フィッチ・レーティングス・サービサーレポート (376KB)

Structured Finance
住宅ローン/
アセット・バックト
日本
サービサーレポート
日本債権回収株式会社
概要
格付
住宅ローン・
スペシャルサービサー
RSS2+(JPN)*
アセットバックト・
スペシャルサービサー
ABSS2+(JPN)*
*日本のサービサーについての格付であるこ
とを示す
アナリスト
東京
神谷 久春
03-3288-2701
hisaharu.kamiya@fitchratings.com
上野 光宏
03-3288-2605
mitsuhiro.ueno@fitchratings.com
ニューヨーク
ダイアン・ペンドレー
+1 212-908-0777
diane.pendley@fitchratings.com
会社側連絡先
日本債権回収株式会社
関谷 憲次
03-3222-0282
kenji.sekiya@onet.orico.co.jp
フィッチ・レーティングス(フィッチ)は、日本債権回収株式会社(JCS)の住宅ロ
ーン・スペシャルサービサー格付を「RSS2+(JPN)」に、アセットバックト・スペシ
ャルサービサー格付を「ABSS2+(JPN)」に据え置いた。
この格付は、JCS の十分な業務経験を有し安定した経営陣・管理職、幅広い顧客基盤
などに支えられた着実な業績、親会社である株式会社オリエントコーポレーション
(オリコ)から引き継がれた業務手法及び支援体制、などの強みを引き続き維持し
ていることを反映したものである。
JCS は信販業界大手であるオリコの連結子会社であり、1999 年 4 月に日本で最初に
スペシャルサービサーとしての営業許可を受けた 1 社である。同社の取扱債権は、
住宅ローンから、有担保・無担保の事業性融資債権、個人向けのカード・クレジッ
ト債権まで多岐にわたる。2008 年 6 月までの累計取扱金額は、請求債権額ベースで、
4 兆 200 億円に達している。また、JCS は、大手生保・銀行から中小金融機関やノン
バンクなどを含め約 400 社以上の幅広い顧客基盤を有している。
JCS は 2007 年 4 月から、初期延滞債権の受託に特化したサービシング業務を開始す
るなど、業務展開を図っている。2008 年 7 月現在、役職員数は 326 名、営業・回収
の拠点として全国 8 ヵ所に支店を展開しているほか、2 ヵ所の専門センターを擁して
いる。
強み
•
業務経験豊富で安定した経営陣と管理職
•
幅広い顧客基盤などに支えられた着実な業績
•
親会社から永年に亘り引き継がれた業務手法及び支援体制
課題
•
コンプライアンス要請の拡大に対応した内部管理体制レベルの強化
•
債権市場の競争激化の中での買取債権の増加に対する業績の維持
課題を緩和する要因
•
内部統制室の新設及び法務部、検査室の増員により、内部管理体制の強化を図っ
ている。
•
資産管理体制の強化や、強固な顧客基盤をベースに業務分野の拡大等に努めてい
る。
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2009 年 2 月 27 日
Structured Finance
会社概要
JCS は 1999 年 1 月にオリコの 100%子会社として設立され、同年 4 月に法務省の許
可を得て営業を開始、9 年超の業務歴を有している。親会社のオリコは 1954 年創業
の信販業界大手で、50 年以上にわたり、割賦購入斡旋、カード、オートローン、キ
ャッシングなど、さまざまな個人向け無担保金融分野の与信審査と管理回収や住宅
ローンの保証業務等のノウハウを蓄積してきた。更に、バブル崩壊以降の経営再建
の過程における不良債権処理や、資金調達手段多様化のためオリコが活発に行って
きた証券化・流動化での実務経験、ノウハウも JCS に継承されている。
営業開始以来 2008 年 6 月までに、JCS は 23 万 4 千件以上の債権を取扱い、その累計
請求金額は 4 兆円を上回っている。現在のサービシングポートフォリオの約 91%は
JCS の買取債権であり、残余部分は第 3 者からの受託債権である。
JCS では、年次事業計画を月次でフォローすると共に、半期毎に 3 ヵ年計画を更新し、
常に短期・中長期の課題を認識して運営している。
図表1:取扱債権額の推移
(請求権残高:百万円)
請求権残高
債権数
(債権数)
250,000
4,500,000
4,000,000
3,500,000
