街区の適正化と新たな事業の 創造に関する実態調査報告書 筑豊地域商店街調査報告書 平成18年2月 福岡県中小企業団体中央会 は じ め に 「改正都市計画法」「中心市街地活性化法」「大規模小売店舗立地法」のいわゆるまち づくり 3 法については、中心市街地の空洞化に鑑み、国は見直し作業を進め、2007年の 施行を目指しているが多省庁が連携して施策を講じているように多面的な視野から取り組 むべき課題も多い。 本調査報告では、産業衰退と人口減少といった課題を背負う筑豊地域の商店街を中心 に、利用者(消費者)と経営者の認識、そして両面から見た意識格差などを検証しながら高 齢化、少子化の進む当地においての今後の新規事業等の可能性について探った。 当地域においては、製造業などを中心に産学連携など企業の新分野進出や技術革新 に関する研究が進んでいる。しかしながら、飯塚市、田川市、直方市の中心市街地におけ る商業関連事業においては、来街人口減少や他都市圏への商業流出などで疲弊度も増 している。このような衰退傾向のなかで昨年(平成17年)4 月、大型複合商業施設のイオン 直方店が開業した。 当該施設は核店舗にジャスコを置き、専門店街やレストラン街、さらには複合映画館(シ ネマコンプレックス)を併設するという九州では最大級の施設である。 また、ジャスコについてもその規模は西日本一であり、3000台の無料駐車場を有し広域 からの集客を狙うものである。それは筑豊 3 市のみならず、北九州市や遠賀郡、中間市な どの広域を商圏設定した吸引力を持っている。 今回は、極めて影響力が大きいと思われる筑豊 3 市の中心市街地商店街(6地点)で調 査を行い、商業集積の規模から業種構成など街区、街力の規模の適正化、サービスや新 たなコミュニティー機能の強化など、利用者視点を重視したなかで今後の商業集積の有り 方について検証した。 近い将来の活性化施策の基礎資料として活用いただければ幸いである。 なお、専門家として、(有)日智の佐藤皓祠代表取締役に多大なご尽力をいただいたこと を付記し、感謝の意を表したい。 平成18年 2 月 福岡県中小企業団体中央会 調査の期間と配布・回収数 1. 中心市街地の街区、街力に関する実態調査 飯塚地区 平成17年 9月20日・22日 、11月11日 直方地区 平成17年10月 6日・ 7日 、11月 5日 田川地区 平成17年 9月13日・14日 、11月16日 2. 商店経営者の意識調査 地 区 時 期 配布数 回収数 飯塚地区 飯塚市本町商店街 飯塚東町商店街 平成17年 10月25日 ~ 10月31日 50 44 〃 10月25日 ~ 10月30日 50 40 直方古町商店街 〃 10月17日 ~ 10月27日 50 47 明治町商店街 〃 10月18日 ~ 10月25日 50 32 後藤寺商店街 〃 10月21日 ~ 10月25日 50 50 伊田商店街 〃 10月18日 ~ 10月22日 50 50 300 263 直方地区 田川地区 合 計 (回収率87.7 %) 3. 消費者購買動向調査 地 区 時 期 配布数 回収数 飯塚地区 飯塚市本町商店街 平成17年 10月28日 ~ 飯塚東町商店街 10月29日 〃 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 600 600 直方地区 直方古町商店街 〃 10月21日 ~ 明治町商店街 10月22日 〃 田川地区 後藤寺商店街 〃 10月14日 ~ 伊田商店街 〃 合 計 10月15日 (回収率100%) 目 * は じ め に 次 〈今回の調査事業について〉 〈調査の時期と配布・回収数〉 第一部 Ⅰ.筑豊地域における商業活性化の方向性を考える 1. 近年の商業経済の推移 〈福岡県統計資料から〉 2. 商業などの活性化の考え方 Ⅱ.大型複合商業施設の開業〈筑豊地域都市圏商業環境の変化〉 1. イオン直方店の集客パワー 2. 