KEIO UNIVERSITY MARKET QUALITY RESEARCH PROJECT (A 21st Century Center of Excellence Project) KUMQRP DISCUSSION PAPER SERIES DP2005-024 出産・育児と日本女性の就業行動の分析 馬 欣欣* 要旨 本研究は慶応義塾大学家計調査のパネルデータを用い、出産・育児が 日本女性の就業に与える影響に関する計量分析である。分析によって、 以下のことがわかる。現在の日本労働市場において、① 出産と女性の 就業がトレード・オフの関係にある。② 末子の年齢が若いほど、女性の 継続就業の確率が低く、正規雇用期間が短い。③ 「育児休業制度」の 実施が正規雇用継続を促すが、その有意性が顕著ではない。「育児休 業制度」や短時間勤務制などの育児援助制度の実施、また若い子供に 対する保育サービスの充実が必要であることが示される。 * 慶應義塾大学大学院商学研究科後期博士課程 Graduate School of Economics and Graduate School of Business and Commerce, Keio University 2-15-45 Mita, Minato-ku, Tokyo 108-8345, Japan 出産・育児と日本女性の就業行動の分析 馬欣欣 1 概要 本研究は慶応義塾大学家計パネル調査データ(KHPS2004 と KHPS2005) を用い、出産・育児が日本女性の就業に与える影響に関する実証分析である。 パネルデータの分析によって、以下のことがわかる。① 出産と女性の就業が 同時決定されるとともに、両者がトレード・オフの関係にある。② 個別効果を除外し、 末子の年齢が若いほど、女性における「企業継続就業」および「労働市場継続就 業」の確率が低い。③ 末子の年齢が若いほど、特に 0−3 歳の子供を持つ女性に おける正規雇用期間が短くなる確率が高い。④ 1992 年以後に「育児休業制度」の 実施が正規雇用の継続就業を促すが、その有意性が顕著ではない。分析結果によ って、日本少子化の問題を解決するために、出産・育児期における女性に対して、 「育児休業制度」や短時間勤務制などの育児援助制度の実施、また若い子供(とく に 0−3歳)に対する保育サービスの充実が必要であることが示される。 キーワード:出産・育児 1 女性の就業 機会費用 慶 応 義 塾 大 学 経 商 連 携 21 世 紀 COE プ ロ グ ラ ム COE 研 究 員 、E-mail:ma6713@hotmail.com.。本 論 文 は 2005 年 度 慶 応 義 塾 大 学 経 商 連 携 21 世 紀 COE 報 告 会 の 報 告 論 文 で あ る 。本 論 文 を 作 成 す る 際 に 、清 家 篤 教 授 に 指 導 し て いただき、樋口美雄教授に貴重なコメントをいただき、ここで上記の先生方々にお礼を申し上げる。文責は全て 筆者に帰する。 1 1 はじめに 現在に日本の経済社会が直面する最大の課題の一つが少子化の問題である。 2 日本において、 女性雇用率の上昇とともに、合計出産率は過去 30 年の間に人口置換水準を下回り、しかも 2004 年の合計出産率が 1.289、過去最低水準であり、少子化の問題がなすます深刻化になってくること が考えられる(附図1-2)。 少子化の問題が日本における問題だけではなく、先進国の共通な問題である。 3 この問題を解決 するために、少子化の理由について、社会経済学、社会心理学や人口経済学などの分野ではさま ざまな研究が行われるが、純粋に経済学の枠 組で出産 行 動を説明しようとするシカゴ派の静 学理 論(Becker,1960; Becker,1965;Willis,1973; Butz and Ward,1979)によって、子供の需要が「出産・ 育 児 の便 益 」 4 と「出 産 ・育 児 の費 用 」 5 によって決 定 され、「出 産 ・育 児 の費 用 」が「直 接 的 費 用 」 (direct cost 例えば、養育費や教育費など)だけではなく、「出産・育児の機会費用」(opportunity cost、母親の放棄所得など) に依存することが説明される。また、Becker(1965)と Mincer(1974) を嚆矢とする「人的資本理論」では、賃金の上昇が人的資本の上昇の結果であり、 「人的資 本」(human capital)が「一般的人的資本」(general human capital)と「特殊的人的資 本」(firm-specific human capital)の二つに分け、「一般的人的資本」は学校教育を通じ て形成されるが、 「特殊的人的資本」は企業内の教育訓練と勤続年数によって形成されるこ とが指摘される。勤続年数が短縮する場合に、特殊的人的資本の低下によって、賃金が低 くなるといえる。これらの理論によれば、出産・育児期における就業中断によって、人的資本 の減耗(depreciation)を発生し、女性の生涯賃金が低くなるため、出産・育児の機会費用が形成さ れることが考えられる。女性における高学歴化および職場進出の進展とともに、機会費用が高くなり、 これは先 進 国 における少 子 化 問 題 の重 要 な理 由 であることが指 摘 される(Adsera 2004;Diprete, T,Morgan,S.P.and Englhardt,H. Pacalova,H, 2000 ; Brewster,K.L.,Rindfuss,R.R. 2000; Bourguignon 1999;Galor,O.,Well,D.N. 1996)。これらの理論をベースにし、少子化の問題を解決する ために、欧米では、「育児休業制度」などのさまざまな育児援助政策が実施された。 6 日本において、女性の継続雇用の問題および少子化の問題を解決するために、1991 年に「育 児休業等に関する法律」 7 が設立され、1993 以後に「育児休業制度」が実施されていたが、出産・ 2 3 4 5 6 7 財 務 省 財 務 総 合 政 策 研 究 所〔 2005〕 『 少 子 化 の 要 因 と 少 子 化 社 会 に 関 す る 研 究 会 報 告 書 』で 、日 本 に お け る 少 子 化 が非常に深刻な社会問題になると指摘される。 1965− 1975 年 の word bank と 1980− 1998 年 の World Data Sheet (Population Reference Bureau)の デ ー タ ベ ー ス に よ っ て 、TFR(Total fertility rates)の 変 化 に つ い て 、カ ナ ダ の 場 合 、1965 年 の 3.1 か ら 1998 年 の 1.6 へ 低 下 し 、 フ ラ ン ス の 場 合 、 1965 年 の 2.8 か ら 1998 年 の 1.7 へ 低 下 し 、 ア メ リ カ の 場 合 、 1965 年 の 2.9 か ら 1998 年 の 2.0 へ 低 下 し 、 日 本 の 場 合 、 1965 年 の 2.1 か ら 1998 年 の 1.4 へ 低 下 す る こ と が わ か る 。 「 出 産 便 益 」と は 、子 供 の 産 み に よ る 利 得( 効 用 )で あ る 。こ れ は 非 金 銭 的 面 で 、子 供 の 育 て に よ る 心 理 満 足( 消 費 効 用 )、金 銭 的 面 で 、子 供 に よ る 自 分 の 老 後 生 活 保 障( 年 金 効 用 )と 子 供 の 稼 ぎ( 所 得 効 用 )で あ る 。ま た 、社 会 保 障 の 整 備 や 個 人 所 得 の 上 昇 に よ っ て 、 出 産 便 益 が 低 く な る ( Leibenstein,H.1979)。 「 出 産 費 用 」 は 、「 直 接 費 用 」 と 「 機 会 費 用 」 の 二 つ に 分 け ら れ る 。「 直 接 費 用 」 と は 子 供 の 養 育 費 ( 生 活 費 や 教 育 費 な ど )で あ り 、「 機 会 費 用 」と は 出 産・育 児 に よ る 所 得 減 少 費 で あ る 。