The Obesity Epidemic 肥満の流行

The Obesity Epidemic
Jennifer Shea, Moderator1, Eleftherios P. Diamandis, Moderator1,*, Arya M. Sharma, Expert2,3,
Jean-Pierre Després, Expert4, Shereen Ezzat, Expert5 and Frank Greenway, Expert6
Author Affiliations
1Mount
Sinai Hospital, Toronto, Ontario, Canada;
2Obesity
Research and Management, University of Alberta, Edmonton, Alberta, Canada;
3Canadian
Obesity Network, Edmonton, Alberta, Canada;
4Division
of Kinesiology, Department of Social and Preventative Medicine, Faculty of Medicine,
Laval University, Quebec City, Quebec, Canada;
5University
Health Network, Endocrine Oncology, Toronto General Hospital, Toronto, Ontario,
Canada;
6Pennington
Biomedical Research Center, Baton Rouge, LA.
* Address correspondence to this author at: Mount Sinai Hospital, 60 Murray St., 6th Floor,
Toronto, Ontario, M5G 1X5 Canada. Fax: 416-586-8628; e-mail ediamandis@mtsinai.on.ca.
肥満の流行
肥満の有病率は驚くべき速さで増加し、心血管疾患、II 型糖尿病、脳卒中、特定の癌を含む多くの
合併症の発生も増加している。アメリカの成人の約 1/3 は現在肥満として分類されている。世界的
にも、4 億人を超える成人が肥満として分類され、その数は 2015 年に倍の数になると予測されてい
る。その結果、肥満とそれに関連した健康被害は、すでに圧倒的に医療サービス制度において大き
な重荷と位置付けられている。この病気に起因する世界的なコストは、総医療費の 0.7%から 2.8%
の間と推定されている。おまけに肥満者の医療費は、非肥満者よりも大幅に高くなっている。
肥満はエネルギーの摂取がエネルギーの消費を超える時に、慢性的なエネルギーの余剰によって引
き起こされる多因子疾患であり、それは過剰な脂肪組織の蓄積につながる。エネルギー恒常性の調
節は複雑なプロセスであり、そのことが肥満の病因を解明しようとする際に重要な課題となる。不
適切な食生活や身体活動の欠如を含む、悪いライフスタイルの選択は、間違いなく大きな役割を果
たすが、遺伝的な感受性もまたリスクの増加において個人をリスクにさらす。
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肥満の治療の大半は、行動の改善と薬理学的な介入に向けられた。しかしこれらの治療法は、ささ
やかな体重減少につながっているのみである。あまり一般的ではないが、肥満の手術は病的な肥満
患者において、かなり長期的な体重減少につながっている。しかしながらこのタイプの治療は、侵
襲的でかつ高価である。
先進国と途上国両方の肥満の増加傾向を考えると、その問題意識を高めることが重要である。この
記事では、肥満研究の領域における 4 名の指導者たちが、肥満に関して自分の意見を提供し、病因、
治療、予防、そして将来の体重増加のリスクを識別するための、新規バイオマーカーの利用に関す
る最新の進歩について議論する。
現在の肥満の流行の主な原因は何ですか?なぜ我々は肥満に対抗することができなかったのです
か?