直方中心市街地との商業環境変動の受け止め方について Ⅲ.筑豊地域商店街における調査地点別の街区適正調査について 1. 田川地区・・・・・①田川市JR伊田駅前商店街 ② 〃 JR後藤寺駅前商店街 2.直方地区・・・・・③直方市JR直方駅前商店街 3.飯塚地区・・・・・④飯塚市西鉄バスセンター近隣商店街 第二部 Ⅳ.アンケート調査の結果と課題について (この項・別冊) 1.筑豊地域・・・・・①消費者・経営者調査まとめと意識ギャップの分析 ②消費者調査の総括集計表 ③経営者調査の総括集計表 2.田川地区・・・・・①伊田商店街 (消費者・経営者調査結果) ②後藤寺商店街 ( 〃 ) 3.直方地区・・・・・①明治町商店街 ( 〃 ) ②直方古町商店街 ( 〃 ) 4.飯塚地区・・・・・①飯塚市本町商店街 ( 〃 ) ②飯塚東町商店街 ( 〃 ) Ⅴ.まとめ 「筑豊地域中心市街地商店街の街区適正化を考える」 Ⅵ.添付資料(アンケート調査表) 第 一 部 Ⅰ.筑豊地域における商業活性化の方向性を考える 1. 近年の商業経済の推移 〈福岡県統計資料から〉 事業所数 (小売業.件) H16 H14 北九州市 12,388 11,846 福岡市 13,916 13,987 年間商品販売額(万円) 増減% H14 H16 ▲4.4 111,410,196 114,649,999 2.9 180,886,696 182,021,193 0.6 0.5 増減% 直方市 821 809 ▲1.5 5,816,584 5,927,074 1.9 飯塚市 1,195 1,148 ▲3.9 9,005,342 8,303,800 ▲7.8 田川市 820 776 ▲5.4 5,807,329 5,722,058 ▲1.5 福岡県都市別 商業統計抜粋 〈平成 14 年・平成16年〉 * 北九州市は平成 16 年 2 月に小倉伊勢丹オープン * この翌年〈平成 17 年 4 月〉イオン直方店オープン 2. 商業などの活性化の考え方 ① 中心市街地商業地区としての多様性を検討していく 買い物以外にも飲食やコミュニティーの場、或いは遊びの要素を盛り込んだ 多様な集客マグネット造りが必要。 来街者の選択できる要素を増やすことが最もこの地域中心市街地には欠落 していると思われる。商店街における共同開発型の新規改装や主張性を持っ た業種・業態の構成を目指し、特に地域のアクティブシニア対応施策を検討し ていくのも一案であろうと思われる。 さらには在住者への都市活動需要に対応した文化施設の展開やボランティ ア活動の政策拠点として街機能を充足させていくのも今後の検討課題であろ う。 また、筑豊地域 3 市(田川市、直方市、飯塚市)の周辺都市圏の産業や分 化、歴史、芸術環境を上手く取り込んだ市街地活性化事業の考案も「中心市 街地の顔造り」に活用されたいものである。 ② 回遊性と滞留性の機能を持つ魅力的な商業空間の構築 商店街を中心にした回遊性を図るため、アーケード通りのモール化を図っ ていく。思わず店頭に立ち止まったり、店内への入店を促進させるような「ウィ ンドゥショッピング」の楽しみを演出。そのためにも商店街の組合加盟店のネ ットワーク化がポイントとなる。 *福岡市西区周船寺商店街 「街ごと美術館事業」 注)画像は周船寺商店街HPより *豊後高田市「昭和の町」 町をあげての昭和レトロの演出 注)画像は豊後高田市観光協会HPより *兵庫県明石市「魚の棚」商店街 魚屋と海産物店が集積 注)画像は魚の棚商店街HPより ③ 個性の発揮と情報発信 各地域毎にそれぞれ歴史を持つ名物催事やまつりがあるが、地域の学生 サークルやボランティア団体、NPO法人等との連携を図り企画のマンネリ化 脱却やマンパワーによる運営の効率化、さらにはその集客時における本来の 各個店営業の強化、活性化を図ることが望まれる。 また、その機会において各商店街の加盟店が「専門店」としての品揃えや サービス、付加価値の提供を考えながら「専門店街」としての団塊的な魅力と パワーを発揮することが重要と考えられる。 * 高知県高知市「おびさんロード商店街」 恒例の「のみの市」 注)画像はおびさんロード商店街HPより ④ 車社会においての利便性を高める 車で来街しやすい駐車環境を、商店街加盟店の協力で統一した利用シス テムを確立させる。 また、近隣からの来街者が利用する自転車の駐輪やアーケード内の安全な 通行ルールの設定など、地域に支持される商業環境作りを進めることが重要 と考えられる。 ⑤ 商店街機能の高度化とアクティブシニアマーケットへの対応策 日本経済においてはバブル崩壊後の低迷から脱却の光がさしこみ、また 2007年問題という新しいシニアマーケットの登場が時代のトレンドを形成す ると期待される今。商店街商業地についても、専門性やサービス、団塊のシ ニアニーズに対応できる機能やサービスの高度化が必要となる。 生活都心としての地域内の密着を深め、日常的な「人と地域のつながり」を 基盤にしたコミュニケーションの場としての確立を図っていく。 Ⅱ.大型複合商業施設の開業〈筑豊地域都市圏商業環境の変化〉 1.イオン直方店の集客パワー ① 店舗概要 注)画像はイオン直方ショッピングセンターHPより ■ ショッピングセンターの概要 SC名称 イオン直方ショッピングセンター 所在地 福岡県直方市感田字湯ノ浦1715番1 SC運営管理 イオンモール㈱ 敷地面積 88,200㎡ 建設面積 56,302㎡ 建設延床面積 156,354㎡ 店舗部分 83,077 ㎡ 駐車場部分 73,277 ㎡ 62,727 ㎡ 商業施設面積 3,424 台(内、身体障害者用38台) 駐車台数 駐輪台数 518台 開店日 平成 17 年 4 月8日〈金〉午前9時 営業時間(通常) ジャスコ 午前10時~午後 11 時 専門店街 午前10時~午後 10 時 レストラン 午前10時~午後 11 時 定休日 出店店舗数 年中無休 核店舗 専門店 ジャスコ直方店 140 店 *週末の混雑の様子 注)朝日新聞画像記事より ② 影響商圏範囲 SC運営のイオンモールは、車で30分圏内(約 14 万世帯・36万人)を一次 商圏と設定。 二次商圏的には北九州市黒崎や福岡市郊外を含む。 4 月の開店後1ヶ月の来店者数は約120万人で事前予想の3割増となった。 売上げベースではSC全体で予想の2割強増、飲食店では 3 割増しと好調なス タートとなった。現在は通常の週末集客型に落着いた模様。 これは予想以上に商圏の広がりがあったためであろう。 来店地域はSC発表によると、筑豊地域から40%。北九州地域からは44%。 福岡地域から9%となった。 また、バス路線の充実も好影響でありJR直方駅前との接続が 1 日40便、JR 黒崎駅との接続は 22 便ある(平成 17 年8月現在)。 隣接の直方市中心商業地も、新たな集客要素としてアクセスを利用した中心部 への動員策を検討すべきであろう。 2.直方中心市街地との商業環境変動の受け止め方について 最も影響を受けると予想されるのはヤングマーケットと飲食店であろう。 明治屋産業が運営し30年の歴史を持つ「びっくり市」はこの出店をチャンスと とらまえ新規客層の集約を図っている。 今まで以上に若年層の来場が増え、絶対客数は増えたと話す。 この春、開店より 1 年を迎えるが来街者の流れはどのように落着くのか。 今回の調査では商店街経営者の多くは「大きな影響はなかったが、それ以上 に根本的な課題がある」との認識が多くを占めた。 以下の商店街街区調査や来街者アンケート調査の結果を参考に、今後の筑 豊地域中心市街地商業地区の活性化の課題について考えてみたい。 Ⅲ. 筑豊地域商店街における調査地点別の商店街街区適正調査について 1.