2015/3/5 東京都新宿区本塩町 22-8 TEL: 03-5919-9341 URL:http://www.tdb.co.jp/ 第 5 回 : 「円安関連倒産」の動向調査 2 月の円安倒産、集計開始後 2 番目の高水準 ~年度ベースでは前年同期の 2 倍超~ はじめに 3 月 3 日の円相場は一時 1 ドル=120 円台前半をつけるなど、依然として 120 円前後の円安水準 が続いている。今年に入り、急速な円安進行には一定の歯止めがかかっているが、各種食料品や 繊維・アパレル関係を中心に影響はじわり広がっている。2 月は負債 10 億円超の地場業者の倒産 が相次ぐなど、ここにきて「円安関連倒産」の規模も徐々に大きくなってきている。 帝国データバンクは、2013 年 1 月から 2015 年 2 月までの倒産企業(負債 1000 万円以上、法的 整理のみ)の中から、円安の影響を受けて倒産した企業を抽出し、件数・負債推移、地域別、業 種別、負債規模別に集計・分析した。 なお、「円安関連倒産」に関する調査は 2015 年 2 月 5 日に続き 5 回目となる。 調査結果(要旨) 1. 2 月の「円安関連倒産」は 42 件判明し、集計開始の 2013 年 1 月以降で、2014 年 11 月と並ん で 2 番目の高水準。年度ベースでは、2014 年 4 月~2015 年 2 月の合計は 353 件にのぼり、前 年同期(161 件)に比べて 119.3%の大幅増加 2. 地域別に見ると、2 月は「関東」が東京都を中心に 18 件(構成比 42.9%)で最も多い。以下、 「中部」(7 件)、「北陸」 「九州」(4 件)、「近畿」 (3 件)の順となっており、全国各地で判明 3. 業種別に見ると、2 月は「卸売業」が 15 件(同 35.7%)で最も多く、このうち、繊維・衣服・ 繊維製品卸売と飲食料品卸売がそれぞれ 5 件。 「製造業」が 12 件(同 28.6%)でこれに続い た。他方、原油価格の下落を受け、 「運輸業」が 3 カ月連続の前月比減少 4. 負債規模別に見ると、2 月は「10 億円以上 50 億円未満」が 8 件(同 19.0%)。前月、前年同 月を 6 件(300.0%増)上回り、負債 10~20 億円台の地場業界大手クラスの倒産が目立つ 主な 「円安関連倒産」 (2015年2月) TDB 企業コード 商号 業種 負債 (百万円) 態様 所在地 1 050042761 (株)丸三北栄商会 水産物加工 2,387 民事再生法 北海道 2 620137912 (株)クリスタルフインテック 衣料品企画販売 2,200 破産 広島県 3 580037531 繊維製品卸 1,700 破産 大阪府 宇野(株) ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 1 2015/3/5 第 5 回 : 「円安関連倒産」の動向調査 1. 件数・負債推移 2013年度 月 2 月の「円安関連倒産」は 42 件判明し、前月比は 23.5%、 前年同月比も 61.5%の増加となった。 この結果、集計開始の 2013 年 1 月以降で、2014 年 11 月と 並んで 2 番目の高水準。また、14 カ月連続の前年同月比増加 となるとともに、2 カ月ぶりに前月を上回った。 年度ベースで見ると、2014 年 4 月~2015 年 2 月の合計は 353 件にのぼり、前年同期(161 件)に比べて 119.3%の大幅増加 となっている。 (件数) 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 2014年度 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 3 10 8 12 12 10 17 18 20 25 26 17 負債総額 (百万円) 1,080 8,542 3,039 2,200 4,142 1,838 14,254 7,096 7,694 15,246 8,841 5,741 合計 178 79,713 件数 23 27 27 22 22 31 39 42 44 34 42 負債総額 (百万円) 14,629 7,023 7,966 9,873 15,258 12,883 24,539 15,866 25,531 81,852 22,960 353 238,380 件数 「円安関連倒産」の推移 39 25 18 17 9 4 10 7 12 12 8 26 20 27 23 42 44 34 31 27 22 42 22 17 10 3 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 2014年 2015年 2013年 2. 地域別 地域別に見ると、2 月は「関東」が東京都を中心に 18 件(構成比 42.9%)となり、前月、前年同月をそれぞれ上回った。業種的には、 飲食料品卸売や繊維・衣服・繊維製品卸売などが目立つ。 次いで、「中部」(7 件)、 「北陸」「九州」(4 件)、 「近畿」(3 件) の順となっており、円安の影響を受けた関連倒産は依然として全国 各地で判明している。 