第368号(2016年07月31日発行)

北里大学医学部ニューズ
CONTENTS
第15回医学部ニューズ写真コンテスト応募作品「ひまわりと雲」
(大澤 唯さん)
■医学部長就任挨拶………………………………………………2
■教授就任挨拶………………………………………………………3
■講師就任挨拶………………………………………………………4
■日本内科学会総会ポスター発表報告…………………………5
■平成28年度相模原キャンパス総合防災訓練報告………………6, 7
平成28年度相模原キャンパス総合防災訓練に参加して
■臨床実習入門「患者さんから学ぶ」について… ………………8, 9
「患者さんから学ぶ」を受けて
■熊本県阿蘇郡小国町に応援メッセージを贈りました………10
■教育研究単位紹介 呼吸器内科学……………………………11
■大学院医療系研究科研究科長に再任して……………………12, 13
■平成29年度医療系研究科医学専攻博士課程
学生募集要項概要………………………………………………14
■入学後には院生を対象にした
多彩な支援・助成制度があります!…………………………14
■米国消化器病週間
(DDW 2016)
優秀ポスター賞を受賞して……15
■部活紹介 潜水医学研究会……………………………………16
2016.7
No.368
医学部長就任挨拶
医学部長 分子遺伝学 教授 宮 下 俊 之
みやした・としゆき
このたび7月1日をもちまして、北里大学医学部長を拝命
員への負担が一時的に増すものと思いますが、避けて通れな
いたしました。私は、2007年11月から基礎医学系の分子遺
いことですのでご理解とご協力をお願いしたいと思います。
伝学単位を担当させていただいておりますので、当大学勤務
は9年目となります。専門は細胞生物学、分子遺伝学ですが、 3.創立50周年に向けての準備
小児科医として約8年働いた経験もあります。北里大学では
北里大学医学部は、大学(学校法人北里学園北里大学)
学生指導委員長、研究委員長、医療系研究科医学専攻主任
設立の8年後の1970年に誕生しました。従って、東京オリン
等の役職を通じて、大学運営にも関わる貴重な経験をさせて
ピックの行われる2020年には創立50周年を迎えます。50年の
いただきました。
歴史を振り返り、次の半世紀に向けての展望を語るにふさわ
今期の北里大学医学部執行部が取り組むべき課題はたく
しい記念行事の開催と、記念誌の発行を目指します。関係の
さんありますが、以下の4点が大きなものであると考えてお
方々にはご寄付等のご支援をお願い申し上げます。
ります。
このたび同窓会から北里大学医学部創設の経緯が書かれ
ている「春秋記略 北里大学」の復刻版を頂き、北里大学
1.医学部生の学力問題
医学部の創立に関わった偉大な先輩たちの情熱と苦労を知り
1996(平成8)年度に205万人であった18歳人口は、
2014(平
ました。私共も先人たちに感謝しつつ、次の半世紀に向かっ
成26)年度は118万人にまで減少し、2021(平成33)年から
て進んでいきたいと決意を新たにした次第です。
は減少が加速すると予想されています。一方で医学部の定
員は増え続け、2016(平成28)年度には9,200人を超えまし
4.新医学部棟建設に向けての準備
た。従って単純計算しますと、約130人に1人が医学部に進
北里大学臨床教育研究棟は順調に工事が進んでおり、基
学できることになります。これに伴って、医学部生の学力低
礎工事が終わり、来年夏の竣工を目指しております。その際
下が全国的に懸念されております。特に1・2年生が学力的、 には新棟へのスムースな移行と、まだしばらく使用するM1、
精神的につまずいてしまうことが増えています。北里大学医
M2号館の有効活用を考えたいと思います。その後はいよい
学部では、従来、学業不振者に対して、1∼4年生には特定
よ待望の新医学部棟の建設ということになります。建設の時
懇和会という制度で基礎医学系の教員が、6年生には教育
期と建物の規模の最終決定は、今年7月に発足しました第
委員会と学習支援研究部門の教員が個別指導を行っていま
20期理事会との協議を待つことになりますが、現校舎の老朽
す。今年の医師国家試験の合格率は新卒で89.1%(全国平均
化も進んでおり、できるだけ早期に建設を開始するよう努力
94.3%)と残念な結果でした。これを受けて6年生の4回の
します。
模擬試験を義務化しました。また、5年生の3月に成績不振
者を対象とした2週間の特別講義を始めました。今後、学生
先日のノーベル生理学・医学賞受賞祝賀会で大村智先生
相談室とも連携を取りながら、医学部を6年間で卒業し、国
は、
「富士山が日本一高い山でいられるのは、広い裾野があ
家試験を1回で合格する学生の割合を少しでも上げたいと思
るからだ」とおっしゃって、支えてくれた方たちへの感謝の
います。
念を述べておられました。北里大学医学部も第二、第三の大
また入学試験においては、優秀でモチベーションの高い受
村智先生を輩出すべく、広くてがっしりとした裾野を築いて
験生を選別できるよう選抜方法の検討も続けていきたいと思
いきたいと思います。微力ながら全力を尽くしますので、ご
います。
支援のほどよろしくお願い申しあげます。
2.分野別認証評価
<略歴>
1980年3月 東京大学医学部医学科卒業
1980年6月 東京大学医学部附属病院小児科研修医
1984年10月 東京大学医学部附属病院小児科 助手
1988年4月 国立小児病院小児医療研究センター リサーチレジデント
1991年2月 米国ペンシルバニア大学病理実験医学教室post-doctoral fellow
1992年7月 米国ラ・ホヤ癌研究所post-doctoral associate
1995年4月 国立小児病院小児医療研究センター先天異常研究部遺伝染色体研
究室長
2002年3月 国立成育医療センター研究所成育遺伝研究部疾患遺伝子構造研究
室長
2007年11月 北里大学医学部分子遺伝学 教授
2016年7月 北里大学医学部長
「2023年問題」もあって、
医学、
医療のグローバル化に対応し、
医学教育分野別認証評価を受審することが必須となってきま
した。受審推進委員会を定期的に開催し、必要に応じて講習
会を含めたFDを行うことにより、教員の意識を高め、できる
だけ早期の受審を目指して準備を進めたいと考えます。臨床
実習の増加で生ずるカリキュラムの移行による混乱と学生へ
の負担を最小限に留めるよう努力いたします。移行期には教
− 2 −
教授就任挨拶
法医学 教授 佐 藤 文 子
さとう・ふみこ
2016年6月1日付で、法医学主任教授を拝命いたしまし
東海大学では、医学部6年生のクリニカルクラークシッ
た佐藤文子です。この場をお借りしてご挨拶申し上げます。
プに法医学を導入し、法医学的な診断方法、死体検案書の
私は東京都町田市出身で、東海大学付属相模中学校・高
書き方を学んでもらいました。また、担当した1例の法医
等学校を卒業しました。それゆえ、相模原市は中学・高校
解剖例について、死因を考察し、レポート作成を指導して
時代を過ごした懐かしい土地です。北里大学医学部に異動
いました。学生からは、臨床医学とは違った角度から、死
するにあたり、夫と娘と一緒に相模原キャンパス近くに移
や疾病について学ぶことができ、勉強になると好評でした。
り住んできました。北里大学医学部は、私にとって全くの
北里大学では、前任の栗原教授が突然死の死因解明に力を
新天地ですが、懐かしい気持ちで仕事をしています。
入れ、卒前・卒後教育に力を入れておられたと聞いていま
私は、1994年に東海大学医学部を卒業し、母校の付属
すので、クリニカルクラークシップを卒前教育の一つとし
病院にて臨床研修を行いました。学生時代より解剖に興味
て導入することを検討するとともに、魅力ある、わかりや
があり、病理学教室によく出入りしていたため、病理学を
すい法医学の講義を実施できるように努力していきたいと
専攻することにしました。1996年より、母校の病理診断
考えています。
科臨床助手となりました。病理専門医取得を目標にし、外
法医学を専攻する医師の不足が問題となっている昨今、
科病理の研鑽を積み、病理解剖を通じ疾病について形態学
法医解剖に興味を持ち、法医学を専攻する医師を一人でも
で明らかにすることの面白さを感じていました。しかし
多く育成できればと考えています。
時々、病理解剖の中に交通事故死や薬物中毒死の事例があ
初代教授船尾忠孝先生、2代目教授栗原克由先生が長年
り、病理学の知識だけでは解剖レポートを作成できないこ
にわたり、導き、育んでこられた北里大学医学部法医学の
とに気づきました。法医学教室の門をたたき、恩師の東海
良き伝統を継承し、基礎医学系の諸教室及び臨床診療科、
大学医学部法医学の武市早苗教授にお願いして、法医解剖
各部門と連携を取りながら更に前進できるように、尽力し
を見学するようになり、法医学に興味を持つようになりま
