平成27年2月(2015) 1 (155) 巻頭言 横浜市立大学医学部 がん総合医科学(産婦人科学兼任)教授 宮城 悦子 私が産婦人科医師となった1990年に産婦人科学は、周産期医学、婦人科腫瘍学、生殖・内分泌学の3大分野の中で展開 されていました。しかし、自分が実際に産婦人科専門医となり臨床や研究に従事していくうちに、その主要3分野が互い に極めて密接に関連しあって発展していることを強く感じてまいりました。そして現在は、産婦人科学の中に、女性医 学・女性のヘルスケアという従来の産婦人科学の全てを有機的につなげていく第4の学問分野が加わり、産婦人科学は新 たな展開と発展の様相を呈しています。そのような変化の中で、神奈川産科婦人科学会誌に投稿される論文にも、女性 医学・女性のヘルスケアに関係した論文が増えていることは、若手産婦人科医師の診療の視点が多角化していることを 象徴していると思われ、若手医師の研鑽が県内の産婦人科医療水準を高まることに貢献していくものと。大きな期待を 寄せています。 一方、少子化対策や女性の社会での活躍のために産婦人科医師の果たす役割が重要性を増す中で、初期研修の産婦人 科必修中止以降の産婦人科後期研修医の減少傾向を大変に危惧しています。2000年代前半に加速した病院勤務の産婦人 科医師の離脱と周産期医療の危機的状況と女性医師の増加に対して、日本産科婦人科学会と各地方部会、医会などの医 師団体と行政は団結し、様々な対策を講じてきました。特に男女共同参画の課題に関して、2006年に産婦人科医師不足 が顕著になる中、日本産科婦人科学会は他の学会や国の動きよりはるかに先行し、 「女性医師の継続的就労支援のための 委員会」を設置し、現在その委員会は男女共同参画を推進する委員会へと発展しています。また、産婦人科医師の卒後 就労状況の調査では、医師側・行政側からの多角的方策により、若手産婦人科女性医師が卒後11年目に分娩を扱う施設 で就労している率は2006年調査の46%から2013年調査の66%へと上昇し、継続的就労意欲や専門性の高い仕事への意欲 も高まっていることが明らかになっています。女性医師が働きやすい職場環境は男性医師にとっての労働環境の改善に もつながっていることも多くの産婦人科医師が感じていることだと思います。また、日本の女性全体の継続的就労と社 会的役割への責任感を培うための一貫した教育は、義務教育から高等教育を通じてなされるべきであり、そのためには イクメンに象徴されるような男性の意識変革も欠かせないということがクローズアップされています。そのような現在 の日本の中で、われわれ産婦人科医師集団は、まさに男女共同参画のモデルケースとも言えると確信しています。とは 言うのもの、一旦上昇に転じた産婦人科を志望する医師数が再び減少傾向にあることを食い止めるには、さらなる取り 組みが不可欠であり、新たな専門医制度の導入の中で、神奈川産科婦人科学会と神奈川県産科婦人科医会が一致団結し ている神奈川県の強みを生かして行く必要があります。また、施設間や地域間の較差など取り組むべき課題も多く残さ れていると考えます。 さて、私自身は横浜市立大学産婦人科で平原史樹主任教授のご指導のもと、婦人科腫瘍学を専門としてきましたが、 2008年に横浜市立大学附属病院化学療法センター長に就任し、病院全体の化学療法のマネージメントや全科領域の化学 療法について新たに多くのことを学び、婦人科腫瘍学におけるこれからのがん化学療法についても多角的な視野を持つ ことができました。今回横浜市大に新設されたがん総合医科学では、臨床と研究を統合し最先端のバーチャルながんセ ンターを構築するというミッションを担うことになり、さらなる婦人科腫瘍学の発展に寄与したいとの思いを強くし、 新たにプロジェクトに取り組んでいる毎日です。そして、産婦人科学の素晴らしさを1人でも多くの医学生や研修医に伝 えていくこともまた使命であると思いながら、神奈川産科婦人科学会の皆様とともに前進してまいる所存です。今後と も、ご指導ご鞭撻の程、何卒よろしくお願い申し上げます。 2 (156) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 月経随伴性気胸に対し再発予防に苦慮した1例 A case report about difficult prevention of recurrence after treatment for catamenial pneumothorax 横須賀共済病院産婦人科 Department of Obsterics and Gynecolgy of Yokosuka Mutual Aid Hospital 寺西 絵梨 Eri TERANISHI 松永 竜也 Tatsuya MATSUNAGA 小祝 千夏 Chinatsu KOIWAI 大沼 えみ Emi OHNUMA 瀬川 恵子 Keiko SEGAWA 松c結花里 Yukari MATSUZAKI 永田 亮 Ryo NAGATA 納田 容子 Yoko NOHDA 野村 可之 Yoshiyuki NOMURA 小林 有紀 Yuki KOBAYASHI 杉浦 賢 Ken SUGIURA 概 要 月経随伴性気胸は月経に伴って繰り返し気胸が発症す る疾患である。今回我々は胸腔鏡所見と病理組織学所見 から稀少部位子宮内膜症と診断した症例に対して再発予 防に苦慮し、GnRH アナログ療法施行後ジエノゲスト投与 を行う、sequential 療法を応用した。月経随伴性気胸は、 複数の仮説に基づき考えると、子宮内膜症よりわずかな 病巣の再燃が症状の再発(気胸)を来しやすいと考えら れ、より慎重な再発予防治療が望まれる。外科的に病巣 摘出がされていない症例や、ジエノゲスト投与中に再発 したなど、再発が強く危惧される症例には、骨密度を鑑 みながら GnRH アナログ療法を6コースに延長することも 提案できると考えた。 Key words:Catamenial pneumothorax, Thoracic endometriosis, Recurrence, Dienogest, GnRHagonist 緒 言 月経随伴性気胸は月経に伴って気胸を繰り返す疾患で ある。呼吸器科や産婦人科など、診断や治療に携わる診 療科は施設によって異なることもあり、標準的再発予防 治療は確立されていない。胸腔鏡所見と病理組織学所見 から稀少部位子宮内膜症と診断した症例に対し GnRH ア ナログ療法とジエノゲストの特徴を活かしたホルモン治 療を行った。この症例を通し、再発予防を目的とした薬 物療法の選択について文献的考察を加え、報告する。 症 例 43 歳、身長 150 cm、体重 40 kg、3 回経妊 3 回経産の女 性、既往歴として 38 歳時左自然気胸、42 歳時右自然気胸 があった。42歳時は月経6日目の発症であった。今回体動 時呼吸困難を主訴に内科受診し、右肺呼吸音減弱及び胸 部レントゲン上右肺尖部の軽度虚脱を認めた。しかし、 CT において左側にブラを認めるものの、右側には気胸の 原因となる所見がなかった(図 1)。異時性両側気胸の既 往歴と右気胸の再発であること、また特に今回は月経中 の発症であったことから月経随伴性気胸の可能性も視野 にいれ、診断・再発予防目的に胸腔鏡下手術を待機的に 行うこととなった。 【手術所見】 虚脱した右肺尖部にはブラを認めず、横隔膜に多発す る小孔と点状出血斑、ブルーベリースポットを認め、横 隔膜は格子状に菲薄化しており、これらは内膜症による 横隔膜損傷を示唆する所見であった(図 2)。ブルーベリ ースポットを含む横隔膜を部分切除し縫合、酸化セルロ ース膜で被覆した。左側肺尖部にも CT で指摘されたブラ を認めず、炎症性の癒着を認めるのみであり、その癒着 を剥離し酸化セルロース膜で被覆後、エアリークがない ことを確認した。 【病理組織学的所見】 右横隔膜切除検体は 3.5 cm × 2.5 cm 大で、肉眼的に明 らかな出血やヘモジデリンの沈着を認めず、横隔膜の小 孔も不明瞭であった。超音波メスによる熱変性が強く、 詳細な観察は困難であったが、組織学的には線維性結合 織を背景に上皮様の細胞集簇をわずかに認めた。クロマ チンは薄く、核は正常で細胞異型に乏しく、一様かつ小 型であった(図 3)。鑑別として、横隔膜に迷入した上皮 細胞、または反応性あるいは腫瘍性中皮腫細胞が考えら れた。免疫組織化学検査では、中皮を含む上皮系細胞で 陽性となる KeratinAE 1/3の発現を認めたが、calretinin は 陰性であり、反応性あるいは腫瘍性中皮細胞でないこと が示された。また細胞異型が乏しいことや、多彩な組織 平成27年2月(2015) 3 (157) 図1 CT肺野条件:右エアリーク像 図2 術中所見 右横隔膜腱中心に小孔を認め、6個のブルーベリースポッ トを認める。 表1 ジエノゲスト成功例の比較 図3 病理組織所見 HE:増殖した内膜腺組織を認める 像を呈さないことから、癌腫や胚細胞性腫瘍は否定的で あった。エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプ ターの両者とも陽性であることから、稀少部位子宮内膜 症又は、リンパ脈管筋腫症 Lymphangioleiomyomatosis (LAM)が考えられた。LAM 細胞は紡錘形を呈する間葉 系細胞でありケラチン陰性であること、LAM であれば陽 性となる可能性が高い SMA、HMB 45 の双方が陰性であ ったことから、LAM も否定的となった 1)ため、稀少部位 子宮内膜症と診断された。 【術後経過】 繰り返す気胸の原因が月経随伴性気胸であると考えら れたため気胸の再発予防目的に婦人科へ紹介となった。 月経は30日周期、整であり月経困難症及び過多月経を 認めなかった。内診上子宮は正常大であり可動性は良好 で圧痛を認めなかった。エコー上子宮前壁筋層内に 28 mm の筋腫を認めたが、両側付属器は正常大であり、子 宮内膜症を疑う所見を認めなかった。 月経随伴性気胸の再発予防として、挙児希望がないこ とから子宮腺筋症に対する保存療法として汎用されてい るsequential療法を応用してホルモン療法を行うこととな った。胸腔鏡術後 1 ヵ月より酢酸リュープロレリン 1.88 mg を 3 コース投与してからジエノゲスト 2 mg / 日に移行 したが、移行後2ヵ月で不正出血を生じ4ヵ月でⅠ度右気 胸を再発した。症状は軽度であったためドレナージはせ ず、保存的に経過をみる方針とした。酢酸リュープロレ リン 3 コース投与では内膜細胞の死滅が不十分であった ため再発したと考え、腰椎 YAM 値 89 %と骨密度に問題 がないことを確認した後酢酸リュープロレリン1.88 mgを 6コース投与してから、ジエノゲスト2 mg /日に切り替え た。現在ジエノゲスト投与を継続し12ヵ月間気胸の再発 を認めていない。 考 察 月経随伴性気胸は1958年Maurer 2)らによって最初に報 告され、月経に伴って繰り返し発症する、自然気胸の発症 原因のうち1-3%程度の稀な疾患であるとされてきたが 3)、 4 (158) 近年では症例の蓄積と統計調査により25-29%程度を占め ると考えられている 4)。Alifino らによれば月経随伴性気胸 であっても気胸の発症は月経に随伴せず、子宮内膜症の 合併も 25 %程度で、合併していてもその重症度も関与し ないとされる 4)。本症例も婦人科診察上骨盤内に内膜症所 見や月経随伴症状を認めない型であった。 月経随伴性気胸の発症機序は現在は大きく3つの説が有 力である。一つは空気腹腔由来説 2)である。異所性内膜 症細胞の由来の違いにより仮説名を血行性転移説・中皮 化生説とする説もある 4) 5)。二つ目は Lillington らにより提 唱された check valve説 6)、三つ目は Rossi らによる、プロ スタグランディンF2α説 7)である。いずれの説において も内膜症組織の存在により横隔膜や気道、肺胞が損傷さ れて気胸が発症すると考えられている。その治療として 外科的治療単独での気胸再発率は 20 %、ホルモン療法単 独では 50 %と高いため、外科的治療とホルモン療法との 併用が推奨されている 8)∼10)。ホルモン療法は月経随伴性 気胸が稀少部位子宮内膜症の一つであるため、子宮内膜 症の治療に準じて行われることが多く、内膜細胞直接抑 制効果があるとされ、40 代以上でも慎重投与の制限がな く、比較的長期投与が可能であることから、ジエノゲス トが適すると考えた。 そこで本邦においてジエノゲスト投与で気胸再発予防 に成功した報告をまとめ、患者背景や手術及び GnRH ア ナログ療法の有無などを検討した(表 1)。成功報告のあ った7例 11)∼15)のうち手術未施行は3例、また GnRH アナ ログ療法の先行投与は4例に行われていた。文献上病変残 存の有無などの手術内容や使用した GnRH アナログ療法 の種類や投与量などの詳細が不明な部分もあったが、成 功例における傾向は明らかにならなかった。よって、子 宮内膜症に対し不正出血を有意に減らすことができたとす る合阪ら 16)の報告や子宮腺筋症に対する坂埜ら 17)の報告 を参考に、GnRH アナログ療法を3コース施行後ジエノゲ ストに移行する sequential 療法 18)を本症例に対し行うこ ととした。しかし、ジエノゲストに移行後4ヵ月でⅠ度右 気胸が再発したため本症例と背景の類似していた渡邊ら の報告 11)を参考に、GnRH アナログ療法を3から6コース へ延長し、現在 12 ヵ月間気胸の再発を予防することがで きている。 sequential 療法後 4 ヵ月で再発した理由は、術後であっ ても胸腔内に微小な子宮内膜組織が残存しており、ジエ ノゲスト移行後に上昇したエストラジオールに反応し、 気胸が再発した可能性を考えた。一方で骨盤内子宮内膜 症に対しては therapeutic window level にあるが、胸腔内に おいてはエストラジオール抑制のみだけでは気胸の再発 を予防できない機序がある可能性も考えられた。GnRH ア ナログ療法を6コースへ延長した後、気胸が再発していな い理由として、その投与期間を最大限延長したことで病 巣に対するアポトーシス誘導作用 18)が有効に働いたと考 えられた。 月経随伴性気胸は複数の仮説に基づき考えると、骨盤 子宮内膜症よりわずかな病巣の再燃が症状の再発(気胸) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 を来しやすいと考えられ、より慎重な再発予防治療とし て GnRH アナログ療法とジエノゲストの特徴を生かした sequential 療法が応用できると考えた。外科的に病巣摘出 がされていない症例やジエノゲスト投与中に再発したな ど、再発が強く危惧される症例には骨密度を鑑みながら、 GnRH アナログ療法を6コースに延長することも提案でき ると考えた。 文 献 1) 林田美江, 久保惠嗣, 瀬山邦明, 熊坂利夫, 井上義一, 北 市正則, 審良正則. リンパ脈管筋腫症(LAM)診断基 準. 日呼吸会誌2008;46(6):425-427. 2) MaurerER, SchaalJA, MendezFRJr.Chronic recurring spontaneous pneumothorax due to endometriosis of diaphragm.JAMA 1958;168:2013-2014. 3) H.Nakamura, M.D., F.C.C.P.; J.Konishiike,M.D., F.C.C.P.; A.Sugamura,M.D.; Y.Takeno, M.D., F.C.C.P. Epidemiology of spontaneous pneumothorax in women.Chest. 1986;89:37882. 4) AlifinoM, RothT, BroetSC, SchusslerO, MagdeleinatP, RegnardJF.Catamenial pneumothorax a prospective study.Chest. 2003;124:1004-8. 5) 栗原正利.月経随伴性気胸の診断と治療.産科と婦人 科.2011;11号(69):1357.(12):1196-1200. 6) L i l l i n g t o n G A , M i t c h e l l S P , W o o d G A . C a t a m e n i a l pneumothorax.JAMA 1972;219:1328-1332. 7) RossiNP,GolerudCP,Recurrentcatamenial pneumothorax Arch Surg.1974;109:173-176. 8) 谷村繁雄, 山瀬裕美, 伴場次郎. 月経随伴性気胸に手術は 必要か. 自験および文献報告例の検討. 日胸.1998;57:979984. 9) 伴場次郎, 正木幹雄, 香田繁雄他. 月経随伴性気胸に対 する治療法の検討. 日胸. 1983;42:571-577. 10)小林優子, 竹内博之, 宮元英昭. 月経随伴性気胸の病態 と治療. 産科と婦人科. 2008;1号(13):13-19. 11)渡辺正, 渡邉善, 稲沢慶太郎, 岩間憲行. 月経随伴性気胸 に対するジェノゲスト療法の検討.日エンドメトリオ ーシス会誌. 2011;32:153-156. 12)竹 村 由 里 , 大 須 賀 穣 . H O R M O N E F R O N T I E R I N GYNECOLOGY. 2009;vol.16.No3:88-92. 13)宇多さと子, 佐竹由美子, 高橋顕雅, 横田浩美, 高橋良樹, 井伊庸弘, 戸田省吾. 月経随伴性気胸と胸水を繰り返し た重症子宮内膜症の一例. 産婦の進歩. 2011;第 63 巻 1 号:18-23. 14)藤原愛子, 増田幸蔵, 東久登, 根岸真人, 山形誠一, 志田 晴彦, 井上泰. 月経随伴性気胸の 2 例. 日臨外会誌. 2011;72(2):1725-1728. 15)安藤文隆, 野崎雅裕, 江上りか, 中野仁雄. 胸腔内子宮内 膜症の 4 例に対する検討. HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY. ;vol8.No1:75-81. 16)合阪幸三, 平池春子, 生月弓子, 小畑清一郎, 宮本雄一郎, 平池修, 池田悠至, 山本直子, 武谷雄二. 子宮内膜症に対 平成27年2月(2015) するジェノゲストの新しい投与法の開発 予期せぬ破 綻出血の減少を目指して.日本エンドメトリオーシス 学会会誌.2010;31巻:184-186. 17)坂埜浩司. 子宮内膜症治療におけるジエノゲスト使用法 の工夫-性器出血予防のための sequential 療法-. HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY. 2009 ; vol16. No3:75-81. 5 (159) 18)BilotasM,BaranaoRI,BuquetR,SueldoC,TesoneM,and MeresmanG.Effect of GnRH analogues on apotosis and expression of Bcl-2,Bax,Fas and FasL proteins in endometrial epitherial cell cultures from patients eith endmetiriosis and controls.Human Repreduction.2007; vol22.No3:644-653. (H26.7.29受付) 6 (160) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 臨床的急性妊娠脂肪肝の1例 A case of clinical acute fatty liver of pregnancy 公益社団法人地域医療振興協会 横須賀市立うわまち病院 産婦人科 Department of Obstetrics and Gynecology, Yokosuka General Hospital Uwamachi, Japan Association for Development of Community Medicine 平林 大輔 Daisuke HIRABAYASHI 河野 明子 Akiko KAWANO 伊藤 雄二 Yuji ITO 渡邉龍太郎 Ryutaro WATANABE 山本みのり Minori YAMAMOTO 森崎 篤 Atsushi MORIZAKI 小山 秀樹 Hideki KOYAMA 概 要 症 例 HELLP 症候群や急性妊娠脂肪肝(acute fatty liver of pregnancy;以下、AFLP)など妊娠に特有な肝機能障害は 対応が遅れると母児ともに予後不良となる。今回我々は、 母体搬送直後に肝機能障害を認め、臨床的AFLPと診断し 加療した一例を経験したので報告する。 症例は 41 歳、9 回経妊 1 回経産。他院での IVF-ET 後に 妊娠成立し、前医で妊婦健診を受けていた。妊娠 30 週 3 日に胎児発育不全の妊娠分娩管理を希望し当院へ母体搬 送された。来院時の胎児推定体重は 928 g(-3.5 SD)であ った。CTG にて2-3分毎の子宮収縮を認め、胎児発育不全 と切迫早産の診断で入院した。入院時の血液検査で肝機 能障害及び凝固能低下を認めた。血小板減少や血圧上昇、 尿蛋白は認めなかった。臨床的 AFLP と判断し、緊急帝 王切開を施行した。児は930 g の男児、Apgar score は1分 値3点、5分値5点であった。臍帯動脈血 pH は7.18であっ た。出生後3分で気管内挿管し、NICU に収容した。分娩 後、母体経過は良好で、術後5日目までに肝機能及び凝固 能はほぼ正常値にまで回復した。児は、日齢 89(修正 43 週0日)に退院した。 AFLPは、早期診断と早期分娩により劇的に予後が改善 される。妊娠後期の肝機能異常をみたとき、除外すべき 疾患の一つと考える。 年齢:41歳 主訴:妊娠30週3日胎児発育不全の妊娠分娩管理希望 既往歴:16歳で虫垂炎のため虫垂切除 アレルギー:なし 家族歴:特記事項なし 月経歴:初経13歳、28日周期、整順 妊娠歴: 9 回経妊 1 回経産。23 歳で人工妊娠中絶 1 回、 自然流産1回。33歳時、AIH 後に妊娠成立し、自然経腟分 娩した。その後、35歳から37歳にかけて不妊治療を行い、 AIH 後に6回、妊娠成立しが、4回は妊娠初期に自然流産、 2回は異所性妊娠(待機療法)であった。習慣流産検査及 び染色体検査では明らかな異常を指摘されていない。38 歳から別のクリニックで不妊治療を継続した。子宮卵管 造影で卵管閉塞を指摘され、IVF-ET を 2 回施行したが妊 娠に至らなかった。 現病歴:3回目の IVF-ET を行い、移植日を妊娠2週2日 と決定された。妊娠5週5日で胎嚢、妊娠6週1日で卵黄嚢 がそれぞれ確認された。妊娠8週1日で頭殿長 8.1 mm、妊 娠9週1日で頭殿長 14.4 mm(8週1日相当)であり、その 後も児は約1-2週間の発育遅延を指摘されていた(前医に て精査を行ったが原因は不明) 。その他の妊娠経過に特記 事項は認めなかった。妊娠 30 週 3 日、妊婦健診で臍帯動 脈速度波形分析にて異常を指摘され、妊娠分娩管理目的 で当院に母体搬送された。搬送前に子宮収縮は認めなか ったが、来院時には2-3分間隔の痛みを伴う子宮収縮を認 めた。経腹超音波検査で-3.5 SD の不均衡型胎児発育不全 と、brain sparing effect を認めた。妊娠30週3日の胎児発育 不全、切迫早産と診断し、直ちに入院した。 入院時現症:身長 162 cm、体重 60 kg(非妊娠時 53 kg、 BMI 20) 。血圧118/66 mmHg、脈拍126回/分。子宮口閉 鎖、子宮頸管長 50 mm 、funneling なし。BPD 70.3 mm 、 APTD 58.8 mm 、TTD 61.2 mm 、FL 45.2 mm 、EFW 928 g Key words:AFLP, fatty liver, HELLP syndrome 緒 言 周産期の肝機能障害、特に妊娠時に特有の疾患は、対 応が遅れると母児ともに予後不良となる。今回我々は、 母体搬送後に肝機能障害を認め、臨床的 AFLP と診断し、 早急な対応により予後良好であった一例を経験したので 報告する。 平成27年2月(2015) 7 (161) (-3.5 SD)で、胎児発育不全であった。AFI 16.5 cm 。 UAPI 1.52、MCAPI 1.31であり、brain sparing effect を認め たが、臍帯動脈速度波形分析で途絶・逆流は認めなかっ た。CTG 上、基線細変動は中等度で、一過性頻脈なし、 一過性徐脈なしであり、2-3分間隔の痛みを伴う子宮収縮 を認めた。入院2週間前に掻痒感を伴う発疹が体幹から四 肢にかけて出現し、蕁麻疹と診断され、抗ヒスタミン剤 の内服(3日間)とステロイド軟膏の塗布により加療され た。来院時に発疹は認めなかった。 入院時血液検査所見: 生化学: TP 7.1 g /dl, Alb 2.5 g /dl, T-Bil 2.30 mg /dl, AST 191 IU / l, ALT 263 IU / l, LDH 606 IU / l, CPK 84 IU / l, ALP 826 IU / l, γ-GTP 76 IU / l, ChE 146 IU / l, LAP 436 IU/l, T-Cho 124 mg/dl, BUN 13.5 mg/dl, Cre 1.19 mg/dl, UA 8.1 mg/dl, Na 139 mEq/l, K 4.3 mEq/l, Glu 73 mg/dl 血算:WBC 13400/μl, Hb 15.1 g/dl, PLT 21.9 104 /μl, HCT 45.9% 凝固系:PT 92.0%, PT-INR 1.04, APTT 52.4秒, Fib 142 mg /dl, FDP 22.6 μ g /ml, D-dimer 7.3 μg /ml, AT 活性 22.9% その他:TSH 0.01, FT 3 2.15, FT 4 1.84, 抗核抗体(-), 抗 DNA抗体(-),抗カルジオリピン抗体(-), 抗 CL・β 2 GPI 抗体(-), ループスアンチコアグラント(-), HBs抗原(-),HBs抗体(-),HCV抗体(-), CMV IgG(+),CMV IgM(-) 入院時尿検査所見:尿蛋白(-),尿糖(-),尿ケトン(-) 入院後経過:入院時に血液検査を行った。塩酸リトド リン 50 μg /min の静脈内投与を開始し、分娩に備えてベ タメタゾン12 mg を筋肉内注射した。その後、塩酸リトド リンを段階的に200μg/minまで増量したが、子宮収縮は 2-3分間隔で続いていた。塩酸リトドリン投与開始後、肝 機能障害と凝固能異常が判明した。AST、LDH、尿酸高 値を認めたが、血小板の減少はなく、一方で AT 活性が 22.9%に低下していたため、臨床的 AFLP と判断した。入 院4時間後に区域麻酔により緊急帝王切開術を施行し、妊 娠終了した。児は 930 g の男児で、Apgar score は 1 分値 3 点、5 分値 5 点であった。臍帯動脈血の pH は 7.18 であっ た。出生時に自発呼吸なく、出生 3 分後に気管内挿管し NICU に入院管理となった。分娩時出血は羊水込みで1200 ml、羊水混濁(1+)であった。術中の視触診上、肝臓に 明らかな異常を認めなかった。胎盤の病理検査では絨毛 膜羊膜炎による小梗塞巣を認めたが、それ以外に明らか な異常は認めなかった。術後1時間(入院後6時間)の血 液検査所見は以下の通りである。 生化学: TP 3.8 g /dl, Alb 1.3 g /dl, T-Bil 0.99 mg /dl, AST 93 IU/l, ALT 129 IU/l, LDH 316 IU/l, CPK 51 IU/ l, ALP 428 IU/l, γ-GTP 40 IU/l, ChE 75 IU/l, LAP 219 IU/l, T-Cho 62 mg/dl, BUN 15.4 mg/dl, Cre 1.44 mg/dl, UA 7.9 mg/dl, Na 135 mEq/l, K 3.2 mEq/l 血算:WBC 13900/μl, Hb 9.8 g/dl, PLT 15.3 104 /μl, HCT 31.4% 凝固系: PT 58.3 %, PT-INR 1.32, APTT 49.6 秒, Fib 84 mg /dl, FDP 20.9 μg /ml, D-dimer 6.7 μg /ml, AT 活性 10.7% 産科的 DIC スコアは7点であった。AT 活性が低下して いたためAT-Ⅲ製剤を使用した(図1) 。術直後は乏尿であ ったが、腎機能に異常なく、輸液負荷で改善を認めた。 図1 入院中のAT活性の変化 DICの予防でAT-Ⅲ製剤を使用した。 8 (162) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 図2 入院中の肝機能の変化 妊娠終了に伴い改善を認めた。 写真2 術後2日目の経腹超音波検査 肝腎コントラストなく、脂肪肝の所見を認めなかった。 写真1 術後2日目の腹部単純 CT 肝実質 CT 値の低下はなく、肝 CT 値/脾 CT 値>0.9で あり、脂肪肝の所見を認めなかった。 平成27年2月(2015) 9 (163) 表1:AFLPと鑑別疾患のまとめ AST、ALT、LDH の上昇を認め、HELLP 症候群と AFLP を疑った。血小板の低下はなく、AT 活性の低下を認め たため、臨床的 AFLP と診断した。 術後2日目に胸腹部単純 CT と経腹超音波検査を施行し た(写真 1、2)。胸腹部単純 CT では肝実質 C T 値の低下 はなく、肝 CT 値/脾 CT 値> 0.9 であり、脂肪肝の所見 を認めなかった。経腹超音波検査では肝腎コントラスト なく、脂肪肝の所見を認めなかった。確定診断のための 肝生検は行わなかった。 術後5日目の血液検査所見は以下の通りである。AST 39 IU/l, ALT 56 IU/l, LDH 339 IU/l, γ-GTP 51 IU/l, T-bil 0.92 mg/dl, WBC 21600/μl, Hb 11.4 g/dl, PLT 27.6 104/ μl, HCT 35.6%, PT 107.9%, PT-INR 0.96, APTT 34.0秒, Fib 206 mg/dl, FDP 12.4μg/ml, D-dimer 5.4μg/ml, AT活性 65.4%。 肝機能及び凝固能はほぼ正常化し、術後6日目に退院し た(図1、図2) 。 1ヵ月健診では、産褥経過、血液検査所見とも異常を認 めなかった。 児は、経過中に新生児呼吸窮迫症候群等の合併を認め たが回復し、日齢 89(修正 43 週 0 日)に、2838 g で退院 した。 考 案 妊娠時の肝機能障害の鑑別疾患には、妊娠悪阻、薬剤 性肝炎、ウイルス性肝炎、妊娠性肝内胆汁うっ滞、 。本症例で HELLP症候群、AFLP等があげられる 1)(表1) は、悪心・嘔吐の症状はなく、妊娠週数からも妊娠悪阻 は否定的であった。前医で内服していた抗ヒスタミン剤 が原因の薬剤性肝炎の可能性は存在したが、入院の 10 日 前に内服を終了しており、AT 活性の低下を伴って増悪傾 向にある肝機能障害の原因としては否定的であった。 HBV、HCV、CMV 抗原及び抗体は陰性で、これらが原因 のウイルス性肝炎は否定的であった。また、入院時に黄 疸や全身掻痒感はなく、妊娠性肝内胆汁うっ滞も否定的 であった。 HELLP 症候群と AFLP との鑑別は容易ではない。今回、 AST、LDH の上昇を認め、HELLP 症候群と AFLP を疑っ た。 「産婦人科診療ガイドライン産科編2014」では、AST 高値かつ LDH 高値に加え、血小板数<12万/μlのときは HELLP 症候群を疑い、血小板数≧ 12 万/μl かつ AT 活 性<60%のときは臨床的 AFLP を疑うとされている 2)。今 回、血小板数が 21.9 万/μl、AT 活性が 22.9 %であったた め、臨床的 AFLP と判断した。 AFLP は妊娠に合併して発症する極めて稀な肝疾患で、 妊娠後期(妊娠 28-40 週、平均妊娠 37 週)に突然発症し、 妊娠を終了させない限り肝不全となって、母児ともに予 後不良となる。7000-20000妊娠に1例と報告され、HELLP 症候群の1/20程度の発症頻度である 3)。多くの場合、妊 娠後期の悪心・嘔吐、上腹部痛、倦怠感などの非特異的 症状を初発症状として突然に発症し、その数日後に黄疸 が出現する。約半数に妊娠高血圧症候群を合併するとの 報告もある 4)。これと並行して肝機能や腎機能の増悪が進 行し、肝不全、腎不全、DIC 等の全身症状が出現する 5)。 本症例では、搬送時の子宮収縮以外に自覚症状はなく、 血圧も正常であり、また、事前情報もなかったため、入 院当初は積極的に肝機能障害を疑ってはいなかった。 10 (164) 血液検査所見では白血球の増多、トランスアミナーゼ の上昇、ビリルビンの上昇、BUN 及びクレアチニンの上 昇がみられ、尿酸は高値となる。一方、血清アルブミン の減少、フィブリノーゲンの減少、AT 活性の低下、PT 及び APTT の延長を認める。DIC を合併すると二次線溶 の亢進を反映して FDP の上昇などがみられるようになり、 肝不全が進行するとアンモニアが上昇してくる。本症例 では、入院時の血液検査所見で BUN 以外の値で異常を認 めており、この時点で肝機能障害が判明した。また、FDP の上昇を認めていた。アンモニアは測定しなかった。 画像検査では、超音波断層検査や CT で脂肪肝の所見を 認めることがある。その頻度はそれぞれ50%、20-30%と 言われている。本症例では、いずれの検査でも脂肪肝の 所見は認めなかった。 AFLP の病因は定かではないが、文献的には、近年、ミ トコンドリアでの脂肪酸のβ酸化に関わる long-chain 3hydroxyacyl-CoA dehydrogenase(β酸化の第3段階を触媒す る酵素;以下、LCHAD)欠損の関与が指摘されている。 すなわち、母体がこの変異をヘテロ接合で有していると、 児の変異がホモ接合となることがある。この LCHAD 欠 損児がストレスにさらされると脂肪酸のβ酸化障害やリ ポ蛋白合成・転送障害が発生する。その結果、胎児及び 胎盤で産生された潜在的に肝毒性を有する L-βヒドロキ シアシル CoA が母体に蓄積し、AFLP を引き起こすと考 えられている 6)∼ 9)。実際、正常な LCHAD 活性を有する 場合、AFLP をはじめとする妊娠関連の肝障害はみられな い 10)。病理組織学的には肝細胞内に微細顆粒状脂肪滴が 沈着していることで確定診断されるが、壊死、炎症、線 維化は伴わず、この点でウイルス性肝炎や劇症肝炎等と は鑑別できる。成人の肥満などでみられる脂肪肝では中 性脂肪が沈着するが、AFLP では主に遊離脂肪酸が沈着す る小滴性脂肪肝となり、Reye 症候群やテトラサイクリン 肝障害と同様の所見を呈する。LCHAD 欠損児は、身体的 ストレスにより、非ケトン性低血糖や肝機能障害といっ た Reye 症候群様の症状を呈するという報告もある 6)。本 症例では、LCHAD 欠損の有無の検索はされていないため、 関連は不明である。 治療の原則は早期の児娩出と母体の集中管理であり、 肝障害による凝固因子低下及び DIC に対する治療はほぼ 必須となる。重症例では血漿交換を行うこともある。分 娩によって肝機能は速やかに改善することが多く、早期 診断・早期治療により、近年、母児の予後は著しく改善 されてきている 11)。再発は LCHAD 欠損の有無に関係な く起こりうるが、正確なリスクははっきりしていない。 今回、母体搬送後に肝機能障害を認め、臨床的 AFLP と診断し治療に当たった。搬送前に血液検査は未施行で あったため発症時期の詳細は明らかではないが、入院時 の血液検査で肝機能障害が判明し、結果として早期診 断・早期治療を行うことができた。 「産婦人科診療ガイド ライン産科編 2014」では、1)妊娠高血圧腎症妊婦、2) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 妊娠33週以降双胎妊婦、3)妊娠30週以降に上腹部症状を 訴えた妊婦、4)蛋白尿(≧ 2+)を示した妊婦、5)異常 体重増加あるいは減少を示した妊婦、に対して、血小板 数、AT 活性、AST、LDH の測定を推奨している 2)。本症 例は上記のいずれにも当てはまっていなかったが、臨床 的 AFLP であった。AFLP は稀な疾患で、特徴的な臨床所 見に乏しい。その一方で、症状は急速に増悪し、治療が 遅れると母児ともに予後不良となるが、早期診断と妊娠 終了により劇的に予後が改善される。積極的に疑い、除 外すべき疾患の一つであると考える。 文 献 1) Riely CA. Liver disease in the pregnant patient. American College of Gastroenterology. Am J Gastroenterol 1999; 94: 1728. 2) 日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会編. 産婦人科 診療ガイドライン産科編2014. 東京: 日本産科婦人科学 会事務局; 2014. p.198-201. 3) Knight M, Nelson-Piercy C, Kurinczuk JJ, et al. A prospective national study of acute fatty liver of pregnancy in the UK. Gut 2008; 25:951. 4) Riely CA. Acute fatty liver of pregnancy. Semin Liver Dis 1987; 7:47. 5) Castro MA, Goodwin TM, Shaw KJ, et al. Disseminated intravascular coagulation and antithrombin III depression in acute fatty liver of pregnancy. Am J Obstet Gynecol 1996; 174:211. 6) Treem WR, Rinaldo P, Hale DE, et al. Acute fatty liver of pregnancy and long-chain 3-hydroxyacyl-coenzyme A dehydrogenase deficiency. Hepatology 1994; 19:339. 7) Treem WR, Shoup ME, Hale DE, et al. Acute fatty liver of pregnancy, hemolysis, elevated liver enzymes, and low platelets syndrome, and long chain 3-hydroxyacyl-coenzyme A dehydrogenase deficiency. Am J Gastroenterol 1996; 91:2293. 