サステナブル投資 ポートフォリオ構築におけるサステナブル投資の意味 2014年2月 サステナビリティのトレンドは経済と投資の市場に影響を与えています。当レポートでは、それがポートフォ リオ構築において何を意味するのかをお示ししています。 急激な人口増加や、経済の不均衡、天然資源の枯渇といった事象は、政府やビジネス、テクノロジーによ る対応を通じて既に市場に変化をもたらしてきており、その結果、新たな投資のテーマが設定され、投資の 意思決定にも影響を及ぼしています。 弊社が2012年に発表したレポート “We need a bigger boat”1では、この問題について深い検証を行って います。サステナビリティに関する主要なリスクは、“Extreme Risk”2という別のレポートにおいても深く検証 しており、そこでは、食料、水、エネルギー危機や地球温暖化などのサステナビリティに関するリスクが、弊 社が考える極端なリスクとしてランキングの上位3位に入っています。 このことはポートフォリオを構築する際に何を意味するのでしょうか。この疑問については、投資の機会とリ スクという側面から検証することが可能です。 【サステナビリティによるリスクと機会】 環境・社会・ガバナンス(ESG)要因と頻繁に言われるサステナビリティの要素は、企業やセクター、または 事業を行っている地域によって、良くも悪くも投資の価値や見通しに影響を与えています3。 投資家は財務面で重要な影響を及ぼすESGリスクを低下させつつ、潜在的な投資機会を利用するために、 多くの戦略を採用することができます。これらの戦略については、次章で述べていきます。 【ESG要因の統合】 一般的な戦略は、運用プロセスの強化とも言えますが、ESG要因を運用プロセスに統合することです。運 用プロセスの枠組みでESG要因を考慮することにより、投資家はこれらの要因が企業の見通しや価値に影 響しているか、或いは今後影響するかについて理解しやすくなります。このアプローチを実施するにあたり、 ポートフォリオ・マネジャーは、追加的な評価手法を探索し、企業やポートフォリオ・レベルでのESGリスク評 価と言ったESG分析を実施することがあります。あるいは、ESG要因がその事業の価値や見通しにどのよ うな影響を与えるかを理解するために、企業の経営陣や他の組織と「目的を持った対話」(エンゲージメント) を行うこともあります。このアプローチを採用することで、新たなレンズを通して企業や、資産クラス、ポート フォリオを評価することができます。このことは非常に大きな一歩であると考えられ、また、運用において欠 かすことはできないことであると弊社は考えています。そのため、より多くの資産運用者がこのアプローチを 採用することを推奨しています。 1 図1:10の代表的なESGテーマ 【リスク調整ポートフォリオ】 ESGリスクに関するデータは、アクティブ、パッシブ両方のポートフォリオに組み合わせることが出来ます。 その結果、ESGのリスクによって、特定のセクターや銘柄がオーバーウェイトやアンダーウェイトとなったポ ートフォリオが構築されます。例えば、資源に特化したセクター(鉱業や、石油、ガス、セメント等)では、ポー トフォリオ・マネジャーは、利益や収益性に影響を及ぼすようなESGリスクが少ない、もしくは軽減できるよう な企業をオーバーウェイトにする可能性があります。また、ポートフォリオ・マネジャーは、負債状況や代替 プロダクトの登場、資源の枯渇により中長期的に魅力を失ってきている業界をアンダーウェイト(もしくは非 保有)とする可能性もあります。 石炭や石油といった化石燃料企業の様な特定の銘柄のバリュエーションは、将来的な二酸化炭素のコスト を考慮すると経済的に非効率なエネルギー備蓄、すなわち「前時代の資産」により大きな影響を受ける可 能性があります。 ポートフォリオ・マネジャーは、サステナビリティに関するリスクの軽減のため、ヘッジ手段を利用することも あります。そのような戦略は、ポートフォリオ・マネジャーが高い確信度を持ち、ベンチマークをあまり意識し ない場合に採用する傾向があります。例えば、特定のESGリスクからネガティブな影響を受けるような銘柄 をショートする一方で、サステナビリティの進展というトレンドから恩恵を受ける銘柄をロングするということ があります。 また、ESG要因の管理が改善している企業に投資する一方で、ESGのパフォーマンスが悪化している企業 を非保有、もしくはショートするといったモメンタムを用いたアプローチを採用することもあります。また、気候 変動からポジティブな影響を受けると考えられる銘柄のバスケットを購入することで、既存のポートフォリオ で気候変動のリスクをオフセットする可能性もあります。 2 【テーマに基づいた投資】 世界が直面するサステナビリティに関する課題に解決策を提供するビジネスには、非常に多くの投資機会 が存在しています。これには、資源効率(エネルギー、食料、水)を高める資源効率化技術の開発・商用化 や、人口増加に対処するための環境面・社会面でのインフラの提供などがあります。テーマに基づく投資は、 未上場、及び上場株式、インフラストラクチャーから不動産まで様々な資産クラスに存在しています。 図2:代表的なESG投資戦略 【結 論】 未来を予想することは、正確な科学そのものとは異なっています。サステナビリティの傾向に関する影響と タイミングは非常に不透明です。世界は、ポートフォリオ構築におけるサステナビリティの影響を理解する第 一歩を踏み出したばかりです。しかし、進化するトレンドに対し、自身の資本を維持するために投資家が講 じることのできる多くの実際的なステップがあることは実際に理解されてきています。不確実性が存在する ことは事実ですが、将来顕在化するリスクを軽減するために投資家が今から準備することが重要だと弊社 は考えています。 3 お問い合わせ: 本レポートに関するご意見・ご質問がございましたら下記までご連絡ください。 タワーズワトソン・インベストメント・サービス株式会社 Eメール: TW.INV.Tokyo.Contacts@towerswatson.com 電話: 03-3581-5937 金融商品取引業者としてのタワーズワトソンについて 1 2 3 商号: タワーズワトソン・インベストメント・サービス株式会社 住所: 〒100-0011 東京都千代田区内幸町 1-1-1 帝国ホテルタワー10F 電話: 03-3581-5937 (代表) 金融商品取引業者: 関東財務局長(金商) 第 2778 号 登録されている取引行為: 金融商品取引法に定める「投資助言・代理業」、「投資運用業」 加入協会: 一般社団法人日本投資顧問業協会 弊社グローバル・サイト towerswatson.com/we-need-a-bigger-boat 同 towerswatson.com/extreme-risk-2013 当レポートの記述は、上場株式の視点から書かれたものですが、未上場株式や債券のような他資産、また、インフラス トラクチャー、不動産、森林、農産物のような実物資産にも同じ原則を適用することが可能です。ヘッジファンドについて も、投資期間が長く、資産の投資テーマがこれらのコア資産クラスの一つ以上を反映している場合には、影響を受ける 可能性もあります。 4
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