2015年春号:HR News Letter 2015.04

2015 (平成 27) 年春号
NEWS LETTER global ver.
海外労務版
NEWS LETTER
平澤国際社労士事務所
東京都港区芝公園1-2-4STビル4階
TEL:03-5402-8491/FAX:03-5402-8494
2015 年春号(2015 年 4 月 15 日発刊)
本号の目次
ニュース
中国人事労務コラム
<トップニュース>
中国の春節風景… 5
・在留資格「介護」の創設が盛り込まれた入
管法改正案… 1
海外赴任コラム
海外赴任規程の作成ポイント
(人事部員による現地視察の必要性)… 6
・外国人雇用に関する今後の法改正の見通し
(トップニュースの解説)… 2
外国人雇用コラム
外国人従業員を雇用する際の就業規則
のポイント… 7
・海外派遣者特別加入保険料率が 2015 年
4 月から引き下げ… 3
世界各国の労働法制
・海外赴任者とマイナンバー制度… 3
タイ王国… 8
・中国「企業の人員削減についての規定」に
関する意見募集稿が公布される… 4
<トップニュース>
在留資格「介護」の創設が盛り込まれた入管法改正案
2015 年 3 月、出入国管理及び難民認定法(通称:入管法)の一部を改正する法律案が国会に提出され
ました。今回の改正案においては、日本で介護福祉士の国家資格を取得した外国人が日本で継続的に
就業ができるよう、新たな在留資格として「介護」の創設が盛り込まれています。
この法改正の背景には、介護分野における人材不足の課題があります。高齢化に伴い、介護サービス
を必要とする利用者は増加の一途を辿っており、団塊の世代が 75 歳以上となる 2025 年度には、約 248
万人の介護人材が必要になると見込まれています。それに対して、現状のまま何ら手立てを講じなければ
約 33 万人もの人材不足が生じるとの推計がされています。そのため、介護人材不足を外国人を活用する
ことによって解消しようという狙いがあります。
現在は経済連携協定(EPA)の枠組み以外では、介護従事者としての入国・在留ができないところ、こ
の改正法案が成立すれば、介護福祉士の資格を有した上で、実際に介護または介護の指導を行う業務
に従事する外国人について、在留が認められることとなります。
<参考リンク>
法務省「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案」
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri05_00010.html
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2015(平成 27) 年春号
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外国人雇用に関する今後の法改正の見通し
(トップニュースの解説)
トップニュースで紹介した「介護」の在留資格創設以外にも、今後、外国人雇用に関する様々な法改正
が予定されていますので、以下ではそれらを紹介します。まだ、国会への法案提出段階で、未決定のもの
もありますが、今後の動向に注目しておきたいところです。
(1)高度外国人材の受入れの促進【2015 年 4 月 1 日施行】
高度外国人材のための新たな在留資格「高度専門職第1号」「高度専門職第2号」の在留資格を
創設し、活動の制限を大幅に緩和するなどの制度が導入されます。
(2)在留資格の改正【2015 年 4 月 1 日施行】
○在留資格「投資・経営」を「経営・管理」が改正されます。
企業の経営・管理活動に従事する外国人の受入れを促進するため、現在、外資系企業におけ
る経営・管理活動に限られている「投資・経営」に日系企業における経営・管理活動が追加されます。
○在留資格「技術」・「人文知識・国際業務」が一本化されます。
専門的・技術的分野における外国人の受入れに関する企業等のニーズに柔軟に対応するため、
業務に要する知識等の区分(文系・理系)に基づく「人文知識・国際業務」と「技術」の区分を廃止し、
包括的な在留資格として「技術・人文知識・国際業務」が創設されます。
(3)外国人技能実習制度の受入れ期間を 5 年に延長【2016 年 3 月 31 日までに施行予定】
優良な実習実施者・監理団体に限定して、第 3 号技能実習生の受入れ(4~5 年目の技能実習の