8) Sims HF, Brackett JC, Powell CK, et al. The molecular basis of pediatric long chain 3-hydroxyacyl-CoA dehydrogenase deficiency associated with maternal acute fatty liver of pregnancy. Proc Natl Acad Sci USA 1995; 92:841. 9) Yang Z, Zhao Y, Bennett MJ, et al. Fetal genotypes and pregnancy outcomes in 35 families with mitochondrial trifunctional protein mutations. AmJ Obstet Gynecol 2002; 187:715. 10)Matern D, Hart P, Murtha AP, et al. Acute fatty liver of pregnancy associated with short-chain acyl-coenzyme A dehydrogenase deficiency. J Pediatr 2001; 138:585. 11)Nelson DB, Yost NP, Cunningham FG. Acute fatty liver of pregnancy: clinical outcomes and expected duration of recovery. Am J Obstet Gynecol 2013; 209:456. (H26.8.1受付) 平成27年2月(2015) 11 (165) 乳癌合併妊娠5例の母児の転帰 Maternal and neonatal outcomes of pregnancy-associated breast cancer in 5 cases 横浜市立大学附属市民総合医療センター 総合周産期母子医療センター Yokohama City University Medical Center Perinatal Center 古賀 絵理 Eri KOGA 青木 茂 Shigeru AOKI 今井 雄一 Yuichi IMAI 持丸 綾 Aya MOCHIMARU 笠井 絢子 Junko KASAI 望月 昭彦 Akihiko MOCHIZUKI 倉澤健太郎 Kentaro KURASAWA 奥田 美加 Mika OKUDA 高橋 恒男 Tsuneo TAKAHASHI 横浜市立大学附属病院 産婦人科 Yokohama City University Hospital, Obstetrics & Gynecology 平原 史樹 Fumiki HIRAHARA 要 旨 乳癌合併妊娠5例を経験し、その臨床的経過を示すとと もに乳癌合併の問題点について考察したので報告する。 全例乳房腫瘤の自覚を契機に診断された。診断がおこな われた時期は 1 例が妊娠初期、3 例が妊娠中期、妊娠後期 に 1 例であった。2 例は妊娠中に手術がおこなわれ、1 例 は妊娠を早期に終了し化学療法をおこなった。 2例は妊娠 中に化学療法がおこなわれた。臨床進行期は StageⅠAが 1例、StageⅡAが3例、StageⅡBが1例であった。平均分 娩週数は36週(32週-41週)で、早産のため入院を必要と した症例もあったが全例で生児を得ることができた。ま た、治療中の症例を除いては現在まで全症例で再発なく 経過している。 妊娠中の乳癌は乳房腫瘤の自覚を契機に発見されるこ とが多く、早期発見のためには妊婦からの訴えを真摯に 受け止めることが重要である。また人工妊娠中絶は乳癌 の予後を改善させず、本症例のように妊娠を継続しなが ら治療をおこなうことができることを患者に説明するこ とで安易な妊娠中絶を避けることができる。 Keywords : 乳癌合併妊娠 諸 言 妊娠中に乳癌を合併する頻度は妊娠3000例に1例と非常 にまれであるが 1)、近年の日本人女性における乳癌罹患率 の上昇や出産年齢の高年化に伴って 2)3)、乳癌合併妊娠は 増加傾向にある。妊娠中は乳腺に変化が生じるため乳癌 の診断が困難となり進行癌として発見されることが多い が、自覚症状のなかでも妊娠時に特徴的な症状は知られ ていない。また治療においては母体の生命予後だけでな く胎児に対する影響も考慮する必要がある。今回我々は、 乳癌を合併した妊娠を5例経験した(表1) 。その臨床的経 過を示すとともに、乳癌合併の問題点について考察した ので報告する。 【症例1】 41歳1回経妊1回経産 妊娠6週に左乳房のしこりを自覚し、近医外科で左乳癌 StageⅠA(cT1N0M0 ; ER+, PR+, HER2 1+)と診断された。 妊娠7週6日に左乳房温存術をおこない、摘出腫瘍径は20 mm であった。妊娠 41 週 0 日に自然分娩し、児は 4008 g、 アプガースコア1分値8点/5分値8点であった。経過良好 であり産褥5日目に母児ともに退院となった。産後授乳は おこなわず、産褥60日目よりLH-RH アゴニストによるホ ルモン療法を開始し現在まで7年間無病生存中である。 【症例2】 38歳0回経妊0回経産 妊娠33週に8 cm 大の卵巣嚢腫を指摘され、当院を紹介 受診した。妊娠 35 週に右乳房のしこりを自覚し、乳腺外 科を受診したところ右乳癌 Stage Ⅱ A(cT2N0M0 ; ER-, PR+, HER2-)と診断された。妊娠 37 週 2 日、卵巣嚢腫に よる分娩障害が予想されたため選択的帝王切開術を行い、 同時に左付属器摘出術と右乳房腫瘍全摘術をおこなった。 摘出した左付属器は Endometrial Cyst of the ovary、乳房腫 瘍径は25 mmであった。児は2662 g、アプガースコア1分 12 (166) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 表1 症例のまとめ *ER :エストロゲンレセプター PR :プロゲステロンレセプター HER2 :human epidermal growth factor receptor 値8点/5分値9点であり、術後8日目に母児ともに合併症 なく退院となった。産後初乳を授乳してから断乳し、術 後 30 日目より化学・放射線同時療法(AC 療法 ;ドキソル ビシン+シクロフォスファミド、2 Gry/f 5f/w total 50 Gry) を行い現在まで4年間無病生存中である。 【症例3】 29歳2回経妊0回経産 妊娠 25 週、左乳房腫瘤を主訴に近医外科を受診し左乳 癌StageⅡA(cT2N0M0 ; ER-, PR-, HER2-)と診断された。 腫瘍径から早急に治療が必要であり、何度も話し合いを 重ねた後に本人の強い希望で分娩後に化学療法をおこな う方針となり、ベタメタゾン投与後、妊娠 32 週 4 日選択 的帝王切開を施行した。児は1618 g、アプガースコア1分 値 6 点/ 5 分値 9 点だった。児は早産、低出生体重であっ たため NICU に入院した。新生児一過性多呼吸認めるも 徐々に改善、未熟児黄疸に対しては光線療法を施行し日 齢 32 に退院となった。産後初乳を授乳してから断乳し、 術後28日目より化学療法として FEC 療法(フルオロウラ シル + エピルビシン + シクロフォスファミド)3 コースお こなったが増悪、TC 療法(ドセタキセル + シクロフォス ファミド)に変更したが増悪したため乳房切除術をおこ ない、摘出腫瘍径は70 mm であった。現在まで2年間無病 生存中である。 【症例4】 40歳1回経妊1回経産 妊娠25週に左乳房に直径10 mm 大の硬結を自覚し近医外 科を受診して左乳癌 Stage ⅡB(cT2N1M0 ; ER+, PR+, HER23+)と診断され、当院を紹介受診した。リンパ節転 移陽性であったため妊娠継続のもとに化学療法をおこな う方針となり、妊娠 27 週と 30 週に AC 療法を合計 2 コー スおこなった。化学療法による骨髄抑制は軽度であり、 貧血、好中球減少、血小板低下ともに回復したことを確 認して妊娠 34 週 0 日選択的帝王切開術を行った。児は 2118 g、アプガースコア1分値8点/5分値9点だった。児 は早産、低出生体重児であったため NHCU 入院となった。 未熟児黄疸を認め光線療法をおこなったが、その他に特 記すべき合併症なく日齢 13 に退院した。産後初乳を授乳 してから断乳し、産褥8日目よりFEC療法を開始、産褥30 日目より近医での化学療法を希望し転院となった。 【症例5】 32歳1回経妊1回経産 妊娠 27 週時に 20 mm 大の左乳房のしこりを自覚して近 医を受診し左乳癌StageⅡA(cT2N0M0 ; ER境界型、PR 境 界型、HER2 3+)と診断され当院紹介受診となった。妊娠 継続のもとに化学療法をおこなう方針とし、妊娠 33 週時 に AC 療法を 1 コース行った。化学療法後の骨髄抑制と分 娩時期が重複しないよう妊娠中の化学療法を1コースで終 了し、陣痛発来まで経過観察した。化学療法施行後特記 すべき有害事象はなく、妊娠 39 週 4 日に自然分娩した。 児は 3310 g 、アプガースコア 1 分値 8 点/ 5 分値 9 点だっ た。化学療法が原因と考えられる合併症なく産褥5日目に 母児ともに退院となった。産後断乳し、産褥 14 日目より FEC 療法3コース施行した後乳房温存術をおこない、術 後放射線療法をtotal 50Gy照射した。摘出腫瘍径は 23 mm であった。現在トラスツマブ単独療法中である。 平成27年2月(2015) 13 (167) 考 察 私たちは乳癌合併妊娠5例の検討から、妊娠中の乳癌の 診断契機が妊婦本人の乳房腫瘤の自覚であったこと、及 び乳癌合併妊娠でも人工妊娠中絶は不要であり、妊娠の 継続により生児を得られることを学んだ。乳癌の診断時 期は妊娠6週∼35週であり、5例とも乳房腫瘤の自覚を契 機に診断された。5例のうち妊娠中に外科的治療を行った 症例が1例、分娩後に行った症例が2例、帝王切開と同時 に行った症例が1例であった。また、妊娠中に化学療法を 施行した症例が2例、分娩後から行った症例が2例、分娩 後にホルモン療法を施行した症例が1例であり、すべての 症例で早産・低出生体重児であったために合併した新生 児一過性多呼吸や未熟児黄疸のほかに非可逆的な合併症 のない生児を得ることができた。 第1に、乳癌の発見契機は5例とも乳房腫瘤の自覚であ った。妊娠に合併した乳癌の発生頻度は1/3000程度と報 告されている 1)。乳癌合併妊娠の予後は非妊娠期乳癌と有 意な差がないといわれているが 4)、一方で妊娠中は乳腺に 変化が生じるため、比較的進行した状態で発見されるこ ともある 5)。妊娠中においても非妊娠期と同様に乳癌は自 覚症状を契機に発見されることが多いが、診断までにか かる期間は非妊娠期乳癌で平均 4.5 ヵ月であるのに対し、 妊娠期乳癌では 6.3 ヵ月と長いことが報告されている 6)。 しかし、乳癌治療に積極的に取り組んでいる産婦人科で は発見から 1 ヵ月以内に診断できるとした報告もあり 7)、 自覚症状を見逃さないことが重要である。妊娠による乳 腺変化のため、マンモグラフィーによる診断率は高くな いが、超音波検査は比較的有効で低侵襲であるため取り 入れやすい。患者からの訴えを受け止め、適切なタイミ ングで専門医療機関に紹介することも大切である。 第2に、乳癌の治療のための人工妊娠中絶は不要であり、 いずれの症例でも生児を得た。乳癌合併妊娠の治療方法 として人工妊娠中絶は予後を改善しないと報告されてい るため 8)、妊娠中の乳癌の治療方針は基本的に非妊娠時と 同様に決定されるが、妊娠時特有の問題もある。まず、 催奇形性の問題から妊娠初期には化学療法は施行できな い。妊娠中期以降の化学療法では、先天奇形率や自然早 産率の有意な増加はなく、新生児予後に有意な差を認め ないという報告もあるが 9)、胎児の成長が障害されること で出生後の合併症が増加することも報告されており慎重 に投与する必要がある 10)。また出産時の母体の血液凝固 系合併症をさけるため、妊娠 35 週以降または出産予定日 の 3 週前の投薬は中止すべきであると推奨されている 11)。 さらに、妊娠中の放射線療法やホルモン療法は禁忌であ るため、診断時期と妊娠週数を考慮して総合的判断で治 療方針を決定する必要がある 12)。当院では妊娠に合併し た乳癌の治療は外科に一任しているが、治療開始時期や 治療方法は妊娠週数を考慮する必要があり、話し合いを 重ねたうえで個々の症例に応じて分娩時期や授乳可否も 含め治療方針を決定している。 本症例では、妊娠中に施行された化学療法は2例ともド キソルビシンがベースとなっている。また症例1は妊娠初 期に発見された stage Ⅰ A と初期の乳癌で手術可能であ り、分娩後に後療法を行っても予後に差がないと判断さ れたため、患者と十分話し合いをしたうえで妊娠終了を 待たずに手術を施行した。症例2では乳癌発見時期が遅く、 また帝王切開が予定されていたため、外科と相談し同時 に乳房切除術をおこなう予定とした。症例3では治療の第 1選択として妊娠中の化学療法を提示し産婦人科、外科と もに話し合いを重ねたが、本人の意向を尊重して妊娠 32 週で分娩とした。症例4は化学療法後の骨髄抑制と分娩時 期が重ならないよう産婦人科、外科で連携を測りながら 妊娠 30 週で化学療法を終了し、計画的に分娩をおこなっ た。症例5では腫瘍の大きさから乳房切除術の適応であっ たが、妊娠後期に術前化学療法を行い腫瘍の縮小を図る ことで乳房温存術をおこなえることになった症例であっ た。症例5でも産婦人科、外科で連携を測りながら化学療 法をおこなう時期を決定した。このように乳癌合併妊娠 では、乳癌の治療を考慮した妊娠・分娩管理が重要とな り、慎重に管理することで非妊娠時と同等の治療を受け ることも可能であり、人工妊娠中絶の必要はない。 結 語 妊娠中は乳腺に変化が生じるため、その診断は困難で あり、進行癌として発見されることが多いと言われてい る。妊娠期の乳癌も非妊娠時の乳癌と同様に自覚症状か ら発見されることが多く、妊婦からの訴えを真摯に受け 止めることが早期発見につながる。また人工妊娠中絶は 乳癌の予後を改善させず、進行度や妊娠週数によって妊 娠を継続して治療をおこなうことができる。治療にあた って外科医との密な連携と、患者への十分なインフォー ムドコンセントを得ることが重要である。 参考文献 1) 蒔田益次郎:妊娠関連乳癌の頻度と予後について.乳 癌の臨床2013;28(1);7-16. 2) 厚生労働省 人口動態統計 2013年. 3) Matsuda A, Matsuda T, Shibata A, Katanoda K, Sobue T, Nishimoto H and The Japan Cancer Surveillance Research Group. Cancer Incidence and Incidence Rates in Japan in 2008: A Study of 25 Population-based Cancer Registries for the Monitoring of Cancer Incidence in Japan (MCIJ) Project. Japanese Journal of Clinical Oncology, 44(4): 388-396, 2013. 4) 松之木愛香、吉野裕司、高柳智保、角谷慎一、小竹優 範、石黒要、黒川勝、森田克哉、伴登宏行、山田千代 子、山田哲司:妊娠中の乳癌に対する治療経験. 癌と 化学療法2008;35(6);991-993. 5) 蒔田益次郎、岩瀬拓士、多田敬一郎、西村誠一郎、宮 城由美、飯島耕太郎、秋山太、坂元吾偉:妊娠期乳癌 の予後-妊娠と年齢が予後に及ぼす影響. 乳癌の臨床 2007;22(2);113-120. 6) 佐川正、島明子、林佳子:妊娠時乳癌の特徴とその取 り扱い方. 産婦人科治療2007;95(5);511-516. 7) 佐川正、斉藤千奈美、山田崇弘:症例から学ぶ:乳癌 14 (168) と妊娠. 産婦人科の実際1997;46;837-843. 8) 熊田絵里、笠井靖代、安藤一道、杉本充弘:妊娠期・ 授乳期乳癌17例の検討. 日本周産期・新生児医学会雑 誌2012;48(1);1-5. 9) 西澤美嶺、宇山圭子、中西隆司、明石貴子、齋藤仁美、 小川恵、古妻康之、奥正孝:乳癌合併妊娠5例の検討. 産婦の進歩2013;65(4);414-421. 10)中嶋啓雄、藤原郁也、水田成彦、坂口晃一、鉢嶺泰司、 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 中務克彦、市田美保:乳癌の治療法-とくに妊娠・授 乳期の診断と治療. 産婦人科治療2007;95(5);497-502. 11)KCCN : KCCN Guideline version3.2012,Breast Cancer During Pregnancy. 12)日本乳癌学会:化学的根拠に基づく乳癌診療ガイドラ イン1 治療編2011. (H26.8.3受付) 平成27年2月(2015) 15 (169) ITPと鑑別困難であった妊娠性血小板減少症の1例 A case of gestational thrombocytopenia difficult to differentiate from idiopathic thrombocytopenic purpura 横浜市立大学附属市民総合医療センター 総合周産期母子医療センター Maternity and Neonatal Center, Yokohama City University Medical Center 紙谷菜津子 Natsuko KAMIYA 青木 茂 Shigeru AOKI 長谷川良実 Yoshimi HASEGAWA 葛西 路 Michi KASAI 持丸 綾 Aya MOCHIMARU 笠井 絢子 Junko KASAI 望月 昭彦 Akihiko MOCHIZUKI 倉澤健太郎 Kentaro KURASAWA 高橋 恒男 Tsuneo TAKAHASHI 横浜市立大学附属病院産婦人科 Department of Obstetrics and Gynecology,Yokohama City University Hospital 平原 史樹 Fumiki HIRAHARA 緒 言 妊娠性血小板減少症(Gestational thrombocytopenia:GT) は妊娠中に血小板数150,000/μl 未満となる血小板の減少 を示し、かつ特発性血小板減少症(Idiopathic thrombocytopenic purpura:ITP)が否定された病態で、① 無症候性で軽度の血小板減少を示し(典型的には 70,000/μl 以上) 、②血小板減少の既往がなく(但し前回 妊娠中の血小板減少は除く) 、③妊娠後期に発症し、④新 生児血小板減少症とは相関せず、⑤分娩後自然回復する という特徴がある。1) GT は妊娠中の血小板減少の主たる 原因であり、妊婦の 5 %に生じる。2)その妊娠アウトカム は良好であり治療を要すことはない。1)∼3) 一方、ITP は時に高度な血小板減少を認め、母児ともに 治療を要することがある。1)ともに、除外診断によって のみ診断がなされるため、血小板数<100,000/μl の中等 度から高度の血小板減少が妊娠中に初めて指摘された際 には、最終的にその鑑別は、分娩が終了しないとわから ない。1)∼3)(表1) 今回我々は、妊娠中の最低血小板数が 59,000 /μl まで 低下し ITP との鑑別が困難であった GT の一例を経験した ので報告する。 Key words:Idiopathic thrombocytopenic purpura, Getational thrombocytopenia 症 例 患者:39歳、女性 妊娠分娩歴:0経妊0経産 原発性不妊のため、体外受精−胚移植施行し妊娠に至 り、妊娠6週で1絨毛膜双胎の診断で、当院を紹介受診し た。初診時の血液検査は血小板数219,000/μl で血小板減 少は認めなかった。その他の末梢血液、生化学所見は全 て正常範囲内であった。妊娠7-9週に重症悪阻で入院した が、補液により軽快した。その際に施行した超音波検査 で羊膜を確認し、1 絨毛膜 2 羊膜性双胎(MD 双胎)と診 断した。以後、外来で2週間ごとに妊婦健診を行ったが双 胎間輸血症候群などの合併症を呈することなく順調に経 過し、妊娠29週に MD 双胎管理目的で入院した。 妊娠30週で施行した血液検査で血小板数122,000/μlと 減少を認めたが、妊娠高血圧症候群等の血小板減少の誘 因となるような疾患(表 2)は認めず、GT を疑い経過観 察とした。妊娠33週で血小板数 78,000/μl とさらに低下 したため ITP の可能性を考慮し、当院血液内科に併診し た。末梢血塗沫標本で3系統すべてに明らかな形態異常は なく、ほかに血小板減少を来す疾患を認めなかったため、 ITP または GT と診断したが、出血傾向もなく、血小板数 50,000 /μl 以上であったため厳重経過観察とした。以降 血小板数 70,000 /μl 台で経過していたが、妊娠 37 週で血 小板数 59,000 /μl と血小板減少の進行を認めたため、妊 娠のterminationの方針とし緊急帝王切開術を行った。 術中出血量は羊水込みで 2164 g 、第Ⅰ児は 2302 g 、ア プガースコア 8 点/ 9 点(1 分値/ 5 分値)、第Ⅱ児は 2366 g、アプガースコア8点/9点(1分値/5分値)であった。 術後経過は順調であり、帝王切開後7日目に母児ともに 退院した。血小板数は術後4日目118,000/μl 、術後1ヵ月 後には229,000/μl まで自然回復を認め、以後はフォロー 16 (170) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 表1 TP とGT の特徴 表2 妊娠中に血小板減少をきたす疾患とその検査所見及び臨床所見 6)は血小板数40,000/ μl を行っていない。 考 案 本症例から、以下 2 つの臨床的意義が示唆された。第 1 に GT でも血小板数<70,000/μl を示しうること、第2に ITP と GT の鑑別は分娩が終了するまでわからない場合が あるということである。 第1に GT でも高度な血小板減少を認める場合があるこ とが分かった。GT は、妊娠中の血小板減少の原因として 最も高頻度に認めるが、GT の95%は血小板数100,000/μl ∼150,000/μl であり、血小板数<80,000μlとなることは 例外的であると報告されている。2)Burrowら 4)は217例の GT のうち、16 例に 80,000 ∼ 100,000 /μl 以下の血小板減 少を認め、1例が43,000/μl まで低下したと報告している。 Matthews ら 5)は101例の GT のうち、血小板数100,000/μl 以下を認めたのが 15 例、さらに 50,000 ∼ 80,000 /μl を認 めたのはそのうちの8例であったと報告している。Win ら 台であった6例のGT を報告して いる。当センターで経験した1例は、稀ながらも時に認め る血小板減少の範疇であることがこれらの報告からも確 認された。 第2に ITP と GT の鑑別は分娩が終了するまでわからな かった。厚生労働省特発性凝固異常症研究班による ITP の診断基準案(2004年)では、ITP の診断基準として1. 血 小板減少(10万/μl 以下)2. 末梢血塗沫標本で3系統すべ てに明らかな形態異常を認めない 3. 血小板減少を来す 他疾患の除外 をあげている。ITP の診断は除外診断であ り、出血傾向の有無は問わず、PAIgG の存在は血小板減 少を来す他疾患でも認めるため診断に有用でない。また 骨髄穿刺は特異的な所見があるわけではないので骨髄異 形成症候群(MDS)と鑑別しなくてはならない時を除き、 不要であるとされている。7)つまり、原因不明の血小板数 10 万以下を来す病態が ITP ということになる。一方で GT は妊娠中に血小板数150,000/μl 未満となる血小板の減少 平成27年2月(2015) 17 (171) を示し、かつITPでないもの 1)と定義されているため、血 小板数<100,000/μl を妊娠中に示した際にはその鑑別が 問題となる。GT では、血小板数は通常産後2-12週以内に 正常域に戻るとされている 8)が、本症例でも帝王切開後4 日目には血小板118,000/μlと、速やかな血小板の上昇を 認め、産後 1 ヵ月では血小板 229,000 /μl であった。本症 例では、妊娠 37 週で血小板数 59,000 /μl とさらに血小板 減少が進行したため、妊娠の termination を行ったが、 「血 小板数50,000/μl以上あり、他の凝固機能が正常であれば、 安全に正常経腟分娩が可能である(推奨レベル B)」2)と ITP のガイドラインでは記載されているため、出血傾向が なくても分娩時に血小板数<50,000/μlでは血小板減少に 対する治療を行う必要がある。実際に、Win ら 6)は高度 の血小板減少を認め、ITP で行われる免疫グロブリン療法 や血小板輸血といった治療を要した、5例の GT のケース を報告しているが、これら5例は分娩後に速やかな血小板 数の自然回復を認めている。 GT においても稀に重度の血小板減少を認めることがあ り、血小板減少の重症度は ITP との鑑別の参考程度にし かならない。GT は ITP と類似しており、GT を一過性の 軽症の ITP と捉えている報告も多い。1)実際、血小板減 少を認めた妊婦のうち、42 %が抗血小板抗体を認めてお り、George JN 9)は「妊娠中 GT と ITP との鑑別は困難で あり、軽度の血小板減少で治療不要である場合、ITP との 鑑別はあまり重要でない」と報告している。一方で、 Minakami ら 10)は、高血圧を発症しなかった妊婦637名の 血小板数と AST の推移について検討し、GT 群では対照 群に比較し、有意に AST 上昇(>30 IU / l)を認め、GT は HELLP 症候群のハイリスク因子(前駆症状)であり、 軽度の GT でも注意が必要であると報告している。 ITP と血小板数100,000/μl以下を呈する GT との最終的 な鑑別は分娩が終了しなくてはわからないため、妊娠中 の治療を必要としない GT でも慎重なモニタリングに加え 長期的な follow up が必要である。 文 献 1) George JN, Woolf SH, Raskob GE, Wasser JS, Aledort LM, Ballem PJ, Blanchette VS, Bussel JB, Cines DB, Kelton JG, Lichtin AE, McMillan R, Okerbloom JA, Regan DH, Warrier I. Idiopathic thrombocytopenic purpura: a practice guideline developed by explicit methods for the American Society of Hematology. Blood. 1996;88:3-40. 2) British Committee for Standards in Haematology General Haematology Task Force. Guidelines for the investigation and management of idiopathic thrombocytopenic purpura in adults, children and in pregnancy. Br J Haematol. 2003;120:574-96. 3) Gernsheimer T, James AH, Stasi R. How I treat thrombocytopenia in pregnancy. Blood. 2013;121:38-47. 4) Burrow RF, Kelton JG. Thrombocytopenia at delivery : A prospective survey of 6715 deliveries. Am J Obstet Gynecol. 1990 Mar;162:731-4. 5) Matthews JH, Benjamin S, Gill DS, Smith NA. Pregnancyassociated thrombocytopenia: definition, incidence and natural history. Acta Haematol. 1990;84:24-9. 6) Win N, Rowley M, Pollard C, Beard J, Hambley H, Booker M. Severe gestational (incidental) thrombocytopenia: to treat or not to treat. Hematology. 2005;10:69-72. 7) 桑名正隆. ITP の新しい診断基準の作成(主任研究者 池田康夫). 厚生労働科学研究費補助金 難知性疾患克 服研究事業 血液凝固異常症に関する調査研究. 平成 16年度総括・分担研究報告書. 2004;78-84. 8) American College of Obstetricians and Gynecologists. Thrombocytopenia in pregnancy. Clinical management guidelines for obstetrician-gynecologists. Int J Gynaecol Obstet. 1999;67:117-28. 9) George JN. Platelets. Lancet. 2000;355:1531-9. 10)Minakami H, Kohmura Y, Izumi A, Watanabe T, Matsubara S, Sato I.Relation between gestational thrombocytopenia and the syndrome of hemolysis, elevated liver enzymes, and low platelet count (HELLP syndrome). Gynecol Obstet Invest. 1998;46:41-5. (H26.8.7受付) 18 (172) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 TANKO plus one punctureにて施行しえた腹腔鏡下子宮筋腫核出術の1例 A case of laparoscopic myomectomy perfomed by the TANKO plus one puncture method 川崎市立井田病院 婦人科 1) 東海大学医学部 専門診療学系 産婦人科学 2) 川崎市立川崎病院 産婦人科 3) Department of Gynecology, Kawasaki Municipal Ida Hospital1) Department of Obstetrics and Gynecology, Tokai University Hospital 2) Department of Obstetrics and Gynecology, Kawasaki Municipal Kawasaki Hospital 3) 植木 有紗 1) 浅井 哲 1)2) 林 保良 3) 宮本 尚彦 1) 中田さくら 1) 概 要 単孔式腹腔鏡下手術(TANKO)は臍部の切開創から内 視鏡と鉗子を挿入し、手術操作を行う手術であり、整容 性に優れた低侵襲手術として急速に普及している。腹腔 鏡下子宮筋腫核出術(以下、LM)における単孔式手術へ の適応は、従来の多孔式腹腔鏡下手術に比べて手技が特 殊であり、鉗子の干渉等により操作上の制限もあるため 困難であった。今回、TANKO を改良し、E ・ Z アクセス TM を臍に使用し、下腹部の 2 mm切開創から細径鉗子を用 いた TANKO plus one puncture として reduced port surgery (RPS)による子宮筋腫核出術を施行した一例を経験した ので、本術式における工夫と有用性について文献的考察 を加えてここに報告する。症例は 39 歳、0 経妊、0 経産。 過多月経をともなう約 7 cm の筋層内筋腫に対し手術目的 に紹介された。性交未経験である臨床背景を考慮し、腟 式操作及び子宮鏡手術(TCR)が困難であると判断し LM の方針とした。GnRH アゴニストを2回投与し筋腫核は約 4 cm に縮小したため、TANKO plus one puncture として RPS を行った。これにより従来の4-puncture method に近い 設定で通常通りの LM が施行可能であった。筋腫核のサ イズや数、変性の有無などを検討し、十分なトレーニン グを行うことで、より小さな傷で LM 施行可能となる症 例があると考えられる。 Key words : reduced port surgery (RPS), laparoscopic myomectomy, single port surgery 緒 言 単孔式腹腔鏡下手術は臍部に設けた1つの切開創から内 視鏡と鉗子を挿入し、手術操作を行う手術である。単孔 式腹腔鏡下手術は、1992 年に Pelosi らによって行われた 単孔式腹腔鏡下虫垂切除術で最初に報告された 1)。その後 1997年に Navarra らが経臍2点トロカーによる胆のう摘出 Arisa UEKI Satoshi ASAI Bao-Liang LIN Naohiko MIYAMOTO Sakura NAKADA 2)を、また 1999 年に Piskun らが臍内 2 点胆のう摘出 3)を 発表したものの、単孔式腹腔鏡下手術は手技も難しく汎 用されるには至らなかった。 その後、2004年に NOTES という体表の術創をつくらな い腹腔内アプローチが報告され 4)、これを応用し臍を胎生 期の生理的な孔と考え、臍をアクセスルートとした Embryonal NOTES(=単孔式腹腔鏡;TANKO)というコ ンセプトが考えられた 5)。TANKOは2009年より外科領域 で爆発的な拡がりを見せ、整容性に優れた低侵襲手術と して近年婦人科手術においても急速に普及している 5)。し かし手技の困難性から適応可能な術式は限られ、婦人科 では比較的単純な卵巣嚢腫切除術などに導入されてきた。 腹腔鏡下子宮筋腫核出術(以下、LM)は、すでに子宮 筋腫に対する標準的術式となったが、TANKO への適応は 従来の多孔式腹腔鏡下手術に比べて手技が特殊であり、 鉗子の干渉等により操作上の制限もあるため困難であっ た。これまで我々は腟式回収を施行することで、可視的 な創部を少しでも減らす努力をしたが、TANKO を応用し、 プラットフォームとして E・Z アクセス TM を臍に使用し、 下腹部の 2 mm 切開創から細径把持鉗子を用いた TANKO plus one puncture として reduced port surgery(RPS)による 子宮筋腫核出術を施行した一例を経験したので、本術式 における工夫と有用性について文献的考察を加えてここ に報告する。 症 例 39歳0回経妊0回経産、性交未経験。 家族歴・既往歴:特記すべき事なし 現病歴:過多月経を主訴に前医を受診し、経腟超音波 検査にて子宮底部に約 7 cm 大の子宮筋腫を認め手術目的 で当院紹介受診となった。術前に施行した MRI 画像(図 1a,b)では子宮底部に約 7 cm の筋層内筋腫を認め、内腔 への突出率は 50 %未満であった。このような術前評価を 平成27年2月(2015) 19 (173) a) . 矢状断 b) . 水平断 図1 MRI 画像(T 2強調像) 子宮底部に約7cmの筋層内筋腫を認め、内腔への突出率は50%未満であった a) . 臍部のプラットフォームと細径把持鉗子の配置 b) . 腹腔内より観察したEndoRelief R(○囲み) 図2 トロカー配置 行い、また性交未経験である臨床背景を考慮し、腟式操 作及び子宮鏡手術(TCR)が困難であると判断し LM の 方針とした。術前に GnRH アゴニストを 2 回投与した。 GnRH アゴニストの効果で子宮底部の筋腫核は経腟超音 波上約 4 cm にサイズが縮小したため、臍部にプラットフ ォームを設置し、左下腹部に細径把持鉗子を使用した 2 mmトロカーを挿入する RPS の方針とした。 手術手技及び術中所見 全身麻酔下に子宮マニピュレーターを挿入し手術を開 始した。臍部のプラットフォームは 5 mm トロカーが2本 挿入できるタイプ( E ・ Z アクセス TM ラッププロテクタ ー FF 0504 用及びラッププロテクター FF 0504 ; Hakko) を選択し、切開創は 1.5 cm とした(図2a) 。また、細径把 持鉗子として Endo Relief R(ホープ電子)を選択し、左 下腹部に挿入した。Endo Relief R はトロカーと一体化して いる鉗子であり、2 mm の創で挿入可能である(図2b) 。 5 mm 硬性鏡にて腹腔内を観察すると、子宮底部に約 3cm の子宮筋腫を認め、両側付属器は正常であった(図 3a) 。plus one puncture として細径把持鉗子を併用したこと で、従来の 4-puncture method に近い設定で、通常通りの LMが施行可能であった。核出は100倍希釈バソプレシン を局注し筋腫周囲に浸潤させ、モノポーラで筋層切開し、 細径把持鉗子で筋腫核を把持しながらクーパーを使用し 筋腫核周囲を剥離し核出を行った(図 3 b)。術中に内膜 穿破あり、3-0モノクリル R で内膜面を修復後に、筋層欠 損部を0-オペポリックス R 及び 0-モノクリル R で2層に連 続縫合し修復した(図3 c) 。筋腫は臍部のプラットフォー 20 (174) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 a) . 腹腔内所見 b) . 核出像 c) . 縫合後および筋腫核 図3 術中所見 :子宮筋腫核 :細径把持鉗子(Endo Relief R) 図4 術直後の創所見 臍部の創は約1.5 cm の切開創、左下腹部は約2 mm の切開 創(←)であり癒合良好であった ムより、メスによるモルセレーションを行い搬出した。 出血少量、手術時間は85分であった。 術後経過 術後経過は良好であり、術後4日目に退院、創部は癒合 良好であった。特に左下腹部の細径把持鉗子を挿入した 創については、ほとんど目立たない程度となった(図4) 。 術後2週間後の検診にても異常を認めず、紹介医へもどり 経過観察中である。 考 察 現在、日本では日本内視鏡外科学会が単孔式手術を総 称し TANKO と呼んでいる。