の腹腔鏡下肝切除

タイムスケジュール
時間
8:25
8:30
10:25
10:32
10:35
11:25
11:30
11:50
12:00
13:00
13:15
13:50
13:55
14:45
14:50
17:35
第1会場
第2会場
扇
かつら
開会の挨拶
(8:25∼8:30)
一般演題
(8:30∼10:25)
Session 1 (8:30∼9:05)
座長:宮川 眞一(信州大学 外科)
大坪 毅人(聖マリアンナ医科大学 消化器・一般外科)
Session 3 (9:10∼9:45)
座長:島田 光生(徳島大学 消化器・移植外科)
山本 雄造(秋田大学大学院 医学系研究科 消化器外科)
Session 5 (9:50∼10:25)
座長:杉岡 篤(藤田保健衛生大学 肝・脾外科)
長谷川 潔(東京大学大学院医学系研究科 肝胆膵外科)
一般演題
(8:30∼10:32)
Session 2 (8:30∼9:05)
座長:別府 透(熊本大学附属病院 消化器癌集学的治療学(消化器外科))
大塚由一郎(東邦大学医療センター大森病院 消化器センター外科)
Session 4 (9:10∼9:45)
座長:江口 晋(長崎大学大学院 移植・消化器外科)
新田 浩幸(岩手医科大学 外科)
Session 6 (9:50∼10:32)
座長:水口 徹(札幌医科大学 外科学第一講座)
波多野悦朗(京都大学 肝胆膵・移植外科)
教育講演
(10:35∼11:25)
石沢 武彰(東京大学医学部附属病院 肝胆膵外科/
Department of Digestive Diseases, Institut Mutualiste Montsouris,
University Paris V, Paris, France)
司会:幕内 雅敏(日本赤十字社医療センター)
アンケート報告
(11:30∼11:50)
ランチョンセミナー
(12:00∼13:00)
Ho-Seong Han(Seoul National University, College of Medicine)
司会:金子 弘真(東邦大学医療センター大森病院 消化器センター 外科)
共催:コヴィディエン ジャパン株式会社
一般演題
(13:15∼13:50)
Session 7
座長:山本 雅一(東京女子医科大学 消化器外科)
趙 明浩(千葉県がんセンター 消化器外科)
招待講演
(13:55∼14:45)
Horacio Asbun(Hepatobiliary and Pancreas Surgery, Mayo Clinic Florida)
司会:若林 剛(岩手医科大学 外科学講座)
共催:ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
一般演題
(14:50∼17:35)
Session 8 (14:50∼15:25)
座長:窪田 敬一(獨協医科大学 第二外科)
永野 浩昭(大阪大学大学院 消化器外科学)
Session 9 (15:30∼16:05)
座長:田邉 稔(慶應義塾大学医学部 外科)
武冨 紹信(九州大学大学院 消化器・総合外科)
Session10 (16:10∼16:52)
座長:久保 正二(大阪市立大学大学院 肝胆膵外科学)
高田 泰次(愛媛大学 肝胆膵・移植外科)
Session11 (17:00∼17:35)
座長:島津 元秀(東京医科大学八王子医療センター 消化器外科・移植外科)
矢永 勝彦(東京慈恵会医科大学 外科学講座消化器外科)
閉会の挨拶
(17:35∼17:40)
※世話人会
<開催日時>11月16日(水)7:45∼8:15
<会 場>京王プラザホテル(新宿)南館4階・なつめ
※懇親会
<開催日時>11月16日(水)18:00∼
<会 場>新宿センタービル 53階・ダイニングアウト53
9
プログラム
11 月 16 日(水)
◆世話人会
京王プラザホテル(新宿)南館 4 階・なつめ(7:45 ~ 8:15)
◆開会の挨拶
一般演題
Session1
中小規模病院における完全腹腔鏡下肝切除導入
1-2
大腸癌同時性肝転移に対して腹腔鏡補助下同時切除術を施行した 16 例の検討
1-3
大腸癌同時性肝右葉転移に対して腹腔鏡補助下肝切除術を施行した 3 例
1-4
胆嚢癌に対する腹腔鏡補助下肝 S4a+S5 切除術
1-5
転移性肝癌に対する腹腔鏡下肝切除術
10
NTT 西日本九州病院 外科
岩手医科大学 外科学講座
Session2
第 1 会場 / 扇(8:30 ~ 9:05)
座長:宮川 眞一(信州大学 外科)
大坪 毅人(聖マリアンナ医科大学 消化器・一般外科)
1-1
一般演題
第 1 会場 / 扇(8:25 ~ 8:30)
富安真二朗
長谷川 康
信州大学 消化器外科
古澤 徳彦
徳島大学 外科
山田眞一郎
九州大学 消化器・総合外科
池上 徹
第 2 会場 / かつら(8:30 ~ 9:05)
座長:別府 透(熊本大学附属病院 消化器癌集学的治療学(消化器外科))
大塚由一郎(東邦大学医療センター大森病院 消化器センター外科)
2-1
腹腔鏡補助下に一期的に生体部分肝移植、付属器切除を施行した 1 例
2-2
肝エキノコックス症に対する腹腔鏡下・補助下肝切除術
2-3
腹腔鏡下外側区域切除を施行し診断しえた、HIV に合併した FNH の一例
2-4
縮小傾向を認めた肝細胞癌の 1 切除例
2-5
腹腔鏡下肝切除にて診断したピル内服患者に生じた肝限局性結節性過形成
(FNH) の一例
長崎大学大学院 移植・消化器外科
北海道大学 消化器外科・一般外科
独立行政法人 国立病院機構 名古屋医療センター
静岡県立総合病院 外科
都立墨東病院 外科
川原 大輔
柿坂 達彦
田中 晴祥
高木 航
脊山 泰治
一般演題
Session3
3-1
当科における腹腔鏡下肝切除の現況および肝硬変合併症例における鏡視下手術
の有用性について
東京慈恵会医科大学 外科学講座 肝胆膵外科
北村 博顕
3-3
肝障害度 B の肝細胞癌における腹腔鏡下肝切除の意義
3-4
原発性肝癌に対する鏡視下肝切除の短期・長期成績の検討
3-5
手術侵襲と長期予後からみた肝細胞癌に対する内視鏡下肝切除の妥当性
和歌山県立医科大学 第2外科
徳島大学 外科
熊本大学大学院 消化器外科
上野 昌樹
居村 暁
今井 克憲
第 2 会場 / かつら(9:10 ~ 9:45)
座長:江口 晋(長崎大学大学院 移植・消化器外科)
新田 浩幸(岩手医科大学 外科)
4-1
当科における吊り上げ式腹腔鏡 ( 補助 ) 下肝切除
4-2
腹腔鏡下肝切除導入における内視鏡手術経験の意義
4-3
肝硬変を背景として繰り返し発生する肝細胞癌患者の長期生存を目指す治療体系の
中における完全腹腔鏡下肝切除術
松島 英之
当科における腹腔鏡下肝切除術の検討-開腹手術との比較
Session4
関西医科大学 外科
3-2
一般演題
第 1 会場 / 扇(9:10 ~ 9:45)
座長:島田 光生(徳島大学 消化器・移植外科)
山本 雄造(秋田大学大学院 医学系研究科 消化器外科)
埼玉医科大学総合医療センター 肝胆膵外科・小児外科
大阪大学大学院 消化器外科
藤田保健衛生大学 坂文種報徳會病院 外科
4-4
腹腔鏡下肝切除術における気腹圧とガス塞栓に関する基礎的検討
4-5
ハイブリッド生体肝移植ドナー手術に関するアンケート調査
がん・感染症センター都立駒込病院 肝胆膵外科
長崎大学大学院 移植・消化器外科
石田 隆志
小林 省吾
守瀬 善一
只野 惣介
今村 一歩
11
一般演題
Session5
5-1
Biclamp と Enseal を用いた完全腹腔鏡下肝切除術
5-2
腹腔鏡下肝部分切除におけるラプラタイ ® とエンドクローズ TM を用いた視野
展開の工夫
5-3
新規臓器圧排用器具エンドラクターの腹腔鏡下肝切除術における有用性
5-4
Virtual endoscopy を用いた腹腔鏡下肝切除術
5-5
da Vinci S System を用いたロボット肝切除術 15 例の経験
12
伴 大輔
土田 忍
昭和大学 消化器・一般外科
青木 武士
座長:水口 徹(札幌医科大学 外科学第一講座)
波多野悦朗(京都大学 肝胆膵・移植外科)
加藤悠太郎
第 2 会場 / かつら(9:50 ~ 10:32)
6-1
大腸癌肝転移に対して完全腹腔鏡下肝右葉切除を施行した 1 例
6-2
S7 の転移性肝癌に対する腹腔鏡下肝部分切除術
6-3
直腸・S 状結腸癌の同時性肝転移に対し腹腔鏡下に同時切除した 4 例
6-4
重症慢性閉塞性肺疾患を伴った開腹肝切除後再発肝細胞癌に対して腹腔鏡下
外側区域切除が有用であった 1 例
内山 秀昭
神戸大学 肝胆膵外科
藤田保健衛生大学 肝脾外科
Session6
福岡市民病院 外科
東京医科歯科大学 肝胆膵外科
一般演題
第 1 会場 / 扇(9:50 ~ 10:25)
座長:杉岡 篤(藤田保健衛生大学 肝・脾外科)
長谷川 潔(東京大学大学院医学系研究科 肝胆膵外科)
KKR 斗南病院
海老原裕磨
都立駒込病院 肝胆膵外科
奥田雄紀浩
東京女子医科大学 消化器外科
東邦大学医療センター大森病院 消化器センター 外科
6-5
腹腔鏡補助下肝切除後の再肝切除症例 2 例の検討~腹腔内癒着の程度は?
6-6
当科における再肝切除症例に対する腹腔鏡下手術
高橋 豊
久保田喜久
京都大学 肝胆膵移植外科
西田 久史
札幌医科大学 第一外科
川本 雅樹
教育講演
座長:幕内 雅敏(日本赤十字社医療センター)
第 1 会場 / 扇(10:35 ~ 11:25)
Gayet 教授
(パリ IMM)
の腹腔鏡下肝切除:最高峰の技術とその向こう側
東京大学医学部附属病院 肝胆膵外科
Department of Digestive Diseases, Institut Mutualiste
Montsouris, University Paris V, Paris, France
石沢 武彰
アンケート報告
第 1 会場 / 扇(11:30 ~ 11:50)
ランチョンセミナー
第 1 会場 / 扇(12:00 ~ 13:00)
報告:高橋 豊(東京女子医科大学 消化器外科)
座長:金子 弘真(東邦大学医療センター大森病院 消化器センター 外科)
Current Status of Laparoscopic Liver Surgery
Seoul National University, College of Medicine
Ho-Seong Han
共催:コヴィディエン ジャパン株式会社
一般演題
Session7
第 1 会場 / 扇(13:15 ~ 13:50)
7-1
当センターでの腹腔鏡下肝切除術の現況
7-2
肝機能不良例、多発肝転移症例に対する腹腔鏡(補助)下肝切除術の妥当性
7-3
当科における腹腔鏡下肝切除の現況
7-4
肝癌治療のための確実で安全な完全腹腔鏡下肝切除の工夫
7-5
右葉系の完全腹腔鏡下系統的肝切除術の有用性と問題点
昭和大学横浜市北部病院 消化器センター
横浜市立大学 消化器・腫瘍外科学
野尻 和典
大阪医科大学 一般・消化器外科
廣川 文鋭
大阪市立総合医療センター 肝胆膵外科
春日井 尚
九州大学 消化器・総合外科
(第二外科) 池田 哲夫
招待講演
座長:山本 雅一(東京女子医科大学 消化器外科)
趙 明浩(千葉県がんセンター 消化器外科)
座長:若林 剛(岩手医科大学 外科学講座)
Minimally Invasive Approach To Liver Surgery: Current Status
金沢 景繁
第 1 会場 / 扇(13:55 ~ 14:45)
Hepatobiliary and Pancreas Surgery, Mayo Clinic Florida
Horacio Asbun
共催:ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
13
一般演題
Session8
8-1
腹腔鏡補助下系統的肝切除術における ICG 蛍光法の有用性
8-2
腹腔鏡下脾摘併用肝切除術の安全性の検討
8-3
Pure Lap-hepatectomy の際の止血手技について
8-4
肝硬変患者に合併した血小板減少症に対する肝細胞癌の外科治療戦略
-二期的肝切除術
8-5
14
佐賀大学 一般・消化器外科
三好 篤
都立駒込病院 肝胆膵外科
本田 五郎
慶應義塾大学 外科
座長:田邉 稔(慶應義塾大学医学部 外科)
武冨 紹信(九州大学大学院 消化器・総合外科)
単孔式肝切除
9-2
単孔式腹腔鏡下肝部分切除に胆嚢摘出を併施した 1 手術例の経験
9-3
当科における Single Insicion Laparoscopic Surgery による肝切除
~困難例を含めた検討
平塚市民病院 外科
東京慈恵会医科大学附属柏病院 外科
9-4
単孔式腹腔鏡下手術の肝臓外科への導入
9-5
ニードルデバイスを用いた単孔式腹腔鏡下肝臓外科手術
水口 徹
板野 理
第 1 会場 / 扇(15:30 ~ 16:05)
9-1
北川 敬之
胆嚢癌に対する腹腔鏡下拡大胆嚢摘出術および肝外胆管切除再建術
Session9
信州大学 消化器外科
札幌医科大学 外科学第一講座
一般演題
第 1 会場 / 扇(14:50 ~ 15:25)
座長:窪田 敬一(獨協医科大学 第二外科)
永野 浩昭(大阪大学大学院 消化器外科学)
赤津 知孝
奥井 紀光
札幌医科大学 第一外科
中村 幸雄
大分大学 第一外科
岩下 幸雄
慶應義塾大学 外科
田邉 稔
一般演題
Session10
藤田保健衛生大学 坂文種報徳會病院 一般消化器外科
10-2 腹腔鏡下肝切除術における術中超音波検査の工夫
東京医科歯科大学 肝胆膵外科/低侵襲医学研究センター
10-3 当科における鏡視下肝切除術での様々な工夫
10-5 当科における肝臓外科領域の腹腔鏡下手術の変遷
藍原 有弘
川野 陽一
長野市民病院 外科
林 賢
山口大学 消化器・腫瘍外科
坂本 和彦
10-6 Arantius’ ligament approach による腹腔鏡下左肝切除術
千葉県がんセンター 消化器外科
趙 明浩
第 1 会場 / 扇(17:00 ~ 17:35)
座長:島津 元秀(東京医科大学八王子医療センター 消化器外科・移植外科)
矢永 勝彦(東京慈恵会医科大学 外科学講座消化器外科)
11-1 当科における腹腔鏡
(補助)
下肝切除術
群馬大学 臓器病態外科
須納瀬 豊
広島赤十字・原爆病院 外科
山下 洋市
東京大学大学院医学系研究科 肝胆膵外科
長谷川 潔
11-2 腹腔鏡下肝切除の導入と定型化;小開腹下肝切離の併用
11-3 東京大学における腹腔鏡下肝切除の導入
11-4 当科における腹腔鏡下肝切除術導入に向けての問題点とその対策
東北大学 肝胆膵外科
森川 孝則
国立がん研究センター東病院 上腹部外科
後藤田直人
11-5 腹腔鏡下肝外側区域切除の定型化について
◆閉会の挨拶
川瀬 仁
日本医科大学 外科
10-4 腹腔鏡下肝切除術における最近の工夫
Session11
第 1 会場 / 扇(16:10 ~ 16:52)
10-1 左側臥位肝非脱転尾側アプローチによる完全腹腔鏡下肝後区域切除術の 1 例
一般演題
座長:高田 泰次(愛媛大学 肝胆膵・移植外科)
久保 正二(大阪市立大学大学院 肝胆膵外科学)
第 1 会場 / 扇(17:35 ~ 17:40)
15
教育講演
ランチョンセミナー
招待講演
教育講演
石沢 武彰
(略歴)
平成 12 年 3 月
平成 21 年 3 月
千葉大学医学部 卒業
東京大学大学院 医学系研究科 外科学専攻 博士課程 修了
(医学博士)
社会保険中央総合病院 外科 勤務を経て、
平成 21 年 10 月 東京大学医学部附属病院 肝胆膵外科 勤務(助教)
平成 23 年 2 月~ 腹腔鏡下手術の技術習得と蛍光ナビゲーション手術の開発のために、パリ Institut
Mutualiste Montsouris(IMM, Brice GAYET 教授)に留学
(受賞歴)
・第 36 回 手術手技研究会 研究奨励賞
・第 2 回 日本肝臓学会 CHUGAI Award 優秀研究賞
・第 45 回 欧州外科研究会議 British Journal of Surgery Award
など
18
教育講演
Gayet 教授(パリ IMM)の腹腔鏡下肝切除:
最高峰の技術とその向こう側
石沢 武彰
東京大学医学部附属病院 肝胆膵外科
Department of Digestive Diseases, Institut Mutualiste Montsouris, University Paris V, Paris, France
2009 年春、米国内視鏡外科学会。若手外科医のためのビデオコンペで、特別ゲストとして登壇したは
ずの Gayet 教授に、何と金メダルが与えられてしまった。偶然それを聴講していた私も、肝静脈に沿っ
た腹腔鏡手術に衝撃を受け、帰路を急ぐ教授に駆け寄りその場で研修を志願した-。これが今回の留学
経験の始まりであった。
Gayet 教授による腹腔鏡下肝切除の特徴を挙げる:1)肝離断に特殊な機器を用いない(超音波凝固切
開装置とバイポーラー鉗子のみ)
。2)肝門剥離や止血、胆管の処理には鋭切開と縫合結紮を頻用する。3)
系統的切除では鏡視下でも主肝静脈を同定・露出する。4)S VII, VIII 切除では経胸腔的トロカーを挿入
して右肝静脈根部を確保する(lateral approach)
。
5)片肝切除や S I 切除ではまず下大静脈前面を剥離し、
肝背側から中肝静脈を求める(posterior approach)。今回、lateral approach、posterior approach によ
る系統的切除のビデオを供覧するとともに、静脈性出血のコントロールや、ICG 蛍光法を応用した新し
い試みについても紹介する。
手術成績であるが、肝切除 478 件(1995 年~)のうち、342 件(72%)が鏡視下に行われた。そのうち、
系統的切除は片肝切除以上が 83 件(24%)
、亜区域~二区域切除(S II+III 切除を除く)が 62 件であっ
た。出血量は 150(5-3000)mL(中央値 [ 範囲 ])
、手術時間 210(15-570)分、術後在院日数 7(2-68)日。
開腹移行は 18 例(5%)に要し、術後合併症を 27 例(8%)、在院死亡を 3 例(1%)に認めた。気腹に伴う
ガス塞栓の発生はなかった。
本来、腹腔鏡手術と開腹手術で肝切除範囲に相違があるべきではない。腹腔鏡下肝切除には、頭背側
領域の切除や頭尾方向の肝区域の同定などに課題は残るものの、今回の留学はその解決に大いに期待を
抱かせるものであった。
19
ランチョンセミナー
Ho-Seong Han, M.D., Ph.D
Office Address: 300 Gumi-dong, Bundang-gu, Seongnam-si, Gyeonggi-do, 463-707, Korea
TEL: 82-31-787-7091
FAX: 82-31-787-4055
E-mail: hanhs@snubh.org
EDUCATION & DEGREES:
1978-1984
1986-1988
1989-1993
POSITIONS:
1984-1985
1985-1989
1989-1993
1993-1996
1996-2003
2003-Present
20
M.D., Seoul National University College of Medicine
M.S., Seoul National University College of Medicine
Ph.D., Seoul National University College of Medicine
Intern, Seoul National University Hospital
Resident, Department of Surgery
Seoul National University Hospital
Assistant professor, Department of Surgery,
Gyeongsang National University College of Medicine & Gyeongsang
National University Hospital
Assistant professor & Chief of Department of Surgery,
Ewha Womans University College of Medicine &
Ewha Womans University Mokdong Hospital
Associate professor & Chairman of Department of Surgery,
Ewha Womans University College of Medicine &
Ewha Womans University Mokdong Hospital
Professor & Chairman of Department of Surgery
Seoul National University Bundang Hospital
Seoul National University College of Medicine
ランチョンセミナー
Current Status of Laparoscopic Liver Surgery
Ho-Seong Han
Seoul National University, College of Medicine
Recently the indications and application of LLR have been changed a lot since its introduction.