3,000,000
2,500,000
2,000,000
1,500,000
1,000,000
500,000
0
200,000
150,000
100,000
50,000
0
2000/12
2001/12
2002/12
2003/12
2004/12
2005/12
2006/12
2007/12
2008/6
出所:JCS
JCS は、事業性・個人の無担保ローン、住宅ローンのスペシャル・サービシング分野
で業界内の地位を築いている。フィッチは競争が激化する市場で、経験豊富な経営
陣の存在、また、みずほフィナンシャルグループ(「A+」/安定的/「F1」)の中小企
業取引の一翼を担う親会社オリコのバックアップを JCS の強みと考えている。
前回格付以降、JCS は内部コンプライアンス体制の強化と当局検査への対応及び対応
策の徹底を図るため、2008 年 2 月に内部統制室(4 名)を立ち上げた。また、人材
業務の効率化を図るため、事業性債権を取り扱う本店 1 部を同様の業務中心の関東
支店に統合した。更に、事業再生など難度の高い大型事業性債権を担当する本店 2
部は、本部機能のアセット企画管理チームに改組され、専門知識と経験を持つ人材
による支店への業務指導、ノウハウの集約化を推進できる体制とした。
フィッチは JCS がこのような組織の改編により、機能の集約化・専門化を進め、常
に環境変化への対応力を強化しようとしていると認識しており、今後の効果に注目
していく。
財務
2007 年 12 月期現在、JCS の総資産は 173 億円で前年比 12%増加した。資産の内約
85%(148 億円)は、買取債権である。JCS は 2007 年度前年比 14%増の 91 億円の債
権買取投資を行ったが、資産内容は流動比率 224%、自己資本比率 22%と相応の流
動性が維持されている。
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収益面では、2007 年 12 月期の営業収益は前期横並びの 67 億円(内買取債権回収益
51 億円)、営業利益 13 億円、当期純利益 5 億円であった。また、2008 年 12 月期に
ついては、営業収益 70 億円(前期比 4%増)、当期純利益 6 億円の見通しである。
JCS は積極的に債権買取を継続している。債権購入資金については 2004 年以来、毎
年日本政策投資銀行とみずほコーポレート銀行(「A+」/安定的/「F1」)を共同主幹
事とするシンジケート・ローンにより調達している。2008 年 8 月には、第 5 回総額
45 億円(期間 3 年)を組成、14 の金融機関が参加した。また、JCS はオリコからスタ
ンド・バイを含む十分な融資枠も確保しており、フィッチは、当面資金調達に問題
はないと考えている。
現在、マーケットにおいて、サービサー間の競争激化や債権内容の変化に伴う買取
価格の高騰や、再生型案件の増加による回収の長期化が起きている。JCS もそうした
傾向が見られ、今後の買取債権からの回収次第では、収益の圧迫要因となる可能性
がある。
一方、JCS は保守的な会計基準(原価回収法)及び厳格な引当・償却基準を適用してお
り、財務面の健全性は確保されていると考えている。
従業員
2008 年 7 月現在の従業員数(常勤役員を含む)は 326 名で、前年より 16 名増加してい
る。うち、社員数は 216 名(前年より 21 名増、内オリコ出向者 56 名)である。主
な従業員増加要因は、当局検査や拡大するコンプライアンス事項への対応に、内部
管理機能への要員強化を図ったためである。パートタイマーと派遣社員は合わせて
98 名(前年 102 名)で、支店やセンターで経理、総務、債権管理事務などの補助業
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務を中心に、一部回収業務も行っている。
当社従業員の離職率は低い。2007 年にはオリコグループで早期退職者募集を行い、
これに計 26 名の正社員及び出向者が応じたため、一時的に離職率は上昇したが、今
回は戻っている。退職者は同程度の経験と能力を持つ出向者及び新規採用者で代替
された結果、業務への影響は殆どなかったとフィッチでは見ている。
現在、正社員の大半はオリコに 20 年以上在籍した人材で構成されており、競売等の
法的手続き、住宅ローン回収などの関連業務に幅広い経験を有している。
JCS は従業員の高齢化による将来の世代交代に備えて徐々に従業員構成の変革を進め