これには臍部に複数のトロ カーを直接刺入する multiple trocar 法と臍部を切開しポー トを設置する multi channel port 法がある。今回選択した、 臍部にポートを留置する multi channel port 法には主に SILS TM 法(single incision laparoscopic surgery)と EZ アクセス TM 法がある。SILSTM 法は専用のポートが高価であり、また 専用の鉗子を用いることが多い。一方、EZ アクセス TM 法 では従来の鉗子を使用するため比較的安価に行うことが でき、今回は EZ アクセス法 TM を選択した。 TANKO は、創が最小限となり整容性にすぐれた術式で あり、また臍を搬出路として用いることもできる点でも 有用である。しかしながら従来の多孔式手術と比較して トロカー間が極端に狭いため作業は困難となり手術の難 易度は高くなる。このため合併症や事故が危惧され十分 なトレーニングが必要となる。いかにして器具の干渉を 避けるか、triangulation を維持するか、この二点を解決す るための工夫が重要となる。 パラレル法での縫合に比べると、今回のように plus one puncture として細径把持鉗子を併用して従来の多孔式手術 (4-puncture method)に近いトロカー配置で行う術式では、 操作性の向上が得られ、安全な手術が施行可能であり、 症例に応じてより小さな傷で LM 施行可能であると考え られる。TANKO に 5 mm トロカーを併用した 2-port LM 。彼 の適応については Kikuchi らが報告している 6)(表1) らは30例の 2-port LM を報告しており、7例程度の経験で 従来の多孔式手術(4-puncture method)と同様の手技を習 得でき、安全に LM 施行可能だとしている。RPS として LM を行う場合、このような基準を参考に筋腫核のサイズ や数などを考慮して適応を検討することが重要であろう と考えられる。 今回の症例は、この論文による検討をより低侵襲に行 った一術式であると言える。本術式の適応としては、 平成27年2月(2015) 21 (175) TCR 困難ながらサイズの小さな筋腫核であり、3 個以内 程度の筋腫核が適切だと考える。また細断によって臍部 からの搬出が可能であることも、本術式を選択する際に 重要な条件だと思われる。平野らによれば、モルセレー ターを使用した TANKO による LM も工夫により安全に 施行可能と報告している 7)が、モルセレーターの使用に 関しては安全性の問題が FDA で勧告され、LM 後の回収 方法自体への工夫も今後必要になると考えられる。筋腫 核の腟式回収が困難な場合、TANKO であれば臍部から 細断し搬出できる点も有用である。本症例に関しては性 交未経験であり、腟式操作に向かなかったことも臍部よ り筋腫を搬出する本術式を選択したひとつの要因である。 ただし前述の Kikuchi らは変性筋腫では手術時間の延長及 び出血量の増大傾向があると報告しており 6)、RPS の適 応からは変性筋腫を除外する必要性が示唆される。 本術式を用いた場合、筋腫核を把持する際に細径把持 鉗子では把持力が弱く、十分な牽引ができない状況も想 定できる。その際には腹壁から牽引のための縫合針を挿 入し、筋腫核を腹壁側に挙上するような方策もとりうる。 牽引などにより筋腫核を把持することで、十分な counter approach をとって核出術を行うことが出血量を軽減する ためにも重要だと考えられる。 また Kikuchi らは、縫合に要する時間が手術時間にもっ とも大きな影響を与えるとし、手技の体得が重要だと結 論している 6)。TANKO における器具の干渉は、縫合を困 難にする大きな要因だと考えられるが、plus one puncture として用いた細径把持鉗子で針の把持及び縫合糸の牽引 は十分可能であり、これを活用することで従来の多孔式 手術(4-puncture method)と同様の手技を遂行可能であっ た。 さらに重要なことは、術中に RPS としての LM が施行 困難と判断した際には、躊躇せず従来の LM に移行でき るよう術前に患者に説明し同意を得て手術を行うことで あろう。そもそもLMは妊孕性温存が目的の手術であり、 術後の血腫や創離解、妊娠時の切迫子宮破裂を予防する ための確実な筋層縫合は必須の手技であり、縫合に不安 が残る場合にはトロカーを追加し、安全に手術を完遂す ることが求められる。 結 語 TANKO は手術創が最小限となりしかも創部が臍に隠 れることから整容性に優れ、急速に普及しつつあるもの の、器具の干渉を回避するための特殊な技術も要する術 式である。これまで LM は RPS 導入が困難であると考え られ、従来の多孔式手術による術式に腟式回収を行う工 夫で、創部縮小を図ってきた。しかし、細径把持鉗子を 併用することで TANKO plus one puncture による LM が安 全に施行可能であった。筋腫核のサイズや数、変性の有 無などを検討し、十分なトレーニングを行うことで、よ り小さな傷で LM 施行可能となる症例があると考えられ る。実際には単孔式腹腔鏡手術と、従来の多孔式手術の 長所・短所を熟知し、症例に応じて適切に使い分けるこ とが必要であろう。 文 献 1) Pelosi MA, Pelosi MA 3rd. Laparoscopic appendectomy using a single umbilical puncture (minilaparoscopy). J Reprod Med. 1992;37(7):588-94. 2) Navarda G, Pozza E, Occhionorelli S, Carcoforo P, Donini I. One-wound laparoscopic cholecystectomy. Br J Surg. 1997;84:695. 3) Piskun G, Rajpal S. Transumbilical laparoscopic cholecystectomy utilizes no incisioins outside the umbilicus. J Laparoendosc Adv Surg Tech A. 1999; 9(4):361-4. 4) Kaloo AN, Singh VK, Jagannath SB, Niiyama H, Hill SL, Vaughn CA, Magee CA, Kantsevoy SV. Flexible transgastric peritoneoscopy: a novel approach to diagnostic and therapeutic interventions in the peritoneal cavity. Gastrointest Endosc. 2004;60:114-7. 5) 安藤正明, 海老沢桂子, 梅村康太, 長瀬瞳子, 藤原和子, 羽田智則, 太田啓明, 金尾祐之, 奥村みどり. 単孔式腹腔 鏡手術の適応拡大を目指して‐筋腫核出から後腹膜リ ンパ節郭清まで. 産婦手術2012;23:51-60. 6) Kikuchi I, Kumakiri J, Matsuoka S, Takeda S. Learning Curve of Minimally Invasive Two-Port Laparoscopic Myomectomy. J Soc Laparoendosc Surg. 2012;16:112-8. 7) 平野浩紀, 甲斐由佳, 中山彩, 毛山薫. EZ アクセスを利 用した単孔式腹腔鏡下筋腫核出術での安全かつ迅速な 筋腫核体外取出し方法. 日産婦内視鏡会誌 2011;27(2): 446-9. (H26.9.2受付) 22 (176) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 胎児期に発見されたGalen静脈瘤の1例 Prenatal diagnosis of a vein of Galen aneurysmal malformation a case report 横浜市立大学附属市民総合医療センター 総合周産期母子医療センター Maternity and Neonate Center, Yokohama City University Medical Center, Yokohama 大森 春 Haru OHMORI 青木 茂 Shigeru AOKI 榎本紀美子 Mikiko ENOMOTO 長谷川良実 Yoshimi HASEGAWA 葛西 路 Michi KASAI 笠井 絢子 Junko KASAI 倉澤健太郎 Kentaro KURASAWA 高橋 恒男 Tsuneo TAKAHASHI 横浜市立大学医学部 産婦人科 Department of Obstetrics and Gynecology, Yokohama City University School of Medicine , Yokohama 平原 史樹 Fumiki HIRAHARA 要 旨 Galen 静脈瘤は極めて稀な脳動静脈奇形であり、特に胎 児期に発症した場合は予後不良である 1)。今回、妊娠中に Galen 静脈瘤と診断され、生後ただちに血管内治療を行い 経過が良好な症例を経験したので報告する。 症例は39歳の初産婦。妊娠37週に胎児超音波検査で頭 部正中に嚢胞及び心拡大を認め、超音波カラードップラ ー検査によって Galen 静脈瘤と診断された。出生後に、さ らなる心不全の悪化が予想されてため、選択的帝王切開 で分娩とし、生後当日及び2日目に動脈塞栓術(TAE)施 行した。Galen 静脈瘤のシャント血流の消失により心不全 の改善を認め、児は出生後23日に退院した。 Galen 静脈瘤は出生後に心不全を生じることが多いた め、出生直後から治療が必要になる。Galen 静脈瘤が疑わ れたときは、正確に病態を把握し、治療の適応と治療時 期を NICU 医師、脳外科医師と協議し、時期を逸せずに 治療を行うことが肝要である。 Key Words:Galen 静脈瘤、胎児診断、頭蓋内嚢胞、血管 内治療 緒 言 Galen 静脈瘤は稀な脳血管奇形であり、頭蓋内血管奇形 の1%を占めるに過ぎない 2)。これは小児頭蓋内血管奇形 の 30 %にあたるとされる 3)。Galen 静脈瘤には、真の Galen大静脈が拡張した vein of Galen aneurysmal dilatation (VGAD)と発生学的に Galen 大静脈ではなく胎生期の静 脈でmedian vein of prosencephalon の遺残が拡張した vein of Galen aneurysmal malformation(VGAM)がある。胎児期に 頭蓋内嚢胞や心拡大を契機に発見される Galen 大静脈瘤は 最重症例であり、その予後は一般的に不良であるとされ ている。4)∼7)しかしながら、近年は血管内手術による塞 栓術で治療成績の向上が見られる。今回、我々は妊娠 37 週にGalen静脈瘤と診断され、出生後に血管内治療を行い 経過が良好な症例を経験したので報告する。 症 例 39歳、0経妊0経産 。既往歴、家族歴に特記事項はなし。 妊娠経過は順調であったが、妊娠 37 週 1 日の妊婦健診 時に施行した超音波検査で約 2 × 3 cm 大の胎児頭蓋内嚢 胞の存在が疑われ、4日後の再検査で胎児の心拡大、脳室 拡大もみられたため前医へ紹介搬送された。前医で施行 した超音波検査で、胎児頭蓋内に血流を伴う嚢胞を認め Galen 静脈瘤と診断され、妊娠38週0日に出生後に脳血管 治療が可能である当院へ母体搬送された。 当院で施行した超音波検査では、BPD 9.8 cm(+2.08 SD) と軽度の拡大を認め、頭部正中には3.4×2.1 cm 大の嚢胞 性病変があり、内部はカラードップラーでモザイク様の 血流がありシャントの存在が疑われた(図 1)。心胸郭断 面積比(CTAR)は 39.2 %で心拡大を認め、上大動脈 (SVC)経6.3 mm 、下大静脈(IVC)経7.2 mm とSVC は IVC に比して拡張していた。胸腹水や皮下浮腫はなく、 胎児心拍数陣痛図は reassuring で子宮収縮は認めなかっ た。MRI では、胎児の第 3 脳室の底部に拡張した血管の flow void を認めた(図2) 。超音波検査と MRI 検査の所見 から Galen静脈瘤と診断した。出生直後よりシャントから の静脈還流増加による心不全が生じることが予想された ため、脳外科待機の状況下で帝王切開術の方針とし、児 平成27年2月(2015) 23 (177) 図 1 妊娠38週の胎児のカラードップラー画像 正中の嚢胞状病変はカラードップラーで血流が認められる。 図 2 妊娠38週での矢状断 MRI 画像 第3脳室の底部に拡張した血管のflow voidを認める。 図3 左:塞栓前 右:塞栓後 塞栓前:Galen静脈瘤への豊富な血流を認める。 塞栓後:Galen静脈瘤内のシャント血流は著しく減少している。 娩出後に新生児 Galen 静脈瘤の治療適応決定の指針である Neonatal Evaluation Score(NES)に従って評価し、治療方 針を決定することにした。妊娠38週2日で選択的帝王切開 を施行した。 児は 3710 g(HFD)の男児で、身長55 cm 、頭囲36.5 cm Apgar 6/8、UapH 7.288、BE-4.1。NICU 入室後に努力呼 吸を認め、酸素投与下でもSpO 2 90%未満であり自発呼吸 では酸素化を保てなかったため、気管挿管し人工呼吸器 管理を開始したが、出生後 2 時間で収縮期血圧 40 mmHg と preshock 状態となった。臍動静脈カテーテルを留置し 昇圧剤を投与するも状態が安定せずシャントからの静脈 還流増加による心不全と判断した。新生児 Galen 静脈瘤の 治療適応決定の指針である Neonatal Evaluation Score(NES) は12-13点(心機能2点、脳機能2-3点、呼吸機能2点、肝 機能 3 点、腎機能 3 点)であり、緊急脳血管治療の方針と した。生後 5 時間で臍動脈経由による脳血管造影を行い、 前大脳動脈・前脈絡叢動脈・後脈絡叢動脈・視床穿通動 脈が関与するガレン静脈瘤(VGAM)と診断した。まず 24 (178) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 表1 Neonatal Evaluation Score 左内頚動脈からのアプローチで前脈絡叢動脈の枝を塞栓 し、続いて右内頚動脈からのアプローチで前脈絡叢動脈 の枝と前大脳動脈の枝を塞栓した。しかし術後も血流が 残存しており、人工呼吸、昇圧剤から離脱できず循環状 態が不安定のため、2日後に塞栓術を再度施行した(図3) 。 左内頚動脈からのアプローチで前脈絡叢動脈の枝を塞栓 し、続いて椎骨動脈からのアプローチで外側後脈絡叢動 脈の枝と前大脳動脈の枝を塞栓した。再塞栓術後は徐々 に循環状態が安定し、日齢 8 に抜管、日齢 23 日に退院し た。生後4ヵ月半の時点で体重が8035 g(+0.9 SD)で神経 学的異常所見なく、成長発達に問題は認めていない。 考 察 胎児期発症の Galen 静脈瘤は一般的に予後不良であり、 塞栓術を受けた胎児期発症の Galen 静脈瘤の 22 例の分析 では、死亡率 50 %と報告されている 8)。本症例で救命可 能であった理由としては、以下の2点が考えられる。胎児 期に心機能を含めた診断と評価が十分に行われたこと、 時期を逸せずに TAE を施行したことである。 本症例における Galen 静脈瘤の発見契機は、頭部の嚢胞 性病変と心拡大であった。 Lasjaunias ら 2)による Galen 静 脈瘤120例の後方視的検討では、出生前の診断例は24例で、 50例が新生児期、35例が幼児期、12例が年長児期に Galen 静脈瘤と診断されたと報告している。Galen 静脈瘤は静脈 瘤サイズが大きいほど予後は不良で、胎児期に発見され る Galen 静脈瘤は最重症例であり、頭部の異常嚢胞像とし て発見されることが多い。胎児期の超音波検査で発見さ れる頭部の嚢胞には、他にもクモ膜嚢胞や脳梁欠損を伴 った半球間嚢胞があるが、クモ膜嚢胞も半球間嚢胞も嚢 胞内に血流は示さないので Galen 静脈瘤との鑑別は容易で ある 9)。一方で、新生児期発症例では高拍出性心不全、幼 児期以降では頭囲拡大、頭痛、痙攣でみつかることが多 い。Galen 静脈瘤は、比較的まれな疾患ではあるが、静脈 瘤サイズが大きければ比較的容易に胎児診断が可能なの で、妊娠中の超音波検査で胎児に心拡大を認めた場合に は頭蓋内病変にも注意するとともに、胎児頭部の異常嚢 胞像を見逃さないようにする必要がある。 出生後の Galen 静脈瘤の治療には動脈塞栓術(TAE)が 有用であった。Galen 静脈瘤を有する患者の基本方針は、 年齢、臨床症状、奇形の血管造影検査での血管構造によ り異なる。頭蓋内に動静脈シャントがあっても、出生前 の胎児循環動態では心不全が顕在化することは少ないが、 出生前に診断されるほとんどの症例は出生直後から心不 全を起こす 10)。これは、出生前の胎盤循環では肺循環は 高抵抗であるが、出生とともに肺抵抗は徐々に低下する ことに加え、胎盤循環がなくなるため体循環の血管抵抗 が上昇し、体血圧が上昇するため、頭蓋内の動静脈シャ ント量が増加し右心系への静脈還流量が増加し肺高血圧 が起き、結果として心房と動脈管レベルの右左短絡が起 き、低酸素血症になる 9)ためである。このため、妊娠中 に胎児の Galen 静脈瘤が疑われたときは、正確に病態を把 握し、治療の適応と治療時期を NICU 医師、脳外科医師 と協議し、時期を逸せずに治療を行うことが肝要である。 新生児 Galen 静脈瘤の治療適応決定の指針として、臨床 像を心機能、脳機能、肝機能(凝固系の機能も含む) 、腎 機能から評価した Neonatal Evaluation Score(NES)が使用 されている 3)。(表 1)。NES が 7 点以下の最重症例は、積 極的な治療の対象にはならず、NES 8点以上が血管内治療 の適応であるとしている。さらに、NES 8点以上の症例の うち、NES が 8 点∼ 12 点の場合には患者の救命を目的と した緊急の塞栓術が、また NES が13点以上の軽症例では、 患者の成長を待ち、より安全な条件下で塞栓術を施行す 平成27年2月(2015) 25 (179) べきとしている。Lasjauniasら 11)は新生児期に緊急で血管 内治療を行った23症例の長期予後は、良好17%、やや精 神発達遅延 26 %、高度遅延 4 %、死亡 52 %であったと報 告している。緊急で行われる血管内治療の予後は不良で あるが、NES が 13 点以上の軽症例では、患者の成長を待 ち生後 5 ヵ月頃まで 待機し、血管内治療を行うことがで きれば、治療に伴う危険と脳機能障害の発生を最小限に 抑えつつ、最大の治療効果を得ることが可能としている。 本症例はNES12-13点であり緊急血管内治療の適応であり、 2度の塞栓術により児を救命することが出来た。 結 語 今回、我々は頭部の血流豊富な嚢胞から Galen 静脈瘤と 診断し、出生後に血管内治療を施行して心不全の改善を 得た 1 例を経験した。Galen 静脈瘤は出生後に心不全を生 じることが多いため、出生直後から治療が必要になる。 胎児の頭部の異常嚢胞像として発見される Galen 静脈瘤は Galen静脈瘤の最重症例であり、出生直後から治療を必要 とすることが多い。治療の適応と治療時期については NICU 医師、脳外科医師と協議し、時期を逸せずに治療を 行うことが肝要である。 参考文献 1) 宮川美智子, 小平隆太郎, 久富幹則, 出生後より心不全 を呈した. Galen 静脈瘤の 1 例. 日本新生児学会雑誌. 1991, 27 (1), 349. 2) Lasjaunias P, Rodesch G, Terbrugge K, Pruvost P, Devictor D, Comoy J, Landrieu P. Vein of Galen aneurysmal malformations. Report of 36 cases managed between 1982 and 1988; Acta Neurochir (Wien). 1989;99 (1-2) :26-37. 3) Lasjaunias P, Alvarez H, Rodesch G, Garcia-Monaco R, Ter Brugge K, Burrows P, Taylor W. Aneurysmal Malformations of the Vein of Galen. Follow-up of 120 Children Treated between 1984 and 1994. Interv Neuroradiol. 1996 Mar 30;2(1):15-26. Epub 2001 May 15. 4) Amacher AL, Shillito J Jr. The syndromes and surgical treatment of aneurysms of the great vein of Galen. J Neurosurg. 1973 Jul;39(1):89-98. 5) Hoffman HJ, Chuang S, Hendrick EB, Humphreys RP. Aneurysms of the vein of Galen. Experience at The Hospital for Sick Children, Toronto. J Neurosurg. 1982 Sep;57(3):31622. 6) Jones BV, Ball WS, Tomsick TA, Millard J, Crone KR. Vein of Galen aneurysmal malformation: diagnosis and treatment of 13 children with extended clinical follow-up. AJNR Am J Neuroradiol. 2002 Nov-Dec;23(10):1717-24. 7) Komiyama M, Nakajima H, Nishikawa M, Yamanaka K, Iwai Y, Yasui T, Morikawa T, Kitano S, Sakamoto H, Nishio A. Vein of galen aneurysms. Experience with eleven cases. Interv Neuroradiol. 2001;7(Suppl 1): 99-103. 8) Friedman DM, Verma R, Madrid M, Wisoff JH, Berenstein A. Recent improvement in outcome using transcatheter embolization techniques for neonatal aneurysmal malformations of the vein of Galen. Pediatrics.1993;91:583586. 9) Diana W. Bianchi, Timothy M. Crombleholme, Mary E.Dalton: ニューイングランド周産期マニュアル: 南 山堂. 10)小宮山雅樹:新生児の動静脈シャントに対する脳血管 内治療.脳神経外科速報vol17 no.3 347-353,2007 11)Lasjaunias PL, Chng SM, Sachet M, Alvalez H, Rodesch G, Garcia-Monaco R. The management of vein of Galen aneurysmal malformations. Neurosurgery.2006 Nov;59(5 Suppl 3):S184-94; discussion S3-13. (H26.10.1受付) 26 (180) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 平成25年度 神奈川産科婦人科学会 婦人科悪性腫瘍登録集計報告 A report of malignant tumors of gynecology in Kanagawa Prefecture (2013) 神奈川産科婦人科学会婦人科悪性腫瘍対策部 Committee of malignant tumor of Kanagawa Society of Obstetrics and Gynecology 仲沢 経夫 Tsuneo NAKAZAWA 杉浦 賢 Ken SUGIURA 雨宮 清 Kiyoshi AMEMIYA 木挽 貢慈 Koji KOBIKI 小山 秀樹 Hideki KOYAMA 近藤 春裕 Haruhiro KONDO 佐々木 康 Yasushi SASAKI 茂田 博行 Hiroyuki SIGETA 新井 努 Tutomu ARAI 土居 大祐 Daisuke DOI 村上 優 Masaru MURAKAMI 林 康子 Yasuko HAYASHI 平澤 猛 Takeshi HIRASAWA 宮城 悦子 Etsuko MIYAGI 渡邊 豊治 Toyoharu WATANABE 市原 三義 Mitsuyoshi ICHIHARA 鈴木 直 Nao SUZUKI 加藤 久盛 Hisamori KATO 東條龍太郎 Ryutaro TOJO 要 旨 はじめに 平成 25 年度の神奈川県産科婦人科医会婦人科悪性腫瘍 登録の集計結果を報告する。回答率は総施設数369に対し て255施設(69.1%)であった。施設別では、病院77.8%、 診療所 66.7 %であった。県下で治療された婦人科悪性腫 瘍総数は 3111 例で子宮頸癌 1330 例(扁平上皮癌 1128 例、 腺癌202例) (42.8%) 、子宮体癌833例(26.8%) 、卵巣癌 796例(25.6%) 、その他の悪性腫瘍152例(4.8%)であっ た。治療数の10年間の年次推移では平成25年度症例数は 平成 15 年度症例数に比べて、子宮頸癌で 944 例から 1330 例(1.41 倍)、子宮体癌で 537 例から 833 例(1.55 倍)、卵 巣癌で581例から796例(1.37倍)に増加した。平成24年 度症例数と比べると総症例数は2851例から3111例と、260 例増加した。 [0期]を除く子宮頸癌・体癌比率の年次推 移を検討すると、平成 24 年度は 0.76 : 1、平成 25 年度は 0.74:1で、この10年間は、子宮体癌数が子宮頸癌数を上 回っていた。日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会の平 成 24 年度の子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌の全国集計と神 奈川県の平成 24 年度の集計結果とを比較検討すると、神 奈川県では子宮頸癌の比率が少ないことが示された。 神奈川産科婦人科学会(神奈川県産科婦人科医会)婦 人科悪性腫瘍対策部では、平成4年度より婦人科悪性腫瘍 登録を行っている。この程、平成 25 年度(1 月∼ 12 月を 年度とする)の集計結果がまとまったので報告する。 Key words:婦人科悪性腫瘍登録 神奈川産科婦人科学会 日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会報告 方 法 悪性腫瘍登録の方法は、登録用紙を平成 26 年 1 月に県 内各医療施設に郵送し、回答を依頼した。平成 25 年 1 月 から平成25年12月までに初回治療をおこなった症例数を、 進行期分類に従って、報告してもらった。なお、子宮頸 癌、子宮体癌の進行期分類は、日産婦2011、FIGO 2008と した。子宮頸癌 0 期(CIS)及び、子宮体癌 0 期(子宮内 膜異型増殖症)は、日産婦2011、FIGO 2008では進行期か ら除外されたが、これまでの調査報告との継続性も考慮 し、[0 期]として登録した。平成 26 年 6 月までに回答さ れた結果を集計し以下の項目について検討した。 1. 回答率 2. 治療症例数 3. 子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌の 10 年間の治療症例数 年次推移 4. 子宮頸癌と子宮体癌の症例数の比率とその年次推移、 全国集計との比較 平成27年2月(2015) 5. 平成24年度登録症例の全国集計との比較 6. 施設別の治療例数 結果及び考察 1. 回答率(表1) (図1) 平成 25 年度の回答率は総施設数 369 に対して 255 施設、 69.1 %であった。平成 15 年度∼平成 24 年度 1)∼ 10)の回答 率は55.2%∼84.2%であり、例年並みの回答率であった。 施設別の回答率は、病院が77.8%、診療所が66.7%であっ た。病院では医育機関、国公立病院、公的病院、その他 の病院の回答率がそれぞれ 100 %、84.2 %、85.0 %、 61.3 %であった(表 1)。医育機関の回答率はここ数年 100%が続いており、公立病院、公的病院も高い回答率を 維持している(図1) 。 2. 治療症例数(図2―4) (表2) 平成 25 年度に県下で治療された婦人科悪性腫瘍の総数 は3111例であった(図2、表2) 。また、 [0期] 、境界悪性 症例を除いた治療症例数は、子宮頸癌 569 例、子宮体癌 774 例、卵巣癌 604 例、その他 152 例、総数 2099 例であっ た(図 4)。子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌の臨床進行期別 症例数を表2に示す。その内訳は子宮頸癌1330例(扁平上 皮癌 1128 例、腺癌 202 例)(42.8 %)、子宮体癌 833 例 (26.8%) 、卵巣癌796例(25.6%) 、その他の悪性腫瘍152 例(4.8 %)であった。頸癌、体癌、卵巣癌それぞれ[0 期]、境界悪性例を除いた症例数の年次推移を、図 4 に示 す。 1) 子宮頸癌(図5) 子宮頸癌全体では[0期]761例(57.2%) 、ⅠA 期102 例(7.7%)であり、 [0期] 、ⅠA 期の多さが目立ってい る。組織型別に見ると扁平上皮癌では 0 期が 713 例 (63.2 %)と半数を上回るのに対し、腺癌では[0 期] は48例(23.8%)だった(表2) 。 2)子宮体癌(図6) 子宮体癌はⅠ期が 567 例(68.1 %)と 7 割近くなって おり、Ⅰ期症例の増加が目立つ。しかし、Ⅲ期・Ⅳ期 症例を合わせると153例(18.4%)と進行症例数は昨年 より若干減少していた。これは、平成 24 年度の登録か ら、進行期分類に変更があったためである。頸管腺の みに癌が及ぶものは、新進行期ではⅠ期に分類される ようになったことと、腹水(洗浄)細胞診陽性は進行 期に影響しなくなったためである。これにより、Ⅱ期 とⅢ期の症例が減少し、Ⅰ期症例が増加しているもの と考えられた。 3)卵巣癌(図7) 卵巣癌では境界悪性 192 例(24.1 %)、Ⅰ期 260 例 (32.7%) 、Ⅱ期50例(6.3%) 、Ⅲ期196例(24.6%) 、Ⅳ 期 81 例(10.2 %)であり、Ⅰ期症例とⅢ期症例が多い 例年の傾向は変わらなかった。 4)その他の悪性腫瘍(図8) その他の悪性腫瘍は152例報告があった。内訳は子宮 肉腫41例、転移性腫瘍29例、外陰癌9例、腹膜癌28例、 27 (181) 卵管癌21例、腟癌7例等であった。 3. 子宮頸癌(図5) 、子宮体癌(図6) 、卵巣癌(図7)の10 年間の治療例数年次推移 平成17年度以降、平成25年度まで子宮頸癌例数はゆる やかに増加していた。 [0期]を含めた子宮頸癌総数では、 平成 15 年度 944 例から 1330 例と 1.41 倍に増加していた (図3) 。 子宮体癌は全般に増加傾向であり、[0 期]症例を除い た推移でも増加傾向は同様であった(図 4)。[0 期]を含 めた子宮体癌総数では、平成25年度は平成15年度に比べ て1.55倍(537例から833例)に増加していた(図3) 。 卵巣癌症例数は、境界悪性症例を含めると、平成 15 年 度は581例であったが、増加を示し平成25年度では796例 と 1.37 倍の症例数となっていた(図 3)。また、境界悪性 を除いた症例数推移でも増加していた(図4) 。 4. 子宮頸癌と子宮体癌の症例数の比較とその年次推移、 全国集計との比較 1)∼18) 神奈川における子宮頸癌・体癌比率(いずれも[0 期] と異型増殖症を除く)の年次推移を図9に示す。頸癌:体 癌の比は、平成16年度 に子宮体癌数が子宮頸癌数を上回 って以降、この傾向は続いている。頸癌:体癌の比は、 平成23年度は0.75:1、平成24年度は0.76:1、平成25年 度は0.74:1であった。日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委 員会報告の最新の2012年度(平成24年度)報告 18)と当報 告の平成24年度報告 10)とで比較すると、頸癌:体癌は日 本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会報告では 0.86 : 1、神 奈川県登録では 0.76 : 1、となっており子宮頸癌に対する 子宮体癌の割合は全国比率より高い(図10) 。 5. 平成24年度登録症例の全国集計との比較 日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会報告の 2012 年度 (平成 24 年度)の子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌の集計 18) と当報告の2012年度(平成24年度)の集計結果 10)を比較 検討した。神奈川と全国集計を比較すると、全国集計と 比較し神奈川県では例年同様に、子宮頸癌の比率がやや 少なく、体癌及び卵巣癌の比率がやや多い傾向があり、 [0期] 、境界悪性腫瘍を除いた症例数でも同様の傾向を示 した。 (図11) 6. 施設別の治療例数 治療例数の多い施設を 2 つの表(表 3、表 4)に分けて 提示し、[0 期]、境界悪性例数を除いた表(表 5)も作成 した。 図12と図13に紹介症例について示した。ほとんどの症 例が県内医療機関に紹介されていることと、かなりの紹 介症例が存在することが示された。 おわりに 報告書回答率は69.1%(255/369施設)であった。 症例数は 10 年間の推移をみると全般に増加していて、 28 (182) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 [0期] 、境界悪性症例を除いても同様の傾向であった。 この登録は神奈川県下の婦人科悪性腫瘍の動態を把握 する唯一の機会であり、この報告が皆様のお役立てば幸 いである。 今回の登録に協力いただいた会員各位に深謝する。な お本論文の主旨は第406回神奈川産科婦人科学会学術講演 会で報告した。 文 献 1) 小野瀬亮、雨宮清、新井正秀、今井一夫、木村昭裕、 小西英喜、木挽貢慈、斉藤馨、田島敏久、中山裕樹、 宮城悦子、村上優、柳澤和孝、横山和彦、高橋亨正、 八十島唯一:平成15年度神奈川県産科婦人科医会婦人 科悪性腫瘍登録集計報告、日産婦神奈川会誌、2005; 42:6-10. 2) 小野瀬亮、雨宮清、新井正秀、和泉滋、今井一夫、入 江宏、木村昭裕、草場徳雄、小西英喜、小林陽一、木 挽貢慈、斉藤馨、田島敏久、角田新平、宮城悦子、村 松俊成、柳澤和孝、横山和彦、後藤忠雄、高橋亨正、 中山裕樹、八十島唯一:平成16年度神奈川県産科婦人 科医会婦人科悪性腫瘍登録集計報告、日産婦神奈川会 誌、2006;42:148-151. 3) 小野瀬亮、雨宮清、和泉滋、今井一夫、入江宏、木村 昭裕、久布白兼行、小西英喜、小林陽一、佐治晴哉、 角田新平、宮城悦子、村松俊成、横山和彦、後藤忠雄、 中山裕樹、八十島唯一:平成17年度神奈川県産科婦人 科医会婦人科悪性腫瘍登録集計報告、日産婦神奈川会 誌、2007;43:27-30. 4) 小野瀬亮、雨宮清、和泉滋、今井一夫、入江宏、木村 昭裕、久布白兼行、小林陽一、佐治晴哉、角田新平、 土居大祐、宮城悦子、村松俊成、横山和彦、後藤忠雄、 中山裕樹、八十島唯一:平成18年度神奈川県産科婦人 科医会婦人科悪性腫瘍登録集計報告、日産婦神奈川会 誌、2008;44:32-35. 5) 小野瀬亮、雨宮清、小林陽一、小山秀樹、角田新平、 土居大祐、仲沢経夫、秦和子、林康子、林玲子、宮城 悦子、村松俊成、横山和彦、三上幹男、中山裕樹、八 十島唯一:平成19年度神奈川県産科婦人科医会婦人科 悪性腫瘍登録集計報告、日産婦神奈川会誌、2009 ; 45:38-41. 6) 小野瀬亮、雨宮清、小林陽一、木挽貢慈、小山秀樹、 杉浦賢、角田新平、土居大祐、仲沢経夫、秦和子、林 康子、林玲子、平澤猛、宮城悦子、村松俊成、横山和 彦、三上幹男、中山昌樹、中山裕樹、八十島唯一、東 條龍太郎:平成20年度神奈川県産科婦人科医会婦人科 悪性腫瘍登録集計報告、日産婦神奈川会誌、2010 ; 46:36-39. 7) 杉浦賢、雨宮清、小野瀬 亮、小林陽一、木挽貢慈、 小山秀樹、近藤春裕、佐々木康、茂田博行、角田新平、 土居大祐、林康子、林玲子、平澤猛、宮城悦子、横山 和彦、中山昌樹、中山裕樹、東條龍太郎:平成21年度 神奈川県産科婦人科医会婦人科悪性腫瘍登録集計報 告、日産婦神奈川会誌、2011;47:67-70. 8) 杉浦賢、雨宮清、仲沢経夫、木挽貢慈、小山秀樹、近 藤春裕、佐々木康、茂田博行、角田新平、土居大祐、 林康子、林玲子、平澤猛、宮城悦子、横山和彦、高橋 恒男、石塚文平、田島敏久、加藤久盛、東條龍太郎: 平成22年度神奈川県産科婦人科医会婦人科悪性腫瘍登 録集計報告、日産婦神奈川会誌、2012;49:10-13. 9) 杉浦賢、雨宮清、仲沢経夫、木挽貢慈、小山秀樹、近 藤春裕、佐々木康、茂田博行、角田新平、土居大祐、 林康子、林玲子、平澤猛、宮城悦子、横山和彦、高橋 恒男、石塚文平、田島敏久、加藤久盛、東條龍太郎: 平成23年度神奈川県産科婦人科医会婦人科悪性腫瘍登 録集計報告、神奈川産科婦人科学会誌、2013 ; 49 : 60-64. 10)杉浦賢、雨宮清、新井努、市原三義、木挽貢慈、小山 秀樹、近藤春裕、佐々木康、茂田博行、鈴木直、田島 敏久、角田新平、土居大祐、仲沢経夫、林康子、林玲 子、平澤猛、宮城悦子、村上優、横山和彦、渡邊豊治、 加藤久盛、東條龍太郎:平成24年度神奈川県産科婦人 科医会婦人科悪性腫瘍登録集計報告、神奈川産科婦人 科学会誌、2014;51:19-23. 11)稲葉憲之:婦人科腫瘍委員会報告〔2005年度患者年報〕 、 日産婦誌、2007;59:901-982. 12)小西郁生:婦人科腫瘍委員会報告〔2006年度患者年報〕 、 日産婦誌、2008;60:1001-1085. 13)小西郁生:婦人科腫瘍委員会報告〔2007年度患者年報〕 、 日産婦誌、2009;61:913-997. 