2008(平成 20)年度研究指導 学部金井ゼミ シラバス(演習の内容計画書) 経営人材研究所というウェブサイトがあります。http://133.30.214.10/~hrm/index.html を訪ねてください。金井の論文の一部がダウンロードできます。 I. ゼミの概要 応募のときに、なにかを成し遂げているひと、というリクエスト以外に、若くしてリー ダーシップを発揮したいと思っているひとというリクエストも明示的にオリエンテーショ ンで述べて、その結果、選ばれ集まってもらいました。みなでいいグループ、チームにそ だてていきましょう。ともに学び活動するプラットフォームとして。 ゼミは少人数教育ですので、そういう凝縮した場でないとできないことをめざしますが (ゼミの3コンセプトを参照)、そのために選抜せざるをえないので、入れなかったひと がいます。そのなかには、皆さんの友人、知人がいるかもしれません。それだけいっそう、 ゼミでの活動に打ち込んでください。 ★新3年金井ゼミ生の名前のみのリストを、末尾につけていますが、すぐに、連絡先(住 所、電話、メールアドレス)、それ以外に、特技、趣味、ゼミ内での役職なども入れたよ り意味あるリストを作成してください。とりまとめ役と、作成手順をゼミが終わったあと、 すぐに決めてください。 ★一回目のみ、10時40分スタート12時10分終了にしていますが、できたら、次回 からは、10時 40分スタート12時30分終了にしたくおもっています(ご相談)。少 し長めにしたいということです。 0. イントロダクション――ウェルカム・メッセージ <ようこそ です> ようこそ、金井ゼミへ。これから、2年間をゼミでしか学べないことを、この場から、 仲間から、そしてわたしから、学んでください。4年のゼミ生、また院生金井ゼミ生、こ の年度はできれば MBA 院生金井ゼミ生ともよく交流してそこからも刺激をえてください (ときには、大学院生とも)。学部ゼミとしての同窓会(なんと、金壽会といいます)が 非常にしっかりとできあがっていますので、金井ゼミの卒業生の皆さんとも、必要なら接 触しつついろいろ学んでください。 1 ★金井ゼミ同窓会MLのこと。登録など。会長の十河(そごう)さん、(ウェブ上では略) ,あるいは前会長の谷井さん、(ウェブ上では略)にお尋ねください。ゼミ生のフルネーム とメール・アドレスをお伝えすれば、kinjunetというMLに登録してもらえるはずです。 ★残念ながら、数年前からゼミの TA の方に大学の予算的にはつかなくなってしまいまし た。今年は、昨年に引き続き 前期は、麓仁美さん (ウェブ上では略) 後期は、服部泰宏さん (ウェブ上では略) <大学のゼミを通じて、どう一皮むけるか> anchor quantum-leap experience and student-life ★あわせて AA(Autonomous Activities)の説明 ひとの発達のなかで、もっとも重要なふたつの基軸は、(1)なにかを創り出す、達成 するということと、(2)そのことをひとりでなく、ひととともにいるなかでおこなえる こと、です。これを、D.Bakan は、agentic、communal と対比しています。ゼミでは、そ の両面が出ること、それを、大きな教室とはちがって、インターラクティブにできること をめざします。募集のときに、achievement があることと、leadership をとりたいと願っ ていること(その経験があること)をあげましたが、agentic と communal はそれに対応 しています。このあと、リーダーシップ論を学んでいくと、このふたつの軸は、リーダー シップ研究の不朽の軸である課題軸と人間関係軸に深く関連することが理解されるでしょ う。 また、高校と大学との違いは、自分からのイニシャティブがふえることなのですが、そ れが1,2年ではあまりできていないことがあります。ゼミでは、自律と共同が両立する ことも実践してほしいです。後述する AA でこれをぜひ身につけてください。