IT 企業とマネジメント

ドラッカー「マネジメント」研究会
「IT 企業とマネジメント」分科会 2008-2009 年度成果報告
<目次>
はじめに ...............................................................................................................................1
1
IT 企業とは何か ........................................................................................................... 2
1-1 IT
1-2
企業の定義........................................................................................................... 2
「IT 企業」の動向(池 真之) ................................................................................ 2
2 事例研究報告................................................................................................................... 4
2-1
Apple の成功とドラッカー・マネジメント(梅田 友隆) ...................................... 5
2-2
IBM Corp.におけるプロセス・イノベーション事例(升岡 勝友) ........................ 7
2-3
三技協(片貝 孝夫) ............................................................................................... 9
2-4
オムロン・フィールド・エンジニアリング(片貝 孝夫) .................................... 10
2-5
SAS インスティチュート(後藤 辰夫) ................................................................ 12
2-6
グーグル(伊藤 年一).......................................................................................... 15
3 今後の事例研究に向けての試論 .................................................................................... 17
3-1
成功事例導出とドラッカー「マネジメント」視点からの考察............................... 17
3-2
一般的条件 ............................................................................................................. 17
3-3
ドラッカー条件 ...................................................................................................... 17
まとめ・参加者のコメント................................................................................................. 18
分科会参加者プロフィール................................................................................................. 25
はじめに
本稿はドラッカー「マネジメント」研究会の参加者が行った IT 企業の事例研究に関する
報告書である.当分科会がドラッカー「マネジメント」の研究対象ジャンルとして「IT 企
業」を選んだ理由を以下にあげる.
「IT 企業」が産業革命にも匹敵する IT 革命の担い手として成長分野に位置している
・
こと.
・
そこで働く人々が今後,産業界で大多数を占める「知識労働者」で構成されている
こと.
IT 業界の大部分を占める IT コンサルタント,SE,プログラマー,オペレータ,保
・
守サービスエンジニアなどはドラッカーのいう「テクノロジスト」(特に知識労働者
でも知識労働と肉体労働の両方を行う人を呼ぶ(1))であること.
・
テクノロジストを主体に組織された「IT 企業」の「マネジメント」を研究すること
が21世紀の企業組織運営を成功させるための知見や気づきを得ることに結びつく
と思われること.
【注】
(1)
「しかし,きわめて多くの知識労働者が,知識労働と肉体労働の両方を行なう.そのような人たち
を,特にテクノロジストと呼ぶ.」
(ドラッカー『テクノロジストの条件』p.86,ドラッカー『明日を
支配するもの』p.177)
© 2009 ドラッカー「マネジメント」研究会・「IT 企業とマネジメント」分科会
1
1
IT 企業とは何か
1-1 IT 企業の定義
一口に「IT 企業」と言ってもその対象は広く,一般に顧客に対してITを提供する以下
の図にあるような呼称の業種が「IT 企業」と言われている.
本稿,及び当分科会では厳密な定義を避け,「IT 企業」とは「顧客に IT を利用したシステ
ムやサービスを提供し,その経営に貢献できる企業」とする.
コンサルティング・
シンクタンク
ハードウェア
インテグレータ
ベンダー
通信・ネットワ
ーク
システム
顧客
ソフトウェア
(ユーザー)
保守サービス
ベンダー
インターネット
サービス
運用・サポート
1-2 「IT 企業」の動向
(池 真之)
※技術動向
・ エンタープライズの IT においては,汎用機,クライアント・サーバー,ウェブ・アプ
リケーションというアーキテクチャーの流れがあり,技術は急速なイノベーションを実
現するとともに,廉価化,陳腐化の影響を受けるようになってきた.
・ 1990 年代半ばのインターネットの爆発的普及は,IT 業界に革命をもたらした.汎用機
やクライアント・サーバー型アーキテクチャーにおいては,システムの連携が常に課題
であったが,インターネットによって,あらゆるコンピュータが,共通のネットワーク
基盤の上でグローバルに連携できるようになった.
・ PC,PDA,携帯電話(スマートフォンを含む)がこの 10 年で普及し,高速インターネ
ット,モバイルインターネットも当たり前のものとなった.
・ この 2,3 年,SOA,Web2.0,仮想化,クラウド・コンピューティングが主題になって
おり,もはや技術のイノベーションではなく,サービスや IT の利活用が中心テーマと
なっている.
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2
※海外企業動向
・ この 10 年,IBM や HP は,製品単体販売でなく,ハード,ソフト,サービスの垂直統
合型にフォーカスしてきた.
・ SAP,Oracle などのソフトウェア企業は,データベース,ミドルウェア,アプリケー
ション,ビジネス・インテリジェンスなどの関連企業を次々と買収し,ソフトウェア・
スタックにおける水平分業型にフォーカスしてきた.
・ 90 年代のインターネットの波に乗り,UNIX サーバーで急成長し,Java を生み出した
コンピュータ・メーカーの Sun Microsystems を,Oracle が買収したことは,水平分業
型から新たなIT企業統合化の流れを加速することになると考えられる.
・ SalesForce,Google などの SaaS 型企業は,顧客に技術を意識させずに,必要なサービ
スを継続的に提供することで台頭してきた.
・ マイクロソフトは Desktop において,OS と Office によった独自の確固としたポジショ
ンを築いており,最近ではサーバーOS やクラウド・コンピューティングにも注力して
いる.
・ アップルはカリスマ経営者,ジョブズのもとで独自開発のハードウェアや OS,コンテ
ンツサービスを武器に特にマルティメディアを中心としたモバイル端末の世界でユニ
ークなポジショニングを築いている.
・ インドや中国のソフトウェア産業の興隆が目覚しく,所謂「オフショア」開発で業績を
伸ばしている.その反面,日本の委託側の技術の空洞化が問題になってきている.
※国内企業動向
・ 富士通,NEC,日立などの大手ベンダーは IBM 同様ハード,ソフト,サービスの垂直
統合にフォーカスしてきているが OS,ミドルウェアなどのキーテクノロジーは海外製
の依存度がまだ高く,国内市場中心の展開のため事業の成長が鈍化している.
・ 中小ソフトウェア会社は多重下請け構造の中の下流で受託開発や派遣をしているとこ
ろが大部分で,コストダウン要請や大手のオフショア開発による作業減で厳しい環境に
立たされている.
・ ソフト開発現場は,品質,コスト,時間,リスクというプレッシャーに直面し,要員に
対するメンタルなサポートを必要とするケースが増加傾向にある.また,新卒の学生や
転職者が IT 企業を敬遠する傾向もある.
・ 日本発のソフトプロダクト輸出や大手ベンダーの海外進出は進まず,限られた国内のパ
イを国内 IT 企業が分けあっている状態にある.日本の IT 企業は,個々の要素技術やカ
スタマイズ力においては強みを持つが,海外市場シェアは低い.従って,日本国外のユ
ーザーに,いかにグローバルなビジョンを伝えるかが,日本の IT 企業の今後の課題で
ある.そのためにもグローバルで,全体感のある視点を持つ人材を育てることが急務と
なっている.
・ IT 企業のうちでもソフト開発やインターネットサービスの分野は新規参入障壁が比較
的低いため,起業数は多いが,IT 市場の飽和感という外的な要因と技術力はあるもの
のマネジメント面での人材の薄さという内的な要因から成長が止まってしまうケース
が目立つ.