実施)を可能とすることで、受入れ期間が現行の最長 3 年から最長 5 年に延長されます。
(4)技能実習制度の適正化と外国人技能実習機構の創設【2016 年 3 月 31 日までに施行予定】
技能実習制度については、基本方針を策定し、以下の改正を行うことで適正化を図ることとされて
います。また、それらの事務を行う「外国人技能実習機構」という認可法人が新設されます。
○技能実習生ごとに作成する技能実習計画を認定制とする。
○実習実施者について、届出制とする。
○監理団体について、許可制とする。
○技能実習生に対する人権侵害行為等について、禁止規定および罰則を設ける。 等
(5)偽装滞在者対策の強化【本国会に改正案提出。公布の日から 3 ヶ月以内に施行予定】
在留資格の不正取得をする者(いわゆる偽装滞在者)の問題に対応するため、入管法の罰則の
整備、在留資格取消事由の拡充等の措置が講じられます。
○偽りその他不正の手段により上陸許可や在留資格変更許可等を受けた場合の罰則を整備する。
○営利目的で上記の行為の実行を容易にした場合の罰則を整備する。
○在留資格取消事由の拡充として、「活動を行っておらず、かつ、他の活動を行いまたは行おうとし
て在留している場合」も取消事由とする。
参考:法務省ホームページ等
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2015 (平成 27) 年春号
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海外派遣者特別加入保険料率が 2015 年 4 月から引き下げ
従業員が業務中にけがなどをした場合には、日本国内であれば、労働者災害補償保険(以下、「労災保
険」)の適用があり治療費などの給付が受けられますが、海外出向者の場合は、日本の法律である労災保
険法の適用が及ばず、その適用が受けられません。そこで労災保険では、海外出向者が特別に労災保険
に加入し、給付の適用を受けることができる「海外派遣者の特別加入制度」を設けています。
この制度を利用して特別加入する場合の保険料は、その者の年収に応じて決まる給付基礎日額(労務
不能となり給付を受ける際の日額)と海外派遣者の特別加入に係る「第 3 種特別加入保険料率」によって
決定されますが、今回、この保険料率が 2015 年 4 月 1 日に 2014 年度の 4/1,000 から 3/1,000 へ引き下
げられています。
例えば、給付基礎日額が上限である 25,000 円の者であれば、年間の保険料は、36,500 円から 27,375
円へと 9,125 円安くなりますので、海外出向者がいる企業にとっては嬉しい改正といえます。
<参考リンク>
厚生労働省「第二種及び第三種特別加入保険料率表」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/dl/kanyu_01-01.pdf
海外赴任者とマイナンバー制度
社会保障・税番号制度(通称:マイナンバー制度)とは、国民一人ひとりに 1 人 1 番号のマイナンバー
(個人番号)を指定することで、行政手続の効率化や国民の利便性を向上しようとする新たな制度です。
2015 年 10 月以降、住民票を有するすべての者に対して、マイナンバーが「通知カード」により通知され、
2016 年 1 月より社会保障、税、災害対策の分野で利用が開始されます。
マイナンバーは、住民票の情報を基礎として指定されますが、海外赴任者や外国籍の従業員について
は、以下のような取扱いがされますので、留意しておきましょう。
対象
マイナンバーの取扱い
海外赴任者の
マイナンバー
通常、海外赴任者は住民票を日本国内に残しておくと住民税の支払いが生じる
ため、住民票を残すということはしないため、2015 年 10 月以前より海外赴任し、
住民票がない場合には、マイナンバーが付与されません。しかし、健康保険や厚
生年金保険に継続して加入している場合には、算定基礎届など社会保険の各
種手続において、マイナンバーの記載を求められることになります。その場合、
管轄の行政官庁の指示に従って対応する必要があります。
帰任後の
マイナンバー
原則として、一度付与されたマイナンバーは生涯変わりませんので、海外赴任時
に住民票を除票しても、海外赴任が終了し日本に再入国すれば、以前と同様の
