第7回

Chiba Univ.
Astro. Lab.
天体内部構造論
宇宙物理学Ⅱ−6
核反応の基礎
天体核反応と元素合成
宮路茂樹
大学院理学研究科
miyaji@astro.s.chiba-u.ac.jp
1
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元素
周期表
元素の種類:
113種類
安定核
:
〜270種類
不安定核 :
〜8000種類
共鳴状態 :
〜???
2
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核図表
3
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天体内の核反応
4
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元素合成過程の核反応
基礎方程式
核物理
天体物理
必要な核反応率を実験または理
論的に求め、反応経路と要求さ
れる物理条件を明らかにする。
定量的なモデル計算を行い、観
測と比較する。
5
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核反応
„
強い相互作用の反応
陽子捕獲
¾ 中性子捕獲
¾ 重原子核反応
¾
„
核力の効く距離 〜10−15m
反応の時間尺度 〜10−16〜−22秒
クーロン障壁は大きく(T
〜1010K)、主にトンネル
効果で反応は進む。
弱い相互作用の反応
β崩壊
¾ 電子捕獲
¾
強い相互作用での反応よりも相対
的に遅い。
反応の時間尺度 ≫10−16秒
6
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原子核
原子核の大きさ
„ 質量数:A
„ 電荷:Z
r0 ≈ 1.4 ×10
Coulomb Barrier Vc
V
−13
1/ 3
A cm
Z1 とZ2 の原子核が反応する
際のクーロン障壁の高さは
Potential
Z1Z 2 e 2
Z1Z 2
Vc =
≈ 1.2 1/ 3
MeV
1/ 3
R
( A1 + A2 )
R
r
一方、星の内部の温度は
107−8K〜1−10keV
核反応はトンネル効果で
進行する。
7
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強い相互作用の反応例(捕獲反応)
a+A→B+γ
初期状態 | a+A > から終状態 < f | (B原子核のある状態) へ
2
σ ∝ πλ ⋅ f H a + A ⋅ Pl ( E )
2
a
幾何学的因子
(反応粒子のde
Broglie 波長)
h
h
λ= =
p
2mE
反応 matrix
element
浸入確率:反応粒子が
ターゲット核に達する確率
(反応粒子の角運動量 l
とエネルギー E に依存
1
σ ∝ ⋅ f H a+ A
E
2
⋅ Pl ( E )
8
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角運動量からの制限
反応粒子は軌道角運動量 L を持つ
古典論:
p
d
Momentum p
Impact parameter d
L = pd
(量子論では反応粒子のL は離散的な値を持つ。)
L = l (l + 1) =
ここで
l=0
l=1
l=2
…
s-wave
p-wave
d-wave
wave function の
パリティは: (-1)l
ターゲット核に対する回転運動の角運動量保存は有
限の角運動量に対してエネルギー障壁となる。
9
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角運動量障壁の大きさ
古典論での角運動量 L にたいするエネルギー障壁 E
L2
E=
2mr 2
量子論では
l (l + 1)= 2
Vl =
2 µr 2
µ : 系のreduced mass
クーロン障壁と同様に、核同士が接触する半径で
ピークとなる
Vl [MeV] = 12
l (l + 1)
 A1 A2  1/ 3
( A1 + A21/ 3 )

