キャリア・コンサルタント行動憲章 - 特定非営利活動法人キャリア

キャリア・コンサルタント行動憲章
2004 年 7 月制定(2008 年 10 月 6 日修正)
序
文
キャリア・コンサルタントの養成等に関わる各機関は、それぞれの枠を超えて相互に協力し、
キャリア・コンサルタントの資質の確保及びキャリア・コンサルティングの普及啓発を図り、個
人の主体的なキャリア形成と職業生活の充実、ひいてはわが国の雇用の安定に貢献することを目
的に、
「キャリア・コンサルタント養成講座・能力評価試験実施機関連絡協議会」を 2004 年 3
月に設立し、2006 年 4 月に名称をキャリア・コンサルティング協議会と変更し、2007 年 8
月に特定非営利活動法人キャリア・コンサルティング協議会(以下、
「協議会」と称す。)となった。
協議会では、その目的を推進するにあたり、目指すべきキャリア・コンサルティングのありか
た、キャリア・コンサルティングを担うキャリア・コンサルタントのあるべき姿・ビジョンを明
らかにすることが必要であるとの認識から「キャリア・コンサルタント行動憲章」を採択した。
協議会の各機関においては、それぞれキャリア・コンサルタント養成講座及び能力評価試験を
独自の考え方に基づいて実施し、その資格呼称も様々であるが、
「キャリア・コンサルタント行動
憲章」は、それらの単なる最大公約数的なものではなく、
「わが国独自のキャリア・コンサルティ
ングのあり方とは何か、プロフェッショナルとしてのキャリア・コンサルタントとはいかなる人
材か」という視点から生まれたものである。
「わが国独自のキャリア・コンサルティング」の基礎となり、多大な影響を受けているのは、
米国(アメリカ)のカウンセリングの考え方である。アメリカのカウンセリングは職業力ウンセリ
ングを発祥として、いまや 1 世紀の歴史を歩み、今も進化を続けている。
一方、わが国の「キャリア・コンサルティング」は歩み始めたばかりである。
その歩を進めるにあたって、「日本的経営」が、アメリ力企業に影響を不えたように、「わが国
のキャリア・コンサルティング」がアメリカのカウンセリングに影饗を不えるほどの質の高さを
追求する気概を持ち続けていきたい。
この「キャリア・コンサルタント行動憲章は、わが国の文化や国民性に根ざした「わが国独自
のキャリア・コンサルティングの確立」を目指すうえでのキャリア・コンサルティング協議会一
致の目標として掲げるものである。
協議会としては、この目標を実現するため、キャリア・コンサルタントのあるべき姿(行動原則)
を明確化し、その上でキャリア・コンサルタントが行う具体的活動と守るべき共通倫理(行動規律)
を定めた。
協議会加盟の全団体は、
「キャリア・コンサルタント行動憲章」に則り、キャリア・コンサルタ
ントの養成と能力向上に努めるとともに、キャリア・コンサルティングの普及啓発に尽力するこ
とを宣言する。
キャリア・コンサルタントの行動原則
1.キャリア・コンサルティングの本質を理解し、自己研鑚を行い、活動する
キャリア・コンサルティングの本質は、
「相談者のキャリア形成に関する問題、すなわち、相談
者が自分の人生をどう生きていくか、人生計画に関わる問題や人生を歩むプロセスにおいて直面
する問題の解決を支援すること」である。キャリア・コンサルタントは「個人の人生に関わると
はどういうことか」を自問し、
「個人の人生に関わっていくということ」を十分に理解するととも
に、その責任の重要性を自覚し、絶えざる自己研鑚を積み、活動する。
2.相談者の「自分らしさ」の追求と、問題解決の支援を行う
キャリア・コンサルティングの目的は、
「相談者が自分で自分の問題を解決することであり、相
談者自らが本来持っている自分らしさに気づき、自分らしさを発揮して生き生きと活動すること、
すなわち、相談者が自分自身の存在価値を追求することができるよう支援すること」である。キ
ャリア・コンサルタントは、このキャリア・コンサルティングの目的を明確にしたうえで、支援
活動を行う。
3.個人では対処できない環境の問題を発見し、改善する
キャリア・コンサルティングの対象は、
「相談者個人及び地域、組織、家族、対人関係やシステ
ムなどの個人を取り巻く環境」である。キャリアはこの環境の中で培われるものであることを、
キャリア・コンサルタントは十分に認識する必要がある。相談者の問題が個人に対する支援だけ
