循環システム工学科 http://www.js.yamanashi.ac.jp/ 169 エージェント学習系とゴミ有料化 山梨大学 工学部 循環システム工学科担当 准教授 伊藤 一帆 電 子 メ ー ル : ikazuho@yamanashi.ac.jp ホ ー ム ペ ー ジ : http://www.js.yamanashi.ac.jp/staff.html#ito 増 大 し つ づ け る ゴ ミ の 処 理 は 、世 界 中 の 都 市 に お い て 深 刻 な 問 題 と な っ て お り 、担 当 す る 自 治 体 は 、排 出 さ れ る ゴ ミ の 総 量 を 削 減 す る べ く 様 々 な 方 策 を 模 索 し て い ま す 。そ の よ う な 取 り 組 み の 一 例 と し て 、一 般 家 庭 ゴ ミ を 対 象 に 、処 理 費 用 を 排 出 者 に 一 部 負 担 さ せ る「 ゴ ミ 有 料 化 」政 策 が 、我 が 国 で も い く つ か の 自 治 体 に よ っ て 試 み ら れ て い ま す 。そ の 成 果 は 、自 治 体 に よ っ て 様 々 で 、排 出 ゴ ミ の 減 量 率 に お い て 、数 % か ら 5 0 % 程 度 ま で と か な り 大 き な 差 が 出 て い ま す 。ま た 、隣 接 自 治 体 へ の 不 法 投 棄 が 頻 発 す る と い っ た 副 作 用 の 発 生 も 報 告 さ れ て い ま す 。こ う し た 効 果 の 差 や 副 作 用 は 、負 担 金 額 の 設 定 、自 治 体 の 地 理 的 条 件 、人 口 密 度 な ど 多 く の 要 因 が 複 雑 に 絡 み 合 っ た 結 果 と し て 生 じ て く る た め 、各 自 治 体 が 、自 ら に と っ て 最 適 な 政 策 を 見 出 す の は 容易なことではありません。 本 研 究 で 目 指 そ う と す る の は 、こ う し た ゴ ミ 関 連 政 策 の 立 案 を 支 援 す る シ ス テ ム を 、計 算 機 科 学 に お け る 学 習 理 論 の 成 果 に 基 づ い て 構 築 す る こ と で す 。 ゴ ミ を 出 す 主 体 を コ ン ピ ュ ー タ 上 で 相 互 に 影 響 し あ い な が ら 動 作・学 習 す る エ ー ジ ェ ン ト と し て 定 式 化 し 、ゴ ミ 有 料 化 な ど の 与 え ら れ た 政 策 の 下 で 、そ れ ら が 全 体 と し て ど の よ う な 振 舞 い を「 創 発 」す る か を 観 察 し ま す 。そ の 結 果を利用し て、自治体 にとっての 有効な施策 を見出そう というのが もくろみで す。 171 流域における生物多様性の維持機構 山梨大学 准教授 岩田 智也 工学部 循環システム工学科担当 電 子 メ ー ル : t i wata @y aman ashi .a c.jp ホ ー ム ペ ー ジ : ht tp://w ww.j s.ya ma nashi. ac.j p/~ i wa ta 空から地上を見渡すと、森・川・畑・都市などがモザイク状に組み 合わさった景観が視野に飛び込みます。山地には森林が、平野部には 農耕地や市街地が広がり、それらを貫くように川は景観を走り抜けて 海に吸い込まれていきます。このように、川の流れによって様々な生 態システムが結びついた陸上の空間ユニットを流域とよびます。 流域内では、川は有機物や栄養塩の輸送経路の 役割を果たしています。流域内に入射した光エネ ルギーは植物の光合成によって有機物(化学エネ ルギー)へと変換され、その一部は川の流れによ って海洋へ運ばれていきます。河川空間を流れる このような物質は、生物による取り込みと排泄を 流 域 :Watershed basin 繰り返しながら流下することで、下流域の河川、湖沼、陸上、そして 海 洋 の 食 物 網 を 駆 動 す る 重 要 な 栄 養 源 と な っ て い ま す 。こ の こ と か ら 、 川は流域生態系の動脈ととらえることができます。 しかしながら、人間活動の増大は流域の動脈を大 きく改変してきました。大規模な土地開発や河川改 修 に よ る 流 路 の 単 調 化 、ダ ム・河 川 構 造 物 の 設 置 は 、 有機物や栄養塩類の輸送動態を大きく変化させてい ます。