「日本の広告取引に健全な変化を」

「日本の広告取引に健全な変化を」
∼日本メディアアナリシス業協会設立記念講演会レポート∼
『日本の広告業界の生産性、効率、そして透明性の高い取引を目指した、メディア
パフォーマンスの「評価サービス」を浸透させる』ことを使命とする日本メディアアナリ
シス協会(JMAA)が設立(東京都、港区:http://j-maa.or.jp/)され、その設立を記念し
て特別講演会を開催。広告主、広告会社から約100名が参加し、「日本の広告メディ
アにおけるグローバリゼーション」と日本の広告業界の今後について、基調講演と業
界の識者によるディスカッションが行われた。
■協会設立の挨拶
冒頭、代表理事が挨拶、「協会は今後、広告主と広告代理店との第三極として、各企業にとって主要
な投資案件であるメディア取引の透明化、効果評価、資源配分の最適化を第三者の立場でコンサル
テーションすることの重要性の周知と、技術の向上を図る。」(同協会代表理事、村山朗氏)と宣言。
日本の広告取引も、グローバル化は避けられないことから、第三者による客観的な評価への期待は
今後増えていくと、協会では自信を深めている。旧態依然のメディア取引の変化のニーズを感じてい
る多くのプレーヤーは、協会が改革への起爆剤の役割を果たすことを期待している。
■基調講演
協会の設立の背景でもある「グローバリゼーショ
ンが加速する現在、今後の日本の広告業界」とし
て、小泉秀昭立命館大学教授は、米国の事例と
日本の現状を様々な調査結果を交えて紹介した。
米国では相次ぐ企業の不祥事や景気後退から、
監査を行う企業がここ3年で増加傾向、半数を超
える53%に上っているのに対し、日本は広告主の
満足度は高くないにも関わらず、広告主の監査導
入は、「驚くべきほど浸透していない。」という調査
結果を紹介した。
© Japan Media Analysis Association
広告主による監査の位置づけについても、企業
ガバナンスや説明責任(アカウンタビリティ)、コスト管理という経営視点を目的とする米企業に対し、
日本ではまず、広告業務における監査自体されていないことに加えて、投資効率の改善というよりは
調達コストダウンにとどまっている点を指摘、協会が提唱する「第三極」の役割は必然の流れである
ことを明言した。
一方、広告会社に対しても現状を打破する必要性を説いた。コーポレートガバナンスや監査の必要
性が認識されている米国では、他市場で70%のメディア監査をカバーする実績を持つ大手コンサル
ティングファームがメディア監査業務に参入、計量モデル分析も進んでおり、メディアエージェンシー
よりも優れた分析を始めて新しい役割を確立しつつある。また、こうしたプレイヤーは、米国に続いて、
今後中国市場にビジネスを拡大すると予測されている。こうした外的要因の動きを鑑みると、日本の
広告業界の商習慣が説明しにくく複雑で、透明性が確保できずにいれば、日本の広告業界の生産
性、効率、透明性の高い取引を促進する妨げになるだけでなく、日本そのものが取り残される可能
性もあるとし、グローバル化の進む広告業界の今後において大きな役割を果たすのは、マーケティ
ング活動の投資効果(ROI)の「評価サービス」の拡充であると、協会の推進する新基軸を支持する
議論を展開した。
■パネルディスカッション
基調講演に続き、広告主と広告会社によるパネ
ルディッスカッションが行われた。
まず、現状の広告主のメディア購入に対する効
果査定の努力は一定の功を奏しており、「現状の
テレビメディアやオンラインメディアについては、
データもある程度整備されており、グローバル監
査基準上からも概ね悪くないと評価している。」
(20世紀フォックス映画、マーケティング本部部長
富松敬一朗氏)という評価もある一方で、「取引
© Japan Media Analysis Association
自体の不透明性や、メディアデータの整備には
まだ改善の余地がある。」(イー・モバイル㈱執行役員、社長室広告宣伝部長 花岡隆春氏)という指
摘もあった。「(広告メディア費は)大きな投資」(小泉教授)であるため、協会が更なる改善に寄与し
ようとするメディアの「取引の透明性を高める」という広告主の要望に加えて、「今はテレビを軸とした
考えを超え、顧客のオールタッチポイントを重視している」(前掲:富松氏、花岡氏)ことからも、統合
的マーケティング指標や、「生産性、効率の向上」に貢献するコンサルティング機能の強化が求めら
れた。
スターコム・ワールドワイド・ジャパン ディレクター張替且久氏は「業界内にも取引の透明性向上の
機運は高まっている。」とした上で、「メディア最適化のコンサルティングにはクライアントの参加も不
可欠。」という、マーケティング評価指標の標準化プロセス確立には、クライアントと広告会社の協業
を示す方向性が提示された。
■総括
© Japan Media Analysis Association
本講演会では、「日本は米国に比べて広告取引で
の監査業務はおおいに遅れている」(小泉教授)とい
う指摘に加えて、業界識者のディスカッションからも、
「第三者評価に求められる機能は、(1)購買関与の
深い監査と、(2)投資効果を最適化する監査、の二
つの潮流がある。」(同協会理事、秋葉祐輔氏)こと
が明確になった。さらに、各ステークホルダーが業
界全体で、協会が使命とする「生産性、効率、取引
の透明性向上」を目指し、今後の企業の存続に不
可欠なCSRを推進する、「評価サービス」への期待が
共有された。
日本メディアアナリシス協会(JMAA)について: http://j-maa.or.jp/
『日本の広告業界の生産性、効率、そして透明性の高い取引を目指した、メディアパフォーマン
スの「評価サービス」を浸透させる』ことを使命とし、2009年7月に設立(東京、港区)。
理事: 村山朗 ㈱ truestar 代表取締役、秋葉祐輔 ㈱エスピーアイ 代表取締役社長
本講演会に関するお問い合わせ:
日本メディアアナリシス業協会事務局 info@j-maa.or.jp