ていきたいと考えています。教室員一丸となって北里大学
した。法医学に転科することを決断するのはかなり迷いま
の発展に貢献できるように努力していきますので、ご指導
したが、指導者が女性で病理学出身者であったこともあ
をお願いいたします。
り、2001年4月に病理専門医と学位を取得後、病理学教室
から同大学の基盤診療学系法医学教室に異動し、助手に採
用されました。
東海大学医学部の法医学教室では、神奈川県西部の異状
死体を主に扱い、教室では司法解剖を毎年約250件行って
いました。私は、法医学教室に在籍した13年間で、多数の
司法解剖に立ち会い、執刀させていただきました。執刀し
た司法解剖については、全例について、鑑定書を作成いた
しました。殺人事件や傷害致死事件の裁判員裁判での証人
出廷の経験も複数回積みました。
北里大学医学部法医学では、前任の栗原克由名誉教授が、
神奈川県警としっかりとした信頼関係を築きあげられ、神
奈川県県央地区の法医解剖を一手に引き受けてこられまし
た。今後も、築き上げられた信頼を損ねないよう、県警か
ら依頼された法医解剖はすべて行うつもりで、取り組んで
いきたいと思います。司法解剖の鑑定を正確に行い、検案
書を発行することを通じて、神奈川県県央地区の安全、治
安の維持に貢献していきたいと考えています。
<略歴>
1994年3月 東海大学医学部医学科卒業
1994年5月 東海大学医学部付属病院 臨床研修医
1996年4月 東海大学医学部付属病院病理診断科 臨床助手
1999年10月 清水市立病院(現 静岡市立清水病院)病理科出向
2001年4月 東海大学医学部基盤診療学系法医学 助手
2004年4月 東海大学医学部基盤診療学系法医学 講師
2006年7月 米国ケンタッキー大学医学部病理学/ケンタッキー州立
Medical Examiner s Office 留学
2009年4月 東海大学医学部基盤診療学系法医学 准教授
2016年6月 北里大学医学部法医学 教授
<主な業績>
1.Satoh F, Kakimoto Y, Miyashita K, Tsuboi A, SetoY, Osawa M:
Implication of meconium-aspirated lungs in stillborns. Austin
Journal of Forensic Science and Criminology, Austin J Forensic
Sci Criminol, 2 : 1034, 2015.
2.Satoh F, Seto Y, Tsuboi A, Osawa M: Regenerative change of the
myocardial sleeves in elderly victims of sudden bathtub death.
Forensic Medicine and Anatomy Research 3:57-65, 2015.
3.Satoh F, Osawa M, Hasegawa I, Seto Y, Tsuboi A: Dead in hot
bathtub phenomenon: Accidental drowning or natural disease?
Am J Forensic Med Pathol, 34:164-168, 2013.
− 3 −
講師就任挨拶
小児科学 講師 野々田 豊
ののだ・ゆたか
本年6月1日より、北里大学医学部小児科学講師を拝命
教授のもとにリサーチフェローとして留学させていただ
いたしました野々田豊と申します。就任のご挨拶をさせて
きました。ここでは、頭蓋内電極を留置した小児てんか
いただくとともに、この場をお借りして講師に推薦していた
ん外科手術症例において、頭蓋内脳波における高周波振
だいた石井正浩教授に心より感謝を申し上げます。
動(High Frequency Oscillations: HFOs)とてんかん発作
私は静岡県静岡市の出身で、静岡聖光学院高等学校を卒
焦点との関係について研究させていただきました。通常の
業後、1995年に北里大学医学部に入学し、2001年に北里大
頭皮上脳波では検出できない80Hz以上の高ガンマ周波数
学病院小児科(松浦信夫教授)に入局しました。小児科は
帯域であるHFOsは、近年てんかん発作焦点のバイオマー
全身の臓器にまたがる広い範囲の知識を必要とする総合診
カーとして注目されていますが、HFOsと同期して出現す
療科であり、入局当時の北里大学病院では、様々な臓器・
る0.5∼4Hzの徐波の周波数スペクトルに注目することに
分野の病気の患者さんが数多く入院しており、特定の分野
よって、バイオマーカーとしての精度をさらに高められた
にとらわれず小児の全身を総合的に診療するという研修を
ことについて報告した論文が受理されました。留学期間中
行うことができました。
に支えていただいた皆様のおかげで、貴重な経験ができた
小児科医を続けていく中で最も大きな転機となったの
ことを本当に感謝しております。
は、チーフレジデントが終わって専門領域を決めることに
今となって医師になってからの自分の経歴を振り返ると、
なった時でした。病棟医時代に様々な分野の小児患者さん
非常に恵まれた環境で教育を受けてこられたと実感してお
を診ていましたが、特に神経疾患の患者さんを多く受け持
ります。現在、小児科には非常に優秀な研修医、病棟医の
つ機会に恵まれたことがきっかけになりました。小児期は
先生達が在籍しております。今後、私が今まで受けてきた
けいれん発作を起こしやすいという特徴があり、なぜ小児
教育を後進に還元できるよう、臨床・研究・教育に全力で
はけいれんを起こしやすいのかということに非常に興味を
努力していく所存であります。今後ともご指導のほどよろ
引かれたのが選択した理由です。小児神経グループに所属
しくお願い申し上げます。
してからは、抗てんかん薬の特性、薬理作用や使い方、そ
して脳波検査の判読法などを中心に習得することができま
した。その後、てんかんの患者さんを診療するようになっ
てから、てんかんの患者さんの症状がてんかん発作だけで
はなく、神経発達の遅れなどの症状を伴っていることが多
いことを知り、小児神経学の奥深さと難しさを実感するこ
とになりました。2007年より国立精神・神経センター武蔵
病院(現国立精神・神経医療研究センター)小児神経科レ
ジデントとして研修させていただきました。ここでの研修
期間は非常に有意義なものでした。教育カリキュラムが充
実しており、いわば小児神経学の学校のような存在でした。
小児の神経所見のとり方、検査所見の読み方、鑑別疾患の
考え方などを徹底的に指導していただきました。小児神経
分野の範囲も広く、てんかん、神経変性疾患、代謝性疾患、
神経・筋疾患、発達障害など多岐にわたり、その分野では
日本の第一人者と呼ばれる著名な先生方から直接指導を受
けることができたことと、そして同じ小児神経を志す仲間
を作ることができたことも大きな収穫でした。
<略歴>
2001年3月 北里大学医学部卒業
2001年5月 北里大学病院小児科 研修医
2003年4月 北里大学病院小児科 病棟医
2007年4月 国立精神・神経センター武蔵病院小児神経科レジデント
2009年4月 北里大学医学部小児科学 助教
2014年4月 米国ミシガン州、ウェイン州立大学ミシガン小児病院
小児神経科リサーチフェローとして留学
2016年4月 北里大学医学部小児科学に助教として復職
2016年6月 北里大学医学部小児科学 講師
<主な業績>
1.Nonoda Y, Miyakoshi M, Ojeda A, Makeig S, Juhász C, Sood
S, Asano E: Interictal high-frequency oscillations generated by
seizure onset and eloquent areas may be differentially coupled
with different slow waves. Clinical Neurophysiology, 127 : 2489‒
2499, 2016.
2.Nonoda Y, Iwasaki T, Ishii M: The efficacy of gabapentin in
children of partial seizures and the blood levels. Brain Dev,
36 : 194-202, 2014.
3.Nonoda Y, Saito Y, Nagai S, Sasaki M, Iwasaki T, Matsumoto
N, Ishii M, Saitsu H: Progressive diffuse brain atrophy in West
syndrome with marked hypomyelination due to SPTAN1 gene
mutation. Brain Dev, 35 : 280-283, 2013.