当研究室では、このような流域における人為 環 境 改 変 が 陸 上 -河 川 -海 洋 複 合 シ ス テ ム に お け る 生 物多様性に及ぼす波及効果を、野外調査により明ら かにすることを目指しています。 172 水質を調べることから健全な水環境を考える 山梨大学 教授 風間ふたば 工学部 循環システム工学科担当 電 子 メ ー ル : k fu taba@y aman ashi .a c.jp ホ ー ム ペ ー ジ : ht tp://w ww.j s.ya ma nashi. ac.j p/~k az ama/ 科学技術の進歩によって私たちの暮らしは便利になりました。しか し便利さの裏側には思いもかけない落とし穴が潜んでいました。例え ば、様々な化学物質が使われていますが、そのなかに生き物によくな い影響を持つものがあることがわかってきました。また、海外からた くさんの飼料や食料品が輸入されて私たちの食卓は豊かになりました が 、一 方 で 大 量 の 廃 棄 物( 食 品 残 渣 や 家 畜 の 排 泄 物 )を 生 ん で い ま す 。 これは肥料などとして使われますが、すべてが効率よく植物に吸収さ れるとは限らないため、じわじわと環境中に漏れ出し、川や湖の環境 に変化を起こしています。この他にも生活から出るたくさんのゴミや 廃棄物はどうなるのでしょうか。これらの中の成分が長い時間をかけ て土を汚し、最終的に水に入り、私たちに影響を与えることはないの でしょうか。私たちは皆、安全で快適な暮らしを望んでいます。しか し物質の循環経路は非常に複雑で、何がいつ、のように私たちの暮し に跳ね返ってくるか判りにくくなっています。 私の研究室では様々な水を調べ て い ま す が 、結 果 は 自 然 か ら の メ ッセージのように思われてなり ま せ ん 。そ の メ ッ セ ー ジ に じ っ と 耳 を 傾 け る こ と で 、自 然 界 で の 水 の密やかな循環経路を見つけた り 、水 中 に 存 在 し て い る 様 々 な 物 質の動き方を知ることが出来ま す 。そ れ を も と に 、よ り エ ネ ル ギ ー消費の少ない方法で持続的に 安全に水を使うためにはどうす れ ば い い か 、そ れ を 考 え て い ま す 。 173 甲府盆地西部の地下水の流れと起源 公共政策学とは? 山梨大学 工学部 循環システム工学科担当 准教授 門野 圭司 電子メール:kadono@yamanashi.ac.jp ホームページ:http://www.js.yamanashi.ac.jp/~kadono/ 国や地方自治体が公共的課題(個人的にではなく 、皆で協力し合 って、かつ税金を用いて取り組むことが必要と合意された諸問題) 研究対象 の解決に向けて実施されるさまざまな取り組み(環境政策や医 療・福祉政策、資源・エネルギー政策、教育政策、産業政策、交 通政策、都市・地域開発政策、安全保障政策、外交政策などなど) 政策プロセス(課題発見から評価まで)を司るメカニズムを解明 研 究 方 法 1 課題発見 〔例〕幾多の問題群の中から公共的課題を特定化 政策立案 〔例〕複数ある政策手段のなかから 1 つを選択 政策決定 〔例〕議会等での公開討論を通じた諸利害の調整 政策評価 〔例〕政策がどのような効果を発揮したのかを確認 ※自然的な制約条件や政治経済社会状況、思想や慣習、社会的立場の相違など、 さまざまな要素がどの範囲でどの程度にどのような形で相互作用しながら、 一連の政策プロセスを形成するに至ったのかを解明します。 政策プロセスを公共政策の理念に照らして批判的に検討 研 究 方 法 2 課題発見 政策立案 政策決定 政策評価 〔例〕公共的課題を特定する際に、声の小さな人々の意見も 平等に扱われたか 〔例〕経済効率だけでなく、社会的公正や環境保全なども考 慮に入れた総合的な観点から手段が選択されたか 〔例〕積極的な情報公開や徹底的な論議など、決定手続きに おいて透明性は確保されていたか 〔例〕人権を侵害しない形で政策目的を達成できているか ※公共の福祉(具体的には、思想・信条の自由や公正、環境保全、透明性、人 権保障など)の実現という広く合意された価値理念に照らして、一連の政策 プロセスに修正すべき点がないかを、価値理念同士の両立不可能性や他の活 動主体(企業やボランティア団体など)との関係にも配慮しつつ考察します。 174 Shall we study 環 境 経 済 学 ? 山梨大学 講師 喜多川 進 工学部 循環システム工学科担当 電 子 メ ー ル : k it agawa@ yama nash i. ac.jp ホ ー ム ペ ー ジ : http://www.js.yamanashi.ac.jp/~kitagawa/ 環境経済学の研究対象は、廃棄物、地球温暖化、自然保護、有害化 学物質などと多岐にわたるため、文科系と理科系のセンスが必要とさ れます。 ( 出 典 ) 高 月 紘 『 漫 画 ゴ ミ ッ ク 「 廃 貴 物 」 第 3 集 』( 日 報 , 1 9 9 5 年 ) p . 6 7 廃 棄 物 を 減 ら す た め に は 、リ サ イ ク ル だ け で は 十 分 で は な く 、大 量 生 産、大量流通、大量消費といった社会のしくみをかえること、すなわ ち「元栓を締めること」が重要です。私は、ドイツや日本などの廃棄 物 政 策 を 事 例 に し て 、「 元 栓 を 締 め る 」 た め に 必 要 な 政 策 手 法 に つ い て 研究しています。皆さんも一緒に勉強しませんか? 175 都市・エコ・景観研究 山梨大学 工学部 循環システム工学科担当 教授 北村 眞一 電子メール:skita@yamanashi.ac.jp ホームページ:http://www.js.yamanashi.ac.jp/~skita/ (1)平成 4 年「都市計画法」が改正になり,市町村の都市計画マスタープラ ンを定める時に「住民の意見を聞く」という条項が加わりました.この条項に より策定時に単に住民の意見を聞くのではなく,市民代表の組織が中心となっ て原案を作成し,専門家の委員会で審議するという,行政・市民の協働(パー トナーシップ)作業の策定となりました.しかし市民主体の計画策定方法は未 だに確立されていません(田村明「まちづくりの実践」岩波新書).そこで市町 村での都市計画の策定時に,教員や学生さんが実際に参加し,進行の様子を記 録し参加者の意見を聞きながら,誰が,どんな組織で,どのように進めると良 いか,その方法論を研究しています. (2)地球環境問題を超えて,資源の循環利用や省エネルギーが重要な国家的 課題となる時代になりました.例えば石油資源の埋蔵量の限界,食品の自給率 低下と海外輸入(マイレージ),新エネルギー利用法開発,生物多様性・生態系 の保全などの研究が行われています.特に 9 割以上自動車依存の地方都市では 交通エネルギーの利用量の削減が課題となっています.そこで合理的な交通手 段の組み合わせ方法や生物多様性の保全などを研究・実践しています. (3)平成 16 年「景観法」が公布されました.日本では,自然の美しさは目を 見張るものがありますが,電線類と電柱,広告看板,コンクリートむき出しな ど多くの人工物の景観は醜いと言われています(松原隆一郎「失われた景観」 PHP新書).景観やデザインの整備により生活環境の質を向上させることが, ようやく国民的に認められるようになりました.施設景観をデザインし,地域 の景観を管理する方法に加え,脳科学や生理学を援用して人間が美を感じる景 観心理の基礎的研究も進めています. 写真 勝沼市民協働,甲府駅前交通と景観,田草川生物調査,太田川景観設計 176 政治経済システムのグリーン化 −環 境 政 治 学 の す す め − 准教授 山梨大学 工学部 金 成 基 循環システム工学科担当 電 子 メ ー ル :kskim@yamanashi.ac.jp ホ ー ム ペ ー ジ :http://www.js.yamanashi.ac.jp/~kim/ 環境政治学で扱う分野は、環境政治思想、環境運動、緑の党、環境 政策過程、ガバナンスの仕組みなど様々です。私の研究テーマは、エ コロジカルな市民社会の形成を中心的な課題とし、それによる政府 (自治体政府をも含む)や産業部門のグリーン化の可能性とその過程 におけるダイナミズムを究明することです。 人間と環境に優しい生き方へと転換することは、従来の観点からし て大変な選択かも知れません。しかし、新しい取り組みが次々と行わ れているのも事実です。例えば、欧州の諸国では、エコロジー、平和、 人権、ジェンダーなどのイシューに取り組み新しい社会運動や緑の諸 政党が登場し、既存の政治を大きく変えつつあります。また、ブラジ ルのクリチバ市やドイツのフライブルク市は、市民と自治体行政の民 主的なパートナーシップを通じて交通、廃棄物、エネルギー政策の面 でのグリーン化に取り組み、生活の質の高い持続可能な都市づくりに 成功しています。このようなグリーン・ポリティクスに関する国内外 の様々な事例を比較しつつ、持続可能な社会への転換を促す諸条件に ついて考えるのが私流の環境政治学です。 また、環境の世紀にふさわしいキー・パーソンづくりも環境政治学 の重要な課題と言えます。