総 務 省「 全 国 消 費 実 態 」に よ っ て 、一 人 月 当 た り の 教 育 関 係 費 が 1969 年 の 4192 円 か ら 1999 年 の 44417 円 へ 大 幅 増 加 し 、そ れ が 家 庭 消 費 支 出 に 占 め る 割 合 が 1969 年 の 8.0% か ら 1999 年 の 14.1% に 増 加 し た こ と が わ か る 。 ア メ リ カ 、イ ギ リ ス お よ び 日 本 に お け る 育 児 休 業 制 度 の 国 際 比 較 に つ い て 、樋 口 ・阿 部 ・Woldfogel,J.(1997)「 日 米 英 に お け る 育 児 休 業 ・ 出 産 休 業 制 度 と 女 性 の 就 業 」『 人 口 問 題 研 究 』 ,53− 4( 12) ,pp.49-66.を 参 照 く だ さ い 。 ま た 、 EU 各 国 に お け る 育 児 休 業 制 度 お よ び 出 産 休 暇 制 度 に つ い て 、 柴 山 恵 美 子 ( 2004)『 EU の 男 女 均 等 政 策 』 日 本 評 論 社 ,pp.187 お よ び pp.203 を 参 照 く だ さ い 。 「育児休業等に関する法律」によって、男女にかかわらず、子供が 1 歳に達するまでは育児休業を取れるように する、さらに小学校就学前の子供を持つ者に対して、勤務時間の短縮などの子供養育を容易にする措置を議する こ と が 事 業 主 の 義 務 に な る 。 ま た 、 2004 年 12 月 の 臨 時 国 会 で 、 仕 事 と 子 育 て の 両 立 支 援 を い っ そ う 推 進 す る た め 改 正 育 児 ・ 介 護 休 業 法 が 設 立 し た ( 2005 年 4 月 施 行 )。 育 児 休 業 期 間 が 延 長 で き 、 育 児 休 業 取 得 者 の 範 囲 は 拡 大されるようになる。 2 育児期における女性の就業が依然厳しい状況になっている(脇坂 1998;松繁 2001)。出産後に出 産 前に就 職 した元 企 業 を戻る女 性 が少なく、むしろ出 産・育 児を契 機に転 職し、正 規 就 業 から非 正規就業へ変更し、またそのまま離職して労働市場に戻らなく、失業者になる女性は多いのである。 8 企業雇用慣行における年功賃金 制度では、勤続年数が非常に重視されるため、日本における 就業中断による機会費用が他の先進国よりかなり高いことが指摘される(西村 2003) 9 。また、70 年代以後に女性の高学歴化の進展および女性雇用率の上昇に伴って、日本女性における出産・ 育児の機会費用がさらに高くなることが考えられる。以上のことから考えると、現在の日本において、 出 産 ・育 児 期 における女 性 の就 業 および継 続 就 業 10 が容 易 ではなく、つまり出 産 ・育 児 の機 会 費 用が高いため、少子 化 の問題が深 刻化になっていることがうかがえる。したがって、日本 少子 化 の 問題を解明するために、出産・育児が日本女性の就業行動に与える影響に関する実証研究は必 要であることが考えられる。この問題について、クロス・セクションの先行研究が多いが、パネルデー タの分析は非常に少ないのである。 したがって、本研究では、KHPS 2004 と KHPS2005 のパネルデータを用い、より多い情報を利用 する上で、① 出産はどのように女性の就業に影響を与えるか、つまり出産と就業は両立できるか、 ② 出産・育児は女性の継続就業(「企業継続就業」および「労働市場継続就業」)にどのような影 響を与えるか、③ 出産・育児は女性の正規雇用期間にどのように影響を与えるかなどの問題を明 らかにする。また、④ 1992 年以後に実施された「育児休業制度」は女性の正規継続雇用にどのよ うに影響を与えるかについて考察する。 研究内容としては、第 2 部で、出産の経済学的理論を基づいて、出産・育児と女性の就業に関 する先行研究をサーベイする。第 3 部分で、利用されるデータ、推定モデルおよび変数設定につい て説明する。第 4 部分で、推定結果を説明する。第 5 部分では、結論および政策提示をまとめる。 2 先行研究 欧米において、出産の純粋な経済学的理論は Becker(1960)、Berker and Lewis(1973)、Willis (1973)や Butz and Ward(1979)などの一連の研究によって、シカゴ派の理論 11 と呼ばれる静学理論 体系が確立されたのである。以上の理論体系に基づいて、出産・育児が女性の就業に与える影響 について、Heckman(1981a,1981b)、Mott and Shapira(1994)、Nakamura,A. and Nakamura, M. 厚 生 労 働 省「 第 1 回 21 世 紀 出 生 児 縦 断 調 査 」 ( 平 成 14 年 )に よ っ て 、日 本 で は 、出 産 1 年 前 に 就 業 し た 女 性 は 出 産 後 に 就 業 す る 割 合 が 32.2% 、 無 業 が 67.4% で あ る こ と が 示 さ れ る . 9 離 職 に よ る 女 性 に お け る 出 産・育 児 の 機 会 費 用 に つ い て 、内 閣 府( 2005)は「 賃 金 構 造 基 本 統 計 調 査( 2003 年 ) 」 を 基 づ い て 計 算 さ し て い る 。 こ の 結 果 に よ っ て 、 大 卒 の 女 性 が 22 歳 に 就 業 し 、 60 歳 ま で 就 業 を 継 続 す る 場 合 の 総 所 得 額 は 2 億 7645 万 円 で あ る 。 こ の 女 性 が 28 歳 の 結 婚 ・ 出 産 と 同 時 に 退 職 し 、 子 供 が 満 6 歳 の 37 歳 で パ ー ト 就 業 と し て 再 就 職 の 場 合 、総 所 得 は 4913 万 円 と な り 、約 2 億 2732 万 円 の 機 会 費 用 が 生 ま れ 、損 失 率 が 82.2% であることが指摘される。 ( 内 閣 府 『 平 成 17 年 度 版 国 民 生 活 白 書 子 育 て 世 代 の 意 識 と 生 活 』平 成 17 年 8 月 参 照 )。西 村( 2003)で は 、日 本 と フ ラ ン ス を 比 較 し 、日 本 女 性 に お け る 育 児 の 機 会 費 用 が 非 常 に 高 い こ と が 確 認 さ れ る 。 日 本 の 場 合 、 子 供 一 人 の 機 会 費 用 は 約 9500 万 円 で あ る が 、 フ ラ ン ス の 場 合 は 約 170 万 円 で あ る 。 こ の 理 由について、日本では子育てによる就業中断とそれに伴う人的資本の低下およびパート就業への切り替えが原因 であるが、フランスでは就業中断がないことが指摘される。 10 女 性 の就 業 の パ タ ー ン に つ い て 、樋 口( 1995; 1998)で は 、「 同 じ 企 業 ・ 継 続 就 業 」(「 企 業 定 着 率 = 1 ー 離 職 率 ー 転 職 率 」)、 「 労 働 市 場・継 続 就 業 率 」 (「 継 続 就 業 率 = 1 − 離 職 率 」)、 「 新 規 就 業 」に 分 類 さ れ る 。ま た 、木 村( 1995) では、既婚女性の就業のパターンが7類型に分類される。 11 出 産 に 関 す る シ カ ゴ の 経 済 学 的 理 論 で は 、 家 計 も 生 産 活 動 を 行 う と み な し た う え で 、 夫 は 家 庭 で の 労 働 に 、 妻 は 家庭労働にそれぞれ比較優位性を持つという前提条件をおくこと、また、子供が耐久財であり、夫の所得が増え ると子供の数を増やすか子供の質を向上させようとするため、子供の数と質はそれぞれの所得弾力性に依存して 決定される。また、妻の市場賃金は出産・育児の機会費用になり、妻の市場賃金が上昇すると出産・育児といっ た家庭内労働から家庭外労働への転換が促むという代替効果により子供の数は減少することになることについて 説明される。 8 3 (1994)や Francesconic, M.( 2001)などの実証研究によって、女性の市場賃金(就業)が出産・育 児の機会費用になり、出産・育児が女性の就業および継続就業に負の影響を与えることが指摘さ れる。