Arya Sharma:現在の肥満の流行は、カロリー摂取量と消費の両方に影響を与
える、複雑な要因から引き起こされた。主な要因は、高エネルギーで、非常にお
いしい食品の容易な獲得や、座りながらの作業環境、睡眠不足、高いストレスレ
ベル、および精神的健康の有病率の増加が含まれる。他の要因は、母親の年齢に
関連した後天的な修飾(子宮内で)、身体組成とライフスタイル、環境生物毒素
の蓄積が含まれる。治療は、体重を"保護"するために、身体の効率的な能力によ
って制限される。体重減少は、再び体重を戻そうとする、複雑で持続的な生物学
的応答へと導く。従って肥満治療へのアプローチは、再発(体重の再増加)を予
防するための、慢性疾患の管理の原理を採用しなければならない。
Jean-Pierre Després:肥満の病態や肥満の管理の多くの研究があるにもかかわ
らず、その有病率が必ずしも世界的なものではなかったということは皮肉であ
る。さらに、この流行がすぐにプラトーになるだろうという証拠もない。過去
40 年間、我々は、エネルギーバランスを調節する生物学的要因ならびに脂肪組
織の生物学について、多くのことを学んだ。従って理論的には食事制限と、よ
り多くの運動がその問題を解決するだろう。ただし、いくつかの稀な例外を除
いて、エネルギーバランスは、主に行動や我々が食べるものの質と量によって
決定される。従って、我々のエネルギー摂取量/消費は、多数の生態学的、心理的、社会経済的な要
因によって影響される。例えば、我々は、社会経済的な地位、教育レベル、収入レベルと肥満の間
に、逆相関の関係があることを知っている。簡単な言葉でこれを変換すると、乏しい栄養の知識の
生活や、新鮮な果物や野菜を購入するためのお金が十分でない生活をしているシングルマザーは、
高エネルギーで安価な、旨い食品で、彼女の家族を満足させるように誘惑されるだろう。特に、彼
女の子供たちが安全に遊べるような歩道や公園がない、安全でなく危険な環境で生活するならば、
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彼らの身体活動は少なくとも彼女の心配ごとである。さらにこれらの世代の子どもに対して、栄養
教育が学校で行なわれる事はほとんどなく、食事の準備をすることもない。従って、彼らは健全な
栄養を享受するための、栄養スキルをあまり持っていない。さらに、我々は学校で子供たちを座ら
せ続けている。従って、"外で遊ぶ"ことがどのように楽しいのか、日常的に活発な身体活動を実行す
ることがどのように楽しいのか、もっと勧めるべきである。我々の子供たちの心肺機能は、そう貧
弱ではなかった。我々が進歩したいならば、我々はいくつかの主要な環境要因をターゲットにしな
ければならない。いくつかの試験的なプロジェクトが進行中ですが、私は近い将来に対して、あま
り楽観的に考えてはいない。
Shereen Ezzat:ほとんどの代謝性疾患と同様に、肥満は本来多因子性である。
遺伝的変異は、環境の影響との相関が今後の研究の焦点である。どのようにし
て遺伝的な変異が環境上の影響と相互作用を及ぼすかは、将来の研究の焦点に
なるでしょう。それまでは重度の肥満を持った、非常に少数の患者だけが、遺
伝学的に識別されるでしょう。肥満の発生と進行に関する我々の知識は、未だ
初歩的なままである。
Frank Greenway:肥満は、我々の環境と相互作用する遺伝的背景の結果です。
一つは、アリゾナ州にいる肥満のピマインディアンにこれを見ることができま
すが、同じ遺伝的背景を持ったメキシコの農村部にいる別の部族の人々は肥満
ではない。アデノウイルス(AD-36)と、睡眠不足を含む肥満の複数の環境要
因が恐らくある。従って、肥満がエネルギーの余剰からなるが、そのエネルギ
ーの余剰につながるいくつかの遺伝的要因と環境要因がある。一旦人々が肥満
になると、体重が健康なレベルより高い状態で制御されている場合に慢性疾患
になり、それはヒドロキシメチルグルタリル CoA レダクターゼ(スタチン)の出現まで、食事で不
十分に治療された高コレステロール血症や他の慢性疾患に似ている。
肥満の病因に遺伝的寄与があることがよく知られている。最近では、FTO(fat mass and obesity–
associated gene, 体脂肪量と肥満関連遺伝子)、これは染色体の遺伝子座 16q12.2 に位置するが、
FTO は数多くのゲノムワイド関連の研究を通して、ボディマスインデックスの増加と明確に関連し
た。他に確認されている、強力な遺伝的関連はありますか?我々が、個人の "リスク"を確認するた
めに、これらの遺伝子多型を一般集団にてスクリーニングをするべきであると考えますか?
