抄録集 - 中部大学

第 14 回
日本体力医学会 東海地方会
学術集会 抄録集
期日:2010 年 3 月 27 日(土)
会場:名古屋大学 東山キャンパス
IB 電子情報館 2 階
大講義室
第 14 回日本体力医学会東海地方会学術集会を開催するにあたって
第 14 回日本体力医学会東海地方会学術集会
会長 押田 芳治
名古屋大学総合保健体育科学センター 教授
このたび,第 14 回日本体力医学会東海地方会学術集会を,平成 22 年 3 月 27 日
(土)に名古屋大学 IB 電子情報館にて開催の運びとになりました.これも,関係各位の
ご協力の賜物と存じ,厚くお礼申し上げますとともに,一言,ご挨拶させていただき
ます.
我が国において,「高齢化社会」の到来と言われて,久しく経過しておりますが,
現在に至っては,「高齢社会」であると断じても過言でないと思われます.そこで,
本会のメインテーマを「高齢社会における体力医学の果たす役割」とし,特別講演に
は下方浩史(国立長寿研究所疫学研究部部長)先生にお願いしました.さらにシンポ
ジウム「高齢社会と体力医学」を企画し,シンポジストとして下村吉治教授(名古屋
大学生命農学研究科),小池晃彦准教授(名古屋大学総合保健体育科学センター),柳
本有二教授(神戸常盤大学保健科学部)にお願いをし,それぞれのご専門の立場から
発表していただきます.これだけの高名な先生のお話を聴講するだけでも,将来を担
う若手研究者の皆様に大いなる指針を与えていただけるものと確信いたしておりま
す.
一般演題も 21 題集まりました.昨年度と同様に,一般演題から「奨励賞」を 2 題
選出し表彰いたしますので,活発な討論を期待いたしております.
末筆になりましたが,本学術集会に参加していただいた方々のご研究が一層ご発展
されることを祈念申し上げます.
平成 22 年 3 月 27 日
日本体力医学会東海地方会学術集会学会長・開催地一覧
回
年次
開催会場
会長
開催地
第1回
1997 年
愛知医科大学
丹羽繁郎
愛知県長久手町
第2回
1998 年
名古屋大学
矢部京之助
愛知県名古屋市
第3回
1999 年
中京大学
松井信夫
愛知県豊田市
第4回
2000 年
愛知県立大学
豊島進太郎
愛知県長久手町
第5回
2001 年
名古屋大学
佐藤祐造
愛知県名古屋市
第6回
2002 年
愛知県コロニー
発達障害研究所
三田勝己
愛知県名古屋市
第7回
2003 年
名古屋大学
宮村實晴
愛知県名古屋市
第8回
2004 年
三重県医師会館
藤澤幸三
三重県津市
第9回
2005 年
中京大学
北川 薫
愛知県名古屋市
第 10 回
2006 年
朝日大学
渡辺郁雄
岐阜県瑞穂市
第 11 回
2007 年
名古屋大学
島岡 清
愛知県名古屋市
第 12 回
2008 年
(財)スポーツ
医・科学研究所
横江清司
愛知県知多郡
第 13 回
2009 年
名古屋大学
下村吉治
愛知県名古屋市
第 14 回
2010 年
名古屋大学
押田芳治
愛知県名古屋市
第 14 回日本体力医学会東海地方会学術集会
会長:押田
実行委員会
芳治
実行委員:小池
晃彦,筒井
秀代
事務局:〒464-8601 名古屋市千種区不老町
名古屋大学総合保健体育科学センター 健康スポーツ医学教室内
E-mail: tairyoku@htc.nagoya-u.ac.jp
URL: http://www.htc.nagoya-u.ac.jp/tairyoku09/
日本体力医学会東海地方会
【顧 問】
・愛知医科大学運動療育センター参与
・名古屋大学名誉教授・中京大学非常勤講師
・日本医療福祉専門学校リハ学科長
・名古屋大学名誉教授(環境医学研究所)
・日本赤十字豊田看護大学学長
【理事長】
・愛知学院大学心身科学部長/健康科学科教授
【副理事長】
・浜松大学健康プロデュース学部教授
・東海学園大学人間健康学部教授
・名古屋大学大学院生命農学研究科教授
【理 事】
・名古屋大学総合保健体育科学センター教授
・椙山女学園大学生活科学部講師
・三仁会あさひ病院顧問
・中京大学体育学部健康科学科教授
・名古屋大学総合保健体育科学センター教授
・鈴鹿回生病院副院長
・中京大学学長
・名古屋大学総合保健体育科学センター教授
・豊田工業大学教授
・名古屋大学医学部保健学科教授
・名古屋大学総合保健体育科学センター教授
・中京大学保健センター長
・名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科准教授
・名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科教授
・あいち健康の森健康科学総合センター副センター長
・東海学園大学教授
・中京女子大学教授
・三重大学教育学部教授
・静岡大学教育学部教授
・中京大学体育学部健康科学科教授
・名古屋学院大学人間健康科学部教授
・(財)スポーツ医・科学研究所所長
・渡辺内科クリニック院長・朝日大学名誉教授
・中京女子大学短期大学部教授
【幹事】
・愛知学院大学心身科学部健康科学科准教授
役員名簿
丹羽 滋郎
松井 信夫
三浦 隆行
御手洗 玄洋
村地 俊二
先生
先生
先生
先生
先生
佐藤 祐造
先生
藤澤 幸三
宮村 実晴
下村 吉治
先生
先生
先生
石田
石原
猪田
梅村
押田
加藤
北川
近藤
斉藤
榊原
島岡
清水
高石
竹島
津下
星川
村上
八木
浩司
健吾
邦雄
義久
芳治
公
薫
孝晴
満
久孝
清
卓也
鉄雄
伸生
一代
保
太郎
規夫
先生
先生
先生
先生
先生
先生
先生
先生
先生
先生
先生
先生
先生
先生
先生
先生
先生
先生
山本
山本
山本
横江
渡辺
近藤
章
高司
親
清司
郁雄
精司
先生
先生
先生
先生
先生
先生
長崎
大
先生
第 14 回日本体力医学会東海地方会
ご案内
参加の皆様へ
1.受付開始時間は当日 8:15 とします.
2.参加費(一般 2,000 円,学生 1,000 円)を当日受付にてお支払い下さい.
3. 演者の方は,8:15~8:40 までにデータ受付を行って下さい.データのファ
イル名は,
「演題番号_筆頭演者名」として下さい.なお,事務局で用意し
ているパソコンは,Windows です.Mac をお使いの方は,パソコンをご持
参下さい.
4. 学生の方は,受付時に学生証をご提示下さい.
5.名古屋大学は所定の場所以外は構内全面禁煙です.ご協力下さい.
6.発表会場内での携帯電話のご使用はご遠慮下さい.また,携帯電話の電話
を OFF にするか,マナーモードにして下さい.
7.昼食は大学内学食か近辺の飲食店,コンビニ等をご利用下さい.
<役員の方へ>
役員会は IB 電子情報館 1 階の IB012 講義室で行います.スタッフがご案内致
しますので,午前中のセッションが終わりましたら受付前にお集まり下さい.
