Chapter7. 戦いと評価 担当:池田 瞳 過去2つの章では個体間で、餌や縄張り交配相手などを競争しなければならない事を見てきた。 本章では、戦いの行動の進化について考えましょう。 ・戦い行動の進化について:最も成功する戦い戦略とは? ・モデルによる戦いによるコストと利益について:ゲーム理論を用いて ゲーム理論:元々は経済学→Maynard Smith(1982 年)により動物の行動解析にも応用された。 ★争いの減少「待ちゲーム」 (a)問題:雄は牛糞の上で雌をどのくらい待つのが、最適な時間なのか? 雌のフンバエは牛糞の上で子供を産む。雄はその雌を牛糞の上で待ち、来た雌と交尾を行う。雌はより新鮮な 糞を好んで卵を産みにくる。 (b)理論:単純に相手よりもより長い時間待つ戦いにより勝者が決定する。 資源価値VをめぐるAとBの争い(B が先に諦める場合) Aの利益=V−mB mA:時間XAのコスト Bの利益= mB:時間XBのコスト Aが勝つには? −mB ⇒Bよりも少しでも長い時間待っている方が良い。XA>XB 例えば、 「1 分待つ戦略」は「1.1 分待つ戦略」に打ち負かされる。しかし、待ちすぎると利益が時間のコス トを越える。単純ではない戦略は安定した利益を得る戦略になる。 ESS:集団の中で他の戦略が打ち勝つことができない安定した利益をえる戦略 ⇒この問題での ESS は不規則な時間を待つ戦略 この待ちゲームでの安定した解決法は 2 つの方法で考えられた。 ① 集団の全ての個体が同じように待ち時間を変えて待つ、つまり ESS 戦略を使う。 ② 全ての個体が決まった時間待つ、つまり純粋な戦略を使う。しかし、ランダムに時間戦略を変える。 (c)理論の検証:フンバエはどうしているのか? 検証実験:一つの牛糞で雄は雌をどの位の時間待つか?(Parker 1970) (結果) 糞の上にいる雄の数は指数関数的に減少した。(Fig7.2a) 雄が糞の上にいる時間は繁殖成功に関係なく似た値を示した。(Fig7.2b) ★習慣的な戦いの進化 多くの動物の争いは 2 つの個体が出会い、資源のために競争をする。 直接対決になる場合、最後に 1 匹が勝ち残り、もう 1 匹が負ける。このような戦いは、一般的にお互いが深 刻な傷を負う前に静まる。同種の争いによって傷つけあう事は種自体にとっても種の生存に不利である。しか し、郡淘汰でのみ説明することは出来ない。よって、個体の利益を考えた戦略について考えてみましょう。戦 いは、個体のコストと戦いにより得る利益によって決まるのではと考えられ、ゲーム理論が動物の賢い繁殖で の争いの解析についても応用された。 <鷹と鳩> ☆この 2 つの戦略ゲームについて考えましょう。(表 7.1 参照) 鷹:敵と戦い、傷つけ殺す。同時に自分も傷を負う。 鳩:display を行い、深刻な傷を負うような戦いはしない。 勝者:+50 点 深刻な傷:−100 点 display による時間コスト:−10 点 敗者:0 点 鷹vs鷹 ⇒鷹の半分が勝者、鷹の半分が深刻な傷=−25 点 鷹vs鳩 ⇒鷹=勝者 50 点 鳩=敗者 0 点 鳩vs鳩 鷹の比率:h ⇒鳩の半分(勝者―display コスト)、鳩の半分(敗者―display コスト)=15 点 鳩の比率:(1−h) 鷹の平均収益:H=−25h+50(1−h) 鳩の平均収益:D=0h+15(1−h) 適応した均衡(ESS)はH=Dの時 h=7/12 ⇒戦略は鷹と鳩の比率による。鷹が 7/12 で鳩が 5/12 の比率が一番両者にとって釣り合いがよい。 この場合のESSとは? ① 純粋な戦略を用いる個体で成り立つ個体群 今回の例では戦う戦略をとる鷹と戦わない戦略をとる鳩 ② 7/12 の確立でいる鷹と 5/12 の確立でいる鳩をランダムに選び、戦わせ二つの戦略が混ざっている個体群 もし、このような個体群でなかったら二者の均衡はなく、どちらか一方になるまでどちらかが個体数を増やす。 <鷹と鳩とブルジョワ> この鷹鳩ゲームをブルジョワの戦略で考えてみましょう。 (表 7.2 参照) 鷹:オーナー 鳩:侵入者 鷹vsブルジョワ ブルジョワ:オーナー半分と侵入者半分 ⇒鷹 =−12.5 点 ブルジョワ=12.5 点 鳩vsブルジョワ ⇒鳩 =7.5 点 ブルジョワ=32.5 点 ブルジョワvsブルジョワ ⇒ブルジョワ=25 点 ⇒このゲームではブルジョワが ESS である。 <簡単なモデルと実際の戦い> 実際の戦いとの比較 ① 最も大切なポイント:良い戦略であるかは相手次第 鷹はよい戦略か?相手が鷹⇒傷つくだけでよくない。鳩⇒勝つからよい。 ② ESSは戦略による。 初めの例の鷹鳩ゲームでは鷹と鳩の混合戦略が ESS であるが、ブルジョワの戦略が含まれた場合のゲームで は、ESS はブルジョワ戦略である。 ③ ESSは利益による。 傷ついても戦う方が得る利益が多いならば、戦う戦略は ESS になるが、戦うコストが得る利益を越えた時、 戦う戦略は ESS ではない。 ★動物の戦い例 (a)深刻な戦い 行動を見せること(表現)は常におこるわけではなく、時に激しい戦いに発展し、傷つき死んだりする。 ・ ジャコウジカ:雌をめぐる戦いで5∼10%が死亡、1.5 歳以上の雄の 10%以上が毎年負傷する。 ・ イッカク(Monodon monoceros):成体の雄の 60%以上が牙を壊し、頭には傷がある。 ・ イチジクコバチの雄:イチジクの中で雌をめぐっての戦いをする。1つのイチジクに 15 匹の雌と 12 匹の 無傷の雄、死ぬか負傷した 42 匹の雄が入っている場合もある。 これらの争いの場合、資源が少なく価値が傷を負うコストよりも高いだろう。 (b)所有者の観点から ParkerとPusey(1982)のライオンの研究実験 数等の雄の群れ(約 42%が血縁関係)は群れを守る。発情した雌が群れに近づくと、雌の配偶者のポジシ ョンをめぐる争いが起こる。血縁関係のない雄同士ではより激しい戦いになる。 何によって雌を手に入れることができるか決まるのか? 戦いを沈める 2 つの要因:体サイズと年齢 最も重要な要因:戦いに勝つこと たいていは発情した雌と初めに会った雄が雌を見張り、他の雄を寄せ付けない。 深刻な戦いになる時は2頭の雄が同時に雌に会った時や、雌の配偶者が見当たらなく、配偶者がなかなか決ま らない時に起こる。⇒たいていは雌に先に着いた方が勝者になる。 ライオンにとって深刻な戦いをすることは傷つくため、戦いコストは得る利益よりも高い。 イトトンボ(Calopteryx maculate)の研究 雄は雌が卵を産みにくる小川に小さなテリトリーを守る。侵入者が来るとたいてい15秒以内に追い出す。 しかし、オーナーの不在時や違う雄がテリトリーにいる時に1時間以上もの長い戦いも起こる。オーナーも侵 入者も鷹のように戦う戦略をとる場合、何をもって勝者を決めるのでしょうか? 勝つためにはエネルギーが必要であり、より太っていて備蓄エネルギーを持っている方の雄が勝つため、 少ないエネルギーの雄は退き、エスカレートする戦いを減少させる。 (C)資源価値の影響 所有者と侵入者の戦いでオーナーが勝つ傾向にあるのは資本主義の戦略によっているから。 オーナーが勝つ3つの予想仮説 仮説1:より良いファイターである。 これは、オーナーである理由でもある。 仮説2:戦いから多くの利益を得るために激しく戦う準備を行う オーナーは侵入者よりも価値が高い。 仮説3:「オーナー」であるということが戦いを決する。 仮説の検証実験:大きな胸によりテリトリーを守るシジュウカラの雄 Krebs(1982) テリトリーのオーナーを追い出し、空き家に新しい鳥を入れ、数時間後に元オーナーをテリトリーに戻す。 仮説1による予想では、元オーナーは彼のテリトリーを取り戻すだろう。 仮説2による予想では、新しい鳥はテリトリーの特徴や争いに勝つことから得る利益を学び、穏やかに優越を 逆転させるだろう。 