AA は、ゼミ 生が、いちばん近いゼミのセッションで学んだことについて、さらに理解を深めるための セッションであり、また、金井がいると、金井が話す多さに応じて、皆さんが話せるエア タイム(発言時間)が減りますから、この自発的な AA の場で、思う存分議論してほしい です。逆に、金井がいるセッション(#表示)のときには、金井に余分目に話させてあげ てください。 また、R.ベールズについてふれるときに学ぶように、ディスカッションをうまくリード できることは、リーダーシップの重要な実践のひとつです。だから、AA での司会は、持ち 回り(ローテート)しています。また、4年ゼミのひとたちは、3年の終わりに、ゼミ・ リーダーシップ憲章(持論)をつくり、AA で司会をするときに遵守すべきリーダーシップ の原理・原則を、言語化し共有しています。(このパラグラフで書いていること自体、ま たゼミのなかでも取り上げていくことになります)。 2 <よかったこと、打ち込んでいること> 神戸大学経営学部に来てよかったと思うことが、今までどれくらいありますか。もした くさんあったら、それをゼミでの活動でもっとふやしてください。あまりなかったひとは、 これからが本番と超がんばってください。これは、学問だけでなく、自分がほかにも打ち 込んでいるものを大切に。今までの2,3年と、これからの2年にさらに、いい意味での 違いが出るようにしましょう。 高校までやっていなかったことで、大学になってから着手したことで没頭していること がありますか。あるいは、高校までもやってきたことで、大学になってさらに打ち込んで いるものがありますか。もともと、打ち込んでいるものがあることを基準にして、ゼミ生 に入ってきてもらっていますが、それぞれがなにに燃えているのかという観点から、初回 のセッションでは、自己紹介をしましょう。また、ゼミにゲストが来られる度に、それま で聞いたことがないことを含む自己紹介を重ねていきましょう。 (1)経営学とかかわりのある学問でこれだけは打ち込んだといえるものをひとつでも もつこと(この分野のことはよく知っているし、若いのによく考えているなと思われるこ と)、あわせて(2)学問以外の分野で今しかできないことで、とことん没頭し打ち込む ことをひとつはもってください。この両方は、一生の財産になります。なによりも、自信、 自分への信頼という最高のアセットになります。 ★たとえば、先輩の矢野さんの場合の話をします。 <ゼミが小規模であることの意味> わたしがよく会う、企業の部課長、さらには役員、社長に至るまで、学生時代のことを よく覚えておられます。感受性のすばらしい時期を密度濃く生きたら、それぐらい学生の 時期というのは、人生のなかでももっとも大切な時期のひとつになるのです。ファウンデ ーションができる時期でもあります。 わたしたちは、大きな教室での講義も大事にしていますが、大きな教室ではその物理的 制約によって、どうしてもできないことがあります。たとえば、個人の意見をもっと注意 深く聞いて、意見の違うひとの間で実りあるすり合わせをするような議論は、I-102 では難 しいです(でも、大きな場所でも、インターラクションを起こすのをあきらめてはいけな いと思っています。 組織開発で有名なリチャード・ベッカードは、もとシアター・マネジャーで大人数でも、 相互接触がおこる仕組みを最初に考察したひとりです。だから、わたしは、I-102 でもイン ターラクティブな講義を実験したことがあります。できないわけではないですが、200 人 の場では、できない親密なインターラクションというのがあります。だから、ゼミでしか できないやりとりを大事にしてください。 ★組織開発と MIT のリチャード・ベッカードとバズ・セッションについて。また、中教室 3 でも隣とひとと5分話してみて、というのをうまく使っていた同じく MIT のエリック・フ ォン・ヒッペル。 <なにか打ち込んでいるひとが、少数精鋭でゼミの場に集うことの意味 agency and communion in student(seminar) life at Kobe, at Kanai semi.