ポイント還元と値引きの違いを検証 - ID

ID-POS協働研究フォーラム実証実験リポート
「ビヒダスヨーグルト」
「フルグラ」のクロスマーチャンダイジング
ポイント還元と値引きの違いを検証
昨年4月に立ち上がったID-POS協働研究フォーラム。生活協同組合連合会コープネット事業連合の協力により、これまでメーカー、卸からの仮説提
案をもとに、実際の店舗でのID-POS分析による数多くの実証実験を実施してきた。今回はその中から、ポイント還元と値引きの違いに焦点を当て
た、クロスマーチャンダイジングの検証結果をリポートする。
(実験協力:高山、カルビー、森永乳業)
「フルグラ」
ともに、
圧倒的に果物が上位
相互送客、
クロスマーチャンダイジングの
実態が目の当たりに!
㈲PI研究所 代表 鈴木
を占めた。
また、
「ビヒダス」
「フルグラ」に
関しては、実際の相互送客数は少ない
ものの、
リフト値はポイント還元3.23倍、値
聖一
ポイント還元と
値引きの効果を検証
図1:店舗内の商品連関図
※ポイント還元VS値引き
ヨーグルトとシリアルのクロスマーチャンダイジング
総菜
レジ
ヨーグルト
ヨーグルトへ
リコメンド
シリアルへリコメンド
ヨーグルトへ
リコメンド
ドライ
フルーツ
ヨーグルトへ
リコメンド
ヨーグルトへ
リコメンド
日配
はちみつ
ジャム
菓子
商品、値引きと相性性の良い商品があ
ることがわかる点だ。今後、
クロスマー
チャンダイジングを実施する際には、
どの
ようなインセンティブを顧客に提供する
か、
商品ごとに検討が必要になってくる。
牛乳
鮮魚
精肉
シリアルへ
リコメンド
う1店舗では双方の店舗と比較検証す
る意味で、POPのみの効果について、
シリアル
パン
雑貨
の商品を起点とし、1店舗で平均売価
の10%相当にあたるポイント還元とPOP
の効果を、
もう1店舗では平均売価の
10%の値引きとPOPの効果を、
そして、
も
シリアルへ
リコメンド
ドライフルーツ
トロピカル
リンゴ
バナナ…
食品
ト」450g、
カルビーの「フルーツグラノーラ
(以下、
フルグラ)」380gである。
この2つ
生鮮
ID-POS協働研究フォーラムの2012
年度の年間テーマは「商品を洗え、磨
け、
輝かせ!」である。
その意味は、
各メー
カー、卸の重点商品を実際の売場で顧
客一人ひとりの購入履歴をもとに洗い、
その結果をもとに仮説を立て、小売業と
協働で実践し、商品を磨きあげ、
その検
証結果を受けて、独自固有のノウハウを
確立し、
商品を輝かせることにある。
今回はこの一連の流れの中で、
クロ
スマーチャンダイジングに焦点を当て、
顧客がポイント還元と値引きでは、
どのよ
うに相互送客の違いが出るのかを検証
した。
商品は森永乳業の「ビヒダスヨーグル
引き5.41倍と高い数字が確認された。
さらに、
興味深いことは、
これらの商品
をよく見ると、
ポイント還元と相性の良い
実証実験イメージ
3. リピート顧客にはポイント、
トライアル顧客には値引きが有効
併売、同時併売、年間購入回数をもと
このフォー
にピックアップする手法であり、
ラムで研究開発した新たな分析手法で
ある。
その結果、図1のような店舗内の商
品連関図ができあがり、
「ビヒダス」
と
「フ
図3、図4は「ビヒダス」
「フルグラ」の
実証実験期間約1カ月間を起点とし、
過
去1年間の全購入顧客のランクを分析
したものである。比較のために、検証前
月、すなわち、実証実験が入らなかった
月の過去1年間の数字も掲載した。上が
ルグラ」
との関係はあきらかだが、
それ以
ポイント還元、下が値引きの検証結果で
外の商品でもドライフルーツ、牛乳、食パ
ン、
ジャム、ハチミツ、
そして、バナナ、
リン
ゴ、
アボカドなどがピックアップされた。
この実証実験では、
これらの商品、全
品に新たにリコメンドPOPを作成し、1店
舗では、
ポイント還元、1店舗では値引
き、
そして、
もう1店舗ではリコメンドPOP
のみを貼付し、
約1カ月間にわたり、
実証
実験を実施した。
図2:ビヒダス、
フルグラの併売商品 ビヒダスの顧客構造:上井草店:ポイント還元
検証期間:2012:11/5∼12/9:109人(2%以上)
フィリピンバナナ 1p
無袋ふじバラ 1個
アボカド 1個
園地指定高原バナナ 1P
パスコ 超熟 6枚
シナノスイートバラ 1個
園地指定バナナ 1P
ハネッコ無袋ふじ1P 1P
コープ 食パン 6枚
コープ くるみ(食塩不使用)130g
約1カ月にわたって実証実験を試みた。
1. リコメンド分析であらかじめ
関連性の高い商品をピックアップ
仮説をつくるうえで、
まずリコメンド分析
を試みた。
リコメンド分析とは「ビヒダス」、
「フルグラ」の年間購入顧客の中でリ
ピート率の高い顧客のみを選定し、
その
顧客が何をとくに併売しているか、期間
0
2. 果物との相性が抜群
「フルグラ」の相互送客の実情
「ビヒダス」
今回の実験ではポイント還元、値引き
を行ったのは「ビヒダス」
「フルグラ」
そし
て、
ドライフルーツのみであり、
それ以外の
リコメンド商品は、
すべてPOPのみの対
応となった。
「ビヒダス」
その結果は図2のとおり。
5
10
15
20
25