In early stage, only tumorectomy was possible, and major liver resection, such as right and left
hepatectomy, has been challenging procedures. With encouraging postoperative outcomes after LLR,
there have been pioneering attempts to apply this procedure to more difficult cases. Therefore, LLR
including major resection is more frequently performed recently. Previous limitation of laparoscopic
approach to posterior and superior parts of the liver has been overcome with recent accumulation
of experiences as well. Liver resection in the vicinity of major vascular structures, such as the
hilum, major hepatic veins and IVC, is still not indicated in laparoscopic procedure. However, with
the accumulation of the experiences, a dozen of cases, which are close to major vessels, have been
performed with laparoscopic liver resection. When we perform liver parenchymal resection close
to major vascular structures, there is high risk of injury to these vessels, which may cause massive
bleeding, even in open surgery. Laparoscopic surgery has similar risks of unwanted mishaps as in
open surgery, and furthermore, control of bleeding is more difficult due to limitation of freedom which
is inherent in laparoscopic procedure.
To minimize unwanted bleeding is performing anatomical liver resection as possible. In anatomical
liver resection, the liver parenchyma is straightly transected under the guidance of the ischemia
line after selective ligation of a portal pedicle supplying the section or segment where the tumor
is located. In several series, anatomical liver resection has been shown to be more advantageous in
performing parenchymal transection and reducing bleeding. In addition, it has theoretical advantages
of high survival outcomes after resection of HCC by eradicating all portion of liver supplied by portal
pedicles. However, anatomical liver resection except left lateral sectionectomy still remains difficult to
perform with laparoscopic procedure. Laparoscopic CUSA is useful in detecting important anatomical
structures and decreasing the risk of injury to these structures that is more likely to occur after
blind application of ultrasonic shears. In conclusion, the limitation of LLR for HCC will be overcome if
advanced techniques of LLR will be more widely applicable and more experiences will accumulate.
21
招待講演
Dr. Horacio Asbun
• Web link with his information: http://www.mayoclinic.org/bio/11143401.html
Medical School
University of Chile School of Medicine, Santiago, Chile
Residencies
Kern Medical Center (Bakersfield, CA), University of California, San Diego, CA
General Surgery, Hospital de La Santa Cruz y San Pablo, Autonomous University, Barcelona, Spain
Fellowships
Gastrointestinal, Hepatobiliary and Pancreas Surgery, Lahey Clinic Medical Center, Burlington, MA
Surgical Oncology, University of California, San Diego, CA
Certification
American Board of Surgery
Academic Rank
Professor of Surgery
Interests
• Solid organ surgeries: hepatobiliary and pancreas, adrenals, spleen, endocrine
• Gastrointestinal and bariatric procedures
• Minimally invasive surgery
Professional Highlights
• Chair, Global Affairs Task Force, Society of American Gastrointestinal Endoscopic Surgeons,
2009-present
• Editor-in-Chief, Multimedia Atlas of Surgery, American College of Surgeons, 2008-present
• Member, Board of Governors, Society of American Gastrointestinal Endoscopic Surgeons,
2006-present
• Chair, Committee on Video-Based Education, American College of Surgeons, 2004-2008
• Chair, Editorial Board Video Library, American College of Surgeons, 2003-2005
Publications
See a listing of publications on PubMed, a service of the National Library of medicine.
22
招待講演
Minimally Invasive Approach To Liver Surgery:
Current Status
Horacio J. Asbun, MD FACS
Mayo Clinic
Minimal access surgery of the liver is now well established in selected centers and has rapidly
evolved over the past five years.
All types of liver resection can be performed laparoscopically and the procedure is indicated
for both, benign and malignant processes. For minor resections of accessible lesions and for left
lateral sectionectomy, the laparoscopic approach should be considered standard practice. Major liver
resections through a laparoscopic approach are still reserved for experienced surgeons & centers.
Surgeons performing the procedure should be not only experienced in advanced laparoscopic
techniques but have had formal training and experience in liver surgery. Margins of resection and
ability to detect occult metastases are still a concern. However, intraoperative ultrasound is extremely
helpful and all surgeons performing laparoscopic liver surgery should also have experience in the use
of the laparoscopic ultrasound probe.
In a recent meta-analysis of the literature by Nguyen, Geller et al, 127 published series encompassing
about 3000 cases were reported. In this analysis, there were no differences in margin-free resections
between laparoscopic and open liver resection and no significant differences in overall survival in 13
studies between laparoscopic and open liver resection.
Multiple variations of the minimally invasive approach are being practiced in different countries:
totally laparoscopic, hand assisted and hybrid approach. The common denominator is that the minimal
access approach has major advantages over the open approach in the mobilization of the liver and
aids in its exposure. Experienced surgeons should be able to be familiarized with all of the techniques.
Conversion from one approach to another, or even conversion from a minimally invasive approach to
an open procedure should not be considered a complication. The goal is to maintain patient’s safety
and the quality of the procedure. Therefore, the type of procedure should always be tailored to each
patient & disease process and the different approaches should not be considered exclusive of each
other.
In this presentation, a summary of the current status of minimally invasive liver surgery will be
discussed with emphasis on outcomes and the studies published in the western literature, but with
mention of some of the studies from Asia. Technical aspects with particular mention of the advantages
of the laparoscopic approach will also be discussed.
23
一般演題
一般演題〈Session1〉
1-1
中小規模病院における完全腹腔鏡下肝切除導入
NTT 西日本九州病院 外科 1)、熊本大学 消化器外科 2)
富安真二朗 1)、岡部和利 1)、佐野 収 1)、山中 剛 1)、別府 透 2)、馬場秀夫 2)
< はじめに > 腹腔鏡下肝切除は部分切除と外側区域切除で保険収載され、機器の進歩や種々の手技的な工夫
もあり非常に広まっている。当院でも腹腔鏡補助下手術から今年に入り完全腹腔鏡下手術を導入した。
< 対象 >2008 年より腹腔鏡下肝切除を施行した 17 例。男女比 15:2、平均年齢 (51 ~ 85) 歳。原発性肝癌 15 例、
転移性肝癌 2 例。平均腫瘍径占拠部位は肝右葉 4 例、左葉 13 例。術前肝機能は肝障害度 A 15 例、B 2 例であり、
再肝切除は 1 例。
< 適応 > 腹腔鏡下手術の適応は腫瘍径 5cm 以下で外側区域以外では肝表にあり周囲組織への浸潤のないもの。
< 手術手技・結果 > 腹腔鏡補助下 (Hybrid) 法は、腹腔鏡下に授動を行い小開腹創から肝切除を 12 例に行った
(2010 年 5 月からは腹腔鏡下で肝切除も併施)。完全腹腔鏡下 (Pure-Lap) 法では、徐々に気腹圧を上げ 12cmHg
で、BiClamp® による前凝固後、肝実質の離断には CUSA を用い、出血が多い場合には Pringle 法を併施、残
存脈管やグリソン鞘はクリップもしくは自動縫合器を用い切離する方針として 5 例に施行した。原発性肝癌
において Hybrid 法と Pure-Lap 法を手術時間、出血量、術後 3 日目までの SIRS 率、術後 3 日目の CRP 値、術
後在院日数などを比較検討したが両群で差はなかった。
< まとめ >Hybrid 法と Pure-Lap 法では術式も様々で症例も少なく、現状では差を認めなかったが今後症例の
蓄積が必要と考えられた。中小規模病院でも Hybrid 法を経験し徐々に Pure-Lap 法への移行は可能であり、
当院での手技を供覧する。
1-2
大腸癌同時性肝転移に対して腹腔鏡補助下同時切除
術を施行した 16 例の検討
岩手医科大学 外科学講座
長谷川 康、新田浩幸、佐々木 章、片桐弘勝、板橋英教、藤田倫寛、伊藤直子、高原武志、高橋正浩、
