2011.4.11 企業行動研究部会 古谷由紀子 買占め・買いだめを考える 1.今まで起きた消費者の買い占め・買いだめ騒動 ①1973(昭和 48)年 10 月 オイルショック<洗剤・トイレットペーパー> ・48 年 11 月、政府は一般企業へ石油 電力の 20%削減、民間へエネルギー 資源の節約 を要請した。 ・国民の間には、モノ不足感が広がり、パニック状態がおきて、買い占め、売り惜しみ などもあって、紙 砂糖 洗剤などの価格が短期間に高騰した。 ・政府やメーカーは品不足を否定し、自粛を求めたが、現実に店頭では品不足で、消費 者の不安をつのらせた。 ②1993(平成 5)年 日本の記録的な冷夏によるコメの凶作<米> ・タイ米の流通 政府は各国に米の緊急輸入の要請を打診し、タイ政府はいち早く応えた。 ③2009 年 5 月 世界中で猛威をふるった新型インフルエンザの流行<マスク> ・インフルエンザ報道が目立ちだした 4 月 26 日頃から売れ出し、品不足に ④2011 年 3 月 11 日 東日本大震災 被災地や首都圏など <水、カップ麺、レトルト食品、乾電池、紙おむつ、トイレットペーパーなど> 【企業の対応】 ・大塚食品 レトルトカレー「通常の数倍の注文が入っている」 「カロリーメイト」や「ソ イジョイ」がフル生産の状態。 ・アサヒ飲料 ミネラルウオーターやお茶製品の供給を当面優先するため、コーヒー飲料 など新商品の発売を見合わせ ・花王 愛媛工場で紙おむつや生理用品の生産ラインをフル稼働に移行。 ・ユニ・チャーム 紙おむつや生理用品を製造する2工場を24時間体制で稼働。 ・王子製紙、日本製紙、大王製紙 トイレットペーパーやティッシュペーパーをフル生産 ・パナソニックや日立マクセル 乾電池の供給力を強化。 パナソニックは国内工場での増産に加え、インドネシアやタイ、中国など海外工場から の輸入も増やし、必要な供給量を確保 ・岩谷産業 被災地でも使えるカセットこんろ用のカセットボンベ増産 2.消費者倫理が問題 ①「環境や社会に配慮した商品・サービスの購入」が問われる ・買占め・買いだめによる他の消費者への不利益(必要な人の商品が届かない)の発生 ②しかし、他に考えるべき視点 ・消費者もリスクマネジメントが必要 消費者も自己や家族の生活を守る必要がある。生命や健康を犠牲にはできない。つまり、 消費者自身のリスクマネジメントとしての買い占め・買いだめを問題だといえるのか。 ⇒問題はリスクが存在しないのに消費者がリスクがあると思い、買いだめや買占めをす ること。消費者が適切なリスクを把握することが必要なのであり、シナモノがないとい う不安感の解消をする必要がある。 ・消費者には「情報の非対称性(情報の格差)」がある 商品の在庫や供給に関する情報は事業者が持っており、消費者は持っていないため、消 費者は適切な選択ができない状況にある。 ⇒消費者が買いだめや買占めをしないようにするためには、消費者に判断のための情報 を提供することが必要。 ③問題解決のために 消費者に適切な情報提供をすることが重要となる。 ・民間の広告ネットワークの AC Japan のテレビ広告など 「買いだめはやめましょう」 「被災地の人の身になって考えましょう」は効果的か。 ⇒これは消費者の倫理に訴える方法である。 1 しかし、リスクがないことが伝えられていないことから効果がない。 商品の在庫がある、商品が生産されている、いつ商品が届くのか、を知らせたうえで、 消費者の倫理に訴えることが必要。 ただ、これにも問題がある。情報を提供する側の信頼性である。信頼されていないと その情報も信頼出来ないことになる。うそをついているのではないかと思われるとせ っかくの情報が信頼されない。しかし、組織や人の信頼性は日頃からの蓄積なので簡 単ではない。 ⇒また、 「買いだめはやめましょう」ということでかえって買いだめを促進させてしまう 場合もある。 告知によって、他の人が買いだめをしていることを知らせることになり、品物が不 足しているのではないかという不安感を生じさせてしまうからである。不完全な情報 提供はかえって市場を混乱させてしまう。 ・事業者の情報提供 有効な情報提供があまり見られなかった。 