モデルベースソフトウェア開発に おける総合的な検証手法 ¾第三回システム検証の科学技術シンポジウム ¾2006年10月30日∼11月1日 株式会社シーディー・アダプコ・ジャパン 複合解析技術室 小西 晃輔 kosuke.konishi@cdaj.co.jp 発表内容 z z モデルベース開発と課題 総合的な検証手法 Combined Testing Process ¾ ¾ ¾ ¾ z ソフトウェア設計工程での検証 要件ベーステストによる検証(モデルテストカバレッジ解析) ソフトウェア設計からコード生成(ユニットテストの省略) ソースコードとオブジェクト間のトレーサビリティの検証 まとめ 1 モデルベース開発と課題 実行可能なモデル を中心としたソフトウェア開発 z モデル モデルベース開発 システム 要求分析・設計 妥当性確認 ソフトウェア アーキテクチャー Validation 総合テスト 結合 テスト ソフトウェア 設計 モデル モジュール 設計 モジュール テスト コーディング 出力 検証 ターゲット実装へ モデルベース開発と課題 z モデルベースの利点 V字型ソフトウェアライフサイクルにおけるウォーターフォ ル型からモデルベース型への移項 利点: ¾ 要求/仕様を共通認識するためのコミュニケーション手段 ¾ 各プロセスでのモデルシミュレーション実行による検証活動 ¾ モデルの修正=要求/仕様の修正 ¾ 仕様の容易な再利用 ¾ 自動コード生成による人的コーディングエラーの排除 ¾ ¾ ¾ 開発効率の改善 開発時間の短縮 ソフトウェア品質改善 2 モデルベース開発と課題 z モデル ガイドラ インによ る運用 モデルベースの課題 実行可能なモデル を中心としたソフトウェア開発 システム 要求分析・設計 妥当性確認 ソフトウェア アーキテクチャー Validation 総合テスト 結合 テスト ソフトウェア 設計 検証工程が信頼性 ・品質に影響 モデル モジュール 設計 モデル と Cコード の 対応の検証( 対応の検証(レビュー等) レビュー等) モジュール テスト コーディング ターゲット実装へ モデルベース開発と課題 z 出力 検証 モデルベースの課題 モデルベースソフトウェア開発における現在の課題 ¾ モデル(仕様) の持つ曖昧さ システムエンジニアリングとソフトウェアエンジニアリングのギャップ 小規模なモデルは振舞いが予測可能であるが,大規模なモデルになると振舞いが予測できな い ¾ モデル の検証手法 ¾ ガイドラインとルール付けによる曖昧さの吸収 シミュレーションベースのテストだけでテストのもれ・抜けがないのか? コードを中心に検証を行う(下流にしわ寄せ) モデル と 自動生成Cコード との対応 モデルと生成Cコードとの一致性確保は? 安全な形でCコードが生成されるか? モデル記述 モデル表記 形式検証 形式言語 Cコード 変換 変換 ドメイン特定/システムの特性 に合った 形式言語 をモデル表記に対応させる ことで1つの解となる(形式言語のメリットを活かす) ¾ ¾ ¾ ¾ モデルの振舞いが確定的に記述できる(ソフトウェアでは重要:モデルの大きさ,複雑さに関係なく) シミュレーション以外の検証手法が適用可能(従来のテストを補う) 言語から言語への変換がより容易&明確に定義できる 設計と検証プロセスを総合的に構築可能 3 モデルベース開発と課題 SCADE言語 SCADE言語 アプリケーション層 対象は?(ドメイン/システムの特性) z ¾ ミドルウェア リアクティブシステム 入力−応答型のシステム(入力がシステムに入ると, 入力−応答型 一定時間内に応答を返し,これが繰り返し実行されるシステム) アプリケーション層を対象 アプリケーション層 同期的な枠組みで記述可能なアプリケーション 同期的な枠組み OS ドライバー ハードウェア モデル記述言語は? z ¾ SCADE言語 SCADE言語((グラフィカルな言語) グラフィカルな言語):上位 LUSTRE言語 /Esterel言語をカーネル:下位 LUSTRE言語/ Esterel言語をカーネル:下位 同期性(Synchronicity) 同期性 SCADE表記 形式検証 LUSTRE/ Esterel 同期型言語の仲間 変換 変換 Cコード 入力獲得,演算・データ処理・状態遷移,出力更新の一連の処理が1ロジカル時間内に 実行される(1ロジカル時間内で,入力値は固定される) サイクルベース として解釈 確定性(Determinism) 確定性 あるシステム状態に対して,一連の入力を与えた時,計算された出力は,同じ条件下で は,常に同じ入力に対して同じ出力結果になる モデルベース開発と課題 z モデル記述 SCADE言語 SCADE言語 例:Yn = Yn-1 + U,Y(0) = 0.0を表現 する Lustre表記 Lustre表記 node Dataflow2( U : real) returns ( Y : real) ; var _L1 : real ; _L2 : real ; _L3 : real ; _L4 : real ; 初期値指定演算子 グラフィカル表記 