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3
2
事例研究報告
初回の分科会ではある程度,的を絞り「日本の IT 企業が持つ経営課題をドラッカー「マ
ネジメント」に照らし解決策を見出す」という進め方の提案があった.
しかしながら,第1章の「国内企業動向」にあるような課題からスタートすると今日的
な話題や日本特有の問題に議論が向かってしまい,本来のドラッカー「マネジメント」研
究から外れてしまうのではないかとの意見があり,日本も含めた世界の IT 企業からリファ
レンスとなるような成功事例を各メンバーが持ち寄り,ドラッカー「マネジメント」の視
点で研究することになった.
各事例企業と執筆者は以下の通りである.
1.Apple(梅田 友隆)
2.IBM'(升岡 勝友)
3.三技協(片貝 孝夫)
4.オムロン・フィールド・エンジニアリング(片貝 孝夫)
5.SAS インスティチュート(後藤 辰夫)
6.グーグル(伊藤 年一)
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2-1 Apple の成功とドラッカー・マネジメント
1976 年の創業以来,イノベーティブな製品を次々と世に送り出すアップル社
そのアップル社の成果(Out put)を出すための「ものづくりの姿勢」
,
「組織づくり」を中
心にアップル社の活動をドラッカー「マネジメント」視点から検討.
(※スティーブ・ジョブズ語録やアップル研究本・セミナー資料等を参考に作成)
[アップルが生み出してきたイノベーティブな製品]
・Apple II
・Macintosh
・iPod ・iTunes
・iPhone
■アップルのものづくりの姿勢→アップルは社員の能力とやる気をひきだしている
・なによりも顧客志向,世界を変えるという志,非相対思考(Apple と MS は比較できな
い)
・『アイデアの所有権を主張しない.
』
・『良い芸術家はコピーする,最高の芸術家は盗む』
・『世界初のアイデアである必要はなく,世界初の成功であればいい.
』
・フォーカス!とブラッシュアップ!引き算のデザイン.もっとシンプルに.
・ユーザーの観察から生まれる改良
(ドラッカー・マネジメントの視点)
→私はではなくわれわれはで考える
→知識労働者が生み出すのは知識,アイデア,情報である
→最も重要なことに集中せよ
■アップル社のフラットな組織
・1エンジニアが,経営者に直接意見を言える雰囲気(経営者がジーンズで歩き回る)
・(秘密なものを除き)全社員が自社の最新動向に関心がある.
・少人数のチーム体制で徹底的に可能性をポジティブにディスカッション.
・ NIH(Not Invented Here)から社外の活用.社外も含めた徹底したディスカッション.
・権限委譲,コミットメント ←「お前ならもっと凄いことができるはずだ.」
・共通のビジョンでまとめあげる
(ドラッカー・マネジメントの視点)
→知識労働者が生み出すのは知識,アイデア,情報である
→知識労働者の時代はアウトソーシング
→強みを活かす!
Q.カリスマは不要?結局スティーブ・ジョブズというカリスマ(経営者)の力では?
→エクゼクティブという別解がある?『経営者の条件』終章 P.222~223
(一部抜粋)
組織は,優秀な人たちがいるから成果をあげるのではない.組織の水準や習慣や気風によ
って自己開発を動機づけるから,優秀な人たちを持つことになる.そして,そのような組
織の水準や文化や気風は,一人ひとりの人が自ら成果をあげるエグゼクティブとなるべく,
目的意識をもって体系的に,かつ焦点を絞って自己訓練に努めるからこそ生まれる.
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Wired Vision 2009 年 1 月 21 日「ジョブズ氏の後継者」
:ティム・クック氏とはどんな人物
か
http://wiredvision.jp/news/200901/2009012121.html
Steve Jobs の病気療養中 Apple 社を率いる最高執行責任者(COO)Tim Cook についての記事
「実はもう長いこと,Apple 社の運営は Cook 氏が行なっている」という見方.
【参考情報】
・米 FORTUNE 誌: 2009 版『世界で最も称賛される企業』No.1
World's Most Admired Companies
http://money.cnn.com/magazines/fortune/mostadmired/2009/snapshots/670.html
・米ビジネスウィーク誌: 2008 年版『世界で最も革新的な企業 50』No.1
The 50 Most Innovative Companies
http://bwnt.businessweek.com/interactive_reports/innovative_50_2009/?chan=magazine+channel_in%
3A+inside+innovation
・Apple プレスリリース:2009 年度第 1 四半期の業績
http://www.apple.com/jp/news/2009/jan/22results.html
【参考文献】
『経営者の条件』(P・F・ドラッカー著,ダイヤモンド社,1995)
『経営革命大全』(ジョセフ・H・ボイエット他著,日本経済新聞社,1999)
『アップルとグーグル』(小川浩,林信行著,インプレスR&D,2008)
セミナー『モノづくりイノベーション』テキスト
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6
2-2 IBM Corp.におけるプロセス・イノベーション事例
※経営状況の悪化
1993 年,IBM は経営危機に直面していた.それまでエクセレントカンパニーとして高収
益・高成長を誇ってきたが,1990 年から売上は横ばいかやや減少気味で,営業利益は年々
低下し 1993 年にはついに赤字に転落してしまい,経営の立て直しが喫緊の課題であった.
赤字転落の原因は,成長に伴う規模の拡大に加え,かつての成功体験に縛られ前例主義・
形式主義によりビジネススピードが鈍化し技術革新の激しいコンピュータ業界についてい
くことが困難になったことによる.非効率なオペレーションによる膨大な経費,製品開発
や納品に要する長いサイクルタイム,国別に重複した情報システム投資,市場ニーズにあ
わないスキル集団,チームワークの欠如と社内コミュニケーションのまずさ,社内指向の
企業文化等々であった.
※イノベーションの視点
ドラッカーはイノベーションのための機会を7つあげている.1.予期せぬ成功と失敗を利用
する 2.ギャップを探す 3.ニーズを見つける 4.産業構造の変化を知る 5.人口構造の変化に
着目する 6.認識の変化をとらえる 7.新しい知識を活用する
を探す
である.さらに,2.ギャップ
では①業績ギャップ ②認識ギャップ ③価値観ギャップ ④プロセス・ギャップに
ブレークダウンしている.(『イノベーションと企業家精神』P.15)
当時,IBM は経営を抜本的に立て直すためのイノベーションを強く求められており,その
機会として,ドラッカーの言う②ギャップを探すことによりプロセス・イノベーションの
実現を目指した.
それまでの内向なマネジメントスタイルを顧客に目を向け顧客視点か
ら出発したビジネス・プロセス・製品/サービス・企業文化に短期間で方向性を切り替え,
業績ギャップ,認識ギャップ,価値観ギャップ,プロセス・ギャップを的確にとらえると
ころから始めた.
結果,ジェフリー・ムーアの差別化・中立化・生産性向上のノベーションの3つの効果を
得ることができた.(『ライフサイクルイノベーション』P.5)
※プロセス・イノベーションの取り組み
1993 年,IBM は顧客指向を起点としてすべての仕事の枠組みを見直した.①グループ全体
のビジネス・プロセスの見直しと統合化(a.顧客とのリレーションの取り方のプロセスの標
準化等顧客指向・競争重視の追及,b.業種単位でのグローバルな営業体制等グローバルと地
域独自のバランス c.分社化方針から組織の再統合化等スケールメリットの追求)②.事業所
統廃合等コスト/経費の最適化③製品構成の見直し(a.電話ビジネスからの撤退等非採算ビ
ジネスの整理 b.グローバルなスキル管理ツール等サービスビジネス強化とスキル管理プロ
セスの見直し)④評価/報酬制度の見直し(a.360°評価等チームワークを推進するための相
互評価制度 b.チームワークを奨励する報酬制度)を実施した.
