会報 No.245号 - 大阪国際サイエンスクラブ

245
WINTER 2016
大阪国際サイエンスクラブ
International
Science Club
of Osaka
●
目 次
Contents
にし
むら
ほん
ま
あきら
西 村 昭 ........... 1
新年ご挨拶
New Years Greeting
特別寄稿
Contribution
「スタジアム完成!
新たなテイク・オフ・ボード
(踏み切り板)
へ」
とも
み
本 間 智 美 ........... 2
Brand-new stadium for Gamba Osaka s great success
会員のひろば
「少年たちの戦争」
Opinion
The boys and the War
海外リポート
「ハワイ諸島視察
∼すばる望遠鏡と島嶼域における
新エネルギー実験施設∼」
Ivent Report
とく
なが
じゅん
徳 永 恂
........... 9
視 察 団 参 加 者 ........... 21
2015 ISCO Study Tour to Hawaii Island and Maui Island
新会員紹介
Introduction of new members
4 名 ........... 32
編 集 後 記
Editor’
s note
今 市 隆 造 ........... 35
いま
いち
りゅう
ぞう
表紙 : 東大寺二月堂修二会
絹田 貞子 プロフィール
1945年 5月 岡山県生まれ
1970年10月 株式会社竹中工務店 入社 設計部配属
建築イラストレーション国際コンペ入賞
CG大阪デザインコンテスト、他
1990年 8月 中之島コラージュ「艶」二人展
2000年12月 「ARCHITECTURAL RENDERING」DREAM PALETTE 出版
2006年 2月 一期一会 絵葉書100枚展 個展
2006年 3月 株式会社竹中工務店 退職
2014年11月 「一期一会」をたずねて 個展
現 在 あとりえ禎(TEI)代表
新年のごあいさつ
新年明けましておめでとうございます。
会員の皆様方におかれましては、益々ご健
勝で新しい年を迎えられたこととお慶び申し
上げます。
昨年も、集会事業、海外交流事業、広報事
業ともに、皆様から多大なるご支援をいただ
きまして、誠にありがとうございます。おか
げを持ちまして、活発な活動を展開すること
ができました。
集会事業では、施設見学会として、河川水
熱を利用した中之島二・三丁目地区熱供給セ
ンター、大阪府立大学の獣医臨床センター、
住友電気工業大阪製作所、産業技術総合研究
所、百周年を迎えた天王寺動物園のバック
ヤード、くすりの町道修町の史料館めぐり、
エキスポランド跡地にできた EXPO CITY・
ガンバ大阪新スタジアムの建設現場等、科学
の知見を高める現場を数多く見学しました。
6 月に開催しました会員総会記念講演会で
は、神戸大学の塚本昌彦先生に「ウェラブル
から電脳化、そしてシンギュラリティへ」と
題して、2045 年には人工知能がさらに進化
して人間の知能をはるかに超える特異点(シ
ンギュラリティ)が到来し、進化したコン
ピューターが新しいコンピューターを作るな
ど、人間の頭脳レベルではもはや予測解読不
可能な未来が訪れるかもしれないと興味深い
ご講演をいただきました。
海外交流事業では、11 月に、2045 年まで
に 100%再生可能エネルギー化を目指すハワ
イ州に視察団を派遣しました。ハワイ島のハ
ワイ州立自然エネルギー研究所(NELHA)
やマウイ島での日米共同のスマートグリッド
実証事業などを視察しました。また、ハワイ
島のマウナケア山頂(標高 4205m)にある
にし
むら
西
村 あきら
昭
国立天文台ハワイ観測所(すばる望遠鏡)と
山麓の観測所も訪ね、これまでの観測成果と
ともに最先端の天文学の動向について見聞を
広めました。国立天文台ハワイ観測所の訪問
にあたっては、すばる望遠鏡の開発メンバー
の一員でもあるキャノン様から事前のご講演
もいただきました。
また、
カナダ総領事館のマット・フレーザー
領事から「グローバル競争を勝ち抜くカナダ
の科学技術力」の講演をしていただくなど国
際交流懇談会や駐日外交館との交流も進めま
した。
さて、訪日外国人観光客は 2014 年に 1,340
万人に達し、その消費総額は 2 兆円を突破し
ていると言われています。今年も多くの国際
的イベントが予定されており、外国人観光客
はさらに増加すると予想されています。4 年
後には日本でオリンピック・パラリンピック
が開催されます。外国人が私たちの日常生活
の中でその存在が当たり前になってきていま
す。
当クラブにおきましても、これまで以上に
クラブ名にもある「国際」を意識して事業を
展開して参りたいと思います。会員の皆様に
ご関心とご興味を持っていただける様々な企
画をして参ります。是非とも多数の皆様のご
参加を頂けます様お願い申し上げます。
末尾になりましたが、今年一年の会員の皆
様方お一人お一人のご健勝とご活躍を祈念い
たしまして、新年のご挨拶とさせていただき
ます。
−1−
大阪国際サイエンスクラブ 理事長
特別寄稿
スタジアム完成!
新たなテイク・オフ・ボード(踏み切り板)へ
㈱ガンバ大阪 事業本部建設担当 主任 本間 智美氏
(インタビュー)
本
こけら落としの試合は 2 月中旬
ガンバ大阪はホームタウンの新サッ
カースタジアム(吹田市)を 2015 年
9 月に完成、本年 2 月頃にこけら落と
しの試合を計画している。新サッカー
スタジアムは万博公園に隣接する練習
場跡地に建設された。工期 22 ケ月と
いう超短期間での工事を受け持った竹
間
智
美
中工務店から引き渡しをうけ、吹田市
に寄贈された。スタジアムの運営管理
は、指定管理者制度を利用してガンバ
大阪が担う。この制度は 2014 年 9 月
の地方自治法の一部改正にともなって
株式会社まで適用が拡大され、管理の
代行という形で最終権限を残したまま
ガンバ大阪に委ねられている。これに
ガンバ大阪新スタジアム全景(ガンバ大阪 提供)
−2−
よって①質の高いサービスを提供でき
る②経費の節減が図れる可能性が高い
―などのメリットがある。
ご協力を頂く人も多く、総勢 34,627
名、金額 6 億 2,215 万円が集まった。
これに法人721社から99億 5,019万円、
助成金(JSC・国交省・環境省)35億
建設費で初の募金活動
新サッカースタジアムのそばで選手
は日ごろ練習していたので、2012 年
12 月の工事着工から日を追って出来
上がっていく姿を見てきた。完成を目
の当たりにして「やるぞ!」と気持ち
を新たにしているそうだ。熱い思いは
選手たちだけでなく、地域の人たちを
中心にガンバ大阪を応援するファンも
同じ熱い思いであった。その最大の要
因はサッカースタジアム建設では初め
て個人から寄付金を募って建設資金の
一助に当てられたからである。これは
「国等に対する寄付金の確認」の制度
を利用することで寄付する人は所得税
控除を受けられるというもので、大口
の寄付金もあったが、街角での募金活
動では 100 円硬貨など小額の寄付の
建設募金活動
1,333万円を加え、合計140億 8,567万
円を建設費として計上した。
スタジアムの規模
新サッカースタジアムの収容人数は
4 万人収容できる。この規模は国際大
会開催のための公認基準 JFA S クラ
スを満たしている。4 万人収容であれ
ば、日本代表戦をはじめとする大規模
国際大会の開催が可能となる。ワール
ドカップの決勝戦を開催するため 8 万
人収容規模の超大型スタジアムも国内
にはあるが、ガンバ大阪としては J
リーグの開催時の集客力を考え、4 万
人収容の規模が現時点での集客に見
合った規模であると判断したのである。
新サッカースタジアムが完成した当
初は集客力は高まるが、これを持続し
てさらに高めていくには乗り越えなけ
ればならない壁はいくつもある。まず、
アクセス問題である。最寄駅は大阪モ
ノレールであるが、試合当日には増発
による乗客数を増す工夫がいる。また
万博記念公園駅からスタジアムまでは
徒歩 15 分かかる。いずれにしてもモ
ノレールのキャパは一定の限界があ
る。このため JR 茨木駅からの臨時バ
スもこれまでと同様以上、運行が必要
とされる。また万博記念公園を中国自
−3−
ピッチと観客席が近く臨場感あふれるスタジアム(吹田市 提供)
動車道が横断しているので自家用車で
のアクセスも可能であるが、専有の駐
車場はないので万博記念公園に併設さ
れている 2,000 台規模の駐車場を利用
することになる。
いずれにしても万博記念公園および
公園内にある各種施設でのイベント、
また三井ショッピングパーク「らら
ぽーと EXPOCITY」がスタジアムに
隣接して建てられ、ほぼ同じ時期に完
