港八十三番地 沼津港深海水族館 シーラカンス・ミュージアム 静岡県沼津市 設計・施工/佐藤建設 設計・監理/青山建築設計事務所 NUMAZU DEEP SEA AQUARIUM SATO CONSTRUCTION , AOYAMA ARCHITECTURAL DESIGN OFFICE 61 62 めることとなった 。 ■設計主旨■ 2008 年 に 計画 が 始 まり、当初 は 大型 のショ 年間 130 万人 を 誘致 する 観光地「沼津港」、 ッピングモー ルを 企画し進 めていたが 、 コス そ の 入り口 に 位置 する 佐政水産㈱旧本社跡 トの 問題 や 近隣 の 似 たような 施設との 特徴分 地に計画を行うこととなった 。 けの 問題、「地域 の 人 に 」の 思 いに 対しての 沼津港 は 漁業関係施設 や 観光客相手 の 飲食 問題 があった 。 店 が 立 ち 並 び、 “漁業 の 街”特有 の 早朝 から 2010 年に入り、今までの 考えを改 め、 昼 にかけては 、漁業関係者 や 観光客 で 賑 わ い 活気 の あ ふ れる 地域 で ある。 一方、夕方 以降 はひっそりと息 をひそめる特質 を 兼 ね 揃 えている。 「沼津との 共存」・・・観光客 は 勿論、地域住 民にとっても 魅力的 なところ。 「港町との 共栄」・・・港町らしさを活 かした 建 物、営業。 また 、沼津駅 からは 一本道 ではあるが 2 ㎞程 「市場との 調和」・・・活気 あふれる市場 の 魅 度離 れていているため、地域 の 人々にとって 力を活 かした 空間 の 演出。 は「近くて 遠 い 」場所となっていた 。 上記 3 点 を 設計 の 基本 コンセプトに 据 え、沼 そ のような 現状 を 踏 まえ、佐政水産㈱佐藤 津駅 からの 距離 も 逆手に取り“ わざわざ 行く” 専務 の「昔 のような 活気 あふれる港」「地域 “行 きたくなる”という目的 を 明確 にした「商 の 人 にも 来 てもらえる」「県外 に 沼津港 の 魅 業施設 ではなく“街”をつくる」へと方針を変 力 を 発信 する」の 思 いを 形にすべく計画 を 進 え基本計画 が 確定した 。 店舗 店舗 店舗 店舗 店舗 店舗 現計画初期 スケッチ 店舗 D棟 (博物館・水族館) 東屋 店舗 P.61 /沼津港深海水族館 シーラカンス・ミュージアムエントランス P.62 上/東西通路と南北通路 の 交差部分を見る P.62 下/入口ゲートより東西道路夕景を見通 す 上/敷地東側よりミュージアムと C 棟を見る C棟 (飲食店) 店舗 駐車場 駐車場 飲食店 B棟 (飲食店) 店舗 店舗 提灯 A棟 (飲食店) 入口ゲート 2008 年時 初期計画配置図 縮尺 1/1,500 ■配置計画・外観計画■ 実施配置図 縮尺 1/1,500 アプローチし東側道路 へと抜 ける東西 の 通路 感を感じ取 れる計画とした 。 と駐車場 からの 路地風 の 南北 の 通路を配置し 水族館 につ い ては 飲食店 だけでは 魅力 に 欠 建物配置 のイメージは 、「港町 にありそうな 植栽や 水辺、 ベンチを取り込 み 通路幅にも変 けてしまうため 、「沼津 の 新しい 名所」「集客 長 い 倉庫 がもともと 2 棟 あり、 そこに 飲食店 化 をもたせ 敷地内 に 入りやすい 計画とした。 の 目玉」なると考 え、実施設計段階 で 新規事 が1店 また1店と増 えていき 各々 が 勝手気 ま 主 の 目的以外にも「 ちょっと休憩」「待 ち 合わ 業として 決定した 。 まに増改築 を 繰り返し、 いつの 間にか 飲食店 せ 」にも 使 え、「 ただ 歩くだけ 」でも 楽しい 空 活気 あふれる自然 な 街並 みに対してどのよう 街を自然と形成した 、その 後、月日がたち 人々 間とし、人々の集まりやすい空間をつくり賑わ にするか 難しいところであったが 、 “深海 の 神 の 動きに合 わせるように建物 の 中心部分 が 取 いの 演出を図った。 