※プロセス・イノベーションによる効果
平均 48 カ月から 16 カ月へのハードウェア開発サイクルの短縮,それまで 60%であった納
期遵守率を 95%に向上,購買コストを 30%削減,経理コストを 50%削減等によりコスト
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7
を 80 億USドル削減し,売上,利益,株価,お客様満足度のすべてにおいて大幅な改善を
実現することができた.
※プロセス・イノベーションの成功要因
IBM がプロセス・イノベーションにより短期間で業績を回復させることができた要因とし
て,以下の点があげられる.①すべての組織レベルでの変革に対する強いニーズの確認 ②
すべての関係者にとって価値のあるビジョンの設定 ③実行権限を持つトップマネジメン
トのオーナーシップと継続的参加 ④ビジネス・プロセス,情報管理,組織体系,企業カル
チャーへの全社最適化アプローチの採用 ⑤迅速な意思決定のための権限の移譲 ⑥初期の
パイロットプロジェクトの確実な成功 ⑦達成可能な短期目標とチャレンジングな長期目
標の設定 ⑧プロジェクト管理手法の活用
また,成功の結論として“コミュニケート,コミュニケートそしてコミュニケート”と,
コミュニケーションの重要性が強調されている.
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2-3 三技協
<取り組み>
(1)すべての業務の作業手順を Web 上に登録し,どこからでも利用できるようにした.
ベテラン社員の仕事の95%はルーティンワークだった.そこでその部分を可視化し,新
人でもできることが増えた.
(2)構想塾で鳥瞰力,構想力を身につけ,指示待ち体質から提案体質へ変身した.
PBT(Performance Break Through)という問題解決の方法を編み出し,常に改善を心が
けた.
(3)現場で指揮していたベテラン社員を提案営業に回す.
新規顧客への企画提案が増えた.
(4)一行報告で失敗事例を共有する.
失敗しても責任追及はしない.それをサイバーマニュアル化しないと悪い評価になる.
<成果>
(1)人事や総務部門の仕事をサイバーマニュアル化し,部門は廃止.
本社経費が削減され,利益の出やすい体質になった.
(2)6年で利益35倍.
作業ノウハウ,失敗事例が共有され,ミスのない仕事ができるために,利益体質になった.
新規顧客の獲得.
(3)オプティマイゼーション・コンサルティング・サービスの事業化.
新規事業への進出.
<ドラッカー「マネジメント」との共通点>
ドラッカーは,技術と社会の進歩は,専門能力における卓越性の追及とともに,あらゆる
レベルにおける共通の目標への方向付けを必須とする,と言っている.
(『マネジメント 課
題,責任,実践』2008,中巻:p.72).三技協は,技術から経営,人事,マーケティングに
至るまで,ほとんどの情報を,社員自らが作成し,相互に共有・活用している.その結果,
新入社員ですら,自らの仕事と経営の視点の両方を持っている.
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2-4 オムロン・フィールド・エンジニアリング
<取り組み>
(1)作業環境改善と人事異動.
モラルが低下していたコールセンターの意識を改革するため,机やパソコンを新品に取替
え,フルネームの名札をつけさせ,会社がいかに期待しているかを,形で示した.東京と
大阪の責任者をスワップして,悪口を言えなくした.
(2)サポート状況の可視化と顧客との共有.
問題は現場のスキルではなく,マネジメントだった.そこで,電話受付,地方拠点,修理
担当,マネージャーが1案件について同時に見えるよう,状況の可視化を図った.さらに
顧客にも公開することで,督促電話の95%がなくなった.
<成果>
(1)出動回数の激減
事例データベースを参照して,コールセンターが電話で問題解決するケースが増え,年間
10億円近い経費削減になった.
(2)期待値のコントロールによるクレームの激減
顧客にコールセンターを見学してもらうことで,信頼をいただいた.電話受付から修理完
了までの,仕組みを理解していただき,その状況が顧客とリアルタイムに共有できること
を理解していただき,見学後の電話督促がほとんどなくなった.
(3)コールセンターがさまざまな賞を総なめした.
モラルの低かったコールセンターが,会社を引っ張る形になり,優秀なマネジメントを輩
出する部門になった.
(4)オムロン以外の製品サポート分野への進出.
それまで10%しかなかった,オムロン以外の製品保守売上が50%になった(2003
年)
<ドラッカー「マネジメント」との共通点>
ドラッカーは,マネジメント教育の目的は,人の能力と長所を最大限に発揮させ,成果を
あげさせることにあるとし,マネジメント教育を実り豊かなものにするには,組織や上司
が,これに積極的に参加し,奨励し,指導していかなければならない,と言っている.
(『マ
ネジメント 課題,責任,実践』2008,中巻:p.64).オムロン・フィールド・エンジニア
リングでは,社員を信じるところから改革のスタートを切った.それによって社員は自己
実現の動機を得た.目的は故障している機械を直すこと,これは顧客も含めて全員共通の
目的だ.だから情報共有した.それによって対立ではなく協調の機運が生まれた.社員は
自らの目線を高く掲げ,積極的に行動するようになり,ますます有用な人材になっていっ
た.
《三技協とオムロン・フィールド・エンジニアリングの感想》
両社とも,社員を信頼しているところからスタートしている.そして鉄の意志を持って現
状を打破しようとしている.そのために IT を駆使した情報共有の仕組みを徹底的に構築し
た.その結果,現在では,その仕組み自体がビジネスの元となり,IT のユーザー企業から,
IT を利用してビジネスをする IT 企業へと事業分野を拡大してきた.既存ビジネスを高度に
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IT 化することにより,イノベーションが可能となるということを,強く印象付けられた.
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2-5 SAS インスティチュート
[1]SASインスティチュートのマネジメントと成果
(1)SAS インスティチュート社の概要
◇米ノースカロライナに中心拠点を持つ,統計解析ソフトを核としたビジネス・インテリ
ジェンス・ソリューションのリーダー企業.1976 年の設立以来 2000 年迄 24 期連続(*1)で
年間売上 2 桁成長を実現,数十億ドル規模の事業へと成長した.
