず」の実践 ○4年生 「面積」の実践 ○2年生 「かけ算九九づくり」の実践 ○3年生 「かけ算のひっ算(1)」の実践 1 ・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 ・・・・・・・・・・ 15 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 ・・・・・・・・・・・・ 28 ・・・・・・・・・・ 35 ・・・・・・・・・・・・ 41 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44 第Ⅲ章 基礎基本の充実のための取り組み 第Ⅳ章 研究のまとめ あとがき > 教 頭 榎 実 和 子 第Ⅰ章 研究の概要 学校教育目標 1 「かしこく ゆたかに たくましく」 研究主題 学び合い・高め合う子どもの育成 ~伝え合い,考えを深める活動の充実を通して~ 2 主題設定の理由 本校では,学校教育目標に「かしこく ゆたかに たくましく」を掲げている。 「かしこく」では,自分の力で課題を追究し,新しくできるようになったことに喜び を感じるとともに,体得したものを生活の場で使うことができる子どもの育成を目指し ている。 「ゆたかに」では,他人を思いやり,美しいものに感動する素直な子どもの育成を目 指している。 「たくましく」では,あきらめずに物事に粘り強く取り組み,自分をよりよくしよう とする子どもの育成を目指している。 学校教育目標の実現のために,子どもたちは日々の学習活動において,課題を主体的 に追究するとともに,自分の考えをもちながら友達と学び合うことによって自分自身を さらに高いところへと引き上げていこうとする意欲をもつことが必要となってくる。 本校では平成21年度から昨年度まで国語科を中心に研究に取り組んできた。これま での取組を通し, ○子どもたちは課題に対して多様な考えをもち,文章や発表などによって表出できるよ うになってきた。 ○説明文や物語文の学習では,文章を基に根拠を明らかにしながら自分の考えを説明で きるようになってきた。 一方,話合いの場面では,各人の経験や思いから発する主観的な考えの発表に終始す ることが多く,文中に根拠を求め,共通の土台に立って考えを説明し合い,互いの考え を深めていくことには課題があるものと捉えている。 このような実態を踏まえ,学習課題を一つに焦点化して話し合う算数科の授業では, 比較的,子どもが意見を出し合いよりよい解決に向けて学び合う姿が見られる。一つの 答えを求めて共通した問題に取り組み,問題意識を集中する中で,子どもたちは積極的 に対話をし学び合っている。国語科では多様な考えの許容される範囲が広い。これに対 して,算数科では答えを一つにするために課題や考え,方法等を絞り込む必要があるた め,何を考え何をしたらよいのかを子どもたちが明確に把握し,力を注ぐからであろう。 そこで,今年度は算数科の焦点化の手法を手がかりに,伝え合い,考えを深めながら 学び合う力を子どもたちへ付ける取組を進めたいと考える。また,算数科の話合いを成 立させるためには,言葉,数,式,図,表,グラフなど様々な方法を用いて考えを適切 に説明し表現することが大切になる。これは,学習状況調査などから明らかになった本 校の課題克服への対応にもつながっている。 -1- 3 めざす子どもの姿 ○ 課題を的確に読み解き,自分の考えをもつことができる子ども ○ 既習事項や算数の用語等を適切に用いて,自分の考えを説明することができる 子ども ○ 4 友達の考えとの相違点に気付き,自分の考えを深めることができる子ども 研究仮説 課題に対する自分の考えをもち意見交換をしたり,根拠を明らかにして自分の考え を説明したり話し合ったりするなどの学び合う場を授業の中で意図的に設定し,継続 した取組をすることにより,研究主題のめざす子どもの姿に迫ることができるであろ う。 5 研究の重点 (1)学び合い,考えを深めるための授業づくり ①問題意識をもち,意欲的に解決しようとする課題の設定 ・子どもが必要感をもって取り組める課題づくり ・問題解決の見通しがもてる場の設定 ②言葉,数,式,図,表,グラフなどを用いて考えを説明する力の育成 ・解決の見通しがもてるような既習事項の活用や提示 ・算数の用語が利用しやすい学習環境の構成 ③考えが深まるような話合いの場の設定 ・深め合う場面での話合い活動の設定 ・ペアや少人数での話合い活動 ・考えを分類,整理,関連付けさせる場の構成 (2)学びを充実させるための基礎・基本の定着 ①習熟を図るための朝の時間の活用 ・パワーアッププリントの実施 ・チャレンジテストの実施 ・全校漢字力・計算力テストの実施 ②家庭学習の習慣化を図るための取組 ・家庭学習の手引きの活用 ・家庭学習の継続的指導 ③言語活動の充実 ・言葉のコーナーの設置 ・音読集会(今月の詩の暗唱)の実施 ・読書の推進 6 研究推進の実際 (1)授業研究部 テーマ 学び合い,考えを深めるための授業づくり <共通実践事項> ①問題意識をもち,意欲的に解決しようとする課題の設定 ②言葉,数,式,図,表,グラフなどを用いて考えを説明する力の育成 -2- ③考えが深まるような話合いの場の設定 ※算数ノートの作り方指導,学習スキルの定着は継続的に実施 (2)基礎・基本部 テーマ 学びを充実させるための基礎・基本の定着 <共通実践事項> ①習熟を図るための朝の時間の活用 ②家庭学習の習慣化を図るための取組 ③言語活動の充実 7 検証方法 (1)児童アンケート ・実施予定 5月,12月 (2)秋田県学習状況調査 (3)秋田県単元評価問題(算数) 8 研究組織 校長 教頭 研究推進委員会 全体研修会 授業研究部 ◎齊藤・教頭・徳原・加藤 基礎・基本部 ◎池田・校長・東海林・佐々木 ①問題意識をもち,意欲的に解決しよ うとする課題の設定 ②言葉,数,式,図,表,グラフなど を用いて考えを説明する力の育成 ③考えが深まるような話合いの場の設 定 ※算数ノートの作り方指導,学習スキ ルの定着は継続的に実施 ①習熟を図る朝の時間の活用 ②家庭学習の習慣化を図るための 取組 ③言語活動の充実 各教科・領域 各指導部 -3- 学団部・学年部 第Ⅱ章 各学年の実践 5年生の実践 単元名「小数のわり算」 指導者 東海林祐佳 1 学習指導案 (1)単元名 小数のわり算 (2)単元の目標 ○小数の除法の計算の仕方を整数の計算と関連づけて考えようとする。(関心・意欲・態度) ○小数の除法計算の仕方を数直線や図,式などを用いて考えることができる。(数学的な考え 方) ○百分の一の位までの小数の除法計算ができる。(技能) ○小数の除法について整数の場合と同じ関係や法則が成り立つことを理解し,小数の除法にお ける余りの大きさについて理解することができる。(知識・理解) (3)単元の展開にあたって ① 子どもの実態(男子7名,女子10名,計17名) 明るく活動的で,進んで発表しようとする子どもが多い。友達の意見に真剣に耳を傾け, 自分の考えと比較しながら聞こうとする姿も見られる。話合いへの意欲も高いが,自分の考 えをなかなかもてずに,話合いに進んで参加できない子どももいる。 本単元に入るにあたってのレディネステストの結果は以下の通りであった。(正答率) 1.□にあてはまる数を書きましょう。 (1)360÷30=36÷□ (94%) (2)680÷40=□÷4 (100%) 2 . 計 算 を し ま し ょ う。( 3 ) と ( 4 ) は 商 を 一 の 位 ま で 求め て ,あ まり も 出し ま し ょう。 (1)4)9.6 (2)27)97.2 (3)5)26.8 (4)13)58.2 (94%) (76%) (29%) (29%) 3.しょうゆが7.2Lあります。9本のびんに等分すると,1本分は何Lになりま すか。 式 (100%) 答え(88%) 4.赤のテープは4m,青のテープは6mです。青のテープの長さは,赤のテープの 長さの何倍ですか。 式 (64%) 答え(58%) 1の計算のきまりを活用して何百何十÷何十の計算の仕方を考える問題はほぼできてい た。2の小数÷整数の計算については,誤答が多かった。特に,商を一の位まで求める問題 で,条件通りにせずに十分の一のくらいまでわり進めたり,あまりの小数点を忘れたりする まちがいが多かった。文章題については,3の「等分する」問題については正しく立式でき ているが,4の「小数倍の問題解決」については,4÷6とする誤りが多かった。 算数アンケート(H25.6.3 実施) 質 問 項 目 1.学校で勉強するのは楽しい 2.算数が好きだ 3.算数は分かりやすい 4.算数は生活に役立つ 5. 友達と話し合って解き方を考えるのは楽しい 6.問題の解き方をたいてい説明できる 7.算数が分かりにくいと思うことがある -4- そう思う 10 人 4 7 15 14 2 0 ややそう思う 5 人 9 9 2 3 9 3 あまり思わない 2 人 2 1 0 0 5 4 全く思わない 0 人 2 0 0 0 1 10 算数についてのアンケートの結果によると,全員が「算数は生活に役立つ」と考えており, 「算数は分かりやすい」「算数が好きだ」という設問に対して,「そう思う・ややそう思う」 と答えている子どもも多い。また,「友達と話し合って解き方を考えるのは楽しい」につい て「そう思う・ややそう思う」と答えた子どもが17人全員なのに対して,「問題の解き方 をたいてい説明できる」と答えた子どもは「ややそう思う」をいれても11人とやや少ない。 この結果から,子どもたちは算数の学習の中で友達の考えを聞きながら自分の考えを深めて いくことに楽しさを感じているが,自分の考えを説明することに自信のない子どもがおり, その子どもたちが算数に苦手意識をもっていることが分かった。 ② 単元について 前学年までに,整数どうしの四則計算についてひととおり学習し,小数×整数,小数÷整 数について,学習してきている。また5年生の第2単元「小数のかけ算」で,乗数が小数の 場合の乗法についても学習している。 本単元では,除数が小数の場合の意味を学習し,その計算方法を理解させることが大きな ねらいとなる。除数が整数である場合には等分除でとらえてきた除法の意味を,等分するこ とだけでなく「1つ分の大きさ」を求めることにまで拡張していく。場面を数直線に表した り言葉の式を用いたりしながら数量の関係をとらえ,除法によって1にあたる大きさを求め ることができると理解させることが大切である。また,計算の仕方については,言葉,数, 式,図,数直線を用いて根拠を明確にしながら,小数の乗法で用いた考え方や除法の性質な どと関係づけて,既習の整数の除法に帰着させて考えさせていく。 さらに,倍とは,一方の大きさを1と見たときの他方の大きさであるという見方について 改めて確認し,立式の根拠を言葉や数直線で表現する活動を重視する。それによって,割合 の学習の素地づくりをすることもねらいとしている。 ③ 指導にあたって 小数でわる意味をしっかりとらえることができるように,整数におきかえて考えたり,言 葉の式や図を用いたりして,立式の根拠を説明させたい。計算の仕方についても,小数の乗 法でも用いた数直線を使って 0.1 の何個分かで考えたり,「被除数と除数に同じ数をかけて も商は変わらない」という計算のきまりを活用したりして,既習の整数の除法にすることで 商を求められることに気付かせたい。小数の乗法での学習や前時までの学習をもとに自力解 決していけるように,手がかりとなる既習事項を掲示していくようにする。 また,友達の考えを聞いて発見したことや理解したことを,自分の言葉で説明する場を設 定する。それによって,学習内容の理解が深まるようにするとともに,説明するためのスキ ルを獲得させ,自信をもたせていきたい。 小数÷小数のあまりについては,小数点の位置を被除数の移動した後の小数点にそろえて うつ誤りが多くなることが予想される。それについても図や式,言葉などで考え,根拠を明 らかにすることで,小数点の機械的な操作だけでなく,意味をとらえた上での理解になるよ うにしたい。 1)個に応じた支援のために ・事前テストによりレディネスを正確にとらえる。補充の必要な内容は,事前指導したり 単元の導入段階で復習させたりする。 ・自 力 解 決 の 際 の 手 助 け と な る よ う に , 小 数 の か け 算 の 学 習 で 用 い た 図 や 数 直 線 な ど , 既習の学習内容を掲示する。 ・ノートの振り返りから,理解度を把握し,支援計画を立てる。 2)効果的な学び合いにするために ・一人一人が自分の考えをもつことができるように,全体で見通しをもってから自力解決 の時間をもつ。また必要に応じてヒントカードを準備する。 ・自力解決の後にペアや小グループでの交流の時間をなるべくもち,説明に自信のない子 どもの力を育てるようにする。 ・説明の手助けとなる言葉カードを掲示したり,個別にもたせたりする。 -5- (4)全体計画(全13時間) 時数 主 な 活 動 1 ・整数÷小数になる問題について, 問題場面を把握し,立式する。 ・整数÷小数の計算の仕方を考え る。 ・整数÷小数の計算の仕方について 話し合う。 2 ・小数÷小数の除法計算の仕方を考 える。 ・小数÷小数の計算の仕方について 話し合う。 3 ・ 4 ・被除数が百分の一の位の小数÷小 数の計算の仕方を考える。 ・商の一の位が0になる小数÷小数 の計算の仕方を考える。 5 ・除数が百分の一の位までの小数÷ 小数の計算の仕方を考える。 ・筆算の仕方をまとめる。 6 ・十分の一の位までの小数÷百分の 一の位までの小数の計算の仕方を 考える。 ・整数÷小数の場合を考える。 7 ・商を四捨五入して概数で求める計 算の仕方を考える。 ・「商の四捨五入」の仕方を確認す る。 8 本 時 ・あまりを出す除法計算の仕方を考 える。 ・あまりの大きさについて図や式な どをもとに説明する。 ・あまりの小数点の位置について確 かめる。 9 ・商の大きさと除数の関係を調べ る。 ・結果についてまとめる。 10 11 12 13 指導上の留意点 ・言葉の式や,代金の見積も りから式を予想させる。 ・数直線から,数量の関係を とらえさせる。 評価規準 ・除数が小数の場合 の除法の意味につ いて理解している。 (知識・理解) ・前時の学習をもとに,数直 線から問題場面をとらえさ せる。 ・小数÷小数の計算 について,既習の 計算の仕方をもと にして考えている。 (数学的な考え方) ・百分の一の位まで の小数の除法の計 算ができる。 (技能) ・被除数の桁を確認して,前 時までの計算との違いに気 付かせる。 ・簡単な整数に置き換えて計 算の見積もりをし,商の小 数点の位置の見通しをもた せておく。 ・除数の何の位の小数になっ たかを確認し,商の見積も りをしてから計算するよう に助言する。 ・十倍,百倍という見方から, 小数点の移動桁数に着目す る見方を引き出す。 ・商の見積もりをしてから計 算するように助言する。 ・除数を整数化するために何 倍する必要があるかを確か め,被除数も同じだけ倍に することを確認する。 ・どこまでもわり切れない場 合があることを知らせ,概 数で商を求める方法を確か める。 ・概数で商を求めるときには あまりは求めないことを確 認する。 ・問題文から,商を一の位ま で求めること,あまりも求 めることをしっかりおさえ る。 ・図や式などから,あまりの 大きさを考えるように助言 する。 ・1より小さい小数でわる場 面をイメージできるように, 数直線で問題場面を表す。 ・除数が百分の一の 位までの筆算の仕 方を理解している。 (知識・理解) ・既習の計算の仕方 をもとにして,わ り進める仕方や小 数点のつけ方を考 えている。 (数学的な考え方) ・商を四捨五入して 概数で求める計算 ができる。(技能) ・小数の除法のあま りの大きさについ て理解している。 (知識・理解) ・わり算では,1よ り小さい除数でわ ると,商は被除数 より大きくなるこ とを理解している。 (知識・理解) ・比較量,基準量が小数の場合の倍 ・何を1と見るかを確かめる。 ・倍を求める計算も の求め方を図を用いて考える。 ・「 あ が い の い く つ 分 か 」 と 整数の除法と同じ ・もとにする量×倍で,答えの確か とらえて,あ÷いとなるこ ように計算できる。 めをする。 とをおさえる。 (技能) ・倍を表す数が小数の場合の,比較 ・わかっている量とわからな ・基準量や比較量と 量,基準量の求め方を図を用いて い量を整理し,数直線に表 何倍かからの求め 考える。 して考えさせる。 方について,整数 ・簡単な整数に置き換えて考 の除法と同じよう えるよう助言する。 に考えている。 (数学的な考え方) ・単元の学習を振り返り,まとめる。 ・商の見積もりが習慣化する ・学習内容を用いて ・練習問題を解く。 ように声かけをする。 問を解決すること ・文章題は数直線に表したり ができる。(技能) 問題にアンダーラインを引 いてから立式するよう助言 する。 -6- (5)本時の実際(8/13) ①ねらい 小数の除法で,あまりの大きさをとらえ,あまりの求め方を理解することができる。 (知識・理解) ②学習過程 学 習 活 動 つ か む 1 ◇発問 問題場面を把握して,立式する。 2.3 m の テ ー プ を 0.5 m ず つ 切 っ て いくと,0.5 mのテープは何本できて, 何mあまるでしょうか。 2 本時のめあてを確認する。 学びを支えるための支援 評価(方法) ○何を求めるのかをしっかり把握できるよう,問 題文の中の分かっていることと聞かれているこ とにアンダーラインを引く。 ○「何本できて」と聞かれていることから,一の 位までしか商は求めなくていいことをおさえ る。 ○前時までのようにわり進めるのではなく,あま りも求めることを確認し,めあてを提示する。 めあて 小数のわり算のあまりの求め方を 考えよう。 ○筆算で計算させ,あまりの大きさにおかしな点 があることから課題へとつなげる。 ◇正しいあまりの求め方を考えよう。 取 り 組 む 3 あまりの求め方を考える。 〈予想される方法〉 ・mをcmに直して計算する。 ・図に表す。 ・ 10 倍 し て 整 数 に 直 し て 計 算 し , 10 分の1に戻す。 ・たしかめ算をする。 ・あまりの3は何が3つあるのか考え る。 ○小数点の操作だけにならないように,なぜそう なるのか理由を説明するように促す。 ○一つの方法でできた子どもには,別の方法でも 考えるように勧める。 ○自力解決に自信のない子どものために,ヒント カードを準備する。 深 め る 4 考えを発表し合う。 ○ 「 単 位 を m か ら c m に 直 し て 」「 図 を 使 っ て 」 などのように,もとにした考えを言うようにさ せる。 ○理解を深めるために,友達の考えを説明してみ る場を設ける。 ま と め る 5 あまりの求め方の約束を確かめる。 ○他の計算にも適用できるように,筆算にもどっ てあまりの大きさを確かめる。 ・図や式をもとに,あまりの大きさをとら えている。(ノート) 小数のわり算では,あまりの小数点 は,わられる数のもとの小数点にそろ えてうつ。 6 適用問題を解く。 ○本時のねらいに到達できたかを確かめるため に,筆算のあまりに小数点を正しくうつ問題を 準備する。 ・筆算のあまりに小数点を正しくうつこと ができる。(適用問題) 7 本時の振り返りをする。 -7- 2 展開の実際 (1)問題解決の見通しがもてる場の設定 一人一人が自力解決できるように,問 題の場面をしっかりとらえさせることが 大切であると考えた。そこで,具体物で あるテープを準備して,実際にどんなこ とをしようとしている場面なのかを実感 できるようにした。 ま た ,「 何 本 で き て 」 → 「 答 え は 整 数 でなくてはいけない」,「何mあまる」→ 具体物を提示し問題場面をイメージさせる 「あまりも求めなければならない」という, 立式して計算していく時に注意しなければ ならない点についても,自力解決の前に全 体でおさえておいた。前学年で学習した類 似の計算も提示して,計算方法を想起させ た。 具体物の操作をすることによって,2.3 m 問題の中から注意すべき点をピックアップ や 0.5 mの実際の長さをとらえることができ,自力解決が困難な子どもも,問題場 面を理解して立式することができていた。筆算で計算する際にも,前時までと違って, わり進まずに一の位までだけ計算するということに気をつけていた。 (2)自分の考えを説明する手助けとなるような支援 筆算で計算してみると,あまりが3になり, 「それではもともとのテープの長さより長 く な り , お か し い 。」 と 気 付 く 意 見 が 出 た 。 そこで,正しいあまりはいくつなのか筆算以 外の方法で求めてみることをめあてとして自 力解決に取り組んだ。単に小数点の操作だけ の説明にならないように,これまでの学習で, 計算の 意味を説明 した図など を掲示した。 解決のヒントになるように前時までの学習を掲示 また,自力解決が困難な子どもには,テープ図を途中まで書いたものを,ヒントカ ードとして渡した。 説明 の手段とし て,①mを cmに直して計算する,②図に表す,③ 10 倍して整数 に直して計算し,10 分の1に戻す,④たしかめ算をする,⑤あまりの3は 0.1 が3つ であることを示す,などの方法を予想した。子どもからは,①,②,③,④の考え方 が出された。 (3)考えが深まるような話合いの場の設定 多様な考え方を知ることで理解を深めることができるように,期間指導の際には座 席表にどんな方法で考えているかを記録して,意図的な指名をした。 -8- まず,視覚的にイメージをとらえやすいテー プ図を使った説明から始めた。図を見ると,あ まりがどれだけの長さなのかが分かりやすいと いう感想が多かった。次に,長さの単位をcm に直して求めた方法,たしかめ算で求めた方法 の順に発表させた。 発表の際には,友達の考えを聞くことで自分 の考えも深めていけるように,一方通行の発表 テープ図を使って分かりやすく説明 に な ら な い こ と を 心 が け た 。「 説 明 を 聞 い て よ か っ た と こ ろ は 。」 と か ,「 分 か り に く い と こ ろはなかったか。」などと教師が問いかけたり, 「私の説明はどうでしたか。」と発表者本人が 問いかけたりすることで,発表に対しての感想 や意見を述べさせるようにした。また同じ考え 方をしていた子どもや説明を聞いて納得した子 どもに補足説明をさせるなどした。そうするこ 適用問題で本時の学習の定着度を 確かめる とで,一つ一つの発表について疑問点を曖昧にせず,より理解を深めることができた。 また,様々な方法を総合し,あまりの求め方について確かめた後,最後に適用問題 を実施して,学んだことの定着を図った。 3 考察 (1)個の実態に応じた教具の準備 ・問題の文章から題意を読み取ったり,抽象的に考える力をつけていきたいという思い があり,高学年で問題の意味を理解させるために具体物を提示することに迷いがあっ たが,テープの実物を準備したことは効果的であった。文章からだけでは問題場面を 理 解で き ない 子 ども にと って は, 大きな 助け にな った。 また ,2.3 mや 0.5 m の量 感 を実感させる意味でもよかったと思う。さらに,立式までの段階だけではなく,実際 に切る操作まで行って,計算で出た答えを実測で証明してみれば,もっと効果的だっ たのではないか。高学年といっても,まだまだ実際の操作活動が必要な段階の子ども もいる。様々な子どもに対応できる準備の大切さを強く感じた。 (2)説明の仕方を身に付けること ・既習事項や,本時に至る過程で子どもが考えを説明したカードを掲示することで, 「数 直 線で 考 える 」「 図に 表 す」「 ○ 倍し て 考え る」「た しかめ 算を する 」な どの様 々な 解 決の手立てを獲得することができてきた。しかし,それを他の人にも説明するとなる と ,「 ど う 言 っ た ら い い の か分 か ら な い 」 と自 信 をも て ない 子 ども が まだ 多 い。 日 々 の授業の中でよいモデルを示し,それを繰り返し言葉にしていくことで,確かな力を つけていかなければならないと思う。 (3)観点を明らかにした話合いへ ・話合いの場面で,友達の考えに対して自分の考えを述べたり,自分や他の友達の考え と比較して感想を言ったりすることができるようになってきた。意見をつなげて建設 的に考えていくような話合いが,全体の場だけでなくグループの話合いでもできるよ う に , 観 点を 明 確に し た話 合 いの ト レー ニ ング を 積み 重 ねて い きた い 。 -9- 6年生の実践 単元名「円の面積」 指導者 1 学習指導案 (1)単元名 齊藤 亨 円の面積 (2)単元の目標 ○ 方眼の数を数えたり,円を分割して変形したりして,円のおよその面積を求めようとする。 (関心・意欲・態度) ○ 円の面積の求め方を,図や式などを用いて考えることができる。 (数学的な考え方) ○ 円の面積を公式を用いて求めることができる。また,身のまわりにある形について,その概形 をとらえ,およその面積などを求めることができる。 (技能) ○ 必要な部分の長さを用いることで,円の面積は計算によって求めることができることを理解し ている。 (知識・理解) (3)単元の展開にあたって ①子どもの実態(男子5名,女子9名,計14名) 学習に真剣な態度で取り組み,人の話をよく聞く子どもが多い。学習課題の解決に向けて粘 り強く取り組み,自分の考えをノートにまとめることもよくできる。その一方,自分の考えを 積極的に友達に紹介したり,友達の話を受けて自分の考えを述べたりすることに抵抗を感じて いる子どもも見られる。 算数アンケートでは,「算数が好きだ」「算数は分かりやすい」「算数は生活に役立つ」の3 つの設問において全員が「そう思う・ややそう思う」と回答をしており,算数の学習に対して 肯定的であることが伺える。しかし,「問題の解き方をたいてい説明できる」では,「あまり 思わない・まったく思わない」と回答した子どもが36%と多くなっている。自由記述からは 自分の考えを詳しく説明することに難しさを感じている子どもがいることを読み取ることがで きる。 ②単元について 5年生で円周率の意味,円周や直径の求め方について学習している。また,その前段階では, 正多角形と円の関係について,円の中心の周りを等分割することで正多角形が作図できること も学習している。面積については,平行四辺形や三角形の面積を,等積変形や倍積変形などに よって求めている。 本単元では,平行四辺形や三角形などの面積を求めた際に用いた既習の方法をもとに円の面 積の大きさに見通しをもち,円の面積の求め方について考えていく。円の面積の公式を導いて いく場面では,5年生の「正多角形と円」の学習で扱った,円を8等分して内接する正八角形 の面積を求める方法をもとに,円を細かく分けていくことによって円の面積に近づいていくと いう極限の方法で考えることができる。また,円の面積の公式を導いていく際には操作活動の 時間を十分にとることによって,公式が実感を伴ったものとして子どもに定着することが期待 できる。 ③指導にあたって 指導あたっては,これまで学習してきた平行四辺形や三角形の面積の求め方と同様に,円を 長方形や平行四辺形など既習の図形に変形して考えていく。円を変形して面積を求めていく活 動では,実際に円を切り開いて長方形になることを体験する活動を取り入れることで実感を伴 った理解が得られるようにする。また,円の面積の公式について考える際には,円を切り開い てできた長方形の縦の長さが円の半径で,横の長さが円周の半分にあたることを確かめること で,円の面積の公式についての理解が得られるようにする。 子どもたちが課題の解決に見通しをもち,円の面積の求め方について理解を深めることがで - 10 - きるよう,教室側面には5年生で学習した図形の面積の求め方や円周率の求め方,本単元での 学習内容などを掲示する。取り組む段階では,ペアやグループでの話合い活動を取り入れる。 話合い活動の中で友達に自分の考えを話すことにより、自分の考えを整理し,考えが深まりる ことが期待できる。 (4)全体計画(全8時間) 時数 主な活動 指導上の留意点 評価規準 ・直径20㎝の円のおよその面積 ・既習の面積の学習で,方眼の数を ・円の4分の1の部 1 の求め方を考える 数えたり,多角形を三角形に分割 分で方眼を数えた ・ ・既習事項をもとにして円のおよ したりして面積を求めたことを想 り,正八角形をか 2 その面積を求める。 起させる。 いたりして調べた ・円の面積の求め方について話し ・円周にかかっている方眼の面積は, 方法を図や式を用 合う。 1ますの半分であることをおさえ いて説明している。 る。 (数学的な考え方) ・円を8等分して並べ替え,既習 ・円の分割を細かくして並べ替えて ・半径や直径の長さ の図形と見て面積を求める。 いくと,長方形に近づいていくこ を測ることによっ ・図形の面積の公式をもとにして とに気づかせる。 て,円の面積が計 3 円の面積の公式を導き出す。 ・円を分割して並べ替えてできた図 算で求められるこ 形をもとにして,長方形の面積を とを理解している。 求める公式から円の面積を求める (知識・理解) 公式へと導いていく。 ・おうぎ形の面積の求め方を考え ・もとの円の面積を4分の1にすれ ・円の面積をもとに, る。 ばおうぎ形の面積が求められるこ おうぎ形の面積の 4 ・中心角の大きさから円を何等分 とをおさえる。 求め方を考えてい しているのかを考え,面積を求 る 。( 数 学 的 な 考 める。 え方) ・円の複合図形の面積の求め方を ・長方形や正方形の複合図形の面積 ・複合図形のどの部 5 考える。 を求めたことを想起させ,全体の 分に着目して面積 本 ・円やおうぎ形,正方形を組み合 面積から部分の面積をひけばよい を求めるとよいか 時 わせた図形の面積を求める。 ことに気づかせる。 考 え て い る 。( 数 学的な思考) ・およその面積の求め方を考える。・不定形である押し花の形を円とと ・不定形の概形をと 6 ・押し花や湖の形をおよそ円とと らえて,およその面積を計算で求 らえて,およその らえて面積を求める。 めることを確認する。 面積を求めること ができる。(技能) ・円の性質を利用した適用問題に ・羊が草を食べることができる範囲 ・円の面積の学習内 ついて考える。 が円やおうぎ形になることをとら 容を適用して問題 7 えさせる。 を解決しようとし ・草が食べられる範囲を作図するこ て い る 。( 関 心 ・ とで,円やおうぎ形の面積を求め 意欲・態度) る問題に帰着させる。 ・単元評価問題を解く。 ・既習事項とのつながりや生活への ・円の公式を用いて 8 ・単元の学習を振り返る。 活用にも目を向けさせる。 円の面積を求める ことができる。 (技能) - 11 - (5)本時の実際(5/8) ①ねらい 円の複合図形の面積の求め方を考えることができる。(数学的な思考) ②学習過程 学 つ 1 か む 習 活 動 ◇発問 問題を把握する。 下のような図形の色を付けた部分の 面積は何㎝2ですか。 取 り 組 む 深 め 2 る 本時のめあてを確認する。 学びを支えるための支援 評価(方法) ○問題の図形が円の他に,どのような図形が組み 合わさっているのか確認する。 ○それぞれがどのように組み合わさっているのか を話し合い,問題の解決に見通しをもつことが できるようにする。 ○既習の面積の公式(正方形,三角形,円)を使 って複雑な図形の面積の求め方について考える ことを確認する。 円と他の図形を組み合わせた形の面 ま 積の求め方を考えよう。 と め ◇この図形はどのような図形が組み合わさ る れていますか。 ○色を塗る,切るなどの操作活動を通して解決の 見通しがもてるよう,画用紙に図形を印刷した 3 面積の求め方を考える。 ものを配布する。 <予想される方法> ○面積を求めていく過程を計算式だけでなく,図 ・おうぎ形から三角形を引いた面積を2 や文を用いてノートに書くよう促す。 倍する。 ○自力解決が滞っている子どものためにヒントコ 10 × 10 × 3.14 ÷ 4 = 78.5 ーナーを設置し,操作活動によって問題解決の 78.5 - 10 × 10 ÷ 2 = 28.5 糸口がつかめるようにする。 28.5 × 2 = 57 ㎝ 2 ・おうぎ形2つ分から正方形の面積を引 図形の面積の求め方を式と図,文で説明して く。 いる。(ノート) 10 × 10 × 3.14 ÷4× 2 = 157 157 - 10 × 10 = 57 ㎝ 2 ○友達の説明を式と図とを対応させながら聞き, 4 グループで考えを紹介し合う。 間違いがないか互いに確かめるよう助言する。 ○友だちと考えを交流して新しく分かったことは 5 面積の求め方を全体で確認する。 ノートにメモするよう声をかける。 複雑な形の図形の面積は,形の組み合 わせ方を考えると,これまで学習した 面積の公式を使って求めることができ ます。 6 ○複雑な形の図形の面積の求め方は、円の面積が 含まれている場合でも、今までに学習した図形 の場合と同じ考え方をすればよいことを確認す る。 本時の振り返りをする。 - 12 - 2 展開の実際 (1)活動の見通しをもつことができるようにする指導の工夫 本時では,正方形とおうぎ形が組み合わされた複合図形の求積を取り扱った。前時 におうぎ形の面積の求め方を学習しており,既習事項を活用することで問題を解くこ とができる。 複合図形の面積を求める学習では,複合図形がどのような図形の組み合わせででき ているのかを調べ,面積の求め方を見通すことが大切である。そのため,本時では問 題の複合図形を提示した後,どのような図形が組み合わされているのかじっくり見て, 考え,友達同士で情報交換をする時間を設定した。 子どもたちは前学年までに長方形や正方形,平行四辺形,三角形などを組み合わせ た複合図形について学習している。そのため,本時で提示した問題も正方形と円の一 部が組み合わされていることには気付いた子どもが多かった。しかし,面積の求め方 については見通しをもてない子どももおり,全体での情報交換によって自力解決の見 通しをもつことができた。 (2)既習事項を活用することのできる掲示の工夫 教室の側面には,5年生までに学習し た正方形や長方形,平行四辺形,三角形, ひし形,台形の面積の求め方と本単元で 学習した円とおうぎ形の面積の求め方を 掲示した。算数の学習では子どもたちが 取り組む新しい問題は既習事項を活用す ることで解決することができる。そのた め,本単元で活用することができる既習 事項を掲示することで子どもたちが問題 教室側面の掲示の様子 解決の見通しをもつことができるものと 考えた。 本時では正方形とおうぎ形の複合図形の面積を解く問題を提示した。子どもによっ ては前時に学習したおうぎ形の求積に十分に習熟していなかったため,教室内に掲示 した既習事項を確認して自力解決に取り組む様子が見られた。他の学習内容でも問題 を解く際に掲示を見てヒントを探す姿が見られることから子どもたちは問題を解く見 通しをもつために掲示を有効に活用していることがうかがえる。 (3)考えを深めることのできる話合い活動の工夫 本単元では自力解決の後に小グループでの話し合いの場を設定した。話合い活動の 中で自分の考えを友達に説明する活動を通して,自分の考えを整理し,更に深めるこ - 13 - とねらった。また,説明することによっ て,算数の用語を正しく使うことや順序 立てて論理的に話す力も身につけられる ものと考えた。 本時の学習では,自力解決の後で複合 図形の面積の求め方について話合い活動 を行った。話合いの中心は本時の問題の 複合図形をどのような図形が組み合わさ れたものと見るのかということと解き進 小グループでの話合い めていくための手順であった。話合いが 充実したものになるためには個々が自分 の考えをしっかりともつことが必要であ る。そのために,自力解決の時間を十分 に保障して,その子どもなりの結論を見 いだした上で話合い活動へと進んでいっ た。 話合い活動では,複合図形がどのよう な種類の図形が組み合わされてできてい るのかということと,問題をどのように 班でまとめた解き方を説明 解き進めていくのかということについて 各自の考えを述べていた。その後,班で考えをまとめ,発表用の小黒板に解き方を書 いて発表した。 3 考察 ・導入の段階で問題解決の見通しをもつことによって,子どもの学習意欲を引き出し, 主体的に問題解決に取り組むことができた。しかし,子どもたちの発言が問題解決の ためのヒントになる一方,発言によって自力解決の方向が限定されてしまい,多様な 考えが出にくくなることもある。 ・既習事項をまとめて教室内に掲示することは,自力解決が停滞している子どもたちに 解決のための支援となることが多かった。様々な内容の既習事項をすぐに知ることが できる環境を準備することは復習としての効果もあった。掲示はそのときに学習して いる単元だけではなく,前学年の内容も含めて学年の学習で広く活用できる内容にす ることでさらに有効な学習支援となるであろう。 ・全体では一人一人に考えを説明させることは難しいが,小グループでの話合い活動を 取り入れることにより,子どもたちに自分の考えを説明する機会を十分に保障するこ とができた。自分の考えを話す経験を重ねることにより,聞き手に自分の考えを伝え るために順序よく論理的に話すことができるようになってきた。しかし,話合いを通 して,各自の意見は一つに集約されてしまい,多様な考えが出にくくなってしまう面 がある。 - 14 - 1年生の実践 単元名「10より大きいかず」 指導者 池田尚子 1 学習指導案 (1)単元名 10より大きいかず (2)単元の目標 ○ 10ずつまとめて考えることのよさに気付き,ものの個数を数えたり表したりしよ うとする。 (関心・意欲・態度) ○ 10のまとまりと端数という単位の考えに基づいて数構成を考えたり,その数構成 をもとに簡単な10より大きい数の計算の仕方を考えることができる。 (数学的な考え方) ○ 30台までの数についてものの個数や順番を正しく数えたり表したりすることがで き る 。ま た ,数 の 構 成 を も と に 簡 単 な 1 0 よ り 大 き い 数 の 計 算 が で き る 。 ( 技 能 ) ○ 30台までの数について,数え方,よみ方,表し方,数の構成や数の大小を理解す ることができる。 (知識・理解) (3)単元の展開にあたって ①子どもの実態(男子5名,女子7名,計12名) 明るく元気がよく,進んで手を挙げて発表しようという意欲が見られる。その反 面,まだ文章をすらすら読めなかったり,聞かれていることにどう答えたらよいか 理解できず戸惑ったりする姿も見られる。話合いについては,ようやく自分の考え を発表したり,友達の考えを聞き取ったりするぐらいで,理由を明確に話したり, 自分の考えと比べながら聞いたりといった姿には至っていない。 算数アンケート結果から,たいていの子どもは算数が好きで生活に役立つと考え ている。友達と話し合って解き方を考えるのは楽しいと全員の子どもが答えている 反 面 ,「 問 題 の 解 き 方 を た い て い 説 明 で き る 」 の 問 い に 「 そ う 思 う ・ や や そ う 思 う 」 と 答 え た 子 ど も が 1 2 人 中 1 0 人 ,「 算 数 が 分 か り に く い 」 の 問 い に 至 っ て は 「 そ う 思 う 。 や や そ う 思 う 。」 が 5 人 と い う 結 果 だ っ た 。 子 ど も た ち は 算 数 の 時 間 に み んなで考えを出し合うよさを感じてはいるものの,自分の考えをどのように伝えた らよいか自信がもてない子どもや算数に対して苦手意識をもっている子どもがいる こ と が 分 か っ た 。 ま た ,「 算 数 が 分 か り に く い 」 と 答 え た 子 ど も た ち の 中 に は , プ リントや黒板に書いてあることが分からないとか,間違ったりすることがいやで, 苦手意識につながっている子どもも見られた。 ② 単元について これまでに,10までの数について,数え方,よみ方,書き方,集合数と順序数 の理解,大小,系列,加法や減法の意味と計算の仕方について学習している。 日常生活では,学級の人数,日付,金銭など,子どもが10を超える数に接する 機会は多い。そこで本単元では,数範囲をまず20まで広げ,さらに30台の数ま でを扱う。 子どもの発達段階からみて,この時期に位取りの原理を指導することはまだ,難 しいといえる。 本単元ではその前段階として,ものの数を10のまとまりをつく っ て 数 え ,「 1 0 と 3 で 1 3 」 の よ う に 「 1 0 と い く つ 」 と み た り , 更 に 「 2 0 と 4で24」とみたりするなど,2位数を10のまとまりと端数でとらえられるよう にする。また,本単元では,ものの個数を簡単な絵グラフに表し,数量を種類別に 整理しグラフに表すと,個数の多少などが見て分かりやすくなることを感じられる ように構成されている。更に,10+3,13-3のような10+1位数とその逆 の減法,15+2,18-3のような繰り上がりのない加法とその逆の減法につい ても学習する。数構成をもとに,積み木などを使って計算の仕方を考えられるよう に構成されている。 - 15 - ③ 指導にあたって ○ 問題意識をもち,意欲的に解決しようとする課題の設定 課題提示では,子どもが興味関心をもち,思わず解決したくなるような,生 活 の 中 か ら 身 近 な 題 材 を 問 題 に 取 り 入 れ て い き た い 。 ま た ,「 め ざ せ ! か ぞ え か た め い じ ん ~ ど う や っ て か ぞ え よ う か な 」を 単 元 を 貫 く テ ー マ と し て 設 定 し , 子どもたちに投げかけていくことで,興味を持続しながら学習の進め方をイメ ージできるように意識付けをしたい。 本時では,提示されたいちごの数をだれが見ても正しくぱっと分かる数え方 を 考 え る こ と で ,「 数 え 方 名 人 に 近 づ こ う ! 」 と い う 意 欲 を 喚 起 し た い 。 ○ 言葉,数,式,図,表,グラフなどを用いて考えを説明する力の育成 今まで問題解決の見通しがもてるようにブロックやおはじきに数を置き換え て操作活動をしたり,半具体物を使って自分の考えを表したりしてきている。 具体物を用いた活動を多く取り入れることによって,自分の体験を通した,イ メ ー ジ を 伴 う 理 解 に つ な が る と 考 え る 。そ の 積 み 重 ね を 言 葉 ,数 ,式 ,図 ,表 , グラフなどを用いて自分の考えを説明する力へとつなげていきたい。 本時では,いちごの数を確かめた後,数え方名人になるためにどうしたらぱ っとみて数が分かる数え方になるかを問いかけ,一人一人の子どもが考えてい く算数的活動を十分に認めていきたい。 ○ 考えが深まるような話合いの場の設定 話合いでは,主に友達の発表を聞いて自分と似ているかどうかを考え「同じ です」と反応したり,付け足しをしたり,違う考えを発表したりするパターン で行っている。教師主導のレベルの話合いではあるが,いろいろな考えにふれ ながら意見交換を繰り返す体験が自分の考えを高めたり,深めたりすることに つながると考える。 本時では,すでに答えが分かっている安心感を子ども一人一人にもたせる展 開にしている。その上で数え方名人になるため,10のまとまりにすることの よさを追求していく過程を大切にしていきたい。10のまとまりにつながる考 え方を取り上げ,どんな考え方をしたのかを教師がかかわりながら子どもたち の言葉をつなげ,10のまとまりと端数でとらえられるように,子どもたちの 思考の流れに寄り添った発問や補助発問を工夫していきたい。 ペアや少人数の話合い活動は,現在の段階では,考えを深める手立てとして の有効性が低いのが実態である。そこで,今回は自力解決で迷っている子ども に対してヒントをもらう場として,また,自力解決できた子どもにとっては説 明することでより自信がもてる場として交流タイム「分かる友達に聞きに行く タイム」を設定する。相手に分かるように説明したり,何を言っているのかを 考えながら聞いたりする機会を積み重ね,相手意識をもって説明したり,自分 の考えと比べながら聞いたりする力へとつなげていきたい。 算数アンケートの結果一覧(H25.6.3実施) 質 問 項 目 そう思う ややそう思う 1.学校で勉強するのは楽しい 11人 0人 2.算数が好きだ 11 1 3.算数は分かりやすい 10 0 4.算数は生活に役立つ 11 0 5 . 友達と話し合って解き方を考えるのは楽しい。 1 2 0 6.問題の解き方をたいてい説明できる。 9 1 7.算数が分かりにくいと思うことがある。 4 1 4について…分からないとこたえた子どもが1名 - 16 - あまり思わない 1人 0 2 0 0 0 0 全く思わない 0人 0 0 0 0 2 7 (4)全体計画(10時間) 主な学習活動 1 本 時 指導上の留意点 評価規準 ・いちごの数を数えることをと ・いちごの数はいくつくらいか予想 ・具体物の数を進んで数えたり,よんだり, おして10個より4個多いこ させ,10より大きい数があるこ 表したりしようとする。 とに気付く。 とに気付かせる。 (関心・意欲・態度) ・10と4で「じゅうよん」と ・20までの数を 積み木などを用いて表 言い,14と書くことを知る。 ・10のまとまりに注目できるよう, し,10のまとまりと端数の個数がいく 話合いの場をつくる。 つというように数え方を工夫している。 (数学的な考え方) めざせ! かぞえかためいじん! ~どうやって かぞえようかな~ 2 ・前時のまとめを振り返り10 のまとまりと端数で数えるこ とを確かめる。 ・11~20の数のよみ方,書 き方を練習する。 ・学習コーナーを活用し,前時のま ・20までの数について,数え方,よみ方, とめを確認する場を設ける。 表し方を理解している。 (知識・理解) ・ブロックと数カードを対応させて, ・20までの数について,数えたり,よん よみ方や書き方を理解させる。 だり,書いたりすることができる。 ・数を数えて書き込めるような具体 (技能) 物の絵図カードを準備する。 3 ・20までの具体物を数える。 ・11~19の数を10といく つで合成・分解することをと おして十何の数の構成を理解 する。 ・10のまとまりを作って数えるこ とを確認する場を設ける。 ・10台の数は10といくつと表す ことを繰り返し練習し理解を深め る。 ・20までの数を10といくつに合成・分 解することをとおして,数の構成を理解 している。 (知識・理解) 4 ・マグカップやボックスティッ シュの箱の数を数えることを とおして2とびや5とびで数 える方法を理解する。 ・2個のまとまりや5個のまとまり に着目させ,2とびや5とびの数 え方を繰り返し唱えさせる。 ・2個や5個のまとまりで数えるこ とのよさに気付かせる。 ・具体物をいくつずつまとめて数えること ができる。 (技能) ・20までの数について,2とびや5とび で数える仕方を理解している。 (知識・理解) 5 ・20までの数の大小を比較す る。 ・20までの数の順序数と集合 数の違いを考える。 ・ブロックなどを用いて数の構成を 確認し,ばらの数に着目するとよ いことを理解させる。 ・20までの数について,数の大小,順序 数と集合数の違いを理解している。 (知識・理解) 6 ・うさぎの進んだ位置を考える ・バッタなどがいる場所と数直線の ことをとおして,数の線につ 数を対応させることで,うさぎの いて理解する。 進んだ数がわかり,位置が表せる ・20までの数の系列を考える。 ことを理解させる。 ・数直線の上に数を表すことができる。 (技能) ・数の線の意味や20までの数の系列を理 解している。 (知識・理解) 7 ・どんぐりやノートの数を数え ることをとおして,20台, 30台のものの数の数え方や よみ方,書き方を理解する。 ・大きい数ほど10のまとまりを作 ・20台,30台の数を,10のまとまり ると数えやすいことを感得させる。 の個数と端数の個数がいくつというよう ・10のまとまりが2個や3個であ に数え方を工夫している。 っても,10台の数と同様に20 (数学的な考え方) と5で25のように表せることを ・20台,30台の数について,数え方, まとめ,よみ方,書き方を練習す よみ方,表し方を理解している。 る。 (知識・理解) 8 ・何種類かの野菜の数を絵や図 などを用いて整理して表した り,よみ取ったりする。 ・野菜の数を数えて確認した上で, ・具体物の数を進んで絵や図に整理して表 数を見やすく整理して表す方法を したり,表したものをよみ取ったり使用 考える場を設ける。 としている。 (関心・意欲・態度) ・絵グラフ等を使って整理し比べる ・絵グラフに表す際に,わかりやすいよう と数の多少が比べやすくなったり, に,そろえて並べるなど工夫している。 数量の特徴が分かりやすくなった (数学的な考え方) りすることを感得させる。 ・ものの個数を絵や図などを用いて整理し て表したり,表したものから数の大小を よみ取ったりすることができる。 (技能) 9 ・10+3,13-3のような 10+1位数とその逆の減法 計算の仕方を数の構成をもと に考える。 ・ブロックを用いて操作を確認し, ・10+1位数とその逆の減法計算の仕方 13からばらの3をひくことは, を積み木などを用いて数の構成をもとに 13を10といくつに分解する見 考えている。 (数学的な考え方) 方と同じであることに気付かせる。 ・10+1位数とその逆の減法計算ができ る。 (技能) 10 ・15+2,18-3のような 十何+1位数とその逆の減法 計算の仕方を数の構成をもと に考える。 ・17-10の計算の仕方を考 える。 ・前時の学習を想起させ10といく つの見方が生かせないかという見 通しをもたせる。 ・10のまとまりとばらにわけ,ば らどうしの加法や減法の計算をす ればよいことに気付かせる。 - 17 - ・10何+1位数とその逆の減法計算の仕 方を用いて数の構成をもとに考えている。 (数学的な考え方) ・10何+1位数とその逆の減法計算がで きる。(技能) (5) 本時の実際(1/10) ①ねらい 10より大きい数の数え方を10のまとまりに着目して考えることができ る。 (数学的な考え方) ②学習過程 学習活動 つ か む 1 ◇発問 問題場面を把握して答えの 見当をつける。 いちごはなんこあるでしょう か。 取 り 組 む 深 め ま と め る 学びを支えるための支援 評価(方法) ○今までより数が多くて数えにくいという印 象をもつような,並べ方をしたいちごの絵 カードを提示する。 ○絵カードを見て答えの見当をつけてから, いちごの数を全体で数えて確かめ,10よ り大きい数について学習をしていくことを 確認する。 2 本時のめあてを確認する。 めあて いちごのかずがぱっとみて わかるかぞえかたをかんがえ よう。 ○答えの数が合うためにも,どう数えたらは やく間違えずに数えられるかを考える学習 であることに焦点をしぼり,めあてを提示 する。 ◇14こだということがぱっと わかるかぞえかたをかんがえ ましょう。 ○今まで数を数える学習で使ってきたブロッ クの活用を促したり,直接数字や印をつけ られる絵カードを準備する。 3 10より大きい数の数え方 を考える。 <予想される方法> ・1,2,3,4…と1ずつ数 える方法 ・2,4,6…と2とびで数え る方法 ・5,10とあと4と5とびで 数える方法 ・14を10と4に分けて並べ る方法 ○一人一人の数え方を見取りながら,だれが どんな数え方をしているかをチェックシー トに記入し,指名や発言をまとめる際に活 用する。 4 ○話合いに参加する意識を高めるために,チ ェックシートを活用し,全員が発言する場 をつくる。 ○考え方の発表の紹介に終わらないように, ねらいにあった数え方はどうしたらよいか に 焦 点 を 当 て て ,1 0 の ま と ま り を つ く り , 10といくつで数えるよさに導く言葉かけ をしていく。 数え方を全体で話合う。 10のまとまりをつくって 10といくつでかぞえる。 5 ○自力解決が滞っている子どものためにヒン トコーナーを設けたり,はやくできた子ど もと交流してもよいことを告げる。 練習問題に取り組む。 10のまとまりといくつとして,数え方を 工 夫 し な が ら ,2 0 ま で の 数 を 数 え て い る 。 (練習問題) 6 本時の振り返りをする。 ○分かったことやできたことを振り返り,本 時の自分の顔マークを記入させて,次時へ の意欲を高める。 - 18 - 2 展開の実際 (1)問題意識をもち,意欲的に解決しようとする課題の設定 本時のイチゴの数については,事前に行ったレディネステストの結果を基に考え た。13個までは数えられるが,14個を過ぎると数え間違いが多く見られるよう になっていた。そこで,14個のイチゴをぱっと見て数が分かるために「どうやっ てかぞえようかな」をテーマに設定した。子どもたちは数を数えるだけでなく,ど のように数えたら分かりやすいかを考える学習であるというとらえ方をしていた。 見通しをもつ段階では,10個より大きいと答えた子どもが多かった。その上で 10個より大きい数を「ぱっと見て分かる数え方」をどう表すかを考えようとする 姿が見られた。 (2)言葉,数,式,図,表,グラフなどを用いて考えを説明する力の育成 本時では,10個より大きい数であるという見 通しをもった後,イチゴ一つ一つにブロックを一 対一対応で置く操作活動を通して14個あること を確認した。答えがはっきりしたことで,どう数 えたら14個であることを分かりやすく説明でき るかという本時のめあてに集中することができた。 学習シートも自力解決した後,発表ボードとし 発表ボードを兼ねたシート て活用できるようにA3版の大きさで作成した。 その中に自分の考えた数え方を線で囲んで表した り,言葉を書いて表したりする活動に有効であった。 (3)考えが深まるような話合いの場の設定 自力解決では,時間と子ども達の状態を見ながら 10個にイチゴを線で囲んだシート 7分程度を目安としている。本時も話合いや練習問 題の時間確保を念頭に合図を出した。まだ途中であるという子どもには,話合いに 参加しながら,自分の考えと比べていこうと呼びかけてきた。 全員ホワイトボードの前に集まったところで,1個ずつチェックした数え方,2 個ずつつなげた数え方,5個ずつまとめた数え方,10個を線で囲んだ数え方と意 図的氏名をしながら段階的にめあてに迫れるように話合いを構成した。 話合いでは,友達の発表を聞くだけで終わらせず,自分も参加していく姿勢を重 要視しており,他者説明を中心に進めた。 「○○さんはどうやって数えたのかな?」 と い う 問 い か け を す る と ,「 ぼ く は , こ う 数 え た と 思 う よ 。」 と い う 発 言 を 引 き 出 すことができた。自力解決が途中の子どもにも意図的に指名し,参加意欲を高めた。 1個ずつチェックしている数え方では,チェックすると数え忘れがなく,後でも 確かめられるよさを見取り,2個ずつや5個ずつでは,多様な数え方を活用したこ とを認め,10個を線で囲んだ数え方では「10と4で14」と分かりやすいこと - 19 - を全員で確かめ,各々のよさを共有した。 友達のシートを見ながら 他者説明に挑戦! 練習問題ができた後,友達と 数え方を交流中! さ ら に , 1 0 よ り 大 き い 数 を「 ぱ っ と 見 て 分 か り や すく 」 す る に は ,「 1 0 の ま とまりを作る」とよいことを検証するために,練習問題に取り組んだ。練習問題で は,一人一人の学びの定着を評価できるように4種類作成し,隣や同じ班の人と問 題内容が異なるように設定した。そのため,自分一人で考えて,10のまとまりを 作って数を数えることができていた。 交流タイムは,今回は自力解決後に設けないで,練習問題を解いた後に行った。 同じ問題の友達とは,自分と比べながら数え方の説明を聞き合い,異なる問題の友 達とは,相手の説明を図を見ながら聞き合う姿が見られた。 3 考察 (1)自分の考えを説明する力の育成 「つかむ-取り組む-深めまとめる」といった学習過程は子どもたちの中にも浸 透してきた。次は何をするのかという見通しをもって主体的に学習する姿が見られ るようになってきた。しかし,一単位時間に練習問題まで取り組めるようにしてい くためには,自力解決の時間が鍵となる。自分の考えを整理して表現する力を育て る た め に ,「 聞 か れ て い る こ と は 何 か 。」「 既 習 事 項 で 使 え る こ と は 何 か 。」 と い っ た読み解く力を鍛えていくことが課題である。 (2)ねらいの定着と評価方法 今回は評価となる練習問題を1問にして,4種類準備した。同じ班である4人が 異なる問題に向かうことで,ねらいがどのくらい定着できたかを評価できた。今後 もこの評価方法を取り入れていきたい。 (3)話合いを深めるための他者説明の有効性 自分の考えと比べて聞く力の育成に,他者説明を取り入れた話合い活動は有効で あった。シートに付け足された数字や印からどんな数え方をしたのかを推理する段 階 で ,「 自 分 は こ う 考 え たけ ど , ○ ○ さ んは 一 つ一 つ に数 え 忘れ が ない よ うに 印 を 付 け て 数 え た の か な。」 など , 相 手 の 考 えを 言 語化 し よう と する 活 動が 話 合い を 深 めていく手立てとなった。他者説明を聞いている,周りの子ども達も自分の考えと 比べて聞こうとする姿が多く見られた。 ただし,めあてに迫るよりよい考え方を判断するためには,判断の基準となる「は やく,かんたんに,せいかくに,わかりやすい」といった指標を示し,子どもたち に浸透させていく働きかけと積み重ねが必要である。今後,話合い活動を教師主導 から子どもたち主導にしていくために,その判断力の定着をどのように図っていく かが課題である。 - 20 - 4年生の実践 単元名「面 積」 指導者 1 佐々木 衛 学習指導案 (1)単元名 面 積 (2)単元の目標 ○ 面積を数値化して表すことのよさや,計算によって求められることの便利さに気付 き,身の回りの面積を求めるなど生活に生かそうとする。 ○ (関心・意欲・態度) 面積について,単位の大きさを決めその何個分として数値化したり,辺の長さを用 いて計算したりして求める方法を考えることができる。 (数学的な考え方) ○ 長方形,正方形の面積を,公式を用いて求めることができる。 (技能) ○ 面 積 の 意 味 や , 単 位と 測 定 の 意 味 に つ いて 理 解す る こと が でき る。(知 識 ・理 解 ) (3)単元の展開にあたって ①子どもの実態(男子3名,女子8名,計11名) 学習にまじめに取り組もうと思う子どもが増え,大切なことや,教師や友達の話 したことをしっかり覚えようと意識して授業に臨んでいる。しかし,話合いで深め 合うような活動の時には,自分の考えをもてなかったり,考えを表現できなかった りで,進んで参加できない子どもが多い。自分自身で考え,それを出し合い学習を 進めてきた経験が少ないと思われる。自分の考えや人前で話すことに自信をもてな い様子がうかがえる。 6 月 初 め に 行 っ た算 数 ア ン ケ ー ト で 「そ う 思う 」「 やや そ う思 う 」と 答 えた 子 ど もの人数は,「1 人) 「3 学校で勉強するのは楽しい」(11人)「2 算数は分かりやすい」 (6人) 「4 算数が好きだ」(9 算数は生活にやくだつ」 (10人) 「5 友 達 と 話 合 っ て と き 方 を 考 え る の は 楽 し い 」( 9 人 ) で あ る 。 ま た ,「 7 算数が 分かりにくいと思うことがある」では,10人の子どもが,「あまり思わない」「ま っ た く 思 わ な い 」 と答 え て い る 。 そ の 一方 で,「6 問題 の とき 方 をた い てい せ つ め い で き る 」 に は , 7 人 の 子 ど も が ,「 あ ま り 思 わ な い 」「 ま っ た く 思 わ な い 」 と 答えている。算数に対する肯定的な気持ちを生かすためにも,自分の考えを発表す ることに抵抗感がある子どもに自信を付け,自己肯定感を高めていきたい。 算数以外の場面では,自分たちで学習問題を作り,話し合ったり,1分間スピー チに対して意見を言ったりする等の活動に取り組んでおり,話す・話し合うことに 関する意欲の向上を感じるようになってきた。今回の面積の学習では,必要に応じ て 前 学 年 ま での学習内容を丁寧に振り返ることを通して一人一人が自分の考えをもて るようにし, 問題 の 解き 方 につ い ての 苦 手意 識 を減 らし てい きた いと 考えて いる 。 ②単元について 子どもたちは,第1学年で長さ比べをして,長さの概念や測定についての基礎的 な学習をしてきている。また第3学年で広さ比べをして,広さの概念や測定につい ての基礎的な学習をしてきている。それらを受けて,第4学年では,長方形と正方 - 21 - 形の面積は縦や横の長さを測ればその図形に含まれる1㎠の正方形の個数で表すこ とができることを学習し,さらに,このことから「長方形の面積=縦×横」の公式 を導き出していく。そして,この公式を基にして,複合図形や大きな単位の面積を 求めるまでの学習に拡げていく。この単元内容は,第5学年の四角形や三角形の面 積,直方体や立方体の体積を求める学習につながっていく大事な内容である。 本単元では, 「直接比較→間接比較→任意単位による測定→普遍単位による測定」 と い う 面 積 の 概 念 形成 の 流 れ を 意 識 し て学 習 を進 め,「な ぜ その 測 定方 法 がよ い の か」をきちんと確認しながら,学習を確実なものにしていきたい。 ③指導にあたって 本単元では,広さを比較することから始まる。そこでは,任意の単位量を定め比 較し,普遍単位を導入するまでのプロセスを大切にすることが肝要であると考える。 直接比較や間接比較の考えを子どもたち一人ひとりが考えた比較方法の中から拾い ながら学習を進める。その上で任意単位による測定→普遍単位による測定というと いう手順を踏んでいく。その際,前年度までの長さや液量の比較の学習を振り返り, その比較の手順を広さの比較に結びつけていくことができるようにする。