平成 14 年度 ベンチャー企業等商品化・事業化可能性調査 調査テーマ名 多角形圧縮木材の販売戦略策定調査 代表法人 後藤建設株式会社 (グループ名) (ベンチャーニューウッド) 調査テーマを 後藤建設株式会社 有する中小企業 調査機関 株式会社ケイネットワーク 協力企業 報告書 なし 1.グループの概要 (1)調査テーマを有する中小企業の概要 ①会社名: 後藤建設株式会社 ②代表者名: 後藤久慶 ③所在地: 長野県下伊那郡阿南町新野 502 番地 ④電話番号: 0260-24-2311 Fax 番号: 0260-24-2344 ⑤ホームアドレス:http://www.gotoh.co.jp ⑥e-mail: info@gotoh.co.jp ⑦資本金: 3,500 万円 ⑧従業員: 11 人 (2)調査機関の概要 ①会社名: 株式会社ケイネットワーク ②代表者名: 嘉部喜美江 ③所在地: 東京都港区赤坂 9-6-28、1105 ④電話番号: 03-5771-0881 Fax 番号: 03-5771-0878 (3)その他協力会社の概要 なし 2.新しい事業(製品、サービス)の概要 (1)製品の特徴、性能等 圧縮木材は、自然素材の丸太に圧力と熱を加え、空隙と水分を除いた だけの、自然環境共生型の資材で、圧縮により形状変形と表面強化処理 を同時に行った効果を発揮する。その一例として、六角圧縮木材防音壁 は日本道路公団の音響基準をクリアできた。(純木製では日本初)また、 大量の丸太を原材料に使用するため、間伐促進による林業の活性化と森 林整備による国土の保全に貢献できるものである。 間伐材の有効利用促進へつながる特徴としては、生木や虫食い被害木、 ねじれた木でも加工でき、山から搬出して最短三時間程で完成する。 表面も非常に硬くなり、利用価値が広がる。 (2)これまでの事業化への取り組み状況 現在までに、生産技術の部分は確立済みである。様々な試作品を作り、 独自の性能試験もすでにほぼ終了し、テスト販売や実験施工により一部 実績を上げている状況である。現在までの主な試作品として、ベンチ、 椅子、トイレ小屋、残存型枠、防音壁、ガードフェンス、ガーデニング 用品等がある。 ベンチ等 残存型枠 トイレ小屋 防音壁 3.調査内容及び結果 (1)市場規模調査 多角形圧縮木材を用いた商品として、現時点では防音壁、住宅防音材、 防護柵及び土木・建築資材等が考えられる。それぞれの市場規模につい て、文献等により調査した結果は下記のとおり。 ①防音市場 ○市場規模:木質防音フロア 866 万㎡、防音壁 80 万㎡、140 億円 ○用途:床材、天井材、間仕切り、屋根材、防音ドア、防音ルーム・カラ オケボックス・ホール、電話ボックス、道路吸音板、仮設資材、防音カバ ー、防音ボックス、消音器、制振・防振材、騒音防止装置 ○需要先:住宅(界壁、界床、ドア、窓、ピアノ/オーディオ室、寝室など)、 オフィスビル、学校・公共施設、ホテル、レストラン、その他 ○対処が必要な騒音:工場・事業場、建設現場、近隣騒音、道路交通、航 空機の飛行、鉄道(特に新幹線) ②住宅関連防音市場 ○市場規模:木質防音フロア:9.6 百万㎡、91,729 百万円、1995 年 ○機能検証:寸法安定性、耐候性、耐傷性、防水性、重歩行性、床暖房機 能、防ダニ、防カビ、耐熱性の各点をチェック ③防護柵市場 ○市場規模:ガードレール 600 万m/年、ペーブフェンス 220 万m/年 (2)競合商品調査 上記市場の内、当面競合すると考えられる防音壁、残存型枠、防護柵 等の商品についての調査結果は以下のとおり。 