スーパー等で「・・・おまとめ買いはお控えいただきますようお願いします」くらいか。 商品の供給についての積極的な情報提供はほとんど見られない。 その中で情報提供のあったもの <販売に関する情報> イトーヨーカ堂 2011 年 3 月 24 日 飲料水 2 リットル入りペットボトルを 1 歳未満のお子様をお持ちのお客様へ優先販売を実施 イトーヨーカドーは、2011 年 3 月 23 日(水)に発表されました東京都の「金町浄水場」 から供給されている水道水から乳児向け基準を上回る放射性物質が検出され、乳児への 摂取を控えるよう指導が出ていること等を受けて、1 歳未満のお子様をお持ちのお客様を 対象に飲料水(2 リットル入りペットボトル)を優先販売いたします。 <物流等の情報> 花王・日清製粉・ユニチャームなど ④消費者庁の情報提供 蓮 舫 消 費 者 担 当 大 臣 からの生 活 関 連 物 資 の購 買 に関 するお願 い 平 成 23 年 3月 17 日 1.3月 11 日 に発 生 した東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 において被 災 をされた皆 さんに心 からお見 舞 いを申 し上 げます。 また、救 援 、救 出 に全 力 を挙 げていただいている自 衛 隊 、警 察 、消 防 、海 上 保 安 庁 、そして各 自 治 体 、関 係 各 位 の 本 当 に身 を惜 しまない努 力 に心 から感 謝 を申 し上 げます。 2.今 回 の地 震 の被 害 に関 連 し、食 料 品 など生 活 関 連 物 資 の供 給 についての問 題 が生 じています。 生 活 関 連 物 資 に関 しては、まず被 災 地 への供 給 を最 優 先 に考 えなければなりません。一 刻 も早 く被 災 地 の皆 様 に食 料 品 などが十 分 に届 くよう、官 民 挙 げて最 大 限 の努 力 をしているところです。 3.併 せて、主 として首 都 圏 において、スーパー、コンビニ、商 店 などの店 舗 において品 薄 状 態 になっているという問 題 が発 生 しています。 4.首 都 圏 等 の消 費 者 の皆 様 へのお願 いです。 2 現 在 、首 都 圏 等 への食 料 品 など生 活 関 連 物 資 の供 給 量 は決 して減 少 しておりません。停 電 などの影 響 の大 き い一 部 商 品 を除 き、製 造 メーカー、流 通 業 者 などの皆 様 のご努 力 により、むしろ通 常 時 と同 等 あるいはそれ以 上 の 供 給 が確 保 されています。また、今 後 の供 給 量 も減 少 は見 込 まれていません。 しかしながら、災 害 への不 安 から過 剰 に反 応 し、買 い急 ぎ、買 いだめを行 う消 費 者 が増 えています。このため品 薄 となった店 舗 を見 て、品 切 れに対 する不 安 から更 に過 剰 な購 買 を行 うという悪 循 環 になっています。 例 えば、あるスーパーでは、通 常 時 の 2 倍 程 度 の品 物 を供 給 しているものの、消 費 者 が商 品 によっては普 段 の 10 倍 から 30 倍 ほどもの量 を買 おうとしているため、その需 要 に追 いつかず、品 薄 、品 切 れ状 態 になっていると聞 い ています。(詳 細 は別 添 )現 在 のガソリン供 給 状 況 では、この過 剰 な需 要 を満 たすための配 送 トラック等 が確 保 でき ない、とのことです。 5.首 都 圏 等 の消 費 者 の皆 様 おひとりおひとりに冷 静 な購 買 行 動 をお願 いいたします。生 活 関 連 品 の供 給 が枯 渇 するということは決 してありません。 仮 に不 要 不 急 の購 入 、買 い急 ぎ、買 いだめなどが続 けば、今 最 も物 資 を必 要 としている被 災 地 に向 けての生 活 関 連 物 資 の供 給 に支 障 が生 じる可 能 性 もあります。 消 費 者 の皆 様 の冷 静 な行 動 を、心 からお願 いいたします。 3
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