また,操 作活動を取り入れ,切ったり並べたり重ねたりして自分の考えを練っていくことが できるようにする。公式を覚えていればいいという子どもは多いと予想されるが, この 手順 を丁寧 に踏 んで いくこ とによ って,普遍単 位 の 必 要 性 や 既 習 事 項 を 基 に 新たな考えや公式にたどり着くことの意味への理解を深め,ひいては自分で考え学 習を進めていく喜びを味わわせたい。 また,面積の単位相互の関係や,複合図形の面積を考えていく場面では,自分の 考えをもつ・発表することに関し,苦手意識を払拭できず,うまくできない子ども が特に多いと予想される。そこで,本単元のこれまでの学習を掲示しておき,それ を考える手がかりとして活用できるようにする。また,複合図形の面積の学習では, 方眼のマスを加えて単位量を意識するようにしたヒントカードを用意したり,切っ たり並べたりといった操作が何度でもできるように問題の図形を印刷した紙を多く 用意したりして,個に応じた支援を進めていく。 深 め る 段 階で は ,班 に よる 話 合い 活 動を 取 り入 れ る。「 ど の考 え が良 い か」 と い うことになりがちだが,それぞれの考えのよさを確認し合う中で,班としての考え を練り上げることができるようにする。 また,全体・班での話合いのどちらにおいても,まとまった答えにたどり着かな くても,思考の途中経過を発表することも認め,徐々に自信を付け,自己の考えに 関する表現力の向上を図っていく。 (4)全体計画(全8時間) 時数 7 主 な 活 動 指導上の留意点 評価規準 ・長方形と正方形の広 ・長方形と正方形の面積を, ・面積の意味や,単 さの比べ方や大きさ 単位とする面積のいくつ分 位のいくつ分で表 の表し方を考える。 で表すことができるように, せることを理解し これまでに学習した量と測 ている。 定の考え方を振り返る時間 - 22 - (知識・理解) を設ける。 ・面 積 の 意 味 と 単 位 「㎠」を知る。 ・面積の単位「㎠」を実感で ・長方形,正方形の きるように,1㎠の正方形 面積を1㎠のいく の紙を用意する。 つ分で表すことが できる。 (技能) ・長方形の面積を計算 ・公式をすでに覚えていて, ・長方形や正方形の で求める仕方を考え それを使えばよいと思って 面積を計算で求め る。 いる子どもには,その公式 る方法を考えてい の意味を考えるように促す。 る。 (数学的な考え方) ・長方形,正方形の面 ・効率よく面積を求める方法 ・長方形や正方形の 積を計算で求める仕 に目を向けることができる 面積の求め方を振 方を考え,公式にま ように,単位正方形の個数 り返り,公式を導 とめる。 で面積を表せることを確認 き出している。 する。 (数学的な考え方) ・面積の単位「㎡」を 理解する。 ・広いところの面積は1辺が ・「 ㎡ 」 を 用 い て , 1mの面積を単位として表 教室の床などの面 すと良いことを実感できる 積を表すことがで ように,教室の床の測定を きる。 (技能) 取り入れる。 ・縦がcm横がmで表 ・単位の換算には1㎡と1㎠ されている長方形の の関係の正しい理解が必要 面積の求め方を考え であることに気付くことが る。 できるように,液量や長さ ・ 1 ㎡ = 10000 ㎠ を 理解している。 (知識・理解) 等の単位の換算を振り返る。 ・身の回りの長方形や ・面積の量感を実感すること ・身の回りにあるも 正方形の面積を公式 ができるように,面積を予 のの面積にふさわ を用いて求める。 想してから縦横の測定に入 しい単位を選択す る。 るなど,面積につ いての豊かな感覚 をもっている。 (知識・理解) 3 ・「 ㎢ 」 と ㎡ の 関 係 を 理解する。 ・1㎡と1㎠の関係を想起さ せる。 ・ 1 ㎢ = 1000000 ㎡ を 理解して いる。 (知識・理解) ・a,haを知る。 ・1a,1haを実感するこ ・a,haを知る。 とができるように,身近な (知識・理解) 場所の面積を使って1a, 1haを示す。 ・㎡,a,ha,㎢の 関係を調べる。 ・それぞれの単位相互の関係 ・a,haと㎡の関 を総合してとらえることが 係を理解している。 できるように,提示する図 (知識・理解) - 23 - を工夫する。 2 ・面積の公式を用いて ・解法の見通しをもつことが ・公式を用いて,辺 未知の辺の長さを求 できるように,面積を求め の長さや面積を求 めたり,辺の長さの る公式を応用して問題を解 めることができる。 関係から面積が何倍 くことを伝える。 (技能) になるかを求めたり する。 ・複合図形の面積を求 1 ・解法の見通しをもつことが ・複合図形の面積を, める。 できるように,長方形,正 図に補助線を引く (本時) 方形の面積の公式を活用す などして説明する ることを示唆するヒントコ ことができる。 ーナーを用意する。 (数学的な考え方) ・練習問題を解く。 ・文章題は図をかいたり問題 ・学習内容を用いて にアンダーラインを引いて 問を解決すること から立式するよう助言する。 ができる。(技能) (5)本時の実際(5/8) ①ねらい 既習の長方形・正方形の面積を求める学習を活用して,長方形を組み合 わせた図形の面積の求め方を考えることができる。(数学的な考え方) ②学習過程 学 習 活 動 つ 1 ◇発問 学びを支えるための支援 評価(方法) 問題場面を把握する。 か む この図形の面積は何㎠ですか。 ○ ノートに整理しやすいように,別紙 で問題文と図を用意する。 2cm ○ 4cm 形や正方形の面積を求める公式は使え 2cm ないことを確認する。 6cm 取 2 り 前時までと違い,このままでは長方 本時のめあてを確認する。 めあて 組 長 方形でも正方形でもない形の む 面積の求め方を考えよう。 ◇ どんな形に変えたら面積を求め ○ られますか。 既習事項(長方形と正方形の面積の 求め方)を活用するために,形を変え て問題を解いていくことを確認する。 3 面積の求め方を考える。 ○ - 24 - 分けたり付け足したりといった操作 〈予想される主な考え方〉 活動を通して解決の見通しをもつこと ・縦に線を引き,長方形2つに分 ができるように,画用紙に複合図形を ける。 印刷したものを配付する。 ・横に線を引き,長方形2つに分 ○ ける。 面積を求めていく過程を,計算式だ けでなく文や図を用いてノートに書く ・大きな長方形として考え,多い 分をひく。 ように示す。 ○ ・2倍にして考える。 自力解決に自信のない子どもが操作 活動によって問題解決の糸口がつかめ るように,ヒントコーナーを設置する。 ・面積の求め方を,式と図,文で説明 している。(ノート) 4 グループで考えを紹介し合う。 ○ 友達の説明を式と図を対応させて聞 き,それぞれのよさを確認し合いなが 深 ら互いにたしかめるよう助言する。 め ○ 新しく分かったことや参考になる考 ま えは,ノートにメモをとるように声を と かける。 め る 5 面積の求め方を全体で確認し合 ○ う。 考えの説明と質疑応答で,共通点や 相違点から面積の求め方をいくつかの パターンに集約していき,長方形・正 複合図形の面積は,長方形や正方 方形の複合図形の面積の求め方の理解 形をもとにして考えると,公式を を深める。 使って求めることができます。 ○ 考え方の助けになるよう,図形に補 助線を入れていくことをおさえる。 6 練習問題に取り組む。 ○ 本時のねらいに到達できたかを確か めるために,複合図形の練習問題を用 意する。 ・長方形や正方形をもとに複合図形面 7 本時の振り返りをする。 積を求めている。(練習問題) - 25 - 2 展開の実際 (1)問題意識をもち,意欲的に解決しようとする課題の設定 11人という少人数であるが,課題解決に向けた意欲には,個人差が大きい。そこ で,本時では,全員に自分の考えをしっかりもたせたいと考え,長方形・正方形の面 積を求めるこれまでの学習を活用して解くことができる長方形と正方形の複合図形の 面積を扱った。 前時の終わりに,複合図形の形に並べた○の 数を数える問題を解いたところ,公式につなが るかけ算による数え方をせずに数を数えている 子どももいた。そこで,公式を求めるまでの学 習の流れを振り返ることができるよう教室環境 を整え,本時の導入で長方形と正方形の面積を 求める公式と,その意味を確認した。そして, 課題の提示には,複合図形を変形・移動できる 教材を使うとともに,ヒントカードを用意し, 教室掲示~学習のあしあと どの子どもも自力解決ができる手立てをとった。 加えて,考えたり,試行したりしやすいように,面積の求め方を「図・式・言葉」 で書くことができるシートを用意し,そのシートを使いグループ内で求め方を確認し 合うことができるようにした。 本 時 で は ,「 長 方 形 で も 正方 形 で も な い 形の 面 積の 求 め方 を 考え る 」と い う課 題 に 対して,多くの子どもが,面積を求める公式を活用する方法で解き方を考えていた。 どのように活用するか試行錯誤し,掲示やヒントカードを用いながら,自力解決しよ うとする姿が見られた。考えをもつことが難しい子どもには,図形を変形させたり教 室の掲示を示しながら支援し,自分の考えをもたせていった。 11人中9人と,大多数の子どもが,複合図形を2つないし3つの長方形・正方形 に分解して解き方を考えていた。 (2)考えを説明する力の育成 算数アンケートによると,多くの子どもが課題に ついて自分は考えを説明できないと感じている。実 際,答えを出すことができても,なぜそうなったの かをうまく説明できない場合が多い。また,みんな の前では,うまく自分の考えをまとめて話すことが できないという子どももいる。そこで,説明の手順 を学んだり,図や表,グラフを活用する方法を学ん だりする機会を設けるなど,自分の考えをみんなの グループでの話合い 前で説明する力の育成に各教科で意識して取り組んできた。その結果少しずつ成果が 見られるようになってきた。それを踏まえ,本実践では,うまく自分の考えを説明で きない子どもでも,少人数の中で安心して説明したり質疑応答したりできるように, 全体で考えを出し合う前の段階にグループによる話合いの時間を十分に確保した。 - 26 - 普段,みんなの前で話すのが苦手な子どもが,グループの中ではにかみながらも進 んで自分の考えを説明する姿が見られた。また,みんなの前ではうまく表現できない 子どもも,グループ内の友達に認められることによって自信をもち,全体でのポイン トを押さえた発表に結び付いた。その反面,グループ内で理解しているということで, 全体で説明された考えに対しては,他の子どもから質問や意見などが思ったほど出さ れなかった。 (3)考えが深まるような話合いの場の設定 グループでの話合いの後,各グループで出さ れた考えを1つ選び,全体で深め合った。小さ な長方形に分解して求める方法や大きな長方形 の面積を求めてそこから引く方法に関して,お おむね理解していたことが,そのあとの練習問 題で確認できた。 一部,大きい長方形の式を書いたところで考 えが止まるなど,つまずく子どもがいたが,他 の子どもがいろいろな説明をすることで理解をし みんなの前で考えを説明 ていた。不完全でも,考えを出し合い話し合うことのよさはあると感じた。 3 考察 (1)一般化する際の視点の明確化 ○ 一 人 ひ と り の 考 え を認 め ,「 考 え を も て た」 と いう 喜 びと 自 信を 大 切に す るこ と と 同時に,算数・数学的な価値を理解させていくことが重要であると感じている。本実 践 の 少 し 前 か ら 「 は ・か ・ せ 」( は や い , かん た ん, せ いか く )と い う観 点 を示 し 考 え方の妥当性を考えさせてきたが,この時点ではまだ充分に定着していなかった。こ のような指導は,繰りし続けることで血肉となっていくと考える。これからも, 「は・ か・せ」の視点を大切にしていく中で,考えの多様性とより良い考え方に迫る合理性 を求めていく。 (2)多様な方法による説明力を伸ばすこと ○ 授業後の協議で,子どもたちは考えはもっているが表現する引き出しが少ないとい う指摘があった。考えを図にはかけるが式に書けないなどといったことが妨げとなり, 最終的な理解に十分つながらないことが無いようにしたい。日々の学習で,図・式・ 文を,それぞれ関連をおさえながら取り上げ,これらを有効に使って説明する力を伸 ばしていきたい。 (3)他者の発言を比較して聞くことの意味 ○ 本実践でも感じたことだが,話合いで深め合うことに関して,指導・支援をしても すぐに大きく変わるわけではない。しかし,少しずつだが,確実に向上してきている ことは確かである。まずは,自分の考えと比べながら友達の意見をきちんと聞き,自 分の基本的な考えを明らかにすること,友達のよさを認めることを基本に,発表に苦 手意識をもっている子どもには話型の指導も含め,粘り強く取組を続けていきたい。 - 27 - 2年生の実践 単元名「かけ算九九づくり」 指導者 1 徳原由美子 学習指導案 (1)単元名 かけ算九九づくり (2)単元の目標 ○ 乗法について成り立つ性質やきまりを見つけ,進んで九九を構成しようとする。 (関心・意欲・態度) ○ 乗数と積の関係,交換法則などをもとに九九の構成のしかたを考えることができる。 (数学的な考え方) ○ 6,7,8,9,1の段の九九を確実に唱えることができる。 (技能) ○ 式 を 表 に した り , 式 を よ み 取 っ た りす る こ と を 通 し て , 乗 法が 用 い られ る 場面 の 数 量の関係や,倍はかけ算の式で表されることを理解することができる。 (知識・理解) (3)単元の展開にあたって ①子どもの実態(男子7名,女子7名,合計14名) 明るく活発な子どもが多い。課題に真剣に取り組み,自力解決の時間では,自分の 考えをもって意欲的に取り組む姿が見られる。しかし,自分の考えを学習シートに書 くことは楽しんで行うが,言葉で表現することには抵抗がある子どもも見られる。話 合い活動においては,自分の考えを発表したことに満足するだけのことが多かったが, 友達と比べた発言をほめて,価値付けをしたり,友達の考えをノートに書かせて考え させたりしたことで,次第に自分の考えと友達の考えを比べ学習に生かすことができ るようになってきている。 かけ算の学習に対しては,前学期から心待ちにしており,家庭で進んで取り組む子 どもも多い。前単元の「かけ算」の学習で,九九の暗記にも意欲を示しているが,被 乗数と乗数が「1つ分の数」と「いくつ分」を表していることの意味がまだ定着して いない子どもが数名いる。 ②単元について 前単元では,日常の具体的な事象と結びつけて乗法が用いられる場面をとらえ,乗 法の意味や式の表し方を理解してきた。乗法の場面を言葉と式に表したり,おはじき で表現したりする活動を行ってきている。九九の学習については,答えの暗記だけを 重視するのではなく,同数累加としての乗法の意味や乗数が1増えると答えは被乗数 分だけ増えるというきまりに着目して,九九を構成する活動としてきた。 本単元では,新たに学習する6の段,7の段,8の段,9の段,1の段の九九を既 習事項を生かして子どもたち自身で構成していく。練習の機会を繰り返し設定したり, - 28 - ゲームにして取り上げたりするなど,意欲を持続させながら継続的な取り組みによっ て,すべての子どもがかけ算の意味を理解し,技能として定着できるようにする。 九 九 を 完 成 した 後 , 連 続 量 の 場 面 と 関連 さ せ て ,「 い く つ 分 」 を 「何 倍 」 と し て と らえることも指導する。