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Arya Sharma:双子の研究では、血圧と高コレステロール濃度のような他の特徴よりも、身体構造
の遺伝の確率が高いことを示している。肥満の稀なケースだけは、単一遺伝子疾患に起因するもの
であるが、摂食行動と代謝の主要な経路に関与すると考えられている多くの遺伝子(>1000)には、
一般的な変異がある。現在、遺伝子スクリーニングが保証するであろうと思われる共通の遺伝的変
異はない。
Jean-Pierre Després:FTO 遺伝子上の研究は、肥満の定義をめぐる混乱の良い例です。もしも肥満
が健康に影響しない、過剰な量の体脂肪でのみ定義された場合、それは長い鼻や大きな耳を持つこ
とに類似した、単に主観的な表面上の問題でしょう。しかし我々は健康のために、その潜在的に有
害な影響に起因する肥満を心配している。これはかなり混乱した領域です。肥満は、状態の混合バ
ッグですが、残念ながら単一の存在として記述されていて、それは間違いである。25 年以上の私の
仕事は、"肥満"の一つの形態に焦点を当てている。その形態とは、間違った場所に貯蔵された、あま
りにも多くの体脂肪を持っている過体重と、太りすぎや中等度の肥満者のことである(例えば、過
剰な内臓脂肪組織と、肝臓の脂肪のような異所性脂肪蓄積と呼ばれる)。これらの "内臓肥満"者で
は、必ずしも高度な肥満ではないが、脂質異常、高血圧、インスリン抵抗性、耐糖能異常と II 型糖
尿病、睡眠時無呼吸、心血管疾患や脳卒中、いくつかの癌の形態、のリスクが増加する。内臓/異所
性脂肪の過剰を有する者のうち、これらの合併症は全体の体脂肪の一定のレベルで観察され得る。
一方で、代謝異常によって特徴付けされるかもしれない、あるいは特徴づけされないかもしれない
(過剰な異所性脂肪を持っていない場合)、高度な肥満患者がいる。代謝異常の有無にかかわらず、
これらの高度な肥満患者は生活の質が悪く、心理的苦痛と非常に高い体脂肪含有量に起因する他の
合併症に苦しむ可能性がある。ゲノムワイド関連の研究が実施される時、これら 2 つの非常に異な
った肥満の形態が区別されない。遺伝学の分野における多くの専門家は、この分野(この技術によ
って遺伝子スクリーニングに大規模に実行することができる現在)の次の進歩は、個人のより洗練
された表現型が必要になるだろうと考えている。我々は最終的には、過剰な体重や体脂肪を用いて、
単純に表現する必要があります。
Shereen Ezzat:いまのところ、集団に対して遺伝的多型のスクリーニングし始めるのは時期尚早で
ある。どのような変異が関連ある環境要因と相互作用を示すかの理解が進むまで、このような多型
による遺伝的寄与は非常に小さそうである。また、異なった肥満表現型(内臓 vs 広範囲)を有する
被験者を識別することは、定量的コンピューター断層撮影スキャンと生体電気インピーダンスなど
の他の手段を通じて、容易に確認され得る。
Frank Greenway:FTO 遺伝子は、肥満と最大の相関を持っています。肥満に関連する他の遺伝子
もあるが、ほとんどがボディマスインデックスでの非常に小さな変異を示すに過ぎない。遺伝子を
同定することが肥満のためのより良い治療になるように、我々がこれらの関連遺伝子の生理機能を
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理解するまで、我々は肥満に関連する遺伝子多型をスクリーニングに使用すべきではない。その科
学はまだその点まで進んでいないが、うまくいけば将来的には達成されるだろう。
あなたは、肥満の病因において内分泌系の役割について、詳しく説明することはできますか?