将来、市民意識のある地方公務員、地方政 治 家 、 市 民 教 育 者 、 研 究 者 、 NPO ・ NGO の 専 門 ス タ ッ フ と し て 、 持 続 可 能な社会の実現に向けた企画、実験、実践活動を展開して行きたいと 思う方が多くなれば良いですね。そのため、皆さんにはまず、環境と 人間に優しい社会とはどのような社会なのかについて具体的にイメー ジできる想像力と応用力を身につけていただきたいと考えています。 177 178 地球を救う化学 山梨大学 工学部 循環システム工学科担当 教授 小宮山政晴 電子メール:komiyama@ccn.yamanashi.ac.jp ホームページ:http://www.ccn.yamanashi.ac.jp/~komilab ● 地球の未来はだいじょうぶか 人類が現在使っているエネルギーの 88%は、いわゆる化石資源(石炭、石油、天然ガ ス)から来ている。これらの化石資源は、地球が何億年もかけて地中に溜め込んできたも のだ。人類はこの貴重な資源を、たった数百年で使いきろうとしている。 このような急激な浪費の結果、地球は今、温暖化という脅威にさらされている。これを緩 和するために、世界各国は 2050 年までに、CO2 の排出量(これはほとんどが化石資源の 使用から来ている)を今の半分にまで(先進国では 1/5 にまで)減らそうと協議している。す なわち化石資源の使用量を、世界全体で今の半分にしようというのだ。 このようなたいへんな目標を、どのようにして達成するのか、それはこれからの社会を担 う若い君たちの双肩にかかっている。解決策はたぶん一つではない。 ● バイオマスが地球を救う いくつか考えられる対応策の一つに、バイオマス(動植物由来の生物資源)のエネルギ ー利用がある。バイオマスはもともと大気中にある CO2 を光合成によって固定化したもの なので、その利用は大気中の CO2 を増加させない(カーボンニュートラル)。このようなバイ オ燃料を、食料と競合することなくどのように作り出すか、化学の力の見せ所だ。 私たちの研究室では、廃棄物資源からバイオ燃料を作り出す(BTL)研究を行っている。 バイオディーゼル、バイオ水素、バイオマスのガス化などなど、研究すべき課題は多い。 道のりは険しい。でもみんなが力を合わせて、温暖化という脅威に立ち向かわなければ いけないのだ。世界は、君たちの活躍を待っている。 179 21 世 紀 の エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム の 追 究 山梨大学 准教授 島崎 洋一 工学部 循環システム工学科担当 電 子 メ ー ル : s i mazaki @yam anas hi .ac.jp ホ ー ム ペ ー ジ : ht tp://w ww. j s.ya ma nashi. ac.j p/ %7 E s imazak i / 循環型社会を構築するうえで、 温 度[℃ ] 省エネや新エネの取り組みは重要 10 00 です。図 1 に今後のエネルギー対 電気 照 明・ 電 力 熱 投入 50 0 策の切り札として期待されている 「熱の多段階利用」を示します。 高圧蒸気 15 0 産 業用 加熱 低圧蒸気 回収 再 利用 燃料の燃焼時に発生する高温の熱 80 で発電を行い、その排熱で蒸気を 発生させ工場用の加熱に用います。 さらに、その排熱を利用して家庭 地 域冷 暖房 高 温水 風 呂 40 低 温水 プ ール 図1 熱をむだなく使う小さな滝 用の冷暖房、給湯を賄います。 図 2 は次世代型エネルギーシステムの構想を示したものです。ゲー ム ソ フ ト の シ ム シ テ ィ (プ レ イ ヤ が 市 長 に な り 自 由 な 街 作 り を 楽 し む ) のようなシミュレーションモデルを独自に開発し、熱の多段階利用を 念頭においたエネルギーシステムの可能性を追究しています。 都 市文 化 イ ンフ ラゾ ーン 都 市産 業 イ ンフ ラゾ ーン 文 化ホ ール ス ポー ツ施 設 研 究所 ゴ ミ処 理場 冷暖房 プラント リ サイ クル セ ンタ エ ネル ギー セン タ 製 鉄所 公 園・ スポ ーツ セン タ オ フィ スビ ル 水 処理 セ ンタ 図2 次世代型エネルギーシステムの構想 180 統計的学習法の医学への応用に関する研究 山梨大学 准教授 下川 工学部 敏雄 循環システム工学科担当 電 子 メ ー ル : s h imokaw a@ya mana sh i.ac.j p ホ ー ム ペ ー ジ : ht tp://w ww.j s.ya ma nashi. ac.j p/~s im okawa/ 医学・薬学分野では,様々な治療法あるいは薬剤の研究のために統 計学およびそれを専門とする臨床統計家の参加が必須になってきてい ます.