マイナンバーを再び利用することとなります。また、2015 年 10 月以前に既に海外
赴任をしており、マイナンバーの付与がない場合は、帰任し国内で住民票を作
成したときに初めてマイナンバーの付与が行われます。
外国籍の従業員の
マイナンバー
日本で就労する外国籍の従業員については、日本に住民票があれば、日本人
と同様にマイナンバーが付与されます。
<参考リンク>
内閣官房「社会保障・税番号制度」
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/
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2015(平成 27) 年春号
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中国「企業の人員削減についての規定」に関する
意見募集稿が公布される
先般、中国において、「企業の人員削減についての規定」に関する意見募集稿が公布され、政府関係
部門、ならびに企業団体に向け意見が求められることとなりました。公布された意見募集稿の規定によれ
ば、企業組織における勤続年数が満 15 年以上であり、かつ法定の定年年齢まで 5 年未満である従業員
について、企業は人員削減を目的としてその従業員を解雇してはならないとされています。企業がこの「企
業の人員削減についての規定」や「労働契約法」等の法律に違反して人員削減を行った場合には、「労働
保障監察条例」に従って企業に対し、罰則を課すことができるとしています。
それ以外に意見募集稿では、以下の場合、企業はその従業員を人員削減の対象としてはならないと定
めています。
(1)職業病を発症する恐れのある危険作業に従事している従業員が離職前、職業病を専門とした健康
診断を実施せず離職した場合
(2)職業病の疑いがあって治療または経過観察期間中である場合
(3)企業で職業病を発症または労災により負傷し、全部あるいは一部の労働能力を喪失していると判断
された場合
(4)罹病または労災以外の負傷により規定の治療期間中である場合
(5)女性従業員が妊娠、産休、授乳期間中である場合
また、人員を 20 名以上削減し、または 20 名に満たなくとも従業員総数の 10 分の1以上を削減する必
要がある場合には、「企業の人員削減についての規定」を適用することができるとしています。
また、企業は以下の場合についても人員を削減することができます。
(1)企業破産法の規定に基づいて再編を実施した場合
(2)生産経営に重大な困難が発生した場合
(3)企業の生産転換、重大な技術革新または経営方式の調整により、労働契約を変更してもなお人
員を削減する必要がある場合
(4)「労働契約を締結する際に前提としたその他の客観的な経済状況に重大な変化が生じたことによ
り、労働契約が履行できない場合
しかし一方では、企業が人員を削減する必要がある場合には、人員削減を実施する前に労働組合また
は従業員の代表と協議を経て、できるだけ人員削減の人数を減らすように措置を講じる義務があるとして
います。措置を講じてもなお人員削減を実施する必要がある場合には、30 日前までに当該企業の労働組
合または従業員全体に状況を説明しなければなりません。人員削減案が確定されたときには、企業が現
地人力資源社会保障行政部門へ減員報告書を書面により提出しなければならないと「企業の人員削減に
ついての規定」では定められています。
出所:2015 年 1 月 1 日「解放網」 訳:プレシード
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2015 (平成 27) 年春号
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中国人事労務コラム
中国の春節風景
日本では「旧正月」と呼んだ方が馴染みが深い
ですが、中国の「春節」は、大陸のみならず、香港、
台湾、シンガポール等の中華圏では一斉に賑わう
年中行事の中でも最大のイベントです。春節はグ
レゴリオ暦で数えますので、毎年日にちが変わっ
ていくのですが、2015 年は 2 月 19 日からの 3 日
間で、18 日は除夕(大晦日)となります。一般的な
慣習として、大晦日から 1 週間、企業や公共機関、
学校は休みになります。
ぜひ一度機会を作って中国の春節を体験して
みてください。大晦日の午後 7 時を過ぎたあたりか
