ガイドブック 2016

TM
2O16
JAPAN
FEATURED TOPICS
5 emc設計
15 試験
34 ノイズ対策
39 EMC評価
43 サージ & トランジェント
49 EMP
64 ESD
69 EMC教育
DIRECTORY
71 EMC関連企業一覧
Interference Technology 日本版「保存版ガイドブック2016」
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Copyright © 2015 AR.
The orange stripe on AR products is
Reg. U.S. Pat. & TM. Off.
CONTENTS
interference technology — 2016 JAPAN
Tec hno -front ier 2015 ◇見どころ&出展者セミナー......2 ◇出展者リスト.....3 ◇EMC・ノイズ対策技術シンポジウム.....4
Contents
EMC設計
5
過剰なエミッションの緩和 第2版
Sweeney
12
EMCの基本:電子デバイスのEMIを抑制する設計
Fornes
試験
15
EMCの実践-妨害下の測定:EUTからの信号をクリーンに伝送するには
Hacker
P.13
19
自動車用放射エミッション試験設備のデザインレビュー
Mullineaux
24
2.4 GHz ISMデータ送信機の新しいEU要求事項と試験方法
Zhang
30
ICのベアチップはどのくらいのESDに耐えられるか?
-ESDの影響下で実施するICイミュニティ試験
Konig
ノイズ対策
P.16
34
安価な放射イミュニティ予備適合性試験
Wyatt
EMC評価
39
家庭内“EMCの乱”
:妻からの手紙
Suriano
サージ&トランジェント
43
重要な社会基盤に対する電磁兵器の潜在的影響力(2012年からの見解)
Radasky
P.35
EMP
49
EMPからの防御に対する国家計画:パート2 建造物のEMP防御
White
57
住宅と屋根の太陽電池に関するEMP防御
White
ESD
64
P.51
衣服近傍の電界誘導モデル(FIM)放電によるリスク
Vermillion
EMC教育
目次
71
Company Directory
interference-technology.jp
72
Index of Advertisers
69
電磁両立性の教育と訓練のための標準化されたプログラムの必要性
Dibiase
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 1
TECHNO-FRONTIER 2015
国内唯一!EMC・ノイズ対策に関する専門技術展
国内唯一の電磁波ノイズ対策に関する専門技術展として今年で28回目を迎える本展では、多彩な無料出展者セミナーや主催者企画や有料シンポ
ジウムなどを開催!ノイズ対策の総合的なソリューションが一堂に会する展示会です。
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◆ 各国規格・規制の位置付け ◆ 医療機器に関するEMC規格 ◆ パワーエレクトロニクスに関するEMC規格
◆ 自動車とEV充電器に関するEMC規格と規制
◆ マルチメディア機器におけるEMC規格
◆ CISPR 11の国内答申と最新動向について
※予約、
取り置きなどはできませんので、
ご注意ください。
※画像は2014年度版です。
参 加 無 料!
EMC関連のさまざまな出展者セミナーが開催されます。公式Webから事前にお申込みください。
出
展
者
セ
ミ
ナ
ー
■ 場所:セミナー会場①
(5ホール)
、
②
(8ホール)
定員: 各70名(空席があれば当日参加もOK)
最新情報はホームページを随時ご確認ください。 ⇒ http://www.jma.or.jp/tf/ja/event/exhibit.html
5/21(木) ①
5/22(金) ①
5/22(金) ②
12:10-13:00 GHz帯シールド材料遮蔽効果評価システム紹介
東陽テクニカ
15:40-16:30 EMC測定サイトで行われる対策とその効果
トーキン EMC エンジニアリング
13:20-14:10 3次元空間電磁界可視化システム(WM9500narda)
森田テック ( 東洋メディック協調発表 )
14:30-15:20 雷サージ試験IEC 61000-4-5Ed.3改訂のポイント
ノイズ研究所
12:10-13:00 電気機器設計におけるマルチフィジクス解析活用術
アンシス・ジャパン
対策技術・設計支援ソリューションセミナー
4 月 17 日現在
■ 場所:7ホール内
定員: 各80名(空席があれば当日参加もOK)
最新情報はホームページを随時ご確認ください。 ⇒ https://technofrontier2015-reg.smktg.jp/public/application/add/44#seminarC
5/20(水)
15:00-15:30 インバータ電源回路のサージ対策手法
三菱マテリアル
5/21(木)
11:50-12:30 ECU周りの電源変動とノイズ解析
キーサイト ・ テクノロジー
非常に厳しい!?車載機器等のEMC対策事例 ~一般民生とは異なるきわきわ極微ノイズの世界~
EMCに最適な広帯域アンプとは?
15:00-15:30
高い信頼性を実現するための技術チャレンジ
え!実測とこんなに合うの?使い方広がる電磁界シミュレータ。
15:50-16:20
その実力見せちゃいます
TDK
11:00-11:30 EMI測定における注意点
テクノサイエンスジャパン
13:00-13:40
5/22(金)
ローデ・シュワルツ・ジャパン
アンシス・ジャパン
村田製作所
11:50-12:30 LED照明のノイズ対策の勘所
13:00-13:40 シミュレーションを活用したノイズ・熱対策
パナソニック オートモーティブ
&インダストリアルシステムズ社
14:10-14:40 ノイズ対策を失敗しない為の接地(アース&グランド)に関わるQ&A
電研精機研究所
EMC設計はじめの一歩
15:50-16:20
~現場で本当に必要なEMC設計の技術と手法とは?~
図研
4 月 17 日現在
2 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
第28回 EMC・ノイズ対策技術展
電磁波ノイズ対策部品・材料から、計測機器、測定施設、EMCコンサルティングまで、
EMC・ノイズ対策関連の最新技術を一堂に展示する。
2015年4月17日現在の同展・出展者は以下のとおり(50音・国内・海外の順)
出
展
者
リ
ス
ト
アドバンストテクノロジー
電研精機研究所
アメテック CTS( Teseq/Milmega/IFI/EMtest)
デンソーEMCエンジニアリングサービス
アルティマ/ウルトエレクトロニク
電波新聞社
アンシス・ジャパン
東京コイルエンジニアリング
e・オータマ/ITEMメディア
東京都立産業技術研究センター
ウエノ
東陽テクニカ
NECエンジニアリング
東洋メディック
NECトーキン
富山電気ビルデイング
エレナ電子
日経BP
エーイーティー
日本オートマティック コントロール
岡谷電機産業
ニッポーマグネス
OKIエンジニアリング
日本イーティーエス・リンドグレン
雄山/サーモフィッシャーサイエンティフィック社
ノイズ研究所
科学情報出版「月刊EMC」
日置電機
カネカ
日立情報通信エンジニアリング
キーサイト・テクノロジー
富士通
KEC関西電子工業振興センター
Frankonia EMC Test-Systems/ウェーブクレスト
シャフナー EMC/アヴネット
VCCI協会
JSOL
マイクロウェーブファクトリー
JEL
三菱電機エンジニアリング
スミダコーポレーション
三菱マテリアル
図研
緑屋電気
星和電機
森田テック
双信電機
リケン環境システム
竹内工業
ロゼッタ
大同特殊鋼
ローデ・シュワルツ・ジャパン
TDK
CTK
TDKグループ
耕芯
テクノサイエンスジャパン
KMIRA
テレダイン・レクロイ・ジャパン
SANGSHIN ELECTRONICS
デバイス
TECH VALLEY
interference-technology.jp
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 3
TECHNO-FRONTIER 2015
第29回EMC・ノイズ対策技術シンポジウム
4 月 17 日現在。最新情報はホームページを随時ご確認ください。
◎ 会場:4ホール内 ◎ 聴講は有料です
5 月 20 日 ( 水 )
G1
カーエレクトロニクスの EMC ①
コーディネーター:前野 剛 ( 株 ) クオルテック 信頼性試験センター 所長
① EV/HEV の規格動向と EMC 対応技術
●
塚原 仁 日産自動車 ( 株 ) 電子技術開発本部
電子信頼性技術開発部 電子信頼性評価グループ 主査
② EV/HEV の電動パワープラント EMC への取り組み
10:00
~
12:45
⇒ http://www.jma.or.jp/tf/sym/emc.html
細田 正晴 ( 株 ) 本田技術研究所 四輪 R & D センター
第 5 技術開発室 第 2 ブロック 主任研究員
●
●
EV/HEV 等電動車における EMC 課題
EMC 対策事例
● 電動車 EMC への取り組み
●
●
●
③ EV/HEV 用部品の EMC 性能向上技術
瀧 浩志 ( 株 ) デンソー 研究開発2部 電力変換開発室 課長
CISPR と ISO の自動車 EMC 規格動向
充電時の EMC 要件
自動車の EMC 性能確保
●
●
EMC 性能向上の考え方
EV/HEV 用部品のノイズ発生機構
ノイズ伝導経路と評価の課題
④ パネルディスカッション ~ EV/HEV 車における自動車レベルと部品レベルの EMC 性能確保
塚原 仁/細田 正晴/瀧 浩志/前野 剛
G2
カーエレクトロニクスの EMC ②
コーディネーター:瀧 浩志 ( 株 ) デンソー 研究開発 2 部 電力変換開発室 課長
●
① 自動車部品の垂直統合的な EMC 設計
瀧 浩志 ( 株 ) デンソー 研究開発 2 部 電力変換開発室 課長
14:15
~
17:00
② アンテナにならない、ハーネスを励振しない、基板設計
中村 篤 アルティメイトテクノロジィズ ( 株 ) CTO
●
●
●
●
●
③ ルネサスマイコンにおける EMC 設計への取り組み
久保 輝訓 ルネサス エレクトロニクス ( 株 ) 車載制御第二事業部
ボディ事業推進部 課長
●
●
●
自動車部品(製品)の EMC 課題と従来の設計手法
製品・基板・デバイスの垂直的レベルと EMC 要件
垂直統合的な EMC 設計に向けた取り組み
アンテナのように共振してしまうベタ GND
基板フルサイズ解析でみるベタ GND の電圧
パスコンで抑える電圧と抑えられない電圧
EMC 設計への基本的な考え方
EMC 設計の具体例の紹介
EMC 設計の効果確認方法
5 月 21 日(木)
EMC(ノイズ解析技術)
G3 パワーエレクトロニクスの
コーディネーター:松本 康 富士電機 ( 株 ) 技術開発本部 製品技術研究所 パワエレ技術開発センター 電機制御技術開発部 部長
① パワーエレクトロニクス装置の伝導エミッション解析技術
10:00
~
12:45
G4
●
② インバータエアコンにおける雑音端子電圧の解析
常盤 豪 ( 株 ) 東芝 生産技術センター 制御技術研究センター 研究主務
●
●
EMC 技術から見たパワエレ装置のモデリング
ノイズ分析のための測定評価技術
伝導エミッションのシミュレーション評価と適用事例
インバータエアコンの構成と EMC 規格
雑音端子電圧の解析モデリング
● 雑音端子電圧解析の活用事例
●
パワーエレクトロニクスの EMC(ノイズ設計技術)
コーディネーター:松毛 和久 ( 株 ) 東芝 生産技術センター 制御技術研究センター センター長
① パワーエレクトロニクス機器内の磁気結合を含む EMI フィ
ルタ設計法 増澤 高志 ( 株 ) デンソー 研究開発 2 部 電力変換開発室 担当係長
14:15
~
17:00
●
岡 尚人 三菱電機 ( 株 ) 情報技術総合研究所 EMC 技術センター
主管技師長
② GaN 適用 PV-PCS の EMI 対策
樋口 剛 ( 株 ) 安川電機 インバータ事業部
EMI フィルタ設計の課題
寄生磁界結合のメカニズムとモデリング手法
● 製品適用例
●
●
●
●
環境エネルギー機器事業統括部 回路開発担当
③パワーエレクトロニクス機器の伝導性 EMI の対策技術
清水 敏久 首都大学東京 大学院
理工学研究科 電気電子工学専攻 教授
●
製品への GaN デバイスの適用
高周波スイッチングにおける EMC
EMC 対策事例
EMI の基本知識
パワエレ装置の EMI 発生メカニズム
● EMI シミュレーションとノイズ低減設計
●
●
5 月 22 日(金)
G5
利く対策、利かない対策
コーディネーター:桑原 伸夫 九州工業大学 大学院 工学研究院 電気電子工学研究系 教授
① コネクタ周りのEMC設計:利く対策、利かない対策
10:00
~
12:45
池田 浩昭 日本航空電子工業 ( 株 )
プロダクト・マーケティング本部 主任
② プリント回路基板の EMI 対策手法:神話と実際
原田 高志 ( 株 ) トーキン EMC エンジニアリング
システム事業部 事業部長
ピッグテールの取り方により変わる対策効果
コネクタのシールドの考え方
● インター
フェイスコネクタの実装方法と対策効果
●
●
効果のあると言われる対策の条件
対策の原理
● “アース” という用語のマジック
●
●
【パネルディスカッション】利く対策、利かない対策
池田 浩昭/原田 高志/櫻井 秋久 日本アイ・ビー・エム ( 株 ) 研究開発 ビジネス開発 技術理事
須藤 俊夫 芝浦工業大学 工学部 電子工学科 教授/田邉 信二 三菱電機 ( 株 ) 人材開発センター ビジネス教室 専任
G6
14:15
~
17:00
EMC 対策部品の効果的な使い方
コーディネーター:田島 公博 NTT アドバンステクノロジ ( 株 ) ネットワークシステム事業本部 システム開発ビジネスユニット
EMC チーム 主幹担当部長 チームマネージャー
① Low ESL コンデンサを用いた電源ラインの設計事例
堀 紘彰 ( 株 ) 村田製作所 主任
② xEV 用 DC-DC コンバータのノイズ対策事例
清水 敏久 首都大学東京 大学院
理工学研究科 電気電子工学専攻 教授
4 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
電源設計の現状と課題
電源設計の考え方
● Low ESL コンデンサを用いた設計事例と電源ノイズの確認
●
●
ハーネスが長い! 信号系の対策事例
部品のみでは対策できない!基板での対策事例
● ハイパワー! 配線インダクタンスを利用したフィルタ事例
●
●
2016年版ガイドブック
保存版ガイドブック2016
Sweeney
2015 年 1 月号 掲載
Donald L. Sweeney
President
D.L.S. Electronic Systems, Inc
Marilyn Sweeney
D.L.S. Electronic Systems, Inc
タ用コンデンサ、 集積回路のデカップリン
グでさえ、 きちんと終端することによって放
射をいかに適切に制限できるかについて、
非常にシンプルな言葉で解説したものであ
る。 このコンセプトが EMP に対する山の評
価用として、 どのように使われたか、 いか
にイミュニティに反映されたか、 さらなる背
稿は元々1988年に執筆し、 米
本
ジョージア州アトランタで開催さ
れた IEEE EMC シンポジウムで
発表したものである。 筆者が 「バーベル
モデル」 と呼ぶものが何であるのか説明す
るのに、 数千回とは言わないまでも何百
回もこのコンセプトと論文を使用している。
ケーブルやフィルタのワイヤ、 追加のフィル
景を探るために、 多くの図表とともに元の
論文は更新されつつある。
何年も前に、 シャイ アン山で核による
EMP (核兵器が爆発したときの電磁パル
ス) 耐性を評価した際、 同様のコンセプト
が使われたと記憶している。 核爆発の実
施試験を山でおこなう難しさを理解するな
ら、 シンプルな技術を用いることの長所が
よくわかるだろう。 評価のプロセスで、 水
道管が終端せずにシールド室に入る場合
に EMP の弱点があると私は理解している。
本論文を読むうちに、 これが終端可能な
最悪のケースでは全くないことに気づくだろ
う (次頁の左上図参照)。
よくあることだが、 電子デバイス間で通
信が必要な場合、不必要な RF エネルギー
が電子デバイスに結合する。 この不必要
な RF エネルギーは、システムのトポロジー
に対し適切な考慮をすることで制御または
米国コロラド州にあるシャイアン山*
削減可能である。 以下に、 この不必要な
RF エネルギーが制御または緩和できる多
*訳者注
くの方法と、 制御に妥協が必要となるかも
地下に北アメリカ航空宇宙防衛司令部があった。
interference-technology.jp
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 5
SHIELDING
EMC設計
過剰なエミッションの緩和 第2版
室内へ電磁エネルギーが結合
エネルギーが室内に結合
EMP
EMC DESIGN
水道管
モニタ
モニタ
コンピュータ
コンピュータ
シールド室
水道管
プリンタ
プリンタ
シールド室
水道管のせいでEMPエネルギーがシールド室に入ってきてしまう。
図1A.現在の問題
しれない方法をいくつか説明する。
電磁的両立性 (EMC) の一番の問題は、 常に外部ケーブルか
らの放射である。 この問題を解決するために必要な材料は普通
にあるのだが、 適切に使われていない。
図1Aと図1Bは、 よく試験施設に持ち込まれる代表的なコン
ピュータシステムを示す。 相互接続しているケーブルはもちろん、
周辺機器のいくつかも RF エネルギーを放射している。 電子製品
が、 図3で示すようにケーブルのハンドルやシールドで接続された
導体球 (後述するバーベルになるであろう球体) として表される場
合、 本稿の議論中では類推が使われる。
電磁界が導体球内に維持されるならば、 不必要な RF エネル
ギーは外側に出ないことは明らかである (図2参照)。
しかし AC 電源やキーボード通信、 パラレル/シリアルインター
フェース経由のデータなどのワイヤ類が球体を通過して出入りする
図1B.FCC限度外
必要があるので、 このような封じ込めは非現実的である。 このよ
の考え方は実際的なアプローチを展開するのに用いられる。 図
うに、 不必要なエミッションを抑制している間、 導体球には通信す
4は、 シールドケーブルが機器に不適切に接続されているという、
る方法が必要である。
よくある方法を示すバーベルモデルである。
保護されたこの経路を可能にする方法の1つは、 球体の中に回
ケーブルをシールドする棒は、 内部のピグテールによって球体
路を1つ作って中空の棒を経由してもう1つの球体へ通信するもの
の 1 つに接続される。 ピグテールとは、 シールドを終端するため
で、 類似性はバーベルのような形で拡大する。 図3の球体はパソ
に使われる短いワイヤである。 内部のピグテールの抵抗は理想的
コン (PC) を表し、 モニタへのシールドと、 外部に出ずに通信し
なバーベルモデルの接続抵抗を大きくは上回らないかもしれない
ている2つの回路を相互接続している様子を表している。 球体お
が、 内部のピグテールは棒経由で受信アンテナの働きをして、 球
よび相互接続している経路により、 バーベル内の通信が可能とな
体外部の RF エネルギーを結合させる。 ここで棒と第2の球体は、
る。 このコンセプトは、 どんなレベルの複雑さでも使える。
もともとは1番目の球体内部にあった RF エネルギーを放射する。
バーベルは2つの回路を実際につなぐ難しい方法であるが、 こ
メーカーがピグテールとして8インチのワイヤを使った際には不
モニタ
RF電磁界
RF電磁界なし
RF
電磁界
RF電磁界
RF
電磁界
RF
電磁界
オームメータ
バーベルモデル
コンピュータ
実際のシステム
図2.導体球として表される電子製品
6 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
図3.バーベルとして表される相互接続構成要素
モニタ
コンピュータ
バーベルモデル
実際のシステム
図4.内部にピグテールを使った不適切な接続
2016年版ガイドブック
Sweeney
交合
コネクタ
金属シェル
3/4インチ
(約1.9cm)
シャーシ
3/8インチ
(約0.95cm)
バーベルモデル
図5.ピグテールを短くすることによってエミッションを減らす
図6.理想的な終端
適切な事例となり、 その機器が限度値を超える原因となった。 ピ
グテールを1インチまで短くして、 システムを適合させた。 不適切な
使用のもう1つの事例は、 RS232 コネクタのシールドを金属シャー
シにピグテールの長さ 3/4 インチ (約 1.9 センチ) で結合させたこ
とであった。 ワイヤを 3/8 インチ (約 0.95 センチ) まで短くしてユ
金属シェル
金属ボディ
ビニール被覆
ニットは RF エミッションの限度値になった。 測定したエミッション
隙間
は 6dB 減少したが、 これは次の計算式、 20 Log (L1 /L2) また
は 20 Log (0.75/0.375) = 20 Log 2 = 6 dB を用いて計算できる。
シールド
私は、20 インチ (約 50.8 センチ) のピグテールで終端したケー
ブルの 200V/m までの試験を見たことがある。 この場合、 エネル
ギーは放出せず、反対のことが起こる。 まるでデバイス内部に入っ
図7A.不適切なシールドの終端
てくるエネルギーを生成する受信アンテナであるかのように、 送
信アンテナからのエネルギーはピグテールによって取り込まれる。
200V/m では、 この条件でシステムが放射電磁界感受性に合
格することは有り得そうにない。 (本稿のほぼ最後にあるセクショ
ン 「感受性についてのレッスン」 を参照)
理想的な終端方法としては、 図6に示すように、 棒から球体へ
金属シェル
金属ボディ
の接続に周囲 360 度の接続を使用するとよい。 図6のポイント1
では、 シールドが金属シェルと周囲360度で接触する。 金属シェ
ビニール
被覆
ルは、 ポイント2で交合コネクタへ周囲 360 度接触し、 ポイント3
で交合コネクタとシャーシも同じように周囲 360 度接触する。 こ
シールド
の配置はバーベルモデルを使用した常時接続として可能となる。
バーベルモデルは、 ポイント4と5で示すピグテールとロジックグラ
ンドで妥協できる。 次に、 ポイント1~5におけるエミッションの潜
在的可能性について、 詳細を述べる。
図7B.適切なシールドの終端
通常使用における不適切なケーブル終端
は小さな隙間を作る。 隙間から生じるエミッションについては、 下
図 6 に示す理想的な終端は、 これから説明する5つの方法の
うちどれか1つにより、 ダメージを受けることが多い。
1.金属シェルをシールドに結合させる際の失敗(図6の
ポイント1参照)
きちんと終端させるために、 コネクタの金属シェルはシールドと
接触させなければならない。 図 7A で示すように、 シェルはケーブ
ルのビニール被服によってシールドから絶縁されている。 ビニール
interference-technology.jp
記項番2で考察する。 図7B では、 シェルとシールドの間に直接
接触が可能となるようビニールは部分的に除去されており、 RF
電磁界の制限が継続することになる。
2.プラスチック交合コネクタの使用(図6のポイント
2および図8参照)
プラスチックは金属シェルと金属シャーシ間の電気的接続を
妨げて小さな隙間を作るので、 交合コネクタのボディに用いて
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 7
EMC設計
論理
回路へ
ピグテール
シールド
戻りの経路なし
シャーシ
金属シェル
EMC DESIGN
不適
切なプ
ラス
チック
製コネ
クタ
シールド
隙間
シールド
図9.隙間から発生するRFエミッション
図8.不適切なプラスチック製コネクタ
シャーシ
基板搭載コネクタ
はならない。 交合コネクタは両方とも金属シェルまたは少なくとも
導電シェルを備えてなければならない。
隙間
小さな隙間からはほとんどエネルギーは放出されないように
見えるので、 図6のポイント1および2にある小さな隙間は何の
隙間
ピグテール
問題ももたらさないと結論づけるかもしれない。 このエネルギー
は、 次にワイヤ上のシールドケーブルを通り、 漂遊容量によって
図10A.バルクヘッドのないコネクタを使用する不適切な終端
シールドに結合する。 図9の A にある隙間のせいでエネルギー
が球体に戻る経路がないので、 エネルギーはシールド上に流れ
て、 放射する。
3.基板搭載コネクタで隔壁非使用(図6のポイント3
参照)
金属製の取付耳
シャーシ
基板搭載コネクタ
設計でよく見られる最大の妥協は、 シャーシへ接触していな
い基板搭載コネクタの使用である。 図10Aに示すこの状態は、
実質的にシールドからシャーシへのピグテールである。 適切に
取り付けるには、 コネクタに付いている金属性の取り付け耳で図
金属製の取付耳
10B のようにシャーシに終端する。
4.ドレインワイヤの不適切な使用(図 6 のポイント4
及び図11参照)
図10B.コネクタ上に金属取り付け耳で適切に終端
図11で示すように、 シールドがコネクタの金属シェルに接続し
てない場合、 シャーシにシールドを終端するのにドレインワイヤ
が不適切に用いられることがある。 ドレインワイヤは図4と同様
のピグテールを形作るので、 特に高い周波数に対して、 この配
置は避けなければならない。 このピグテールはコネクタのピンを
シャーシ
金属
シェル
通り放射源からシールド上に出たエネルギーを取り込み、 結合
する。
ビニール被覆
隙間
ピグテール
コネクタピン
5.ロジックグランドへドレインワイヤの使用(図6のポ
イント5と図12参照)
シールド
ドレインワイヤ・ピグテール
図12で示すように、シールドからのドレインワイヤは、直接ロジッ
クグランドに接続している。 これはピグテールを形成するので不適
切であり、 電源経由を除いてシャーシに達することはないかもし
れない。 このような取り付けにおいて、 ロジックグランド回路はピ
図11.ドレインワイヤの不適切な使用
グテールに RF 電流を連続的に注入している。 この間接的なルー
8 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
Sweeney
トによって、 全事例中で最も長いピグテールができ、 本稿中で最
悪のケースとなる。
ピグテール
閉じ込め方法としてのフィルタ
次に記述するのは、 エミッションを増やすことなく連続した金属
シールド
シャーシグランド
シールドをバーベルモデルの一部分から取り外すことができる3つ
回路基板
1.シールドされていない周辺機器をシールドケーブルで
フィルタする
完全にシールドされた PC などのシステムは、 シールドが不十
ドレインワイヤ
ロジックグランド
図12.ドレインワイヤを使用した最悪のケース
分なプリンタのようなデバイスに接続することができ、 その状態で
もエミッション要求に合格する場合がある。 これは図13で示すよう
に、 シールドと内部導体間の静電容量によって説明できる。 エネ
ルギーがワイヤに沿ってシールドケーブル内を通過する間、 その
エネルギーは連続的に取り除かれて、 シールドによって PC に戻
される。 このコンデンサは RF を取り除く十分なフィルタの働きをす
ることが多く、 シールドしていない周辺機器がエミッション要求に
適合することを可能にする。 これは、 発生源側が良く終端されて
フィルタとして用いることで達成される。 このコンデンサにより、 意
図される通信を通し、 RF の球体へのショートが可能にならなけれ
ばならない。 コンデンサは、 例えば個別コンデンサ、 各接点にコ
ンデンサが組み込まれたコネクタまたは貫通コンデンサなど、 い
くつかの種類を用いることができる。 この3種類のコンデンサの中
で、 最も品質が高いのは貫通コンデンサである。 コンデンサの選
択は、 フィルタをかける周波数、 接続の数、 コストを考慮して決定
接続されている場合だけ機能する。
する。 前述のように、 コンデンサによるフィルタは、 信号ワイヤや
電源コードに使うことができる。 コンデンサのリード線の長さが重
2.コンデンサによるフィルタ
バーベルの類似性について調査する次のステップは、 完全に
モデルから棒を取り外すことであり、 その結果ケーブル上のシール
ドを除去する。 全ての RF が球体から離れる前にワイヤから除去
されるなら、棒を取り外すことができる。 球体の信号出口にあるフィ
ルタによって、 RF 信号は取り除くことができる。
図 14 は、 非シールド ・ ケーブルに RF が乗っていることを表
す。 RF 電磁界の閉じ込めは、 シールドがワイヤの周りにない点ま
で弱体化した。 RF は球体内に閉じ込めることが必要である。 こ
の RF の閉じ込めにより通信を妨げてはならない。 RF の閉じ込め
および通信を可能にするという目標は、 図15に示すように球体の
ワイヤの出口に RF ショート回路を設けることにより達成することが
要であるという点で、 コンデンサのリードはピグテールに非常に似
ていることに注意しなければならない。 コンデンサのリードにはイ
ンダクタンスがあるので、 理想的なリード線の長さはゼロ、 または
可能な限りゼロに近いとされる。 1つのコンデンサで動作しないな
らば、 コンデンサとインダクタを組合せて、 L、 T、 π 型のフィルタ
を作って加えることにより、 問題は解決するはずである。
3.デカップリングによるフィルタ
図16Aに示すように、 集積回路にバーベルモデルを適用する
と、 デカップリング ・ コンデンサで制限されたエネルギーを必要と
する。 図16Bは、 デカップリング ・ コンデンサが集積回路から離
れた場所に設置された場合の、 RF エネルギーの閉じ込めが不十
できる。
このワイヤのショートは、 ピグテールはシールドの拡張であり、
球体に出入りするため RF のショートではないので、通常のピグテー
分になった大きなループ領域を示す。 図16C では、 図16A よりも
デカップリング・コンデンサを集積回路の近くに移動することによっ
て、 RF エネルギーの閉じ込め領域が大きく削減される。
ルと違う。
ワイヤの RF ショートは、 的確に選ばれたコンデンサを出口で
シールドしたPC
シールドして
いない周辺機器
図13.シールドケーブルをフィルタになるよう適切
に使用する
interference-technology.jp
図14.棒またはフィルタを取り除いたバーベル
図15.棒を外し、フィルタ用コンデンサを付けた
バーベル
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 9
EMC設計
の方法である。
実際のシス
それはループに電流が流れることによって生じるので、 ループ
デカップ
リング・
コンデ
ンサ
デカップリング・
コンデンサ
面積に依存する。 電界から取り込まれることを示そうとしたので、
取り込むアンテナ (ピグテール) の面積だけでなく長さも重要で
バーベルモデル
あることが明らかになった。 試験用に有効なループ面積が同じ
図16A.ICの近くにデカップリング・コンデンサがない
EMC DESIGN
ループ
で、 20 インチのワイヤで作ったループで試験を行った。
ループ
図16B.ICの近くにデカップリング・コンデンサが無い場合の閉じ込め領域
ループ
ループ
想定:
ピグテールは20インチ(50センチ)
戻りは1 mm離す(絶縁の厚み)
ループ面積は、0.1 cm×50 cm = 5 cm2
ここでは50 cm × 1 mm のループを使用する
使われる負荷は測定器の入力インピーダンスである (5
0オーム)
図16C.ICの近くにデカップリング・コンデンサがある場合の閉じ込め領域
まとめ
今日、 主な EMC 適合性問題はケーブルからの放射である。
図16.閉じ込め領域に対するデカップリングの位置
如何に RF エネルギーを閉じ込めるか理解できるモデルが開発さ
れてきている。 この閉じ込めは、開回路や隙間、ピグテールによっ
感受性についてのレッスン
て影響されることがある。 バーベルモデルは、 シールドケーブル
過剰なエミッションの緩和 (Medicating Excessive Emissions)
の適切な終端、 ワイヤのフィルタ、 フィルタ用コンデンサの追加、
のオリジナル論文は、 エミッションはループ中を流れる電流によっ
集積回路の電源とグランドのデカップリングによって、 エネルギー
てどのように発生しているか、 そしていかにエミッションレベルが電
がいかに閉じ込め可能かを示すものである。 システムを分析し必
流レベルのみならずループ面積にも大きく依存しているかについて
要な調整をするためにこのプロセスを使用するならば、 RF 放射
の説明であった。
に関する問題は少なくなる (図20Aと20Bを参照)。
オリジナル論文が書かれて以降、 このコンセプトは長年にわた
実験データは、 ワイヤの長さとループ面積が両方とも1/2に変
り数千人に紹介されたと思われる。 記憶にある非常に悪い状況の
えられると、 エネルギーの取り込みが 6dB 変化する (表1と表2
1つに、 200V/m に対処することを要求された製品がある。 製品
の 200MHz で比較 ) 実験データが得られる。
が誤動作したとき、 その製品を調べると、 いくつかの通信リンクの
実験データでは、 同じループ面積だが、 ワイヤ長によって劇的
ための20インチ (約51センチ) のピグテールが見つかった。 「20
に違うことも示された。 このデータから、 表3の 200MHz で示すよ
インチのピグテールに何ボルトが誘導されているか?」 という疑問
うに、 長いピグテール (20インチ) では、 200 V/m の感受性試
は常に私が考えていたことだった。
定量的実験を用いてバーベルコンセプトを感受性に適用したい
と長年考えていたので、 同じ領域で異なるワイヤ長を用いた2つの
試験を実施し、 感受性試験時で得られた実際の電圧値を示す3
つの実験のデータを以下に提示する。
1.5 cm × 1 cm の四角いループとして、20インチのピ
グテールを使って誘導電圧を測定
想定:
ピグテールは20インチ(50センチ)
戻りは1mm離す(絶縁の厚み)
ループ面積は0.1 cm×50 cm = 5 cm2
ここでは5 cm × 1 cmのループを使う
使われる負荷は測定器の入力インピーダンスである(50オーム)
図17.試験に使用した2つのループ
2. 長さ 50 cm のワイヤを 20 インチのピグテールとし
て使用し、戻りを 1 mm 離す(図19参照)
同じループ面積だが、 ワイヤの長さは大きく異なる。 ピグテー
図18.1cm × 5 cmのループと電界センサ
ルを使うオリジナルの考え方はエミッションを示すことであった。
10 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
Sweeney
表1、 表2からわかること :
表1: 5 cm2 (5 cm × 1 cm) のループ内で発生する誘導電圧
周波数
電界強度
(V/m)
アンテナ
距離
誘導電圧
変換器
(dBμV) (ケーブル/減衰器dB)
正味電圧
(dBuV)
Y- 軸
10MHz
200
1 メートル
89.44
0.4
89.84
Z- 軸
10MHz
200
1 メートル
93.55
0.4
93.95
Y- 軸
30MHz
200
1 メートル
92.3
1.3
93.6
Z- 軸
30MHz
200
1 メートル
92.49
1.3
93.79
Y-軸
100MHz
200
1 メートル
93.6
22.3
115.9
Z-軸
100MHz
200
1 メートル
93.8
22.3
116.1
Y-軸
200MHz
200
1 メートル
95
23.4
118.4
Z-軸
200MHz
200
1 メートル
95
23.4
118.4
A. コネクタに誘導された電圧は、89.84 dBμV ~
118.4 dBμV、真数で表せば0.031 V ~ 0.831
Vである。0.83Vまでの電圧が誤動作を起こし
たであろうことは想像に難くない。
B. Z 軸、2 0 0 M H zの条 件で、5 c m 2 のル ープ を
2 . 5 c m 2 のル ープと取り替えたと き、電 圧は
118.4 dBμV から112.4 dBμVとなり、論文で
記述されたとおりにちょうど6dB低下した。
表2: 2.5cm (2.5 cm × 1 cm) のループ内で発生する誘導電圧
2
軸
周波数
電界強度
(V/m)
アンテナ
距離
誘導電圧
(dBμV)
変換器
(ケーブル/減衰器)
正味電圧
(dBuV)
Y-軸
200MHz
200
1 メートル
89.1
23.4
112.5
Z-軸
200MHz
200
1 メートル
89
23.4
112.4
表3からわかること :
A. コネクタに誘導された電圧は101.2 dBμV ~
表3: 5 cm2 (50 cm × 0.1 cm) のループ内で発生する誘導電圧
軸
周波数
電界強度
(V/m)
Z-軸
10MHz
200
137.6 dBμV、真数で表せば0.115 V ~ 7.59
アンテナ
距離
誘導電圧
(dBμV)
変換器
(ケーブル/減衰
正味電圧
(dBμV)
1 メートル
61.4
39.8
101.2
Z-軸
30MHz
200
1 メートル
85.7
40.6
126.3
Z-軸
100MHz
200
1 メートル
96.1
41.5
137.6
Vである。7.59Vの電圧が殆どの回路に誤動
作を起こすだろうということは想像に難くない。
B. 長いワイヤが実際、非常に良好に電界を取り
込むことがわかった。約20 dB高い。
験に合格することは期待できないとの結論になる。
長さ50 cmのワイヤと
1 mm間隔の戻り
理想的なピグテールの長さは 「ゼロ」 だと覚えておくこと。
謝辞
本稿のバーベルについての考え方は、 E. F. Vance 氏と F. M.