また、通路部分を使用し 秘 なイメージ”や“生きた 化石シーラカンスへ り壊 され 路地 が 形成 された 」という雰囲気 を イベント等にも活用できるように計画した。 の 期待感”を 思った 時、出 てきた 答 えは“無 考 え、東西 に 長くもともとは1棟 で あったよ 建物外観についてはつくり込まない 自然 な 街 機質 な 箱”であった 。飲食店街に突然現 れた うな 同一 スパンの A ・ C 棟と B・D 棟 を 南北 に 並 みを目指し、基準 のラインを境に上部を統 場違 い な 建物 も 自然 な 物 かと 外観 を 確定し 配置し、所々に 増築した 様 な 出っ張りや 勝手 一したデザインとし、下部 は 各 テナントが 自 た 。 またアプロ ー チは 人々 の 集 まる 敷地中 に 外壁 をなくしたような 凹凸 をつくり各々 の 由にデザインできるように計画を進 めた 。 央 の 通路交差部分 からと 考 え D 棟部分 に 計 棟 に 2 ~3 テナントの 誘致 を 想定し計画 を 進 また 、道路・通路 を 通行 する人々に各 テナン 画 することなり、「活気 あふれ 気軽 に 立 ち 寄 めた 。 ト 内部 の 賑 や かさを 感じられるように 道路・ る街」と「深海 の 非日常を体現 する空間」をコ 街並 みを形成 する通路 は 西側メイン道路 から 通路面 は 大型 の 開口 を 採用し各店 の ライブ ンセプトに施設全体を計画した 。 63 64 65 66 ■飲食店 飲食店 の 計画 に 当 たり、 タジマ 創研 の 森氏 に企画最終段階 から加 わっていただき、共通 認識 のもと基本コンセプトに基 づいた 店舗 づ くりを 目指した 。 リーシング 段階 より各店舗 にはコンセプトを 尊重していただき、港らし い 雰囲気やライブ 感 のあるつくりとなった 。 また 、 “地産地消”をメニューに取り込 み 沼津 港を意識した 店舗 づくりとなった 。 ■沼津港深海水族館 シーラカンス・ミュー ジアム 1階に水族館、2 階に博物館となる本建物 は 、 外観 の“無機質 な 箱”からは 内部 の 想像 が 難 しい 建物となっている、一歩中 に 入 るとエン トランス部分 から深海 の 神秘的 な 空間 へと入 り込 むつくりとなっている。 内部 の 展示 や 造 形 はライツ・アートリアルの 坂巻氏 の 手 によ り細 かくつくり込まれた 。 1階 の 水族館部分 は 光 の 射し込 む 海 から深海 までを 表現し「非日常」を 体現 できる 空間と なっている。 水族館 より2 階 に 進 むと雰囲気 が 変 わりシーラカンスの 博物館となる、 シー ラカンスの 住 むコモロ諸島や 住 む 海 の 再現 か ら近未来的 な 空間までを演出した 。 また 、世 界唯一 の「冷凍 シーラカンス 」展示 には 東洋 製作所による特殊 な 冷凍保管庫を採用し、シ ーラカンスの 魅力 を 体現 できる空間となって いる。 また 、深海魚 や 国内 での 飼育実績 の 少 な い 生物 の 飼育展示 のため 飼育環境 の 設定 や 設 備的 な 設定に試行錯誤した 経緯 もある。 (小山大介/青山設計) 小山 大介 ……こやま だいすけ 1973 年静岡県生 まれ。 県立修善寺工 業高等学校建築科卒業後、東京テクニ カルカレッジ 環境 システム 科、設備設 P.64-65 /ミュージアム内観 冷凍シーラカンス展示 P.66 上/「駿河湾大水槽」ゴミ漁礁を賢く利用 する魚たちを演出。環境を考えるきっかけづくりをしている P.66 下/「 ベースキャンプ 」展示 シーラカンスの 調査研究が行われたベースキャンプを再現している 上/ B 棟店舗外観と提灯 下/ B 棟店舗内観 計等 を 経 て 1996 年青山建築設計事務 所入社。