(*1・・・2001 年 7 月現在時点での社内 web 広報より.2000 年度売上げは 11 億 2,000
万米ドル,従業員数は 8,000 名強,世界 162 ヵ所に営業所を配置,37,000 ヶ所で顧客サー
ビスを展開.<最新の広報による 2007 年売上高も,過去最高の 21 億 5,000 万米ドル>)
◇フォーチュン 500 企業の約 90%が SASR ソフトウェアを使用.そのうちコカコーラ社,
エクソン社,フォード社,IBM 社などの多数の企業が,20 年以上 SAS 製品を使用.同社
が年単位でライセンス供与(*2)を行っているビジネス・インテリジェンス・ソフトウェ
アのライセンス更新率は 95%を超える
(*2・・・SAS のソフトウェアは全て年間使用ライセンス契約で,
「売切り」形式の販売は
行っていない)
(2)SAS インスティチュート社の経営理念
①徹底した ES(従業員満足)経営・・・離職率 3%未満
( ES ⇒ CS⇒成果 )
②業界一の研究開発努力・・・毎年売上の 30%以上を研究開発に投入
③株式を公開しない・・・「利益の 90%がその日の夕方には支出で消えてしまう」 (SAS
の共同設立者で CEO のジム・グットナイト氏)
・常に従業員を企業にとって貴重な存在として位置付け,革新的な意思決定支援ソフトウ
ェアだけでなく,働きやすい環境と顧客中心主義のビジネス・アプローチを展開
・「結局のところ,企業を成功に導くのは技術を扱う人間なのです」(同,グットナイト氏)
・「株主の顔色を気にせず,徹底して社員の為に設備投資している.株式を公開して利益を
追求していけば確実に粉飾決算に手を染める結果になる」
(同,グットナイト氏)
・「報酬の水準は業界や地域の平均的な水準に合わせている」「成果につながるモチベーシ
ョンに報酬は必須ではない」(同社マネージャー談)
(3)SAS インスティチュート社の ES への取り組み
・ノースカロライナの同社敷地内に「スポーツジム」,
「プール」,
「ゴルフ場」,
「800 人を収
容できる託児所」,その他リフレッシュ施設などを完備し,それらの全てを社員が何時でも
自由に使える様になっている
・それらの全ての企画,運営から芝刈りなどのメンテナンスに至る迄,専属の正社員の担
当者を置き,彼等は常にその充実のための予算申請を直接 CEO に申し出る事が出来る
・ 2008 年 の 米 フ ォ ー チ ュ ン 誌 (*3) 「 最 も 働 き が い の あ る 会 社 ベ ス ト 100(100 Best
Companies to Work For)」の 29 位にランクされ,11 年連続の選出となっている.
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更に
12
「待遇の良い企業トップ 25 (25 top-paying companies)」,
「社内に良いスポーツジムがある
企業トップ 6 (one of six with the best gym)」,「医療保険(Health Care)」,「子育て支援
(Childcare)」,「ワークライフバランス (work/life balance)」の各部門でもランクインして
いる.
【出典】
◇米国 SAS インスティチュート社創立 25 周年を迎える
~50 周年に向け前進~(2001 年 7 月 26 日)
・・・
(*1)
http://www.sas.com/offices/asiapacific/japan/news/press/200107/26b.html
◇TBS 「CBS ドキュメント」(2003 年 2 月 2 日放映) 「SAS Institute Inc の紹介」
◇日本テレビ「世界丸見えテレビ特捜部」(2003 年 9 月 16 日放映)
「アメリカ社員天国(SASインステ
ィテュート)」
◇CNN
Money.com 「 FORTUNE
100 Best Companies to Work For 2008 」・ ・ ・ (*3)
http://money.cnn.com/galleries/2008/fortune/0801/gallery.bestcos_toppay.fortune/24.html
[2]ドラッカーの著述における関連箇所との対比
(「マネジメント【エッセンシャル版】」
「第 3 章
仕事と人間」 P53~82 を中心に対比)
(1)マネジメントと仕事(「マネジメント【エッセンシャル版】」P57~「仕事と労働」)
・マネジメントは生産的な仕事を通じて働く人たちに成果をあげさせなければならない
(2)仕事への責任
(「マネジメント【エッセンシャル版】」P73~「責任と保障」)
・仕事がまず第一である.~そもそも仕事そのものにやりがいがなければ,どうにもなら
ない~家族的マネジメントの信奉者は,住宅や医療などの福利に焦点を合わせた.だが,
それらのものは重要ではあっても,やりがいのある仕事に取って代わるものではない.
(3)職場コミュニティ
(「マネジメント【エッセンシャル版】」P75~)
・働く者に成果をあげさせるには,この職場コミュニティに実質的な責任を与える必要が
ある.
・(従業員食堂,休暇の調整,レクリエーション活動など職場コミュニティの)運営が上か
ら(マネジメントによる意思決定)のものであるかぎり,いかにうまく行っても士気は向
上しない.これらの活動に関わる意思決定の責任は,その意思決定の影響に直接関わると
ころに与えなければならない.
(4)人こそ最大の資産
(「マネジメント【エッセンシャル版】」P80~「人は最大の資産である」)
・人のマネジメントとは,人の強みを発揮させることである.
・組織の目標は人の強みを生産に結びつけ,人の弱みを中和することにある.
・人は弱い.問題を起こす.~人とは,費用であり,脅威である.
・人は企業の所有物ではない.売れないものは資産ではない.
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13
<マネジメントの実行のステップ>
①仕事と職場に対して成果と責任を組み込む
②ともに働く人たちを生かすべきものとして捉える
③強みが成果に結びつくよう人を配置する
(5)IBM (1940 年代頃;アメリカ)の例
~
責任の組織化
~
(「マネジメント【エッセンシャル版】」「IBM の試行錯誤」P71~72 より抜粋,要約)
IBMは「権限」の組織化(「民主的マネジメント」や「参加型民主主義」)ではなく,「責
任」の組織化を行った.
①職務の拡大に体系的に取り組む
(「機械の組み立て」や「完成部品の検査」などを新し
い職務に追加)
・個々の作業を可能な限り単純に設計
・誰でもこなせるよう訓練
・それらの作業のうち少なくとも一つは,熟練技能や判断力を必要とするものにした
・複数の作業を行わせることによって,仕事のリズムに変化
・生産性は大幅に向上
・働く者が職務に誇りを持つように
②監督の職務の変更
(「監督」ではなく「アシスタント」を配置)
監督や職長の代わりに実際に働く者が仕事を理解し,そのための道具を使えるようにする
「現場アシスタント」を配置
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14
2-6 グーグル
事例をドラッカー「マネジメント」視点から,より客観的に評価する手段はないものか
を追求し,試験的にグーグル社を例に取り上げ,適用した結果である.