プログラム
受付開始
8:15〜
開会の辞
8:45〜8:50
会長 押田 芳治(名古屋大学)
一般発表
セッションⅠ
8:50〜9:30
座長 片山
敬章 (名古屋大学)
1. 酸は筋細径求心性神経の機械刺激に対する反応性を増大させる
堀田 典生(愛知淑徳大学)
2. 運動負荷による気分変化にキヌレニン代謝が影響を及ぼしている
かもしれない
伊藤 康宏(藤田保健衛生大学)
3. 冷え性調査から見た若年女性の運動量
青木 貴子(岐阜市立女子短期大学)
4. 運動後における酵素合成グリコーゲンの糖質・水分補給源としての
機能
稲垣 圭(椙山女学園大学)
セッション II
9:30〜10:10
座長 安藤
富士子(愛知淑徳大学)
1. 高齢者における地域型運動の介入効果に関する研究
―運動効果の交差妥当性と季節差に関する研究―
北林 由紀子(名古屋市立大学)
2. 特定高齢者への介護予防運動の介入が体力および医療費へ及ぼす効果
樋口 憲生(三重中京大学)
3. 市民の健康づくりに向けた地域総合健康サービス事業の取り組み
健診結果に基づいた健康プログラムの提供と事業検討
野村 恵里(あいち健康の森健康科学総合センター)
4. コホートデータを用いた高齢者の身体活動量とうつ状態との関連
―歩行時間とスポーツ参加の 3 年間の変化に着目してー
松井 健(日本福祉大学)
小休憩
10:10〜10:20
セッション III
10:20〜11:05
座長 梅村 義久(中京大学)
1. 若年期のジャンプトレーニング効果は骨幹の中央部に保持される
岡田 正(中京大学)
2. 閉経時期の体脂肪,身体組成の変化についての検討
北村 伊都子(愛知学院大学)
3. 成人女性における電動アシスト自転車走行時の運動強度
鋤柄 悦子(名古屋市立大学)
4. 地域在住閉経後女性の体力指標としての WBI および握力の役割
坂崎 貴彦(名古屋大学)
5. 加齢に伴う筋厚の変化に関する研究
近藤 典子(名古屋市立大学)
セッション IV 11:05〜11:45
座長 竹島 伸生 (名古屋市立大学)
1. 高齢者における起居動作時の筋パワーに関する研究
―自立維持を目指すための必要な最低限の所量についてー
加藤 芳司(名古屋市立大学)
2. 高齢者を対象とした生活動作のシミュレーションを主体とする水
中運動の有効性
彦坂 愛子(名古屋市立大学)
3. 虚弱高齢者に対する動作速度変化を伴う下肢交互踏み替え運動の
効果
對馬 明(名古屋市立大学)
4. 最大酸素摂取量基準値の検討及びメタボリックシンドロームとの関連につ
いて
早瀬
智文(あいち健康の森健康科学総合センター)
セッション V
11:45〜12:25
座長
清水 卓也(中京大学)
1. 障害者に対する RPE (Borg’s Scale)の有用性
里中 綾子(医療法人三仁会あさひ病院)
2. アキレス腱断裂が陳旧性になってから診断に至った症例の原因につ
いて
田中 美香(鈴鹿回生病院)
3. 筋腱複合体の粘弾性がしゃがみ込み動作の可否に与える影響
水野 貴正(中京大学)
4. ストレッチングによる介入効果の追跡研究
稲見 崇孝(中京大学)
昼食(役員会)
12:30〜13:15
総会
13:15〜13:35
特別講演
13:40〜14:50
司会 佐藤 祐造(愛知学院大学)
「高齢者の体力と健康 ―長期縦断疫学研究(NILS-LSA)から」
下方 浩史(国立長寿医療センター研究所)
小休憩
14:50〜15:00
シンポジウム
「高齢社会と体力医学」
15:00〜17:00
座長 押田 芳治(名古屋大学)
1.老化とタンパク質・アミノ酸栄養
下村 吉治(名古屋大学)
2.高齢社会と体力医学~臨床的立場から
虚弱性をいかに防ぐか
小池 晃彦(名古屋大学)
3.100歳になっても歩くことのできる自分を目指して
柳本 有二(神戸常盤大学)
閉会の辞
17:00〜17:05
会長 押田 芳治(名古屋大学)
特別講演
特別講演
「高齢者の体力と健康 –
長期縦断疫学研究(NILS-LSA)から」
国立長寿医療センター疫学研究部長
下方 浩史
高齢化が急速に進む日本の社会において,高齢になってもできる限り元気に過ごし
たいという国民の共通の願いを実現することは急務である.高齢者の健康を増進させ,
疾病を予防し,医療費を低減させることが求められている.国立長寿医療センターに
て行われる老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA: National Institute for Longevity
Sciences –Longitudinal Study of Aging)は平成 9 年 11 月に開始された.対象は無作為
抽出された地域住民(観察開始年齢が 40 歳~79 歳)であり,一日 7 名に頭部 MRI,二
重 X 線吸収検査(DXA),腹部 CT,心臓超音波断層,頸動脈エコー,写真撮影を併用
した栄養調査,各種心理検査,運動機能調査などを含む数千項目以上にも及ぶ検査・
調査を年間を通して行っている.平成 11 年度に 2,267 名のコホートを完成させ,新
たな参加者を加えながら 2 年ごとの繰り返し調査を行い,現在は第 6 次調査を実施
している.
高齢者の体力の維持向上は,健康増進,介護予防に不可欠であり,NILS-LSA では
高齢者の運動機能評価,筋量評価から,スポーツ活動や体力維持が認知機能障害,抑
うつ,生活習慣病の予防に果たす役割を検討している.NILS-LSA の進捗状況と研究
の成果を紹介する.
シンポジウム
「高齢社会と体力医学」
シンポジウム 1
老化とタンパク質・アミノ酸栄養
名古屋大学大学院生命農学研究科 栄養生化学研究室
教授 下村 吉治
老化による身体への影響の 1 つに,骨格筋の重量およびタンパク質量が減少する現
象(サルコペニア:sarcopenia)がある.サルコペニアが進展した場合には日常生活の活
動を自立させることができなくなり,要介護生活に陥ることになるので,日本を始め
高齢化の進んだ国では極めて大きな問題になっている.
筋肉における筋タンパク質量の減少は,筋タンパク質の合成が分解を下回る場合に
発生する.筋タンパク質の合成と分解は,食事によって大きな影響を受けるが,食後
の血糖値の上昇に伴うインスリン濃度の上昇とアミノ酸の供給により,正常な状態で
は合成は促進され分解は抑制される.これまでに,サルコペニアとの関連で筋タンパ
ク質代謝の調節に関する多くの研究が行われてきたが,サルコペニア発生の重要な要
因として,食事によって引き起こされる筋タンパク質合成促進と分解抑制がいずれも
鈍化することが強く示唆されている.すなわち,老化によるインスリン抵抗性とアミ
ノ酸(特にロイシン)抵抗性がサルコペニア発生の要因となっていると考えられる.
筋タンパク質合成を促進するアミノ酸として,分岐鎖アミノ酸の 1 つであるロイシ
ンが知られている.ロイシンは,mTOR (mammalian target of rapamycin)系を活性化し,
特に mRNA の翻訳を促進してタンパク質合成を高めることが明らかにされている.