地域別 14年 3月 2月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 15年 2月 1月 前月比 (%) 前年同月比 (%) 1 2 3 4 5 6 7 8 8 10 構成比 (%) 東京都 113 20.5 大阪府 48 8.7 愛知県 42 7.6 北海道 41 7.4 福岡県 24 4.4 兵庫県 22 4.0 埼玉県 21 3.8 神奈川県 20 3.6 静岡県 20 3.6 広島県 14 2.5 ※2013年1月以降の累計で集計 都道府県別 件数 2013年以降累計 14年4月~15年2月合計 構成比 前年同期比 構成比 件数 (%) (%) (%) 21 5.9 162.5 41 7.4 件数 北海道 2 6 2 4 0 1 2 1 1 5 3 0 2 ― 東北 1 2 0 1 0 1 2 2 1 3 1 3 1 ▲ 66.7 0.0 15 4.2 87.5 26 4.7 関東 10 6 6 10 11 8 7 6 12 11 22 11 18 63.6 80.0 122 34.6 149.0 183 33.2 北陸 0 0 1 1 0 1 0 2 3 3 1 1 4 300.0 ― 17 4.8 112.5 26 4.7 中部 2 0 5 3 6 3 3 6 3 8 7 3 7 133.3 250.0 54 15.3 145.5 78 14.2 近畿 5 1 5 4 3 4 5 8 9 8 4 10 3 ▲ 70.0 ▲ 40.0 63 17.8 152.0 91 16.5 中国 1 1 3 2 3 0 0 2 2 2 0 1 2 100.0 100.0 17 4.8 13.3 34 6.2 四国 1 0 0 1 2 0 1 2 2 0 0 1 1 0.0 0.0 10 2.8 11.1 19 3.4 34 9.6 100.0 53 9.6 353 100.0 119.3 551 100.0 九州 合計 0.0 順位 4 1 1 1 2 4 2 2 6 2 6 4 4 0.0 0.0 26 17 23 27 27 22 22 31 39 42 44 34 42 23.5 61.5 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 2 2015/3/5 第 5 回 : 「円安関連倒産」の動向調査 3. 業種別 業種別に見ると、2 月は「卸売業」が 15 件(構成比 順位 35.7%)で最も多い。このうち、繊維・衣服・繊維製 1 2 3 4 5 6 7 8 9 9 11 12 12 12 15 品卸売と飲食料品卸売がそれぞれ 5 件となり、とくに 発生が目立った。 次いで、「製造業」が 12 件(構成比 28.6%)で続き、 このうち食料品・飼料・飲料製造が 4 件を数えた。以 下、 「運輸・通信業」 (7 件=すべて運輸業、同 16.7%)、 「小売業」(4 件、同 9.5%)の順で続いた。 原油価格の下落を受け、 「運輸業」が前月、前年同月 をそれぞれ下回り、3 カ月連続の前月比減少となった。 業種別 14年 3月 2月 5月 4月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 15年 2月 1月 構成比 (%) 運輸業 181 32.8 繊維・衣服・繊維製品卸売業 43 7.8 食料品・飼料・飲料製造業 42 7.6 飲食料品卸売業 29 5.3 職別工事業 23 4.2 総合工事業 21 3.8 農業・林業・漁業 20 3.6 鉄鋼業、非鉄金属・金属製品製造業 11 2.0 出版・印刷・同関連産業 10 1.8 飲食料品小売業 10 1.8 機械器具卸売業 9 1.6 設備工事業 8 1.5 家具・建具・じゅう器卸売業 8 1.5 織物・衣服・身のまわり品小売業 8 1.5 繊維工業、繊維製品製造業 7 1.3 ※2013年1月以降の累計で集計 業種細分類別 前月比 (%) 前年同月比 (%) 件数 2013年以降累計 14年4月~15年2月合計 構成比 前年同期比 構成比 件数 (%) (%) (%) 39 11.0 290.0 52 9.4 件数 建設 3 1 4 2 6 5 1 8 0 8 3 0 2 ― ▲ 33.3 製造 6 5 3 8 3 4 4 7 11 6 8 13 12 ▲ 7.7 100.0 79 22.4 192.6 113 20.5 卸売 4 5 5 6 3 5 6 10 7 9 12 9 15 66.7 275.0 87 24.6 171.9 126 22.9 小売 3 1 2 0 2 1 1 2 6 4 3 4 4 0.0 33.3 29 8.2 262.5 38 6.9 運輸・通信 9 3 8 10 11 3 9 3 8 13 10 8 7 ▲ 12.5 ▲ 22.2 90 25.5 20.0 181 32.8 サービス 0 1 0 1 1 3 0 0 3 0 3 0 2 ― ― 13 3.7 225.0 19 3.4 不動産 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 ― ― 1 0.3 1 0.2 15 4.2 200.0 21 3.8 353 100.0 119.3 551 100.0 その他 合計 1 1 1 0 1 1 1 1 4 2 4 0 0 26 17 23 27 27 22 22 31 39 42 44 34 42 ― ▲ 100.0 23.5 61.5 ― 4. 