> そのためには、準備がかかせません。隔週にわたしが、通常より20分長いゼミをやり ます。そのときには、必ず事前に熟読すべきリーディングと、事前に考えて記述してもら うレポートとがあります。一回目のみオリエンテーションなのでリーディングがありませ んが、必ずリーディングを踏まえたレポートをゼミの場に人数分コピーしてもってきてく ださい。準備がないと、うまく議論に参加することができません。初期の金井ゼミに比べ ると、ここ 2 年間、残念ながらそこにちょっと緊張感の欠如があります(とくに、男子学 生の側に)。安藤忠雄さんの、20代に打ち込むものがなかったら、終わりだという言葉 を真に受けてください。 ★4年ゼミのゼミ幹事に、ウェブ上でレポートにアクセスできるようにしておいて、教室 に入る前に仲間のを先に読めるような工夫を聞いてみてください。その場合には、ハード コピーは、自分の分と教員と TA の分だけでいいことになります。 <ゼミを無断で休まないこと、とても重要――金井ゼミを希望して入れなかったひとがい っぱいいます!!!!> きびしいようですが、一学期中に、納得のいく理由なく無断で2回を超えて休んだ場合 には、本人のためにも、またほかのゼミ生のディスカッションの緊張感を維持するために も、わたしも注意しますが、ゼミ生同士でもそのひとに注意とケアをしてください。もち ろん、いい緊張感はあっても、元気が出て、楽しいゼミにしたいと思っています。 ★ゼミよりも大切な用事や自己や病気・怪我などがあり、どうしてもゼミに出られないと き、メールが土日だとゼミまでに見る間がないことがあるので、①金井の自宅ファックス (ウェブ上では略)か、携帯電話に(ウェブ上では略)、②あわせて、ゼミ生でその日、 出席するひとにも伝言で、欠席とその理由を伝えておいてください。 <ほかに打ち込んでいることが自分のエネルギーを吸い取るのと同じくらい、ゼミにもパ ワーが備わるように――それをつくるのは、金井だけでなく、もっと大切なのは、ゼミ生 自身のひとりひとりのパワーとグループとしてのパワーです> ★GE で20年も会長をしていたジャック・ウェルチのエナジーとエナジャイズ せっかく大学にいるのだったら、すでに打ち込んでいることにプラスアルファで、大学 でしかできないことで、ひとつかふたつ、とことん打ち込んだものを残してください。ゼ ミをそのひとつに。ハーバード大学に長らくいて、それから日本に戻って、去年より神戸 大学経営学部にきてくださった三品先生は、日本の大学の課題は、学生のエネルギーを四 4 六時中吸収、費消しきるほどの仕組みが少ないということでした。そのとおりだと思いま すが、ゼミをそのなかの数少ない、多大なエネルギーの投入先にしてください(そのため に、先輩たちがおこなってきた、3商大ゼミや同窓会の企画・実施や大学祭への積極参加 など、この学年らしく工夫しておこなってください)。 <倉光修さんが強調すること――知的な刺激に絶えずできる限り多くふれること、本屋、 映画、コンサート、美術館、なんでも貪欲に、感動したことがあったら、必ずゼミで共有 すること> それから、これからの2年間、あらゆる知的刺激の源泉を大切にしてください(あとで も述べますが)。 <わたしもゲストを教室にお連れすることがありますが、皆さんがお連れするのも OK> 4年ゼミの方にゲストがくるときには、学年にかかわらず(つまり3年生でも)、興味 のあるところは、ほかに講義が火曜4時限になければ、ご遠慮なく出るようにしてくださ い。 ★ これまでのゲストの実例。富士ゼロックスにいたときの原井さん、先輩たち、ラグビー 日本代表の林敏之さん、慶應の高橋俊介さん(特別ゼミ) ★ なお、2年上の松原さんたちの学年は、自分たちの企画で、東大の藤本隆宏ゼミ、阪大 の小林敏男ゼミなどと交流をしてきました。 <同じ、もしくは隣接の分野の先生> 同じ分野、隣接分野の先生いついて。 わたしの所属する経営管理というユニットには、 準教授の鈴木竜太さんがいて、隣接分野では、坂下先生の後継者の松嶋 登さんがいます。 ともに、わたしの研究室で博士号をとった方です。