また、Cramer(1980)では、出産・育児が短期 的に女 性の継 続就 業に負の影 響を与えること が指摘されるが、Jones (1982)によって、出産・育児が長期的に女性の継続就業に正の有意な影 響を与え、「子供の数」が多いほど、「子供の年齢」が高いほど女性の継続就業率が高くなることが 指摘される。 ま た 、 出 産 ・ 育 児 と 女 性 就 業 の パ ネ ル 分 析 に つ い て 、 Gustafsson,S.S., Wetzels,C.M.M.P., Vlasblom,J.D.and Dex,S., ( (1996)の研究では、ドイツ、スウェヂンとイギリスのパネルデータ(German socioeconomic panel, Swedish household panel, British Household Panel Study)を用い、ロジット 分析によって、出産後の女性継続就業率を比較し、スウェヂンがドイツとイギリスより高く、これが各 国における労働市場の状況、出産・育児援助政策および税金制度に関連することが指摘される。 Shaw,K,(1994) で は 、 ア メ リ カ に お け る 女 性 の 就 業 に つ い て 、 Panel Study of Income Dynamis (PSID 1967−1987)のパネルデータを利用し、fixed effect プロビット分析を行い、「出産」と「女性 の賃 金 率」が女 性 の労 働 時 間 に影 響を与 えることが指 摘される。Adam,P.(1996)では、スベンにお ける女性の就業について、Spainish Household and Expenditure Survey(ECPC 1985-1990)のパネ ルデータを用いて、標準なプロビット・モデルから導出される two-state first order Markov model を 利用し、「子供の年齢」が「新規就業」に有意な影響を与えなく、「子供の年齢」および「子供の数」 が「離職」に有意な影響 を与えないが、「子供の数」が「新規 就業」に負 の影響を与 えことが確認 さ れる。 日本において、出産・育児が女性の就業に与える影響に関するクロス・セクションの分析が少なく ない。駿 河・張(1995)、樋 口(1994;1995;1998;1999;2001)、樋 口・阿 部 ・Woldfogel (1997)、滋 野・大日(1998)や森田・金子(1998)などの研究によって、「子供の数」、「出産」および「結婚」が女 性の就業に負の影響を与える一方、「女性の賃金率」、「女性の高学歴」、「親との同居」、「夫の家 事時間」、「夫の自営業」、「育児休業制度」、「住宅ローン」や「大都市」などの要因が日本女性の 就業を促すことが指摘される。 日本女性の就業に関するパネル分析は以下の研究が取り上げられる。樋口(1995)では、財団 法人・家計経済研究所の「消費生活に関するパネル調査」の第1年度−第 3 年度のパネルデータ を用い、プーリングのプロビット分析によって、「学歴」が同じであったとしても、「無配偶者」に比べ、 「有 配 偶 者 」および「新 婚 」のサンプルにおける「企 業 継 続 就 業 」の確 率 が低 く、「過 去 1年 間 の出 産」は明らかに「企業継続就業」の確率を下げることが指摘される。樋口(1998;1999)では、財団法 人・家計経済研究所の「消費生活に関するパネル調査」の第1年度−第 5 年度のパネルデータを 用いて、有配偶者に限定し、プーリングのプロビット分析によって、「出産」が「企業継続就業」およ び「労働市場継続就業」にマイナスの影響を与えることが指摘される。また、駿河・西本(2001)の研 究は、既婚女性における再就業について、財団法人・家計経済研究所の「消費生活に関するパネ ル調査」の第1年度−第 5 年度のパネルデータを利用し、プーリングのプロビット分析によって、「子 供がいない」の女性に比べ、「子供がいる」の女性は再就業が難しく、「末子の年齢」が高くなるほど 再就業を促すことが指摘される。 出 産 ・育 児 と日 本 女 性 の就 業 行 動 に関 する研 究 が進 んでいるが、先 行 研 究 にはいくつの問 題 点があると考えている。① 出産・育児と日本女性の就業に関するパネル分析が非常に少なく、クロ ス・セクションの分 析に個 人 異 質 性の問 題が起こることが考えられる。②先 行 研 究では、一 時 点の 4 継続就業が分析されるが、これらの分析にいつ参入したかといった過去 の就業履歴 が不明である 欠点があり、ある期間における就業状況の変化が推定できない。③ 近年の研究、とくに 2003 年− 2004 年の期間に関するパネルデータの実証分析がほとんど行われない。 以 上 の先 行 研 究 の問 題 点を考 えて、本 研 究では、以 下 のような分 析 内 容 が設 定 される。 KHPS2004-2005 の最 新 のパネルデータを用 い、① 出 産 ・就 業 が両 立できるかどうかについて、 bivariate probit model を利用して分析し、② 出産・育児が女性の継続就業に与える影響につい て、pooled および random effects のプロピット分析を行い、③ 過去の就業履歴を利用し、出産・ 育児が女性の正規雇用期間に与える影響について、Cox proportional hazard model を用い、ハ ザード分析を行う。また、「育児休業制度」の効果を考察するために、「雇用均等法以前時期(1985 年以前)」、「雇用均等法時期(1986−1992 年)」および「育児休業法時期(1993 年以降)」にカテ ゴリにして分析する。以下では、推定方法について説明する。 3 推定方法 3.1 データの説明 本研究では、KHPS-2004(パネル1)と KHPS-2005(パネル 2)の個票を使用する。KHPS-2004 と KHPS-2005 は慶應義塾大学によって、2004 年1月末と 2005年1月末の二時点に二回目のパ ネル調査が実施されたのである。これらは層化 2 段無作為抽出によって選ばれた 4000 人を対象に し、日本人口の約7割がカバーされる家計調査である。調査内容は、対象者の就業状態、家族構 成の変化や家族の状態などの幅広い質問が用意された。また、KHPS-2004 および KHPS-2005 に よって、個人の過去就業の履歴情報が取得できる。 今回のサンプルについて、KHPS-2004 の回収データが 4005 人、 KHPS-2005 の回収データが 3314 人であるが、無回答と非常識の回答(欠損値として)を除外し、また、有配偶者の女性を限定 すると、利用されるパネル分析の観察数が 2273 人、サンプルが 996 人になる(附表1-2)。 全体(有配偶者+無配偶者)の年齢別・就業状況(表1)からみると、各年齢層では、女性におけ る「就業率」 12 および「企業継続就業率」 13 が男性より低く、とくに「25-29 歳」および「30-34 歳」の女 性における「就業率」が男性よりかなり低いことがわかる。表 2 によって、有配偶者を限定すると、男 性における「就業率」および「企業継続就業率」が全体より高い一方、有配偶女性は逆になり、とく に「25-29 歳」および「30-34 歳」の有配偶者女性における「就業率」および「企業継続就業率」が一 番低いことが示される。また、表 3 によって、出産・育児時期における有配偶女性の就業について、 「子供の年齢」が低いほど、女性における「就業率」および「企業継続就業率」が低い一方、「離職・ 休業率」が高いことがみられる。表 1−3 からみると、現在の日本では、結婚・出産・育児が日本女 性の就業に大きく影響を与え、女性の M 字型就業の特徴が依然存在していることが示されるが、 具体的に出産・育児はどのように女性の就業に影響を与えることが必ずしも明確ではない。この問 題について、次に計量分析を行う。以下では、推定モデルについて説明する。 12 13 本 研 究 で は 、「 就 業 率 」 に つ い て 、 質 問 項 目 に お け る 「 先 月 あ な た は 収 入 を と も な う お 仕 事 ( 家 族 従 業 者 を 含 む ) をしましたか」に関する回答選択肢の①「主に仕事」+②「通学のかたわらに仕事」+③「家事などのからわら に仕事」=就業のように設定する。 