Tesche 氏による論文 「Shielding Topology in Lightning Transient
Control」 (NASA Conference Publication 2128 FAA-RD-80-30)
を以前に紹介した Werner Graf 博士との個人的会話から発展さ
せたものである。 5 cm2 と 2.5 cm2 を使う実験については D.L.S.
Electronic Systems 社の Tim Lusha 氏に感謝申し上げる。 ■
図19.Z軸内に1 mmの間隔で戻る長さ20インチ(50センチ)のル
ープ
モニタ
コンピュータ
図20A.現在の解決策
図20B.製品はFCCクラスAとクラスBの限度値に適合
interference-technology.jp
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 11
EMC設計
軸
保存版ガイドブック2016
2015 年3月号 掲載
EMC DESIGN
EMCの基本:
電子デバイスのEMIを抑制する設計
Tim Fornes, PH.D.
S e nio r St af f S cie n tis t , C h e mic al
Research
LORD Corporation
磁妨害 (EMI) は、 外部からの
電
EMI シールド方法
電磁波に起因して、 電気デバイ
電気デバイス メーカ ーは、 EMI から保
スの通信に不要な混乱をもたら
護するのに以前から金属筐体を使用してい
す。 このような外来電磁波または放射は、
る。 アルミニウム、 鋼鉄、 ニッケル、 ニッ
デバイスの正常な動作を妨害する電流を
ケル鉄合金などの材料で作られる金属筐
誘導する。 簡単に言えば、 EMI は、 外来
体は、 電子デバイスのまわりに、 比較的
信号と希望信号の間に侵入した結果、 も
厚くて非常に導電性の高い境界を作り出し
たらされたものと言える。 EMI によりデバ
て、 破壊的な信号を反射し吸収する。 金
イスは断続的に動作不能に陥る可能性が
属筐体はうまく EMI を最小にするが、 多く
ある。 この中断は、 携帯電話の会話を妨
の電子デバイスに求められるよりも重量が
げるような深刻なものではない場合もある
ある。
が、 例えば航空機の航行用電子システム
軽い構造材料を探して、 多くのメーカー
は一瞬の中断でも危険となるなど、 運送
は、 熱可塑性物質を使うようになってきて
業分野では深刻な結果になることもある。
い る。 熱可塑性樹脂の筐体は、 簡単に
電子デバイス設計時には、 メーカーは
短期間に製造できる。 金属の場合、 筐体
電磁妨害を防止するために地域や世界的
は型打ちしなければならないが、 これはコ
な規則に従わなければならない。 何らか
ストと時間がかかるプロセスで、 複雑な形
の電子部品を搭載したデバイスはほぼ全
に即応できない。 しかし熱可塑性物質は、
て、 外来の放射電磁界に影響されるので、
複雑な形でも高いスループットで簡単に射
メーカー側は回路接地およびデバイスの
出成形することができる。 軽量な設計と生
シールド方法を開発してきている。
産スピードの組み合わせにより、 メーカー
にとってはプラスチック筐体の製造コストが
金属筐体より安くなる。
12 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
Fo r n es
法だとプラスチック射出成形後の導電性コーティングは不要にな
るが、 結果としてできた筐体は、 無電解メッキまたは高密度導
電性コーティングを用いたどちらの方法よりもはるかに導電性が
低い。
導電性の高いエポキシ樹脂コーティング
持つ熱可塑性プラスチック用としてメッキ工程固有の安全 ・ 環
スプレーでコーティングした
プラスチック筐体(225グラム)
境 ・ コスト問題がない導電性コーティングを模索している。 この
アルミニウム筐体
(470グラム)
要求に合う非常に導電性の高い新しいエポキシコーティングが、
市場に出回っている。 さらに、 こういったコーティングは従来の
図1。エポキシ・コーティングは非常に導電性が高く、従来の筐体の重量比で、ア
高密度コーティングでよく見られるシールド効果と性能特性のト
ルミニウムのようなシールドレベルを可能にする。この写真は、アルミニウム筐体
レードオフを解決する。 新しいコーティングは、 エポキシ樹脂や
(右)を新しいエポキシ・コーティングをスプレーされた熱可塑性樹脂筐体(左)
に変えることによって実現される重量削減を示す。
硬化剤、 導電性充填剤の組み合わせを基にして、 硬化過程で
特殊な構造に自己組織化できる能力がある。 この構造は、 本
他方、 プラスチックは本質的に電気絶縁体なので、 EMI 保護
に対して効果は全くない。 この問題を解決するため、 メーカーは
無電解メッキを使ったり、 導電性材料を大量充填した塗料でプラ
スチックをコーティングしたりする。 こうすればプラスチック部分は
EMI シールドに変化する。
無電解メッキは、最終的にはプラスチック上に薄い純金属をコー
ティングする集中的かつ多段階の科学的プロセスである。 無電解
メッキは純金属コーティングにより高いシールド ・ レベルを実現す
るが、 そのプロセスは環境に悪影響を与え時間もかかるので、 結
局は労働集約的でコスト高になる。 具体的には、 プラスチックは
溶媒によって最初に膨張し、 そして、 硫黄とクロム酸のような強い
酸でエッチングされる。 エッチングの後でパーツを洗い流して、 表
面に触媒を加え、 最後に還元反応によって銅またはニッケルなど
の金属を表面にコーティングする。 必然的に洗い流し処理を伴う
この工程は、 作業者および環境に有害である危険な化学薬品を
使用するため、最近詳細な調査を受けた。 環境規制強化のため、
シールド設計者はプラスチックに対する代替コーティング技術にシ
フトしつつある。
安全性と環境問題に加え、 無電解メッキは、 露出している端
や角、 基材中の応力が高い部分で特に、 接着力の限界を露呈し
やすい。 そのような状況では、 金属コーティングが剥がれ落ちる
ことがあり、 そうすると電磁波が貫通できる穴ができてしまう。 こ
の問題は、プラスチック基材と金属コーティング間の特性 (例えば、
剛性、 伸び、 熱膨張係数) の不釣り合いによって悪化する。
金属筐体と無電解メッキに代わるものとして、多くのメーカーは、
熱可塑性樹脂筐体に高密度の導電性コーティング材を吹き付ける
方法を使用している。 コーティングにはポリメチルメタクリレートや
エポキシなど熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂から成っていて、 つま
り各々が銀、 銅、 銀と銅の合金、 ニッケル、 またはそれらを組み
合わせた混成物などの金属粒子を多く混ぜたものである。コーティ
ングは高いシールド効果を提供するが、 高密度なので、 例えば粘
着力や柔軟性、 重さ、 原価などを犠牲にすることがある。
EMI 耐性のある熱可塑性プラスチックを作るもう 1 つの可能性
は、 熱可塑性材料に電導性の粒子を充填することである。 この方
interference-technology.jp
質的に非常に導電性が高いものの、 現実的にはまだ大部分が
重合体である。 これは最終的に、 EMI シールド効果が非常に高
い軽量コーティングになる。 具体的に言うと、厚さが25ミクロン(1
mil) の自己組織化コーティングは、 広い周波数範囲で 85 dB
以上のシールド効果を提供する。 その重合性質のため、コーティ
ングは粘着力と柔軟性において高いレベルを提供することもでき
る。 そのうえ、 このコーティングは、 電子機器が曝されることの
多い高温や湿気、 塩分を含む環境に対して耐性を示す。
この効率的な性能は、 危険な無電解メッキ工程とほぼ同じ厚
みで少なくとも 85dB 以上のシールド特性を持つコーティングに
取り替えることを望むメーカーにとって特に重要である。 さらに、
前述した自己組織化コーティングと同じ密度と厚みの従来のコー
ティングでは、 85dB 以上の EMI シールド効果を得られない。 こ
のことを考慮すると、 メーカーは原価および/または重量の制
限のために、 厚いコーティングを用いるのを良しとしない。
コーティングの特徴的な基本的化学的性質により、 材料は
コーティング、 接着剤、 フィルムなど有用な製品形態に適応でき
る。 スプレーコーティングとして、 手動または自動装置で、 簡単
に使用可能である。 スプレーハンドルは、 ちょうどペンキ塗りの
ように扱うことができ、 量の多い低圧の (HVLP) スプレーガン
を使用することにより、 非常に複雑な熱可塑性プラスチックにも
適用でき、 各部の厚みを正確に制御するためにロボット ・ システ
ムを使ってコーティングすることができる。 また、 室温で無期限
に保管可能である。
室温安定性またはコーティングの潜在的な性質により、 基本
的化学を駆使して液体である必要性のない接着剤が実現、 つ
まり EMI シールド特性以外は従来の接着剤として使用可能にな
る。 このベース材料のフィルム形態では、 かなり大きなサイズ用
のシート状フィルムになる。 この形態は、 組立中の航空機の広
い面に使用でき、 EMI および落雷からも保護するという点で、 特
に航空宇宙産業に有用である。 最後に、 機械的な要求事項に
もよるが、 ベース材料はスプレー、 接着剤、 フィルムどの形態で
あれ、 硬いあるいは柔軟性のある用途に適正化される。
修理方法としては、 非常に伝導性の良いエポキシコーティン
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 13
EMC設計
電子機器メーカーは、 無電解メッキと同等のシールド性能を
グ材を加圧したスプレー缶を利用でき
る。 このシンプルな方法により、スプレー
ガン、 圧縮空気システムまたはホースラ
インを必要とすることなく、 現場作業で
のコーティングが可能になる。 例えば、
EMC DESIGN
筐体またはパーツが現場で擦り減った
り傷ついたりした場合、 ダメージを受け
た部分にスプレーするだけで手直しが
できる。
航空機外部のエポキシコーティング
の一部が剥がれることが原因でダメー
ジを受けた場合、 修理技術者は損傷
図2.非常に導電性の高い接着剤のフレキシ
ブルなバージョンは、厚さ1mmの円形に硬化
した。
図3.プラスチック基材の上に非常に導電性
の高いエポキシをスプレーでコーティングし
箇所または修復する部分の表面をコー
ティングするのにスプレーすればよい。
メーカーは、 導電性の高いエポキシ
コーティング用に周波数範囲が非常に
広い金属と類似した働きをするポリマー
材料を用意している。 こういったコーティ
ングは一般的に産業全般にわたる用
途で、 無電解メッキを施したプラスチッ
クや大量充填された高性能アクリルシ
わずかなコストで、
銀に匹敵する
シールド性能と、
それを上回る
対腐食性を実現
ステムより50パーセント以上のコスト削
減を実現で きることがわかった。 メー
カーが設計時に軽い材料を使うことが
増えるにつれて、 導電性の高いコーテ
ティングは業界が期待する効率的で経
済的な EMI シールドを提供できるよう
になる
Tim Fornes 博士は、LORD社化学研究部
のシニア・スタッフ・サイエンティストで、電子
機器、航空宇宙、自動車産業用などに、新し
いポリマー系接着剤やコーティングの設計、
開発、特性評価、モデリングを担当している。
審査を通った19の技術的出版物を著し、6つ
の特許(取得済2、審査中4)の共同開発者で
もある。ノースカロライナ州立大学の化学工学
の学位(B.S.)とテキサス大学オースティン校
の学位(M.S.および博士)を取得している。■
E•Fill
新しい EMI / RFI 導電シールディングフィルタ材料
E-Fill 2702 は、鋳型や突き出しガスケット用途の適した
ニッケルグラファイト材 (D50 = 38 µm) です。
この材料でサイズの大きなものは柔らかいガスケットの
製造に有用です。
直流電気による腐食が懸念されるような不利な環境で使
われるシールドガスケットには、ニッケルめっきアルミ
ニウムのフィラー材をご利用ください。
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14 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
保存版ガイドブック2016
Hacker
2014年9月号 掲載
EUTからの信号をクリーンに伝送するには
Jörg Hacker
Engineer
Langer EMV-Technik GmbH
妨
1.2 妨 害 さ れ た 信 号 のトレ ース
バック
にオシロスコープを使うことは、
EMC の実 践は、 多くの場合複雑であ
まれである。 RF 照射やバースト、 ESD 試
る。 EUT 内の妨害は、さまざまな動作モー
験中における電波暗室の複雑な環境条件
ドを経由し、 いろいろな場所で同時に起こ
は、 測定エラーや EUT への不要な妨害を
りうる。 エラーを効果的に除去するには、
招く。 EUT への修正は、 したがって、 「試
EUT からの妨害された信号を分析すること
行錯誤」 によって行われる。
が非常に重要である。 これは、 デジタル ・
害に対するイミュニティ試験中、
EUT からの信号をモニタするの
こういった問題は、 小型で妨害に強い
測定システムを使って、 注意深く測定すれ
ば克服できる。 機能不全の原因は、 この
方法で見つけるほうが早い。
アナログの両方の信号の妨害に関係して
いる。
こういった測定によって、 妨害の現場で
直接 EMC 対策の効果を検討するだけでな
く、 エラーの原因に関して然るべき結論が
1.測定の目的
得られる。
1.1 妨害の検出
妨害は、 従来のやり方だと EUT を観察
することによって検出される。 この観察に
2.測定用機器の要求事項
2.1 一般要求
潜む主観的な性質は、 不正確さにつなが
妨害注入、 例えばバースト試験ステー
る。 自動の試験手順は不可能である。 電
ション上の電源インピーダンス安定回路網
子表示モニタまたは EUT からの出力信号
を使用して、 電流、 電圧、 磁界、 電界な
測定により、 この状況は改善できる。
どの物理量を EUT 内に発生させる。 電磁
界の空間分布や強度、 方向は、 EUT と測
定ステーションの金属性システムの幾何学
interference-technology.jp
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 15
SHIELDING
試 験
EMCの実践 – 妨害下の測定
測定電線
供給電線
バースト
発生器
TESTING
2 pF
直流電気的に
絶縁された
プローブチップ
オシロ
スコープ
追加電流
妨害電流
図1.直流電気的(galvanically)に絶縁された
プローブチップを通る妨害電流の流れ
的な構造によって、 決定される。 EUT の複雑さを考えれば、 それ
するには、 その帯域幅は狭いので、 大部分のアナログ ・ システム
についての予測はほとんど不可能である。
はバースト /ESD エラーに耐性がある。
こういう物理量も、 プローブチップや測定線のような測定機器に
高い周波 数の電磁界は、 EUT の表面や 接 続 ケーブル を 経
作用するが、 読み取りエラーの原因になることは許されない。 測
由して、 EUT に結合する。 これらの電磁界は、 信号 線と GND
定機器は、 どんな電磁界強度に耐える必要があるのか?
システムに 妨 害電 圧を 発 生させる。 RF 妨 害波の変 調 は、 特
ESD の場合、 全妨害電圧が、 金属筐体とその筐体と絶縁され
に 問 題 で あ る。 規 格 で は、 搬 送 波 を 1 kHz で 80% AM 変
た PCB の間に存在することが可能である。 距離 5 mm では、 5
調 する よ う に要求 して い る。 この変 調 RF 信号 は、 例 えば オ
kV の ESD で 1 kV/mm の電界、 すなわち 1 MV/m の電界を発生
ペア ンプ内 に あ る PN 接 合 で 復 調 さ れ る。 結 果と して周波 数
させる。 EUT の中を流れる妨害電流は、 数ミリ ・ テスラの範囲で、
1 kHz の電圧が発生し、 必要な信号の上に重なってアナログ信号
磁界を作り出す。
経路へ持ち越される。
RF 照射のための電界強度は試験要求に従って非常に低く、
2.2.2 測定システムの帯域幅についての要求
最高でおよそ 200 V/m である。
こういう状況下でエラーのない測定を成し遂げるために、 EUT
トラブルシューティングとしては、 EUT で復調された 1 kHz の信
と測定機器は直流電気的 (galvanically) に絶縁されなければな
号を測定すれば十分である。 RF搬送波そのものは、 測定の必
らない。 そうして初めて、 EUT 内部の妨害波電流の通り道は許さ
要はない。 これは、 小さくて低コストの測定システムが使えること
れないほどの変ることはないだろう。 ここでは例えば、 一次側と二
を意味する。 A/D コンバータ搭載の小さなプローブチップの助け
次側の間に数 pF の寄生容量をもった直流電気絶的絶縁に使わ
を得て、 1 kHz のエラー信号はデジタル光信号に変換され、 EUT
れるオプトカプラーに注意しなければならない。 この容量により許
からフィードバック無しで光ファイバケーブルを通って送られる (図
容できない妨害電流 (図 1) がどのくらい流れるかは、 EUT 構造
2)。
EUT の測定信号は、 通常、 RF 電圧で重畳される。 測定時に
次第である。 寄生容量が全く存在しない状態はほとんどないの
で、 光ファイバを使って測定するのが最適である。 また、 追加ケー
ブルによる妨害電磁界の変化は
すべて無くなる。 測定される信号
受信機
OE 110
を光信号に変換するプローブチッ
プが必要であるが、 チップ自体は
非常に小さいので、 妨害電磁界
センサ S21
光ファイバケーブル
を許容できないほど変形させるこ
とはない。
2.2 アナログ信号の測定
2.2.1 電磁妨害のメカニズム
アンテナによる RF 照射と電線
による RF 結合は、 アナログ ・ シ
ステムにとって特に重要である。
こういった短い妨害パルスを検出
図2.光ファイバで信号伝送するシステム
16 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
Hacker
は、 これらの電圧はプローブチップに印加される、 すなわちプロー
ブチップは、 最高 200 V/m までの電界強度の妨害に耐えなけれ
ばならない。
▪▪
▪▪
▪▪
2.2.3 測定範囲
センサ
センサの接続
ソケットをEUTのPCBまたはICに
銅線で付ける。
EUTまたは電池は電源として働く。
ソケットとセンサをグランドプレー
ンの近くに準備。
アウトプット
光ファイバ付き
実際に必要な測定範囲は、 5 mV (オーディオ機器とセンサ)
から 50 V (オートメーション機器、 ASI バス、 車両オンボード配
HCMOS
スイッチング閾値
さいサイズ、 直列伝送の伝送能力およびプローブチップへの引き
込み電力によって測定範囲が決定される。
ソケット:
EUTに接着剤で
固定
2.3 デジタル信号の測定
2.3.1 妨害のメカニズム
バーストと ESD のような短い妨害パルスは、デジタル回路にとっ
て特に重要である。 全ての IC 入力は、 そのダイナミック入力スイッ
図2a.センサのEUTへの接続方法
チ閾値で入力の妨害電圧パルスを評価する。 そのスイッチ閾値を
超えると、 このパルスは論理信号に変わり、 プログラム ・ シーケ
ンスへ送り込まれる。 そして、 EUT にもよるが、 ごく限られた機能
閾値が再現される。 光パルスはこのように 「EUT 内部の試験回
エラーのきっかけとなる。
路上で、 デバイスの機能を妨害するのに十分に大きい妨害パルス
EUT の妨害イミュニティは、 本質的には IC の感度によって決
が発生した」 ことを意味する。
まる。 感度パラメータの定義は、 妨害プロセスに対処するために
重要である。 それは IC 技術 (HC、 AC、 VHC など) や回路寸
2.4 潜在力の測定
法の減少に依存するので、 IC メーカーに依存することになる。 最
光ファイバケーブル上に信号を送ることにより、 これらのシステ
近の IC 系列全ての IC 感度の分布範囲は、10倍以内である。バー
ムは潜在力測定にも原則として適用できる。 唯一、 確認すべきこ
スト・イミュニティの結果として生じる逸脱は、 kV 範囲内になりうる。
とは、 プローブチップの電源は例えばバッテリー・モジュールを使っ
てポテンシャルフリーとなることである。
これは、 例えばパルス ・ インバータの中間回路電圧の過渡現
2.3.2 測定システムについての要求
プローブチップを十分に小さくして EUT を妨害しないようにする
象の測定に役立つ。
と同時に、 ある電界強度で高速妨害電圧パルスを光ファイバケー
ブル経由でエラーなしに送信できるよう妥当なコストで作ることは
むずかしい。 しかし、 特別なプローブチップ (以下センサと称する)
を EUT に導入することは可能である。 このセンサは、 高感度で
知られるデジタル IC を有する。 この IC は、 電圧パルス (または
3.測定方法
3.1 妨害測定
基準妨害閾値は、 センサと導電プリントパターンを使って EUT
上に作られる (図 3 参照)。
妨害電圧パルス) のダイナミック入力閾値を認識すると、 定義済
導電プリントパターンで、 EUT のグランドシステムに関するセン
みの光パルスを放出する。 このようにして、 電子デバイスの妨害
サタップの電圧差は、 グランドシステムに流れる妨害電流に起因
している。 センサは導電プリントパターンを用いて、 グランドシステ
ムの妨害電流に起因する EUT グランドシステム上の電圧差を引き
光ファイバケーブル
出す (図3)。 妨害閾値を超えると、 センサは光ファイバケーブル
上に光信号を放出する。 これは、 対策を効果的に評価する迅速
EMCセンサ
基準導電プリントパターン
な方法である。
この方法は、 主にコネクタ ・ システム、 シールド、 フィルタ、 漏電
電流経路などの寸法設定に使用される。 これは開発段階において
も使用でき、そのときには EUT 自体は動作していないが、筐体やフィ
ルタを設計するための情報として前もって必要とされる。
バス信号の領域
3.2 静止信号測定
トラブルシューティングの際に、 EUT の瞬間的な状態を知るた
め特定の信号をモニタすることは役立つ。 INT や RESET、 PFI の
図3.グランドシステムに対する電圧の違いを測定
interference-technology.jp
ような信号は興味深い。 また、 その信号はセンサによって EUT
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 17
試 験
入力E:
線システム) の間である。 高いダイナミックレンジが好ましい。 小
オシロスコープによる監視
から光ファイバケーブルを通して送られる。 カウンタ(事象カウンタ)
センサ S25
バースト発生器
は、光パルスを合計することができ、そのためメモリとして役に立つ。
つまり、 ディスプレイの継続 ・ 集中監視はもはや必要ではないとい
うことであり、 まだ測定が続いている間でも自由に変更できる。
妨害源は、 (光ファイバを通して) オシロスコープで信号をモニ
タすることによって、 把握できることが多い。 図5では、 プロセッ
TESTING
サの RESET 線上の短い妨害パルスがこのラインへの直接妨害を
意味する一方、 ミリ秒レベルのパルスは RESET 部品上の妨害に
起因する。
3.3 周期的信号測定
3.3.1 EUT の監視
妨害イミュニティ試験の間、 EUT がまだ動作しているかどうか
グランドプレーン
GP 23
EUT
光信号受信機 光ファイバケーブル
図4.光ファイバケーブルを用いた信号測定
について、 決定できないことがよくある。 例えば、 コントローラが
図4.
