第 38 号 発行日:H22. 5. 17 こんにちは!栄養科です。 今回は胃切除後の栄養管理で困っていることについてお話させていただきます。当院で胃 を切除した患者様の多くに、著しい体重減少がみられます。これは当院での手術に限ったこ とではないと思われますが、胃切除術を行うと胃がなくなる又は小さくなるため食べられる 量が減少し、体重も減少して当たり前と考えがちです。確かに術後しばらくはある程度は仕 方ありませんが、体重が減り続ける、食欲不振が続くといった場合は、その後の QOL や治 療にも影響を与える可能性があり、何らかの対策をとる必要があります。 「その時は食べられると思ってい 胃切除術を受けられた患者様からは、 たんだけど、食べていたらすぐにお腹一杯になる」といった、小胃症状 と考えられる感想を聞くことはよくあるのですが、 「お腹が空いた感覚が ない」「お腹は空いていないけど、(入院中なので)食事が運ばれてくる から仕方なしに食べている感じ」「(分割食のため)食事に追われてよう だ」といったこともしばしば聞くこともあります。楽しみであるはずの食事が、苦痛に感じ ておられるのかもしれません。 いつも食欲旺盛な筆者や読者の多くの皆様には、お腹が空かないという状況は想像しにく いと思われるのですが、これには根拠があります。その 1 つに、胃を切除することによって、 胃を主な分泌源とするホルモンである「グレリン」が減少することが関係していると考えら れています。グレリンは 1999 年に国立循環器病センター研究所の寒川賢治先生らによって 発見されたホルモンで、脳の摂食中枢に作用して、食欲を増強させる作用があることが分か っています。胃を切除した患者様はこのホルモンの分泌量が減少していることも食欲不振の 原因となり、体重減少を助長させている可能性があります。血中グレリン濃度を経時的に測 定した研究によると、手術後には徐々に元の値に近づいてくるという報告もあります。 このように食欲が低下した患者様に、私たち栄養科として何ができるか考えた時に最も効 果がありそうなのが、患者様の好きなものや、おいしいと思っていただけるものを提供する ことであると思われます。 「おいしい」の基準には個人差があるためなかなか難しいことでは あるのですが、調理スタッフと協力して味はもちろん、見た目にも食欲をそそるような食事 提供ができるよう、よりいっそう努力してまいります。また、著しく食欲が低下しておられ る患者様には嗜好調査を実施して、なるべく嗜好に合ったものを提供させていただきます。 この‘嗜好’に関してお知らせです。胃切除後に提供しております 10 時と 15 時の補食 の内容を 5 月 24 日(月)より変更させていただきます。胃切除後 5 回食の患者様には選択 用紙を配布し、嗜好に合ったものを各自選択していただくようになります。補食には、栄養 補助食品なども選択できるように致しました。詳細は追って連絡させていた だきます。 今回の執筆は北野旭美でした。 引き続き栄養科をよろしくお願いします。
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