本 研 究 で は 、「 企 業 継 続 就 業 率 」 に つ い て 、 樋 口 ( 1995; 1998) に 基 づ い て 、 質 問 項 目 に お け る 「 あ な た は 1 年 前と同じ仕事に就いていますか」の回答選択肢の①継続就業・転勤なし+②継続就業・転勤あり+③出向=企業 継続就業のように設定する。 5 表1 年齢別・男女の就業状況 (全体) 20-24歳 25-29歳 30-34歳 35-39歳 40-44歳 45-49歳 50-54歳 就業率 男性 72.11% 94.44% 95.07% 95.33% 97.66% 96.14% 93.93% 女性 70.92% 67.94% 57.85% 58.14% 72.49% 81.45% 67.61% 企業継続就業率 男性 女性 47.89% 47.96% 78.89% 52.94% 89.57% 46.34% 89.19% 45.58% 91.81% 63.24% 91.46% 72.58% 89.96% 62.21% 離職・休業率 男性 女性 7.37% 13.27% 1.11% 6.18% 1.16% 8.12% 1.72% 8.53% 0.58% 4.11% 0.55% 2.42% 2.51% 3.86% 継続無業率 男性 女性 20.00% 15.31% 2.59% 24.12% 2.32% 32.98% 2.70% 33.59% 1.17% 23.14% 1.93% 15.59% 2.51% 27.76% 注:1 KHPS2004,KHPS2005より整理。 2 「企業継続就業」=「1年前と同じ会社・経営組織に継続就業・転勤なし+継続就業・転勤あり+出向」である。 3 「継続無業」=「1年前、仕事に就いておらず、現在も仕事に就いていない」である。 4 質問項目によって、就業状況について、「企業継続就業」、「転職」、「新規就業」、「離職・休業」および「継続無業」の五つ のカテゴリに設定したが、「転職率」および「新規就業率」は掲載で省略されている。 表2 年齢別・有配偶者の就業状況 (有配偶者のみ) 20-24歳 25-29歳 30-34歳 35-39歳 40-44歳 45-49歳 50-54歳 就業率 男性 100.00% 99.07% 97.71% 98.19% 99.64% 98.03% 95.88% 女性 35.14% 42.17% 45.42% 51.12% 69.88% 80.75% 65.37% 企業継続就業率 男性 女性 87.51% 29.73% 88.89% 31.33% 93.58% 35.90% 91.84% 42.17% 93.82% 60.56% 94.10% 72.36% 92.98% 60.90% 離職・休業率 男性 女性 0.00% 24.42% 0.00% 10.84% 0.36% 10.26% 0.91% 8.31% 0.58% 3.73% 0.33% 2.17% 1.69% 3.58% 継続無業率 男性 女性 0.00% 43.24% 0.00% 44.58% 0.00% 43.22% 0.60% 40.26% 1.17% 25.70% 0.00% 16.46% 1.45% 30.45% 注:1 KHPS2004,KHPS2005より整理。対象は有配偶者に限定されている。 2 「企業継続就業」=「1年前と同じ会社・経営組織に継続就業・転勤なし+継続就業・転勤あり+出向」である。 3 「継続無業」=「1年前、仕事に就いておらず、現在も仕事に就いていない」である。 4 質問項目によって、就業状況について、「企業継続就業」、「転職」、「新規就業」、「離職・休業」および「継続無業」の五つ のカテゴリに設定したが、「転職率」および「新規就業率」は掲載で省略されている。 6 表3 出産・育児時期における女性の就業 就業率 ① 49.20% 49.01% 58.84% 63.32% 27.27% 31.37% 51.09% 73.06% 56.52% 子供の人数 なし 1人 2人 3人 末子の年齢 0歳 1−3歳 4−6歳 7−18歳 19歳以上 企業継続就業 ② 42.93% 41.23% 49.21% 50.31% 14.29% 23.21% 32.26% 61.95% 50.00% 転職 ③ 1.99% 1.58% 3.39% 4.29% 0.00% 2.39% 4.68% 4.60% 1.61% 離職・休業 ④ 5.71% 7.89% 4.47% 4.91% 34.92% 7.17% 5.26% 3.54% 4.25% 新規就業 ⑤ 1.49% 2.81% 4.96% 6.44% 0.00% 5.80% 9.94% 6.02% 1.47% 継続無業 合計 ⑥ ②+③+④+⑤+⑥ 47.89% 100% 403人 46.49% 100% 570人 37.97% 100% 827人 34.05% 100% 326人 50.79% 100% 63人 61.43% 100% 293人 43.86% 100% 171人 23.89% 100% 565人 42.67% 100% 682人 注:1 KHPS2004,KHPS2005より整理。対象は有配偶者に限定されている。 2 「企業継続就業」=「1年前と同じ会社・経営組織に継続就業・転勤なし+継続就業・転勤あり+出向」である。 3 「継続無業」=「1年前、仕事に就いておらず、現在も仕事に就いていない」である。 4 質問項目によって、就業状況について、「企業継続就業」、「転職」、「新規就業」、「離職・休業」および「継続無業」の五つ のカテゴリに設定した。 3.2 推定モデル 3.2.1 バイベリエト・プロビットモデル( Bivariate probit model) 14 まず、式(1)で出産関数と就業関数の推定式がそれぞれ示される。 出産関数: Yi β = xi β + offset βi γ γ 就業関数: Yi = xi γ + offset i (1) 式(1)では、二つの条件に分けられ、式(2)で示される。 y1i ≠ 0 q1i = 1 その他 q1i = −1 y 2i ≠ 0 q 2i = 1 その他 q 2i = −1 (2) 式(1)、(2)によって、出産関数と就業関数の同時性が式(3)で示される。 ρ i∗ = q1i q 2i ρ (3) ρ は誤差項の相関係数である。 ρ =0 になると、出産選択と就業確率は無相関であり、 ρ ≠ 0 に なると、出産選択と就業が同時決定の相関関係があることが推定できる。また、 ρ <0 になると、出 産 選 択 と就 業 確 率 のトレード・オフの関 係 が存 在することが判 明できる。また、推 定の最 尤 関 数 が 式(4)で示される。 14 こ の モ デ ル に 関 す る 詳 し い 説 明 に つ い て 、Poirier,D.(1981) Partial oberservability in bivariate probit models, Journal of Econometrics, 12,pp.209-217.を 参 照 く だ さ い 。 松 浦 ・ 滋 野 (1996)、 小 川 ・ 金 子 ・ 森 田 ( 1996) や 山 上 ( 1999) な ど の 研 究 で は 、 バ イ ベ リ エ ト ・ プ ロ ビ ッ ト モ デ ル が 利 用 さ れ た 。 7 n L = ∑ wi InΦ 2 (q1i Yi β , q 2i Yi γ , ρ i ∗) i (4) i =1 3.2.2 ランダム プロビット・モデル( Random effects probit model) プロビット・モデルの推定式について、就業選択を y it にし、選択しなければ0、選択すれば1の二 項選択の形を設定する上で、経済主体 i が時間 t に就業決定をする確率を p it とすると、非説明 変 数 の期 待 値 は E ( y it ) = 1 * pit + 0 * (1 − pit ) = pit となり、これは説 明 変 数 xit (例 えば「提 示 賃 金率」、「子供の年齢」や「子供の数」など)で説明されると、式(5)が導出される。 pit = P{ y it = 1} = E{ y it | xit } = F{xit } (5) この累積密度関数は式(6)のように示される。 z F ( x F ( xit ) = Φ ( xit ) = ∫ −∝ 1 2π e −u / 2 du (6) 1と0のような就業決定をすると、式(7)のように示される。 