仮説3による予想では、新しい鳥は、今はそのテリトリーのオーナーであるため簡単に勝つだろう。 (結果) 2 つ目の仮説が支持された。侵入者であった新しい鳥はテリトリーの特徴を把握することで勝ちやすくなった。 (d)強さの争い 危険な戦いよりもどうやって儀式的な表現を示すかという鷹鳩ゲームは、安定した戦いを進化させた。しか し、このゲームは自然界の戦いに直接関係しているよりも、ゲーム理論の解析に役に立つ。そのため、お互い の戦闘能力を見極めるために表現を必要とする実際の戦いでは鷹鳩ゲームの理論とは一致しないことがある。 アカジカ(Cervus elaphus)の雄は秋の繁殖期に雌をめぐって争う。繁殖の成功は戦い能力により、最強 の雄は最も大きなハーレムを作り、多くの交尾を行う。戦いによる利益とコストを大きい。ほとんどの雄がい くらかの傷を負い、20∼30%の雄が生きている間に致命的な傷(骨折、盲目等)を負う。戦いによるコスト を最小限にするためお互いの戦い能力を評価し、弱い雄は戦いを避ける。 戦い能力の評価の表現法(Fig7.5 参照) ①うなる:はじめはゆっくり、次第に早くうなる。 ↓ ②平行して歩く:より近づいて見極める。多くの戦いがここで終わる。 ↓ ③枝角を組合い、ぶつかり合う:この段階までいくのはまれである。 (戦い能力の評価方法) バッファロー:突進し、頭をぶつけ合う カブトムシ:押し合いの試合 ヒキガエル:鳴く音の音程(体サイズが大きいと太い音で鳴く) ヒキガエル(Bufo bufo)の実験 (Fig7.6 参照) 雌とペアになっている体サイズが大小の雄のヒキガエルに向かって、スピーカーから深い鳴音と高音程の鳴 声を聞かせる。雌を奪われる事を避けるため、どちらの鳴声に対してより多く攻撃してくるか? (結果) 深い鳴声の方は攻撃されにくかった。⇒体サイズが大きくかなわないと判断した。 お互いをどう見極めるかの観察から3つの結論 ① 評価に必要なもの、大きさや強さを示す信頼できる表現標識 視覚や声による表現、押し合いなどは戦い能力と似た相互関係がある。 ② 時に、競争相手の協力が必要 お互いに平行に走ったり、正面をむいたり。 ③ 時に、戦いは型とおり うなる→平行に歩く→押し合いの順に進む。 <結果の評価> Magnus Enquist と Olof Lemiar(1983,1937,1990)は、動物は統計のサンプル収集に似た方法で戦いの間に 情報を集めていると示唆した。相手の行動を繰り返し観察することで得た細かな情報から、初めは低コストの display から示し、序所に高コストの display を示していた。そして、戦う能力が相手よりも劣っていると予 測される時、あきらめるだろう。そして、より自分と近い相手と争う時、お互いに相手の能力を判断すること が難しいため戦いは長引きエスカレートするだろう。これは連続した display を行う戦いに意義をもたらす。 シクリッド(Nannacara anomala):雄は卵を産む雌を争う時、互いの戦い能力を一貫した表現により判断する。 表現法(Fig7.7 参照) (a) フィンを直立させ側面に沿って泳ぐ。 (b) 尾を振り相手の脇腹の方に水の流れを押し出す。 (c) 正面向きになる。 (d) 口を使ってのレスリングから、押したり引いたりする。 (e) ぴったりと輪になり相手の尾を噛もうとする。 (f) 敗者は尾をたたみ、色を変えて退散する。 ⇒体サイズに違いがある時:大きい雄が勝ちやすく、大体の戦いで(a)段階で小さい雄はあきらめる。 ⇒体サイズに違いのない時:戦いは長引き、戦いによるリスクは増える。 ★資源価値と戦い能力の違いの競争 今までのところ、資源価値と戦い能力の両方が争いの結末に影響する重要な要因としてきた。多くの争いで 競争相手は戦い能力と資源価値がどれくらいかによって変わっていた。これらの場合では戦略はどのように進 化してきたのか? <理論:強さの違う戦いの削減> オーナーの勝手によって単純に決着がつくのか?