ニッセイ基礎研究所 2015 年 3 月 10 日 福岡オフィス市場の現況と見通し (2015 年) 金融研究部 不動産市場調査室長 竹内 一雅 e-mail : take@nli-research.co.jp 1. はじめに 福岡のオフィス市場は今後、大きく変化することが期待される。国家戦略特区への指定に伴い、 天神明治通り地区において航空法に基づく高さ制限の緩和(67mから 76m)が決定した。これにあ わせて福岡市が容積率の緩和などの実施を決定したことで、これまで長い間、建替えが進まなかっ た天神地区の再開発が大きく進展しようとしている。本稿では、福岡オフィス市場の現況把握とと もに 2021 年までのオフィス賃料の将来予測を行う1。 2. 福岡のオフィス空室率・賃料動向 福岡は過去 2 年間に、主要都市の中で最も空室率の改善幅が大きかった都市である(図表-1)。 三幸エステートによると、2013 年 2 月(12.38%)から 2015 年 2 月(7.53%)までの改善幅は▲ 4.85 ポイント(以下 pt とする)に達し、改善幅は東京都区部(▲2.98pt)、札幌市(▲1.42pt)、仙 台市(▲1.68pt) 、名古屋市(▲2.72pt) 、大阪市(▲1.07pt)を大きく上回っている。 空室率の改善が大きく改善する中で、成約賃料も 2012 年下期から 2013 年下期まで大きく改善し たが、この一年間は上昇スピードが落ち、ほぼ横ばいで推移している(図表-2) 。2014 年下期の成 約賃料は 8,035 円/月坪となっている。 図表-1 主要都市のオフィス空室率 図表-2 主要都市のオフィス成約賃料 空室率 15,000 22% 大阪市 20% 名古屋 18% 札幌市 12,500 16% 仙台市 福岡市 14% 12% 仙台市, 10.75% 大阪市, 9.25% 札幌市, 8.57% 10% 8% 10,000 名古屋市, 8.47% 福岡市, 7.53% 6% 東京都心3区, 4.74% 4% 東京都区部, 5.05% 7,500 2% 0% 東京都区部 東京都心3区 (出所)三幸エステート 札幌市 福岡市 仙台市 大阪市 名古屋市 5,000 2014-H2 2014-H1 2013-H2 2013-H1 2012-H2 2012-H1 2011-H2 2011-H1 2010-H2 2010-H1 2009-H2 2009-H1 2008-H2 2008-H1 2007-H2 2007-H1 2006-H2 2006-H1 2005-H2 2005-H1 2004-H2 2004-H1 2003-H2 2003-H1 2002-H2 2002-H1 2001-H2 2001-H1 2000-H2 2000-H1 1999-H2 1999-H1 1998-H2 1998-H1 1997-H2 1997-H1 00/01 01/01 02/01 03/01 04/01 05/01 06/01 07/01 08/01 09/01 10/01 11/01 12/01 13/01 14/01 15/01 (出所)「オフィスレント・インデックス」を基にニッセイ基礎研究所が作成 過去 2 年間の福岡市の空室率の改善幅を規模別にみると、大型ビル(▲6.93pt)と中型ビル(▲ 1 2014 年の見通しは竹内一雅「福岡オフィス市場の現況と見通し(2014 年版)」不動産投資レポート 2014.3.10 ニッセイ基礎研究所 を参照のこと。 1| |不動産投資レポート 2015 年 3 月 10 日|Copyright ©2015NLI Research Institute All rights reserved 6.28pt)で大きく、次いで小型ビル(▲4.96pt) 、大規模ビル(▲3.46pt)の順となっている2(図表 -3) 。ただし、過去一年間に小型ビルでの改善はほとんどなく、小型ビルとそれ以外の規模との空 室率格差が拡大している。 三鬼商事によると、2014 年の福岡ビジネス地区3の空室面積は 5.3 万坪で、2007 年の 5.1 万坪に 近づいており、2009 年のピーク(10.6 万坪)から空室面積は▲49.7%の大幅な減少となっている(図 表-4) 。2009 年以降、賃貸面積は+9.5%と堅調に増加している一方、賃貸可能面積は+0.4%とほと んど増加がなかったことが空室面積の大幅改善の理由である。 