そして、2014年より米国のミシガン小児病院の浅野英司
− 4 −
日本内科学会総会ポスター発表報告
-医学生・研修医の日本内科学会 事はじめ2016東京-
橋 本 考 明 小 池 真結美 成 瀬 真 紀
第6学年 はしもと・たかあき こいけ・まゆみ なるせ・まき
この度、平成28年4月に東京国際フォーラムで開かれまし
から始め、先生からいただいた症例、病態についての資料、
た日本内科学会総会「医学生・研修医の日本内科学会事は
ポスターを参考にしながら3人で原稿を作成しました。病
じめ」にてポスター発表(症例報告)を致しましたので、ご
態の説明、症例、考察のすべてを4分以内にまとめ、今回
報告させていただきます。学会での発表はもちろん、学会に
経験した症例における重要なポイントをいかにして伝える
参加することも初めてでしたので、準備から発表まで全てが
かを考えることが一番難しかったです。発表前日に予演会
私達にとって貴重な体験になりました。以下、
感想を述べます。 を行い、東原先生と竹内先生に助言いただき、本番に挑み
ました。学会当日は発表前に3人で何回か読みあわせを行
橋本考明
い、予想される質問に対する答えを考えながら、発表まで
今回、このような貴重な機会を与えていただくことになっ
の順番を待ちました。準備した甲斐があり、本番は聴講者
たのは、突然のことでした。今年の年明けぐらいに私が普
からの質問にも答えることができ、無事学会での発表は終
段通りに自習教室で勉強していると、そこに腎臓内科学の
了しました。
教授である竹内康雄先生がお越しになり、
「今度の4月に日
会場には研修医の先生方、学生が集っており、医師を目
本内科学会で橋本君に発表してもらいたいんだけど」とおっ
指す者としてとても良い刺激を受けました。今回の経験を
しゃいました。戸惑いを隠せない中、竹内先生からお話を
生かし、今後も勉学に励んでいきたいと思います。
聞きましたが、学会発表に興味はあったため、発表するこ
とを決意しました。
成瀬真紀
発表準備の段階では、小池さん、成瀬さんとわずか4分
学会でのポスター発表は、私にとって初めての経験でし
しかない発表時間の中、私達が一番オーディエンスに伝え
た。最初に竹内先生からお話をいただいたときは、非常に
たいことをいかに伝えるかに焦点を絞り、原稿を作り発表
光栄に思う一方で、自分で務まるのかという不安もありまし
に向けて練習しました。そして医学部長の東原正明先生と
たが、発表を終えた今は、大変貴重な経験をさせていただ
竹内先生の立会いのもと、学部長室での予演会を行ったこ
いたことに心より感謝しております。
とは貴重な経験となりました。
発表原稿は、3人で話し合いながら作成しました。症例
発表当日は、日本内科学会総会という会場の雰囲気とそ
の特徴や今回選択した治療の成果とその意義などを、ポス
の規模の大きさに圧倒されそうになりましたが、無事発表
ターを活用しながら短い時間の中で解りやすく伝えるという
することができました。オーディエンスからも好評価を頂く
のは、簡単ではありませんでした。しかしながら、意見を
ことが出来たのは、5年次の病院実習の際、先生方からご
出し合いよりよいものを作っていく作業は非常に面白く、勉
指導を受けた賜物だと感じました。
強になりました。発表当日は、想像をはるかに超えるギャ
今回の経験を生かし、医師になるに当たって様々なこと
ラリーの数と活発な質疑応答により、緊張は一層増しまし
に自己研鑽を積んでいきたいと感じました。
たが、とても頼り甲斐のある橋本君と小池さんのおかげで、
小池真結美
をなすことや公の場で発表するという経験は、私にとって
今年の年明けに、竹内先生から日本内科学会で発表して
とても大きな学びとなりました。
無事発表を終えることができました。仲間と協力して何か
みないかとお声かけいただきました。学生という立場で学
会での発表を経験できることは貴重であり、橋本君、成瀬
最後になりましたが、今回このように大変貴重な機会を
さんと3人いることも心強く、学会に参加することに決めま
与えて下さり、手厚くご指導してくださいました東原正明先
した。2月に総合試験があるため、準備は春休みになって
生、竹内康雄先生に心より御礼申し上げます。
− 5 −
平成28年度相模原キャンパス
総合防災訓練報告
医学部事務室
今年4月、熊本地震が発生し、多くの尊い命が奪われま
場で点呼確認を行いました。現在、M5号館前広場は、臨
した。政府の地震調査研究推進本部発表の全国地震動予測
床教育研究棟の工事で区域が狭くなっていますが、万が一
地図(2016年版)によれば、建物倒壊が始まるとされる震
危険が迫った場合の避難場所になります。学内各所に掲示
度6弱以上の地震が今後30年以内に発生する確率は、東京
しているポスターを日頃から確認しておいてください。
都で47%、横浜市で81%と非常に高くなっています。今や
避難完了後は、岩渕和也防災対策委員会委員長から挨拶
大地震はいつどこで発生してもおかしくない状況です。
と講評をいただきました。そして、自らの安全や居場所を
こうしたなか、北里大学相模原キャンパスでは5月23日、
申告するメールの送信を行い、避難場所以外にいる場合で
巨大地震とそれに伴う火災への心構えを新たにし、学生や
も、安否把握ができる体制を確認しました。また、相模原
教職員の安全の確保と被害を最小限に抑えることを目的と
南消防署の協力のもと、消火器による消火訓練やAEDに
して、総合防災訓練を実施しました。医学部及び大学院医
よる蘇生訓練、煙ハウス体験をしました。
療系研究科では、マグニチュード7.0(相模原市の震度6
今回、大規模かつ組織的な訓練を行い、地震への認識を
強)の地震が発生し、M1号館1階男子更衣室から火災が
新たにすることができましたが、天災は忘れた頃にやって
発生したとの想定のもと、269名(学生119名、教職員150名)
きます。地震が発生した際には、一人ひとりがあわてずに
が参加しました。
適切な行動をとることが極めて重要です。日頃から正しい
事務室職員は、
「通報・連絡班」「初期消火班」「避難誘
心構えを身につけておきましょう。また、備品・物品の被
導班」「安全防護班」「応急救護班」の5つからなる自衛消
害の低減も必要となります。研究室では、様々な物品や実
防組織を編成しています。今回は、この自衛消防組織が主
験に関する機器・器具類を多数保有しています。室内の整
導し、キャンパス全体の災害対策本部(L1号館1階防災
理整頓や物品の転倒・移動防止対策を講ずることも急務です。
センター)への情報伝達、出火場所の確認、屋内消火栓を
学生は、クラスごとに1名の防災委員が選任されていま
用いた模擬消火活動、防火扉の閉鎖、避難者の誘導、負傷
す。今回、1年生はL1号館で講義を受けていましたが、
者の応急処置などの任務を本番さながらに遂行しました。 学生防災委員の的確な指示のもと、避難場所へ行動するこ
また、研究系職員は事務室から火災発生の連絡を受けた後、
とができました。次頁には、1年生の防災委員のメッセー
適切なルートを判断して避難し、避難場所のM5号館前広
ジを掲載しました。ぜひご覧ください。
北里大学相模原キャンパス
-地震発生時の心得-(講義室・実習室・廊下に掲示しています。ご確認ください)
各学部等の避難場所
A
B
C
D
E
第1避 難 場 所
1.出入口のドアを開ける。
A
B
薬学部・獣医学部
一般教育部 その他
2.窓ガラスから離れる。
P・V・L・その他
S・MB
A
M・医療系研究科
N・看護キャリア
理学部
海洋生命科学部
海洋生命科学部
避難経路
(MB号館)
A
P
学 生
ホール
C
教養図書館
D
6.火災発生の恐れがあるので、直ちに火を消し、ガス・電気等のスイッチを切る。
工事中
P
A
B
理学部
(S号館)
C
看護キャリア
ドーム
温 室