負債規模別 負債規模別に見ると、2 月は「10 億円以上 50 億円未満」が 8 件(構成比 19.0%)を数えた。こ の結果、前月、前年同月をそれぞれ 6 件(300.0%増)上回り、負債 10~20 億円台の地場業界大 手クラスの倒産が目立った。 このほか、全体では「5000 万円以上 1 億円未満」と「1 億円以上 5 億円未満」がそれぞれ 12 件 (構成比 28.6%)を数えた。「5000 万円未満」(4 件、同 9.5%)も合わせて負債 5 億円未満の中 小企業が全体の 3 分の 2 を占める結果となった。 負債規模別 14年 3月 2月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 15年 2月 1月 前月比 (%) 前年同月比 (%) 5000万円未満 2 2 2 1 3 3 3 7 7 11 9 5 4 ▲ 20.0 5000万円以上1億円未満 3 4 3 4 1 3 1 2 5 11 4 9 12 33.3 300.0 55 15.6 175.0 82 1億円以上5億円未満 14 6 11 18 17 10 13 12 15 15 20 13 12 ▲ 7.7 ▲ 14.3 156 44.2 77.3 261 47.4 5億円以上10億円未満 5 4 2 4 4 5 2 8 4 2 3 4 6 50.0 20.0 44 12.5 214.3 64 11.6 10億円以上50億円未満 2 1 5 0 2 1 2 2 8 3 7 2 8 300.0 300.0 40 11.3 100.0 63 11.4 50億円以上100億円未満 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 0 0 ― ― 2 0.6 100.0 3 0.5 100億円以上 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 ▲ 100.0 ― 1 0.3 1 0.2 26 17 23 27 27 22 22 31 39 42 44 34 551 100.0 合計 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 42 23.5 100.0 14年4月~15年2月合計 2013年以降累計 構成比 構成比 前年同期比 件数 (%) (%) (%) 55 15.6 205.6 77 14.0 件数 61.5 353 100.0 ― 119.3 14.9 3 2015/3/5 第 5 回 : 「円安関連倒産」の動向調査 5. 主な倒産事例 ① 水産物加工の丸三北栄商会(北海道、負債 23 億 8700 万円)は、大手スーパーストアや水産業 者筋を主な得意先に、2013 年 9 月期には年売上高約 28 億 6900 万円を計上していたが、近時 の急激な円安進行による原材料の高騰からコスト負担が増大し、資金繰りに支障を来したため、 2 月 2 日に民事再生法の適用を申請した。 ② 衣料品企画販売のクリスタルフインテック(広島県、負債 22 億円)は、2014 年 2 月期に年売上高 約 17 億 8000 万円を計上するなど、近年の売上拡大の一方で、低価格商品が主体のため国内で の競合が厳しく、収益性は低調に推移し、利益の蓄積が十分に進んでいなかった。このため、 商品構成の見直しや販売価格の引き上げなどを進めて対応していたものの、2013 年以降の急 速な円安の進行が収益をさらに圧迫、支え切れず、2 月 26 日に自己破産を申請した。 6. 今後の見通し 全体の倒産件数は減少基調が続くなか、2 月の「円安関連倒産」は再び増加に転じた。個別企業 を見ると、原油価格の下落を受けて運送会社の倒産増加が一息ついた一方で、ここにきて増加が 目立つのが、仕入れの多くを輸入に頼る食品や繊維・アパレル業者だ。これらの業界は従前から 同業者間での厳しい競争にさらされ、収益性に乏しい状況が続いていた。そうしたなかでの円安 による輸入仕入れコストの上昇がさらなる収益悪化を招いており、経営体力が限界に達した企業 から倒産に追い込まれている。ここにきて、地場業界大手クラスや業歴の長い老舗業者の倒産も 目立つようになってきた。今後も引き続き「円安関連倒産」は高水準で推移する見込みであり、 今回の円安局面の影響を受けた“突発的な大型倒産”にも一定の警戒が必要だろう。 【 内容に関する問い合わせ先 】 (株)帝国データバンク 東京支社 情報部 TEL 03-5919-9341 内藤 修 FAX 03-5919-9348 e-mail osamu.naitou@mail.tdb.co.jp 当レポートの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。 当レポートはプレスリリース用資料として作成しております。報道目的以外の利用につきましては、著作権法 の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 4
© Copyright 2024 Paperzz