P2Pを利用したコンポーネント更新システム

P2P を利用したコンポーネント更新システム
電気通信大学 大学院情報システム学研究科
中山 知映†
小林 良岳 中山 健 前川 守
概要
OS をはじめとするソフトウェアを開発する際には,プログラムコードの再利用を
考えコンポーネント化が行われる.ネットワークが普及した現在,ネットワークを通
じてコンポーネントをダウンロードすることによって,ソフトウェアにユーザの要求
に応じた機能の追加や更新を行うことが可能である.
PC 上で動作するソフトウェアは,PC を構成するハードウェアやインストールされ
ている他のソフトウェアと依存関係にある.この依存関係は,ソフトウェア開発の際
に開発者が把握しテストを行っているが,PC の利用形態が多様化している現在,PC
を構成するハードウェアやインストールされるソフトウェアも多様化しているため,
全ての PC 環境に対してテストを行うことは困難である.また,PC 内部が複雑化し
ているため,ソフトウェア開発者が意図しない依存関係が存在する危険性がある.こ
れらの依存関係を把握せずにコンポーネントの追加や更新を行うと,今まで利用して
いたソフトウェアが動作しなくなる危険性がある.つまり,すべての PC 環境に応じ
たコンポーネントの追加・更新が困難となってきている.
以上のことから,コンポーネントの追加や更新は PC 内部の依存関係を把握してか
ら行う必要がある.そこで,PC の環境や利用状況,障害情報を取得し,環境が類似
した PC 間でこれらの情報を共有することが可能であれば,これらを分析することに
よってコンポーネントの更新におけるリスクを削減することが可能となる.そのため
には,まず PC 環境によって情報を分類することが重要になる.
そこで本研究では,P2P を利用して環境が類似した PC 同士でグループを形成し,
コンポーネントの動作確認情報を共有し,コンポーネントの更新を支援するシステム
を提案する.現在実現されているコンポーネント更新システムは,コンポーネント提
供者が管理するサーバによって提供されることが多いが,これはコンポーネント提供
者側のサーバ管理・維持のコストや,コンポーネントテストのコストが膨大になると
いう問題がある.P2P ネットワークを利用することで,サーバ管理・維持のコストを
大幅に削減することが可能となる.また,利用者によってコンポーネントの動作確認
を行うことによって,コンポーネント提供者側のコンポーネントテストのコストを削
減することが可能となる.
本発表では,上記を踏まえたコンポーネント更新システムの設計・実装について述
べる.その際に,コンポーネント更新に必要な情報量の見積もりを行い,その情報量
に基づいて,システムに適した管理形式を明らかにする.また,実装に基づいたシミュ
レーションにより,グループ形成について述べる.
†
chiaki@maekawa.is.uec.ac.jp