Arya Sharma:事実上、すべてのホルモンは、エネルギー摂取量、エネルギーの消費、またはその
消費の 1 つ以上の要素に影響を与える。これらは視床下部-下垂体-甲状腺/副腎系に関与するホルモ
ン、性ホルモン、カテコールアミン、消化管ホルモン、インスリン、グルカゴン、レプチンなどの
アディポカインが含まれる。これらのホルモンのすべては、基本的で、適応できる活発な熱発生だ
けでなく、食欲やエネルギー分配、貯蔵に影響を与えたり、調節したりすることができる。現時点
では、内分泌異常を示唆する特定の徴候や症状がない限り、日常的な内分泌検査は肥満の診断に推
奨されていません。
Jean-Pierre Després:また、この質問に答えるためのキーポイントは、言及されている肥満の形式
を、適切に定義することである。多くの肥満患者に対する私の意見は、皮下脂肪組織は高いエネル
ギーの分配を調整し、脂肪細胞増殖をするための注目すべきユニークな能力を持ち、皮下脂肪組織
はその組織の余剰エネルギーの貯蔵を可能にする、ということである。たとえばある程度の数の肥
満患者は、異所性脂肪の証拠もなしに、皮下脂肪組織の大規模な蓄積を持っている。言い換えれば、
それらの肝臓の脂肪含有量は正常である。エネルギー貯蔵を動かす分子メカニズムと、内臓/異所性
の脂肪組織とは対照的に、皮下脂肪の増殖を促進する分子メカニズムは何ですか?これは数十億ド
ル規模の研究費を使うに値する問題であり、多数の仮説が現在検討されている。
Shereen Ezzat:コルチゾールの分泌増加など、肥満で発生するいくつかの乱れは、おそらく中枢/
視床下部の要因によって引き起こされる。成長ホルモンの下垂体での分泌能と、その末梢のターゲ
ットであるインスリン様成長因子 1、が減少する。また、脂肪組織において増加するテストステロ
ンの芳香族化が高いエストロゲン比を導き、それは下垂体 - 性腺刺激ホルモンシグナルを阻害する
働きを促進し、さらにテストステロンの産生を減衰させる。最後に、甲状腺ホルモンの分泌能と、
アクティブでないフォーム(T3 に戻る)への転換は、肥満に伴う内分泌機能障害を示す。肥満の中
枢の主要なエフェクターから、下流の付帯現象を区別することが重要であり、かつ必要である。
Frank Greenway:レプチンの発見は、動物やヒトにホルモンが多くの肥満を引き起こす存在であ
ることを実証した。レプチンが補填された時に、レプチン欠損者には劇的な体重減少が見られる。
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レプチンは、肥満が研究に値する生理学的に制御された慢性疾患であるということを、科学者に説
得するための重要な発見であった。レプチン欠乏はまれであるが、肥満をもつほとんどの人は高レ
プチン濃度を持つ。我々は肥満が、代謝されるよりも多くのカロリーを摂取することからなるエネ
ルギーの不均衡であると言うこと以外に、肥満で苦しむ多くの人々の肥満の成因についての確証を
持っていない。しかしながら、食欲を増加させるグレリン、食欲を減らす膵ペプチド YY3-36(PYY)
あるいはグルカゴン様ペプチド 1 のような消化管ホルモンがあり、不適切に調節される時に、それ
らは肥満に寄与するかもしれない。
レプチンは視床下部の満腹調節に関与する新規アディポカインとして、1990 年代半ばに同定されま
した。ここで現在、このアディポカインは肥満のマーカーとして、どのような評価になっているの
でしょうか?最近同定された、食欲調節に関与する他の有望なアディポカインはありますか?