ら、遠くの方で花火の上がる音が聞こえ始め、時間
の経過とともにその音が次第に大きくなり、打ち上
げられる花火の数も徐々に増えていきます。日付
が変わり、春節初日を向かえる午前 0 時前からは、
市内の至るところで数百発の花火が息をつく暇も
なく演舞し、加えて連発される爆竹の音が街のす
べての音を掻き消してしまうほど、空全体を花火と
爆竹の音と煙、閃光で真っ白にさせるのです。マ
ンションのベランダからこの光景を眺めていると、
否が応にも中国の爆発的なエネルギーを感じずに
はいられません。春節は中国人がもっとも大切にし
ている日なのです。
このように、春節自体は中国の伝統行事として
大変おめでたい話ではあるのですが、一方で企業
にとっては何人戻って来ないか戦々恐々とする祝
日でもあるのです。
上海では 2014 年の年末に、代表的な観光地で
ある外灘で 36 人もの方が犠牲となる痛ましい事故
が起こりました。現場となった階段もなだらかに作
ってあり、あのような大きな事故が発生してしまうと
は常識では考えられないようなところです。よほど
人が殺到してしまったのでしょう。
年末よりも遥かに賑わう中国の春節。もしくは多
数の人が集まるようなイベント。あのような事故が起
こってしまった以上、当面多数の群集が押し寄せ
るような行事は自粛されることになるでしょう。
このような春節の時に大変なのは地方から都市
部に働きに来ている人たちです。故郷へ帰省する
切符は、飛行機は言うに及ばず、列車ですら座席
が取れなくなってしまいます。そのため、皆が切符
の発売日を待って、駅や街中の発券場に長い行
列を作り、3 時間も 4 時間も切符購入を待つ光景も
ひとつの風物詩となっています。企業で働く従業
員でも春節の数日前から切符の購入のために出
かけていきます。駐在員もその事情はよくわかって
いるので、その涙ぐましい努力を見ているとさすが
に同情してしまい、年次有給休暇でもなく、特別に
休暇を許してしまうこともあるようです。
平澤国際社労士事務所
ところがこの春節、ひとつ問題なのは、1 週間の
休暇が終わっても職場に戻ってこなくなる従業員
が少なからずいるということです。おそらく実家近く
で新しい職場を見つけたか、今よりも給料の高い
企業に勤めたか、いずれかが原因だとは思います
が、中にはワーカーの 4 割も戻って来ない企業も
あったりして、状況によっては企業にとっての死活
問題にもなりかねません。慣習として、中国ではボ
ーナスを春節の前に支給するケースが多いのです
が、企業の工夫として春節前にボーナスの半分を
出し、春節明けに出社したら残りの半分を出すとい
うことにしている企業もあります。
(執筆:プレシード 中国人事労務コンサルタント 清原学)
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海外赴任コラム
海外赴任規程の作成ポイント
(人事部員による現地視察の必要性)
海外赴任者に対してのルールは、一般的には
海外赴任規程等によって整備していくことになりま
す。そして多くの企業が自社のルールをまとめて
規程としていますが、残念ながら他社のルールを
そのまま転用しているケースが散見されます。他社
のルールを転用していると、実際に自社でトラブル
が発生した際に規程のルールを適用することがで
きない、あるいは実態との大きな乖離が生じること
があります。特にこうした事態は、比較的しっかりと
整備されている大企業の規程をそのまま転用して
いる中小企業において多くみられます。例えば、
現地において白タク利用の禁止ということをルール
として定めたとしても、中国の一部の地域において
は白タクが声を掛けてくることでその白タクに乗車
しないようにといった禁止ルールを用意できますが、
他国を見渡すと、そもそも乗り合いの小さな軽トラッ
クを改造したようなバス網が発達していたり、バイク
タクシーが普及しているような国や地域もあり、白タ
クそのものに乗ること事態がまず考えられないよう
なこともあるのです。したがって、そうした地域への
赴任ということであれば、白タク使用の禁止ではな
く、交通事故に海外赴任者が巻き込まれることがな
いように、バイクタクシーの利用禁止といったように
現地に則して、また自社の考えを盛り込んだルー
ルにするべきでないかと考えられます。
このように他社の規程をそのまま転用すると、自
社の実態とまったく整合性が取れないということが