図表-4 福岡ビジネス地区の賃貸可能面積・ 賃貸面積・空室面積 図表-3 福岡の規模別空室率 75万坪 空室率 14万坪 25% 70万坪 12万坪 65万坪 20% 10万坪 60万坪 15% 10% 55万坪 8万坪 50万坪 6万坪 45万坪 4万坪 40万坪 5% 2万坪 35万坪 30万坪 0万坪 賃貸可能面積 (注)大規模:基準階面積 200 坪以上、大型:同 100~200 坪未満、中型:同 50~ 100 坪未満、小型:同 20~50 坪未満 (出所)三幸エステート 賃貸面積 2014.12 平均空室率 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997 1996 1995 小型ビル 1994 中型ビル 1993 大型ビル 1992 大規模ビル 1991 00/01 01/01 02/01 03/01 04/01 05/01 06/01 07/01 08/01 09/01 10/01 11/01 12/01 13/01 14/01 15/01 1990 0% 空室面積(右目盛) (出所)三鬼商事 3. 福岡のオフィス需給と地区別動向 福岡ビジネス地区では、新規供給がほとんどない中で、着実な需要の増加がみられている。月次 推移をみると 2013 年 1 月以降に空室面積が増加した月は一度もなく改善が続いている(図表-5 右図) 。年ごとの推移でも 2014 年の賃貸面積の増加は 2 万坪を上回り、これは 1991 年以来の規模 である(図表-5 左図) 。空室面積も 2.2 万坪の大幅な減少で 1991 年以降の最大の減少幅だった。 図表-5 福岡ビジネス地区の賃貸オフィス需給面積増加分 <年次> <月次> 4万坪 6,000坪 3万坪 4,000坪 2万坪 2,000坪 1万坪 0坪 0万坪 -2,000坪 -4,000坪 -1万坪 -6,000坪 -2万坪 -8,000坪 2014.12 2014.11 2014.10 2014.9 2014.8 2014.7 2014.6 2014.5 2014.4 2014.3 賃貸面積 2014.2 2014.1 2013.12 2013.11 賃貸可能面積 2013.10 2013.9 2013.8 2013.7 2013.6 2013.5 2013.4 2013.3 2013.2 2014.12 2013 2012 2011 2010 2009 空室面積 2008 2007 2006 2005 賃貸面積 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 1991 賃貸可能面積 2013.1 -3万坪 空室面積 (出所)三鬼商事 2 3 三幸エステートの定義による。大規模とは基準階面積 200 坪以上のビル、大型ビルは同 100~200 坪未満、中型は同 50~100 坪未満、小型は同 20~50 坪未満のビル。 三鬼商事の定義による。福岡の主要 6 地区(赤坂・大名地区、天神地区、薬院・渡辺通地区、祇園・呉服町地区、 博多駅前地 区、博多駅東・駅南地区)をいう。 2| |不動産投資レポート 2015 年 3 月 10 日|Copyright ©2015 NLI Research Institute All rights reserved 福岡では 2014 年に大規模オフィスビルの竣工が一棟のみだったため、賃貸面積増加の 9 割が既 存ビルで吸収された(図表-6) 。既存ビルの増加面積は 1991 年以降で最大となった。 2014 年の一年間に地区別の空室率は全地区で大きく改善した(図表-7) 。2014 年末時点の空室 率は薬院・渡辺通地区が 5.74%と最も低く、天神地区(6.67%)、祇園・呉服町地区(7.67%)、赤 坂・大名地区(8.12%) 、博多駅・駅南地区(8.77%)、博多駅前地区(9.01%)と続いている。 福岡ビジネス地区で最も賃貸可能面積が広いのは天神地区(構成比 24.2%)で、次いで博多駅前 地区(21.6%) 、博多駅東・駅南地区(16.2%) 、祇園・呉服町地区(15.8%) 、薬院・渡辺通地区(12.1%)、 赤坂・大名地区(10.0%)となっている(図表-8) 。 2014 年の一年間に福岡ビジネス地区で賃貸面積は+2.1 万坪増加したが、このうち、博多駅東・ 駅南地区が+6.2 千坪で最も大きく、次いで博多駅前地区(+5.6 千坪)、薬院・渡辺通地区(2.8 千坪)、 祇園・呉服町地区(+2.7 千坪) 、赤坂・大名地区(+1.7 千坪)、天神地区(+1.5 千坪)であった(図 表-9) 。