14)櫻木範明:婦人科腫瘍委員会報告〔2008年度患者年報〕 、 日産婦誌、2010;62:827-910. 15)櫻木範明:婦人科腫瘍委員会報告〔2009年度患者年報〕 、 日産婦誌、2011;63:1055-1096. 16)青木陽一:婦人科腫瘍委員会報告〔2010年度患者年報〕 、 日産婦誌、2012;64:1029-1077. 17)青木陽一:婦人科腫瘍委員会報告〔2011年度患者年報〕 、 日産婦誌、2012;64:2340-2388. 18)青木大輔:婦人科腫瘍委員会報告〔2012年度患者年報〕 、 日産婦誌、2014;66:995-1038. (H26.10.6受付) 平成27年2月(2015) 29 (183) 表1 報告回答率(平成25年度) 図1 報告書回答率の年次推移 図2 悪性腫瘍治療数推移 総数及び[0期]と境界悪性を除いた例数 表2 平成25年 悪性腫瘍臨床進行期分類 総数3111例 30 (184) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 図3 疾患別症例数年次推移 図4 [0期] 、境界悪性を除いた治療症例数年次推移 2099例 図5 子宮頸癌治療数年次推移 図6 子宮体癌治療数年次推移 図7 卵巣癌治療数年次推移 図8 その他の悪性腫瘍の内訳(平成15∼25年) 図9 神奈川県 子宮頸癌・体癌比率年次推移Ⅰ期以上の症例 頸癌:体癌=0.76:1(平成24年度) 0.74:1(平成25年度) 図10 頸癌・体癌比率の年次推移 全国と神奈川県の比較 平成24年度 全国=0.86:1 神奈川県=0.76:1 平成27年2月(2015) 31 (185) 表3 治療数の多い施設(10施設) 図11 平成24年(2012年)における神奈川県と全国集計 (日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会報告)との比較 表4 治療数の多い施設(その2) 図12 県内紹介と県外紹介の比較 表5 治療数の多い施設( [0期]と境界悪性を除いた症例数) 図13 県内紹介内訳 32 (186) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 腹腔鏡下子宮全摘出術(TLH)後に5 mmポート孔に発症したポートサイトヘルニアの1例 Trocar-site hernia at 5-mm port after total laparoscopic hysterectomy : A case report 新百合ヶ丘総合病院 産婦人科 Department of Obstetrics and Gynecology, Shin-Yurigaoka General Hospital 永井 崇 Takashi NAGAI 佐柄 祐介 Yusuke SAGARA 田中 幸子 Yukiko TANAKA 大久保はる奈 Haruna OKUBO 高橋 寿子 Hisako TAKAHASHI 奥野さつき Satsuki OKUNO 井浦 文香 Ayaka IURA 竹本 周二 Shuji TAKEMOTO 田島 博人 Hiroto TAJIMA 浅田 弘法 Hironori ASADA 吉村 泰典 Yasunori YOSHIMURA 東海大学医学部産婦人科 Department of Obstetrics and Gynecology, Tokai University 浅井 哲 Satoshi ASAI 新川崎こびきウィメンズクリニック Kobiki Women’ s clinic 木挽 貢慈 Koji KOBIKI 概 要 腹腔鏡手術後のポートサイトヘルニア(Trocar Site Hernia : TSH)の多くは 8 mm 以上のポートからで、5 mm ポートでの発症はまれである。本症例は、腹腔鏡下子宮 全摘出術(Total Laparoscopic Hysterectomy : TLH)後に 5 mm ポート孔より発症し、絞扼の解除のみで腸管切除を要 する事なく経過したので報告する。症例は46歳、3経妊3 経産。近医にて子宮筋腫を指摘され、腰痛・月経痛・頻 尿症状出現し手術目的に当院紹介された。前壁体下部の 長径13 cm の筋層内筋腫の診断に対し、2ヵ月間の GnRHa 療法の後、当院にて TLH を施行した。手術時間 4 時間 19 分、出血量800 cc(セルセーバー回収血として400 cc返血) 、 摘出子宮重量 978 g であった。術後 1 日目より嘔気嘔吐出 現し、2 日目に腸閉塞の診断にて絶食、6 日目に流動食か ら開始し、一旦は退院に至るも嘔吐の再燃のため 13 日目 に緊急入院した。右下腹部に腫瘤を触知し、同日造影 CT 施行したところ、回腸のポートサイトヘルニア陥頓の診 断にて緊急手術を行った。ヘルニア門は1横指で、回腸は 浮腫状であったが血流は維持されており、還納し温存可 能であった。5 mm の TSH に関して、過去の報告例では、 多くが術後1週間以内に小腸閉塞症状を伴って発症してい る。腹腔鏡手術における早期合併症として TSH を十分念 頭におくべきと思われた。 Key Words:total laparoscopic hysterectomy, trocar site hernia, 5-mm port 諸 言 婦人科腹腔鏡手術における術後ポートサイトヘルニア の発症率は 0.5 %程度と報告されており 1)、その多く (97.2%)は8 mm 以上のポートからの発症である 2)。今回 我々は、TLH 後に5 mm ポート孔より発症したポートサイ ト陥頓ヘルニアを経験したので、文献的考察も含めて報 告する。 症 例 患者:46歳、3経妊3経産。153 cm、43.8 kg、BMI 18.7。 家族歴:特記事項なし 既往歴:13歳 虫垂炎手術 合併症:特記事項なし 現病歴:近医にて子宮筋腫を指摘され、腰痛、月経痛、 頻尿症状の増悪のため手術目的に当院紹介された。 初診時所見:触診上、子宮は臍高に至り、弾性硬。腟 鏡診にて、子宮頸管は保持され後方に偏位。経腟超音波 上、長径10 cm 超の筋層内筋腫を認めた。 細胞診:子宮頸部classⅠ、子宮内膜細胞診陰性。 骨盤単純 MRI 検査:前壁体下部の 130 × 120 × 100 mm の筋層内筋腫(図1) 。 血液検査所見:WBC 4300/μl、Hb 9.4 g/dl、Ht 30.5%、 平成27年2月(2015) 図1 骨盤造影MRI T2強調矢状断像 前壁体下部の130×120×100 mmの筋層内筋腫 33 (187) 図2 トロッカーの配置 ①臍部12 mm(エンドパス R XCEL ブレードレス10 cm Johnson&Johnson社) ②左下腹部12 mm(同7 cm) ③右下腹部5 mm(Versaport R 7 cm covidien社) ④下腹部正中5 mm(同上) 表1 術後経過と血液検査所見 図3 右下腹部ポート抜去部の術中写真(初回手術時) 腹膜欠損は5 mmを超えている 図5 腹部造影 CT(POD 13) 再入院時、右下腹部に筋膜欠損部より膨隆する回腸(矢 印)を認める。 図4 腹部単純写真(POD 2) 小腸鏡面像を認める 34 (188) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 表2 各ヘルニアの発症様式 図6 ヘルニアの発症機序による分類 表3 婦人科腹腔鏡手術における5 mm ポート孔のヘルニア報告例 Plt 27.5万/l、TP 7.2 g/dl、Alb 4.2g/dl、T-bil 0.58 mg/dl、 AST 11 U/l、ALT 5 U/l、ALP 85 U/l、LDH 124 U/l、γGTP 8 U/l、CK 67 U/l、Amy 56 U/l、BUN 15.9 mg/d、 Cr 0.60 mg/d Na 139 mEq K 3.9 mEq Cl 107 mEq 91 mg/d CA125 6U/ml。 子宮筋腫の縮小を期待し、2 ヵ月間の GnRHa 療法(リ ュープリン注射用キット1.88 R 皮下注 2回)の後、自 覚症状の改善を目的として手術治療の方針とした。TLH を施行。 手術所見:砕石位、気腹法、semi-closed 法(臍部筋膜 まで切開後、ペアン鉗子で腹膜穿破)にて臍に 12 mm ポ ート設置後、カメラを挿入しダイヤモンド型にトロッカ ーを配置した(図2) 。 腹腔内所見として GnRHa 治療が奏効しておらず、巨大 子宮が骨盤腔を占拠し、術中の解剖学的なオリエンテー ションに難渋した。特に、左右尿管の確認が困難であっ たため、筋腫を半核出させ子宮頸部周囲のスペースを確 保した後に、尿管を確認し子宮動脈上行枝を結紮した。 摘出子宮の体腔外搬出は、左下腹部ポートよりモルセレ ーター R を使用した。閉創時の鏡視下所見として、右下 腹部の腹膜欠損は5 mm より大きく、推定では少なくとも 2 cm 程度に拡大していた(図 3)。一方、左下腹部および 正中の腹膜欠損は拡大しておらず、腫瘍が大きいために 助手による術中操作範囲が広かった事が要因と考えられ た。腹部閉創は臍部および左下腹部は腹膜と筋膜を一括 して2-0バイクリル Z 縫合にて閉鎖した。正中および右下 腹部は4-0 バイクリルにて皮下縫合のみ行った。手術時間 4 時間 19 分、出血量 800 cc(セルセーバー回収血として 400 cc 返血) 、摘出子宮重量978 g であった。 術後経過と血液生化学所見を表1に示す。術後1日目よ り嘔気嘔吐出現し、2日目も症状持続したため、腹部単純 写真にて小腸の鏡面像確認(図 4)、術後腸閉塞の診断に て同日胃管挿入した。5日目に腹部単純写真にて鏡面像の 改善をみせ、胃管を抜去し、6日目より流動食から開始し た。経過中、血液所見にて炎症反応を示す所見に乏しく、 腸管壊死を示す CK、LDH の上昇は認めなかった。また、 明らかな腹部腫瘤を触知しなかった。嘔気症状の完全な 寛解は得られなかったが、食事摂取は可能であったので、 粥食まで摂食可能となった 11 日目に退院した。嘔吐症状 の再燃のため 13 日目に再入院、右下腹部に軟な腫瘤を触 知し緊急造影 CT 施行(図5) 。右下腹部5 mm ポート孔へ の腹壁瘢痕ヘルニアおよびヘルニア嵌頓の診断にて、同 日、当院消化器外科により緊急手術施行。嵌頓解除及び ヘルニア修復術を開腹下で行った。 再手術時所見:右下腹部皮切を 4 cm 延長し、筋膜下に 回腸を同定。ヘルニア門は1横指。血流は維持されていた が浮腫状であった。ヘルニア門を頭側尾側へ1 cm 切開し、 さらに内側へ 1 cm 切開し、腸管を腹腔内に還納した。筋 膜は0号 PDS で縫合し、皮下組織を3―0バイクリルにて 閉創した。 再手術後、3 日目に流動食から食事摂取再開し、H 2 ブ ロッカーに大建中湯併用し内服。15日目経過良好のため、 退院した。術後半年以上経過した現在までに、再手術後 の腸閉塞症状の再燃は無い。 平成27年2月(2015) 35 (189) 考 案 2012 年の Swank らの TSH に関する大規模な systematic review では、婦人科外科の症例数 300 例以上の 22 の文献 (RCT 1 編、前向きコホート研究 5 編、後ろ向きコホート 研究 16 編)から平均してその発症率を 0.5 %としており、 ヘルニアの患者側因子として高齢(60 歳以上)・ BMI 高 値が、技術的要因としてトロッカーの形状(円錐<三角 錐)と直径(12 mm 以上)・手術時間(80分を cut off 値) がハイリスクである可能性を指摘している 1)。その一方、 トロッカーの挿入方法や挿入部位・筋膜の閉鎖の有無に おいては有意差を認めない文献が多いと報告している。 今回の我々の症例では、手術時間は長いが、これ以外の リスク因子に関しては特に要件を満たしていない。 また、2004年に Tonouchi らは TSH の発症様式に応じて early-onset type、late-onset type、special type の3種類に分類 して報告している(図 6)2)。いずれも腹直筋鞘前葉後葉 と固着するが、early-onset type ではヘルニア嚢は腹膜で覆 われず、術後数日中に小腸閉塞症状を伴って発症する。 Late-onset type ではヘルニア嚢は腹膜で覆われ、術後数ヵ 月経過して発症し小腸閉塞症状を伴わない(表 2)。今回 の症例は、術中所見と発症経過から、ヘルニアの分類と しては early-onset type と考えられた。しかし、再入院する まで食事摂取も可能な時期があった事から、術後しばら くの間は完全閉塞には至っていなかったと考えられる。 これは、ヘルニアの形態が当初は、腸管壁の一部のみが 陥頓を起こす浅い Richter 型であったと推定され、腸管壁 の一部だけが陥頓していた状態から、食事摂取開始後に 次第に陥頓部位が大きくなり、手術が不可避な状態に至 った可能性がある。Richter 型ヘルニアにおいては、腸壁 全周の2/3以上の陥頓でなければ完全な腸閉塞は発症し ない scarpa の法則がある。術後に陥頓が次第に強くなり、 再手術時に完全閉塞に至ったと考えるのが妥当であろう。 5 mm ポートの TSH に関して、過去の婦人科手術における 報告例では、今回の我々の症例と同様に多くが術後1週間 以内に嘔気嘔吐といった小腸閉塞症状を伴って発症し、 いずれも筋膜の閉鎖はなされていなかった(表 3)3)∼ 6)。 筋膜の閉鎖の有無は、先述のように有意なリスク因子に はならないとする報告が多いが、1993 年に Kadar らが報 告して以来 7)、婦人科手術においては 12 mm トロッカー の閉鎖が有意に TSH のリスクを減らすとされ、12 mm 以 上のカメラポートやモルセレーター使用ポートの閉鎖は 積極的に行われてきた。今回のように手術時間が長く、5 mm ポートでも操作範囲が広い症例に関しては筋膜閉鎖も 考慮すべきかと思われた。本症例のように筋腫腫瘍径が 10 cm を超え、重量が1 kg 近い場合には、助手のアシスト するポートに負担がかかり、自然にトロッカーが抜けて しまい繰り返し再挿入する状況が起こりうる。そのため に実際の筋膜欠損が5 mm よりはるかに大きくなる可能性 があるからである。ただし、発症の予測や予防は非常に 困難な合併症であるので、重要なことは、発症時期を十 分認識した上で、迅速に適切な検査と対応を行う事であ ると考える。 結 語 腹腔鏡手術における早期合併症として TSH を十分念頭 におき、適切な対応をすべきと思われた。また、手術が 長時間あるいはポートでの手術操作が大きい場合には、 ポート孔の筋膜閉鎖も考慮すべきと思われた。 本論文の要旨は第405回神奈川産科婦人科学会にて発表 した。 文 献 1) H.A.Swank.: Systematic review of trocar-site hernia. British journal of Surgery 2012; 99:315-323. 2) Tonouchi H, et al.: Trocar site hernia. Arch Surg 2004; 139:1248-1256. 3) Toub DB, et al.: Omental herniation through a 5-mm laparoscopic cannula site. J Am Assoc Gynecol Laparosc 1994; 1:413-414. 4) Eltabbakh GH, et al:Small bowel obstruction secondary to herniation through a 5-mm laparoscopic trocar site following laparoscopic lymphadenectomy. Eur J Gynaecol Oncol 1999; 20(4):275-276. 5) Thapar A, et al.: 5mm port site hernia causing small bowel obstruction. Gynecol Surg 2010; 7:71-73. 6) Yamamoto M, et al.: Laparoscopic 5-mm trocar site herniation and literature review. JSLS 2011; 15:122-126. 7) Kadar N,et al.: Incisional hernias after major laparoscopic gynecologic procedures. Am J Obstet Gynecol 1993; 168:1493-1495. (H26.10.7受付) 36 (190) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 妊娠経過中、深部静脈血栓症を契機に発見された胆管癌の1例 A case report of Pregnancy Associated with cholangiocarcinoma diagnosed after an episode of deep vein thrombosis 東海大学医学部付属病院 専門診療学系 産婦人科 Department of Obstetrics and Gynecology, Tokai University 楢山 知明 Tomoaki NARAYAMA 西村 修 Osamu NISHIMURA 佐藤 茂 Shigeru SATOH 三塚加奈子 Kanako MITSUDUKA 東郷 敦子 Atuko TOGO 石本 人士 Hitoshi ISHIMOTO 和泉俊一郎 Shunichiroh IZUMI 三上 幹男 Mikio MIKAMI 概 要 症例は44歳、1経妊1経産。妊娠31週1日、右下肢の腫 脹及び疼痛を認め前医受診し、精査目的で入院管理とな った。下肢静脈超音波にて深部静脈血栓症(deep vein thrombosis 以下 DVT)と診断され、当院に母体搬送となっ た。 入院後の精査にて、右大腿静脈から右大伏在静脈にか けて広範囲の DVT を認め、ヘパリンナトリウムの持続点 滴を開始した。妊娠 35 週より、軽度肝障害を認めたが、 胆道系酵素の上昇は認めなかった。妊娠 35 週 6 日、下大 静脈(以下 IVC)フィルターの挿入を試みるも、腹部腫 瘤により I VC が圧排されフィルターの挿入が困難であっ た。腹部 MRI を施行したところ、肝臓の S1 領域に約 10 cm 大の巨大腫瘤が存在し、胆管癌が疑われた。妊娠36週 0日、陣痛発来にて2,320 g 女児を経腟分娩。分娩後の造影 CT では、多発肝転移・IVC 内腫瘍塞栓を伴う肝内胆管癌 が疑われたが、積極的治療の適応はなく産褥 91 日目に多 臓器不全にて死亡した。 妊娠中は、凝固能亢進や妊娠子宮による静脈の圧排に より血栓症が発症しやすい傾向にある。その一方で、悪 性腫瘍も全身の静脈血栓症発症の危険因子とされている。 特に進行癌では、DVT の発症頻度が有意に上昇するため、 妊娠中に広範囲の血栓症を認めた場合は、悪性腫瘍の存 在を念頭に置いて精査管理することが重要であると考え られた。 Key words:cholangiocarcinoma, pregnancy, deep vein thrombosis, Trousseau’ s syndrome 緒 言 妊娠に合併する消化器系悪性腫瘍は稀であり、発見時 には進行癌として診断される症例が多い。また Trousseau’ s syndrome は悪性腫瘍により凝固線溶系の異常が惹起され、 さまざまな血栓症を呈するとされている 1)。今回、妊娠経 過中に DVT を契機に発見された進行胆管癌の 1 例を経験 したので文献学的考察を含め報告する。 症 例 患者:44歳、1経妊1経産 既往・家族歴:特記事項なし 現病歴:自然妊娠成立後、近医にて妊婦健診を施行し ていた。妊娠経過に異常は認めていなかった。妊娠31週1 日に右下肢の腫脹及び疼痛を認めたため前医を受診し、 精査目的で入院管理となった。下肢静脈超音波にて DVT と診断され、翌日当院に母体搬送された。 入院時現症:身長 163 cm、体重 59 kg(非妊時 50 kg)、 BMI 22.2。血圧117/62 mmHg、脈拍101回/分、体温36.7 度。右側優位の下肢浮腫を認めた。 下肢静脈超音波所見:右大腿静脈から右大伏在静脈に かけて広範囲の DVT を認めた。 血液生化学所見:入院時の血液検査では、軽度の貧血 と、CRP が軽度高値を示した。凝固系では D-dimer、フィ ブリノーゲン分解産物(FDP)の上昇を認めた。AT-Ⅲ、 プロテインC・Sは正常値で明らかな血栓素因は認めなか った。 また、胆道系酵素の軽度上昇を認めたが肝酵素は正常 範囲内であった(表1) 。 入院後経過: DVT に対して入院後直ちに、ヘパリンナトリウム 15,000単位/日の持続点滴を開始した。また、子宮収縮を 頻回に伴っていたことから、塩酸リトドリンによる治療 も行った。妊娠 35 週 1 日、AST 60 U/L、ALT 55 U/L と 肝酵素の軽度上昇を認めたが、入院時に認めた胆道系酵 素の上昇は認めなかったために塩酸リトドリンによる薬 剤性の肝障害と考えた。下肢静脈ドプラ超音波にて DVT 範囲の縮小認めるものの、右大腿静脈の DVT は消失せず (表 2)、ヘパリンナトリウム治療抵抗性の血栓症と考え、 経腟分娩時の肺血栓塞栓症(以下 PE)予防目的に、妊娠 平成27年2月(2015) 表1 入院時採血所見 図1 骨盤 MRI 所見(T2強調冠状断画像) 肝内転移を伴う肝 S 1を中心とした100 mm 大の巨大 な辺縁不整の充実性腫瘤を認めた。 35週6日、下大静脈(以下 IVC)フィルターの挿入の方針 となった。IVC フィルター挿入時、腹部腫瘤により IVC が圧排され、ガイドワイヤーが通過せず、挿入が困難で あった。そのため、精査目的にて腹部 MRI を施行したと ころ、肝臓のS 1領域に胆管癌を疑う巨大腫瘤が存在して いた(図 1)。同日の採血にて、CA 19-9 : 22,521 U/ml (正常値: 37 U/ml 未満)、PIVKA-Ⅱ: 109 mAU/ml(正 常値: 40 mAU/ml 未満)、CEA : 28 ng /ml(正常値: 5 ng/ml未満) 、AFP:203 ng/ml(正常値:10 ng/ml未満) と腫瘍マーカーの上昇を認めた。同日夜間に前期破水と なり、陣痛が発来したため、ヘパリンナトリウムを中止 し、経腟分娩の方針となった。妊娠36週0日、経腟分娩に て2,320 g の女児を出産した。分娩経過は良好であった。 産褥経過: 分娩 8 時間後に施行した造影 CT において肝門部に 96 mm 大の腫瘤を認めた。肝部下大静脈はほぼ閉塞しており、 肝実質には多発肝転移を疑わせる低吸収域の腫瘤が多数 存在していた。以上から多発肝転移・ IVC 内腫瘍塞栓を 伴う肝内胆管癌が疑われた(図 2)。積極的治療の適応は なく緩和医療の方針となり産褥 17 日目に退院となった。 産褥 34 日目に T-bil : 20 mg /dl と閉塞性黄疸を認めたため 再入院となった。内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP) 37 (191) 表2 D-dimer と DVT 範囲の推移 DVT 範囲の縮小認めるものの、右大腿静脈の DVT は消失 を認めなかった。 図2 分娩8時間後胸腹部造影CT画像 右:胸部造影 CT 水平断画像 左:胸腹部造影 CT 冠状断画像 造影 CT 所見:肝門部左葉中枢側を中心に分葉状の 96 mm の低吸収域腫瘤を認め、右房直下の下大静脈、肝下 部から大腿静脈に連続する血栓(右側矢印)を認めた。 施行し、胆管内に stent を留置した。内視鏡的逆行性胆管 膵管造影施行時の胆汁細胞診にて、腫瘍細胞は大型で、 クロマチン増量、著明に腫大した核体を有し、細胞質内 には粘液が観察され、腺癌と診断(図3)された。産褥66 日目にホスピスへ入院となり、産褥 91 日目に多臓器不全 にて永眠された。 考 案 近年の晩婚化に伴う妊娠出産年齢の高齢化により、妊 娠中に悪性腫瘍を合併する例も決して稀ではなくなって きた。悪性腫瘍合併妊娠は、妊娠1000例に1例の頻度であ り 2)3)、子宮頸癌・乳癌・悪性リンパ腫・悪性黒色腫など の割合が多いとされている 4)5)。一方、消化器系悪性腫瘍 合併妊娠は頻度が低く、特に本症例で経験した胆管癌合 併妊娠は極めて稀とされている 6)。 一般に、胆管癌は肝内胆管癌・肝外胆管癌・乳頭部癌 に分類される。本症例のように肝内胆管癌は胆管が閉塞 し黄疸が初期症状とされることがあるが、無症状のまま 進行し進行癌の状態で発見されることが多い 7)。診断には 38 (192) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 表3 静脈血栓症のリスク因子:日産婦誌2004:56巻10 号 N-383より引用 図3 胆汁細胞診所見 腫瘍細胞は大型で、クロマチン増量、著明に腫大した核 小体を有し、細胞質内には粘液が観察され、腺癌と診断 された。 ビリルビンや肝臓・胆道系の酵素(AST、ALT、ALP、 γ-GTPなど) 、腫瘍マーカー(CA 19-9など)の上昇、腹 部超音波、CT 検査、MRI 検査、また内視鏡的逆行性胆管 膵管造影(ERCP)や経皮経肝的胆管造影(PTC)での細 胞診によって診断される。 消化器系悪性腫瘍は妊娠に合併した場合、発見時には 進行癌として診断される症例が多い。診断が遅れる原因 としては、悪性腫瘍の合併が考慮されず消化器症状が単 に妊娠に伴う生理的症状として取り扱われていることや 疾患の合併が疑われても胎児に対する影響を恐れて内科 的検査などが十分に行われないことが挙げられる。本症 例においても胆管癌特有の明らかな症状や検査所見はな く、事前に診断・治療することは困難であったと考える。 本症例のように悪性腫瘍は全身の静脈血栓症発症の危 険因子とされている。1865年に Trousseau が胃癌に合併し た多発静脈血栓症によって発症した脳梗塞・肺梗塞から 悪性腫瘍は凝固線溶系の異常を呈し様々な血栓症を併発 すると報告した。悪性腫瘍に合併する DVT はおおむね 1 ∼ 11 %とされ 8)、また、DVT 罹患群の悪性腫瘍の発見率 は 4 ∼ 5 %で非罹患群の約 3 倍も高率であることが知られ ており、DVT を認めた場合は悪性腫瘍の存在を考えるべ きである。固形腫瘍では、胃癌、膵癌、卵巣癌、大腸癌、 肺癌、前立腺癌、腎癌、乳癌、脳腫瘍に DVT の発症が多 いとされている 9)。そのメカニズムは主に、1)脈管への 直接浸潤や転移の過程で循環血液中に腫瘍細胞が侵入し て血小板の凝集能や凝固系を亢進させる。2)ムチン産生 腫瘍から分泌される粘液が第 10 因子を活性化させ、イン ターロイキン-1を活性化させる 10)11)。3)腫瘍により活性 化された白血球由来の組織因子や第 13 因子の産生が増加 する 12)。といわれている。また、通常の DVT は、単発に 発症することが多いのに対し、悪性腫瘍に合併する DVT は遊走性・再発性で、通常の抗凝固療法に抵抗する特徴 があるとされている 12)。上記の特徴に加えて本症例では 広範囲に DVT を認めていたことから広範囲の DVT は悪 性腫瘍による DVT 発症の可能性が示唆された。 また、妊娠期における深部静脈血栓症(以下 DVT)の 発症率は、非妊娠時に比較し5倍以上増加するといわれ 13)、 肺塞栓症(以下PE)は妊産婦死亡の12%を占めるといわ れている。 妊娠中に DVT が多い理由は、血液凝固能亢進・線溶能 低下・血小板活性化・プロテイン S 活性低下、女性ホル モンの静脈平滑筋弛緩作用、増大した妊娠子宮による腸 骨静脈・下大静脈の圧迫、帝王切開などの手術操作によ る総腸骨静脈領域の血管内皮障害及び術後の臥床による 血液うっ滞等が挙げられる 14)。 一般的に静脈血栓症のリスク因子としては表3のような 原因が考えられるが、今症例においては妊娠という様々 な DVT 発症因子に加え、悪性腫瘍が合併したことで血液 凝固能が亢進したため DVT の発症が助長されたと考え る。また、下肢の腫脹及び疼痛以外に有意な症状がなく、 肝障害は軽度であったことからも DVT の原因が肝内胆管 癌であると事前に診断・治療することは困難であった。 一般に DVT は、左総腸骨静脈が、右総腸骨動脈によって 圧迫されるために、左側優位に発症するとされている。 妊娠年齢の高齢化が進むなか、今後は悪性腫瘍を合併し た妊婦は、更に増加する可能性があるため、今症例のよ うに右側優位の DVT や多発性の DVT が発症した場合、 ヘパリン治療抵抗性の DVT を認めた場合は悪性腫瘍の存 在を考慮すべきと考えられる。妊娠中に悪性腫瘍を疑っ た場合には、まずは非侵襲的である腫瘍マーカーや多臓 器に渡る超音波・ MRI を施行し、次いで侵襲的ではある が造影 CT を含めた全身精査をする必要があると考える。 結 語 妊娠経過中に DVT を契機に発見された進行胆管癌の 1 例を経験した。妊娠中は凝固能亢進や妊娠子宮による静 脈の圧排により血栓症が発症しやすい傾向にある。その 一方で、悪性腫瘍も全身の静脈血栓症発症の危険因子と されている。特に進行癌では DVT の発症頻度が有意に上 昇するため、妊娠中に広範囲の血栓症や治療抵抗性の血 平成27年2月(2015) 39 (193) 栓症を認めた場合は、悪性腫瘍の存在を念頭に置いて造 影 CT を含め積極的精査も考慮しなければならない。 参考文献 1) Trousseau A, Phlegmasia alba dolens, Clinique medicule de 1’ Hotel-Dieu de Paris, London:New Sydenham Society.1865; 3:94. 2) 高倉聡, 茂木 真, 落合和徳. 妊娠と腫瘍一その相互に 与える影響. 産科と婦人科. 2001;68(5):555-561. 3) 佐治文隆, 鮫島義弘, 上浦祥司, 澤井啓祐, 井阪茂之, 大 平裕己, 小林克弥. 妊娠と腫瘍の発生・進展. 産婦人科 治療. 1999;79(4):380-384. 4) Nicholas A. Pavlidis. Coexistence of pregnancy and malignancy. The Oncologist August. 2002;7:279-87. 5) Pentheroudakis G, Pavlidis N. Cancer and pregnancy : Poena magna, not anymore. European Journal of Cancer. 2006;42: 126-40. 6) Marasinghe Jeevan P, Karunananda S. Asoka, Angulo Paul. Cholangiocarcinoma in pregnancy : A case report. The Journal of Obstetrics and Gynaecology Research. 2008;34巻 4-II:635-637. 7) 波多野悦朗, 瀬尾智, 竹本研史, 北村好史, 待本貴文, 石 井隆道, 田浦康二朗, 東達也, 中本裕士, 上本伸二.肝内 胆管癌におけるPET/CTの意義. 日本消化器病学会雑 誌. 2012;109(11):1878-1884. 8) Rickles FR, Edwards RL. Activation of blood coagulation in cancer : Trousseau’ s syndrome. Blood. 1983;62:14-31. 9) Sallah S, Wan JY, Nguyen NP. Venous thrombosis in patients with solid tumors:determination of frequency and characteristics. THROMBOSIS AND HAEMOSTASIS. 2002;87:575-57. 10)Douglas E, Sutherland, Ilene C. Weitz, and Howard A. Liebman.Thromboembolic complications of cancer : Epidemiology, pathogenesis, diagnosis, and treatment. American Journal of Hematology. 2003;72:43_52. 11)岡本好司.病態別にみた DIC の診断と治療,固形腫瘍. 治療学2007;41(3):253-256. 12)Dvorak, H.F, Colman, R.W.,Hirsh,J., Marder,V.J. &Salzman, E.W.Abnormalities of hemostasis in malignant disease in Hemostasis and Thrombosis.Bask Principles and Clinical Practice.Lippincott, Philadelphia, 1994;1238-1254 13)Ginsberg JS, Brill-Edwards P,Burrows RF, Bona R, Prandoni P, Büller HR, Lensing A. Venous thrombosis during pregnancy: leg and trimester of presentation. Thrombosis and Haemostasis. 1992;67:519-20. 14)小林隆夫. 静脈血栓塞栓症ガイドブック(改訂 2 版). 東京:中外医学社;2010. (H26.10.27受付) 40 (194) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 フィブリノゲン異常症合併妊娠の1例 A case of pregnancy with congenital dysfibrinogenemia 済生会横浜市南部病院 産婦人科 Department of Obstetrics and Gynecology, Saiseikai Yokohamashi Nanbu Hospital 松尾 知世 Tomoyo MATSUO 岡田有紀子 Yukiko OKADA 岩田亜貴子 Akiko IWATA 寺西 絵梨 Eri TERANISHI 中山 冴子 Saeko NAKAYAMA 進藤 亮輔 Ryosuke SHINDO 林 真理子 Mariko HAYASHI 祐森明日菜 Asuna YUMORI 佐藤加奈子 Kanako SATO 田中理恵子 Rieko TANAKA 藤原 夏奈 Kana FUJIWARA 遠藤 方哉 Masaya ENDO 仲沢 経夫 Tsuneo NAKAZAWA 概 要 フィブリノゲン(以下 Fbg)は胎盤と脱落膜の接着に関 与し、妊娠維持に必須の因子である。今回我々は妊娠初 期より Fbg の補充を行うことで妊娠・分娩管理し得た Fbg 異常症の症例を経験したので報告する。 症例は40歳、0回経妊0回経産、自然妊娠。家族歴より Fbg 低値を疑い検査したところ、Fbg 低値を認めた。Fbg 活性法では 46 mg /dl と低値、Fbg 抗原量は 227 mg /dl と 正常であった。遺伝子解析の結果、Fbg のγ鎖275番目ア ミノ酸の変異を認め、Fbg 異常症と診断した。Fbg 補充に 伴う問題点、補充しない場合に起こりうるリスクを説明 したところ、Fbg 補充を希望され、週2回の Fbg 補充を開 始した。Fbg 60 mg /dl 以上を目標とし、妊娠週数に伴い Fbg 投与量を漸増した。分娩に際し Fbg の追加補充が必要 であるため、計画分娩の方針とし、患者の希望があり、 帝王切開の方針とした。Fbg 追加補充を行い、妊娠 37 週 に選択的帝王切開術を施行した。術中出血傾向は認めず、 出血量は羊水込みで 1912 g であった。児は 2640 g 女児、 児の Fbg は231 mg/dl と正常であった。 本症例では妊娠経過に伴って Fbg 投与量を調節するこ とで、妊娠継続に最低限必要とされる60 mg/dl 以上を保 つことができた。その結果、妊娠全経過において合併症 を認めることなく管理し得た。 Key words: fibrinogen , pregnancy , miscarriage 諸 言 フィブリノゲン(以下 Fbg)異常症は稀な遺伝性疾患で ある。Fbg は胎盤と脱落膜の接着に関与し、妊娠維持に必 須の因子である。そのため、Fbg 異常症では妊娠時適切な Fbg 補充なしでは流産、絨毛膜下血腫や常位胎盤早期剥離 のリスクが高い。今回我々は妊娠初期より Fbg の補充を 行うことで妊娠・分娩管理し得た Fbg 異常症の症例を経 験したので報告する。 症 例 患者:40歳0回経妊0回経産 既往歴:特記事項なし 家族歴:実母が 15 年前に脳外科手術の際に、出血傾向 を認めたため血液検査を施行し、Fbg 低値が判明した。実 母は3回経妊2回経産(流産1回) 。Fbg 補充歴なし。 現病歴:自然妊娠。妊娠 10 週 6 日で当科紹介され受診 した。初診時診察所見は CRL 36.2 mm、FHB(+) 、絨毛膜 下血腫なし。出血等の流産徴候は認めなかった。家族歴 より Fbg 低値が疑われたため、血液検査を施行したとこ ろ、Fbg 50 mg /dl 未満と低値であった。その他の凝固機 能検査では、プロトロンビン時間(PT)12.5 秒、PT-INR 1.09とほぼ正常であり、活性化部分トロンボプラスチン時 間(APTT)も29.8秒(基準範囲23.0-38.0秒)と正常範囲 であった。Fbg 精密検査では、Fbg 活性量 46 mg /dl と低 値、Fbg 抗原量227 mg/dl と正常範囲であり、活性量と抗 原量に乖離を認めた。同意を得て行った遺伝子解析は信 州大学医学部病因・病態検査学講座の奥村伸生先生に依 頼した。遺伝子解析の結果、Fbg のγ鎖 exon 8に存在する 275番目アミノ酸をコードするヌクレオチドが CGC(正常 型)と TGC(変異型)のヘテロであることが判明した。 このため、275番目アミノ酸が Arg(アルギニン) (正常型) から Cys(システイン)(変異型)に置換していた。以上 平成27年2月(2015) 41 (195) 図1 妊娠経過中の Fbg 活性量の推移 図2 周術期の Fbg 活性量の推移 より、本症例では Fbg 機能異常症のヘテロと診断した。 妊娠経過: Fbg 補充により感染症・アレルギー反応等 の血液製剤投与に伴う問題点があること、補充しない場 合には流産・常位胎盤早期剥離・分娩時異常出血等のリ スクがあることを説明したところ、Fbg 補充を希望され、 妊娠 13 週より週 2 回の Fbg 補充を開始した。Fbg 2 g /週 より補充を開始し、Fbg 60 mg /dl (以下 Fbg 活性量)以 上を目標として妊娠週数に伴い Fbg 投与量を漸増した。 高年初産であるため羊水検査の希望があり、16週時に Fbg の追加補充を行ったうえで羊水検査を施行した。