産業組織心理学の高橋潔さん、人材マ ネジメントの上林憲雄さんと平野光俊さんも、分野の近い先生です。 ★金井ゼミの OB や OG で大学の先生をしている方が、は、外書購読できてくれる年が あります(最近は、近畿大学の小川千里さん、今年は高橋徳勅さん)。 それでは、思い切り充実したゼミ生活をそれぞれに求めてください。 <教材の購入と、コピーで読む教材の作成・配布について> ★ここまだ、どうするのが ベストか考えているところです(TA の方へのコピーをお願いする以外の方法を模索中。 PDF 化してしまうという手もある。著作権の問題を起こさないようにして)。TA と相談 中です。 5 数年前から、研究助成室の負荷を軽減するために、教材等のコピーは、教官の指示のも とできる限り TA のひとにやってもらうことになりました。さらにまずく、ここ数年、学 部のゼミにはフォーマルに TA 予算がつかなくなりました。 教材は、できるだけ、金井かボランティアのTAのひとがコピー、また、一部は、やむ なくゼミ生にコピーをお願いすることもありますがよろしく。なお、書籍として購入予定 の教材はできるだけ、早めに発注。 上記にも一度お名前をあげていますが。 ボランティアでのTAをインフォーマルにお願いしている大学院生の方は、 前期は、麓仁美さん 後期は、服部泰宏さん 昨年に引き続き、ボランティアで来てくださっています。拍手。前期は麓さん。 ★ 管理上、経営学部の機械室のコピー・マシーンは、教職員か、TA の院生でないと使用 することができません。 <なんでも、わからないことがあったら、質問するくせをつけてください> シラバスで不明な点、おかしい点がありましたら、金井に直接か4年ゼミ幹事かほかの 先輩ゼミ生に聞いてみてください。 <以下の詳細シラバスですが> ★ 日程の日付と曜日があわないとき、日程がまちがっているなと思ったら、気づいたひと が金井に連絡を。今日の間にも。 ★★手帳をくりながらするのですが、よく間違いが あります。日付と曜日があわないときには、たいてい、わたしのミスです。昨年度の材 料を母体に加筆修正して、作成しました(つまり、この年度にむけて大改訂はしていま せん)。 1.普通の講義要綱に載っているようなこと 8単位 担当教官名 金井壽宏 tkanai@kobe-u.ac.jp TA(Teaching Assistants)フォーマルにはなし ボランティアベース上記のとお り 月曜 第 2 時限+α(午前 10 時 40 分∼12 時 30 分までの予定) 場所 第 IV 学舎(アカデミア館)の 403(眺めのいい部屋です!) 2.研究主題 6 経営管理論、組織理論のかかわりのある広範なトピックを、「組織のなかの人間行動」 という人間くさい観点から、深く掘り下げていきます。経営管理の講義を聞いたひとは、 そこでカバーされたトピックを想起してください。しかし、ゼミでは、わたしも目につい て興味深いトピックが一見すると経営学とかかわりがなさそうでも、人間行動についての 洞察を含んでいたらそれを教材にとりあげますし、ゼミ生の皆さんも、とくに卒業論文の テーマを考えるときには、各自の関心に応じて、より広い範囲から自由に選んでください。 講義でも使っている日経文庫の『経営組織』がトピックを知るうえで有益だと思います が、今年は、MBA 用のテキストですが、『組織行動の考え方』(東洋経済新報社)も出ま すので、上級レベルの内容も知りたいひとは、これもご覧ください。 自分で仮説を立て、フィールドでデータを集め、なんらかの形で仮説を検証したり、新 しい仮説を発見していくような方法論を身につけたりすることも、それ自体研究主題の一 部として重視していきたいと思っています。 どのようなテーマがこの研究分野にあるのか、どのような文献があるのか、日本ではど のような学者がいるのかは、ゼミのなかで必要があるたびに、お話ししますが、上記二冊 を含む、わたしの著作はだいたいつぎのプロフィールのとおりです。 皆さんのゼミ指導教員(金井)について 以下の記述からも、研究主題のイメージが膨 らむでしょう。 <プロフィール> 金井壽宏(かない としひろ) 1954 年神戸市生まれ。78 年京都大学教育学部卒業。80 年神戸大学大学院経営学研究科修士 課程を修了。89 年 MIT(マサチューセッツ工科大学)で Ph.D.(マネジメント)を取得。 92 年神戸大学で博士(経営学)を取得。現在、神戸大学大学院経営学研究科教授。 変革型のリーダーシップ、創造性となじむマネジメント、働くひとのキャリア発達、次期 経営幹部の育成、これからの人事部の役割、研究とつながる教育・研修のあり方(リサー チ・ベースト・エデュケーション)を主たるテーマとしている。これらにかかわる論文や 著作が多数――以下がその一部。amazon.co.jp を訪ねて、金井壽宏(壽、旧字)と金井寿 宏(寿、新字)をそれぞれ入れて、著者名検索してみてください。わたしがかかわった本 がいろいろ出てきます。また、ひまなときに、Google で金井壽宏と打って検索してみて、 どういうものが釣れるかみてください。ジュンク堂のリストで、今手に入るわたしの全著 作がだいたいわかります(書籍の一章書いているみたいなのは出ませんが)。 主な著作:『変革型ミドルの探求』(白桃書房、91 年)、『ニューウエーブ・マネジメン 7 ト』(創元社、93 年)、『創造するミドル』(有斐閣、共著、94 年)、『企業者ネットワ ーキングの世界』(白桃書房、94 年)、『日本企業の適応力』(日本経済新聞社、共著、 95 年)、『会社の中の「困った人たち」』(創元社、訳、98 年)、『経営組織』(日本経 済新聞社、99 年)、『中年力マネジメント』(創元社、99 年)、『「日本型」思考法では もう勝てない』(ダイヤモンド社、共著、01 年)、『完全なる経営』(日本経済新聞社、 監訳、01 年)、『働くひとのためのキャリア・デザイン』(PHP 研究所、02 年)、『仕事 で「一皮むける」――関経連「一皮むけた経験」に学ぶ』(光文社、02 年)、『会社の元 気は人事がつくる企業変革を生み出す HRM』(日本経団連出版、共著、02 年)、『組織を 動かす最強のマネジメント心理学』(中経出版、02 年)『会社と個人を元気にするキャリ ア・カウンセリング』(日本経済新聞社、03 年)、『キャリア・アンカー』(白桃書房、 訳、03 年)、『キャリア・サバイバル』(白桃書房、訳、03 年)、『キャリア・デザイン・ ガイド』(白桃書房、03 年)、『組織行動の考え方』(東洋経済新報社、共著、04 年)、 『組織変革のビジョン』(光文社)、『ハッピー社員――仕事の世界の幸福論』(プレジ デント社、04 年)、『部下を動かす組織人事』(PHP新書、共著、04 年)、『企業文化 ――生き残りの指針』(白桃書房、監訳、04 年)、『「決定的瞬間」の思考法――キャリ アとリーダーシップを磨くために』(東洋経済新報社、監訳、04 年)、『リーダーシップ 入門』(日経文庫、05 年)、『踊る大捜査線に学ぶ組織論』(かんき出版、05 年)、『洗 脳するマネジメント――企業文化を操作せよ』(日経 BP、訳、05 年)、『キャリア常識の 嘘』(朝日出版社、共著 05 年)、『ひと皮むけるためのあったかい仕事力相談室』(千倉 書房、06 年)、『働くみんなのモティベーション論』(NTT 出版、06 年)、『シンクロニ シティ』(英治出版、07年、監訳)、『サーバント・リーダーシップ入門』(かんき出 版、共著、07年)、『時代を拓くキャリア開発とキャリア・カウンセリング――内的キ ャリアの意味』(日本キャリア・カウンセリング研究会刊、07 年)、『入門 ビジネス・ リーダーシップ』(日本評論社、共著、07 年)、『やる気!攻略本』(ミシマ社、08 年)、 『幸之助論』(ダイヤモンド社、監訳、08 年)など古本屋でもしも『ウルトラマン研究序 説』という本をみつけたら、手にしてください――それにも書いています。 3.研究方法 第1年次(3年生の間)は、経営管理論、組織理論プロパーの文献ばかりでなく、基礎 学問分野の文献を含めて、徹底的なリーディング・セミナーとしてゼミを運営します。