このように、全地区で賃貸面積は増加し、その結果、全地区で空室面積の減少がみられた。 図表-6 福岡ビジネス地区の新築・既存ビル別 賃貸面積増分 図表-7 福岡ビジネス地区の地区別 オフィス空室率推移 3万坪 20% 18% 2万坪 16% 14% 1万坪 12% 10% 0万坪 博多駅前地区, 9.01% 博多駅東・駅南地区, 8.77% 赤坂・大名地区, 8.12% 福岡ビジネス地区, 7.70% 祇園・呉服町地区, 7.67% 天神地区, 6.67% 薬院・渡辺通地区, 5.74% 8% -1万坪 6% 4% -2万坪 2% 0% 2014.12 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997 1996 天神地区 博多駅東・駅南地区 薬院・渡辺通地区 図表-9 福岡ビジネス地区の地区別 オフィス需給面積増加分(2014 年) -25千坪 18.4% 25.3% -15千坪 -10千坪 -5千坪 天神地区, -4,038 賃貸可能面積 20.9% 24.4% 天神地区 24.2% 15千坪 20千坪 25千坪 12.4% 薬院・渡辺通 地区 12.1% 祇園・ 博多駅前 呉服町 地区, 地区, 5,614 2,673 博多駅東・ 駅南地区, 6,214 薬院・渡辺通 地区, 2,810 15.8% 15.9% 10千坪 博多駅東・ 駅南地区, 2,534 赤坂・ 天神 大名 地区, 地区, 1,503 1,695 賃貸面積 9.0% 祇園・呉服町 地区 15.8% 5千坪 祇園・呉服町地区, 23 10.5% 外:賃貸可能面積 中:賃貸面積 内:空室面積 0千坪 博多駅前地区, 68 10.0% 16.0% 博多駅前 21.3% 地区 21.6% -20千坪 赤坂・大名地区 10.0% 博多駅東・駅南 地区 16.2% 3| 赤坂・大名地区 博多駅前地区 (出所)三鬼商事 図表-8 福岡ビジネス地区の地区別 賃貸可能面積・賃貸面積・空室面積構成比 (出所)三鬼商事 1995 福岡ビジネス地区 祇園・呉服町地区 全体増加 (出所)三鬼商事 1994 1993 1992 2014.12 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 既存増加-前年新築 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 新築 1991 -3万坪 空室面積 博多駅東・ 駅南地区, -3,680 赤坂・大名地区 薬院・ 祇園・ 博多駅前 赤坂・ 渡辺 天神地区, 呉服町 地区, 通 大名地区, -5,541 地区, -5,546 -1,695 地区, -2,650 -2,810 天神地区 薬院・渡辺通地区 祇園・呉服町地区 博多駅前地区 (出所)三鬼商事 |不動産投資レポート 2015 年 3 月 10 日|Copyright ©2015 NLI Research Institute All rights reserved 博多駅東・駅南地区 4. 福岡の新規供給計画と「天神ビッグバン」 近年、福岡では新規の大規模ビルの竣工が少なく、2014 年は TERASO-Ⅱのみだった。2015 年 も長府博多ビジネスセンターの一棟だけで、2016 年には新博多ビルと東比恵ビジネスセンターⅡの 完成が予定されている。このように、2008 年~2009 年の大量供給以降、新規のオフィス供給面積 は低水準で推移している(図表-10) 。 福岡市中心部には福岡空港との近接性に基づく高さ制限や容積率の問題などから、築年の経過し たオフィスビルの建替えが進んでいない。日本不動産研究所によると、福岡市のオフィス地区内で 1981 年以前に竣工したオフィスビル(ほぼ旧耐震ビルに相当)床面積の構成比は 42.0%に達し、 全国平均(28.3%)や東京都区部(26.1%)、大阪市(34.5%)などを大きく上回る(図表-11)。 ただし、今後、福岡市都心部での建替えや再開発が大きく進む可能性が出てきた。福岡では、国 家戦略特区(グローバル創業・雇用創出特区)に指定されたことから、航空法による高さ制限のエ リア単位での特例承認が認められ、その第一号として天神明治通り地区では現在の 67mから 76m へと 9m高いビルが建設可能となった。さらに、福岡市では国家戦略特区の指定を期に、独自の容 積率の緩和策4や立地交付金などにより天神地区の再開発を大きく進めるための「天神ビッグバン5」 プロジェクトを始動させた。