日本学校薬剤師会 平成20年11月30日発行 第3号 〒160-0004 東京都新宿区四谷3-3-1 ℡03-5368-6141 Fax03-5368-6147 ホームページ 富士・国保連ビル8階 発行責任者 田中俊昭 http://www.nichigakuyaku.orgE-メール info@nichigakuyaku.org 生涯を通じて、心豊かにたくましく 生きる力をはぐくむ健康教育の推進 -心身の健康づくりに自ら取り組む子どもの育成― 日時:平成20年11月6日(木) 会場:新潟市 ホテルオークラ新潟 第 58 回全国学校薬剤師大会が 11 月6日(木)にホテルオークラ新潟で盛大に開催されました。 最初に主催者を代表して日学薬・田中俊昭会長、次いで新潟県学薬・新沢 彰会長による挨拶、引 き続き文部科学大臣代理北垣邦彦健康教育調査官、日薬・児玉 孝会長のご祝辞をいただきました。 その後、恒例の表彰式が行われた。 式典終了後の特別講演では、新潟薬科大学応用生命科学部・及川紀久雄教授による「 「科学の目で 見たおいしい・健康に良い野菜とは」のテーマで豊富な資料とユーモアたっぷりの大変楽しい講演 会であった。以下に簡単な要旨を紹介します。 ※大根、白菜、ホウレン草などの野菜は、硝酸濃度が低いと、おいしい。 その上、よく煮える大根、よく漬かる白菜となる。 ※逆に硝酸濃度が高いと、おいしくない。しかも日持ち(保存性)が悪く、 煮えない大根、なかなか漬からない白菜となる。 ※朝採りがおいしいもの・・・イチゴ、トマトなど。 ※夕採りがおいしいもの・・・枝豆、野菜類(ビタミンC、糖度が豊富) ※野菜は旬のものが栄養豊富で体に良い(ビタミンC、糖度、抗酸化力が 高く、硝酸濃度が低い)。等々についてたくさんの示唆をいただいた。 二日目は、第 58 回全国学校保健研究協議会が 10 の課題に分けて朱鷺メッセで行われた。その 中で学校薬剤師と関係深い第8課題「学校環境衛生」のセッションでは学校環境衛生基準からの学 校環境衛生の活動について小・中・高校の代表者により創意工夫した方法が紹介された。特に新潟 市立松浜中学校では学校薬剤師と養護教諭が密なるスクラムを組んで「学校環境衛生検査の結果を 活用した保健学習」の授業に生かした内容は生徒達の活発な活動が印象的であった。また、秋田県 立秋田北高校でも良好な学校環境を保つためには学校側と学校薬剤師の連携した活動が大切であ ることを強調された。12 時 30 分にはすべての課題が終了し、来年度の広島での再会を約して散会 した。 ブロック会議報告 日本学校薬剤師会では、各ブロック会議で下記の事項について、ご報告させて頂いております。 (※開催日程によって、若干変更があります。 ) 1) 基本方針と組織運営体制 2) 事務局体制と年間計画と予算について 3) 委員会について 4) 「学校保健安全法」について 5) 「くすり教育」教材について ■四国ブロック会議(松山市) 9月7日(日) ※ブロック会議報告より抜粋 <出席者> 香川県4名、徳島県4名、高知県4名、愛媛県7名 日学薬正副会長 <協議内容>・資質向上研修会について ・日本学校保健会等との連携について ・検査項目及び 報酬の格差について ・保健調査書の活用方法と学校に対する報告 ・学校給食室の検査に入 る学校薬剤師の検便検査について ・大腸菌群検査の方法と金額・クスリの教育について ・ 薬学6年制実務実習カリキュラムについて ・スポーツファーマシスト等について ・学校の 備蓄医薬品について ・空気検査について ・ホームページの運営について ■北海道ブロック会議(札幌市) 9月20日(土) ※ブロック会議報告より抜粋 <出席者>北海道学校薬剤師会会長、副会長、常務理事、理事、監事16名、日学薬正副会長 <議題>(1)日本学校薬剤師会について ・新体制の概要 ・年間スケジュールについて ・学 校環境にかかわる法律(基準)等の改正について (2)北海道学校薬剤師会の活動について (3) 意見交換、質疑 ・日本学校薬剤師会の組織のあり方について ・日本学校薬剤師会への要望につ いて ・薬学実務実習生について ・今後の学校薬剤師について ■近畿ブロック会議(京都府) 9月23日(火) 報告者近畿ブロック理事 守谷 まさ子氏 府・県・市合わせて11の団体が一同に会し、和やかな雰囲気で会議された。