本研究室では,これらの医学研究への参加だけでなく,疾患の 有無を適切に識別する方法や,最適な治療法を選択するための統計的 な方法を開発しています. 例えば,下図および表は,急性循環不全改善薬に対する最適治療法 を 探 索 し た 結 果 を 表 し て い ま す .こ の 解 析 で は ,樹 木 構 造 接 近 法 (C ART 法 )と い う 方 法 を 用 い て , 急 性 心 不 全 患 者 の プ ロ フ ィ ー ル と 治 療 パ タ ー ン の そ れ ぞ れ を 分 類 し て い ま す ( 下 表 ).そ し て ,得 ら れ た 患 者 プ ロ フ ィ ー ル と 治 療 パ タ ー ン の す べ て の 組 み 合 わ せ で 治 療 効 果 を N I L ES( 非 線 形 反 復 最 小 2 乗 法 )を 用 い て 予 測 し た の が 下 図 の グ ラ フ で す . こ の グ ラ フを見ることにより,個々の患者に対する最適な治療パターンを提供 できます. 統計的方法の開発だけでなく,このような解析を行うための環境作 りが本研究室の目標です. 併用薬 投与期間 最大投与量 TP.I - - ≤1h ≤ 5μg 84.1%(69) 79.0%(1360) TP.II - - ≤24h ≤ 5μg TP.III - Yes ≤24h ≤ 10μg TP.IV - No ≤24h ≤ 10μg 88.5%(26) TP.V - - >24h ≤ 10μg 72.9%(376) TP.VI - - ≤24h > 10μg 38.6%(70) TP.VII - - >24h > 10μg 50.0%(142) 高 期待改善率 低 - 高 6 56.5%(147) 3 5 期待改善率 治療パターン 期待改善率に対するバブルチャート 改善率 (標本サイズ) 手術の有無 重症度 基礎疾患 合併症 PP.1 - ≤60 軽度,中等度 [1], [3] - 82.9%(449) PP.2 - >60 軽度,中等度 [1], [3] - 89.1%(422) PP.3 - - 軽度,中等度 [2] Yes PP.4 - - 軽度,中等度 [2] No 85.1%(67) PP.5 - - 重症 [1], [3] Yes 61.5%(618) PP.6 - - 重症 [2] Yes 43.6%(101) PP.7 - - 重症 - No 73.3%(486) 55.3%(47) 1 4 2 低 年齢 Patient pattern 患者プロフィール 7 改善率 (症例数) 性別 - IV II V I III Treatment pattern 基礎疾患 ([1] 心筋梗塞, [2] 他の心疾患, [3] 他の疾患) 181 VII VI - CO2Free や ま な し 実 現 シ ナ リ オ 山梨大学 教授 鈴木 嘉彦 工学部 循環システム工学科担当 電 子 メ ー ル : syosihiko@yamanashi.ac.jp ホ ー ム ペ ー ジ : http://sakura.js.yamanashi.ac.jp/~yosihiko/ 地球は回りが真空で物が出入りせず、光エネルギーが入り、熱エ ネルギーを捨てることができる特殊な生命系です。山梨県の地理的 な性質は地球を小さくしたような特性です。その山梨県で30年後 に 化 石 資 源 に 全 く 頼 ら な い 持 続 可 能 な 社 会( CO2Free)を 実 現 す る た めの具体的なシナリオを作成しています。これに成功することによ って、世界の先進事例を山梨の地で実現しようと考えています。 182 科学技術の歴史と環境問題 山梨大学 工学部 循環システム工学科担当 准教授 高橋 智子 電子メール:ttomoko@yamanashi.ac.jp ホームページ:http://www.js.yamanashi.ac.jp/~takahato 現代の科学は、DNAを読み解き、脳の機能と構造を明らかにし、生命の謎 を解明しつつあります。他方で技術は、ナノつまり1億分の1という単位で、 時間や空間をコントロールして、物質を操れるまでになっています。そんな科 学と技術を手にした現代、私たちはどんな社会を構築することができるのでし ょうか。科学や技術を人類はどうコントロールし、社会の中にどう位置づけて 行くのでしょうか。 