田川地区・・・・・①田川市JR伊田駅前商店街 中心導線からの調査内容〈平日の主な営業業種〉 JR伊田駅から少し回り込んだ入口 注1)点線枠内の朱字はデイリー性の業種 注2)太字朱字は目的性orコミュニティー業種 注3)●は休業または空店舗(実数ではない) 入口(第一符点) 婦人服 陶器 美容 ● 化粧品 婦人雑貨 作業服 化粧品 婦人雑貨 スポーツ用品 和菓子 物産 子供遊技 青果 婦人服 囲碁将棋 婦人服 婦人雑貨 ブティック ●下着 生花 呉服 婦人服 喫茶 喫茶ギャラリー カジュアル 時計 ● 玩具 呉服 婦人用品 文具事務 子供服 婦人服 趣味手芸 生花 学生服 紳士服 冷菓 子供服 化粧品 茶 *空店舗活用 「さのよい食堂」 紳士服 婦人服 薬 家電 婦人服 履物 婦人服 家具 寝具 精肉 青果 鮮魚 酒 介護用品 薬 メガネ 茶 食堂喫茶 鞄 宝飾 靴 呉服 化粧品 ブティック 和菓子 人形 分岐(第二符点) 進物 家具 ● 靴 履物 食品 果物 ● スポーツ用品 靴 メガネ 薬 ● 呉服 進物 陶器 金物 仏壇 レコード 園芸 種苗 花 アクセサリー 家電 *豆料理専門店 「さぬき屋」〈10月 福岡市内へ移転〉 シアーズ1(旧 寿屋) エンド 生活雑貨 手芸 事務用品 婦人靴 婦人用品 和菓子 ● 額縁 ● 釣具 ● コーヒー 洋品雑貨 紳士服 食堂 ● 進物 ● ● 海産物 洋品雑貨 食堂 呉服 菓子 食堂 商店街内街区の業種構成と不足要素 ● アーケード延長約350mと長い区画のなかに空店舗36(2003 年)、利用紹介されている店舗数は4。(田川商工会議所) ● 食品の専門店や生鮮食品の販売店が少ない。 ● 食堂やレストランが少なく、昼食時間帯の滞留が減少。 ● 滞留できる余暇や娯楽施設が少ない。 ● 目的性のある施設が街区内に少なく、雨天時の来街は減少。 ● 集客力のある核店舗が存在しない。 ● 駅前からの起点導線付近に駐車場が少ない。 ● 周辺の医療施設に通う高齢者たちがついでに立ち寄り滞留する 施設や店舗が少ない。 ● 駅側からの入口中心導線よりもエンド側のシアーズ1(スーパー) 方面への流れが多い。 ②田川市JR後藤寺駅前商店街 中心導線からの調査内容〈平日の主な営業業種〉 スーパー 対面方向 入口(第一符点) 宅配 ベーカリー 和菓子 ● 生花 ファッションビル 呉服 ● ● 婦人服 ヤング 銀行 和菓子 茶 果物 鮮魚 靴 紳士服 薬 学習塾 婦人服用品 カメラ 写真 金物 鮮魚 呉服 寝装寝具 家庭用品 紳士用品 ● 婦人服 化粧品 時計 乾物 鮮魚 食堂 婦人服 ● 陶器 精肉 台所用品 婦人服 クリーニング ● 靴 酒 ギフト 鞄 化粧品 生花 手芸 生活用品 書籍 ● 化粧品 婦人雑貨 タバコ ● ● ● 子供 ● 家具 婦人服 文具 ● 精肉 呉服 手芸用品 婦人服 婦人雑貨 ● 婦人用品 ● ● 寝具 ● クリーニング 婦人服 ● ● ● ● ● ●空地● 和菓子 ● ● ● ● インテリア用品 食堂 生花 ● ● ● ● 食堂 ファー 化粧品 メガネ ● 荒物 ● エンド 道路 ● 婦人服 食料品店舗 ● 事務所 茶 食器 商店街内街区の業種構成と不足要素 ● 空店舗36(2003年)、利用紹介されている店舗数は14。募集 店舗売り場面積だけでも 約810㎡とかなり空洞化が目立ち、商 店街エントランスから奥へ進むほど深刻な状態。(田川商工会議 所の空店舗情報より) ● 食品スーパーや市場的な業態が、商店街正面入口と道路を挟 んで反対側にあり、商店街へのマグネット効果は拡散する。 ● 近隣の医療施設利用者が利用する商店街でもあり、街区の構成 としては寛げるスペースや喫茶店が少ない。 ● 対面にあるスーパーや市場機能に対し、生鮮食品の業種は品 質も含め健闘している。が、惣菜やイートインの機能が弱い。 ● 商店街街区の規模から見て駐車場が少ない。 ● 集客力のある核店舗がエンド区画に欲しい。 ● 生鮮食品店の構成にリンクして捕捉機能を持つ食材販売店舗が 必要。 ● 周辺の医療施設に通う高齢者たちがついでに立ち寄り滞留する 娯楽施設やコミュニティー施設がエンド区画にマグネットとして必 要。 2. 