分 類 防音壁 競合商品 単 位 ㎡ 価 格 (消費税別) 備 考 木製遮音壁 「*****」 *****組合 スギ間伐材 【吸音性能なし】 木製吸音壁 「*****」 *****組合 上記遮音壁の吸音タイプ 【JHの吸音率基準合格】 ㎡ 新製品 木製遮音壁 *****森林組合 間伐小径木を使用 【吸音性能なし】 ㎡ 平成 12 年度、群馬県 の助成により北関東 自動車道に 4km 施工 木製遮音壁 (協)***** 中目材を使用 【吸音性能なし】 ㎡ コンクリート防音壁 「*****」 *****(株) 特殊加工ウッドチップをセメ ントと混練 【JHの吸音率基準合格】 ㎡ 新製品 *****防音システム 「*****」 *****他*社 アルミ繊維吸音材を使用 【JHの吸音率基準合格】 ㎡ 新製品 統一型(標準型)防音パネル 建材メーカー等 10 数社 アルミパネルにグラスウール 内蔵 【JHの吸音率基準合格】 厚 95×幅 500×長 3,960mm 鉄筋コンクリート製 【吸音性能なし】 厚 90×幅 500×長 3,960mm ㎡ 10,000 ㎡ 6,700 遮音での標準品 市場価格 コンクリート遮音板 建材メーカー等 10 数社 残存型枠 規格・寸法 新製品 遮音・吸音での標準品 市場価格(値崩れ、 9,000 円も) 木質型枠***** 「*****」 *****(株) 丸太を連結しパネル化 ㎡ コンクリート残存型枠 「*****」 ***** コンクリート製 割石風 ㎡ 7,800 市場価格 コンクリート残存型枠 「*****」 ***** コンクリート製 割石風 ㎡ 6,550 国土交通省等での施 工実績多数 市場価格 防護柵 鋼製ペーブフェンス(PA) 建材メーカー各社 フロントビームのパイプのみ 厚 2,3×外形 42,7×長 2,000mm 本 鋼製ガードパイプ(Gp‑Cp‑2E) 建材メーカー各社 標準型のパイプのみ(Gp‑Cp) 厚 2,4×外形 48,6×長 2,000mm 本 木製ガードレール 「*****」 *****(株) その他 1,530 市場価格 市場価格 m 木製ガードパイプ 「*****」 *****(株) 鋼製ガードパイプを 丸太に内蔵 m 木製ガードレール 「*****」 *****協会 鋼製ビームと間伐材丸太(半 割)の複合構造 m 太鼓落し材(松、カラ松) 厚 12cm×長 2mに換算 (4m価格 2,510 円の 1/2) 本 1,255 杭丸太(松、カラ松) 末口 15cm×長 2m 本 1,170 〃 コンクリート擬木(丸太) φ10cm×長2mに換算 (1m価格 2,150 円の 2 倍) 本 4,300 〃 プラスチック擬木(丸太) φ10cm×長2m 本 5,610 〃 丸棒削り材 φ10cm×長2m 本 1,100 〃 φ12cm×長2m 本 1,580 *****森林組合 の定価 〃 (3)テストマーケティング 試作品のコスト高を理解していただいた上で、長野県林務部及び土木 部発注の木製床固工や国立公園内の木橋高欄用に六角圧縮木材約 600 本が試験採用された。 同時に、公共事業で採用する場合の価格帯等についてもアドバイスい ただき、上記競合商品の調査結果と合わせ事業化に向けての貴重な資料 となった。 防護柵 木製床固工 木 橋 (4)ヒアリング調査 ターゲットとなる圧縮木材商品の市場規模及び競合商品に関する調 査結果を踏まえ、建築・土木・建材メーカー等15社を対象に六角圧縮 木材をサンプルとして提示した上で市場性、製品等に関するヒアリング 調査を行った。 市場調査の方法には、一般的に下記の4Pが使われるが、今回の調査 では、①Product と②Pricing を市場のニーズとウォンツを把握するた めの基本と考え、①と②を中心として各社にヒアリングを実施した。 ③と④はむしろ、各社にヒアリングをかけた結果として、ヒアリング 先企業またはそれから得た情報による新たなターゲット企業等との業 務提携などのアライアンスによる次のステップと考える。 どの市場のどの顧客に対して六角圧縮材がターゲッ トとなるのか。 六角圧縮材の価格は市場性があるのか?(言いかえ ②PRICING(価格) れば、ターゲット顧客に手の届く価格なのか?) 競争力のある価格なのか? 競合価格でも採算が取れるのか? ③PLACING(販売する場所・経路) どのような流通経路・チャンネルを通じてどこで販 売出来るのか?販売するための仕掛けをどう作る か? 販売数量を伸ばすためにどのような販売促進を行う ④PROMOTION(販売促進方法) のか?