 A1 + A2 
10
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直接反応例: s-wave neutron capture
Coulomb 力や角運動量の障壁が無い例:
Vl=0
VC=0
低エネルギーでは s-wave での捕獲反応が主となる。
しかし、核のポテンシャルの核種による相違により反射を引き起こす。
入力波
透過波
反射波
Potential
透過の確率は
E
に比例
11
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s波による中性子捕獲反応
Penetrability
Cross section :
7Li(n,γ)
thermal
cross section
<σ>=45.4 mb
Pl ( E ) ∝ E
1
σ∝
E
又は
1
σ∝
v
~1/v
共鳴状態に
よる 1 / v
からのずれ
12
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中性子捕獲に於けるエネルギースキーム
2.063
3/2- + 1/2+
7Li
角運動量とパリティの保存
Ε1 γ
+n
Ε1 γ
0.981
1+
入射粒子
7Li
+n:
l
3/2− + 1/2+ + l(-1) = 1−, 2−
( l=0 for s-wave )
0
2+
8Li
生成粒子
8Li
+γ:
2+ + ? (photon spin/parity)
光子のパリティは角運動量 L (=multiploarity) に依存
electric transition EL parity (-1)L ←起きやすい
magnetic transition ML parity (-1)L+1
結果として、E1(1−)光子が生成される。
13
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天体に於ける反応率 s-wave 中性子捕獲の反応率
1
σ∝
v
なので、
σv = const =< σv >
熱中性子による反応断面積:
反応炉(室温)での中性子捕獲断面積は以下の様に測定されている。
T= 293.6 K (20 0C), kT=25.3 meV
測定された反応断面積は、反応炉で生成された全ての中性子フラックススペクトル
Φ(E ) で積分された量であるので、
σ ( E )Φ ( E )dE
∫
< σ >=
∫ Φ( E )dE
熱中性子のスペクトルは
Φ( E ) = E e
dj
dn
=v
∝ E e − E / kT
dE
dE
−
E
kT
だから
< σ > th
σ (E)E e
∫
=
∫Ee
−
E
kT
−
E
kT
dE
dE
14
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反応断面積と反応率の関係
< σv >=
ここで、 vT
=
2
π
vT < σ > th = vTσ th
2kT
µ
室温の反応炉での値は
( ECM=kT に於ける熱速度)
< σv >
σ th =
< σ > th =
vT
π
2
中性子捕獲反応では角運動量障
壁のみが効くので、浸入確率は
結果として、
σ ∝E
vT=2.20×105 cm/s
これが、「熱反率」として
表になっている。
Pl ( E ) ∝ E 1/ 2+l
l −1 / 2
15
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荷電粒子の直接反応
入射粒子の電荷と質量数を Z1, A1 (陽子や α 粒子など)、標的原子核を Z2 , A2とすると、
1
σ ∝ ⋅ Pl ( E ) ⋅ f H a + A
E
2
荷電粒子反応では、 Coulomb 障壁を考えなければならないから、
Pl ( E ) ∝ e −2πη
ここで、ηはゾンマーフェルトのクー
ロン障壁透過率と呼ばれる量で、s
波のクーロン障壁透過確率を与える
1
σ∝ e
E
b
−
E
η=
µ Z1 Z 2 e 2
2E
=
b = 31.28 ⋅ Z1Z 2 A1/ 2
A1 A2
µ
=
A=
A1 + A2 mU
keV
16
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天文学的Sファクター
1
σ ∝ ⋅ Pl ( E ) ⋅ f H a + A
E
エネルギーに強く依
存する項
1 -b/ E
σ= e
S (E)
E
2
エネルギーにあまり依存
しない項
天文学的 S-factor として、
核反応の実験値から外
挿するのが一般である。
S(E): keV barn
17
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荷電粒子反応例
例:12C(p,γ) cross section
荷電粒子反応は高エネル
ギー実験で求められる。
天体反応は非常に遅い低
エネルギー反応である。
ここの反応
断面積を求
めたい !
18
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S-Factor の外挿
ここの値を外挿する
HからSiまでの安定核に対する荷電粒子反応に対
するS-Factorの値は NACRE compilation として
与えられている (Angulo et al. Nucl. Phys. A 656
1999) 。
19
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荷電粒子に於ける反応断面積: Gamov ピーク
< σv >=
8
πµ
(kT )
−3 / 2
∫ σ (E)E e
−
E
kT
dE =
8
πµ
(kT ) −3 / 2 ∫ S ( E )e
E 
 b
-
+ 
 E kT 
dE
Gamov Peak
マックスウェル分
布の裾野(E ≫
kT )に於ける反
応断面積で、中
性子捕獲の場合
とは異なることに
注意!
20
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ガモフピークのピークエネルギー、幅
ガモフピークはガウス
分布で近似できる
e
ピークエネルギー: E0 、 1/e 幅 ∆E
 bkT 
E0 = 

