数理システム工学科 人と環境にやさしいシステムづくりを目指して システムエンジニアとは、コンピュータシステムだけではなく、工場・プラント、経営システム、 交通システム、環境システムなど様々なシステムの設計・管理に関わるエンジニアを意味します。 複雑化する社会での生産活動、地球環境の変化や大規模災害への対応、無数のセンサや電子機器 からのビッグデータの活用など、シミュレーションや数理的アプローチで大規模システムの設計 や最適化を行うシステムエンジニアのニーズはますます高まっています。 数理システム工学科では、数理モデリング、シミュレーション、最適化などの数理科学の手法、 ネットワーク、アルゴリズムなどのコンピュータ技術、ライフサイクルアセスメントなどの環境 科学の教育により、「人と環境に配慮した最適なシステム」を自ら考えて作成できるエンジニアを 育成します。 教育 数理システム工学科では人と環境に配慮した最適なシステムを自ら考えて作成できるエンジニアの育 成を目標として、以下のような特色あるカリキュラムを用意しています。 三本柱の体系的科目群 システム工学の基礎である情報技術と数理科学、 および環境科学の科目群を体系的に学習 グループ学習を基礎とした実習型科目群 プレゼンテーション能力、コミュニケーション能力、 自ら学ぶ能力、創造性、研究遂行能力を育成 少人数クラス プログラムコンテスト:グループ単位で最適化問題 のアルゴリズムを設計・開発し、性能を競います。 50 人クラスでのきめ細やかな指導 専門教育 カリキュラム シミュレーション・ 1年次 2年次 3年次 確率統計 シミュレーション技法Ⅰ シミュレーション技法Ⅱ 社会モデルとシミュレーション システム工学概論 数理計画 システム最適化 プロジェクトマネジメント グラフ理論 社会システム工学 多変量データ解析 意思決定分析 ソフトウェア品質管理 最適化関連科目 オペレーションズ・リサーチ 4年次 離散最適化 モデリング・ システム基礎数学 数値計算法Ⅰ・Ⅱ リスク分析・ 環境適合設計 環境関連科目 情報技術関連科目 モデリングⅠ・Ⅱ 環境システム工学 リスク分析 コンピュータ入門 データ構造とアルゴリズム コンピュータネットワーク オートマトンと計算理論 プログラミング基礎 情報科学入門 プログラミング応用 計算システム工学 コンピュータアーキテクチャ 情報理論 情報代数及び符号理論 他学科概論 応用数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ プログラムコンテスト システム工学セミナー システム工学応用実習Ⅰ・Ⅱ 卒業研究 その他の基礎・ システム工学セミナー入門 応用的な科目 …体験・実習型科目 インターンシップ 幾何学概論 技術者倫理 代数学概論 ※高等学校教諭一種免許(数学)が取得可能なカリキュラムです。 数理システム工学最前線 ウェブ検索は私たちの生活に欠かせないものとなりました。良い内容のウェブページ は、他の良い内容のページからより多く参照されているものです。そこで、検索エンジ ンは良い検索結果を得るためにウェブページの関係をグラフで保持し、その構造にもと づいて各ページの重要度を推定します。ここで問題となるのはデータの量です。現在ウェ ブには約 60 兆個のページがあるため、重要度を推定するには 60 兆変数の方程式を解く ことになります。この計算時間の削減は大きな課題となっています。 本学科の前原教員は、ウェブグラフをリンク数が非常に多いページと非常に少ないペー ジに分解し、各部分に対して適切な計算方法を適用し、その結果を統合する手法を提案 しました。この手法を使えば従来の 1/2 ∼ 1/3 倍の時間で全ページの重要度を推定でき ます。ここで用いているグラフの分解や方程式の求解は数理システム工学における基本 的なテクニックですが、それらを適切に組み合わせることによって、より効率的なシス テムが実現されています。 ウェブグラフの一部を可視化したもの。 リンクの多いページ(青頂点) の周辺にリンクが少ないページが接続している。 この構造を利用して高速に計算を行います。 グラフの頂点を重要度に従って 大きく表示したもの。 重要なページから多くリンクされる ページほど重要であるとみなします 。 研究 卒業研究では担当教員の指導の下、数理システム工学の応用技術、基礎技術に関する研究を行います。 数理システム工学科を担当する教員は、以下のような研究を行っています。 ※本学科担当教員の一部のみを紹介しています。 安全・安心・快適な 都市水システム 素数ゼミなど生物の進化生態や 地球環境・国際経済の研究 教授 吉村 仁 素数ゼミは米国で 17・13 年の素数周期で 発生する世界で唯一の周期を持つセミで す。この素数ゼミを材料にして生物進化の メカニズムに迫ります。また、絶滅回避の 観点から人間を含む生物の進化メカニズム を考察しています。さらに、国際経済や生 物多様性・地球環境保全など様々な問題に 取り組んでいます。 