生じるのみならず、強制力としての規程の効力を
弱めてしまうことに繋がります。規律を正す、あるい
はトラブルを予防する目的の規程がこうした状態で
は意味がないこともあり得るため、自社が実際に進
出をしている地域の実情に合わせてルールを整備
していかなければなりません。
そのためには、海外赴任者に管理のすべてを
任せるのではなく、企業の管理部門や人事労務の
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担当者が実際に現地に足を運び、数日でもよいの
で海外赴任者と同じ環境(例/通勤等)に身を置
いてみることが重要です。そして、日本と違う環境
の中で何が違うのかという点について肌身を持っ
て感じてもらい、それをルール化することによって、
より企業独自のルールとして考えることができ、将
来に向けた混乱防止にも繋がることが期待できま
す。
さらには、一度策定をした海外赴任規程につい
ては、少なくとも数年に 1 度は全面的に見直すこと
も重要です。特にアジア地域では、物価水準が大
きく変わっている可能性が高く、また安全面も大幅
に改善されていることもあり得るため、かつて策定
をしたルールが現状とまったく合わないということが
よくあります。ルールの未改定によって物価水準が
上昇している中で旧来の水準を適用していれば、
海外赴任者の不満が蓄積し、現場を知らない本社
との間に溝が生じることも考えられなくもありません。
そのため、人事労務の担当者こそが現地に足を運
び、刻々と変わる現地のルールに合わせて、海外
赴任規程も改正を重ねていく必要があるでしょう。
2015 (平成 27) 年春号
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外国人雇用コラム
外国人従業員を雇用する際の就業規則のポイント
就業規則の内容がわからないこともあります。そこ
で、例えば、母国語で書かれた就業規則を作成し
たり、内容の説明を行う際には通訳立会いのもと
で行うなど、日本人を相手にするよりも就業規則
の周知徹底に特に配慮することが必要です。中で
も、賃金から何が控除されるのか、どのような休暇
があるのか、どのような服務規律があるのか、とい
った点は国によって大きな異なりがあるため、認識
の違いによるトラブルが起きやすいものですから、
あらかじめ十分に説明を行うことが必要です。後
になって「知りません」と言われないように、場合に
よっては、就業規則の内容を確認した旨の文書に
署名をもらっておくことも一考です。
今回は、外国人従業員を雇用する際に、気を
つけておきたい就業規則のポイントについてご紹
介します。
1.就業規則の対象範囲
常時 10 人以上の従業員を使用する事業場で
は、就業規則を作成しなければなりません(労働
基準法第 89 条)。就業規則とは、職場の就業ル
ールや労働条件を定めたものであり、事業主から
すれば、職場の秩序維持や画一的な労務管理を
行うために欠かせないものです。また従業員にと
っては、就業ルールや労働条件が明らかにされて
いることが安心して働ける職場の条件となるでしょ
う。
就業規則の作成に当たって、まず注意しておき
たいのは、対象者の範囲です。就業規則は、通常、
その事業場の全員が適用を受けますが、例えば、
パートタイマー、アルバイト、嘱託従業員等、異な
った雇用形態の者がいる場合には、一部の雇用
形態の者のみに適用される別個の就業規則を作
成することは差し支えありません。ただ、その場合
に気をつけておかなければならないのは、賃金や
労働時間等の労働条件について、従業員の国籍
等を理由として、差別的な取扱いをしてはならな
いということです。したがって、「外国人従業員用
就業規則」といったような、外国人であることを理
由とする適用区分を設け、差別をするような就業
規則の作成はできません。
2.外国人従業員への就業規則の周知
就業規則は、常時各作業場の見やすい場所へ
掲示または備え付けるなどの方法によって、従業
員に周知しなければなりません(労働基準法第
106 条)。これは、外国人従業員に対しても例外
なく必要とされます。外国人従業員の場合は、日
本語に堪能でない場合も多く、日本語で書かれた
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3.就業規則の改定
企業が一方的に労働条件を従業員に不利益と