Arya Sharma:エネルギー摂取と消費に影響を与える可能性のある、多くのアディポカインが見つ
かっている。これらには、レプチン、アディポネクチン、ビスファチンなどが含まれる。しかし現
在、これらのアディポカインの測定は、日常的診療には推奨されていない。
Jean-Pierre Després:レプチンの発見は、脂肪組織が単にトリグリセリドの貯蔵と分配のための特
定の器官であるということをはるかに超えた証拠を提供したので、肥満研究において重要な画期的
な出来事だった。レプチン欠損の若年肥満の子供たちに対するレプチン治療の優れた効果として、
体重が正常化したことであり、有望であった。しかし残念なことに、ほとんどの肥満患者が高レプ
チン血症であり、レプチン濃度は、体脂肪量とよく相関するということが後に発見された。しかし
ながらそれ以来、多くの新しい脂肪組織のサイトカイン(アディポカイン)が同定されている。こ
の段階で、私は特定のアディポカインに焦点を当てるには消極的ですが、これらの研究は非常に興
味深いものです。明らかに脂肪組織は、例えば脳、肝臓、骨格筋、β細胞、心臓など、他の重要な
組織/臓器の標的と作用し合っている。そして今後数年間で、多くの事がわかるようになるだろう。
Frank Greenway:レプチンは、飢餓ホルモンのように見える。それが低値の時、食欲を抑制し、
代謝率を減少させ、肥満を引き起こす。ほとんどの肥満者は高いレプチン濃度と、高いインスリン
濃度を持っており、両方のホルモンの作用に抵抗性を示す。レプチン治療は、レプチン欠損による
肥満にのみ効果的であると思われる。新しいアディポカインが発見されていて、インスリン感受性
に影響を及ぼすものなどがあるが、レプチンは人々が望むような肥満の治療法になるとは思わない。
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肥満を発症するリスクを持つ人を予測する、十分な精度を持つ新しいバイオマーカーありますか?
Arya Sharma: 現在、肥満の進展を予測するバイオマーカーはありません。
Jean-Pierre Després:急速に進化する技術の結果として、いくつかの企業は遺伝子プロファイリン
グを提供し、あなたが持っている可能性がある多くの既知の感受性のある変異をまとめている。も
しも、あなたはこれらの変異を持っていない他の者より、体脂肪を身につけやすい場合にのみ、こ
のプロファイリングがあなたにとって意味があるでしょう。逸話:かつて彼の体重をコントロール
することが難しかったある大学の同僚は、彼が遺伝子プロファイルを要求し、そして彼が確かにこ
れまで知られている最も感受性のある変異によって特徴づけられていることが分かった、と私に言
った。それ以来、彼は彼のライフスタイルを変えて、かなりの体脂肪量を少なくした。ポイントは、
体重/体脂肪を少なくすることが、いくつかの遺伝的に感受性のある人にとっては困難かもしれない
が、もし彼らが環境に対応するスキルや知識を得るならば、彼らは体重のよりよい制御が(理論的
には)可能である。しかしながら問題は残されている。あなたが教育を受けていないので、またあ
なたの収入が低いので、またあなたが貧しい栄養の選択に対応するためのスキルを持たずに生き伸
びようとするので、あなたが遺伝的な感受性を持ち、対処するための多くの個人/専門家の問題点を
持っているなら、あなたは何をすることができますか?私たちは不健康な行動の社会経済的、生態
学的、心理的な力を元に戻し、適切に勉強してこれらの要因に対処するには長い道のりが必要であ
る。
Shereen Ezzat:我々の身体の組成は、脂肪でのみに依存するのではなく、関連のある筋肉や骨の減
少にも依存するということを忘れるべきではない。ミオスタチンのような筋肉の損失の増加のマー
カー、オステオカルシンや I 型コラーゲン架橋産物などの、骨代謝回転の増減のマーカーは、肥満
研究の展望の一部として明らかになってくる可能性があります。
Frank Greenway:肥満を予測する上で有用なバイオマーカーは、肥満の病因の背後にある本当の
病態を知ることから遠く離れている。 1 人または 2 人の肥満を両親に持つ人は、インスリン抵抗性
がある人がいるように、肥満のリスクにさらされている。
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現在、この疾患を治療するために使用されている、治療法の選択肢は何ですか?今後数年間で、臨
床的に利用されるであろう準備中の新しい治療法はありますか?