 2 
3/ 2
(
E 
 b
−
+ 
 E kT 
= 0.12204 Z Z A
2
1
2
2
(
)
1/ 3
≈e
 E − E0 
−

E
∆
/
2


2
T92 / 3 MeV
)
1/ 6 5 / 6
4
2 2
∆E =
E0 kT = 0.23682 Z1 Z 2 A T9 MeV
3
ここで、
b = 31.28 ⋅ Z1Z 2 A1/ 2 keV
A1 A2
µ
=
A=
T9=T [K]/109
A1 + A2 mU
21
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ガモフピークの例:12C(p,γ)13N
反応時の温
度は kT =
2.5 keV
22
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S-factor を用いた核反応率
一般に、ガモフピーク内では S-factor
は一定と近似して反応率を求める。
S(E ) = S(E0)
1/ 3
 Z1 Z 2 
 S ( E0 )[MeV barn] e
N A < σv >= 7.83 ⋅10 
2 
 AT9 
9
1/ 3
 Z12 Z 22 A 

− 4.2487 

T
9


(A : reduced mass number )
S(E) をE =0で展開して2次の項まで求めると、
有効S-factor: Seffは
S eff
S ( E ) = S (0) + ES ' (0) +
1
ES ' ' (0)
2

5
35  1 S ' ' (0)  2 89
S ' (0) 

= S (0) 1 +
+
 E0 + E0 kT 
 E0 + kT  +
36  2 S (0) 
36

 12τ S (0) 
ここで、τ =
3 E0
kT
23
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共鳴状態を経る核反応
„
反応が複合核の幅の狭い共鳴状態を経る時
の核反応の反応断面積は Briet-Wigner の
式で表すことができる。
Γi Γ f
2J +1
σ ( E ) = πλ
2
2
+
2
1
(
2
1
)
J
+
J
( 1 ) 2 ( E − ER ) + ( Γ / 2 )
2
ここで、J1、J2は反応する2つの原子核のスピン、J は複合核
のスピン、ERは共鳴状態のエネルギー、Γ(= Γi+ Γf)は
全幅、Γiは複合核の形成幅、Γfは崩壊幅である。
24
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共鳴状態を経る核反応率
„
マックスウェルーボルツマン分布P(E )は狭い共鳴エネルギー領域では
ゆっくりと変化するので、P(E )中のE をERで置き換えて積分の外に出し、
3/ 2
 ER 
残りを積分すると
−
 2π 
< σ v >= 