ずいぶん前から壊れているのに、 液晶ディスプレイが依然として正
センサ S31
しくデータを表示している場合もある。 EUT からの特徴ある信号
の送信は、 このような場合に役に立つ。 例えば、 チップセレクト
セットされた持続時間に対応してRESET
制御機信号から見える、パルス磁界から
RESET制御器内への妨害
5ボルト
などの信号はプロセッサがまだ動作していることを示す。
入力
グランド
3.3.2 信号監視
部品からの信号
例:RESET
約50 nsの狭いパルスから見える
RESET線内の電界妨害による
RESETトリガ
例えば、妨害がバス・システムに結合している場合、オシロスコー
プで妨害パルスを検出することは可能である。 測定された信号の
パルス幅でトリガーをかけ、 光ファイバを経由するセンサを用いて
図5.センサS31を用いたRESET監視:センサICは交換可能、つまり過
負荷の場合は壊れたICを使用者自身で交換可能
測定が実施される。 役に立つ信号のパルス幅は、 妨害パルスよ
り一般的に大きい。 オシロスコープにこの様なトリガーオプション
がない場合、 またはデータと妨害信号の長さがほとんど等しい場
り当てられる。 したがって開発者は、 例えば RESET 後のシステ
合、 バースト検出器を使って、手動で妨害のトリガーをかけられる。
ム起動中に特定のパルス ・ シークエンスを認識し、 EUT の現在
の動作状態を推定することができる。 このシンプルな分析システ
3.4 稼働中の動作分析
ムを使うイミュニティ試験の際、 例えば、 妨害が原因でシステム
がリスタートしているのか、 あるいはデータが正常ではない周波
バス ・ システム上のデータは、 EUT の動作状態を示すことが
数でデータが再送信されているのか、 見分けることができる。
よくある。 そのような場合、 オシロスコープやロジックアナライザ
上のデータを正確に分析するのは一仕事である。 簡単なオプショ
3.5 アナログ信号
ンの 1 つは、 データの流れをカウンタで監視することである。 も
ちろん、 変化するデータ内容とカウンタとデータパケット間の同期
アナログのデータ収集とデジタル処理を使用するシステムでは
不足を考慮すれば、 カウンタで常に一定の数値が得られるわけ
特に、 妨害がアナログ量にあるのか、 デジタル処理においてな
ではない。 とはいえ、 主に特定の動作状態には特定の数値が割
のか確かめることが重要である。
図6は、 入力に RF が結合したオペアンプの出力電圧を示し
ており、1 kHz の信号が復調されて増幅されている。 この復調は、
事実上あらゆる pn 接合部で起こりうる。 妨害の程度は、 復調
された妨害電圧を EUT 自体が増幅する大きさによって、 影響を
受ける。
4.要約
光ファイバ技術および小型で妨害に強いセンサを使えば、 妨
害波イミュニティ試験中に、 フィードバックやエラーなしに、 EUT
内の信号を測定することがで きる。 デジタルシステムの場合、
EUT の動作を評価して妨害を検出するのに多くの場合、 単純な
カウンタで十分である。 ■
図6.オペアンプ出力で復調された1 kHz妨害信号
18 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
保存版ガイドブック2016
Mulline aux
2015年1月号 掲載
Tom Mullineaux
RF Engineer
R
F 工学の観点から冷静に忌憚の
ビューを組み立てる、 とする。 では、 関心
ない意見を言えば、 自動車用放
のある部分の名称変更から始めよう。
射試験セットアップは、 供試機器
電磁界放射要素
(EUT) のケーブル ・ ハーネスが大きな銅
ケーブル ・ ハーネスと銅板の配置を強
板の上に浮かせた状態で送信部の役割を
調表示し、非常に簡略化した試験セットアッ
し、 巨大なアンテナが試験室の床近くに、
プのレイアウトを図1(a)と図1(b)に示す。
一部が銅板の陰になって設置されて受信
2つの図は、 長さ2メートルの EUT ケー
部を構成している、 という奇妙な送信部と
ブル ・ ハーネス (黄色い線) が、 絶縁支
受信部の配置である。
柱で銅板の上5センチに保持されているこ
デザインレビュー ということで、 本稿は
とを示す。 これを、 電磁界放射構造 (FEF:
ペアで設計されたハーネスとアンテナの動
Field Emanating Fixture) と称する。 試験
作を吟味する。 試験後、 特に電磁界放射
に必要な LISN などの補助機器や代表的
の左右対称性、 すなわちアンテナ照射の
な負荷は図 1 (a) の点線の左側に示して
左右対称に関して可能と思われる改善を
いる。 これらはサポート要素に過ぎないと
提案する。
見なし、 点線の右側部分に集中することと
1
する。
大前提の設定
読者が長年にわたる先入観に惑わされ
interference-technology.jp
電界センサ(図2)
ず、 一般的な考え方として役立つように、
バイコニカルアンテナの位置と近傍は、
各パートを機能に基づく名称とする。 また、
一般的に考えられているようにそれがアン
課題が適切な長さの記事に収まるよう、 1)
テナとして動作しない (もはやドーナツ型の
レビュー を試 験システムの送信部と受信
空中線指向性パターンなどではない) こと
部に制限する 2) 規則と仮定を用いてレ
を意味するので、 不規則な負荷や照射を
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 19
SHIELDING
試 験
自動車用放射エミッション試験設備の
デザインレビュー
EUT
(RFノイズ源)
EUT
(RFノイズ源)
電磁界放射構造
造
ポ
部 ート
品
構
サ
終端抵抗器
界
TESTING
放
射
グ
ラ
ン
ド
帯
銅 板
電
磁
図1b:簡略化された電磁界放射構造(FEF: Field Emanating Fixture)を
正面から見た図
ハーネスから放射していると仮定する。
セットアップには、 2つの鍵となる役割がある。 第1の役割は、
図1a:簡略化された電磁界放射構造 (FEF: Field Emanating Fixture) を
上から見た図
EUT によってハーネス上に注入された RF ノイズすべてを RF 電
磁界として放射することである。 第2は、 放射された電磁界強度
受ける垂直導体の棒の配置として単純に考えることができるという
を測定することである。
議論がありえる。 ゆえに、 最も広い解釈を可能にするため、 電界
放射体の役割は、 銅板の上に浮かされた2メートルのワイヤ・
測定のレビューを電界測定に制限し、それを電界センサ (E -Field
ハーネスから成る電磁界放射構造 (FEF) を用いることで実現で
Sensor) と呼ぶことにする。
きる。 垂直方向に向けたバイコニカルアンテナを使用して測定を
機 能 に 基づ く名称 を つけ て い くと、 EUT を RF ノイズ 源 (RF
実行する。 アンテナはハーネスから1メートル離して、 その中心
Noise Source) と呼ぶことになる。
に置く。
図3に、 名称を変えた部分を示した概略図を示す。
FEF 配置は、 自動車シャーシに取り付けるケーブル ・ ハーネ
スといくぶん類似しているが、実際には航空宇宙分野の RF エミッ
デザインレビューの構成
ション試験セットアップから借用したものである。 ケーブルと導電
うまく運営されているすべてのデザインレビューと同じく、 厳格な
板は、マイクロストリップ伝送線路と同様、伝送線として動作する。
規則と仮定が適用される。 確実な進展があり、 レビューミーティン
図4は、 マイクロストリップラインの電界分布と導電板上のワイ
グが適切な時間内に完了する場合、 規則と仮定の適用は不可避
ヤ伝送線路の電界分布のスケッチを示すもので、 両者の強い類
である。
似性が見て取れる。 オンラインで入手できる無料の計算サイト 2
規則を表 1 にリストアップした。 自明でない規則は記事本文内
の1つを使うと、 導電板上の1本の直径 1.5mm のケーブルの特
で言及されるので、 次に行く前にリストを一瞥するだけで良い。
性インピーダンスは300オームと算出された。 これが正しいとす
仮定を表2にリストアップしたが、 これも一瞥しておけばよい。
れば、折り返しダイポールと旧型の真空管チューナーは300オー
適切な規則と仮定を用いて、 早速レビューを開始しよう。 今回
ムを使うので歴史的観点からも意味が通る。 しかし、 FEF の実
においては、 これが最初のデザインレビュー (つまり、 解決に向
際の特性インピーダンスは、 測定によって確かめられていない。
けての設計者による最初のレビュー) である。
図4は、 距離が離れるにつれ弱くなる周辺電界が側面に放射
4つのステップを使用する。 まず、 提案された設計について、
される一方で、電界が上部導体の直下の隙間に集中している (電
設計者がレビュー側に説明する。 その後、 出席者全員が設計作
気力線が近いほど電界は強くなる) ことを示している。
業を確実に理解するため、 レビュアーによる質問が続く。 次に、
ノイズ電流は RF 周波数にあるので、物理法則に従って、ルー
レビュアーは一致協力して、 設計に欠点のある可能性について的
プ長をできる限り短く (ループ面積を相応に最小に) している。
を絞って進めていく。最後に、欠点すべてについて提言を実施する。
図5で示すように、 電流がワイヤ下側表面の経路をたどり、 ワイ
可能性のある方法についての提言はおこなうが、 作業詳細に
ヤ直下の銅板表面を通って戻るとき、 これが起こる。
ついてはこのミーティングの目的ではないので、 レビュー期間中に
詳細な設計作業を実施しないよう注意する。 議事録には完遂す
べき開発タスクのリストを記録し、 第2回デザインレビューのプレゼ
ケーブル・
ハーネス
ン時に用意すべきデータをリスト化しておく。
デザインレビュー
銅板
試験セットアップの記述
対 象 の EUT が ワイヤ ・ ハ ー ネス に 接 続 して い る 場 合、 試
近くにある
完全導体の
床
験 セ ットアッ プは、 放 射 エ ミッ シ ョ ン レ ベル を 測 定 するために
設 計 さ れて い る。 車 両 内 に 組 み 込 ま れ た と き、 放 射 電 磁 界
の 大 部 分 は、 EUT 自 体 と は 対 照 的 に、 接 続 さ れ た ワ イヤ ・
20 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
吸収体に
覆われた
天井
図2:電磁界放射構造(FEF)と暗室の床近くの電界センサ
2016年版ガイドブック
Mulline aux
表 1:規則
問題となっている周波数範囲は、 動作周波数20~200 MHzの
バイコニカルアンテナに限られる。
規則2
補助装置(LISN、その他)を考慮しない。代わりに1組の電磁界
放射器具と電界センサの性能に注目する。
規則3
銅板の上のワイヤ・ハーネスは「導電平面上の1本のワイヤ」伝
送線路に等しいと考えられる。
規則4
ワイヤ周囲または束ねた複数本のワイヤの絶縁は計算に入れ
ない。これは単純化するためで、レビュー中に見られるように、
これは重要な意図の変更とはみなされない。
規則5
ZFEF ≠ Z IN_SITU レイアウトはいくらか似ているが、電磁界放射
器具の特性インピーダンスZFEF と(本来の位置である)自動車
のシャーシに取り付けた実際のケーブル・ハーネスの特性インピー
ダンスZIN_SITUとは、決して同じと考えることはできない。
規則6
ZFEF ≠ ZS 規則5と矛盾なく、FEFの特性インピーダンスが、RF
ノイズ源の特性インピーダンスZsと同じだと考える理由がな
い。
規則7
FEF上に定在波は存在しない(単純化するため、およびFEFの
本当の性能評価要求を行うために、整合の取れた終端抵抗で
それを行う)。
規則8
電界エミッションについてのみ参照する。
規則9
銅板の効果(共振)はない。
規則10
レビューの提言ステージでは、測定室の床による影響はない
(必要に応じてフェライトタイル/吸収体を取り付ける)。
規則11
以下に示す内容は、試験システムに大きな影響は与えない:試
験セットアップを支える試験テーブル、ワイヤ・ハーネスを保持
している5cmの柱、FEFの不連続すべて(抵抗終端方法など)、
半電波無響室壁面の近傍
RF
ノイズ源
コモンモード
のノイズ電流
エアギャップ
測定室の外部
測定室の内部
電界
センサ
センサ出力測定
と表示
図3:各部の名称を変えた簡略化された構成図
表2:仮定
仮定1
仮定2
EUTボックス自身により放射された『空気中への』RF放射す
べてに対し、長さ2mのFEFからのRFエミッションレベルが常
に支配的であると仮定する。
RFノイズ源からの全ノイズ電流は、コモンモードであると仮
定する。つまり、ノイズ電流は全てハーネスのワイヤに沿って
同じ方向に進み、銅板を通して戻ると仮定する。
仮定3
ワイヤ・ハーネスでDC電流に起因する全電磁界は静止してい
るので、電界センサによって検知されないと仮定する。
仮定4
ノイズが伝搬するかしないかに関わらず、周波数20-200MHz
のRF 電磁界は電界センサによって、1メートルの距離で検知
されると仮定する。
図4.グランドプレーン上のマイクロストリップ(簡略化のため誘電体は除く)お
よび1本のワイヤの電界の略図
く FEF 上に存在する。 このため、 電界センサが測定しているの
が電界の最大値なのか、 最低値なのか、 またはその間の値な
のかわからない。
レビュー側からの質問ステージ
明らかにすべきことは以下の通りである。 EUT は、 複数の自
受信部の役割はバイコニカルアンテナが果たす。 これらの周
波数 (20-200MHz) では、 アンテナは必然的に大きくなる 3。
理想的には、 電磁界は FEF の下側から放射しないので、 アン
テナに照射されるのは FEF の上側からのみである。 このため、
図6で示すように不均等な照射になってしまう。
非対称の照射により、 アンテナが提供した較正データが継続
的に役立つのは非常に難しくなるが、 少なくとも、 どんな電界強
度変換器を使っても電界強度の増加に伴い出力はおそらく増加
するだろう。 この理由によりアンテナを電界センサと呼ぶことにす
る。
わずか1メートルの距離および問題となっている比較的長い波
長では、 拡散、 非拡散を問わず、 電界センサはすべての電界を
ピックアップする。
現在の終端抵抗は120オーム (継承している) であり、 RF ノ
イズ電流は、 終端の不整合と FEF/EUT インターフェースの不整
合の間で、 行ったり来たり反射を繰り返すので、 定在波はおそら
interference-technology.jp
動車メーカーに供給されることがあり、 1社だけに供給されたとし
ても、 多くの異なったモデルに組み込まれる可能性もあるので、
EUT に取り付けられる実際のケーブル・ハーネスの特性インピー
ダンスは事前にはわからない。
銅板上のワイヤ ・ ハーネスに接続された EUT が、 いくつかの
点で実際的な設置の典型だったとしても (自動車シャーシ上で
50mm [元々は2インチ?] 保持は除く)、 それは事実上、 歴史
的な航空機に取り付けるセットアップに代表されるような、 実績
のある試験設備である。
実 際 のワイヤ ・ ハーネスは概して、 車の金属 加工物 に密
着しているので、 ワイヤと金属加工物間の平均距離はおそらく
50 mm 未満であり、 それに対応して特性インピーダンスは低くな
る。
伝送線路はかなり低い損失 (さもなければ、 伝送線路と考
えられていない) になりがちだが、 従来の FEF は信頼できる電
磁界測定目的では十分な漏れと考えられている。
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 21
試 験
規則1
電磁界
放射構造
(FEF)
ワイヤの
下側
非対称照射
TESTING
ワイヤの
真下
影の部分
図5.RF電流が通るルート
図6.アンテナの非対称照射状態
例えばハーネスの高さを増す、 あるいは一部分の銅板を故意
に除去する、 また周辺電界の強度を増すためハーネス中心の下
にある銅板を一部カットする、 などして FEF が意図的に漏れを増
素を用いる。図9に示すように、4:1の変換トランスは電圧を2
やす場合もある。 RF ノイズ源のソースインピーダンスは不明なの
倍に、電流を半分にして、入力インピーダンスの4倍のインピ
で、 RF ノイズ源と FEF 間の大きな不整合が生じて効果的なノイズ
ーダンスをつくる。挿入電力(Pi)と反射電力(Pr)は、方向性結
信号の伝達を妨げることもある。 EUT が実際に取り付けられたと
合器を使ってモニタする。試験で反射電力を最小にして、それ
き、 整合性が改善され、 効果的にノイズがハーネス上に伝達する
によりFEFの特性インピーダンスと整合した負荷になるように
こともありうる。
抵抗値が選ばれる。実際、設計者は実際のEUT試験前にワ
イヤ・ハーネスを負荷と整合させて、この方法を規定すること
欠点識別ステージ
ができた。設計者は、今や完全にFEFと電界センサをセットと
設計の欠点を識別するステージの結果は以下の通りであった。
して特徴づける立場にある。
1. 設計の再利用は奨励されているが、それは性能データにより
2. FEFが実装状態のワイヤ・ハーネスを正確に反映していないと
設計が証明・サポートされた場合のみである。継承したFEFを
考えると、漏れのある伝送線路はすべてFEFとして使うことが
持つサポートデータは存在しないようである。このレビューを
可能である。FEFが実装状態のワイヤ・ハーネスを正確に反映
パスするためには、提供されたFEFを特徴づけるデータを最
していないと考えると、漏れのある伝送線路はすべてFEFとして
使うことが可能である。たとえば、放射する電界の左右対称性
初に得る必要がある。
2. このようにオープンで局所的にシールドされていないセットア
は、300オームの2本のワイヤから成る伝送線路を用いて達
ップでの定在波の存在は、良好なRFシステムにとって有用で
成することができる。図10に、対称性のある電界分布を示す。
はない。したがって、このレビューをパスするために、あらゆる
2本のワイヤはワイヤ・ハーネスと細長い導体から作られる。こ
の配置により、特にバイコニカルアンテナが暗室の床に触れな
努力が求められる。
3. 電界センサへの照射は、非対称である。一般的に、電界セ
い(アンテナおよび試験FEFが床面から持ち上げられた状態)
ンサは測定する電界中に完全に曝されるようになっている。
ようにと設計者が望む場合は、電界センサは対称性のある電
そうしない場合は、社内較正データを得なければならない。
界に曝されることになるだろう。銅板に取り付けられたハーネ
スが、高さ50mmのハーネスより一般的であると考えられる図
レビュー側からの提言
11に考察材料がある。しかし、このことで独自の問題が起こっ
設計者が考慮すべき提言は以下の通りである。
たときは省略可能であり、RFノイズ源を直接2本のワイヤに接
1. 既知の周波数と出力レベルの信号を提供するRFノイズ源と
続することができる。設計エンジニアは、上記のセットアップの
特徴を使って自由に試してみることができる。
して信号発生器を用いることにより達成できる可能性があり、
直径1.5mmのワイヤをワイヤ・ハーネスとして使用できる。信号
3. RFノイズ源がノイズ電流を異なるインピーダンス特性を持つ
発生器電力レベルは、必要に応じて増幅できる。図7は、一般
ワイヤ・ハーネス上に注入する問題は、未解決のままである。
的な考え方を表す。50オームから300オームへのトランスは、
これは重要な問題で、試験システムの設計が、このレビュープ
試験信号を確実に効率良く注入するために使われる。インピ
ロセスを通過するためには解決しておく必要がある。
ーダンス変換トランスステージは、図8に示す。トランスは、4:1
の変換トランスの次に50オームから75オームへの変換トラ
ンスという電力RFの分野では非常に一般的な2種の構成要
22 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
Mulline aux
まとめ
詳細については意識的に短くしているが、 民間企業において
信号
発生器
日々使われている標準的な技術管理手法を適用することによっ
て、 現在の試験セットアップの弱点が指摘され、 新しい着想を生
む結果につながることを読者に理解していただければ幸いであ
電磁界
放射構造
(FEF)
インピーダンス
変換トランス
方向性
結合器
る。 また、 こういった着想を採用することで、 今度は規格決定団
体が再現性を改善し、 結果として適合性試験の信頼性が増すよう
試 験
試験中Prが最小に
なるように選択
考慮する場合もある。
注:
(1)設計レビューを潜在的問題についての議論と進行チェック
図7.FEFの特徴
の機会とだけ見なしている人はまだ多い。実際、新製品導入
(NPPI)方法論の出現によって、設計が順調に進んでいるの
を確認するのと同様、プロジェクトのリソースや資金提供を増
300オーム
システム
4:1
変換トランス
50から
75オームへの
変換トランス
50オーム
システム
やす前に「ゲート」をパスする必要がある場合には設計レビュ
ーが重要な構成要素となっている。プログラム・マネージャと
して、私はこの方法論を非常によく知っており、正式な設計レ
図8.50オームから300オームへのインピーダンス変換トランス
ビューを実施した場合、対象となる放射エミッション配置の設
計がどのようになるか、よく疑問に思っていた。それゆえ本稿
の意図は、EMCの専門家からの意見を求めることであった
が、彼らは既存のセットアップに未練がありすぎて設計を公
平に見ることができないようだったので、これをやめることに
した。模擬レビューではあるが、このレビューと結果は実際の
現場で起こるだろうと予想していたものとほぼ同じである。
4:1
インピーダンス
変換トランス
(2)http://www.eeweb.com/toolbox/wire-microstrip-impedance. 基板上50mmの高さ、直径1.5mmのワイヤ1本、基材
の誘電率は1として、ウェブにてインピーダンスを計算した。
(3)アンテナの一番下は、完全導電性の測定室の床に接する
寸前である。一方、アンテナ上部は、測定室の天井からある
図9.4:1インピーダンス変換トランス
程度離れている。これによりアンテナの「取り込み」にアン
バランスが発生する。
執筆者注
この記事は詳細な結果あるいは参考文献さえ必要としない論
文であり、 変化を求めて声をあげたにすぎない。 私が言いたいの
は、 規格やその背景、 実行について豊富な知識を持つ筋金入り
の EMC エンジニアは、 たとえ試験セットアップに深刻な欠陥があ
ると気づいていても、 変革を推し進める役には適さないということ
である。 EMC エキスパート達が築いたバリケードを突破するには、
図10.2本のワイヤーシステムの電界分布
民間企業で利用されている方法を使った独立したレビューが最適
であると私は考えている。
詳細については Interference Technology 本誌 (US 版) Web
の EMC ゾーンにあるブログ*で Mullineaux 執筆記事を定期的に
閲覧されたい。
Tom Mullineaux氏はRFエンジニアで、技術管理および技術営業管理の
分野で非常に豊富な経験がある。現在、フリーで執筆活動中で、テクニカル
ライターとしても活躍している。■
interference-technology.jp
図11.設計エンジニアが検討中の2本のワイヤから成るFEF
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 23
保存版ガイドブック2016
2015年3月号 掲載
TESTING
2.4 GHz ISMデータ送信機の
新しいEU要求事項と試験方法
David Zhang
Nima Molaei
LESLIE BAI
EMC Test Engineers
要約
などを必要とするさまざまな製品を網羅し
015年1月1日より、 2.4GHz の ISM
ている。 1985年5月、 EU の 「技術の調
(工業 ・ 科学 ・ 医療機器) データ
和と規格に対するニューアプローチ (New
送信機に適用する欧州連合 (EU)
Approach to Technical Harmonization
指 令の新しい 要求事項 が 強制適 用とな
and Standards)」 が定義されたが、 これ
る。 本記事は、 適合確認に必要な規定
は技術的な 調和を達成する画期的な方
の概要を述べ、 現在の規格 ETSI EN 300
法であった。 これは法的枠組において立
328 V1.7.1 (2006) と新しい規格 ETSI EN
法府である欧州委員会 (EC) と欧州標準
300 328 V1.8.1 (2012) の違いについて、
化組織の間で明確な責任分離を採用した
詳細に解説する。 独自の試験セットアップ
もの。 欧州標準化組織には欧州標準化
の一部や、 新しく要求される試験方法に
委員会 (CEN)、 欧州電気標準化委員会
ついても紹介する。
(CENELEC)、 欧州電気通信標準化機構
2
キ ー ワ ー ド : EU, European Union,
R&TTE, ISM, ETSI, EN 300 328, SIEMIC
(ETSI) などが該当する。
基本的に EC 指令は必須要求事項を定
め、 EU 標準化組織は通常、 規格と呼ば
はじめに
れる指令の必須要求事項に適合する必要
欧州連合 (EU) 内の消費者市場を規
がある技術仕様を作成する責を負う。 承
制し居住者を保護するため、 加盟国間で
認された規格は EU 官報(OJ)で公告され、
は規則、 指令、 決定、 勧告、 意見につい
EU 整合規格となる。 規格を順守すること
て協議し決定している。 このような法律上
により、 整合された法律で適用される要
の要求事項は、 電気通信や周波数スペク
求事項との適合性の推定が可能となる。
トラムといった公共インフラの保護だけで
したがって製造業者、 適合性評価機関そ
なく、 安全性や健康、 環境に対する保護
の他の関連事業者 (economic operator)
24 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
Zhang
は、 整合規格を使用して自身の製品やサービス、 プロセスが関
のだが、 良い解決策は見つかっていない。 IEEE 規格のプロト
連した EU の法律に適合していることを立証することができる。
コルで規定のスペクトラム共用メカニズムが実施されるよう設計
3つの標準化組織 CEN、 CENELEC、 ETSI は、 1999年4月
された Wi-Fi、 Bluetooth、 ZigBee などのデバイスは、 申告に
7日付 EC 官報で公告された無線 ・ 通信端末機器 (R&TTE) 指
基づいて適合性が達成できる。 しかし、 機器が IEEE 規格のプ
令 (1999/5/EC) に基づく整合規格の作成を担当している。 この
ロトコルで設計されていない場合、 スペクトラム共用機能の評価
指令は、 EU 内の公的な電気通信網と無線通信網に接続するこ
はどうやれば良いのか?
とを意図した無線機器と電気通信機器すべてを対象としている。
この状況は、 新バージョン V1.8.1 の採用により解決されると
思われる。 メディアアクセスプロトコルはアダプティビティ試験要
EC 官報に追加され、 2015年1月1日以降適用、 同日より公式な
求に置き換えられ、 新バージョンには干渉検出の閾値とタイミ
整合 EU 規格となった。 この規格は次の2つである。
ングについて詳細な技術的要求事項がある。またステップ・バイ・
- ETSI EN 300 328 V1.8.1 : 2.4GHz の ISM バンドで動作し、
広帯域変調技術を用いるデータ伝送機器の規格
ステップの試験手順も提供されるので、 新しい要求事項は効率
的になるはずである。
- ETSI EN 301 893 V1.7.1 : 5GHz の高性能無線 LAN の規格
この2つの規格は、 WLAN、 Bluetooth、 ZigBee、 2.4GHz の
遠隔操作、 固定の2地点間 (PTP) 製品などを含む広い範囲の
製品をカバーしている。
両方とも、 R&TTE 指令第 3.2 条の適合性 (または遵守) の
推定を提供する。 しかし現在のバージョンは2014年12月31日
までで適合性の推定を停止するので、 EN 300 328, V1.7.1 の規
格に基づいた R&TTE 指令の EU 適合宣言 (DOC) は、 2014
年末までに、 新バージョン V1.8.1 規格に基づいて再評価する必
要がある。
本稿では、 現バージョン V1.7.1 と比較すると適合性評価に使
われる技術要求、 試験方法ともに大きな変更のあった、 EN 300
328 V1.8.1 規格に焦点を当てる。
EN 300 328 の V1.7.1 と V1.8.1 を比較した詳
細解説
上述のように、 ETSI EN 300 328 のバージョン V1.8.1 には多く
の改訂がある。 この規格改訂の理由は、 2.4GHz の ISM バンド
V1.8.1 に規定されているスペクトラム共用メカニズムのオプ
ションを以下に記す。
-周波数ホッピングスペクトラム拡散(FHSS)システムに
ついて
o アダプティブ・システム
・ 送信前受信チェック (LBT: Listen Before Talk) に基
づく検知と回避 (DAA: Detect and Avoid)
・ DAA (非LBT)の他形式
o 非アダプティブ・システム
・ メディアユタライズ(MU: Medium Utilization)
-非FHSSシステム(他すべて)について
o アダプティブ・システム
▪▪ LBTに基づくDAA
▪▪ DAA (非LBT)の他形式
o 非アダプティブ・システム
▪▪ ディアユタライズ(MU)
で動作するデータ伝送機器の使用法と品質を改善するため、 お
2.4GHz 帯で動作するさまざまな機器をカバーして規格を一
よび可能性がある製品タイプすべてをカバーできる一般的な規格
般化するため、 他の要求試験についても、 さらに変更があった。
を作るためである。
技術的要求は主要な2タイプの広帯域機器に分けられている。
ETSI EN 300 328 V1.7.1 は、 2009年12月に整合規格として
官報に追加された。 このバージョンではスペクトラムを共用するた
1つ目は、 FHSS (周波数ホッピングスペクトラム拡散) 機器、
2つ目は、 FHSS 以外の広帯域変調機器である。
めの要求事項が追加された。 これはメディアアクセスプロトコル
表 1 は、 EN 300 328 V1.7.1 と EN 300 328 V1.8.1 の技術的
(Medium Access Protocol) を実行して IEEE (米国 : 電気電子
要求について主要な違いを簡単にまとめたものである。バージョ
技術者協会) 802.11 、 IEEE 802.11n、 EEE 802.15.4 などの国際
ン V1.8.1 の主要な変更は下記の通り。
的に認められている規格のプロトコルに基づいた機器設計をおこ
なうことを目標としている。
V1.7.1 にはスペクトラム共用を定義した明確な試験方法が掲載
されていなかったので、 結果的に多くの誤解と混乱を招いた。 こ
ういった適合性要求事項の評価方法について試験所は常に確信
を持っているわけではないので、 機器がスペクトラム共用を利用
するメカニズムを備えていることを示すのに、 通常はメーカーの
申告に頼らなければならなくなる。 しかし一部のメーカーは、 試
験所が適合性に関して評価し結論を提供すべきと考えているた
め、 この種の申告をしたがらない。
そのため、 この規格で機器を試験する際に面倒なことになる
interference-technology.jp
RF出力電力: 試験機の新しい要求事項および新しい試験
手順が加えられた。MIMO (Multiple Input, Multiple Output)のパルスを考慮したうえで限度値は同じとなっている。
送信機の不要輻射: 帯域外(OOB: Out Of Band)領域輻
射の要求を追加し、動作周波数から帯域幅の2倍離れた
周波数への拡張を定める。対応する試験手順も規定され
ている。スプリアス輻射 領域については、測定検波器が
変更され、スイープ中に正確な試験データを得るため、高
い分解能ポイントの使用が要求される。最後に、プリスキ
ャンと最終測定は、別々に定義されている。
電力スペクトル密度: これは得られた電力測定の結果に
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 25
試 験
2012年6月、 ETSI は2つの規格を更新し、 2012年10月の
正規化され、新しい試験手順は広範囲な計算を必要とす
性評価をより適切な方法で提供するために再設定されている。
るが、限度値は変わらずそのままである。
試験手順は、 より一般的なものにもなっているので、 いろいろ
な種類の機器に使うことができる。
周波数範囲:試験手順は、99パーセントの帯域幅測定を
使って基準状態でのみ測定するよう変更された。
環境条件
アダプティビティと受信機のブロッキング:10 d B m以上の
TESTING
e.i.r.p.(等価等方輻射電力)で動作するアダプティブデバイ
試験の環境条件および電源基準が極端である場合、 V1.7.1
スと非アダプティブデバイスは、現在、新しいタイミング規
では 5.3 項に書かれている要求事項に従わねばならなかった
制の影響を受ける。さらにアダプティブデバイスは干渉を検
が、 V1.8.1 ではそれが変更され、 機器の実際の動作条件に基
知する能力が必要で、検知したときには送信を中断できな
づきメーカーが申告するという試験条件になっている。
ければならない。
供試ユニット(UUT)動作条件
ETSI EN 300 328 V1.8.1 に対応した試験方法
V1.8.1 では、 UUT の動作条件として、 通常動作モードの構
技術的な要求事項の変更と共に、 試験手順も、 製品の適合
成が必要である。 この要求を設定した理由は、 機器のタイプや
表1:ETSI EN 300 328 バージョンV1.7.1とバージョンV1.8.1間の主要な技術要求の違い
試験項目
EN 300 328 V1.7.1(2006-10) EN 300 328 V1.8.1(2012-07)
機器のタイプ
FHSSとDSSS
FHSSと他の広帯域変調に分類して規定
アダプティブ機器と非アダプティブ機器を分類して規定
RF 出力電力
最大 e.i.r.p. 100mW
平均 e.i.r.p. 100m W (ビームホーミングアンテナ利得を考慮する必
要)
電力スペクトル密度
(FHSS以外)
電力スペクトル密度
最大 e.i.r.p. 10dBm/MHz
電力スペクトル密度
平均 e.i.r.p. 10dBm/MHz
定義なし
デューティサイクルは宣言した最大値以下でなければならない
FHSSの場合: 最大シーケンス送信時間≦5 ms、最小送
信休止時間≧5 ms
デューティサイクル
送信シーケンス
送信休止時間
非FHSSの場合: 最大シーケンス送信時間と最小送信休
止時間をMとし、Mの範囲は、3.5mS < M < 10mS
滞留時間, 最小周波数
占有およびホッピング
シーケンス (FHSSのみ)
周波数ホッピング要求事項:
滞留時間 < 0.4s
ホッピング・チャンネル
ホッピング・シーケンス
滞留時間、最小占有周波数とホッピング・シーケンス
ホッピング周波数間隔: 新しい制限
メディアアクセスプロトコル
メディアアクセスプロトコルが実行さ
れなくてはならない
MUファクターは e.i.r.p. > 10mWの非アダプティブ機器にのみ適用
限度値: ≦ 10%
アダプティビィティ
要求事項なし
アダプティブ機器にのみ適用e.i.r.p. > 10 mW
占有周波数帯域幅
要求事項なし
使用周波数帯内にOBW※の99%が落ち込んでなければならない。
FHSS と非AFH※機器 (e.i.r.p. > 10 dBm):
占有周波数帯幅 ≦ 5 MHz
非FHSSと非AFH※ 機器 (e.i.r.p.> 10 dBm):
占有周波数帯幅 < 20 MHz
送信機の帯域外領域不要輻射
要求事項なし
帯域外にマスク制限を規定する
送信機のスプリア領域の不要
輻射
定義済み
限度値は変更ないが、測定時のRBW※の設定と検波器に変更あり
受信機の不要輻射
定義済み
限度値は変更ないが、測定時のRBW※の設定と検波器に変更あり
受信機のブロッキング
要求事項なし
アダプティブ機器のみe.i.r.p. > 10mW
※訳者注(略語)
OBW: Occupied Bandwidth (占有周波数帯域幅)
AFH: Adaptive Frequency Hopping (アダプティブ周波数ホッピング)
RBW: Resolution Bandwidth (分解能周波数帯域幅)
26 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
Zhang
減衰器
電力センサ
USB
電力センサ
ハブ
電力センサ
RFスイッチ
供試デバイス
試 験
電力センサ
図1.RF出力電力試験のセットアップ
特定の動作モードによって、 矛盾したデューティサイクルや異なる
最も高い P のバースト値 (A)、 アンテナ ・ アッセンブリー ・ ゲイ
送信特性を持つ UUT があるかもしれないからである。 現バージョ
ン (G)、ビームホーミング利得 (Y) の3つの測定値の和として、
ン V1.7.1 では、 UUT は連続送信試験モード (100% のデューティ
次式で与えられる。
サイクル) に設定しなければならない。 この種のモードではメー
カーからの特別なツールやソフトウェアの使用が必要だが、 その
P=A+G+Y
入手が時にむずかしいという問題がある。 機器の現実的な実際
の RF 性能は、 適合性試験で使用する通常動作モードで期待さ
MIMO チェーンでは、 高速電力センサを用いて、 同時測定す
れるものと違うこともある。 また、 UUT を試験に合格させるだけ
るので、 別の電力測定方法を使用できなくなる。 V1.8.1 の要求
の目的で、 メーカーが意図的に用意した特別な試験モードを使っ
に適合できる特別な電力センサは、 試験機器市場で非常に注
た 「でっち上げ」 の結果になる可能性もある。 V1.8.1 の新しい規
目を集める商品になってきている。 次に、 主要な試験項目の試
定はこの問題に効果的に対応して、 全ての測定を通常動作モー
験方法について説明する。
ドで実施するよう要求しているので、 測定が矛盾なく正確にでき
る。
RF 出力電力の試験は、 高速電力センサの使用を基本とし、
4x4 MIMO デバイスでは、 同時に動作する4つの電力センサが
必要になる。 図1に提案された試験セットアップを示す。
RF 出力電力測定
RF 出力電力を測定するには、 2.4GHz に適し、 信号の 1 MS/
電力スペクトル密度
s (1秒当たり 1 × 10 6 回サンプリング) が可能な高速電力センサ
電力スペクトル密度 (PSD) は、 高分解能のスペクトラムア
を用いる。 より正確に測定するために、 測定期間は非アダプティ
ナライザを使用して測定できる。 使用する検波器は、 バージョ
ブ機器とアダプティブ機器両方に対して定められている。 測定方
ン V1.7.1 で定義されていた平均値検波器に代わり、 MS 検波器
法としては放射または伝導のどちらかを使えるが、 結果を得るた
が明確に定められた。 必要な正確性を得るために測定周波数
めには両者ともよく似たデータ収集ステップに従う必要がある。
範囲のサンプリングポイントが定められている。 使われるスペク
1つの送信チェーンを持つデバイスの伝導測定をする場合、
送信信号をサンプリングし、生データを保管する。
複数の送信チェーンを持つデバイスの伝導測定をする場合、
全ての送信ポートを同時に測定し、全ポートの個々の電力サ
ンプルを保管して合計する必要がある。
放射測定の場合、e.i.r.p.レベルが最大になるようにUUTを構
成し、測定用アンテナに向かって、UUTのアンテナ(スマートア
ンテナシステムやビームホーミングアンテナを含む)の位置を
合わせる。高速電力センサも測定のために必要であり、スペク
トラムアナライザは使用してはならない。
トル ・ アナライザが十分なサンプリングポイントを使えない場合、
周波数バンドを分割することができる。
V1.8.1 で定義された手順によって、 PSD 測定は、 スペクトル・
アナライザを単にスイープさせるのではなく、 最も高い振幅を記
録させる。 スイープ時は、 分解能帯域幅 (RBW) を 10kHz、 ビ
デオ帯域幅を 30 KHz に設定し、 RMS 検波器を使用し、 8350
以上のサンプリングポイントでデータを取り込む。 次に、 スイー
プが必要な全ての値は、 正規化係数を得るために RF 出力電
力を e.i.r.p. 単位で合計されて正規化される。 つまり個々の値を
全て取り込んで正規化された振幅を得る。 この測定は、 ファイ
ル (最も低い周波数) にある最初のサンプルから開始され、 続
各々のバーストの開始と停止の時間は保存し、 バースト期間
く 1MHz 帯域内のサンプルの電力を合計し、電力および位置 (例
中の RMS (2乗平均平方根) 電力の計算に使用しなければなら
えば : サンプル番号 #1 から #100) について結果を記録。 次に
ない。 RF 出力電力 (P) を決定するための最大 e.i.r.p. の計算は、
サンプルの開始ポイントを1つずつずらして測定を繰り返し、 全
interference-technology.jp
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 27
ての値がカバーされるまで個々の値全てに対して、 この手順を
も高い値は、 OOB 領域で最も高い送信機のスプリアス輻射で
繰り返す。 1MHz に分割したサンプルから結果として生じる最も
ある。
高い値は、 最大 PSD 値である。
アダプティビティと受信機ブロッキング
OOB 領域内における送信機の不要輻射
V1.8.1 で最も重要な変更の 1 つは、 アダプティビティ試験と
TESTING
これは、 バージョン V1.8.1 の新項目である。 目的は、 要求
受信機ブロッキング試験の要求が追加されたことである。 これ
される帯域幅に隣接した周波数の OOB 領域内で送信機の不
は、 帯域内に存在する他の送信信号を特定し、 次にそれを除
要輻射を制限することで、 これは変調過程から生じるものだが、
外して、 選択した周波数と動作チャンネルを 「適応 (adapting)」
スプリアスエミッションは除く。 この測定は、 スペクトラムアナラ
させることで、 機器がどのように環境に適応するか試験するも
イザのタイムドメイン電力測定を用いて実施する。 測定検波器
の。 アダプティビティはスペクトラムを共用するための要求事項
は RMS に設定し、 少なくとも5000個のサンプリングポイントが
の一部である。 これはかつて 「メディアアクセス ・ プロトコル ・ メ
必要である。 測定周波数範囲は、 UUT の動作帯域幅 (OBW:
カニズム (Medium Access Protocol Mechanism)」 と呼ばれ、
Operating Bandwidth) 次 第 で、 (2400MHz ― 2BW) か ら
メーカーの申告に依存していた。 WLAN または ZigBee 製品は、
(2483.5MHz+ 2BW) ま で であ る。 分 解能 帯域 幅 (RBW) を
IEEE 802.11 または IEEE Std. 802.15.4 といった規格に基づき
1MHz、 スパンを 0Hz に設定した場合、 タイムドメイン電力測定
設計され、 RF エネルギーを検出する空きチャネル評価 (CCA:
は、 規定された ISM (工業 ・ 科学 ・ 医療) バンド各々の周波
Clear Channel Assessment) モードに基づく送信前受信チェッ
数範囲の境界から 1MHz 離れたそれぞれの中心周波数で繰り
ク (LBT: Listen Before Talk) を備えているので、 スペクトラム
返す必要がある。 RF 出力電力測定と同様、 申告された組込ア
共用に必要な事項に適合できる。 しかし、 この種の規格化され
ンテナ利得 「G」 dBi を 1MHz 帯域の各々の結果に加えなけれ
たスペクトラム共用メカニズムを持っていない機器を評価する目
ばならない。 複数の送信チェーンを持つ機器の測定は、 各アク
的で、 V1.8.1 には技術的な要求事項と試験手順の詳細が定め
ティブ送信チェーンで繰り返す必要がある。 各 1MHz 帯域で最
られている。 アダプティビティの概念は、 規格に必要な詳細の
スペクトラム
アナライザ
UUT
分配器/
結合器
コンパニオン・
デバイス
直接結合器
減衰器
信号発生器
(干渉用)
分配器/
結合器
信号発生器
(ブロッカー用)
図2.アダプティビティ(adaptivity)試験と受信機ブロッキング(receiver blocking)試験のセットアップ
28 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
Zhang
程度によって難しくもなるので、 販売予定のさまざまなアダプティ
うためにリップルが1.5dB未満でなければならない。
ブ機器タイプをカバーするには、 一般的な規格で十分である。
また、 802.11ac デバイスを 160MHz 帯域幅で試験する場合、
試験実施中に、 ホッピング周波数や試験中の動作周波数に
集中する干渉信号などの広帯域ノイズ信号を UUT のアンテナ
ポートに注入する。 干渉信号は、 平坦な PSD を有する帯域制
160MHz 超の雑音帯域幅を維持する AWGN 発生器が必要にな
る点にも注意する。
表 1 は、 現バージョン ETSI EN 300 328 V1.7.1 と新バージョ
限ノイズでなければならない。 通常この種の信号は、 ベクトル
信号発生器のアダプティブ白色ガウス雑音 (AWGN) 発生機能
アダプティビティ試験と受信機ブロッキング試験は組み合わ
せて共に実施する。 標準的な試験構成を図2に示す。 試験手
の変更を比較したものである。
ETSI EN 300 328:今後の規格改定状況
メ ー カ ーお よ び 試 験 所 は目下 EN 300 328 V1.8.1 規 格 に
順の基本的なステップは下記の通りである。
ステップ1: UUT と付属デバイスを接続してから、 干渉信号発
生器、ブロッキング信号発生器、スペクトラムアナライザをつなぐ。
スペクトラムアナライザは、 干渉信号とブロッキング信号に応答
する UUT の送信をモニタするために使用する。
移行している最中だが、 ETSI は次のバージョンとして EN 300
328 V1.8.2 のドラフトを既に発表している。 このバージョンは、
2014年9月に決定会議、 何かコメントがあれば修正版に対す
る追加の国レベル投票が続いて予定されていて、 現在ヨーロッ
パ標準規格の承認過程にある。 国レベル投票を通過した最終
ステップ2: 試験するホッピング周波数においてアダプティ
版は、 EN 300 328 V1.9.1 として2015年のうちに発行されると
ブ・メカニズムの適合性実証を可能にするのに十分な負荷
思われる。
を用いてUUTを標準的な送信用に構成する。次にUUTの
チャンネル占有時間と最小休止期間を検証する。
ステップ3: 干渉信号を加える。
ステップ4: 干渉信号に対するスペクトラム共用メカニズム
次のバージョン V1.8.2 で変更の可能性がある事項は以下の
とおり。
FHSSに対して、滞留時間など、いくつか定義の変更だけ
でなく、技術的要求事項と対応する試験方法の変更が提
の応答を検証する。
する。
案されている。
ステップ5: ブロッキング信号を加え、UUTの応答を検証
IEEE 802.15.4とIEEE 802.11のような非FHSSとLBTに基
づいたアダプティブ・システム用に、アダプティビティ試験用
ステップ6: 干渉信号とブロッキング信号を両方取り除い
の要求事項と試験方法を明確にする。「CCA時間延長」と
て、UUTの応答を検証する。
「チャンネル占有時間」を計算する式は削除され、固定値
制御信号のデューティサイクルが規格で決められた制限を上
回らない限り、 UUT は干渉信号を検知した後に制御信号の送
または固定範囲の値に置き換える。
たとえRF伝導試験が実行されたとしても、放射試験をUUT
信ができることに注意する。
に実施する必要性の明確化、スプリアスエミッション試験に
アダプティビティ試験と受信機ブロッキング試験の標準的な
試験用セットアップを図2に示す。
ETSI EN 300 328 V1.8.1 特有の試験セットアップ
対する測定器の検波器タイプの設定。
参考情報
• URL: www.siemic.com
EN 300 328 V1.8.1 規格は、 測定試験機器の機能や性能、
• URL: www.etsi.org
設置の必要条件を指定しているが、 これは V1.7.1 の要求事項
• ETSI EN 300 328 V1.8.1: 2012
と全く異なる。 他にも、 以下の通り特有な要求事項がある。
• ETSI EN 300 328 V.8.2: 2014 (Draft version)
• Presentation on EN 300 328 & EN 301 893, R&TTE CA
2.4GHzに適し、RF出力電力測定が1 MS/sで可能な高速
meeting – Amsterdam– May 2014
電力センサ(Fast power sensors)と、MIMOデバイスの同
時測定をサポート
滞留時間測定、最小占有周波数測定、ホッピングシーケン
• Article 288 of the Treaty on the Functioning of the
European Union
ス測定に30,000を超えるサンプリングポイントを備えた高
性能スペクトラムアナライザ
ほとんどの測定にR MS検波器が使えるスペクトラムアナ
ライザ
OOB領域での送信機のスプリアス輻射に対応するタイムド
メイン電力測定機能
干渉信号用の広帯域ノイズ源は、アダプティビティ試験に使
interference-technology.jp
※訳者注
ETSI EN 300 328 V1.8.1の適用は2015年1月1日からなので、この
翻訳版が発行される時点では、V1.8.1が既に採用されている。■
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 29
試 験
によって生成されるはずである。
ン ETSI EN 300 328 V1.8.1 間で、 12項目の重要な試験基準
保存版ガイドブック2016
2015年5月号 掲載
TESTING
ICのベアチップはどのくらいのESDに
耐えられるか?