若林 剛
【はじめに】我々は 1997 年より腹腔鏡 ( 補助 ) 下肝切除を導入し、2011 年 7 月まで 243 例行った。疾患は肝細胞
癌 79 例、転移性肝癌 107 例、その他 57 例と転移性肝癌が多く、大腸癌同時性肝転移に対しても同時切除を 16
例行った。当科における腹腔鏡補助下同時切除のビデオを供覧し、手術成績を報告する。
【対象と方法】大腸癌同時性肝転移に対して腹腔鏡補助下同時切除術を施行した 16 例について、術式・手術時
間・出血量・在院日数・合併症について検討した。
【結果】患者は平均 59.7 歳、男性 7 人、女性 9 人。原発巣は直腸 9 例、上行結腸 5 例、S 状結腸 1 例、横行結腸 1
例であり、術式は前方切除術 6 例、直腸切断術 2 例、ハルトマン手術 1 例、結腸右半切除術 4 例、回盲部切除
1 例、S 状結腸切除術 1 例、結腸亜全摘術 1 例であった。肝切除術式は、部分切除 9 例、右葉切除 2 例、外側区
域切除 2 例、拡大右葉切除 1 例、左葉切除 1 例、S5 亜区域切除 1 例であった。平均手術時間は 383 分、出血量
は 324ml、在院日数は 23 日であった。術後合併症を 2 例 ( 腹腔内膿瘍 1、創感染 1) に認めた。
【結論】大腸癌同時性肝転移に対する腹腔鏡補助下同時切除術は、安全に施行可能であった。速やかな社会復
帰、補助治療への移行が可能であり、有用な術式と考えられる。
26
一般演題〈Session1〉
1-3
大腸癌同時性肝右葉転移に対して腹腔鏡補助下肝切
除術を施行した 3 例
信州大学 消化器外科
古澤徳彦、横山隆秀、小林 聡、代田智樹、福島健太郎、北原弘恵、本山博章、清水 明、中田岳成、
宮川眞一
【目的】当科では大腸癌同時性肝転移症例に対して、原発巣と肝転移巣の一期的切除を原則としている。その
ため、従来の開腹手術、特に肝右葉への転移症例の手術創は広範であった。我々は 2010 年 4 月から腹腔鏡下
肝切除を導入し、大腸癌同時性肝右葉転移症例に対して 3 例の腹腔鏡補助下(HALS)肝切除術を経験したの
で報告する。
【適応】肝転移に対する腹腔鏡下肝切除の適応は、開腹肝切除可能な肝予備能を有し、肝表付近で部分切除が
可能な症例とし、S7,S8 病変の切除は HALS としている。
【手技】左半側臥位とし、下腹部正中に HALS 用 Lap Disk、臍上部にカメラポートを置く。剣状突起下に
10mm、右側腹部に 5mm ポートを挿入し肝右葉の授動を行う。肝切離は RFA にて前凝固を行い、CUSA と超
音波凝固切開装置を用いて行う。
【結果】
(症例 1)52 歳男性、直腸癌。肝転移 3 か所、S3・S7・S8(2-23mm)。肝切除手術時間 208 分、出血量 50ml。
(症例 2)67 歳男性、直腸癌。肝転移 2 か所、S5(11mm)、S7(22mm)。肝切除手術時間 182 分、出血量 10ml。
(症例 3)69 歳男性、S 状結腸癌。肝転移 3 か所、S5・S5/6・S7(6-8mm)。肝切除手術時間 179 分、出血量少量。
3 例とも肝切除に起因する術後合併症は認めなかった。
【結語】肝切除を HALS で行うことで、開腹手術に比して手術創の縮小が得られた。HALS は出血制御や RFA
穿刺時の微妙な操作を可能とし、S7,S8 病変の視野展開にも有用で、鏡視下手術の安全性向上に寄与すると思
われた。
1-4
胆嚢癌に対する腹腔鏡補助下肝 S4a+S5 切除術
徳島大学 外科
山田眞一郎、淺野間理仁、齋藤 裕、杉本光司、花岡 潤、池本哲也、森根裕二、居村 暁、
宇都宮 徹、島田光生
【目的】通常、早期胆嚢癌は腹腔鏡下胆嚢摘出術後の病理診断で最終的に診断されることが多い。一方、術前
画像診断で胆嚢癌が疑われる際の鏡視下手術の適応は controversial である。今回、腹腔鏡補助下肝切除術を
施行した、術前に胆嚢癌と診断した症例の短期成績を検討する。
【対象・方法】術前画像診断より胆嚢癌と診断し、腹腔鏡補助下肝 S4a+S5 切除およびリンパ節郭清を施行し
た 3 例。手術は腹腔鏡下に肝周囲の間膜を切離し授動した後、上腹部正中+肋弓下に小切開(10cm)を置き、
肝門部操作、リンパ節郭清、肝離断を行う。全例、肝外胆管切除は施行せず。術後観察期間は中央値 9 ヶ月
(6-21)
。
【結果】手術時間は平均 260 分(251-273 分)、術中出血量は 149ml(90-186ml)、リンパ節郭清個数は平均 4 個
であった。術後在院日数は平均 18 日(13-29 日)であった。術後早期の手術関連死亡や重篤な合併症は認めな
かった。また術後 6 ヶ月以内の局所再発も認めていない。
【まとめ】胆嚢癌に対する腹腔鏡補助下肝切除術は適切な症例選択により有用な治療選択肢となる可能性があ
る。
27
一般演題〈Session1〉
1-5
転移性肝癌に対する腹腔鏡下肝切除術
九州大学 消化器・総合外科
池上 徹、池田哲夫、調 憲、掛地吉弘、武冨紹信、吉住朋晴、大賀丈史、沖 英次、萱島寛人、
前原喜彦
(はじめに)今回、我々が施行している大腸癌からの転移性肝癌に対する腹腔鏡下肝切除の工夫とその手術成
績に関する報告を行う。
(対象)2010 年 4 月以降、九州大学消化器・総合外科にて施行した大腸癌肝転移に対する腹腔鏡(補助)下肝
切除 17 例を対象とした。
(手技)葉切除は腹腔鏡補助下にて、部分切除および外側・後区域切除には完全鏡視下肝切除(PLH)を行っ
ている。PLH における手技の工夫としては以下が挙げられる。①右側臥位~左半腹臥位までの体位変換によ
る視野展開。②ネオジウム磁石を用いて胆嚢を牽引することによる肝門部の視野展開。③プリングル法を加
えずに、EnSealTM と Water-dripping bipolor forceps による肝実質切離。④第 2 次分枝以降のグリソン枝の
ヘモロック TM 処理。これらによって、S7 や S8 を含む全ての肝表面の腫瘍と Glisson 一括処理可能な葉切除、
区域切除および S6, S5, S4a, S2, S3 の系統的切除が可能である。
(結果)2010 年 4 月以降 25 例の転移性肝癌に対する肝切除(n=23)の内、17 例で鏡視下肝切除を施行した。
そのうち腹腔鏡補助下は 2 例(右葉切除)、15 例は PLH であった。また、5 例で大腸切除と肝切除の同時切除
を鏡視下にて行った。腫瘍サイズおよび個数の中央値は 1 個および 1.8cm、手術時間および出血量の中央値は
365 分および 400ml であった。術後在院日数中央値は 10 日であった。
(まとめ)腹腔鏡下肝切除は転移性肝癌に対する外科治療において重要な治療手段となり得る。
28
一般演題〈Session2〉
2-1
腹腔鏡補助下に一期的に生体部分肝移植、付属器切
除を施行した 1 例
長崎大学大学院 移植・消化器外科
川原大輔、高槻光寿、曽山明彦、村岡いづみ、木下綾華、原 貴信、大野慎一郎、足立智彦、黒木 保、
江口 晋
当科では、これまで腹腔鏡補助下ハイブリッド手術による生体部分肝移植手術を導入、施行してきた。本法
を応用し、一期的に生体部分肝移植と卵巣腫瘍摘出術を行った 1 例を経験したので報告する。症例は 50 歳代
女性。C 型非代償性肝硬変(Child-Pugh 分類 11 点(C)、MELD score 20 点)、に対する生体肝移植目的に当
院紹介となった。CT にて、肝の萎縮、脾腫、腹水を認める以外に骨盤内に 8 × 6 cm 大の左卵巣腫瘍を認め
た。卵巣腫瘍に関しては、婦人科にて切除予後良好の境界悪性腫瘍を否定できず、左付属器切除手術適応と
判断された。そこで、腹腔鏡下左付属器切除を施行し、引き続き一期的に腹腔鏡補助下ハイブリッド手術に
よる生体肝移植手術を行うこととした。まず、婦人科にて臍上にカメラポート、左右側腹部にそれぞれ 5 mm
のポートを挿入し、腹腔鏡下左付属器切除を行ったのち、肝移植手術に移行した。上腹部正中切開 8cm で開
腹し、GelPort® を装着、気腹下 HALS にて婦人科手術で挿入したポートを用いて肝・脾を授動した。正中創
を 12cm まで延長し、直視下に脾摘、肝門部操作、肝静脈処理、肝全摘を行った。Implantation では、肝静脈
吻合、門脈吻合、肝動脈吻合、胆道再建を同創より直視下に行い手術を終了した。鏡視下手術を導入するこ
とで、今回のような重複疾患に対しても、上腹部正中切開による低侵襲かつ安全な手術が可能であった。
2-2
肝エキノコックス症に対する腹腔鏡下・補助下肝切
除術
北海道大学 消化器外科・一般外科
柿坂達彦、中西一彰、横尾英樹、蒲池浩文、敦賀陽介、佐藤直樹、神山俊哉
【背景】肝エキノコックス症は経口摂取された多包条虫の虫卵が小腸内で幼虫となり、経門脈的に肝に到達し
て病巣を形成する。肝病巣は悪性腫瘍に似た病態を示すため治療は手術治療が第一選択であり、病巣を完全
切除することで良好な予後が期待できる。近年の腹腔鏡下肝切除術の普及に伴い、肝エキノコックス症に対
して腹腔鏡下手術を導入した。【症例】当科では 2001 年 6 月から 2011 年 8 月までに 45 例の腹腔鏡下肝切除術
を行っており、そのうち肝エキノコックス症に対しては 7 例に施行した。術式は補助下左葉切除術 2 例、補
助下外側区切除術 1 例、補助下部分切除術 1 例、完全腹腔鏡下部分切除術 1 例、用手補助後区域切除術 2 例。
肝実質切離は pre-coagulation+ 超音波凝固切開装置を用いた。後区域に病巣を認めた 2 症例は、用手補助下
に肝を持ち上げることで切離面が展開しやすく、かつ切離方向をガイドすることが可能であり有用な方法で
あった。全症例とも断端陰性で病巣の完全切除が可能であった。手術時間 平均 258.0 ± 118.8 分、出血量 平均
153.6 ± 185.1ml で、他の疾患に対する腹腔鏡下肝切除術と比較し優位差を認めなかった。合併症は胆汁漏 1
例、門脈血栓 1 例を認めたが、保存的に軽快した。【考察】肝エキノコックス症は、癌と異なり良性疾患であ
るため部分切除も可能で、より低侵襲な術式を模索すべきである。大血管・胆管への浸潤を認めない場合は
腹腔鏡下肝切除術のよい適応であると考える。
29
一般演題〈Session2〉
2-3
腹腔鏡下外側区域切除を施行し診断しえた、HIV に
合併した FNH の一例
独立行政法人 国立病院機構 名古屋医療センター
田中晴祥、初野 剛、木下 満、長谷川和也、石原博雅、高野奈緒、下山理史、中山裕史、片岡政人、
近藤 建
【症例】41 歳男性。
【既往歴】起立性蛋白尿・A 型肝炎
【生活歴】海外渡航歴あり、輸血歴あり、飲酒なし、ヘテロセクシャル
【現病歴】2010 年秋頃より咳嗽出現したが、改善なく経過していた。2011 年 2 月下旬に帯状疱疹に罹患してい
る。3 月上旬に咳嗽悪化し、労作時呼吸困難が出現。近医受診し、抗生剤でも改善せず。カリニ肺炎と診断さ
れ、治療を開始されたが、その際に HIV 感染症が発覚した。カリニ肺炎は治癒したが、入院時に施行された
CT で肝左葉に腫瘍が認められており、HIV 感染症の治療及び、肝腫瘍の精査目的で当院に紹介受診となった。
【経過】CT では肝左葉に 5cm 大の比較的境界が明瞭な低吸収領域が認められており、動脈層で結節状に濃染
し、静脈層では周囲肝実質と同程度の造影効果となり、リング状の造影効果が認められた。単純 MRI では不
均一な低信号、T2 では淡い高信号、動脈層ではつよく造影され、平衡層では一部 wash out、肝細胞層でも
低信号と高信号が混在していた。造影エコーでは早期層で造影効果をつよく認め、クッパー層でも造影効果
が認められていた。腹部血管造影では血流豊富の腫瘍として確認された。いわゆる車輻様血管造影は確認で
きなかった。鑑別として、FNH、fibrolamellar hepatocellular carcinoma、カポジ肉腫、悪性リンパ腫などが
鑑別に挙げられたため、診断目的に腹腔鏡下外側区域切除述を施行したところ、FNH と診断された。ビデオ
を供覧して報告する。
2-4
縮小傾向を認めた肝細胞癌の 1 切除例
静岡県立総合病院 外科
高木 航、大場範行、大島健志、京田有介、西岡裕次郎、佐藤真輔、渡辺昌也、大端 考、高木正和、
伊関丈治
症例:50 歳代、男性、家族歴:特記すべき事なし。既往歴:高血圧、耳下腺腫瘍。現病歴:近医にて C 型慢性肝
炎にてフォロー中肝腫瘤あり当院消化器科紹介肝細胞癌の診断にて外科紹介となった。身体所見:特記すべき
事なし。
血液検査:Plts 7.2 万、PT 80%、Alb 4.1 g/dl、T.B. 0.9 mg/dl、AST/ALT 55/73 U/l、ICGr15 19.2 %、HBsAg ( - )、
HCVAb ( + )、CEA 8.7 ng/ml、AFP 7 ng/ml、PIVKA Ⅱ 23 mAU/ml、CA19-9 43 U/ml
画像:造影 CT にて肝 S6 に早期相で淡く染まり遅延相で染まり抜ける 1.5 cm の腫瘤を認め肝細胞癌と診断され
た。経過:外科紹介後術前検査として EOB-MRI(CT 検査より約 50 日後)を施行した。腫瘤は 1.2cm に縮小、
早期濃染ははっきりせず肝細胞相で軽度低信号をていした。このため経過観察とし、さらに 1 ヶ月半後に CT
検査施行、腫瘍は 9mm、早期相にて一部染まり遅延相で染まる抜ける部分を認めた。また胆嚢底部に壁肥厚
あり胆嚢腺筋腫症と診断された。縮小傾向はあるが active な肝細胞癌の存在を疑わせる所見もあるため手術の
方針とし、腹腔鏡下胆嚢摘除術、肝部分切除を施行、術後 7 日目に退院となった。病理結果は胆嚢腺筋腫症、
肝細胞癌の診断であった。考察:本症例では手術せず経過観察したり針生検、RFA 治療などの選択も考えられ
る。しかし腹腔鏡下肝切除は入院期間も短く、腫瘍の診断と治療の点からも最良の治療法と思われ今後 RFA
に変わる治療法になると思われた。
30
一般演題〈Session2〉
2-5
腹腔鏡下肝切除にて診断したピル内服患者に生じた
肝限局性結節性過形成 (FNH) の一例
都立墨東病院 外科
脊山泰治、梅北信孝、進藤潤一、西田正人、松田真樹、志田 大、真栄城 剛、宮本幸雄、井上 暁
【目的】肝細胞腺腫、肝限局性過形成結節 (FNH)、高分化型肝癌の鑑別診断は困難なことが多く、最終的には
病理検査で診断確定することが多い。今回我々は、ピル内服中の患者に生じた結節性病変に対し、腹腔鏡下
肝切除にて確定診断をした症例を経験したので報告する。【症例】43 歳、女性。3 年前から生理不順に対し低
容量ピルを内服していた。2011 年 4 月、エコーで肝腫瘤を指摘され紹介受診となった。肝腫瘍は 2 カ所あり、
S5 病変は肝外突出型、3.5cm 大、S8 病変は中肝静脈根部付近の肝実質内にあり 3.0cm 大であった。いずれも
造影 CT で早期濃染があり、後期相で iso-low であった。造影 MRI では EOB は辺縁に取込があり、SPIO は一
部取込を認めた。ピル内服に関連した肝細胞線種 (LCA) を第一に疑った。ピルを中断して経過観察も検討し
たが、本人切除であり、S5 病変は肝外突出型の富血性腫瘤で破裂のリスクもあることから、摘出生検にて病
理診断の方針とした。【結果】腹腔鏡下にて肝 S5 部分切除を施行した。肝シミュレーション画像を参照し、
肝離断にはマイクロターゼ、ソノサージを使用した。手術時間 2 時間 44 分、出血 82g であり術後は順調に経
過し、6 病日退院となった。病理検査では中心部に異常血管を伴う FNH と診断した。S8 肝腫瘤は現在経過観
察中である。
【結論】腹腔鏡下肝切除による摘出生検は良性疾患の確定診断の手段として有用であった。
31
一般演題〈Session3〉
3-1
当科における腹腔鏡下肝切除の現況および肝硬変合
併症例における鏡視下手術の有用性について
関西医科大学 外科
松島英之、石崎守彦、海堀昌樹、松井康輔、坂口達馬、權 雅憲
【目的】当院で施行した腹腔鏡下肝切除例の現況報告、肝硬変症例について開腹肝切除例と比較検討を行っ
た。【方法】2002 年から 2011 年 4 月までに施行した腹腔鏡下肝切除 18 例について検討した。高度肝硬変合併
症例、大腸癌同時切除例等についてビデオ供覧する。また同時期に施行し根治切除の得られた ICG-R15 値
35% 以上の肝硬変合併肝細胞癌肝切除例の開腹と鏡視下手術との臨床背景因子および短期成績について比較
検討を行った。【結果】全 18 例の背景因子は男女比 14:4、平均年齢 66.8 歳、ICG-R15 平均値 24.1(最大値 51.8)
