特集 最新の放射線治療~臨床応用と課題~ 序説 山下 孝 (公益社団法人 アイソトープ協会 常勤理事) 画像診断の進歩と「がん対策基本法」の施行に後押しされ、放射線治療はその普及と 進歩が著しい。がんを手術で治すだけではなく、がんを放射線治療によっても治す時代が すでにきていることを実感する。進歩している画像診断により、早期に見つけられたがんが、 今までと同じような広範な切除ではなく、切ることなく、身体への侵襲の少ない放射線治療 の恩恵に浴するようにしなければいけない。また、そうしなければ、早期にがんを発見でき るがん検診の受診率の向上にもつながらない。 一方、がんが再発・転移しても根治が期待できる、または副作用が少なく緩和効果が 高い放射線治療があることを画像診断医が周知することは、がん患者さんにとって重要で あり、画像診断医は放射線治療を理解し、関連する医師、患者さんに放射線治療を勧め て欲しいものである。 今回の特集では、多くの施設で行われているエビデンスに基づく治療の代表例として、 非小細胞肺がんについて最近の知見を紹介していただいた。治療法のエビデンスは時代と ともに動くものであり、わが国からも動かしていく必要があるだろう。また、エビデンスがあ たかも固定した考えのように患者さんに示すものではなく、患者さんの希望を優先すべきで あることはいうまでもない。続いて、粒子線治療の最近の話題を2 題取り上げてみた。放 射線腫瘍医すらどんどん進歩し、普及している粒子線治療の現状を理解しているとは言い 難いからである。わが国で始められ、世界に広げている現状を素直に喜び、応援していき たいものである。 進行再発がんの治療は、抗がん剤で行われることが多い。抗がん剤の副作用を考える とき、副作用の少ない放射線治療をより効率的に用いるための放射線増感剤の併用や、 積極的放射線治療は将来の標準治療を目指して行われている試みである。 さいごに、ストロンチウム- 89 内用療法は、骨転移の夢のミサイル療法といわれて導入さ れたにもかかわらず、放射線の内部被ばくを恐れるあまり、厳格な適応が決められ、普及 が進んでいない。2012 年 9 月に行われた厚生労働省の全例調査結果審査完了をもって、 「ス トロンチウム- 89 適正使用マニュアル」の改訂が進められている。骨転移に悩む患者さんの 福音となろう。悪性リンパ腫に用いられるゼバリンも夢のミサイル療法の 1 つである。骨転移 に比べ、症例数は少ないと思われるが、より一層の普及が望まれる。 Vol.44 No.12 987
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