なるように変更することはできず、就業規則の改定
によって変更するには合理性が必要となります。
実務上、労働条件を従業員に不利益に改定しよう
とする場合、従業員に改定の内容を十分に説明し
た上で、一人ずつ個別に同意を得ることをします
が、その説明が朝礼や会議など大勢のいる場で
集合して行われることもあります。しかしながら、日
本語で説明がされただけでは、外国人従業員にと
ってみれば説明がされていないことと同じであると
いうこともありますので、外国人従業員がいる場合
には、その点にも配慮した説明方法を採る必要が
あるでしょう。
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世界各国の労働法制
タイ王国
このコーナーでは毎回 1 つの国を取り上げ、
その国の労働法制について紹介します。
今回は、タイ王国です。
3.雇用契約
1.概況
国
名:タイ王国
面
積:513,115 平方キロメートル(日本の約 1.4 倍)
人
口:6,823 万人(2014 年 4 月時点/出所:IMF)
書面または口頭で雇用契約を締結すればよい
こととなっています。ただ、労働トラブルを避けるた
めには、書面で締結をすることがよいでしょう。
首
都:バンコク
4.就業規則
言
語:タイ語
宗
教:95%が上座部仏教
(Kingdom of Thailand)
10 人以上の従業員がいる場合は、就業規則を
タイ語で用意しなければなりません。またその内容
は少なくとも以下の項目に関する詳細が記載され
ていなければならず、作成した就業規則は従業員
が認知しやすいよう、事業所において公開掲示し
なければなりません。
2.祝祭日
タイの祝祭日は、以下のとおりです。なお、祝祭
日の具体的な日付は毎年異なります。
<2015 年の場合>
(1)勤務日、平常勤務時間、休憩時間
日付
祝日の名称
(2)休日および休業に関する原則
1 月 1 日~2 日
新年
3月4日
万仏節
4月 6日
チャクリ朝記念日
4 月 13 日~15 日
タイ旧正月
(6)規律および規律違反罰則
5月 1日
メーデー
(7)苦情の訴え
5月 5日
国王即位日
6月 1日
仏誕祭
7 月 30 日
三宝節
8 月 12 日
王妃誕生日
(5)欠勤日および欠勤の原則
(8)解雇、解雇補償、特別補償
5.労働時間・休憩時間・休日
10 月 23 日
チュラロンコーン大王祭
12 月 7 日
国王誕生日
12 月 10 日
憲法記念日
12 月 29 日~31 日
年末休暇
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(3)時間外労働および休日勤務の原則
(4)賃金・時間外労働手当・休日勤務手当・
休日時間外労働手当の支払日および場所
労働時間
所定の労働時間は、1 日 8 時間、週 48 時間以
内でなければなりません。
休憩時間
1 日に 5 時間を超えない時間を勤務した後に、
原則として 1 時間以上の休憩時間を設けなければ
なりません。ただし、従業員と合意することで、1 時
間に満たない休憩時間を分割して与えることがで
きます(1 日の合計が 1 時間以上であることは必
要)。なお、休憩時間が 2 時間を超える場合には、
2 時間を超える時間は労働時間として取扱わなけ
ればなりません。
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週休日
原則として、週 1 日以上の週休日の設定が必要
です。また、その週休日は 6 日を超える間隔があ
ってはなりません。なお、そのような規定に従うこと
が難しいホテル業や運輸業など特定の業種につ
いては、従業員と適当な日に休むことを合意でき
るとされています。
祝祭日
慣習による休日は、先述(前頁)のメーデーを含
め 1 年につき 13 日以上の設定が必要です。
6.割増賃金
各種割増賃金は、以下のとおりです。
割増対象
割増率
時間外
通常時給の 1.5 倍以上
休日
通常時給の 2.0 倍以上
休日時間外
通常時給の 3.0 倍以上
事由
内容
休憩時間
1 日に 4 時間を勤務した後
に、1 時間以上の休憩時間を
設けなければなりません。
深夜労働
22 時から翌朝 6 時の間の労
働は原則禁止です。もし深夜
労働をさせる際には、社会福
祉・労働保護局長の許可証が
必要です。
時間外労働
休日労働
