MAPキナ-ゼTNNI3Kを用いた 新しい心疾患診断薬の展開研究と開発 研究責任者 : 頼仲方一 (熊本大学 生命科学研究部医学系 生体機能薬理学分野 助教) コーディネーター : 荒木寛幸 (熊本大学 マーケティング推進部 研究コーディネーター) 研究背景1 1. TNNI3Kは心筋特異的に発現し、心筋トロポニンI(cTnI)と相互作用するMAP キナーゼである。 2. TNNI3K高発現はcTnIのリン酸化抑制による、自発活動電位第4相の自動脱 分極速度の促進で心筋細胞の自発拍動頻度や収縮力を増強させる。その TNNI3K高発現心筋前駆細胞をラットやマウスの梗塞心筋局所へ移植すると 心筋細胞再生の促進、梗塞面積の減少、左心室リモデリングの改善が示唆さ れた。 3. 抗TNNI3Kポリクローナル抗体を用いた、心筋梗塞を中心とした心疾患で TNNI3K血中レベルを測定するELISA測定系を確立した。 4. 参考論文 Lai ZF:Am. J. Physiol. Heart and Circ Physiol. 2008; Lai ZF. Recent Patents Cardiovasc Drug Discovery. 2009 Lai ZF : (Symposium) AHA Scientific Sessions 2010, Chicago. Lai ZF: (Editorial) )World J Hypertension. 2012 研究背景2 抗TNNI3Kポリおよびモノクローナル抗体を用いた、TNNI3Kが 心筋虚血、心筋梗塞など心疾患におけるユニークな病態マーカー として利用できるような診断薬を開発と確立し、心筋梗塞を中心と した心疾患でTNNI3K血中レベルを測定し既存のマーカーである cTnIとの比較解析を行った。 抗TNNI3K抗体の作成 モノ ポリ 4.0 コンビナント蛋白を作製し、TNNI3Kの全長リ 3.5 Absorbance (405 nm) 各種TNNI3K (全長、N-末端、C-末端)リ コンビナント蛋白を用いて、抗TNNI3Kポリお よびモノクローナル抗体を作成した。 TNNI3K測定キットを利用して、健常者 血清と急性心筋梗塞(AMI)患者血清および 急性腎不全や慢性心不全歴のある患者の 血液標本を検体として、TNNI3K の血中レベ いという結果を得た。 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 ルを測定した。その結果、AMI患者の血中 TNNI3K濃度は健常志願者より十倍以上高 3.0 0 0 20 40 60 80 100 120 TNNI3K concentrations (ng/ml) TNNI3K concentrations (ng/ml) 抗TNNI3Kポリおよびモノクローナル抗体を用いた、異 なる濃度のTNNI3K抗原投与後の反応曲線 2010年AHA米国心臓学会年会口頭発表; 2010年日韓薬理学会合同セミナーfree topics講演; 2011年熊本大学総合技術研究会口演発表; 論文も投稿中。 抗TNNI3K抗体を用いた血中TNNI3K濃度の測定 B 2500(ng/ml) 500 血中TNNI3K濃度 (M±SD) A △TNNI3K 濃度(ng/ml) 400 300 200 TNNI3K (n=6) 100 1500 98 1000 (ng/ml) 2500 48 218.3±16.8 * 500 56 100 105 100 * 2000 # 80 TNNI3K cTnI 1500 40 1000 # 500 0 356.7±18.1 227.4±22.1 D 66 * * 40 6 急性腎不全 ROC 曲線 血中TNNI3K濃度 (M±SD) C 12 24 36 虚血開始経過時間(h) # 2000 0 0 0 2018.2±211.3 60 AMI patients (n=98) 40 20 0 急性心筋梗塞 0 20 40 60 特異性 80 100 研究開発成果 MAPキナ-ゼTNNI3Kを用いた新しい 心疾患診断薬の特徴 感受性が高い: 血中TNNI3K濃度は急性心筋梗塞患者の方が健常者の方より十倍以上高かった 特異性が高い: 血中TNNI3K濃度の変化とcTnI濃度の変化を比べると、TNNI3Kは、AMI患者の血清の み上昇するが、cTnIの場合ではAMI患者のみならず、急性腎不全患者の血液サンプル にも見られた。 