5.本震は1分以内であるから、震動中はあわてて行動を起こさない。
A2号館
(A3号館)
体育館
クレセント
4.あわてて外に飛び出さない。
医療
衛生学部
(A1号館)
棟
部室
医療衛生学部
3.机の下などに身体を入れ、身体防護する(落下物に気をつけ、頭部を守る)。
L2号館
D
E
L1号館
大学東門
北里柴三郎銅像
看護学部
(N号館)
医学部
E
(M号館)
医療系研究科
病院3号館
病院
2号館
P
8.避難は非常放送等の指示に従い、落ち着いて行動する。
P
病院
1号館
7.エレベーターは使用しない。
工事中
北里大学病院
医学部
PE 看護学部
C 医療衛生学部 D
看護キャリア
工事中
大学院医療系研究科
開発・研究センター
P
安否確認のため、必ず自分が所属する各学部等の
第1避難場所へ避難してください。
病院正門
9.避難場所は、「M5号館前広場」です。
大学正門
学内の避難場所を示すポスター
M5号館前広場にて避難人数の確認
避難完了後の岩渕和也委員長による講評
− 6 −
煙ハウス体験
AEDによる蘇生訓練
平成28年度 相模原キャンパス総合防災訓練に参加して
相模原キャンパスにおける
防災訓練と防災対策委員会の意義
記憶から学ぶべきこと
第1学年 第1学年 うえはら・たつもり
くらかた・あきおみ
上 原 竜 護
倉 片 彬 臣
私は防災委員として、今回の訓練に参加し
防災訓練に参加したことをきっかけに、医
療系の総合大学である北里大学全体で訓練を行う意義を考えた。
ました。去年参加した先輩方に話を伺ったところ、参加した学生
第一に、学生の安全を確保することが挙げられる。本学の相模
がとても少なかったとのことだったので、当日はどうなるのか不
原キャンパスは、学生数およそ5,000人を誇る巨大な施設群である。
安に感じていました。しかし実際には、ほとんどの学生が参加
学生の人命を守るという観点から、訓練は大きな意義があったと
していたので、訓練がより有意義なものになったと思います。そ
考える。第二に、北里大学病院は災害拠点病院であるため、その
れと同時に、参加した学生が増えたのはなぜだろうと考えました。
機能を守ることにより多くの人命の救助が可能になることが挙げら
憶測に過ぎないのですが、約1か月前に起こった熊本での地震
れる。同病院は、救命救急・災害医療センターを持つとともに神
が関係しているのではないかと考えます。地震後しばらくの間は、
奈川DMAT(Disaster Medical Assistance Team:災害派遣医
頻繁にこの出来事がメディアで取り上げられていました。そのた
療チーム)に指定されている。災害時にこれらの役割を全うするた
め、防災に対する意識が高まっていたのではないでしょうか。
めには、まず自分たちの安全を確保することが何より重要である。
一方で、我々は5年前に起こった東日本大震災も覚えているは
また、実際に訓練に参加してみて、組織立った避難の重要性
ずです。そうであるにもかかわらず、去年と今年で訓練に参加す
を学んだ。何千人もの学生が速やかに避難するためには、組織
る学生の数が変動してしまうのは非常に残念に思います。被災さ
立って動くことが重要である。北里大学は防災対策委員会が設
れた方々がおっしゃっていたように、地震はどういうものであるか
置されており、その下には各学部で防災対策委員やクラス委員と
ということをいつまでも記憶の中にとどめておくべきであり、その
して、大勢の教員や学生が参加していた。今回、自分はクラス
記憶から実際に地震が起こった際にどのような行動をすべきか、
の防災委員としてクラスメイトの避難誘導や点呼を行った。最初
そしてそのためにはどのような準備をすべきかを考えることまで
は不安も大きかったが、頼りがいのある委員の先生方や先輩方
が防災訓練ではないでしょうか。
のサポートのおかげで役割を全うすることが出来たと考えている。
いざという場合に防災委員の一員として活動が出来るよう、これ
からも訓練に積極的に参加していきたい。
医学生としての防災意識
災害大国日本に暮らすために
第1学年 第1学年 つたはら・そうへい
わたべ・こうき
蔦 原 壮 平
渡 部 宏 毅
相模原キャンパスの総合防災訓練に参加
2011年3月11日、東日本大震災が起こった。
した。大学において、ここまで大規模な防災訓練は珍しいので
津波による被害はかなり大きなものであり、地震による死者、家
はないか。大学全体で真剣に防災訓練に取り組む姿は新鮮で
屋の倒壊も発生した。つい最近も熊本で大きな地震が起こった。
あったし、北里大学の防災に対する姿勢も垣間見えた。
地震の際の避難はとても大切なことであるということは、日本に
東日本大震災から5年が経ち、あの衝撃的な体験の記憶も少
住んでいる以上、常に感じなければならないことではないだろう
しずつ薄れていく中で、私たちの防災への意識も低下しているよ
か。避難に遅れて死んでしまった、そんな悲しいことにならない
うに感じる。あの時、私たちはどのように状況を判断して、どの
ためにも避難訓練はとても重要である。
ように行動するべきだったのかを振り返る機会はあまりない。
今回、大学内で避難訓練を行った。避難訓練によりどこに逃
そんな私たちにとって大規模な防災訓練は、あの時の記憶を
げれば安全なのか、どこが危険となり得るのかを確認することが
思い起こす機会となり、そのことで私たちが忘れかけている防災
できた。たった1時間の訓練ではあったが、非常に充実した時間
意識を再び思い出す機会ともなった。医学生である私たちにとっ
になったのではないだろうか。今回は訓練ということもあり、クラ
て、何気ない日常生活の中でのこの体験は、貴重なものであった。
スをまとめるのは簡単であったが、実際に起きたときにはパニッ
地震大国である日本に住む限り、防災への意識を常に持ち続け
クになる人もいるし、違うところにいる人も出てくると思う。そん
ることは重要であるが、将来、人の命を扱う仕事を担う私たちの
な時、まとめる役である私がどれだけリーダーシップをとれるか
ような医学生にとっては、義務であるとも言える。今回の防災訓
にかかってくると思う。震災は明日起こるかもしれない、もしかし
練を通して、これからは医学生としての防災意識を持たなければ
たら今日かもしれない。毎日おびえて生活する必要はないが、い
いけないと、気が引き締まったように感じる。
つ起きてもいいように準備をすることが大切であると思う。
− 7 −
臨床実習入門
「患者さんから学ぶ」に
ついて
医学教育研究開発センター
医学教育研究部門 准教授
守 屋 利 佳
もりや・りか
医学部生の学習は1年次の教養科目、基礎科学などに始
を経験することで、「医師の視点」と「患者さんの視点」
、
まり、2∼3年次の基礎医学、3∼4年次の系別総合教育
あるいは「一人の人間としての視点」をもう一度見直し、
今、
と徐々にその専門性を増していきます。学生は臨床実習開
自分はどこにいるのか、どこに向かっていくのかを考える
始前には医学に関する一通りの知識を学び、さらに基本的
ことになります。
な診察技能や態度を身につけて臨床実習に進みます。それ
今年は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)という病気により、
は、膨大な知識の学習を通して、その視点が「一人の人」
人工呼吸器を装着してさがみ緑風園で生活されている三井
から「医師」としてのそれに変わっていくプロセスでもあ
敏照さんと、サリドマイド薬害を受けられた増山ゆかりさ
ります。
んにいらしていただきました。お二方ともお話の内容はも
専門的な知識を身につけ、どのように患者さんの前に立
ちろんのこと、そのまなざしやたたずまいを通じて、医師
つのか。実習開始前に組まれるプログラム「臨床実習入門」
を目指す学生たちに力強いメッセージを送ってくださいま