ESDの影響下で実施するICイミュニティ試験
Sven Konig
EMC Engineer
Langer EMV-Technik GmbH
近の電子デバイスは、 ESD の
やグランド層、 フィルタなどの複雑な EMC
イミュニティに関して、 最も厳し
対策がよく使われる。 これらの方法は非
い規格に対応する必要がある。
常に高価で、 莫 大な開発業務が必要で
テュフノルド (TÜV NORD) の見積もりに
ある。 従来の EMC 対策は、 通常、 プロ
よると、 静電気放電により製造業が被っ
トタイプまたはモジュールやデバイスのほ
ている損害の総額は毎年、 数百万ユーロ
ぼ 最 終 に 近い開 発 段 階 で のみ使われ、
(約139億円) に達しているという。 ESD
それも 適合 性 試 験 で デバイス が 不十 分
の影響は回路故障、 ひいては車両や加
なイミュニティを示す場合に限られる。 こ
工 ・ 生産ラインの停止につながる。 電子
ういった対策は、 デバイスの機能を実現
システムは最も厳しい条件下でも、 故障
するために実施される。 しかし、 もっと良
なく確実に機能することを求められる。
い解決策は、 意図的に使用される IC や
最
しかし電子システムは、 せいぜい個々
コネクタ等の部品に、 電子機器開発プロ
の部品と同程度の性能にすぎないので、
セス開始前の最初の段階から総合的な
こういう高い要求にも適合する必要があ
EMC 分析、 特に ESD 試 験 を 行 うことで
る。 特に肝心な点は集積回路(IC)であり、
ある。 そうすれば、 開発者や設計者はロ
今日のどんな電子システムも、 これなでは
バスト性に基いて、 どこでどのように部品
ほとんど成り立たない。 しかし ESD イミュ
を使うか計画を立てることができ、 時間と
ニティに関して IC を評価する際、 実際に
コストの削減が可能になる
どの試験を利用できるのか、 また、 試験
はどのように行われるのだろうか?
モジュールまたはデバイスが ESD に影
響され ないようにするために、 金属筐体
30 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
モジュールまたはデバイスの EMC を実
現するため実際に選択可能なアプローチ
としては、 通常2種類ある。
最初のアプローチでは、 デバイス開発
2016年版ガイドブック
Ko n i g
は最初のサンプルまたはプロトタイプ段階までである。 この開発
電極
ステージで、 EMC 要求が全システムにおいて規定されている場
合、 デバイスは EMC 適合性試験の対象となる。 不適切な寸法
のコネクタや敏感な IC などという潜在的な欠点は、 適合性試験
では発見されるだけにとどまり、 この段階でのデバイス修正は容
易でない。 デバイスまたはモジュール全体として定められた EMC
目標を達成できない場合、 総合的な再設計作業が必要となる
バルク抵抗
まう。
保護ダイオード
試 験
プル抵抗器
ので、 開発時間のロスと EMC 対策の追加という結果になってし
第2のアプローチはもっと良い方法で、 開発過程がスタートす
る前に、 使用予定の各部品に対して EMC 試験を個々に行うこ
とである。 これによって開発者が使用部品の EMC パラメータを
短絡回路
無負荷
決定し、 部品がシステム全体の実際の EMC 要求に合っている
かどうか判断することができる。 したがって開発計画の際に、 頑
丈な電子製品を設計するための適切な部品選択が可能になる。
IC は、 特にモジュールとデバイスの EMC イミュニティにとって
重要である。 IC は、 ますます小さくなり、 そのクロックレートは
ますます速くなる。 エネルギー効率を考えて、 関連動作点だけ
でなく動作電圧も絶えず低くされている。 このため IC はよくシス
高インピーダンスプル抵抗の
IC入力
低インピーダンス終端の
IC入力 テム全体の弱点となるので、 IC が定められた EMC 要求を満た
すことは特に重要である。 IC に対し EMC 試験を実施してシステ
図2.電界の結合メカニズム
ム全体の機能を確保する必要があるのは、 以上のような理由に
よる。
IC の試験手順は、 デバイスのための適合性試験に基づく必
要がある。 しかし、 規格で定められる妨害はモジュールの適合
試験は IC にそのまま使用することはできない。 妨害発生器を
性試験においては IC に対して有効でないので、 従来の適合性
用いて外側からデバイスに結合する標準的な妨害は、 IC とその
配線網に磁界および電界をかける。 すなわち磁気結合および電
界結合という IC での妨害は、 この影響により形態や振幅、 作
用モードに関して、 標準的な妨害とは異なる。 そのため、 IC 試
験手順は別々の試験手順として再設定する必要がある。
望 ま し い 標 準 的 な パ ルス は 別と して、 寄 生電 磁 界 は 同 様
に、 デバイス全体あるいは個々のパーツに干渉する恐れのある
発生器により直接発生する。 このような希望しない電界および
磁界は、 基本的に ESD 発生器のタイプと位置に依存する。 こ
れはデバイス試 験 でかなりの不正確 さにつながることもある。
一部の IC メーカーが実施している IC ピンに直接印加する ESD
試験でさえ、 このように不正確で再現性が得られない。
したがって、 妨害は磁気と電気の結合に基づく回路で決定さ
れなければならない。 磁気干渉の事象では、 妨害電流によって
デバイス中に磁界が発生する。 妨害電圧は既存のループ (例え
無負荷
電圧誘導
短絡回路
誘導電流分配器
ば 配線網) に発生可能である。 この妨害パルスは、 高いイン
ピーダンスの IC 入力があると、 そこに干渉する。 妨害は、 さら
に PLLやコアなど IC 内で他の領域に影響を及ぼすこともできる。
電源システムや低インピーダンス信号は、 たとえばグランドまた
は Vcc に容量的に接続しているラインと同様に、 磁界経由の干
渉に関しては重要なラインである。
誘導保護ダイオードを備えた
VddループまたはICポート
図1.磁界の結合メカニズム
interference-technology.jp
IC入力
磁気結合効果は、 トランス (図 1) と比較できる。 IC の低イ
ンピーダンスの Vdd ループ (ドレイン電源ループ) による干渉は、
結果的に誘導電流の分配器になる。 妨害発生器による妨害電
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 31
流は IC の配線ネットワー クに転 送される。 磁界が加えられる
伝導性
と、 低インピーダンスで接続された IC 入力への干渉は、 妨害パ
ルスの微分に至る。 誘導電圧は、 ESD 発生器による実際の妨
害より立ち上がり時間が速く、 短い。 現在使われている回路は、
こういった微分された妨害 (<1ns) の評価およびその影響を受
けるには十分、 速い。
TESTING
電気的干渉に敏感なのは、 主に高インピーダンスのラインで
あ る。 金属部品、 ESD 発生器 などの環 境と回路 間の電 圧 差
は、 信号または回路に影響するかもしれない電界を発生させる。
放射性
結果として生じる電圧パルスは、 感度に応じた IC への干渉につ
ながる恐れがある。 例えばリセット、 クロック、 水晶発振子や、
A/D コンバータの高インピーダンス測定入力端子などは、 重要
なピンまたはラインである。
IC の配線網とその環境間の静電容量は、 電界結合の結合メ
カニズムにとって、 決定的に重要な量である (図2参照)。 低イ
ンピーダンスで配線される IC 入力が容量性干渉の対象ならば、
同様に妨害は微分される。 ラインが高インピーダンスで接続さ
れている場合、 妨害パルスは容量性分圧器によって直接伝送さ
れる。 IC に対する影響は、 最終的には磁気結合に起因するも
のと類似している。
図4.電気結合; 高インピーダンス源(R >> 50オーム)のシミュレーション
現在、 メーカーは通常、 自社製の IC の抵抗性を試験する。
こういった試 験 (例 : HBM; MM; HMM ※) は、 製造中の IC の
抵抗性といったものを確実にするだけであり、 IC が使用されて
いるそれぞれの現場で、 どのような干渉を受ける可能性がある
試験規格に基づく試験は、 最近では IC が問題なく確実に動作
かということについては無関係である。 バースト試験規格と ESD
することを確認するために用いられる。 トランジェント注入方法
は、 標準的なバースト発生器からの妨害パルスが直接 IC ピン
に印加されることを要求する。 だが、 この発生器はライン終端
に整合しておらず、 測定セットアップは電気的に長いので、 結果
的に不明確な妨害となる。 直接ピンの妨害電流および / また
は妨害電圧を使用する代わりに、 妨害発生器の無負荷電圧が
伝導性
IC のイミュニティ評価に使われている。 この方法の欠点は、 電
界または磁界に対する IC の感受性について結論が得られない
ことである。 強力な ESD 感受性試験 (および HMM も) には、
ESD パルスを直接 IC ピンに印加することが必要である。 実際
には、 妨害が IC でこのように起こるわけではない。 さらに、 希
望しない妨害電界や妨害磁界が ESD 発生器で発生して、 供試
IC にも影響を及ぼす。 再現が不可能ではないにせよ、 このこと
で試験は困難になる。
役に立つ試験手順というのは、 デバイス内の物理的な動作
放射性
原理をシミュレーションしなければならない。非常に低いインピー
ダンス源 (R << 50 オーム) の場合は、 IC ピンへの磁界結合
のシミュレーションを必要とする。 これにより、 IC または回路網
内の電圧誘導を介した IC 使用の際に起こるような妨害の生成
が可能となる (図3参照)。 非常に高いインピーダンスの妨害発
※訳者注(略語)
HBM:Human Body Model (人体帯電モデル)
MM:Machine Model (機械モデル)
HMM:Human Metal Model (人体金属モデル)
図3.磁気結合; 非常に低インピーダンス源(R << 50オーム)のシミュレーション
32 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
Ko n i g
ICアダプタ
試験基板
プローブ
IC(DUT)
ピン接触
モニタ用LED
試 験
信号線と電源線
グランドプレーン
接続基板
図5.磁気結合効果をシミュレートするプローブの測定セットアップ
生器は、 電気的結合 (R >> 50 オーム) をシミュレーションする
試 験システムにより開発者は個々のピンに接 触して、 必要な
ことが求められる。 非常に低い結合静電容量と相まって、 これ
場合は自動試験手順を使って異なるピンの電磁的干渉レベル
により電気的干渉のシミュレーションが可能となる (図4参照)。
を決定できる。 伝導 IC 試験方法は別として、 放射測定 (RF、
IC 試験システムを使えば、 ユーザーは相互影響なく再現性
の高い方法で回路上の試験手順を実施できる。
IC は試験基板に取り付けられ、 必要および / または希望す
る信号と電源の全てに接続されている。 この試験基板は DUT
(Device Under Test : 供試デバイス) の EMC 適合接続を可能
にし、 必要なフィルタ素子すべてを有しているので、 IC をその環
境から確実に分離できる。 試験基板は接続基板に接続されて
いる。 接続基板は供試デバイス (IC) を制御し、 モニタするた
めに使うユニットである。 試験基板と接続基板はグランドプレー
ン内に位置している。 グランドプレーンは、 試験のための基準
グランドである。 したがって、 供試デバイスと対応する試験シス
テム (プローブ) は、 RF 条件下できちんと接続でき、 測定セッ
トアップは小さなスペースで済む。 プローブは、 エミッション測定
ESD、 Burst) 用にさまざまなシステムが利用可能である。
IC 試験システムには、 ユーザーにとって以下のような長所
がある。
▪▪ 個々の部品のEMCパラメータを直接比較することができる
▪▪ 特定のレイアウトで部品を選ぶことができる。
▪▪ 部品のイミュニティに対する振る舞いが予測できる
▪▪ 同様に、ICメーカーは、ユーザーの回路をIC試験システム
で試験することで恩恵を受けることができる。
▪▪ 既存ICのEMCパラメータを検証できる
▪▪ 妨害の原因が明確になる
▪▪ IC試験システムのIC最適化プロセスを、効果的かつ適切な
方法で実施することができる
とイミュニティ試験の両方を実施するのに適している (図5参照)。
全ての IC 測定および試験 (開発中の測定だけでなく適合
プローブはグランドプレーン上に設置され、 低インピーダンスで
性評価測定) の性能を発揮し、 IC に関連した EMC パラメー
グランドプレーンに接続している。 試験者はプローブを使って、
タを決定するために適している。
どのピンにでも直接、 自由に接続することができる。 プローブ内
に完全な測定システムがあるため、 試験基板のレイアウトに統
合する必要がない。
本稿最初のパートに記載した動作の ESD 原理をシミュレー
Sven Konig氏は、ドイツBannewitzにあるLanger EMV-Technik社で半
導体電子部品の試験機器と測定装置を担当するエンジニア。ドレスデン
ションするために異なるプローブを使用することができる。 非常
生まれ。BautzenにあるStudienakademieで電気工学を学んだ。2007年
に低いインピーダンス ・ パルス発生器は使用中のプローブに統
よりLanger EMV-Technik社に勤務している。■
合され、 ESD の影響下で実際に使われている IC に作用する磁
気干渉の影響をシミュレーションする。 電界に起因する干渉メカ
ニズムは、 電圧プローブでシミュレーションすることができる。 こ
れは、 高いインピーダンスと非常に低い結合静電容量を持つ。
interference-technology.jp
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 33
保存版ガイドブック2016
2014年 11月号 掲載
SHIELDING
安価な放射イミュニティ予備適合性試験
Kenneth Wyatt
Wyatt Technical Services
E
MC コンサルタントとして、 最近、 私
声検波」 問題のために設定されている。 例
は放射イミュニティが大きな問題と
えば、 1 kHz 変調が半導体接合部または音
なっている多くの顧客プロジェクトに
声回路または他のアナログ回路によって検
遭遇しているように思う。 理由の1つとして、
波された場合、 バイアスの動揺や、 さもな
デジタル回路やアナログ回路に使用してい
ければ高感度アナログ回路の動揺の原因
る電源電圧が3.3ボルトおよびそれ以下に
になりうる。 軍用には、 レーダーによる妨
なる傾向があるので、 ノイズマージンが大幅
害をシミュレーションするのにパルス変調が
に減少することが挙げられるだろう。 高感度
役立つ。 強力な外部 RF 電磁界が原因で
アナログ回路も、 大いに影響を受ける。
起こりうることは以下の通り。
大部分の民生製品に対する放射イミュニ
ティ適合性試験は、 その製品の使用環境
や用途によって、 国際規格 IEC 61000-4-3
に基づき、 通常 80 MHz ~ 1 GHz ( 時には
2 GHz まで ) で 3 ~ 20 V/m の電界レベル
で行われる。 軍、 車両、 または航空宇宙
用途では、 200 ~ 1000 V/m で 18 GHz ま
でか、 それ以上の周波数の試験を必要とす
るものもある。
▪▪ システムの再起動
▪▪ アナログ回路またはデジタル回路の
動作異常
▪▪ 表示の読み込みエラー
▪▪ データ消失
▪▪ データ伝送の停止、減速、混乱
▪▪ 高いビットエラーレート(BER)
▪▪ 製品状態(モード、タイミング、その他)
の変化
RF 信号は通常、 民生用試験において 1
kHz の正弦波を変調率 80%で AM 変調さ
れ、 軍や航空宇宙用は短い間隔 ( わずか
▪▪ 測定時にノイズが入り込む
▪▪ 測定システムまたは受信システム(無
線)の感度低下
1% ) でパルス変調される。 この変調は 「音
34 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
W yat t
RF 電磁界 (最大 10 V/m またはそれ以上) 発生させ、 ケーブルや
コネクタまたは内部回路の周辺を精査できることもある。 製品の正
しい動作を何らかの方法でモニタする必要がある。 精査中の混乱
に注意すること。
小さいル ープのプローブでは 製品の感受性レベルに達し な
い場合、 ワイヤをさらに長くして、 製品の周りにゆるく巻きつけ、
的に RF 電磁界を結合させる。 次に、 このワイヤを RF 発生器の出
力に接続する。
私は RF 電力アンプをあまり必要としたことはないが、 極端な
ケースでは、 信号 発生器からの RF 出力を高めるために 10 ~
20 W の広帯域電力アンプを用意する必要があるかもしれない。
TV 用ラビットアンテナあるいは、 2本のワイヤをそれぞれ問題とな
図1.いざという時には、低コストで免許不用のFRS双方向トランシー
バを使って送信してみよう。
る周波数帯の約 1/4 波長の長さにカットし、 片方の端を同軸ケーブ
ルのシールドに、 もう片方を芯線側に接続した自作のダイポールア
ンテナといった単純なダイポールアンテナを使ってもよい。
本稿では、 強い RF 電磁界をつくる低コストの方法をいくつか解
電力アンプを使ったこの試験は、 既存の通信または放送サービ
説したい。 その方法は製品の RF 感受性特性を得るのに使える可
スに対する妨害を防ぐために、 シールド室内で実施されなければな
能性がある。
らないことに注意。
免許不要電波送信機
クイック ・ トラブルシューティングに使う低コスト技術の1つは、 ア
メリカで Family Radio Service (FRS) と呼ばれている免許不用の FM
USB 制御 RF シンセサイザ
最近では、 小さな USB 電源の RF シンセサイザが低価格で入手
トランシーバーを製品の感度が高い領域の近くにして使うことである
可能である。 手頃な例として、 Trinity Power 社製 (http://www.rf-
(図 1 参照)。 これらの無線機は、 出力レベルが 0.5 ワットで、 周波
consultant.com) の 「TPI Synthesizer」 がある。 この小さなモジュー
数 465 MHz 近辺を用いている。 周波数範囲は制限されるのだが、
ルは +17 dBm まで発生でき、 ユーザーがステップ周波数を最小
多くの RF 感受性問題は、 この単純な道具を使用して場所を特定し
1kHz で設定でき、 発生周波数範囲を 35 ~ 4400 MHz の間で調整
解決に導いた。
可能である。 これは USB 制御であり、周波数、スイープ制限、ステッ
他の ( 主に ) 免許不用のツールとしては、 携帯用 CB 無線機 (27
プ ・ サイズおよび電力出力3レベルを制御する PC ソフトウェアが付
MHz) および携帯電話 (または PCS) (700 MHz から 1900 MHz ま
属している。 定義したステップで電力レベルを制御またはスイープす
で様々 ) の送信などがある。 表1のリストでは、 選択した周波数帯
ることもできる。 私は Macbook Pro ノート PC 上で、 Parallels 9 環境
で放射する感受性試験に使用されるかもしれない数種類の (主に)
下で動く Windows 8.1 OS を使って、うまくソフトを使用したことがある。
免許不用送信機を取り上げた。 その中の GMRS* 送信機は免許が
このシンセサイザからの出力は 3000 MHz で始まり、 およそ +10
必要である。
dBm 出力へと漸減し始めるので、 同社は +10 dBm を発生する周波
式 1 を使用して、 送信出力 ( ワット ) と発信源からの距離 ( メート
数応答が一定になるように 「校正」 したシンセサイザを販売している。
ル ) が与えられれば、 推定される電界強度 (V/m) を計算することが
図 5 に 示 す Windfreak Technologies 社 (http://www.
できる。 表2は様々な送信出力の電界強度の数例を示す。
式1:
windfreaktech.com) の 「SynthNV」 もまた良い選択肢の1つで、 RF
への AM 変調またはパルス変調が可能である。 この RF 発生器は、
35 ~ 4400 MHz を 1 kHz ステップで調整でき、 出力抵抗 50 オー
ムに対し +19 dBm まで発生できる。 TPI シンセサイザより倍以上の
コストであるが、 RF 電力レベルを測定する手段も備えており、 単純
なネットワークアナライザとして構成することができる。 RF 出力は、
作業台上の RF 発生器
+19 dBm (ほぼ 100 mW) まで可変することもできる。
周波数範囲を調整できるトラブルシューティング技術としてもう1つ
それもまたナショナルインスツルメンツの Labview に基づき提供さ
非常に良い方法は、 作業台上に RF 発生器を用意し、 これに小さ
れたソフトウェアを使用の USB 制御である。 Labview の 「エンジン」
なE - 電界または H- 磁界のループ ・ プローブを接続することである
(図2)。 RF 発生器は少なくとも最大 +10 dBm ~ +20 dBm を作り出
せること、 高ければ高いほど良い。 それに加えて 1kHz の 80% AM
変調を RF にかけられる性能があればなお良い。 これによりイミュ
ニティ規格の要求事項にもっと適合するようになる。 これは強力な
interference-technology.jp
*訳者注
GMRSはGeneral Mobile Radio Serviceの略称。その他リストの無線機器
はアメリカでは合法だが日本での使用は電波法違反になるので使用でき
ない。日本で技術適合証明の取れている携帯電話やCB無線機などを使う
か、使う場合はシールド室内に限り、外に電波が漏れないようにする。
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 35
ノイズ対策
I/O ケーブルまたは電源ケーブルそれぞれの長さに沿わせて効果
SHIELDING
図3.Trinity Power 社製TPIシンセサイザは、大きさ約2×3.5インチ
で、35~4400 MHzで+17 dBmを発生することができる
にアナログ回路で) を明らかにするのを助けることができることで
ある。 これが起こるのは、 半導体接合部が検出器として動作し、
例えば変調された RF を検波してオペアンプのバイアスが変化した
図2.放射感受性に対して最良となるトラブルシューティング・セットア
ップの1つは、小さな磁界プローブに接続したRF発生器である。プロー
ブは製品の敏感な領域またはケーブルを敏速に特定する。信号発生器
のRF出力を調整して非常に迅速にゼロまで調整できる場合がある。
この小さな医用製品の場合、(いくつかの)シングル・リボン・ケーブルが
約950MHzで感受性があることを特定できた。
ときなどである。
私が SynthNV で試験およびレビューをしている間に気がついた
ことの1つに、ピーク変調サイクル中に発生する規則的な狭いグリッ
チがある。 これらは、 高速オシロスコープ (帯域幅 1 GHz 以上)
でのみ見ることができる。 しかし、 これらのグリッチはイミュニティ・
トラブルシューティングにおいては、 実際の問題にはならないだろ
は、 追加料金なしで使用可能。 Android OS 上で利用できる単純
う。 何かあるとすれば、 製品特性に対する 「過剰試験」 かもし
なコントローラ ・ ソフトウェアもある。
れない。 設計者はこの偏差を調べている。
SynthNV は基本的に、 TPI Synthesizer と同じ Analog Devices
「微小な N」 PLL のために、 正確に変調周波数を 1000 Hz に
ADF4351 PLL シンセサイザ IC を使うので、 RF 出力とより高次の
合わせることが可能でないと指摘もするかもしれない。 得られる
高調波はほぼ同じように見える。
最も近い周波数は 1008 Hz である。
図4のキャプションで述べたとおり、 両方のシンセサイザに起
こりうる1つの不都合は第2次高調波がちょうど基本波から 10 dB
近傍界プローブの測定
下がったところにあるので、 イミュニティ試験において事実上、 同
さまざまな (電界 ・ 磁界両方の) 近傍界プローブから予測され
時に2つの周波数で行われることになる。 つまり、 基本波が +19
る電磁界レベルの特性を明らかにするのに役立つ ETS-Lindgren
dBm で第2次高調波が +9 dBm ということになる。 明らかに、 こ
フィールド ・ センサーが測定に使われた。 プローブは、 各々の最
れは 10 : 1 の電力比であるが、 それほど問題にならない場合もあ
大出力 (+17 ~ +19 dBm) で TPI シンセサイザまたは SynthNV シ
る。 第3次 ( より高次 ) の高調波は、さらに 8 dB(またはそれ以上)
ンセサイザにより駆動された。
下がったところにあるので、 多分問題にならないだろう。
Beehive Electronics 社と Com-Power 社の磁界プローブは 50
磁界または電界のプローブを出力に接続することで製品の印刷
~ 1300 MHz の色々な周波数で測定された ( 図10参照 )。
回路基板の内側領域を調査し、 フィルタかシールドを必要とする
電界プローブは基本的に電気的構造が短縮モノポールアンテ
可能性のある敏感な領域を発見することができる。 1 kHz、 80%
ナであり影響する L-C ネットワークを多く持たないので、 予想どお
AM 変調を加えることで得られる利点は 「音声検波」 問題 (一般
デバイス
およその
周波数
最大電力
1m距離での
およそのV/m
Citizens
Band
27 MHz
5W
12
FRS
465 MHz
500 mW
4
GMRS
462 MHz
1~5 W
5.5~12
3G Mobile
Phone
830 MHz /
1.8 Ghz
400 mW
3.5
表1.制限された放射電磁界感受性試験中に高いRF電磁界をシミュ
レーションするため使用されたと思われる入手可能な送信機(主に
免許不用局)リスト。
36 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
Pout(W)
1m距離での
V/m
3m距離での
V/m
10m距離での
V/m
1
5.5
1.8
0.6
5
12.3
4.1
1.2
10
17.4
5.8
1.7
25
27.5
9.2
2.8
50
38.9
13.0
3.9
100
55.0
18.3
5.5
1000
173.9
58.0
17.4
表2.計算された電界強度 単位:V/m (アンテナ利得を1と仮定)
2016年版ガイドブック
W yat t
り周波数応答が少々平坦になる (図11参
照)。
近傍界プローブの長所は、 電磁界レベル
が距離に反比例して急速に低下するので、
回路を別々に評価し、 感受性の高い領域を
決定するのが容易になることである。 近傍
ノイズ対策
界プローブからの距離と電界レベルとの関
係は図12を参照。 距離 3 ~ 4 cm だと電界
レベルは基本的に 1 V/m 以下である。
図13に示すのは、 Raspberry PI 組込型
プロセッサを精査しているところである。 プ
ローブを色々な周波数で印刷回路基板や I/
O ケーブルの周囲でスイープすることによっ
て、 実際の適合性試験で製品がきちんと
動作することにかなりの確信を持つことが
図4.TPIシンセサイザからのRF出力は、位相ノイズはかなり低いが、高次の高調波は基本波
から10dB低いだけである。
できる。 もし疑問に思うなら、 Raspberry PI
には、 私が導入可能な RF レベルのイミュニティがあった。
要約すると、 こういった単純で低コストのツールは、 製品の適
合性試験に進む前に、 事前適合性評価をきちんとおこなうのに役
立つ。 そして多くの時間とお金の節約になる。 短くまとめると :
▪▪ RF発生器は、近傍電界プローブまたは近傍磁界プローブを
用いて、事前適合性試験用に局所的な強い電磁界を作るこ
とができる。
▪▪ 今は低コストのRFシンセサイザがあって、大きなベンチトップ測
定器に代わって使用されるようになるかもしれない。
▪▪ 製品の放 射イミ ュ ニティ問題の診 断支援 のために 局所
的な2~15 V/mのR F電磁界が発生するかもし れ ない。
Kenneth W yatt氏は、Wyatt Technical Services社の上級EMCエンジニ
図5.Windfreak Technologies社のSynthNV RF発生器は、USB制
御で周波数範囲35 ~ 4400 MHzである。放射イミュニティ規格IEC
61000-4-3に従って、RF出力を1 kHzでAM変調もできる。
(写真提
供:Windfreak Technologies社)
アで、生物学と電子工学の学位を持っている。製品開発エンジニアとして1
0年間、数多くの航空宇宙産業関連会社にて、船舶搭載用および宇宙シス
テムのDCDC電源コンバータからRFからマイクロ波システムまで、さまざまな
プロジェクトに従事した。また20年以上、米国Colorado SpringsのHewlettPackard社とAgilent Technologies社で上級EMCエンジニアを務め、EMC
設計やトラブルシューティング、製品適合試験などを広範囲に手がけた。そ
の間、EMCトレーニングを実施し、EMC業界にリーダーシップを発揮した。
RFアンプ設計、RFネットワークアナライザのソフトウェア、製品のEMC設計、
シールド効果予測に使う高調波コムジェネレータの使用などのトピックスにつ
図6.SynthNV RFシンセサイザのコントロールパネル配置は使いやすい。
いて多数の著述、講演をこなしている。Wyatt氏の専門はEMIトラブルシューテ
ィング。RF Design、Test & Measurement World, EMC Design & Test, Electronic
Design, EDN, InCompliance, Interference technology, Microwave Journal, HP
Journalなどの雑誌に記事を発表。EMC Pocket Guide (SciTech Publishers)
の共著者であり、w w w. ED N .com にてEM Cブログを掲載している。
Wyatt氏はIEEEのシニアメンバーで、10年にわたりEMCソサエティの公式
カメラマンも務めている。連絡先は、ken@emc-seminars.com またはwww.
emc-seminars.com ■
図7.RFスイーパー機能用コントロールパネルは、
下限と上限の周波数
だけでなく100 MHz ~ 1 kHzのステップ・サイズ設定が可能である。
interference-technology.jp
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 37
SHIELDING
図8.SynthNVからの80%AM変調RF出力に周期的なグリッチが何
本か見える。設計者がこれを調べるに当たり、これらのグリッチがイ
ミュニティ・トラブルシューティングに関する限りは大きな問題ではな
いと考えている。
図9.この単純なセットアップは、いくつかの近傍界プローブを測るの
に使われたものである。アンテナエレメントに2mmまでプローブを近
づけられるように「Z軸」アンテナの覆いは外されている。これは、
回路パターンの近くにRF電磁界を当てシミュレーションに役立った。
電界プローブ、2mm距離の電界レベル(V/m)
電界レベル(V/m)
電界レベル(V/m)
電界レベル(V/m)
磁界プローブ、2mm距離の電界レベル(V/m)
周波数(MHz)
周波数(MHz)
図11.Com-Power社とBeehive社の電界プローブの両方で周波
数応答を測定。電界レベルは磁界プローブに比べて、はるかに平坦
である。
図10.いくつかの磁界プローブからの電界レベル。
「BH」はBeehive
Electronics社を表し、プローブサイズはそれぞれLg: Large(大)
、Med: Medium(中)、Sm: Small(小)。Beehive社のプローブ大と
Com-Power社のプローブは両方とも1000 MHzを超える周波数で共
振しているように見える。
電界レベル(V/m)
近傍界プローブからの距離に対する電界レベル
距離(cm)
図13.Windfreak Technologies社製のSynthNVを使って組込型プ
ロセッサRaspberry PIを評価する。
図12.いくつかの近傍界プローブの距離に対する電界レベル。最も
高い電界レベルはプローブチップからおよそ1cm以内で起こる。
38 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
保存版ガイドブック2016
Suriano
2015年1月号 掲載
Candace Suriano
Consultant"graduate degree"
Suriano Solutions
John Suriano
Consultant
Suriano Solutions
パート 1:携帯電話がステレオ
から話しかけてくる !