そ の際、必ずなんらかの調べものを伴う事前課題を付して、絶えずインタビューしたり、ミ ニ調査をおこなったり、わかったことをしっかりと書き留めるというクセを身につけても らうようにしたいと思っております。事前課題のレポートは、ゼミでの議論の材料にもな ります。適宜、ゼミ・プロジェクトを実施するようにします(これは、3商大学生研究討 論会での発表につながることを目的とします)。 8 II. ゼミのコンセプトとメンバー ★ここは、口頭で説明を初日に入れます 1.ゼミの基本コンセプト オリエンテーションのときからふれてきた、ゼミで教育機会、学習機会、相互に刺激す る機会があることの意味をあらためて述べます。自立的人材が大事だというときに、ゼミ のような教育の場の重要性はますます高まるとわたしは思っています。 ゼミの基本目的は、少人数で真剣な議論の可能な場をいかして、広義の組織理論、経営 管理論にかかわりのある素材を元に、つぎの3点に留意した演習を隔週でおこない、その 間の日に、自主的活動をエンカレッジすることにあります。金井ゼミのあり方、ありたい 姿を表すコンセプトは、つぎの3カ条から成っています。 (1)自分のアイデアや意見をきちんと表明する。(自分が担当のときや、自分の発表順 のときに)プレゼンテーションの基礎をつくると同時に、議論の自然な流れのなか にいつでもジャンプインできるような姿勢を学ぶ。 (2)他のひとのアイデアや意見にきちんと耳を傾ける。自分のアイデアや意見とどこが 違うのか、どこが共通しているのか、について考える習慣をつける。 (3)アイデアや意見が相違する場合に、その根っこにある理由や前提、事実の認識の仕 方、推論の仕方などについて、議論する。 よく会社の役員や管理職から、自分で考え議論できるひとが少なくなったといわれるこ とがありますが、いつも金井ゼミの卒業生は、だいじょうぶですと胸を張っていえるとう れしいです。 すぐれた内省的実践家(reflective practitioner)は、自分がやっていることの意味が自 分でわかっており、わかっていないときも、対話を通じてそれができるひとです。MIT の ドナルド・ショーンの言葉ですが、わたしの favorite phrase です。 以上は、なにを学習するかというコンテンツを離れても成り立つ、プロセス面でのコン セプトです。 2.OB(組織行動論, organizational behavior)を学習するときの内容面でのコンセプト このシラバスの設計思想は、毎回の#セッションが独立のトピック(読み切り)という考 えに立っていますが、全体を貫くライトモチーフはあります。それは、組織のなかの人間 行動について、もっともっとイキイキとした研究をしたいという人間主義的な視点です。 OB の 2 大トピックといえば、リーダーシップとモティベーション。もし OB の 3 大ト ピックと言われると、わたしなら、リーダーシップとモティベーションとキャリアと答え るだろう。 9 ★図書館で、新しい年度に入っている米国のテキストで、Organizational Behavior と名の 付く本ならなんでもいいですから、一度借りてみてください。借りたひとがいたら、ゼミ にもってきてみてください。こういうのがすべて、倉光さんの言われる刺激です。目次を 見るのも、写真だけ見るのも、前書きよんでみるのも、魔が差して全部読んでみるのも刺 激。 学生時代の金井壽宏は、どういう学生だったか。 3.メンバー構成(名簿とプロフィール参照) これまで、新しく3年になって金井ゼミに入ることになっている人びとで集まって会う 機会がまだ少ないですが、ある程度知り合いになれていますか。第3年次に編入で神戸大 学に来て、金井ゼミにジョインすることになっている新メンバーがひとりいます(上田さ ん)。昨年度の顔見せの飲み会や謝恩会後の会にこれなかったひとたちには、はじめまし て、ということになります。よろしく。12名でスタートです。新たな歴史を。また、皆さ んには、印象に残る、そしてよく考えが深まる2年間にしてください。 III. ゼミの実際の設計と運用 1.