早期確診薬として利用可能: 血中TNNI3K濃度は虚血開始2時間後から上昇、12時間後にピークを迎え、48時間後で も同様な高いレベルに維持している。 新技術の特徴、従来技術・競合技術との比較 新規性:TNNI3Kは心筋に特異的に発現している新規MAPキナーゼであり、逸脱 酵素として現在用いられている各種の心筋細胞傷害マーカー分子では捉えられ ない心筋の再生および収縮力についての情報を与える新規病態マーカーとなる ことが期待される。 優位性:TNNI3Kは細胞質及び細胞核内に局在し、心筋虚血や心筋梗塞で細胞 死やアポトーシスなど心筋傷害により細胞外に逸脱する可能性がある。TNNI3K を用いた新しい心疾患診断薬については特異性及び感受性が高い。 濃度の上昇 について 心筋細胞 TNNI3K クレアチン キナーゼMB ミオグロビン トロポニンI トロポニンT 虚血開始2時間後 から上昇、12時間 後にピークを迎え、 48時間後でも同様 な高いレベルに維 持している。 心筋梗塞発症後 3~8時間から認 められ、10~24 時間でピークを 迎える。 早期に 消失する 上昇は心筋梗塞 発症後2~3時間 から認められ、6 ~9時間で最大 となり、18~24 時間で消失する 4時間から検出さ れ、約14時間で ピークとなる。 そ の後、75~140 時間検出可能 4時間から検出さ れ、約14時間で ピークとなる。 2相性の上昇を 示し約10日間検 出可能 非常に特異的 特異性が高い 特異的でない 相対特異的 相対特異的 想定される用途 抗TNNI3K抗体(ポリ、およびモノクローナル抗体)を用いて、健 常者血清と急性心筋梗塞患者血清を検体としてTNNI3Kの血中濃 度を測定する。 • 本技術の特徴を生かすためには、ELISAキットなどを 製造することで心疾患診断試薬とするメリットが大きい と考えられる。 • 上記以外に、創薬の新規ターゲットとしての開発の効 果が得られることも期待される。 実用化に向けた課題 実現性: 本研究遂行に必要な各種材料と技術をほぼ準備済みである。今後 必要なことはリコンビナント蛋白を用いたポリクローナル及びモノク ローナル抗体の作製、これらを用いたELISA測定系の確立および 患者血中TNNI3Kレベルの測定である。 市場性: 本邦の心筋梗塞を含む心疾患で死亡した患者は死亡率の第二位 を占める。これを標的とした新規病態マーカーを用いた診断薬の開 発は充分な市場性を有する。 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 : MAPキナーゼTNNI3Kを用いた心疾患治療剤 • 出願番号 • 国際出願番号 :特願2006-547812 :PCT/JP2005/021535 • 出願人 • 発明者 :熊本大学 :頼仲 方一、丁 金鳳、孟 憲敏 想定される技術移転 ● 診断・試薬企業 ELISAキットの開発、診断薬の開発 ● 創薬企業 治療剤の開発 抗TNNI3Kポリクローナル抗体を樹立しており、この抗 体を用いることで心筋虚血や心筋梗塞の早期診断を行う ことが可能である。そこで、診断薬開発メーカーなどと連 携し診断キットが開発できれば、心疾患の迅速な診断が 可能になるものと期待できる。 また、創薬メーカーと提携することで、この抗体を用いた 新規ターゲットの治療剤の開発につなげたい。 お問い合わせ先 熊本大学 マーケティング推進部 研究コーディネーター(URA) 荒木 寛幸 住所 E-mail TEL FAX :〒860-8555 熊本市黒髪2丁目39番1号 :hi-araki@jimu.kumamoto-u.ac.jp :096-342-3148 :096-342-3149
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