興味深い問題が発生して、 忙しくしていま
す。 コンピュータのスピーカーがおかしな
動作をして困っているんです。 棚に置いて
John へ
雪
ある私の携帯電話が2.5メートルほど離
のせいで子供たちと家に閉じ込
れたコンピュータのスピーカーから何度も
められています。 そちらは EMC
私に話しかけてきたりしてね。 意味のある
ラボで何か難しい問題を解決し
言葉じゃなく、モールス信号のようなブザー
ているんでしょうけれど、 こちらもいろいろ
みたいな音で話すんです。
ええ、 まだ 「スマートじゃない」 電話を
使っています。 あなたがスマートホンに変
えてほしいと思っているのは知ってますけ
ど。 1.9GHz で動作する GSM 携帯。 いくつ
かシンプルな試験をして、 ちょっとすごい結
携帯電話
論に達しました。 これで EMC の基本原則
をうまく図示できるはずです (図1)。
まず、 基本的な観察をしてみました。 携
帯のせいでスピーカーに周期的なノイズが
生じています。 携帯をスピーカーの上にか
ざして電話をかけ、 次にテキストメッセージ
を送信。 どちらの場合もノイズが生じまし
アナログ出力の
オーディオデバイス
た。 電話のリンガー*やバイブはノイズと関
アンプ内蔵スピーカー装置
図1.携帯電話がコンピュータのスピーカーを妨害
interference-technology.jp
*訳者注
携帯に内蔵されているメロディを奏でるデバイス
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 39
SHIELDING
EMC評価
家庭内“EMCの乱”:妻からの手紙
TESTING
携帯電話
の
信号
1.9GHz
での
信号強度
図2.携帯電話の通信は、1.9GHz信号のバーストで構成されている
図3.1.9GHzの信号
係がないようです。
繰り返し率は、 図2で示すようにミリ秒レベル。 バースト1つにつ
現在位置を知らせるために、 携帯からネットワークにときどき
き 1.9GHz の変調波が入っていて、 情報は位相変調でエンコー
信号が送信されます。 だから携帯が定期的にノイズを出している
ドされます。 スペクトル ・ アナライザを 1.9GHz で 0 スパンに設
場合は、 携帯のホーム (この家じゃなくて) にかけているんだと
定すると、 図3のようなパルス波形としてバースト信号が示され
理解できるわけ。 ホームにかけているか普通の電話をするかで、
ます。
次に、 娘の France が持っているスピーカーを借りてきて (図
妨害の現れ方に大きな差はないようです。
4)、 携帯の信号に感受性があるかどうか調べました。 France
携帯電話からの信号は、 バーストで送信されます。 バーストの
図4.携帯電話およびコンピュータのスピーカー(カバーを外した状態)
40 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
図3:各部の名称を変えた簡略化された構成図
2016年版ガイドブック
Suriano
EMC評価
出力電圧
図5.携帯電話通信中のスピーカーアンプの出力電圧
図6.エミッタフォロア回路:基本的トランジスタ回路要素
のスピーカーにもノイズが現れたので、古い Velleman PC スコー
ます。 携帯電話は、1.9GHz の信号のバーストを送信しています。
プでスピーカー回路基板を調べてみました。 図5は、 携帯電話
携帯で送信がおこなわれる度に、 トランジスタの出力電圧にオ
が通信している間のスピーカードライブ IC の出力ピンの 1 つを
フセットが起こる、 つまりスピーカーの電子機器が携帯の出力に
測定したもの。 スピーカーの IC は、 カスケードされたオペアン
対して包絡線検波回路の働きをしているということ。 通信バース
プで構成された市販のステレオ ・ アンプです。
トの繰り返し率がミリ秒オーダーなので、 伝送からの電圧オフ
オペアンプの主要な要素の 1 つはエミッタフォロア回路です。
セットはアンプ回路に聞き取れる周波数のノイズを生じさせます。
図6は典型的なエミッタフォロア回路。 こんな単純な回路がな
このように、 データのバーストの間でスピーカーの電子機器が
ぜ携帯の影響を受けるのか不思議。 図7のような古い 「20 in 1
一時停止をピックアップするため、 ノイズが可聴域になります。
Electronic Project Kit」 を使う以外に方法は思いつきませんで
長い連続波信号は電圧出力の長いオフセットを発生させま
した。 携帯電話を回路の近くに持ってくると、 エミッタフォロア回
す。 携帯電話の代わりに携帯無線送信機の1台を使って同じ実
路は、 確かにノイズを受信していました。
験をしてみました。 図9は、 無線送信機のキーを押していると
携帯からのエミッタの電圧は、 図8にあるとおり。 エミッタフォ
き、 電圧オフセットがどう現れるかを示しています。 なのでスピー
ロア回路は、 スピーカー回路と同じく、 私の古い携帯が出す信
カーの電子機器は、 可聴域ではなく、 まだエミッタフォロア回路
号に感受性があるようです。 これは実際、 基本的な感受性問
へ結合しています。
題の一例ですね。 意図的あるいは非意図的な放射器からの
RF 送信によって、 あらゆる電子機器に刺激と問題を生じる
RF 信号は、 トランジスタ回路で直流電圧を発生することができ
のは明らかです。 機器の動作に影響を及ぼすトランジスタ回路
で RF 信号が結果的に直流電圧になること
もあるかも。 そんなわけで、 感受性試験に
は RF 電磁界環境に曝すとか、 多くの試験
があるのです。 図10で示すように、 携帯電
話はトランジスタ回路内に RF 電流を誘発す
ることができます。 RF 電流はトランジスタで
整流され、 ベースとコレクタの間に直流電圧
低下が起こり、 トランジスタのバイアスが変
わって回路の出力電圧が低くなります。
これには全く当惑しました。 この問題がど
れほど拡大するのか想像もつきません。 病
院や飛行機で携帯電話が嫌われるのも道
理ですね。 多くの電気機器に放射電磁界感
受性の試験をするのは良いことだと思いま
す。
図7.20 in 1 Electronic Project Kitエミッタフォロア回路の実装
interference-technology.jp
この古い携帯をまだ使うつもりですが、 家
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 41
にあるスピーカーからのノイズは何とかしたい!スピーカーとス
ピーカー信号ワイヤから携帯をシールドするのに、 まずホイルを
使ってみました。 スピーカーとスピーカー信号ワイヤを信号から
シールドすると、 スピーカーはノイズを発生しませんでした。 携帯
の後ろやまわりにホイルを置いた場合、 シールドできて、 携帯は
スピーカーの電子機器に結合しませんでした。 けれど、 うちの子
TESTING
供たちは、 母親がぴっかぴかのホイルで包んだ携帯を使うのは
嫌みたいなので、 携帯電話のシールド方法としてはよろしくありま
せん。 子供の新しいスマートホンだと、 スピーカーから聞き取れ
るようなノイズは出ません。 理由の1つは、 電話をかけるとき家で
は無線を使うから。 でも無線通信を使えなくしても、 エミッタフォ
図8.携帯電話の通信が原因でエミッタフォロア回路内は電圧オフセットされ
ロア回路への聞き取れるような結合はありませんでした。 スマー
る
トホンは昔の携帯のようにバーストで送信していないからです。 ス
マートホンの送信をオシロスコープで見ると、 最初のバーストで送
信して、 次に連続的に送信しています。 たぶん送信波形が4G だ
からでしょう。 それによってスピーカーアンプには直流オフセットが
生じるかもしれないけれど、 これはパルスではありません。
こんなところでしょうか。 手紙の最後に参考文献をいくつか紹
介しておきます。 お返事待ってます。 ではまたね。
Candace より
参考文献
1. Paul Horowitz and Winfield Hill, The Art of Electronics,
Cambridge University Press, New York, 1980.
2. Victor Grinich and Horace Jackson, Introduction to
図9. 携帯無線送信機のキーをオンにしている間の電圧低下
Integrated Circuits, McGraw Hill, U.S.A., 1975.
Candace S uriano氏は、GMI Engineering & Management Institute
(BSME)の卒業生で、Purdue Universityで大学院の学位(MSME, MSE)、
整流された
電圧
University of Daytonで博士号(Ph.D.)を取得している。電磁両立性に関す
る多くの論文および記事を執筆し、IEEE EMCシンポジウムで数回、アンテ
ナとプローブのワークショップの議長を務めた。CandaceはLibrary Kitの寄
誘導電圧
付をしたり、Southeastern Michigan IEEE のグループでプレゼンをおこなっ
たりして、若者の電気工学探求を支援している。電磁的両立性と電磁気の
出力電圧
モデリングが興味の対象。またMOMに興味を持つmom(母親)でもある。
John Suriano氏は、GMI Engineering & Management Institute (BSEE)
の卒業生で、Purdue University (MSME, Ph.D)の大学院の学位を持ってい
る。電磁的両立性とモーター設計について多くの論文と記事を執筆。ミシガ
ン州Auburn HillsにあるNidec Automotive Motor AmericasのEMC研究所
図10.携帯電話の送信は整流された電圧オフセットを発生させる
を率いており、電気モーターと電磁気のモデリングが興味の中心である。■
42 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
保存版ガイドブック2016
R adask y
2014年11月号 掲載
(2012年からの見解)
Dr. William A. R adasky
President and Managing engineer
Metatech corporation
ieee life fellow
IEMI とは何か?
interference-technology.jp
この脅威に対し本気で防御に取り組むこ
近頃のハリウッド映画のヒット作 (オー
とを勧告する決議を可決した。 同年、 IEC
シャンズ11) では、 犯罪者とテロリストが
SC 77C は業務内容 (scope of work) を
電磁兵器を使用してラスベガスの一部を
広げ て、 元々は 電 磁 テロと 呼 ば れ、 後
停電させてテロ対策コンピュータセンター
に 意 図 的 電 磁 妨 害 (IEMI: Intentional
を停止に追い込むという可能性が描かれ
Electromagnetic Interference) と名称を
ていた。 これは、 事実なのかフィクション
変えた事象に対応するレポートおよび規
なのか? このケースではハリウッド映画
格の作成を始めた。 IEMI は 「テロまたは
が、 この種の脅威について市民や警察機
犯罪目的で意図的かつ悪意のある電磁エ
関が理解できるよう導いていることがわか
ネルギーを発生させて電気 ・ 電子システ
る。 しかしフィクションであると同様に、 大
ム内にノイズや信号を送り込み、 システム
きな発生器を使って変電所あるいは自動
の破壊や混乱、 損傷を狙うこと」 と公式
車のトランク内にある爆発装置へ接続す
に定義されている。
るという点でこの2例は極端である。 どち
この脅威が近年顕在化してきた理由と
らの状況も、 電磁兵器が重要なインフラ
して、 2つの要因が挙げられる。 まず、 強
に対して使われる見込みは全くない方法
力なソリッドステート電子機器によって非
である。
常に短いタイムドメインパルス内で高いレ
1990年代後半、 評判の良い2つの国
ベルのピーク電力を生成する電磁兵器の
際的な科学 ・ 技術組織が、 電磁兵器の
開発が可能になったこと。 こういった兵器
社会に対する脅威を理解するために最初
の目的は高いピークの電界 ・ 磁界を生み
の対応を実施した。 URSI (国際電波科学
出すことなので、 パルスに含まれるエネ
連合) は1999年、 カナダの首都 オタワ
ルギーはさほど重要ではない。 これによ
で開催された総会で、科学者と技術者は、
り電磁兵器の作動に小さいエネルギー源
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 43
サージ SHIELDING
& トランジェント
重要な社会基盤に対する
電磁兵器の潜在的影響力
SURGE & TRANGENT
通信および
データライン
移動電磁波
送信機
窓
ネットワーク
商用電源
図1.IEMI相互作用について1つのシナリオ(画像:Metatech)
を利用できるようになった。 2番目の要因は、 最新の民生電子
際空港地域のGPSシステムが妨害電波により動作停止
機器およびコンピュータは GHz 帯域のクロック ・ スピードと低い
状態になり、航空会社に警告を発したという報告もある。
内部動作電圧のマイクロプロセッサを使用しているので、 この使
用周波数と電圧範囲内の電磁的脅威となる妨害や損傷に対して
はじめに
潜在的に弱くなっていることである。
電磁兵器は、 放射と伝導という2つのカテゴリーで構成され
IEMI の脅威 / 攻撃のいくつかの事例は、 文書で十分に裏付
ている。 両タイプとも、 エネルギー源 (電池など) や、 時間あ
けられていたが、 その他多くの事例は、 攻撃の厄介さやセキュリ
たりで高速変化する高電圧出力を発生するソリッドステート発生
ティの問題から公然と議論されていない。 ここでいくつか例を挙
器を有し、 電磁波を電磁兵器からある程度離れた場所へ伝搬
げてみよう。
(放射電磁界) させるよう設計されたアンテナまたはシステム
1. 日本では、パチンコ台に電磁兵器を使って当たりが出るよう
の配線に接続する手段 (伝導電圧) のどちらかを持っている。
放射電磁界は (攻撃者に対して) 適応性があるが、 電磁兵器
誤動作させたとしてヤクザが2名、逮捕された。
2. ロシアのサンクト・ペテルスブルクの宝石店では、1人の犯
から離れると急速に減衰する。 伝導兵器は、 建物の外側の電
罪者が電磁兵器で防犯システムを使用で きなくして窃盗
力ラインまたはデータラインに接続する必要があるが、 伝導兵
を働いた。
器の全出力は、 攻撃対象の回路へ送られる。 伝導攻撃の脅
3. ロンドンで、電磁兵器の使用が銀行システムに対する脅威
威はたいしたことないと思うかもしれないが、 建物には無防備
なデータ ・ キャビネットが、 そして建物の外部に電源プラグがあ
になるとして、ある都市銀行が恐喝のターゲットとなった。
4. モスクワでは通信センターが標的になって、24時間にわ
ることが分かっている。 電力システムの経験がある人なら建物
内へと導くトランスの低電圧出力につなげることができる。
たり使用不能になり、20万人の顧客にサービスが提供で
図1は、 電磁兵器から建物へ放射電磁界が 「結合」 する基
きなくなった。
5. 韓国ソウル市では、2011年3月初め、産業用に使われてい
本的なプロセスを示す。 電磁界は、 建物の外部配線と内部配
る多数のGPSシステムが使用不要になる持続的な電子妨
線( 建物のシールド特性は内部配線に重要である) に電圧と
害攻撃を被った。さらに韓国軍は、軍のシステムも悪影響
電流を誘導する。 この電圧は、 多くの場合、 電子機器の入力
を受けていたと述べた。2012年初めには、韓国・仁川国
44 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
R adask y
が耐えられないレベルで機器に達す
る。 建物外部ケーブルの入り口にラ
イン防御 (サージ ・ アレスタ/フィル
タ) を、 建物外壁内に電磁シールド
サージ & トランジェント
を備えれば、 この脅威に対してある
程度の防御ができる (後述)。
電力、 通信、 金融、 水、 天然ガ
スなどの重要な社会基盤のほぼ全
ては、 年々進歩するコンピュータに
よってコントロールされている。 例え
ば、 世界各地の先進地域は家庭や
職場に、 データを解析する通信シス
テムだけでなくデジタルスマートメー
タを設置している。 さらに、 広範囲
に更新された電力システムには、 送
電 網の効率よい動作を決定するた
めに追加のセンサーが必要となる。
処理される情報量の増加と付随的
な通信条件は、 問題を生じさせるこ
とを望む人々 (ハッ カ ー、 犯 罪 者、
テロリストなど誰であろうと) に対し
てシステムを脆弱化する。
図2.JOLT発信機は、 ピーク電圧5.3メガボルトで、パルス幅1 nsで1秒につき600回の繰り返し率で電界を
発生する
重要な 社会基盤にと っては安全
確保が常に重要な課題であるが、 鍵のかかった扉または防壁
はこの問題に関係する分かりやすい定義が必要だと判断した。
でさえ、 電磁兵器には障害とならない点に注意しなければなら
IEC は 「mesoband」 「subhyperband」 「hyperband」 な ど、 広
ない。 コンピュータの不具合に気がつくまで誰も攻撃を受けて
帯域波形を記述するための新しい用語を IEC 61000-2-13 * で
いることに気づかないのと同様、 攻撃者は成功するまで、 繰り
定義した。
返し施設を破壊しようと試みることが可能である。
システム脆弱性の観点から言えば、 電気エネルギーが狭い
周波数帯域内で供給されるので、 狭帯域の脅威は通常、 非
技術的バックグランド
電磁兵器特性
電子機器に対する脅威を理解するためには、 曝された機器
に動作的な問題を起こす可能性のあるさまざまな種類の電磁
常に高い電力の1つである。 1つの周波数でおよそ数千ボルト
/ メートルの電磁界を発射照射させるのは、 かなり簡単である。
器 材を狭帯域波形で テストする際に観察される機能不全は、
永久的な故障であることも多い。
環境を理解する必要がある。 関係する基本的な2つの電磁環
広帯域の脅威は、 この点でいくぶん異なる。 タイムドメイン
境には、 狭帯域と広帯域がある。 また上述したように、 この電
パルスは同時に多くの周波数に電力を発生させるので、 どの周
力がシステムに供給される2つの主要な方法に放射と伝導のプ
波数であっても1つの周波数に発生する電力は非常に少ない。
ロセスがある。
これは、 狭帯域で発生するような故障はほとんどないことを意
狭帯域波形は、 一定時間内 (100 ナノ秒~マイクロ秒) に供
味する。 発生源からは1秒間に最高100万回の繰り返しパル
給されるほぼ単一の周波数 (一般的に中心周波数 ±1% 以内
スが発生し、 数十秒間あるいは数分間継続できるので、 シス
の帯域幅) である。 このカテゴリーの環境には、サイン波変調、
テム不調をもたらす可能性が高くなる。 こういった不調の一部
周波数シフト、 規則正しく反復するアプリケーションなどがある。
は、 データ通信を妨害し、 異なる方法でサービスを拒絶する。
このカテゴリーの脅威は、 通常、 高電力マイクロ波 (HPM) を
非常に強力な広帯域の発信機の一例は、 研究目的のため
想定したものだが、 この用語はマイクロ波の周波数範囲外も含
む大まかな使われ方をしている。
広帯域波形 ( 超広帯域 ‘UWB’ または短いパルス ‘SP’) は、
通常タイムドメインパルスで供給され、 しばしば繰り返し形態をと
る。 「広帯域」という用語は、通常波形内の電力が「中心周波数」
に絡んだ相当広い周波数範囲で生じることを意味する。 もちろ
ん、 多くのパルス波形は明確な中心周波数を持たず、 技術団体
interference-technology.jp
* 訳者注
IEC 61000-2-13 Electromagnetic compatibility (EMC) - Part 2-13:
Environment - High-power electromagnetic (HPEM) environments
- Radiated and conducted
「電磁両立性(EMC)-第2-13部:環境-高電力電磁(HPEM)環境-放射
及び伝導」
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 45
に米空軍によって開発された。 2004年7月、 JOLT シミュレー
機器に、 5 kV/m の範囲で損傷するという不調を生じることが
ターおよびその能力が IEEE Proceedings で発表されて有名に
わかる。 金属導線のイーサネット ・ ケーブルへの結合に相当す
なった。 図2に発信機の写真を示す。
るパルス電圧が原因で回路基板の部品が損傷した例を図3に
民生電子機器の脆弱さ
示す。
SURGE & TRANGENT
過去15年間にわたり、 IEMI から想定される脅威に似た狭
こういう実験は通常、 放射アンテナの見通し範囲内の供試
帯域 ・ 広帯域の脅威に対し、 民生機器の反応をテストする重
機器に直接照射して実行されることに注意し なければならな
要な実験が実施されていた。 PC 機器 (ネットワーク含む) が
い。 もちろん、 機器がビルの内部または窓のない部屋内にあ
さまざまな産業で広く使われているので、 このテストでは一般
る場合、 外部から内部に入射する電磁界は (建築物の壁次
的に PC 機器に重点を置いていた。 また、 テストされたのは
第で) 減少する。 また、 ほとんどの実験では偏波と入射角に
ATM、工業用制御装置、電源、イーサネット構成部品、Wi-Fi ネッ
ついて十分注意深く調査していないので (時間と費用のため)、
トワーク、 自動車、 GPS 電子機器、 携帯電話、 PDA、 さまざ
最適の幾何学的結合を考慮すると、 テスト中で注目すべき結果
まな種類のセンサーなどである。 多くの雑誌記事や学会論文
の多くは、 低い電磁界レベルでも起こりうる。
等で、 この実験の詳細を扱っているので、 ここでは結果をまと
伝導 IEMI の脅威については、 攻撃者が外部の通信 ・ 電源
めるだけにする。
ケーブルにアクセスするのを阻止できない場合、 建物内に有害
マイクロプロセッサを使用している最新のコンピュータおよび他
な信号を注入するのは非常に簡単である。 パルス波について
のタイプの機器は、 30 V/m 以上の放射狭帯域電磁界による機
は、 およそ100マイクロ秒のパルス幅が機器の電源供給およ
能低下に対して脆弱なように見えるが、 新しい高速 PC は、 より
び回路基板のインターフェースに、 500ボルト以下と低いもの
高い感受性 (~ 300 V/m) を備えている。 特定の実験セットアッ
の、 もっと一般的には 2 ~ 4 kV レベルで損傷を発生させる可
プと使われている機器のエンクロージャ品質によって、 機器の反
能性がある。
応に大きな違いがあるように見える。 そのうえ、 1 ~ 10 GHz の
範囲で実施されたテストは、 低い周波数、 低い電磁界レベルで
IEC イミュニティ規格との関係
機能低下が起こることを示しているようである。
広帯域の放射電磁界テストは、 ロシア、 スウェーデン、 ドイツ、
これらの故障の重要性は、 電磁兵器の能力に関しては大し
U.S. の科学者によっても行われた。 コンピュータサイズの電子
たことはないように見えるかもしれないが、 突然の故障があって
機器をテストすると、 パルス幅およそ 200ps のパルスで 2 kV/
はならない。 IEC 規格において日常的な電磁的両立性イミュニ
m までのピーク電界レベルにより電源リセットを必要とする電子
ティ試験の要求を調べると、 10 V/m (80 MHz を上回る周波数)
図3.ネットワーク・インタフェース・カード上の破壊されたコンデンサ
46 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
R adask y
を上回る狭帯域放射電磁界イミュニ
ティ要求レベルは異例である。 追加
の防御にかかる費用のために、 住
宅や工場の用途では高いレベルは
シールド効果測定
シールド性能
dB
部屋
シールド性能dB
2
木造屋根の下の部屋
4
木造建物の部屋1
4
コンクリート(鉄筋なし)
5
レベルで実行される。 発電設備や
木造建物の部屋2
6
変電所のような特殊な場合のみ、 イ
鉄筋コンクリート+の部屋1
7
鉄筋コンクリート+の部屋2
11
鉄筋コンクリート+の部屋3
11
鉄筋コンクリート+の部屋4
18
金属製の建物
26
鉄筋コンクリートかつ頑丈に保護された部屋
29
0
広 帯 域 伝 導 過 渡 現 象 に つ いて
は、 たいていの EMC 用雷 ・ 電気的
高速過渡現象試験は、 2 kV までの
ミュニティ試験レベルは高くなる。 一
般的な EMC 伝導広帯域試 験波形
(例えば EFT) は、 立ち上がり時間
は 5 ns と速く、 パルス幅は 700 μ s
と長い (例えば 61000-4-5)。 EMC
試験用の最も狭いパルス幅は 50 ns
5
10
20
30
で、 一般的な IEMI の脅威よりはる
かに広い。
表1.いろいろな電源システムの建物と部屋の周波数範囲1MHz~5GHzのシールド効果測定
ゆえに、 民 生 用電子 機 器 の EMC イ ミ ュ ニティ ・ レ ベルは、
IEMI 電磁環境の感受性レベルに比べて、 低いことは明らかであ
る。 これは、 通常の EMC イミュニティ防御が IEMI 問題に対して
十分でないことを示している。 そのうえ、 JOLT のような発信機
ブルに結合した場合、 ケーブルへの結合を減らすか、 結合信号
の影響を制限する努力をしなければならない。 これを達成する
ための方法を以下に示す。
が使われれば、 距離100メートルの範囲で 50 kV/m を発生させ
▪▪ ケーブルを金属表面に沿って配置する。
ることができる。 これは、 無防備な大部分の電子機器では、 損
▪▪ シールドされたケーブルおよびコネクタを使用する。
傷レベルの10倍超にあたる。
▪▪ 金属ケーブルにフェライトを使用する。
▪▪ 機器との接続部にサージ保護デバイスを使用する。
防御方法
感受性の高い電子機器を収容している建物に対する基本的
な IEMI 防御方法は、 十分に低インダクタンスのグランド ・ システ
ムを備えたフィルタとサージ保護デバイスによって、 建物外部か
ら入る全ケーブルを入り口で確実に保護することである。 結合し
た妨害の周波数成分は 100 MHz を超え、 単純なケーブルグラ
ンドが高インピーダンスを持つので、 この方法が必要である。 第
2の方法は、 どんな減衰もなく建物を透過してくる外部の電磁界
を減らすことである。 透過してくる電磁界について、 内部の電磁
界に対処する方法がある。
電磁界レベルを緩和するためのいくつかの選択肢は以下の通
りである。
▪▪ 金属ケーブル を金属でない光ケーブルに置き換 えて使用
する。
建物のシールド
IEMI 兵器の強さおよび電子機器と関連したその置き場次第で
は、 外部のピーク電磁界が 10 kV/m より大きくなることが考えら
れる。 そういった電磁界は、 一般的な建築方法により提供され
た天然のシールドにもよるが、 周波数範囲 1 MHz ~ 5 GHz であ
まり減衰しないこともある。 表 1 は、 異なる種類の建築資材の建
物で測定した結果を示す。 減衰量に大きな違いがあることは明ら
かである。 右端の列では得られた測定値を、 左端の列に測定値
のおおよそのカテゴリーを示す。
建物自体の対応には2つの方法がある。 シールド効果を改善
1 建物の電磁シールドを改善すること。重要な周波数範囲
するには、 まず窓の開口部がある場合にはカバーする、 建物の
で建物のシールド効果の品質を高める。例えば、窓から
外側表面を金属材料で覆う、 金属材料を建物内部の壁に追加
は高周波電磁界が漏れるので 金属シートで覆わなけれ
する (金属製の壁材)、 あるいは既存建物をすべて金属製のビ
ばならない。
ルに建て替える (明らかに最も高価な選択肢だが) といった方
2 アンテナからの距離Rに反比例(1/R)して電界が減衰する
法がある。 また、 採用する方法には関わらず、 外部電力・通信・
ので、攻撃者を遠ざけるフェンスなど物理的なセキュリティ
制御ケーブルはすべて、 低いインダクタンス技術 (ワイヤではな
を用いて遠方から電磁兵器を攻撃可能な距離を延ばす。
く平板) を用いて建物入口でグランドを取らなければならない。
3 電磁環境をモニターする電磁アラームを使ってIEMI攻撃の
開始と継続を監視する。
IEMI 電磁界の高いレベルが施設内に達し、 ネットワークケー
電磁アラーム
多くの場合、 電磁兵器が送信している間だけコンピュータと他
の電子機器に大きな妨害を作り出すかもしれないので、 IEMI 源
interference-technology.jp
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 47
サージ & トランジェント
全て木造の建物
勧められない。
が近くで連続動作している場合は、 検出
器を使うことに何らかの価値がある。 た
とえ攻撃期間が短かったとしても、 検出
器は科学捜査の観点から役に立つ。 電
SURGE & TRANGENT
磁環境 (狭帯域からハイパーバンドまで)
は多様なので、 広い周波数範囲と時間
間隔をカバーする検出器を作るのは容
易でないが、 図4にポータブル検出器の
一例を示す (8 GHz まで校正済)。 他の
検出器は敏感な電子機器の近くに永久
に設置される。
防御への取り組み
本 稿の導入に お いて述べたように、
URSI 決定の後、 IEC は IEMI に対応す
る標準化作業を本格化し始めた。 そして
下記に示すとおり IEEE、 ITU-T、 Cigré
図4.IEMI検出器の例
の内部活動に至った。
チおよびエンジニアリング研究を通して、 我々の社会をこの脅
▪▪ IEC、1999年よりIEMI規格開発を開始。
威に対して強化するいくつかの方法が明らかになった。 将来に
▪▪ IEMIについての特別記事を掲載したIEEE EMC Societyの
向けての挑戦は、 物理的防御、 電磁的防御、 そして最終的に
学会誌を2004年8月 に発行。
は電磁界検出を含む防御について、 最も費用効果の高い方法
▪▪ HPEM (I EM I)から通信システムを防御するためのイミュ
を決定することである。 また、 施設運営者の教育も重要なゴー
ニティ指針として、ITU-T K .81勧告が、2009年に発行さ
ルであり、 本稿によってそのことが少しでも広まれば良いと願っ
れた。
ている。
▪▪ IEEE EMCソサエティは、一般社会でアクセスできるコンピ
ュータをIEMIの脅威から保護するための推奨対策P1642
さらに詳細を知るために
(P1642-Recommended practice for protecting public
▪▪ HPEMとIEMIを扱うIEC SC 77Cによって作成された規格
accessible computers from IEMI)が発行された。
(www.iec.ch)
▪▪ 高電圧変電所の制御電子機器をIEMIから保護するために
▪▪ 「高電力電磁気(HPEM)と意図的電磁妨害(IEMI)特別出
作成中のCigré C4 Brochurは2012年末までに出版予定。
版」IEEE Transactions on Electromagnetic Compatibility,
標準化活動に加えて、連邦エネルギー規制委員会 (Federal
Volume 46, No. 3, August 2004.