教材になるもののイメージ 書かれたもの、映像として記録されたもの、音楽(歌詞)、あらゆる人間の組織的活動 のうかがいしれるものは、潜在的に教材になりえます。また、皆さんのグループや組織の 経験、アルバイト、クラブ活動、サークルでの活動等々は、すべて考える材料です。そし て、皆がもちよるレポートも最高にライブな教材だと思って大事にしましょう。ゲストが ゼミに来られれば、その方を教材と呼ぶのは失礼ですが、しかし、この場に刺激をもたら してくれるリソースです。 このゼミでは、素材としては、組織論関係および基礎学問分野、さらには一般の文献の なかから、組織のなかでの人間行動(human behavior in organization; organizational behavior)について、自分を内省し表明し、ゼミ生皆で議論するのに適切なものを選定し ます。わたしがまず選びますが、皆さんからのエントリーも大歓迎ですし、ゼミとゼミの 間のアクティビティとしても工夫してください。材料は、書かれたものだけでなく、TV プ ログラム(ゼミで共有したい場合にはビデオに収録すること)、映画や音楽もフル活用し てくあさい。 論文等は、こちらでコピーして原則としてできるだけ、二週前(つまり、隔週なので、 前回)のセッションで配布します。遅れても、AAのときには渡せるようにします。 書物まるごと読む場合(◎印)は、各自あるいはゼミでとりまとめて、早めに購入して おくようにすること。 ★(■注意■ 本の発注や購入は、できるだけ早めに。また、グループで取りまとめて 10 発注した方がいいかもしれません。そのための係りを設ける学年もあります。)係はいら ないという意見もありえます。個人個人で購入も可能ですから。しかし、まとめて買って 割引があるかなど、生協で聞いてみてください。 組織や集団にまつわる現象のかなりの部分は、ゼミという集団のなかで生じるし、皆さ んが大学のなかやアルバイト先などでも組織にまつわるなんらかの経験を集積しているは ずなので、そこでの経験もライブの素材として利用します。 2.ゼミへのゲスト(すでに一回説明ずみなので、重複しています) ゲストとして実務界でご活躍のリソース・パーソンをゼミの場に事前に計画して招くよ うにはなっていないが、金井研究室の来客がゼミに興味をもたれたら、できる限りゼミに お連れするようにします。これまでもゲストの多いゼミです。富士ゼロックス、冨士ゼロ ックス総合教育研究所、社会経済生産性本部、P&G、神鋼ヒューマン・クリエイト、島津 製作所、鐘淵化学、リクルート、神戸製鋼、ロート製薬などから、ゲストが来られました。 ラグビーの林 敏之さんが、ゲストできてくれたこともあります。昨年は、モティベーシ ョンのEラーニング。ゲストのきわみは、冨士ゼロックス総合教育研究所の中浜さんでし た。LFR というリーダーシップのシミュレーション・ゲームをしてもらいました。 ゲスト(あるいは、オブザーバー)についても、皆さんが見つけて依頼して連れて来ら れるのもいいので、その場合も、金井まで事前にご相談ください。スペース的に可能であ る限り、他の大学の友達、恋人、親、従兄弟、どなたでも、you can all join in です。ただ し、事前にご連絡だけはください。「どのようなひとが、なにに興味をもって、ゼミにオ ブザーバーで来られるのか」メモして金井までファックスか電話かメイルで連絡してくだ さい――なかでも、ファックスがベストです。電話はとれないことが多く、メイルは月曜 のゼミの前は週末に見ていない恐れがあるため(電話(ウェブ上では略)やファックス番 号(ウェブ上では略))。シラバス末尾のメンバーのリストから早めにゼミ生全員の名簿 をつくってください。 なお、わたしがお訪ねする先や、興味ある会合で金井が出るときに、ゼミ生を(全員で なくても)数名連れて行けそうな機会があれば、極力そういうのを創るようにして、お伝 えします。NOMA(日本経営協会)の大会に選抜メンバーで(全員のスペースがないので) 参加したり、また、各学年ごく少数になってしまいましたが、最近の数年の間では、P.