著書「素数ゼミの 」、「強い者は生き残れ ない」、 「なぜ男は女より多く産まれるのか」 など。 水の安全保障は世界共通の課題です。日本 の都市水システムは輸入資源を利用するこ とで維持されています。このため、都市に おける水利用は、資源の採掘・加工・輸送 に関連する国の環境へ間接的に影響を及ぼ します。私は、空間的、時間的に異なる環 境影響を評価・管理する研究を行っていま す。この成果は上下水道システムをはじめ とする社会基盤設備の長寿命化などの維持 管理計画の環境影響評価へ活用されます。 素数ゼミ ライフサイクル アセスメント 離散最適化アルゴリズムと その応用 車車間無線ネットワークによる 安全運転支援 准教授 安藤和敏 准教授 石原 進 自動車間の無線通信によって事故を防止す るための無線ネットワーク技術に取り組ん でいます。各車両が通知する位置情報に加 え、車載センサやカメラによって他の車両 や歩行者の状況をネットワークによって共 有することで、全ての車両で無線通信が可 能でない場合においても、周辺の状況を細 かく把握して事故を軽減することを目指し ています。複数の無線通信手段を併用する ことで、無線通信路の混雑や電波妨害攻撃 にたいして頑健な制御を実現します。 教授 宮原高志 Alert 協調センシングに よる安全運転支援 グラフは、システムの構成要素間の「つな がりかた」を抽象化した概念であり、工学 的・経済学的問題の多くはグラフ上の最適 化問題としてモデル化されます。私はこの ような最適化問題を解くための高速なアル ゴリズムの開発を目的に研究を行っていま す。最近では特に、画像処理問題から生じ る離散最適化問題に対するアルゴリズム や、ある種の共同プロジェクトにおいて発 生する費用の合理的配分を計算するアルゴ リズムを研究しています。 音声言語処理技術の開発と その応用 大規模数値解析による環境流体 現象の理解・予測・知的制御 人間の知的活動の多くは言葉によるコミュ ニケーション能力に支えられています。こ ういった知的活動を支える人間の高度な音 声言語処理能力の一部をコンピュータで実 現し、知的活動を支援することを目指して います。右図は人間の学習・認識能力を模 擬した数理モデルによって雑音・残響の影 響を受けた音声から話者特徴への変換を獲 得した例です。大規模データから知識を獲 得する機械学習(人工知能)分野と関わっ ており、応用システム開発を行っています。 海洋中での汚染物質の拡がり、強風による 構造物の損傷など、環境問題や自然災害の 多くは流体運動に深く関係します。我々は このような複雑な環境流体現象の解明に数 値シミュレーション技術を活用していま す。数値解析の利点は、現象の核心部分の 切り出し、実験観測では試せない条件設定、 測れないデータの取得が可能な点にありま す。結果を数理的に解析することで、現象 の本質的理解・予測そして知的に制御する ことを目指します。 准教授 甲斐充彦 S+ S- 画像処理問題を 解くために 構成されるグラフ 准教授 横嶋 哲 変換前 変換後 深層学習で獲得した 数理モデルによ る音声特徴の変換 (話者特徴の分布) 数値実験例 :(上)水 中を舞い落ちる金属 片(下)透過性境界 近傍の乱流渦構造 進路 数理システム工学科の卒業生の想定される進路は、情報通信産業をはじめとして、自動車・運輸関連 産業、製造業、サービス業など幅広い分野のシステム設計・開発に関する職種に及びます。前身であ るシステム工学科の卒業生の約半数は大学院修士課程に進学しています。 自動車・運輸関連産業 アイシン・エィ・ダブリュ、アイシン精機、アスモ、小糸製作所、ジヤトコ、スズキ、 デンソー、トヨタ自動車、トヨタ車体、東日本旅客鉄道、西日本旅客鉄道、本田技研工業 など 製造業 日本電気、沖電気工業、スター精密、セイコーエプソン、東芝、浜松ホトニクス、 富士通、三菱電機、矢崎総業など 情報通信産業 エヌ・ティ・ティソフトウェア、カプコン、ソフトバンク、トヨタコミュニケーションシ ステム、野村総合研究所、日立システムズ、日立ソリューションズなど 金融・サービス業 四国銀行、福井銀行など ※本学科は 2013 年度に新設されました。上記のリストは前身であるシステム工学科および大学院修士課程システム工学専攻での 過去 3 年間の実績に基づくものです。 入試 入試情報については、静岡大学入試課による Web ページを確認してください。 http://www.shizuoka.ac.jp/nyushi/ お問い合わせ 〒432-8561 浜松市中区城北 3-5-1 静岡大学工学部 数理システム工学科 Tel: 053-478-1209 E-mail: sec@msys.eng.shizuoka.ac.jp Web: http://www.msys.eng.shizuoka.ac.jp/
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