ヒトにおける研究において,高齢者では,ロイシン抵抗性が現れるために筋タンパ
ク質合成を促進するためのロイシン必要量は高まることが示唆されている.すなわち,
高齢者の場合には,タンパク質(特にロイシン)摂取量を増加することにより,サルコ
ペニアを防止または軽減できる可能性が示唆された.ここでは,ロイシンによるタン
パク質合成促進のメカニズムを含め,上記の高齢者に対するロイシンの作用について
概説する.
本シンポジウム演題の後援:
文部科学省大学教育充実のための戦略的大学連携支援プログラム(中部大学・名古屋
大学)「食の安全・食育にかかわる教育のための大学連携フードコンソーシアム」事
業
シンポジウム 2
高齢社会と体力医学~臨床的立場から
虚弱性をいかに防ぐか
名古屋大学 総合保健体育科学センター
准教授 小池 晃彦
虚弱 frail な高齢者とは,「心身機能の低下や病気などのため,日常生活の一部に介
助を必要とする高齢者」である.20 世紀の先進諸国における 30 年間の寿命の延長は,
虚弱高齢者を増加させることにもなった.虚弱な状態は「生理的な老化」に外的要因
や疾病罹患の影響を受け引き起こされる.医学は病気を対象としその病態生理を追究
することで多くの成果を挙げてきたが,とりわけ 80 代以上の高齢者の健康長寿の実
現のためには疾病の診断と治療をターゲットとしたアプローチのみでは不足である.
高齢者の QOL を低下させている原因は,様々な生理的な身体精神機能の低下に関連
する「老年症候群」と呼ばれる高齢者に高頻度にみられる状態(認知症,うつ,失禁,
転倒,骨粗鬆症,薬での副作用の発現増加,寝たきり,じょく創など)である.この
予防と治療には,細分化した専門医療はなじまなく,診療科をまたがった横断的なア
プローチ,コメディカルを含めたチーム医療,さらに代替医療を含む統合的な対策が
必要である.加えて,「虚弱性の予防」には,若年期より長寿に向けた栄養運動介入
が必要である.現代社会における肥満と糖尿病の急速な増加は,虚弱性と無関係では
ない.本シンポジウムでは,「高齢者に対する臨床的なアプローチの方法」,「虚弱予
防のためのサプリメントや薬の可能性」、
「カロリー制限や運動などの生活習慣の可能
性」について議論をする.
シンポジウム 3
100 歳になっても歩くことのできる自分を目指して
神戸常磐大学 保健科学部
教授 柳本 有二
日本の 100 歳以上の人口は,2009 年 9 月現在で 40,000 人を超えた(多少少ないと
いう見解もある).このことは,100 歳以上がそれほど珍しくないことを示している.
今回は,介護予防の観点をふまえて,100 歳になっても自分の意志で歩くことがで
きるため(決して寝たきりや車椅子生活がいけないと言っているのではない)の準備方
法として,歩行能力保持やそれに伴う姿勢改善法および認知症予防法などを中心に検
討を加えたので報告する.
・介護予防とは?
1.高齢者の介護を要する状態となることを未然に防ぐこと
2.介護を要する状態を改善すること.
3.悪化の速度を遅くすること.
・リハビリと運動指導とどう違うのか?
1.リハビリは,治療?:治療が最大の目的になり,問題解決行動が優先される.
2.運動指導は,サービス?:機能向上を目的とするが,その人の意志が尊重される
・これからの認知症予防としての運動の種類や強度は?
1.P300 (Event-Related Potentials) ERP:事象関連電位(大脳皮質頭頂,側頭連合野から
発 生)刺激を受けてから,約 300ms あたりに電位が生じる.
2. 低中強度の運動が前頭葉の運動関連領野を効率よく活性化される.
・高齢者の具体的な改善内容(全ては,重力との関わり)
1. 歩行可能な最低限の筋力向上および筋力左右差の改善する.
2. 下肢から体幹部および首へ向けた姿勢状態を改善する.
・直立二足歩行とローリング動作の確立
1. 直立二足歩行につなげるための立位姿勢
2.足部の背屈動作を円滑にするための運動方法
3. ローリング動作からターンオーバー歩行へ
一般発表
一般発表Ⅰ- 1
酸は筋細径求心神経の機械刺激に対する反応性を増大させる
堀田
典生 1,2 水村 和枝 2
1. 愛知淑徳大学医療福祉学部
2. 名古屋大学環境医学研究所神経系分野Ⅱ
運動に伴い代謝産物が生成され,筋の pH は低下する.それにより筋細径線維受容
器が興奮し,呼吸や循環応答を増強することが知られている(運動昇圧応答).運動に
よる pH の低下は筋機械受容器の機械刺激に対する応答性を強めると考えられている
が,実際に神経活動を記録した報告はない.そこで本研究では,ラットの筋単一求心
神 経 活 動 を 記 録 し , 機 械 刺 激 に 対 す る 応 答 性 が pH6.2(n=21) と pH6.8(n=14) の
Krebs-Henseleit 液(Krebs 液)投与後にどのように変化するかを調べた.また,対照と
して pH7.4 Krebs 液(n=26)を用いた。
SD 雄性ラット 25 匹を実験に供した.麻酔下において長指伸筋-腓骨神経標本を取
り出し,C あるいは Aδ(それぞれ伝導速度 2m/s 以下あるいは 15m/秒以下)単一神経
を同定した.機械刺激装置を用いて受容野を毎秒 19.8mN で 198mN まで鋸歯状に加
圧し,反応閾値とベースラインからの放電の増加数(Δ放電数)を求めた.
いずれの pH の Krebs 液に対しても,顕著な放電増加は観察できなかった.機械閾
値は,pH6.2 容液を投与した場合のみ有意に低下した.Δ放電数は,pH 6.2,6.8 容液
投与後共に有意に増加した.対照においては閾値,Δ放電数ともに有意な変化は観察
できなかった.以上の結果より,酸は筋細径求心性神経の機械刺激に対する応答性を
増強することが示唆された.
一般発表Ⅰ- 2
運動負荷による気分変化にキヌレニン代謝が影響を
及ぼしているかもしれない
伊藤
康宏 1 中上
寧 1 米倉 麗子 1 高津 浩章 2 岡本 昌也 3
寺田 泰人 4 丸田 一皓 1
1. 藤田保健衛生大学医療科学部生理学
2. 豊田高等工業専門学校保健体育 3. 愛知工業大学経営学部経営学科
4. 名古屋経済大学短期大学健康科学
【目的】トリプトファンのキヌレニン経路の代謝産物には神経系に影響を及ぼす因子
が多く,中枢神経系ではうつ病関連でのモノアミン仮説が知られるほか,最近ではキ
ヌレニン(KYN)から作られた生理的濃度のキヌレン酸がα7 ニコチンアセチルコリン
レセプターを阻害することでシナプス末端からのドーパミン調節に関与するなど多
彩な高次脳機能への影響が解明されている.我々はこれまでに運動後の血中キヌレニ
ン濃度が増加する人では運動後の気分改善がみられることを報告してきた.この研究
の目的は,運動により血中動態が変化した KYN が気分に及ぼす可能性を考察するこ
とである.
【方法】ラグビー部学生の夏合宿前後に POMS(profile of mood states)試験紙による気
分調査と採血をおこなった.採取した血清の KYN とその代謝産物である 3-ヒドロキ
シキヌレニン(3-HK)を測定した.