では解決できない環境の問題である場合には、その問題を発見し、環境に働きかけて、環境を改
善していく活動を行う。
4.自己の経験や自説にこだわることなく、相談者の視点に立って、活動する
キャリア・コンサルティングの方法については、相談者の特性や抱える問題によって、適切な
方法を選択して、実施することが必要である。キャリア・コンサルタントは自身の能力の限界、
任務の範囲を自覚したうえで、相談者の悩みを傾聴することによって真摯に受け止め、適切な情
報提供・アドバイスや、必要に応じて他の専門家への紹介・委嘱を行う。キャリア・コンサルタ
ントは自己の経験や自説・持論にこだわることなく、相談者の視点に立って活動する。
5.客観的な評価を行い、適切な指導を受けることによって、活動の質を高める
実施したキャリア・コンサルティング活動が相談者にとって適切であったかを常に評価・検証
する。評価・検証は自己評価や相談者の評価だけではなく、相談者のプライバシー保護を前提に、
適格な第三者による客観的な評価を受ける。新たに取り組むべき課題については、適切な指導な
ども受けながら課題克服に努め、今後のキャリア・コンサルティング活動の質を高めていく。
キャリア・コンサルタントの活動
【キャリア・コンサルタントの行動原則】に基づき、キャリア・コンサルタントが行う主な活動
は、以下のとおりである。
なお、
「4.スーパービジョン」は、キャリア・コンサルタントが十分な経験を積んだうえで、さ
らに一定の能力を習得した「指導レベルのキャリア・コンサルタント(スーパーバイザー)」の活
動として、また、
「5.自己研鑚」は、すべてのキャリア・コンサルタントが自分自身の能力の維持・
向上のための活動として整理している。
1.カウンセリング活動
キャリア・コンサルタントは、キャリア開発及びカウンセリングに関する知識・スキルを用い
て、カウンセリングを行う。カウンセリングの形態は 1 対 1 の個別面接、グループ単位での面接、
電子メールや電話を活用した「オンライン・カウンセリング」がある。相談者の特性やテーマに
よって選定されたカウンセリングの形態において、カウンセリングを効果的に行う。
2.教育・普及活動
キャリア・コンサルタントは、キャリア開発に関する議演・研修を企画・実施し、また、キャ
リア・コンサルティングに関する知識・スキルを教育・指導するほか、
「個人の主体的なキャリア
形成」の重要性を広く社会一般に普及する活動を行う。
3.環境への働きかけ
キャリア・コンサルタントは、キャリアは環境(地域、組織、家族、対人関係やシステムなどの
個人を取り巻く環境)との相互作用によって培われるものであるという観点から、環境に対し、相
談者個人に対する支援だけでは解決できない環境の問題の発見や指摘、改善の提案等の働きかけ
を行う。
4.スーパービジョン
指導レベルのキャリア・コンサルタント(スーパーバイザー)は、キャリア・コンサルタントが
抱える個別問題の本質を理解したうえで、キャリア・コンサルタントの相談者に対する対応が適
切かどうか判断し、相談者に対する支援の適切さ、あるいは丌十分さ、自己の問題点等に気づか
せ、より高度な視点から指導してキャリア・コンサルタント自身による問題解決を促すことを行
う。
5.自己研鑚
キャリア・コンサルタントの活動を支えるのは、丌断の自己研鑚である。ブロフェッショナル
として求められる態度・知識・スキルの修得には終わりがない。質の高い援助を提供するために
は、新しい考え方や理論も学び、常に自分自身の能力を磨く姿勢をもって自己研鑚する。
また、この自己研鑚の結果、相談過程を通じて、キャリア・コンサルタント、相談者ともに人
間として成長するものであることを理解する。
キャリア・コンサルタントの行動規律
第 1 条(基本理念)
1.キャリア・コンサルタントは、その職務を行うにあたり、自己決定権、プライバシー権等の相
談者の権利の尊重を基本理念として、公正かつ客観的な提案や助言をするようにしなければなら
ない。
2.キャリア・コンサルタントは、相談者の長期・持続的利益を優先的に考えて行動しなければな
らない。
第 2 条(適正な職務)
1.キャリア・コンサルタントは、相談者をその国籍・性別・年齢・信条等によって差別すること
なく、依頼を引き受け、常に公正な態度をもって職務を行い、その信頼を保持しなければならな