このプロジェクトでは、今後 10 年間に天神地区で 30 棟の建て替えを 促し、延床面積を 1.7 倍(+31 万 3 千㎡(+9 万 4 千 7 百坪)の増加)に、雇用者数を 2.4 倍(+5 万 7200 人の増加)にすることを目指している。 すでに天神地区では、福岡地所による天神ビジネスセンター(仮称)の建設計画が進んでおり、 福岡ビルの建替え計画も実現に向けて動いている模様だ6。国家戦略特区への指定と福岡市による施 策が、築年の経過したビルの多い天神地区において、多数の再開発や建て替えを強く後押し、今後 の福岡のオフィス市場を大きく変化させる可能性が高い。 図表-10 福岡における大規模ビル新規供給計画 45% 30.8% 32.0% 25.7% 36.0% 35.4% 36.4% 35.1% 千葉 横浜 京都 神戸 広島 福岡 20% 8.7% 15% 1.0 17.4% 19.5% 25% 1.5 36.2% 28.3% 26.1% 35% 30% 2.0 28.3% 予測 33.2% 34.5% 40% 2.5 38.4% 41.3% 50% 3.0 42.0% (万坪) 図表-11 主要都市における 1981 年以前に竣工した オフィスビル構成比(2014 年 1 月現在) 10% 16.3% 仙台 さいたま 名古屋 札幌 31.7% 東京都区部 大阪 32.4% 36.2% 42.5% 30.7% 32.2% 5% 0.5 0% 全国 0.0 2017予 2016予 2014 2015予 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 (出所)CBRE、三幸エステート、ニッセイ基礎研究所 棟数構成比 床面積構成比 (出所)日本不動産研究所「全国のオフィスビルストック調査(2014.1 現在) 5. 福岡の人口動向と見通し 住民基本台帳人口移動報告によると、2014 年の福岡市の転入超過数は 6,564 人(前年比▲1,622 4 5 6 報道によると、福岡市は天神一丁目南ブロックの再開発ビルの容積率を、現行の 800%から 1400%まで上乗せを認める方針を固 め、2015 年秋に都市計画決定する方針という(西日本新聞、2015 年 2 月 25 日朝刊より) 福岡市「国家戦略特区をトリガーにしたプロジェクト-新たな空間と雇用を創出する『天神ビッグバン』 始動!~2,900 億円の建設 投資効果と毎年 8,500 億円の経済波及効果~」を参照のこと。高島市長によるメッセージも視聴できる。 西日本新聞「西鉄、天神「福ビル」建て替えへ 周辺の再開発事業にも弾み」(2014 年 9 月 12 日) 4| |不動産投資レポート 2015 年 3 月 10 日|Copyright ©2015 NLI Research Institute All rights reserved 人の減少)だった。主要政令指定都市では札幌市に次ぐ転入超過数であり、大阪市や名古屋市を上 回っている(図表-12) 。 転入超過数を男女年齢別にみると、20~24 歳女性の転入超過数の多さが目を引く(図表-13) 。 20~24 歳の転入超過数に占める女性比率は 68.0%に達する。また、0~4 歳を除くとほぼ全年齢で 転入超過が見られるのも特徴である。 福岡市の人口ピラミッドの特徴は、高校卒業後の 17 歳から 19 歳にかけて人口が大きく増加する 点である(図表-14) 。これら若者の転入超過数の多さは、人口に占める若者比率の高さにも反映し ている。福岡市の 15 歳~29 歳の人口比率は 19.5%で、国内の人口 50 万人以上の都市でもっとも 高い(図表-15) 。 図表-12 主要都市の転入超過数 図表-13 福岡市の男女年齢別転入超過数(2013 年) 10,000 2,500人 5,000 2,000人 0 1,500人 -5,000 男 女 1,223 1,065 1,041 3,000人 2,601 15,000 1,000人 605 500人 32 55 12 66 36 74 32 53 57 50 9 120 78 39 -15,000 9 42 140 98 107 97 116 104 122 64 186 372 -10,000 0人 -4 -3 -20 90歳以上 85~89歳 80~84歳 75~79歳 70~74歳 65~69歳 60~64歳 55~59歳 50~54歳 45~49歳 40~44歳 35~39歳 30~34歳 25~29歳 20~24歳 