直方地区・・・・・③直方市JR直方駅前商店街 中心導線からの調査内容〈平日の主な営業業種〉 JR 直方駅前ロータリーからの主導線 入口(第一符点: 明治町商店街側) 和菓子 娯楽施設 スポーツ 紳士服 リサイクル 写真 婦人服 靴 食堂 婦人服 青果 薬 ● 料理屋 ● 喫茶 レストラン 茶 婦人服用品 食堂 美容 和菓子 洋菓子 理容 婦人服 自然食品 生花 化粧品 美術ギャラリー ガス機器 紳士服 書籍 婦人服 喫茶レストラン 飲食店 食堂 飲食店 薬 医院 メガネ 子供服 リサイクル 青果 果物 分岐(第二符点: 古町商店街側) 文具 婦人服 衣料品 靴 レストラン ● 塩乾物 ● 宝飾時計 ● ● ヤング 婦人服 茶 化粧品 ● 婦人雑貨 ギフト 婦人服 メガネ 惣菜 医院 メガネ 靴 美術品 ● ● 文具玩具 美容室 スーパー 生活雑貨 銀行 質 古物 和菓子 ベーカリー 婦人服雑貨 薬 婦人服 喫茶 美容 化粧品 婦人用品 呉服 画廊 手芸 婦人雑貨 化粧品 鞄 洋品雑貨 婦人服 時計 婦人雑貨 婦人服 漢方薬局 靴 下着 酒ギフト リサイクル 仏壇 陶器 婦人服 用品雑貨 呉服 文具 婦人用品 婦人服 健康施設 衣料雑貨 趣味用品 ● ● ギャラリー 陶器 レコード 婦人服 ● ● 空地 ● ● 援助施設 薬 宝飾 ● 婦人服 銀行 酒 画廊 喫茶 和食堂 果物 ● 理容 ● エンド 仏壇仏具 寝装品 寝具 家電 食堂 弁当 ● 陶器 食品店 生花 書籍 画材 家具 婦人服 精肉 海産物 日用品 クリーニング スポーツ用品 寝具 進物 金物 菓子 商店街内街区の業種構成と不足要素 ● 街区としてはJR直方駅に向かって直角から水平方向に伸び、入 口〈駅側〉に集客装置の遊技施設や美容、理容店が多い。 ● 中間の分岐点に向かいその前後にデイリー性の高い業種〈食品 販売店や喫茶、食堂〉が配置している。 ● ふるまち通りからエンドに向かい医療、銀行、健康施設、コミュニ ティー施設、ギャラリーなど目的性の高い集客装置が配置されて いる。 ● ただし、エンドから道路を渡りとのまち通りに向けては完全に分 離されている。逆方向にある須崎町商店街も同じく完全に分離。 ● 大きく商店街通りが4ヶ所あるが、明治町と古町以外の回遊性は 厳しい。中間に大型スーパーが有る事と、エンドまでの一方向の みに商業街区の構成がなされており、回遊導線の循環性に乏し い。 ● 他の地点調査と比較すると店舗の業種構成や配置は薄いが適 切であり、目的性、公共性の高い銀行も進路奥の古町側にあ る。 ● 商業街区の構成が縦長であるため、高齢者向けの公共トイレや 休憩所などの適度な分散配置が必要と思われる。 ● 商店街の店舗規模から近隣の駐車場が少ない。また北九州市 の2次商圏でもあり、北九州周辺の名産、物産商品を集めた個 性的な店舗誘致なども考えられる。 ● 流行を追いかける業種業態の店舗は「イオン直方店」の開業で 厳しいと思われる。差別化MD〈商品計画〉が急がれる。 ● 今後の2007年問題も含め、アクティブシニアへの提案機能を持 った魅力化が必要。街区のエンド区点から何をどのように配置し 集客力と回遊性を強化、創造できるかがポイント。 ● 現在の空店舗中、利用紹介されている店舗数は9店舗(隣接の2 商店街も含むと13)。売り場面積 810㎡分。(直方商工会議所 の空店舗情報より) 3. 飯塚地区・・・・・④飯塚市西鉄バスセンター近隣商店街 中心導線からの調査内容〈平日の主な営業業種〉 長崎街道飯塚宿をアピールした商店街入口 西鉄バスセンターや複合商業施設(あいタウン)から 徒歩約5分に在る 入口(第一符点: 本町商店街側) 不動産 ミシン 文具 ● 婦人服 ● 自然食品 下着 靴 ATM 青果 メガネ ● 生花 ● 婦人服 家具 化粧品 ● ● ● ● メガネ 生活雑貨 雑貨 ● 名産食料品 ● ベーカリー 婦人服 ● 書籍 婦人服 婦人服用品 婦人服用品 婦人服用品 銀行 ● 婦人服 和菓子 スポーツ用品 青果 家庭用品 ● 呉服 