い。
2.キャリア・コンサルタントは、自己の研究目的や興昧のためにコンサルティングを利用しては
ならない。
第 3 条(守秘義務)
1.キャリア・コンサルタントは、職務上知り得た資料、情報については、その秘密を厳重に保持
し、正当な理由なく他人に漏らしたり、利用したりしてはならない。
2.キャリア・コンサルタントは事例や研究の公表に際して、プライバシーの保護に留意し、相談
者の丌利益にならないよう、適切な手続きをとらなければならない。
第 4 条(任務の範囲)
キャリア・コンサルタントは、能力以上の仕事を引き受けようとしてはならない。自己の能力
の限界を自覚し、必要に応じて他の分野の専門家の協力を受けるほか、専門家の紹介やそれへの
委嘱を行わなければならない。
第 5 条(情報開示)
キャリア・コンサルタントは、相談者に対しコンサルティングの目標、範囲について、必要か
つ十分な説明を行い、十分な理解を得てから職務をすすめなければならない。
第 6 条(誇示・誹謗の禁止)
キャリア・コンサルタントは、自己の業績を過大に誇示したり、他のコンサルタントまたは団
体について、誹謗したりしてはならない。
第 7 条(利益の保護)
キャリア・コンサルタントは、相談者の利益が最大になることに専念し、相談者以外の自己お
よび第三者の利益を優先させてはならない。
第 8 条(料金)
キャリア・コンサルタントは、料金の発生する場合は、相談者に対し、料金について事前に説
明し、その同意を得なければならない。また、料金を変更する場合も、両者が同意の上で行わな
ければならない。
第 9 条(倫理の遵守)
キャリア・コンサルタントは、本行動規律を十分に理解し、違反することがないように常に注
意しなければならない。
特定非営利活動法人キャリア・コンサルティング協議会
倫理綱領
目
的
第 1 条 この倫理綱領は、キャリア・コンサルタント(標準レベルキャリア・コンサルタント及び
キャリア・コンサルティング技能士を言う。以下同じ。
)が遵守すべき事項を定め、キャリア・
コンサルタントの質の向上を図り、適正なキャリア・コンサルティングを通じて相談者個人、組
織および社会の発展に寄不することを目的とする。
基本理念
第 2 条 キャリア・コンサルタントは、キャリア・コンサルティングを行うにあたり、人間尊重を
基本理念とし、個の尊厳を侵してはならない。
2 キャリア・コンサルタントは、キャリア・コンサルティングが、相談者の生涯にわたる生き甲
斐・働き甲斐に影響を不えることを視野に入れ、そのことを自覚して業務を遂行しなければなら
ない。
適正な職務
第 3 条 キャリア・コンサルタントは、相談者を国籍・性別・年齢・宗教・信条・身体的障害・社
会的身分等により差別してはならない。常に公正な態度をもって職務を行い、専門家としての信
頼を保持しなければならない。
2
キャリア・コンサルタントは、キャリア・コンサルタントとしての誇りを持ち、法律や公序良
俗に反するような行為をしてはならない。
3 キャリア・コンサルタントは、キャリア・コンサルティングを、相談者の利益をあくまでも第
一義として、自己の研究目的や興味のためにだけ行ってはならない。
任務の範囲
第4条
キャリア・コンサルタントは、キャリア・コンサルティングを行うにあたり、自己の能力
の限界を自覚し、能力以上の仕事を引き受けてはならない。信頼できるキャリア・コンサルタン
トへの紹介やそれへの委嘱、また必要に応じて他の分野の専門家の協力を求めるなど相談者の利
益のために最大の努力をしなければならない。
2 キャリア・コンサルタントは、キャリア・コンサルティングを実施するにあたり、心理テスト
等のアセスメントツールの利用にあたっては、その妥当性、信頼性を明らかにし、また訓練を受
けた範囲内で実施しなければならない。
自己研鑚
第 5 条 キャリア・コンサルタントは、キャリア・コンサルティングに関する学識・技能を習得し、
資質向上を図るため、絶えざる自己研鑚に努めなければならない。
2 キャリア・コンサルタントは、キャリア・コンサルティングの普及啓発を常に行わなければな
らない。そのために、組織を取り巻く社会、経済、環境の動向や、教育、生活の場にも常に関心
をはらい、専門家としての専門性を維持向上するよう努めなければならない。
守秘義務