yit =1 if y ∗ it >0 yit =0 if y ∗ it ≤ 0 ここで、 y ∗ it (7) = µ 0 + β j xit + κ it を設定すると、式(8)となる。 Pr = { y it = 1} = Pr{ y it∗ 〉 0} = Pr{µ it 〉 − µ 0 + β j xi } = F {µ 0 + β j xit } (8) (8)式では、サンプル y it を得る同時に確率は式(9)のような尤度関数として示される。 L( µ 0 , β j ) = ∏ (µ 0 + β j xit ) ∗ ∏ (1 − F ( µ 0 + β j xit )) yi =1 また、 y ∗ it (9) yi = 0 = µ 0 + β j xit + κ it の誤差項 κit について、個人異質性による個別効果が時間とともに 出現するあるいは一定確率で出現するため、 κ it は個別効果 ν i と真の誤差 ε it の二つに分けられ、 式(9)で示される。パネル分析によって、個別効果 κ it を除外する上で、一致推定量が求められる・ y ∗ it = µ 0 + β j xit + ν i + ε it (10) 8 3.2.3 コクッス比例ハザートモデル( Cox proportional hazard model) コクッスの比率ハザット・モデルの推定式が以下の式(11)で示される。 λi (t ) = λ0 (t ) exp{ X i (t ) β } (11) 式(11)では、 λ0 (t ) はベースライン・ハザートと呼ばれる様々な要因 を取り除いた場合の全サン プルに共通するハザート率である。 3.3 説明変数の設定 本研究では、出産・育児の影響を中心として考察するため、まず、出産・育児の代理指標として、 「子供の数」および「子供の年齢」が説明変数として設定される。「子供の数」が「子供0人」、「子供 1人」、「子供2人」および「子供3人以上」の四つのカテゴリに分けて設定され、「子供の年齢」が「0 歳」(新規出産の代理指標)、「1−3歳」、「4−6歳」、「7−18歳」および「19 歳以上」の五つのカテ ゴリに分けて設定される。 次 に他の要 因 の影 響を考 慮 する上 で、「女 性の年 齢」、「女 性 の学 歴」、「夫の自 営 業 ダミー」、 「夫の年収」、「親と同居」、「企業規模」や「地域」などの要因が説明変数として設定されている。以 下は以上の説明変数を利用した推定結果である。 4 推定結果 4.1 出産と女性の就業決定の同時性 (バイベリエトプロビット分析) 表 4 からみると、出産関数について、「女性の年齢」が高いほど、「既存子供の数」が多いほど、出 産 の確 率 が低 いことがみられる。また、「夫 の年 収 」の影 響 について、「200-400 万 円 」に比 べ、 「400-600 万円」および「800-1000 万円」における出産確率が高く、つまり「夫の所得」が高いほど 出産を促すことが示され、この推定結果がシカゴ派の出産に関する経済学的理論(Becker,1965; Willis,1973; Butz and Ward,1979)に整合している。 15 就業関数について、女性の年齢が高いほど、就業の確率が低いことがみられる。また、「夫の年 収」が女性 の就業に有意な影響を与えないが、「夫の自営 業」および「親と同居」が女性の就業 の 確 率に有 意 な正の影響 を与えることがみられる。家 族からの育 児 援 助が女 性の就 業 を促すことが 示される。 出産と就業の決定の同時性について、推定結果によって、 ρ の推定値は負で有意となってい ることが明らかにわかる。したがって、女性における出産と就業が同時に決定されるとともに、両者が トレード・オフの関 係にあることが示 される。現 在 の日 本では、女 性として、出 産と就 業の両 立が非 常に困難であることが示される。 4.2 出産・育児が女性の継続就業に与える影響 (ランダム プロビット分析) 今回の分析では random effect とプリングプロビット分析の二つの推定が行われたが、LM 検定に よって、 random effect が有意ではないという対立仮説が棄却され、random effect プロビット分析が 望ましい手法として残されているため、以下では、random effect プロビット分析の結果について説 15 Becker(1965 ),Willis(1973) や Butz and Ward(1979)な ど の 研 究 で は 、 所 得 制 約 下 に お け る 家 計 の 効 用 極 大 化 行 動に出発し、夫の市場賃金の上昇は家族所得を高め、子供に対する需要を増大させることが指摘される。 9 明する。 まず、「子供の年齢」が若いほど、女性における「企業継続就業」 16 および「労働市場継続就業」 17 の確率が低いことがわかる。また、子供の数が増えると、「企業継続就業」および「労働市場継続 就業」の確率が低くなるが、有意ではないことがわかる。 次に「高校」を基準組にすると、「大学」が女性における「企業継続就業」および「労働市場継続 就業」に正の影響を与えるが、有意ではないことがみられる。この結果は欧米で検証される「高学歴 高就業確率」の結果と異なり、高学歴の日本女性における「企業継続就業」および「労働市場継続 就業」の確率が高くなく、つまり出産・育児の際に、高学歴の日本女性が就職した企業および労働 市場から退出することが示される。学歴が高いほど、就業中断による機会費用が高 いことが考えら れる。したがって、女 性 の高 学 歴 化 に伴 って、日 本 少 子 化 の問 題 が深 刻 化 になることが考 えられ る。 また、「親と同 居」が女 性における継 続 就業に有 意な影 響 を与えないが、「夫の自 営 業」が女 性 の継 続 就 業 に有 意な正 の影 響を与 えることがみられる。家 族 の育 児 協 力 について、親 の支 援 より 労働時間が拘束されない場合による夫の協力が女性の継続就業を促すことが示される。また、「夫 の所 得」の効 果について、「夫の年 収」の増 加 が女 性 の継 続 就 業に負 の影 響を与 えるが、有 意 で はなく、つまり「Douglus=有沢法則」で指摘されるような「夫の所得」が日本女性の就業に与えるマイ ナスの影響が弱くなってきたことがみられる。 また、random effects プロビット分析の結果を用いてシミュレーションをすると、子供を持つ女性に おける「企業継続就業」の確率について、「子供なし組」より、「0−3 歳組」が 193%減少し、「1-3 歳 組」が 51%減少し、「4-6 歳組」が 25%減少することが明らかにわかる。いずれも、末子の年齢が若 いほど、女性における「企業継続就業」および「労働市場継続就業」の確率が低いことが明らかに わかる。 本 研 究 で は 、「 労 働 市 場 継 続 就 業 」の プ ロ ビ ッ ト 分 析 で は 、非 説 明 変 数 の 設 定 に つ い て 、樋 口( 1995;1998)に 基 づいて、質問項目における「あなたは1年前と同じ仕事に就いていますか」の回答選択肢の①継続就業・転勤な し+②継続就業・転勤あり+③出向にならば、企業継続就業=1、④「転職」+⑥「離職」にならば、企業継続 就業=0 のように設定する。 17 本 研 究 で は 、 「 労 働 市 場 継 続 就 業 」の プ ロ ビ ッ ト 分 析 で は 、非 説 明 変 数 の 設 定 に つ い て 、樋 口( 1995;1998)に 基 づいて、質問項目における「あなたは1年前と同じ仕事に就いていますか」の回答選択肢の①継続就業・転勤な し+②継続就業・転勤あり+③出向+④転職にならば、労働市場継続就業=1、⑥「離職」にならば、労働市場 継続就業=0 のように設定する。 