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ツーリズム論
第3回
ツーリズムがもたらす
経済効果・外部不経済
慶應義塾大学グローバルセキュリティ研究所寄附講座「ツーリズム論」
1
公共財としての観光地
純粋公共財
・ 等量消費性
何人の人が消費しても消費水準が同じ
一つあれば何人でも同じ満足が得られる
・ 排除不可能性
他の人が消費することを
排除することが難しい
2
純粋公共財に関する例
・ 等量消費性
治安の良さ、
・ 排除不可能性
治安の良さ、 一般の道路
3
富士山を遠くから眺めるとき
・ 多くの人が同じ景色を見ることができる
等量消費性
・ 誰もがその場に来れ
ば富士山を眺められる
排除不可能性
4
公共財の供給や維持には、
一般的に市場の失敗が存在する
すべての観光地が公共財であるわけではない
・ 遊園地、スポーツ観戦
・ グルメ・ツアー
5
市場の失敗
前回も少し話しましたが
レジャーに出かけるときに使う
交通機関や道路
↓
勝手に誰かが作ってくれるわけではない
市場の失敗が存在する
6
共有地の悲劇(市場の失敗の例)
•
「共有地の悲劇」とは、1968年に生物学者ギャレット・ハーディンが雑誌「サイエンス」に掲載したモデルのことである。
・このモデルは、Dawesによって1975年にゲーム理論として定式化され、社会的ジレンマ、特に環境問題を言及するときに
頻繁に取り上げられる。
・ある集合体の中で、メンバー全員が協力的行動をとっていれば、メンバー全員にメリットがあった。しかしそれぞれが合理
的判断の下、利己的に行動する非協力状態になってしまった結果、誰にとってもデメリットになってしまうことを示唆したモ
デルである。
・(例)
ある共有の牧草地があり、5人の村人がそれぞれ20頭ずつ羊を飼っている。ここには羊100頭分の牧草しかなく、それが守
られていれば、村人みんなが牧草地の恩恵に預かれる。また、この羊は1頭100万円で取引され、羊が1頭この牧草地に
増えることにより餌となる牧草が減り、栄養不足のため99万円で取引される。以後、1頭増える度に、1万円ずつ取引価格
は下がっていく。(初期の村人一人の取引高は2000万円)
合理的な村人は、自分の効用(利益)を最大限に高めたいと考える。村人にとって、羊を減らしたり、現状数を維持するより、
増やしたほうが自分にメリットがあると考える。そこで村人Aはもう1頭羊を放牧した。結果、村人Aは2079万円の利益を得
た(羊21頭×99万円)。他4人の村人は、1980万円と取引高が減った(羊20頭×99万円)。
それを見た周りの村人も自分の効用を最大限に高めたいという合理的な考えの下、それぞれが自由に羊を共有地に放し
始めた。結果として、牧草地が荒れ果て誰にとっても使えないものになってしまった。
加えて、自由に放牧した場合の総利益は最適に管理された状況での総利益よりも少なくなってしまう。例えば、5人全員が
1頭ずつ羊を増やした場合、一人当たり1995万円(羊21頭×95万円)となり、適正に管理をしていたときに受け取れる利益
2000万円(羊20頭×100万円)より少なくなってしまう。
また、全体の利益を考えても、最適な管理下での総利益は1億円(羊20頭×100万円×5人)であったはずが、自由な放牧
下では、9975万円(羊21頭×95万円×5人)と、こちらも減少する。
・周りと協力すれば誰にとってもいい結果であったものが、自らの利益追求図ろうとしたため、最終的には誰にとっても悪
い結果になってしまうことを意味している。
(インターネットとでの検索結果)
7
富士山、尾瀬などを考えると、
みんなが勝手に家を建てたり
みんな好き勝手に観光地に出かける
↓
観光地の良さ(価値)
が減ったり、無くなったり
8
公共財の供給、維持、共有地の悲劇に対応す
るためには、何らかの公的な対応(政策)が必
要である。
↓
対応するには、お金がかかる(費用)
建設費、維持費,管理費・・・
↓
費用は、誰かから集めないといけない、
税金?
9
観光地の価値は
観光地の維持管理のために、
・ いくらお金を使うべきか
・ 誰がお金を払うべきか
観光地の価値はいくらか?