戦い能力の違いに反抗しているのか?という自然界での 戦いをみて私達が予想した疑問は、その個体が戦いでどの位傷つくリスクを負うかによって決まっている。鷹、 鳩、ブルジョワゲームでは競争者は低リスク(display)と高リスク(エスカレートした戦い)の 2 つのリス クレベルを約束した。この両者の不連続な違いは、どちらの戦略も持つ資本主義者にとって重要だった。 もし、戦いながらコストレベルの調整が出来るとすると、資源の価値の上昇とともに順応していくならば、 資本主義者の戦略は進化した戦略ではなくなる。戦い能力の違いや戦いながら戦いコストを個人が変えられる のであれば、 「強さの違う戦いの削減」ができる。 (Parker&Rubenstein:1981、Hammerstein&Parker:1982) この種の戦いで個体 A が諦め退いた時の ESS VA KA < VB V:競争者AとBの資源量 KB K:戦いにより両者に生じるコスト よいファイターは弱いファイターよりも戦いによるコストはゆっくり生じる。 この戦いの勝者は最大利益:コストの割合はいつも1である。 <データ:クモの雄の戦い> 職工クモ (Frontinella pyramitela)の研究(Steven Austad:1982,1983) 雄は成熟すると餌を少ししか食べず、ほとんどの時間を使い交配相手を探す。これは人生の残り 3 日間で 行われるため、雌を得る事は繁殖成功にとってとても重要であり、雌をめぐり雄は戦う。 正常の雄と放射線処理により精子が正常に機能しない雄の2匹の雄を 1 匹の雌と交配させた実験がおこな われた。もし、交配が連続で続くとするとはじめに正常の雄が交配し、次に放射線処理の雄は交配した場合、 95%の卵が受精した。次に、はじめに放射線処理の雄が交配し次に正常な雄が交配した場合 5%の卵しか受精 しなかった。 (a) 「資源価値:V」の計測 交配までの過程として、まず、受精前に雄は雌が成熟しているかを見極め、交尾し蝕肢から雌に精子を渡す。 発達する卵の数は早く交尾すればするほど早く増え時間がたつにつれ遅くなる。その結果、連続しての交尾で は、雌の価値は段階によって変わる。発達する卵の平均数(1 匹の雄が出会う雌の数)は 10 個で、はじめて 会った雌の期待値は 10X である。もし雌にとってはじめての交配だった時、雄にとってこの雌の価値は最大 値の 40X になる。交尾が始まると、雌の価値は徐々に減りだす。交尾から 7 分後には 90%の卵が受精される。 21 分後には 99%の卵が受精し、雌の価値は1X になる。(Fig.7.9 参照) ここに、何も知らない侵入者が雌を得るためにやってきた。侵入者は雌が残りどれ位の卵を受精できるのか 把握できないため、雌の価値は平均 10X である。 雌の価値(資源価値:V) 受精前最期 : 在住者>侵入者 交尾 7 分後 : 侵入者>在住者 交尾 21 分後 : 侵入者>在住者 ⇒在住者と侵入者にとっての雌の価値(資源価値:V)が違う。これより在住者と侵入者の雄が雌をめぐって の戦いで、在住者の雄は受精前の方が交尾 7 分後よりも激しく戦うと予想した。 (b)「戦いのコスト:K」の計測 深刻な傷が見込まれる期間は戦いの持続時間に比例する。雄の戦闘能力は体の大きさよって変わり、体サイズ が違う雄同士が出会うと戦いのコスト:Kが変わる可能性がある。 (c)出会う段階の結果 ①Vが同じ時 ⇒ (資源価値:V と戦いのコスト:K の違う戦い) Kの違いにより決定 大きな雄が 82%勝つ。 同じ体サイズでは組み合う時間が長い→戦闘能力の見極めに時間がかかる。 ②Kが同じ⇒Vの違いにより決定 受精前最期の V : 在住者>侵入者 在住者は受精前で勝ちやすい。 交尾 7 分後の V : 侵入者>在住者 侵入者は交尾後 7 分後に勝ちやすい。 ③体サイズ:在住者<侵入者⇒Vがより高い時戦いは長引く。 