 µ kT 
ここで、統計因子
2J +1
ω=
( 2 J1 + 1) (2 J 2 + 1)
h ωγ e
2
 kT 


共鳴の強さ
Γi Γ f
γ=
Γ
共鳴状態がγ線を放出する過程(放射性
捕獲反応)のとき、ガンマ崩壊幅Γγは形
成幅Γiよりはるかに小さい(Γγ≪Γi)。
これは、複合核の形成は強い核力相互作
用で起こるのに比べて、崩壊は弱い電磁
相互作用で起こるからである。このとき、
Γ〜Γγであるから、共鳴強度ωγは小
さなガンマ崩壊幅Γγで決まる。
共鳴強度:ωγ〜ωΓγ
25
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天体での主な原子核反応
„
主系列星では中心で水素
核反応が起きている。
„
主系列星後、中心が十分
に高温、高密度になると3
α反応が起こり、Heから
Cができる。
„
„
„
重い星では一番安定な鉄
に至るまで燃焼反応が起
こる。
鉄の芯がさらに重力収縮
すると、吸熱反応の鉄の
光分解が起こる。
巨星殻燃焼層、超新星爆
発時には中性子捕獲反
応が起こり、重元素が合
成される。
燃焼
過程
(燃料)
主な反応
最終
生
成物
H
ppチェイン
CNOサイクル
4He
He
3α → 12C
12C+α → 16O
12C
C
12C+12C
20Ne
O-Mg
4n核が関わる多くの核反
応
56Ni
Ni
56Ni
56Fe
→ 20Ne+α
→ 24Mg
→ 56Co+e++νe
温度
108K
0.15
0.2
1.5
16O
24Mg
56Fe
7
>15
-
また、宇宙初期には陽子・中性
子衝突による核反応が起こる。
26
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宇宙初期の元素合成(BBN )
9 A few MeV 〜 30keV でおこる
( a few x 0.1 sec 〜
103 sec :自由中性子の寿命)
Z
9 宇宙膨張にともなう密度温度が減少する中での融合反応
9 A = 5,8 のギャップにより、Beより
重い元素は合成されない
A=8
N
A=5
27
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宇宙初期の陽子・中性子比
粒子安定化後の核種平衡
核反応過程
の初期条件
28
Chiba Univ.
Astro. Lab.
星内核反応:水素燃焼過程 : 4H → He
核融合反応:pp-chain
炭素触媒反応:CNO cycle
29
Chiba Univ.
Astro. Lab.
太陽で起きているppチェイン
„
太陽ではppチェインが主
に起きている。
„
太陽モデルで、各ppチェ
インの反応率を求めると、
¾
¾
この中で、最も遅い反
応はp(p,e+νe)2H
なので、この反応率
で全反応の反応率を
近似できる。
CNOサイクルでは
14N(p,γ)15O
30
Chiba Univ.
Astro. Lab.
主系列星の水素燃焼
„
ppチェインとCNOサイクルではZの大きなCNOが寄与
するCNOサイクルの方がクーロン障壁が高く、高温にな
らないと反応しない。しかし、β崩壊でのネックがあるも
のの、CNOサイクルは効き始めると高速になるので、高
温ではCNOサイクルが主になる。
<σv>pp
∝T4
種族Ⅰで1.3Mo
種族Ⅱで約4Mo
<σv>CNO
∝T17
31
Chiba Univ.
Astro. Lab.
太陽ニュートリノの測定
„
„
„
米国サウスダコタ州
の炭坑でDavisらが
初めて測定した。
標準太陽モデルか
ら期待できるニュー
トリノ量の1/3程度
しか検出できなかっ
た。
スーパーカミオカン
デの測定で、Davis
らの値を追認した。
Davisらの
観測対象
SKの観
測対象
Group
単位
実測値
予測値
Homestake
SNU
2.56
8.5
SK
106/cm2/s 2.35
5.79
32
Chiba Univ.
Astro. Lab.
スーパーカミオカンデで太陽νの観測
„
到来方向の観測
„
季節変動の観測
スーパーカミオカンデ
Webページより
33
Chiba Univ.
Astro. Lab.
4
4
4
He燃焼過程 : He + He + He →
12
C
共鳴状態の不定性
中性子生成反応 : s-processに重要
反応率に不定性
34
Chiba Univ.
Astro. Lab.
炭素、ネオン、酸素燃焼
(B2FHの α-process にかわる反応)
z Carbon Burning
z Neon Carbon Burning
z Oxygen Burning
酸素燃焼では、高密度
の場合、電子捕獲が先
行する場合もある。
35
Chiba Univ.
Astro. Lab.
シリコン燃焼と核種平衡(NSE)
z Si Burning
― 28Si + 28Si → 56Ni は起こらない
― Si、S 等の光分解
― 放出された α、p、n による Mg 以上の核の準平衡
Nuclear Statistical Equilibrium (NSE)
― Mg ↔ Ne、C ↔ O、α ↔ C 等が平衡になり、全ての元素が
化学平衡に達する
36
Chiba Univ.
Astro. Lab.
低温・高密度での核反応
„
低温、高密度では背景粒子のクーロン障壁
に対する寄与が無視できない。
スクリーニング
背景電子の寄与
¾ イオン・電子プラズマの寄与
¾ イオン格子(固体)としての寄与
¾
核のクーロン場が軌道電子に遮られる(スク
リーニング)等電子・陽電子の制動輻射の場
合にも効く
37
Chiba Univ.
Astro. Lab.
背景電子によるスクリーニング
一様な背景電子によるスク
リーニング補正(Screening
Enhancement Factor: f)
σws=σ0f(E )
ここで、
f(E )=exp(πηUe/E )
„
反応
Ue [keV]
d+d
0.041
d+3He
0.119
3He+3He
0.293
p+6Li
0.186
p+12C
0.441
Α+12C
0.965
38
Chiba Univ.
Astro. Lab.
プラズマによるスクリーニング
„
„
高密度では、イオンプ
ラズマによるスクリー
ニングも無視できない。
背景イオン(Z2)によ
り、入射粒子(正電
荷)はターゲットに近
づきやすくなる。
クーロンポテンシャルと熱エネルギーの
比がスクリーニングの強度を決めている。
39
Chiba Univ.
Astro. Lab.
プラズマの相関強度
„
クーロンポテンシャルと熱
エネルギーの比:Γによっ
て、相関強度を見積もるこ
とができる。
¾
¾
„
Γ=1:気相と液相の境界
Γ=135−180:液相と固
相の境界
プラズマのデバイ温度TD
程度になると、ガモフピー
クのエネルギーを与える
距離と、粒子間距離の比
が重要となる。
 4π
Γ = Ze 
 3
2
1/ 3