【結果】合宿前後の KYN の変化率と気分の変化率には正相関を認めたが,KYN が減
少し,KYN から 3-HK への転換率が高い人ほど気分は改善されていなかった.
【考察】結果から,肝臓でのキヌレニン経路の活性が亢進し KYN が代謝されて 3-HK
濃度が増加する人では血中 KYN 濃度が減少し,脳内アストロサイトによる KYN 代謝
産物であるキヌレン酸産生が少なくなることが気分に何らかの影響を及ぼす可能性
が示唆された.
一般発表Ⅰ- 3
冷え性調査から見た若年女性の運動量
青木
貴子
岐阜市立女子短期大学食物栄養学科
【目的】 日常の運動量が少ないことが冷え性を助長することを確かめる.
【方法】 短大生の生活習慣を,1 週間調査した.身体活動量は加速度計で測定し,そ
のほかはアンケート調査を用いた.
【結果】 協力者 68 名のうち,冷え性を自称するもの(Y 群)が 38 名(56%),そうでな
いもの(N 群)が 30 名(44%)だった.そのうち身体活動記録は Y 群 29 名,N 群 23 名の
ものを解析した.1 日あたりの平均運動エネルギーは Y 群で 174.0kcal,N 群で
185.6kcal だった.中等度以上の強度の運動を行った時間は Y 群 24.7 分,N 群 23.4
分で,強度と時間との積(エクササイズ量)は Y 群 13.0METs・時/週,N 群 12.2METs・
時/週だった.厚労省の推奨値である 23 METs・時/週に達したものは Y 群 2 人,N
群 1 人だった.どの指標を使っても,2 群の間に有意な差はなかった.睡眠時間,就
寝時刻にも 2 群間に有意差はなかった.体格指数(BMI)は Y 群 19.8 に対し,N 群 21.2
であり,有意な差があった(p<0.01).
【考察】2 群間に運動量の差が見られなかった一因は,全体の運動量の少なさにある
のではないか.運動量が少なくても冷え性になるとは限らないことはわかったが,半
数以上が推奨値の半分を下回っており,冷え性以外の将来の生活習慣病が危惧される.
一般発表Ⅰ- 4
運動後における酵素合成グリコーゲンの糖質・水分補給源としての機能
稲垣 圭,石原
健吾,石田 万里子,藤原 美佳,渡部 藍,
高根澤 亜美,脊山 洋右
椙山女学園大学生活科学部
【目的】デンプンから酵素的に合成した酵素合成グリコーゲン(ESG)は高分子である
ため,その水溶液は単糖やデキストリンよりも低張である.また無味無臭で,粘度が
低い.本研究では,ESG のスポーツドリンクとしての応用を目的として,運動後の体
水分およびグリコーゲン回復作用に関して実験を行った.【方法】雄性 SD ラット
(200-300g)に絶食,絶水の後,1 時間のトレッドミル走行を行い,脱水およびグリ
コーゲン枯渇状態にした.4 種類の 10%糖溶液(ESG:分子量 300 万,700 万,マルト
デキストリン,グルコース)のいずれかを胃ゾンデにて 6 mL 投与し,投与 30 分後に
解剖に供した.【結果】2 種の ESG 投与群は,胃内容液浸透圧,胃内容液重量,ヘマ
トクリット値,血漿総タンパク質濃度が,グルコース,デキストリン群よりも低い値
を示し,ESG 溶液は胃排出速度,血漿水分回復速度が速いことが示された.2 種の ESG
溶液は,血漿グルコース濃度,インスリン濃度,肝臓および骨格筋中グリコーゲン濃
度がグルコース群,デキストリン群と同等に上昇しており,糖質補給源としてグルコ
ース,デキストリンと同等であることが示唆された.【結論】ESG 投与後のグリコー
ゲン回復速度はデキストリンと同程度であり,胃排出速度,水分吸収はデキストリン
よりも速い.ESG は運動後において優れた水分・グリコーゲン回復作用を有している
と考えられる.
一般発表Ⅱ- 1
高齢者における地域型運動の介入効果に関する研究
-運動効果の交差妥当性と季節差に関する研究-
北林
由紀子,小泉 大亮,竹島 伸生
名古屋市立大学大学院システム自然科学研究所
【目的】1) 運動習慣のない地域在住高齢者(3 地域 17 地区)を対象に,地域型運動に
よる運動指導をおこない,運動の効果を比較検討し,交差妥当性を調べること(研究
1).
2)冬期と夏期に運動教室を開催し,季節の違いによる運動効果を調べ(研究 2),高齢
者への地域型運動の具体的方法やあり方を検討すること.
【方法】研究 1 における対象者は,2006 年から 2008 年に亘って運動教室に参加し
た 3 地域 17 地区の地域在住高齢者であった(男性 52 名,女性 323 名).運動は,自
治体と大学が協力して短期間(12 週間)運動教室を開催.17 地区のうち,14 地区は
地域型+家庭型運動プログラムを展開し,3 地区はこの運動プログラムに日常活動量
と質を高めることも付加したプログラムを併用.研究 2 の対象者は,山間地帯に在住
する高齢者とした.冬期教室の対象者は 22 名(男性 7 名,女性 15 名),夏期教室は
25 名(男性 6 名,女性 19 名)である.冬期の運動介入は 2008 年 11 月から 2009 年 2
月におこない,夏期は 2008 年 6 月から 9 月までの期間におこなった.
運動効果の指標は,機能的体力(上肢・下肢の筋力,敏捷性,上肢・下肢の柔軟性,バラ
ンス,全身持久性)測定を用いた.
【結果】研究 1, 地域型運動における効果量を検討したところ,筋力や全身持久性の
効果量の高い地域が多かった.また,“Exercise+PA”の併用プログラムは,上肢の
筋力,全身持久性の改善が Exercise 単独プログラムよりも効果が高いとみられた.研
究 2 では,冬期と夏期の運動教室では,機能的体力の項目で交互作用が認められず,
経時効果が観察された.改善率も類似しており,季節に関係なくほぼ類似した運動効
果が観察され,交差妥当性が認められた.
一般発表Ⅱ- 2
特定高齢者への介護予防運動の介入が体力および医療費へ及ぼす効果
樋口
憲生 1
鶴峯 悦史 2 梅村 清英 3
1. 三重中京大学現代法経学部 2. 中京大学大学院経済学研究科
3. 中京大学経済学部
【目的】
三重県松阪市において,平成 20 年度に特定高齢者を主対象に介護予防運動教室を
開催した.そこで本研究では,介護予防運動教室が特定高齢者の生活機能評価や体力
の改善,ならびに医療費の抑制におよぼす効果を明らかにすることにした.
【方法】
対象者となる特定高齢者は 18 名であった.
医療費の集計には,医科診療費,保険適用分の柔道整復師・はり師による治療費お
よび調剤費を含め,歯科診療費は含めなかった.
【結果】
生活機能評価の運動器に関しては,運動教室参加後に 18 名中 13 名において該当
数が 2 つ以下(特定高齢者の認定外)になった.
体力測定では,5m 速歩,開眼片足立ち,ファンクショナルリーチ,長座体前屈お
よび全身反応時間において有意なトレーニング効果が見られた.