と高値、平均腫瘍径 2.4cm、平均腫瘍数 1.1 個、平均手術時間 261 分、平均出血量 120ml、平均術後在院日数
10.6 日、合併症は全例認めず、無再発生存期間中央値 35.5 ヵ月、5 年生存率 71.4% であった。肝硬変症例にお
いても VIOsystem や Aquamantys を用いる事により合併症なく施行し得た。また大腸癌同時切除例において
は大腸外科医と連携しポート数を増やす事なく安全に同時切除を施行し得た。ICG-R15 値 35% 以上の肝硬変
症例の比較(開腹 8 例、鏡視下 6 例)においては、鏡視下群で有意に出血量が少なく術後在院日数も短かっ
た。【考察】腹腔鏡下肝切除術は開腹手術と比べ根治性・安全性においても劣っておらず、特にその低侵襲性
は肝硬変症例おいて有用と考えられた。また鏡視下手術の普及に伴い他臓器癌同時切除例が今後増加するも
のと思われ、症例を集積し検討する予定である。
3-2
当科における腹腔鏡下肝切除術の検討-開腹手術と
の比較
東京慈恵会医科大学 外科学講座 肝胆膵外科 1)、東京慈恵会医科大学 外科学講座 2)
北村博顕 1)、脇山茂樹 1)、三澤健之 1)、柴 浩明 1)、鈴木文武 1)、伊藤隆介 1)、後町武志 1)、二川康郎 1)、
石田祐一 1)、矢永勝彦 2)
【目的】当科における腹腔鏡下肝切除術と開腹下肝切除術を比較検討した。【対象】2008 年 3 月から 2011 年 7
月に当科で施行された腹腔鏡下肝切除術 7 例(LP 群)。対象は 2005 年 3 月から 2008 年 2 月に当科で施行され
た開腹下肝切除(肝部分切除又は肝外側区域切除)16 例(OP 群)。【方法】1)以下の因子について両群を比
較検討:年齢、性別、BMI、基礎肝疾患、術中出血量、手術時間、腫瘍最大径、術後合併症、術後在院日数、
経口摂取までの期間、術後白血球数(WBCmax)・AST 値(ASTmax)・CRP 値(CRPmax)の最高値。2)
両群を術式別に比較検討:S3 切除(各 3、3 例)、S5 切除(各 2、3 例)、及び外側区域切除(各 1、3 例)。【結果】1)
LP 群では OP 群に比し、有意に術中出血量が少なく(P<0.05)、WBCmax 及び ASTmax が高い傾向が認めら
れた。2)S3、S5、外側区域切除のそれぞれにおいて、LP 群で OP 群に比し術中出血量が少なく、WBCmax
及び ASTmax が高い傾向あり。OP 群の外側区域切除において合併症が 2 例(SSI、胃排出遅延)、在院日数が
長い傾向あり。
【まとめ】腹腔鏡下肝切除術ではデバイスの使用による出血量の減少は可能である反面、炎症
反応や切除部位周囲の組織障害が増大した。また、外側区域切除では腹腔鏡手術に比して開腹手術において
合併症や在院日数が長い傾向を認めた。
32
一般演題〈Session3〉
3-3
肝障害度 B の肝細胞癌における腹腔鏡下肝切除の意義
和歌山県立医科大学 第2外科
上野昌樹、谷 眞至、川井 学、速水晋也、重河嘉靖、廣野誠子、山上裕機
【はじめに】肝細胞癌は、肝障害度に応じて術式内容が決まる。特に、肝障害度 B 症例は、部分切除となるこ
とが多い。当科では、腹腔鏡(補助)下肝切除を、外側区域切除および S4 下 /5/6 亜区域(腫瘍径は 3cm 以
下に限る)の切除に適応してきた。今回、肝障害度 B の初発肝細胞癌症例に対象を限定し、当科での鏡視下
手術の適応条件を満たす、これまでの開腹手術症例を対照群とした matched case control study を行い、腹腔
鏡(補助)下肝切除の意義を検証した。【対象と方法】腹腔鏡下手術は、5 例であった(LH 群)。一方、2000
年以降で対照となる開腹手術は 11 例であった(OH 群)。臨床情報として、年齢・性別・背景肝疾患・術前血液
生化学検査・術式・手術時間・出血量・術後在院日数・術後合併症・無再発生存期間・生存期間を収集し、群間
比較を行う。
【結果】LH 群は高齢(中央値)であった [76、64 歳;LH、OH 群 ]。肝障害度を規定する項目に
差を認めなかった。手術時間に差を認めず、出血量(中央値)は LH 群で少なく [125ml、760ml;LH、OH 群 ]、
術後在院日数(中央値)も LH 群で短縮 [5、14 日;LH、OH 群 ] していた。術後合併症の頻度・無再発生存期間・
生存期間に差はなかった。【まとめ】周術期成績は LH 群の方が良好であり、かつ、治療後成績は同等であっ
たので、肝障害度 B における腹腔鏡下肝切除は有用であるといえる。しかし、少数例での解析なので、結果
は確定的ではなく、今後も症例の集積が必要である。
3-4
原発性肝癌に対する鏡視下肝切除の短期・長期成績
の検討
徳島大学 外科
居村 暁、山田眞一郎、淺野間理仁、齋藤 裕、杉本光司、花岡 潤、池本哲也、森根裕二、
宇都宮 徹、島田光生
【目的】肝細胞癌(HCC)、肝内胆管癌(IHCC)に対する腹腔鏡(補助)下肝切除術(LH)の短期・長期成
績を検討する。
【対象・方法】
(1)HCC:2007 年以降、LH 施行 23 例(LH 群)を同期間の開腹肝切除 23 例(OH 群)と成績を
比較した。Matched pair analysis:OH 群は LH 群と肝機能、腫瘍径、局在、術式をマッチさせた。両群とも
高度肝硬変、腫瘍径 >6cm、S1・S7 病変は除外した。(2)IHCC:10cm 以下の左肝に存在する腫瘍で血管浸潤、
LN 転移のない症例を適応とし、LH 群 4 例、OH 群 10 例で比較した。
【結果】
(1)LH 群の 1 例を除き全てが Child-Pugh A であった。手術時間は LH 群 288 分(194-411)、OH 群 322
分(159-470)と両群で差はなかった。術中出血量は LH 群 149ml(28-429)、OH 群 244ml(45-620)であり LH
群で有意に少なかった。術後在院日数は LH 群 15 日、OH 群 22 日であり LH 群で短かった。術後合併症率にお
いては両群間で差はなかった。累積生存率(OS)は LH 群 vs. OH 群で、1 年 96% vs. 91%、3 年 85% vs. 80%、
無再発生存率(DFS)は LH 群 vs. OH 群で、1 年 77% vs. 62%、3 年 71% vs. 58% であり両群間で生存率に差
は認めなかった。
(2)外側区域切除 3 例、左葉切除 1 例。出血量、手術時間など短期手術成績に差はなかった。生存率(5 年)
では OS が LH:75%、OH:30%、DFS が LH:37.5%、OH:20% と LH 群で良い傾向であった。
【まとめ】原発性肝癌に対する LH は短期・長期成績からみると有用な治療オプションとなりうる。
33
一般演題〈Session3〉
3-5
手術侵襲と長期予後からみた肝細胞癌に対する内視
鏡下肝切除の妥当性
熊本大学大学院 消化器外科
今井克憲、別府 透、近本 亮、岡部弘尚、林 洋光、新田英利、土居浩一、石河隆敏、高森啓史、
馬場秀夫
【目的】肝細胞癌に対する内視鏡肝切除の有用性を明らかにする。【対象と方法】1999 年~ 2010 年までに区域
切除以下の肝切除を行った 3cm・3 個以下、または 5cm 以下単発の肝細胞癌 246 例。(腹腔鏡下:LH 65 例、開
腹:OH 181 例)を対象とし、両群の背景因子、手術時間、出血量、赤血球輸血・凍結血漿投与頻度、術後合
併症、術後在院日数、累積無再発生存、累積生存を比較検討した。【結果】1. LH で女性が多く、平均腫瘍径
は LH/OH:2.2cm/2.8cm、平均腫瘍個数は 1.1 個 /1.3 個であった。年齢、肝障害度、肝炎の種類、腫瘍マー
カーに差はなかった。2. 平均手術時間は 304 分 /393 分、平均出血量は 209g/576g と LH で有意に低値であった。
3. MAP、FFP 投与頻度は 1.5%/6.6%、FFP4.5%/8.8% と差を認めなかった。4. 術後合併症発生率は 6%/18% と
LH で有意に低率で、LH での port-site 再発や播種性再発は皆無であった。5. 術後在院日数は 10 日 /14 日と LH
で有意に短期間であった。6. 5 年無再発生存率は 27%/26% と同等であり、5 年累積生存率は 83%/71% と両群
で極めて良好であった。【結語】肝細胞癌に対する内視鏡下肝切除は、症例を適正に選択すれば従来の開腹肝
切除と比較してより低侵襲で同等の根治性をもつ治療であり、積極的な臨床応用が望まれる。
34
一般演題〈Session4〉
4-1
当科における吊り上げ式腹腔鏡 ( 補助 ) 下肝切除
埼玉医科大学総合医療センター 肝胆膵外科・小児外科 1)、メディカルコート八戸西病院 2)
石田隆志 1)、赤松延久 1)、星野高伸 2)、辛 宣廣 1)、駒込昌彦 1)、小澤文明 1)、小高明雄 1)、橋本大定 1)
【緒言】気腹下での腹腔鏡下肝切除において、下大静脈や肝静脈が露出する場面では、gas embolism の問題
があり、gasless( 吊り上げ法ないし小切開補助下 ) で行うのが望ましいと言われている。当科では、鏡視下肝
切除においても吊り上げ法を改良し安全に施行している。今回、その具体的方法をビデオで共覧する。【手術
手技】当初、2 本の皮下鋼線による吊り上げ法 ( プレートリフティング ) で手術視野確保を行ってきた。2005
年以降は腹壁全層のみならず胸郭をも自在に牽引挙上できるように開発した多孔性プレートと一体化した腹
腔内に挿入されるコの字型鉤、多孔性アーチと、高さも調節可能な L 字バーを用いた方法 ( ベーブのリトラ
クターによるリフティング ) を使用し手術視野を確保した。肝臓を取り出すのに必要なサイズの皮切をおき、
そこからベーブのリトラクターを 2 本 V の字型に挿入挙上し視野展開している。これにより今まで吊り上げ
法では困難であるとされた胸郭が深い症例においても、横隔膜近傍まで十分な視野を得ることができた。ま
た、鉗子のシャフト部の屈曲を自在に変えられるよう開発した Twist 鉗子を使用し Pringle maneuver の施行
も容易にできた。肝離断の際出血してもガーゼの出し入れが自在で安全迅速に対処できた。これらの方法で
HCC9 例、転移性肝腫瘍 5 例、CCC1 例に対して手術を施行してきた。【結論】腹壁吊り上げ法で安全で侵襲の
少ない腹腔鏡 ( 補助 ) 下肝切除を施行したので報告する。
4-2
腹腔鏡下肝切除導入における内視鏡手術経験の意義
大阪大学大学院 消化器外科 1)、大阪大学大学院 周手術期管理学 2)
小林省吾 1)、和田浩志 1)、川本弘一 1)、丸橋 繁 1)、江口英利 1)、種村匡弘 1)、梅下浩司 2)、土岐祐一郎 1)、
森 正樹 1)、永野浩昭 1)
【背景】
教室では 1997 年より腹腔鏡手術手技を肝切除に導入した。原則として、術者は肝硬変合併肝切除 20 例の経験
を必要条件としている一方で、鏡視下手術の経験が少ない場合もあり、その場合、助手を内視鏡手術の経験
者とすることで対応してきた。今回、その内視鏡手術経験の意義と周術期因子に与える影響を評価した。
【方法】
2011 年 7 月までの腹腔鏡下肝切除 100 例を対象とし、先進医療受理 (2008 年 ) 前の初期の症例 17 例と、肝移植
片採取術 19 例を除外した。内視鏡手術経験を腹腔鏡下胆嚢摘出術 30 例以上とし、切除対象、出血量、手術時
間、合併症の変遷を評価した。
【結果】
期間内の術者は 6 名であった。内視鏡手術経験者は 2 名であり、先進医療受理以前に腹腔鏡下肝切除をそれぞ
れ 1 例ずつ経験しており、それ以後は術者として 18 例に対して腹腔鏡下肝切除を施行していた。一方で、非
内視鏡手術経験者 4 名は、46 例の腹腔鏡下肝切除を施行しており、初期の症例では、内視鏡手術経験者を助
手としていた。出血量/手術時間/合併症は新規術者でも極端に増加することはなく、術者と助手の違う組
み合わせでも殆ど変りはなかった。症例の経験に伴う腫瘍サイズの変化は殆どなかった。
【結語】
内視鏡外科手術経験の少ない肝胆膵外科医が術者でも、内視鏡外科を経験している外科医を助手とすること
で、肝切除に腹腔鏡手術手技を安全に導入することが可能であった。
35
一般演題〈Session4〉
4-3
肝硬変を背景として繰り返し発生する肝細胞癌患者の長期
生存を目指す治療体系の中における完全腹腔鏡下肝切除術
藤田保健衛生大学 坂文種報徳會病院 外科
守瀬善一、川辺則彦、梅本俊治、冨重博一、永田英俊、大島久徳、川瀬 仁、吉田梨恵
肝硬変合併肝細胞癌に対する肝切除術には、小範囲切除でも時に術後肝不全を併発する。異時性多中心性発
癌に対する対応が必要になる。などの問題点が存在する。肝硬変合併肝細胞癌症例の完全腹腔鏡下肝切除術
につき、これらの点から検討した。
肝硬変合併肝細胞癌症例の完全腹腔鏡下肝切除術を 23 例に施行した。内、ICG15 分値 40% 超高度肝硬変肝細
胞癌症例を 6 例経験した。高度肝障害例は腫瘍個数 1-2 個、径 13-44mm で、S2-8 表面の部分切除が施行された。
4-5 個のポートを挿入、肝授動脱転操作は行わず行い、手術時間中央値 232 分、出血量 83ml、周術期経過は中
軽度肝障害例と有意差を認めなかった。また、異時性多中心性発癌に対する術中焼灼療法と組み合わせた繰
り返し治療も可能であった。
高度肝硬変症例に対する完全腹腔鏡下肝切除術の特長は、開腹操作や剥離操作による側副血行路やリンパ行
路の破壊、肝の授動圧排操作による肝実質障害などが回避されることで腹水貯留を抑制し、術後重症肝不全
の契機となる合併症を抑制する点にある。また、肝硬変を背景とした異時性多中心性発癌に対しても、癒着
が少なく手術負荷が少ない完全腹腔鏡下肝切除術は繰り返し治療の可能性を拡大する可能性がある。
肝表面で、RFA の適応が難しい、数回の治療後に局所再発が認められたなどの高度肝障害例の治療や異時性
多中心性発癌に対する繰り返し治療として完全腹腔鏡下肝切除術はよい選択肢となると思われた。
4-4
腹腔鏡下肝切除術における気腹圧とガス塞栓に関す
る基礎的検討
がん・感染症センター都立駒込病院 肝胆膵外科
只野惣介、本田五郎、奥田雄紀浩、小林 信、倉田昌直、鶴田耕二
背景;腹腔鏡下肝切除術における重篤な合併症であるガス塞栓症の予防には、気腹圧を低く保つことが推奨
されているが、当施設では肝静脈からの出血のコントロールの為、しばしば気腹圧を上昇させている。
目的;ブタの腹腔鏡下肝切除術モデルを用い、気腹圧とガス塞栓症の関連性を検討した。
方法;左肝静脈末梢枝を切開し、気腹圧を 5mmHg から 25mmHg まで上昇させ、CVP、気道内圧、SpO2 を測
定した。心房内の air bubble の評価のために経食道 US 検査を行った。
結果;気腹により心房内に少量の air bubble が確認された。気腹圧 15mmHg で静脈切開部から内腔が観察さ
れたが、心房内 air bubble の量は若干増加する程度であった。また、気腹を中止した瞬間に最も air bubble の
量が増加したが、SpO2 の低下は認めず、ガス塞栓症は発症しなかった。
考察;腹腔鏡下肝切除術で、air bubble の混入は程度の差はあれ起こっていると考えられる。一方で、急激な
気腹圧の減圧に伴い、気道内圧が 40cmH2O から 20cmH2O まで下がっており、心房血液内の二酸化炭素が気
化した可能性がある。心房内 air bubble の発生には血管内への直接流入以外にもこのような圧格差の関与が
考えられた。
結論;実用的な気腹圧の範囲ではガス塞栓症は発症しなかった。圧格差等による臨床的意義の薄い心房内 air
bubble の発生と、肝静脈から air が直接流入するような異常事態とは分けて検討する必要があると考えられ
た。
36
一般演題〈Session4〉
4-5
ハイブリッド生体肝移植ドナー手術に関するアン
ケート調査
長崎大学大学院 移植・消化器外科
今村一歩、曽山明彦、高槻光寿、村岡いずみ、田中貴之、山口 泉、大野慎一郎、足立智彦、黒木 保、
江口 晋
【背景】当科ではより低侵襲な手術を目指し、肝移植ドナーに対しハイブリッド肝採取術を導入し、安全性
を担保し術後の QOL に配慮した手術を行っている。【目的】当科における肝移植ドナー肝採取術の手技を呈
示するとともに、部分肝提供術後の創の治癒経過、自覚症状を明らかにする。【手術手技】気腹下に上腹部
8cm 創にて HALS による肝授動を行い、その後左葉グラフト 10cm、右葉グラフト 12cm の上腹部正中切開創