Energy Regulatory Commission) と 米 国 エ ネ ル ギ ー 省
▪▪ 「電気通信システムの高電力電磁イミュニティ・ガイド」ITU,
(Department of Energy) は、 電力産業に対する過酷な電磁
ITU-T, K.81, 2009年11月のTelecommunication Stan-
的脅威の影響について検討し、 下院は議案 SHIELD Act, HR
dardization Sector
668 を提出した。 これが可決されて法律化された場合、 自然
現象および人工電磁パルスの脅威に対して、 個々の電力電気
D r . W illiam A. R adasky は、1981年にサンタバーバラのカリフォ
インフラストラクチャの防御が要求されることになる。 IEMI は、
ルニア大学で 電気工学の博士号 を取得し、高電力電磁気応用分野
人工の脅威のうちの 1 つである。
で42年間の経 験 がある。今までに、電磁環境や、その効果、防 護な
どを扱った400以上のレポート、論文、記事などを執 筆している。近
結論
年は、重要なインフ ラに対 するH E M P やI E M I 、苛烈な磁気嵐 からの
電磁兵器は、 ハリウッドでエンタテイメントとして魔法のように
脅威を評価することに注力している。I ECのSC 77C(EMC:高電力過
出現するものに見えるかもしれないが、 小さくても最新の兵器
渡的現象)およびIEEE EMC Society TC-5(高電力EM)、Cigré C4
を生み出すソリッドステート電子機器が進歩し、 (電子機器の感
ワーキンググループの議長を務めている。198 4年にMet atech社を
受性が増す) 低い電圧で動作する電子機器の効率が増してい
カリフォルニアに設立し、社長兼Managingエンジニアを務めている。
るので、 これは現代の電子システムにとっては明らかな脅威で
EMC標準化分野で非常に精力的に活動。国際標準化への著しい貢献
ある。 本稿で述べた簡単な概要から、 国際的な技術コミュニ
を認められ、2004年にIECからLord Kelvin Awardを受賞した。IEEE終生
ティが状況を評価し、 IEMI が我々の重要なインフラストラクチャ
フェロー、電気工学の認定PE(Professional Engineer)。■
に対する現実的な脅威だと感じていることは明白である。リサー
48 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
保存版ガイドブック2016
White
2014年9月号 掲載
Don White
Consultant
Don White Consultants
Jerry Emanuelson
Consultant
Future Science
こ
8.1 シールドされた建物、部屋、キャビ
ネット
年7月号に掲載) では、 EMP に対
図8はシールドには3つのレベル (ある
する防御国家計画の提案について述べた。
いは更に多く ) が存在することを示してい
記事のパート2は、 建物や屋根の太陽電
る。 80 dB (以前に議論された値) まで建
池、 その他の構造物の EMP 防御に必要
物全体をシールドする利点は、 内部では他
の 記 事 の パ ー ト1 (Interference
Technology 日本版 No.45 /2014
な方法と技術について提示し、 シールド、
に何もシールドする必要はないということで
接続、 グランド、 ケーブルまたはデバイス
ある。 なので、 既存の温度調節器、 携帯
のサージ抑制、 フィルタ等の詳細を網羅す
電話、iPhone、iPad、ノート PC、周辺機器、
る。 これらは、 小屋や部屋から大小の家
そのほか全ての電気 ・ 電子デバイスを引き
屋まで、 そしておよそ高さ5階未満の商業 ・
続き使うことができる。 しかし、 80 dB まで
産業用建物に適用する。
建物をシールドすると高くつく場合もある(例
えば、 全建築コストの 10%以上)。
8.家や建物屋根上の太陽電池
シールド
敏感な機器が設 置されているところで
は、 それゆえ1つあるいはそれ以上のシー
電磁シールドは、 (1) 金属シールドで放
ルド室を追加することもあり、 建物全体の
射エミッション反射損失 (2) 金属吸収損
シールドをそれに準じて減らすことも可能で
失、の組み合わせにより機能する。 要素(1)
ある。 例えば、 外壁、 天井、 床の上のア
は、到来波と金属のインピーダンス比によっ
ルミホイルまたはスプレーされた銅塗装を
て生じる。 要素 (2) は、 金属の表皮深さ
想定すると、 天井と床 (接続・固定された)
が金属の厚さの約 50%を超えると、 作用
は、 45 dB のシールド効果を実現するのに
し始める。
使われる。 これにより、 図8で示すように残
りのシールド室、 キャビネットまたはエンク
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INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 49
SHIELDING
EMP
EMPからの防御に対する国家計画:パート2
建物のEMP防御
電気通信
電気通信
暖房、換
気およ
び空調
(HVAC)
エレ
ベータ
EMP
シールドされた建物-1層目
放射EMP
窓
2階
シールドされた部屋-2層目
シールドさ
れたキャビ
ネット
-3層目
ケーブルの入口
1階
図8.シールドされた建物と部屋とキャビネットまたは箱による3段シールド構造
張りなどを用いる。 材料は、建物が既に存在していたか、まだ設計・
ロージャの必要な減衰量は 35 dB に下がる。
しかし、 同じ外皮シールドが外壁内部に適用される場合は、
建築されていなかったかどうかにより異なる。 ここで述べている大
外壁の電気配線がまだ防御されていないので、 機能しないだろ
部分の仕様は本記事の範囲外であり、建築の重要な問題に関わっ
う。 従って建物の外壁をシールドしなければならない。
ている。
建物内部の品目が、 10 V/m (想定される標準的な条件) の
既存建物の正面にアルミホイルを直接追加できるならば、 家庭
放射感受性限度値を満足している場合は、 残りの必要なシール
用の 1 ミル (= 0.001 インチ = 0.0254 mm) またはアルミホイルの
ドは、 内側のシールドルームやキャビネットあるいは箱のサイズ
強化バージョン(例えば3ミル)で必要なシールド全てに対応できる。
内で適時、 実現可能である。 EMC メーカーが提供するシールド
1ミルのアルミホイルは、 96 dB のシールド効果を提供する。 そ
ル-ムの品質は約 120 dB のシールド特性で、 性能および価格
れで、 十分なシールドとなる。 けれども、 壁板に取り付けるシート
が高すぎるので、 ここでは扱わない。
状のホイルはどうするのか? また、 どのようにホイルの端を揃える
のか?
従って、 シールドを適用した建物の表皮は継ぎ目を結合した
金属シートの建物外壁とともに外部に設置される。建物の6面
( 屋
基本的に、 スプレー接着剤を取り付け材の裏面につけ、 ホイル
根、 地階の床、 側面4箇所) はそれぞれ全ての長さにわたり接
をその上に置く。 しかし、図9で示すように、ホイルが重なる部分は、
合される。
金属ホイルシールド
図8は、 建物への電磁波侵入口である窓や屋上のエレベー
タ塔屋、 エアコン (A/C) 熱交換器、 全ケーブルのシールドが、
64 MHz 以下で 80 dB 未満のシールド効果 (SE) になってはい
合板壁
けないことを示す。 (図 17 参照)
第1層目
2.5ミルの
ホイル
8.2 建物正面のシールド
どのように、 建物正面 (外皮) をシールドするか? 建物の外
皮または覆いの基礎材料 (例えばビニールの覆い) は何で構成
第2層目
2.5ミルの
ホイル
するか? 米国北部では薄い合板、 南部の住宅はコンクリートブ
ロック (しっくい化粧) が一般的である。 商業施設では外壁材と
して、 アルミ製複合パネル、 銅またはステンレス鋼シート、 横板
50 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
図9.取り扱いと経年変化を考慮して2層のホイルを重ね合わせる。
2016年版ガイドブック
White
を含む塗料をブラシやローラー、 スプレーで塗布することである。
仕上げに非導電性保護コートとなるラテックス塗料を使用する。
塗料を使用する大きな利点の1つは、 スプレーの使用、 ホイルの
重なりを回避し、 後述する窓やドアなどの電気的ガスケットを除
外するため、 比較的簡単な方法になることである。
どのようにして、 この隙間を埋めるか? いろいろな方法がある
が、 それは本記事が扱うレベルを超えている。 もちろん、 設計
中や建築中の新しい建物については、 床下部のシールドが外側
図10.どんな特別な用途でも正しいタイプを選択して利用できるよう
異なる多品種が揃った電気ガスケット。中央より右にあるワイヤメッシ
ュタイプは窓の敷居用である。
シールドに接続するフレームの領域を越えて拡大できるので、 こ
れは問題ではない。
隣接する金属面をシールするのに用いられる電気ガスケットに
ついて、 エンジニアリング ・ コミュニティのために Tech-Etch のよ
うな会社から入手可能なオプションを図10に示す。またこの図は、
約 1 インチ (2.5 cm) でなければならない。 そして、マスキングテー
対になっている他のタイプを結合させる際に使う、 他の電気ガス
プを使って重なる部分の接合を完璧にする。 確実に金属の導電
ケットについても示している。
率を保って、 良好なシールド特性を得るため、 ホイルの間に他
の材料をはさまず金属同士を接着しなければならないので、 ス
プレー接着剤をホイルの 2.5 ㎝のスペースに吹き付けてはいけな
い
8.3 シールドされた建物の接地
図11は、 建物の外壁、 シールドした窓、 シールドした HVAC*
やエレベータ塔屋、 外部要素などのシールドされた建物を示す。
窓やドアには、 それ自身にシールドを施すので、 ホイルは窓枠
シールドされた建物は接地することなく空間に浮いた状態も可能
あるいはドアの外枠までとすべきである。
電気的結合剤またはガスケット (以下に記す) は、 建物正面
と窓やドア周辺をそれぞれ電気的に接続するために使用される。
上述のホイル以外に可能な代替案は、 銅またはアルミニウム
*訳者注
HVAC: Heating, Ventilation, and Air Conditioning (暖房、換気、お
よび空調)
シールドされた小屋
暖房、換気
および空調
シールドされた
太陽電池パネル (HVAC)
高高度電磁
パルス(HEMP)
電気通信
エレベータ
シールド
された窓
放射HEMP
コモンモード電流Icの流れ
通信リード
制御と信号リード
AC電源リード
注: Ic=Is+Ig; Is<< Igを作る
シールドされた
太陽電池パネル
シールドされた建物
シールド
された窓
シールド電流Is
防御された
アンテナ
および
ケーブル
Isからの放射 2階
防御シールド
からの漏れ
機器キャビネットは
必要ないか?
シールド
された窓
1階
Ig ≒ Ic となり、最小のシールド電流になる
接地グランド導電率は適切か?
図11.シールドされた建物とグランドの妥協案
interference-technology.jp
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 51
EMP
Tech-Etch社より提供
EMP
図12.ワイヤメッシュによりシールドされた窓
図13.防御されていない太陽電池パネル設置の典型的なEMP
で、 シールドは良く機能する。 接地は必要ない。 しかし他にも、
なんらかの漂遊放射 (または建物の外壁に AC 電源ホット側リー
建物が砂地や水分を含まない土壌の上に建てられている、 あ
ドが偶然接続) によって、 シールドが接地レベルを超える電圧にな
るいは地域に干ばつが存在する場合には、 グランドシステムは十
る場合、入退場する人々にとって感電事故になるという懸念がある。
分に動作しない (または不十分な動作になる)。 Fargo (グランド
また雷対策も考慮しなければならない。 そういうわけで建物の外
線クランプ) が腐食、 または切断した場合は、 何が起こるだろう
壁は、 米国電気規則 (National Electrical Code) を満足させるた
か? (注:グランドを取るために必要な土壌抵抗の測定について、
めに、 接地 (グランド) しなければならない。
MIL- HDBK-419 には、 グランド棒の本数、 井戸グランド、 接地
電極サブシステムなどについて詳細な説明が載っている)。
また、 図11の左下に示すように、 電気通信リード、 制御および
信号リード、 AC 電源ケーブルは、 建物内に入らなければならない。
読者自身の施設や他の施設が適切にグランドされているかど
これらのケーブルもまたシールドされている必要がある。 ケーブル
うか、 証明はできるだろうか? どんな基準または規格を使うの
のシールドと建物のシールドは、異なる電圧の場合もあるので、入っ
か? 誰が検査を承認するのか? 5年経っても依然として 「グラン
てくるケーブルのシールドは通常、 金属プレートの建物のシールド
ド」 された状態なのか?
に接続されていなければならない。 その目的は、 EMI (誘導され
総括的な議論が深まるにつれ、 そもそも民間の建物で EMP
た電磁妨害シールド電流) を迂回させ、 グランドを接地して、 EMI
防御 (シールド) されているものは現在ほとんどないので、 議論
を無害に分散させることである。 しかし落とし穴は細部に隠れてい
は EMP の観点からのアカデミックなものとなる。 そういう状況で
るものだ。
は、 グランドされているか否かにかかわらず内部の全電子機器
は EMP 事象により故障する。
図11のイラストは、 米国各州または先進国の至る所で何千回も
繰り返されている状況を示す。シールドされた建物の入口(建物シー
EMP、 雷、 EMI は、 無くなることはない。 グランドを取ることは
ルドがベストの場合を想定) で、 EMI 表面、 コモンモード電流、 Ic
防御システムの重要な部分であるが、 シールドすることとフィルタ
がグラウンドされている場合、 放射 EMI (または EMP) はケーブ
することも同様の関心事である。
ルのシールドに結合する。 EMI 電流は接地ロッド (Ig 参照) に沿っ
8.4 シールドされた窓、ドア、建物の外壁などからの漏れ
て下へ流れ、 地面に吸収されて無害に拡散すると、 一般的に考え
られている。 しかし、建物のシールド上に流れ続ける EMI 電流 (Is)
窓に、 少しだけシールドをかけて光を遮ると、 エレクトロクロ
もある (その表面電流は、 ループを閉じるためにグランドと静電結
ミックガラスを使うことができず、 また、 窓越しに見ることができ
合する)。 そういった電流はその後、 建物の外壁を貫通して、 内部
なくなるため数ミクロン (非常に薄いフィルム) の金属蒸着を用い
にある機器を誤動作させるか焼損させる被害を引き起こす場合も
ることもできない。 ガラスに1ミクロン (非常に薄いフィルム) の銀
ある。 そこで、 それぞれの低インピーダンス品質はどれぐらい (例
蒸着を使うと、 80 dB の RF シールド効果を得られるが、 光の透
えば、 どれぐらい低くなるか) 改善されるのだろうか?また、 関連
過も妨げてしまう。
なので、 金属のスクリーン ・ メッシュ (図12) は、 ほとんどす
する詳細事項にどれぐらいの注意が向けられたのだろうか?
唯一流れるべきシールド電流は本来、 終端部から建物シール
べての光 (光学上) を通しても、12 MHz 以下で 80 dB (メッシュ・
ド上への直接放射 EMI であることを忘れてはいけない。 そこには、
スクリーンの間隔に依存する) の EMP 放射の通過を阻止する窓
建物上の終端した EMI 表面電流を大量に超える可能性のあるケー
に使えると考えられている。 このシールドを達成するために必要
ブル入口グランドからの追加電流が含まれてはならない。 超える程
なスクリーン ・ メッシュ ・ エレメントの分離距離 d は、 次の式で計
度は、 建物のシールド効果による損失の減少を直接的に示すもの
算される :
SEdB = 20Log10 (150 / (d * f MHz) = 80 dB
である。
52 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
White
同軸コネクタタイプ
防御グループによるサージ
抑制器の多様性
(写真提供なし)
写真提供:Nex-Tek社
EMP
図14.シールドされたインバータキャビネット
3相、200アンペアAC電源ライン用
写真提供:MeteoLabor社
ここで、 f MHz = 12
MHz
は、 標準的なパルス幅 150 nsec の EMP
の立ち上がり時間が 5 nsec に対応したボード ・ フーリエ周波数プ
図15.多くのHV EMPサージ抑制器のうちの異なったタイプの2個
ロットから、 第 1 と第 2 コーナー周波数の幾何学的な意味がある。
メッシュ分離距離 d の方程式を解くと、 d = 1.29 mm となる。 こ
れはインチ当たりのワイヤメッシュの間隔 (OPI) では、 25.4/1.29
または 20 に相当する。ここで OPI が使われるのは、メーカーがシー
ルドメッシュの仕様を通常 OPI で表現しているためで、 100 OPI ま
で提供可能である。
太陽電池をシールドするためには、 高い OPI を使ってはいけな
い。 なぜならば光の透過性が損なわれるようになり、 太陽光を電
気に変換する効率が落ちるからである。
バーを付けなければならない。
上記で説明したように、 ケーブルのシールドは通常ケーブル入口
(建築のグランドに関する上述参照) で建物のシールドに溶接され
た金属のグランドプレーンで結合されている。
9.シールドされた太陽電池屋根を追加
EMP に対し防御されていない太陽電池屋根は一般的に太陽
電池パネルの取り付けラック、 太陽電池パネル、 相互接続ケー
8.5 シールドされた外部ドア
1つまたはそれ以上のドアにより、 シールドされた建物への入退
場が可能となる。 そのような各ドアには、 同時に開かないように
連動させた一対のドアを備えた玄関ホールが必須である。 これに
より、 EMP 事象が起こった際に両方のドアが一時的に開いている
という偶発的な状況を避け、 建物全体のシールド効果を危うくする
ことにもなりかねない事態を防ぐ。
ブル、 インバータ1個 (または太陽電池パネル毎のマイクロ ・ イ
ンバータ)、 電源選択切換スイッチ (電力会社の電源または太陽
電池を接続) に下りてくる導線ケーブル、 バックアップ用蓄電池
で構成されている。 蓄電池は、 夜間の電源および曇り空で太陽
電池パネルの出力電力が不十分なときに使われる。 発電機は、
防御されていない限り EMP バーストで燃え尽き、 EMP 事象の後
には入手できないと思われる燃料が必要となるので、 通常使わ
れない。
8.6 シールドしたワイヤとケーブルの入り口
図11で前述したように、 3本のケーブルとワイヤ類はほぼ全
ての建物に入っている : (1) 電気通信 (電話、 イーサネット、 他
の有線通信) リード (2) 特定の動きを制御し状況データととも
にどこか他の場所にレポートを返送する信号リード (3) 前述した
多くの建物関連の運用に使用している負荷を動作させるための
120 V AC、 240V AC などの電圧を供給する AC 電源。 ケーブル
がすでにコンジットに入っているか、 埋設および/またはシールド
されていない限り、 入ってくるリード類に 64 MHz 以下の分離に必
要な 80 dB のシールドを提供しなければならない。
全ての太陽電池間で相互接続しているワイヤ、 インバータ (マイ
クロ ・ インバータが使われてない場合)、 サービス入力パネルへ下
りてくる導線にも 80 dB のシールドをしなければならない。 硬くて薄
い壁の銅管もシールドに使うことができる。 だが柔軟性の利点を
確実に得るため、 銅管の代用として編まれたワイヤメッシュによる
シールドを全てのケーブルに使うこともできる。 コンジット内に格納
しない場合、 全てのシールドに耐候性シーリング材または外部カ
太陽電池パネルには通常、 最高の光変換効率を持つ第1世
代シリコン太陽電池 (40年間も宇宙で発電を続けている主力製
品) が入っている。 太陽電池パネルのフレーム寸法は、 通常3
フィート (0.91 m) ×5フィート (1.52 m)、 光変換効率が 22% の
とき、 およそ200ワットの出力が発生する。 人気が出てきている
のは CaTu という第2世代の薄膜太陽電池で、 コストは顕著に低
いが (アリゾナ州タンパの First Solar 社は同製品を $0.52/ ワッ
トという低コストで製造したと言われている)、 光変換効率はシリ
コンの約 65%に留まる。
米国の平均的な家屋の広さは、 2,300 平方フィート (214 平方
メートル) である。 平屋の場合、 屋根の広さは、 およそ 2,700 平
方フィート (252 平方メートル) である。 大まかに建物の約半分
が南向きで、 屋根の 80% に太陽電池パネルが設置できるとすれ
ば、 72枚の太陽電池パネルを取り付けられる。
太陽電池パネルは地球が自転している間中ずっと太陽を向い
ているわけではない (つまり太陽電池農場に使われているような
追跡装置は付いておらず、 固定式の設置) ので、 10時間の平
均出力電力は約 10 kW ほどである。 2階建ての場合は設置に使
interference-technology.jp
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 53
バータは、 シールドされた太陽電池パネル内に作り込むことが可
能で、 その出力コネクタの近く (これは、 工場に戻って、 太陽電
池パネル組み立て時に行われる) または、 別々に太陽電池パネ
ルに隣接して取り付けられる。 建物の屋根にある全ての太陽電
池パネルが別々にシールドされていない限り、 シールドされたユ
ニットはケーブルのコネクタ部で高電圧 (HV) サージ抑制器を必
要とする。
EMP
マイクロ ・ インバータには、 従来の中央インバータより優れた
利点がいくつかある。 太陽電池パネルの1枚に小さな影ができた
り積雪があったり太陽電池パネルに故障があったとしても、 配列
された全部の出力が偏って減少することはない。 各々のマイクロ ・
インバータは、 接続された太陽電池の最大電力ポイントを追跡
することによって、 最適の電力を得る。
マイクロ・インバータの主要な欠点は、同等電力の中央インバー
タより最大電力あたりの機器の初期コストが高いこと、 また、 通
図16.ワイヤスクリーンメッシュでカバーされた、シールド済メータ
常は太陽電池パネルの近くに設置されるので保守が難しい場合
があることである。 こういった問題はあるが、 初期設置時の高い
耐久性と簡便さにおいて、 一般的にはマイクロ ・ インバータの方
える屋根が半分になるので、 約 5 kW を提供する。 よくあるサイ
が上回る。
ズのガレージ屋根を加えると、 1 kW ぐらいは増えるかもしれない。
屋根の太陽電池の総負荷が、 およそ 10 kW を超えると、 通常、
米国の平均的な家屋では、 空調機、 温水器、 洗濯・乾燥機、
マイクロ ・ インバータは使われなくなり、 中央インバータが使用さ
電気製品、 照明機器などの負荷を賄うのに約8 kW 必要である。
れるようになる。 図14の写真は、 電力が 10 kW から 500 kW ま
1日あたり約5時間は平均5 kW で、 太陽が地平線に沈むにつれ
での3種類のインバータの大きさを示す。 中央インバータが EMP
て平均は落ちていく。 北半球では、 この値が冬季および高緯度
対策でシールドされた建物の外側に置かれた場合、 シールド性
地帯で減り、 夏季および低緯度地帯で増える。 上記は、 他の建
能が 80 dB のキャビネットと、 ケーブルにサージ抑制器、 および
物や木の影による影響を考慮していない。
シールドされたケーブルが必要となるだろう。 これを避けるために
もちろん、 ソーラー設備は EMP 事象時にはすぐに燃え尽きる
は、できれば、80 dB のシールドされた建物内 (ガレージなど) や、
ので、 設備全体が EMP 防御されなくてはならない。
追加のシールド改良なしに使える既存モデルを設置すれば良い。
9.1 太陽電池パネルへのシールド追加
9.3 EMP によるサージの抑制器とフィルタの追加
建物の屋根上にラックの骨組みを取り付けた後、 シールドした
雷対策のために使われる市販品の電子サージ抑制器は、 十
太陽電池パネルをラックに固定する。 シールドするとは、 必要と
分なクランプ速度 (雷用はクランプ > 100 nsec) ではなく、 EMP
される公称 80 dB のシールドを太陽電池パネルに提供することで
の瞬間的な影響から防御するために、 EMP に対しては5 nsec
ある。
以下でクランプする必要がある。 クランプする電流容量が十分で
太陽電池パネルのガラス窓の中で完全にシールドし、 骨組み
ない市販品もあるかもしれない。 したがって、 外界から EMP 用
に接合して他の5面を完全に金属でカバーする。 太陽電池パネ
にシールドされた建物内につながる外部ワイヤ/ケーブル入口全
ルのスクリーン ・ メッシュは 20 OP I (インチ当たり開口) と思われ
てに、 既存の EMP サージ抑制器を使うことが重要である。
る。 この溶接されたスクリーン ・メッシュについては前に説明した。
図15では、 多種多様なニーズとアプリケーションに対応でき
このシールドは、 品質管理と長寿命性能維持を目的に太陽電池
る HV EMP サージ抑制器の中から2個を示している。 (磁気嵐
パネルが生産される工場段階で実施されるべきである。 このスク
に対処するために変電所の高圧トランスに時々使われるサージ抑
リーン・メッシュによる光透過率の減少は、 おおよそ 15% であろう。
制器は全く異なるものなので、 ここでは示していない。)
9.2 マイクロ・インバータまたはインバータのシールド
追加(シールドのみ)
9.4 シールドされたスマートメータの追加
スマートメータ (図16参照) とは、 通常、 電気消費量を1時間
マイクロ ・ インバータは、 太陽電池パネルからの標準的な直
あるいはそれ以下の間隔で記録し、その情報を少なくとも1日1回、
流 12V の出力を取り込んで、 それを交流 120V または他のユー
モニタリングおよび請求書作成目的で電力会社に伝える電気メー
ザー負荷の電圧に変える小さな DC-AC コンバータである。 太陽
タである。
電池パネルは、 望ましい負荷電圧を発生するよう、 適切な方法
スマートメータは、 メータと中央システムの間で双方向通信を
で直列および/または並列に接続される。 小さなマイクロ ・ コン
可能にする。 家庭用エネルギー ・ モニタとは異なり、 スマートメー
54 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
White
数)
(周波
10倍
dB/
パルス幅
150 nsec
MIL-STD-188-125に基づくHEMPの波形
スクリーン・シールドの
低い中間周波数初期設定
倍
/10 )
dB 数
-20 (周波
74 dBシールド後の
HEMPの残り
50 kV/m HEMP
10 V⁄m 妨害機器
= 74 dB シールド効果
シールド効果(dB)
- 40
シールド効果(dB)
)
数
25 kV/m
64 MHz
で44 dB
周波数
図17. EMP防御に必要なシールド効果要求
タは、 遠隔情報提供用のデータを集めることができる。 メータ
ルを超えているのでここでは扱わない。
によって双方向通信を可能にする進歩的な測定インフラストラク
10.2 EMP 試験と認証
チャ (AMI: Advanced Metering Infrastructure) は、 従来の自動
設置された EMP 防御が (電子機器が故障を起こさずに) 動作
メータの読取(AMR: Automatic Meter Reading)とは異なっている。
するかどうか、 EMP バーストが起こるのかどうか、 また何時起こる
さらに多くの機能を装備しているものもある。
のか、 どのようにすれば知ることができるだろうか? 設備の防御
スマートメータは建物の外側に設置されるため、 EMP の脅威
の過不足はあったのか、 その程度はどれぐらいか。 もちろん現場
に合わせて 80 dB までシールドされなければならない。 これは、
試験なしでは、 決してわからないかもしれない。 動作のデモンスト
窓と太陽電池パネルの章で前述したのと同じく、 メータの裏表全
レーションができないなら、 支払いはしたくないものである。
体を包み込む 20 OPI のワイヤメッシュ ・ スクリーンを使うことで達
成できる。
スマートメータは、 取り替えた以前のメータより EMI に敏感で
あることに注意すべきである。 ゆえに次世代送電網 (スマートグ
リッド) がオンライン ・ デジタル生成およびデータ計算を使用して
いる場合、 スマートグリッドは EMI にもっと敏感である。
シミュレーションされた EMP バーストの代わりに、 7種類または
それ以上の試験周波数が、 図17に示されるボーデ線図に従って
使用される。 さもなければ、 この領域の他のデバイスは全て燃え
尽きるので試験は不可能である。
MIL-STD-188-125 に記述されている通り、 時間領域 (X軸は
時間) で示した EMP パルスは、 振幅は 50 kV/m 、 立ち上がり時
間は5 nsec、 振幅の半値幅は 150 nsec を持つ。 このパルス波形
10.EMP 試験と認証
10.1 太陽電池パネルの設置試験
は図17の左側中央付近に挿入してあるが、 これは EMP 試験と認
証に用いる試験仕様を示す。
契約上、 指定された周波数スペクトルにおいて、 80 dB のシー
図17はまた、 先に述べたばかりの時間領域パルスの周波数領
ルド要求の EMP 防御適合性を示すことは、 性能試験で必要で
域 (X 軸は周波数) も明示している。 ここでは、 全ての電気およ
ある。
び電子デバイスは、放射感受性限界 10 V/m の欧州連合 (CE マー
建物と太陽電池の適合試験を同時に実施できる一方、 早い
ク)または他の認証試験に適合していると思われる。例えば EU は、
段階では、 別々に適合試験をすることが最も良い場合がある。
EN61000-4-3 のレベル3を要求されている機器について、 周波数
これは、 必要に応じ診断と修正を容易にする。 建物の適合性試
範囲 80 MHz ~ 1 GHz において電界強度 10 V/m で感受性があっ
験は最初に行わなければならない。 詳細については本稿のレベ
てはならないと規定している。
interference-technology.jp
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 55
EMP
波
(周
倍
10
B/
立ち上り 5 nsec
50 kV/m
20
d
d
-20
HEMP周波数プロファイル
10
OP
B/
10
Iス
倍
クリ
(周
波
ーン
数
)
2.1 MHzで74 dB
HEMP
防御済み
建物
ピックアップ・トラック
または、バン
くらか暗色で草や他の植物の成長に適し
ている) は湿気を保っているので良いグ
ランドが可能となる。 砂などの不毛な土
1000’<距離<100’
壌は、 伝導率が非常に乏しく低い。 更に
低いインピーダンスへ落とし込んだ良い
ステップ2: 試験を繰り返し建物の4つの側面に行う。
EMP
最大距離を使い、94 dBを維持する。
各周波数で、4つの側面の最も低いX dB値を使う。
ステップ1:
グランドを得るには、 ボーキサイト (アル
ミニウム ・ ベースの微粒子) またはメー
カー独自の接地用化合物を浸み込ませ
1000’<距離<100’
る必要があるかもしれない。
述べたとおり、 グランド効果を知るた
送信アンテナ
電力アンプ
スキャン発振器
またはスイーパー
めの試験は、 前述した野外のシールド
試験周波数
100 kHz、500 kHz
2.1 MHz、10 MHz
64 MHz、300 MHz
1 GHz
受信アンテナ
レシーバー
データ
記録
効果試験に現れる。 ゆえに、 建物の接
地とグランドについては、 保険の効く防
御を追加するため、 認可され資格を取得
した技術者によって、 ある周期で試験し
図18.シールド性能を決める試験セットアップ
なければならない。 まず、 初期設定として2年ごとの周期を用いる。
要約
試験の詳細は本稿の範囲を越えているが、 試験の概念は極
本記事 「EMP からの防御に対する国家計画」 は2つのパート
めて単純である。 図18に示すように、 図中向かって左の小型バ
で構成されている。 パート 1 では、 明確に定義されたある種の文
ンまたはピックアップ ・ トラックは、 右方向にある建物に向けた放
明的生活様式のようなものを EMP バースト後に維持するのに、 十
射試験アンテナを給電するための、 電力アンプと、 その入力信
分な数と大きさを持つコミュニティや村、 町、 小さな都市を EMP か
号を発生させるスキャン発振器またはスイーパーを収納している。
ら防御するプランについて述べた。 これは、 生き残ることができて
建物の内部には、 その信号を受信するために適切なアンテナと
も生活様式を放棄するという生存主義者との対比となる。
トラッキング受信機がある。
パート2では、 小さい建物から大きな家屋、 大小の商業用ショッ
送信機と受信機の両方の構成が外側にあるときを基準として、
ピングセンター、 工業生産 ・ 大規模補給構造物などのシールドを
試験構成が最初に校正される (ステップ 1)。 試験は図18に示さ
取り扱い、 シールド、 結合、 グランド、 サージ、 サージ抑制、 ノイ