評価条件
評価項目
評価結果 評価根拠
●一般条件
『一般条件』
とは「マネジ
メント」の8
つの目標のう
ち「資金と資
源」,
「利益」
,
「生産性」を
中心とした定
量的評価条件
財務指標(収益性)
(安全性)
(成長性)
(生産性)
市場シェア
時価総額
就職人気度
存続年数
◎
◎
○
◎
◎
◎
◎
△
‘08 の売上高営業利益率=30%,純利益率=19%
‘08 の流動比率=876%
‘06~’08 の平均売上高成長率=53%(直近 31%で減速傾向)
‘08 の労働生産性=67 万ドル(6400 万円)
検索のシェアが 60.4%(’08 年 7 月月間検索回数シェア)
‘09/3/27 現在 1,090 億ドル(M/S1,610,IBM1,210)
あらゆる職種で求人倍率が 100 倍を超える
'08 年 9 月に創立 10 周年
●ドラッカー
条件
『ドラッカー
条件』とはミ
ッション/ビ
ジョンの組織
への浸透度と
ドラッカー
「マネジメン
ト」の8つの
目標のうち,
一般条件以外
の定性的評価
条件(生産性
は一般条件と
併存)
①ミッション/ビジ
ョンの組織への浸透
度
◎
・
「世界中の情報を組織化し,それを誰からでもアクセス
できるようにする」→[Web 上での民主主義]→「世界を
よりよい場所にする」を社内に徹底している
②マーケティング
◎
・
顧客に焦点を合わせ,顧客を巻き込んだ製品開発と普
及が第一で売上,市場シェア,利益は 2 の次
「検索エンジンの構築」から,「検索連動広告」という高
収益事業を創造
事業アイデアはユーザー評価による市場原理に基づい
て淘汰される
・
・
③イノベーション
◎
・
・
・
④生産性
◎
・
・
・
・
・
・
技術者は 80%の時間を既存のプロジェクトに,20%は
自由な研究テーマに費やす(20%ルール)
「失敗は迅速に,そうすれば,また挑戦できる」とい
う失敗をも奨励する風土
管理職は 70-20-10 ルール(70:コアビジネス,20:コ
ア関連プロジェクト,10:まったく新しい事業などに
負の競争が行われないようデータを全社員が共有し,
透明性を維持する
全員参加ミーティンを毎金曜に開催し重要開発案件,
戦略の方向性,経営陣の考え方披瀝と表彰などを行う
自己評価 50%,同僚による評価 50%.25 個の基準で
査定し,成績優秀者の特徴をモデル化した人事評価制
度
平均 3 人のチームで設計,開発,サービス投入までを
もの凄いスピードで完結させる(小規模自己管理型)
重要な意思決定はすべての利害関係者が参加し,意見
の相違を奨励しながらの協議によって行われる
徹底的にフラットで大胆に分権化された組織
⑤マネージャーの能
力 開発
△
・
3人の経営者が揃って SAS などの知識労働者処遇で定
評のある企業を訪れ,知恵を拝借
⑥社員の能力開発
△
・
・
社内技術者に対して継続的な学習と教育の場を提供
20%ルールが技術者と管理職以外には適用されていな
い
⑦CSR
○
・
無償の検索サービス,メールサービス,アプリケーションサ
ービス,ストレッジサービスを全世界に提供している.
「ストリートビュー」などのサービスがプライバシー侵害など
の摩擦を生んでいる
・
出展:「経営の未来」・ゲリーハメル著・日本経済新聞出版社 2008,「Web 進化論」・梅田望夫著・ちく
ま書房 2006,ダイヤモンド HBR2008/9「革新を続ける組織」.
評価結果凡例:◎ ・・・優れている,○・・・比較的良好,△・・・普通かそれ以下
© 2009 ドラッカー「マネジメント」研究会・「IT 企業とマネジメント」分科会
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グーグル社 CEO のエリック・シュミット氏は「グーグルでナレッジワーカーのマネジメ
ントに取り組んでいるがその要諦をドラッカー氏はずっと以前から理解していた」とコメ
ントしている(日経コンピュータ
2009/2/24 号p27).今回の事例研究でグーグル社がド
ラッカーの言う「マネジメント」の「成果」を十二分に享受していることが明らかになっ
た.特に IT 企業がグーグル社から学ぶべきは「マーケティング」,
「イノベーション」そし
て「生産性」の 3 つであろう.
「マネージャーの能力開発」の評価が低いのはフラットな組織と徹底した情報共有化に
より中間マネージャー不要の組織になっているのかもしれない.また,「社員の能力開発」
の評価が低いのは「選りすぐりの人材」による自発的継続学習が日常業務の中に浸透して
いるからかもしれない
© 2009 ドラッカー「マネジメント」研究会・「IT 企業とマネジメント」分科会
16
3
今後の事例研究に向けての試論
グーグル事例で試みた評価方法を検証し,発展させることからも如何に試論をあげる.
3-1 成功事例導出とドラッカー「マネジメント」視点からの考察
今回は分科会メンバーが知りうる限りの「IT 企業」として成功している事例企業を探し
出し,それらに対してドラッカー「マネジメント」視点から考察するという方法で研究を
進めた.ドラッカー「マネジメント」は最終的に組織が「成果」を上げられたかどうかで
「マネジメント」の評価なされるがその評価の基準は目標設定の中にあると考えた.そこ
で,われわれはドラッカー「マネジメント」の8つの目標(①マーケティング,②イノベ
ーション,③生産性,④「資金と資源」,⑤「利益」,⑥マネージャーの能力開発,⑦社員
の能力開発,⑧CSR)を評価項目とすることにする(2).
目標の中身はそれぞれの企業によって異なるので絶対評価はできないが,企業の評価基
準として公表されている財務状況や株価,各種ランク付けなどの定量的/相対的評価の可
能な項目でドラッカー「マネジメント」の目標の中の③生産性,④「資金と資源」,⑤「利
益」に対応する項目を「一般条件」とし,それ以外の目標を非財務的/定性的評価をする
基準を「ドラッカー条件」と呼ぶこととし,この2つの条件のバランスを重視することに
した.ただし,「生産性」は IT 企業の評価項目として最も重要であるため,2つの条件の
中に併存させることにする.
また,「一般条件」にあたる情報が乏しい未上場企業や中堅・中小企業の場合は実際に得
られた評価資料や社内情報から2つの条件を当てはめ,成功事例を探す.
【注】
(1)
ドラッカー『現代の経営(上)
』第 7 章「事業の目標」を参照されたい.
3-2 一般的条件
一般的条件,この条件は定量的/相対的評価尺度であり,具体的には以下を評価項目と
する.
①財務指標(収益性,安全性,成長性)②市場シェア③株価,④存続年数,⑤就職人気
番付など.
3-3 ドラッカー条件
この条件はまず,ドラッカー「マネジメント」の出発点でもある「ミッションとビジョ
ンの組織への浸透度」を評価し,次にドラッカー「マネジメント」の8つの目標のうち,
資金と資源,利益については一般条件での定量的評価尺度に委ね,残る以下の6つを非財
務的/定性的評価尺度とする.
①マーケティング,②イノベーション,③生産性,④マネージャーの能力開発,⑤社員
の能力開発,⑥CSR
© 2009 ドラッカー「マネジメント」研究会・「IT 企業とマネジメント」分科会
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まとめ・参加者のコメント
(秋山幸子)
IT が普及し,20 世紀後半にはテクノストレスと呼ばれるものが一気に増加しています.
デジタル社会・バーチャル社会の中で繰り広げられるコンテンツは,決して人々の心を平
安にするものばかりでは無くなりました.
21 世紀は,20 世紀に積み重ねてきた【ネット社会の弊害】や,【テクノロジーと人間につ
いての共存・共生に伴う課題】に対して真摯に取り組む必要性が出てきています.
IT に関わることを避けられない現代人,企業人・IT 技術者にとってのストレッサーの大半
は,進化する技術への適応ができない事.これは,「能力の限界を感じることがある」とい
う答えと同じ意味合いを持っているでしょう.高度なスキルやテクニックを身につけられ
ず振るい落とされていく人.自信を喪失していく人の多くは人間的には問題が無いと言わ
れている人も多いのです.そして,現代組織はフラット化を促進してきた結果,個人ベー
スの作業が増え,非常に孤独で引きこもり的な職場環境です.それは,対人関係能力を成
長させることなく,コミュニケーションする意欲さえ低下させているのです.
人は本来,自然との共生によって豊かな心やポジティブな心を形成してきた生き物でもあ
ります.自然と対極にある科学や IT 技術の発達の中においては,「自分らしく居られる.
自分らしく在る」という人間そのものの存在感さえも見失いがちです.