より、直視下に血管処理、hanging maneuver、two-surgeon technique を用い肝切離・採取を行う。【創に関
するアンケート】術後の創に関する評価として手術切開創により A 群(メルセデス・ベンツ切開 46 例)、B 群
(右季肋下切開+正中切開 33 例)、C 群(上腹部正中切開 10 例)に分類しアンケートを施行した。回答数:147
例中 89 例(60.5%)。
『術前予想より創部の長さが短い』と感じた人は上腹部正中切開群において割合が高く
(p=0.03)
、しびれ感については A,B 各群では 28%、33%認めたが C 群では 1 例(11%)を認めるのみ。取り
にくい姿勢の有無(p=0.03)に有意差あり。【考察】ハイブリッド肝採取術は種々の工夫を行うことで上腹部
正中切開から良好な視野を確保でき安全に施行できる術式である。季肋下切開の症例と比較すると、しびれ
や姿勢の取りにくさなどの症状が少なく術後 QOL をより良好に保つ可能性がある。
37
一般演題〈Session5〉
5-1
Biclamp と Enseal を用いた完全腹腔鏡下肝切除術
福岡市民病院 外科
内山秀昭、伊藤心二、東 貴寛、川中博文、江頭明典、立石雅宏、枝川 愛、是永大輔、竹中賢治
【目的】完全腹腔鏡下肝切除においては、出血の際の用手圧迫が困難なこと、プリングル法などの流入血行遮
断が困難なことから、肝切離の際に確実な止血を必要とする。腹腔鏡下の肝切離に用いられる器具としては
多くのものが報告されているが、それぞれに長所、短所が存在する。2 種類の vessel sealing device (Biclamp
および Enseal) を完全腹腔鏡下肝切除に導入したので、その有用性を検討した。【方法】2011 年 4 月から
Biclamp および Enseal を用いた完全腹腔鏡下肝切除術を 5 例に施行した。男女比は 4:1、年齢は 74 ± 10 歳、疾
患は肝細胞癌 4 例、直腸癌肝転移 1 例で、腫瘍径は 2.0 ± 0.3cm、腫瘍の局在は S3 が 1 例、S4 が 2 例、S6 が 2 例
であった。2 例が進行肝硬変症例であった。通常の CO2 気腹で 3 - 4 ポートを用いて手術を行った。切除肝の
摘出はカメラポートの創を延長させることにより行った。【成績】手術時間は 131 ± 27 分、術中出血量は 84
± 76g、術後在院日数は 9.2 ± 2.1 日であった。合併症は 1 例も認められなかった。Biclamp は肝硬変の肝臓も
徐々に圧挫しながら sealing が可能で、Enseal は肝切離の際に出現するグリソン鞘を確実に sealing しながら
切離することが可能であった。【結論】2 種類の vessel sealing device を用いることにより、相互の欠点を補
うことが可能で、安全に完全腹腔鏡下肝切除術が施行可能であった。
5-2
腹腔鏡下肝部分切除におけるラプラタイ ® とエンド
クローズ TM を用いた視野展開の工夫
東京医科歯科大学 肝胆膵外科
伴 大輔、藍原有弘、落合高徳、入江 工、工藤 篤、中村典明、田中真二、有井滋樹
【背景】腹腔鏡下の肝切除では鉗子の動きに制限があり、開腹手術と同様の肝切離を行うことは困難な点が多
い。これは器械の動きはポートを支点とする直線的な方向に制限されることと、肝臓を視野の中で授動する
自由度が低いため、肝切離面との方向調整しにくいことが一つの原因である。
【方法】腹腔鏡下における肝実質を牽引し授動する自由度をより拡げるために、切除肝と残肝の離断ラインの
両端の肝実質に支持糸をかける。3-0 モノフィラメント非吸収糸の端側にラプラタイ ® をかけて予め準備して
おいて、肝実質に Z 縫合をかけた後、糸を 2 本まとめてラプラタイ ® をかける。エンドクローズ TM を牽引の方
向を考慮して適切な場所に挿入し、先端のフックでラプラタイ ® を引っかけて牽引する。
【結果】現在までに 4 例、この方法を用いて肝切離を行った。肝臓を牽引するベクトルを増やすことによっ
て、意図した離断面の展開が容易に行うことができた。実際のビデオを供覧する。
【結語】ラプラタイ ® とエンドクローズ TM を用いた肝実質牽引は視野展開に有用であった。
38
一般演題〈Session5〉
5-3
新規臓器圧排用器具エンドラクターの腹腔鏡下肝切
除術における有用性
神戸大学 肝胆膵外科
土田 忍、福本 巧、楠 信也、木戸正浩、高橋応典、田中基文、蔵満 薫、中馬正志、福島健司、
具 英成
【目的】我々は鏡視下手術における臓器圧排用器具としてエンドラクター ® を開発し、直腸手術等の際の小腸
排除に有用と報告してきた。市販後、その適応範囲は拡大している。今回、エンドラクター ® を腹腔鏡下肝
切除術の視野展開、腸管排除および肝臓把持に用い、有用と考えられたので最近経験した 2 例目の状況も合
わせ報告する。
【方法】症例は 70 才台、女性。肝 S3 の門脈臍部近傍に存在する径約 2cm の原発性肝細胞癌を認めた。肝外側
区域を周囲間膜から剥離する際に胃や結腸が視野の障害となりそれら臓器の損傷が危惧された。胃の前面に
24cm、結腸脾弯曲部に 5cm のエンドラクター ® を配置し、臓器保護および視野展開を試みた。また 2cm ある
いは 3cm のエンドラクター ® を介して鉗子で肝を圧排、把持、牽引が可能かも検証した。
【結果】エンドラクター ® を配置することで肝下面と胃前面との間に充分な距離が確保でき安全に間膜剥離が
可能で視野も確保できた。実質離断は CUSA を用いて行ったがエンドラクター ® を介して肝を圧排・把持・牽
引することで CUSA の操作軸に切離線を合わせることが容易で滑らかな離断面が得られた。術中出血量は少
量のみで他臓器損傷などの合併症はなかった。
【結論】エンドラクター ® は腹腔鏡下肝切除術においても臓器の圧排・把持・牽引が安全に施行可能な有用な
器具であると考えられた。
5-4
Virtual endoscopy を用いた腹腔鏡下肝切除術
昭和大学 消化器・一般外科
青木武士、村上雅彦、榎並延太、小池礼子、藤森 聡、伊達博三、渡辺 誠、大塚耕司、加藤貴史
【背景】肝手術においては、解剖学的破格も多岐にわたり、副損傷のリスクが高いため、術中に手術前に撮影
された医用画像を参照してナビゲーションに用いたいという臨床的ニーズは高い。教室では、術前に virtual
endoscopy (VE) を導入することでより安全な低侵襲手術を実現している。
【方法】胸腔鏡下肝切除 6 例 , 腹腔鏡下肝切除 12 例を対象とし、術前造影 CT 画像を撮影し、SYNAPSE
VINCENT ( 富士フィルムメディカル ) を用い VE を施行した。また術中 Dicom data を iPad に転送し、術中ナ
ビゲーションとして使用した。
【成績】VE 導入により症例に応じたポート位置同定・腫瘍と脈管との関係を endoscopy の視点で術前仮想手
術体験が可能であった。胸腔鏡下肝切除においては、肋骨による鉗子可動域制限を勘案し、最適なポート位
置を決定した。腹腔鏡下手術症例においては、鉗子の操作可動範囲を予測・計測することで、適切なポート
挿入位置を確認できた。術中所見と VE 画像を同期させてみる事で腫瘍、ランドマークとなる肝局所解剖を
把握するのに役立った。
【結論】VE 導入により術前・術中シミュレーションの精度が高まり、VE はより安全な手術を遂行するための
有用なツールになると考えられた。今後簡便な操作性を兼ね備えた手術支援システムの確立により、腹腔鏡
下肝切除はより安全で低侵襲性の高度手術が期待できると思われる。
39
一般演題〈Session5〉
5-5
da Vinci S System を用いたロボット肝切除術 15 例
の経験
藤田保健衛生大学 肝脾外科 1)、藤田保健衛生大学 上部消化管外科 2)
加藤悠太郎 1)、棚橋義直 1)、吉田淳一 1)、香川 幹 1)、竹浦千夏 1)、所 隆昌 1)、杉岡 篤 1)、宇山一朗 2)
【緒言】da Vinci S System を用いたロボット肝切除は通常の腹腔鏡下肝切除の限界を克服する可能性がある。
2009 年 12 月~ 2011 年 6 月に行ったロボット肝切除 15 例の経験を報告し、その利点を考察する。【症例と術
式】症例の内訳は大腸癌肝転移 6 例、肝細胞癌(HCC)8 例、肝原発リンパ増殖性肉芽腫症 1 例。切除腫瘍占
拠部位・個数は S1 1 個、S2 1 個、S3 2 個、S2/3 1 個、S5 3 個、S6 3 個、S7 4 個、S8 3 個で、腫瘍径は 0.8cm
~ 13.0cm(平均 2.8cm)であった。術式は 10 例に肝部分切除、2 例に肝外側区域切除、2 例に肝後区域切除を
行った。4 例に他術式を併施し、うち 1 例に回盲部切除(大腸癌同時性肝転移症例での原発巣切除)、1 例に
Hassab 手術(胃静脈瘤、脾機能亢進症合併肝細胞癌)、2 例に MCT を行った。肝外側区域切除ではアランチ
ウス板および G2+3 を確保して G2, G3 を個別に確保した後に各々切断した。肝後区域切除では胆嚢板胆摘に
続いて後区域グリソンを確保し、これを切断した。【結果】出血量は平均 871g、手術時間は平均 8 時間 36 分。
全例合併症無く、術後 9 日~ 26 日で退院し、術後 3 か月~ 18 か月の現在、全例生存中。解剖学的切除におけ
る肝門からのグリソン一括確保では自由度の高い鉗子操作が極めて有用であった。【結語】ロボット肝切除は
腹腔鏡下肝切除の限界を克服し、低侵襲性と安全性をさらに向上させる可能性がある。特に肝切離面での縫
合・結紮による止血や系統的肝切除におけるグリソン一括処理において有利である。
40
一般演題〈Session6〉
6-1
大腸癌肝転移に対して完全腹腔鏡下肝右葉切除を施
行した 1 例
KKR 斗南病院
海老原裕磨、サシームパウデル、才川大介、小野田貴信、佐々木剛志、川原田 陽、北城秀司、
奥芝俊一、加藤紘之
【はじめに】近年、新規抗がん剤の普及などにより、集学治療の一環として大腸癌肝転移に対する外科治療の
重要性が高まってきている。化学療法を継続する患者には低侵襲手術が望まれ、腹腔鏡下肝切除術は一つの
方向性であると考えられる。今回、大腸癌肝転移症例に対し、化学療法施行後に腹腔鏡下大腸切除ならびに
腹腔鏡下肝右葉切除術を施行した 1 例を経験したので報告する。【症例】60 歳代の女性。S 状結腸癌多発肝転移、
肺転移の診断にて当院腫瘍内科にて、FOLFIRI+Avastin のレジメンにて化学療法施行。S 状結腸癌、肝転移
は PR、肺転移は CR であり、平成 22 年 11 月腹腔鏡下 S 状結腸切除術を施行。同年 12 月に腹腔鏡下肝右葉切除
+ S2 部分切除術を施行した。【手術】開脚左半側臥位、5 ポートにて施行。肝門処理を先行し、右肝動脈、右
門脈枝の処理を行った後、肝切除を施行。右胆管は、肝切除の途中にやや肝側にて肝実質ごと切離した。臍
部ポート創を開大し、標本を摘出した。【成績】手術時間 346 分出血量 150g。術後経過良好にて術後第 10 日
目に退院となり、術後第 14 日目より化学療法を再開した。【結語】大腸癌肝転移症例において、化学療法を
継続する患者には大腸手術はもとより肝切除術においても早期化学療法の再開という点において腹腔鏡手術
は有用であると考えられる。また、手技の習熟により完全腹腔鏡手術による肝切除も可能と考えられる。
6-2
S7 の転移性肝癌に対する腹腔鏡下肝部分切除術
都立駒込病院 肝胆膵外科
奥田雄紀浩、本田五郎、倉田昌直、小林 信
【はじめに】当院では、視野確保や鉗子操作の比較的困難な肝の頭側・背側に存在する病変に対しても積極的
に腹腔鏡下肝切除術を行っている。今回、S7 の転移性肝癌に対して行った手技を供覧する。【症例】50 歳代、
男性。S 状結腸癌術後の CT で S7 の肝表直下に 18mm 大の腫瘤を指摘された。肝炎の既往はなく、肝硬変を
疑わせる所見も認めなかった。単発の転移性肝癌の診断で腹腔鏡下肝部分切除術を施行した。左半側臥位・
開脚位、6 ポートで手術を開始した。肝鎌状間膜を切離して右肝静脈を露出した後、尾側から肝腎間膜と右副
腎を剥離し下大静脈を露出した。十分な授動により病変を術野内に確保し術中エコーで腫瘍からの margin を
確保するように切離予定線を設定した。Pringle 手技下に CUSA で肝実質切離を行い、切離開始後は切除側の
牽引と手前側の肝実質の圧迫により奥側の術野を確保した。手術時間 208 分、出血量 210g、断端は陰性で術
後合併症は認めなかった。【考察】肝の頭側・背側に存在する病変であっても正常肝で肝表に病変が存在する
症例では、十分な肝の授動により通常の肝離断手技を用いて安全かつ確実な腹腔鏡下肝部分切除が可能であ
る。
41
一般演題〈Session6〉
6-3
直腸・S 状結腸癌の同時性肝転移に対し腹腔鏡下に
同時切除した 4 例
東京女子医科大学 消化器外科
高橋 豊、片桐 聡、有泉俊一、小寺由人、大森亜紀子、加藤孝章、米田五大、江川裕人、山本雅一
【はじめに】2010 年 4 月より腹腔鏡下肝切除術は一部保険収載され、症例数、施行施設ともに増加し適応も
拡大される傾向にある。当院では腹腔鏡下肝切除を 2005 年 10 月に導入し、現在まで転移性肝癌に対しては
22 例経験している。今回、我々は直腸・S 状結腸癌と肝転移の同時切除を施行した 4 例を経験したので報告す
る。
【症例】年齢 40 ~ 71 歳、男性 3 例:女性 1 例、肝転移は S3φ4cm、S2φ3cm、S7φ2cm、S5φ1.5cm であった。
術式は低位前方切除術に加え外側区域切除 1 例、部分切除 3 例であった。出血量は平均 35.8ml(13 ~ 70)、手
術時間は平均 320min(229 ~ 387)、肝切除時間は平均 140min(116 ~ 173)であった。術後平均在院日数は
12.5 日(8 ~ 18)であった。手術は低位前方切除を先行し、5 ポート + 左側腹に 4cm の小切開で施行し prxD3
郭清を行った。肝切除は小切開創をマルチフラップゲイトで閉鎖し上腹部 2 ~ 3 ポート追加し行った。部分
切除の肝実質切離は主に Bipolar と LCS を用い、外側区域切除では CUSA を併用している。
【まとめ】いずれの症例もポート挿入位置を工夫することにより、安全に腹腔鏡下で同時切除を施行できた。
直腸・S 状結腸癌の肝転移に対する同時切除は上下腹部にわたる手術であり、腹腔鏡手術によるメリットが高
いと考えられる。ビデオを供覧し実際の手技を説明する。
6-4
重症慢性閉塞性肺疾患を伴った開腹肝切除後再発肝細胞
癌に対して腹腔鏡下外側区域切除が有用であった 1 例
東邦大学医療センター大森病院 消化器センター 外科
久保田喜久、大塚由一郎、田村 晃、石井 淳、前田徹也、片桐敏雄、鏡 哲、金子弘真
症例は 75 歳、男性。13 年前に肝細胞癌にて開腹下 S5 亜区域切除を施行し T2N0M0 Stage Ⅱであった。今回、
S3 に 2.3cm 大の再発肝癌に対し手術目的にて入院した。術前 ICGR15 値は 15%、肝障害度 B であった。既往
に慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有し、睡眠時無呼吸症候群のため CPAP を行っており、呼吸機能検査では
%FEV1 は 36.4% で COPD Ⅲ期であった。上腹部には前回の開腹創(Chevron incision)を認めていたが、術
前超音波検査による腹腔内癒着評価では気腹は可能と判断したため腹腔鏡下手術を施行した。癒着が無いと
予想された領域より first trocar を挿入し癒着を剥離後、完全腹腔鏡下外側区域切除を施行、切除肝は既往術
創を利用し摘出した。術中の呼吸状態は問題なく、一般病棟へ帰室直後より CPAP を開始した。第 1 病日よ
り単独歩行が可能で経口摂取も開始した。また日中の呼吸状態も良好であり、従来どおり CPAP は就寝時の
みとした。以後合併症なく第 8 病日に退院となった。退院後、本人へアンケート調査を行ったが、前回の手
術と比べ、痛み 2/10 程度で、創痛による呼吸困難は自覚なく、離床は円滑に可能で、退院翌日には 1 万歩の
ウォーキングが可能であったとの回答を得た。外側区域切除は腹腔鏡下肝切除の中でも最も定型化された術
式のひとつであり安全に施行できる。本症例のごとく、重度 COPD 併存例であっても全身麻酔が可能で厳格
な周術期呼吸管理がなされれば、その低侵襲性は損なわれないと考える。
42
一般演題〈Session6〉
6-5
腹腔鏡補助下肝切除後の再肝切除症例 2 例の検討
~腹腔内癒着の程度は?