Arya Sharma:現時点では、重度の肥満患者のための最も効果的な治療は、肥満症治療手術である。
中等度の肥満患者では、運動療法の介入で初期体重の約 3%~5%の持続的な減量が可能である。現
在の薬理学的選択は限られているが、いくつかの薬は現在開発中である。
Jean-Pierre Després:体脂肪の過剰として、肥満を単一の均質な存在として定義することによって、
この問題を対処することはできない。まず、患者の健康状態が適切に評価されなければならない。
彼らのボディマスインデックス(通常の体重、過体重、あるいは、肥満の様々なクラスをもつ肥満
体)に基づいて、患者を分類することが出発点であるが、それだけでは十分ではない。患者の全体
的な健康状態のプロファイルが重要であり、健康への全体的なアプローチは熟考されなければなら
ない。過剰な内臓脂肪異所性を持った、中等度の過体重の患者に対して、合併疾患の存在が健康上
のリスクを決定するだろう。他の患者に対して、医師は彼らが実際に診断する肥満の表現型と一緒
に存在する、根本的で重要な原因を調査するべきである。肥満の薬物療法の歴史は、適切な患者に
対する正しい薬の選択の難しさだけでなく、これまでに開発された薬の副作用のため、失望の連続
であった。高血圧や脂質異常症などの他の疾病とは対照的に、肥満は表面的要素を持っています。
従って、もしも表面的な動機が関与しているならば、確かに正当化されていない減量薬を処方する
ために、患者から医師への圧力があり得るということです。orlistat の例外を除いて、これまでに開
発されたほとんどの薬は、大規模に使用することを困難にさせる副作用が確かに起きている。また、
適切な患者に対して正しい薬を開発することが、今後の課題である。 "異常代謝を手術する"という
最近開発されたアプローチは、重度の肥満患者および II 型糖尿病を持つ肥満患者に対して有望であ
る。この話題のような研究の方向は、今後明確に支持されてゆく。
Shereen Ezzat:現在の治療は、実際には主に非薬物的治療である。これは、食欲抑制剤使用に関連
した有害事故という、以前の負の経験に関連する。実際にはよりターゲットを絞った、選択的で安
全な食欲抑制剤の価値が証明されるかもしれない。多くの有望なものは、インスリン感受性を高め、
脂肪分解作用を促進するための、末梢の標的に働きかける物質である。褐色脂肪組織を増強させ、
そして白色脂肪細胞を減少させるポリペプチドの受容体、またはステロイド核内受容体を活性化さ
せることができる類似物質は、同様に有望なことを証明するかもしれない。
Frank Greenway:現在の治療は、食事と運動、行動や orlistat(排便でカロリーを損失させること)
であり、中枢神経系に働く薬、手術で生理機能に打ち勝つことを人々に要求する。一般的に慢性疾
患(例えば、高血圧症)の治療は、手術(例えば、交感神経切除術)から、脳に作用する薬(例え
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ば、レセルピン)、併用薬、そして最後に末梢の標的対象を持った薬(例えば、アンジオテンシン
受容体拮抗薬)へと移行する。末梢の標的に作用するアンジオテンシン受容体拮抗薬のような薬は
効果的で、副作用が最小限である。Zafgen Inc. は beloranib を開発していて、beloranib とはレプ
チン欠乏を引き起こす変異を有するマウスで、野生型マウスのレベルに体重を正常に戻すような肥
満の治療のための、末梢組織のメチオニン・アミノペプチダーゼ 2 の阻害剤のことである。
Beloranib も初期のヒト試験で良好で、4 週間にわたって週当たり 1kg の体重を減少させた。もし、
レプチン欠損マウスでそうなったように、beloranib がヒトでも最小限の副作用で正常な体重に戻し
た場合、その薬は肥満の治療において大きな前進をもたらすだろう。
(何千とまではゆかなくても)減量のための何百もの市販の食品がありますが、これらは減量を維持
することにおいて、ほとんど成功していません。なぜだとあなたは考えていますか?