レコード 帽子 婦人服 百貨店(飯塚 井筒屋) 店頭青果・弁当・産地食品催事 婦人服 生花 ATM ● 婦人服 婦人用品 宝飾時計 旅館 婦人服 化粧品 呉服 下着 婦人服 レストラン 婦人服 旅行 台所用品 婦人服 ● ● ● 介護用品 婦人服 鞄 手芸 果物 古書 薬 靴 ● ● 呉服 鞄 宝飾 時計 靴 メガネ ベーカリー ● 婦人服 和装用品 和菓子 小分岐(第二符点: 食堂・市場業種中心) 洋菓子 婦人服 ● 食堂 鮨 鮮魚 ● ● ● 婦人用品 食堂 ● 生花 飲食店 鮮魚 惣菜 精肉 海産 青果 乾物 食堂 靴 食堂 額縁 ● ● 鮮魚 食堂 靴 生花 ● ● 生花 婦人服 宝飾時計 道路 和菓子 専門大店 青果 精肉 婦人服 洋菓子 道路 大分岐(第三符点: 東町商店街側) 郵便局 鞄 茶 青果 紳士服 婦人雑貨 家庭用品 ● 婦人服 ● 楽器 ● ● 食堂 ● 医院 靴 ● メガネ 書籍 文具玩具 婦人服 自然食品 ● ● ● スポーツ用品 ● 帽子 ● ● ● ● 通路壁面での青果販売 ● ● ● 履物 玩具 婦人服 ● ● 生花 ● 食堂 紳士服 ● ● ● 婦人服 婦人服 事務所 用品 家電 ● 家庭用品 エンド 婦人服 ● 薬 敷物 呉服 インテリア ● 家庭用品 敷物 婦人服 商店街内街区の業種構成と不足要素 ● 飯塚バスセンターから徒歩約 5 分の距離。市場業態も有する。 ● バスセンター隣接の「あいタウン」とは客層や商品構成から見て 競合度合は少なく思われるが、「あいタウン」のMD(商品計画) から見て遠方からの集客力は弱いと思われる。 ● 商店街街区の入口(第一符点)すぐに空店舗がある。 ● 入口からすぐに青果販売店舗があり常に賑わっている。直進す る中心路線の端々で食料品や弁当の販売を行なっているが、朝 の11時~14時頃までが集客のピークであり、主導線上でのピン ポイントマグネットとしての集客力はない。空店舗前を利用した賑 わい補填策としては中途半端な感がある。 ● 商店街来街者の誘導マグネットとしては第一符点中央奥の井筒 屋あたりまでに様々な仕掛け(休憩スペース、催事イベント場所、 百貨店自身の店頭催事など)があるが、第二符点(食堂・市場業 種中心街区)分岐の広場の活用が課題と思われる。 ● 第二符点では複数の鮮魚店を中心に市場業態で配置されてい るが、入口手前の広場が広く殺風景なため賑わい感が薄い。 広場の活用と共に、小規模でも新鮮感や活気の在る演出やサイ ン計画が必要と思われる。(日本初のドーム型アーケード活用) ● 商業街区の構成が延長線としてかなり長いため、高齢者向けの 公共トイレや休憩所などの増設。適所配置が必要と思われる。 ● 商店街街区全体の業種構成から見て食堂や喫茶店が少ない。 ● 季節の祭りなどでは、地域伝統文化や歴史街道を上手く演出し た集客企画があるようだが、周辺の歴史、文化資源を商業的に 紹介したりできる機会や仕掛けの再考が必要。 ● 商店街全体の商品構成から見てミセスからシルバーの婦人マー ケットにかなり集中度が高い。逆に紳士マーケットが極端に薄 い。 ● 第三符点の東町にかなり大きな美術画廊があり、文化催事の集 客場所としては有効と思われる。だが、各符点の分岐点などでの 誘導看板が無く、全体的にマグネット施設や店舗への誘導案内 が分りづらい。 ● 第二符点を挟んだ各区点間の接続性が悪い。また、第三区点 (東町商店街)入口広場が閑散としたイメージで集客拠点地とし ては生かされていない。 ● 商業環境面から見ると、住居や学校も郊外にあり、鉄道駅からも 遠い。中心市街地としては道路環境も良くはない。特にバス路線 の幅員が狭い。また、隣接の商業ゾーンとして国道201号線界 隈を見れば、かなり幅広いターゲットに支持されそうな沿道型の ロードサイド商業地がある。この地域との更なる差別化とすみ分 けが重要と思われる。 Ⅴ.