Flowmaster V7

Flowmaster V7
Experiment機能と応答曲面モデル作成機能
応答曲面(response surface)は実験計画に従ってデータを収集し、応答(response)と因子(factor)の間の
関係を探索する方法です。Flowmaster V7.9.1では従来の Variable Parameter 機能を拡張して、パラメトリック
スタディやラテン方格(Latin Square)を用いた数値実験を計画、自動的に計算を実行するExperiment機能が追加
されました。また数値実験の結果からRBFネットワーク(Radial basis function network)を使用した応答曲面モ
デル(近似関数)を作成し、Cで記述された関数やMatlab/Simulinkで使用可能なS-Functionのソースコードとし
て出力する応答曲面モデル出力機能が追加されました。
更にFlowmaster V7.9.3ではFMU(Functional Mock-up Unit)のコードとして出力することも可能となりま
した。出力した応答曲面モデルによる計算は軽量かつ高速である為、高速応答を必要とするリアルタイムシミュレー
ションや多数の試行計算を必要とする最適化問題の計算などで
エキスパンジョンタンク
利用することが可能です。
Experiment機能
計画できる実験の種類は、パラメトリックスタディ、
ラテン方格およびモンテカルロです。
パラメトリックスタディとラテン方格の実験結果から応
答曲面モデルを作成することができます。
ラジエータ
バイパス
サーモスタット
エンジン
ブロック
キャビン
ヒータ
冷却水ポンプ
エンジン冷却水回路
右上図はエンジン冷却水回路の概略図です。ポンプから圧送された冷却水はエンジンブロックで加熱され、その後
分流し一部はキャビンヒータの熱源として、一部はラジエータで空気と熱交換し冷却そして残りはバイパスを通りダ
イレクトにポンプに戻ります。ラジエータとバイパスの流量はサーモスタットバルブの開度によって変化します。
例として、このシステムに対して因子(入力変数)と応
:因子(入力)
:応答(出力)
答(出力変数)を次のように定め、Flowmasterのネット
ワークモデル(右下)を作成し、数値実験を行うことを考
えます。
[因子]
● エンジンブロック発熱量 [Engine Heat Output]
● ポンプ回転数 [Pump Speed]
● サーモスタットバルブ開度(ラジエータ側)
[Valve Opening]
● ラジエータ風量 [Air Flow Rate]
エンジン冷却水回路のFlowmasterモデル
[応答]
●
エンジンブロック出口水温
●
ラジエータ出口水温
●
ポンプ流量
因子のうちポンプ回転数、エンジンブロック発熱量およ
びラジエータ風量は独立ではなく、車速とともに増大する
ので、ポンプ回転数 500, 1500, 2500, 3500, 4500,
5500, 6500 rpm に対して変化する7水準とします。
サーモスタットバルブ開度は、0.65、0.75、0.85、
0.95 の4水準とします。
そして繰り返し数7×4=28の実験計画(パラメトリッ
クスタディ)を実施します。実験計画の作成及び実行は右
図のような Flowmaster提供のGUIを使用します。
なお計算結果は、XMLファイル形式にも保存可能です。
パラメトリックスタディの実験計画
応答曲面モデル作成機能
RBFネットワーク(radial basis function network)を使用
した応答曲面は、基底関数として動径関数(radial function)を
使用します。Flowmasterでは以下の動径関数から選択可能で
す。
●
Gaussian
●
Duchon’s
●
Hardy’s
●
Inverse MultiQuadric
RBFネットワークを使用した応答曲面は因子に対して応答の
非線形 性が強 い場 合でも、測定 点(Flowmaster による 解析
点)を通るという特徴があります。
Flowmasterでは因子が多数ある場合、それらのうちの2つ
の因子に対する応答曲面を3次元的に表示することができま
す。
右図はエンジン発熱量とラジエータ風量を固定した場合につ
いて、ポンプ回転数とサーモスタットバルブ開度に対するエン
ジンブロック下流の水温を示した応答曲面です。
またFlowmasterには応答曲面の品質を評価するために偏差
(Deviation)を表示する機能も実装されています。
Flowmasterで作成した応答曲面の3D表示
応答曲面の応用
作成した応答曲面モデルは、
●
Cで記述された関数
●
Matlab/Simulinkで使用するS-Function
●
FMU (Functional Mockup Unit)
として出力することができます。
[Cで記述された関数]
引数する関数のソースコードは、因数を示す
配列変数のポインタと応答を示す変数のポインタ
を出力します。そしてユーザープログラムなどから、この関数を呼び出すこ
とができます。
右図はポンプ回転数の増加と共にサーモスタット開度が徐々に増大するよ
うな運転状態を仮定した場合の水温やポンプ流量について、応答曲面を表す
関数を使用したユーザプログラムとFlowmasterの解析結果を比較した結果
です。
1000rpmを除いて両者はよく合致している事が確認でき、応答曲面に
よって解析結果の近似値を容易に得られる事が判ります。
応答曲面とFlowmasterの解析結果の比較
[S-Functionについて]
S-Functionとは、Simulinkの S-Functionブロックにプログラム名を記述することによってSimulinkから呼び出
すことが可能なプログラムです。
[FMU(Functional Mockup Unit)について]
FMI(Functional Mockup Interface)は、異なるツール間でモデル交換や連成シミュレーションを行うために標
準化が進められてきたインターフェースであり、現在は非営利団体の Modelica 協会が仕様を定めています。FMUは
FMIに準拠したモデルであり、Flowmasterではインターフェースを記述したXMLファイルやCで記述されたソース
コードが含むフォルダが出力されます。
これらにより、Matlab/SimulinkやFMIをサポートしたツールでFlowmasterの解析結果を反映したモデルが使用
可能となります。弊社ならびにFlowmasterの開発元である Mentor Graphics社は、今後もこれらの技術に対して
積極的に取り組みます。
科学システム事業部
CAEソリューション営業部
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