医療費の推移については,運動教室参加前年度の 1 人当たりの医療費は 261,274
円であったが,運動教室(5 月~7 月)に参加した年度の医療費は 257,951 円であった.
【考察】
今回実施した特定高齢者に対する介護予防運動教室では,脚力や柔軟性の向上によ
り,生活機能評価が改善されたものと考えられる.さらに介護予防運動の介入によっ
て,医療費の抑制効果をもたらす可能性を示唆することができた.
一般発表Ⅱ- 3
市民の健康づくりに向けた地域総合健康サービス事業の取り組み
健診結果に基づいた健康プログラムの提供と事業検討
野村 恵里 1 池野 尚美 1 早瀬 智文 1 津下 一代 1
後藤 文枝 2 長尾 尚訓 3 アイコーサービス(株)
(株)ザ・ビッグスポーツ
1. あいち健康の森健康科学総合センター
2. 東海市企画部生き生き元気推進担当
3. 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング(株)
【目的】
急速に高齢化が進む東海市では,生活習慣病予防の普及が急務であるが,一
方で健診を受け健康づくりの必要性は感じつつも,なかなか実践に結びつかな
いという現状もある.そこで,健診の機械に個々の健康状態に対応した健康プ
ログラムを提供し,地域の健康サービス事業者と連携して,楽しみながら身近
な場所で健康づくりに取り組める仕組みを構築する事の可能性を探るため経済
産業省の採択を受けて社会調査事業を行なった.今回は運動実践に向けた取り
組みについて報告する.
【方法】
運動プログラム開発・提供:健診データに基づきロジックを作成,運動強度別
に 4 段階にレベル分けした.強度レベルに合わせて地域の運動施設や公園を利
用してできるメニューで構成,個々の健診結果と生活習慣に合わせ提供した.
指導員の育成:施設スタッフへ,安全管理やトレーニング方法等,適切な運動
指導ができるよう研修を行なった.予備試験の実施:東海市国保及び市内 3 企
業の健保組合が実施した特定健診受診者の結果説明会にて募集した市民モニタ
ー33 名に,1 ヶ月間サービスを利用してもらった.試験後はモニターと事業者
へアンケートを行なった.
【結果】
期間中の施設利用は延べ 109 回であった.また,事業者からは,機器や広さ
等設備の充実や,適切な指導ができる健康運動指導士の配置が必要といった事
業化に向けた課題があがった.モニターからのアンケートについては現在分析
中である.
一般発表Ⅱ- 4
コホートデータを用いた高齢者の身体活動量とうつ状態との関連
―歩行時間とスポーツ参加の 3 年間の変化に着目して―
松井
健1
筒井
秀代 2 平井 寛 3 斉藤
近藤 克則 3,6
雅茂 4 竹田 徳則 5
1. 日本福祉大学福祉経営学部
2. 名古屋大学総合保健体育科学センター
3. 日本福祉大学健康社会センター
4. 日本福祉大学地域ケア研究推進センター
5. 星城大学リハビリテーション学部
6. 日本福祉大学社会福祉学部
【目的】 身体活動量と 3 年後の高齢者のうつ状態との関連を検討した.
【方法】 愛知老年学的評価研究(AGES)プロジェクトの 2003 年と 2006 年の調
査データを用いた.2 時点データの結合が可能で歩行自立の高齢者 6,893 名
(2003 年時 72±5 歳)を分析対象とした.Geriatric Depression Scale15 項目版を
用いて評価した 2006 年時のうつ状態の有無(「うつなし」,「うつ傾向」,「うつ
状態」)を従属変数とし, 1 日の歩行時間(以下 WT)及びスポーツクラブへの参加
有無(以下 SP)の変化(2003→2006)を独立変数とした多項ロジスティック回帰
分析を行った(参照カテゴリは「うつなし」).その際,年齢及び 2003 年時のう
つ状態の有無を統制変数とした.WT は 4 区分(<30 分, 30-59, 60-89, 90=/<)
で尋ね,2 時点の変化から 5 群(高位継続, 上昇, 中位継続, 下降, 低位継続: 有効
n=4,256)に,SP は 2 区分(yes, no) で尋ね,4 群(参加継続, 開始, 中止, 不参加継
続: 有効 n=3,801)に各々分類した.
【結果】「うつ状態」についてのオッズ比は,WT 変化で高位継続群に対して中
位継続群で 2.0, 下降群で 3.5, 低位継続群で 3.1 を示した.SP 変化では,参加継
続群に対して不参加継続群で 2.1 を示した.「うつ傾向」へのオッズ比は,WT
変化で高位継続群に対して上昇群で 0.6,下降群で 1.6,低位継続群で 1.7 を示
した.SP 変化では,参加継続群に対して中止群で 1.8,不参加継続群で 2.0 を示
した (いずれも p<0.05) .
【結論】高齢者の身体活動量の低下(低位継続)は,年齢と過去のうつ状態の影響
を統制した上でもうつ状態やうつ傾向につながりやすいことが示唆された.
一般発表Ⅲ- 1
若年期のジャンプトレーニング効果は骨幹の中央部に保持される
岡田
正1
山下
剛範 2 十河 直太 1 加藤
1. 中京大学体育学部運動生理学研究室
尊 2 梅村 義久 1
2. 鈴鹿医療科学大学
【目的】骨の発育,発達と健康には定期的な運動が重要である.しかし,青少年期に
おける運動でピークボーンマスを上昇させても中高年以降にも骨への運動効果が保
持されているかどうかについては明らかになっていない.本研究ではラットを用いて
ジャンプトレーニングにより骨を鍛え,追跡調査を行うことによりトレーニング効果
の保持について比較検討を行った.【方法】7 週齢のラットをジャンプ群とコントロ
ール群に分けた.8 週間をトレーニング期とし,その後 40 週間の脱トレーニング期
間を設定した.ジャンプ群には週 5 日,1 日 50 回のジャンプをさせた.BMC 及び BMD
は DXA にて大腿骨及び脛骨を測定し,骨径及び骨形態はマイクロCTにて摘出した
脛骨の中央部を測定した.【結果】大腿骨と脛骨の BMC 及び BMD はトレーニング直
後には有意差が見られたが,その後有意差はなくなった.皮質骨面積,最大 2 次モー
メント,最小 2 次モーメント,皮質骨外周長及び内周長においてコントロール群と比
べ有意差が見られた.【結論】若年期のジャンプトレーニング効果は BMC や BMD で
はなく,骨形態特に骨径に局所的な部位に効果を保持することを明確にした.
一般発表Ⅲ- 2
閉経時期の体脂肪,身体組成の変化についての検討
北村
伊都子 1 甲田
道子 2 安藤 富士子 3 下方 浩史 4
1. 愛知学院大学教養部 2. 中京女子大学健康科学部栄養科学科
3. 愛知淑徳大学医療福祉学部医療貢献学科
4. 国立長寿医療センター研究所疫学研究部
【目的】閉経と肥満の関連は報告されているが,詳細な検討は少ない.本研究は,閉
経時期における体脂肪,身体組成の縦断的変化を明らかにすることを目的に検討を行
った.