16 10 表4 出産が就業決定に与える影響 (Bivariate probit analysis) 本人 年齢 年齢2 学歴(高校) 中学 短大・高専 大学 子供の数 夫 年収(200−400万円) 0-200万円 400-600万円 600-800万円 800-1000万円 1000万円以上 夫の自営業 親と同居 地域 地域 (大都市) 市町 村 cons. ρ Number of obs number of groups Log likelihood Wald test Log likelihood ratio test for rho=0 出産関数 係数 z値 0.1491 1.09 -0.0038 * -1.80 就業関数 係数 z値 0.2332 *** 11.08 -0.0026 *** -11.49 -0.0186 -0.1640 -0.3038 -0.2860 -0.07 -1.02 -1.21 -4.10 0.0044 -0.1599 -0.0320 -0.0391 2.69 1.71 2.96 1.15 1.28 -0.81 -0.63 -0.0559 0.0332 -0.0527 0.0517 0.0128 1.7406 0.2212 2.75 2.65 -1.06 -3.99 -0.0592 0.2299 -4.7343 0.6077 0.3194 0.6009 0.3086 0.3235 -0.2470 -0.1393 0.4895 0.5812 -2.2732 -0.3664 2273 *** ** *** *** *** *** ** *** *** ** *** 0.05 -2.15 -0.31 -1.24 -0.52 0.45 -0.58 0.48 0.11 12.91 2.77 -0.82 2.45 -10.57 -1533.91 chi2(30)= 423.48 Prob>chi2=0.0000 chi2(1)=16.60 Prob>chi2=0.0000 注:1 *,**,*** はそれぞれ有意水準10%、5%、1%を示す。 2 非説明変数について、「出産=1、出産しない=0」、「就業=1、就業しない=0」のように設定される。 11 表5 出産・育児が企業継続就業に与える影響 (pooled & random effects probit analysis) pooled 本人 係数 0.1037 -0.0011 z値 2.67 -2.50 *** 年齢 ** 年齢2 学歴(高校) 中学 -0.2233 -1.47 短大・高専 -0.1545 -1.31 大学 0.0899 0.53 出産・育児 子供の数(0人) 1人 -0.0049 -0.03 2人 -0.0123 -0.08 3人以上 -0.0550 -0.29 末子の年齢(子供なし) 0歳 -1.4999 *** -5.18 -2.30 1−3歳 -0.4192 ** 4−6歳 -0.2164 -1.06 7−18歳 -0.0046 -0.03 夫 年収(200−400万円) 0-200万円 0.1937 1.02 400-600万円 -0.0884 -0.75 600-800万円 0.0308 0.20 800-1000万円 0.0013 0.01 1000万円以上 -0.0688 -0.39 5.91 夫の自営業 1.0515 *** 親と同居 -0.0339 -0.28 企業規模 (1−99人) 100−499人 0.1336 0.81 500人以上 0.1267 0.68 地域 地域 (大都市) 市町 0.0318 0.28 村 0.4982 *** 3.17 年代別 (2004年基準) 2005年 -0.0119 -0.13 -1.69 cons. -1.3936 * Number of obs 1285 Log likelihood -474.67 Wald test LR(24)= 155.06 Prob>chi2=0.0000 sigma-u rho Log likelihood ratio test for rho=0 Pseudo R2 0.1404 random effects 係数 z値 0.1396 ** 2.59 -0.0014 ** -2.43 -0.2897 -0.2128 0.1595 -1.44 -1.36 0.72 0.0148 -0.0173 -0.0821 0.08 -0.09 -0.33 -1.9271 -0.5103 -0.2444 0.0199 0.2198 -0.1316 0.0740 0.0321 -0.1050 1.3760 -0.0798 *** ** *** 0.1645 0.1941 0.0431 0.6523 -4.42 -2.10 -0.92 0.11 0.87 -0.84 0.35 0.13 -0.44 4.88 -0.50 0.75 0.76 *** 0.28 2.99 -0.0046 -0.04 -1.9724 * -1.76 1285/996 -471.02 chi2(24)= 44.61 Prob>chi2=0.0065 0.8534 0.4214 chi2(01)=7.31 Prob>chi2=0.0003 注:1 *,**,*** はそれぞれ有意水準10%、5%、1%を示す。 2 企業継続就業の推定では、非説明変数が「継続就業=1、離職・転職=0」のように設定される。 12 表6 出産・育児が労働市場継続就業に与える影響 (pooled & random effects probit analysis) pooled 本人 係数 0.1585 -0.0017 z値 3.63 -3.63 *** 年齢 *** 年齢2 学歴(高校) 中学 -0.2562 -1.48 短大・高専 -0.0601 -0.42 大学 0.0602 0.30 出産・育児 子供の数(0人) 1人 -0.0806 -0.50 2人 0.0498 0.29 3人以上 -0.0142 -0.06 末子の年齢(子供なし) -6.07 0歳 -1.8605 *** 1−3歳 -0.4881 ** -2.40 4−6歳 -0.1174 -0.48 7−18歳 0.1083 0.62 夫 年収(200−400万円) 0-200万円 0.3502 1.38 400-600万円 -0.1008 -0.72 600-800万円 -0.0627 -0.34 800-1000万円 -0.0619 -0.29 1000万円以上 -0.2212 -1.12 4.38 夫の自営業 1.6938 *** 親と同居 0.0062 0.04 企業規模 (1−99人) 1.78 100−499人 0.3892 * 500人以上 0.2187 0.93 地域 地域 (大都市) 市町 0.0972 0.71 2.28 村 0.4249 ** 年代別 (2004年基準) 2005年 -0.1001 -0.89 -2.31 cons. -2.1412 ** Number of obs 1285 Log likelihood -325.74 Wald test LR(24)= 181.77 Prob>chi2=0.0000 sigma-u rho Log likelihood ratio test for rho=0 Pseudo R2 0.2181 random effects 係数 z値 0.2061 *** 3.17 -0.0022 *** -3.17 -0.3431 -0.1207 0.1297 -1.48 -0.63 0.49 -0.1088 0.0692 -0.0207 -0.51 0.31 -0.07 -2.3977 -0.5849 -0.0918 0.1808 0.4359 -0.1461 -0.0826 -0.0614 -0.3064 2.1879 -0.0294 0.5325 0.2926 0.1223 0.5450 *** ** *** * ** -4.49 -2.13 -0.29 0.77 1.28 -0.77 -0.33 -0.21 -1.12 3.79 -0.15 1.71 0.92 0.68 2.13 -0.1187 -0.82 -2.8217 ** -2.18 1285/996 -323.6 chi2(24)= 32.65 Prob>chi2=0.0116 0.8593 0.4247 chi2(01)=4.29 Prob>chi2=0.019 注:1 *,**,*** はそれぞれ有意水準10%、5%、1%を示す。 2 労働市場継続就業の推定では、非説明変数が「継続就業・転職=1、離職=0」のように設定される。 