アライアンス先企業との提携、広告宣伝の活 用など。 ①PRODUCT(製品・商品・サービス) (5)各社への具体的なヒアリング項目 ○当該製品の第一印象 市場性があると思うか? 使用用途としては何が期待出来そうか? 貴社で六角圧縮材の取扱いを検討する可能性はあるか? 第一印象がネガティブな場合、どうしてか?その理由は? ○製品自体の評価 品質 価格競争力 製造技術 製品開発力 競合製品について ○マーケティングについて 販売手段&経路 対象顧客 PR手段 主な需要先の需給動向 ○その他 当該ヒアリング会社以外に当該六角圧縮材の市場調査について相談出来 る企業の紹介依頼。六角圧縮材を販売するため何かアドバイスはないか。 (6)ヒアリング調査先の企業等 製品の市場別ニーズ把握のため下記業種別にヒアリング対象企業を選定 した。 1)建築・土木 4社 2)建材 2社 3)建設 1社 4)住宅 2社 5)その他 2社 6)官公庁等 4 団体 (7)ヒアリング調査先企業等の反応(集約) ①建築・土木 ・付加価値をつけて行かなければ難しい。 ・自然保護や環境問題は大切な事ではあるが、目先のビジネスとして は、民間レベルでは難しい。 ・耐久性、コストなどの問題が解決できれば、河川護岸用のブロックと しての可能性はあるかもしれない。 ②建材 ・コストさえ折り合えば十分ビジネスになる。 ・圧縮木材のガードフェンスなどへの使用を検討後、商品開発から販売 までの全面協力を約束。 ③建設 ・コスト、環境問題(接着剤等)の部分がクリアできないと建設関連の 使い道としては非常に難しい。 ・六角圧縮木材では大きさに限りがある。 ④住宅 ・住宅用建材としての使用は、品質、臭気に問題があるためユーザーニ ーズに合致せず不適と思われる。 ・間伐材は住宅用には不向きであるし、六角にする意味が無い。また、 廉価な住宅開発向けにもコスト的に難しい。 ⑤その他 ・六角圧縮材で土壌と植物を固定する事で、河川の緑化擁壁、高速道路 の緑化擁壁、治山ダムの緑化擁壁用として使える。 ・環境保全としての循環型し尿処理機と資源有効活用としての間伐材使 用の組み合わせは地方自治体に受け入れられやすい企画と思われる。 ⑥官公庁等 ・消費者のニーズからではなく技術的な展開から始まっている商品のた め、セールスポイントがつかめない。 ・自然環境をアピールできる商品は高くても良く売れるものである。 ・なぜ六角柱でなければならないのか、間伐材の丸太のままに対するメ リットが感じられない。 ・国土交通省、日本道路公団でも様々な木製構造物を検討中であり六角 圧縮木材防音壁については性能面では問題ない。コスト及び耐久性の 問題がクリアされれば採用は可能である。 (8)調査結果による考察 今回の調査結果をふまえ、圧縮木材利用の販売主力製品としては戸外 に使用される物、具体的には木製ガードフェンスや防音壁等が適してい ると思われる。また、圧縮木材の加工性を良くすることで、生活商品と して、ガーデニング製品等が加工コストをあまりかけず販売できると考 えられる。今回各社のヒアリングにおいて、腐食に弱い、加工性が悪い、 臭度が強い、見た目が良くない等の欠点が指摘された。指摘部分の改善 により、リサイクルトイレの小屋や一部の住宅用建材としての用途にも 広がってくる可能性がある。 防音壁としての用途は、まだ検討段階であるが、生産性を高めて、価 格競争力がつけば、かなり良い反応となることは、調査結果からも明ら かであると認識している。 今回のヒアリング調査の結果、高コストであることが最も大きな問題 であった。聞き取り調査の段階で、個人的には「間伐材を使用したいと は常に思っている。しかし、企業の利潤追求から考えると……。」との 答えが多かった。 間伐材利用(圧縮木材の販売)に重要な事は、官民一体のプロジェク トとして考えていくことであり、今回のこの調査期間内に、地方自治体 への働きかけとともに国土交通省へのアプローチができた事で、かなり の協力が得られる見通しがでてきた。 (9)販売戦略 調査の結果、具体的な提携等に進める可能性が見えてきた。 