能力の限界,コミュニケーション能力の低下.この 2 点は特に改善に向けての余地が多く
あります.改善に要することは,基本的に【お互いの顔が見え,声が届く環境整備】と【セ
ルフマネジメント研修を取り入れる】ことです.この 2 点の充実度によって,更に高度な,
組織全体と個人のバランスを考慮した IT 企業・IT 技術者向けメンタルヘルスサポートが可
能になるのです.これは,21 世紀における組織管理の大きな課題なのです.
(池真之)
ドラッカーは,IT の中核をなすコンピュータについて,次のような洞察をする.
■ コンピュータは道具にすぎず何物の原因ともなりえない(経営者の条件 P.213)
■ コンピュータが計算を乗っ取ることによって,組織の末端の人間までがエグゼクテ
ィブとなり,成果をあげる決定を行わなければならなくなったからである.(同
P.216)
すなわち,コンピュータそのものは目的でなく,あくまでも人間の目標や目的を実現する
ための補助的手段ということである.
「IT 企業」の動向について研究する過程で,新興企業の多い IT 業界は,ドラッカーのマネ
ジメントの実践から最も遠かったが,であるがゆえに,実際にマネジメントを導入すると
効果が大きい業界ではないかと気づいた.
ドラッカーによる,経営者に贈る 5 つの質問(ミッション,顧客,顧客にとっての価値,
我々の成果,我々の計画)があるが,IT 企業の傾向としては,いかに早く IPO するか,い
かに四半期の成果をあげるか,いかに新しい(顧客にとって難解な)技術を生み出すかと
いう,内向きで閉鎖的な問いに偏ってきたのではないだろうか.新しい技術革新を行わな
い IT 企業に未来はないが,技術そのものに自己満足し,技術を目的化し,顧客にとっての
© 2009 ドラッカー「マネジメント」研究会・「IT 企業とマネジメント」分科会
18
価値を問うことのない IT 企業も短期的な成功はあれども,継続的な成長は困難である.
今日の IT 業界は,垂直統合と水平分散がクロスオーバーし,統合に向かいつつあり,成熟
期に入ったと考えられる.IT 企業が継続的に成長していくためには,未来のビジョンを明
確にし,企業内部の技術革新に加えて,外部への貢献に集中していく必要がある.IT ベン
チャーの新技術であっても,顧客,市場,最終用途から逆算することを怠れば,成果をあ
げ続けることができない.
IT 企業は,マネジメントの基本に立ち戻る時が来た.IT 企業の経営においては,開放的な
5 つの質問と,製品・技術のバランスを取ることが求められるのである.本質的に人間が幸
せにならなければ,どんな技術も無意味である.IT は人間を活かすものである.
(石川正宏)
私自身が途中からの参加でしたが,実際に経営に携わっておられます皆様に混じり,お
話などを聞かせていただけた経験は貴重なものでした.残念ながら現状では,こうした成
果を活用するという機会に恵まれてはおりませんが,何かあったときにはこの経験を利用
させて頂きたいと思います.
研究対象は,「IT企業」と一括りにされていましたが,皆様の発表を拝見させていただ
くうちに,そう簡単にひとまとまりにできるものでもないのだなと実感いたしました.持
ち寄った事例が海外に偏っていたことは確かですが,分科会の中で行われた日本と海外の
現状に対してのディスカッションなどは,参考になるものだと思います.また,
「三技協」
社の事例については,まさか同社の仙石社長がマネジメント研究会の方にご参加いただい
ているとは考えていなかったので驚きました.
最後の「まとめ」や,各事例の評価方法などについては,枠組みをがっちり固めるより
も,持ち寄った事例から派生したディスカッションなどを取りまとめながら問題提起をし
ていく,という手法もあったかと思うところです.その点については,他の研究分科会の
成果も踏まえて,今後の研究に活かしていければ良いのではないでしょうか.
(梅田友隆)
Apple はパーソナルコンピュータ,デジタルライフスタイル・アプリケーション,デジタル
メディア,携帯電話市場まで市場を拡大し,どの市場でも常に革新的な取り組みを行って
いる企業として評価していました.その評価のほとんどの部分はスティーブ・ジョブズの
個性(広告の天才,プレゼンの天才,デザインセンス etc…)によって成し遂げられてきた
との印象を持っていましたが,優秀な人材の確保,能力を発揮できるフラットな組織づく
りなど,ジョブズ(ひとりのカリスマ)に依存せずに成果を出せる経営の仕組みも垣間見
えた.
今回の事例研究では8つの目標(①マーケティング,②イノベーション,③生産性,④「資
金と資源」,⑤「利益」,⑥マネージャーの能力開発,⑦社員の能力開発,⑧CSR)の中で,
①②④⑤に関しては実際の製品や IR 資料,市場やアナリストの評価から客観的に評価でき
るが,⑥⑦に関してはもっと多くの書籍に目を通して検証するべきでした.
【次回に向けて】
個人的にスティーブ・ジョブズに対するバイアス(憧れ?)が相当かかっていたので,フ
© 2009 ドラッカー「マネジメント」研究会・「IT 企業とマネジメント」分科会
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ァンでない企業を選ぶべきでした.また,個性の強い経営者(創業者)が現在率いる企業
よりも中興の祖と呼ばれる経営者がいた企業の方が事例として研究しやすいのでは?との
印象も持ちました.
(後藤辰夫)
●SASインスティチュートの事例研究を通じて
SASインスティチュートはIT業界以外を含め多くの企業が視察に訪れている事でも,
その評価の高さが伺われます.そのマネジメントの特徴として「徹底した ES 経営(ES→
CS→成果)
」と,特に職場コミュニティ面を中心とした「責任の組織化(スポーツジュム
や託児所などの施設に企画,運営の責任を持つ専属社員を配置)」の2つがあげられます.
この企業では,従業員は顧客との関係を構築し維持・継続する大切は役目を担う者として
重要視され,経営者は従業員を下支えする事こそが仕事であると言い切る CS のお手本的な
経営思想が実践されており,その考え方にはドラッカーの思想と共通する点が多いと感じ
ました.
毎年売上の 30%以上を研究開発に投入しながら,画期的な技術開発力とともに創業以来 30
年以上にわたって,売上げ,事業規模を拡大,成長し続けており,その数値面での成果も
注目に値するものですが,SASインスティチュートの場合,それらの実態を担う従業員
の忠誠心や,取引顧客からの愛顧,他社や社会への情報公開や視察の受入れ等,広い範囲
に,継続的に与える感情面,質的側面を含む成果が次の成果やイノベーションに繋がる大
きな要素となっている様に思われます.
昨今では,どちらかというと経営者や株主の方を向いた短期的な利益結果を極端に重視し
たマネジメントが持て囃されがちですが,ここのところの「リーマンショック」や,「サブ
プライムローン問題」,
「エンロン事件」,
「投資ファンドによる相場の操作や企業買収」等,
社会・経済活動における成果としては,かえって逆効果となっているものも多く見受けら
れます.
今回の事例研究を通じて,企業にとっての「成果」の本質とは,単に金銭で測られる量的,
一元的,短期的なものではなく,その実態を担う「従業員」や「取引顧客」,更には企業の
土台となる「社会全体」により永く,より広範囲に与える質的な影響を含めて,多元的,
長期的な視点で測るべきではないかと強く感じました.
この分科会での成果指標であるドラッカー「マネジメント」の8つの目標(①マーケティ
ング,②イノベーション,③生産性,④「資金と資源」,⑤「利益」,⑥マネージャーの能
力開発,⑦社員の能力開発,⑧CSR)でみると,①,②,④,⑧に関して優れた取り組み
を独特の方法で非常に上手く展開している企業である様に見受けられました.