13 表7 プロビット分析の結果を利用するシミュレーション ケース1 ケース2 ケース3 ケース4 ケース5 ケース6 ケース7 ケース8 ケース9 ケース10 ケース11 ケース12 ケース13 ケース14 ケース15 ケース16 ケース17 基本ケース 年齢 25歳 35歳 学歴 中卒 短大 大卒 子供の数 1人 2人 3人以上 子供の年齢 0歳 1−3歳 4−6歳 夫の所得 0−200万 600−800万 800−1000万 夫の自営業 企業規模 中企業 大企業 継続就業率(%) 企業継続就業 労働市場継続就業 96% 138% -32% -42% 24% 32% -29% -34% -22% -12% 16% 13% 1% -11% -2% 7% -9% -2% -193% -36% -51% -58% -25% -9% 22% 44% 7% -8% 3% -6% 137% 219% 16% 53% 19% 29% 注:1 基本ケースは年齢30歳 高卒、子供なし、夫の年収400−600万円、夫自営業ではなく、 小企業(10-99人)、大都市のである。 2 基本ケース以外の数値は基本ケースとの差を示す。 4.3 出産・育児が女性の正規雇用期間に与える影響 (コックスの比例ハザート分析) Kaplan-Meier 法の分析によって、図1で示されるように、「4−6 歳組」および「7−18 歳組」に比 べ、「0−3 歳組」における正規雇用期間の残存確率が一番低いことがわかる。「末子の年齢」が若 いほど、正規雇用期間の確率が低いことが明らかにわかる。 図1 末子年齢別・正規雇用期間の確率分析(Kaplan-Meier 法) 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 Kaplan-Meier survival estimates, by chi03 chi46 chi718 0 10 20 analysis time chi03 = 0/chi46 = 1/chi718 = 0 chi03 = 1/chi46 = 0/chi718 = 0 30 40 chi03 = 0/chi46 = 1/chi718 = 1 14 コックスの比例ハザート分析によって、表 8 で示されるように、「子供なし+19 歳以上子供組」に 比べ、「末子の年齢」の若い組が正規雇用期間の確率を低めることが明らかにわかる。この推定結 果は Kaplan-Meier 法による結果に一致している。また、「高校」に比べ、「短大」および「大学」が 正規雇用期間の確率に有意な正の影響を与えることが明らかにわかる。 「育児休業制度」の効果について、「学歴」および「子供の年齢」をコトーロルする上で、「雇用均 等法以前 時 期(1985 年以前)」、「雇用均等法 時 期(1986−1992 年)」および「育児休 業法時期 (1993 年 以 降 )」の三 つの時 期 に分 けて考 察 する。「雇 用 均 等 法 時 期 」に比 べ、「育 児 休 業 法 時 期」が正規雇用期間の延長に影響を与えるが、その有意性が顕著ではないことがみられる。この推 定結果について、「育児休業制度」が「正規雇用期間」の延長に影響を与えることが考えられるが、 今回の分析では、データの制限で、具体的な「育児休業制度」のダミー変数が設定されなく、1993 年以後のマクロ経済の影響と育児休業制度の影響の両方が混在して相殺するため、「育児休業制 度」の有意性が顕著ではないことが考えられる。 表8 出産・育児就業が正規雇用期間に与える影響 (Cox proportional hazard analysis) 推定1 年齢 年齢2 学歴(高校) 係数 1.0626 0.9993 中学 -0.7364 短大・高専 -0.5331 大学 -0.3547 子供の年齢(子供なし+子供19歳以上) 0-3歳 1.6205 4−6歳 1.4791 7−18歳 1.2990 出産年代別(1986年−1992年) 1985年以前 1993年以後 Number of obs 702 Number of failure 613 Time at risk 7325 LR chi2(8)=57.79 Log Pseudo Likelihood -3519.74 Prob>chi2 0.0000 ** ** ** *** *** *** ** ** 推定2 z値 2.29 -2.57 係数 z値 -2.56 -3.36 -3.75 -0.6772 -0.5184 -0.3671 *** 2.69 2.41 2.03 2.2141 1.9619 1.6367 *** *** *** *** *** -0.6568 *** -0.9082 702 613 7325 chi2(8)=56.85 -3520.21 0.0000 -3.40 -3.54 -3.63 3.98 3.66 3.18 -2.63 -0.72 注:1,*,**,*** はそれぞれ有意水準0.1、0.05、0.01を示す。 2 負ならば継続就業期間が長くなり、正ならば継続就業期間が短くなる。 5 結論および政策示唆 本研究では、出産・育児が日本女性の就業行動に与える影響について、パネルデータの分析に よって、以下の結論が導き出される。 第一に、出産と女性の就業が同時決定されるとともに、両者がトレード・オフの関係にある。現在 の日本では、女性の出産と就業の両立が非常に困難である。 第二に、個別効果を除外し、末子の年齢が若いほど、女性における「企業継続就業」および「労 働市場継続就業」の確率が低い。また、両親より、夫の育児協力が女性の就業を促す。 第三に、末子の年齢が若いほど女性の正規雇用期間が短い。また、「高校」に比べ、「短大」お 15 よび「大学」が正規雇用期間に有意な正の影響を与える。 第 四 に、「育 児 休 業 制 度 」が正 規 雇 用 期 間 に正 の影 響 を与 えるが、その有 意 性 は顕 著 ではな い。 分析結果によって、女性における出産・育児の機会費用を減少するために、以下のような女性の 就業に関する促進政策が必要であることが考えられる。 第一に、日本では、1992 年から「育児休業制度」が実施されたが、今回の推定結果によって、出 産・育児が依然に女性の就業に大きくマイナスの影響を与えることが明らかにわかる。 この理由の一つが「育児休業制度」における実施面の問題であることが考えられる。つまり、1993 年 以 後に「育 児 休 業 制 度」を導 入 する企 業が増 加したが、その制 度を実 施しない企 業は少なくな いのである。また、企業が育児休業制度を導入しても、雇用慣行によって、結婚・出産を契機に退 職する女性は少なくないのである。 18 したがって、女性の就業を促進するために、企業に対して、 「育児休業制度」を義務付けし、「育児休業制度」の実施に対する法的監査が必要であることが考 えられる。また、経済的合理性からみると、育児休業制度の実施によるコスト負担について、政府と 企業はどのように分担するかなどの問題に関する検討が必要である。 19 また、現実に一年間の育児休業を取得しても、若い子供(0−3歳)の保育サービス(例えば、保 育所や保育園など)が不足であるため、出産・育児期における女性が仕事を辞めなければならない のが少なくない。したがって、若い子供(特に 0-3 歳子供)の保育施設を充実する政策が必要であ ることが考えられる。 第二に、従来の分析によって、「親と同居」が日本女性の就業を促すことが確認されたが、今回 の分析では、「親と同居」より、「夫の自営業」が女性の就業および継続就業の確率を高めることが 明らかに示される。 この推定結果に二つの意味があると考えている。まず、夫の自営業の場合、夫の労働時間が拘 束されないため、夫の育児協力ができると考えられる。また、夫の自営業の場合、妻が家業の協力 者として働き、妻の労働時間も拘束されないため、育児と仕事を両立できることが考えられる。いず れも、夫と妻の労働時間が拘束されない場合、女性の就業が促進されることが示される。 したがって、出産・育児時期における女性のみならず、若い子供を持つ男性に対しても、育児休 業や短時間勤務などの育児援助政策の実施が必要であることが考えられる。 第三に「高校」に比べ、「短大」および「大学」が女性の正規雇用期間に有意な正の影響を与え ることがわかる。 この推定結果について、「低学歴」に比べ、「高学歴」の女性における「人的資本」の蓄積が多く、 現在の日本では高学歴の女性が出産・育児時期に、一度に離職あるいは育児休業をすると、その 後に以前より良い仕事を就く確率が低いため、学歴が高いほど正規雇用期間が長くなる確率が高 いことが考えられる。