ルネサンスの巨人といわれるレオナルド・ダ・ ヴィンチは、400 年後に人類が手にすることにな る機械を、スケッチという形で書き残しました。 レオナルドは、戦乱に明け暮れるパトロンたちに 翻弄され、自らの夢や構想を実現できずにこの世 を去ったのです。 ガリレオは、神が支配する閉ざされた世界から、 市民が経験に学び、自らの頭で考え成長できる市 民世界への移行を夢見て、望遠鏡を天空へと向け たのです。 産業革命の時代、イギリスで活躍した科学者フ ァラデーは、工場廃水や生活廃水で汚れたテムズ 川を調査し、汚染がコレラやチフスの流行の原因 の一つであることを明らかにし、対策に乗り出し ました。 日本への原爆投下を知ったアインシュタインは、原爆の使用禁止と廃絶を訴 えたアピールを発表し、平和のためにこそ科学が役立つように、科学者の社会 的責任を問い続けました。 環境問題の解決が求められる現代、どんな未来社会を構想し、社会の中で市 民はどう行動するのか。歴史を辿りながら考えてみませんか。 183 廃食用油から バ イ オ デ ィ ー ゼ ル 燃 料 (BDF)を つ く ろ う 山梨大学 教授 竹 内 工学部 智 循環システム工学科担当 電 子 メ ー ル : t a ke @yam anas hi.a c. jp ホ ー ム ペ ー ジ : h ttp: // www. js.y am anashi .ac. jp/ 地球の温暖化は、人為活動の大量生産・消費・廃棄によって放出さ れた温室効果ガスが原因であると考えられています。バイオマス(生 物資源)は、その温暖化を防止する役割があります。その理由は、再 生可能とカーボン・ニュートラル(大気中の二酸化炭素を増減させな い)という性質をバイオマスが持っているからです。 家庭や給食、食堂などで使用された廃食用油をリサイクルすると軽 油 代 替 の B DF が で き ま す 。 身 近 な 環 境 問 題 と 環 境 実 践 か ら 、 自 分 の 生 き 方 を 考 え て み ま せ ん か 。 地 球 の未 来 は、私 の未 来 ! 山 梨 大 学 で 稼 動 し て い る BDF 精 製 シ ス テ ム 184 秩 序 と 無 秩 序 の 数 理 か ら Web2.0 ま で 幅 広 く 山梨大学 教授 豊木 工学部 博泰 循環システム工学科担当 電 子 メ ー ル : to yo ki @yam anas hi.a c. jp ホ ー ム ペ ー ジ : ht tp://c osmo s.js .y amanas hi.a c.jp /t oyoki_ lab/ 水 中 に イ ン ク を た ら す と 、イ ン ク は 容 器 全 体 に 広 が っ て い き ま す が 、 その逆の変化は起こりません。多くの場合、放っておくと形あるもの は壊ればらばらになる方向に変化します。では、秩序ある構造が自然 現象として形成されるメカニズムとはどのようなものでしょうか。 個々の物質や秩序のあり方によらない普遍的な法則はあるのでしょう か。生命を頂点とする「もの」の秩序形成に共通する性質を見出そう とする研究が非平衡統計物理学と呼ばれる分野の一 つとして20世紀後半から精力的に行われるように なりました。 そうした分野の一部として、私は、コンピュータ ディスプレイなどに使われる液晶という棒状分子の 整列に関する秩序形成に長く関わってきました(左 図 は そ の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 例 )。最 近 は 、交 通 渋 滞 や 侵食の構造、生物コロニーといった物理系以外の空 間パターンの成長について計算機を用いて研究して います。 もう一つの テーマとして、 社会に役立つ Web ア プ リ ケ ーションの開 発を行ってい ま す 。右 図 は 、 本研究室で開 発したプログラムを使った山梨 バスマップのページです。 185 まちづくり・市民活動に関する研究 山梨大学 准教授 西山 工学部 志保 循環システム工学科担当 電 子 メ ー ル : shiho@yamanashi.ac.jp ホ ー ム ペ ー ジ : http://www.js.yamanashi.ac.jp/~nisiyama/ 皆さんが暮らす地域社会には、中心市街地の空洞化やホームレス問題、 環 境 破 壊 な ど 、様 々 な 問 題 が 山 積 み に な っ て い ま す 。社 会 学 を 学 ぶ 西 山 研 究室では、日常生活が営まれる「社会」という場において、市民が中心に な っ て 行 う ま ち づ く り や 市 民 活 動 の 実 態 を 、フ ィ ー ル ド ワ ー ク 調 査 を 通 し て研究します。 