単元の学習の最後には,一見かけ算が使えそうにない不揃い に並ぶものの個数を,これまで学習したことを生かしてかけ算を使えるように考える 学習を取り入れ,かけ算を活用する場の広がりを図っている。 ③指導にあたって かけ算の九九づくりの指導では,子どもたち自身で九九を構成する活動を大切にし, 既習事項を生かして,子どもの言葉で表現させながら九九を作っていくようにしたい。 本時では,チョコレートの数の求め方を九九を活用して考え,説明する活動を扱う。 課 題 提 示 で は, こ れ ま で の 学 習 の 算 数コ ー ナ ー を 活 用 し,「 1 つ 分の 数 ( 数 の ま と ま り )」 に 着 目 さ せ ,「 九 九 を 活 用 す る 」 と い う 解 決 の 見 通 し を も た せ る 場 づ く り を していく。 自力解決では,ブロックの操作や言葉,数,図,式を使って多様な見方を引き出し ていきたい。考えを表現できない子どもには,これまで九九づくりの学習のキーワー ドや図を掲示したヒントコーナーや,ブロックを実際に動かして確かめるコーナーを 活用できるようにする。また,多様な見方を広げられるよう早くできた子どもには, 他の方法を考えてみるよう指示を促す。 話合いの場面では,友達が表した図を読み取って説明する場を設定し,自分の考え と比べながら話合いができるようにしたい。チェックリストを活用し,同じ考えをも っている子どもにも意図的に指名をし,多くの子どもが発表できるようにしたい。2 年生の段階では,グループで話し合うことが必ずしも学習の深まりにつながらないこ とが多い。そこで教師が言葉を補ったり,子どもの発表を価値付けしたりしながら話 合いが深まるようにしたい。また,子どもたちが考えた方法に名前を付けることで考 えの特徴を捉えやすくし,考え方をイメージして繰り返し活用できるようにしたい。 さらに,本時の学びを確かめるために,話合い活動の終末で,話合いで学んだことを 自分の言葉で伝える場を設定する。自分の言葉で表現する活動を積み重ね,相手に分 かりやすく説明することを意識できる子どもになってほしい。自分が気付かなかった 見方を知ることで,九九の学習の楽しさを感じさせたい。 - 29 - (4) 全体計画(全16時間) 主な学習活動 指導上の留意点 評価規準 1 ・積み木の図を用いて, ・2の段から5の段を構成した既習 ・6の段の九九の構成に取 乗法を表す仕方を考 を想起させ,積み木図を用いて6 える。 の段の構成するという見通しをも ・6の段の九九を乗数と たせる。 り組もうとしている。 (関心・意欲・態度) ・乗数と積の関係などを用 積 の 増 え 方 に 着 目 し ・子ども自身で九九を構成する活動 いて,6の段の九九の構 て構成する。 を大切にし,図や式,言葉で表現 成の仕方を考えている。 させながら九九を構成していく場 (数学的な考え方) ・6の段の九九を表にま とめ,気づいたこと を設定する。 を話し合う。 2 ・6の段の九九の唱え方 ・個人やペア,全員など,いろいろ ・6の段の九九を確実に唱 ・ を知り,練習する。 3 ・6の段の九九を,カー な形で声に出して唱える場を設定 えることができる。 する。 (技能) ドを用いて練習する。 ・楽しみながら九九の習熟が図れる ようなゲームを提示する。 4 ・7の段の九九を乗数と ・前時までの九九の構成を想起させ, ・7の段の九九の構成に取 積の増え方に着目し 積み木図を用いて7の段の構成す て構成する。 るという見通しをもたせる。 り組もうとしている。 (関心・意欲・態度) ・7の段の九九を表にま ・子ども自身で九九を構成する活動 ・乗数と積の関係などを用 とめ,気づいたこと を大切にし,図や式,言葉で表現 いて,7の段の九九の構 を話し合う。 させながら九九を構成していく場 成の仕方を考えている。 を設定する。 (数学的な考え方) 5 ・7の段の九九の唱え方 ・個人やペア,全員など,いろいろ ・7の段の九九を確実に唱 ・ を知り,練習する。 6 ・7の段の九九を,カー な形で声に出して唱える場を設定 えることができる。 する。 (技能) ドを用いて練習する。 ・楽しみながら九九の習熟が図れる ようなゲームを提示する。 7 ・8の段の九九を乗数と ・前時までの九九の構成を想起させ, ・8の段の九九の構成に取 積の増え方に着目し 積み木図を用いて8の段の構成す て構成する。 るという見通しをもたせる。 り組もうとしている。 (関心・意欲・態度) ・8の段の九九を表にま ・子ども自身で九九を構成する活動 ・乗数と積の関係や交換法 とめ,気づいたこと を大切にし,図や式,言葉で表現 則などを用いて,8の段 を話し合う。 させながら九九を構成していく場 の九九の構成の仕方を考 を設定する。 えている。 (数学的な考え方) 8 ・8の段の九九の唱え方 ・個人やペア,全員など,いろいろ ・8の段の九九を確実に唱 ・ を知り,練習する。 9 ・8の段の九九を,カー な形で声に出して唱える場を設定 する。 えることができる。 (技能) ドを用いて練習する。 ・楽しみながら九九の習熟が図れる ようなゲームを提示する。 ・9の段の九九を乗数と ・前時までの九九の構成を想起させ, ・9の段の九九の構成に取 10 積の増え方に着目し 積み木図を用いて9の段の構成す て構成する。 るという見通しをもたせる。 - 30 - り組もうとしている。 (関心・意欲・態度) ・9の段の九九を表にま ・子ども自身で九九を構成する活動 ・乗数と積の関係や交換法 とめ,気づいたこと を大切にし,図や式,言葉で表現 則などを用いて,9の段 を話し合う。 させながら九九を構成していく場 の九九の構成の仕方を考 を設定する。 えている。 (数学的な考え方) 11 ・9の段の九九の唱え ・ 方を知り,練習する。 12 ・9の段の九九を,カー ・個人やペア,全員など,いろいろ ・9の段の九九を確実に唱 な形で声に出して唱える場を設定 えることができる。 する。 (技能) ドを用いて練習する。 ・楽しみながら九九の習熟が図れる ようなゲームを提示する。 13 ・1の段の九九を構成す ・乗法の場面であることをとらえさ ・1の段の九九を確実に唱 る。 ・1の段の唱え方を知 り,練習する。 せ,基準量のいくつ分であるかを えることができる。 確認して立式させる。 (技能) ・子ども自身で九九を構成する活動 を大切にし,図や式,言葉で表現 させながら九九を構成していく場 を設定する。 14 ・4㎝の2つ分のことを ・実際に4㎝の電車カードを並べて ・もとの長さの□倍の長さ 2倍ということを知 る。 ・倍はかけ算の式で表さ れることを知る。 考える場を設定する。 を作ることができる。 ・「倍」について,2つ分の場合を取 (技能) り上げて,カードの操作を通して, ・もとにする数量の□つ分 意味を捉えさせる。 ・もとの長さの3倍の長 のことを□倍ということ を理解している。 さのテープを作る。 (知識・理解) ・倍はかけ算の式で表され ることを理解している。 (知識・理解) 15 ・かけ算九九づくりの練 ・九九を確実に唱えられるかどうか ・6,7,8,9,1の段 習をする。 を確認し,不十分な場合には,九 の九九を確実に唱えるこ 九唱の表や九九カードなどを用い とができる。 (技能) て繰り返し練習し,定着させるよ うにする。 16 ・箱に整列して入ったチ ・同じ数のまとまりのいくつ分を見 ・学んだことを生かして, 本 ョコレートの数を, いだせば九九を適用して求められ ものの数を九九を使って 時 九九が適用できるよ ることに気づかせるよう,算数コ 工夫して求めている。 うに分割したり,移 ーナーで既習の乗法の意味を想起 動させたりして求め させる。 方を考える。 - 31 - (数学的な考え方) (5)本時の実際(16/16) ①ねらい 学んだことを生かし,九九を活用する方法でものの数を考えることができる。 (数学的な考え方) ②学習過程 学習活動 つ 1 か ◇発問 評価(方法) 問題場面を把握して答えの見当 ○問題の図を提示し,前時までの学習を振り返らせ, をつける。 む 学びを支えるための支援 チョコレートは何個あるでしょうか。 このままでは九九で求めることができないことを 確認する。 ●●● ●●● ●●●●●● ●●●●●● ●●●●●● 2 本時のめあてを確認する。 九九をつかったもとめ方で 考えよう。 取 ◇九九が使えるように,チョコレー り トの数の求め方を考えましょう。 組 3 む ○同じ数のまとまりのいくつ分を見いだせば九九を 適用して求められることに気付かせるよう,算数 コーナーで既習の乗法の意味を想起させる。 九九を適応した求め方を考え ○自分の考えを書き込むことができるように,問題 る。 〈予想される方法〉 (分ける方法) の図を印刷したシートを準備する。 ○自力解決が滞っている子どもには,ブロックを動 かしながら数のまとまりを考えさせる。 ・上の部分2×3と下の部分3×6に分ける。 ○既習事項を生かすことができるように,ヒントコ ・左の部分5×3と右の部分3×3に分ける。 (移動させる方法) ・上の3個のチョコを移動させる。 4×6 6×4 3×8 8×3 ーナーを設定する。 同じ数のまとまりをつくり,九九を使って チョコレートの数を求めている。 (シート・発表) (全体から一部を引く方法) ・チョコが全部入っているときの個数から, 足りない個数を引く。 4 考え方を交流する。 深 ○友達の考えに目を向けさせることができるよう, 他者説明を取り入れ,同じ考えの子どもにも声を かけ確認をする。 め ○子どもから出てこない考え方については,教師側 ま から考えるヒントを与える。 と ○考え方をイメージしやすくするために,それぞれ め の方法に名前をつける。 る ○学習内容の定着と確認を図るために,自分が一番 気に入った方法をペアで交流する。 ○本時のねらいに到達できたかを確かめることがで 5 練習問題に取り組む。 きるように,求め方が複数ある問題を提示する。 ○身のまわりでも九九を適応して簡単に求められる 6 本時の振り返りをする。 場合があることを知らせ,生活の中で生かそうと する意欲を高める。 - 32 - 2 展開の実際 (1)問題意識をもち,意欲的に解決しようとする課題の設定 箱にチョコレートが入っている写真を見せて問題を提示した。始めにチョコレート が箱に全部入っている写真を提示した。子どもたちは,チョコレートの数を,5×6, または6×5で立式して,簡単に求めることができた。 次に本時の問題場面のチョコレートの写真を提示した。これまでの学習内容を掲示 し た 算 数 コ ー ナ ー を 活 用 し ,「 1 つ 分 の 数 ( 数 の ま と ま り )」 に 着 目 さ せ , 九 九 を 活 用して問題を求めていくことを確認した。 (2)解決の見通しがもてるような既習事項の活用 自力解決では,問題の図を印刷したシートに自分 の考えを書き込んでいった。自力解決が困難な子ど もには,ブロックを見せながら同じ数のまとまりを つくることができるかを考えさせた。既習事項を想 起することができるように,子どもが書いたシート と キ ー ワ ー ド (「 1 つ 分 の 数 × い く つ 分」「 分 け て 九 ブロックを使って支援 九をつくる」)をヒントコーナーに掲示した。 自分の考えがまとまった子どもは,それを発表用 の画用紙に書くことにした。子どもたちは自分の考 えを大きな画用紙に書くことにとても意欲的に取り 組むことができ,自分の考えを表すことが苦手な子 どもも,数のまとまりをつくることができたことで, 自分の考えを発表用シートに書くことができていた。 早くできた子どもには,他の方法を考えてみるよう 発表シートにかいている様子 に指示したが,初めに自分が思いついた方法に満足 している子どもが多かった。 (3)考えが深まるような話合いの場の設定 子どもたちが書いた発表シートを黒板に掲示し て,仲間分けをしていった。低学年の子どもたちに とって,自分たちの考えをグループで話し合い,考 えをまとめていくことは難しい。そこで,全体で話 し合い,教師が子どもたちの考えをつなげていく方 法 を と っ た 。 子 ど も た ち の 出 し た 考 え は ,「 3 の ま と ま り や 6 の ま と ま り を つ く る 」「 チ ョ コ レ ー ト を 移 動 さ せ て , ま と ま り を つ く る 」「 か た ま り を 2 つ に分けて九九で求める」という3種類に分かれた。 友達の書いた発表シートについてじっくりと考える ことができるように,他者説明を取り入れていった。 発表シート 「全体から一部を引く」方法は,子どもたちの考えから出てこなかったので,教師が - 33 - 図を 用 い て ヒ ン ト を 出 し, 式 を 考 え て い っ た 。 子ど も た ち が 考 え た 方法 に,「ま と め る 」「 う ご か す 」「 分 け た す ( 分 け て か ら た す )」 な ど 名 前 を 付 け て い っ た 。「 全 体 か ら一部を引く」方法は,これまで経験していなかったので,名前をなかなかイメージ で き な か っ た 。 意 見 を 出 し 合 い ,「 前 ひ く ( 前 に あ っ た も の を ひ く )」 と い う 名 前 を 付けた。名前を考える活動を通して,かけ算が使える場面への理解が深まっていった。 3 考察 (1)ヒントコーナーの有用性 既習事項を想起できるように,学習シートやキーワードを掲示し,自力解決や説明 の場で活用することができた。しかし,ヒントコーナーは,与え方に工夫が必要であ る。自力解決でじっくりと自分で考えるときに,必要がない子どももいる。自分で考 える前にヒントを見てしまうこともある。自分で考えた達成感を味わうことができる ような支援を考えていきたい。 (2)他者説明の有用性 低学年の子どもたちは,自分の考えを発表すること には意欲的であるが,友達の考えを自分の考えと比べ たり,自分の考えに取り入れたりすることが苦手なこ とが多い。他者説明は,友達の考えを自分の言葉にし て説明することによって,自分の考えと比べて考える 活動に有効であった。しかし,子どもたちは自分が見 図を用いて説明している様子 つけた方法を話すことに意欲的である。自分の考えを友達に分かりやすく説明するこ とも大切な学習活動である。今後は,他者説明や自分の考えを分かりやすく説明する 学習活動を,ねらいや子どもの実態に応じて取り入れ,話合い活動を深めていきたい。 (3)考えを分類しての説明 発表で,友達に分かりやすく説明することはとても難しい。同じことを繰り返して 説明が長くなったり,複雑な形に変えて分かりにくくなったりすることがよくある。 算数 の 合 い 言 葉 「 算 数 はか せ 」(は や い ・ か ん た ん ・ せい か く ・ わ か りや す い) を 活 用することで,子どもたちも分かりやすい説明を意識し,友達の考えのよさも見つけ られるようになってきている。考えが深まる話合いの場となるように,多様な考えを 「 同 じ も の 」「 違 う も の 」「 似 て い る も の 」 に 分 類 し , 分 か り や す い 方 法 を 探 っ て い く経験を積ませていきたい。 (4)見通しをもった学習の流れの定着 「 授業 にめ あてを もつ」「 自分 の考 えを もつ」「 話し合 う」「ま とめ」「練習 問題」「 振 り返り」という学習の流れを大切にしていくことで,子どもたちは見通しをもって学 習を進めることができている。2年生になって,自分のノートに書く活動も増えてき ている。教師の板書以外にも,友達の考えをメモにとり,ノートづくりに工夫が見ら れるようになってきた。