ており、オリコグループ外からも経験を持つ若手の新規採用を進めている。同社は
関連業務の経験者を契約社員として雇用後、パーフォーマンスや適性等を見た上で
正社員化を図っており、2008 年は正社員への登用を 7 名(前年 2 名)行っている。
JCS では新入(出向)社員を対象に本社で 1~2 日の集合研修を実施すると共に、毎月、
各支店でテーマを決めて全員が参加する研修を行っている。テーマは、業務に関連
する法務、各種業務手続、コンプライアンスなどとなっている。また同社の特色と
して、2003 年以降社内弁護士が支店を訪問し、回収実務の法務面のアドバイスを行
っている。JCS では、内部管理における社内弁護士の役割を重要視しており、現在 3
名(内 1 名大阪駐在)の弁護士を社内弁護士として採用し、今後増員を予定している。
フィッチでは JCS が経験豊かな回収担当者を確保し、ノウハウの共有などで全体の
能力を高めるための適切な方策を採っている点を評価しており、今後はノウハウの
継承と円滑な世代交代が進展して行けば、競争力の維持、強化が図れると見ている。
今後は、専門性の強化のための研修などにより、市場の発展に即した業務展開に備
えていくことが、重要と思われる。
内部統制
JCS では、業務リスクに対応するため、経営会議、デュー・デリジェンス委員会を定
期的に開催し、またコンプライアンス体制の強化を主眼としたリスク管理委員会を
2006 年に立ち上げ、社内横断的なリスク管理活動を行ってきた。
更に 2008 年 2 月、内部統制とコンプライアンス管理を統括する内部統制室を設立し
た。内部統制室は先ず 2007 年の法務省検査の指摘点に基き、社内規定・マニュアル
の改訂を行い、全ての支店で数回に渡る臨店指導を通じ、その周知徹底を図った。
JCS は、業界の一員としてリスク・コンプライアンス管理強化の必要性を認識してお
り、前回格付時以降、内部統制室の新設に加え、法務部、検査室の増員を行ってい
る。JCS は包括的な社内規定・マニュアルを整えており、全従業員はそれらをオンラ
インで閲覧できる。各種マニュアルの作成、管理は本社の事務推進指導部が担当し
ている。規程手続類については過去の通達類をベースに階層を整理して体系化して
おり、マニュアル類の整備は 2008 年 8 月で一巡した。同部は、支店訪問により、業
務が規定・マニュアルに沿って行われているかチェックし、指導を行っており、ま
たその結果に基づいて(取締役会の承認を経て)、マニュアルの改訂を行う。新
設・改訂された規定・マニュアルは支店宛に通達として発信され、その重要度に応
じて、テレビ会議システムで説明、勉強会を開催、または通達回覧される。
JCS では、検査室の経験豊かな 3 名の専任検査員が、本社部門と全支店に年間 1 回立
ち入り検査を行っている。この年次定例検査は、4~5 日をかけ、コンプライアンス
及び業務の管理水準の向上を目的として行われるもので、業務の細部にわたり検査
が行われる。また検査結果は、最終日にテレビ会議を通じて発表され、また役員・
全部長宛回覧され、部長会に報告される。指摘事項については、検査後 1 ヶ月を目
処に改善報告が求められ、検査室で事後フォローしている。
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更に、各支店には自店検査制度が導入されており、年間 2 回行われている。1 回は指
摘事項に対する改善状況をチェックする目的も含め、検査室による定例検査実施後 3
ヶ月以内に行われる。検査項目や方法等について詳細な手引きが作成されており、
それに従って各支店長が実施、結果を検査室に報告している。自店検査項目は、定
例検査の内容と重複する構成にしており、従業員の意識を高めている。
2007 年 6 月法務省検査のフォローアップ検査が 2008 年 9 月に行われ、大きな指摘事
項はなく、前回の指摘点については、概ね改善が実行されていた。また、2008 年 1
月 JCS は新 JIS 基準によるプライバシー・マーク更新の手続を完了している。フィッ
チは、前回以降実施された体制強化の効果に注目して行く。
システム
前回格付時以降 JCS のシステム企画開発、運用管理の体制に変更はない。システム
企画部 (9 名)が企画・設計・開発・保守・管理業務を行っている。また、システム
の保守(一部常駐を含む)や開発、カスタマイズについては部分的に大手ベンダー
を含む 5 社に、外部委託している。