現在、同社設計部長 西側より夕景を見る 67 ■施工計画■ 当敷地 は 沼津魚市場 の 玄関口 にあり、市場 のメイン通りに面している。工事車両 の 現場 へ の 出入りは 、このメイン 通りを 利用 するし か な かった 。 市 場 内 は 通 常、 午 前 中 位 は 、 市場関係 の 車・ フォークリフトで 混雑して い る。市場車両と工事車両 が 同時にメイン通り を 使用 するような 状況 だったために、市場内 での 車両災害防止 につ いて 十分注意 する 必 要 が あった 。 また 、敷地周囲 は 既設建物 が 隣接し、大型車両を使用 する作業・搬入につ いては 、市場 の 状況を確認しながら行う必要 があった 。 A・B・C 棟(飲食店)を先に OPENし、D 棟(水 族館棟)OPEN を最後にする計画 だったので 大漁旗をインテリアに用 いた 店舗内観 D 棟 の 重機作業 をA・B・C棟 の 外構工事着 工前に終了 するように計画した 。 準備 をする 店舗関係者 と工事関係者 が 重複 完成 する事 ができたのは 、建築主・設計者・ D 棟 の 内装工事 では、水族館関係者 と日程 する期間 もあったが 、関係者用 の 通路を設置 施工者 の 施設 に 対 する 強 い 思 いとチ ームワ 調 整・打 合 せ を 綿 密 に 行 い 作 業 を 進 め た 。 し、工事範囲 を 明確 にすることにより円滑 に ークの 賜物 だと信じている。地元沼津 で 、こ のプロジェクトに参加 できた 事を誇りに思う。 内装 の 工程計画 では 、水槽 に 水 を 入 れてか 作業を行うことができた 。 ら OPEN まで の 必要日数 を 逆算して 工程計 工 事 中 に は 、 東 日 本 大 震 災 の 影 響 により、 画を行う必要 があった 。 また 、展示 する生体 計画停電 や 、材料手配 に 影響 が 出 たが 代替 伊倉 真也…… いくら まさや の 求 める環境・習性に合った 仕上材を提案し、 え 品等 の 採用 により工期 の 遅 れは 一切 なく、 1977 年 静 岡 県 生 ま れ。 1998 年 中 央 建築主側 の 、 イメージ通りの 施工 ができるよ 工事を進 めることができた 。 同年佐藤建設入社。 現在、同社工事 う、現場 が 一体となり工事を進 めた 。 シーラカンス・深海魚 の 展示 で 全国的に注目 飲食店 OPEN 前 には 、狭 い 範囲 で 、OPEN されて いる 施設 の 建設 を 無事故 で 、工期内 港八十三番地 沼津港深海水族館 シーラカンス・ミュー 構造規模 A 棟(飲食店棟):S 造 地上 1 階 ジアム データ B 棟(飲食店棟) :S 造 地上 1 階、塔屋 1 階 屋根 所在地 C 棟(飲食店棟) :S 造 地上 1 階 外壁 ラムダ RC フェイス、ALC 下地弾性リシン吹付 D 棟(水族館棟) :S 造 地上 2 階、塔屋 1 階 外構 透水性コンクリート舗装、御影石貼 建具 アルミ製建具 静岡県沼津市千本港町 83、外 主要用途 建築主 飲食店、博物館、水族館 佐政水産株式会社 機械設備 大石設備 担当/大石将勝 :26.747m、B 棟(飲食店棟) : A 棟(飲食店棟) 7.700m、C 棟(飲食店棟):6.747m、D 棟(水族館棟): 13.05m 軒高 A 棟(飲食店棟):4.750m、B 棟(飲食店棟): 7.110m、C 棟(飲食店棟):4.750m、D 棟(水族館棟): 12.20m 階高 B 棟(飲食店棟):3.90m、D 棟(水族館棟): 4.28m 天井高さ A 棟(飲食店棟)・B 棟(飲食店棟) ・C 棟(飲食 店棟):3.00m、D 棟(水族館棟) :3.50m 主なスパン A 