うがいのポスターデザイン(うがいシリーズ No.11)について デ ザインを考える時,いつも「対象者は誰なのか」というところから思案を展開します。自 分の経験もありますが,幼い頃つけた習慣は生涯忘れないと思い,子どもを今回の対象者とし て設定しました。 では,いったい子どもはうがいに対してどのような思いを持っているのでしょうか。うがい を励行している子どもも居ますが,苦手な子どもも少なくはありません。 デザインは,ユーザの行動を誘発する力を持っています。従って,どのようなポスターにす れば,うがい嫌いの子どもがうがい好きになるのかを考えてみました。子どもは皆遊ぶのが好 きで,無限の想像力を持っています。これは大きなヒントとなりました。 ですから,うがいという衛生行為を遊戯行為に視点転換したらどうかと考え,デザインの方 針を決定しました。うがい液をブクブク・ガラガラすることを,口の中に小さな人工嵐・人工 津波を作ることと想像しますと,けっこう面白いではありませんか。 デザインのコンセプトができました。次は,如何に表現するかを考えなければいけません。 ちょっと変わったアングルから,うがいの様子を手描き風に表現しました。豊富な想像力を持 つ子どもなら,すぐに分かってくれるはずです。 できれば,シンプルな構図でインパクトのあるポスターを作りたいと思い,黄色の背景に黒 い線状だけで表現することにしました。対象は子どもですから,タイトルにふりがなも入れま した。 デ ザインの世界に「Less Is More」という有名な言葉があります。最初はうがいの方法なども ポスターに入れようかと考えましたが,対象者はうがいの方法を知らない子どもではなく,苦 手であるだけの子どもですから,省略しました。 黄ロビン 名古屋学芸大学デザイン学科准教授 E-mail:robin@nuas.ac.jp URL:http://media.nuas.ac.jp/~robin/ 〔うがいの思い出〕 私も正直,小さい頃からうがいは苦手でした。両親共に医学関係者だったので,うがいの方法は知っていま すし,うがいの良いところも知らないではありません。ですが,どうしてもうがいと歯磨きは好きにはなれ ませんでした。 そのせいかもしれませんが,今私の歯はぼろぼろです。今回のデザインによって,私自身の悔しい経験より 次世代の子どもに役に立てばと思います。
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