その便益の受取手は誰か?
10
観光地に出かける=レジャー と考えて
観光地があることによって
得をしているのは誰か?
・ レジャー関連産業で儲けた人 ?
・ レジャーに行った人 ?
・ レジャーに行く予定の人は?
11
• レジャー関連産業で儲けた人
前回やりました=付加価値の合計は?
=
レジャー関連産業で儲けた人が
受け取った総額
レジャーに出かけた人が支払った総額
=
レジャーに行った人が払った金額
観光地の価値
どこで何に払ったのか?
交通費、現地での支出(食事・宿泊)、お土産
この合計が観光地の価値と関係ある
13
1年間にある観光地にレジャーに
=
行った人が支払ったお金の合計
=
この観光地が一年に生み出す付加価値
(観光地の価値)×(収益率≈利子率)
14
1年間にある観光地にレジャーに
=
行った人が支払ったお金の合計
100万円
(観光地の価値)×(収益率≈利子率)
?
0.01 (1%)
観光地の価値は ・・・・
1億円
15
観光地の価値の比較を考える
500円の交通費で10万人が
来る観光地(お祭り)
500×100,000=50,000,000
5万円の(交通費+宿泊費)で1000人が
来る観光地
50,000×1,000=50,000,000
収益率を1%と考えれば、どちらも 50億円
16
観光客がたくさん来る観光地が
価値がある観光地ではない!
観光地に来るのにたくさんお金を使うこと
×
たくさんの人が来ること
が
観光地の価値を決める
17
観光の経済効果
先週の乗数効果!
観光地の価値=乗数効果の元
観光の経済効果は、
1年間に観光地に関連して生み出された
付加価値と観光の乗数で決まる!
18
ただし
観光の経済効果 =
地域振興、町づくり に役立つ 効果 ?
誰がお金を受け取るのか?
(直接受け取る分+間接的に受け取る分)
地域の人(土産物のお店、ホテルや旅館)
土産物の製造者、農家、漁業関係者
交通機関(ガソリンスタンド)、旅行会社
19
観光の外部性
外部性
市場(モノやサービスの売り買い)を通じない
利益や便益の遣り取り
観光によって外部性が生じることはあるか?
町の活気(明るい町、きれいな町)
便利な交通機関
20
観光の負の外部性
負の外部性=外部不経済
市場(モノやサービスの売り買い)を通じない
負の利益や便益の遣り取り
観光によって外部性が生じることはあるか?
自然の破壊、汚い町、交通渋滞
騒音
21
よさこいソーラン祭り、だんじり祭り
道路が封鎖、家が破損・・・
地域の住民が迷惑を被っている!
交通渋滞 沿線の住民
SMAPやAKB48のイベントで
電車や道路が混雑する
22
ツーリズムの経済効果には
ツーリズムの外部不経済が含まれて
いないことが多い!
23
近隣窮乏化政策
=
ある観光地にたくさん人が来るようになった
みんなが得をしたのか?
別の観光地は閑古鳥が鳴いている
ということはないのか
24
地域振興、町づくり
・・・で気をつけないといけないこと
当該地域に対する経済効果
近隣地域に対する経済効果
日本全体での経済効果
世界全体での経済効果
25
前回のミクロ経済学の部分を思い出すと
家計がレジャーに使うお金の総額は増えたのか?
レジャーだけに使う金額が重要か?
レジャーに使うお金が増えると同時に
所得が増えなければならない?
・ ミクロ経済学では経済全体で
所得が増えるかどうかは見ていない
・ マクロ経済学で経済全体への効果も考えないといけない
26
ツーリズムの経済効果を見る目
1. 経済効果の総額を見ているか
単純にたくさん人が来ることがよい訳ではない!
2. 外部不経済も考慮しているか?
迷惑をしている人たちのことも忘れてはいけない!
3. 経済効果の分配はどうなっているのか?
その地域の人が利益を得ているのか
その地域の人だけが得をすればいいのか?
27
今回の講義で扱えなかったトピックス
・ 観光地の発展段階説
・ 観光地の選択問題
・ 観光産業の産業組織
・ 産業連関表を使った経済効果の計測
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