Arya Sharma:ほとんどの市販のプログラムは、体重の減少に最大限の焦点を当てているが、しば
しばコストや厳しさの問題で、彼らは長期的に続けることができない。これらのプログラムでは、
ほとんどが肥満の根本的な原因に対処せず、体重を元に戻すために身体的機能を低下させることは
ない。
Jean-Pierre Després:長期にわたって成功するためには、患者は"肥満の原因となる"環境に対処す
るための支援を必要としている。長期的な介入研究は、その患者とサポートチームの間で、相互作
用の高いレベルと頻度を持てば持つほど、これらの患者が長期にわたって体重減少を維持すること
に成功するだろうという可能性を大きくする、ということが明確に示している。重要な質問は以下
のとおりである。彼らが動脈硬化と糖尿病、脂肪組織の減少を手助けするために、また全体的な健
康のプロファイルを改善するために、高リスクの過体重や肥満の患者に提供しても差し支えない支
援の種類やレベルは、どのくらいなのか?導入されるべきサポートチームの種類は、どんな種類の
ものか?我々は電子メディアとの相互作用とともに、グループセッションを組み合わせた個別/個人
的なサポートの組み合わせを考えるべきか?興味深い予備的な介入研究が最近発表されたが、我々
はこの問題に関する詳細な研究を必要されている。間違いなく、食事療法の本を発行するような食
の達人は、利益を上げ続けるだろう、そしてそれは、問題の解決策にはならないだろう。我々はま
た、肥満の流行を引き起こす中心的な社会経済的、環境的、そして心理的な力を標的として対処す
る必要がある。学校は確かにその"全体像"に含まれる、発生関連施設である。
Shereen Ezzat:減量は容易に達成される、一つのプロセスである。体重の再増加は、おそらく体や
神経認知機能の中枢、および末梢のシグナル等による異なる要因に起因している。
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Frank Greenway:肥満とは、高血圧症において血圧が増加と不健康なレベルにコントロールされ
るように、体重が増加と不健康なレベルでコントロールされる慢性疾患である。人々は限られた期
間で、行動変化とその生理機能を克服することができるが、ほとんどの人々は代謝率の低下および
慢性的な食事を求める食欲の増加の生理機能を克服することができない。従って、一般的にダイエ
ットは、ほとんど常に長期的には失敗する運命にある。
デンマークは最近、飽和脂肪酸が 2.3%を超えるすべての食品に、 "脂肪税"を導入しました。あなた
はこれをどう考えますか?あなたは "脂肪税"が、世界的に導入されるべきだと思いますか?
Arya Sharma:課税は、肥満の発生率や有病率を減少させるという、事実に基づいたものではなか
った。脂肪消費が実際に肥満の流行の原因となることもはっきりしていない。確かに、肥満の多因
子の性質を考えると、これらのタイプの対策は、集団レベルで有益であるとは考えにくい。
Jean-Pierre Després:これは複雑な問題である。食品の品質は、心血管の健康の非常に重要なポイ
ントである。 米国心臓協会(The American Heart Association)は、多くの食品を重要視する勧告
の中で、食事の栄養素の成分についての専門的な議論から脱却しようとした。精製された糖含有食
事は非常に重要で、特に砂糖入り飲料の過剰消費が重要である。我々は、砂糖を含む飲料を大量に
飲むべきではない。 加工食品の脂肪酸組成は、消費者にとって解読することは難しい。我々は、例
えば、毎日の食事で消費されるべきものには GREEN、より控え目に消費されるべきものには RED
というように、シンプルかつ明確な表示を必要とする。またこれは複雑な問題であるが、明確な食
品ベースの勧告とともに、消費者のための明確な表示は、患者や消費者にとって良いきっかけにな
る。
Shereen Ezzat:タバコやアルコールへの課税は、どちらの消費も減少していない。高い税負担は、
低い社会経済的地位の人々において、苛酷であるかもしれない。従って、それらを高額な税にする
ことを私は支持しないだろう。
Frank Greenway:栄養学の疫学研究者は、公共政策を推進するために、原因とその影響をほのめ
かさないような結果を示す。原因と影響の関係性は仮説を生じさせ、これらの仮説を確認するため
の臨床試験を求めるべきであり、その後で確認試験をすべきである。脂肪税が肥満にプラスの効果
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を持っていることを仮定することは、理由づけしやすい。それは公共政策に取り入れられる前に、
追加された経済的負担が、正しい公衆衛生の結果によって正当化されることを示す、確証のある臨
床試験を欲する慎重な科学者がいるということを私は信じている。
追加のコメントはありますか?