れている7種類の周波数で行われ、RF 減衰器の設定を記録する。
ズフィルタなどの詳細をカバーした。 こういった活動により新しい製
次に、 送信機と受信機の距離を同じに維持しながら、 図18のス
品やサービスが生まれ、 新しい市場と何百万もの新しい仕事が創
テップ2に示すように両方を移動し、 受信機を建物のほぼ中央部
出される。
に配置し、 ステップ1と同レベルになるよう減衰器の設定を再度
記録する。 ステップ1とステップ2の減衰器の設定の違いが、 dB
D on W hite 氏は登録されたプロのエンジニアで、現在は引退している
単位での建物のシールド効果となる。
が、メリーランド大学のBSEEとMSEEの学位を持っている。彼は、ワシント
建物の残る3面 (またそれ以上の面) について、 試験を繰り
ンDCの地下鉄関連の電磁両立性会社3社のCEOであった。30年間に
返し、全7種類の周波数でのシールド効果を記録する。 次に各々
技術関係の本を14冊著作し出版。最後の著作は800ページのEMC・通
の周波数で、 対応する4面のシールド効果を比較し、 最も小さい
信・コンピュータの百科事典で、タイトルは「The EMC, Telecom and Com-
dB 値を選ぶ。 この結果は、 建物のシールド効果となる。 また適
puter Encyclopedia」である。Don White Consultants社で、4大陸でEMC
合性を決定する図15のボード線図と比較する
Technology誌と呼ばれている隔月の業界誌を出版し、技術分野担当の
今説明したものよりオートメーション化された手順があるが、 そ
編集者として多くのガイダンス記事を書いた。IEEEのEMC学会元会長でも
れはどこか他所での議論となる。 建物が大きい場合 (数階建て
ある。連絡先は、DonWhite@emp-safeguard.com またはdrjw9@aol.com
あるいは数エーカーに及ぶ広さ) は、 送信機はヘリコプターか気
Jerry Emanuelson氏はコロラド大学のBSEEの学位を持っている。オー
球に設置される場合もある。
ディオとビデオテープレコーダーのメーカーAmpex社で、オーディオ・ビデオ試
験エンジニアからキャリアをスタートした。後に、山頂に送信局を持つ放送
10.3 保守整備の考慮
会社の送信機担当主任になったが、そこでは多種類の送信機が満載だっ
建物や内部の全ては経年変化する。 外壁については、 気候
たので厳しい雷・EMI問題に悩まされた。EMP関連のテーマを多く扱うEMP
および風雨が厳しいほど、 性能の期待値に対し、 劣化および変
Internetの主要な著者である。IEEE放送学会の元メンバーで、現在は非常
化が急速である。 感電ショックの安全性に加えて、 建物をグラン
勤の電子工学コンサルタント、ノンフィクション科学ライターも兼ねている。連
ドすることが建物の EMP に対するシールドがどれくらい良く維持
絡先は、emp@futurescience.com ■
できているかを決定する。 前に述べたように、土壌がローム質(い
56 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
保存版ガイドブック2016
White
2015年5月号 掲載
Don White
Consultant
EMP Solutions
稿 で は、 EMP ( 電 磁 パ ルス )
準備をする人、 転じて災害等に十分な準
から施設を防御する方法をいく
備を怠らない人々の意) は、 防御の隙間
つか紹介する。 EMC (電磁的
を埋めようと自主的に取り組んでいる。 だ
両立性) 業界では、 シールド構造、 結合
が結果として EMP 事象後に一番重要な、
とグランド、 フィルタだけでなくケーブルと
生き残るための生活様式が犠牲にされて
コネクタのサージ ・ サプレッションに関し
いる。
本
て、 ほとんどの製品とノウハウを提供して
本稿は、 EMP 事象後の期間において、
いる。 また、 据え付け装置の EMP 防御
いかに 経 済 的 な防 御がで き、 失われた
のオンサイト適合性試験ついても実施方
生活様式を維持できるかについて示す。
法を提供する。
コストや生活様式だけでなく、 安全性
や 達 成 可能 性、 その方法 や 手段のいく
概要
interference-technology.jp
つかを最適化するべきである。 小さな裏
本稿は、 米国内に居住している膨大な
庭にあ る小屋は、 住 居からの重要な脱
人々に、 既存建物の改築ほど費用のか
出ルートになる。 場合によっては、 行動
から な い、 最 も安 価 な EMP 防 御 プロセ
制限によって 「裏庭」 に到達できない恐
スを提案するものである。 その理由の1つ
れもある。 むしろ 「守りを固める (Circle-
は、 政府がどんなレベルであっても国民
the-Wagons)」 コンセプトの長所は、 核と
から信託された保護責任を放棄したこと
なるセキュリティ達成可能性を提供するコ
がわかったからである。 EMP 生存主義者
ミュニティにこそ採用すると良い。 不動産
(survivalist) や プ レ ッ パ ー (prepper :
開発業者は、 その助けとなり、 郡が実際
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 57
SHIELDING
EMP
住宅と屋根の太陽電池に関するEMP防御
とプレッパーは、 目立たないでいるように、 と警告している。 仲
間が水や食物を求めて盗んだり殺したりする可能性もあるので、
郊外に生き残るための場所を確保しなければならない。 つまり
人々の脱出には、 安全を保証する者がグループ内に必要であ
時期到来となる
幕開け
るということがわかる。 この 「守りを固める」 コンセプトは、個々
州のリベートまたは
連邦税控除なしで実施
の家族の防御コストを下げて、 生存グループの知識ベースを劇
的に高め、 生存可能なコミュニティのサイズを10人から最終的
EMP
この
に1000人単位に拡大する。
3つにより
残りの文化的社
周辺の電子セキュリティ ・ ウォールは独創的な方法であり、 居
会に対するEMP
住者は菜園を楽しむことができる。 多くの場合、 このような不動
防御が可能となる
産開発は、 既に適切に設定してある環境のある農業従事者の
土地で実施される。 可能ならば、 大部分のパートタイム居住者
がウォーターフロントを楽しめるよう、 開発地にはすべて池を設
ける。 郡のコミュニティや別荘開発も、 大勢の人々に週単位で良
好な避難場所を提供することができる。
EMP 事象後、 ほとんどの車両は運転できなくなるので、 コン
図1.EMP-EMC太陽電池共同事業の参加者
テナカート付き自転車や安全装置付ゴルフ ・ カートは、 郊外の
簡易小型住宅まわりに適した交通手段である。
の管理および資金供給を担当する。
すでに運営可能な EMP 防 御グル ープが存 在するのではな
EMP 防御された屋根の太陽電池および電池は電気入手の
い限り、 自分自身のグループを作るべきである。 運営のデフォ
鍵となるので、 太陽電池関係者は EMP-EMC 太陽電池共同事
ルトレベルとして郡を使うこと。 例えば、 郡からは経済開発局ま
業を起こすための EMP & EMC のコミュニティに参加している(図
たは郡行政官、 商工会議所、 エンジニアや建築家、 現実的な
1参照)。 本稿では、 この共同事業が郡のミッションとして、 全
EMP 生存主義者グループ、 そして書記官の5組織でグループを
米の郡の大部分となる 3,141 郡に対してどのように達成されるか
作る。 彼らは教材やトレーニング資料を考案 ・ 作成して使用し、
を概説する。
計画とスケジュール を確立し、 物事を実現するのを援助する。
要するに、 これはボトムアップ ・ マネージメントである。 また彼ら
EMP 防御と生存についての重要な学習
は、 調査結果や計画、 実際の行動を適時、 近隣の郡や州と交
EMP 事象 (図2参照) の後、 地域では直ちに供給不足が起
換したりもする。
こり、 商店の棚からあっという間に商品がなくなる。 生存主義者
簡易小型住宅の建設
簡易小 型 住宅は小 さ な 独 立した 建 屋と
海抜20マイル(32km)以上での核爆発
定義され、 屋根にそれぞれ の太 陽電 池を
EMP事象における損害
設置した住みやすい形状の家として建設す
る。 住宅にはバックアップバッテリーが装備
され、 夜間および曇り用に 24/7 の電力があ
る。 EMP 事象後、 発電機は長期間にわた
医療・医薬品
食料と水
都市部の送水ポンプ故障
井戸用ポンプの焼損
食料品店に物がなくなる
レストラン閉店
インターネット注文不可
照明なし
経済状態
EMSサポートなし
病院が機能しない
診療所が機能しない
薬局が閉店
郵便の配達なし
医師のカルテが消失
失業
収入源を失う
利息を失う
株式保有記録を失う
社会保障書類を失う
デジタル記録の破壊
り入手できないと思われる燃料を必要とする
ので、 あまり価値はない。
簡易小型住宅の広さは、 図3に示すよう
に8フィート×12フィート(2.4m × 3.7m)から、
倍の幅を持つ16フィート×30フィート (4.8m
× 9.1m) の範囲である。 従って、 簡易小型
通信と娯楽
住宅の面積は96平方 フィート (8.9m 2) ~
輸送機関
480平方フィート (45m 2) に なる。 簡易小
電話機とFAXが壊れる
インターネット接続がなくなる
携帯電話とiPadの焼損
ラジオとテレビが動作しない
デジタル制御不能
SCADA*破損
車、トラックが機能しない
交通管制装置の焼損
鉄道、電車、地下鉄が停止
飛行機が飛ばなくなる
船舶が動かなくなる
燃料の供給が不可能
*訳者注
SCADA(Supervisory Control And Data
Acquisition):監視制御データ収集システムで、
産業用制御システムの一種であり、コンピュータ
によるシステム監視とプロセス制御を行う。
図2.EMP事象における損害例
58 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
White
金属スクリーンは、 横にしてコンクリート
窓
シャワー
水洗
の基礎鉄筋の下に重ねて置く。 羽目板に
室
トイレ
適切に接着すれば、 建設部は継ぎ目な
ワイドスクリーン
8フィート(約2.4m)×16フィート(約4.9m)の簡易小型住宅
広いカウンター&流し台スペース、
娯楽&睡眠のためのスペース完備
くシールドされる。 電源ラインや電話線の
入り口、 水道管、 下水道管は特別処理す
る。
このように後から追加する屋根の太陽
電池の工事は、 住宅建設終了後、 実際
には部分的に追加されるのみである。 そ
クローゼット
の理由は、 太陽電池パネルとマイクロ ・
男性用 女性用
インバータがそれ自体の遮蔽メカニズム
窓
に入っていて、 太陽電池が屋根に設置さ
ドア
れる前に、 底面のシールド追加を必要と
するからである。 このプロセスのラフな初
図3.屋根上に1.6kw太陽電池を設置し、シールドされた工場生産の簡易小型住宅
期スケッチを図6に示す。
4つの側面のシールドは、 3 ~ 5 mil (0.076 ~ 0.127 mm) 厚
のアルミホイル型板または幅広ロール状にした 30 OPI 遮蔽網
型住宅はプレハブ住宅、 輸送コンテナハウス、 アーミッシュの家な
のどちらかである場合が多い。 窓と扉用に合わせてカットまた
どを参考に作られている。 アーミッシュの家は、 EMP 防御抜きで
は調整をする。
平方フィート当たり約28ドルで実現可能である。 現在、 屋根の太
簡易小型住宅には図7で示すような侵入経路が数ヵ所ある
陽電池のコストは約2ドル/ワットで、 2016年には約1ドル/ワット
ので、 基礎部分と屋根は課題が多い。 ケーブルが侵入する場
になる見込みである。
所ではサージ抑制が必要になる。 カットオフ周波数を超えた導
図3の拡張 版として自動車と ゴルフ ・ カ ー ト、 さらに 収 納 ス
ペースを加えた簡易小型住宅を図4に示す。 400平方フィート
波管は、 図7で示すように換気パイプや水、 汚水の処理に使
われる。
(37.2m 2) の床面積で、 最大 4kW の屋根の太陽電池を搭載可
能 であり、 こ れで 壁面取付け外部空 調、
洗濯機や乾燥機、 温水ヒーターのような
重い負荷にも十分対応できる。 EMP 防御
上の特別な問題は以下に述べる。
図5は、 屋根に太陽電池と EMP 防御
食料、水、医薬品、その他
保管キャビネット
を追加する前の簡易小型住宅のサンプル
作業台・工具
電池保管庫
発電機
で、 改良コンクリート基礎、 羽目板、 垂木
などを現場で組み立てる構造である。 屋
太陽電池が出力最大となるよう設計され
12フィート(3.7m)×20フィート(6.1m)の
車庫&多目的スペース
たAフレームに注意する。
[ 太 陽 電 池 出 力 = k * cos ( 緯 度- 傾
自転車ラック 貯蔵棚
斜)、 後述]
を建設して後から EMP 防御を追加、 とい
うのはやめておく。 この順番は、 材料の
選択やシールド部分の接着方法、 そして
屋根通気口、 横窓、 扉口、 基礎に対する
特別処置から生じたものである。 例えば、
調理台と流し台
時間と費用を節約するため、 まず住宅
窓
EMP 防御の簡易小型住宅
冷蔵庫
保管棚
TV&エンターテインメント
センター
食卓
衣類収納/引出付
シャワー
トイレ
8×20フィート
(約2.4m×6.1m)の
リビングエリア
4段ベッド
なるように、 より高緯度 (北緯) で屋根の
電動
ゴルフ
カート
車庫のドア
根の傾斜が設置場所の緯度にほぼ等しく
机と
パソコン
窓
屋根全面に太陽電池パネル=最大5 kW
屋根の一部(一般的な領域)に太陽電池パネル= 2-3 kW
よく 出 回 って い る 30 OPI (openings per
inch : インチ当たりの開口数) のシールド
図4.多目的に使える車庫付20フィート(6.1m)×20フィート(6.1m)の簡易小型住宅
interference-technology.jp
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 59
EMP
調理台と流し台
流し台下に充放電深度が深い
12個の12ボルト電池
冷蔵庫
パソコン、
2~4人用の2段ベッド
ラジオ、テレビ、
小型
屋根に太陽光無発電装置を追加する
屋根に太陽電池を追加するのは、 単純で良く知られた手順で
ある。 一般的には直列/並列を組み合わせて接続された多数
の3フィート (0.9m) ×5フィート (1.5m) の第1世代の太陽電池で
あるシリコン太陽光発電パネルで構成されている。 これらの DC
出力は、 主電 源配電盤の近くに配置するインバー タによって、
AC に変換される。 時にはマイクロ ・ インバータが各パネル出力
EMP
に1つずつ使われ、 その AC 出力は並列に合成する。
薄膜、 カドミウム ・ テルル化物、 CdTe の第2世代太陽電池は
好評を博し、 アメリカでは約25パーセントに上る設置実績を示し
ている。 太陽電池の効率はおよそ17パーセントから20パーセン
トに改善されるが、 出力ワット当たりはそれほど高価ではない。
図5.小型簡易住宅のサンプル(太陽電池設置前)
EMP 防御として、 各パネルに品質管理およびコスト削減目的
で 30 OPI シールド ・ スクリーンを組み込むのは合理的といえる。
そのようなものはまだ市販されておらず、 販売開始は2016年頃
の予定である。 それまで EMP 防御は、 まずアスファルト屋根板
表1: 輝度補正の変化
の上に遮蔽スクリーンを置き、 次にパネルラッキングを施すこと
春分と秋分
サイト緯度-
屋根の傾斜
(度)
正午
10 a.m.
8 a.m.
12 p.m.
& 2 p.m.
& 4 p.m.
0
100%
87%
10
98%
20
冬至
夏至
正午
正午
50%
92%
92%
85%
49%
90%
93%
がビルトインされた太陽電池パネルが市販される2016年には、
94%
81%
45%
86%
98%
この手順は廃止されるかもしれない。 図8は、 屋根を覆う仮設
30
87%
74%
39%
79%
95%
シールド方法を示す。
40
77%
64%
31%
69%
84%
で可能となる。
最後に、 表面の遮蔽スクリーンを使って太陽電池パネルをカ
バーし、 配線とマイクロ ・ インバータを相互接続する。 シールド
太陽電池出力について
50
64%
53%
21%
57%
72%
60
50%
39%
9%
43%
57%
太陽電池パネルの定格出力電力は、 正午の陰りのない太陽
注:結果として出てくる太陽との角度のコサインを基準にしている。
に (太陽と垂直に) 正確に向けたパネルに相当し、 この条件は
米国の一部で、 まれに存在する。
出力電力の低下に影響する要素は以下の通りである。
表 2: アメリカの市の位置の緯度
市と州
アトランタ
GA
緯度
市と州
33
ヒューストン
TX
オースティン
TX
ボルティモア
MD
緯度
市と州
▪▪ 建物の緯度
緯度
▪▪ 南向きから北側に±30度以内に面していない建物の屋根
29
ピッツバーグ
PA
40
▪▪ 半球
30
インディアナポリス
IN
39
サンフランシスコ
CA
37
▪▪ 建物の屋根の傾き
39
ジャクソンビル
FL
30
シアトル
WA
48
42
マイアミ
FL
25
セントルイス
MO
38
シカゴ
IL
41
ミネアポリス
MN
44
サクラメント
CA
38
クリーブランド
OH
41
モハーヴェ砂漠
CA
35
サンアントニオ
TX
29
ダラス
TX
32
ロサンゼルス
CA
34
サンバーナーディノ
CA
34
デンバー
CO
39
ニューアーク
NJ
40
サンディエゴ
CA
32
デトロイト
MI
42
ニューヨーク
NY
40
サンノゼ
CA
37
フェアバンクス
AK
64
フィラデルフィア
PA
39
タンパ
FL
27
ハートフォード
CT
41
フェニックス
AZ
33
ワシントン
DC
38
ホノルル
HI
21
ボストン
MA
▪▪ 季節依存性
▪▪ 時刻
表 1 は、 上記の変数を関連付けている。 表2は、 米国の主
要都市のいくつかと対応する緯度のリストである。
前頁の図4で述べたワシントン DC 都心部にある自動車防御
を含む20フィート×20フィートの簡易小型住宅で、 以下の事例
を考えてみよう。 3×6に配列した3フィート×5フィートの太陽電
池パネル18枚を装備すると、 太陽電池パネルメーカーの定格は
パネル1枚あたり225ワットである。 最大利用電力は、 225ワッ
ト / パネル×18枚 = 4kW である。
表2から、 ワシントンの緯度は38度とわかる。 ワシントンでは相
対的な効率は cos38°= 79%、 つまり3月の春分、 9月の秋分の正
午で平屋根の場合 79% となり、 従って1日当たりの kWh (キロワッ
ト時間) は正午の電力の約3倍に等しい。 つまり、 晴天時の太陽
電池システムは、おおよそ 4 kW × 0.79 × 3 =9.5 kWh/ 日の電力を
60 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
White
産出する。 付随的なバッテリ ・ システムは、
シールドされた屋根の侵入口または換気装置などの開口部、底板、ルーバーなどは、
夜間および曇った日のエネル ギ ー源とな
覆いあるいは遮断周波数を超えた導波管パイプでカバーする必要がある
る。
すべての機器の電力消費とだいたいの
南向き±30°の勾配屋根
シールドされていない太陽電池パネル、ラック、底面シールド、
使用時間を知ることで、 負荷の割当てと、
アスベスト屋根板、木摺、屋根の垂木上に30 OPIの遮蔽物
電池の充電用エネルギー量の確保が可能
となる。
簡 易 小 型 住 宅 現 場 の EMP
防御適合試験
羽目板:
ビニール
30 OPIスクリーン
1/2インチ(約1.3cm)
の木摺
2インチ×6インチ(約5
㎝×15cm)のフレーム
いった ん EMP 防 御の設 置 が終わ った
と 宣言 されたならば、 現 場 試 験 に よって
EMP 保護適合性を確かめる必要がある。
小型バンまたはピックアップ ・ トラ ックは、
グランド
図9で示すように配置されている。 図には、
アース
ライン
基礎の貫通部
右にある建物に向けた放射試験アンテナ
AC電源線入口
電話線入口
可能なケーブル入口
市営水道・井戸システム
下水・浄化槽システム
その他サービスの入口
駆動用の電力アンプに給電する RF スキャ
ン発生器または スイーパーがある。 建物
30 OPI スクリーンによるシールド
砂利土台上のコンクリート
の内部には、 その信号を受信する同様の
ピッ ク アップ ア ン テ ナに よって 動 作 するト
ラッキング受信機がある。
図6.住宅全体のシールド方法
送信機と受信機の両方の構成が外側にある場合を基準とし
て、試験構成を最初に校正する (ステップ1)。 試験は、表3 (EMP
パルス波形の脅威をフーリエ変換して得られる) に示す7つの試
験周波数 (1 MHz ~ 1 GHz) で行われ、 RF 減衰器の設定を記
録する。 次に、 送信機と受信機間を同じ距離に保ちながら、 図
9のステップ2に示すように両方を移動し、 受信機を建物の中央
部に配置してステップ 1 と同じレベルになるように減衰器の設定
換気装置、水道または下水(ワイヤー/ケーブル以外)
からのEMP送信に対して、遮断周波数を超えた
導波管で80 dBのシールド効果を実現
を再度記録する。 ステップ1とステップ2の減衰器の設定の違い
が、 試験周波数における dB 値での建物のシールド効果である。
現 場 の シ ールド 性 能 を 決 定 する た め の 試 験 セット
アップ
建物の残る3面について試験を繰り返し、 全部で7つの周波
周囲を導電性
ポリ塩化
ビニール管
ペースト、
コーキング、
数でシールド効果を記録する。 次に、 7つの周波数それぞれに
ついて、 対応する4面のシールド効果を比較し、 最も小さい (最
接着剤によって
小のシールド効果)dB 値を選ぶ。 この結果は、建物の EMP シー
電気的に
接着する
ルド効果となる。 この値を表3で該当するシールド効果と比較し
金属
スリーブ
建物または
壁のシールド
長さ>3×直径
表3:必要なシールド効果
周波数
必要なシールド効果
直径
≦100 kHz
80 dB
金属スリーブ
1 MHz
80 dB
3 MHz
77 dB
ポリ塩化
ビニール管
図7.建物への侵入口の処理方法
interference-technology.jp
WGBC: dB単位の減衰量
=30×長さ/直径
(fco =λ/2 >3*fEMP)
10 MHz
65 dB
30 MHz
52 dB
100 MHz
30 dB
300 MHz
10 dB
≧1 GHz
0 dB
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 61
EMP
シールド羽目板を保護する
外周りに重ねて結合する
フレーム窓ガラス上の
30 OPIスクリーン
周囲に接着
されたフィン
ガーストック
を備え、シー
ルドされたド
アのホイル
金属S
ブラケット
ログねじの列
SFS=スプリング
フィンガー
シールド接着
1000’<距離<100’
ステップ2: 試験を繰り返し建物の4つの側面に行う。
太陽電池パネル上に広がった
OPIが20-30のワイヤ遮蔽
最大距離を使い、94 dBを維持する。
各周波数で、4つの側面の最も低いX dB値を使う。
ステップ1:
太陽電池パネル
送信アンテナ
電力アンプ
スキャン発振器
またはスイーパー
1000’<距離<100’
試験周波数
100 kHz、500 kHz
2.1 MHz、10 MHz
64 MHz、300 MHz
1 GHz
受信アンテナ
レシーバー
データ
記録
屋根の防水加工材または木摺
図9.簡易小型住宅現場のEMP防御適合試験
図8.屋根を覆う仮設シールド方法
建物が大きい場合 (数階建て、 または数エーカー [ 数千平米 ]
太陽電池屋根を EMP 防御した簡易小型住宅
のコミュニティ
におよぶ広さ) には、 送信機をヘリコプタに設置しなければなら
EMP 生存主義者は、 以下のとおり生存に必要なアイテムを
て、 EMP 試験適合性を決定する。
6つ認識している。
ない場合もある。
建物と太陽電池の EMP 適合性試験は同時に行うことができ
▪▪ 水(および浄水用の道具と方法)
るが、建設初期段階では別々に試験した方が最良な場合もある。
▪▪ 食料、特にフリーズドライで25年にわたり貯蔵できるもの
診断と修正がもし必要となっても容易にできるからである。 建物
▪▪ 処方薬と応急手当用品
適合性試験は最初に行わなければならない。 試験手順の詳細
▪▪ 物々交換するための物資(お金は役に立たないので)
については本稿のレベルを超えている。
▪▪ 飢えた隣人や招かれざる侵入者から遠く離れた郊外にある
避難場所または簡易小型住宅
約1/4
エーカー
この区画では
1棟または2棟
を許可
警備員
詰所
各区画へのアクセス道路:22フィート(6.7m)
190フィート(58m)×480フィート(163m)の池
=2エーカー(8,000m2)
気晴らしおよび飲料源、代替井戸、水の供給用
出 口
120フィート
(37m)の遊歩道
あずまや
40名収容可
コミュニティ用
娯楽&補充センター
入 口
この区画では
1棟または2棟
を許可
コミュニティ用
共用の水辺
EMP
パネル
ラック アスファルト屋根材上のワイヤメッシュ
遮蔽またはアルミホイル複合材
SFS
EMP
防御済み
建物
ピックアップ・トラック
または、バン
各区画へのアクセス道路:22フィート(6.7m)
この区画では1
棟または2棟を
許可
約1/4
エーカー
この区画では
1棟または2棟
を許可
販売または賃貸用簡易住宅向けの小規模・初期のEMP防御開発
その他については「守りを固める」コンセプトの開発レイアウトを参照
図10.簡易小型住宅コミュニティの例
62 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
White
EMP 生存主義者は、 大きな EMP 防御コミュニティのほうがよ
を実施した20%を除く) 残り80%の多数が、 郊外にある EMP
り良い生活ができると理解しているので、 大きなコミュニティを作ろ
防御された週末の避難所に移動するようになるにつれて、 この
うとするだろう。 米国には6200万人の住宅所有者組合のメンバー
雇用も加速度的に増えていく。
がいる。 彼らはメンバー間で堅い結束を持つ傾向がある。 EMP
の脅威が明確になるにつれ、 組合メンバーは自宅からおよそ50
マイル (80.5km) の範囲内に簡易小型住宅コミュニティを開発す
る可能性がある。 これにより新しい不動産開発が増えることにな
図示されているのは44戸から成るグル ープで、 1区画1/4
エーカー (1,012m 2) の用地 (1区画 1 /10エーカー [405m 2] と、
狭くなるかもしれない) があり、 気晴らしや美観、 (水中深くにあ
る井戸も含め) 水源確保のための2エーカー (8,094m 2) の池を
取り囲んで、 サバイバルを強化している。 池の水を新鮮に保つた
めに噴水があり、 魚がいる。 区画所有者のほとんどは、 小さな
菜園と数本の果樹を所有する。
上記のコンセプトに基づく開発では、施設の周囲に電子ウォー
ル を備え、 侵入警報装置により部分的に防御されている。 図
10の右側には、 娯楽および必需品 ・ 補給物の保管用のオー
ナー共用エリアがある。 敷地が池に面していない人々のために
3
3
3
3
共用の水辺もある。 池の中にあるあずまやは120フィート(37 m)
の遊歩道でコミュニティとつながり、 最大40人を収容できる。
コミ ュ ニティ用地から一番 近い非 EMP 地 域まで 数百マイル
▪▪ 準備がで きていない一般の米国人および E M P生存主義
者、特にプレッパーには実現できない生活様式の維持を提
供する。
▪▪ 共通の関心と仲間意識をシェアする人々が参加する2つ目
の週末・避難住宅を提供する。
▪▪ EMP事象の前でも後でも電気は「無料」である。
▪▪ セレクトした連邦研究所を拡大して、EMP防御避難住宅、コミ
ュニティの証明、交通信号、上下水道公共事業ほかの社会基
盤についての詳細な実験を実施する。
▪▪ 前述した郡経済開発局および付随する商工会議所両方を復
興させて、活動状況と郡と企業の債権発行をサポートする。
▪▪ 加入している太陽電池パネル、インバータ、シールド、サージ
抑制器、関連製品供給者の収益を大きく拡大する。
▪▪ 太陽電池パネルの設置業者、EMP試験所、維持管理その他
のサービス要員の収益を拡大する。
▪▪ 郊外仕様の簡易小型住宅コミュニティという不動産開発の
新市場を開拓する。
(数百キロ) 離れていることも考えられるので、 時期的に日持ち
のしない補給物は EMP 災害後の大きな問題である。 このよう
な大規模開発または平均サイズの郡のために、 比較的安価な
4, 000フィート (1,200 m) の未舗装でマットを並べた滑走路が
設置される。 この滑走路は最大荷重70トンを許容し、 輸送機
C-17 グローブマスター III (Globemaster III) の離着陸が可能
である。
上記コンセプトは他の不動産会社や一部の大会社を巻き込
み、 独自の完全 EMP 防御施設の開発を支援する。 形態は販
売または賃借のどちらかになると思われる。
参考
▪▪ EMP – Protect Family, Homes and Community, 3rd edition.
2013. Don White and Jerry Emanuelson.
▪▪ EMP Protecting Housing and Solar. 2014. Don White.
▪▪ www.emp-safeguard.com
▪▪ www.empprotection.org
▪▪ www.futurescience.com/emp.html
記事の要約および雇用により生じる利益
平均的な広さは8フィート (2.4 m) ☓ 20フィート (6.1 m)、 EMP
防御 ・ 屋根の太陽電池付きで、 向こう10年ほど使えるコミュニティ
用井戸および浄化槽を備えたもので約18, 000ドル (約215万
円) である。 これは、 既存の太陽電池付き住宅に EMP 防御 (改
装) を実施する費用と比べると非常に安い。 米国の1億2100万
家庭のうち、 20パーセントがこの対策をするだけで、 総売上は4,
360億ドル (52兆円) となる (20% × 1 億 2100 万 ×1.8 万ドル=
4,360億ドル)。 これは10年間では年平均440億ドル (5. 3兆円)
Don White氏は、現在は引退しているが、登録された専門エンジニアで、メ
リーランド大学のBSEEとMSEEの学位を持っている。ワシントンDC都心にあ
るEMC関連会社3社の元CEO。30年以上にわたり技術関係の本を14冊著
作し出版。最新著作は「The EMC, Telecom and Computer Encyclopedia」
という800ページのEMC・通信・コンピュータ解説本である。またDon White
Consultants社ではEMC Technology誌という隔月の業界誌を4大陸で出
版し、技術分野担当の編集者として多くのガイダンス記事を書いた。IEEEの
EMC学会元会長でもある。■
の売上となる。
簡易小型住宅関連の売上 (経済に還元されるお金)
22万5千ドルごとに、 年平均4. 8万ドル を賃金として支払う仕
事が発生する。 上記の440億ドル (5. 3兆円) は、 10年間で
200万件の雇用に相当する。 つまり10年目には、 年当たりおよ
そ350万の雇用へと増大する。 米国の家庭のうち (EMP 対策
interference-technology.jp
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 63
EMP
る。 図10は多くの例のうちの一例である。
以下に、 その利益を要約する
保存版ガイドブック2016
2014年11月号 掲載
ESD
ANSI/ESD STM2.1規格適合衣服近傍における
ESDに敏感なデバイスの
電界誘導モデル(FIM)放電によるリスク
Bob Vermillion
CPP/Fellow
Certified, ESD Engineer-iNARTE
RMV Technology Group, LLC
E
SD 評価において、 作業員がウー
子ネットワー クは、 摩擦による帯電ま た
ル や 絹、 綿、 ポ リエ ステル の 混
は帯電発生の防止に適切なのだろうか?
紡および制電つな ぎ服 (帯電防
( 注 : 本稿は、 使い捨ての衣類に関して記
止作業服) を着ているのを見ることは珍
述しないものとする )
しくな い。 デ ジ タル 顕 微 鏡下 で見 える よ
ANSI/ESD STM2.1 は、 図 2 に 示 さ れ
うに (図 1 の左端)、 帯電防止作業服に
て い るよう な 特 定の2 ヵ所 間 (point-to-
は、 綿またはポリエステル混紡に導電性
point)を測定するための条件を定めている。
格子ネットワークが埋め込まれた (図 1 の
そ の 方 法 は、 ANSI/ESD STM2.1 中 で も
中央と右端) 構造のものがある。 ANSI/
示されているように、 特別なステンレスス
ESD STM2.1-2013 (表2参照) に基づい
チールの衣服用クリップ電極 (図2左) あ
た両袖口間 (図2) の抵抗は良好にもか
るいは5ポンド (2 kg 強) の NFPA 電極2
かわらず、 いくつかの帯電防止作業服で
個 (図2右) を使用する。
は帯電 が発生する。 では、 帯電 防止作
著者が実施した最近の試験では、 電気
業服に (図1) に埋め込まれた導電性格
抵抗が ANSI/ESD S20.20 許容値範囲内
図1.
64 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
Vermillion
ESD
図2.
図3.