成、グランドオープンしたので、来場
者数はこれまで以上に増えるのは確実
である。
スタジアムの特徴
スタジアムにはいろいろな工夫がこ
らされている。最大の目玉は臨場感あ
ふれるようにしたことである。ファン
がスタジアムに足を運ぶのは、興奮を
かきたてる雰囲気によって異時空間を
体験できることにある。美しい緑の芝
生のピッチ、チームカラーに染まる満
員のスタンドが繰り広げる多様な応援
スタイル、サポーターたちが上下に動
かす大きいチームフラッグ等々、観客
がいかにエクサイティングな試合に酔
いしれ楽しめるかである。
そのためにスタンドをピッチから最
短 7 m の距離まで近づけたことである。
これはサッカー専用スタジアムだから
可能になった。陸上用のトラックが
ピッチの周囲を取り巻く多目的のグラ
ウンドでは、どうしてもスタンドとピッ
チが離れ、
しかも座席の傾斜が低くなっ
て臨場感が薄れ、どこまでサッカーを
楽しめるか疑問が残るからである。
サッカーの試合はテレビで観るよ
り、スタジアムに足を運んで観る方が
−4−
より感動があるということがなけれ
ば、ファンの足は遠ざかる。サッカー
の先進地域のヨーロッパや南米の競技
場は可能な限りピッチに近づけ雰囲気
を盛り上げている。
次に全席を屋根でカバーした快適な
観戦環境にしたことである。日本は雨
が多いので、観客が雨に濡れずに試合
を観戦できるようにしなければならな
い。一方で、屋根と天然芝の関係が微
妙で、ピッチを試合に適した条件を保
つことは、きわめて難しい。そのため、
天然芝の育成環境を確保するため、南
側の屋根はガラス屋根にするなどの工
夫もされている。
また、スタジアム内には化粧室をは
じめ、飲食物の売り場、またレストラ
ンやグッズ売店などが設けられてい
る。観客は試合の前後の時間を利用し
てこれらの施設を楽しむサービスが受
けられる。そこで回遊が可能なコン
コースを設け、自由に動けるようにし
てサービスを提供している。
VIP フロアも欠かせないが、新ス
タジアムにはヨーロッパスタイルの高
級感あふれるラウンジを併設した
2,000 席の VIP エリアを設けている。
ここにラグジュリーな個室と、試合を
観戦できるバルコニーがあり、特別な
日に観戦すれば思い出に残るというな
ど、多様な観戦環境が提供できるよう
工夫されている。
環境に配慮
スタジアムは環境にも配慮してい
る。まず 500 kw の太陽光発電を設置
している。隣接地の三井ショッピング
パーク「ららぽーと EXPOCITY」に
も太陽光発電が設けられ、敷地内につ
くられた特高変電所とスタジアムが直
接、結ばれており、緊急の場合などに
融通し合えるようになっている。
また、ナイターの試合中の照明は非
常に重要なことは当然である。停電は
もとより照明のトラブルが試合に影響
を与えないように非常用発電機を設置
するとともに、新設サッカースタジア
ムでは日本で初めてナイター照明を全
面 LED 化することで、環境負荷を減
らすことにも寄与している。さらに雨
の多い日本では雨水を回収、再利用し
て水資源の節約も進んでいる。新しい
スタジアムでも屋根に降った雨水を集
めて貯水槽に貯え、トイレの洗浄、芝
生への散水等に活用している。
地域社会との共生
サッカーにとって地域社会、周辺住
民との共生は非常に大事なことであ
る。スタジアムから聞こえてくる歓声
音、ごみの収集、道路の混雑回避、イ
ベントによる騒音等、あらゆる苦情の
最小化を図り、地域の人々にとっても
誇れる施設を目指さなければならない。
とくに地域防災の拠点としての役割
を強く認識している。先の震災後、救
−5−
援物資の配分が極めて重要だと、スタ
ジアム内に災害用備蓄倉庫を設置し、
救援物資配送センター機能を備えてい
る。
「救援物資が集まってもすばやく
現地に輸送できなければ役立たない」
と考えたからである。また災害本部の
バックアップ機能も果たしたいとして
いる。さらに避難所としての利用も可
能 で 短 期 滞 在 800 人、 長 期 滞 在 300
人を収容できる。
そのほか最先端システムを導入し
て、基幹ネットワークの構築による顧
客管理及び販売管理を行う。またセ
キュリティ、音響、映像、放送機器な
どの先端システムを整えている。将来
を見据えた拡張可能なシステムとして
いる。
地域密着型のクラブを目指して
サッカーは監督、選手、サポーター
に加えて地域住民の協力、支援があっ
てうまくいく。とくにチームが地域住
民に対してどう貢献するかが非常に大
事である。ガンバ大阪は吹田市、茨木
市、高槻市、豊中市、摂津市、池田市、
箕面市を中心に、北摂、北河内地域を
ホームタウンとして定め、J リーグが
スタートした 1993 年からホームタウ
ン活動に取り組んでいる。ホームタウ
ンの担当スタッフはガンバボーイをあ
しらったガンバカー「ガンバ GO !」
に乗って活躍する。ホームタウン 7 市
で見られるのぼりを掲げる店や会社は
ガンバ大阪を応援している協賛企業で
ある。
ホームタウンの各市でのイベントや
お祭りへ協賛、協力し、地域活性化に
貢献することによって住民らに親しみ
をもたれることが大事である。そのた
めに継続して活動することが肝要であ
る。そこでホームタウンに住む子ども
たちの健全育成を目的に「ホームタウ
ンふれあい活動」を 2003 年から実施
している。選手やコーチングスタッフ
たちが直接、小学校を訪問。ふれあい
活動当日はアカデミーコーチの進行に
よって、選手がリフティングなどデモ
ストレーションを披露、その後、児童
と一緒にミニゲームでふれあい、4 時
間目に訪問する時は教室で一緒に給食
を食べ交流している。トップ選手の中
には小学校時代にふれあい活動を体験
した選手もいる。ふれあい活動に参加
した児童たちに実際にスタジアムで試
合を観てもらい、ふれあった選手が活
躍する試合の醍醐味を味わってほしい
思いからガンバシスト企業によるホー
ム ゲ ー ム へ の 招 待 も 行 っ て い る。
1994 年は実施回数 25 回、訪問学校数
は 694 校を数え、
2003 年以来ふれあっ
た子ども数は 20 万人を超えている。
また 2008 年から J リーグの助成を
受けて、精神障がい者スポーツ「G ス
カンビオ・アカデミア」
(サッカー・フッ
トサル)に取り組んでいる。「スカン
ビオ」とは、イタリア語で「交流」を
−6−
意味し、スポーツによる交流を通じて
社会復帰を目指す活動である。春の
「関
たちの健全育成とサッカーレベルの向
上を目的として 1997 年からスタート、
西交流大会」
(約 90 名参加)は個人
2014 年時点でこの大会に参加した選
手は 4,000 名に上っている。北摂の各
参加で、当日にチームを振り分けるの
で初対面のメンバー同士のコミュニ
ケーションを図りながら試合を行うこ
とになる。社会復帰を目指す参加者に
とって勝つことはもちろん、屋外で体
を動かすこと、仲間と協力すること、
対戦相手を思いやることは非常に効果
がある。
ガンバ大阪から始まったこの活動は
全国各地に広がりをみせ、全国から参
加して「ガンバ大阪スカンビオカッ
プ」
を競い合っている。いまでは J リー
グの百年構想を具現化した構想として
注目されている。
またホームタウン応援デーを設け、
ホームタウン 7 市に在住・在勤の人た
ちや、北摂・北河内(14 市 3 町)の
小中学校に通う児童・生徒とその家族
を対象に、プロの試合を観戦する機会
を設けている。市民応援デーは来場者
にそれぞれの市を PR する機会にも
なっており、各市で活動する団体によ
るパフォーマンスやマスコットとのふ
れあい、市長をはじめ来賓によるセレ
モニーなどさまざまなイベントが実施
されている。
ホームタウンの 7 市 2 町のサッカー
連盟・協会とともに「北摂ガンバカッ
プ少年サッカー大会」を地域の子ども
市町の代表チームとガンバ大阪ジュニ
アによる 10 チームは 5 チームごとの
リーグ戦を行い、首位になった 2 チー
ムがガンバ大阪のホームゲームの前座
試合として決勝戦を行っている。子ど
もたちにとっては、プロと同じピッチ
に立ち、大勢の観客の前でプレーでき
る憧れの場となっている。
介護予防事業の支援にも協力してい
る。2014 年から一般社団法人日本棒
サッカー協会とタイアップして高齢期
を迎え、要介護状態や障害者でも可能
な生涯スポーツ・棒サッカーの普及活
動の後援をしている。第 2 回棒サッ
カー大会にはガンバボーイ応援も駆け
つけ、表彰式で選手サイン入りのボー
ルを授与するなど大会を盛り上げた。
少年院訪問
トップレベルで活躍する選手が、こ
れまでの努力や挫折を乗り越えてきた
経験を伝えることで、社会復帰の一助
になればとの思いで 2009 年から地元
のライオンズクラブの協力を得て、茨
木市内にある浪速少年院を訪問してい