(坂田真吾)
研究会発足当初,研究の方向性を具体的に設定するのに多くの議論,時間を費やした.
結論として,今回のようなIT企業をサンプル的に取り上げ,各企業の取り組み等を収集,
分析するという方法となった.
私なりの理解でこの方法の目的・効果を表現すれば,ドラッカーがマネジメントの基礎理
論という土台を設けているところ,各企業の実践例を分析し,ドラッカー理論からの演繹
© 2009 ドラッカー「マネジメント」研究会・「IT 企業とマネジメント」分科会
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可能性を探り,一方で,各企業の実践例から帰納的に抽象的テーゼを発見し,ドラッカー
理論との親和性も含めて検討することで,ドラッカー理論に対する理解を深めるとともに,
これをもとに,実際の実務に有意義な理論,実践方法を模索,提示する,というものであ
る.
私は弁護士の仕事をしており,もとより,マネジメントもIT企業も門外漢である.従
って,議論を十分に理解できているとは思われないが,ともすれば日常業務に埋没しがち
な日々を送っている私にとって,各企業が業務の効率化,顧客満足,サービス向上のため
に行っている様々な工夫を知ることができたのは,大きな収穫であった.
(宗初末)
【IT 革命の一翼を担う】
わたしと IT との関わりは,ほぼ7年前の 54 歳の時からである.もともと文系 機械嫌い,
パソコンを操作することに慣れずに悪戦苦闘した.こんなもの叩き潰してやると思った回
数は数え切れない.株式会社ジェックに 1978~2007 年の間 30 歳から 60 歳の定年まで勤
務したが,こんなに辛い思いをしたのは初めての経験だった.しかし,耐えに耐え,今で
は何とか必要最低限の操作は行えるようになった.パソコンに慣れるために 2004 年 5 月
にスタートしたブログ( http://plaza.rakuten.co.jp/soken/)は以来一日も休むことなく書
き続け,30 万アクセスを突破し 6 年目に入ろうとしている.今ではパソコンは生活必需品
だ.
ドラッカーは「IT 革命において,コンピュータは産業革命の蒸気機関に相当する」と言っ
ている.蒸気機関の次に鉄道が出現するまでに 40 年.同様にコンピュータが登場してeコ
マース(電子商取引)が現れるまで,奇しくも 40 年である.そしてこれから起こることは誰
にも分からない.この乱気流の時代 焦らず,騒がず「わたし達は大きな時代の流れの中に
いるのを自覚する」こと,さらに目の前に起こる「様々な事象に右往左往することなく大局
観をもって仕事をする」ことが大切だ.と,ドラッカーは言っている.その発想と行動が,
結果的にわたし達一人ひとりが IT 革命の一翼を担うことになるのではなかろうか.
(升岡勝友)
IBM 社のプロセス・イノベーション事例は当時の経営再建を賭けた全社プロジェクトの
根幹をなすものである.
ドラッカーは,『企業とは何かを決めるのは顧客である.… 顧客が価値を認め購入するも
のは,財やサービスそのものではない.財やサービスが提供するもの,すなわち効用であ
る.企業の目的は,顧客の創造である. … 企業は二つの,そして二つだけの基本的な機
能を持つ.それがマーケティングとイノベーションである.マーケティングとイノベーシ
ョンだけが成果をもたらす』(「エッセンシャル版マネジメント 基本と原則」P.16)と述べ,企業
と顧客の関係およびそれに対する企業の機能に触れ,イノベーションが企業に強く求めら
れていると主張する.さらに,イノベーションについては,「いかなる企業にも,3 種類の
イノベーションがある.すなわち,①製品とサービスにおけるイノベーション,②市場に
おけるイノベーションと消費者の行動や価値観におけるイノベーション,③製品を市場へ
持っていくまでの間におけるイノベーションである.」
(「エッセンシャル版マネジメント 基本と
© 2009 ドラッカー「マネジメント」研究会・「IT 企業とマネジメント」分科会
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原則」P.31)と言及している.IBM 社のプロセス・イノベーションはこのイノベーションの
分類の 3 番目にあたる.IBM 社の立て直しはまさにドラッカーの経営理論に沿ったものと
言えるであろう.
その後,IBM社は顧客志向を明確に打ち出し,コンピューターハードウェアメーカーから
情報サービスカンパニーに転身し急速に業績を回復していったことは周知のとおりである.
IBM 社がドラッカーの理論をどこまで認識していたかは定かでないが,まさにドラッカー
の主張が証明されたといっても過言ではないと思われる.
ただし,今後これからの更なる成長を占うにあたり,IBM 社がいかにこれまでの成功体験
に拘泥せず,新たな取組みが行えるかが鍵となる.成功パターンの形骸化を阻止すること
が最も重要であろう.
(ファシリテーター:森岡謙仁)
●IT企業に見る「イノベーションと企業家精神」
アップルを創業したスティーブ・ジョブズは,
「Apple をクビになったことが最良のことだ
と後でわかった」
(2005.6.12,スタンフォード大学の卒業式での講演,You Tube)と述べ,
その後の5年間で,NeXT 社,Pixar 社で経営手腕を振るい,Apple が NeXT 社を買収した
のを機に,ジョブズは Apple に戻った.彼は,カリスマといわれ独善的な経営者像が一人
歩きしているのも事実だが,Mac,iPod,iPhone など革新的な商品を出し続けるジョブズ
には,ユーザーや技術者のファンが多いことは周知のことである.
ジョブズの人々を惹きつける魅力には,イノベーションの実績と一貫した企業家精神に
あると思う.すなわち,ドラッカーの云う「企業家精神とは,すでに行っていることをよ
り上手に行うことよりも,まったく新しいことを行うことに価値を見出すことである....
すなわち,企業家とは,秩序を破壊し解体する者である.シュンペーターが明らかにした
ように企業家の責務は,
『創造的破壊』なのである.(『イノベーションと企業家精神』p.3)
ジョブズと働く人々は,企業家精神を共有しイノベーションの共通体験を持つことにな
る.
一方,グーグルでは,企業家精神を発揮するためのマネジメントとして,一定時間を新
しいことに取り組むというルール順守を技術者と管理者に要求し実行させることで,イノ
ベーションを引き起こす原動力にしていることは明らかである.
「ちょうどマネジメントが,
現代のあらゆる組織において特有の機関となり,われわれの組織社会を統合する機関とな
ったように,いまやイノベーションと企業家精神が,組織,経済,社会における生命活動
とならなければならない.あらゆる組織がイノベーションと企業家精神をもって,正常に
して継続的な日々の活動としなければならない」
(p311,同書)と,ドラッカーが云ってい
るとおりである.
「イノベーションと企業家精神を創業時代から持ち続け,マネジメントチームの日常の
活動に組み込むこと」というIT企業の成功原則の一つを,今後のジョブズとグーグルの
マネジメントを観察することで確認できるのではないかと思う.
日本のIT企業にも良い事例が,たくさんあるはずだから,私をはじめ,そのような事例
を掘り出す努力を継続していくべきだろう.また,当分科会は,IT企業の成功事例をド
ラッカー「マネジメント」の視点で発掘し整理するという,我が国でも他に例をみない活
© 2009 ドラッカー「マネジメント」研究会・「IT 企業とマネジメント」分科会
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動のきっかけをつくったのではないだろうか.