ま と め 「筑豊地域中心市街地商店街の街区適正化を考える」 今回の筑豊地域中心市街地商店街の街区適正化調査については、街区調査 中の個別ヒアリングや来街者アンケート現場での直接聴き取りなどを参考に、商 業地利用者視点を重視した検討を重ね、課題抽出を行なった。 利用者の声を基に大筋をまとめると、利用者から見た期待は ①施設や専門店 街としての魅力アップや競合による品質やサービスのレベルアップ。 ②その集 積から実現される回遊性の向上。 ③結果としての滞留機能の充実。このような商 業街区の構成を求めている。 また、中心市街地商店街利用者が消費の場所をどのように考えるか、街区内 業種、商品構成にあたっては、消費場所の選択といった要素も重ねて考える必要 がある。 例えば、①時間や費用を掛け、休日に主に車を利用して買い物、飲食、娯楽 を楽しむ消費(郊外)と、②自宅で一人、あるいは大切な人と楽しむため費用や時 間を惜しまない消費(自宅)、③費用や時間を掛けず、日々の生活時間内で必要 な都度調達する消費(近所)分類を都市研究センターも行なっている。 商店街街区の構成には②や③の魅力化が課題となり、街区内MD(商品計画・ アイテム充実)の魅力化や商店街全体のサービスのシステム化が基本となる。 また、中心市街地商業地としての商業街区基盤整備にあたっては、商圏やター ゲットを凝縮した近郊型商店街区の構成なのか、地場産業商材の集積や地域資 源を生かしブランディング化による広域型構成なのかも明確にするべきであろう。 さらに今後、筑豊地域中心市街地商店街街区の活性化方針にあたっては、 「買い物の場=不足マーケットの整備」や「アメニティー機能の改善」とともに,「楽 しむ場=幅広い意味での娯楽機能」の整備.充実.創造による、「郊外大型複合 商業施設」や「近隣大都市圏の市街地再開発」の影響を受けない街区整備や街 力の充実化を図っていくべきであろうと考えた。 今回の調査から街区適正化に向け、現状での筑豊地域商店街利用者の利用 形態や業種構成から概要をまとめてみた。 ① 生鮮食品 他の一般食品と一括購入できるため近隣のスーパーを利用することが多い。 しかし、生鮮に限ると商店街内の専門店が品質やサービスにおいて勝る。全 体に味や品質の高い食品販売店(惣菜や一般食品など)の集積を進める。 ② 娯楽や外食 郊外大型施設のような休日集中型でない、日々の娯楽を気楽に楽しめる施 設や多種な食堂などの誘致。 ③ 服飾品 やはり都市型百貨店でしか集められないブランドや郊外大型店が得意とする ヤングカジュアルは現状での競走は難しい。 また、ハイミセス以上の商品構成は豊富だがヤングミセスやミセス対応の商 品は比較して幅は薄い。 ただ、日常の廉価なカジュアル衣料品は近隣マーケットとしてニーズはあると 思われるが、全般的に業種構成が薄い。また、需要の弱さのためか男性向け 商品が極端に少ない。 ④ 子供関連商品 少子化の傾向もありマーケットの 2 極化とともに需要は厳しい。商店街内でも 空店舗が目に付く。また、子供たちの世界でのコミュニケーションの場として の駄菓子屋も少なくなった。子供が集まる賑わい感も商店街には重要であ る。 参考に北九州市小倉北区の駄菓子屋「こだま」はマスコミでも紹介された懐 かしい本物の駄菓子屋で町でも有名。子供がたくさん集まるが、昔を懐かし む大人も来店する。 ⑤ 生活関連用品 商店街店舗の専門性からアイテムによっては奥深い品揃えや専門性が高い。 しかし、業種の歯抜け状態のなかでは一般客の囲い込みには厳しい状況。 ⑥ 駐車場サービスの検討 駐車場のサービス問題だけを単独で取り上げるものではないが、駅やバスセ ンターにアクセスが集中するなかでも、日常的な移動手段としての車の利用 は外せない。やはり、駐車場問題についても他の施策検討と同時期に考える べきであろう。 以上の要点を加味しながら、街区適正化とともに街力の強化策を検討していく ことが何よりも求められている。
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