棟(飲食店棟):12.15 m× 7.5 m、B 棟(飲 食店棟):10.15 m× 7.10 m、C 棟(飲食店棟):12.15 m × 10.85 m、D 棟(水族館棟) :7.6 m× 8.1 m 道路幅員 西側 10.5m 東側 8.15m 南側 8.00m 駐車台数 33 台 設計期間 2010 年 6 月~2011 年 5 月 地域地区 設計・施工 佐藤建設 担当/吉田伸一郎、伊倉真也 設計・監理 青山建築設計事務所 担当/総括:小山大介 建築:小山大介、渡辺貴正 水族館 展示企画・造形設計 ライツ・ アートリアル 担当/坂巻加夫 飲食店 企画・施工 タジマ創研 担当/森 秀明、井戸田円一郎 構造(水族館棟) 鈴木建築設計事務所 担当/鈴木弘行 構造(飲食店棟) 鈴木建築設計事務所 担当/鈴木俊介 電気設備(飲食店棟・水族館一時側) 鈴木電気商会 担当/鈴木伯明 電気設備(水族館二次側) ダイナナ 担当/ 野木康宏 工事期間 飲食店棟:2011 年 3 月~2011 年 10 月、水族館 棟:2011 年 6 月~2011 年 12 月 [建築概要] 敷地面積 2,988.29 ㎡ 建築面積 A 棟(飲食店棟) :289.50 ㎡、B 棟(飲食店棟) : :293.28 ㎡、D 棟(水族館棟) : 298.80 ㎡、C 棟(飲食店棟) 481.78 ㎡ 延床面積 A 棟(飲食店棟) :289.50 ㎡、B 棟(飲食店棟) : :293.28 ㎡、D 棟(水族館棟) : 321.78 ㎡、C 棟(飲食店棟) 972.65 ㎡ 建ぺい率 60%(許容 70%) 容積率 200%(許容 200%) 68 最高高さ 準工業地域、臨港地区(漁港区) [設備概要] 電気設備 受電方式/高圧受電 屋外キ ュ ー ビ ク ル式 6,600V 変 圧 器 容 量 / 飲 食 店 棟 ( 電 灯 300kVA 動 力 200kVA) 水族館棟(電灯、動力共 100kVA) 空調設備 空調方式/ ビル用マルチ方式 熱源/EHP 衛生設備 給水/市水道直圧方式 給湯/個別給湯方式 (電気温水器) 排水/市下水道へ放流 防災設備 消火/屋内消火栓設備、移動粉末消火設備 排煙/自然排煙設備 その他/自動火災報知設備 昇降機 特殊設備 乗用× 1 基、荷物用× 1 基 海水貯水設備、厨房局所排気設備、冷凍シーラ カンス保管展示庫 (伊倉真也/佐藤建設) 工学校工業専門課程土木建設科卒業、 部建築課 主任 [主な外部仕上げ] 露出シート防水、カラーベスト葺 [主な内部仕上げ] 水族館 床/タイルカーペット張 壁/ガラスクロス張 EP 塗装 天井/ケイカル板 EP 塗装 博物館 床/ ホモジニアスタイル 張 壁/ ビニルクロス 張 天井 /スチール製メッシュ天井 ミュージアムショップ 床/ ホモジニアスタイル 張 壁/ ビニルクロス 張 天井 /ロックウール化粧吸音板 撮影/近代建築社(小笠原岳写真事務所) 協力会社 警 備 仮 設 工 事 コ ン クリ ート 圧 送 工 事 型 鉄 鉄 枠 骨 筋 工 工 工 事 事 事 塗 装 工 事 金 属 製 建 具・ガ ラ ス 工 事 金 属 工 事 内 内 防 装 装 水 工 工 工 事 事 事 空 調 換 気 設 備 工 事 透水性コンクリート(ドライウェイ)製造・販売 シ ー ラカン ス 冷 凍 保 管 設 備 外 テ 構 ン ト 工 工 事 事 ア ン シ ン 神 山 組 東 和 片 岡 建 設 カ ワ グ チ 鉄 工 杉 山 鉄 筋 工 業 近 藤 商 会 岡 藤 硝 子 店 山 本 工 業 所 み つ は し フ ジ エ 物 産 ス エ ヒ ロ 工 業 平 和 エ ア テ ッ ク 長 岡 生 コ ン クリ ート 東 洋 製 作 所 フ ゲ ン ハ ン プ
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