n

1
kT
n はプラズマの個数密度
hν D
TD =
k
40
Chiba Univ.
Astro. Lab.
弱いスクリーニング
„
弱いスクリーニングで
はクーロンポテンシャ
ルVCをデバイポテン
シャルVDで近似でき
る。
Z1Z 2 e 2 − r / RD
VD =
e
r
RD =
kT
4π e 2 ∑ Z i2 nZi
i
„
r≪RD(太陽中心では
RD〜0.022nm)の
とき、UD=VCーVDで
スクリーニングポテン
シャルを定義する。
nZiは電荷Zi種の平
均個数密度
41
Chiba Univ.
Astro. Lab.
弱いスクリーニングのf
„
弱いスクリーニングの
エンハンスメント項fw
はUDから求めること
ができる。
fw = e
(U D / kT )
太陽中心では、e2/RD=14.5/0.22
[eV]=66[eV]だから、7Be(p,γ)8B
反応ではfw〜1.2である。
42
Chiba Univ.
Astro. Lab.
強いスクリーニング
„
強結合プラズマでのス
クリーニング効果は、
プラズマ中のイオンの
2体分布関数をモンテ
カルロ法で数値的に
得て、近似式を求める
必要がある。
詳しくはIchimaru,S.
(1993) Rev. Mod.
Phys. 65, 225.
43
Chiba Univ.
Astro. Lab.
電子・陽電子の制動輻射
„
„
„
電子(陽電子を含む)は、質量が小さいので原子
核のクーロン場で大きな加速を受け、エネルギー
を電磁波として放出する(制動輻射:X線)
核のクーロン場が軌道電子に遮られる(スクリー
ニング)の程度により断面積が異なる。
スクリーニングの効果は、電子の運動エネルギー
で規定される。
¾
¾
電子の運動エネルギーTが小さい時、スクリーニング
は無視できる。
電子の運動エネルギーが大きいとスクリーニングが効
く。
44
Chiba Univ.
Astro. Lab.
ピクノニュークリアー反応
„
固相に於いて、格子
間の距離が十分短く
なっていると、格子振
動の結果核反応が起
こる場合がある。(ピク
ノニュークリアー反応)
„
例え、温度が0度で
あっても、格子の0点
振動で核反応が進む。
白色矮星等の高
密度星内の核反
応で考慮しなけれ
ばならない。
45
Chiba Univ.
Astro. Lab.
核反応率に対する安定性
スクリーニン
グを考慮した
核反応による
エネルギー生
成率と、
ニュートリノ冷
却率の兼ね
合いで、核反
応に対する安
定性が決まる。
C
He
O
Strong
Screening
H
Pycno-nuclear
46
Chiba Univ.
Astro. Lab.
電子捕獲反応
„
低温・高密度では、原子
核の電子捕獲反応が核
燃焼反応に先行すること
がある。(中質量星の進
化に影響)
¾
„
フェルミ順位の高い電子
が捕獲されやすいので、
単に平均分子量が変化す
るだけでなく、発熱にも寄
与する。
Si燃焼後は核種平衡下
で、種々の電子捕獲分
岐が開く。(鉄コアへ至る
進化)
47
Chiba Univ.
Astro. Lab.
中性子捕獲反応
z 鉄より重い元素は中性子捕獲により合成される
• 荷電粒子はクーロンバリアーで反応できない
• エネルギー的に損
• 中性子が存在する環境が必要
z 中性子捕獲とβ崩壊のタイムスケールの大小関係に応じて
二つの合成ルートがある
y β崩壊のほうが速い:s-process
– β崩壊に対して安定な領域の端で元素合成が進む
–
y 中性子捕獲のほうが速い:r-process
– β崩壊に対して不安定な領域で元素合成が進む
–
48
Chiba Univ.
Astro. Lab.
太陽近傍の元素組成とr、s過程元素
太陽近傍組成
核図表
100
82
Z
Stable
Unstable
limit of Tachibana
50
50
126
28
20
82
50
8
8
20 28
-5/s
~ 10
50
0
N
0.0
10
10
10.0
10
100
49
Chiba Univ.
Astro. Lab.
高温でのp捕獲反応
CNOサイクルが高温になると、β崩壊がボ
トルネックになる。
„ 陽子捕獲反応が次々に起こり、早い中性子
捕獲反応の場合同様に、β崩壊が追いつく
(十分早く起こる様になる)まで、陽子捕獲
が進む。
rpプロセス
„
50
Chiba Univ.
Astro. Lab.
星内核反応の問題点
不定性が残る重要な反応率
12
16
― 3α, C(α, γ) O
― Rauscher & Thieleman の標準反応率には
factor 2 の不定性
Rauscher et al. ’00, At. Data Nucl.
Data Tables 75, 1