第 6 条 キャリア・コンサルタントは、キャリア・コンサルティングを通じて、職務上知り得た事
実、資料、情報については、守秘義務を負う。
2 キャリア・コンサルタントは、キャリア・コンサルティングの事例や研究の公表に際して、プ
ライバシー保護に最大限留意し、
相談者の特定や、相談者および関係者の丌利益が生じないよう、
適切な手続きをとらなければならない。
3 但し、身体・生命の危機が察知される場合、社会に及ぼす影響が個の守秘に優先する場合、法
律に定めのある場合等は、この限りではない。
自己決定権の尊重
第 7条
キャリア・コンサルタントは、キャリア・コンサルティングを実施するにあたり、相談者
に対してキャリア・コンサルティングの目的、範囲について、必要かつ十分な説明を行い、相談
者の理解を得て職務を進めなければならない。
2 キャリア・コンサルタントは、キャリア・コンサルティングにおいては、相談者の自己決定権
を尊重しなければならない。
相談者との関係
第 8 条 キャリア・コンサルタントは、相談者との間に様々な八ラスメントが起こらないように配
慮しなければならない。また、キャリア・コンサルタントは、相談者との間において想定される
問題や危険性について十分配慮してキャリア・コンサルティングを行わなければならない。
2 キャリア・コンサルタントは相談者との間でとりわけ性的親密性を持たないよう努めなければ
ならない。また、そのような可能性が生じ、相談者の利益を損なう恐れのある場合は、キャリア・
コンサルティングを中止するか、他のキャリア・コンサルタントに業務を依頼するなど、適切な
処置を行わなければならない。
誇示・誹謗の禁止
第 9 条 キャリア・コンサルタントは、キャリア・コンサルタントとして、自己の身分や業績を過
大に誇示したり、他のキャリア・コンサルタントまたは団体について、誹謗・中傷してはならな
い。
組織への働きかけ
第 10 条
キャリア・コンサルタントは、キャリア・コンサルティングを行うにあたり、相談者に対
する支援だけでは解決できない環境の問題の発見や指摘、改善の提案などを行うにあたり集団、
企業、組織への働きかけに努めなければならない。
2 前項の目的を達成するため、問題の現実的状況の理解や、心理的状況の理解ができるための知
識、学識、見識を持つように努めなければならない。
3 前 2 項の目的を果たすため、必要に応じて他の専門家とのネットワークづくりに努めなければ
ならない。
利益の相反
第 11 条
キャリア・コンサルタントは、キャリア・コンサルティングの契約関係にある組織と相
談者との間に利益が相反するおそれがある場合には、事実関係を明らかにしたうえで相談者の理
解のもとに業務に当たるよう努めなければならない。
企業・組織への報告義務
第 12 条
キャリア・コンサルタントは、キャリア・コンサルティングを企業、組織との契約関係
の上で行っている場合において、相談者に対する効果的な援助を妨げる状況にあるときは、その
旨相談者の了解を得て、組織に報告しなげればならない。
同意事項
第 13 条
キャリア・コンサルタントは相談者との間で、キャリア・コンサルティングの範囲、相
談時間、相談場所、相談料金等について事前に説明し、その同意を得なければならない。
2 前項の内容に変更が生じた場合、両者の合意の上、キャリア・コンサルティングを行わなけれ
ばならない。
倫理委員会
第 14 条
キャリア・コンサルタントによるキャリア・コンサルティングが、専門的見地から適正に
遂行されることを目的として協議会に倫理委員会をおく。
2 倫理委員会は、キャリア・コンサルタントに対し、この倫理綱領を遵守するよう、適切に機能
しなければならない。
3 キャリア・コンサルタントに本倫理綱領に反する行為があったと考えられる場合は、倫理委員
会が対象事項を審議し、理事会に報告する。本倫理綱領違反者への対応事項については別に定め
る。
4 理事会は倫理委員会から違反行為の内容および対応事項についての報告を受け、処置について
審議し決定する。
5 倫理委員会に関する詳細事項は別に定める。
遵守義務
第 15 条
キャリア・コンサルタントは、本倫理綱領を十分に理解し、遵守する義務を負う。
附 則
この綱領は平成 20 年 9 月 1 日より施行する。
この綱領は平成 25 年 10 月 1 日より改正施行する。