る。
少年院の体育館ではボール回しやミ
ニゲームで汗を流し、茶話会では在院
−7−
生が選手を囲んで質疑応答や夢を語り
合って交流している。新人選手も加わ
り、同年代の院生とコミュニケーショ
いっしょに食べて交流を深め、サッ
カーを通じて健やかな子どもたちを育
むよう活動を続けている。
ンすることによって、プロとして自覚
を促し、勉強する機会にもなっている。
復興支援活動
地域大学との連携
オフィシャルパートナーの追手門学
院大学、大阪国際大学、平成医療学園、
ナーのパナソニックなどと協力して、
東日本大震災の復興支援活動を継続し
て行っている。被災地や万博記念競技
場サブグラウンドでのサッカー教室を
ガンバ大阪では、J リーグやパート
大阪青山大学と相互協力によって地域
社会への貢献活動を行っている。試合
会場ではエコステーションやエンジョ
イパークなどの運営を手伝ってもらっ
ている。
また大阪大学とはフレンドシップ協
定を結び、歯学部附属病院の 1F ロビー
にはユニフォーム、試合球、サイン入
りフラッグを展示している。クリスマス
にはガンバボーイが医学部附属病院小
児医療センターと歯学部附属病院を訪
問、ダンスや PK 合戦、患者へのプレ
ゼント贈呈や記念撮影を行っている。
アカデミーコーチによるホームタウン
巡回訪問
2003 年よりホームタウンの保育園
を巡回し、体を動かす楽しさを伝えて
いる。サッカーボールは大きいので園
児の遊びには適していると言われてい
るが、足を使うことは難しい。園児が
楽しく動きまわるメニューを提供する
ことが、アカデミーコーチの腕のみせ
どころとなっている。時には給食も
実施している。また J リーグで取り組
む「東日本大震災 復興支援写真展」
と「TEAM AS ONE 募金」をホーム
ゲーム 2 試合で実施、募金は J リーグ
を通じて活動支援のため届けている。
また広島土砂災害に際して、ホーム
ゲーム 2 試合で義援金募金活動を実
施、アウェイでのサンフレッチェ広島
との試合で義援金を届けている。
このほか国や地方自治体との協力事
業としてさまざまな啓発活動と青少年
健全育成事業も行っている。
今後の課題
ガンバ大阪は世界に誇れるプロ
フェッショナルクラブを目指してお
り、強いチームづくりが原点である。
2012 年にまさかの J2 降格になった時
は、先行き不安を抱いたファンも多
かった。ところが翌年、J2 で優勝、
さらに 2014 年には J1 優勝、ナビス
コカップ優勝、天皇杯優勝と三冠の達
成という偉業を成し遂げた。それだけ
−8−
に新しいスタジアムへホームスタジア
ムを移す本年のチーム全体の意気込み
は例年以上である。
サッカースタジアムの運営の難しさ
はノンマッチデ―が年 300 日以上あ
ることである。この日々をどう運営す
ることができるかが、スタジアムの収
支に影響する。日本は少子化の道を進
んでいる。そうした中で集客力を上げ
なければならない。
新スタジアムに隣接して万博記念公
園、三井ショッピングパーク「らら
ぽーと EXPOCITY」があるので、こ
うした施設とのコラボによって、また
ガンバ大阪の試合観戦や関西のヴィッ
セル神戸、京都サンガ、セレッソ大阪
との連携、さらに阪神タイガース、オ
リックスの試合観戦も含めたスポーツ
ツーリズムを企画して海外からの集客
にも力を入れようとしている。
これからの時代はいかにグローバル
化が図れるかも重要な課題である。ガ
ンバ大阪は 2014 年からサッカー人気
が高いインドネシアを重拠点地として
トップチームやアカデミーチームの遠
征を実施している。これはアジア市場
の拡大とチームの強化、育成を図るた
めである。国内企業の多くが東南アジ
ア へ 進 出 し て お り、 ガ ン バ 大 阪 は
ACL 優勝もあって現地での認知力も
高く、今後はブランド力を活用して現
地企業のパートナー獲得も積極的に取
つまりチーム強化→アジア拡大→
ファン、パートナー拡大→経営基盤の
拡大という成長スパイラルを構築しな
がら成長するとともに、アジア地域の
子供たちに夢と感動を与え続けていけ
るようにチャレンジしていく。
サッカーというスポーツが世界中に
広がり、いかに青少年の健全な育成に
寄与しているかが、ガンバ大阪の取り
組みをみてもわかる。チームが阪神タ
イガースのようにさらに人気が高まれ
ば、関西経済のかさ上げの一助にもな
ると、夢はさらに大きく広がっている。
り組んでいく。
−9−
会員のひろば
「少年たちの戦争」
徳
永 恂
毎年 10 月になると、東京・神田神
保町の古書店街では、恒例の古本祭り
い。尋ね歩いて、どうにか関西まで引
が開かれる。大通りに面した店の前ば
見つけたものの、では何日に伺いま
しょうと言われると、私は何ともフン
かりか、横丁や裏道にも露店や屋台が
並んで、ひやかし半分のお客を含め、
辺りはゴッタ返す。
今年も秋 10 月、私は堅苦しい学会
発表を聞き終わると、総会や懇親会は
御免を蒙って、イソイソと神田のお祭
りに出かけていった。
だが今年は少しばかり事情が違って
いた。じつは今回は、本探しというよ
り、自宅一杯廊下にまで溢れている蔵
書類を整理するために、まとめて引き
取ってくれる本屋を探すのが目的だっ
た。どこの大学図書館も、今は蔵書ス
ペースがなくて、寄贈すると言っても
受け取ってくれない。全国的には、毎
日一軒ずつ古本屋がつぶれていると言
われるほど、書籍はもう商品形態とし
ては認められなくなっている。まして
洋書、それもドイツ語の本などは、関
西で扱ってくれる本屋などありはしな
い。しかしかつて三度の飯を二度にし
て買った貴重な宝物を、目方で計量し
て 「 燃えるゴミ 」 に出すのは忍びがた
き取りに出張してもいいという一軒を
ギリがつかず、時期はそのうちとか何
とか、未練たっぷりにゴマ化して、そ
そくさと出てきてしまった。
だが外に出て、眩しい光の中に並
んでいる本たちの姿を目にした途端、
バ カ
あゝ何たる事か。「 書痴は死ななきゃ
癒らない 」。私はたちまち本の魅力の
とりこになり、本を減らしに行ったの
に、又もや新しい本を一抱えも買い込
んでしまった。その中には、かつてヒ
エントアルテテ
ト ラ ー が 1937 年 に 催 し た 「 頽 廃
ク ン ス ト
芸術展 」 のカタログなどという、仕事
の上で貴重な掘り出し物もあったが、
表題を目にしただけで、吸い込まれる
ように買ってしまった二冊の本も混
じっていた。それは、山中峯太郎著『亜
細亜の曙』、高垣眸著『怪傑黒頭巾』。
どちらも、戦時中の少年の頃、夢中に
なって読んだ懐かしのアーカイブス
だった。
山中峯太郎とか高垣眸とか言って
も、戦後生まれの若い人たちには、な
− 10 −
じみが薄いかも知れない。高垣眸の方
は、戦後も房総辺りに住んで、漁師も
のを書いたりしたから知られているか
もしれないが、山中峯太郎の名は、終
戦で途切れてしまう。たぶん戦意鼓吹
の故で公職追放になり、出版、執筆も
禁止されていた故だろう。だが、
『見
えない飛行機』、
『敵中横断三百里』
『亜
、
細亜の曙』などは講談社から出ていた
『幼年倶楽部』や『少年倶楽部』に連
載され、田河水泡の『のらくろ』以上
に、全国の少年たちの血を湧かせたも
のだった。当時小学生だった私と二才
年上の兄とは、毎月の発行日を待ち兼
ねて、奪い合うように飛びついたもの
だ。しかしそれは単純に、軍国少年の
心理とは言えないと思う。たとえば『亜
細亜の曙』。
西下する東海道線の寝台車、国家機
密を盗んで上海へ向かう謎の怪人を追
跡する「剣侠児本郷義昭」という発端
から、息もつかせぬ探偵小説仕立ての
活劇は、かつて情報将校として、中国
革命にも現地で関わっていたという著
者の体験にも裏打ちされていて、けっ
こうノンフィクション・ノベルズとし
ての現実感を持っていた。だからたん
なる血湧き肉踊る冒険譚以上のものと
して受け取られたのではなかったか。
山中は後年、自分の作品の通奏低音
は、
「ナショナリズム」ではなくて、
「フ
ロンティア・スピリット」だと弁明し
ているらしい。その当否はともかく、
その二つが区別できない形で、「亜細
亜の曙」という少年たちの夢を支えて
いた時期はあったろうし、その夢を託
された主人公のスーパーマン的活躍へ
の喝采にも、むろんヒロイズムはあっ
たにせよ、後年の軍国主義教育の産物
とは言えまい。上からの教化では、そ
う簡単に子供心を変えることはできな
いのだ。
高垣眸についてはどうだろうか。彼
の『竜神丸』、『まぼろし城』、『怪傑黒
頭巾』と続く連作は、いずれも時代物、
『黒頭巾』の場合は幕末の江戸が舞台
で、現代のアジアを舞台にした山中峯
太郎のものとは、時と所の設定はむろ
ん異なるが、基本的には、チャンバラ
ものの活劇と言うよりは、隠された江
戸城秘図をめぐる推理・探偵劇で、最
後に黒頭巾の下の意外な主人公の素顔