日学薬からの方針 説明の後、各団体より活動報告、事業計画が発表された。それぞれの団体での共通点として、会員 研修会、新人研修会開催等を通じ、学校薬剤師レベルの均一化とレベル向上を図っておられた。ま た、独自の活動報告には、もっと話が聞いてみたいと思われる内容も多く(学校保健会での発表、 AJ法によるワークショップ、アンチ・ドーピング活動ワークッショップ開催など)近畿ブロック 会議として研修会を開催すべきではないかと感じた。懇親会の席上で、ご意向を伺い、開催方向で 現在調整をしている。活発な意見質問等で、あっという間の3時間でした。 ■北信越ブロック会議(新潟市) 9月27日(土) ※ブロック会議報告より抜粋 <出席者>富山県2名、石川県2名、福井県2名、新潟県9名、日学薬正副会長 <協議内容>・学校安全委員会とは ・新入会者の加入(学校薬剤師)の仕方について <各県の主な活動報告> 富山県―学校薬剤師の会員獲得 石川県―学校保健委員会について 福井県―薬の正しい使い方、薬物乱用防止教室について 学校薬剤師の報酬の調査 新潟県―学 校環境衛生定期検査のマニュアル、薬物管理及び健康教育マニュアルについて 平成20年度 学校環境衛生・薬事衛生研究協議会 趣旨: 学校環境衛生及び薬事 衛生について研究協議を 行い、もって健康教育の 充実を図る。 期日: 平成 20 年 11 月 20 日 (木)・21 日(金) 会場: ウィルあいち (ウィルホール) 講義Ⅰ「学校環境衛生の課題と充実について」 講師 文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課 健康教育企画室健康教育調査官 北垣 邦彦 氏 学校保健法等の一部を改正する法律が、平成 20 年 6 月 18 日公布され、平成 21 年4月1日施行 されます。「学校環境衛生の基準」が完全に実施されていない要因やその対策について十分検討し た上で、現在ガイドラインとして示されている「学校環境衛生の基準」の位置付けをより一層明確 にするために法制度の整備を検討する必要がある。そこで、下記のような点が改定されます。 ① 法律の題名:「学校保健法」⇒「学校保健安全法」 ② 第二条(学校保健安全計画)⇒第五条(学校保健計画の策定等) ※計画を策定し、これを実行しなければならない。 ③ 第三条(学校環境衛生)、第三条の二(学校環境の安全)⇒第六条(学校環境衛生基準) ※文部科学大臣は、学校環境衛生基準を定めるものとする。 ※責務の所在をはっきりした。⇒学校の設置者(校長)及び教育委員会も設置者 になる。 ★来年2月もしくは3月にパブリックコメントがあるそうです。 学校環境衛生に係る現代的な課題として、シックハウス症候群及び化学物質過敏症についてお話 されました。また、農薬・殺虫剤等の使用に際しては、事前の対応(情報公開等)が必要である。 講義Ⅱ「諸外国の薬物乱用防止教育と我が国との比較」 講師 神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授 石川 哲也 氏 アメリカ、イギリス、カナダ(オンタリオ州)、オーストラリアの薬物乱用防止教育についてい ろいろ比較されながらお話されました。 薬物乱用防止教育について強調すべき点は、①ほとんどの若者が薬物を使用していない。②薬物 使用の可能性があるか、ないかという観点で生徒を区別しないこと。③薬物を使用しないというこ とが児童生徒自身の健康・安全のみでなく、地域社会の健康・安全にもつながるものであるという ことです。 特別講演「学校で知ってほしいアレルギーの基礎知識」 講師 藤田保健衛生大学坂文種報徳曾病院 小児科教授 宇理須 厚雄 氏 アレルギー疾患の中で気管支喘息の重症発作や食物アレルギーによるアナフィラキシーは致死 的なこともありうる。学校でこのような症状を呈した児童・生徒を発見した際には迅速な対応が求 められる。 