京都大学 肝胆膵移植外科
西田久史、波多野悦朗、冨山浩司、成田匡大、石井隆道、田浦康二郎、小倉靖弘、上本伸二
【はじめに】2010 年に保険収載された腹腔鏡下肝切除術はその低侵襲性と教育的効果から各施設で次々と導入
されている。腹腔鏡(補助)下肝切除後の再開腹症例において腹腔内癒着の程度は比較的軽度と予想される
ものの、実際それに関する報告は少なく不明である。【対象】2002 年以降これまで当科で経験した腹腔鏡下肝
切除は 72 例で、そのうち、2 例で腹腔鏡補助下に再肝切除を施行。【ビデオ供覧 1】70 歳代、女性。肺癌術後
肝転移の診断で約 1 年前に腹腔鏡補助下肝 S5 部分切除施行歴があり、今回、肝転移再発の診断で腹腔鏡補助
下肝右葉切除術を施行。腹腔鏡下に肝と大網の癒着を剥離後、転移巣と横隔膜の癒着剥離時の出血制御が困
難となった時点で開腹移行。【ビデオ症例 2】70 歳代、男性。HCC の診断で約 5 年前と 3 年前に各々腹腔鏡下
肝 S6、S2 部分切除施行歴があり、今回、HCC 再発の診断で腹腔鏡補助下肝左葉切除術を施行。同様に腹腔
鏡下に肝と大網の癒着を剥離した後、開腹直視下に肝切離を継続。【まとめ】今回検討した腹腔鏡下再肝切除
2 例において前回手術の創部・肝切離面に大網や腸管の癒着は開腹肝切除と同様に認めるものの、その癒着剥
離は腹腔鏡下に充分可能であった。症例はまだまだ少ないものの、腹腔鏡(補助)下肝切除後の腹腔内癒着
は腹腔鏡下に良好な視野を確保することができれば、術者と助手の協調作業により癒着剥離は充分可能であ
ると考えられた。
6-6
当科における再肝切除症例に対する腹腔鏡下手術
札幌医科大学 第一外科
川本雅樹、水口 徹、目黒 誠、中村幸雄、太田盛道、平田公一
肝細胞癌に対する肝切除は、その腫瘍学的特性から再発率が非常に高く、再肝切除を必要とする症例が非常
に多いことは周知の事実である。そこで脱転操作や離断面の癒着の程度は、手術を安全に施行する上で重要
な要素となる。腹腔鏡下肝切除術はその癒着の少なさから、再肝切除に適していると考えられる。当科にお
ける再肝切除症例に対する腹腔鏡下手術についてビデオ供覧させていただく。症例 1:57 歳男性。肝細胞癌に
対して腹腔鏡補助下肝 S4・S6 部分切除術を施行、1 年 6 か月後に肝外側区域に再発を認め、腹腔鏡下肝 S2 部
分切除術を施行した。初回手術後に著明な腹水貯留を認めたため、今回癒着は軽微なものであったことから、
若干の癒着剥離を行うのみで手術を施行し得た。症例 2:68 歳女性。肝細胞癌に対して腹腔鏡下肝 S8 部分切
除術を施行、6 か月後に肝 S2 表面に再発を認め、腹腔鏡下肝 S2 部分切除術を施行した。創部を含めて、腹腔
内の癒着はほとんど認めなかった。肝機能不良症例はその侵襲の少なさから腹腔鏡手術は良い適応であると
考えられるが、術後腹水貯留により癒着が少ないことから、再肝切除時においても術式選択として考慮する
べきであると考えられた。ただし、いずれの症例も右葉系手術後の外側区域の再発であり、Pringle 操作を行
うことなく離断可能な症例であったことから、近接した部位の再肝切除については今後さらなる症例の経験
が必要と思われる。
43
一般演題〈Session7〉
7-1
当センターでの腹腔鏡下肝切除術の現況
昭和大学横浜市北部病院 消化器センター
春日井 尚、田中淳一、木田裕之、出口義雄、工藤進英
【はじめに】当センターでこれまでに施行した鏡視下肝切除 42 例 51 病変の成績を示す。【成績】術式は部分切
除 42 例 (HALS(H)5、腹腔鏡補助下 (A)15、完全鏡視下 (P)22)、外側区域切除 6 例 (A1、P5)、左葉切除 1 例 (A)、
右葉切除 2 例 (A1、P1) であった。2009 年以降の完全鏡視下率は 62.8%(22/35) で、2 度鏡視下肝切除を行った
症例も 2 例あった。疾患の内訳は転移性肝腫瘍 34、HCC14、血管腫、FNH、肝内結石症が各 1 であった。部
分切除の平均腫瘍径、手術時間、出血量、術後在院日数は 2.2(0.4-5)cm、197(53-441) 分、275.9(0-830)ml、9.8(434) 日であり、S7,0%(0/6)、S8,25%(2/8) で完全鏡視下率が低かった。外側区域切除、左葉切除、右葉切除では
各々手術時間 ( 分 )321(194-398)、393、765(670-859)、出血量 (ml)344(65-673)、1251、2395(1450-3341) 術後在院日
数 ( 日 )9.8(8-14)、30、10.5(10-11) であった。部分切除、左葉切除で胆汁漏を 1 例ずつ認めたが保存的に改善した。
いずれの症例も流入血遮断は行わず、肝離断は主に TissueLink やバイクランプなどのソフト凝固装置を用い
行った。
【結語】経験症例数の増加とともに完全鏡視下、系統的切除の症例も増加してきた。肝悪性腫瘍は再
切除の機会も多く、今後鏡視下肝切除は polysurgery を容易にする手段として重要性が増すと考えられた。
7-2
肝機能不良例、多発肝転移症例に対する腹腔鏡(補
助)下肝切除術の妥当性
横浜市立大学 消化器・腫瘍外科学
野尻和典、田中邦哉、上田倫夫、武田和永、杉田光隆、松山隆生、谷口浩一、熊本宜文、森 隆太郎、
遠藤 格
【目的】肝機能不良例、多発肝転移例に対する腹腔鏡(補助)下肝切除の妥当性について周術期および遠隔成
績から検討する。
【対象と方法】2011 年 8 月までに当科で施行した腹腔鏡(補助)下肝切除 62 例を対象とした。①肝細胞癌 33
例を ICG15 分値が 15% 未満の肝機能良好群(L 群;n= 22)と 15% 以上の不良群(H 群;n= 11)の 2 群に分
け、臨床因子、長期予後を比較し、また②転移性肝癌 20 例を単発群(S 群;n= 14)と多発群(M 群;n= 6)
に分け同様に比較検討した。
【結果】①肝細胞癌の L 群と H 群で手術時間(327 分 vs 309 分 ; p=0.64)、出血量(560ml vs 566ml ; p= 0.98)、
合併症発生率(2 例(9.1%)vs 0% ; p= 0.54)、在院日数(9 日 vs 8 日 ; p= 0.77)に差は認めなかった。長期
予後は、他病死(慢性閉塞性肺疾患)1 例を除き全例無再発生存中であった。②転移性肝癌の S 群と M 群で手
術時間(260 分 vs 393 分 ; p=0.10)、出血量(210ml vs 424ml ; p= 0.26)、合併症発生率(0% vs 1 例(16.7%);
p= 0.30)
、在院日数(7 日 vs 8 日 ; p= 0.38)に差を認めなかった。S 群 2 例(10.0%)に肝外再発による癌死
を認めたが M 群は全例生存中である。【結語】肝機能不良例、多発転移例に対する鏡視下切除の短期成績は
良好であり、治療アプローチとして妥当である。一方、長期予後に関しては今後症例集積による検討が必要
である。
44
一般演題〈Session7〉
7-3
当科における腹腔鏡下肝切除の現況
大阪医科大学 一般・消化器外科
廣川文鋭、林 道廣、宮本好晴、朝隈光弘、米田浩二、井上善博、内山和久
腹腔鏡下肝切除は、2010 年 4 月に保険収載された以降、増加の一途をたどっている。当科においても、2009
年から補助下手術、2010 年からは完全腹腔鏡下手術を積極的に取り入れ、現在までに、HALS 3 例、補助下
33 例、完全腹腔鏡下 39 例 ( 部分切除 30 例、外側区域 7 例、後区域 2 例 ) の計 75 例に対して行ってきた。なかで
も、肝外側区域切除においては切離線が直線的であり、開腹肝切除と同様な Glisson 鞘や肝静脈の露出にこだ
わらなければ、自動縫合器を用いることで、簡略化・定型化された術式になったと考えられた。また、切離
ラインが直線的であれば、より整容性に優れた単孔式での肝切除も問題なく行えるようになった。しかし、
一方で S7 から S8 にかけての部分切除の場合は、術野の展開や切離方向が接線上となり難渋することが多く、
脱転だけを腹腔鏡下で行い、切離は小切開創から行う補助下手術が中心であるのが当科の現状である。
今回我々は、腹腔鏡下 ( 単孔式 ) 外側区域切除と S7/S8 部分切除における CUSA や soft 凝固システムを用いた
深部の切離止血のビデオを供覧し工夫を述べる。
7-4
肝癌治療のための確実で安全な完全腹腔鏡下肝切除
の工夫
九州大学 消化器・総合外科
(第二外科)1)、大分県立病院 2)
池田哲夫 1)、森田和豊 1)、橋本直隆 1)、萱島寛人 1)、増田捻郎 1)、米村祐輔 2)、池上 徹 1)、武冨紹信 1)、
調 憲 1)、前原喜彦 1)
[ 背景 ] 肝癌治療として腹腔鏡下肝切除は急速に普及して来たが、その適応は、肝下縁と外側区域に存在する
腫瘍に限定されている。[ 目的 ] 腹腔鏡下肝切除の技術的な改善により癌治療として安全で確実な切除方法を
検討する。[ 対象 ]94 年 11 月~ 11 年 8 月までに 2 施設で行った腹腔鏡下肝切除 111 例。[ 現在の術式の工夫 ] ①
切除部位により右側臥位~左半腹臥位までの体位変換。② Neodymium magnet の coupling techinique による
肝臓の牽引。③ EnSealTM と Water-dripping bipolor forceps による肝実質切離。④ Hem-o-lokTM での脈管
の個別処理。を基本とし、Pringle maneuver、Pre-coagulation、End Stapler による切離は行わない。[結果]
系統的切除が可能となり、2010 年 1 月以降 126 例 ( 肝細胞癌 84、転移性肝癌 27、胆管癌 7、その他 8) の肝切除
術のうち 50 例 (40%) で腹腔鏡下肝切除を施行し手術時間 (min) 258 ± 164 : 337 ± 123、出血量 (g) 362 ± 768 :
666 ± 1022、術後在院日数 9.3 ± 2.5 : 19.7 ± 12 ( 腹腔鏡:開腹 平均± SD) において腹腔鏡下手術が上回る結
果であった。[ まとめ ] 術式の工夫により、完全腹腔鏡下肝切除は肝癌治療の重要な治療手段となり得る。
45
一般演題〈Session7〉
7-5
右葉系の完全腹腔鏡下系統的肝切除術の有用性と問
題点
大阪市立総合医療センター 肝胆膵外科
金沢景繁、塚本忠司、清水貞利、高台真太郎、山添定明、大平 豪
【はじめに】腹腔鏡下肝切除は、手術機器の進歩と手術術式の定型化により、部分切除から系統切除へと適応
拡大してきた。また腹腔鏡補助下肝切除はパラダイムシフトをもたらし、腹腔鏡(補助下)系統的肝切除へ
の礎を築いたが、完全腹腔鏡下での系統的肝切除の意義はいまだ明らかではない。今回、右葉系肝切除にし
ぼって、その有用性と問題点を考察する。【術式と手術手技】当院でこれまでに鏡視下肝切除を行った 176 例
中、右葉系の系統的肝切除は 34 例。このうち、完全腹腔鏡下に行ったのは 22 例(65%)で、内訳は、亜区域
切除 9 例、区域切除 10 例、右葉切除 3 例である。患者を左側臥位とし、胆摘後、グリソン処理は二次分枝以
降で一括処理を行うようにしているが、自動縫合器での処理はしばしば困難であり、その際は、三次分枝以
降でクリップにて処理している。肝離断は、血行遮断下に CUSA を用いて施行しているが、術式定型化後も
S8 亜区域切除の 1 例が HALS に移行した、【結果】22 例の肝重量 / 腫瘍径 / 手術時間 / 出血量 / 術後在院日数の
中央値は 297g/3.2cm/527 分 /385ml/12 日で、補助下のうち、他臓器合併切除例を除いた 10 例と比較し、出血
量が有意(p<0.05)に少ない以外差は見られなかった。【結論】右葉系の完全腹腔鏡下系統的肝切除術は、長
い手術時間やグリソン処理、右上区域の視野の展開などまだまだ克服すべき課題が多いが、手術成績は補助
下に比べて遜色なく今後定型化されていくものと考える。
46
一般演題〈Session8〉
8-1
腹腔鏡補助下系統的肝切除術における ICG 蛍光法の
有用性
信州大学 消化器外科
北川敬之、横山隆秀、福島健太郎、代田智樹、北原弘恵、本山博章、清水 明、中田岳成、小林 聡、
宮川眞一
【目的】肝細胞癌に対する肝切除術では、肝機能が許容すれば担癌門脈枝に基づく系統的切除術が推奨されて
いる。しかし腹腔鏡補助下手術では動脈の単独クランプが必要となる色素染色法での系統的切除範囲の同定
には肝門処理が必要となるが、ICG 染色法では Pringle 法によるクランプで行えるという利点がある。今回当
科で施行した腹腔鏡補助下系統的肝切除術時の担癌門脈域同定における ICG 染色法の有用性を報告する。
【症例】2009 年 2 月から 2011 年 9 月に当科で施行した肝細胞癌に対する腹腔鏡補助下系統的肝切除術(亜区域
以下)5 例。男女比 4:1、平均年齢 58 歳(42-76)、背景肝疾患はウイルス性肝炎 4 例、肝硬変 3 例。術式は S6
亜区域切除が 2 例、S6/5 系統的切除、S4a 及び S2 亜区域切除がそれぞれ 1 例。このうち S2 亜区域切除を除く
4 例に ICG 染色法を行った。
【手技】ICG 5mg を注射用水で 5ml に溶解後、生食でさらに 10 倍希釈し、担癌門脈枝に 2 ~ 3ml 注射する。
Pringle 法での全肝阻血下、赤外観察カメラシステム(PDE)にて染色範囲を確認し電気メスで肝表面をマー
キングする。術中超音波にて担癌門脈枝、肝静脈を確認し切離を行う。
【結果】いずれの症例も染色範囲は良好に観察され、境界が不明瞭であった症例はなかった。
【結語】ICG 染色法は腹腔鏡補助下系統的肝切除術時においても切離範囲の良好な同定を行えることが示され
た。また手技が簡便になることから鏡視下手術の安全性向上にも寄与すると考えられる。
8-2
腹腔鏡下脾摘併用肝切除術の安全性の検討
佐賀大学 一般・消化器外科
三好 篤、井手貴雄、北原賢二、能城浩和
【はじめに】門脈圧亢進症 (PH) を伴う肝細胞癌 (HCC) に対する脾臓摘出術の有用性は報告されているが、そ
の時期や到達法に関しては明らかなコンセンサスがない。当科では PH 合併 HCC に対して 2007 年より開腹脾
摘併用肝切除術、2009 年より腹腔鏡下脾摘併用肝切除術を導入している。【目的と対象】PH 合併 HCC に対
する腹腔鏡下脾摘併用肝切除術の安全性および有用性に関して検討を行った。【対象】開腹脾摘併用肝切除術
を施行した 10 例 (Open 群 ) と腹腔鏡下脾摘併用肝切除を施行した 5 例 (Laparo 群 ) の臨床病理学的因子を検討
した。同時性脾摘併用肝切除術の適応は血小板数 8 万以下、腫瘍径 5cm 以下、腫瘍占拠部位が肝表面もしく
は肝外側区域とした。【結果】肝予備能、腫瘍因子、切除範囲に関しては両群間に差を認めなかった。手術時
間は両群間に差を認めなかったが、出血量は Lapro 群が有意に少なかった ( 177 ± 81ml vs 660 ± 81ml; p =
0.019)。術後血小板数および術後 interferon 導入率に差を認めず、術後合併症に関しても両群間に有意差を認
めなかったが、術後在院日数は Lapro 群が有意に短かった (10 日 vs 22 日 ; p = 0.009)。【結語】腹腔鏡下脾摘併
用肝切除術は開腹同様に安全に施行可能である。
47
一般演題〈Session8〉
8-3
Pure Lap-hepatectomy の際の止血手技について
都立駒込病院 肝胆膵外科
本田五郎、倉田昌直、小林 信、奥田雄紀浩、只野惣介、鶴田耕二
完全腹腔鏡下肝切除時の出血はグリソン系(門脈・肝動脈)からの出血と肝静脈系からの出血に分けられる。
グリソン系からの出血には出血部の把持や Pringle 手技を用い、肝静脈系からの出血には、圧迫、Pringle 手
技、気腹圧を上昇させるという順番で対応している。これらにより dry な術野を確保した後、CUSA で周囲
の肝実質を崩して脈管をさらに露出し、必要な処理(soft-coagulation、clip、seal、離断、縫合等)を行う。