が、はじめて明かされる。そういう巧
みな語り口には、少年読み物にはもっ
たいないストーリー・テリングの技法
が活用されている。
というわけで、これらは今日、大人
が読んでもけっこう面白く読めるのだ
が、何せ昭和初期に書かれたものだか
ら、どこかに古風な所がある。しかし
二冊を読み比べてみて、どちらに古臭
さを感じたかといえば、意外にも現代
物の『亜細亜の曙』の方が、時代物の『怪
傑黒頭巾』よりも、何か時代遅れの異
和感を感じさせる。何故なのだろうか。
じつはそれがこの稿の主題なのだ。
− 11 −
端的に言って、それは山中峯太郎の
方には「サイエンス・フィクション」
の要素があり、それが、執筆当地の科
学技術の水準に捉われているからだろ
う。たとえば、主人公が敵の家にしの
び込んで、扉の前に立つと「ノブに手
もかけないのに、あら不思議、ドアが
音もなく開いた」などという所。今日
では自動開閉の扉など、その辺りのコ
ンビニでもどこにでもあるだろう。飛
行機も、時速三百キロ以上出すと、空
気との摩擦熱で機体の金属が溶けてし
まうから、それ以上は出せないとか、
無人操縦の可能性を遠い将来の夢と考
えるとか、当時の科学史的常識水準に
捉われたまま、二十一世紀の今日では、
すでに実現されたものが、将来の可能
性、夢として想い画かれている。
ここにあるのは、一般化して言えば、
サイエンス・フィクションの作家の想
像力を、現実の科学技術の進歩が追い
越している、という事態である。だが、
よろこんでばかりもいられない。作家
たちの想像力は、たしかに科学技術の
進歩の将来に、ユートピアを画いても
きたが、同時に、その反面に「反対ユー
カタストローフ
トピア」を、つまり人類の 破 局 をも
描くのを忘れなかった。原発事故にせ
よ、大気汚染にせよ、科学技術の現実
の進歩が、作家の画くユートピアイ
メージを実現するだけでなく、破局の
イメージをも、追いついて追い越すこ
とがあるとしたら ? 戦争末期、日本の
敗勢が歴然としてきた時、長崎中学で
の私の友人、科学少年 A が、起死回
生の奇跡として期待したのは、忍術で
も神風でもなく、新兵器・原爆をアメ
リカより先に開発・行使することだっ
た。理研よりマンハッタン計画が先行
したため、彼の夢は叶わなかったのだ
が、1945 年 8 月、当時熊本の旧制五
高の寮にいた私たちは、長崎への原爆
投下の報を聞いて、急遽寸断されて鉄
道を乗りつぎ家族の住む長崎へ向かっ
た。だが、汽車が爆心地に近づき、想
像を絶する惨状を目にした時、彼がつ
ぶやいた言葉を私は忘れることができ
ない。「あゝ遂に科学は勝った。」
勝ったのは日本ではなかったが、ア
メリカでもない。科学技術そのものが、
人類史の覇者の地位についたのか。だ
がその栄冠は「絢爛たる悲惨」に包ま
れている。勝利の持つ光と影、その両
義性を憶う想像力は決して古びてはい
ない。
筆者兄弟の原爆体験については、以下
を参照していただければ幸い。
徳永 恂『絢爛たる悲惨』作品社 2015 年
徳永 徹(元国立予防衛生研究所長)
『少年たちの戦争』岩波書店 2015 年
− 12 −
大阪大学名誉教授
海外リポート
ハワイ諸島視察
とうしょいき
∼すばる望遠鏡と島嶼域における新エネルギー実験施設∼
クラブ創立 50 周年海外視察の北欧
3 か国訪問を除けばアジア地域の視察
が長年続き、今回は中野集会委員長か
らハワイ諸島への視察提案あり、ハワ
イ島のすばる望遠鏡とマウイ島におけ
る日米共同の島嶼域スマートグリッド
実証事業の視察となった。
◆中野集会委員長雑感
最近、海外に行くとほぼリアルタイ
ムに Facebook に写真をつけて投稿し
ており、それを見る人たちも同時に楽
しんでいるようである。私のFacebook
の友達は 900 名近いので、多くの方
にも楽しんでもらえているのかと思っ
て投稿している。
今回はハワイということもあり電圧
やプラグもほぼ心配ないので、移動用
のために早めにポケット WiFi を契約
した以外はあまり海外に行くという気
分はなかった。
ただアメリカ入国には事前にエスタ
の手続きが必要で、事務局からは簡単
ですよと言われて出発の四日前に取得
したが、ここでハマるとは思わなかっ
た。自宅でネットから申請しても途中
で止まったりする。三度ほど失敗して
からググってみたらブラウザが IE 以
外はダメとかで、思わず画面に向かっ
て「おまえアメリカやろ」と一言。自
宅では満足に使える Windows マシン
は家族用なので、職場で処理してこと
なきをえた。
視察の途中でいろいろな写真をあげ
たり、帰国して講義の合間の学生に話
したりしたときの感想は、「まるでハ
ワイでないみたい」であった。視察先
にエネルギー関係が多かった点もある
し、普段は見れない施設や設備をみた
せいでもあったようだ。
マウイ島ではマウイ島とそのまわり
の島からなるマウイ郡のアラン・アラ
カワ郡長に表敬訪問をした。そのアラ
カワ郡長の言葉で再生可能エネルギー
の開発に力を入れている理由として
「石油がなくなれば平和になる」が
あってさすがに政治家らしい言葉だな
− 13 −
と思った。郡庁でもらった Data Book
によればマウイ郡の人口は 2013 年で
16 万人で、ハワイ州全体は 140 万人
である。ハワイ島、マウイ島と視察し
たが、
「え、そんなに人口が少ないの」
というのが実感である。
ハワイ諸島は地図で見ると太平洋に
ぽつんとできた島で、今回視察したハ
ワイ島が一番新しくて 40 万年前にで
きたそうで、1 万年後にはロイヒ海底
火山が島になるとか。
広い島を回りながら、そんな夢のよ
うなことも考えていた。
すばる望遠鏡も宇宙の始まった頃の
光を GET しているとか、日常を忘れ
させてもらった一週間であった。
海洋温度差発電施設
帝塚山学院大学
中野 秀男
◆ NELHA: ハ ワ イ 州 立 自 然 エ ネ ル
ギー研究所および周辺施設
《NELHA の取組》
N E L H A(N a t u r a l E n e r g y
Laboratory of Hawaii Authority)
:ハ
上、コナ国際空港 下、NELHA
ワイ州立自然エネルギー研究所は
1974 年設立の海洋深層水の研究機関
である。ハワイ島コナ空港の海側に広
がる広大な敷地と海洋を利用して、海
洋深層水の利用に関する研究・起業を
支援している。
研究・起業の例として
・海洋温度差発電(OTEC)
・海洋深層水による冷房設備
・アワビの養殖
・冷熱利用農業(イチゴ、ブドウ等)
・ミネラル水、塩、サプリメントの販売
・藻の光合成培養による油の製造
等があげられる。
今回、上記の内 3 施設を見学するこ
とができた。
− 14 −
ゲートウェイセンター外観
海洋温度差発電見学風景
《海洋温度差発電(OTEC)》
約 1000m の海底から 4℃の海水を
くみ上げ、海洋表層の温水との温度差
(25℃程度)を利用して発電を行っ
ている。沸点が低いアンモニア(沸点
−33℃)を冷媒とし、表層温水で気
化させガスの圧力でタービンを回転さ
せて発電する。気化したアンモニアを
深層冷水で凝縮させ発電 サイクルを
まわしている。昼夜、天候に関わらず
に発電可能で、流量により発電量制御
が可能なことからベースロード電源と
な り 得 る。 研 究 段 階 で は あ る が、
2015 年 8 月に 100kW の商用発電を開
始した。しかしながら OTEC は海が
あればどこでもできる発電ではない。
海洋温度差 20℃以上を確保できる熱
帯・亜熱帯地域で、かつ取水管設置コ
ストの関係から海岸線から急激に深く
なる海底地形が条件となる。取水管や
熱交換器等の腐食の問題、海底地形に
囚われない洋上発電に向けての研究が
続けられている。取水した海洋深層水
は熱交換後も水質は変わらず水温も低
温であるため、この冷水を水産業、農
業、空調等に複合利用することができ
る。そこが他の発電設備とは違う点で
ある。
見学した関連施設を以下に紹介する。
《海洋深層水による冷房設備》
海洋深層水による冷房設備を備えた
ゲートウェイセンターを見学した。床
下に海洋深層水を通したパイプを巡ら
し、冷気を床面スリットから室内に取
り込む。屋根面に日射を当てることで
上昇気流を起こし、ファンを使わずに
冷気を取り込む。他にも床下の結露水
をタンクに貯めて便器洗浄に利用した
り、屋根面に太陽光発電を設置するこ
とで ZEB(ゼロエネルギービルディ
ング)を達成している。2005 年 LEED
(Leadership in Energy & Environmental
− 15 −
冷房システム概略図
Design)最高ランクのプラチナ認証を
受けている。
部屋に入ると自然な冷涼感で、気流
を感じることも無く快適である。日差
しが無く天井面が高温にならない場合
は、自然と換気量が抑えられるため制
御装置も何もない。風向きによって上