振り返りは「分かったこと・感動したこと・友達の考えを聞 いて思ったこと・おもしろかったこと」などの視点を与え,書くことを続けている。 この学習の流れを日々の授業で積み重ね,教師が子どもの考えや取組のよさを取り上 げ意味あることとして価値付ける中で,考えを深める学習を身に付けさせていきたい。 - 34 - 3年生の実践 単元名「かけ算の筆算(1)」 指導者 加藤 康 1 学習指導案 (1)単元名 かけ算の筆算(1) (2)単元の目標 ○ 2位数や3位数に1位数をかける乗法の計算の仕方を考えたり,計算を活用した りしようとする。 ○ (関心・意欲・態度) 2位数や3位数に1位数をかける乗法の計算の仕方を図,式などを用いて考える ことができる。 ○ (数学的な考え方) 2位数や3位数に1位数をかける乗法の計算が確実にできる。また,2位数と1 位数との乗法の答えを暗算で求めることができる。 ○ ( 技能) 2位数や3位数に1位数をかける乗法の筆算の仕方について理解することができ る。 (知識・理解) (3)単元の展開にあたって ①子どもの実態(男子10名,女子7名,計17名) 4月当初は九九がおぼつかない子どもも数名見られたが,その後「かけ算のき ま り 」,「 わ り 算 」,「 あ ま り の あ る わ り 算 」 の 単 元 の 中 で 九 九 の 復 習 を し た り , 毎 朝の パワ ーア ッププ リン トに取り 組んだりす ることを通 して,現在は ほぼ全員に 九 九が定着している。 算数の学習に対する意欲は高いものの,すぐに解法や答えを求めがちで,じっ くり考えて答えを導き出そうとする粘り強さが足りない面がある。また,発表の 場 で は ,「 自 分 の 考 え を 分 か り や す く 伝 え る 」「 友 達 の 説 明 を 共 感 的 に 聞 く 」 力 が 今 一 つ の た め ,「 う ま く 説 明 で き な い 」 と 発 表 に 尻 込 み を し た り ,「 何 を 言 っ て い るのかわからない」と理解しようとする努力をやめてしまったりする様子がみら れ,相手意識の向上が課題となっている。 なお,算数アンケートの結果は以下の通り(上段:11月実施 下段6月実施) 質問項目 1 1.学校で勉強するのは楽しい 2.算数がすきだ 3.算数は分かりやすい 4.算数は生活に役立つ 5.友だちと話し合ってとき方を 考えるのは楽しい 6.問題のとき方をたいていせつ めいできる 7.算数が分かりにくいと思うこ とがある 1…そう思う 2 3 29% 29% (35%) (53%) (6%) 53% 18% 24% (35%) (12%) (24%) (29%) 41% 41% 12% 6% (41%) (29%) (24%) (6%) 82% 12% (94%) (0%) 35% 71% 6% 4 6% (6%) 18% 6% (6%) 6% 0% (0%) 6% (59%) (29%) (12%) (0%) 29% 24% 41% 6% (41%) (35%) (24%) (0%) 12% 59% 29% (0%) (53%) (47%) 0% (0%) 2…ややそう思う - 35 - 3…あまり思わない 4…思わない ②単元について 単元1「かけ算のきまり」では,0の乗法を扱うとともに,乗数が1ずつ増減 すると積は被乗数の大きさずつ増減するという乗法の性質や,具体的な式の考察 を 通 し て 「 交 換 の き ま り 」,「 分 配 の き ま り 」,「 結 合 の き ま り 」 が 成 り 立 つ こ と を 学習している。更に,これらの性質を活用して九九表を20まで広げる活動や, 20×3や200×3などの計算を10や100を単位にして乗法九九に帰着し て計算することも学習してきた。 本単元では,2・3位数に1位数をかける乗法の計算の仕方,および筆算の仕 方について指導する。被乗数が2位数や3位数の計算は,分配法則で数を分ける ことによって乗法九九や何十,何百の計算に帰着することができる。桁数が増え た計算も,既習の基本的な計算をもとにして解決できることを理解させることが 大切 と な る 。 ま た , こ こ での 学 習 は , 単 元 1 5「 か け算 の 筆算 ( 2)」 で ,乗 数 が 2位数へと発展していく。九九の範囲を超える大きな数の計算の仕方について十 分な理解を図り,筆算に習熟させておく必要がある。 ③指導にあたって 本単元の指導にあたっては,筆算の形式を単に練習することにならないよう, その手順の意味理解を重視して指導していきたい。特に導入段階での学習が今後 の学習のもとになる。繰り上がりや空位のある計算,かけられる数が3位数とな る場面に出会っても,子ども自身が位ごとに分けて考える分配法則を活用して計 算の仕方を作り出し,それを生かして筆算形式につなげること,そしてその中で 計算技能を十分高めることを大切にして指導したい。 本時では,2位数×1位数の中でも,繰り上がりのない計算を学習する。既習 の何十,何百×1位数の問題と比較し,違いをとらえることで,めあてを一人一 人がしっかりつかむことができるようにしたい。 自力解決の場では,今までの学習経験を想起させ,これを生かして,たし算や 模擬硬貨での図解,位ごとにわけた分配法則の活用などいろいろなやり方で取り 組むことができるようにする。早くできた子どもには,柔軟な見方や考え方を広 げていけるよう,別のやりかたでも考えさせ,柔軟な見方や考え方を広げていけ るようにしたい。計算の仕方の手がかりがつかめない子どもには,ヒントコーナ ーを活用して前時の学習を想起させたり,模擬硬貨を使った操作活動を通して考 えさせたりして個別に助言していく。 自力解決後の話合いでは,考え方の説明の中でそれぞれに共通していることに 注目させ,探すように促していく。そして23を20と3に分けて考えているこ とを図やお金,数値の関連で示してまとめ,次時の筆算での考え方につなげてい くようにしたい。 話 合 い を まと め てい く 中で ,「 今ま で 習っ た こと を もと に して 考 えた ら 解け た 」 「友達の説明を聞いて,すっきり分かった」という感動や心地よさを味わえるよ うにしていきたい。 (4) 全体計画(全13時間) 時 主な活動 指導上の留意点 評価規準 1 ・23×3のような,2位数× ・被乗数を20と3に分ける ・既習事項をもとに,十の位 本 1位数=2位数の計算の仕方 ことで,既習の何十の乗法 へ繰り上がりのない2位数 時 を考える。 計算と乗法九九に帰着でき ×1位数=2位数の計算の - 36 - ることをとらえさせる。 2 ・23×3のような,2位数× 1位数=2位数の筆算の仕方 をまとめる。 3 ・26×3のような,2位数× 1位数=2位数で十の位へ繰 り上がりのある計算のしかた を考える。 4 ・62×3のような,2位数× 1位数=3位数の計算の仕方 を考える。 5 ・65×3のような,2位数× 1位数=3位数で十の位へ繰 り上がりのある計算の仕方を 考える。 6 ・「2けた×1けたの計算」の 練習をする。 7 ・312×3のような,3位数 ×1位数=3位数の計算の仕 方を考える。 8 ・253×3のような,3位数 ×1位数=3位数で繰り上が りのある計算の仕方を考え る。 9 ・423×3のような,3位数 ×1位数=4位数の計算の仕 方を考える。 10 ・302×8のような,3位数 ×1位数=4位数で空位のあ るの計算の仕方を考える。 11 ・「3けた×1けたの計算」の 練習をする。 12 ・23×4のような,2位数× 1位数の暗算の仕方を考え る。 13 ・単元のまとめをする。 仕方を考えている。 (数学的な考え方) ・位取り板や半具体物の操作 ・乗法の筆算形式について理 と結びつけて,筆算の手順 解している。 を理解させる。 (知識・理解) ・前時の学習を想起させ,被 ・既習事項をもとに,2位数 乗数を分けたり,数カード ×1位数=2位数で十の位 などの半具体物を用いて, へ繰り上がりのある計算の 10のまとまりと1に着目 しかたを考えている。 したりさせる。 (数学的な考え方) ・十の位の「三六18」は, ・2位数×1位数=3位数の 60×3=180を乗法九 計算のしかたを理解してい 九に帰着して計算している る。 ことを確認し, 「18」の「1」 (知識・理解) はあくまで百の位の数であ ることをとらえさせる。 ・位を意識させ,繰り上がり ・既習事項をもとに,2位数 の計算を確実にさせる。 ×1位数=3位数で十の位 へ繰り上がりのある計算の しかたを考えている。 (数学的な考え方) ・位を意識させ,繰り上がり ・2位数×1位数の計算をし の計算を確実にさせる。 たり問題を解決したりする ことが確実にできる。 (技能) ・100,10,1の数カー ・3位数×1位数=3位数で ドを操作させ,計算の意味 繰り上がりのない計算のし を考えられるようにする。 かたを理解している。 (知識・理解) ・繰り上がりがある場合の筆 ・既習事項をもとに3位数× 算形式の手順の意味が理解 1位数=3位数で繰り上が できるように丁寧に扱う。 りのある計算のしかたを考 えている。 (数学的な考え方) ・百の位の「三四12」は4 ・3位数×1位数=4位数の 00×3=1200である 計算のしかたを理解してい ことを確認し,12の1は る。 1000のまとまり1個分 (知識・理解) を表すことをとらえさせる。 ・各位の部分積ごとに途中の ・既習事項をもとに,3位数 計算を書かせる。 ×1位数=4位数で空位が ある計算のしかたを考えて いる。 (数学的な考え方) ・繰り上がりや空位を意識さ ・3位数×1位数の計算をし せ,計算を確実にさせる。 たり問題を解決したりする ことが確実にできる。 (技能) ・計算の仕方と暗算との関係 ・簡単な乗法の暗算を進んで が意識できるように,板書 学習や生活に生かそうとし にまとめる。 ている。 (関心・意欲・態度) ・間違いやすいポイントを中 ・学習内容を用いて問題を解 心に復習させる。 決することができる。 (技能) - 37 - (5) 本時の実際(1/13) ①ねらい 既習事項をもとに,十の位への繰り上がりのない2位数×1位数=2位数 の答えの求め方を考えることができる。 (数学的な考え方) ②学習過程 学習活動 ◇発問 学びを支えるための支援 評価(方法) 1 問題を読み,題意をとらえ立式する。 つ 1まい23円の色画用紙を3まい買うと,代金は何円になるでしょうか。 か ◇どんな式になりますか。 ○言葉の式やテープ図から,23円の3つ分 む であることを確認する。 ◇20×3とどこがちがいますか。 ○既習内容との違いをとらえることで,めあ てをしっかりつかむことができるようにす る。 2 本時のめあてを確認する。 23×3の答えのもとめかたを考えよう 取 3 自力解決をする。 り 【予想される方法】 あ 組 ○ お金で考える む 10円玉が6個で60円,1円玉が3個 で9円,合わせて69円 い ○ 23を3回たす。 23+23+23=69 う ○ 23を20と3に分けて考える 20×3=60 3×3= 9 合わせて60+9=69 え ○ 図を書いて考える。 お ○ 位取り板をつかって考える。 ○既習のかけ算のきまりを想起しながら考え るよう助言する。 ○自分のやりやすい方法で考えられるよう, どのような方法があるか確かめる。 ○解く手がかりがつかめないでいる子どもに は,ヒントとして10円玉と1円玉の模擬 硬貨を渡して操作活動をさせ,図にまとめ させる。 ○自力解決が早くできた子どもには,他の方 法も考えるよう促す。 深 4 考えを発表し合い,検討する。 め ◇考え方の似ているものはありますか。 る ○子どもが考え方を説明した後,答えの出し 方が共通している点を探すよう促す。 ○23を20と3に分けて考えていることを 子どもから出てきた図やお金と数値の関連 で示していく。 ○「は・か・せ・わ」の視点に照らしてより よい考え方をまとめる。 ま 5 23×3の計算の仕方をまとめる。 と 23×3の答えは,23を20と3に め 分けてかけ算をし,さいごに足せばもと る められる。 2位数×1位数の計算の仕方を既習の 乗法九九に帰着して考えている。 (ノート・発表) 6 練習問題に取り組む。 ○繰り上がりのない2位数×1位数の練習問 題に取り組ませ学習の定着を図る。 7 学習の振り返りをする。 ○分かったことや,見つけたうまくいく方法 などに触れた振り返りを書くように助言す る。 - 38 - 2 展開の実際 (1)問題解決の見通しがもてる場の設定 子どもにとって問題が提示された際の一番の関心事は,答えがいくつになるかであ る。そのため,答えの見通しをもたせることは,学習に対する意欲を大きく左右する 1つの要素と考える。子どもは3年生になって最初の単元で10をこえるかけ算につ いて学習しており,その際に10の段や20の段,30の段についても学習している。 そのため本時では,問題提示の後に20×3=60と30×3=90を計算させるこ とで,本時に求める23×3の答えは60より大きく,90より小さいという見通し をもたせた。また,同時にテープ図も掲示することによって視覚的にも答えの範囲の 見通しをもたせることができた。これにより自力解決の場面で,各自求めた答えが大 きく 違 う こ と が な く,「 で き そ うだ 」 と い う 自 信 を も って 意 欲 的 に 課 題 に向 か う子 ど もが多く見られた。 (2)言葉,数,式,図,表,グラフなどを用いて 考えを表現・説明する力の育成 ①具体物を使ってイメージをふくらませる 算数を苦手としている子どもにはヒントとし て模擬硬貨を与えた。模擬硬貨を机上に並べ, 操作することでどんな図をかけばよいかイメー ジがわきやすくなり,ノートへの表現に結びつ きやすくなった。また,言葉での説明も自分が 操作した手順を追って書いていくよう支援する 模擬硬貨を使って考える ことで書くことへの抵抗を減らすことができた。 ②既習事項を用いて考えるよさを感じさせる この単元に入る前から,かけ算の筆算については,計算の仕方を先に予習して知っ ている子どもが多かった。しかし,計算の手順を単なる知識なく,算数的な考え方と 結び付けるため,本時は「既習事項を用いて」というところにこだわった展開にした。 そのため,筆算をすでに知っている子どもも既習事項をもとにして図をかいたり,分 配法 則 を 使 っ た り し て 自分 の 考 え を ま と め て い た。「 23 を 2 0 と 3 に 分け て 」と い う考えが軸になる話合いの後,子どもたちの言葉をつないで「かけ算の筆算は位ごと に計算して,最後にたすと求められる」という まとめができあがった。これによって,予習で 計算の仕方を知っている子どももかけ算の筆算 の仕方がどういう考えから生まれてきたかにつ いての理解を一層深めることができ,既習事項 を用いれば新しく学習する課題にも取り組むこ とができるという経験を積むことができた。こ うした経験の積み重ねが考えを説明する力の向 上につながると考える。 既習事項をもとにした説明 ③算数用語を利用した簡潔な説明のために 話し合いの場面において,簡潔で分かりやすい説明をすることを目指して日々の実 践に取り組んできた。それを達成するためには,算数の用語を取り入れた説明をする ことが必要になる。そのため,発表において算数の用語を用いて説明する子どもを賞 揚し た り ,「 こ こ で は , ○ ○ と いう 算 数 の 言 葉 が 使 え るね 」 と 声 を 掛 け たり す るこ と で,次第に算数の用語を用いることを意識した発表をする子どもが増えてきた。