検査前 日に Fbg 5 g の追加補充を行い、検査を施行し、出血傾向 は認めなかった。検査当日の血中 Fbg は 166 mg /dl であ った。妊娠 16 週∼ 28 週では Fbg 8 g /週、29 週∼ 37 週で は Fbg 10 g/週で目標値である Fbg 60 mg/dl 以上を保つ ことができた。(図 1)分娩に際し Fbg の追加補充が必要 であるため、計画分娩の方針とした。出血リスクを考慮 すると経腟分娩が望ましかったが、40 歳の高年初産であ り経腟分娩にどうしても御同意いただけず帝王切開術を 強く希望されたため、やむを得ず選択的帝王切開術の方 針とした。Fbg 200 mg /dl 以上を目標に、手術前日には Fbg 7 g、当日術前にFbg 4 gの追加補充を行い、妊娠37週 1日に選択的帝王切開術を施行した。 (図2)術中出血傾向 は認めず、出血量は羊水込みで 1912 g であった。児は 2640 g 女児、児の Fbg 活性量は231 mg/dl と正常であった。 経過良好であり、術後8日目に母児ともに退院した。 に異常を有するものが Fbg 異常症(ホモまたはヘテロ接 合体)である。遺伝形式は無(低)Fbg 血症では常染色体 劣性遺伝、Fbg 異常症は常染色体優性遺伝である。1) Fbg の定量には機能的な量を示すトロンビン時間法と、 Fbg 蛋白量そのものを測定する免疫学的定量法、塩析法や 比濁法などがある。通常の検査では、トロンビン時間法 に基づく測定法であるため、Fbg 活性値を示していること が多い。Fbg 異常症ではトロンビン時間法で測定される活 性型 Fbg は低値だが、免疫学的定量法の測定値は正常で ある。凝固検査では、Fbg 活性値が著しく低下しているに もかかわらず、PT は軽度延長∼基準範囲内、APTT は基 準範囲内であることが多い。2) Fbg 異常症は現在までに多様な遺伝子異常が報告されて いる。Fbg 異常症の臨床症状は様々で、約 50 %の家系で は無症状であり、25 %で出血症状、15 %で血栓症を呈す る。出血症状と血栓症が混在する例も見られる。無 Fbg 血症では、重症度の差はあるものの生涯にわたって出血 症状を認める。新生児期には頭蓋内出血や臍出血を来た し、死亡することもある。新生児期以降は外傷に起因す る重篤な出血が惹起され、創傷治癒障害も見られる。女 性例では重篤な過多月経や、排卵時に卵巣出血を認める ことがある。治療の対象となるのは、出血傾向を認める 際や外科的処置の際であり、定期的に Fbg の補充を行う 必要はない。3)4) Fbg は止血や創傷治癒以外にも、妊娠初期(5-6 週)か ら胎盤の子宮壁への接着に関与し、妊娠の維持にも必須 の物質である。 朝比奈ら 5)は、 先天性無 Fbg 血症合併妊娠 6 例を臨床 的に解析し、初期妊娠着床部位での接着性蛋白の役割、 母児接着機構モデルを提唱している。彼らによると、Fbg 及び XIII 因子は cytotrophoblastic shell 形成期以降に cytotrophoblastic shell と脱落膜との接着面で cytotrophoblastic shell の anchoring に関与し、流産防止に機能している。 先天性無 Fbg 血症患者の妊娠は、1970年に Dube B et al 6) の報告を初め、Matsuno K et al 7)、Evron S et al 8)らによっ て報告されているが、Fbg 補充なく、すべて流産に終わっ ている。1985年に Inamoto Y et al 9)らは、無 Fbg 血症合併 考 察 フィブリノゲン(以下 Fbg)は、血液凝固反応の最終段 階でトロンビンの作用によりフィブリンに変化し止血に 関与する糖タンパク質である。 健常人血漿中には200-400 mg/dl 存在する。生体内半減 期は3-4日である。 先天性 Fbg 欠乏症は、血中 Fbg の量的・機能的異常に より出血症状などを呈する比較的稀な遺伝性疾患である。 Fbg の異常は、量的な異常と質的な異常に分類される。量 的な異常である Fbg 欠損症には、ホモ接合体である無 Fbg 血症、ヘテロ接合体である低 Fbg 血症がある。Fbg の機能 42 (196) 妊婦に Fbg 補充を行い、初めての分娩成功例を報告した。 小林ら 1)は、無 Fbg 血症合併妊娠の分娩成功例5症例6分 娩を解析し、無・低 Fbg 血症、Fbg 異常症患者での妊娠・ 分娩管理指針を提唱している。彼らは、妊娠4週から Fbg 製剤の補充を2 g/週の割合で開始し、妊娠経過にととも に Fbg の必要量は増加するため、Fbg 投与量を適宜増量す るべきとしている。日常生活において必要な Fbg は 50100 mg/dl だが、妊娠維持には60 mg/dl 以上、可能であ れば100 mg/dl 以上、陣痛発来時や周術期には200 mg/dl 以上必要と報告している。分娩時には Fbg 消費量が増加 するため、十分な補充療法を行うべきである。成人の場 合、Fbg 1 g 投与で、血中 Fbg 値は約20 mg/dl 増加する。 これまで国内での Fbg 異常症合併妊娠の報告は 1992 年 に三輪ら 10)が、習慣流産(妊娠 5 ヵ月で子宮内胎児死亡 (IUFD) 、6ヵ月で破水後に流産、7週で流産)後に生児を 得た 1 例を初めて報告した。4 回の妊娠すべてで妊娠経過 中に Fbg 補充は行っておらず、4回目の妊娠で出産前後に 1週間新鮮凍結血漿(FFP)を50パック補充し、経腟分娩 で生児を得ている。 武内ら 11)は、2回の初期流産と、2回の妊娠中期常位胎 盤早期剥離のための IUFD 後に Fbg 異常症と診断された症 例を報告している。5 回目の妊娠では、妊娠 8 週より Fbg の補充を行い、Fbg 160-180 mg/dl を維持したところ妊娠 継続が可能であり、生児を得ている。 本症例では、Fbg 活性法で低値、Fbg 抗原量では正常範 囲であり、Fbg 異常症と診断された。 本症例では、抜歯時に止血困難であったため追加の処 置を必要としたというエピソードはあったものの、妊娠 前には無症状であり、過多月経も認めなかった。実母は 妊娠時には Fbg の異常が判明していなかったため、妊娠 中・分娩時の Fbg 補充は施行していなかったが、1回の流 産歴(詳細不明)はあるものの、2回経腟分娩を行い、異 常は認めなかった。前述したように、これまでの報告に よると Fbg は妊娠5週から妊娠維持に必須となるため、妊 娠4週からの Fbg 補充が望ましい。しかし、本症例では流 産既往もなく、今回自然妊娠し 10 週で当院初診となるま で Fbg 補充なしで流産徴候は認めていなかった。ただ、 Fbg 活性量は 46 mg /dl と低値であり、妊娠維持に必要と される60 mg/dl を下回っており、流産・常位胎盤早期剥 離のリスクを考慮すると、Fbg の補充が望ましいと考えた。 患者と家族も Fbg 補充を希望されたため、妊娠 13 週に 2g /週より Fbg の補充を開始した。羊水検査の希望があ り、16週時検査前日に Fbg 5 gの追加補充を行い、検査当 日の血中 Fbg は 166 mg /dl であった。検査中、検査後と もに出血傾向は認めなかった。その後も妊娠週数にあわ せて、Fbg 投与量を漸増し、妊娠維持目標の 60 mg /dl 以 上を保つことができた。前述したように、陣痛発来時に は Fbg の消費量が増加するため、 Fbg 200 mg/dl 以上を目 標として Fbg の追加補充が必要となる。また、分娩方法 については創傷治癒の観点からすると、経腟分娩を行い、 裂傷を少なくすることが望ましいことから患者に分娩誘 発の提案を行ったが、40 歳の高年初産で貴重児であるこ 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 とより、ご本人が帝王切開術を強く希望されたため、や むを得ず帝王切開術の方針とした。当院では骨盤位での 帝王切開術を除いて選択的帝王切開術は 37 週台で施行し ており、本症例でも 37 週 1 日で選択的帝王切開術を施行 した。手術時 Fbg 目標値 200 mg /dl を目安に術前日、術 当日に Fbg 補充を行った後、選択的帝王切開術を施行し た。術中・術後ともに出血傾向は認めなかった。児の Fbg 活性値は 231 mg /dl と正常範囲であり、児にも出血傾向 は認めなかった。 本症例では、妊娠週数に伴って Fbg 補充を増量し、Fbg 血中濃度を60 mg/dl 以上に維持することにより、絨毛膜 下血腫や常位胎盤早期剥離等を発症することなく管理し 得た。 結 語 今回我々は Fbg 異常症合併妊娠の 1 例を経験した。Fbg 補充療法は Fbg 異常症での妊娠・分娩管理に有効であっ たと考える。 本症例では、実母が Fbg の補充なく妊娠・分娩してい ることを考慮すると、Fbg 補充せずに管理できた可能性も あるが、流産、絨毛膜下血腫、常位胎盤早期剥離等の予 防の観点では Fbg 補充を行うべきであると判断した。患 者に Fbg 補充にともなう副作用についても十分に情報提 供を行ったうえで、妊娠判明後早期の Fbg 補充が勧めら れる。 文 献 1) 小林隆夫, 寺尾俊彦, 高松純樹. 先天性無フィブリノゲ ン血症-妊娠・分娩管理を中心に-. 日本血栓止血学会 誌. 2001;12(1):57-65. 2) 廣田(川戸洞)雅子, 石川伸介, 藤原祝子, 若林早紀, 上 條由夏, 山内一由, 寺澤文子, 奥村伸生, 勝山努. 日常検 査で遭遇する低フィブリノゲン血症の原因推定とヘテ ロ型フィブリノゲン異常症・欠損症の凝固スクリーニ ング検査結果の検討. 臨床病理. 2007;55:11:989-95. 3) 嶋 緑倫, 吉岡 彰. 血友病以外の先天性凝固因子欠損 症. 小児内科. 1998;30:1455-60. 4) 高松純樹. 先天性フィブリノゲン欠乏症/異常フィブ リノゲン血症. 別冊 日本臨床. 1998;21:449-55. 5) 朝比奈俊彦. 着床と接着性蛋白. 産科と婦人科. 1999; 66:5号:633-9. 6) Dube B, Agarwal SP, Gupta MM, Chawla SC. Congenital deficiency of fibrinogen in two sisters: A clinical and haematological study. Acta Haematologica. 1970;43:120-7. 7) Matsuno K, Mori K, Amikawa H. A case of congenital afibrinogenemia with abortion, intracranial hemorrhage and peritonitis. Jap J Clin Hematol. 1977;18:1438-43. 8) Evron S, Anteby SO, Brzezinsky A, Samueloff A, Eldor A. Congenital afibrinogenemia and recurrent early abortion. A case report. Eur J Obstet Gynecology Reprod Biol. 1985;19:307-11. 9) Inamoto Y, Terao T. First report of case of congenital 平成27年2月(2015) afibrinogenemia with successful delivery. Am J Obstet Gynecol.1985;153:803-4. 10)三輪美佐, 水野昌彦, 平田修, 小池晧弌, 今枝弘美, 神田 康司, 鈴木悟, 大内正信, 渡辺勇, 加藤作郎. 習慣流産の 後、生児を得たフィブリノゲン異常症の 1 例. Jpn J Obstet Gynecol Neonatal Hematol. 1992;2(2):94-5. 43 (197) 11)武内享介, 山中良彦, 丸尾猛. 常位胎盤早期剥離による 子宮内胎児死亡を反復後、 フィブリノゲン製剤の補 充療法により生児を得た異常フィブリノゲン血症合併 妊娠の1例. 臨婦産. 2005;59(2):158-61. (H26.11.3受付) 44 (198) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 第405回 神奈川産科婦人科学会 学術講演会 日 時:平成26年3月8日(土)13:30∼ 場 所:神奈川県総合医療会館 講堂7F Ⅰ. 一般演題1(腹腔鏡) 1. 当科における卵管妊娠に対する腹腔鏡下保 存手術の成績 Ⅱ. 一般演題2(婦人科) 6. 東海大 専門診療学系 産婦人科 2. 骨盤内放線菌症の治療として腹腔鏡手術を 施行した1例 大和市立病院 楢山 知紗 鈴木 隆弘 林 優 長谷川哲哉 荒田与志子 山本 恵 篠田 真理 西島 義博 石本 人士 佐々木麻帆 端本 裕子 永田 智子 和泉俊一郎 三上 幹男 齊藤 圭介 石川 雅彦 当院における子宮頸癌症例に対する腹腔鏡 下手術の検討 7. 子宮壁内膿瘍の1例 横須賀市立うわまち病院 横浜市大 市民総合医療センター 婦人科 渡邉龍太郎 山本みのり 伊藤 雄二 吉田 浩 片山 佳代 宮腰 藍衣 河野 明子 平林 大輔 森崎 篤 廣岡 潤子 松崎結花里 古野 敦子 小山 秀樹 北川 雅一 大島 綾 横浜市立市民病院 8. 茂田 博行 術前診断が困難であった遺残ガーゼによる 腹腔内異物肉芽種の1例 大和市立病院 3. 子宮体癌における腹腔鏡下根治術症例の検討 端本 裕子 山本 恵 佐々木麻帆 横浜市大 市民総合医療センター 婦人科 長谷川哲哉 永田 智子 斉藤 圭介 吉田 浩 片山 佳代 宮越 藍衣 荒田与志子 石川 雅彦 河野 蓉子 廣岡 潤子 松崎結花里 香川 愛子 森瀬 昌樹 古野 敦子 北川 雅一 横浜市立市民病院 下向 麻由 永井 康一 大井 由佳 9. 診断が困難であった外陰部腫瘤の1例 川崎市立多摩病院 鈴木 理絵 武居 麻紀 安藤 紀子 竹内 淳 大熊 克彰 上里 忠英 茂田 博行 細沼 信示 聖医大 4. 腟パイプ使用例における腟壁・直腸損傷の 1例 田中 守 鈴木 直 Ⅲ. 一般演題3(腫瘍) 横浜市大 市民総合医療センター 婦人科 大島 綾 宮腰 藍衣 廣岡 潤子 松崎結花里 古野 敦子 香川 愛子 北川 雅一 片山 佳代 吉田 浩 10. 原発不明がん(鼠径リンパ節扁平上皮癌) の1例 横浜市大 赤松 千加 川野 藍子 小山麻希子 佐藤美紀子 沼崎 令子 宮城 悦子 5. 腹腔鏡下腟式子宮全摘出術後に発症した 5mmのポートサイトヘルニアの1例 新百合ヶ丘総合病院 永井 崇 高橋 寿子 奥野さつき 浅井 哲 井浦 文香 田島 博人 浅田 弘法 榊原 秀也 平原 史樹 11. ドセタキセル投与中に強皮症様皮膚硬化が 増悪した1例 横須賀共済病院 納田 容子 石川 玲奈 稲垣 萌美 垣本壮一郎 寺西 絵梨 大沼 えみ 永田 亮 野村 可之 松永 竜也 小林 有紀 杉浦 賢 平成27年2月(2015) 12. 子宮頸部上皮内腺癌を合併した Lobular Endocervical Glandular Hyperplasia の1例 45 (199) 18. 産後の過多出血より不全子宮破裂が疑われ た2症例 横浜市大 市民総合医療センター 総合周産期母子医療センター 横浜市大 市民総合医療センター 婦人科 小河原由貴 青木 茂 当間 理恵 松崎結花里 宮腰 藍衣 廣岡 潤子 平原 裕也 額賀沙希子 峰 優子 古野 敦子 北川 雅一 片山 佳代 飯沼 綾子 田吹 梢 長谷川良実 吉田 浩 葛西 路 持丸 綾 笠井 絢子 望月 昭彦 倉澤健太郎 高橋 恒男 13. 術後 7 年目に多発平滑筋肉腫として再発し た異型子宮平滑筋腫の1例 横浜市大 市民総合医療センター 婦人科 廣岡 潤子 宮腰 藍衣、松崎結花里 横浜市大 平原 史樹 19. 妊娠25週子宮破裂の1例 昭和大 北部病院 古野 敦子 北川 雅一 片山 佳代 奥山亜由美 佐々木 康 長塚 正晃 吉田 浩 安水 渚 宮上 哲 野村 奈央 遠武 孝祐 小谷美帆子 苅部 瑞穂 Ⅳ. 一般演題4(周産期) 14. 母児ともに 救命し得た侵襲性A群溶連菌感 染症の1例 聖医大 秦 ひろか 水主川 純 安藤 歩 名古 崇史 杉下 陽堂 高江 正道 折坂 勝 安藤 直子 大槻 克文 Ⅴ. 初期臨床研修医発表 20. 腟悪性黒色腫の4例 北里大 中村基寛(研修医) 新井 正秀 五十嵐 豪 中村 真 鈴木 直 小野 重満、下田 隆仁 善平沙弥香 田中 守 増山 彩 新井 努 岩瀬 春子 恩田 貴志 海野 信也 15. 骨髄異形成症候群合併妊娠の1例 横浜市立市民病院 関口 太 有浦 雅代 北澤 千恵 21. 10歳の卵巣悪性胚細胞性腫瘍Ⅳ期の1例 昭和大 藤が丘病院 下向 麻由 永井 康一 大井 由佳 河本 貴之(研修医) 鈴木 理絵 武居 麻紀 安藤 紀子 豊澤 秀康 松浦 玲 竹中 慎 茂田 博行 青木 弘子 中山 健 松本 香 市原 三義 本間 進 小川 公一 齋藤 裕 16. 再生不良性貧血合併妊娠の1例 上野 和典 土屋 佳子 友坂真理子 22. HELLP 症候群と鑑別困難であった胆石発 作の1例 大河内 緑 宮内 安澄 鈴木 毅 横浜市大 市民総合医療センター 総合周産期母子医療センター 川崎市立川崎病院 金 善惠 樋口 隆幸 村越 行高 堀田 直志(研修医) 染谷 健一 岩田 壮吉 林 保良 平原 裕也 当間 理恵 額賀沙季子 笠井 絢子 峰 優子 飯沼 綾子 田吹 梢 17. イレウス管留置にて管理した腸閉塞合併妊 娠の1例 小河原由貴 長谷川良実 持丸 綾 葛西 路 望月 昭彦 倉澤健太郎 青木 茂 高橋 恒男 日医大 武蔵小杉病院 女性診療科・産科 針金 幸代(旧姓:泰井)西田 直子 横浜市大 平原 史樹 立山 直子 稲垣 知子 田村 俊之 佐藤 杏月 川端 英恵 柿栖 睦実 山口 道子 間瀬 有里 川端伊久乃 深見 武彦 松島 隆 土居 大祐 朝倉 啓文 23. 結果的に待機的管理となった常位胎盤早期 剥離の1例 国立病院機構 横浜医療センター 梶山 典彦(研修医) 吉田 梨恵 太田 幸秀 若林 玲南 長谷川 瑛 奥田 美加 窪田 與志 46 (200) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 24. 当院における若年妊婦の妊娠分娩経過に関 しての検討 Ⅵ. 特別講演 「一目瞭然!超音波の正しい楽しい使い方!」 大和市立病院 吉田 優(研修医) 山本 恵 長崎大学 産婦人科 増崎 英明 佐々木麻帆 端本 裕子 長谷川哲哉 永田 智子 斉藤 圭介 荒田与志子 石川 雅彦 第406回 神奈川産科婦人科学会 学術講演会 日 時:平成26年7月5日(土)13:00∼ 場 所:情文ホール(横浜情報文化センター6F) Ⅰ. 一般演題1 1. 6. 無痛分娩の現状と助産師の意識 妊娠第2三半期前期に羊水過少を端緒に VACTERL 連合の胎内診断に至った1症例 川崎市立川崎病院 湘洋会 産婦人科吉田クリニック 樋口 隆幸 大河内 緑 竹田 貴 天野 完 2. 鈴木 毅 金 善惠 上野 和典 染谷 健一 岩田 壮吉 林 保良 胎児期に発見されたガレン静脈瘤の1例 横浜市大 市民総合医療センター 総合周産期母子医療センター Ⅱ. 一般演題2 大森 春 榎本紀美子 北澤 千惠 三宅 優美 進藤 亮輔 山本ゆり子 既往子宮破裂後妊娠で帝王切開時に子宮破 裂を認めた1例 長谷川良実 葛西 路 笠井 絢子 済生会横浜市東部病院 竹重 諒子 額賀沙季子 小林奈津子 横浜市大 7. 倉澤健太郎 青木 茂 高橋 恒男 崎山 明香 小西 康博 宮内 里沙 平原 史樹 松下 瑞穂 岩崎 真一 御子柴尚郎 伊藤めぐむ 長谷川明俊 秋葉 靖雄 3. 脳瘤の出生前診断がなされたMM双胎の1例 渡邉 豊治 聖医大 西部病院 安藤 歩 西島 千絵 飯田 智博 当院で経験した正常血圧下での分娩時子癇 発作の2症例 田村みどり 済生会横浜市南部病院 b橋 由妃 川原 泰 佐藤 佑 聖医大 8. 吉岡 範人 鈴木 直 当間 理恵 松尾 知世 牛尾江実子 中山 冴子 林 真理子 祐森明日菜 4. 胎児心臓超音波検査で診断された左上大静 脈遺残の2例 佐藤加奈子 田中理恵子 藤原 夏奈 沼崎 令子 仲沢 経夫 川崎市立川崎病院 鈴木 毅 金 善惠 上野 和典 妊娠後期に発症した Hyperreactio Luteinalis と考えられる1例 染谷 健一 岩田 壮吉 林 保良 新横浜母と子の病院 大河内 緑 樋口 隆幸 竹田 貴 9. 大沼 一也 稲坂 淳 島田 洋一 5. 胎児心不全徴候が診断の契機となった胎児 母体間輸血症候群の1例 横浜市立みなと赤十字病院 田畑 潤哉 木寺 信之 塚本 薫 若松 昌臣 高橋 慎治 和知 敏樹 多田 聖郎 崎山 武文 石原 楷輔 塩原 和夫 平成27年2月(2015) 10. 非定型的な血液疾患を合併した妊婦の1例 聖医大 西部病院 47 (201) 16. 化学療法が著効するも、腫瘍塞栓で死に至 った再発子宮頸がんの1例 川原 泰 安藤 歩 佐藤 佑 聖医大 平塚市民病院 b橋 由妃 西島 千絵 飯田 智博 上之薗美耶 吉政 佑之 簡野 康平 田村みどり 藤本 義展 笠井 健児 鈴木 直 11. 妊娠中の絞扼扼性イレウスの診断に術前超 音波および腹腔鏡検査が有用であった1例 17. 卵巣 dermoid cyst 術後に短期間で急速に腫 大した卵巣 yolk sac tumor の1例 日医大 武蔵小杉病院 女性診療科・産科 飯田 朝子 柿栖 睦実 土居 大祐 新百合ヶ丘総合病院 東海大 佐柄 祐介 田中 幸子 大久保はる奈 伊藤 友希 針金 幸代 川端 英恵 高橋 寿子 奥野さっき 井浦 文香 山口 道子 間瀬 有里 西田 直子 永井 崇 田島 博人 浅田 弘法 深見 武彦 川端伊久乃 松島 隆 浅井 哲 朝倉 啓文 新川崎こびきウィメンズクリニック 木挽 貢慈 18. 子宮内膜症性のう胞に併存したセルトリ・ 間質細胞腫瘍の1例 12. 術前に診断して腹腔鏡手術で治療した腹腔 妊娠の1例 聖医大 阿部 恭子 吉田 彩子 中澤 悠 竹内 淳 波多野美穂 近藤 亜未 細沼 信示 大原 樹 近藤 春裕 昭和大 藤が丘病院 戸澤 晃子 鈴木 直 市原 三義 田内麻依子 中林 誠 竹中 慎 松浦 玲 中山 健 青木 弘子 横川 香 本間 進 Ⅳ. 部会報告 佐々木 康 小川 公一 1. Ⅲ. 一般演題3 平成25年度神奈川悪性腫瘍登録集計報告 神奈川県産科婦人科医会 悪性腫傷対策部 仲沢 経夫 杉浦 賢 雨宮 清 13. 当院で経験した帝王切開術後の重症創部感染 2症例の検討 木挽 貢慈 小山 秀樹 近藤 春裕 佐々木 康 茂田 博行 新井 努 土居 大祐 村上 優 林 康子 けいゆう病院 眞木 順子 荒瀬 透 清水 拓哉 平澤 猛 宮城 悦子 渡邉 豊治 渡部 桂子 櫻井真由美 大石 曜 市原 三義 鈴木 直 加藤 久盛 倉c 昭子 秋好 順子 永井 宣久 東條龍太郎 持丸 佳之 中野眞佐男 2. 14. 分娩後に発症したTSS(toxic shock syndrome) の1例 ART妊娠紹介状に関わる文書訂正について 横浜市大 市民総合医療センター 総合周産期母子医療センター 異常分娩・先天異常対策部委員 青木 茂 川崎市立多摩病院 阿部 佳織 大熊 克彰 朱 丞華 上里 忠英 杉下 陽堂 聖医大 鈴木 直 3. 第 4 回神奈川県産科婦人科医会 初期臨床研 修医キャンプ報告 神奈川県立こども医療センター産婦人科 15. 最近経験した臨床的侵入奇胎の3例 昭和大 藤が丘病院 中林 誠 佐々木 康 竹中 慎 横川 香 田内麻依子 松浦 玲 中山 健 青木 弘子 市原 三義 本間 進 小川 公一 第4回初期臨床研修医キャンプ副実行委員長 板井 俊幸 48 (202) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 23. 卵巣癌を疑った抗酸菌感染性腹膜炎の1例 Ⅴ. 初期臨床研修医発表 北里大 19. 妊娠後期まで子宮筋腫が先進していた2例 新井 努 中村 基寛 岩端 俊輔 小野 重満 新井 正秀 岩瀬 春子 恩田 貴志 国立病院機構 横浜医療センター 山岡 聖子(研修医) 黒須 貴浩(研修医) 海野 信也 栃尾 梓 由島 道郎 中口 芳恵 太田 幸秀 若林 玲南 長谷川 瑛 鈴木 理絵 奥田 美加 窪田 與志 24. 医原性の骨盤内偽嚢胞に対してジエノゲス トが著効した1例 横浜市大 市民総合医療センター 婦人科 20. 当院で経験した新生児同種免疫性血小板減 少症(NAIT)の1例 聖医大 椎名 雄樹(研修医) 前田 陽子(研修医) 北川 雅一 岡田有紀子 吉田 浩 名古 崇文 今西 博治 山下 有美 秦 ひろか 古野 敦子 下向 麻由 吉田 瑞穂 平田 豪 横浜市大 平原 史樹 鈴木季美枝 吉岡 伸人 高江 正道 五十嵐 豪 洞下 由記 新橋成直子 水主川 純 中村 真 河村 和弘 25. 摘出された非交通性副角子宮に内膜癌を認 めた1例 横浜市大 市民総合医療センター 婦人科 鈴木 直 吉田 優(研修医) 21. 当 院 で 経 験 し た C h r o n i c a b r u p t i o n oligohydramnios sequence(CAOS)の1例 平田 豪 古野 敦子 岡田有紀子 吉田 浩 東海大 専門診療学系 産婦人科 藤井えりさ(研修医) 北川 雅一 廣岡 潤子 下向 麻由 吉田 瑞穂 菅野 秀俊 横浜市大 平原 史樹 中嶋 理恵 楢山 知明 成田 篤哉 佐藤 茂 三塚加奈子 東郷 敦子 西村 修 石本 人士 和泉俊一郎 26. TAE後妊娠で癒着胎盤を合併した1例 北里大 周産成育母子医療センター 伊藤 実香(研修医) 三上 幹男 河野 照子 金井 雄二 望月 純子 海野 信也 22. 産褥期に CNS lupus を呈した SLE 合併妊 娠の1例 Ⅵ. 教育セミナー 横浜市大 市民総合医療センター 総合周産期母子医療センター 黒沼亜美(研修医) 葛西 路 大森 春 北澤 千惠 竹重 諒子 額賀沙季子 小林奈津子 三宅 優美 進藤 亮輔 山本ゆり子 長谷川良実 榎本紀美子 笠井 絢子 倉澤健太郎 青木 茂 高橋 恒男 横浜市大 平原 史樹 「羊水塞栓症と産科出血」 浜松医科大学産婦人科 金山 尚裕 平成27年2月(2015) 49 (203) 抄録 第405回 神奈川産科婦人科学会 学術講演会 ンでは腹腔鏡下広汎子宮全摘術は従来の広汎子宮全摘術と同様 に標準的な治療となりうるとしている。当院では子宮頸癌の症 当科における卵管妊娠に対する腹腔鏡下保存手術 の成績 例に対し、病期に応じ、全腹腔鏡下子宮全摘(TLH) 、全腹腔鏡 下準広汎子宮全摘(TLmRH)、全腹腔鏡下広汎子宮全摘術 (TLRH)を施行することとし、今回はこれら自験例をもとに手 東海大 専門診療学系 産婦人科 術結果を中心に後方視的に検討した。 楢 山 知 紗 鈴 木 隆 弘 林 優 【方法】2012.4∼2014.3までのTLH 8例、TLmRH 2例、TLRH 篠 田 真 理 西 島 義 博 石 本 人 士 3例を診療録をもとに後方視的に検討した。なお TLRH を導入す 和 泉 俊一郎 三 上 幹 男 るにあたっては院内の倫理委員会にて承認を受け、診療費用は 病院負担として行われた。 【目的】・卵管妊娠に対する保存的治療において腹腔鏡下保 【結果】TLH を施行したのはCIS 4例、AIS 3例、IA1 1例であ 存手術が第1選択として確立しているが、問題点としては PEP り、平均手術時間 121 分、平均出血量 53 ml、いずれの症例も術 (Persistent ectopic pregnancy )及び反復異所性妊娠(EP)である。 後 3 日目に退院可能であった。TLmRH を施行した 2 例はそれぞ 当院で施行した卵管妊娠に対する腹腔鏡下保存手術(卵管切開) れ IA1、AIS with LEGHであり、平均手術時間124分、平均出血 PEP 症例の予測及び予後、術後の再妊娠成績からとくに反復 EP 量 280 ml、いずれも4日目には退院可能となった。2例とも術後 の発生について検討したので報告する。 の残尿が見られたが入院中に改善し、合併症は認めていない。 【方法】当院の卵管妊娠における 1992 年 12 月∼ 2012 年 9 月ま TLRH を施行した3例は IB1 2例と IIA1 1例で、平均年齢50歳、 で施行した腹腔鏡下保存手術167例、腹腔鏡下手術成功は136例 いずれも術前合併症のない平均 BMI 18.5 と痩せた体型の症例を 開腹以降例は 2 例 PEP 症例 29 例を対象とし、血中 hCG 値、超 選択した。平均手術時間279分、平均出血量 120 ml、輸血を要し 音波所見、着床部位を比較し PEP 症例の予測及び予後に関連す た症例はなかった。いずれの症例も翌日には離床し、術後3日目 るかを検討し、また術後の患側卵管疎通性を PEP 例 Control 例に には腹腔内ドレーンを抜去となり、残尿の軽快する5-6日目に退 分け差の有無を検討した。また、腹腔鏡下保存術後の症例でそ 院可能となった。平均摘出リンパ節は49個であった。1例に軽度 の中で未婚者、IVF 導入例は除き、追跡できた 134 例について、 のリンパ浮腫を認めたほか合併症は認めていない。 術後再妊娠、術中所見に着目して、反復 EP の発生につきその側 性を含め検討した。 【成績】PEP 発生率は17.4%。PEP 例であっても卵管が温存で きれば、その予後は変わらないことがわかった。対象症例に関 【結語】子宮頸癌に対する腹腔鏡下手術は低侵襲かつ安全に 導入、施行できる術式である。しかし、保険診療への組み込み にはまだ遠い段階であり、今後、先進医療への取り組みが重要 と考えられた。 して術後50%が再妊娠するが、そのうち約30%が反復EPとなっ た。 対側卵管異常所見を有すると再妊娠のうち45%が反復 EP となり、その 50 %は対側に発生した。対側卵管異常所見がなけ 子宮体癌における腹腔鏡下根治術症例の検討 れば、反復 EP 率は有意に低く、対側には発生しなかった。 【結論】卵管妊娠に対する保存手術(卵管切開)における 横浜市大 市民総合医療センター 婦人科 PEP発生は予測できないが、卵管を温存できれば、その予後に関 吉 田 浩 片 山 佳 代 宮 越 藍 衣 する不良因子ではない。反復 EP 予測因子は術中所見であり、術 廣 岡 潤 子 松 崎 結花里 香 川 愛 子 式の選択や術後治療方針の決定に寄与する。 古 野 敦 子 北 川 雅 一 横浜市立市民病院 下 向 麻 由 永 井 康 一 大 井 由 佳 当院における子宮頸癌症例に対する腹腔鏡下手術 の検討 横浜市大 市民総合医療センター 婦人科 鈴 木 理 絵 武 居 麻 紀 安 藤 紀 子 茂 田 博 行 本邦では、2014年4月以降、早期子宮体癌に対する腹腔鏡下手 吉 田 浩 片 山 佳 代 宮 腰 藍 衣 術が保険適応となる予定である。横浜市立大学市民総合医療セ 廣 岡 潤 子 松 崎 結花里 古 野 敦 子 ンター婦人科及び横浜市立市民病院では、現在先進医療として 北 川 雅 一 大 島 綾 早期子宮体癌に対する腹腔鏡下根治術を行っており、今回同手 横浜市民病院 茂 田 博 行 術開始後の内容について検討したので報告する。 対象は2010年4月から2014年2月の期間においていずれかの施 設で腹腔鏡下に子宮体癌根治術を行った 31 例、術前進行期は子 【緒言】子宮頸癌に対する腹腔鏡下手術の導入は欧米諸国で 宮体癌ⅠA期、組織型は類内膜腺癌 G1または G2とした。手術 は標準的なものとなっており、本邦でも内視鏡手術ガイドライ 開始にあたっては倫理委員会の承認が得られている。術式は術 50 (204) 前 MRI で筋層浸潤がない場合には全腹腔鏡下子宮全摘術、両側 付属器摘出術(TLH+BSO)もしくは全腹腔鏡下準広汎子宮全摘 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 腹腔鏡下腟式子宮全摘出術後に発症した 5mm の ポートサイトヘルニアの1例 術(TL m RH)+ BSO を行い、筋層浸潤がある場合には TL m RH+BSO+骨盤リンパ節郭清術(PLA)を行った。 手術件数は TLH+BSO が5件、TLmRH+BSO が16件、TLm 新百合ヶ丘総合病院 永 井 崇 高 橋 寿 子 奥 野 さつき RH+BSO+PLA が10件であった。いずれも術中合併症はなく、 浅 井 哲 井 浦 文 香 田 島 博 人 開腹手術への移行例はなかった。術者や熟練度が異なるため同 浅 田 弘 法 じ条件下に比較できていないが、出血量や術後入院日数は、腹 腔鏡下手術のほうが少なく、術後 CRP 最高値に関しても腹腔鏡 【諸言】婦人科腹腔鏡手術における術後ポートサイトヘルニ 下手術のほうが低い結果であった。摘出リンパ節数では開腹手 アの発症率は0.5%程度と報告されており、その多くは12 mm ポ 術と比べて有意差はなかった。 ートからで5 mm ポートでの発症はまれである。今回我々は、腹 また本年より、倫理委員会の承認のもと、後腹膜鏡下傍大動 脈リンパ節郭清を開始した。同手術では、開腹に比し大動脈の 背側を含め郭清視野が得ることが容易であり、左腎静脈下まで 腔鏡下子宮全摘出術後に5 mm ポート孔より発症したポートサイ トヘルニアを経験したので文献的考察も含めて報告する。 【症例】46 歳、3 経妊 3 経産。近医にて子宮筋腫を指摘され、 を十分に郭清することが可能であった。これまで 2 例を施行し、 腰痛・月経痛・頻尿症状出現し手術目的に当院紹介。子宮は臍 摘出した傍大動脈リンパ節数の平均は33個であった。 高に至り、MRI 画像上、前壁体下部の長径13 cm の筋層内筋腫の 早期子宮体癌に対する腹腔鏡下手術は、侵襲性が低く、術後 診断。2 ヵ月間の GnRHa 療法の後、腹腔鏡下子宮全摘出術を施 の QOL の向上に寄与することが当院の検討でも確認された。骨 行。手術時間 4 時間 19 分。術後 1 日目より嘔気嘔吐出現し、2 日 盤リンパ節郭清術や傍大動脈リンパ節郭清術も鏡視下において 目も症状持続したため、腹部単純写真にて鏡面像確認後、胃管 開腹手術と遜色なく行うことが可能と考えられる。したがって 挿入。5 日目に胃管を抜去し、6 日目より流動食より開始。嘔気 今後はより積極的に適応を拡充していきたいと考える。 症状の完全な寛解は得られなかったが、食事摂取は可能であっ たので11日目に退院。嘔吐の再燃のため13日目に緊急入院、右 腟パイプ使用例における腟壁・直腸損傷の1例 下腹部に腫瘤を触知し同日造影 CT 施行したところ回腸のポート サイトヘルニア陥頓の診断にて緊急手術を行った。ヘルニア門 は1横指で、回腸は浮腫状であったが血流は維持されており、還 横浜市大 市民総合医療センター 婦人科 納し温存可能であった。5 mm のポートサイトヘルニアに関して、 大 島 綾 宮 腰 藍 衣 廣 岡 潤 子 過去の報告例では、多くが術後1週間以内に小腸閉塞症状を伴っ 松 崎 結花里 古 野 敦 子 香 川 愛 子 て発症している。2004年に Tonouchi らは発症様式に応じてearly- 北 川 雅 一 片 山 佳 代 吉 田 浩 onset type、late-onset type、special type の3種類に分類して報告し ている。今回の症例は術中所見と発症経過から early-onset type と 症例は49歳、性交未経験者、更年期症状のため前医を受診し9 cm 大の子宮筋腫を指摘された。腹部膨満感あり手術目的に当院 紹介受診した。 骨盤 MRI T 2強調画像で境界明瞭な低信号を示す腫瘤を多数認 め、子宮筋腫の診断となり腹腔鏡下子宮全摘術の方針となった。 考えられた。 【結語】腹腔鏡手術における早期合併症としてポートサイト ヘルニアを十分念頭におき、適切な対応をすべきと思われた。 また、手術が長時間あるいはポートでの手術操作が大きい場合 には、ポート孔の筋膜閉鎖も考慮すべきと思われた。 腟が狭いため筋腫は細切して経腟的に摘出する予定としていた。 手術は4孔式にて型の如く行い、子宮傍組織を処理した後、直径 3 cm の腟パイプを挿入したところ、先端が腟から直腸に挿入さ 子宮壁内膿瘍の1例 れた。腹腔内から観察した視野が通常と異なるため、パイプを 抜去して腟内を確認したところ穿孔している事が判明した。 横須賀市立うわまち病院 腟・直腸穿孔は肛門縁より2 cm 部位の直腸に長径3.5 cm のもの 渡 邉 龍太郎 山 本 みのり 伊 藤 雄 二 を認め、腟側より修復した。 河 野 明 子 平 林 大 輔 森 崎 篤 子宮体部、筋腫核は損傷部位への影響を考慮してモルセレー 小 山 秀 樹 ターにて回収した。 腟狭小例に腟パイプを使用する際には、①使用前に穿孔のリ スクがあることを認識し、その対処法を十分に学習しておく。 子宮壁内膿瘍のまれな症例を経験したので報告する。 【症例】70 歳女性、3 経妊 3 経産、閉経 48 歳。既往歴として、 ②腟パイプの最小サイズを使用することが望ましい。③腟パイ 高血圧症のほかに歯周病があり、毎月歯科処置を受けている。 プの挿入方向に注意し、抵抗がある場合は無理に挿入せず、狭 今回、10 日間改善しない下腹部痛・発熱を主訴に、近医より紹 小部位を十分確認する。④症例によっては会陰切開をおく。な 介受診した。体温 38.0 ℃。腟鏡診では、腟内に膿を認めず、子 どの注意が必要であると思われた。 宮腔からの流出もなかった。子宮は鵞卵大で可動性良好、圧痛 なし。経腟超音波検査で、子宮に 7 × 4 cm の嚢胞性病変を認め た。CT では、子宮後壁内に液体の貯留を認め、また、そこに接 平成27年2月(2015) 51 (205) するS 状結腸脂肪織の濃度上昇を認めたが、憩室炎などは認めな となる。ガーゼ遺残の場合、多くはガーゼと貯留液が嚢胞壁内 かった。WBC 20100, CRP 18.20。MRI では、子宮頸管内膜が、腹 に貯留した形態をとり、まれにガーゼが肉芽に埋没した充実性 側へ圧排されている像を認めた。骨盤内膿瘍の診断で抗菌薬治 腫瘍の様子を呈する。この内容物の特徴により画像所見も異な 療を開始し、入院 3 日目に発熱は消失、腹痛も軽減した。入院 4 る。本症例はガーゼが形態を失い泥状に変性した非典型的なガ 日目に、同診断で開腹術(子宮全摘術, 両側付属器摘出術)をお ーゼオーマであり、画像診断のみならず腹腔鏡検査、肉眼所見 こなった。子宮後壁は S 状結腸に広範に癒着しており、癒着を でも診断がつかなかった。術前診断がついた異物肉芽腫では腹 剥離すると、子宮から膿汁が流出した。病理検査では、肉眼的 腔鏡下切除の報告が散見される。本症例では診断がつかず開腹 に子宮内腔は平滑で、子宮後壁筋層内に膿瘍を認めた。膿瘍内 手術に移行せざるを得なかった。 容物の細菌培養検査では、E.coli,F.varium, P.buccae, S.anginosus が検出された。 【考察】筋腫のない状態での子宮筋層の膿瘍形成は文献的に 診断が困難であった外陰部腫瘤の1例 もまれであり、その一つとして直腸癌の浸潤によるものが報告 されているが、本症例では悪性所見は認めなかった。