では、診察に必要な技能の修得とともに、患者さん一人ひ
した。三井さん、増山さんに心より感謝を申し上げますと
み
としあき
い
ますやま
とりにいかに向き合うかを考える機会が設けられています。 ともに、準備やサポートをしてくださいましたすべての
その一つが、
「患者さんから学ぶ」の講義です。患者さん
方々に、この場を借りてお礼を申し上げます。
やそのご家族にご自分の体験をお話しいただき、質疑応答
「患者さんから学ぶ」を受けて
第5学年 山 田 薫 梨
やまだ・かおり
私たちは今年の2月5日に授業の一環として、筋萎縮性
一番印象に残ったのは、三井さんが以前、研修医に何度
側索硬化症(ALS)という難病を患っている三井敏照さん
も何度も採血のやり直しをされ、そして何の声掛けももら
からお話をいただく機会がありました。
えなかったという話でした。痛いと声や表情に出すことも、
ALSとは、運動神経が障害されることで全身の筋肉がや
身体を使って訴えることもできない。どんなに悔しかった
せ細っていく進行性の病です。痛みなどの感覚は保たれま
ことでしょう。そのような人の気持ちの分からない、思い
すが、進行していくと体を動かすことだけでなく、話すこ
やりのない医者にはなって欲しくない、精神的にも患者と
とも食べ物を飲み込むことも自力で呼吸をすることも難し
向き合って欲しいと訴えられていました。
くなります。ALSについては本やテレビドラマ、そして大
5年生になり病院実習が始まった今、病気を診るだけ
学の授業で学んでいましたが、実際に患者さんに会い、お
でなくその 人 を診ることの大切さを痛感しております。
話を聞くと、机上の勉強では知ることのできない、患者さ
少しずつ医学の知識がついてくると、病気の方に目がいっ
んの思いや沢山のことを学ぶことができました。
てしまいがちです。しかし、病ひとつとっても教科書通り
自分の思いを相手に伝えられないもどかしさ、悔しさは
ではなく、患者さんによって症状が異なります。病気との
計り知れません。しかし、それでも三井さんはできないこ
向き合い方、
受け取り方、
求めていることも患者さんによっ
とよりもできることをお話しされていました。三井さんは
て様々です。これからは、医師としての知識や技量はもち
私たちと文字盤でコミュニケーションをとられます。眼を
ろん、患者さんが何を感じ、何を求めているのか、そういっ
動かし、さがみ緑風園の方がそれを代読します。ゆっくり
た気持ちに寄り添えるような人間力も培っていきたいと思
ゆっくり一文字ずつ読み上げられていきます。また、額に
います。
センサーをつけて、わずかな顔の筋肉を感知するパソコン
三井さんのお話を聞き、毎日食べたいものを食べ、勉強
でもコミュニケーションをとることができます。メールを打
し、友人と笑い合い、話すことができることは当たり前の
つこともできます。医療だけでなく、こういった技術や機
ことではなく、とても幸せなことなのだということ、そし
器も患者さんの生活を大きく支えているのだと感じました。
て医学部を目指そうと思った時の純粋に患者さんを助けた
− 8 −
いという想いを思い出すことができました。これから国家
最後になりましたが、私たちのために素晴らしい講演を
試験をはじめとするたくさんの乗り越えていかなければな
して下さった三井敏照さん、さがみ緑風園のスタッフの
らない山がありますが、その先には常に患者さんがいると
方々、そして先生方に心より御礼を申し上げます。有難う
いうことを忘れずに、三井さんの強い眼差しと言葉を胸に
ございました。
日々精進していきたいと思います。
「患者さんから学ぶ」を受けて
第5学年 渡 邉 緑
わたなべ・みどり
今回、私たち5年生は、臨床実習入門「患者さんから学
サリドマイドは、かつて鎮痛・睡眠薬として発売されま
ぶ」において、公益財団法人いしずえで活動していらっしゃ
した。しかし、手足に奇形を持った子供たちが次々に生ま
る増山ゆかりさんに講義をしていただきました。増山さん
れたため、因果関係が疑われ、回収措置が行われました。
は、ご自身がサリドマイド薬害を受けており、この講義で
サリドマイド薬害によって失われた命が多くあるというこ
は実際にサリドマイド薬害を受けた被害者の方の思いや辛
とは決して忘れてはならないことであると同時に、現在も
さといった心理的な面も学ぶことができました。
増山さんのように、当時の薬害によって身体に不自由を抱
講義の中で特に印象的だったのが、増山さんご自身が生
えながら暮らしている方々がいらっしゃるということも心
活をしている様子を撮ったムービーでした。そのムービー
に留めておかなければならないと思いました。
では、上肢が不自由な増山さんが布団を敷き、干している
今回の講義を通して、患者さんから経験や思いを聞くこ
様子や料理をしている様子などが撮影されていました。今
とで、文献では学ぶことの出来ない、患者さんの苦しみや
回、実際に身体の不自由な方がどのような日常を送ってい
辛さを知ることがとても重要であると実感しました。サリ
らっしゃるのかを見せていただけたことは、とても貴重な
ドマイド薬害に関して、サリドマイドによって生じる障害
経験となったと感じます。どの動作も私たちにとっては当
だけでなく、身体に不自由をもった患者さんの辛さを、映
たり前のものですが、上肢が不自由であれば、思うように
像や増山さんご自身のこれまでの経験のお話を通して学ば
なかなか物事が進まないことが多いだろうと想像していま
せていただきました。そういった患者さんの思いや苦しさ
した。しかし、増山さんがすべてのことをてきぱきとして
を想像し、共感できるようになっていきたいと考えます。
いらっしゃったことは、とても印象深かったです。とはい
また今後、サリドマイドだけでなく、他の薬剤においても
え、そのように日常生活が送れるようになるまで、どれだ
同じことが起こらないよう、これから医療者となる私たち
けの苦労や障害があったことだろうと、考えずにはいられ
が関心をもち、伝えていくことが重要であると感じました。
ませんでした。
− 9 −
熊本県阿蘇郡小国町に応援メッセージを
贈りました
医学部事務室
平成28年熊本地震により被災されたすべての方々に心よ
い大自然は一生忘れることはありません」「小国町で過ご
りお見舞い申し上げます。一日も早い被災地の復興を心よ
した貴重な体験は、私の中で大切な思い出です」
「また美
りお祈り申し上げます。
しい小国町を訪れたいです。皆さんの町と心の復興を毎日
学校法人北里研究所では、学祖・北里柴三郎博士の生誕
お祈りしています」など、思い思いの言葉を色紙に書き込
地である熊本県阿蘇郡小国町の復興支援を目的として、4
みました。
月28日から5月31日の間、熊本地震災害義援募金口座およ
小国町では、死者や行方不明者はなく、また家屋の全壊
びキャンパス各所に募金箱を設置し、学内外より義援金を
もありませんでしたが、前震に続いて本震が発生し、また
募りました。多くの皆様からご厚意が寄せられ、ご協力い
余震が間断なく続くという前代未聞の災害で、多数の住民
ただきました総額は、886,963円となりました。心温まる
が避難所で不安な夜を過ごす日々が続きました。また、最
ご支援を頂戴いたしましたこと、厚く御礼申し上げます。
繁忙期のゴールデンウィークを前に宿泊の予約客のキャン
この義援金は、北里柴三郎博士の命日である6月13日、
セルが相次ぐなど、主力産業の一つである観光業が大打撃
小国町の北里耕亮町長が来学された際に、藤井清孝理事長
を受けました。阿蘇大橋が崩落し、福岡方面からの主要道
から目録が手渡されました。
路である国道が通行止めになるなど、町周辺の道路事情に
その際には、北里大学医学部の学生や教員がメッセージ
はいまだ影響が出ています。
を寄せた色紙が合わせて贈られました。医学部の学生は、
なお、本法人は、4月22日には小国町の状況に基づき、
