弁護士さんに聞いてみよう 弁護士 : 弁護士法人小野総合法律事務所 聞き手 : 三幸エステート コンプライアンス部 2 VOL. 長田誠司氏 百目鬼(どうめき)英明 ∼オフィスの賃貸借契約の 種類と留意点は?∼ 長田誠司(おさだ・せいじ) 平成17年 弁護士登録(58期) 小野総合法律事務所入所 三幸エステートのほか、大手信託銀行の 不動産部門等を担当し、不動産取引に関する 業務を主に取り扱っている。 ◆オフィスの賃貸借契約の種類と特徴を教えて? るのは先ほど述べたとおりなのですが、 この契約の場合、 予め定められた ─ 百目鬼:最近、 入居中のテナント企業から、 『賃貸人より、 ビルを建替 期間が満了すると更新されずに契約は終了します。 賃借人が引き続き借り えるので退去してほしいと言われている。 退去しなければならないのか?』 たいと思っても、 賃貸人が再契約に応じない限り致し方ありません。 とか、 ビルオーナーからの退去要請に対し、 『どのくらいの補償金が貰える ─ 百目鬼:他にも定期借家契約の特徴はありますか。 のか?』といった内容の相談を受けました。オフィスの賃貸借契約の種類 ─ 長 田:定期借家契約では、 特約により賃料増減額請求権を排除す やそれぞれの特徴、 注意すべき点について教えて頂けないでしょうか? ることが可能です。例えば「賃料は月額20,000円 (消費税別途) とし、 契約 ─ 長 田:一般的なオフィス (事務所) の賃貸借契約では借地借家法 期間中の改定はしない」 といった特約をすると、 改めて賃貸人と合意でき によってテナントが保護されるケースが多いと思いますが、 借地借家法の ない限り賃借人からの賃料減額ができません。 裏を返せば、 通常の建物賃 枠内でも定期借家契約である場合や、 また、 最近は借地借家法が適用さ 貸借契約の場合、 賃料減額請求権を排除する特約があっても無効です。 れない形での新たなオフィス(事務所)の借り方も登場してきていますの ─ 百目鬼:先ほど言われた新たなオフィス (事務所) の借り方というの で、 念のため注意は必要でしょう。 は、施設利用契約とか、サービスオフィス使用契約といったものでしょう ─ 百目鬼:借地借家法が適用されるかされないかは、賃借人にとって か。 これらに借地借家法の適用はないのでしょうか? 大きな意味を持つのでしょうか? ─ 長 田:契約書の記載だけで決まるものではなく、実態として「建 ─ 長 田:違いはとても大きいです。 もし借地借家法の適用がなけれ 物」 の賃貸借といえるかどうかを判断しなければなりませんので、 ここで詳 ば賃貸人は、 民法の規定や特約により比較的自由に契約の解約や更新拒 しく述べるのは難しいですね。例えば、共用部から独立の入口を有さない 絶をすることができます。 しかし、借地借家法の適用がある契約では、 正 ブース貸しのような場合には、 デパートの売り場等と同じように建物賃貸 当な事由がなければ特約によっても解約や更新拒絶をすることができま 借には該当せず、 したがって借地借家法の適用がないとされる可能性が せん。 定期借家契約はこの例外といえます。 高いと思います。契約書の記載のみでは決まらないという点では、 「一時 ─ 百目鬼:定期借家契約の場合は、 どうなりますか? 使用」 建物賃貸借にも同様の問題がありますので、 注意してください。 ─ 長 田:定期借家契約でも、 オーナー側からの中途解約が制限され ─ 百目鬼:どうもありがとうございました。 参考資料 さまざまなオフィスの賃貸借契約と留意点 契約の種類 契約の特徴・留意点 建物賃貸借契約 一般的な建物賃貸借契約では、 正当事由が無い限り貸主から解約できない等、 借地借家法の規定が全面的に適用されます。 定期建物賃貸借 (法第38条) 所謂 「定借」 と呼ばれていますが、 期限の延長や更新はできず、 期間満了後は新たな契約 (再契約) をしない限り、 借室を継続 して賃借することはできません。 書面で契約することや、 貸主が契約前に一定の説明をすることが義務づけられており、 また、 貸主が契約終了1年前から6か月前までに契約の終了通知をしないと、 契約を終了させることができなくなります。 その他、 契 約時に賃料改定に関する特約があれば、 法32条 (借賃増減請求権) が適用されない、 借地借家法第29条1項 (1年未満の賃貸 借は期間の定めのない建物の賃貸借と見做す) が適用されない等、 通常の建物賃貸借契約との違いがあります。 取壊し予定の建物の 賃貸借 (法第39条) 法令または契約で一定の期間経過後に建物を取り壊すべきことが明らかな場合には、 建物を取り壊す時に賃貸借が終了する 旨を定めることで、 借地借家法第30条の規定にかかわらず (同法26条や28条の規定の適用を受けずに) 契約を終了させるこ とができます。 一時使用目的の建物の 賃貸借 (法第40条) 一時使用のための建物の賃貸借では借地借家法の規定が適用されません。ただし、契約書に「一時使用」と記載するだけで は足らず、当該契約が一時使用のためであることが客観的に明らかでなければなりません。例えば、以下のようなケースであ る必要があります。 ・○ビル新築工事が完了する迄の期間、建設現場事務所として一時使用する ・参議院議員選挙投票日迄の間、選挙事務所として一時使用する、等 その他の契約 施設使用契約とかサービスオフィス利用契約といった名前で、 オフィスの賃貸借契約に似た契約 (通常は短期間の契約が多 い) があります。 これらの契約書には、 借地借家法が適用されないとか、 ホテルの宿泊契約に準じるといった規定があります が、 実際には 「建物」 賃貸借といえるかどうかがポイントです。 ※上記は、 平成25年3月6日に弁護士法人小野総合法律事務所にて取材させて頂いた内容をまとめたものです。 何かご不明な点等ございましたら、 お気軽に下記お問い合わせ先に連絡をお願いいたします。 問い合わせ先 info@sanko-e.co.jp 取材協力先 弁護士法人小野総合法律事務所 (長田誠司弁護士) http://www.ono-law.jp/
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