【方法】対象は「国立長寿医療センター研究所 老化に関する長期縦断疫学研究」
の第 1 次および第 5 次調査に参加した 40~60 歳の女性 404 名である(平均追跡期間
8.4±0.3 年).脂肪量,筋量は DXA 法で測定し,2 回の調査時の月経の有無により未
閉経,閉経期,閉経後の 3 群に分けた.各群の測定値の変化を paired t-test で,変化
率の群間差を多重比較で検討した.
【結果】総脂肪量は未閉経,閉経で有意に増加し,
閉経後は変化がなかった.部位別の脂肪量は,体幹部は各群で増加していた.(未閉
経,閉経期,閉経後の変化率 13.9, 11.0, 4.7%).上肢は未閉経,閉経期で増加して
いたが,閉経後は変化がなく(変化率 12.5, 6.1, 2.8%),下肢は未閉経で変化がなか
ったが,それ以降で低下していた(変化率 0.8, -2.7, -3.2%).総筋量は未閉経で増
加し,それ以降は低下していた(変化率 2.3, -1.8, -1.1%).年齢を調整し,これら
の変化率の群間差を検討したところ,総筋量の未閉経と他群の間でのみ有意差があっ
た.【結論】脂肪量の変化は部位により異なった.また,閉経の影響は脂肪よりも筋
肉において強いことが示唆された.
一般発表Ⅲ- 3
成人女性における電動アシスト自転車走行時の運動強度
鋤柄
悦子 1
西井
匠 2 冨岡
徹 3 髙石
鉄雄 1
1. 名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科
2. 国立長寿医療センター研究所 3. 名城大学経営学部
【目的】電動アシスト機能を使うことが,日常生活走行時の運動強度,エネルギー消
費量などに与える影響を明らかにする.【方法】成人女性 20 名 (34±13 歳)に,1 周
約 3.2 km (含:1.3km の平地,長さ 260m 勾配 3%の坂道,長さ 100m 勾配 6%の坂道)
の一般道路を電動アシスト自転車のアシスト機能 ON および OFF で自由走行させ,酸
素消費量,心拍数などを測定した.更に,同被験者が平地を自由歩行した際の諸デー
タを得た.
【結果】平地における酸素消費量,身体活動強度,心拍数は,アシスト ON,
OFF および歩行についてそれぞれ,0.66±0.17,0.83±0.18,0.78±0.15 L/分,3.7
±0.9,4.7±0.9,4.4±0.7 METs および 108±14,113±13,104±14 拍/分,で,
アシスト ON における酸素消費量および身体活動強度は,アシスト OFF と歩行よりも
有意に小さく,心拍数については 3 条件で差を認めなかった.勾配 3%の坂道におけ
る酸素消費量,身体活動強度,最高心拍数は,アシスト ON と OFF でそれぞれ 0.72 ±
0.24,1.04±0.18 L/分,4.0±1.2, 5.8±0.9 METsおよび 123±18,152±14 拍/
分で,いずれの項目についてもアシスト ON<OFF であった.
【結論】電動アシスト機
能は,坂道のみならず,平地における酸素消費量および運動強度を有意に低下させる.
一般発表Ⅲ- 4
地域在住閉経後女性の体力指標としての WBI および握力の役割
坂崎
貴彦 1
小池
晃彦 2 柳本 有二 3 森
和4
押田 芳治 2
1. 名古屋大学大学院医学系研究科博士課程
2. 名古屋大学総合保健体育科学センター
3. 神戸常磐大学保健科学部看護学科
4. 鈴鹿医療科学大学鍼灸学部鍼灸学科
【目的】
高齢者を中心とした閉経後の女性において体力測定を実施し,身体機能低下の指標
について検討する.
【方法】
2002 年 12 月~2007 年 6 月に,兵庫県内の 55 歳以上の閉経後の女性 1061 名(平
均年齢 68±8 歳)を対象に,調査を実施した.身長,体重,握力,開眼片足立ち時間,
閉眼片足立ち時間,膝伸展筋力及び 10m歩行(最速歩行と普通歩行)のタイムと歩数を
測定し,BMI,最速歩行時の速度と歩幅,普通歩行時の速度と歩幅,WBI (体重支持指
数:膝伸展筋力/体重)を算出した. 骨強度は,CM-100 を用い,踵骨の speed of sound
(SOS)を測定した.
【結果】
年齢,BMI で調整後,WBI は SOS 以外,握力は閉眼片足立ちと SOS 以外の項目と有
意に関連した.WBI の値で 4 分画した群における年齢,BMI 調整後の検討において,
各測定項目は,WBI 依存的に身体機能の上昇を認めたが,握力で 4 分画した場合は必
ずしも依存的な上昇を認めなかった.
【結論】
地域在住閉経後女性の WBI は上肢筋力である握力よりも,良い体力指標となる.
一般発表Ⅲ- 5
加齢に伴う筋厚の変化に関する研究
近藤
典子 1
石田 良恵 2 竹島 伸生 1
1. 名古屋市立大学システム自然科学研究科
2. 女子美術大学
本研究の目的は,若年群・中年群・高齢群の 3 群を対象に超音波 B モード方式を用い
て,腹部・前大腿部の筋を構成する腹直筋・外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋・大腿直筋・中間
広筋の筋厚を測定し,加齢変化を調べたものである.
18 歳から 82 歳までの邦人女性総数 123 名であり,さらに若年群(23.6±7.5 歳),中
年群(55.4±5.8 歳),高齢群(70.6±4.2 歳)の 3 群に分類した.筋厚は,加齢の影響を
受けることが明らかとなった.前大腿部と腹部の部位毎で構成している筋毎にみると,
減少率は大きく異なっていた.腹部では,腹横筋が最も低下率(0.89%/年)が高く,最
も低かったのが内腹斜筋(0.32%/年)であった.前大腿部で大腿直筋,中間広筋の加齢
に伴う低下率は,ほぼ同じで 0.7%/年となっていた。3 群間での変化をみると,若年
群から中年群の間では深層筋である中間広筋の減少率が表層筋である大腿直筋の減
少率より大きく, 中年群から高齢群の間では中間広筋より大腿直筋の減少率の方が大
きいとみられた.前大腿部を構成する筋においても,加齢に伴う変化には部位による
違いが生ずる可能性があり,とくに深層筋の方が先行して減少する可能性が示唆され
た.若年者と高齢者の比較から部位による筋厚の加齢変化が認められたが,メカニズ
ムや原因は定かでないが,筋の働きや特性と加齢や不活動による影響等を分析し,サ
ルコペニアの抑制に対する具体的方法を検討する必要が望まれる.
一般発表Ⅳ- 1
高齢者における起居動作時の筋パワーに関する研究
―自立維持を目指すための必要な最低限の所量について―
加藤
芳司 1,2 北林
由紀子 1,3 小泉 大亮 1
竹島 伸生 1
1. 名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科
2. 国際医学技術専門学校理学療法学科 3. 名古屋医専看護学部
【目的】地域在住の健常者と介護施設に通う虚弱高齢女性を対象に椅子から立ち上が
り時の筋パワーを測定し, 起居動作に必要な筋パワーの下限閾値を求めた.
【方法】地域在住の健常者 73 名(H 群,68±5 歳)と介護施設に通う虚弱者 37 名(F 群,
84±7 歳)に 2 種類(3 回連続テストと 30 秒間連続テスト)による椅子立ち上がり時の
筋パワーを LTD (liner displacement transducer) 方式にて測定した.