毎年9月に小国町で農村体験実習を行っています。小国町
草熟北里八雲牛から生まれた加工品などの災害支援物資を
の皆さんに野菜の収穫や出荷作業、ジャージー牛の飼育、
送りました。今後も小国町のニーズを確認しつつ、可能な
チェンソーや斧を使っての林業体験などをさせていただき、
限りの支援活動を展開していきます。
自然の大切さ、偉大さを学んでいます。学生や教員はその
小国町の一日も早い復興をお祈りするとともに、この度
ときの感謝の気持ちを思い出し、今回、小国町の皆さんの
の募金活動にご協力くださいました多くの皆様に、改めて
ために何かできることはないかと考え、応援メッセージを
御礼申し上げます。
届けることにしました。「Pray for 熊本」
「小国町の美し
目録と色紙を手にする小国町の北里耕亮町長(右)と桑名真也副町長
学生・教職員19名がメッセージを寄せた色紙
− 10 −
教育研究単位紹介
呼吸器内科学
呼吸器内科学 教授 益 田 典 幸
ますだ・のりゆき
呼吸器内科学は、医学部開設時には、内科学Ⅲ(田崎義
います。現在、神奈川県有数の呼吸器(特に肺癌診療)専
昭教授)として、神経内科学、膠原病・感染内科学ととも
門施設となっており、最先端の臨床治験を多く試行し、科
に各部門が連携して教育、研究、診療を行ってきました。
学的、実証的根拠に基づいた最も効果的な肺癌化学療法
その中で、呼吸器内科学は、冨田友幸現名誉教授のご指導
の実践に努めています。近年、奏効率が高く、副作用のよ
のもと発展し、内科学Ⅴ(呼吸器内科学、膠原病・感染内
り少ない新規抗癌薬が相次いで臨床の場に登場してきて
科学)に改編され、冨田先生が教授に就任されました。冨
おり、より安全に患者さんのQOLを損なわずに、生存期
田教授の退任後、平成15年10月に益田典幸が主任教授に就
間の延長が期待できる治療を行っています。治療だけでな
任。平成18年4月に内科学Ⅴから呼吸器内科学単位として
く、気管支鏡検査は全国でもトップクラスの検査件数を誇
独立し、現在に至っています。
り、EBUS-GS(ガイドシース併用気管支腔内超音波断層
①教育
法)やEBUS-TBNA(超音波気管支鏡ガイド下針生検)の
第3学年の呼吸器系Ⅰでは、臨床医学教育に備えて、呼
導入により診断率の飛躍的な向上を認めています。急性肺
吸器の構造・機能などを中心に基礎的事項を修得します。 障害に対しては、高度先進医療であるNO吸入療法の日本
第4学年の呼吸器系Ⅱでは、臨床実習に備えて、呼吸器病
における先駆け施設であり、睡眠呼吸障害、気管支喘息、
診断法の4本柱である「問診」
「診察」
「胸部X線診断」
「呼
COPD、呼吸リハビリテーションに関してもEBMに基づい
吸機能診断」についての知識と主要な呼吸器疾患の臨床像
た医療を実践し、予防医学・管理医学の充実を図っています。
についての知識を修得します。また、第5、6学年の臨床
③研究
実習では、呼吸器疾患の診療を担当医の指導下で直接経験
呼吸筋の機能生理学、気道上皮の遺伝子解析、肺癌個別
し、診療・治療の実際を具体的に習得することによって、
化薬物治療の開発などの基礎研究から、呼吸機能障害の緩
呼吸器病学の知識の一層の充実と整理を図ります。呼吸器
和や肺癌治療への臨床応用を念頭においた臨床研究まで幅
内科専門医としてのトレーニングを実体験し、個々の症例
広く行い、国内外の学会や学術誌に多くの研究成果を発表
が持つ固有の特性を総合的に把握した上で、医療の重要性、
しています。また、生命科学分野の総合大学としての特徴
患者さんとの良好な関係の形成、チーム医療における医師
を生かし、薬学部、獣医学部、医療衛生学部、看護学部な
の役割と責任などの理解・修得を目標にしています。
ど他学部と共同で多くの研究を行っています。国外研究機
研修医に対する呼吸器領域の卒後教育としては、聴診・
関との共同研究としては、呼吸器疾患におけるNOの役割
打診等の身体所見、胸部X線検査・胸部CT検査所見の読
とその臨床応用、誘導型NO合成酵素の抗炎症作用の研究、
影および呼吸機能検査・血液検査等の解釈から個々の患者
Fine-Wire電極を用いた呼吸筋筋電図記録による呼吸調節
さんの病態を推測あるいは把握する能力を身につけさせる
機序に関する研究などを行っています。
ことを目標にしています。このために、カ
ンファレンスやチャートを定期的に行い、
個々の研修医に多くのスタッフからの指導
が受けられる機会を設けています。後期研
修医以上の若手医師に対しては、呼吸器内
科専門医に必要な知識、技術を教授以下の
スタッフが指導を行い、呼吸器領域をテー
マに基礎から最近のトピックスに至る内容
の勉強会を定期的に開催するとともに、研
究会・学会への参加・発表を促し、他施設
の医師と交流することで自発的な能力の向
上を図っています。
②診療
北里大学病院呼吸器センターとして、呼
吸器内科、呼吸器外科、放射線治療科、放
射線診断科が一体となった診療を行って
呼吸器内科学スタッフ
− 11 −
北里大学大学院医療系研究科
大学院医療系研究科研究科長に
大学院医療系研究科研究科長
再任して
分子薬理学 教授 馬 嶋 正 隆
まじま・まさたか
平成28年7月1日付けで、北里大学大学院医療系研究科
る外部研究費の審査員も、マスコミの情報には関心が高い
研究科長に再任されました。これまで2年間にわたり、医
ことが少なくありません。生命科学に特化し、実学をモッ
療系研究科研究科長として大学院運営の舵取りをしてまい
トーとする本法人の特色、競争力を十分にアピールしたい
りました。再任にあたり、今後の2年間の抱負を述べさせ
と考えます。臨床心理士コース等の特徴ある領域をカバー
ていただきます。
する課程の創出に努力する所存です。
本研究科は、医学部、医療衛生学部の両学部にまたがる
3)財政基盤の安定化
大学院として、平成10年4月に開設されました。今では多
これまでは関係者諸氏の尽力により、教員人件費に対す
くの医学部の研究科、他学部のそれと連携して、『複数学
る国庫補助の削減と特別補助の減額による医療系研究科の
部を母体とする大学院』を構成することはごく普通に見ら
財政基盤の危機は、改善されてきました。直近の収支は黒
れるようになりましたが、当時はまだまだ斬新でありまし
字です。今後も手綱を緩めること無く、財政基盤の安定化
た。創設20年をひかえ、これからは、如何に大学院の実質
に努めていく必要があります。学位を持つ学部助教の大学
的な内容を高めるか、リモデリングの時期に入ったと理解
院任用を進め、講義担当、大学院生研究指導を奨励します。
しています。
寄付講座開設は公的大型研究補助金と並んで財政基盤の安
定につながるものですので、今後チャンスがあれば積極的
1)大学院生がのびのび研究に没頭出来る研究科を目指す
に導入を進めます。一方、各支出項目も精査し、当座の削
Scienceのすばらしいところの一つは、学術誌への投稿
減が可能な案件と将来を見据えた予算執行をバランス良く
という行為で、成果をすぐに世界の第一線に問うことが出
実行していく所存です。年度により、状況の変化があるた
来る点です。研究科の主役はあくまでも院生諸君です。院
め、プライオリティーを考慮した柔軟な対応を心がけたい
生諸君が世界に繋がる成果の発信に思う存分取り組めるよ
と存じます。
うな研究環境を整備することが、我々研究科構成員の目指
すところと考えます。このためには、研究費の確保はもち
4)研究プロジェクトの推進と外部研究費取得努力
ろんのこと、院生諸君のモチベーションを高めるような研
院生の研究志向をサポートする目的で、現行の院生プロ
究指導方策、研究支援が必要であります。これには、研究
ジェクト予算を増やし、採択件数、助成金額を再考(増加、
領域にとらわれない体制が必要です。事実、最近は院生や
増額)していきたいと存じます。逆に、教員プロジェクト