JCS は、基幹システムとして現在複数のサービサーで利用されている債権回収管理シ
ステム「トータルコレクションシステム(TCS)」を利用している。また、これを補
完する周辺システムを構築している。JCS では業務量の拡大に対し、統合的な次期シ
ステムへの更新も検討していたが、継続性・効率性を勘案、2008 年 5 月現行システ
ムのバージョンアップを行い対応した。
前回格付時以降、JCS は、バージョンアップに伴い、ハードウエアを切換え処理能力
を向上させた。特に、TCS のデータサーバーには無停止型コンピュータを導入して安
全性を向上させた。更にユーザーの利便性に資する機能、操作性の追加、セキュリ
ティ強化対策を行っている。また、システム企画部では各部・支店からシステム改
善要望の提出を受け、ワーキングチームを作り、開発の優先順位を決め、うち 20 数
項目を優先開発案件として選定し、開発または開発着手の予定である。
サーバー別の使用状況は、日次のアラートレポートで管理され、現在 JCS の主要シ
ステム(TCS および周辺システム)は全て容量の 50%以下で稼動している。
JCS のシステムバックアップ体制は前回以降変更ない。現在、本社サーバーのデータ
は本社の耐火金庫に保存するとともに、毎日 2 回(データ分とアプリケーション)
に分けて東北支店内のバックアップサーバーに伝送・保存されている。さらに、週
次データは銀行の貸金庫内に保存することとしている。その他、月次データや、各
支店のファイルサーバーのデータ等も耐火金庫に保管している。災害発生等で本社
メーンサーバーがダウンした際、東北支店バックアップ・センターを使用するため、
2005 年 24 時間以内にシステムの立ち上げを行う「災害復旧マニュアル」を作成、全支
店に配布した。直近の復旧テストは 2008 年 5 月に東北支店バックアップ・センター
で行なわれ、約 6 時間で、稼動準備が完了することを確認した。フィッチでは、今
後共定期的な復旧テストの実施を期待している。
フィッチは、今回のシステムバージョンアップにより、業務量が増大する中、当社
の効率アップにどのように寄与しているか次回確認する予定である。
債権管理
債権管理の手法については、前回以降大きな変更はないが、全支店に 1 名以上配置
されたオペレーションマネージャーが、内部事務部門のヘッドとして、全プロセス
(取扱債権の確認、債権受入れ、データ登録、原因証書保管、入金処理)について
責任を負うことが明確化された。内部統制室は、支店における手続に沿った正しい
内部事務を徹底するために、オペレーションマネージャーの教育・指導を重点的に
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図表 3:取扱債権の内容
請求債権額
(百万円)
(%)
件数
(%)
4,022,091
100
234,767
100
自社買取債権
受託債権
3,672,217
349,874
91
9
174,015
60,752
74
26
合計
4,022,091
100
234,767
100
参考:バックアップサービシング
2,254,204
2008 年 6 月末現在累計
*1
保有形態別
5,404,096
買取
債権種類別
住宅ローン
事業性債権
クレジット等債権
償却債権 *2
合計
*1: バックアップサービシングの債権を除く。
出所:JCS
572,581
3,072,392
75,044
302,074
14
76
2
8
75,503
59,266
57,971
42,027
32
25
25
18
4,022,091
100
234,767
100
受託
請求債権額
(百万円)
件数
請求債権額
(百万円)
件数
410,661
2,896,817
62,665
302,074
41,839
56,246
33,903
42,027
161,920
175,575
12,379
-
33,664
3,020
24,068
-
3,672,217 174,015
349,874
60,752
*2: 簿価が小さく、種類別の分類なし。
実施しており、フィッチはその成果をフォローしていく。
新規債権受入作業
新規債権受入プロセスに大きな変更はない。支店では、債権プールについての特定
金銭債権種別の審査・判定を行い、顧客/債権情報の作成作業を行う(電子媒体で受
領したデータについては、自社フォーマットにコピー)。そのデータは、一括して