例 え ば 、 過 疎 地 で 住 民 た ち が 農 産 物 を 利 用 し て レ ス ト ラ ン を 運 営 し 、地 域 活 性 化 を し て い る 団 体 、廃 棄 さ れ る 大 量 の 食 品 な ど を 利 用 し て 、ホ ー ム レ ス の 人 の 支 援 を 行 う 市 民 活 動 団 体 な ど 、様 々 な 方 法 で 地 域 問 題 の 解 決 に 取り組んでいる事例 があります。これらの「現場」と接することで、 現代 社 会 の 様 相 を 鋭 く 見 抜 い て い く も の の 見 方 、考 え 方 を 身 に つ け る た め の ト レーニングを行います。フィールドワークから「楽しく」社会学を勉強す ることをモットーにしています。 長 野 善 行 寺 ま ち づ く り で の ヒ ア リ ン グ 現 場 (西 山 撮 影 ) 186 環境経営学-企業活動と環境問題- 山梨大学 准教授 長谷川直哉 工学部 循環システム工学科担当 電 子 メ ー ル : nhaseg awa@ yama na shi.ac .jp ホ ー ム ペ ー ジ :h tt p://ww w.js .yam an ashi.a c.jp /sta ff .html# hase gawa 地球温暖化対策の必要性が叫ばれ、様々な取り組みが行われているにもかか わらず、地球の平均気温の上昇が止まりません。温暖化の原因となる温室効果 ガ ス の 中 で 最 も 排 出 量 が 多 い の が C O 2 で す 。C O 2 は ジ ェ ー ム ス ・ ワ ッ ト の 蒸 気 機 関 の 発 明 に よ っ て 始 ま っ た イ ギ リ ス の 産 業 革 命 と と も に 、1 8 3 0 年 代 か ら 化 石 燃 料 の 使 用 に よ る 大 気 中 へ の CO2 の 蓄 積 が 始 ま っ た の で す 。 IPCC( 気 候 変 動 に 関 する政府間パネル)の報告書では「人間による活動が地球温暖化の効果をもた らしている」と明記していますが、人間による活動の中心的役割を果たしてき たのが企業活動です。 今日の地球環境問題は、あらゆる企業の事業活動や市民の消費生活に起因し ているといえますが、物質的豊かさを追求し続けた結果、資源エネルギーを大 量 に 消 費 し て き た 20 世 紀 の 経 済 シ ス テ ム が 破 綻 し よ う と し て い ま す 。 大 量 生 産・大量消費・大量廃棄の社会経済システムから脱却し、持続可能な社会(サ ス テ ィ ナ ブ ル 社 会 ) へ の 変 革 を 実 現 す る た め に は 、 ト リ プ ル ・ボ ト ム ・ラ イ ン 、 つまり「経済的な利益だけでなく環境と社会を経営プロセスに組み入れる」経 営への大転換を求めなければなりません。当研究室では、持続可能な社会にお ける企業格付システムや環境金融の新しい手法 である社会的責任投資 ( S o c i a l l y R e s p o n s i b l e I n v e s t m e n t )、 C O 2 排 出 量 取 引 に 関 す る 研 究 を 行 っ て います。 ( 出 所 ) http://ekojin.com/?p=205 187 藻 類 っ て 何 ? 人 間 っ て 何 ?? 山梨大学 教授 み そ の う 御園生 工学部 た く 拓 循環システム工学科担当 電 子 メ ー ル : mi st @y aman as hi.ac. jp ホ ー ム ペ ー ジ : ht tp://w ww. j s .ya ma nashi. ac.j p/~ m is t 生き物とは何か,生きている とはどういうことなのかというのは ,生物学の 基 本 的 な 問 い で す .こ の 問 い は , 「 我 々 は ど こ か ら 来 た か ,我 々 は 何 者 か ,我 々 はどこ へ行 くか」という 人間 の根 源 的な問 いに つな が るもの でも ある で しょう . 生き物,そして人間をより深く理解することによって,私たちはこの世界でよ りよく生きることができるようになるのではないでしょうか. 藻類(そうるい)はふだんあまり目にとまることはありませんが,生物界の 中ではたいへん重要な生物群です.現在,藻類は地球上の多様な環境に適応し て,生態系におけるいろいろな役割を担っています.緑の大地を産んだ陸上の 植物も藻類の中から現れました.