大学院卒業直後の諸君が、いわゆるトップジャーナルに論
については、これまでの成果を十分に評価する必要を感じ
文がアクセプトされることが続いています。だれにでも、
ており、特に院生の参画について、評価が空洞化している
このような道が用意されているのがscienceです。大きく
ケースも少なくないと思います。教員プロジェクト採択件
羽ばたいてもらいたいと思います。このために労を惜しま
数、総予算を再考したいと考えます。外部連携研究者との
ぬ姿勢を、我々大学院に関与する者は持つべきです。
共同研究の締結を必須とする方向性は良く、これにより助
大学院入学を考える諸君に、如何に魅力あふれる研究科
成金を受け収入増につながること、知財関連手続きを明確
であるかをアピールすることも肝要で、これからは研究成
にすることが出来ます。大学院を申請基盤とする競争的資
果を含めた広報活動には十分工夫し、力を入れて行く所存
金の募集は、突然公募があるという印象が極めて強く、こ
です。
れに対応するには、研究科長は迅速に申請チームを作り対
応することが重要になります。これまでの経験を生かして、
2)外部に存在をアピールできる研究科を目指す
外部研究費取得には力を注いで行く所存です。
医療系研究科は幅広い分野を担当する教員を保持し、さ
らに人間と医療について、多角的に捉える「医療人間科学」
5)国際化推進事業の成熟化
を専攻専門分野にとりいれ、柔軟なカリキュラム構成を特
学校法人北里研究所の事業計画でも重視されている国際
徴としています。しかしながら、これらの特色を外部に十
化推進事業は、順調に推進されていると理解していますが、
分アピールできているとは言い難いと思います。研究成果
今後は特に院生のモチベーションアップにつながる「実
の発信とともに、ホームページ等を積極的に整備し、存在
績」が必須と考えられます。これまでの事業内容では、特
をアピールすることに腐心します。公的資金をはじめとす
定研究者の集会等に予算が配分されている面もあり、そこ
− 12 −
北里大学大学院医療系研究科
に院生の関与が感じられない印象も少なくありません。少
えます。これまでも個々の案件に迅速に対応してきました
数の院生が短期共同研究等で交流の先鞭を付けているもの
が、今後も十分配慮、傾注したいと思います。
の、院生主体の交流を心がけたいと存じます。今春、筆者
また、特にここ2、3年は博士課程の入学者減が見られ
が進めてきたUCLAの大学院Molecular Biology Institute
ています。これには、広報を通じ医療系研究科の魅力をア
(MBI)と学術交流の締結を結ぶことができました。キッ
ピールするとともに、社会人枠入学者の奨励を含めた対応
クオフイベントを近々する予定です。MBIとは、院生を含
をしたいと思います。
めた人的交流を計画しております。
臨床教育研究棟の医療系研究科固有エリアの創出も重要
な案件です。東日本大震災以降の諸事情により建築費が急
6)連合大学院構想について
騰したため、新北里大学病院以降、臨床教育研究センター
薬学研究科、医療系研究科、看護学研究科、感染制御科
の建築は確定していますが、不明な部分が少なくありませ
学府の4部門の統合が計画されていますが、具体的な議論
ん。建設時に医療系研究科専任教員の固有研究教育エリア
は全く進んでいないのが現状です。薬学研究科とは分野に
の創出、院生の共通エリアの創出等には心を砕く所存です。
よっては競合する部分も少なくありません。十分な予測の
上で、各研究科の活性化につながるのか検討する必要があ
医療系研究科の主役は、あくまでも院生諸君です。院生
ります。感染制御科学府の教員を医療系研究科で受けいれ
諸君が世界に繋がる成果の発信に思う存分取り組めるよう
る案もありますが、その際には財政的な検討に加え、実際
な研究環境を整備することを目指したいと考えます。本
に医療系研究科の教育研究にどのような貢献が出来るのか、
研究科の人材育成のキーワードは、「リサーチマインドを
吟味することが必須であると考えます。
持つ医療人、国際的にも通ずる自立した研究者、研究の遂
行力を持った人材の育成」であります。医療系研究科に関
7)ハラスメントマネージメント、その他
与する者は、職位、職種を問わず、常にこれらを念頭に置
院生個人と教員個人との関わりが濃密な研究科では、各
き、努力することが必要です。本研究科の発展に寄与すべ
種ハラスメントの温床になることが考えられます。これら
く、さらに2年間取り組む所存ですので、関係各位の御協
については、院生へのアナンスを徹底し、相談窓口へ訪問
力と御指導をお願い申し上げます。
することへのハードルを十分に下げておくことが肝要と考
医科学専攻修士課程 専門分野
医 学 専 攻 博 士 課 程 専門分野
− 13 −
北里大学大学院医療系研究科
平成29年度 医療系研究科 医学専攻 博士課程
学生募集要項概要
本研究科の最大の特色は、自由に学べる学群制度を持っ
想のもと、新しい医学・医療を担う教育と研究を実践して
ている点です。従来型の医学系あるいは生命科学系大学院
います。そのために必要な国際的な感覚を身につけるため
は講座制をもとに構成され、学生・教員の交流、学際性、 の国際化推進事業にも力を入れています。組織の多様性と
最新の成果を大学院教育に反映させることなどでは大きな
総合力を活かしながら、学問領域にとらわれない実践的な
障壁となっていました。医療系研究科の母体の一つである
研究成果を世界に発信していくことを目指しています。研
昭和45年に新設された北里大学医学部は、講座制撤廃がス
究科の主役はあくまでも院生諸君です。我々は、院生諸君
ローガンでした。医療系研究科における「学群」とは、大
が世界に繋がる成果の発信に思う存分取り組めるよう、研
学院の教育研究対象となる学問領域のことで、複数の科目
究環境を整備しています。ぜひ、新しいスタイルの医療系
で構成され、大学院生がこれまで以上に自主的、有機的、
研究科で世界を相手に羽ばたいてください。
効果的に学ぶために自己で履
一般入学試験・特別選抜入学試験(Ⅰ期・Ⅱ期)
修プログラムをデザインでき
る学 問 ユ ニ ッ ト で す。 科 目
募
間・学群間の共同プロジェク
試 験 別
ト研究はもちろん、学位論文
受
の発表なども学群単位で行わ
試
れ、活発な交流の中で、院生
諸君の知的好奇心を刺激する
集
人
付
期
験
員
第Ⅰ期
第Ⅱ期(実施しない場合もある)
間
平成28年8月22日(月)∼8月31日(水)
平成28年10月17日(月)∼10月26日(水)
日
平成28年10月1日(土)
平成28年12月3日(土)
合 格 発 表 日
平成28年10月7日(金)13時
平成28年12月9日(金)13時
入学手続締切日
平成28年10月27日(木)
平成29年1月5日(木)
環境が用意されています。ま
た、
「医療人間科学分野」を
共通教育単位として設定し、
40名(下記の集学的がん治療スペシャリスト養成コースを含む)
がん薬物療法専門医師養成コース、放射線治療専門医師養成コース、緩和ケア専門医師養成コース
選
抜
方
社会人としての生涯教育にも
配慮しています。既成の学問
の枠にとらわれない自由な発
法
筆記試験、面接試験及び出願書類等により入学志願者の能力・適性等を総合して判定します。
(1)筆記試験
①外国語(英語)試験(辞書持込可。ただし電子辞書は市販品で、通信機能の無い物に限る。
PCは持込不可。)
※他機関による英語能力を証明する検定結果が、本研究科が定める基準以上の者は、
外国語試験を免除する場合があります。
②基礎的科学試験
(2)面接試験
注:疾病など心身の異常のため本学の教育目的に即した履修に耐えないことが、入学後
の保健指導等を考慮してもなお明白な場合は入学を許可しません。
入学後には院生を対象にした
多彩な支援・助成制度があります!