対流によるミキシング の扱い
― semiconvection, overshooting
低温・高密度での反応率
― 混合元素、液相・固相のスクリーニング
― ピクノ反応の温度依存性
51
Chiba Univ.
Astro. Lab.
ニュートリノ冷却
„
„
星内で生成されるニュートリノは中性子星の場合を除いて、
平均自由行程が星の半径を超えているため、星の内部構
造的には冷却過程として扱えるので、核反応による発熱
過程と同様に評価できる。
核反応に伴うニュートリノ(エネルギー)ロスは、反応によ
る生成エネルギーの中に含め、冷却項としては取り扱わ
ない。
星の進化で主に効くニュートリノ冷却過程には
以下の5つの過程がある。
¾ フォトニュートリノ
¾ 電子対ニュートリノ
¾ プラズマニュートリノ
¾ ニュートリノ制動放射
¾ シンクロトロン放射に伴う
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ニュートリノ冷却とWSG理論
„
ニュートリノ冷却率はWeinbergSalam Grashow 理論(1967)以降、
荷電カレントの寄与で大幅に変わった。
添え字Vはベクト
ル成分、Aは軸性
ベクトル成分
θWはワインバーグ角
ニュートリノのフレイ
バー:n は3
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ニュートリノ冷却過程ー1
¾
フォトニュートリノ
γ+e- → e-+ ν e + ν e
Qphoto(erg cm-3 s-1)
詳しくはItoh et al. 1996,
ApJS.102,411
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ニュートリノ冷却過程ー2
¾ 電子対ニュートリノ
e-+e+ → ν e + ν e
電子対ニュートリノは十
分高温で、放射と電子・
陽電子対の間に熱平衡
が成り立つ(T 〜1MeV)
時、電子・陽電子対が対
消滅する際に発生する。
Qpair(erg cm-3 s-1)
Itoh et al. 1996,
ApJS.102,411
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ニュートリノ冷却過程ー3
¾
プラズマニュートリノ過程
プラズモン → ν e +ν e
プラズマニュートリノ過程では軸
性ベクトル成分の寄与は無視で
きる。しかし、媒質中の電磁波を
量子化したプラズモンには縦波
(Longitudinal)成分と、横波
(Transverse)成分を分けて考
えなければならない。
横波の分散関係は密度
の高い極限で、
ω2=ωp2+k2c2
ωpはプラズマ振動数
エネルギー損失に主に寄与する
のは横波の場合である。
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ニュートリノ冷却過程ー3の続き
¾
プラズマニュートリノ過程
プラズモン → ν e +ν e
|x|>0.7またはy<0ではfxy=1。
他の場合には
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ニュートリノ冷却過程ー4
¾
ニュートリノ制動放射
e− + ( Z , A) → e− + ( Z , A) +ν e +ν e
断面積は光子を放出する普
通の制動放射の断面積に
ニュートリノ放出の確率P を掛
けたものになる。
2
1  Gm c   E 
P= 
 

α  h 3   mc 2 
2
4
制動放射の場合同様にスクリーニングの影響がある。
詳しくは Itoh et al. 1996, ApJS.102,411 参
照のこと
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星の進化の上で重要なニュートリノ冷却過程
„
縮退芯では熱伝導
度が高いので、ほ
ぼ等温になってお
り、中心の高密度
領域でのニュートリ
ノ冷却(プラズマ及
び制動放射)が芯
の温度を決めてい
る。
Itoh, N. et al., ApJS, 1996, 102, 411.
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縮退コアの成長
„
„
コアが縮退すると、
中心部はプラズマ
ニュートリノ過程で
冷やされて行く。
その後の成長はコ
アの大きさだけで
決まり、全質量に
はよらない。
COコア
Heコア
Pacynski; Acta
Astron.(1970)
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