HbA1c 6.2 川崎市立多摩病院 と上昇認め、糖尿病による易感染性が関わっている可能性があ 竹 内 淳 大 熊 克 彰 上 里 忠 英 る。子宮筋層への感染経路には、以下の3つが考えられた。① S 細 沼 信 示 状結腸の炎症が波及した。②腟常在菌が、子宮内腔と卵管を経 て起こした骨盤腹膜炎からの感染。③その他の部位からの血行 聖医大 田 中 守 鈴 木 直 性感染。感染経路の最終結論は出せなかったが、検出された細 菌のうち後2者は歯科領域の感染症起炎菌でもあり、口腔内細菌 の血行性感染の可能性も考えられた。 【緒言】神経線維腫は孤発例が4.4%と少なく、多くは神経線 維腫症として多発する。また孤発例の 45 %が頭頸部に発生する と言われている。今回は外陰部に発生した神経線維腫を経験し たので報告する。 術前診断が困難であった遺残ガーゼによる腹腔内 異物肉芽種の1例 【症例】38歳の1経妊1経産で、既往歴は扁桃腺の手術歴のみ であった。現病歴は3年前に陰部の不快感を自覚し、約2 cm大の 外陰部腫瘤がみられた。所見からバルトリン腺膿瘍が疑われ、 大和市立病院 産婦人科 18 G 針で穿刺・吸引を試みたが出来なかった。その後通院を一 端 本 裕 子 山 本 恵 佐々木 麻 帆 時中断となる。しかし徐々に腫瘤は増大し、今回 7 cm 大となり 長谷川 哲 哉 永 田 智 子 斉 藤 圭 介 手術施行の方針となった。肉眼所見としては、6 c m 大白色の充 荒 田 与志子 石 川 雅 彦 河 野 蓉 子 実性腫瘍であった。病理所見で神経線維腫の診断となった。 森 瀬 昌 樹 【考察】神経線維腫は臨床的に弧発性と多発性に大別され、 病理学的には神経線維種は神経鞘腫との鑑別が重要となる。多 【症例】67 歳女性、2 経産。1 年毎の婦人科検診で腫瘤の指摘 発性はフォンレックリングハウゼン病の神経線維腫症Ⅰ型が主 を受けたことはない。今回、無症状検診目的に当院を受診し、 体となり、常染色体優性遺伝で全身性の多発神経線維腫を認め、 臍傍部に腫瘤を触知した。既往歴なしと申告され、腹部手術創 カフェオレ斑などの特徴を併せ持つ。そのため全身検索が必要 を確認できなかった。腫瘍マーカー等血液検査で異常を認めな となる。今回の腫瘍は外陰部に発生した孤発性で、外見からは かった。超音波検査で臍傍部に55×60 mm の充実性腫瘤を認め バルトリン腺膿瘍の鑑別が挙げられた。神経線維腫の病理所見 た。造影 CT では腫瘤辺縁が濃染されたが内部に造影効果はなか は被膜がなく、境界不明瞭で正常対応細胞は間質細胞の った。MRI では T 1,T 2強調像ともに低信号で、内部に一部高信 perineural cell となる。そのためシュワン細胞を染めるS-100蛋白 号の部位を認めた。腫瘤は腸管、子宮とは連続性がなかった。 が限局して陽性となる。また、繊維芽細胞の波打つように配列 これらの所見より、変性した消化管間葉系腫瘍、膿瘍、卵巣皮 (ウェイビー状)やコンマ状核といった特徴が挙げられる。治療 様嚢腫等の嚢胞構造をとる疾患を鑑別診断として考えたが、い は文献によっては神経線維腫の13∼29%悪性の混在が指摘され ずれも非典型的であり悪性疾患除外できず、手術の方針とした。 るため、外科的切除となる。 腹腔鏡下に小腸腸管膜内から多数の栄養血管を伴って発生する 腫瘤を認め、子宮、付属器に異常を認めなかった。診断確定で きず、開腹手術へ移行し、腸管膜腫瘍摘出術、小腸合併切除を 施行した。腫瘤内容は灰白色の泥状物質であり、病理検査によ り非人体組織(繊維)と判断された。嚢胞壁は炎症細胞の浸潤 を伴う膠原線維束であった。これより、異物肉芽腫の診断とな る。術後に改めて問診を聴取すると、約 30 年前の虫垂切除術の 既往が判明した。 【考察】手術症例の約1500-18000例に1例で異物遺残が起きる。 このうち約 26 %が無症状に長期経過し、被包化され異物肉芽腫 52 (206) 母児ともに救命し得た侵襲性 A 群溶連菌感染症の 1例 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 【症例】31 歳 0 経妊 0 経産。22 歳で AA を発症し治療なく経過 観察されていた。無月経 7 週 5 日に当科受診し、末梢血は WBC 3500/μl、Hb10.7g/dl、PLT 4.9 x104 /μlと汎血球減少を認めた。 聖医大 妊娠 9 週に病状説明し妊娠継続となり、妊娠 30 週までは 2 週毎、 秦 ひろか 水主川 純 安 藤 歩 以後は毎週、妊婦健診と末梢血評価を行った。妊娠 26 週より 名 古 崇 史 杉 下 陽 堂 高 江 正 道 PLTは減少傾向を示し、妊娠36週3日WBC 4100/μl、Hb 9.4g/ 五十嵐 豪 中 村 真 鈴 木 直 dl、PL 2.8x104 /μ l となり入院管理とした。妊娠 36 週 4 日 WBC 田 中 守 3400/μl、Hb 8.6g/dl、PLT 3.3 x104 /μlとWBCとHbの減少も 認め、血小板 20 単位を輸血後、選択的帝王切開を施行した。女 【諸言】A群β溶血性レンサ球菌(以下、GAS)が正常でも菌 の存在する部位に局所感染を引き起こし、重症化した状態は侵 児2734g、アプガースコアは8/9点であった。術後経過は順調 で術後8日目に母児ともに退院した。 襲性 GAS 感染症とされる。今回、我々は妊娠後期に侵襲性 GAS 【考察】AAと妊娠合併例の母体死亡率は、輸血・抗菌薬・G- 感染症を発症し、早期対応により母児ともに救命し得た1例を CSF 製剤等の支持療法の進歩で、以前は約50%であったが近年6 経験したので、報告する。 ∼ 20 %と改善した。妊娠中の AA に対する主治療は支持療法で、 【症例】症例は28歳、0経妊0経産、妊婦健診未受診妊婦。下 輸血は貧血や出血傾向の症状がある際に使用される。Hb の維持 腹部痛、発熱が発症した5時間後に前医救急外来受診。救急医が 目標に基準はないが、胎児発育のため6∼8 g/dlとする報告もあ 妊娠と診断し、産婦人科医不在のため当院へ母体搬送。来院時、 る。PLT の維持目標は妊娠中2x104 /μlとされる。免疫抑制剤の 血圧112/48 mmHg、脈拍数86回/分、体温39.1℃、内診所見で シクロスポリンも使用可能だが、効果発現に6∼12週を要する。 は肉眼的羊水流出を認めた。超音波断層法による胎児推定体重 AA発症後の妊娠許可基準は明らかでないが、未寛解例では妊娠 は 1,985 g(妊娠 33 週相当)であり、羊水量は正常であった。血 を許可されていないことが多い。治療歴がなく未寛解の状況で 液検査では白血球24,900/μL、CRP 4.96 mg/dlと炎症反応の上 妊娠した本症例は極めて稀で、同様の報告がなく予後も不明瞭 昇を認め、前期破水、子宮内感染疑いの診断にて当科入院。入 であり妊娠継続の判断が困難であったが、慎重な周産期管理に 院時の胎児心拍数陣痛図にて遷延性徐脈を認め、胎児機能不全 より母児ともに比較的良好な結果を得ることができた。 の適応にて全身麻酔下に超緊急帝王切開術施行。羊水混濁は著 明であり、女児、2310 g、Apgar score 1分後2点、5分後2点を娩 出し、臍帯動脈血 pH は6.99であった。術後、母体は重症感染症 産後の過多出血より不全子宮破裂が疑われた2症例 に対し、CZOP 4g/日点滴投与施行。来院時に採取した尿及び腟 分泌物培養検査から GAS を検出。児は出生後直ちに NICU 入院 横浜市大 市民総合医療センター 総合周産期母子医療センター となり、重症新生児仮死、重症感染症、DIC の診断にて気管内 小河原 由 貴 青 木 茂 当 間 理 恵 挿管管理、ABPC と GM 併用療法、抗 DIC 療法を施行。出生時 平 原 裕 也 額 賀 沙希子 峰 優 子 に採取した胃液及び耳漏培養検査からGAS が検出されたが、経 飯 沼 綾 子 田 吹 梢 長谷川 良 実 過順調にて日齢 14 日に軽快退院。胎盤病理組織学検査にて絨毛 葛 西 路 持 丸 綾 笠 井 絢 子 膜羊膜炎(Blanc 分類Ⅲ度)と診断し、Gram 染色では多数の Gram 陽性球菌が確認された。 【結語】妊娠後期に侵襲性 GAS 感染症を発症し、母児ともに 望 月 昭 彦 倉 澤 健太郎 高 橋 恒 男 横浜市大 平 原 史 樹 救命し得た症例を経験した。急激に進行する重症感染症の診療 においては GAS による感染症の可能性も念頭におき、迅速に対 応することが重要であると考えられた。 今回産後の過多出血に対して当初弛緩出血として対応したが、 不全子宮破裂が疑われ治療した2症例を経験した。 【症例①】37 歳、2 経妊 1 経産(正常分娩)。妊娠 41 週陣発で 前医入院。分娩進行中性器出血多く、高度遷延一過性徐脈を認 再生不良性貧血合併妊娠の1例 めたため常位胎盤早期剥離が疑われ、当センターに母体搬送と なった。来院時子宮は軟で陣痛発作として矛盾ない程度、慎重 川崎市立川崎病院 に経過を見ていたが、出血の増加やモニター所見の悪化無く順 上 野 和 典 土 屋 佳 子 友 坂 真理子 調に分娩進行、正常経腟分娩に至った。出生児は3366 g、Apgar 大河内 緑 宮 内 安 澄 鈴 木 毅 score 9点(1分値) /10点(5分値) 。分娩後4時間で出血3594 g認 金 善 惠 樋 口 隆 幸 村 越 行 高 め、弛緩出血として双手圧迫及び子宮収縮剤の点滴行うも子宮 染 谷 健 一 岩 田 壮 吉 林 保 良 からの流血持続し、不全子宮破裂が疑われ子宮全摘出の方針と なった。術中腹腔内出血はなく、子宮収縮は良好、単純子宮全 【緒言】再生不良性貧血(Aplastic Anemia以下AA)は、末梢 血汎血球減少と骨髄低形成を呈する疾患である。AA合併妊娠は 極めて稀であるが、出血や感染による母体死亡率が高いとされ る。 摘術を施行し、摘出標本にて3時・9時方向に深部頚管裂傷あり、 不全子宮破裂と診断した。術後経過は良好であった。 【症例②】29 歳、2 経妊 2 経産(吸引分娩、正常分娩)。妊娠 39 週本人希望で陣痛誘発中に、頻収縮と同時に徐脈出現し、 平成27年2月(2015) NRFSとして緊急帝切施行。出生児は3990 g、Apger score 8点(1 53 (207) 結果的に待機的管理となった常位胎盤早期剥離の1例 分値)/ 8 点(5 分値)。術後性器出血持続し、弛緩出血疑いで当 院へ産褥搬送となった。来院後子宮収縮良好だが止血得られず 国立病院機構 横浜医療センター 子宮動脈塞栓術の方針とした。左子宮動脈分枝から子宮内腔へ 梶 山 典 彦(研修医) 出血を認めたが、塞栓術後は性器出血なく経過良好であった。 太 田 幸 秀 若 林 玲 南 長谷川 瑛 弛緩出血として対応している症例の中に不全子宮破裂を含んで 奥 田 美 加 窪 田 與 志 吉 田 梨 恵 いる可能性があり、産後止血に難渋する症例では不全子宮破裂 の可能性を忘れてはならない。産後の危機的出血を認めた場合、 常位胎盤早期剥離は母子ともに生命の危機をもたらすため、 子宮収縮促進や出血への対応を図りながら、弛緩出血以外の原 診断された場合には、原則急速遂娩を図るが、胎児心拍数異常、 因を常に念頭に置き、治療介入のタイミングを逸しない事が重 子宮収縮、血腫増大傾向、凝固系異常出現・増悪のいずれもな 要である。 い場合、週数によっては妊娠継続も考慮される(産婦人科診療 ガイドライン産科編2011:CQ 311) 。今回、母体搬送入院時に前 妊娠25週子宮破裂の1例 置胎盤からの出血と判断し、結果として待機的管理となった常 位胎盤早期剥離の一例について報告する。 症例は34歳、0回経妊0回経産。初期より近医にて妊婦健診を 昭和大 北部病院 受けていた。妊娠30週5日0時40分、腹痛を伴わない突然の子宮 奥 山 亜由美 佐々木 康 長 塚 正 晃 出血を認め健診施設を受診、前期破水との診断で当院へ母体搬 安 水 渚 宮 上 哲 野 村 奈 央 送依頼があった。来院時、腟内に凝血塊を認め、少量の子宮出 遠 武 孝 祐 小 谷 美帆子 苅 部 瑞 穂 血が持続していた。羊水流出様に見えていたのは凝血塊から滲 折 坂 勝 安 藤 直 子 大 槻 克 文 出した血漿成分であり、破水は認めなかった。経腟超音波を施 行し、内子宮口を胎盤が覆っていると判断した。胎児心拍モニ 【緒言】子宮破裂は 1,235 ∼ 18,500 例に 1 例の頻度で起き、陣 ターでは異常を認めなかった。前期破水ではなく前置胎盤から 痛開始前の破裂は4.3%と非常に稀である。今回我々は妊娠25週 の出血と診断、止血傾向のため妊娠継続の方針とし、ベタメタ に発症した子宮破裂を経験したので報告する。 ゾン筋注し tocolysisを開始した。 【症例】32歳、1経妊1経産。 【既往歴】29歳、選択的帝王切開術(FGR growth arrest、骨盤 妊娠31週0日、経腟超音波で胎盤様の像が内子宮口辺縁まで後 退し、胎盤と判断したものは内子宮口付近の凝血塊だったと考 位妊娠33週6日:出生体重1290 g、アプガースコア7/10点、女 え、MRI を施行したところ常位胎盤早期剥離の診断となった。 児。子宮下節横切開のみで娩出に至らず、逆T字切開の追加あり) 。 しかし初発症状から2日半が経過し、新たな出血なく、胎児心拍 【現病歴】前回分娩終了後3年10ヵ月で自然妊娠が成立、以後 異常を認めないため、胎盤辺縁の剥離後に止血し状態は安定し 当院で妊婦健診を受診。妊娠25週3日、下腹部痛が出現するも一 ていると判断し、注意して経過観察する方針とした。古い凝血 過性で、胎動を認めたため自己判断で経過観察した。翌朝、再 塊は少しずつ排出され消失した。妊娠33週3日、定時の胎児心拍 度下腹部痛が出現し排尿困難、呼吸苦も生じたため救急要請し モニターで軽度遷延一過性徐脈を認めたが回復、その後気分不 当院へ搬送された。来院時意識はやや混濁、ショックバイタル 快の訴えあり、強い子宮収縮を認めたため、再度の常位胎盤早 の状態で、超音波検査では子宮外に脱出した胎児と子宮筋層の 期剥離を否定できず緊急帝王切開術を施行した。明らかな新た 断裂像を認め、胎児心拍は確認できなかった。子宮破裂、胎児 な剥離所見はみられなかった。新生児は1618 g男児、Apgar Score 死亡、出血性ショックの診断にて全身評価ののち緊急開腹手術 9/10(1/5分) 、UApH 7.34であった。NICU に入室したが人工 の方針とした。 呼吸管理を必要とせず、日齢36に退院した。 【術中所見】開腹時胎胞が膨出しており、前回切開創の破綻 を認めた。止血可能であり、筋層縫合修復術を施行した。 【術後経過】術中から輸血療法を開始し、術後に抗DIC療法を 当院における若年妊婦の妊娠分娩経過に関しての検討 併施した。術後経過は良好で術後8日目に退院した。術後2ヵ月 で月経再開、術後5ヵ月目に修復部位の確認目的に、造影MRI検 大和市立病院 査を施行した。子宮体部前壁に一部筋層の断裂像を認め、今後 吉 田 優(研修医) の妊娠でも再破裂の可能性が高いことを説明した。 佐々木 麻 帆 端 本 裕 子 長谷川 哲 哉 【結語】陣痛発来前に発症する子宮破裂は非常に稀であり、 山 本 恵 永 田 智 子 斉 藤 圭 介 荒 田 与志子 また発症時に無症状の場合もあるため早期診断が困難である。 石 川 雅 彦 古典的帝王切開術や逆T字切開施行後、子宮破裂修復術後は特に 子宮破裂の再発頻度が高いため、妊娠時には十分なインフォー ムドコンセントを得ることが重要である。 若年妊娠では社会的問題や、早産などの妊娠分娩合併症の上 昇が懸念されている。今回、20 歳未満の妊娠・出産を若年妊娠 とし、当院における若年妊娠の妊娠・分娩上のリスクを検討し た。 2011 年 4 月から 2013 年 12 月までの間に、当院で分娩に至った 54 (208) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 若年妊娠症例 53 例について診療録を用い後方視的に検討した。 ぼす、帝王切開術など医療介入の頻度が高まる、胎児・新生児 また、同期間で 53 例を無作為に抽出し対照群とした。両郡間の のリスクが高いなどであった。69 %の助産師は分娩予後に影響 比較にはカイ2乗検定またはフィッシャーの直接確率計算法を用 を及ぼすと回答し、病院勤務助産師の67%、開業助産師の87% いた。 が胎児・新生児への影響を強く危惧しており母乳哺育に負の影 まず、若年妊娠症例の背景について検討した。全分娩数の 響を及ぼすとの回答はそれぞれ 60 %、77 %であった。無痛分娩 3.4%を占めており、年齢分布は、15歳2人、16歳4人、17歳3人、 により助産師の役割が損なわれるかとの質問には 68 %が否定し 18歳20人、19歳14人と18歳、19歳の割合が多かった。外国人は ている。陣痛の痛み、ストレスは積極的に取り除くべきと回答 そのうち6人含まれた。経産婦が2人おり、人工妊娠中絶歴のあ した助産師は 47 %で痛みが母性の醸成、母子相関に必要である るものは8例で、これは若年妊娠症例の15%を占めていた。 との回答は 51 %であった。71 %の助産師が無痛分娩はバースプ 次に、若年妊娠症例の妊娠時状況について検討した。外来初 診12週以降妊婦は若年妊娠群では4割と、対照群に比べ有意に多 く、正確な妊娠週数を決定できていない妊婦が多かった。分娩 ランの一つであるべきと考えてはいるが、無痛分娩のニーズが 高まるかに関しては52%が肯定、41%が否定している。 無痛分娩の具体的方法、分娩予後、胎児・新生児に及ぼす影 時未入籍妊婦は、若年妊娠群で4割と対照群より有意に多かった。 響などに関しての的確な知識が助産師をはじめ医療従事者に求 母子家庭での貧困率は一般的に高く、社会的問題につながると められる。 考えられる。若年妊娠群で外国人が多いという予想に反し、 「外 国籍」に関しては有意な差はなかった。 さらに、若年妊娠症例の分娩時状況に関して検討した。帝王 脳瘤の出生前診断がなされたMM双胎の1例 切開率が低く、早産率、低出生体重は有意な差をみとめなかっ た。新生児仮死は若年妊娠群で1人認めたが、これは34週の早産 聖医大 西部病院 に起因するものであった。感染症に関してはクラミジアが有意 t 橋 由 妃 川 原 泰 佐 藤 佑 に多く尖圭コンジローマを 2 例みとめた。また、若年妊娠群で 安 藤 歩 西 島 千 絵 飯 田 智 博 7.5%に子宮頚部異形成をみとめた。 若年妊娠群は初診の遅延、分娩時未入籍、クラミジア感染者 が多く、社会的問題を示唆していると考えられる。今回の検討 田 村 みどり 聖医大 吉 岡 範 人 鈴 木 直 において、若年妊娠において、分娩時の問題として低出生体重 児や早産などの妊娠分娩合併症が多いというようなことはなか った。 【緒言】脳瘤は頭蓋の欠損部から脳または髄膜組織が脱出し た先天奇形で、出生 2000 ∼ 5000 に対して 1 例の頻度で発生する 稀な疾患である。出生前診断が十分に行われていた場合でも、 育児・発達に対する強い不安から、その後の療養を拒否するよ 第406回 神奈川産科婦人科学会 学術講演会 うな場合もあり、家族の受け入れに向けて十分な病態説明が必 要であると考えられる。今回我々は一絨毛膜一羊膜性双胎(以 無痛分娩の現状と助産師の意識 下 MM 双胎)において、脳瘤を早期に出生前診断し、脳神経外 科、新生児科、産婦人科が協力することによりご家族への十分 湘洋会 産婦人科吉田クリニック 天 野 完 な病態説明を行い、安全な周産期管理を行えた1例を経験したの で報告する。 【症例】32歳、0回経妊0回経産。既往歴、家族歴共に特記事 硬膜外鎮痛法による無痛分娩により分娩時のストレス、疼痛 項無し。前医にて自然妊娠成立を確認。妊娠 10 週 3 日に MM 双 から解放された快適な分娩体験が可能になる。過換気・低換気 胎の診断にて当院へ紹介受診となった。その後、妊娠18週6日経 を回避し、ストレスホルモンの遊離を抑制できるため酸素供給 腹超音波にて I 児の後頭部に 2 cm 大の腫瘤性病変を認められた。 が保持できることは胎児にとっても都合がよい。ハイリスク妊 2週間後の健診では後頭部病変の変化は認められなかったが、水 娠は区域鎮痛法による分娩管理が必須であるが、医学的適応が 頭症の併発がみられたことから、妊娠23週4日に双胎管理目的及 なくとも産婦の要望があれば積極的に無痛分娩を提供すべきで び頭蓋病変、水頭症精査目的にて入院となった。1 日 2 回の胎児 あると米国産婦人科学会・麻酔学会は勧告している。陣痛の捉 心拍モニタリングと tocolysis を施行し経過観察した。入院後2回 え方が欧米とは異なる社会的、文化的背景もあってわが国では の頭部 MRI による評価にて、I児の後頭部に脳瘤が疑われた。妊 医学的適応のない場合の無痛分娩の実施頻度は5%に満たないと 娠33週5日選択的帝王切開を施行し、I児は脳瘤が認められたが、 推察される。分娩管理に携わる助産師は無痛分娩をどのように 皮膚欠損は認められなかった。現在新生児科にて水頭症及び脳 捉えているのであろうか。神奈川県助産師協会の協力を得てア 瘤に対する管理・精査中である。 ンケート調査を行った(送付500通、回答136通、回収率27%) 。 助産師の 84 %は無痛分娩の具体的方法を理解しているが、行 うことに対しては賛成意見が39%、反対意見が40%の回答であ った。反対意見として分娩は自然であるべきで、痛みをとるこ とで産婦の達成感・満足感が損なわれる、母乳哺育に影響を及 【結語】一児に脳瘤を合併した MM 双胎の一例を経験したの で報告した。 平成27年2月(2015) 胎児心臓超音波検査で診断された左上大静脈遺残の 2例 55 (209) 出現したため入院管理とし塩酸リトドリン点滴を開始した。入 院中は週に1回超音波検査にて子宮破裂瘢痕部位の筋層評価を施 行した。MRI 検査も施行し評価を試みたが、瘢痕部が子宮後壁 川崎市立川崎病院 であり、胎盤付着も同部位であったため評価は困難であった。 大河内 緑 樋 口 隆 幸 竹 田 貴 腹緊増悪を認めたため塩酸リトドリン投与量を徐々に増量し、 鈴 木 毅 金 善 惠 上 野 和 典 新生児科とも協議の上、妊娠30週5日に選択的帝王切開術を施行 染 谷 健 一 岩 田 壮 吉 林 保 良 した。子宮下部横切開にて児・胎盤を幸帽児で娩出し、その後 に子宮後壁の完全破裂を認めた。破裂部位を縫合し子宮は温存 左上大静脈遺残(persistent left superior vena cava:PLSVC)は 可能であった。術中の出血量は 1230 ml であり輸血は施行せず、 胎生期の Marshall 静脈が遺残して発生する大静脈系の奇形であ 術後の経過も良好で術後 6 日目に退院となった。児は 1376g、 る。通常、遺残した左上大静脈は冠静脈洞から右房に開口する Apgar Score 6/8(1分/5分) 、臍帯血ガス値は pH 7.203であっ ことが多い(右房還流型) 。今回我々は、胎児心臓超音波検査で た。呼吸管理のため NICU 入院を要したが、経過は順調で日齢 PLSVC の診断に至った2例を経験したので報告する。2例ともに 71 (修正40週6日)で退院となった。 妊娠第2三半期の胎児超音波検査で、四腔断面では心臓の位置異 【結語】既往子宮破裂後妊娠の再破裂の頻度は高いと言われ 常や軸偏位は認められなかったものの、僧帽弁後側に異常な腔 ているが、その妊娠管理に関しての明確な管理指針はない。今 が存在しそれが右房に連続しており、拡張した冠静脈洞と考え 回のような瘢痕部と胎盤の位置関係により、子宮破裂のリスク られた。流出路断面では(右)上大静脈が認められず、一方で 評価が困難な症例も厳重な妊娠管理かつ臨床症状の把握を行う 肺動脈・動脈管の左側に異常血管を認め、それが冠静脈洞に流 ことで無事に生児を得ることが可能と考えられた。 入しており、PLSVC と考えられた。他の心奇形は認められなか った。以上から PLSVC・右上大静脈欠損の出生前診断に至った。 出生後、両児ともにアプガースコアは良好で、心臓超音波検査 では出生前診断と同様の所見が認められた。PLSVC では右房還 当院で経験した正常血圧下での分娩時子癇発作の 2症例 流型は出生後無症状となるが、左上大静脈が直接左房に開口す る場合もあり(左房還流型) 、この場合は出生後チアノーゼを発 済生会横浜市南部病院 症させ、血流変換術を要する。他の心奇形を合併することが多 当 間 理 恵 松 尾 知 世 牛 尾 江実子 く、特に無脾症候群との関連が報告されており、新生児予後を 中 山 冴 子 林 真理子 祐 森 明日菜 左右する。今回の2例では出生前に右房還流型 PLSVC に加えて、 佐 藤 加奈子 田 中 理恵子 藤 原 夏 奈 右上大静脈欠損と診断された。非常に稀な形態であったが、出 沼 崎 令 子 仲 沢 経 夫 生後は無症状と考えられたため当院での分娩及び新生児管理を 選択した。PLSVC では左上大静脈の還流形態や合併する心奇形 【緒言】子癇とは、妊娠20週以降に初めて痙攣発作を起こし、 によって予後が異なるため、胎児心臓超音波検査による正確な てんかんや二次性痙攣が否定されるものと定義され、その発症 出生前診断が新生児管理に大いに寄与すると考えられた。 は高血圧に関連すると言われている。今回我々は、正常域血圧 での分娩進行中に発症した子癇を2例経験したので報告する。 【症例1】40歳0経産。初期より血圧は正常域で経過していた。 既往子宮破裂後妊娠で帝王切開時に子宮破裂を認め た1例 妊娠39週0日、陣痛発来で入院し、正常域血圧で経過していたが、 子宮口全開大から3時間後に JCS 200の意識障害を認めた。その 際自発呼吸は保たれており、血圧は139/88 mmHgであった。酸 済生会横浜市東部病院 素投与と補液を開始し、意識障害から 10 分後に NRFS を認め鉗 崎 山 明 香 小 西 康 博 宮 内 里 沙 子分娩となった。児は2930 g、Apgar score 8/9、UApH 7.141で 松 下 瑞 穂 岩 崎 真 一 御子柴 尚 郎 あった。直後に CT とMRI を行い、MRI で PRES を疑う脳浮腫の 伊 藤 めぐむ 長谷川 明 俊 秋 葉 靖 雄 所見を認め、経過と併せて子癇と診断した。その後子癇再発は 渡 邉 豊 治 無く、血圧は降圧剤を使用することなく正常域で経過し、神経 学的異常も認めなかった。 【緒言】子宮破裂は妊娠・分娩中に生じ、母児ともに重篤な 【症例2】29歳0経産。初期より血圧は正常域で経過し、直前 状態になりうる疾患である。頻度としては全分娩の0.02∼0.1% の妊婦健診で尿蛋白 1+ を認めた他は、経過に異常を認めなかっ と稀であるが、子宮手術既往がある場合にはさらに危険性が増 た。妊娠40週4日陣痛発来し入院した。入院後も血圧は正常域で す。特に子宮破裂既往妊婦の再発率は25−30%以上と高率の報 経過していたが、子宮口全開大から 30 分後に眼華閃発を認め、 告もある。今回、我々は既往子宮破裂後妊娠で帝王切開時に子 その直後に強直性痙攣を伴う意識障害(JCS 200)と呼吸停止を 宮破裂を認めた一例を経験したので報告する。 認めた。その際血圧は136/88 mmHgであった。気道確保と補助 【症例】40歳、1回経妊1回経産。31歳時に腹腔鏡下子宮筋腫 換気で自発呼吸は再開し、痙攣は 40 秒程で消失した。会陰切開 核出術の既往あり。前回の妊娠は38歳時に妊娠23週で子宮破裂 を行い自然経腟分娩となり、児は 2358 g、Apgar score 9 / 9、 を生じ死産。今回妊娠6週で当院初診し、妊娠18週で下腹部痛が UApH 7.072 であった。症例1と同様に MRI で PRES を疑う所見 56 (210) を認め、子癇と診断した。産後も血圧は正常域で、その他経過 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 非定型的な血液疾患を合併した妊婦の1例 に異常を認めなかった。 【考察】子癇の多くは血圧上昇を先行発症するが、今回と同 聖医大 西部病院 様に正常血圧下での子癇発作の報告が過去にもなされている。 川 原 泰 安 藤 歩 佐 藤 佑 高血圧を呈していない妊婦であっても子癇発作が起こりうるこ t 橋 由 妃 西 島 千 絵 飯 田 智 博 とを認識し、常に子癇に対応できるよう準備しておく事が重要 田 村 みどり である。 聖医大 鈴 木 直 妊娠後期に発症した Hyperreactio Luteinalisと考え られる1例 【はじめに】妊娠中の血小板減少には、妊娠性血小板減少症 (gestational thrombocytopenia:以下 GT)、と特発性血小板減少症 (idiopathic thrombocytopenic purpera:以下ITP)があり、両者の鑑別 新横浜母と子の病院 は困難である。今回我々は、既往帝王切開後妊娠の経過中に血 大 沼 一 也 稲 坂 淳 島 田 洋 一 小板が2万/μL台まで低下し、診断と治療に苦慮した一例を経験 崎 山 武 文 石 原 楷 輔 塩 原 和 夫 したので報告する。 【症例】21歳、1経妊1経産。骨盤位による帝王切開。分娩前 Hyperreactio Luteinalis(以下 HL)は hCG 高値の状態や hCG の血小板数は5万/μLまで低下したが、分娩後は速やかに回復あ receptor 感受性の異常に由来する黄体化過剰反応で発生する多房 りGTが疑われた。その他既往歴に特記事項なし。自然妊娠。妊 性卵巣腫瘤である。多くは絨毛性疾患、多胎胎妊娠、不妊治療 娠24週まで血小板10万/μL。妊娠24週3日、切迫早産の診断で 後に見られ、稀に自然単体妊娠にも発生する。今回我々は自然 当院へ母体搬送となった。搬送時の血小板数は3.5万/μL。入院 妊娠後期にLHと診断し、経腟分娩後に正常状態に帰結した症例 後、子宮収縮抑制薬を開始。血小板減少に対し副腎皮質ステロ を経験したので報告する。 イド 30 mg の内服開始。妊娠 24 週 5 日、腹痛と大量出血を認め、 症例は、32歳 2経妊(2回;人工流産) 、0経産。既往歴、月経 常位胎盤早期剥離を疑い全身麻酔下で緊急帝王切開術を施行。 歴に特記事項なし。自然妊娠を主訴に来院、妊娠8週2日と診断。 術中出血量は 1897 g。術後出血は約 1000 g。合計 RCC 8 単位、 この時超音波検査で卵巣に異常を認めなかった。妊娠経過は順 FFP 16単位、PC 30単位を輸血。術中に常位胎盤早期剥離と診断 調で妊娠 36 週時に子宮体部両側に腫瘤を触知し、超音波検査で した。児は女児、568 g、Apgar score 2/3。蘇生処置後 NICU 入 多房性腫瘤を検出した。腫瘤の大きさは両側とも12×10 cm大で 院となったが以後の経過は順調。血小板減少などの異常を認め 嚢胞壁は平滑、血流や充実結節を認めず、また、腹水所見もな なかった。母体の血小板数は、手術1ヵ月後も依然5万/μL未満 く、超音波学的には良性卵巣腫瘤の所見であった。また、MRI で推移した。 検査でも同様の所見であった。血液内分泌検査では hCG 、エス 【考察】GT では血小板数は妊娠中7万/μL以下になることは トラジオール、テストステロン が高値を示し LH、FSH、TSHは 少なく、分娩後は数日で速やかに5万/μL以上に上昇するのが一 基準値にあった。これら超音波所見、MRI 所見、内分泌所見や 般的であるため、今回の症例は自己免疫性の ITP が最も疑われ 臨床経過から総合的に判断し HL が最も考えられた。一方、腫瘍 た。しかし児に血小板減少を認めず、また PAIgG の上昇も軽度 マーカーCA125は 232 U/mlと高値であったため、妊娠時におけ であったことから鑑別に苦慮した。妊娠中の血小板減少は、 る評価は困難とされるものの、悪性腫瘍の可能性は完全に排除 HELLP 症候群や常位胎盤早期剥離などの前駆状態である可能性 できなかった。妊娠経過は順調であり、随伴症状もないことか もあるため、早急に鑑別を進め適切な管理を行う必要がある。 ら経腟分娩を施行し無事出産となった。産褥経過は順調で、産 褥30日には腫瘤は1/2大に縮小、産褥45日には正常大の卵巣に 復した。内分泌所見は産褥 15 日に内分泌値は基準値に復し、産 褥30日にはCA 125、CEA、CA 19-9は基準値にあった。今回の症 術前に診断して腹腔鏡手術で治療した腹腔妊娠の1 例 例は自然単体妊娠の後期に観察された多嚢胞性卵巣腫瘤であり、 HL と多房性粘液性腫瘍との鑑別には特徴的な内分泌及び超音波 所見が有用であった。 昭和大 藤が丘病院 市 原 三 義 田 内 麻依子 中 林 誠 竹 中 慎 松 浦 玲 中 山 健 青 木 弘 子 横 川 香 本 間 進 佐々木 康 小 川 公 一 【はじめに】腹腔妊娠は、受精卵が壁側腹膜及び生殖器以外 の腹腔内臓器の臓側腹膜に着床して発育したものと説明できる。 今回、腹腔妊娠を術前に診断して腹腔鏡下で治療しえた症例を 経験したので報告する。 【症例】30 歳代、女性、0 回妊娠。主訴:最終月経後無月経。 平成27年2月(2015) 57 (211) 既往歴: 31 歳時腹腔鏡下左卵巣腫瘍摘出術。現病歴:前医で原 を呈し、術後3日目の CT 検査で筋膜下膿瘍及び腹腔内膿瘍を認 発性不妊のため治療を受けていた。体外受精で妊娠が成立した めたため、術後4日目に開腹にてドレナージを図るも状況を改善 が、胚移植より妊娠5週5日に血中 hCG 値2993 mIU/mlであった することができず、初回手術6日後に子宮全摘を施行した。そし が子宮内に胎嚢が見えず、異所性妊娠の疑いで当院を妊娠 6 週 1 て初回手術28日後に軽快退院した。 日で紹介受診となった。初診時の内診では、子宮と附属器に圧 上述の症例において、各所の細菌培養の結果から腟内細菌に 痛はなく、性器出血はなかった。妊娠 6 週 6 日に血中 hCG 値 よる膿瘍形成が考えられた。産後の重症感染は母児のスキンシ 9200.6 mIU/mlと上昇していたが、経腟超音波検査では、子宮内 ップを妨げるだけでなく、周囲の家族まで不安を強いることに 及び附属器や骨盤腔に胎嚢像を認めず、腹水貯留もなかった。 なるため、十分な観察と早急な対応が必要である。 腹腔妊娠を疑い腹部造影 CT 検査としたところ、S 状結腸近傍に 直径 15 mm 程度の円形の中心部液体、辺縁染まる胎嚢様像を認 めた。S 状結腸腸間膜の腹腔妊娠の術前診断で腹腔鏡手術の治療 分娩後に発症したTSS(toxic shock syndrome)の1例 方針とした。同日、腹腔鏡手術を行った。腹腔鏡所見では、子 宮及び附属器に異常はなく、淡黄色腹水少量あり、CT 画像の胎 川崎市立多摩病院 嚢様像と一致するS 状結腸腸間膜内に胎嚢様腫瘤を認めたため腹 阿 部 佳 織 大 熊 克 彰 朱 丞 華 腔鏡下に摘出した。卵管通水検査では両側卵管は通過した。病 上 里 忠 英 杉 下 陽 堂 理組織診断で摘出した腫瘤に絨毛が確認され、S 状結腸腸間膜の 聖医大 原発性腹腔妊娠と診断した。術後の経過は順調であった。 鈴 木 直 【結語】腹腔妊娠の術前診断として CT 検査が有用と考えられ た症例であった。また早期に術前診断したことで、腹腔妊娠で 【緒言】TSS はブドウ球菌が産生する外毒素エンテロトキシ も比較的稀なS 状結腸腸間膜妊娠であったが腹腔鏡下に治療が可 ンが、スーパー抗原として作用した結果、突然の発熱、血圧低 能であった。 下、びまん性の紅斑で発症し、多臓器不全をきたす重症感染症 である。TSS と比較し、軽症な症状の症例は Probable TSS と提唱 されている。今回我々は、分娩後に発症した Probable TSS の1例 当院で経験した帝王切開術後の重症創部感染2症例 の検討 を経験したので報告する。 【症例】症例は 28 歳、2 経妊 2 経産。産褥 8 日目より、38 ℃以 上の発熱、四肢の浮腫、関節痛が出現。産褥 11 日より、四肢に けいゆう病院 眞 木 順 子 荒 瀬 透 清 水 拓 哉 境界不明瞭な小水疱が出現。分娩時縫合部の異常無く、悪露貯 留認めないため、内科コンサルトとなった。 渡 部 桂 子 櫻 井 真由美 大 石 曜 分娩経過に異常なし。産褥経過では、分娩後より 38 度台の発 倉 c 昭 子 秋 好 順 子 永 井 宣 久 熱、炎症反応上昇認め、産褥1日目より抗菌薬 FMOX を3日間投 持 丸 佳 之 中 野 眞佐男 与。36 度台に解熱、炎症反応改善傾向を確認し、セフカペンピ ボキシル塩酸塩の内服に変更。産褥5日目に退院となった。来院 帝王切開分娩は、近年の少子化及び妊娠年齢の高齢化を背景 時身体所見は、体温39.6℃。脈拍150回/分。内診所見では縫合 に増加の一途を辿っている。抗生剤や医療材料の進歩により、 部異常なく、圧痛、牽引痛も認めなかった。頭頸部では結膜充 最近では比較的安全に帝王切開手術を完遂できるようになった 血を認め、胸腹部は異常なく、乳腺炎も認めなかった。四肢で が、術後の創部感染は後を絶たない。今回、当院で経験した2例 は、上下肢に non pitting edema を認め、浮腫による関節のこわば の重症創部感染症例を提示したい。 りを認めた。境界不明瞭な紅斑、両大腿内側に粟粒大の水疱の 症例1は38歳、1経妊0経産。心室中隔欠損症の手術既往あり。 集簇を認め、関節に圧痛を伴っていた。 IVF にて妊娠成立し、妊娠中は妊娠糖尿病と診断され食事療法に 経腟分娩後、発熱、皮疹、結膜の充血より、Probable TSS を疑 て管理していた。妊娠 38 週に陣痛発来で入院。微弱陣痛にて吸 い、抗菌薬 MEPM、VCM、CLDM の投与を開始とした。産褥17 引分娩を試みるも不成功となり、緊急帝王切開で4164 gの児を分 日目、腟分泌物より MRSA 検出。血液培養は陰性を持続してい 娩した。術後5日目より発熱及び創部痛を自覚し、抗生剤継続投 た。抗菌薬開始後、症状は徐々に改善し、産褥 28 日に退院とな 与にて症状の著明な増悪がないことことから退院するも、術後9 った。 日目に38℃台の発熱にて再入院。CT 検査で筋膜下膿瘍を認めた。 【結語】腟分泌物より MRSA が検出されたため、分娩時裂傷 その後炎症反応の増悪及び肺水腫症状を認めたため、術後 15 日 部からの MRSA 感染による probable TSS に矛盾しない経過と考 目に開腹ドレナージを施行。術後31日目に軽快退院となった。 える。皮膚症状は MRSA 感染症において、診断価値が高い症状 症例 2 は 42 歳、2 経妊 0 経産。既往に小児喘息と子宮内膜ポリ ープ切除がある。自然妊娠で妊娠経過は良好。妊娠 40 週に陣痛 発来で入院し、その後破水。微弱陣痛のためオキシトシンを投 与するも分娩停止となり、緊急帝王切開にて4034 gの児を分娩。 体型により術野が不良であったため、手術時間は1時間48分、出 血量は 2200 mL であった。術直後より 38 ∼ 39 ℃までの発熱症状 であり、治療は迅速に広域の抗菌薬投与を開始することが重要 である。 58 (212) 最近経験した臨床的侵入奇胎の3例 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 【症例】症例は61歳女性。4年前に不正出血を主訴に受診。精 査の結果、子宮頸がんⅡB期・扁平上皮癌であった。このため広 昭和大 藤が丘病院 中 林 誠 佐々木 康 竹 中 慎 汎子宮全摘出術・両側付属器摘出術と、術後補助療法の放射線 治療を施行した。