システム企画部でデータ授受システム(DES)への登録が行われる。電子媒体以外で
受領したデータは支店での手入力となる。元本、未収利息の合計については、登録
されたデータと買取・受託契約上の合計との照合が、契約日、損害金起算日、債務
者属性情報については TCS の画面と個別債権証書等との照合が行われる。債権証
書・契約書類は、照合・確認の上、ファイルされる。
また、JCS では 2006 年 10 月から埼玉県に新たな業務センターを開設し、長期未収債
権の管理を集約化した。従来は各支店で行われていた長期未収債権にかかる回収可
能性の判断、それに伴う償却・引当事務の、集中・効率化を図った。専担者による
管理集中化により、業務センターの回収実績は向上しており、JCS では取扱債権を現
行の 24 ヶ月以上の長期未収から短縮化することを検討している。
フィッチは JCS の専門性を活かした効率化への取組は、環境の変化に対応し、評価
できると考えるが、効率化の結果について引き続き注目していく。
会計・資金管理
JCS は、受託債権についての入金口座は自社買取分の入金口座と別に開設しており、
要請があれば委託者別の口座も開設している。債務者は原則として指定口座に直接
振込にて支払いを行う。各口座の残高はオンラインで確認できる。日々の入金は全
店統一で、入金処理担当者が顧客名・契約番号で判明処理を行い、回収担当者の確
認・特定を経て、入金登録担当者によって入金内訳に基づいたシステム登録がなさ
れる。
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また、JCS は 2006 年から入金の日次照合システムを導入している。経理部は日次で
各支店の勘定データを集め、預金元帳と突合を行う。その結果、月次決算は 10 営業
日以内に完結している。
経費支払いの管理は厳格で、回収金受入専用口座と経費等精算用の口座は分別され
ている。受託債権につき、サービシング契約で特定された費用の支払が発生するよ
うな回収行為については、予め委託者に文書で申請、承認を得ている。
委託者向けレポーティング・送金
JCS では委託者個別のニーズに応じて様々なレポートを作成している。ほとんどの委
託者は半期ごとに各債務者の状況報告を要求しているが、債務者情報の変更につい
ては月次で報告している。またクライアントの要望に応じてより詳細なレポートも
作成している。これらレポートの作成は、ほとんどが自動化されている。
受託債権の精算管理はシステム化され、各支店は指定された送金日の 3 営業日前ま
でに本社の担当部門に依頼書を送付、本社の担当部門では約定精算日にファームバ
ンキングにより前月分の精算金を委託者宛送金している。
JCS が取扱っている債権の大半が、長期延滞債権であり、回収担当者は受領後即時に
担当債権の回収に着手する。交渉が成立し、定期入金化が見込まれる債権について
は、別途集約管理され回収担当者は回収交渉に集中する。定期入金債権は 2007 年末
7,800 件と前年比 12%増加し、年間回収額も 23 億円に達している。入金状況の管理
や、未入金に対する督促業務はパート社員を中心に行っている。また、前述の通り、
延滞が 2 年を越える長期に及ぶ債権については業務センターに集約し、効率的な管
理・回収を行っている。
JCS では、債権回収向上に向け、前回以降任意売却、デュー・デリジェンス情報のネ
ットワーク強化に向けた不動産業者との提携、ホテル/事業再生面でのコンサルタン
トとの提携を進めた。更に資産管理面でも、10 百万円以上の債権については経営陣
も参加しビジネスプランの見直しを 3 ヶ月毎に実施し、実情に即した回収方針を決
定している。また、1~10 百万円の債権についても支店長の責任で 3 ヶ月毎の見直し、
1 百万円以下についてはプール単位で、支店内週次回収検討会で状況把握を行ってい
る。また同社では、大口案件については、アセット企画管理チームで回収ノウハウ
を蓄積し、無担保債権については、デュー・デリジェンス部が過去の回収実績、キ
ャッシュ・フローをベースに債権毎に回収可能性及び回収率の予測を行い、それに
基づいて価格算定を行うことによりデュー・デリジェンスの精度を高めるなど、業
績管理に寄与しているとフィッチでは見ている。
回収担当者 1 人当りの平均担当件数は前回とほぼ同様で、①無担保、個人クレジッ
ト案件 400~500 件、②事業性債権・有担保住宅ローン 150~200 件、③住宅ローン
(担保処分後)300~400 件となっている。このうちアクティブな案件は約 30%で、管