肝静脈系の Z 縫合ないし連続縫合には結紮の代わりにラプラタイスーチャークリップ(Ethicon)を用いた
12cm 長の 4-0 バイクリルを使用している。上昇させた気腹圧は止血作業終了後速やかに 8mmHg に戻してい
る。
8-4
肝硬変患者に合併した血小板減少症に対する肝細胞
癌の外科治療戦略-二期的肝切除術
札幌医科大学 外科学第一講座
水口 徹、川本雅樹、中村幸雄、太田盛道、目黒 誠、今村将史、木村康利、平田公一
肝硬変患者に合併した血小板減少症は、周術期管理を困難にするばかりでなく、ウイルスに対する治療や癌
に対する抗がん剤治療も困難にする。腹腔鏡下手術の技術向上により、低侵襲かつ安全に脾臓摘出術が可能
になり、腹腔鏡下脾臓摘出術を肝切除術前の前治療として位置づけた二期的肝切除術を施行している。2008
年より 5 例に施行し、脾摘により血小板は 5.2 ± 1.1 万 /µl から 2 週間目で 20.3 ± 10.9 万 /µl に上昇した。肝切
除術までは 37.3 ± 11.4 日間で肝切除術直前の血小板は 16.4 ± 5.6 万 /µl で術後の最低値は 6.6 ± 2.9 万 /µl であっ
た。脾臓摘出術の手術時間は 168.3 + 49.6 分で出血量は 99.8 ± 197.5 ml であった。肝切除術の手術時間は 390.3
± 120.9 分で出血量は 297.5 ± 343.5 ml であった。実際の症例で S8, 4cm と S7, 3cm の手技を供覧する。右葉系
に対しては体位を左側臥位とし、ケント鈎は用意しておく。右葉の授動を行い、IOUS を行い腫瘍の位置を確
認する。MCT にて腫瘍周囲に前焼妁を行う。肝表面の漿膜は LCS で切離し、バイクランプもしくはバイポー
ラー鉗子で実質に突き刺すように挿入し破砕と通電を行う。グリソン近傍や肝静脈近傍では CUSA を使用し
実質を破砕し、確実に脈管を目視してクリッピングを行う。視野の手前から深部方向へ切離を進める。二期
的肝切除術は血小板数も十分に確保されており、安全な肝硬変に合併した血小板減少症に対する肝細胞癌の
治療戦略と考えている。
48
一般演題〈Session8〉
8-5
胆嚢癌に対する腹腔鏡下拡大胆嚢摘出術および肝外
胆管切除再建術
慶應義塾大学 外科 1)、永寿総合病院 内視鏡手術センター 2)
板野 理 1)、大島 剛 2)、田邉 稔 1)、河地茂行 1)、篠田昌宏 1)、北郷 実 1)、愛甲 聡 2)、北川雄光 1)
胆道腫瘍に対する鏡視下手術は、手技の困難さや悪性度への懸念より適応外としている施設が多い。今回、
胆嚢癌に対する腹腔鏡下拡大胆嚢摘出、肝外胆管切除および胆管空腸吻合をビデオで供覧する。症例は 78
歳男性。胸膜炎に対する精査で胆嚢癌(Gnb, 結節膨張型 , S0, Hinf0, H0, Binf0, PV0, A0, P0, N1, M(-), T1 N1
cStageII)を指摘された。術前 CT で #12p リンパ節の腫大を認め、確実な肝十二指腸間膜リンパ節郭清と断
端の陰性化のため肝外胆管切除を行った。Roux-Y 再建の脚の吻合は標本を摘出した臍部小切開より、総肝管
空腸吻合は鏡視下に行った。手術時間は 725 分、出血量は 750ml。最終病理組織学的所見では胆嚢癌(Gnb,
結節浸潤型 , ss, med, INFβ, ly2, v2, pn1, Hinf0, Binf0, BM0, HM0, EM0, pT2 - Tubular adenocarcinoma, welldifferentiated, N2(#12p), M(-), pStageIII)であった。術後経過は良好で合併症は認めなかった。第 1 術後病日
より離床可能であり、第 4 術後病日より経口摂取開始、第 11 術後病日に退院となった。進行胆嚢癌に対する
腹腔鏡下拡大胆嚢摘出および肝外胆管切除術は安全に施行可能であり、低侵襲性による患者へのメリットは
高いと考えられた。
49
一般演題〈Session9〉
9-1
単孔式肝切除
平塚市民病院 外科
赤津知孝、中川基人、松井信平、高田智司、波里陽介、小林陽介、藤村直樹、今井 俊、永瀬剛司、
金井歳雄
【目的】当院では単孔独特のラーニングカーブを克服しながら安全性を向上させることで、肝臓・胆道・膵臓
外科手術に本術式を取り入れている。当院における単孔式肝切除について報告する。【方法】手袋・気腹法と
した。
【前段階】鏡視下のデバイスを用いて開腹下に系統的肝切除(結紮しない手術)の経験を積んだ。【適
応】肝外側区域・下区域の表面に位置する 3cm 以下の腫瘍で、解剖学的切除が不要なものを対象とした。【手
術手技】術中超音波検査で腫瘍、グリソン、肝静脈を確認した後、肝切のラインを設定した。実質の切離は
ソノサージ、止血は IO 電極と電気メスで行った。【供覧する症例①】68 歳、女性。肝内側区域(S4 下)の径
2cm 大の腫瘤に対して肝部分切除術を施行した。同時に、急性胆嚢炎(PTGBD 挿入後)に対して胆嚢摘出術
を行った。合計の手術時間は 2 時間 30 分、出血は少量であった。【供覧する症例②】77 歳、男性。上行結腸
癌の術後 6 カ月目に径 2cm 大の肝転移(S4/5)を認め肝部分切除を実施した。中腹部に正中切開があったた
め臍の切開をさけ、右季肋下に 2cm の皮切を置いた。手術時間は 3 時間 30 分、出血は 30cc であった。【結果】
いずれの症例でも術中偶発症や術後合併症(胆汁漏など)を認めなかった。【結語】適切な症例を選択し安全
性と根治性を確保することで、肝臓手術において単孔式は今後有用な選択肢となる可能性がある。今後さら
に症例を重ねて検討を進めていきたい。
9-2
単孔式腹腔鏡下肝部分切除に胆嚢摘出を併施した
1 手術例の経験
東京慈恵会医科大学附属柏病院 外科
奥井紀光、吉田清哉、高野裕樹、斉藤良太、田辺義明、遠山洋一、柳澤 暁、小林 進
【目的】腹腔鏡下手術は肝胆膵領域にも導入されており、当科でも腹腔鏡下肝切除を先進医療として施行して
きた。最近行われてきている単孔式腹腔鏡手術は、空間的器具の制限というマイナス面もあるが、症例を選
べば肝表面の腫瘍に対してもよい適応と考えられる。今回、単孔式腹腔鏡下肝切除に胆嚢摘出を併施した 1
手術例を経験したので、報告する。
【方法】症例は 40 歳代、女性。腫瘍径 25mm、肝 S6 の肝細胞癌で、手術目的で紹介となった。transumbilical
incision で SILSTM port を用い、5 mm flexible scope にて腹腔内を観察し、S6 腫瘍を確認した。マイクロ波前
凝固した後、肝表面は超音波凝固切開装置で、肝実質は IO 電極を用いたソフト凝固で肝切離を進め、細かい
Glisson は LigaSure VTM で、また肝切離面よりの出血にはマイクロ波凝固、bipolar 鉗子で対処し、肝部分切
除を施行した。その後胆嚢ポリープに対し胆嚢摘出も併施した。肝切離面からの胆汁の漏出がないことを確
認し、手術を終了した。
【結果】今回の症例は肝辺縁腫瘍であり、主要脈管からも離れていたため、術中出血量は極少量で、手術時間
は 215 分であった。術後は特に合併症を認めず、術後第 7 病日に退院した。
【結論】単孔式による腹腔鏡下肝切除でも、症例によっては安全に施行可能と考えられた。未だ症例数は 1 例
であるが、今後更に症例を積み重ねていきたいと考えている。
50
一般演題〈Session9〉
9-3
当科における Single Insicion Laparoscopic
Surgery による肝切除~困難例を含めた検討
札幌医科大学 第一外科
中村幸雄、水口 徹、川本雅樹、太田盛道、目黒 誠、平田公一
Single Incision Laparoscopic Surgery (SILS) は整容性に優れているという利点があり、近年肝切除において
もこれを導入した報告例が散見されている。
当科では 2011 年 3 月に左葉外側区の部分切除に SILS の導入を始め、安全にこれを施行し得た(症例 1)。 一
方、解剖学的理由により SILS のみでは手術を完遂できない症例も経験し(症例 2)、これらを比較することに
より今後この手術を行うにあたり適応の一助としたい。 【症例 1】19 歳女性。 原因不明の肝硬変、脾機能
亢進症の原因検索のため、肝生検目的に外科紹介。 【手術】臍部に SILS ポートを留置し、左葉外側区の辺
縁に Microwave Coagulation Therapy (MCT) による前凝固を行った後、超音波凝固切開装置で肝離断をすす
め、肝部分切除を行った。 手術時間:89 分、出血量:0ml であった。【症例 2】68 歳女性。 肝 S3 辺縁に存
在する径 1cm の肝腫瘍切除のため外科入院。 【手術】 臍部に SILS ポートを留置し、手術を開始。 視野展
開に難渋し、5mm ポートを 2 本追加して手術を完遂した。 手術時間:179 分、出血量:0ml であった。
【考察】肝硬変症例などの左葉が特に肥大した症例においては、左三角間膜の切離の際の視野展開が困難で
あった。 整容性の面では臍部に SILS ポートを留置するのが望ましいと考えられるが、臍部ポートのみで術
野展開に難渋する場合もあり、ポートの追加や体位の工夫が必要と考えられた。
9-4
単孔式腹腔鏡下手術の肝臓外科への導入
大分大学 第一外科
岩下幸雄、太田正之、矢田一宏、江口英利、北野正剛
【はじめに】肝臓外科手術に単孔式腹腔鏡下手術を導入し 6 例の手術を施行しその初期成績を報告する。
【結果】6 例の内訳は肝細胞癌(HCC)2 例、肝嚢胞 4 例であり、HCC の 2 例には肝部分切除術、肝嚢胞の 1 例
には外側区域切除術を行った。残りの 3 例は嚢胞開窓術を行った。
肝切除術 3 例の平均手術時間 138 分、平均出血量 141g であった。嚢胞開窓術を行った 3 例は手術時間 130 分、
出血は少量であった。全例合併症を認めなかった。
【症例提示】60 才、男性。慢性 B 型肝炎にて他院で経過観察中。平成 23 年 7 月、CT にて肝細胞癌と診断された。
CT では肝 S6 表面に 2.5cm の典型的な造影パターンを有する腫瘍を認め、SURF トライアル登録。外科治療群
となり当科入院となった。腫瘍マーカー AFP、PIVKA-II は基準値範囲内。肝機能は良好であった。臍部に
2.5cm の縦切開を加え Open 法にて開腹、SILS ポートを挿入した。超音波凝固切開装置、ソフト凝固電気メス
システムを用いて腫瘍より十分なマージンをとって肝実質を離断した。肝離断面からの出血には 5mm のボー
ル型電極が止血効果高く、有用であった。切除標本は回収用バックに入れ、ポートとともに摘出した。術後
合併症なし。
【考察】単孔式腹腔鏡下肝切除術は整容性に優れ、肝臓手術においても有用な選択肢の一つとなりうる。本手
術の施行にあたっては、内視鏡外科手術に習熟した術者と解剖学的に比較的容易に切除しうる症例に限定し
て行われるべきと思われる。
51
一般演題〈Session9〉
9-5
ニードルデバイスを用いた単孔式腹腔鏡下肝臓外科
手術
慶應義塾大学 外科
田邉 稔、河地茂行、板野 理、篠田昌宏、北郷 実、八木 洋、三原規奨、西山 亮、藤崎洋人、
北川雄光
【背景・目的】われわれは、各種ニードルデバイスを TANKO に導入し、肝臓外科領域の手術へ適応拡大を
行ったので報告する。【体内組立式ニードルリトラクター】教室で考案した体内組立型ニードルリトラクター
は、14 ゲージで傷跡を残さず腹壁の任意の場所から穿刺可能、オリジナル綿球を SILS port から挿入し、ニー
ドルの先端に強固に固定して組み立てる。助手が同器具を操作することで、肝臓の脱転、胆嚢や十二指腸の
圧排・牽引、肝門脈管の微細な圧排・展開など、多種多様な手術操作が可能になる。術者は切離・剥離や止血
操作に専念することで、より複雑な手技を行うことが出来る様になった。これまで肝十二指腸靱帯内の神経
鞘腫切除 (1 例 )、肝切除 (9 例 ) に同器具を用いた TANKO を施行した。肝十二指腸靱帯内の神経鞘腫切除では、
腫瘍が胆管、肝動脈、門脈に密着していたが、ニードルリトラクターにより微細な術野展開、剥離を行うこ
とが出来た。肝切除術では、ニードルリトラクターにより肝切離面を的確な位置に移動して展開、超音波吸
引装置とバイポーラー止血、自動縫合器を用いて肝切離を行い、通常の腹腔鏡下肝切除と比べて同等の手技
を行うことが可能になった。【結語】全例が合併症無く術後短期で退院可能であった。ニードルデバイスの工
夫により、TANKO 手術の肝臓外科領域への適応拡大が可能となった。
52
一般演題〈Session10〉
10-1
左側臥位肝非脱転尾側アプローチによる完全腹腔鏡
下肝後区域切除術の 1 例
藤田保健衛生大学 坂文種報徳會病院 一般消化器外科
川瀬 仁、守瀬善一、川辺則彦、梅本俊治、冨重博一、永田英俊、大島久徳、荒川 敏、吉田梨絵
症例は 63 歳女性。脾彎曲部に生じた横行結腸癌に対して開腹左半結腸切除術術後外来経過観察中であった
が、術後 2 年目の腹部造影 CT 検査上、右肝静脈に近接する肝 S6 に 1.5cm 大の肝転移が検出された。
背景肝疾患はなく、TS-1 経口投与などの補助化学療法がおこなわれており中等度の脂肪肝が認められたが、
ICG15 分値は 5.9%であった。肝切除範囲は後区域切除とした。前回の手術は開腹(上中腹部正中切開)で行
われていたが、転移性肝癌に対しては癒着剥離を含め完全腹腔鏡下に施行する予定とした。
腫瘍の位置は右肝静脈に比較的近く、切除断端での腫瘍よりの距離を確保するためには右肝静脈を露出する
形での切除が必要と考えられた。従来、われわれは、完全腹腔鏡下肝後区域切除に際しては肝門での操作を
重視し、左半側臥位で体位を変換しながら行い、また、肝後区域の授動操作も肝実質離断に先行させて行っ
ていた。しかし、今回は、右肝静脈を長く露出するために肝離断面での視野確保を最優先とし、左側臥位に
て肝の脱転を行わず、ほぼ尾側方向からのアプローチのみで頭側に向かって肝離断を進めた。下大静脈右側
縁の露出、肝離断による右肝静脈の露出を頭側に向かって行い、肝離断を終了した後に後腹膜よりの剥離を
行って後区域を摘出した。手術時間 6 時間 41 分、術中出血量 1356ml であった。手術手技をビデオにて供覧す
る。
10-2
腹腔鏡下肝切除術における術中超音波検査の工夫
東京医科歯科大学 肝胆膵外科 1)、東京医科歯科大学 低侵襲医学研究センター 2)、太田西ノ内病院 外科 3)
藍原有弘 1,2)、野口典男 3)、光法雄介 3)、佐藤公太 1)、伴 大輔 1)、工藤 篤 1)、中村典明 1)、田中真二 1)、
小嶋一幸 2)、有井滋樹 1)
【背景】当科では肝腫瘍性病変に対する肝切除術において、2007 年度よりソナゾイド造影剤を用いた造影超
音波検査を術中に行ってきた。kupffer phase では病変と肝実質のコントラストが明瞭となり、病変の同定に
有利であると考えている。一方、2001 年より 54 例の腹腔鏡下肝切除術を行ってきているが、当科で使用し
ている腹腔鏡用超音波プローベは、ソナゾイド造影超音波に対応しておらず、検索が不十分になることが問
題であった。
【方法】腹腔鏡下肝切除術において、ソナゾイド超音波検査を行うために、(1)標本を取り出
す予定の部位に 3-4㎝の小切開を置き、LapDisk を装着する。(2)切開部よりソナゾイド造影超音波用の T 型
プローベを挿入する。プローブにはあらかじめ鉗子で把持する部位として、2 か所に綿テープをあらかじめ
固定しておく。(3)LapDisk を閉鎖すると、プローブのコードを誘導しても気密性が保たれる。(4)再気腹
し、腹腔鏡で確認しながら、鉗子にてプローベを操作し肝表よりエコーで観察する。【結果】現在まで 4 例の
腹腔鏡下肝切除に、この方法を施行した。手技は困難であり開腹手術と同等な検索を行えるとは言えないの
が現状であるが、1 例では kupffer phase にて病変が描出され、部分切除が可能となった症例があった。【結語】