【結果】 筋パワーと年齢間の偏相関係数が r=-0.64 (P<0.05)となった.また,筋パワ
ーと体重では,偏相関係数が r=0.28 (P<0.05)となり,筋パワーは年齢と体重の影響が
考えられた.平均年齢に群間で違いが生じたために年齢補正を行ない,群間の比較を
おこなったところ,3 回連続立ち上がりテストの筋パワー値は,健常群が平均 6.3±
1.2W/kg, 虚弱群が 3.2±1.2W/kg と有意な違いが認められた.判別分析により椅子
からの立ち上がりパワーの下限閾値は, 3.6W/kg とみられた.
【まとめ】椅子からの立ち上がり動作を自由にできることが自立した生活に不可欠と
いえる.後期高齢者においては 3.6W/kg 以上の水準を維持することが運動処方やリ
ハビリテーションでは求められるものと推察された.今後は,男性データの収集, 虚
弱の原因別等も踏まえ, 生活自立に必要な筋パワーの水準を調べる必要性が示唆さ
れる.
一般発表Ⅳ- 2
高齢者を対象とした生活動作のシミュレーションを主体とする
水中運動の有効性
彦坂
愛子,小泉 大亮,竹島 伸生
名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科
近年,介護予防や自立維持といった視点から,生活動作をシミュレーションした運
動(ADL トレーニング)が注目されている.本研究では,高齢者を対象として,3日/
週,60 分/日,12 週間に亘り,ADL トレーニングを主体とする水中運動を指導し,
陸上での運動介入と比較し,その有効性を検討した.対象者は,過去に運動習慣が無
く,器質的疾患を有しない高齢者であり,水中運動群(W 群) 17 名(女性 13 名,男性
4 名,平均年齢 71 ± 4 歳),陸上運動群(L 群) 20 名(女性 15 名,男性 5 名,平均年齢
70 ±6 歳)であった.陸上運動は,地域型運動(公民館で 1 日/週実施)と家庭型(2 日実
施)の併用であり,well-rounded exercise (WRE: aerobics + resistance + balance +
flexibility の複合運動)を 12 週間に亘って実施した.運動介入前後での効果は,両群と
も運動介入後に機能的体力(7 項目)の全ての項目で改善が示された.敏捷性および移
動能力と柔軟性においては,交互作用が認められ,水中運動の効果が明らかとなった.
本研究では,高齢者を対象とした ADL トレーニングを水中でおこなったが,安全かつ
陸上での WRE と等価またはそれ以上の効果があるものとみられ,その有効性が示さ
れた.
一般発表Ⅳ- 3
虚弱高齢者に対する動作速度変化を伴う下肢交互踏み替え運動の効果
對馬
明 1,2
戸田
香 2,3 越智 亮 4 髙石
鉄雄 1
1. 名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科
2. 中部大学技術医療専門学校
3. 名古屋大学総合保健体育科学センター
4. 星城大学リハビリテーション学部
【目的】2 種類の下肢交互踏み替え運動(自転車運動および座位足踏み運動)について,
テンポを一定に保つ方法,または,途中でテンポを変化させる方法のいずれが歩行訓
練のための準備運動として有効かを検証する.
【対象と方法】虚弱高齢者 22 名を自転
車群 11 名(男性 3 名,女性 8 名,75.1±6.9 歳)と座位足踏み群 11 名(男性 5 名,女性
6 名,77.1±6.4 歳)に分けた.各運動前後に立位と座位による下肢敏捷性,および TUG
の測定を行った.自転車運動は 20W で 5 分間とし,ペダル回転数を 1 分毎に 45,55,
65,55,45rpm へと変化させる方法と終始 50rpm とする方法の二形態とした.座位
足踏み運動は同じく 5 分間とし,左右の足踏み動作1回を1セットとして1分毎に
45,55,65,55,45 回のテンポで行う方法と終始毎分 50 回のテンポを保つ方法の
二形態とした.各種測定結果に対して,一元配置分散分析および post hoc テストを行
った.【結果】2 種類 2 条件の運動のうち,自転車運動もペダル回転数を変化させた
場合についてのみ,立位下肢敏捷性(12.3±2.6 から 15.3±3.2 回),座位下肢敏捷性(6.5
±1.3 から 8.2±1.8 回),TUG (9.7±2.0 から 7.6±1.4 秒)の有意な変化が認められた.
【結論】ペダル回転数を変化させる低負荷自転車運動は,虚弱高齢者の下肢機能を一
過性に向上させる.
一般発表Ⅳ- 4
最大酸素摂取量基準値の検討及びメタボリックシンドロームとの
関連について
早瀬 智文 1 野村 恵里 1 池野 尚美 1 松尾 知恵子 1
荒谷 芳樹 1 加藤 綾子 1 津下 一代 1 田畑 泉 2
1. あいち健康の森健康科学総合センター
2. 独立行政法人国立健康・栄養研究所
【目的】最大酸素摂取量は,持久力,健康度の指標とされ,運動基準 2006 ではその基
準値も示されている.しかしその元となる論文は欧米の報告が多く,現在の日本人に適応で
きるかを検討することは急務である.そこで,当施設で実施した最大酸素摂取量測定を基に,
基準値との比較及びメタボリックシンドロームとの関連を検討した.なお,本研究は,厚生
労働科学研究田畑班の一環として実施した.
【対象・方法】生活習慣病発症歴,定期的運動習慣のない 20~69 歳までの男女 277
名(男性 133 名,女性 144 名)を対象に,身体計測,血液・生化学検査,体力測定,身
体活動量調査を実施,性・年代別基準値の検討ならびに臨床検査指標や生活習慣との
関連を検討した.
【結果】①年代別最大酸素摂取量平均値は,男女とも 40~60 歳代で基準値より低下
がみられた.②最大酸素摂取量と検査項目では,年齢を制御変数として偏相関分析を
実施,男女とも体重(男性r=-0.2416,P=0.005,女性 r=-0.1658,P=0.048),BMI,
腹囲,体脂肪率,男性はさらに HDL コレステロール,中性脂肪でも有意な関連が見ら
れた.③過去の運動習慣との関連では,運動習慣ありの者の平均値が有意に高かった
(男性:あり 37.1±6.6,なし 31.8±6.6ml/kg/min,女性:あり 29.0±5.4,なし 26.7
±5.3ml/kg/min).
【考察】基準値と比較して,中高年で最大酸素摂取量の低下があることを示唆する所
見がみられた.また,検査項目,過去の運動習慣と関連がみられ,その維持・向上は,
メタボリックシンドローム予防に影響を与えることが推察された.
一般発表Ⅴ- 1
障害者に対する RPE(Borg’s Scale)の有用性
里中
綾子 1,2 鈴木
伸治 3
猪田 邦雄 1 河村
守雄 2
1. 医療法人三仁会あさひ病院
2. 名古屋大学大学院医学系研究科
3. 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所
【目的】
RPE (Borg’s Scale)は全ての人に用いることができる容易な運動強度モニターとさ
れている.しかし障害者は非常に低身体活動であり,RPE が有用であるかは調べられ
ていない.本研究は日常身体活動(DPA)が,RPE と客観的生理学的変数の関係に影響
を与えるかどうか検証した.