手く冷房できない日が年間 5%ぐらい
あるらしいが、それでも OK なのがハ
ワイらしいと感じた。日本だったらそ
の 5%の為に予備装置が必要になるだ
ろう。
(そもそも暖房が必要な日本で
は難しいシステムではあるが)
《アワビの養殖》
アワビの養殖は 1998 年より始めら
れていたが、2007 年新井宏社長(日
本では水産業従事)が事業化体制を整
え、三陸のえぞアワビを採用して事業
拡大を進めている。NELHA の海洋深
層水の 63%を購入し、4 万 m2 の敷地
に約 450 個のタンクを 17.5℃に保ち、
300 万個のアワビを育成している。生
育段階で間引きながら、5 段階の過程
を経て 33 ヶ月で出荷する(日本の養
殖では 6 ∼ 7 年かかる)
。
試食させてもらったが、加熱しても
柔らかく、肝にも臭みがない。個人的
にはアワビを美味しいと思ったことは
なかったが、ここのアワビは大変美味
しいと感じた。タンク内の水が非常に
きれいで、海産物を扱う施設独特の臭
いがしないのが印象的だった。日本に
も出荷していたが円安で採算が厳し
く、米国本土に販路を切り替え、高級
食材としての地位向上に努めていると
のこと。昨年ホノルルのアラモアナセ
ンターに直営店「KONA ABALONE」
アワビ養殖タンク
アラモアナセンター直営店
床下(空気取入れ口の結露状況)
− 16 −
がオープンしており、ハワイ島に行か
なくても食べることができる。
気でも夜中でも預かってくれる保育園
があれば女性が働きやすいのではな
い。助け合って育児・家事を分担して
くれる旦那さんや、仕事以外にも楽し
みを見いだす気持ちが必要なのではな
いだろうか。日本人男性の働き方を見
直さないと、ハワイのようにはいかな
いと感じた。
《海洋深層水利用施設の見学雑感》
海底地形や電力消費地との距離、台
風の影響等を考慮すると、海洋温度差
発電はどこでもできる訳ではない。し
かし海洋深層水を発電以外の用途に利
株式会社大林組
用し、それを事業展開する取組は、単
山本 文佳
なる自然エネルギー利用の推進だけで
はない幅広さがある。今後も新たな事
業展開の可能性を秘めていると感じた。
すばる望遠鏡山頂・山麓施設
話は飛ぶが、今回視察した様々な施
設で女性の活躍が目立った。NELHA
では説明者の 3 人中 2 人、すばる関 《見学概要》
2015 年 11 月 17 日に、標高 4,205m
連施設では 4 人中 3 人が女性、マウ
イ郡長の通訳も女性、マウイ電力に
のマウナケア山頂に建設されたすばる
至っては社長が女性であった。ハワイ
望遠鏡山頂施設を訪問し、国立天文台
のビジネスコアタイムは 7 時∼ 16 時
ハワイ観測所の林 左絵子氏(総合研
で定時退社が当たり前。男性も早く
究大学院大学 物理科学研究科 天文科
帰って育児・家事を分担し、仕事以外
学専攻 准教授)と同 広報室の村井 里
江子氏に施設案内と説明を受けた。
の時間も大事にする土壌があるよう
翌日の 18 日には、山麓施設を訪問
だ。1 億総活躍社会と言ったって、病
し、林 左絵子氏とともに、嘉数 悠子
氏(天文学者、パブリック・アウトリー
チスペシャリスト)に、すばる望遠鏡
での研究内容の紹介と望遠鏡エンジニ
アリング部門マネージャーの沖田 博
文氏に、すばる望遠鏡の保守等に関す
る説明を受けた後、館内の見学を行っ
た。
マウイ電力会議室 スズキ社長
(中央)
との意見交換
《すばる望遠鏡》
すばる望遠鏡は電磁波の中で赤外線
− 17 −
分は直径 40m もある。
各焦点には研究の目的に合わせた最
新の観測装置が設置され、常に最先端
の観測が可能なように稼働している。
国立天文台では、多くの研究者に使い
やすい世界最先端の施設であり続ける
べく、観測装置の開発も行い、順次観
測装置を入れ替えている。
観測装置に関しては、高性能が要求
され、各メーカーの高い技術力だけで
はなく、各国の研究者なども参画し、
実際の観測装置を開発・製作している。
これらの観測装置は、設置場所が空
気の薄い高地であるため、山麓施設で
調整後搬入されている。
山麓施設見学時にも装置の試験が行
われていた。
すばる望遠鏡施設は共同利用観測に
すばる望遠鏡山頂施設(© 国立天文台)
すばる望遠鏡山麓施設(© 国立天文台)
と可視光の波長の観測を行う望遠鏡で
あり、主反射鏡(一枚鏡)は、有効口
径が世界最大級の 8.2m あり、光を集
める性能が高いだけでなく分割鏡の方
式に比べより鮮明な画像が得られると
いった特徴がある。
また、望遠鏡本体には、主焦点の他
複雑な観測装置を取り付けるカセグレ
ン焦点や大きな観測装置を取り付ける
ナスミス焦点(可視光・赤外線)の計
4 箇所の焦点を持ち、高さ 22.2m、最
大幅 27.2m、重さ 555ton の巨大な望
遠鏡である。さらに、望遠鏡を包む円
柱形のドームは、高さ 43m、回転部
− 18 −
望遠鏡本体(© 国立天文台)
供されているため、世界最先端の観測
施設の観測利用ニーズは非常に高く、
世界中の研究者や研究チームは研究内
容の観測提案を行い、年に二度の国際
審査を経て観測時間を割り振られる。
この決められた貴重な時間内に、夜間
の観測が不能にならないように、装置
等のメンテナンスや交換は昼間に綿密
に計画・実施され、装置の不具合で観
測できない日は 5 ∼ 6 夜/年に抑え
られている。
《すばる望遠鏡の精度》
すばる望遠鏡は百数十億光年先の天
体観測を可能にするため、高い解像度
と天体追尾精度が要求され、総合星像
分解能は 0.2 秒角(補償光学なし。秒
角は角度 1 度の 3600 分の 1)、天体の
追尾誤差 0.1 秒角以下を誇っている。
そのため、それぞれの構成要素には、
望遠鏡自体は巨大であるにもかかわら
ず、高い精度が求められている。
その代表例は反射鏡だ。鏡のガラス
は温度による熱膨張の少ない基材
(Ultra
Low Expansion)で作られた直径 8.3m
厚さ 0.2m の放物面のガラスで、表面
の研磨に約 2 年もの歳月が費やされ、
12nm の研磨精度を達成している。表
面のアルミの真空蒸着は現地の施設内
で行われ、その後も 3 年に一度成膜し
なおしている。
また、仰角を変えた際に自重により
歪んでしまうため、鏡背面に取り付け
られた 261本のアクチュエーターによ
り各点の支持力をコンピュータ制御す
ることで理想的な形状を保持している。
また、高精度な天体追尾を実現させ
るため、頑丈につくられた望遠鏡本体
の 555ton もの重量をなめらかに精度
よく動かす必要がある。そのため、油
可動ドーム下にある主鏡のメッキ・洗浄装置
− 19 −
圧パッドにより、摩擦抵抗を極少化す
るとともに、リニアモーターによるダ
イレクトドライブにより滑らかな動き
を実現している。
望遠鏡本体の主鏡セルや前述のアク
チュエーターシステム、駆動部等も多
くの日本企業が参画している。超レア
で高品質な一品生産品のため、そのリ
スクが大きかったにもかかわらず、そ
の精度要求に挑戦し、達成している。
鏡を除くこれらの構成機器の多くは関
西の工場で実際に制作され、山頂での
組み立て時の課題を抽出し解決するた
め、現在 USJ になっている桜島の工
場で仮組され調整後、ハワイに海上輸
送された。
運用時においては、観測扉の開いた
観測時と昼間の温度差による各部の熱
膨張の影響を少なくするため、昼間は
観測扉を閉め、空調を行い、さらに、
反射鏡部分は± 0.1℃に制御されてい
る。空調設定温度に関しては、山頂の
夜間温度の予測値をハワイ大学から提
供され、逆に観測値を提供するといっ
た協力もされている。また、観測時の
人や機器等の発熱体は空気にかげろう
を発生させるため、可能な限り機器は
ドーム内を避けるとともに、別棟の観
測制御棟または山麓施設から遠隔操
作・観察を可能とすることによりドー
ム内を無人化している。また、精度に
は関係がないが、観測時に重要な電源
供給に関しては、現在最大電力消費量
は 850kW であるが、そのほとんどが
空調設備で消費されており、観測装置
や駆動装置に対しては、建設当初の設
計思想で、瞬停対策は無停電電源装置
で対応し、停電対策はディーゼル発電
機で安全に観測を終了する容量の設定
がなされている。
《観測・研究体制》
ハワイ観測所のスタッフは日本人
60人と他 12ヵ国の人々で総勢約100人
に及んでおり、さらに、教育的見地も
踏まえ、大学院生が迎え入れられ、研
究や観測装置の開発に携わっている。
見学時にも生命生存可能な惑星の探査
に必要な新しい観測装置の開発がされ
ており、このプロジェクトにも大学院
生が携わっていた。
このように、すばる望遠鏡といった
最先端設備を媒体に日本の技術による
国際貢献だけでなく、国際協力関係の
構築や教育に対しても貢献している姿
を垣間見ることができた。