このような藻類を相手に,生化学的,生理学 的,環境科学的なさまざまな研究をおこなっています.また,藻類自体につい て の 知 識 の 集 積 だ け で は な く ,そ の よ う な 研 究 を 通 し て さ ら に 生 き 物 全 般 に 考 察を広 げて いく こ とによ り,私たち 人間自 身や 人間 が 作る社 会に 対す る 進化的 な視点からの考察を通した持続可能な社会への道を開くことも考えています. ◆ 生物と環境:藻類の対紫外線戦略の解明 生物に恵みを与える太陽の光には,有害な紫外線が含まれています.藻類は 陸 上 植 物 と は か な り 異 な る 紫 外 線 防 御 機 構 を 持 っ て い る よ う で す .紅 藻 に 含 ま れる水溶性紫外線吸収物質の役割を生化学・生物物理学的に調べています. ◆ 微細藻類を用いた資源循環システムの開発 畜産廃棄物などの未利用バイオマスを用いて単細胞緑藻クロレラを培養し, 畜産飼料等とする循環型のシステムを開発しています. ◆ヒトおよびヒト社会の進化的理解 人間の進化的理解による現代社会解読の試みは,生物進化の結果として のヒトの姿を見つめる行為です.生き物としてのわれわれの本質を化学的 にとらえることは,人類が目指すべき持続型社会を創り出していくために 必要不可欠であると考えています. 188 数理モデルで都市を解析する 山梨大学 助教 宮川 雅至 工学部 循環システム工学科担当 電 子 メ ー ル : mmi yagawa @yam anas hi .ac.jp ホ ー ム ペ ー ジ : ht tp://w ww. j s .ya ma nashi. ac.j p/~m iy agawa/ 数理モデルを用いて都市・地域の現象を把握し,問題解決につなげる ための研究を行っています.モデルとは,現実の大切な部分だけを取 り出して単純化したものです.モデルを用いることで,複雑な現象の 裏にある隠れた構造・秩序を発見でき,勘や経験に頼らない,客観的 な解決方法を導くことができます. 施設の場所はどこが便利? 図書館や公民館などの施設をどこに 配 置 す れ ば ,住 民 に と っ て 便 利 に な る で しょう か.便 利さ の尺度 とし て,住 民か ら 施 設 ま で の 移 動 距 離 に 着 目 し ま す .最 も近い施設までの距離だけでなく,2 番 目,3 番目に近い施設までの距離も考慮 して,最適な配置を探求しています. 都市に必要な道路の量は? 都市の道路網をどのように設計すれ ば ,交 通 を 円 滑 に 流 す こ と が で き る で し ょうか.道路には,自動車専用道路,幹 線 道 路 ,区 画 道 路 な ど 機 能 に 応 じ た 階 層 構 造 が あ り ま す .人 々 の 移 動 時 間 を で き る だ け 短 く す る よ う な ,望 ま し い 階 層 構 造を探求しています. 189 固体触媒の性質評価と反応の観測 山梨大学 助教 依田 工学部 英介 循環システム工学科担当 電 子 メ ー ル : e is uke@ya mana shi. ac .jp ホ ー ム ペ ー ジ : ht tp://w ww.j s.ya ma nashi. ac.j p/~e yo da/ 化 学 反 応 は ,分 子 や 原 子 を 組 み 替 え て 新 し い 化 学 物 質 を 創 造 し た り , 変換したりするプロセスですが,その 9 割以上が触媒によって促進さ れます.触媒にも様々な種類のものがあり,その状態には液体も固体 もあります.固体触媒は,反応物や生成物との分離が容易で再利用が 可能なため,環境の面からも有用な場合が多いのです. 触媒が化学反応を促進する場合,反応物と触媒は,お互いが何らか の影響を及ぼす程度まで接近するか,接触しなければなりません.固 体の触媒上で反応が進行する場合,反応物は固体触媒の表面に吸着し てから反応が進行すると考えられます.その後,反応中間体を経て生 成物となり脱離します.従って,目的の生成物を得るためには反応が 起きている触媒表面の制御がカギになるので,私たちは分光法を用い て触媒表面の性質を評価したり,分子の吸着状態や反応過程を解析し たりしています.その結果が,触媒の高機能・高性能化や新規触媒の 開発につながります. 吸着状態は? 反応過程は? 反応物 生成物 吸着 脱離 反応物 中間体 固体触媒 190 生成物
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