【方法】
障害者 43 名(男 24 名,女 19 名)を対象とし,自転車エルゴメーターで 3 段階漸増
負荷運動テストを行い,運動テスト終了直後の RPE 値を記録した.運動テスト中,連
続で酸素摂取量と心拍数を測定し,最大酸素摂取量(VO2max)を推定した.テスト終了
時の酸素摂取量を%VO2max で表し,RPE 値と比較した.DPA は平日約 6 時間,連続心
拍数を測定し,180 秒以上持続した運動強度(%HRR)を算出した.
【結果】
運動テスト終了時の RPE 値と%VO2max は,男では有意に相関した(r=0.43,P=0.03).
男を DPA が 30%HRR 以上(n=11)と未満(n=13)に分け,運動テスト直後の%VO2max と RPE
値をそれぞれ比較すると,30%HRR 以上のグループのみ有意に相関した(r=0.76,
P=0.007).
【考察】
RPE には DPA の運動強度が影響していることが示された.したがって,DPA が 30%HRR
未満と非常に低身体活動の人に対する運動強度モニターとして RPE は有用ではない
と考える.
一般発表Ⅴ- 2
アキレス腱断裂が陳旧性になってから診断に至った症例の原因について
田中 美香 1 北村 綱為 1 深間 内誠 1 来田 弘樹 2 松田 和道 2
福田 亜紀 3 森田 哲正 3 藤澤 幸三 3 西村 明展 4 加藤 公 4
1. 鈴鹿回生病院健康増進課 2. 鈴鹿回生病院リハビリテーション科
3. 鈴鹿回生病院整形外科 4. 三重大学スポーツ整形外科
【目的】我々はアキレス腱断が陳旧性になってから診断に至った症例について,その
原因を調査した.
【方法】2002 年 7 月から 2008 年 10 月までに,当科および関連病院を受診したアキ
レス腱断裂 112 例 114 足を対象とした.受傷より 4 週間以上経ってから受診し,診
断に至った症例を“陳旧例”,4 週間以内で診断に至った例を“新鮮例”として,そ
の受傷原因・受診歴などから診断が遅れた原因について調査した.
【結果】陳旧例は 6 例 6 足であり,全例手術治療されていた.新鮮例 106 例 108 足
については 3 例 3 足が保存的治療を行い,その他は手術を行っていた.平均年齢は
44.7 歳(19~77 歳),固定期間は平均 7.5 週(4~10 週間),入院期間は平均 16.4 日(0
~85 日)であった.受傷原因はスポーツによるものが 84 足(77.8%)であった.これに
対し陳旧性となった 6 例では平均年齢 52.3 歳(22~71 歳),固定期間は平均 10.2 週間
(8~12 週間),入院期間は平均 45.3 日(17~63 日)であり,受傷原因はスポーツによ
るものが 2 足(33.3%)であった.陳旧例 6 例中 4 例は整形外科以外の医師もしくは接
骨院で初回受診していた.
【結論】アキレス腱断裂の陳旧例は,新鮮例に対し平均年齢が高く,スポーツ以外の
受傷原因で断裂している症例が多く,また陳旧例のうち,4 例が整形外科以外を初回
受診して診断が遅れていたと考えられる.
一般発表Ⅴ- 3
筋腱複合体の粘弾性がしゃがみ込み動作の可否に与える影響
水野
貴正,松本 実,梅村 義久
中京大学大学院体育学研究科運動生理学研究室
足関節の背屈柔軟性を簡便に測定する方法として「しゃがみ込み」動作があり,し
ゃがみ込み動作が可能な者は,不可能な者よりも足関節の背屈可動域が大きいことが
報告されている.しかしながら,筋腱複合体の粘弾性との関係については明らかにな
っていない.そこで,本研究の目的は筋腱複合体の粘弾性反応がしゃがみ込み動作の
可否に影響するかどうか明らかにすることとした.
男性 13 名を対象とし,上肢を腰の後ろで結び,上肢によるバランスが取れない状
態で足の裏が地面から離れないしゃがみ込みが可能な 8 名(可能群)と不可能な 5 名(不
可能群)に分けた.筋腱複合体の粘弾性の測定では,足関節を底屈位から最大背屈位
まで受動的に背屈している間に,背屈角度,受動トルク(背屈に対して抵抗するトル
ク)を記録した.その結果,可能群は不可能群よりも最大背屈角度が有意に高かった(P
< 0.05).さらに背屈 0°~5°の間の背屈角度―受動トルク曲線の傾きは可能群が不
可能群よりも有意に低かった(P < 0.05).一方で,最大背屈角度より 5°少ない角度か
ら最大背屈角度までの間の傾き,及び背屈角度―受動トルク曲線下の面積に有意な差
はなかった.この結果から,0°~5°の間における筋腱複合体の粘弾性の差が,しゃ
がみ込み動作の可否に影響を与えることが示唆された.
一般発表Ⅴ- 4
ストレッチングによる介入効果の追跡研究
稲見 崇孝 1,2 清水 卓也 1 中田 昌敏 2 梶浦 弘明 2 宮川 博文 2
長谷川 共美 2 井上 雅之 2 後藤 睦江 2 長谷川 里佳 3
福田 祥子 3 中川 武夫 1 高柳 富士丸 2 丹羽 滋郎 2
1. 中京大学大学院体育学研究科健康科学系
2. 愛知医科大学医学部附属運動療育センター
3. 愛知医科大学循環器内科
防災業務を行う健常中年男性にストレッチングと筋力増強訓練を実施し,筋柔軟性
(長座体前屈距離)への効果を 1 年間追跡した.対象筋は膝屈筋群とし,前半 6 ヵ月間
(前期)は多関節筋の起始と停止の両端を伸張する手技(Static Stretching: SS)を行い,後
半 6 ヵ月間(後期)は SS に加え,我々が考案した多関節筋の起始と停止が付着する関
節の一端を屈曲し,他端を伸展する手技(Medical Stretching: MS)を追加した.筋力増強
訓練は上肢(腕立て伏せ),体幹(腹筋),下肢(大腿四頭筋)における訓練を通年で実施し
た.訓練効果の評価は両期間における前後に計 3 回(1st,2nd,3rd)行い,形態や体力,
筋力についても測定を行った.その結果,長座体前屈距離は 1st と比較し 2nd,3rd
で有意に向上し,3rd は 2nd より有意に高値であった.また,3rd の等速性膝屈曲筋
力(60°/sec)は 1st,2nd と比較し有意に高値を示した.このストレッチング介入に
より筋柔軟性は向上し,後期における長座体前屈距離の向上に MS が寄与したと推測
する.調査期間内に特別な訓練を実施していない膝屈曲筋力が向上した要因として,
ストレッチングによる sarcomere length の増大が影響を与えた可能性があると考える.
本研究結果から筋柔軟性の向上を目的とした MS の有用性が示された.
協賛企業
本学術集会開催にあたりまして,以下の企業から御協賛を頂きました.これらの企
業の御協力に対しまして改めて厚く御礼申し上げます.
・ アストラゼネカ株式会社
・ アステラス製薬株式会社
・ 田辺三菱製薬株式会社
・ 武田薬品工業株式会社
・ 社会福祉法人一期一会福祉会
・ ファイザー株式会社
・ 大塚食品株式会社