15~19歳 5~9歳 10~14歳 福岡市 -175 0~4歳 -310 2014 2013 2012 2011 2010 大阪市 2009 2008 名古屋市 2007 2006 2005 仙台市 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997 1996 1995 1994 1993 札幌市 -500人 -4 -2 -20,000 (出所)住民基本台帳人口移動報告 (出所)住民基本台帳人口移動報告 図表-14 福岡市と全国の人口ピラミッド(2010 年) 図表-15 主要都市における 15 歳~29 歳人口構成比 福岡市人口 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 45,000 50,000 100歳以上 95歳 90歳 85歳 80歳 75歳 70歳 65歳 61歳, 23,733 60歳 55歳 61歳, 2,261,917 53歳, 16,589 53歳, 1,478,697 50歳 45歳 40歳 37歳, 25,298 35歳 30歳 37歳, 2,017,073 27歳, 21,250 25歳 20歳 17歳, 12,925 15歳 10歳 27歳, 1,469,956 19歳, 1,200,148 17歳, 1,202,514 19歳, 20,217 7歳, 12,642 5歳 0歳, 13,798 0歳 0 500,000 7歳, 1,117,316 0歳, 1,045,975 1,000,000 1,500,000 全国人口 全国(下目盛) 福岡市(上目盛) 2,000,000 2,500,000 10.0% 11.0% 12.0% 13.0% 福岡市 八王子市 仙台市 京都市 川崎市 相模原市 特別区部 熊本市 鹿児島市 岡山市 札幌市 大阪市 名古屋市 さいたま市 松山市 川口市 船橋市 横浜市 広島市 神戸市 新潟市 東大阪市 姫路市 全国 宇都宮市 千葉市 北九州市 浜松市 堺市 静岡市 14.0% 15.0% 16.0% 17.0% 18.0% 19.0% 20.0% 19.5% 19.4% 19.3% 18.5% 18.4% 17.7% 17.5% 17.5% 17.2% 17.1% 17.1% 17.0% 16.9% 16.6% 16.5% 16.3% 16.2% 16.1% 16.1% 16.0% 15.8% 15.7% 15.6% 15.6% 15.4% 15.2% 15.1% 14.9% 14.9% 14.4% (出所)国勢調査(2010 年) (出所)国勢調査(2010 年) こうした福岡市の若者の多さは、婚姻率や出生率の高さにも現れている。人口動態統計によると、 2013 年福岡市の婚姻率は 6.8‰(人口千人当たりの年間婚姻届出件数)で、出生率は 9.8‰(人口 千人当たりの年間出生数)と、主要都市の中ではともに最も比率が高い都市のひとつである(図表 -16) 。 国立社会保障・人口問題研究所の 5 年ごとの予測によると、福岡市の人口は 2020 年まで増加が 5| |不動産投資レポート 2015 年 3 月 10 日|Copyright ©2015 NLI Research Institute All rights reserved 続き、その後の人口減少も比較的穏やかに進むと考えられる(図表-17) 。ただし、生産年齢人口(15 ~64 歳人口)はすでに 2010 年をピークに減少がはじまっており、当面は 5 年ごとに 2~3 万人の 減少が見込まれている。なお、住民基本台帳に基づく人口によると、2014 年 1 月末から 2015 年 1 月末にかけて、福岡の人口は+11,803 人の増加、同生産年齢人口は▲2,985 人の減少だった7。 図表-16 主要都市の婚姻率・出生率(2013 年) 図表-17 福岡市の人口見通し(5 年毎) 12.0‰ 180万人 9.9‰ 10.0‰ 9.1‰ 8.2‰ 8.0‰ 8.5‰ 7.4‰ 5.6‰ 6.0‰ 5.3‰ 7.9‰ 7.5‰ 8.6‰ 8.2‰ 7.6‰ 7.1‰ 6.1‰ 8.4‰ 160万人 140万人 6.8‰ 6.7‰ 5.3‰ 4.9‰ 5.2‰ 5.7‰ 149.9 146.4 8.3‰ 7.9‰ 6.1‰ 5.5‰ 予測 9.8‰ 9.4‰ 134.1 128.5 123.7 151.0 150.9 149.7 147.4 140.1 120万人 116.0 5.4‰ 