また, 教室の背面に算数コーナーを設置し,既習の単元の要点(含:算数用語)をまとめた - 39 - ものを掲示している。ただ掲示しているだけでは効果が低いため,現在学習している 内容と関連しているものを機をとらえて取り上げたり,復習に使ったりしている。こ れも算数用語の定着を促す一助になっている。 (3)考えが深まるような話し合いの場の設定 自力解決の場で机間指導を行いながら座席表に各子どもの考えをチェックした。教 師側でその考えを分類し,発表の順番を考え,段階的に内容が易しいものから高度な ものへと進むようにした。いきなり高度な説明から始まったり,段階が行ったり来た りした場合,子どもの思考の流れが不自然にな ってしまうし,低位の子どもは話し合いに最初 からついて行けなくなり,意欲の低下につなが ると考えるからである。また,発表者と似てい る考えの子どもに積極的に話させることで,参 加意識を高め満足感を得られるようにした。学 級では話し合いをまとめ上げていく際に「はか せわいつも」というキーワードを用いている。 こうした視点を示しておくことで,よりよい考 えはどれかを見る力を養うことができた。 話し合いをまとめ上げる視点 3 考察 (1)見通しをもたせることの効果 ・見通しをもたせることは子どもたちにとって安心感につながる。最終的には,自分の 力である程度の見通しをもてるように少しずつ育てていかなければならないと感じて いる。そのためにも,この見通しをもたせる時間をおろそかにせず,意欲を継続させ る導入の工夫につなげていきたい。 (2)分かりやすく一般化すること ・話合いには回数を重ねる毎に慣れ,内容に深まりが感じられるようになってきた。初 めのうちは特定の子どもの発言が多かったが,次第に発言する子どもが偏らなくなっ てきた。一方で,友達と違う考えを発表したいがために,わざわざ遠回りな解法を説 明する子どもがみられ,話し合いの深まりを阻害する時があった。話合いをまとめ上 げる視点を念頭に置かせ,説明を考えている時からシンプルで分かりやすい解き方及 び説明をすることの大切さを感じさせていく必要がある。 (3)比べて話を聞く力を育てること ・話合いにおいて,自分の考えと比べながら友達の意見をきちんと聞くこと,お互いの 考えを認め合う姿勢を育てることが活動を充実させるためのベースになる。ある程度 の話形とともに,互いの考えを尊重し合う態度を日々の実践を通して継続して育てて いく必要がある。 - 40 - 第Ⅲ章 テーマ 基礎・基本の充実のための取組 ・読み・書き・計算などの基礎的な力を身に付ける子どもの育成 ・集会や音読等の活動に進んで取り組み,言語力を身に付ける子どもの育成 1 計画の重点 (1)習熟の時間の活用(朝活動の計画と実施) 月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日 集会活動の 国語の内容 チャレンジ 算数の内容 テスト チャレンジ ない時に, テスト (漢字) 「ことば」 (計算) ※月曜日と水曜日の内容は,各学年の実態に応じて弾力的に運用する。 (2)家庭学習の習慣化を図る工夫 ・家庭学習の手引きの見直し ・家庭学習の取り組み方の学級指導,学級通信での紹介 ・家庭学習強調週間(5月下旬,11月中旬) (3)パワーアッププリント ・毎朝登校後に取り組む。 ・算数の既習事項から短時間でできる内容で取り組ませる。 (4)全校漢字力,計算力テストの実施と計画 ・年間3回実施する。(7月・12月・3月)1年生の漢字テストはⅡ期から。 ・作成方針を確認し,作成した問題を全体で確認して,統一を図る。 ・結果については各学年で考察し,事後指導に活用する。 (5)音読集会 ・2ヶ月に1回全校で音読集会を実施する。 ・異学年の発表を聞き合うことで次回への意欲を高める機会づくり(感想発表等) ・表現力や企画力の向上を図る (6)学習環境 ・年間を通しての言葉のコーナーの取り組みや「今月の詩」の掲示 ・子どもたちの語彙力や表現力を鍛える機会づくり(行事作文の階段掲示) 2 実践 (1)習熟の時間の活用(朝活動の計画と実施) 火曜日の漢字ミニテスト,木曜日の計算ミニテストに向けての練習と基礎的学習内 容の定着の時間として取り組んだ。 (2)家庭学習の習慣化を図る工夫 子どもたちや保護者に家庭学習の必要性と,取り組み方について子どもたちへの学 級指導,PTA学級懇談,学年通信等で情報を発信した。また,家庭学習の手引きを 作成・配布することで家庭学習の進め方を示し,内容の充実を図った。 - 41 - (3)パワーアッププリントの実施 全学年で,朝一番に子どもたちの脳の活性化させるとともに集中力を育成するため に算数の計算問題に登校後すぐに取り組んだ。負担感をもたせないために問題数を子 どもが短時間で解き終わることができる程度に設定し,学級担任が問題作成を行った。 (4)全校漢字力,計算力テストの実施と計画 7月に1回目,12月に2回目,3月に3回目の全校漢字力・計算力テストを実施 した。それぞれの学年までの間に学習した漢字と計算をテスト範囲として子どもと保 護者に示し,家庭学習での取り組みを促した。1年生の1回目は漢字の学習をしてい ないため,ひらがなの問題とした。問題の作成は学級担任が行い,漢字と計算のそれ ぞれに検討チームを組織して問題の内容について検討を行った。テストは全校一斉に 実施した。答案は学級担任が採点した後,点数を一覧表にまとめ,考察を行った。 (5)音読集会 全学年の音読を披露する場や興味・関心をもって聞き合う場となるように,集会活 動の活動計画書を作成することで共通理解を図った。集会に向けて,各学年で表現の 仕方を工夫する取組が見られた。 (6)学習環境 1階廊下に言葉のコーナーを作り,全校の取り組みが見えるように行った。休み時 間に立ち止まって,他学年の作品を鑑賞する子どもの姿も見られた。階段掲示に行事 作文を定期的に掲示する活動も合わせて行った。 階段の踊り場に掲示された行事作文 3 1 階廊下の言葉のコーナー 評価と改善 (1)習熟の時間の活用(朝活動の計画と実施) ・漢字と計算のミニテストに向けたテスト範囲を習熟練習する取組が,基礎・基本 の充実につながった。朝活動は短時間であり,テスト範囲を全て扱うことはできな いため,特に重要な点に絞って練習したり,間違いやすい箇所を説明したり するなど効率よく学習を行った。 ・短時間の学習であるため,ポイントを絞って,いかに効率よく学習内容を定着さ せるかが大切であり,教師の工夫すべき点といえる。 (2)家庭学習の習慣化を図る工夫 ・全校で歩調を合わせて取り組むことで,家庭学習を毎日継続することが進級してか らも子どもたちや保護者にとって習慣化され,身に付いてきている。子どもたちが 家庭学習に必要感をもって取り組むことができるように,教師がその必要性を学年 に応じて何度も繰り返し説明をすることで家庭学習への取組が充実してきている。 - 42 - ・子どもたちには家庭学習に取り組み,ノートを提出するという意識が根付いてお り,学習に取り組む習慣はほぼ身に付いている。しかし,学習への取り組みには 個人差が大きく,学習への理解度も異なっている。そのため,どのような学習に 取り組ませるのが効果的なのかも一人一人異なってくる。一人一人への対応をき め細やかに行い,子どもたちの能力をいかに伸ばしていくのかが課題である。 (3)パワーアッププリントの実施 ・毎日計算に取り組むことで,数量関係の学習内容への理解と処理の能力が高まり, 計 算の 順 序 を 入 れ 換 え て 効率 的 に解 い たり ,( ) を 使っ て 簡単 に 計算 し たり す る など工夫して解くことができるようになった。 ・子どもたちに学校での生活リズムの一つとして定着したパワーアッププリントであ るが,さらに充実した内容にするため,子どもたちにどのような力を付けたいのか, 教師が明確な意図をもって問題作成を行うことが大切になってくる。例えば,効率 のよい計算の解き方に気付かせたり,数字のもつ規則性を活用できるようにしたり するなどが考えられる。 (4)全校漢字力,計算力テストの実施と計画 ・全校で取り組むテストとして子どもたちにも浸透している。子どもたちはそれぞれ 目標をもってテストに取り組んでいる。家庭学習でテストに向けた学習に取り組み, 基礎・基本の充実につながった。 ・事後の考察を通して学級の状況を把握し,事後指導を充実させることができた。 弱点を取り上げて指導することによって,学習内容への理解を深めることができ た。 ・全校テストに向けての強調週間での取組を行っているが,日常の授業の中で子ど もたちが基礎・基本を確実に身に付けられるような取組が大切である。 (5)音読集会 ・各学年の発表を興味をもって聞き合う姿が見られた。 ・活動計画書があることによって,見通しをもって練習することができた。 ・年度途中から,上学年と下学年に分かれて行う機会を設けたことにより,3年生を 下学年のリーダーとして,4,5,6年生は上学年としてのレベルアップをねらっ た活動ができた。 ・活動計画書を活用しながら,子どもたちが企画・運営していく技術が向上していく ように支援し,実践力を高めていきたい。 (6)学習環境 ・言葉のコーナーや階段掲示は,年間計画に乗っ取って進めることができた。いつで も他学年の作文を読めるよい機会となっている。互いによい刺激となるように今後 も進めていきたい。 - 43 - 第Ⅳ章 研究のまとめ 今年度は「学び合い・高め合う子どもの育成 ~伝え合い,考えを深める活動の充実を めざして~」という研究主題のもと,算数科を窓口に実践を重ねてきた。各学年の授業研 究の成果をもとに今年度の取り組みを振り返り,次年度への課題を明らかにする。 めざす子どもの姿 ○課題を的確に読み解き,自分の考えをもつことができる子ども ○既習事項や算数の用語等を適切に用いて,自分の考えを説明することができる子ども ○友だちの考えとの相違点に気付き,自分の考えを深めることができる子ども 1.今年度の取り組みと成果 めざす子どもの姿の実現のために,研究の重点として「学び合い,考えを深める授業 作り」を設定し,次の(1)~(3)に取り組んだ (1)問題意識をもち,意欲的に解決しようとする課題の設定 ①問題場面の理解 問題を的確に捉えることができるよう,問題場面を表した図や写真,また長さをと らえさせるためのテープ,面積を求める図形などを提示した。子どもたちはこれらの 支援により,問題の意味をとらえることができた。 ②見通しをもたせる工夫 問題の解決に見通しがもてない子どもにはヒントカードを用いて個別に支援を行っ た。ヒントカードによって自力解決に向かい,問題解決に対する意欲を高めることが できた。 (2)言葉,数,式,図,表,グラフなどを用いて考えを説明する力の育成 ①資料を活用した説明 考え方を比較検討する際にも図があると相違点が明確となり,子どもたちにも捉え やすいという利点がある。そのため,モデル図や数直線,テープ図などの資料をもと にして活発に話し合う場面が見られた。 ②話し合いの機会の増加を図る 説明のスキルを向上させるため,できるだけ多くの子どもたちに発表の機会を与え られるよう,発表ボードを活用した。ボードを示しながら自分の考えを順序立てて説 明したり,図と式を関連づけて説明したりすることができた。 (3)考えが深まるような話し合いの場の設定 ①少人数での話合い ペアや少人数での話合いの場を設定した。全体の場ではなかなか進んで発表ができ ない子どもも少人数のグループでは自分の意見をいきいきと話したり,友達と意見を - 44 - 交わしたりすることができた。少人数での話合いにより考えが深まったことで,全体 の場での話合いがさらに深まるようになった。 ②他者による説明 友達の考えを自分の言葉で説明する他者説明に取り組んだ。友達の考えを一度,自 分で解釈してから話すという思考過程を経ることによって,友達の考えと自分の考え を比較し,深く理解することができた。 ③集約の視点「はかせわ」 話合いによってよりよい解決方法や考え方に迫る場面において,算数のよさを示す 「はかせわ」を提示して,子どもたちに考える視点を与えた。視点を与えることによ って話合いの方向付けがなされ,話合いを通してよりよい考えに迫る事ができた。 ④座席表の活用 授業のねらいに迫るため,子どもたちの話合いを組み立てていく手立てとしての座 席表を活用した。教師の意図的指名によって話合いが構成され,深めることができた。 2.次年度への課題 (1)問題意識をもち,意欲的に解決しようとする課題の設定 ①課題設定の工夫 学習課題の解決に見通しをもち,子どもたちが「解決したい」を思うような課題設 定の工夫はどうあればよいのか,考えていきたい。 ②自力解決のための支援のあり方 自力解決の場面でヒントを準備し,自力解決が停滞している子どもへの支援とする 取り組みが行われたが,ヒントカードを使用することで子どもの自力解決に取り組も うとする意欲や問題が解けた達成感をもたせるような与え方やヒントの内容を考えて いきたい。 (2)言葉,数,式,図,表,グラフなどを用いて考えを説明する力の育成 ①説明するスキルの明確化 今年度の授業実践では,自分の考えを言葉や数,式,図を用いて説明する取組は各 学年の授業の中で行われた。今後は,自分の考えを相手に伝えられるような論理的な 説明のためのスキルの明確化や学年に応じた系統的な指導のありかたについて考えて いきたい。 (3)考えが深まるような話し合いの場の設定 ①話合いを深めるための手立て 小グループでの話合いや他者説明,定着問題の後の情報交換などさまざまな方法で 話合い活動が行われた。今後は,子どもたちが考えを深めることができる話合いの場 の設定や手立てについて検討し,実践を重ねていきたい。 - 45 - ~ あ と が き ~ 今年度の研究を進める際に,最初に先生方で確認したこと ・みんなで同じ方向を向いて進めよう。 ・小さなことであっても,子どもに必要な実践をしよう。 ・子どもの姿で研究の成果と課題を捉えよう。 ・前の実践に積み上げる研究にしよう。 ・日常の実践を大事にしよう。 ・互いの授業を見合い,よさを学び,腕を磨こう。 どれも,当たり前と言えば,当たり前。しかし,日々の忙しさや長年の習慣による慣れ など の 中 で , つ い 失 念 し てし ま う こ と も あ り ます 。 時々 は 立ち 止 まっ て,「本 当 にそ う し ているかな」と振り返ることを忘れてはいけない,と,今年度のまとめに際して,改めて 自らを戒めているところです。 今年度の研究主題の実現を目指し,伝え合い,考えを深める活動の充実を通し,学び合 い・高め合う子どもを育成しようと取り組んできました。授業研究会を行うたびに,子ど もたちの少しずつ成長する姿が見られ,それを励みに実践を重ねて参りました。つたない 実践の記録ではありますが,日常の授業を大事にする取組の一端をくみ取っていただけれ ば幸いです。 (教頭 研 校 長 石川 教 頭 榎 究 同 榎実和子) 人 政昭 主任主査 佐藤 朗 実和子 養護教諭 安藤 栄子 1年担任 池田 尚子 技能主事 小松 貞明 2年担任 徳原由美子 技能技師 中川 郁子 3年担任 加藤 康 嘱 託 大塚由美子 4年担任 佐々木 衛(教務主任) 嘱 託 田口かおり 5年担任 東海林祐佳 学校給食事務支援員 安部恵智子 6年担任 齊藤 学級生活支援サポーター 堀井 亨(研究主任) 範子 秋田市立浜田小学校 010-1654 秋田市浜田字自在山47-2 電話 018-828-4027 / FAX 010-828-0520 E-mail hmd-es4@edu.city.akita.akita.jp
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