《あとがき》
すばる望遠鏡山頂施設を訪問する
際、標高 4,200m(対比:富士山頂 3,776
m)まで上る途中、高山病の恐れがあ
るため、中腹にあるオニヅカ・ビジ
ター・インフォメーション・ステーショ
ンで 1 時間ほど体を慣らした。その後、
山頂施設に到着し、案内中には寒さと
空気の薄さ(平地の約 60%)も同時
に味わい、現地での建設時の過酷さや、
山頂施設で業務に携わっておられる
− 20 −
方々の大変さを実感できた。
山頂施設では、建設に携わった林氏
に直接案内して頂き、建設当時の機種
選定や開所時の苦労話を伺うことがで
きた。その中で、各パートを受け持つ
エンジニアリング会社がこの高い要求
水準の仕事に対し挑戦し、その中で実
際に働いてきた一人一人が“ものづく
り”に対する強い情熱をもって成し遂
げたものである、といった印象を受け
た。
山麓施設での説明では、ハワイ観測
所に多くの国の人々が集い、研究を行
うとともに、天文学の教育や普及にも
配慮された運営がなされていることが
わかった。まさに公募により選出され
た“すばる”の名前に込められた“統
(す)ばる”=“一つに集まっている”
を実現している姿を見ることができた。
株式会社竹中工務店
古寺 典彦
◆マウイ島における日米共同の島嶼域
スマートグリッド実証実験
《概要説明》
前日にハワイ島からマウイ島に移動
して 19 日の視察は株式会社日立製作
所に全面的に協力をいただいて島嶼域
スマートグリッド実証実験の見学であ
る。
まずはハワイ州およびマウイ郡とマ
ウイ島の電力事情と島域スマートグ
リッド実証実験の概要について述べ
る。マウイ郡はマウイ島とその周辺の
島からなる。ハワイ州では、エネルギー
源を輸入に依存しており、クリーンエ
ネルギー 100% を目指し、2030 年に
発 電 量 の 40%、2045 年 ま で に 100%
を再生可能エネルギーに置き換える目
標を立て、風力発電や太陽光発電など
の導入を進めている。
これに対応し、国立研究開発法人新
エネルギー・産業技術総合開発機構
(NEDO)からの委託を受けて、株式
会社日立製作所、株式会社みずほ銀行、
株式会社サイバーディフェンス研究所
が共同でハワイ州のマウイ島における
スマートグリッド実証事業(正式名
称:Japan-U.S. Island Grid Project、
プロジェクト呼称:JUMPSmartMaui)
に取り組んでいる。これは、EV を用
いて、再生可能エネルギーの出力変動
に伴う電力供給の安定化という課題を
解決するものである。
日立グループは、このプロジェクト
において、EV充電を制御する EVエネ
ルギーコントロールセンター
(EVECC)
を導入し、2013 年 12 月に運転を開始
した。現在、先進的要素技術として、
EV を分散型発電システムに見立てた
VPP(Virtual Power Plant)技術の
開発を進めている。
《アラカワ郡長(マウイ郡)表敬訪問》
朝、宿泊のホテルを出発して 8 時半
にマウイ郡庁に到着し、アラカワ(新
− 21 −
川)郡長を表敬訪問(写真)した。以
下はアラカワ郡長からの説明である。
・ハワイは米国 50 州のなかで原油へ
の依存度が群を抜いて高く、石油火
力発電の比率は 70% を超える。
・自動車や飛行機の燃料を加えると、
消費エネルギーの 90% を化石燃料
に依存する。
・電気料金は原油高騰で米国平均の 3
倍以上(2015 年 ハワイ 38.5cents/
kw、全米平均 12.3cents/kw)であ
る。そこでハワイ州は 2030 年まで
に、州全体の電力需要の 40% を自
然エネルギーでまかなう目標を設定
した。再生可能エネルギーの利用に
より、電力価格のコストダウンを期
待している。
・2045 年までに 100% を再生可能エ
ネルギーに置き換える目標である。
・マウイ島では風力や太陽光発電が増
えてきているが、さらにクリーンエ
ネルギー 100% を目指し、NEDO、
日立の協力で電気自動車(EV)の
実証を 2013 年から開始し、データ
が集まってきた。
・個人的な見解としては、電力の運営
を電力会社ではなく、行政機関が
行った方が効率的である面もあり、
そのためにはインフラの整備、グ
リッドの改善が課題である。
・当初は EV が広がるとは考えていな
かったが、充電ステーション設置の
効果もあり、増えてきている。
・オアフ マウイ島間を海底ケーブル
でつなぐことも考えている。電源と
しては、地熱、地中熱、波動発電に
期待している。
・サトウキビ生産会社と協力してバイ
オマスによるディーゼル発電やゴミ
処理発電も期待している。当初はコ
ストが合わなくても長期的には安く
なる。
・環境問題:CO2 が市民の健康に影響
与えている。中国のスモッグが隣接
する韓国や日本に影響を与えてい
る、世界が一つになって解決する問
題である。
・エネルギー源を多様化することで石
油依存がなくなり、戦争がなくな
り、平和に繋がる。石油を輸入する
ことで外に流れる資金が地元に下り
れば、経済効果も大きい。
・マウイは小さいコミュニティである
が、世界にインパクトを与えること
ができれば良いと考えている。
《日立ショールーム JUMPSmartMaui
(JSM)プロジェクト オフィス》
ハワイ離島型スマートグリッド実証プ
− 22 −
ロジェクトの概要説明
郡庁のあと車でクイーンカアフマヌセ
ンター
(マウイ最大のショッピングモー
ル)
にある日立のショールームに移動し
てプロジェクトの説明を受けた。正式に
は日立ショールーム JUMPSmartMaui
(JSM)
イノベーションセンターである。
写真はショールームにあるプロジェク
ト説明のナノブロックを撮ったもので
ある。以下はその概要説明である。
・2011年から FS
(Feasibility Study)
を実施、実証プロジェクトでの取り
組み内容を、エネルギー高効率化、
電 力 需 給 の 安 定 化、EV の エ ネ ル
ギーマネジメント、サイバーセキュ
リティ、自律分散システム、ICTに
よるデータ活用、とした。
・現在までの実証で課題として明らか
になってきたことは余剰電力、周波数
変動、配電線電圧、発電計画である。
・EMS によるマネジメントは分散電
源に関してはコントロールが難し
く、ICT による配電管理の方が効
率的である
・再生可能エネルギー(風力(72MW)
、
家 庭 の 太 陽 光 発 電( 5 年 間 で
6MW →約 50MW に急増)
)の発電
予測を組合せたエネルギーコント
ロールを行っている。
現 在、EV バ ッ テ リ ー を 活 用 し た
トータルなエネルギーマネジメント
を行っており、
EVを蓄電池として
(容
量:24kWh)
、再生可能エネルギー
が大量導入された電力系統の安定化
と余剰電力の吸収に用いている。化
石燃料に依存しない島嶼域のエネル
ギーインフラ構築を実現に向けて取
り組んでいる。
・EV 急速充電器をマウイ島内 9 か所
に設置・稼動中で(目標 20 箇所)
、
EV 利用の快適性を向上して普及の
促進を進めている。現在ボランティ
ア 197 名、日産 LEAF は急増中約
500 台に拡大している。
・EV 車は 5 年前は 60 台であったが、
GM や BMW の EV 車も増え全米
1、2 の高水準で増えている。ハワ
イ諸島はガソリン代が高く全米平均
の 1.5 倍 の 価 格 と 電 気 自 動 車 の メ
リットが大きい
・プロジェクトの残り1.5年は Phase2
として「EV バッテリからの放電機
能」を用いた実証に取り組む。
・ハワイの近隣の島では、住民とのト
ラブルでスマートメータ(ランディ
ス・ギア社他)の導入が遅れるなど
の問題が過去に発生した。
ショールーム内 プロジェクト説明ナノブロック
− 23 −
・アラカワ郡長は再生可能エネルギー
100% を目指すとの発言であるが、
コストを考慮した場合には再生可能
エネルギー比率 30% 程度が最適値
との実験結果もある。
・マウイ電力では再生可能エネルギーが
増加してきて、電力会社としてどう
対応したら良いのか分からなかった
が、
日立との実証で問題点が明らかと
なり、対応策が整理されてきており、
本実証を高く評価して頂いている。
《急速充電ステーション設備》
説明を受けたあと、ショールームの
近くの EV の急速充電器設備(写真は
急速充電器)に移動し説明を受けた。
1 台のコンバータに対して充電器は 4
機併設、同時に 2 機まで充電可能。ユー
ザー認証は登録しているカードで行
う。誰が(コード番号)
、どこで、ど
れだけ充電したか、データを取得して
おり、行動解析は可能な状況。消費者
も EV および充電器を如何に利用する
のが効率的かを学習してきており、外
出時にフル充電というケースは減少、