Arya Sharma:複雑な多因子、慢性的な、しばしば高い再発率を持つ進行性の疾患として、肥満を
認識することが重要である。すべての治療(運動、薬物治療、または手術)は、持続可能でなけれ
ばならない。治療が停止する時、体重が実質的に常に元に戻る。
Jean-Pierre Després:肥満は、均一な存在として考えられていて(同一にあてはめるべきではない
が)、栄養不良の習慣や、身体活動の欠如のマーカーである。そう考えると我々は、(心理的、生
態学的、経済的な原因等も含む)高リスクの栄養/座りがちな行動という、根本的な原因をターゲッ
トにすることを忘れるべきではない。例え肥満患者が体重減少しない、あるいは、より多くの体脂
肪を持たないとしても、通常の活発な身体活動がほぼすべての肥満患者の健康状態(代謝の変化だ
けではなく)を改善させるということを、十分に強調することはできない。さらに高リスク患者は、
体重の大部分を減少させることなく、多くの内臓/異所性脂肪を減少させるだろう。定期的な運動は、
肥満患者にとって、並ぶもののない有益な特性を持っている。このケースでは、定期的な身体活動/
運動による体重の減少の大きさは、患者における有益な効果を評価するための最も良い基準ではな
いかもしれない。 定期的な身体活動/運動は、専門知識を持つプロフェッショナルである
kinesiologists により、肥満患者に導入されなければならない。彼らは、肥満患者を支援すべき学際
的な健康のチームの一員である。
Note from moderators:染色体 16p11.2 の遺伝子座は、最近下記のように、ボディマスインデック
スの修飾因子として同定されている: 28 の遺伝子にまたがるその遺伝子座の欠失は、病的な肥満の
リスクを 43 倍増加させ(Nature 2010;463:671–5)、一方でそれと同じ遺伝子座の重複は、ボディ
マスインデックスの減少を含む、発達障害や知的障害と大きく関連する(Nature 2011;478:97–
102)。従ってこの領域における遺伝子座は、極端なボディマスインデックスの表現型に関連がある。
(訳者:櫻井 俊宏)
Footnotes
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Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of
this paper and have met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the
conception and design, acquisition of data, or analysis and interpretation of data; (b) drafting or
revising the article for intellectual content; and (c) final approval of the published article.
Authors' Disclosures or Potential Conflicts of Interest: Upon manuscript submission, all authors
completed the author disclosure form. Disclosures and/or potential conflicts of interest:
Employment or Leadership: E.P. Diamandis, Clinical Chemistry, AACC.
Consultant or Advisory Role: F. Greenway, General Nutrition Corporation, Jenny Craig,
Orexigen, Basic Research, Zafgen, Unigene, Takeda, Plensat, Baronova, Origin BioMed, Lithera,
NuMe, and Amylin.
Stock Ownership: F. Greenway, NuMe.
Honoraria: F. Greenway, Alpina.
Research Funding: None declared.
Expert Testimony: None declared.
Other Remuneration: F. Greenway, Allergan.
Received for publication December 13, 2011.
Accepted for publication January 13, 2012.
© 2012 The American Association for Clinical Chemistry
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