今年の4月に(財)日本学校保健会から「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」 が発刊され、それに沿って学校での気管支喘息の発作時の対応と環境整備のポイント、食物アレル ギーについてはアナフィラキシー時の対応と発症予防のポイントをお話されました。 また、数件事例のご紹介があり、最後にエピペンについての使用上の注意について詳細な説明が ありました。 2日目(11月21日(金)) 2日目の分科会は、①飲料水・プール ②教室環境 ③喫煙、飲酒及び薬物乱用防止教育 ④ 学校保健委員会・学校環境の4つの部会に分かれて、各代表2名の発表に対し、質疑、追加発言、 コメントなど予定時間の3時間では足りないほど熱心な討論が交わされました。①、③、④は昨年 度と同じ名称の部会でしたので、本紙では②(昨年度は学校給食衛生管理部会)を取り上げ簡単に 紹介します。 発表1 教室内二酸化炭素濃度に影響を与える要因について~前橋市立小中学校三年間の調査結 果より~前橋市学薬の伊藤直喜副会長より「検査結果集計Webシステム」の導入で迅速な報告書 の作成、自由な閲覧、参考資料としての活用などが報告された。 発表2 教室の空気環境についてーホルムアルデヒド、NO2、CO2、ダニアレルゲンー三重県薬剤 師会の吉田眞澄副会長より最近話題の項目についての報告と、二酸化炭素測定では全員参加型の出 前授業の紹介があった。二つの発表は、いずれも換気が重要なポイントで、教室は勿論のこと、廊 下の換気の重要性や休憩時間に窓の全開(校内放送で一斉実施すればより効果的)の方向で要約さ れた。また学校薬剤師は検査屋ではなく学校当事者であり、適切な指導と助言の必要性が指摘され ました。 ラジオNIKKEI 学薬アワー「薬学の時間」より(平成20年8月~10月) 8月 「熱中症について」 豊田 良夫副会長 日本では、梅雨明けとともに本格的な夏がやってきます。地球温暖化の影響でしょうか、30℃ を超える厳しい暑さとなる日がたいへん多くなっています。 30℃以上の環境温度のもとでは ヒトは主として 汗によって体温を調節します。 体内に熱がたまり思わぬ事態、熱中症などの症状をひきおこしてしまいます。熱中症は統計的に 25%のヒトが 命を落とすといわれており、決して甘く見てはいけない事故の一つです。 そこで、熱中症を引き起こす外的要因として①気温が高い ②湿度が高い ③日差しが強い ④風 が弱い などがあげられます。 対策として、水分補給ですが、水分の組成として 0.1~0.2%の塩分と糖分を含んだものが有効と いわれています。運動量が多い場合は 糖分を増やすとよいでしょう。一方、長時間運動を続ける 場合には、塩分濃度を少し高めにしておくのがよいでしょう。 9月 「最近の食中毒について」 横田 勝司常務理事 演者は 1996 年から 2007 年までの 12 カ年間を表題とし、厚生労働省の「食中毒統計」から全国 と学校給食の二つを取り上げた。全国の食中毒事件数では①カンピロバクター②サルモネラ③腸炎 ビブリオ④ノロウイルス⑤病原大腸菌の順であった。一方、学校給食においては①ノロウイルス② サルモネラ③病原大腸菌④カンピロバクター・ヒスタミンの順となり、学校給食でも全国と同じ傾 向を示すことが判明した。学校給食の食中毒事件数は全国の約 3%前後と少ないが、一件当たりの 平均患者数は全国の 19 名に対して 307 名と多く 16 倍強であった。 近年、学校給食ではノロウイルスの増加や事故米の問題が起きている。これらの問題解決には「今 日の油断は、明日の悲劇」の教訓と地産地消を活用した「食育」の推進で、より安全・安心で美味 しい学校給食の提供を強く望むところです。 10 月 「ドーピングについて」 畑中 範子常務理事 2003 年、静岡県の「わかふじ国体」におけるドーピング検査が静岡国体より実施され、静岡県 薬剤師会医薬品情報管理センターが関係団体と協力して、 「薬剤師のためのアンチ・ドーピングガ イドブック」を作成するなど、積極的に啓発活動が行われました。翌年には、日本薬剤師会もドー ピング防止活動を開始し、2004 年には埼玉県、2005 年には岡山県、2006 年には兵庫県、2007 年に は秋田県、今年 2008 年は大分県で開催され、地元薬剤師会と薬剤師の先生方が大変活躍されてお ります。