例えば、受精前の時期(在住者にとって最もVが高い時)に体サイズが小さい雄は 90%が深刻な傷を負 うほどの戦いが続く。交尾 7 分後では 30%が傷を負うくらいの戦いで終わる。 ④ V も K も同じ⇒最も深刻にエスカレートした戦いになる。 どちらも退かずに、どちらか一方が死ぬまで戦いが続く。 受精前の時期に小さな在住者と大きな侵入者の間で起きる。 この時のVとKは在住者にとって両方大きく、侵入者にとっては両方大きい。 ★地位のしるし 動物の中にはグループで生きるか、単体で生きるかによって戦い能力に違いがある。グループ内での多くの 見せ掛けはある程度信頼できる強さの評価として必要とされているが、正確ではない。 ハリススズメ(Zonotrichia querula)では、餌を探す群れが周回する冬に非常に大きな羽の生え変わりがある。 (Fig7.11 参照)最も黒い色の羽を持つ個体の地位が高く、餌場から薄い色の羽の個体を移動させる。 しかし、なぜ黒い羽の色が高い身分のしるしならば、黒い羽に成長し地位をあげないのだろうか? 低ランクの鳥の羽の操作実験 Rohwers(Table7.3) ①低ランクの鳥の羽を黒く着色(見かけ:優勢) ⇒他から攻撃され地位を高める事はできなかった。 ②テストステロンを注入、羽の色はそのまま(中身:優勢) ⇒攻撃的に振る舞い、上位になろうと試みたが上がれなかった。 ③羽を着色、テストステロンも注入(見かけと中身:優勢) ⇒見せ掛けは通用し、戦いに勝ち、群れでの地位を得た。 他の実験で、優勢の鳥に低ランクのしるしをつけた。 彼らは、追放しようとする周りから攻撃をうけたが屈せず、最終的に優勢になった。 (結論):見せかけのみでは通用せず、中身も伴うことが必要 しかし、なぜ低ランクの鳥はテストステロンを増やすことができないのか? アカライチョウの実験 テストステロンを注入された雄はテリトリーを2倍にし、引き込む雌の数が増化した。アンドロゲン(男性 ホルモン)の増加は低ランクの鳥の実際の能力を超えて行動させた。短い時間では成功するが、長期間ではそ の強さの減少に苦しむだろう。(Silveri:1980,Roskaft et al 1986) スカーレットタフト(Nectarinia johnstoni)の実験 花の蜜を持つロベリアの花を含むテリトリーを守るために争う。争いは、緋色(ひーいろ)の胸を見せ合い より大きな胸の雄が勝者となり、多くの花を得る。 羽を切ったり、羽をくっつけたりすることで胸の大きさの操作実験を行った。 ⇒大きな胸を得た鳥は、攻撃的に振舞う時間と花の回りの競争相手の数も減少し多くの花を得た。 しかし、全てのケースが地位のしるしとして変化しているとは限らない。 キョウジョシギ(Arenaria interpres)の羽の場合 Whitfield はテリトリーの所有者である雄を移動させた後に、前の所有者に似た色、より明るい色、より暗 い色の三通りに着色されたモデルに差し替えた。隣の鳥は前の所有者に似ているモデルに対しては攻撃しにく そうであった。しかし、明るい色か暗い色のモデルに対しては攻撃の強さに違いはなかった。 この種の羽の変化は単に個人の特定を簡単にしているだけかもしれない。 Summary ゲーム理論は動物の戦いを解析する役立つ方法である。なぜなら、ある動物が採用する最もよい戦略は集団 の中の他者がどう行動するかによって決定するから。戦略の進化は安定した戦略つまり ESS によって導かれ ると予想される。戦いの減少モデルは競争相手との混戦のそれぞれの例に適用される。しかし、交配相手をめ ぐっての戦いでは時に直接対決も行なわれる。しかし、ほとんどの場合でお互いの戦い能力や資源価値その両 方から戦うべきかの評価が行われ、お互いに傷つけあう戦いをしないようにしている。評価はより近くで連続 して行われ、強さを表現する。鳥の羽の変化は地位のしるしや個人の認識に関係している。
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