その後も膣断端や肺転移を認めるも、放射線 横 川 香 田 内 麻依子 松 浦 玲 療法や手術療法で治療を行っていた。術後4年目で腫瘍マーカー 中 山 健 青 木 弘 子 市 原 三 義 (SCC)の再上昇と左胸壁・左肺門部への転移を確認し、同時化 本 間 進 小 川 公 一 学放射線療法(CCRT)施行するも PD(progressive disease)のた め化学療法導入。2nd lineも PD であり3 rd line導入したところ奏 当院で最近経験した臨床的侵入奇胎の3例を報告する。全症例 功を認めた。しかし、突然の右下肢痛が出現し、造影 CT にて総 とも絨毛癌診断スコアは0点、FIGO 2000分類では stage Ⅲ:2で 腸骨動脈分岐部付近と右大腿動脈に血栓を確認、急性動脈閉塞 あった。症例 1 は、35 歳 1 経妊 0 経妊。既往歴、家族歴に特記す 症(AAO)の診断となり緊急動脈内血栓除去術施行。病理組織 べき事項はない。全胞状奇胎娩出後に臨床的侵入奇胎と診断さ より腫瘍塞栓の診断であり、フォローの造影 CT にて多発動脈血 れ、奇胎娩出後10週目よりメトトレキサート(MTX)療法開始 栓を確認した。血栓除去術から6日目に AAO 再発し死去となっ した。4 コース施行したが血中 hCG 値の下降が不良であり、18 た。 週目よりアクチノマイシン D(Act-D)療法に変更したところ、 【結語】化学療法が奏功するも腫瘍塞栓で死に至った再発子 hCG 値は順調に下降した。症例 2 は、22 歳 1 経妊 0 経産。異所性 宮頸がんの一例を経験した。肺転移のある症例で肺静脈への浸 妊娠で手術歴がある。全胞状奇胎娩出後に臨床的侵入奇胎と診 潤の可能性がある場合、急性動脈閉塞症を発症する可能性を考 断され、奇胎娩出後 5 週目より MTX 療法を開始した。翌週より 慮する必要がある。 Grade 4 の遷延性好中球減少症を呈し回復に約 2 週間を要した。 その後 Act-D 療法に変更したところ、hCG 値の下降を認めた。 症例 3 は、25 歳 2 経妊 0 経産。既往歴、家族歴に特記すべき事項 はない。全胞状奇胎娩出後に臨床的侵入奇胎と診断され、奇胎 子宮内膜症性のう胞に併存したセルトリ・間質細胞 腫瘍の1例 娩出後 6 週目より Act-D 療法を開始し、4 コース施行した時点で hCG 値は陰性化した。計5コース施行し治療を終了とした。 聖医大 臨床的侵入奇胎は、絨毛性疾患の存続絨毛症に分類される。 阿 部 恭 子 吉 田 彩 子 中 澤 悠 我が国では、絨毛癌スコアと FIGO 2000分類を用いて診断を行う。 竹 内 淳 波多野 美 穂 近 藤 亜 未 臨床的侵入奇胎の治療は、非絨毛癌群として MTX あるいは Act- 細 沼 信 示 大 原 樹 近 藤 春 裕 D の単剤化学療法が推奨される。GOG-0174 試験では、投与量や 戸 澤 晃 子 鈴 木 直 投与方法に違いはあるが、Act-D の方が MTX に比して完全寛解 率が高いことが報告された。今回我々も、臨床的侵入奇胎3症例 【緒言】卵巣性索間質性腫瘍は原発卵巣腫瘍の8%と比較的ま の治療を通じて同様の印象を得た。両薬剤を比較すると、MTX れな腫瘍であり、良性もしくは低悪性度の腫瘍が多いが、一部 は筋注で投与できるため比較的安全で使いやすいが、Act-D は起 に充実性成分を伴うことから、治療前画像診断時に難渋する場 壊死性抗癌剤に分類され皮下に漏出すると皮膚壊死の可能性が 合がある。今回我々は、子宮内膜症性嚢胞に併存したセルト あるため注意を要する。この点が、MTX 療法が初回化学療法で リ・間質細胞腫瘍の1例を経験したので報告する。 よく用いられる理由でもあるが、一方で薬剤抵抗性の問題も指 【症例】44歳、0経妊0経産、月経は23-28日周期、整。既往に 摘されている。結論として、どちらの薬剤を初回治療に用いて 特記すべき事項はなかった。以前より子宮内膜症性嚢胞を指摘 も良いが、hCG 値の下降不良や有害事象発症等を認めた場合に されており近医にて経過観察としていたが、画像上、悪性を疑 は適切な薬剤変更を行い速やかに寛解させることが重要である。 う所見を認めたため、精査加療目的で当院へ紹介受診となった。 明らかな男性化徴候はなく、内診では腹部正中に臍高まで達す る弾性軟な腫瘤を触知した。経腟超音波では、右付属器領域に 化学療法が著効するも、腫瘍塞栓で死に至った再発 子宮頸がんの1例 10.5 cm 大の内部に隆起性病変を伴う低エコーの腫瘤を認めた。 MRI では T 1 強調像で高信号、T 2 強調像で低信号を示し、内部 に 1 cm 大の充実成分を伴っており、同部位は造影効果や拡散制 平塚市民病院 限を認めたことから悪性卵巣腫瘍を鑑別に挙げた。手術は開腹 上之薗 美 耶 吉 政 佑 之 簡 野 康 平 右付属器切除術を施行し、最終病理組織診断は高分化型の 藤 本 義 展 笠 井 健 児 Sertoli-Leydig cell tumor,well differentiated, with endometriotic cyst で あり、現在外来にて再発なく経過観察となっている。 【緒言】再発子宮頸がんにおいて化学療法が奏功する例は少 【考察】セルトリ・間質細胞腫瘍は精巣への様々な分化段階 ない。また、悪性腫瘍の腫瘍塞栓による急性動脈閉塞症は極め を示す、セルトリ細胞、ライディッヒ細胞及び神経芽細胞が て稀である。今回、われわれは化学療法が奏功し、このため肺 種々の割合で認められる腫瘍であり、全卵巣腫瘍の0.2%と稀な 静脈に浸潤していた腫瘍が崩壊し腫瘍塞栓を形成し、死に至っ 疾患である。本症例は約半数で現れる月経異常や男性化徴候と た再発子宮頸がんの一例を経験したので報告する。 いったホルモン異常は認められなかった。これは、本腫瘍がセ 平成27年2月(2015) 59 (213) ルトリ・間質細胞腫瘍の占める部位が少ない子宮内膜症性嚢胞 が主体であった事に起因するものであると考えられた。過去の 医原性の骨盤内偽嚢胞に対してジエノゲストが著効 した1例 文献において、子宮内膜症性嚢胞にセルトリ・間質細胞腫瘍が 併発した症例報告はなく、極めて稀な症例であった。 横浜市大 市民総合医療センター 婦人科 前 田 陽 子(研修医) 妊娠後期まで子宮筋腫が先進していた2例 古 野 敦 子 下 向 麻 由 吉 田 瑞 穂 平 田 豪 北 川 雅 一 岡 田 有紀子 吉 田 浩 横浜市大 国立病院機構 横浜医療センター 山 岡 聖 子(研修医) 平 原 史 樹 栃 尾 梓 由 島 道 郎 中 口 芳 恵 太 田 幸 秀 【はじめに】偽嚢胞とは、炎症や手術などを契機として腹膜 若 林 玲 南 長谷川 瑛 鈴 木 理 絵 などに癒着が起こり、内部に液体が貯留することで生じる非上 奥 田 美 加 窪 田 與 志 皮性の嚢胞性病変である。今回、腹腔鏡下子宮筋腫核出術後の 寄生筋腫に対して開腹術を施行したのち、ダグラス窩に内膜症 子宮下部の子宮筋腫は、児頭の骨盤内嵌入を妨げ、分娩障害 成分を伴う多房性骨盤内偽嚢胞を発症した。内容を吸引するも となりうる。一方、妊娠後期まで児頭より筋腫が先進していて すぐに再発、増大したが、ジエノゲスト内服により著明に腫瘍 も、経過とともに位置関係が変化し経腟分娩に至る例も経験す の縮小を認めた症例を経験したので報告する。 る。今回、妊娠後期に経腟超音波で子宮筋腫を確認していて、 【症例】38 歳、0 回経妊 0 回経産、過多月経を主訴に受診し、 分娩前に児頭が先進したものの分娩停止となった例と、前期破 粘膜下子宮筋腫と診断され、腹腔鏡下子宮筋腫核出術を施行し 水での入院時に内診で筋腫が触知したにも関わらず、陣痛発来 た。術後 3 年に寄生筋腫を認め、開腹術を施行した。開腹術後 3 後分娩が進行し経腟分娩となった例を経験したので報告する。 ヵ月でダグラス窩に内膜症成分を伴う多房性骨盤内偽嚢胞を発 【症例 1】38 歳 0 回経妊 0 回経産。妊娠 34 週に子宮筋腫が先進 症した。後腟円蓋より5 mm光学視管で嚢胞内を観察し、内容を し経腟分娩困難が予想されたため当院を紹介受診した。内診で 吸引するもすぐに再発、増大したためジエノゲスト 2 mg を内服 児頭より先進した子宮筋腫を触知、経腟超音波で6cm大の子宮筋 開始したところ、著明に腫瘍は縮小し、腹部膨満感の自覚症状 腫が描出された。妊娠38週4日経腟超音波で子宮筋腫が見えなく も消失し、外来で定期観察中である。 なり、MRI を撮影したところ筋腫は子宮後壁に存在、完全に児 【考察】偽嚢胞に対する治療法として嚢胞内容液の穿刺吸引、 頭が先進していた。妊娠41週3日予定日超過のため分娩誘発、有 閉鎖腔へのエタノール注入や癒着剥離などの手術が行われてき 効陣痛が得られたが児頭下降は St-1 までで分娩停止となり、帝 たが、再発率が高い。また保存治療として低用量ピルや GnRHa 王切開分娩となった。 療法の報告が散見されるが、副作用の点で長期投与は難しい。 【症例 2】32 歳 2 回経妊 2 回経産。前 2 回経腟分娩。妊娠 29 週 ジエノゲストとは、第4世代プロゲスチン製剤であり、内膜症の に子宮筋腫が先進し経腟分娩困難が予想され当院へ紹介受診さ 治療薬として使用され、長期投与が可能である。今回、ジエノ れた。内診では児頭を触れず、子宮腟部左方に手拳大の筋腫を ゲスト内服により卵巣機能を抑制し貯留液を減少させたことと、 触知した。妊娠週数の進行とともに内診指で児頭を触知できる 偽嚢胞内に認めた内膜症成分への直接作用で偽嚢胞を縮小させ ようになったが、左方の筋腫は存在した。筋腫位置の変化に期 たと考える。現在のところ偽嚢胞にジエノゲストが著効すると 待し、分娩開始まで待機とした。妊娠39週6日前期破水で入院時 いう報告はあまりされていないが、保存的治療のひとつとして も同様の所見であったが、40週0日陣痛開始後分娩が進行し経腟 有効であると考えられる。 分娩となった。退院診察では 7 cm 大の子宮筋腫が頚管左側に描 出された。 子宮下部の子宮筋腫において、経腟分娩完遂の可否は分娩開 始まで判断できず、順調に分娩する例も存在する。妊娠初期に 摘出された非交通性副角子宮に内膜癌を認めた1 例 胎児の下降を妨げると思われても、経過とともに子宮が増大・ 子宮下節が進展し相対的に位置が移動し、妊娠後期には児頭よ 横浜市大 市民総合医療センター 婦人科 り上に位置するようになることがある。従って、分娩様式は分 吉 田 優(研修医) 娩直前に決定する必要がある。 廣 岡 潤 子 下 向 麻 由 吉 田 瑞 穂 北 川 雅 一 平 田 豪 古 野 敦 子 岡 田 有紀子 吉 田 浩 横浜市大 平 原 史 樹 【緒言】子宮に奇形と悪性腫瘍が合併することは稀である。 今回我々は、子宮脱の診断で摘出した子宮が双角子宮であり、 その片側内腔に内膜癌を認めた症例を経験したため報告する。 60 (214) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 【症例】79 歳 1 回経妊 1 回経産。2 年前から陰部腫瘤感を自覚 せずに子宮切開創を閉創し子宮を摘出した。子宮膀胱壁間の癒 し、次第に増悪した。近医で子宮脱と診断され精査加療目的に 着は認めなかった。児は1736 g、Apgar Score 7(1分)/8(5分) 当院紹介受診となった。子宮は体部が腟口まで脱出し、子宮脱 の女児で、臍帯動脈血 pH 7.42であった。病理所見では、一部で POP-Q StageⅢの診断であった。子宮頸部/内膜細胞診: NILM/ 脱落膜が欠損し、絨毛と子宮筋層が接しており、癒着胎盤と診 陰性。保存的加療が奏功しなかったため、手術療法の方針とな 断された。術後経過は良好で7日目に退院した。 った。腟式単純子宮全摘術を行ったところ、摘出子宮は双角子 UAE により癒着胎盤をきたす機序としては、菲薄化した子宮 宮であり、右側体部は年齢相当に委縮していたが、左側体部は 筋層、子宮内膜に着床し基底脱落膜の形成不全が起こる、子宮 鶏卵大に腫大し、内腔に 5 cm 大の腫瘍を認めた。同腫瘍の病理 への血流が低下し側副血行路が形成され異常血管となり癒着胎 組織診断は中分化型類内膜腺癌であり、筋層浸潤は認めなかっ 盤を形成する、などが考えられている。AVM に対す る UAE 施 た。右側体部内腔には病理学的異常を認めなかった。後日全身 行後の妊娠では胎盤異常に注意して周産期管理を行う必要があ CT を行ったところ、明らかな残存・転移病変は認めなかったが、 ると考えられた。 右腎∼尿管の欠損が認められた。また腫瘍マーカーは全て陰性 であった。追加手術として腹腔鏡下両側付属器摘出術を施行し た。腹腔内に明らかな播種性病変は無く、両側付属器・腹水細 婦人科悪性腫瘍登録集計報告 胞診ともに病理学的異常は認められなかった。最終診断は子宮 体癌IA期(pT1aN0M0)とし、後療法は行わず経過観察の方針と 神奈川県産科婦人科医会婦人科悪性腫瘍対策部 した。術後5ヵ月を経過したが、明らかな再発兆候を認めていな 仲 沢 経 夫 杉 浦 賢 雨 宮 清 い。 木 挽 貢 慈 小 山 秀 樹 近 藤 春 裕 【考察】子宮奇形と内膜癌との合併は、本邦では 20 例程度の 佐々木 康 茂 田 博 行 新 井 努 報告が見られる。あらかじめ子宮奇形が診断されていても、内 土 居 大 祐 村 上 優 林 康 子 膜癌の術前組織学的診断は難しいことがあり、外来レベルでの 平 澤 猛 宮 城 悦 子 渡 邉 豊 治 内膜組織診の偽陰性率は 30.8 %とされる。今回、子宮奇形及び 市 原 三 義 鈴 木 直 加 藤 久 盛 内膜癌の存在を事前に疑わずに、子宮脱の術前診断で行った子 東 條 龍太郎 宮全摘術後に初めて両者の診断を得るという苦い経験をした。 診察時には、このような病態の存在も念頭に置いて、入念な内 診及び超音波検査を行うことが肝要である。 平成 25 年度の神奈川県産科婦人科医会婦人科悪性腫瘍登録の 集計結果を報告する。登録用紙を平成26年1月に発送し6月まで 回収したが、総施設数 369 に対して 255 施設(69.1 %)から回答 を得ることができた。施設別では、病院63施設(77.8%) 、診療 TAE後妊娠で癒着胎盤を合併した1例 所255施設(66.7%)から回答をいただいた。県下で治療された 婦人科悪性腫瘍総数は3111例で[0期]と境界悪性腫瘍を除くと 2099 例だった。子宮頸癌 1330 例(扁平上皮癌 1128 例、腺癌系 北里大 周産母子成育医療センター 伊 藤 実 香(研修医) 河 野 照 子 202 例)、子宮体癌 833 例、卵巣癌 796 例、その他の悪性腫瘍 152 金 井 雄 二 望 月 純 子 海 野 信 也 例だった。治療数はいずれも前年度に比べて増加していて、過 去最も多い数であった。[0 期]を除く子宮頸癌・体癌比率の年 子宮動静脈奇形(Arteriovenous Malformation:AVM)は手術や 次推移を検討すると平成 25 年度では 0.74 : 1 で、平成 16 年度か 分娩による機械的損傷の後に引き起こされる稀な疾患であり、 ら引き続き子宮体癌数が子宮頸癌数を上回ったが、ここ数年は 挙児希望がある場合、治療の第一選択は子宮動脈塞栓術 ほぼ同等の比率だった。日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会 (Uterine Artery Embolization:UAE)である。しかし AVM に対す の平成 23 年度の子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌の全国集計と神奈 るUAE施行後の妊娠の報告は少ない。我々は、UAE 施行後妊娠 川県の平成 24 年度の集計結果と比較検討すると、神奈川県では で癒着胎盤を合併した1例を経験したので報告する。 子宮頸癌の比率がやや少ない傾向が示唆された。[0 期]症例を 【症例】35歳、1経妊0経産。32歳時に経腹的子宮筋腫核出術、 除く子宮頸癌と子宮体癌の比率を神奈川県集計と全国集計とで 33 歳時に稽留流産に対する子宮内容除去術の 1 ヵ月後に AVM を 比べると子宮体癌の症例比率が神奈川県集計で高い傾向は持続 発症し、UAE を施行した。今回、ICSI で妊娠成立。妊娠25週に していた。 前置胎盤と診断、妊娠 29 週に警告出血のため緊急入院した。超 音波検査では胎盤は前壁付着であり、子宮筋層の菲薄化、 sonolucent zone の消失、placental lacunae、子宮膀胱壁間の豊富な 血流を認めた。また、MRI でも子宮筋層の菲薄化と胎盤から子 宮筋層に連続する拡張血管を認めたことから、癒着胎盤を強く 疑った。膀胱鏡では膀胱粘膜への浸潤は認めなかった。塩酸リ トドリン及び硫酸マグネシウムにより子宮収縮抑制をしたが、 妊娠30週6日に再度警告出血を認めたため緊急帝王切開術を施行 した。切開方法は子宮底部縦切開とし、児を娩出後胎盤は剥離 平成27年2月(2015) 61 (215) 編集後記 今号も編集が終了し、発刊の運びとなりました。 たくさんのご投稿いただき、編集部一同感謝いたします。査読の先生方、ありがとうございました。 私事ですが、2014年10月に磯子にクリニックを開業いたしました。 医師となり、30年になろうとしています。これまで、多くの人たちと関わってまいりました。もちろん患者さん、ス タッフ、事務の方々などなどたくさんいますが、学問するときに思い出すのは入局時の教授の言葉です。 「鉄は熱いうち に打て」です。 前勤務の病院では部長、副病院長、病院長と身にあまる重責を肩に乗せられていましたが、打たれ続けた研修医時代 に比べれば楽なものでした。研修医時代に教えを頂いた先生方に感謝するばかりです。 寄る年波のせいでしょうか、今、残念ながら自分の反射神経の衰えに呆然とし、知能の低下に唖然とし、言葉の伝わ らなさに愕然とし、自分が受けたご恩を後輩たちに伝えられたか不安です。 専攻医の皆さんは専門医となるための条件として論文投稿がありますので、否応なく論文を書きます。簡単に書けて しまう人もいるでしょう、査読者との間で何度もやり取りをさせられた人もいるでしょう。 若い先生方のためと思い、査読をしている先生方の心を思い、今後も精進を重ねていただきたいものです。 この雑誌は神奈川県の産婦人科医療を支えている一つの柱です。この柱をさらに堅固な物にしていくためにも、老体 となった私は、たくさんの人々を心に抱いて、 「なるべき自分になっているか」を自分に問いつつ、働いていこうと思っ ています。 磯子 悠レディースクリニック 小 山 秀 樹 62 (216) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 神奈川産科婦人科学会会則 第1章 総 則 第1条 本会は名称を神奈川産科婦人科学会と称し、事務所を神奈川 県横浜市中区富士見町3丁目1番地神奈川県総合医療会館4階 に置く。 第4章 会 議 第15条 本会は総会と理事会の会議を開く 第16条 本会の総会は代議員制により行う。代議員制による議員の名 称は代議員とし、総会は代議員をもって構成される。代議員以 第2条 本会は、公益社団法人日本産科婦人科学会定款第6条に規定 された神奈川県内の会員をもって当てる。 第3条 本会は、産科学および婦人科学の進歩発展に貢献し、併せて 会員相互の親睦を図ることを目的とする。 第4条 本会は、前条の目的を達するために次の事業を行う。 外の会員は総会に出席し議長の了解を得て意見を述べることが できる。ただし表決に参加することはできない。 第17条 通常総会は年1回学会長が招集し、事業計画の決定、予算の 審議、決算および監査事項の承認、その他重要事項の協議決定 を行う。 学術集会の開催、機関紙および図書などの刊行、公益社団法 2.臨時総会は、理事会が特に必要と認めた場合、または会員現 人日本産科婦人科学会および関東連合産科婦人科学会との業務 在数の3分の1以上から会議に付議すべき事項を示して、総会 委託契約内容、その他本会の目的を達成するために必要な事業。 の招集を請求されたときは、その請求のあった日から30日以 内に招集しなければならない。 第2章 入会・退会・除名 3.総会の議長及び副議長は、出席代議員の互選で定める。総会 の開催は代議員定数の過半数以上の者の出席を必要とする。 第5条 本会に入会を希望する者は、別に定めるところによりその旨 4.代議員が出席できない場合は予備代議員を充てることができ を申し出て学会長の承認を得なければならない。承認後、公益 る。総会の議事は、出席者の過半数をもって決し、可否同数の 社団法人日本産科婦人科学会への入会に際して、学会長の推薦 を得ることができる。 第6条 会員は別に定める入会金及び会費を納入しなければならな ときは議長の決するところによる。 第18条 理事会は、学会長が招集し、学会長及び理事をもって構成す る。会議は原則、毎月1回開催される。ただし、学会長が認め い。なお会費は別に定めるところにより免除することができる。 たとき又は理事の2分の1以上から理事会開催の請求があった また、既納の入会金及び会費はいかなる事由があっても返還し ときは臨時理事会を30日以内に招集しなければならない。理 ない。 事会は、その過半数が出席しなければ会議を開くことはできな 第7条 会員は次の事由によりその資格を喪失する。 退会したとき、死亡したとき、除名されたとき、学会長が認 い。 第19条 監事、議長、副議長、公益社団法人日本産科婦人科学会役員 並びに代議員、および学会長が必要と認め理事会で承認された めたとき。 ものは理事会に出席して意見を述べることができる。但し、表 第3章 役員および代議員 決に加わることはできない。 第5章 委 員 会 第8条 本会に、次の役員を置く。 a 学会長(1名) 、理 事(約11名) s 監 事(2名) 第9条 学会長、理事及び監事は、別に定めるところにより総会で選 任する。なお、学会長は一般社団法人神奈川県産科婦人科医会 の副会長を兼ねる。 第10条 学会長は本会の職務を総理し、本会を代表し、公益社団法人 日本産科婦人科学会に設置されている地方連絡委員会の委員を 務める。理事は、学会長を補佐し、理事会の議決に基づき、日 常の会務に従事し、総会の議決した事項を処理する。 第11条 理事は、理事会を組織して、この会則に定めるもののほか、 本会の総会の権限に属せしめられた事項以外の事項を議決し、 執行する。 (委員会) 第20条 理事会は、本会の事業を推進するために必要あるときは、委 員会を設置することができる。 2.委員会の委員は、理事会が選任する。 3.委員会の任務、構成、並びに運営に関し必要な事項は理事会 の決議により、別に定める。 (地方専門医制度委員会) 第21条 公益社団法人日本産科婦人科学会の委託を受け地方専門医制 度委員会を運営する。 2.公益社団法人日本産科婦人科学会の専門医制度の研修を受け るものは、学会長の推薦が必要である。 第12条 監事は、本会の業務及び財産を監査し、その結果を総会にお 第6章 会 計 いて報告するものとする。 第13条 本会の役員の任期は2年とする。重任を妨げない。 第14条 本会は、会則の定める職務を遂行するために、別に定めると 第22条 本会の会員は所定の会費を負担しなければならない。ただし ころにより、会員中より選任された代議員を置く。代議員は、 別に定める会員は、会費を免除される。本会の会計は会員の会 この会則に定める事項を審議し、又は本会の目的について学会 費等をもって当てる。総会において会計報告をしなければなら 長に意見を述べることができる。 ない。本会の会計年度は4月1日に始まり、翌年3月31日に 終わる。 平成27年2月(2015) 63 (217) 第7章 会則の変更 附 則 会則の変更 1.本会則は平成14年4月1日より施行する。 第23条 本会の会則の変更は、理事会及び総会において、おのおのそ 1.本会則は平成23年4月1日より施行する。 の構成員の3分の2以上の議決を経なければならない。 1.本会則は平成26年6月14日より施行する。 第8章 補 則 細 則 第24条 この会則の施行についての細則は、理事会および総会の議決 を経て、別に定める。 神奈川産科婦人科学会における役員及び 日本産科婦人科学会代議員選出に関する細則 公益社団法人 第1章 総 則 3.選挙管理委員は、候補者および推薦者以外の会員若干名を 第1条 本細則は、公益社団法人日本産科婦人科学会定款(以下定 4.選挙管理委員長は、委員の互選による。委員会は選挙終了 当て、選挙に関する一切の業務を管理する。 款) 、および公益社団法人日本産科婦人科学会役員および代議 後解散する。 員選任規定(以下選任規定)に基づき、本会における役員及 第5章 選挙の方法 び公益社団法人日本産科婦人科学会代議員候補者を選出する ための方法を定めたものである。 2.役員とは学会長、理事、監事とする。 第2条 本会は、公益社団法人日本産科婦人科学会の求めた数の代 議員候補者を、神奈川産科婦人科学会所属の会員の直接選挙 によって選出するものとする。 第6条 学会長は代議員選挙の期日の20日前までに会員に公示しな ければならない。 第7条 役員及び代議員候補者、またはこれを推薦するものは選挙 の期日10日前までの公示された日時に、選挙管理委員会に文 書で届けなければならない。 第2章 役員及び代議員の任期 第8条 届出文書には、立候補者の役職名、氏名、住所、生年月日 を記載しなければならない。推薦届出文書には、前記記載の 第3条 本細則で選出された役員及び代議員の任期は、2年とする。 ほか、推薦届出者2名の氏名、年令を記載しなければならな い。 第3章 選挙権・被選挙権 第9条 選挙管理委員長は、役員及び代議員候補一覧表を作成し、 役員候補については一般社団法人神奈川県産科婦人科医会代 第4条 役員及び代議員候補者は、会員中より選出される。会員と は、本学会ならびに公益社団法人日本産科婦人科学会の会員 議員に、代議員候補については全会員に速やかに通知しなけ ればならない。 であることを要する。 2.選挙権者及び被選挙権者は、原則として前年の10月31日に 第6章 役員選挙管理業務 本会に在籍する会員とする。 3.前年の10月31日に会費未納の者は、選挙権を有しない。 第10条 投票は、選挙管理委員会の定めた方法にて無記名投票とする。 4.被選挙権者は、前年の3月31日において5年以上在籍した 第11条 役員の選挙は、有効投票の最多数の投票数を得た者、又は 本会会員とする。 5.前年の10月31日に会費未納の者は、被選挙権を有しない。 6.被選挙権者は、原則として前年の12月31日に65歳未満であ ることが望ましい。 得票数の多い順を以て当選人とする。同数の場合は該当候補 者による決選投票とする。再度同数のときは抽選とする。 第12条 投票用紙の様式は、選挙管理委員長がこれを定める。 2.投票は、選挙する役職の定数に応じ、単記又は、連記とする。 3.正規の用紙でない票、候補者以外の氏名を記載した票、候 第4章 選 挙 管 理 補者の氏名が判読できない票、定められた数に満たないか、 超えた票は無効とする。 第5条 役員及び代議員選挙を行なうために、選挙管理委員会を設 ける。 第13条 候補者の数が定数を超えないときは、出席代議員の議決に より、投票を行なわないで候補者を当選とすることができる。 2.公益社団法人日本産科婦人科学会から代議員選出の依頼を 第14条 議長は、代議員の中から選挙立会人3名を指名し、投票お 受けた場合、速やかに選挙管理委員会を組織し、選出作業を よび開票に立ち会わせなければならない。また選挙管理委員 開始しなければならない。 長は、選挙立会人立ち会いの上、開票し、結果をただちに議 64 (218) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 長に報告しなければならない。 超えた票、投票期日までに到着しない票は無効とする。 第 15 条 役員が選出されたとき、議長は速やかに当選人の氏名およ び得票数を一般社団法人神奈川県産科婦人科医会会長に報告し なければならない。同医会長は速やかに当選人に当選の旨を通 知し、かつ、当選人の氏名を会員に告知しなければいけない。 第19条 候補者の数が定数を超えないときは、投票を行わないで候 補者を当選とすることができる。 第20条 選挙管理委員長は開票後、結果を速やかに議長に報告しな ければならない。 第21条 代議員が選出されたとき、議長は速やかに当選人の氏名お 第7章 公益社団法人日本産科婦人科学会 代議員選挙管理業務 よび得票数を一般社団法人神奈川県産科婦人科医会会長に報 告しなければならない。同医会長は速やかに当選人に当選の 旨を通知し、かつ、当選人の氏名を会員に告知しなければい 第16条 投票は、選挙管理委員会の定めた方法にて無記名投票とす けない。神奈川産科婦人科学会長は結果を速やかに公益社団 法人日本産科婦人科学会に報告するものとする。 る。 第17条 代議員の選挙は、有効投票の得票数の多い順を以て当選人 附 則 とする。同数の場合は年長者順とする。選出された代議員が、 何らかの理由で代議員でなくなった場合、次点を順次繰り上 1.本細則は平成14年4月1日より施行する。 げる。但し、その有効期限は前任者の残任期間とする。 1.本細則は平成20年11月6日より施行する。 第18条 投票は郵便によって行い、投票用紙の様式は、選挙管理委 1.本細則は平成23年4月1日より施行する。 員長がこれを定める。 1.本細則は平成26年6月14日より施行する。 2.投票は、5名連記とする。 1.本細則は平成27年1月10日より施行する。 3.正規の用紙でない票、候補者以外の氏名を記載した票、候 補者の氏名が判読できない票、定められた数に満たないか、 日本産婦人科医会神奈川県支部会則 第1章 総 則 選任する。なお、支部長は一般社団法人神奈川県産科婦人科 医会の副会長を兼ねる。 第1条 本会は名称を日本産婦人科医会神奈川県支部と称し、事務 第9条 支部長は本会の職務を総理し、本会を代表する。理事は、 所を神奈川県横浜市中区富士見町3丁目1番地 神奈川県総合 支部長を補佐し、理事会の議決に基づき、日常の会務に従事 医療会館4階に置く。 し、総会の議決した事項を処理する。 第2条 本会は、公益社団法人日本産婦人科医会定款第4条に規定 された神奈川県内の会員をもって当たる。 第3条 本会は公益社団法人日本産婦人科医会定款細則に規定する 各都道府県産婦人科医会に相当し、公益社団法人日本産婦人 科医会で規定された事業を行なうことを目的とする。 第10条 理事は、理事会を組織して、この会則に定めるもののほか、 本会の総会の権限に属せしめられた事項以外の事項を議決し、 執行する。 第11条 監事は、本会の業務及び財産を監査し、その結果を総会に おいて報告するものとする。 第12条 本会の役員の任期は2年とする。ただし重任を妨げない。 第2章 入会・退会・除名 第13条 本会は、会則の定める職務を遂行するために、別に定める ところにより、会員中より選任された代議員を置く。代議員 第4条 本会に入会を希望する者は、別に定めるところによりその 旨を申し出て支部長の承認を得なければならない。 第5条 会員は別に定める入会金及び会費を納入しなければならな い。なお会費は別に定めるところにより免除することができ は、この会則に定める事項を審議し、又は本会の目的につい て支部長に意見を述べることができる。代議員は支部正会員 の中から選出し、その任期は2年とする。ただし重任を妨げ ない。 る。また、既納の入会金及び会費はいかなる事由があっても 第4章 会 議 返還しない。 第6条 会員は次の事由によりその資格を喪失する。退会したとき、 死亡したとき、除名されたとき、支部長が認めたとき。 第14条 本会は総会と理事会の会議を開く。 第15条 本会の総会は代議員制により行う。代議員制による議員の 第3章 役員および代議員 名称は代議員とし、総会は代議員をもって構成される。代議 員以外の会員は、総会に出席し議長の了解を得て意見を述べ 第7条 本会に、次の役員を置く。 a 支部長(1名) 、理事(約11名) s 監 事(2名) d 公益社団法人日本産婦人科医会定款第 51 条に規定された 神奈川県地域代表には支部長を推薦する。 第8条 支部長、理事及び監事は、別に定めるところにより総会で ることができる。ただし表決に参加することはできない。 第16条 総会は年1回支部長が招集し、事業計画の決定、予算の審 議、決算および監査事項の承認、その他重要事項の協議決定 を行う。 2.臨時総会は、支部長が特に必要と認めた場合、または会員 平成27年2月(2015) 65 (219) 第6章 会則の変更 現在数の3分の1以上から会議に付議すべき事項を示して、 総会の招集を請求されたときは、その請求のあった日から 30 日以内に招集しなければならない。 3.総会の開催は代議員定数の過半数以上の者の出席を必要と 第20条 本会の会則は、理事会及び総会において、おのおのその構 成員の3分の2以上の議決を経なければならない。 する。 第7章 補 則 4.代議員が出席できない場合予備代議員を充てることができ る。総会の議事は、出席者の過半数をもって決し、可否同数 のときは議長の決するところによる。 第 17 条 理事会は、支部長が招集し、原則毎月1回開催される。た 第21条 この会則の施行についての細則は、理事会および総会の議 決を経て、別に定める。 だし、支部長が認めたとき又は理事の2分の1以上から理事会 附 則 開催の請求があったときは臨時理事会を30日以内に招集しな ければならない。理事会は支部長、及び理事をもって構成し、 理事の過半数が出席しなければ会議を開くことはできない。 1.本会則は平成14年4月1日より施行する。 第18条 監事、議長、副議長、公益社団法人日本産婦人科医会役員 1.本会則は平成23年4月1日より施行する。 並びに代議員、および支部長が必要と認め、理事会で承認さ 1.本会則は平成26年6月14日より施行する。 れたものは理事会に出席して意見を述べることができる。但 し、表決に加わることはできない。 第5章 会 計 第19条 本会の会員は所定の会費を負担しなければならない。ただ し別に定める会員は、会費を免除される。本会の会計は会員 の会費等をもって当てる。総会において会計報告をしなけれ ばならない。本会の会計年度は4月1日に始まり、翌年3月 31日に終わる。 日本産婦人科医会神奈川県支部における役員および 日本産婦人科医会代議員選出に関する細則 公益社団法人 第1章 総 則 4.代議員被選挙権者は、前年の3月31日において母体保護法 第14条に規定する指定医師または5年以上在籍した公益社団 第1条 本細則は、公益社団法人日本産婦人科医会定款、および公 益社団法人日本産婦人科医会代議員選任規定に基づき、本会 における役員及び公益社団法人日本産婦人科医会代議員(以 法人日本産婦人科医会会員とする。 5.前年の10月31日に公益社団法人日本産婦人科医会会費未納 の者は、代議員被選挙権を有しない。 下代議員)を選出するための方法をさだめたものである。 第4章 選 挙 管 理 2.役員とは神奈川県支部長、理事、監事とする。 第2条 本会は、公益社団法人日本産婦人科医会の求めた数の代議 員を、所属の会員の直接選挙によって選出するものとする。 第5条 役員及び代議員選挙を行なうために、選挙管理委員会を設 ける。 第2章 役員及び代議員の任期 2.公益社団法人日本産婦人科医会から代議員選出の依頼を受 けた場合、速やかに選挙管理委員会を組織し、選出作業を開 第3条 本細則で選出された役員及び代議員の任期は、2年とする。 但し重任を妨げない。 始しなければならない。 3.選挙管理委員長は、候補者および推薦者以外の会員若干名 を当て、選挙に関する一切の業務を管理する。 第3章 選挙権・被選挙権 4.選挙管理委員長は、委員の互選による。委員会は選挙終了 後解散する。 第4条 役員及び代議員は、会員中より選出される。 2.代議員の選挙権者及び被選挙権者は、原則として前年の 10 第5章 選挙の方法 月31日に公益社団法人日本産婦人科医会に在籍する会員とす る。 3.代議員選挙権を有する者は、前年の10月31日現在、公益社 団法人日本産婦人科医会会費完納(減免会員を含む)正会員 とする。 第6条 支部長は代議員選挙の期日の20日前までに会員に公示しな ければならない。 第7条 役員及び代議員候補者は、またはこれを推薦するものは選 挙の期日10日前までの公示された日時に、選挙管理委員会に 66 (220) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 文書で届けなければならない。 第8条 届出文書には、立候補の役職名、氏名、住所、生年月日を 第7章 公益社団法人日本産婦人科医会 代議員選挙管理業務 記載しなければならない。 推薦届出文書には、前記記載のほか、推薦届出者2名の氏 名、年令を記載しなければならない。 第9条 選挙管理委員長は、役員及び代議員候補一覧表を作成し、 役員候補については一般社団法人神奈川県産科婦人科医会代 議員に、代議員候補については全会員に速やかに通知しなけ ればならない。 第16条 投票は、選挙管理委員会の定めた方法にて無記名投票とする。 第17条 代議員の選挙は、有効投票の得票数の多い順を以て当選人 とする。同数の場合は年長者順とする。選出された代議員が、 何らかの理由で代議員でなくなった場合、次点を順次繰り上 げる。但し、その有効期限は前任者の残任期間とする。 第18条 投票は郵便によって行い、投票用紙の様式は、選挙管理委 員長がこれを定める。 第6章 役員選挙管理業務 2.投票は、単記とする。 3.正規の用紙でない票、候補者以外の氏名を記載した票、候 第10条 投票は、選挙管理委員会の定めた方法にて無記名投票とす る。 第11条 有効投票数の最多数の投票数を得た者又は得票数の多い順 を以て当選人とする。同数の場合は該当候補者による決選投 票とする。再度同数のときは抽選とする。 第12条 投票用紙の様式は、選挙管理委員長がこれを定める。 2.投票は、選挙する役職の定数に応じ、単記又は、連記とする。 3.正規の用紙でない票、候補者以外の氏名を記載した票、候 補者の氏名が判読できない票、投票期日までに到着しない票 は無効とする。 第19条 候補者の数が定数を超えないときは、投票を行わないで候 補者を当選とすることができる。 第20条 選挙管理委員長は開票後、結果を速やかに議長に報告しな ければならない。 第21条 代議員が選出されたとき、議長は速やかに当選人の氏名お よび得票数を一般社団法人神奈川県産科婦人科医会会長に報 補者の氏名が判読できない票、定められた数に満たないか、 告しなければならない。同医会長は速やかに当選人に当選の 超えた票は無効とする。 旨を通知し、かつ、当選人の氏名を会員に告知しなければい 第13条 候補者の数が定数を超えないときは出席代議員の議決によ り、投票を行なわないで候補者を当選とすることができる。 けない。日本産婦人科医会神奈川県支部長は結果を速やかに 公益社団法人日本産婦人科医会に報告するものとする。 第14条 議長は、代議員の中から選挙立会人3名を指名し、投票お よび開票に立ち会わせなければならない。また選挙管理委員 附 則 長は、選挙立会人立ち会いの上、開票し、結果をただちに議 長に報告しなければならない。 