LapDisk を用いた、腹腔鏡肝切除中のソナゾイド超音波検査は有用であると考える。
53
一般演題〈Session10〉
10-3
当科における鏡視下肝切除術での様々な工夫
日本医科大学 外科 1)、日本医科大学多摩永山病院 外科 2)
川野陽一 1)、谷合信彦 1)、吉岡正人 1)、水口義昭 1)、清水哲也 1)、上田純志 1)、真々田裕宏 1)、吉田 寛 2)、
内田英二 1)
( 緒言 ) 鏡視下肝切除術 (Lap-H) は、保険収載後、わが国でも劇的に普及しているが、腫瘍局在部位や患者背景
により手技の難易度が変化するなどの多様性を持った手術手技となるため、手技やデバイスなどにいまだ多
くの改良点を必要とする。当科では、Lap-H を安全かつ安定して行うために、使用デバイスなどに様々な工
夫を行っているのでビデオで供覧する。( 症例と手技 )1999 年~ 2011 年 7 月までに計 47 例に対して Lap-H を施
行している。2009 年 12 月より汎用性鏡視下手術用スポンジスペーサー ( セクレア )、2010 年 9 月よりグローブ
併用下プリングル法、同年 12 月より VIO system を使用している。最近では、レビテーターを利用した体位
固定、5mm ポート創を利用したプリングル法、肝離断辺縁への釣り糸固定、CUSA、BiClamp、I/O 電極など
による肝離断、セクレアを加工しての使用などの工夫も行っている。( 結果 ) セクレアにより周囲臓器や肝実
質の愛護的かつ効果的な圧排による安定した術野の展開と肝離断時の容易な圧迫止血が可能となり、肝切離
時の出血コントロールには、プリングル法による流入血遮断が有用であった。さらに、種々手技の工夫によ
り、安定した鏡視下肝切除術が可能となっている。 ( 結語 )Lap-H は、その低侵襲性と手技の安定化などから、
一般的手技として普及していくものと考えられるが、さらなる安全性の担保や適応拡大ためには、今後も手
技、デバイスなどの改良、工夫を要すると考えられた。
10-4
腹腔鏡下肝切除術における最近の工夫
長野市民病院 外科
林 賢、宗像康博、関 仁誌、高田 学、沖田浩一、田上創一、成本壮一、竹本香織、村中 太、
吉澤一貴
【緒言】当院では 1996 年以来腹腔鏡下肝切除術を施行して来たが、多くはハイブリッド手術であった。最近
になり、Pure Lap. Surgery に取り組み始めているので、当院における工夫を中心に報告する。【目的】安全
な腹腔鏡下肝切除術式を確立するとともに、教育的な観点から術式における使用器具のを見直しを行う。【対
象と方法】当院で施行した腹腔鏡下肝切除術は疾患別に見ると HCC18 例、Mets7 例、CCC、IPMC、胆嚢癌各々
1 例、良性 7 例の計 35 症例、39 病巣であった。肝障害度分類では A=23 例、B=11 例、C=1 例であった。以前
は対象を外側区域、下区域を中心に限定していたが、最近は葉区域症例や S6-7 などの後区域症例、比較的早
期胆嚢癌症例など適応を拡大している。部分切除が 19 例、亜区域切除 2 例、区域切除 13 例、左葉切除 1 例を
施行した。当院では肝門クランプを基本としており、部分切除でもテープとネラトンによる肝門クランプは
用意する。US にて切離面を確認後、MCT にて Precoagulation を行い、その後超音波凝固切開装置、バイク
ランプで切離し、主にソフト凝固で止血を行っている。太めのグリソン、肝静脈はクリップ処理を行ってい
る。葉切除などの大きな手術導入には施設見学、指導医招聘などを行い、安全な導入に努めた。
【結語】発展途上の中での当院の本術式に対する現状を提示するとともに術式の工夫を述べた。今後は術者を
育てる教育的な観点での取り組みを積極的に行って行きたい。
54
一般演題〈Session10〉
10-5
当科における肝臓外科領域の腹腔鏡下手術の変遷
山口大学 消化器・腫瘍外科
坂本和彦、為佐卓夫、前田祥成、橋本憲輝、岡 正朗
肝臓病変に対する腹腔鏡下手術の段階的な術式の変遷、成績を供覧する。
(対象)
2005 年から 2011 年 8 月までの肝臓外科領域手術 ( 胆道再建を除く )258 例のうち、腹腔鏡 ( 補助 ) 下手術を施行
した 34 例(13.2%)
。
(手術)
初期:
(2005-2009;8 例)外側区を対象に小開腹先行の用手補助腹腔鏡下に肝授動、その後小開腹創から肝実質
切離。肝表面・辺縁の部分切除症例に対しては完全腹腔鏡下手術を施行。
中期:
(2009-2010;10 例)鏡視下での肝授動を先行、その後小開腹創を加え肝実質切離。葉切除、後区域切除、
亜区域切除を導入。肝嚢胞に対する腹腔鏡下手術を導入。
現在:
(2010-;16 例)外側区 / 左葉に対し完全腹腔鏡下手術を導入。肝実質切離ラインに MCT による precoaglation 施行後、表層は LCS、深部は CUSA、VIO system で実質切離。
(結果)
内訳、平均出血量 / 手術時間はそれぞれ、肝嚢胞手術 4 例 :64g/157 分、肝部分切除 7 例 :499g/275 分、外側区
域切除 6 例 :214g/274 分、亜区域(S4/S5/S6)切除 5 例 :236g/426 分、後区域切除 2 例 :1025g/536 分、葉切除 8
例 :466g/497 分。開腹症例と比較したところ外側区域切除は出血量、手術時間とも有意差はなく、亜区域・左
葉切除では手術時間の有意な延長を認め、左葉切除では出血量減少の傾向を認めた(418g vs. 806g: p=0.07)。
(結語)
肝臓外科領域でも段階的な導入により開腹手術と遜色ない安全な腹腔鏡下手術が施行可能である。
10-6
Arantius’ligament approach による腹腔鏡下左
肝切除術
千葉県がんセンター 消化器外科
趙 明浩、山本 宏、貝沼 修、太田拓実、朴 成進、有光秀仁
【背景】近年、腹腔鏡下肝切除は驚異的な進化を遂げ、一部の施設ではすでに腹腔鏡下左外側区域切除は安全
な標準術式として普及しつつある。
【目的】われわれは Arantius’ ligament approach による Glisson 一括処理による腹腔鏡下左肝切除術を行って
いるので、その手術手技をビデオにて供覧する。
【手術手技】
1) Pringle’ 法:Endo Retract Maxi を用いて肝十二指腸靭帯を taping。 2) 左外側区域の授動 :
円靭帯、左側の各靭帯を切離し左外側区域を授動。3) Arantius’ ligament の処理: Arantius’ ligament を切離。
4) 肝門処理:円靭帯の断端を腹側に挙上し、Arantius’ ligament 尾側断端を牽引しながら Endo Retract Maxi
を挿入し、左 Glisson 本幹を taping、clamp、Demarcation line を肝表面にマーキング。5) 肝離断: 肝表面
を LCS で離断し、深い肝実質は CUSA にて離断。 6) グリソン一括処理: ある程度肝離断が進むと、容易に
左 Glisson 本幹に Stapler を挿入できるので離断。7) 肝静脈の剥離: 最後に Stapler にて離断。
【考察】左門脈に付着する Arantius’ ligament の尾側断端を牽引することにより左 Glisson 本幹が浮き上がり、
腹腔鏡下でも taping がきわめて容易となる。左 Glisson 本幹一括処理では右側胆管の損傷を避けることが必須
であるので、左尾状葉枝の左側で taping する必要がある。Arantius’ ligament は尾状葉枝より左側に付着して
おり、この点でも安全な手技と考えられる。
55
一般演題〈Session11〉
11-1
当科における腹腔鏡(補助)下肝切除術
群馬大学 臓器病態外科
須納瀬 豊、平井圭太郎、吉成大介、戸塚 統、戸谷裕之、小川博臣、塚越浩志、宮前洋平、高橋憲史、
竹吉 泉
< はじめに > 当科では岩手医科大学への手術見学後に、その方法にならい 2010 年より腹腔鏡(補助)下肝切
除を導入した。未だ症例数は充分ではないが、現時点での現状と短期成績について報告する。
< 対象と方法 > 当院では導入の初期段階にあるため、主に腹腔鏡補助下に手術を行った。対象は HCC 8 例、
CCC 1 例、転移性肝癌 3 例、その他の腫瘍 3 例、術式は腹腔鏡補助下肝系統切除が 10 例、腹腔鏡補助下肝部
分切除が 3 例、
(完全)腹腔鏡下肝部分切除が 2 例であった。手術時間は平均 6 時間 6 分、平均出血量は 678g、
RCC 輸血は 1 例に要したが、おおむね開腹手術と変わらないデーターであった。術後合併症は胆汁ろうを 1
例、誤嚥性肺炎を 1 例に認めたが、他には重篤な合併症はなかった。点滴を要した日数は平均 7 日、平均在院
日数は術後 12 日で、ともに開腹手術より短い傾向にあった。
< まとめ > 腹腔鏡下肝切除は、当科においてもおおむね許容される結果であった。特に、腹腔鏡補助下肝切
除は直視下に肝切除を行う手技であるため、小開腹手術という点で技術的困難さはあるものの、慎重に行え
ば開腹手術と遜色のない手術となりえるものと予想された。また、当科ではまだ経験が少なく、完全腹腔鏡
下肝切除を安全に行い得るかなど、安全性や有効性の評価にはさらなる症例の検討が必要な状況と思われる。
11-2
腹腔鏡下肝切除の導入と定型化;小開腹下肝切離の
併用
広島赤十字・原爆病院 外科
山下洋市、辻田英司、武石一樹、本間健一、木村和恵、吉永敬士、松山 歩、筒井信一、松田裕之、
石田照佳
【はじめに】2010 年 4 月の大幅な診療報酬改定に伴い、腹腔鏡下肝切除が保険適用となった(施設認定要)。
【導入まで】経験 12 例の術者 1 人、施設としても未経験。① 2010 年 5 月初旬に岩手医大にて腹腔鏡下肝切除を
見学、②術場・病棟にて勉強会を施行、③ 2010 年 6 月に施設認定を受けた。
【方針】①安全第一、②手術の質の担保、③手術の長時間化による「コメディカルの疲弊」を避けるため、初
期 5-10 例の肝実質切離は小開腹下に施行した。
【結果】2011 年 8 月までに 12 例の腹腔鏡下肝切除を施行。疾患:HCC 7 例・ICC 1 例・GBCa 1 例・その他 3 例。
年齢:平均 71 歳(51-82 歳)。術式:外側区域切除 1 例・内側区域切除 1 例・部分切除 8 例(S3/S4/S5/S6)・肝床
部切除 + 胆摘 +#12 郭清 1 例。手術時間:中央値 198 分(137-341 分)。出血量:中央値 30g(20-930 g)。輸血な
し。開腹移行(出血・他臓器損傷)なし。術後在院日数:中央値 8 日(7-65 日)。1 例に術後イレウスを合併し
たが(65 日入院)
、他 11 例はすべて術後 7 日前後で退院した。
【まとめ】肝実質切離を小開腹下に行う事で、腹腔鏡下肝切除を安全に導入でき、早期の定型化が可能であっ
た。今後、この型での肝区域切除・葉切除(左葉切除)や、完全腹腔鏡下肝切除(部分切除・外側区域切除)
へ適応拡大する予定である。
56
一般演題〈Session11〉
11-3
東京大学における腹腔鏡下肝切除の導入
東京大学大学院医学系研究科 肝胆膵外科
長谷川 潔、金子順一、井上陽介、河口義邦、田村純人、青木 琢、阪本良弘、菅原寧彦、國土典宏
当科では開腹下肝切除を年間約 200 例前後行っており、難易度の高い症例が集まっているが、腹腔鏡下肝切
除では後発施設である。2007 年 5 月に本術式導入のプロジェクトチームを立ち上げたが、当初は手術内容や
器械に関する知識や経験が全くなかったので、先行施設での手術見学と学会での情報収集から開始した。動
物実験施設を利用して、腹腔鏡下肝離断を経験した。院内手続きとして、各種手術機器の整備状況を調査し、
必要物品の導入申請した。一種の臨床研究として立ちあげるべく、研究計画書や患者説明文書を作成し、倫
理委員会の承認を得た。麻酔科医、看護師・ME を対象とした勉強会を行い、手術の実際や周術期経過につい
て知識を共有した。これらの準備の上、2008/5/2 に第 1 例目の腹腔鏡下肝部分切除を施行した。しかし、先
進医療申請に向けた症例蓄積における医療費の負担について院内ルール整備に時間をとられ、第 2 例の施行
まで 1 年 3 カ月を要した。2010 年 4 月本術式の保険収載の際、付加された施設条件に体操し、院内体制を再整
備するのにも 4 カ月を要した。2011 年 9 月にようやく「当該施設内の常勤医による術者経験 10 例」の条件に
達した。チーム立ち上げから約 4 年 4 カ月もの期間を要したが、新しい技術を安全かつ倫理的にも問題なく導
入するのに必要だったと考えている。今後は本領域において、手術技術改良と長期成績向上に少しでも貢献
していきたい。
11-4
当科における腹腔鏡下肝切除術導入に向けての問題
点とその対策
東北大学 肝胆膵外科 1)、東北大学 胃腸外科 2)
森川孝則 1)、内藤 剛 1,2)、鹿郷昌之 2)、田中直樹 2)、渡辺和宏 2)、元井冬彦 1)、力山敏樹 1)、片寄 友 1)、
江川新一 1)、海野倫明 1)
[ はじめに ] 腹腔鏡下肝切除術は現在多くの施設に普及し、その適応も拡大の一途を辿っている。しかし、完
全鏡視下で高難度手術を行う施設がある一方、様々な障害があり円滑に導入が進まない施設もある。今回、
当教室における腹腔鏡下肝切除術導入における問題点と工夫を紹介する。[ 問題点・対策 ] 当教室の問題点とし
ては、1)肝胆膵外科領域のうち膵胆道系疾患が主体であり、拡大葉切除術以上の肝切除術が多く、鏡視下手
術導入に適した肝部分切除術例は全術式の 10%程度であること 2)肝胆膵疾患の開腹症例が多くを占め、鏡
視下手術に習熟する機会が少ないこと、の 2 点であった。それに対し 1)先行施設への手術見学、各種セミ
ナーへの参加。2)当院胃腸外科と合同で内視鏡外科班を結成し、胃切除・大腸切除術などを経験しつつ鏡視
下手術の習熟に努める。3)術者を固定化し腹腔鏡下肝胆膵手術を導入する、という対策をとり腹腔鏡下肝切
除術導入に臨んでいる。手術費用に関しては東北大学校費を用い、2009 年 6 月第 1 例目を施行、現在計 9 例に
腹腔鏡下を施行しており、開腹移行例は無く、大きな合併症も認めていない。 [ 結語 ] 入念な準備の下、腹腔
鏡下肝切除術を安全に導入出来ている。しかしながら、症例の集積は未だ不十分であり、今後症例増加に向
けた対策が必要と考えている。
57
一般演題〈Session11〉
11-5
腹腔鏡下肝外側区域切除の定型化について
国立がん研究センター東病院 上腹部外科
後藤田直人、小西 大、高橋進一郎、木下敬弘、加藤祐一郎、木下 平
【はじめに】当院では完全鏡視下肝外側区域切除において岩手医大から提唱された方法を踏襲しこれまで行っ
てきたが、ポートの位置や使用するデバイス類など安全に施行するにあたり体系的に定まってきたのでこれ
らの手技についてビデオで供覧する。【体位・ポート位置】体位は開脚位、若干左側頭高位で行い、まず臍下
よりカメラポート挿入、右側に 5mm と 12mm ポート、左側に 12mm ポートの計 4 か所。右側 12mm のポート
位置は肝円索切離を結紮し体外へ牽引するラインと平行に CUSA やステイプラーで肝切離しやすい所に留意
してポートを挿入している。【肝切離】プリングル操作を併用せず、CUSA および LCS と生食滴下式モノポー
ラ―電気凝固器具を用いて行い、グリソンおよび肝静脈は一括してステイプラーを用いて縫合閉鎖、切離し
ている。ステイプラーに関しても先端が flexible なものを使用することで特に肝静脈切離に際してはより安
全に行えるようになった。【標本摘出】標本はエンドキャッチ II にて回収し臍下ポート切開開大して行ってい
る。【考察】術者は患者右側に立ち、右側 2 つのポートから CUSA、LCS と電気メスを使用して行っている。
助手の経験が少ない場合にも対応可能であり、また執刀経験が少ない術者であっても助手が右側の 5mm ポー
トから止血操作すれば quality は変わることなく安全に行うことができ定型化されたと考える。
58