100万人 88.6 4.0‰ 93.3 96.8 99.5 101.2 98.0 95.5 81.6 94.1 91.9 87.7 80万人 2.0‰ 60万人 0.0‰ 福岡市 北九州市 広島市 神戸市 大阪市 京都市 川崎市 名古屋市 横浜市 千葉市 仙台市 札幌市 都区部 全国 婚姻率 40万人 20万人 出生率 0万人 1985年 1990年 1995年 2000年 2005年 2010年 2015年 2020年 2025年 2030年 2035年 (注)出生率=(年間出生数)/(10 月 1 日現在日本人人口)×1000、婚姻率=(年 間婚姻届出件数)/(10 月 1 日現在日本人人口)×1000 (出所)住民基本台帳人口移動報告 総人口 生産年齢人口(15~64歳) (出所)福岡市 6. 福岡のオフィス賃料見通し 福岡における今後のオフィス供給や人口流入、経済の成長見通しなどに基づくオフィス需給の見 通しから、2021 年までの福岡のオフィス賃料を予測した。 推計の結果、福岡のオフィス賃料は、 (標準シナリオによると)2014 年下期から 2017 年(下期、 以下同じ)まで+17.6%(2014 年下期比)上昇した後に、2019 年まで下落(同+5.2%)するが、再 び上昇して 2021 年には同+13.7%まで回復すると予測された(図表-15) 。 楽観シナリオでは当面の賃料上昇は 2017 年までに+28.9%(2014 年下期比)の上昇、悲観シナ リオでも 2017 年に同+3.3%の上昇となり、その後の賃料の底は、楽観シナリオでは 2019 年に同 +18.6%、悲観シナリオでも 2019 年に同▲8.0%という結果となった。2021 年の賃料水準は、楽観 シナリオでは 2014 年下期比で+28.7%、悲観シナリオで▲1.8%だった。 図表-15 福岡オフィス賃料見通し 13,000 12,000 予測 11,000 10,000 9,000 8,000 7,000 標準 楽観 6,000 悲観 5,000 2021 2020 2019 2018 2017 2016 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 (注)各年下期の賃料を記載 (出所)「オフィスレント・インデックス」を基にニッセイ基礎研究所が作成・推計 7 なお、このうち、日本人人口は+10,726 人の増加、生産年齢人口は▲3,882 の減少だった。 6| |不動産投資レポート 2015 年 3 月 10 日|Copyright ©2015 NLI Research Institute All rights reserved 7. おわりに 福岡市はオフィス市況の改善が最も顕著な都市のひとつである。当面、需要の強さと供給量の少 なさから改善が続くと思われる。また、中長期的にみても、アジアとの近接性や、九州新幹線の開 通による九州各県との時間距離の短縮、福岡空港と都心部の近さ、若者の流入の多さなど多くの強 みがあるため、今後の成長に大きな期待が持たれている。 一方、都心部では築年の経過したオフィスビルが多いにもかかわらず、航空法の高さ規制や現行 の容積率では建替えると延べ床面積を縮小せざるをえないなどの問題から、これまでなかなか都心 部でのオフィスビルの更新や新築が進まなかった。 そうした中で、国家戦略特区(グローバル創業・雇用創出特区)の指定を契機に、福岡市は天神 明治通り地区における航空法の高さ規制の特例承認を獲得するとともに、 「天神ビッグバン」プロジ ェクトとして、容積率の割り増しや立地交付金などの提供により、天神明治通り地区の再開発と建 て替えの推進を推し進める決定をした。 都市が成長するために、都心部の更新は非常に重要である。現在、博多駅前で進んでいる再開発 とともに、天神地区の再開発の進展は福岡の経済とオフィス市場を大きく変える可能性が高い。新 規開発による供給拡大はオフィス市況の圧迫要因であるが、同時に既存産業はもちろん、IT やコン テンツ産業等の創業・成長による需要拡大により、福岡市がもつ国内でも有数の活力を今後も伸ば し、グローバル都市間競争の中でのさらなる成長に期待したい。 7| |不動産投資レポート 2015 年 3 月 10 日|Copyright ©2015 NLI Research Institute All rights reserved
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