急速充電器(表)
急速充電器(裏)
必要に応じた充電をするなど、公共の
充電器の利用のされ方は徐々に変わっ
てきている。ボランティアを募集する
ためにイベントを実施している。住民
の意識が高く、参加者は多い。
《ボランティア宅見学(Kihei 地区)》
設備の見学のあとまた車で移動し
て、キヘイ地区にある 30 軒のボラン
ティア住宅の一つを見学した。(写真
は住宅内の充電器とスマートメータ)
このプロジェクトでは、EV 急速充
電器を配置するだけでなく、家庭用機
器(EV 普通充電器、給湯器、太陽光
発電機)、からの情報も収集している。
大型系統蓄電池として、リチウムイオ
ン電池 153kW を 2 台、鉛電池 576kW
を設置している。これに対して実証プ
ロジェクトに登録されている LEAF が
360 台
(ボランティア・有料充電会員)
で単純計算すれば 8.6 MW の容量に相
当する。MicroDMS をキヘイの低圧
トランス下に設置し、SmartPCS、
Home Getaway、家庭用蓄電池、スイッ
チをボランティア宅に設置している。
充電器とスマートメータ
− 24 −
テラスに充電器
《マウイ電力
(Maui Electric Company)
シャロン M. スズキ社長表敬訪問》
昼食のあとマウイ電力のスズキ社長
と会見して意見交換したあと送配電コ
ントロール室の見学をして視察を終
わった。
以下はシャロン M. スズキ社長の説
明である。
・2.8MW のメガソーラ設置の許可は
取れているが、風力発電(72MW)、
家庭用太陽光発電の再生可能エネル
ギーが増加してきており、現状では
メガソーラ設置はペンディングであ
る。
・現状の課題は、ダックカーブ(太陽
光発電の系統連系が増えるにつれ
て、昼間の実質電力需要が大きく下
がり、夜のピーク需要の差が広がる
ことで、夕刻に短時間かつ急速に火
力発電の電力供給を増やす必要性が
でること)問題の解決が優先する。
・昼間の余剰電力の吸収が課題である
が、蓄電池は高価、EV のバッテリー
利用を検討中。
・風力発電、太陽光発電の設置に対す
る制限は現状行っていない、風力発
電に蓄電池を設置することも検討し
ている。
・電力会社は顧客に密着しており、電
力システム全体のノウハウを有して
おり、行政機関が運営する方が効率
的かどうかは分からない。
・余剰電力を各家庭で蓄電するか、大
型蓄電池で蓄電するか。大型蓄電池
は大規模設備投資が必要となり、コ
ストの点で難点があり、VPP 技術
や EMS 技術を活用すべきではない
かと考える。
スズキ社長との会見のあと送配電コ
ントロール室に移動し見学を行った。
ハワイ実証のシステムは、マウイ電力
の電力系統における全島レベルでの需
給バランスを制御する EMS と情報連
携しながら、島嶼域における統合的な
エネルギー管理を実現するコントロー
ラの見学をした。EVECC や ICT プ
ラットフォームが実装されているサー
バが 2 ラックとパソコンベースで監視
及びコントロールを実施している。
中野 秀男
視察メンバーからお寄せ頂きました
感想を事務局がまとめました。 ◆ Big Island Abalone Corporation
(アワビ養殖)
◎目の付け所にユニークさを感じ、ま
た、創業者の執念も感じられ、面白
かっ た。ハワイ島の名産品として成
功して欲しいもの。品質が良ければ、
珍しさもあり、そこそこ高い価格でも
日本で売れると思われた。大学の関
与・コラボも面白い実用化例との印象。
− 25 −
◎海洋深層水が発電利用後にアワビ養
殖に利用されているのは、アワビの生
育に適した温度に表層海水と混合する
と共に、プロテイン豊富な低温育成の
海藻の利用のためとのことであるが、
熱のカスケード利用と豊富な汚染の少
ない海水そして海藻を育てる豊富な日
射といった組み合わせを上手く活用し
ている例だと感じた。また、近年では
中国向けにナマコの養殖もされてい
る。日本でも沖縄の久米島で海洋温度
差発電の実証実験が行われているが、
ぜひ高級食材の養殖など二次活用も
セットで商用化して欲しいものだ。
るが、ハワイ島西岸は条件面に恵まれ
ているため、商用運転の実現可能性が
高く、更に経済性を向上させるために、
熱交換器の改善に取り組んでいるとの
ことであった。
海洋深層水の活用を温度差発電だけ
でなく、脱塩して高級飲用水として開
発することで、ハワイ州からの輸出品
目として 1 位の産物の開発に成功し、
更にバイオ製薬や養殖など、産業創造
に貢献しているという素晴らしい成果
に正直驚いた。
◆すばる望遠鏡山頂施設
◎ 4200m という高地にあるため、一
旦 2800m にあるオニツカセンターで
アワビを試食
◆ Hawaii Gateway Energy Center
海洋温度差発電
◎ NELHA(ハワイ州自然エネルギー
研究所)のご好意で、海洋深層水の低
温と海面表層水の高温との温度差を利
用した再生可能発電の研究開発施設を
見学することができた。
原理的に大きな温度差を確保できる
サイトを見出すことが最大の課題とな
− 26 −
林准教授を交えて記念撮影
体を慣らし、その後望遠鏡施設に行く
という手順を踏んだが、通常の酸素の
6 割しかないため、多少体がふらつく
こともあり、慎重に行動した。
一枚鏡としては世界最大の 8.2m の
鏡を、160 個以上のアクチュエータで
微細制御し、日本の最高技術の粋を結
集させた望遠鏡を直接見ることがで
き、何かしら誇らしいものを感じるこ
とができた。
すばる望遠鏡見学は、元来観光ツ
アーのコースには入らないサイトであ
るが、今回は ISCO からの見学とあっ
て、広報担当者ではなく国立天文台准
教授 林先生自らガイド役を務めてい
ただき、恐縮するとともに非常に感謝
している。
てくるご講演であったが、わかりやす
く解説いただいたおかげで、非常に興
味を持って拝聴することができた。
次々と新しい望遠鏡が建造され、国際
間での新発見競争の激しさが増す中に
あって、素晴らしい成果を出し続けら
れていることに感動し、今後のご活躍
を祈念した。
◎現在のメンテナンスと観測技術も常
に改善と進歩が続けられていることを
知った。130 億年の過去の宇宙の姿を
観測できると伺い、改めてその偉力に
感銘を受けた。その偉力に比べて望遠
鏡もそれを収納する建物も何と小さく
思えた。
◆国立ハワイ観測所山麓施設
◎望遠鏡の現地見学の翌日、山麓の研
究施設を訪問し、成果の一部のご紹介
や、施設管理について話を聞くことが
できた。
普段の生活では全く縁が無い天文学
の世界の話であり、まったく感覚的に
は理解できない時間や距離の単位が出
4200 m のマウナケアから望むサンセット
◆島嶼域スマートグリッド実証事業
◎日立製作所様のご好意で、マウイ島
でのスマートグリッド実証事業を視察
することができた。
従来の石油火力発電に、新たに太陽
− 27 −
光発電やバイオ発電を組み合わせると
ともに、デマンドサイドでは蓄電池や
電気自動車の活用システムを積極的に
組み入れたシステムの実証成果、とり
わけ古い施設も共存する中での実証の
ご苦労など、生の声を聴くことができ
た。現場でのご説明の最中に、現地の
方が電気自動車モニターについて問い
合わされるなど、現地でも注目されて
いることを実感した。
◆ハワイ島雑感
◎これまで空港と宿泊ホテル、或いは
学会会場の往復しか知らなかったの
で、今回の観光込のハワイ訪問は良
かった。比較的、ガイドさんにも恵ま
れ、すばる天文台とスマートグリッド
の先端技術的な面の視察のみならず、
原ハワイアンの聖地や古戦場跡の見
学、さらには、これまで知らなかった
日系移民のこと等、歴史的な面の話、
さらには、雄大な火山等、自然景観を
満喫でき、良い視察であったと思う。
◎ハワイ島は、初めての訪問であった
が、もともと火山島であるが、島の方
位により降雨量が大きく異なり、気候
が全く異なっていることが実感でき
た。視察場所が分散していたため、ハ
ワイ島の多くの場所を見ることがで
き、乾燥のため溶岩がそのままで樹木
がほとんど見られない所や、シダ類が
多い密林状態の所などリゾートとして
のハワイとは違った面が見ることがで
き、楽しいバスの旅ができた。
◎日本でハワイというと、ほとんどオ
アフ島やホノルルを意味するが、今回
の視察ではホノルルには一切立ち寄ら
ない稀有な視察ツアーであった。
逆に、ハワイ島やマウイ島といった
ところを訪問でき、ディープなハワイ
を実感することができた。
休日メニューとして観光に行ったマ
ウナケア山のサンセット・星空観賞や、
実際の溶岩の赤い光が水蒸気噴煙に反
射しているハレマウマウ火口を見なが
らディナーは、忘れられない経験と
なった。
マウナケアから見えたハレマウマウ火口
ハレマウマウ火口
− 28 −
天候面でも曇り空にはなるものの、