1.本細則は平成14年4月1日より施行する。 第15条 役員が選出されたとき、議長は速やかに当選人の氏名およ 1.本細則は平成23年4月1日より施行する。 び得票数を一般社団法人神奈川県産科婦人科医会会長に報告 1.本細則は平成26年6月14日より施行する。 しなければならない。同医会長は速やかに当選人に当選の旨 1.本細則は平成27年1月10日より施行する。 を通知し、かつ、当選人の氏名を会員に告知しなければいけ ない。 平成27年2月(2015) 67 (221) 一般社団法人 神奈川県産科婦人科医会定款 (前 文) l 異常分娩先天異常対策部 本会は神奈川産科婦人科学会と日本産婦人科医会神奈川県支部を 二本の主柱として構成・組織され、神奈川県下における産婦人科の 学術・教育・医療を統括し、その進歩と発展を図る。また、公益社 団法人日本産科婦人科学会ならびに公益社団法人日本産婦人科医会 の神奈川県における活動を分担する。 ¡0 悪性腫瘍対策部 ¡1 周産期医療対策部 ¡2 その他、会長が発議し、理事会が必要と認める事業部 (事業年度) 第7条 本会の事業年度は毎年4月1日に始まり、翌年3月31日に 終わる。 第1章 総 則 第4章 会 員 (名 称) 第1条 本会は、一般社団法人神奈川県産科婦人科医会と称し、英文 ではKANAGAWA MEDICAL ASSOCIATION OF OBSTETRICS AND GYNECOLOGYと表示する。 (事務所) 第2条 (法人の構成員) 第8条 本会の会員は次の2種とする。 a 正会員 正会員1名以上の推薦を受けた公益社団法人日 本産科婦人科学会又は公益社団法人日本産婦人科医会の会 本会は、主たる事務所を横浜市に置く。 2.本会は、理事会の決議により、従たる事務所を必要な場所 に設置することができる。これを変更又は廃止する場合も同 様とする。 員であって、神奈川県内に在住又は勤務し、本会の目的に 賛同して入会した者 s 準会員 正会員1名以上の推薦を受け、本会の目的に賛 同して入会した正会員資格外の者 第2章 組 織 (組 織) 第3条 本会は、第9条の規定により、本会の会員となった者をも って組織する。 第3章 目的及び事業 (目 的) 第4条 本会は、会員の学術向上を図り、併せて会員相互の親睦を 期し、地域の産科婦人科医療の向上をもって社会に貢献する ことを目的とする。 (事 業) 第5条 本会は、前条の目的を達成するために次の事業を行う。 a 学術集会、講演会及び研修会に関する事項 s 研究、調査に関する事項 d 公益社団法人日本産科婦人科学会専門医及び母体保護法 指定医の研修等に関する事項 f 医療保険に関する事項 g 母子保健に関する事項 h 会員福祉に関する事項 j 会誌、広報に関する事項 k その他本会の目的を達成するために必要な事項 (事業部) 第6条 本会は、理事会の決議により、前条の事業を遂行するため、 次の各部を置くことができる。これを廃止又は変更する場合 も同様とする。 a 総務部 s 経理部 d 学術部 (入 会) 第9条 本会に入会しようとする者は、理事会において別に定める 様式による入会申込書に必要事項を記入の上、正会員1名以 上の推薦を得て本会に提出し、理事会の承認を得なければな らない。 2.届出事項に変更を生じたときも同様とする。 (任意退会) 第10条 本会を退会しようとする者は、別に定める退会届出書を本 会に提出しなければならない。 (会費及び負担金) 第11条 会員は、会費及び負担金を納めなければならない。 2.会費及び負担金の金額並びに徴収方法は、総会の決議によ りこれを定める。 3.必要ある場合には、総会の決議を経て、臨時会費を徴収す ることができる。 4.退会し、又は除名された会員が既に納入した会費及び負担 金は返還しない。 (会員の義務) 第12条 会員は、本定款及び本会の諸規則を守り、本会の秩序を維 持し、本会の発展に寄与するよう努めなければならない。 2.正会員は、特段の事情がない限り、公益社団法人日本産科 婦人科学会及び公益社団法人日本産婦人科医会の両方に入会 するよう努めなければならない。 (会員の権利) 第13条 正会員は、役員に立候補することができる。 2.会員は、本会の事業に関し、本会に意見を述べることがで きる。 (会員の戒告及び除名) 第14条 会員が次のいずれかに該当するに至ったときは、総会の決 f 編集部 議によって当該会員を戒告又は除名することができる。 g 医療保険部 a この定款その他の規則に定める会員の義務を正当な理由 h 母子保健部 なく怠ったとき j 医療対策部 s 本会の名誉を傷つけたとき k 広報部 d その他、戒告又は除名すべき正当な事由があるとき 68 (222) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 (会員資格の喪失) (役員の補欠選任) 第15条 第10条及び前条の場合のほか、会員は、次のいずれかに該 当するに至ったときは、その資格を喪失する。 a 第11条第1項の支払義務を、 2年以上履行しなかったとき。 s 当該会員が死亡したとき。 d 総会において全ての代議員が同意したとき。 2.前項第1号により会員資格を喪失した者が、未納の会費及 び負担金の全額を支払った場合には、支払のときから会員資 格を復活させる。ただし、資格を喪失していた期間の権利は 第21条 役員に欠員が生じたときは、原則として1年以内に補欠の 役員を選任する。 (役員の任期) 第22条 理事の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち 最終のものに関する定時総会の終結の時までとする。 2.監事の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち 最終のものに関する定時総会の終結の時までとする。 3.補欠として選任された理事又は監事の任期は、前任者の任 期の満了する時までとする。 復活しない。 4.理事又は監事は、第17条に定める定数に足りなくなるとき (名誉会員) 第 16 条 会長は、理事会の承認を得て、本会に功労のあった者に、 名誉会員の称号を与えることができる。この場合には、会長 は、次の総会において名誉会員の称号を授与したことを報告 しなければならない。 2.名誉会員の称号は終身とする。 は、任期の満了又は辞任により退任した後も、新たに選任さ れた者が就任するまで、なお理事又は監事としての権利義務 を有する。 (役員の責任免除) 第 23 条 本会は、法人法第 111 条第1項に規定する役員の賠償責任 3.前項の規定にかかわらず、名誉会員が本会の名誉を傷つけ について、法令に定める要件に該当する場合には、法人法第 た場合その他正当な事由がある場合には、会長は、理事会の 114条第1項の規定により、賠償責任を法令の限度において理 承認を得て、名誉会員の称号を剥奪することができる。 事会の決議によって免除することができる。 (顧 問) 第5章 役員及び顧問 (役 員) 第17条 本会に次の役員を置く。 第24条 本会に顧問を置くことができる。 2.顧問は、会長が指名し、総会の承認を得て、これを委嘱す る。その任期は委嘱した会長の任期終了までとする。 a 理事 14名 3.顧問は、会長の諮問に応え、本会の各種の会議に出席して s 監事 2名 意見を述べることができる。ただし、議決に加わることはで 2.理事のうち1名を会長とする。会長以外の理事のうち2名 きない。 を副会長とする。 第6章 理 事 会 3.前項の会長をもって一般社団法人及び一般財団法人に関す る法律(以下「法人法」という)上の代表理事とする。 (理事の職務) 第18条 会長は本会を代表し、業務を執行する。 2.副会長は会長を補佐し、会長が職務の執行に支障があり又 はこれに堪えないときにはその職務を代行する。その順位は あらかじめ理事会の議決によりこれを決める。 3.会長以外の理事は、会長の旨を受け、分担して業務を執行 する。 (監事の職務) 第19条 監事は、理事の職務の執行を監査し、法令で定めるところ により、監査報告を作成しなければならない。 2.監事は、いつでも、理事及び使用人に対して事業の報告を (理事会) 第25条 本会に、理事会を置く。 2.理事会は、全ての理事をもって構成する。 3.理事会は、会長が招集してその議長となる。 (理事会の職務) 第26条 理事会は、次の職務を行う。 a 本会の業務執行の決定 s 理事の職務の執行の監督 2.理事会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定 を、理事に委任することができない。 a 重要な財産の処分及び譲受け s 多額の借財 求め、又は本会の業務及び財産の状況の調査をすることがで d 重要な使用人の選任及び解任 きる。 f 従たる事務所その他重要な組織の設置、変更及び廃止 3.監事は、理事が不正の行為をし、若しくは当該行為をする g 理事の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保 おそれがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反す するための体制その他本会の業務の適正を確保するために る事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅 滞なく、その旨を理事会に報告しなければならない。 4.監事は、理事会に出席し、必要があると認めるときは、意 見を述べなければならない。 (役員の選任) 第20条 会長その他役員は、総会において、総代議員の議決権の3 分の1以上を有する代議員が出席し、その議決権の過半数の 決議によって選任する。 必要なものとして法令で定める体制の整備 h 法人法第114条第1項の規定による定款の定めに基づく同 法第111条第1項の責任の免除 j 会長が総会を招集する場合において、総会招集の決定及 び理事が総会に提出しようとする議案、書類及び電磁的記 録その他の資料の決定 (理事会の決議) 第27条 理事会の決議は、決議について特別の利害関係を有する理 事を除く理事の過半数が出席し、その過半数をもって行う。 平成27年2月(2015) 2.前項の規定にかかわらず、理事が理事会の決議の目的であ る事項について提案をした場合において、当該提案につき理 69 (223) (代議員の補欠の選出) 第33条 代議員に欠員が生じたときは、別に定める規定により、後 事(当該事項について議決に加わることができるものに限る。 ) 任の代議員を選出する。予備代議員についても同様とする。 の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたと 2.前項の規定により選出された代議員又は予備代議員の任期 き(監事が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、 は、前任の代議員又は予備代議員の任期が満了する時までと 理事会の決議があったものとみなす。 する。 (議事録等) 第8章 総 会 第28条 理事会の議事については、法令で定めるところにより、議 事録を作成する。 2.理事会において選出された議事録署名理事及び理事会に出 席した監事は、前項の議事録に署名又は記名押印する。 (構 成) 第34条 総会は、全ての代議員をもって構成する。 2.前項の総会をもって法人法上の社員総会とする。 3.第1項の議事録又は前条第2項の意思表示を記載し、若し 3.代議員以外の会員は、総会に出席し、総会の議長の許可の くは記録した書面若しくは電磁的記録を、理事会の日(前条 もとに意見を述べることができるが、議決に加わることはで 第2項により理事会の決議があったものとみなされた日を含 む。)から 10 年間、本会の主たる事務所に備え置かなければ ならない。 (理事会への出席、発言) 第29条 次の者は、理事会の承認を受けて、理事会に出席して意見 を述べることができる。ただし、議決に加わることはできな きない。 (開 催) 第35条 本会の総会は、定時総会と臨時総会とする。 2.定時総会は、毎年1回、毎事業年度終了後3ヵ月以内に開 催する。 3.臨時総会は、次に掲げる場合に開催する。 い。 a 理事会が必要と認めたとき a 総会の議長及び副議長 s 全ての代議員の議決権の5分の1以上を有する代議員か s 公益社団法人日本産科婦人科学会の役員及び代議員 d 公益社団法人日本産婦人科医会の役員及び代議員 f その他会長が必要と認めた者 (委員会) ら、総会の目的である事項及び招集の理由を示した書面に より開催の請求があったとき d 3分の1以上の正会員から、総会の目的である事項及び 招集の理由を示した書面により開催の請求があったとき 第30条 会長は、必要と認めたときは、理事会の決議を経て、委員 会を置くことができる。 (招 集) 第36条 総会は、法令に別段の定めのある場合を除き、理事会の決 議に基づき、会長が招集する。 第7章 代議員及び予備代議員 (代議員及び予備代議員) 第31条 本会に、代議員及び予備代議員を置く。 2.総会の招集は、会日の1週間前までに、代議員に対してそ の通知を発しなければならない。ただし、総会に出席しない 代議員が書面又は電磁的方法によって議決権を行使すること 2.前項の代議員をもって法人法上の社員とする。 ができることとする場合においては、会日の2週間前までに 3.代議員及び予備代議員の選出は正会員の互選による。 その通知を発しなければならない。 4.代議員及び予備代議員の選出のために必要な規則は別に定 める。 5.代議員及び予備代議員は、本会の役員を兼ねることはでき ない。 6.代議員に事故があるときは、当該代議員は、総会ごとに代 (任 務) 第37条 総会は、次に掲げる事項を決議する。 a 定款の変更 s 本定款に必要な細則及び規程等本会の諸規則の制定、変 更又は廃止 理権を授与された予備代議員に議決権を行使させることがで d 事業報告の承認 きる。 f 収支決算の承認 (代議員及び予備代議員の任期) 第32条 前条第3項の代議員及び予備代議員選出のための互選(以 下「代議員等選挙」という。 )は2年に1度実施することとし、 代議員及び予備代議員の任期は選任後次に実施する代議員等 選挙終了の時までとする。ただし、代議員が総会決議取消し の訴え、解散の訴え、責任追及の訴え及び役員の解任の訴え (法人法第266条第1項、第268条、第278条、第284条)を提 起している場合(法人法第 278 条第1項に規定する訴えの提 起の請求をしている場合を含む。 )には、当該訴訟が終結する までの間、当該代議員は社員たる地位を失わない(当該代議 員は、役員の選任及び解任(法人法第63条及び第70条)並び に定款変更(法人法第 146 条)についての議決権を有しない こととする) 。 g 事業計画及び負担金の承認 h 会費及び負担金の賦課並びにその金額及び徴収方法 j 会長の選任及び解任 k 副会長の選任及び解任 l 会長及び副会長以外の理事並びに監事の選任及び解任 ¡0 理事及び監事の報酬、賞与その他の職務執行の対価とし て本会から受ける財産上の利益(以下「報酬等」という。) 等の額又は報酬等の額の具体的な算定方法 ¡1 理事会において総会に付議した事項 ¡2 会員の戒告及び除名 ¡3 解散 ¡4 前各号に定めるもののほか、社員総会で決議するものと して法令又はこの定款で定められた事項 70 (224) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 (総会の議長及び副議長の選挙並びに職務) 第38条 総会に議長及び副議長各1名を置く。 3.第1項の書類及び監査報告を定時総会の日の2週間前から 5年間、主たる事務所に備え置かなければならない。 2.総会の議長及び副議長は、代議員の中から総会で選出する。 第10章 雑 則 3.総会の議長及び副議長の任期は、選任後次に実施する代議 員等選挙終了の時までとする。 4.総会の議長は、当該総会の秩序を維持し、議事を整理する。 5.総会の議長は、その命令に従わない者その他当該総会の秩 序を乱す者を退場させることができる。 6.総会の副議長は、総会の議長に事故あるときはその職務を (公告の方法) 第44条 本会の公告は、電子公告の方法により行う。 2.事故その他やむを得ない事由によって前項の電子公告をす ることができない場合は、官報に掲載する方法による。 (細則及び規程) 第45条 本定款に必要な細則及び規程は、別に定める。 代行する。 (法令の準拠) (決 議) 第39条 総会の決議は、法令又はこの定款に別段の定めがある場合 を除き、出席した当該代議員の議決権の過半数をもって行う。 2.前項の規定にかかわらず、次の決議は、総代議員の半数以 上であって総代議員の議決権の3分の2以上に当たる多数を 第46条 本定款に定めのない事項は、すべて法人法その他の法令に 従う。 (設立時役員) 第47条 本会の設立時役員は、次のとおりである。 もって行われなければならない。 設立時理事 a 東 條 龍太郎 a 会員の除名 設立時理事 s 平 原 史 樹 s 監事の解任 設立時理事 d b 橋 恒 男 d 定款の変更 設立時理事 f 中 野 眞佐男 f 解散 設立時理事 g 今 井 一 夫 g その他法令に定められた事項 設立時理事 h 三 上 幹 男 設立時理事 j 鈴 木 直 設立時理事 k 白 須 和 裕 設立時理事 l 岩 田 壮 吉 設立時理事 ¡0 田 島 敏 久 設立時理事 ¡1 中 山 昌 樹 設立時理事 ¡2 小 西 康 博 設立時理事 ¡3 加 藤 久 盛 設立時理事 ¡4 海 野 信 也 (議事録) 第40条 総会の議事については、法令で定めるところにより、議事 録を作成する。 2.議長及び総会において選出された議事録署名人2人以上が 署名又は記名押印する。 (総会への役員の出席発言) 第41条 本会の役員は、総会に出席し、意見を述べることができる が、議決に加わることはできない。 設立時代表理事 東 條 龍太郎 第9章 会 計 (資産の構成) 第42条 本会の資産は次に掲げるものをもって構成する。 a 設立当初の財産目録に記載された財産 s 会費及び負担金 d 寄付金品 f その他の収入 (事業報告及び決算) 第 43 条 本会の事業報告及び決算については、毎事業年度終了後、 会長が次の書類を作成し、監事の監査を受けた上で、理事会 の承認を受けなければならない。 a 事業報告 s 事業報告の付属明細書 d 貸借対照表 f 損益計算書(正味財産増減計算書) g 貸借対照表及び損益計算書(正味財産増減計算書)の付 属明細書 h 財産目録 2.前項の承認を受けた書類のうち、第1号、第3号、第4号 及び第6号の書類については、定時総会に提出し、第1号の 書類についてはその内容を報告し、その他の書類については 承認を受けなければならない。 設立時監事 a 明 石 敏 男 設立時監事 s 國 立 實 夫 (設立時役員の任期) 第 48 条 設立時理事の任期は、第 22 条第1項の規定にかかわらず、 選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関す る定時総会の終結の時までとする。 2.設立時監事の任期は、第 22 条第2項の規定にかかわらず、 選任後3年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関す る定時総会の終結の時までとする。 (最初の事業年度) 第49条 本会の最初の事業年度は、第7条の規定にかかわらず、当 法人成立の日から平成27年3月31日までとする。 (設立時社員の氏名及び住所) 第50条 設立時社員の氏名及び住所は、次のとおりである。 設立時社員 a 住所 横浜市港南区丸山台三丁目16番17号 氏名 東 條 龍太郎 設立時社員 s 住所 神奈川県小田原市本町一丁目3番12号 氏名 平 原 史 樹 設立時社員 d 住所 横浜市泉区西が岡二丁目26番地の7 氏名 b 橋 恒 男 平成27年2月(2015) 以上、一般社団法人神奈川県産科婦人科医会設立のためこ の定款を作成し、設立時社員が次に記名押印する。 平成26年4月1日 設立時社員 東 條 龍太郎 設立時社員 平 原 史 樹 設立時社員 b 橋 恒 男 71 (225) 72 (226) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 神奈川県産科婦人科医会役員 会 長 東 條 龍太郎 副 会 長 平 原 史 樹 監 事 明 石 敏 男 國 立 實 夫 高 橋 恒 男 理 事 中 野 眞佐男 今 井 一 夫 三 上 幹 男 鈴 木 直 白 須 和 裕 岩 田 壮 吉 田 島 敏 久 中 山 昌 樹 小 西 康 博 加 藤 久 盛 海 野 信 也 日本産科婦人科学会代議員 明 石 敏 男 朝 倉 啓 文 天 野 完 石 川 浩 史 石 川 雅 彦 石 本 人 士 和 泉 俊一郎 岩 田 壮 吉 海 野 信 也 小 川 公 一 小 関 聡 小 西 康 博 齋 藤 裕 榊 原 秀 也 茂 田 博 行 上 坊 敏 子 鈴 木 直 高 橋 恒 男 東 條 龍太郎 中 野 眞佐男 中 山 昌 樹 西 井 修 平 原 史 樹 三 上 幹 男 宮 城 悦 子 日本産婦人科医会代議員 明 石 敏 男 國 立 實 夫 鈴 木 真 田 島 敏 久 神奈川県産科婦人科医会名誉会員 安 達 健 二 雨 宮 章 石 塚 文 平 和 泉 元 志 岩 本 直 植 村 次 雄 遠 藤 哲 広 片 桐 信 之 黒 澤 恒 平 小 松 英 夫 後 藤 忠 雄 斎 藤 真 坂 田 壽 衛 佐 藤 和 雄 佐 藤 啓 治 代 田 治 彦 菅 原 章 一 鈴 木 健 治 住 吉 好 雄 平 健 一 武 谷 雄 二 出 口 奎 示 戸賀崎 義 洽 根 岸 達 郎 堀 健 一 前 原 大 作 持 丸 文 雄 桃 井 俊 美 矢内原 巧 八十島 唯 一 渡 辺 英 夫 日本産科婦人科学会名誉会員 雨 宮 章 佐 藤 和 雄 牧 野 恒 久 矢内原 巧 平成27年2月(2015) 73 (227) 日本産科婦人科学会功労会員 安 達 健 二 石 原 楷 輔 植 田 國 昭 植 村 次 雄 長 田 久 文 片 桐 信 之 甘 彰 華 蔵 本 博 行 斎 藤 馨 斉 藤 真 坂 田 壽 衛 佐 藤 啓 治 篠 塚 孝 男 白 須 和 裕 代 田 治 彦 鈴 木 健 治 関 賢 一 高 橋 諄 出 口 奎 示 戸賀崎 義 洽 根 岸 達 郎 野 嶽 幸 正 前 原 大 作 宮 本 尚 彦 持 丸 文 雄 桃 井 俊 美 八十島 唯 一 神奈川県産科婦人科医会事業部 総 務 部 中 野 眞佐男 今 井 一 夫 秋 葉 靖 雄 石 川 雅 彦 大河原 鈴 木 隆 弘 戸賀崎 義 明 戸 望 月 純 子 脇 哲 矢 経 理 部 田 澤 晃 聡 奥 田 美 加 笠 井 健 児 子 中 田 さくら 根 本 明 彦 c 一 正 茂 田 博 行 今 井 一 夫 中 野 眞佐男 岡 田 恭 芳 小清水 勉 後 藤 誠 塩 代 田 琢 彦 濱 野 聡 堀 裕 雅 丸 山 浩 之 学 術 部 三 上 幹 男 海 野 信 也 明 石 敏 男 新 井 正 秀 五十嵐 豪 和 泉 俊一郎 小 川 公 一 小 山 秀 樹 齋 藤 裕 榊 原 秀 也 染 谷 健 一 巽 英 樹 土 居 大 祐 中 沢 和 美 長 塚 正 晃 西 井 修 平 吹 知 雄 持 丸 佳 之 編 集 部 鈴 木 直 三 上 幹 男 荒 瀬 透 安 藤 直 子 石 本 人 士 岩 瀬 春 子 遠 藤 方 哉 大 島 綾 小 川 幸 小野瀬 亮 河 村 和 弘 小 山 秀 樹 斎 藤 圭 介 佐 治 晴 哉 佐 藤 美紀子 上 坊 敏 子 鈴 木 隆 弘 田 村 みどり 戸 澤 晃 子 沼 崎 令 子 樋 口 隆 幸 松 島 隆 村 瀬 真理子 望 月 純 子 吉 田 浩 医療保険部 白 須 和 裕 岩 田 壮 吉 飛鳥井 邦 雄 安 達 英 夫 和 泉 俊一郎 内 田 伸 弘 河 村 栄 一 小 杉 一 弘 櫻 井 明 弘 中 原 優 人 野 村 可 之 前 田 太 郎 岩 田 壮 吉 田 島 敏 久 飛鳥井 邦 雄 池 川 明 内 田 伸 弘 蛯 原 照 男 水主川 純 窪 田 與 志 釼 持 稔 近 藤 雅 子 鈴 木 真 中 村 朋 美 西 田 直 子 古 橋 進 一 増 田 恵 一(顧問) 坂 田 壽 衛(顧問) 母子保健部 医療対策部 田 島 敏 久 白 須 和 裕 磯 崎 太 一 大 石 曜 岡 井 良 至 小 澤 陽 小 関 聡 関 本 僚 平 東 郷 敦 子 塗 山 百 寛 並 木 俊 始 西 川 立 人 福 田 俊 子 光 永 忍 脇 田 哲 矢 星 野 眞也子 松 永 竜 也 広 報 部 中 山 昌 樹 加 藤 久 盛 伊 東 均 入 江 宏 徳 永 真 弓 宮 本 尚 彦 柳 澤 隆 74 (228) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 異常分娩先天異常対策部 小 西 康 博 中 山 昌 樹 阿久津 正 安 藤 紀 子 五十嵐 豪 和 泉 俊一郎 小 川 公 一 葛 西 路 河 野 照 子 河 村 寿 宏 後 藤 誠 東 郷 敦 子 長谷川 明 俊 深 見 武 彦 町 田 稔 文 丸 山 浩 之 三 原 卓 志 加 藤 久 盛 鈴 木 直 雨 宮 清 新 井 努 市 原 三 義 木 挽 貢 慈 小 山 秀 樹 近 藤 春 裕 佐々木 康 茂 田 博 行 杉 浦 賢 土 居 大 祐 仲 沢 経 夫 沼 崎 令 子 林 康 子 平 澤 猛 宮 城 悦 子 村 上 優 渡 邉 豊 治 悪性腫瘍対策部 周産期医療対策部 海 野 信 也 小 西 康 博 青 木 茂 青 木 弘 子 天 野 完 石 川 浩 史 石 本 人 士 五十嵐 豪 井 上 裕 美 上 野 和 典 小 川 博 康 奥 田 美 加 倉 昭 子 小 松 英 夫 島 岡 亨 正 代 田 琢 彦 田 村 みどり 三 原 卓 志 野 田 芳 人 平 吹 知 雄 藤 本 喜 展 堀 裕 雅 c 毛 利 順 神奈川県産科婦人科医会委員会 勤務医委員会 茂 田 博 行 秋 葉 靖 雄 池 田 仁 恵 大 島 綾 大 野 勉 金 井 雄 二 齋 藤 剛 一 杉 浦 賢 高 江 正 道 松 島 隆 永 井 康 一 奥 田 美 加 平 原 史 樹 星 野 眞也子 塗 山 百 寛 中 村 朋 美 堀 裕 雅 IT 委員会 市 原 三 義 親睦委員会 福 田 俊 子 内 田 伸 弘 関 本 英 也 伊 東 亨 小清水 勉 持 丸 文 雄 渡 部 秀 哉 学校医委員会 早乙女 智 子 医事紛争対策委員会 佐 藤 啓 治 医療事故安全対策委員会 高 橋 恒 男 妊婦健診委託事業運営委員会 今 井 一 夫 災害対策委員会 東 條 龍太郎 有 澤 正 義 植 田 啓 田 島 恵 田 中 信 孝 高 橋 恒 男 萩 庭 一 元 東 條 龍太郎 中 野 眞佐男 平 原 史 樹 東 條 龍太郎 岩 田 壮 吉 高 橋 恒 男 中 野 眞佐男 高 橋 恒 男 中 野 眞佐男 平 原 史 樹 恩 田 貴 志 和 泉 俊一郎 海 野 信 也 河 村 和 弘 榊 原 秀 也 鈴 木 直 高 橋 恒 男 土 居 大 祐 東 條 龍太郎 長 塚 正 晃 西 井 修 平 原 史 樹 学術問題諮問委員会 三 上 幹 男 平成27年2月(2015) 75 (229) 一般社団法人神奈川県産科婦人科医会代議員及び予備代議員 平成 26 年6月∼平成 27 年6月 議 長 伊 東 亨 副議長 鈴 木 真 番号 地区 代議員 予備代議員 番号 地区 代議員 1 青葉 辻井 孝 梅内 正勝 32 横須賀 根本 明彦 2 〃 王 正貫 渡邊潤一郎 33 〃 杉浦 賢 野村 可之 3 旭 簡野 邦彦 柳澤 隆 34 鎌倉 渡辺 紅 横井 夏子 4 泉 石井 淳 和泉 元志 35 平塚 平園 賢一 牧野 英博 5 磯子 中田 裕信 香西 洋介 36 小田原 小杉 一弘 桑田 ● 6 神奈川 和泉 玲子 大石 和彦 37 茅ヶ崎 木島 武俊 二河田雅信 7 金沢 関本 英也 泉福 明子 38 座間・綾瀬 代田 琢彦 本部 正樹 8 市大 榊原 秀也 佐藤美紀子 39 海老名 増田 恵一 近藤 芳仁 9 〃 宮城 悦子 中村 朋美 40 藤沢 宮川 智幸 林田 英樹 10 〃 吉田 浩 青木 茂 41 〃 関 隆 苅谷 卓昭 11 港南 桃井 俊美 佐藤 浩一 42 秦伊中 和泉俊一郎 平澤 猛 12 港北 爲近 慎司 石田 徳人 43 〃 石本 人士 鈴木 隆弘 13 〃 桜井 祐二 小林 勇 44 〃 飯塚 義浩 平井 規之 14 栄 柳澤 和孝 45 足柄上 柴田 光夫 − 15 瀬谷 堀 裕雅 安達 敬一 46 厚木 田中 信孝 松島 弘充 16 都筑 塚原 睦亮 本間 寿彦 47 逗葉 土田 正祐 丸山 浩之 17 鶴見 天野 善美 星野眞也子 48 相模原 恩田 貴志 新井 正秀 18 戸塚 伊東 亨 田林 正夫 49 〃 上坊 敏子 田所 義晃 19 中 戸賀崎義明 町澤 一郎 50 〃 岡井 良至 近藤 正樹 20 〃 多田 聖郎 和知 敏樹 51 〃 大河原 聡 飯田 盛祐 21 西 木村 知夫 濱野 聡 52 大和 岡田 恭芳 石川 雅彦 22 保土ヶ谷 磯 和男 茂田 博行 53 三浦 塩c 橘田 嘉徳 23 緑 斎藤 洋子 近藤 雅子 24 南 菊地紫津子 中山 隆幸 25 川崎 鈴木 真 諏訪 八大 26 〃 中原 優人 光永 忍 27 〃 渡部 秀哉 熊澤 哲哉 28 〃 松島 隆 深見 武彦 29 〃 林 保良 上野 和典 30 〃 西井 修 土谷 聡 31 〃 漆畑 博信 高田 博行 一正 予備代議員 76 (230) 神奈川産科婦人科学会誌 第51巻 第2号 神奈川産科婦人科学会誌 投稿規定 a 本誌に投稿する者は、共著者も含め原則として本会の会員に限る。なお、初期臨床研修医などでは指導医の証明があればこの限りでは ない。 s 論文の種類は総説、原著、症例報告などとし、未発表のものに限る。 d 前向き症例研究やガイドラインに記載されていないコンセンサスの得られていない診療方針を含む症例報告、研究においては、患者等 の匿名性を十分守ったうえで、論文中にインフォームド・コンセントを得たこと、所属施設・機関等の倫理委員会等の承認を得た旨を 記載すること。 f 投稿方法は電子投稿に限る。http://mc.manuscriptcentral.com/ktjog にアクセスし必須事項を入力の上、表示される指示に従って投稿する こと。 g 原稿の採否は編集委員会より委嘱された査読者の意見を参考にして、編集委員会において決定する。また原稿は編集方針に従って加筆、 削除、修正などを求めることがある。その場合には、著者は 4 週間以内に原稿を修正し再投稿すること。 h 採用された原稿は順次掲載される。 j 原稿は原則として、A4 版横書き 30 字 30 行とし Web で指定されたソフトを用いて 12 ポイントで作成する。常用漢字と平仮名を使用して、 学術用語は本学会及び日本医学会の所定に従い、英語のつづりは米国式とする(例: center, estrogen, gynecology)。また頁番号を原稿 の下中央に挿入する。 k 原著論文の記述の順序は、原則として次のようにする。1 頁目は表題、所属、著者名(それぞれ英文も併記、姓名は Taro YAMAKAWA のように記述する)、Key words、著者ならびに校正責任者の連絡先(住所、電話、FAX 番号、メールアドレスなど)、2 頁目は概要 (600 字以内)とし、以下緒言、方法、成績、考案、文献,図・表の説明の順に記載し、規定の形式にて添付する。また症例報告では、 緒言、症例、考案,文献,図・表の説明の順に記載し、規定の形式にて添付する。論文中には図、表の引用箇所を明示する。文献の引 用は論文に直接関係あるものにとどめ、本文中の引用部位の右肩に文献番号 1)、2)を付け、本文の終わりに本文に現れた順にならべる。 l 投稿論文を内容により次のカテゴリーに分類する。カテゴリー A ;生殖・内分泌、B ;婦人科腫瘍、C ;周産期、D ;女性のヘルスケア。 投稿者はこれらのカテゴリーの中から 1 つを選択する。 ¡0 論文の長さは文献、図・表も含めて 8,000 字以内(刷り上り 6 頁以内)とする。なお、図・表は 1 頁に 6 個挿入した場合、1 個が 300 字に 相当する。図・表は、それぞれに 1 枚ずつに分けて順番をつけ、縮小製版された場合にも明瞭であるように留意する。投稿の際、図・ 表は、別途規定のファイルにして添付する。 ¡1 単位、記号は、m、cm、mm、μ m、g、mg、μ g、l、ml、℃、pH、N、M、Ci、mCi、μ Ci などとする。本文中の数字は算用数字を用 いる。 ¡2 Key wordsは5語以内とする。ただし英語とし、Medical Subject Headings(MeSH, Index Medicus)http://www.nlm.nih.gov/mesh/MBrowser.html を参照する。 ¡3 文献は著者名全員と論文の表題を入れ、次のように記載する。和文誌の雑誌名は医学中央雑誌の略誌名に、欧文誌の雑誌名は Index Medicus による。 例1【欧文雑誌】著者名. 論文名. 雑誌名. 発刊年;巻数:頁数. Shiozawa T, Shih HC, Miyamoto T, Feng YZ, Uchikawa J, Itoh K, Konishi I. Cyclic changes in the expression of steroid receptor coactivators and corepressors in the normal human endometrium. J Clin Endocrinol Metab. 2003;88:871-8. 例2【欧文書籍(一般)】著者名. 書名. [版数.] 発行地: 発行元; 発刊年. [章数,] [章題名;] p.頁数. Gardner RJM, Sutherland GR. Chromosomal abnormalities and genetic counseling. 3nd ed. Oxford: Oxford University Press; c2004. Chapter 6,Robertsonian translocations; p.122-37. 例3【欧文書籍(分担執筆)】著者名. 担当題名. In: 監修(編集)者名. [シリーズ名.] 書名. [版数.] 発行地: 発行元; 発刊年. p.頁数. Hilpert PL, Pretorius DH. The thorax. In: Nyberg DA, Mahony BS, Pretorius DH, eds. Diagnostic and ultrasound of fetal anomalies: text and atlas. St.Louis: Mosby Year Book, inc; c1990. p.262-99. 例4【和文雑誌】著者名. 論文名. 雑誌名. 発刊年;巻数:頁数. 尾崎江都子, 長田久夫, 鶴岡信栄, 田中宏一, 尾本暁子, 生水真紀夫. 産科手術における新しい血管内バルーン閉鎖術の試み─大量出血が 予想された前置胎盤症例に対する Intra-aortic balloon occlusion (IABO)の使用経験─. 関東産婦誌 2009;46:393-8. 例5【和文書籍(一般)】著者名. 書名. [版数.] 発行地: 発行元; 発刊年. [章数,] [章題名;] p.頁数. 永田一郎. イラストで見る産婦人科手術の実際. 第 2 版. 大阪: 永井書店; 2010. 第 10 章, 子宮脱根治術(2)-TMV 法-; p.205-28. 例6【和文書籍(分担執筆)】著者名. 担当題名. 監修(編集)者名. [シリーズ名.] 書名. [版数.] 発行地: 発行元; 発刊年. p.頁数. 石塚文平. 卵 巣性排卵障害.日本生殖医学会編.生殖医療ガイドブック 2010. 東京: 金原出版; 2010. p.57-8. 例7【インターネットホームページ】 放射性物質による健康影響に関する国立がん研究センターからの見解と提案. 東京: 国立がん研究センター, 2011: http://www.ncc.go.jp/jp/. ※ [ ]は該当する時のみ表記する. ¡4 印刷の初校は著者が行う。ただし、組版面積に影響を与える改変や組み替えは認めない。 ¡5 論文の掲載のための所定の費用(カラー写真など)は、著者負担とする。 ¡6 別刷の実費は著者負担とし、著者校正のときに 50 部単位で希望部数を申込む(但し 50 部 6 頁以内は無料)。 ¡7 論文投稿に関して連絡先等変更があった場合には神奈川県産科婦人科医会内 神奈川産科婦人科学会誌編集事務局(メールアドレス; jinsanhuikai_26@kaog.jp, 電話番号; 045 − 242 − 4867 ファックス: 045 ‐ 261 − 3830)に連絡する。 ¡8 投稿にあたり個人情報の取扱いは個人情報保護法を遵守すること。とくに症例報告においては患者のプライバシー保護の面から個人が 特定されないよう、氏名、生年月日、来院日、手術日等を明記せず臨床経過がわかるように記述して投稿するものとする。また、対象 となる個人からは同意を得ておくことが望ましい。 ¡9 論文について開示すべき利益相反状態があるときは、投稿時にその内容を明記する。利益相反状態の有無の基準は、日本産科婦人科学 会の「利益相反に関する指針」運用細則による。 ™0 投稿論文の著作権は神奈川産科婦人科学会に委譲するものとする。 改訂1990.9.19 1992.3. 3 2001.2.15 2003.9.11 2004.9. 9 2005. 12. 1 2007.1.25 2012.8. 1 2014.8. 1 編 集 長 吉田 浩 査 読 者 明石敏男、天野 完、新井正秀、荒瀬 透、安藤直子、石川浩史、石川雅彦、 石本人士、和泉俊一郎、今井一夫、岩瀬春子、岩田壮吉、海野信也、遠藤方哉、 大島 綾、小川公一、小川 幸、小野瀬亮、加藤久盛、河村和弘、小西康博、 小山秀樹、斎藤圭介、榊原秀也、佐治晴哉、佐藤美紀子、茂田博行、上坊敏子、 鈴木隆弘、鈴木 直、田島敏久、田中 守、田村みどり、土居大祐、戸澤晃子、 中沢和美、長塚正晃、中野眞佐男、西井 修、沼崎令子、樋口隆幸、平原史樹、 平吹知雄、松島 隆、三上幹男、宮城悦子、村瀬真理子、望月純子、持丸佳之 編集担当理事 鈴木 直、三上幹男(副担当) 編 集 部 荒瀬 透、安藤直子、石本人士、岩瀬春子、遠藤方哉、大島 綾、小川 幸、 小野瀬亮、河村和弘、小山秀樹、斎藤圭介、佐治晴哉、佐藤美紀子、上坊敏子、 鈴木隆弘、田村みどり、戸澤晃子、沼崎令子、樋口隆幸、松島 隆、村瀬真理子、 望月純子、吉田 浩 「神奈川産科婦人科学会誌」 第51巻2号(年2回発行) 平成27年2月17日印刷・平成27年2月23日発行 発 行 所 〒231-0037 横浜市中区富士見町3−1(神奈川県総合医療会館内) 神奈川産科婦人科学会 電 話 045(242)4867 http://www.kaog.jp/ 編集兼発行人 神奈川産科婦人科学会 印 刷 所 〒220-0042 横浜市西区戸部町1─13 電話 045(231)2434 株式会社 佐 藤 印 刷 所
© Copyright 2024 Paperzz