let equa eq_Dataflow2_1[ , ] _L1 = U ; Y = _L2 ; _L2 = (0.0) -> (_L3) ; _L3 = _L1 + _L4 ; _L4 = pre (_L2) ; tel ; /* End of blocks of node : Dataflow2 */ 遅延演算子( 遅延演算子(1サイ クル前) クル前) 4 発表内容 z z モデルベース開発と課題 総合的な検証手法 Combined Testing Process ¾ ¾ ¾ ¾ z ソフトウェア設計工程での検証 要件ベーステストによる検証(モデルテストカバレッジ解析) ソフトウェア設計からコード生成(ユニットテストの省略) ソースコードとオブジェクト間のトレーサビリティの検証 まとめ Combined Testing Processの背景 z 航空電子システムのソフトウェア開発に関するガイドライン(RTCA発 行のDO-178B) ¾ ¾ ¾ ソフトウェアライフサイクルプロセスの 目的 を定義, 目的を達成するためのアクティビティや設計で考慮すべき点を記述, 目的が達成されたことを示す証拠(ドキュメント) ARP-4754 システム要件 ソフトウェアに割り当て られたシステム要件 プロセス DO-178B SW要件 変更 要求 ハイレベル要件 プロセス DO-178B Table A-3 SW設計 変更 要求 ローレベル要件& アーキテクチャー プロセス DO-178B Table A-4 検証活動の検証: 検証活動の検証 DO-178B Table A-7 変更 要求 SWコーディング プロセス ソース&オブジェクト コード DO-178B Table A-5 (テストの検証) 実行形式 変更 要求 SW統合 DO-178B Table A-6 プロセス 5 Combined Testing Processの背景 z 検証プロセス: ソフトウェア開発プロセスの中で発生す るエラーの検出と報告を行うこと ¾ ¾ “検証(Verification)”は,“ソフトウェア開発プロセス”と“検証プロセス”の 結果の技術的な評価(アセスメント) レビュー,解析(アナリシス),テスト テストの組合せによる検証アクティビティ 総合的な検証手法 Combined Testing ProcessTM 要件 設計 コーディング ②要件ベーステストによる検証 モデルのカバレッジ解析(妥当性確認) ①ソフトウェア設計工程での検証 1:整合性・シンタックス・セマンティックチェック(未 定義検出,未使用警告,データタイプ,クロック一 貫性,) 2:ゼロ割/オーバーフローの形式検証 ③ソフトウェア設計からコード生成 1: Lustre キーワードの Cサブセット 対応付け 2:MC/DCカバレッジ100%による対応付け検証 ターゲットインテグ レーション ④ソースコードとオブジェクト間のトレーサビリテ ィ検証 1:サンプルコード(Cサブセット)とテストセットによるコ ンパイラの検証 6 ①ソフトウェア設計工程での検証 z SW設計 段階でのエラーを削除する事が狙い(整合性,セマンティッ ク,シンタックス) ¾ ¾ ¾ ¾ 未定義の検出(型,変数など) 未使用の警告(変数など) データタイプとインターフェース(入出力)定義の一貫性 クロックの一貫性(データの生成と消費) int int a c real b どちらの解釈? a b z 5 × 4.3 R→I a 5 c b 20 4 I→R 5.0 21.5 × R→I 21 c 4.3 SW設計におけるゼロ割/オーバーフロー発生検出 ¾ 形式検証 によるゼロ割/オーバーフロー発生の検証(コードを生成する前に チェックする事が重要⇒モデルベースだからモデルで確認できる) ②要件ベーステストによる検証モデルテストカバレッジ:MTC z 要件 に対する SW設計 間の検証活動を計測(DO178Bガイドライン参照) ¾ 要件 と SW設計 間の静的な解析(要件管理ツールによるレビューな ど)を裏付けるための検証活動(Verification of Verification activity) 要件に対して用意したテストシナリオを SW設計(モデル) 上で再生し,カバ カバ レッジを計測する.(機能レベルでの構造カバレッジ解析が目的) レッジ 意図していない機能 の検出 テストの不足,要件の不十分さを検出 F1 F1 F2 F2 設計者 意図していな い機能 F3 自動コード生成 SW設計 (モデル) 要件 コード f1a f1b f2 f3 意図していない機 能のコード 7 ②要件ベーステストによる検証モデルテストカバレッジ:MTC z カバレッジ基準の定義(コード構造カバレッジ基準を採用) ¾ デシジョンカバレッジ (DC) 各ステートメントが少なくとも1度は,呼び出された ⇒ サイクルベースの概念上,毎サイクル呼び出されるため,言語上で保証済み 全てのデシジョンが,可能性のある結果を少なくとも1度は出力した 9 ¾ モディファイドコンディション/デシジョンカバレッジ (MC/DC) 各ステートメントが少なくとも1度は,呼び出された ⇒ サイクルベースの概念上,毎サイクル呼び出されるため,言語上で保証済み 全てのデシジョンが,可能性のある結果を少なくとも1度は出力した デシジョンにおける条件が個別に,それぞれの結果に影響している 9 カバレッジ(DC) カバレッジ(DC) 例:論理演算子ANDの場合 In1 In2 AND Out In1 In2 Out f f f f t f t f t t カバレッジ(MC/DC) カバレッジ(MC/DC) In1 In2 Out f f f f t f 1ケース f t f f 1ケース t t t t 1ケース 1ケース 1ケース ②要件ベーステストによる検証モデルテストカバレッジ:MTC z カバレッジ計測&解析&レポート カバレッジ結果 オペレータへのトレース 8 ③ソフトウェア設計からコード生成 z Lustre仕様言語からCコードへの自動変換 ¾ Lustreキーワード と Cサブセット の対応(Cサブセット導入が重要) 強い型,強いセマンティックを持つ言語LustreからC言語への変換は,サブ セットを導入することで,安全なCコードへ変換する(サブセットの適用は,機 能安全規格でも推奨) 更に,サブセット+コーディング規約をスタイルガイドに採用 Cサブセット: ¾ コーディング規約:MISRA-C 2004 再帰呼出しがない&無限ループがない 低レベルの複雑さ 副作用がない(例:a[i] = i++;など) 関数を引数に持たない 対応付けの検証 MC/DCカバレッジ MC/DCカバレッジ100%による対応付けの検証(DO-178Bガイドラインで定 義されているコード構造カバレッジ計測基準の1つ) モデルベース開発における V 字から Y 字プロセスへ 生成Cコードのユニットテスト(コードレビュー,コードの構造カバレッジ解析)の削 減を狙い, 自動的に信頼性の高いCコード を生成するプロセス ④ソースコードとオブジェクト間のトレーサビリティ 検証 z ソースコード と オブジェクト 間のトレーサビリティと検 証活動 ¾ ¾ Cソースコードから,コンパイラによって正しくオブジェクトが生成された かを検証する CAST-12:Guidelines for Approving Source Code to Object Code Traceabilityを参考 ソースコードに対して直接トレースできないオブジェクト をコンパイラーが 生成するケース(例:配列境界のチェック,エラーハンドリングなど)があるた め,コンパイラーによって追加されたオブジェクトの検出&識別することが狙 い レビューによる検証 Cサンプルによる検証 プログラムに適用されている 全サブセット に対して検証を行う. (プログラムが,コーディング規約に完全に従っている場合に有効な手法) Cサブセットに対して,MC/DC カバレッジ サブセットに対して,MC/DCカバレッジ 100%のテストケースを用いて検証する 100%のテストケースを用いて検証する 9 ④ソースコードとオブジェクト間のトレーサビ リティ検証 z Cサンプル の構成 ¾ コードジェネレータによって生成される全てのC構文を含む(Cサブセット) 基本C構文と型の組合せ(Int+Int,Real+Realなど) 基本C構文の複数項(最大10項まで) ¾ (a+b)*c-dなど C構文の組合せ: 入力数800のノード 1ノード内に100メモリー(遅延演算子) 階層の深さが100であるノード 入力数32のブール演算子 データ構造の深さ20のタプル 100項の算術演算式 32項の論理式 動作環境のチェック コード生成 サンプル モデル サンプルC サンプルCソ ース( ース(生成) 生成) Cサブセット,サンプルの検証 入力テスト ベクトル 比較 参照出力 ベクトル サンプルC サンプルCソー ス(参照) 参照) 比較 出力ベクトル 10 発表内容 z z モデルベース開発と課題 総合的な検証手法 Combined Testing Process ¾ ¾ ¾ ¾ z ソフトウェア設計工程での検証 要件ベーステストによる検証(モデルテストカバレッジ解析) ソフトウェア設計からコード生成(ユニットテストの省略) ソースコードとオブジェクト間のトレーサビリティの検証 まとめ まとめ z モデルベース開発における総合的な検証手法の提案 ¾ ¾ ドメイン特定(リアクティブシステム)で形式言語をモデルに対応付けるこ とで形式言語の利点を生かした,ソフトウェア設計・検証環境 航空システムのソフトウェア開発におけるガイドラインに適応した一連 の検証活動 z Combined Testing Processのコンセプトは,航空システム以外にも適用可 能なアイデア 今後について ¾ Lustre言語の拡張 オートマトン追加定義(状態遷移とデータフローのネスト構造実現⇒直感的 なモデリングが重要) モデリングの簡潔さは重要 生成コードもコンパクトになる 複雑なデータ処理のキーワード追加(行列演算など) 11 12
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