時間外労働・休日労働は禁
止です。
禁止業務
年少者に有害とされる一定の
業務は就業禁止です。
9.女性労働
妊娠中の女性従業員に対しては、以下の取扱
いが必要となります。
※月給者の時給単価は、月給を 30 で割ったものをさらに勤務
日 1 日平均勤務時間数で割ることにより算出します。
なお、時間外労働の総時間数は、月 36 時間
が限度となっています。また、管理職について
は、時間外、休日に関する割増の支払い義務は
ありません。
事由
内容
禁止業務
以下の業務は禁止です。
①22 時から翌朝 6 時の間の労働
②時間外労働
③休日労働
④一定の有害禁止業務
配置替え
医師が以前と同じ業務に就かせ
るべきでないと証明する場合に
は、本人からの要求により、企業
は一次的に業務内容の変更す
る必要がある。
解雇制限
妊娠を事由とする解雇は禁止さ
れています。
7.年次有給休暇
従業員が 1 年以上にわたって継続勤務した際
には、1 年につき 6 日以上の年次有給休暇の付
与が必要です。年次有給休暇は、翌年度へ繰り
越すことができます。
8.年少者
10.定年
年少者の雇用は以下のルールとなっています。
対象者
内容
15 歳未満
雇用が禁止されています。
15 歳以上
18 歳未満
以下の実施が必要です。
①雇入れから 15 日以内に労働
検査官に通知する。
②雇用状況の変更があれば記録
し、事業所に保管する。
③退職から 7 日以内に労働検査
官に通知する。
現状は 60 歳定年です。ただし、現在、引き上げ
が検討されています。
また、15 歳以上 18 歳未満の者には、次の特別
な取扱いが必要となります。
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11.解雇
解雇を行った場合は、下表のとおり、解雇補償
を支払う必要があります。
継続勤務
解雇補償額
しに参加するために休暇を得る権利を有します。
事業主はその休暇期間(ただし、年間 30 日以内)
にわたり勤務日の賃金と同額の賃金を支払う必要
があります。
120 日以上 1 年未満
30 日分以上
その他の欠勤事由
1 年以上 3 年未満
90 日分以上
3 年以上 6 年未満
180 日分以上
6 年以上 10 年未満
240 日分以上
従業員は、法律上認められている以下の事由に
ついて、欠勤権を有していますので、事業主は、
欠勤を認めなければなりません。
10 年以上
300 日分以上
欠勤事由
病
ただし、以下の場合は解雇補償を支払わなう必
要はありません。
(1)職務上の不正または事業主に対する意図的
な過失行為がある場合。
(2)故意に事業主に被害をもたらした場合。
(3)不注意により事業主に重大な被害をもたらし
た場合。
(4)就業規則または規約、あるいは法律、公正に
基づく事業主の命令に違反した場合。または
文書で忠告した事柄を守らなかった場合。ただ
し、事業主が忠告する必要がない程度である
場合を除く。警告書は従業員が過失を犯した
日から 1 年を超えないとき有効とする。
(5)正当な理由なくして、間に休日を挟む挟まな
いは関係なく 3 日間連続して職務を放棄した
場合。
(6)最終判決で禁固刑を受けた場合。ただし過失
罪、軽犯罪を除く。
欠勤権のある内容
欠
病気の場合
不妊手術
不妊手術を行う場合
不可避の用事
就業規則に規程する不可避
の用事がある場合
軍
務
軍務関連法に基づく検査のた
めの徴集、軍事教練、動員演
習の軍務を行う場合
研
修
省令の規定に基づく研修・学
習を理由とする場合
参考:日本貿易振興機構(ジェトロ)ホームページ等
12.各種休暇
法定されている休暇には、以下のようなものがあ
ります。
次号予告
出産休暇
次号(2015 年夏号)は、2015 年 7 月 15 日
発刊予定です。「世界各国の労働法制」の
コーナーでは、韓国を取り上げる予定です。
妊娠した女性従業員は、出産のため 90 日を超
えない範囲で休暇をとる権利があります。なお、45
日間までは、有給休暇とする必要があります。
研修休暇
18 歳未満の児童を児童の生活及び仕事の質を
開発・振興するために、教育機関、政府機関また
は社会福祉・労働保護局長が認めた民間機関が
開催する会議、セミナー、研修、訓練その他の催
平澤国際社労士事務所
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