(サブ・リーダー:片貝孝夫)
IT はイノベーションをもたらす最高のツールであることは誰もが認めるところだが,そ
れならば,IT 企業とは組織に変革をもたらすものでなければならない.
そう考えてきたとき,日本の既存のシステムインテグレータが,その役割を果たしている
かと考えると,必ずしもそうは言えない.むしろ,一般企業が自ら高度に IT 武装し,その
考え方やシステムを同業他社へ展開するという形の中にイノベーションがあった.
日本の IT 産業は,顧客のイノベーションのためではなく,自らの利益のために行動してき
た企業が非常に多いと感じる.これは,自らが IT のユーザーになった経験がないため,IT
を利用する感動を知らないまま長年仕事をする結果になっていることが原因の一つと考え
られる.
これから IT 産業を牽引するのは,インフラを支える会社,インターネットを利用してビジ
ネスをする会社,そして自らのビジネスを IT 化し外販していく会社であると思われる.
単に受託でシステムを開発し納めるというビジネスは淘汰されていくと思われる.
© 2009 ドラッカー「マネジメント」研究会・「IT 企業とマネジメント」分科会
23
(リーダー:伊藤年一)
まず,持ち寄った事例が海外に偏っていたことである.これは日本の IT 企業に成功事例
と少ないことを如実に表しているとも言えるし,事例がオープンになっていないからかも
しれない.その中でも日本の「三技協」社の事例は日本の中堅企業おけるドラッカー「マ
ネジメント」の実践例として特筆すべきものがあった.このような企業例を日本の中小 IT
企業に広めるお手伝いをすることがわれわれのミッションでもあることを強く感じた.
また,持ち寄った事例が成功事例と言えるかどうかはメンバー共通の評価基準が必要に
なった.ドラッカー「マネジメント」を実践しているかどうかという観点でいざ評価をし
ようとすると何を持って行うのかが問題となった.
まさに IT 企業という実業界を対象にしたことで,クローズアップされた問題でもあった
がよくよく考えてみると企業という組織においてドラッカー「マネジメント」の実践状況
を評価するに当たり,個々の企業や業界を超えた標準的評価方法があってもおかしくない
ないのではないかということに気づいた.
当分科会では試論としてドラッカー「マネジメント」の8つの目標を取り上げ,評価基
準に応用したが,この部分に限っても継続研究は非常に重要であると思う.
最後に分科会メンバーの知りうる範囲での事例収集と限られた時間での事例研究は決し
て満足のいくものではないが各事例におけるドラッカー「マネジメント」の視点からのコ
メントはさらに今後の継続的な研究の橋渡しの役目を担うであろう.また,IT 企業とは言
っても「国内企業動向」にあるような様々な課題を抱えており,大きい会社,小さい会社,
そしていろいろな業態があることを考えると,さらに的を絞った事例研究が必要であると
同時に,一方で規模の大小や業種,業態にとらわれない共通課題解決の研究を進め,それ
ぞれのドラッカー「マネジメント」を我々のものにしていくことが必要である.最後に,
当分科会の対し,場所の無償提供と様々なご助言を賜った森岡ファシリテーターに深く感
謝いたします。
以
© 2009 ドラッカー「マネジメント」研究会・「IT 企業とマネジメント」分科会
上
24
分科会参加者プロフィール
秋山 幸子(あきやま・さちこ)
産業心理カウンセラー.メンタルトレーニングを取り入れた自己管理と組織管理
強化を提唱.IT 系技術者・研究者のためのトレーニングには定評がある.
池 真之(いけ・まさゆき)
1966 年東京都で生まれ,福岡県で育つ.
東京大学教養学部教養学科アメリカ科卒業.
リクルート,外資系 IT 企業を経て,現在,ウェブルート・ソフトウェア株式会社代表取締
役.
石川 正宏(いしかわ・まさひろ)
1981 年東京都出身.
産業能率大学卒,立教大学大学院修了.
ドラッカー学会推進委員,渋谷油絵教室顧問(広報活動を管理).
梅田 友隆(うめだ・ともたか)
マーケティング会社を経て,株式会社ディレンマ設立.Web 制作・デザイン,Web マーケ
ティング・PR の支援を行う.また,ビジネスパーソン向け情報提供サイト BizHacks!の運
営も担当している.
後藤 辰夫(ごとう・たつお)
マーケティング会社勤務.リサーチやプロモーションの企画,提案,実施,及び
企業の人材育成プログラム,公開セミナーの企画・開発,プロモーション,実施・
運営を担当.
坂田 真吾(さかた・しんご)
弁護士.平成21年より,公務員として税法関係業務を取り扱う.「ドラッカー「マネジメ
ント」を法律実務にどのように活用するか」が現在のテーマ.
宗 初末(そう・はつすえ)
1947 年 10 月 8 日佐賀県生まれ.東京経済大学大学院 経営学研究科 経営学専攻研究生修
了.現在ドラッカー学会 推進委員,SOKEN 宗 初末研究室 代表.
升岡 勝友(ますおか・かつとも)
日本 IBM(株),SAP ジャパン(株)を経て,2002 年,(株)INPM を設立.
さらに 2009 年,IT ビジネス戦略策定のためのナレッジテック(株)を創設.
© 2009 ドラッカー「マネジメント」研究会・「IT 企業とマネジメント」分科会
25
森岡 謙仁(もりおか・けんじ)
本研究会ファシリテーター
経営・情報システムアドバイザー,1992 年,アーステミア有限会社を設立,代表取締役社
長.日経ビジネススクール等,セミナー講師.大手・中堅企業への経営改革・ITマネジ
メントの助言指導・社員教育を実施.
著書;『バランススコアカードで会社を強くする手順』(中経出版),『情報システム部ムダ
とりマニアル』(新技術開発センター)等.
片貝 孝夫(かたかい・たかお)
本研究分科会サブ・リーダー
IT コンサルタント.製造業およびソフト会社で基幹系システム開発に従事.その後,ソフ
ト会社経営.
著書;『パソコン驚異の10年史』(講談社ブルーバックス)
,『パソコン活用の手引き』(日
経文庫)等.
伊藤 年一(いとう・としかず)
本研究分科会リーダー.
現職はシステムコンサルタント.証券会社および外資系コンピュータ・メーカーのシステ
ム部門で基幹系システム開発に従事.その後,ソフト会社経営.
© 2009 ドラッカー「マネジメント」研究会・「IT 企業とマネジメント」分科会
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ドラッカー「マネジメント」研究会・「IT企業とマネジメント」分科会 2008-2009 年度成果報告
2009 年 6 月 30 日
発行
発行責任者
分科会責任者
編集・まとめ担当
森岡謙仁
伊藤年一,片貝孝夫
石川正宏
■お問合せ先
ドラッカー学会・ドラッカー「マネジメント」研究会・事務局
URL: http://drucker-ws.org/
E-mail: mngmnt@drucker-ws.jp
■本書は[非売品]です.
本書はドラッカー学会の支部活動/ドラッカー「マネジメント」研究会・
「IT 企業とマネ
ジメント」分科会の活動と参加者の研究成果を記録したものです.ドラッカー学会の趣旨
と「ドラッカー学会規約」を順守し使用してください.
また事前に許可なく,この研究成果を一般に公開もしくは配布することを目的に電磁的
記録媒体および書籍や冊子を作成することを禁じます.
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