寸でのところで降雨からはすり抜ける
幸運なツアーになり、非常に楽しい 5
日間であった。
◎ハワイ島から移動したためか、マウ
イ島は洗練された印象で、町並みから
も人々の生活をうかがい知ることがで
きた。ハワイ島のマウナケアは観測所
がある関係で一般の人は山頂で星空観
測をできないが、マウイ島であれば
3000m 以上の地点で観測できると聞
き残念だった。ハワイならオアフ島の
次はハワイ島なのかと思っていたが、
マウイ島の方が断然良かった。
アカカの滝
ラハイナにあるバニアンツリー(一本の木です)
◆マウイ島雑感
◎ 2 日間という短期間であったことが
残念。とりわけ 2 ∼ 3 月にはクジラ
の親子が湾内に肉眼で見えるらしく、
是非そのタイミングで再訪したい。そ
の折には、今回は行けなかったハレア
カラ火山にも行きたいものである。
最終日になって、初めて水着を着た
多くの観光客を目にしたが、ハワイに
きて、一度も水着を着る機会が無かっ
たのも残念である。
イアオ渓谷
− 29 −
新会員紹介
新しく入会された会員をご紹介します。 〔五十音順・敬称略〕
(1)年齢 (2)出身地 (3)所属(会社名等)部署・役職名 (4)趣味(最近読んだ本)
・旅行(印
象に残った土地)
(5)新年・入会に際しての抱負など
かわ べ
たつ や
川 辰也 (1)63 歳 (2)三重県
(3)一般財団法人 関西電気保安協会 理事長
(4)読書:「嫌われる勇気」
(5)大阪科学技術センター様には、これまでの仕事の関係で大変お世話
になりました。
今回その姉妹団体である貴クラブに入会させていただくことを大変
光栄に思っております。
但し、日頃「サイエンス」とは、縁のない人間、どうなることか心
配かつ不安な思いで一杯です。どうぞよろしくお願いいたします。
つじ
ひろし
辻 洋 (1)62 歳 (2)兵庫県
(3)公立大学法人 大阪府立大学 理事長 学長
(4)読書:
「火花」
「システムの科学」 旅行:カンボジア
(プノンペン、シェ
ムリアップ)
:2011 年 1 月及び 2012 年 12 月、国際会議を開催した。
(General Chair を担当)現地の若手教員が非常に喜んでくれ、毎年、
学生交換など交流が続いている。 その他:釣り
(5)いろいろな業界でグローバルで活躍されている団体や個人のお話を
お聞きできることを楽しみにしています。
さか い
たか し
酒井 孝志 (1)63 歳 (2)京都府
(3)㈱ガスアンドパワー 取締役会長
(4)読書:「帳簿の世界史」、「ワーク・ルールズ!」、
「火花」
旅行:スペイン(プラド美術館、ガウディの建築)、ベルギー(グ
ランプラスでのフラワーカーペット、マウリッツハイス美術館)
(5)各方面の皆様から、知的な刺激をいただき、いつまでも好奇心を掻
き立てたいとおもいます。こちらからは中々情報発信できないかも
しれませんが、よろしくお願いします。
こ じま
かず や
小島 一哉 (1)57 歳 (2)大阪府
(3)一般財団法人 大阪科学技術センター 常務理事
大阪国際サイエンスクラブ 専務理事
(4)読書:羽田圭介著「スクラップ・アンド・ビルド」
旅行:春先の知床 雪を頂く知床岳、氷が溶け始めた知床五湖など景
色とともにヒグマ、オジロワシ、エゾジカなどが活動を始めている。
夜は満天の星が美しい。
(5)好奇心が旺盛で人間大好きです。
皆さまのご支援をいただきつつ、見聞を広めていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
− 30 −
2016年
(平成28年)
謹 賀 新 年
阪 南 大 学
国際電気通信基礎技術研究所
取締役会長
大阪市立大学
名誉教授
児玉隆 夫
大阪大学
名誉教授
熊 谷信昭
名誉教授
大 槻 眞一
大阪大学
名誉教授
児嶋眞 平
福井大学
元学長
一(財︶
大阪科学技術センター 顧問
京都大学
名誉教授
福井大学
名誉教授
小谷恒之
大阪学院大学
名誉教授
京都大学
名誉教授
一(財︶
大阪科学技術センター 顧問
大谷クリニック
院長
大阪大学
名誉教授
木 村逸郎
大阪府立大学
大阪学院大学
名誉教授
遷
大学院工学研究科
教授
樹 下 行三
大 谷 小川昭 弥
− 31 −
2016年
(平成28年)
謹 賀 新 年
一
(財︶大阪科学技術センター 顧問
関西原子力懇談会
会長
京都大学
名誉教授
脳情報通信融合研究センター
副センター長
東 ︵独︶
情報通信研究機構
田口 隆 久
帝塚山学院大学
邦夫
奈良教育大学
大阪市立大学
名誉教授
︵社団︶
テラプロジェクト
専務理事
大阪大学産業科学研究所
プロジェクト研究員
峯平 慎哉
大阪産業大学
名誉教授
丸 谷 洋二
− 32 −
情報メディア学科特任教授
ICTセンター長
中野 秀男
︵地独︶
大阪府立産業技術総合研究所
名誉教授
神 保敏 弥
大阪府立大学
古寺 雅晴
理事長
大阪大学
名誉教授
洋
理事長・学長
辻
︵社団︶
テラプロジェクト 理事長
智の木協会
代表幹事
小 林昭 雄
(五十音順)
2016年
(平成28年)
謹 賀 新 年
暹
京都大学
名誉教授
吉 川 兵庫県立大学
名誉教授
吉 岡恒夫
大阪河 リハビリテーション大学
学長
大阪市立大学名誉教授
− 33 −
大阪大学
名誉教授
公
(財 レ
)ーザー技術総合研究所
名誉所長
山田
作
山中千代衛
大阪市立大学
山 本 研二郎
名誉教授
大阪大学
名誉教授
一(財 大)阪科学技術センター 顧問
宮 﨑 慶次
(五十音順)
表紙の水彩画のごとく東大寺二月堂の修二会で最も人目を引き、有名なのが、この堂前
の高みで振り回される巨大な松明の火炎だろう。
修二月会(略称 修二会)は三月一日から十四日まで(旧暦の二月一日から十四日)の
け か
毎日、本尊の十一面観音にこれまでの罪過を懺悔する悔過の行法のことです。
修二会の本行に参加する十一人の選ばれた僧、連行衆は十四日間毎日の夜の行の初め
(初夜)に上堂する時、松明の先導で登廊に登って行くが、その松明がいつの頃からか大
きくなり、堂前でこの大松明が振り廻されたので有名になり、行とは無関係にお松明を見
に来る人が多くなり、今の姿になったようです。
本尊の十一面観音は大小二体あるといわれるが、いずれも絶対秘仏で何びとも見ること
あ か い
わか さ い
ができない。十二日の深更に堂下の閼伽井(若狭井)へ練行衆が下りて仏前に供える香水
を汲む秘儀を行うことから、行法とは直接関係ないが修二会のことを俗に「お水取り」と
呼んでいます。
本年もより良き会報をめざしてまいりますので、ご協力の程お願い申し上げます。
広報委員 副委員長 今市 隆造
会員の皆様へ
「私のとっておき」コーナーへご投稿のお願い
「会報」は、ご承知のとおり季刊として発行しております。現在、会員外からご投稿頂く特別
寄稿をはじめ、講演要旨、海外リポート、会員のひろば、新会員紹介などを掲載し、毎号の会報
編集については、広報委員会で検討しております。会員の皆様により一層のご愛読頂く
ため会員参加型のコーナーとして昨年より「私のとっておき」を連載しております。
つきましては、下記の内容等で自由にご投稿頂き楽しいコーナーとして皆様の多数のご参
加お待ちしております。
①テーマ:問いません
ex.お店・健康法・スポーツ・旅行・本・音楽・映画・芝居 等々
②文字数:問いません(写真・図有可)
③締 切:随時掲載 ※実名・匿名いずれでも結構です。
原稿は下記までメール送信して頂きますようお願い申し上げます。
紙面の都合によりご投稿多数の際は、抽選させて頂く場合がございます。
<本件窓口> 大阪国際サイエンスクラブ 事務局 TEL(06)6441- 0458 FAX(06)6441- 0459 (science@isco.gr.jp)
2016年1月
(H28)
発行
大阪国際サイエンスクラブ 広報委員会
大阪市西区靭本町1丁目8番4号 TEL
(06)
6441-0458
ホームページ:http://www.isco.gr.jp/
E-mailアドレス:science@isco.gr.jp
※本誌掲載の記事・写真・ロゴマークの無断転載を禁じます。
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日根野公認会計士事務所
所 長
日 根 野
文 三
公認会計士・税理士
医業経営コンサルタント
大阪大学 大学院 工学研究科 非常勤講師
(一般社団法人 日本中小企業経営支援専門家協会 会員)
(公益社団法人 日本医業経営コンサルタント協会認定登録)
〒540-0024 大阪市中央区南新町2丁目3番7号 塚本ビル7F
TEL 06-6942-1888㈹ FAX 06-6942-3177
E-mail:b-hineno@hineno-ao.com
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