30
35
40(%)
20
25
30
35
40(%)
併売率
フルグラの顧客構造:武蔵浦和店:値引き
検証期間:2012:11/5∼12/9:50人(2%以上)
フィリピンバナナ 1p
アボカド 1個
園地指定高原バナナ 1P
園地指定バナナ 1P
無袋ふじバラ 1個
パスコ 超熟 6枚
シナノスイートバラ 1個
森永 ビヒダスヨーグルト 脂肪ゼロ45…
山崎 ふんわり食パン 6枚
コープ 食パン 8枚
0
5
10
15
併売率
図3:ビヒダスの顧客ランク
MD評価表:検証
(商品)
対象商品:森永ビヒダスヨーグルト450g:4902720085151
表示データ:過去12 ヶ月間集計
対象店舗:コープ上井草:POP、単品ポイント
ランク
TOTAL
S(リピーター)
A
評価項目
2012/10
伸び率
2012/11
伸び率
ID客数
1,067.00
95.8%
1,049.00
98.3%
ID金額PI値
488.70 102.4%
483.94
99.0%
ID客数PI値
2.87 102.5%
2.86
99.7%
ID客数
20.98 104.8%
ID客数
ID客数PI値
53.00 110.4%
3,524.60
96.2%
20.21
96.3%
97.9%
207.00
88.8%
807.08 104.3%
788.26
97.7%
4.63
99.4%
233.00
4.66 104.0%
ID客数
182.00
90.1%
182.00 100.0%
ID金額PI値
323.05
98.2%
323.49 100.1%
ID客数PI値
Z(トライアル)
94.1%
3,665.50 103.8%
ID客数PI値
ID金額PI値
B
48.00
ID金額PI値
ID客数
2.00 100.0%
604.00
97.0%
ID金額PI値
163.33 100.7%
ID客数PI値
1.00 100.0%
2.00 100.0%
607.00 100.5%
162.78
99.7%
1.00 100.0%
対象店舗:コープ武蔵浦和:POP、値引き
ランク
TOTAL
S(リピーター)
A
評価項目
2012/11
伸び率
93.6%
871.00 100.0%
815.00
542.55
98.7%
546.19 100.7%
ID客数PI値
3.18
98.2%
3.24 101.9%
ID客数
ID客数
40.00 100.0%
ID金額PI値
4,811.98
99.8%
ID客数PI値
28.23
99.7%
171.00
93.4%
ID客数
ID客数PI値
Z(トライアル)
伸び率
ID金額PI値
ID金額PI値
B
2012/10
867.34 101.2%
4.91 100.2%
36.00
90.0%
5,007.36 104.1%
29.53 104.6%
152.00
88.9%
925.07 106.7%
5.32 108.4%
ID客数
145.00 102.1%
138.00
95.2%
ID金額PI値
339.01 101.9%
333.28
98.3%
ID客数PI値
2.00 100.0%
ID客数
ID金額PI値
ID客数PI値
2.00 100.0%
515.00 101.8%
489.00
95.0%
160.41
160.07
99.8%
99.2%
1.00 100.0%
図4:フルグラの顧客ランク
1.00 100.0%
MD評価表:検証
(商品)
対象商品:カルビー フルグラ 380g:4901330740641
表示データ:過去12 ヶ月間集計
対象店舗:コープ上井草:POP、単品ポイント
2012/10
伸び率
2012/11
伸び率
ランク
評価項目
TOTAL
ID客数
280.00 104.1%
295.00 105.4%
ID金額PI値
737.25 105.7%
757.71 102.8%
ID客数PI値
S(リピーター)
A
ID客数
3,298.67 101.8%
ID客数PI値
6.75 107.1%
ID客数
ID客数PI値
ID客数
ID金額PI値
ID客数PI値
Z(トライアル)
1.75 102.9%
14.00 116.7%
ID金額PI値
ID金額PI値
B
1.70 105.6%
12.00 120.0%
ID客数
3,225.43
34.00 106.3%
36.00 105.9%
1,456.61 103.7%
98.5%
3.42 104.9%
50.00 135.1%
52.00 104.0%
99.2%
885.62 107.6%
2.00 100.0%
2.00 100.0%
822.76
184.00
96.8%
ID金額PI値
423.61 101.0%
ID客数PI値
1.00 100.0%
評価項目
TOTAL
ID客数
ID金額PI値
ID客数PI値
S(リピーター)
A
B
ID客数
337.00 109.8%
1.85 100.5%
422.29
98.9%
12.00 133.3%
12.17
99.6%
ID客数PI値
440.73
99.4%
ID客数
39.00 102.6%
ID金額PI値
3.87
94.9%
ID客数PI値
423.49
96.6%
ID客数
ID客数PI値