図表 4:回収手法別回収状況
(2000 年度から 2007 年度までの累計)
任意返済
任意処分
競売
その他 *2
合計
*1
回収額 (百万円)
35,880
13,351
10,347
6,923
66,501
(%)
54.0
20.1
15.6
10.4
100.0
入金件数
578,502
4,075
2,637
24,578
609,792
(%)
94.9
0.7
0.4
4.0
100.0
*1: 債務者、保証人、その他 *2: 強制執行、破産配当など
出所:JCS
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理可能な水準と考えられる。
30 名以上の回収担当者が所属する関東・南関東支店ではチームリーダー制を導入し、
1 責任者が 4 名程度を管理している。担当者ごとの目標設定や回収実績のモニタリン
グ、業務量の調整などは各チームの責任者が行っており、日々の回収活動に関する
記録はシステムから容易に作成可能である。
フィッチでは JCS の買取債権について、買取時期別の回収率を検証している。同社
は、概ね 2 年程度で簿価 100%程度を回収することを目標とし、近年はバラツキがあ
り、やや低下傾向にあるが、実績ベースでも達成している。フィッチは、JCS の回収
率は業界水準を確保していると考えている。
JCS は、これまで安定した回収実績をあげてきているが、マーケット環境が変化して
いく中、フィッチは、今後の回収動向を 注視して行く。
回収手法
JCS の回収手法は、前回から変化は見られない。債務者または保証人等による任意返
済が半分以上を占め、任意処分を加えると約 74%で、競売、法的手続きは全体の 4
分の 1 に過ぎない。これは、当社の取扱債権に、無担保個人クレジット、担保処分
後の住宅ローン、無剰余の有担保事業
図表5:担保物件の地域分散状況
性債権等が多く含まれ、担保処分の比
(2008年6月までの物件数による。買取債権のみ)
重が大きくない点はあるが、JCS の回
収方針として、可能な限り債務者との
東京
大阪
交渉を通じて回収するとの姿勢の現れ
5.2%
5.3%
関東(東
近畿(大
である。
京以外)
JCS の取り扱う担保物件は全国に広く
分散している。同社では支店を通じて
管理する体制を整えている。
JCS では、回収実績に依拠した報酬体
系は採用していない。しかし、回収担
当者の意識を高めるために、社内回収
コンテストや回収好事例に対する顕彰
を行っている。
阪以外)
6.9%
31.4%
中部
7.7%
九州
8.4%
出所:JCS
中国・
四国
14.9%
北海道・
東北
20.2%
破産・競売等法的手続きの管理
JCS では営業開始以来多数の競売申立てを行ってきた。そのほか承継案件や破産申立
済で配当の可能性がある債権も多くある。この分野は、主にオリコ出身者が担当し
ており、長年の経験が役立っている。JCS は 2007 年 5 月に、法務部門を部として独
立させるともに、社内弁護士の追加採用を行い、手続の厳正化及び効率化を進める
とともに、コンプライアンスの徹底を図った。
REO(自己所有物件)の管理 - 住宅ローン
日本の住宅ローンの特性などから、米国と比較して日本のサービサーが自己競落し、
REO 債権を管理するケースは非常に限定的であった。不動産の取引・保有のコスト
が高く、小口の住宅ローンにおいては経済合理性が低いと考えられていたためであ
る。しかし、JCS は宅地建物取引主任資格を有する従業員を 23 名擁しており、オリ
コでの関連業務経験もあることから、実績はないが、JCS は REO 管理を行う一定の
能力を有しているとフィッチではみている。
JCS は経験豊富な回収担当者と、他社では稀な社内弁護士を擁するなど、強固な体制
を持っている。一方、近年の市場動向から、他のサービサー同様、買取債権から回
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Structured Finance
収率の低下、回収の長期化傾向が見られ、フィッチとしてはその動向を引き続き注
視して行く。
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日本債権回収株式会社
2009 年 2 月
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