また、地元自治体等の協力が得られ、第三セクター方式による木材の 圧縮加工施設が整備される事となり、価格引き下げを実現できる見通し もでてきた。これにより、競争力もつけられ、市場への販売拡大につな げられるものと認識している。最大の問題である価格についてもこれで 解決の目処が立つことになる。 アクションプランとしては、現時点で販売ルートの見通しが立ってい る商品の開発を推進し、順次圧縮木材商品のラインアップを増やして行 く。 具体的には、最初に歩道用ガードフェンスを大手建材メーカーと共同 開発し、テストマーケティングによる実績を踏まえ、国土交通省や地方 自治体へガードフェンスの販売営業を開始する。 次いで、本調査結果を踏まえ、防音壁、ガードレール等の土木製品や エクステリア、ガーデニング材等の建築用資材を開発すると共に、それ ぞれの商品毎に販売ルートを確立して行く。 4.今後の事業展開と販売課題 (1)販売課題 エクステリア、ガーデニング材としての圧縮木材は商品価値があり、 DIY やホームセンター等での販路拡大は、調査段階でルート確立が見込 めるものの、コストダウンが目下の課題である。特にビジネスとして大 きな収益をもたらすには、大量生産が不可欠であり、生産ラインの拡充 が最も重要な課題となる。 需要としては、あらゆる代替商品がある中で、圧縮木材製品を優位に 販売するには、全国的に安定供給することが不可欠であり、知名度を上 げていくことも必要である。 海外の安価な商品に依存する現実がある中で、価格競争力だけを見る と非常に不利である。商品価値を高めるアイデアで販路拡大をする必要 がある。 (2)今後の事業展開 あらゆる商品に対しての聞き取り調査を行なった結果、大きく方針を 分け、下記のような予定で今後の事業展開を進める。 ① 第三セクター方式による木材の圧縮加工施設の運営 地元自治体をはじめとする近隣の自治体と、第三セクター方式に よる木材の圧縮加工施設の運営に着手する。今春までに具体的な青 写真が出来上がり、生産ラインの確立とともに、近郊の公園や歩道 等のフェンスとして設置をしていく計画も同時に提案、検討に入っ ている。 ② 大手建材メーカーとの提携での事業展開 今回、提携会社として、大手建材メーカーが商品開発協力並びに 商品販売を引き受けていただけることになり、全国的な営業を任せ る予定である。具体的な商品としては、ガードフェンスをまず推し 進めていく。 ③ 日本道路公団、国土交通省へのアプローチ 防音壁の商品価値を検討している段階なので、その後の具体的な 提案をし、第三セクターによる工場が本格稼動できる状況を確認し、 価格競争力をつけ、高速道路等への設置を提案していく。 ④ DIY やホームセンターへのアプローチ 工場の生産ライン確立と同時に、エクステリア、ガーデニング材 等販売が見込める商品選定を検討してもらう。 ⑤ 東京都へのアプローチ 現在、東京都も環境問題の面並びに森林保護の観点から、木材使 用を検討している模様。そのため、都内の公園等に圧縮木材製のフ ェンスを設置する提案のアプローチを開始。 5.調査テーマを有する中小企業社長のコメント 今回の調査は、圧縮木材製品の潜在需要の掘り起こしと販売提携企業 探しを主目的として行った。その結果、調査先各社からは大変厳しい意 見が多く、圧縮木材製品が市場ニーズから生まれたものでないことを痛 感した。しかしながら、間伐材の有効利用による森林整備の必要性は各 社十分認識しているためか、事業化に向けたアドバイスや方向性を見出 すヒントも多数いただいた。 厳しい調査結果が続く中、新たな商品としてガードフェンスを試作し 大手建材メーカーに提案したところ、ガードフェンスの商品開発から販 売まで全面的に協力してもらえる回答が得られた。これにより事業化に 向けての最大の課題であった主力商品、販売ルートが一気に解決した。 商品開発に当たり、市場のニーズやウォンツへの柔軟な対応が最も重 要であることを改めて再確認できた調査であった。
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