41.00 105.1%
2.00 100.0%
415.02
反応したといえる。
4. ID-POS分析における今後の課題
今回のID-POS協働研究フォーラム
における実証実験は「ビヒダス」
と
「フル
グラ」の購入顧客を相互送客、すなわ
ち、
クロスマーチャンダイジングにより増や
し、顧客構造をS顧客にシフトさせるため
の仮説を実証しようとしたものである。
そ
して、
そのインセンティブとして、
ポイント還
元と値引きではどのような違いがあるの
かを検証した。
図5は、実証実験をさかのぼる過去2
年間の日別のID客数の推移である。
四角で囲んだ期間が実証実験期間
図5:
過去2年間
ビヒダス、
フルグラの
顧客推移
較では好結果とはなったが、昨年、前月
対比では売上が苦戦した。
本来であれば、双方とも顧客が伸び
はじめる少し手前か、
伸びはじめたところ
で実証実験を実施すべきであった。
ID-POS分析は少なくとも1年間、
で
きれば、
この図5のように過去2年間のト
レンドをしっかり把握して慎重に実証実
験の期間を選ぶべきだろう。
最後に、
今回はポイント還元、
値引きと
もに平均売価の10%相当のみの実証
実験のみとなったが、
これについては、
さ
らにさまざまな数値での実証実験が必
須となる。
ポイント還元、値引きにおける弾力性
を検証することが課題で、
それにより、
顧
客数(ID客数)はもちろん、ID金額PI値
等への反応、
さらには、S顧客、A、B、Z
顧客への反応が大きく違ってくるはず
だ。
それぞれの閾値の検証、
これが今
後のクロスマーチャンダイジングにおいて
実証すべき大きな検討課題である。
ID客数:全店:過去2年間
2011/1/1∼2013/1/15
ビヒダス
300
250
200
150
100
50
97.7%
0
413.88
1.00 100.0%
98.9%
2012/11
伸び率
36.500 108.3%
1.85 100.0%
416.97
2011年
2012年
2013年
2012年
2013年
30
25
20
98.7%
15
12.00 100.0%
10
13.00 106.8%
5
436.00
98.9%
41.00 105.1%
0
2011年
3.98 102.8%
412.98
97.5%
44.00 107.3%
2.00 100.0%
411.93
99.3%
425.00 110.9%
268.00 109.4%
ID金額PI値
1.00 100.0%
1.00 100.0%
ID客数PI値
413.00 100.0%
ID客数
引きに関しては、Z顧客が全体108.3%
に対して109.4%と伸びており、
他のラン
クは伸びが見られないことから、
Z顧客が
時期に実証実験を試みており、相対評
価、すなわち、POPのみの店舗との比
フルグラ
伸び率
ID金額PI値
ID金額PI値
Z(トライアル)
2012/10
に対し、S116.7%と伸び率が高く、
それ
以外は、
A105.9%、
B104.0%、
Z104.9%
なので、
ほぼ全体と同じといえる。
また、
値
193.00 104.9%
対象店舗:コープ武蔵浦和:POP、値引き
ランク
のインパクトは低かった。
一方、
「フルグラ」のほうだが、
ポイント
還元は「ビヒダス」同様、
全体が105.4%
の1カ月である。
これを見ると、
「ビヒダス」
「フルグラ」
ともに最も顧客が伸び悩む
97.8%
6.79 100.6%
1,404.76 100.1%
3.26
間1回購入)
は100.5%なので、
S顧客が
大きく反応したといえる。
ただ、値引きに
関しては大きな変化がなく、
顧客構造へ
409.98
99.3%
ある。
その結果、
「ビヒダス」ポイント還元で
は全体が98.3%の伸びであるのに対し、
リピーターであるS顧客(年間購入回数
上位10%)
は110.4%であり、A88.8%、
B100.0%、
トライアル顧客のZ顧客(年
【 I D - P O S 協 働 研 究 フォー ラ ム の ご 案 内 】
指導コンサルタント:鈴木聖一
ID-POS協働研究フォーラムはデータ分析と売場での実証実験を組み合わせて、
店頭マーケティングの知見を高める環境をご提供します。
1.ID-POS分析システムをご提供
ID-POSデータの分析に必要なツールはWebブラウザ上で提供。
豊富な出力フォームをご用意。
2.ID-POSの活用方法、データ分析や実証実験の仮説・検証をサポート
会員企業が参加する研究会では事例や知識を共有。
個別に課題を解決するサポートプログラムもご用意。
3.実験店舗数が拡大、切れ目ない実験環境を確立
2012年度に比べて実験店舗は倍増して6店舗。
年間を通して、全ての期間での実験環境をご用意。
データ提供および店頭実験ご協力:生活協同組合連合会コープネット事業連合
2013年度
新規申込
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ID-POS協働研究フォーラム運営事務局
株式会社スマーツジャパン
(栗本、青野、河合彩)
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