来年 2009 年には新潟県、翌年 2010 年には千葉県で開催され準備を始めています。また、 (財)日本アンチ・ドーピング機構では、(社)日本薬剤師会の協力を受け、ドーピング防止規則 や関連するスポーツの知識に精通した薬剤師を養成するための「公認スポーツファーマシスト制 度」を立ち上げることとなりました。 スポーツ界における薬剤師、特に学校薬剤師の役割が広が り、積極的かつ適切な対応が期待されるところとなってきていることから、これに応じるためドー ピング防止に対する知識と理解を日々深める必要があると考えられます。 コラム/真菌について 「真菌」の糸状菌のことを俗称で「カビ」と言われている。酵母、キノコも真菌です。 真菌類は、胞子から菌糸を伸ばし、分枝して栄養体をつくり、気中に菌糸を出し、その先端や側 面から胞子柄を直立し、胞子を実らせる。植物のような葉緑素を持たないが盆栽のようにも見える 微生物です。酸素を好む好気性菌です。ツボカビ類、接合菌類、子のう菌類、担子菌類、不完全菌 類などから構成されている。自然界に分布している真菌類は約 70,000 種と言われている。 生育する条件は、①酸素、②温度、③水分、④栄養分です。適温は 20~28℃で、高温に弱く、 60℃では短時間にて死滅し、相対湿度 75%以上が適した範囲です。食品以外に,カーペット・畳 ・壁・タイル・ガラス面・タイル面,コンクリート面などに付着したホコリ・手アカ・フケ・ダニ の死骸などの有機物を栄養源にしている。発育を止めるには、それらの1つを除けばよいので相対 湿度を高くしない対策が重要となる。 近年アレルギー性疾患が増えてきている。真菌の胞子や代謝産物がアレルギーを起こすアレルゲ ンになることがわかってきている。真菌アレルギー症として、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、ア トピー性皮膚炎、蕁麻疹、アレルギー性結膜炎等がある。 子どもを守ろうコーナー 大麻 先月K大学の学内での大麻密売が発覚したり、W大学では学生が大麻を栽培し、逮捕・起訴され るなど、学生が大麻取締法違反容疑で逮捕される事件が相次いでいます。昨年1年間に全国の警察 が大麻取締法違反容疑で摘発したのは 2,271 人。このうち 10~20 歳代の若者は過去5年で最も多 い 1,570 人(69.2%)。前年より 2.4 ポイント増加、若者に広がる大麻汚染を統計上でも裏付けて いる。警察庁では、最近流行している「レイブ」と呼ばれる野外音楽パーティーが若者の大麻汚染 の新たな温床になっているとみている。また、インターネットでも、大麻汚染拡大の一因になって おり、「大麻はアルコールやたばこより害はない」「大麻は病気にも効く」などといった誤った情 報が氾濫しており、大麻使用の合法化を求めるブログやホームページも多い。 ある雑誌記事によると、繁華街での薬物の売買は、中東系の男性とウインクが合図だそうで、日 本語ですらすら「何がほしい?」「覚せい剤は 0.15g 14,000 円、大麻なら 0.5g 5,000 円」携 帯電話の番号を教えて、違う場所を教えるそうです。 〔大麻常習乱用者の特徴〕大麻には独特の甘いような匂いが、相当長時間衣類などに付着して臭い ます(甘い香りと言われていますが、一種刺激的な強い臭いで、「クサイ」と感じる人もいます)。 従って、乱用者等はこの特徴的な臭いを消すために、ファンを回したり、お香を焚いたりします。 常習的使用者はカラ咳を頻繁にしますし、目が充血していたりします。 一番の目安は著しい行動 パターンの変化が見られるそうです。 (薬物乱用防止「ダメ。ゼッタイ。」ホームページより) お問合せ、ご意見等ございましたら、下記にお願い致します。 日本学校薬剤師会 TEL 03-5368-6141 FAX 03-5368-6147 E メール info@nichigakuyaku.org
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