表2.出典: A NS I / ESD ST M 2 .1
産業での共通事項/衣服システムの使用
衣服カテゴリ
推奨抵抗値
いくらか電界抑制特性のある衣服
ESD カテゴリ 1
静電気防護服
<1.0 x 1011 オーム
指定されたグランドポイント付衣服
ESD カテゴリ 2
グランド可能な静電気防護服
< 1.0 x 109 オーム
作業員に対し連続電気経路のある衣服:
だが主要グランド経路ではない
ESD カテゴリ 2
グランド可能な静電気防護服
< 1.0 x 109 オーム
2つ別々のグランド経路が必要で連続モニタ装置経由の
2つのグランド経路でグランドされている
ESD カテゴリ 3
グランド可能な静電気防護服システム
(作業員と一体化した衣服)
< 3.5 x 107 オーム
単一ワイヤによる常時モニタ・システム経由で
グランドされている1
ESD カテゴリ 3
グランド可能な静電気防護服システム
(作業員と一体化した衣服)
< 3.5 x 107 オーム
作業員用の主要グランド経路として使われる衣服
ESD カテゴリー 3
グランド可能な静電気防護服システム
(作業員と一体化した衣服)
< 3.5 x 107 オーム
表2.出典: ANSI/ESD STM2.1
*注1) 単一ワイヤによる常時モニタ・システムのいくつかは、抵抗以外のパラメータを測る。
であったが、 ANSI/STM2.1 適合帯電防止作業服を着てグランドさ
帯電防止ワークステーション (図3左) に設置された。 試験中、ノー
れた測定者によって依然として静電界が測定された。 帯電防止作
ト PC (図3左) は、 測定の読み値に影響しないようにプローブから
業服に関するこれらの調査結果に基づき、 ESD に非常に敏感な
3インチ離してセットアップした。 温度と相対湿度 (RH) は、 それぞ
50ボルト未満のデバイス (HBM クラス 0) の近くで、 帯電防止
れ 73ºF (22.8ºC) と 37%RH を計測した。 Workmanship NASA-
繊維が帯電するリスクはないのだろうか?グランドされた作業者が
STD 8739.6 の16ページ、 セクション 6.1 は以下の通り :
金属ピンセットで回路カードまたは部品に触れることで接点ができ
るとき、 静電界は ESD 事象を促進するだろうか?表2は、 ANSI/
ESD STM2.1 の電気抵抗要求の主要部分である。
6.1 温度および相対湿度 (RH)
6.1.1 工程エリア内の温度と相対湿度 (RH) をモニタし、 以下
のとおり維持しなければならない (要求事項)。
F)
a. 温度 : 18 ~ 30℃ (65 ~ 85 ℃
ESD 事象が発生するために必要な3つの要素 :
b. 最大相対湿度 : 70% RH
1. 帯電の発生
c. ESD に敏感なハードウェア、 最小相対湿度 : 30% RH
2. 帯電の蓄積
d. ESD に敏感なハードウエア HBM クラス 0、
3. 急速な放電
最小相対湿度 : 40% RH
したがって、 グランドされた作業員と帯電防止作業服間にグラ
ンドへの経路が存在することが重要である。
数年前、 この同じプローブ (図3の写真参照) で、 帯電防止作
ANSI/ESD STM2.1 と ANSI/ESD STM11.13
で定義される電気抵抗
布地の電気抵抗特性を決定するためにウールのセーター、 ポ
業服を着て、 導電性床で導電性の履物を履いている作業員を評
リエステル混紡の帯電防止作業服、 および綿の帯電防止シャツが
価した。 50 ボルト未満の発生があった。 非接触プローブは、 静
評価された (図4および図5)。 異なる種類の帯電防止作業服で
電気のピーク電圧を測定するために利用される。
起こりうる無数の要因を区別する必要性は、 読者にとって興味深
本稿では、コンピュータに接続された非接触プローブ・システムは、
interference-technology.jp
いはずである。 表3は、 測定結果の概要を示している。
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 65
ESD
図4.
図5.
図7.
図6.
表3.
衣服
ウール・セーター
図5左
図7に示すように、 静電気防止トレイは素
ANSI/ESD STM2.1 ANSI/ESD STM11.3帯電防 ANSI/ESD STM11.3帯電防
帯電防止服 (Ω)
止服グリッドパターン (Ω) 止服グリッドパターン (Ω)
限度値: <1.0 E+11 オーム
(グリッドパターン内部 図4)
(グリッドパターン上 図 6)
1.3 E+12
NA
NA
注: フィールド抑制なし
キャビティの内側が 3.6 x 108 オーム、 底 (外
側) が 4.3 x 10 8 オームであった (表4参照)。
トレイは帯電した板の上にセットされ、 オー
バーヘッド ・ 3ファン ・ イオン化ユニットによっ
帯電防止作業服
図5左から2枚目
洗濯した綿&カーボ
ン格子パターン
7.0E+10
ポリエステル&カー
ボン格子パターン
図5の左から3枚目
9.0E+05
黒い半袖シャツ
図5の右端
手で扱われ、 2点間の抵抗測定値の平均は、
て帯電を 5.0 ボルト未満に中和するようにし
3.2E+10
2.4E+08
た。 ワニ口クリップは、 グランドへの経路を
保証するために、 トレイに付けられた。 ESD
9.0E+11
1.7E+06
事象のアンテナは、 ESD に敏感なデバイス
から1フィート (約 30cm) のところに置いた。
作業員はグランドされている (帯電防止リスト
6.2E+10
NA
NA
注:フィールド抑制なし
ストラップ装着) 一方で、 ステンレススチール
のピンセットは ESD に敏感なデバイスのピ
ンに直接接触 (金属から金属への接触) し
表3.
た。従って、試験は最初にウールのセーター、
電気抵抗値注: 赤=測定失敗
次に帯電防止の綿混紡&カーボン格子の作
業服、 ポリエステル混紡&カーボン格子の
帯電防止作業服、 最後に黒い綿の半袖シャ
66 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
Vermillion
グランドされた作業員がピンに接触したときのESDピーク値
グランドされた作業員が非接触プローブに接近
ESDピーク
電圧
ウールのセーター
ウールのセーター
図8b.
帯電防止作業服を着用しグランドされた作業員が非接触プローブに接近
ESD
図8a.
グランドされた作業員がピンに接触したときのESDピーク値
ESDピーク
電圧
綿-カーボン格子
綿-カーボン格子
図9a
図9b.
グランドされた作業員がピンに接触したときのESDピーク値
グランドされた作業員が非接触プローブに接近
電圧
ESDピーク
ポリエステル-カーボン格子
ポリエステル-カーボン格子
図10a.
図10b.
グランドされた作業員が非接触プローブに接近
グランドされた作業員がピンに接触したときのESDピーク値
電圧
ESDピーク
半袖のシャツ(綿)
図11a.
ツの順に着用して行った。
半袖のシャツ(綿)
図11b.
CDM と電界誘導の定義
次のステップでは、 グランドされた作業員がコンピュータインタ
デバイスが導電表面に接触しているとき、 表面への放電は非
フェースに接続する非接触電圧プローブに接近するようにする。
常に速くなり、 CDM (デバイス帯電モデル) 障害または電界誘導
結果を図8~図11に示す。
モデル (FIM) 放電として知られている損傷原因となりうる。
非接触電圧プローブと ESD 事象アンテナを接近させてから数
誘導は、 物体あるいは人によって帯電を別の表面に移動する
秒以内に、 グランドされた作業員はそれぞれ違うタイプの素材の
ことで生じる。 帯電は、 まさに表面に接触しようとするポイントで、
作業服を着用して、 ESD に敏感なデバイスのピンと金属から金属
ピンとピンセットが接触した場合のように導電表面上で急速に放
への直接接触を実施した。 したがって、 ESD に敏感なデバイス
電される。
近くの静電界は、 金属から金属への振る舞いが静電界のあるとこ
要約すると帯電防止作業服による帯電への寄与は、 ESD に
ろで起こった場合には、 表5で示すように電界モデル放電 (FIM :
非常に敏感なデバイスを50ボルト未満またはユーザーの要求に
field induced discharge) を生じた。
応じた電圧で扱う場合、 考慮されるべきである。 帯電防止作業
服の試験方法規格である ANSI/ESD STM2.1 は、 抵抗性能の
指標として、 両袖口間の抵抗を衣服用クリップ電極 (図2左) あ
interference-technology.jp
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 67
表4.A NS I / ES D S T M11.13 相対 湿 度12 .4%R H で4 8 時間後
内側の2点間電気抵抗
外側の2点間電気抵抗
るいは5ポンド (2kg 強) の NFPA 電極2個
(図2右) を使用して、 効果的に測定する技
ESD
トレイ
STM11.13
C.V.
トレイ
STM11.13
C.V.
術を記載している。 さらに、 グランドされた作
1
3.40E+08
100v
1
4.51E+08
100v
業員が金属ピンセットと部品のピンを接触さ
2
3.21E+08
100v
2
3.89E+08
100v
せると、 数種類の布地 (導電格子の有無に
3
4.24E+08
100v
3
4.34E+08
100v
関わらず) はイオン化なしで、 ESD 事象を活
4
3.54E+08
100v
4
4.66E+08
100v
発化させる両方の静電界を発生させることが
5
3.70E+08
100v
5
4.37E+08
100v
わかった。 結論として、 本稿では低い相対
6
3.52E+08
100v
6
4.03E+08
100v
湿度でのさらなる研究および追加の試験が
平均値
3.60E+08
平均値
4.30E+08
今後の研究に必要となるだろうと思われる予
中央地
3.53E+08
中央地
4.36E+08
備的な調査結果を概説したものである。
最小値
3.21E+08
最小値
3.89E+08
最大値
4.24E+08
最大値
4.66E+08
標準偏差
3.53E+07
標準偏差
2.90E+07
内側ベース
外側ベース
参考文献:
1. ESD Adv. 1.0-2009
2. NASA-STD-8739.21, 18 June 2010
3. ANSI/ESD S20.20-2007
4. ANSI/ESD STM2.1-1997
5. ANSI/ESD STM11.11-2006
6. ANSI/ESD S6.1-2005
表5.静電電圧と放電の要約
7. ESD TR20.20-2008
静電電圧
試験
ウール・セーター
図5左端
ESD 事象 (V)
8. Fed-TM-STD-191A, METHOD 5931,
Notice 7, 9 August 2000
30
-1170
230
9. ESD from A to Z, Kolyer & Watson,
Chapman & Hill, 1996
帯電防止作業服
洗濯した綿とカーボン格子
パターン
図5左から2枚目
20
ポリエステルとカーボン格子
パターン
図5左から3枚目
5
黒い半袖シャツ
図5右端
5
-75
48
10.Static Control Garment Verification
to Ensure Supplier Conformance,
Controlled Environments, 23 February
-855
174
2012, Bob Vermillion, RMV Technology
Group at NASA-Ames
21
2
B ob Vermillion氏は、CPPフェロー、ESDおよび
注 : それぞれの中和段階の後イオナイザは停止させた。
製品安全の認定エンジニア、iNARTE有資格者で
あり、先進材料試験・評価、および航空宇宙、ディス
クドライブ、医療機器、製薬、自動車、家電製品のト
静 電 電 圧と放 電の 要 約
ラブルシューティング、ロボット工学、電子システムな
どについて実用的な知識を持っている。帯電防止
作業服の専門調査委員会のメンバーとして、ESDA
Standards委員会にも参加している。SAE G-19 と
G-21 委員会の委員である。米国内・海外でのESD
セミナーなどVeremillion氏の講演内容は、カリフォ
ルニア州立Polytechnic大学、サンノゼ州立大学、カ
リフォルニア大バークレー校、クレムゾン大学での
ゲスト講師も含め、多岐にわたっている。Veremillion
氏はRMV Technology Groupの創立者兼CEO。同
グループはNASAの業界パートナーであり、ESD材
料・システムレベルの第三者試験機関である。連絡
先は650-964-4792またはbob@esdrmv.com。■
68 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
保存版ガイドブック2016
Dibiase
2015年3月号 掲載
Anthony A. Dibiase
EMC/Product Safety Consultant
Spec-Hardened Systems
気 ・ 電 子 製 品 お よ びシステム
出てい る。 製品のメ ーカ ーが低 コストか
に関する電磁界の影 響につい
つ計画どおりの出荷日程で製品を生産で
て画期的な研究がある。 その
きるようサポートするには大学在学および
研究はエンジニアリングアートからエンジ
卒業レベルの EMC 工学研究が要求され
ニアリングサイエンスへと進歩を遂げてい
る。 新しい法的指令および規格を発行す
る。 そ の原 因 の1つ に、 電 磁 界 発 生 源
る郡が増えているので、 それに対し有効
環境の強度が強くなり、 同時に複雑にも
かつ費用対効果の高い対応ができるよう
なっていることがあるだろう。 最新技術を
な熟達した EMC エンジニアが必要とされ
用いた製品は複雑で精巧になっているの
ている。
電
で、 電磁的両立性 (EMC) 要素について
た要素によって、 工科大学の専門教科に
大学の電 気 工学課程と EMC
工学課程との関係
EMC 工学の学位研究を採用する必要性
電磁界理論など物理法則分野の知識
が高くなった。 EMC エンジニアは、 電子・
は、 EMC 工学に関係した原理を理 解す
電気設計の構築が、 その範囲内で機能
る際に必要である。 大学レベルの十分な
や規制の要求に適合するように仕事をす
EMC 設 計開発教育が不足しているのは
るように求められている。
米国の技術や輸出能力の衰退に関わっ
以前よりも考慮する必要がある。 こういっ
てくる。 今のところ、 この分野の学科は大
部分の大学の工学課程において標準的
はじめに
interference-technology.jp
大学レベルの学校教育で EMC エンジ
な要求事項ではない。 電気、機械、科学、
ニア教育用の体系的かつ普遍的なプログ
コンピュータ科学などの専門分野の総合
ラムが米国全土で不足しているため、 世
的な知識は、 設計や EMC に関係した適
界経済における米国の競争力に影 響が
合業務のための必要不可欠な基礎として
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 69
SHIELDING
EMC教育
電 磁 両 立 性 の 教 育と 訓 練 の た め の
標 準 化 さ れ た プ ロ グ ラム の 必 要 性
EMC エンジニアのための求人案内
必要である。
EMC エンジニアが利用可能な求人案内は多い。 次にリストの
EMC 工学課程に必要とされる研究は、 既存の電気工学課程
いくつかを示す。
と非常によくマッチするという事実が明らかになっている。 電子
電気機器やシステムの設計と開発を担当するエンジニアは、 製
(1)電気・電子製品、システムの設計や開発でEMC要求事項
品が法的な要求事項に適合しなければならいないので、 製品や
に関係する仕事。
システムの EMC に関連した問題に取り組む必要がある。 この業
(2)製 品やシステムの開発、予備適合性確認、正式適合性確
EMC教育
務を効果的に実行するため、 エンジニアには教育および実務で
認の各段階でのEM C 試 験に関係するEM C 試 験工学関
の経験が求められる。
連業務。
(3)耐用年数まで維持される製品やシステムのEMC要求を扱
現在利用可能な EMC 教育資源
う品質保証・信頼性エンジニア。
EMC エンジニアの生涯教育の試みとなるような EMC 教育リ
(4)EMC法規制遵守プログラムの対応および製品コストと出荷
ソースのリストを以下に示す。
時期の目標を担当する法規制遵守管理者。
(5)E MC理論やEMC実務の基本的な知識を要求されるEMC
(1)様々なEMCの話題に関する情報を提供するインターネット
試験機器のセールスエンジニア。
上のセミナー(EMC webinars)
(2)E MCのトピックスを発表するEMCセミナー
(6)E MC応用に特化した専門知識を持つEMCコンサルタント。
(3)E MCを対象に議論を行うシンポジウム
(7)電 気・電子製品および人体に対する電磁界の影響を研究
する分野で働くEMCエンジニア。
(4)い ろいろなEMCの話題を提供する大学主催のEMCプロ
(8)E MCシミュレーション・プログラムの開発を担当するEMCソ
グラム
フトウェア・エンジニア。
(5)E MC関連の業務から得られたEMC経験
(6)定 期刊行雑誌(例えばITEM)で発表される技術的なEMC
大学レベルの正規の EMC 教育は、 効率的で有能な EMC エ
記事を読むことで、個々がEMCに関する学習を実施する。
ンジニアになるための優れた基礎となる。
(7)下記例のような大学主催のEMC関連のコースに参加する。
a. ク レ ム ゾ ン 大 学 ( 車 両 エ レ ク ト ロ ニ ク ス 研 究 所 –
まとめ
CV EC:Clemson U niversit y Vehicle Elect ronics
エ ン ジニアが利用で きる EMC 教育プログラムを提 供するリ
L a b o r a t o r y)。ク レム ゾ ン 大 学 の自 動 車 工 学 課 程
ソースはいろいろあるが、 大学レベルの包括的かつ標準化され
は、EMC関連の科目を含むカリキュラムに対して学位
た正規教育プログラムの必要性が緊急に必要であり、 その必要
を授与している。
性は年々高まっていくと思われる。 EMC 工学によって、 試行錯
b. カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCL A) – EMC関
誤の手法に基づいた EMC 教育をエンジニアリング科学へと発
連の科目に対して終了証明書を発行する課程がある。
展させていく。 これは、 EMC の原理が物理の基本法則とその
c. 専門的能力の開発するためのジョージ・ワシントン大
複雑さから導き出されるという事実に起因している。 したがって、
学センター – EMC関連の教育的なセミナーを開催し
EMC の原理の理論的で実践的な適用を理解することは必須に
ている。
なる。 つまり電気工学課程の必要不可欠な標準課程となるべき
d. ウィスコンシン大学ミルウォーキー校工学科 – EMC関
である。
係のセミナーを主催している。
e. ローラ市のミズーリ科学技術大学 – 航空研究プロジェ
クトに関係している主要な会社と協力して、新しいEMC
研究センターを最近開設した。
f. ミシガン大学 – 自動車システムのEMC関係セミナーを
A nthony A. D i B iase氏は、EMC・製品安全のコンサルタント会社Spec-
共同開催している。
Hardened Systems社の社長である。EMC、製品安全、環境、健康安全の
g. グランド・バレー州立大学 – 同大学のEMCセンターは
分野で25年間のコンサルタント経験がある。イーストマン・コダック社に3
EMCエンジニアにEMC関連の科目を提供している。
0年間、勤務し、信頼性、品質保証エンジニアリング、宇宙船システム設計
h. オクラホマ州立大学 – EMC試験の考察などEMCの話
に対する放射線・原子力の影響強化などを担当。General Electric社と
題を含む短期コースを開催している。
Bell Aerospace社でも放射線と原子力の影響を強化する分野に従事し
こういった EMC 生涯教育リソースは EMC エンジニアの知識
た。DiBiase氏はロチェスター工科大学の卒業生で、BSEEの学位を持っ
ベースを広げるのに利用することは可能だが、 職務経験を伴う
ている。EMCと製品安全性の分野で、多くのセミナーや訓練プログラムの
正式な EMC 教育の代替とはならない。
講師を務めている。■
70 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
2016年版ガイドブック
保存版ガイドブック2016
E
MC関連の製品・サービス・コンサルティングの企業一覧です。企業名と同じ行に書かれた数字はこの雑誌の「広告ページ」になりますので
ご参照ください。この企業一覧に情報掲載を希望される場合は、item_info@e-ohtama.jpまでご連絡ください。
株式会社e・オータマ …………… 表4
〒215-0033 神奈川県川崎市麻生区
栗木2-8-20
TEL:044-980-2050
www.e-ohtama.jp
● EMC試験、EMCノイズ対策支援、製品安全試験、電磁環境調
査、磁界測定、環境試験、申請代x
岡谷電機産業株式会社
〒158-8543 東京都世田谷区
等々力6-16-9
TEL:03-4544-7040(関東営業所)・www.okayaelec.co.jp
● ノイズ製品・サージ製品・表示製品・コイルフィルタ(電源雑防用
フィルムキャパシタ、スナバキャパシタ、アクティブフィルタ用キャパ
シタ、サージアブソーバ・サージプロテクタ、その他)
沖電線株式会社
〒211-8585 神奈川県川崎市中原区下小田中2-12-8
TEL:044-754-4364(本社営業所)・ www.okidensen.co.jp
● 電線・ケーブル、ワイヤカット放電加工機用電極線、フレキシ
ブルプリント配線板(FPC)、光ケーブル、コネクタ、放熱製品
株式会社オータマ
〒206-0811 東京都稲城市押立1744
TEL:042-377-4311 ・ www.ohtama.
co.jp
● 磁気シールド・遮蔽部品、磁気シールドルーム・チャンバー
磁場キャンセラー、磁界環境測定サービス、熱処理
菊水電子工業株式会社
〒224-0023 神奈川県横浜市都筑区東山田1-1-3
TEL:045-593-7530 (首都圏営業所)
hanbai@kikusui.co.jp ・ www.kikusui.co.jp
● 電源機器(直流電源・交流電源・パワーサプライコントロー
ラ、電子負荷、バッテリテスタ)、電子測定器(EMC関連試験機
器:車載電子機器用EMC試験システム、
・静電気放電シミュレー
タ、安全関連試験機器、高調波・フリッカ、ジッタメータ、信号発
生器、FC試験、その他測定器、エアロフレックス製品、その他)
株式会社テクノサイエンスジャパン
〒158-0096 東京都世田谷区玉川台2-28-5
コンド玉川台
TEL:03-5717-6130
www.tsjcorp.co.jp
● 【EMI/EMS測定関連製品】自動車測定ソフトウェア、RFパワー
アンプ、ジェネレータ各種、
【電源装置関連製品他】パワーアナ
ライザ、トランスフォーマーテスタ・電力品質監視装置
自動測定システム(一般電子機器、車両/車載機器、TV/VTR/
AUDIO機器、その他)、測定器(アンテナ、LISN、EMIテストデバ
イス、基本信号発生器、G・TEMセル、EMIレシーバ、電界センサ、
その他)、RFパワーアンプ、パワーアナライザ、ノイズシミュレー
タ、ソフトウェア(測定)
テセックパートナー
AMETEK Co., Ltd. Nagoya
Office
TEL:052 709 5501・www.teseq.co.jp
cts-japan.sales@ametek.co.jp
● EMCエミッション・イミュニティ試験器、ケーブル・機能試験
機器、EMC校正サービス、車載電子機器用イミュニティ/エミッ
ション試験システム、BCI、静電気発生器、伝導EMCパルス発生
器、ISN、RFパワーアンプ、EMIレシーバ、GTEM、バイログアンテナ
interference-technology.jp
株式会社東陽テクニカ
〒103-8284 東京都中央
区八重洲1-1-6
TEL:03-3245-1244(EMCお客様相談室)
www.toyo.co.jp
● EMIテストレシーバ、RFパワーアンプ、EMI自動測定システム・
ソフトウェア、EMS自動試験システム・ソフトウェア、簡易EMI測
定システム・ソフトウェア、アンテナパターン測定ソフトウェア、
シールド袋、等
株式会社TFF
〒108-6106 東京都港区港
南2-15-2
品川インターシティB棟 6階
TEL:0120-441-046 ・ jp.tek.com
● 汎用計測器、ビデオ計測器、ネットワーク計測・監視機器な
どの開発、販売、アフター・サービス (オシロスコープおよび関
連機器、ロジック・アナライザ、リアルタイム・スペクトラム・アナ
ライザ、半導体測定機器、無線通信用測定機器、シグナル・ジェ
ネレータ、TV信号測定機器、伝送特性/ネットワーク測定機器、
他)
株式会社ノイズ研究所
〒252-0237 神奈川県相模原市中央区
千代田1-4-4
TEL:042-712-2031(首都圏営業所)
syutoken@noiseken.com ・ www.noiseken.co.jp
● 静電気試験器、半導体用静電気試験器、ノイズシミュレー
タ、ファスト・トランジェント/バースト試験器、雷サージ試験器、
電源電圧変動試験器、電磁波解析測定システム、減衰振動波
試験器、車載用過渡サージ試験器、DC電圧変動試験器、EMC
テストシステム、EMC受託試験 、修理・校正
株式会社村田製作所
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷
3-29-12 東京支社
TEL:0120-443-015 (営業本部)
www.murata.co.jp
● コンデンサ、インダクタ、電源
モジュール、ノイズ対策部品/EMI除去フィルタ、抵抗機/サー
ミスタ、圧電マイクロブロア、リチウムイオン2次電池、ソフト
ウェア、近距離無線モジュール
株式会社リケン環境システム
〒360-0031 埼玉県熊谷市末広4-14-1
TEL:048-525-7233
www.riken-kankyo.com
● 電波暗室・シールドルーム・吸収体・磁気シールド・EMC機
器装置販売
A.H. Systems, Inc. ………表3
9710 Cozycroft Ave.,
Chatsworth, CA 91311;
TEL: +1-818-998-0223・Fax
818-998-6892
sales@ahsystems.com・www.AHSystems.com
担当:Arthur C. Cohen, President;Travis Samuels, Ops. Dir.
【代理店】
株式会社テクノサイエンスジャパン
〒158-0096 東京都世田谷区玉川台2-28-5 コンド玉川台
TEL:03-5717-6130
www.tsjcorp.co.jp
● アンテナ
AR RF/Microwave
Instrumentation
……………………………………………表2
160 School House Rd., Souderton, PA 18964, USA
TEL:+1-215-723-8181
info@arworld.us ・ www.arworld.us
【代理店】
日本オートマティックコントロール株式会社
〒141-0032 東京都品川区大崎1-6-4 新大崎勧業ビル
TEL:03-5434-1600 (東京営業所)
www.naccjp.com
● RF高出力アンプ、アンテナ、レーザー電界プローブ
Instruments For Industry (IFI)
903 South Second Street, Ronkonkoma,
NY 11779, USA
TEL:+1-631-467-8400 ・ Fax:631467-8558
info@ifi.com ・ www.ifi.com
【代理店】
株式会社テクノサイエンスジャパン
〒158-0096 東京都世田谷区玉川台2-28-5 コンド玉川台
TEL:03-5717-6130
www.tsjcorp.co.jp
● アンプ、アンテナ、TEMセル、
センサ/プローブ
ITEM
™
ITEM Media
【Interference Technology 日本版】事務局
〒215-0033 神奈川県川崎市麻生区栗木2-8-20
TEL:050-5538-2852
www.interference-technology.jp
【米国本社】1000 Germantown Pike, Suite
F-2, Plymouth Meeting, PA 19462
TEL:+1-484-688-0300
Fax: 484-688-0303 ・ info@interferencetechnology.com
www.interferencetechnology.com
【Interference Technology 中国版】
HK Head Office
ACT International
Unit B, 13/F, Por Yen Building, No.478 Castle Peak Road,
Cheung Sha Wan, Kowloon,HK
担当:Adonis Mak adonisM@actintl.com.hk
Mark Mak markM@actintl.com.
中国
Shenzhen (深圳)
Unit 18C,Caihongxindu Haiying Building,
Caitian Road,Futian CBD,Shenzhen
518033 ,China.
担当:Michael Tsui michaelT@actintl.com.hk TEL:86-755-2598 8571 Ext.1009
Sky Chen skyC@actintl.com.hk
TEL:86-755-2598 8571 Ext.1014
Shanghai(上海)
Room 1302, No.7, Lane 888 ChangNing Road ,
ChangNing District , Shanghai 200042, China.
TEL:86-21-6251 1200
担当:Judy Huang udyH@actintl.com.hk
Hatter Yao hatterY@actintl.com.hk
Linda Li lindal@actintl.com.hk
Lisa You isay@actintl.com.hk
Beijing(北京)
Rm. 303, Unit 1, Building 1,
No. 1, Jinfanglu, Chaoyang District,
Beijing 100012, China.
Tel: 86-10-67484833
担当:Oasis Guo oasisG@actintl.com.hk
● 無料EMCノイズ対策情報誌(英語版・中国版・日本版)
[1] 英語版(オンライン誌&紙媒体にて年3回発行|EMC
Directory & Design・IEEE Symposium Guide・EMC Test &
Design Guide) [2] 中国版(紙媒体のみ、隔月発行)
[3] 日本版(オンライン誌:隔月発行、紙媒体:年1回)
Montrose Compliance Services, Inc.2353 Mission Glen Dr.
Santa Clara, CA 95051-1214, USA
TEL:+1- 408-247-5715 ・ FAX:408-247-5714
mmontrose@earthlink.net ・ www.montrosecompliance.
com・担当:Mark Montrose, Prin.Consult.
● 電磁適合性・製品安全性コンサルティング・デザインサービ
ス、セミナー(パブリック・プライベート)、プリント基板レイアウ
トデザイン、CEテスト研究所(ISO 17025 取得)、ITE先行・CEコン
プライアンスの工業製品
Oerlikon Metco (Canada) Inc.
………… 14
10108-114 Street, Fort
Saskatchewan, AB, Canada T8L 4R1
TEL:+1 905 309-3240・FAX : +1 905 309-0170
info.metco@oerlikon.com
www.oerlikon.com/metco/en/products-services/coatingmaterials/conductive-filler/
● E-Fill™ニッケルグラファイト、ニッケル鍍金カーボンファイ
バ、金メッキニッケル、金メッキニッケルグラファイト
INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 71
SHIELDINGdirectory
company
株式会社エーイーティー
〒215-0033 神奈川県川崎市麻生区
栗木2-7-6
TEL:044-980-0505
info@aetjapan.com
www.aetjapan.com
● ハードウェア(誘電率測定装置、高周波測定システム、電子
銃・イオン源、光電圧装置・部品、加速器・X線・放射線、マイク
ロ波・ミリ波応用装置、マイクロ波コンポーネント、プラズマ装
置)、ソフトウェア、解析サービス、設計・試作サービス、測定
サービス、技術コンサルティングおよび教育
保存版ガイドブック2016
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AR RF/Microwave
Instrumentation
表2
AR RF/Microwave
Instrumentation
Cover 2
A.H. Systems, Inc.
表3
A.H. Systems, Inc.
Cover 3
株式会社e・オータマ
表4
e-OHTAMA, LTD
Cover 4
Oerlikon Metco
14
Oerlikon Metco
14
2016 年
保存版 ガイドブック
ISSN 0190-0943
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Publisher Emeritus
Robert D. Goldblum
President
Graham S. Kilshaw
Content Manager
Belinda Stasiukiewicz
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Allison Titus
e・オータマ
Japan
テクニカルスタッフ
Interference Technology 日本事務局
TEL: 050-5538-2852・FAX: 044-980-2052
進藤誠一
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遠藤清
USA
瀬川真
1000 Germantown Pike, F-2
Plymouth Meeting, PA 19462-2486
info@interferencetechnology.com
TEL:+1-(484) 688-0300・FAX: +1-(484) 688-0303
藤本昌司
翻訳
Circulation Manager
Eileen M. Ambler
田路明
Marketing Manager
Dawn Hoffman
浜野碧
[ 日本版事務局 ]
営業 & マーケティング
浜野 碧
松田昌典
www.interferencetechnology.com
China, Taiwan, Hong Kong
編集
HK Head Office ACT International
Unit B, 13/F, Por Yen Building, No.478 Castle Peak Road,
Cheung Sha Wan, Kowloon,HK
adonisM@actintl.com.hkcom / judyH@actintl.com.hk
lisay@actintl.com.hk
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ウェブで読む EMC
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72 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版
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2016年版ガイドブック
TECHNO SCIENCE JAPAN CORPORATION
CONDO TAMAGAWADAI, 2-28-5 TAMAGAWADAI,
SETAGAYA-KU, TOKYO 158-0096 JAPAN
+81-3-5717-6130, www.tsjcorp.co.jp
信頼のテス
トラボ
信頼のテストラボ
株式会社e
・オータマ
株式会社e
・オータマ
EMC
e・オータマは、豊富な経験と高い技術力を持つEMC試験所です。
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ISO17025に基づいた運営を行っております。
ISO17025に基づいた運営を行っております。
車載EMC
防衛・航空
テュフズードオータマ株式会社 信頼の
CISPR・ISO規格や、大半の国内外
テストラボ
国内外のEMC規制適合に必要な
エミッション
(EMI)測定
イミュニティ
(EMS)試験に対応
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世界各国のEMC/製品安全/無線試験&認証取得の代行をいたします。
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電波暗室(10m法、3m法、簡易)
シールドルーム他
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電気機器に必要なEMC試験に対応
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NDS C 0011、RTCA/DO-160
JIS W 0812
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環境・出張試験
教育・情報発信
製 品 開 発 期 間 短 縮 の 鍵
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取扱地域例
【 教育 】各種セミナー実施
EMC、車載関連、製品安全、
ノイズ対策支援、他
【 情報発信 】
オンラインEMC技術情報誌
「Interference Technology」の当社
エンジニアによる翻訳、および掲載
利用例
対策支援実績例
情報機器、医療機器、産業工作機械、
制御装置、計測機器、車載機器、半導
体製造装置、他
・大型産業機器
・半導体製造装置
・工場・建築現場・送電線下の
環境調査
■東 京 試 験 所
EMC試験/無線試験 044-980-2050
〒 215-0033 神奈川県川崎市麻生区栗木 2-8-20
■ 山 梨 EMC セ ン タ ー
E M I 測 定 055-298-2141
EMS試験 0555-88-2580
芦 川 試 験 所
〒 409-3704 山梨県笛吹市芦川町鶯宿 1661
■ 東 海 EMC セ ン タ ー
車 載 部 品 E M C 試 験 0566-26-2890
■登
車載/防衛EMC試験 044-819-8601
NEW 刈谷駅前試験所
戸
試
験
所
〒 448-0858 愛知県刈谷市若松町 4 丁目 28
www.e-ohtama.jp
上九一色試験所
〒 409-3712 山梨県甲府市古関町 3415
富士松試験所
〒 448-0008 刈谷市今岡町吹戸池 68
〒 214-0014 神奈川県川崎市多摩区登戸 294
e -OHTAMA