1.長期履修学生制度が導入されています
研究交流活動として、2,500,000円(年間)を上限として助
4年間分の学費納入で5年又は6年間の履修を認める長
成する制度があります。助成対象は、教員と大学院生で、
期履修学生制度を導入しています。専門医資格取得や留学
教員とのプロジェクト研究などを通じて研究費を使うこと
等に柔軟に対応が出来ます。
ができます。
2.研究費および実習費が配分されます
5.国際化を推進する支援制度があります(その2、学生
大 学 院 学 生 1 人 あ た り、 研 究 費 と 実 習 費 あ わ せ て
の派遣・受入等)
300,000円(年間)を配分します。
学術交流協定を結んだ海外研究機関に留学を希望する院
3.大学院生プロジェクト研究の助成制度があります
生には、1,200,000円(年間)を上限として助成します。協
大学院学生が自ら研究を立案・実施する過程を通して、
定により、条件は多少違いがありますので、興味がある方
科学的なresearch mindを学ぶことを目的とし、審査を経
は、まずはご相談ください。
て採択した研究課題に対して研究費400,000円を上限とし
6.e-learning制度を導入しています
て助成します。テーマを変えて複数回、取得できた院生も
講義の多くは夕刻以降に設定しています。それに加えて
います。
インターネットによる講義視聴で単位の認定ができます。
4.国際化を推進する支援制度があります(その1、共同
研究等)
※支援・助成制度に関する詳細は、医療系研究科事務室に
医療系研究科には、学術交流協定を結んだいくつかの姉
妹校があります。それらの海外研究機関との教育交流及び
問い合わせてください。
E-mail i-kyomu@kitasato-u.ac.jp
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北里大学大学院医療系研究科
米国消化器病週間(DDW 2016)
大学院医療系研究科 優秀ポスター賞を受賞して
博士課程 消化器内科学 清 水 裕 貴
しみず・ゆうき
平成28年5月21日、米国カリフォルニア州サンディエゴ
アンジオテンシン変換酵素阻害薬投与群・アンジオテンシ
にあるSan Diego Convention Centerで開催された消化器
ンⅡ受容体拮抗薬投与群が対照群と比較し、有意に肝転
病週間(Digestive Disease week : DDW 2016)において、 移が抑制されていることを確認しました。更にAT1a受容
演題「The role of Angiotensin II subtype IA receptor on
体欠損マウスでは野生型マウスと比較し、有意に肝転移
liver metastasis formation」を発表し、優秀ポスター賞を
の抑制が認められました。以上から肝臓の転移において、
受賞致しましたので報告させて頂きます。このような名誉
AT1a受容体が関与していることが推測されました。今後、
のある賞を頂けましたのも、ご助言・ご指導くださった方々
更に研究し、詳細な遠隔転移のメカニズムを明らかにした
のおかげであり、まずはこの場をお借りして研究に協力し
いと考えております。
て頂いた方々に深謝いたします。
DDWは「米国消化器病学会(AGA)」、「米国消化器内
私は、消化器内科医として悪性腫瘍の患者さんに対する
視 鏡 学 会(ASGE)
」
、
「米 国 肝 臓 学 会(AASLD)
」
、
「米
診療を行ってきた中で、予後を規定する遠隔転移をいか
国消化器外科学会(SSAT)」の4つの学会の共催による、
にして制御出来るかということを考えるようになりまし
世界各国より参加者が1万5千人以上という、消化器関連
た。そのため悪性腫瘍の再発や遠隔転移のメカニズムを解
として世界最大級の学会です。上司と共に学会会場でポス
明したいということから、大学院医療系研究科に入学し研
ターを貼っていると、他病院の著名な先生が手伝って下さ
究を始めました。私の研究テーマは、大腸癌の肝臓転移に
いました。その時にその先生がおっしゃっていた言葉です
おけるレニン・アンジオテンシン系(RAS)の役割です。 が、
「海外で一人でポスターを貼っていると、一人で貼る
RASは主に血圧をはじめとする体循環の恒常性に関与す
難しさと一人きりである孤独を感じて寂しくなるものです。
ることが知られています。1998年にアンジオテンシン変換
だから私は一人でポスターを貼っている日本人を見るとい
酵素阻害薬を服用していた人の方が他の降圧薬を服用して
つも手伝っているのです」
。ポスター発表ではありますが、
いる人よりも癌の死亡率が低いことが報告され、RASが
とても大きな会場で海外学会での発表という緊張の中、人
腫瘍の増殖に関連していると考えられました。大学院医療
を思いやる言葉に、緊張し張り詰めていた気分が和らいで
系研究科分子薬理学馬嶋正隆研究室では、これまでに共
きました。このポスターを見ると親切にして頂いたことを
同研究者らにより、アンジオテンシンⅡの受容体である
思い出し、少し人に優しく出来るような気がします。
Angiotensin type 1 受容体(AT1)のサブタイプである
最後になりますが、ご指導頂きました大学院医療系研究
AT1aが血管内皮増殖因子(Vascular Endothelial Growth
科分子薬理学馬嶋正隆教授、消化器内科学小泉和三郎教授、
Factor : VEGF)を誘導し、腫瘍血管新生及び転移を増強
分子薬理学天野英樹講師をはじめ、大学院医療系研究科分
することを報告してきました(Carcinogenesis 2005, Am
子薬理学ならびに消化器内科学のスタッフの皆様に厚く御
J Pathol 2013)。しかし、RASと大腸癌の肝転移に関連す
礼申し上げます。今後もさらに努力し、精進を重ねていき
る報告は少ないのが現状です。
たいと思います。
そこで、私はマウスで大腸癌の肝転移モデルを作成し、
左から馬嶋正隆教授、筆者、天野英樹講師
ポスター
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受賞リボン
今年一番のイベントといえば、やはりリオデジャネイロのオリンピック・パラリンピッ
クではないでしょうか。メダルを狙える日本人を応援するのはいつものことですが、今大
会はいつも以上に若い世代の選手が気になってしまいます。卓球女子の団体戦には世界
ランク10位の伊藤美誠選手が出場しますが、高校に入ったばかりの15歳だそうです。世
界ランク 4 位の石川佳純選手、 7 位の福原愛選手に次ぐ三番手での出場ということです
が、急成長中の若い選手だけに期待が高まります。今大会の活躍だけでなく、次の2020
年東京大会までにどれだけ成長してくれるのだろうと考えるとワクワクするのは、それだ
け自分が年を取ったということなのでしょうか。さてさて、どんなドラマがみられるのか、
今から楽しみです。
(H・F)
部活紹介
潜水医学研究会
加倉井 俊 也
第4学年 かくらい・としや
潜水医学研究会は、今年で40周年を迎える歴史の長
したことがなく、1年生は夏休みの合宿でライセンス
い部活で、スキューバダイビングを主として活動して
を取得し、ダイバーになります。八丈島の青い海で部
います。活動は毎週土曜日に伊豆の海で行っているほ
活の仲間と潜る楽しみは、言葉では言い表せないもの
か、夏休みには八丈島で、春休みには主に海外で1週
です。
間ほどの合宿をします。これらはすべて医療衛生学部
ダイビングはライセンスが失効することがないので、
のダイビングクラブと合同で行っていて、医療衛生学
一度始めると生涯を通じて楽しむことができます。ダ
部、薬学部、看護学部、理学部、海洋生命科学部など
イビングに興味があるという方は、ぜひ私たちに声を
と幅広く交流の輪を広げています。
かけてください。部員であるなしに関わらず、私たち
部員のほとんどは大学に入るまでダイビングを経験
は海の中での光景について話す機会を待っています。
編 集 後 記
先ほど、医学部ニューズ編集委員会が終了しました。今号の
表紙は、多数の応募写真の中から「ひまわりと雲」と題した、
この季節に相応しい写真が選ばれました。真夏の燦々と降り注
ぐ太陽の光を浴びて、元気に咲き続ける大輪のひまわりの姿は、
夏の花の代表格の一つでしょう。医学部ニューズの毎号の表紙
写真は、1年に2回開催される写真コンテストの応募作品の中
から、編集委員の投票によって決定します。直前に迫った締切
は8月31日(水)、その次は半年後です。皆様、どうぞ奮ってご
応募ください。募集要項等のご案内は、今年の5月号(No.366)
の最終ページにあります。お手元にない方は、医学部ニューズ
編集委員会事務局までご連絡ください。
ところで、ここ数年、ひまわりを間近で見ていないことに気
づきました。確か以前、マスメディアで「ひまわり畑・ひまわ
り迷路が人気で大勢の人が訪れている・・・」と報道されてい
ました。そこで、この機会にインターネットで検索してみまし
た。すると、北は北海道から南は九州・沖縄まで、たくさんの
大規模なひまわり畑がヒットしました。神奈川県下では、6月
から早咲きのひまわりの開花が始まり、7月・8月と見頃を迎
え、様々なイベントが実施または予定されています。多くのひ
まわりが、みな同じ方向を向いて咲き誇る姿を想像しただけで、
一見の価値がありそうです。ただ、たくさんのひまわりが咲く
ような場所ではなく、昔よく見られた、畑の一部や庭に何本か
咲くひまわりもその美しさは引けをとらないと思います。表紙
の写真のように、真夏の太陽の光を浴びて凜と咲くひまわりを
近所の散策で見つけるのも良いのではないでしょうか。
(I・I)
医学部ニューズ〔第368号〕
http://www.med.kitasato-u.ac.jp/
●発行責任者 宮 下 俊 之
●編集責任者 村 雲 芳 樹
〒252-0374 相模原市南区北里1-15-1
北里大学医学部内 医学部ニューズ編集委員会
TEL.042-778-8704
(直通)
FAX.042-778-9262
E-mail m-news@kitasato-u.ac.jp
●発 行 日 平成28年7月31日発行