具体的に言えば、Becker(1964)と Mincer(1974)の「人的資本理論」によ れば、高学歴の女性が人的資本の損失を減少するために、意欲的に正規雇用期間を延長し、「子 18 19 1996 年 の 「 女 性 の 職 業 意 識 と 就 業 行 動 に 関 す る 」 調 査 に よ っ て 、「 育 児 休 業 制 度 」 が 実 施 さ れ た 規 模 別 ・ 企 業 の 割合について、 「 100 人 未 満 」が 23.2% 、 「 100− 299 人 」が 25% 、 「 300− 999 人 」が 40% 、 「 1000 人 以 上 」が 23.8% であることが示された。また、同調査によって、女性雇用者(正規社員)の育児休業制度利用意志について、育 児 休 業 制 度 が 実 施 さ れ て も 、「 結 婚 ・ 出 産 を 契 機 に 退 職 す る 」 と い う 回 答 を 選 択 す る 女 性 の 割 合 は 「 30− 99 人 企 業 」 が 20.0% 、「 100− 299 人 企 業 」 が 25.0% 、「 1000 人 以 上 企 業 」 が 14.3% で あ る こ と が わ か っ た 。 労 働 市 場 に お け る 法 規 制 と 経 済 効 率 に つ い て 、樋 口( 1994)「 育 児 休 業 制 度 の 実 証 分 析 」に よ っ て 、「 経 済 合 理 性 の追及と法規制の間には矛盾が生じてしまう、人々は効率と公平のどちらを選ぶのかといったトレード・オフの 問題に直面せざるをえない。法規制を円滑に遂行するためには、一方でこれを順守する企業に、何らかの社会的 便益を与える必要が生じよう」ということが指摘される。 16 供を生む」より「子供を生まない」、「早く結婚して子供を生む」より「晩婚晩育」、また「多くの子供を 生む」より「子供の数を減らす」ということを選択することは経済合理性があるのであろう。 したがって、日本少子化の問題を解決するために、女性に対して、とくに高学歴の女性に対して、 元仕事を戻られ、つまりキャリアの継続ができるような企業・社会環境を図る労働政策が必要であり、 その中で「育児休業制度」の実施が重要であることが考えられる。 「育 児 休 業 制 度」が女 性の就 業にポジティブな影 響を与えることが考えられるが、この制 度の実 施に伴 って、労 働 政 策 における規 制 の「逆 効 果」が出 現 するかもしれない。 20 したがって、今 後 、 「育児休業制度」を含む労働雇用政策が日本女性の就業に与える影響に関する厳密的なパネル データの分析が必要であることが考えられる。 20 労 働 雇 用 政 策 の 効 果 に 関 す る 研 究 に つ い て 、例 と し て は 、ア メ リ カ の Affairmative Actionn に 関 す る 実 証 分 析 に よ っ て 、 Affairmative Actionn の 実 施 に 伴 っ て 、 女 性 お よ び 黒 人 の 雇 用 お よ び そ れ ら の 従 業 員 に 対 す る 企 業 教育 訓練が増加したポジティブな効果が出現した一方、企業における雇用者の質が低くなり、企業生産性が低下し、 ま た 採 用 お よ び 雇 用 に お け る 雇 用 主 の 差 別 が 拡 大 し た こ と が 指 摘 さ れ る ( Leonard 1984,1989,1990;Conard,C. 1995;Griffin,1992;Caplan, L.1997; Holzer. H.J and Neumark,D. 1999)。 17 附図1 日本における合計特殊出産率の推移 日本の合計特殊出産率 4.00 3.50 3.00 2.50 2.00 1.50 1.00 0.50 注:1 20 02 年 20 01 年 20 00 年 19 95 年 19 90 年 19 85 年 19 80 年 19 75 年 19 70 年 19 65 年 19 60 年 19 55 年 19 50 年 0.00 国 立 社 会 保 障 ・ 人 口 問 題 研 究 所 「 人 口 統 計 資 料 集 」、 厚 生 労 働 省 「 人 口 動 態 時 計 」 により作成。 2 「 合 計 特 殊 出 産 率 」 と は 、 15-49 歳 ま で の 女 子 の 年 齢 別 出 産 率 を 合 計 し た も の で 、 1人の女性が仮にその年次の年齢別出産率で一生の間に生むとしたときの子供の数 に相当する。 附図 2 日本における女性の雇用率の推移 日本女性の雇用率 注:1 20 02 年 20 01 年 20 00 年 19 95 年 19 90 年 19 85 年 19 80 年 19 75 年 19 70 年 19 65 年 19 60 年 19 55 年 45.00% 40.00% 35.00% 30.00% 25.00% 20.00% 15.00% 10.00% 5.00% 0.00% 2000 年 ま で は 総 務 省 「 国 勢 調 整 」、「 労 働 力 調 査 」 に よ り 作 成 。 2001 年 お よ び 2002 年 は 総 務 省 「 人 口 推 計 」、「 労 働 力 調 査 」に よ り 作 成 。 2 雇 用 就 業 率 = ( 雇 用 者 数 /15 歳 以 上 人 口 ) X100 18 附表1 記述統計量(プロビート分析) 本人 子供の数 子供年齢 夫の年収 夫の自営業 親との同居 企業規模 地域 年齢 中学 高校 短大 大学 0人 1人 2人 3人以上 0歳 1−3歳 4−6歳 7−18歳 19歳以上 0-200万円 200-400万円 400-600万円 600-800万円 800-1000万円 1000万円以上 1−99人 100−499人 500以上 大都市 市町 村 2005年 観察数/サンプル数 平均値 標準偏差 47.1773 12.1340 0.1126 0.3162 0.6023 0.4895 0.1962 0.3972 0.0889 0.2846 0.2068 0.4051 0.2648 0.4413 0.3797 0.4854 0.1487 0.3559 0.0290 0.1679 0.1346 0.3414 0.0810 0.2728 0.2662 0.4421 0.3207 0.4669 0.0941 0.2921 0.3286 0.4698 0.2644 0.4411 0.1465 0.3537 0.0862 0.2808 0.0801 0.2715 0.1271 0.3332 0.1738 0.3790 0.6695 0.4749 0.1734 0.2846 0.1571 0.2721 0.2116 0.4085 0.6058 0.4888 0.1826 0.3864 0.4677 0.4991 2273/996 最大 20 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 最小 70 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 最大 21 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 最小 69 45 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 注:KHPS2004,KHPS2005より整理。 附表2 記述統計量(ハザート分析) 本人 子供年齢 年齢 正規雇用期間 中学 高校 短大 大学 0−3歳 4−6歳 7−18歳 19歳以上 1985年以前 1986年-1992年 1993年以降 観察数/サンプル数 平均値 49.5442 10.4345 0.1667 0.7607 0.0513 0.0214 0.0655 0.0584 0.1254 0.7507 0.4046 0.1168 0.4786 標準偏差 12.2257 7.3115 0.3729 0.4270 0.2207 0.1447 0.2476 0.2347 0.3314 0.4329 0.4912 0.3214 0.4999 702 注:KHPS2005より整理。 19 参考文献 Adsera(2004) Changing Fertility Rates in Developed countries. 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