サ ロベー(エール大学教授)や建築家の安藤忠雄さんを見る機会をもちました。見るだけで はありませんが、一流にふれるのが大事だと思っています。 3.レポートの作成とコピー部数 毎回、リーディングに対応した事前課題のレポートを作成します。課題は、このシラバ スに詳しく書いてあります。 ★当日は、ゼミの人数分(留学から帰ってきたひと、休学から復学されるひとを含め、 11 初日に人数をチェック)プラス金井+TA 分(今年からなし)+予備α部(★何部になるか、 一回目のときに確認、α=2)コピーして当日持ってくるように。レポートは、ワープロ で作成するように(現時点で、パソコンもワープロも知らないひとは、早めに文書がワー プロで打てるようになるようにしてください――もうそういうひとはたぶんいないとは思 うのですが)。事前課題は、上述のライブな経験を共有するためのツールでもある。 ウ ェブ上で見られるにすれば、ゼミ生の間で共有するためのコピーはいらなくなります。 学年をぶちぬいた同窓会が毎年開かれていますが、タテのつながりも大事にしてくださ い。ときにテーマによっては、大学院金井ゼミのひとにも出たらと声をかけるようにしま す。 4.その他のドキュメンテーション 自立性と AA(Autonomous Activity) 自律的アクティビティ AA(あとのシラバスでは♭印)のドキュメンテーションのお願い AA でどのような活動と議論がおこなわれたのか、そこにいなかった人間(わたしも含め) にもある程度わかるように、必ず記録を残してください。そして、そのつぎのセッション のときに、金井に手渡して手短に報告してください――★これは最近充実してきています がまだ方法は模索中ですので、これをうまくおこなうためのコツを先輩ゼミ生に、相談し てみてください(これは、毎回担当を変えて、記録係もプレゼンテーション係も、みんな がセッションのドキュメンテーションをつくったり、それをプレゼンしたりするのがうま くなるようにしましょう)。記録をきちんと残すスキルは、会社に入っても、とても重要 です。 これも昨年度は、あまり完璧に実施できたとはいえませんので、先輩の意見も聞きつつ、 今年は、もっと充実させてください。 VI. ゼミにおける卒業論文の位置付け 1.今から早いですが、後期のこと、2年目のこと 前期に運営の仕方になれたら、後期は、どのようなセッションをもつのか、ゼミ生の皆 さんの意見を聞きながら、共同で参画的にシラバスをつくるという案もありえます。 今から2年目のことを語るのは早すぎるかもしれませんが、このゼミの最終的目的(と りわけ2年次)は、皆さんひとりひとりにも意味があり、研究調査としても意味のある卒 業論文の作成を指導することにあります。これまでの金井ゼミの卒業論文は、すべて実証 研究です。つまり、本や論文を読んでまとめるだけの研究でなく、自分なりにフットワー クでデータを収集し分析した研究です。あらけずりでも、いいから、自分で納得がいく、 ほんとうのリサーチを経験してほしいです。 12 興味に応じて、たまに4年生金井ゼミや大学院金井ゼミにオブザーバとしてでてもらっ てもけっこうです(ただし、大学院ゼミに一度顔を出してみたいという場合には、事前に わたしか TA のひとの承認をえてください)。 2.卒論という観点から見たゼミの目的 その意味では、ゼミのアウトカムにかかわる、基本目的は、ゼミを通じて、(1)自分 なりに実証可能なリサーチ・クウェスチョン(研究課題)を立て、(2)その課題にかか わる文献を探索すると同時に、(3)それにかかわるデータを集め、(4)自分なりの仮 説を立てて(あるいは、データから仮説を生成させて)、(5)仮説とデータとを理論的・ 実証的に結びつけるという知的作業を各メンバーがおこなう一助となることです。わたし は、こういうことができる力が、いくつになってもけっして陳腐化しないスキルやコンピ タンスになればと望んでいます。 今年の4年ゼミは初めて、二年次もいきなり卒論指導に入らず、リーダーシップの文献 のリーディングを続けます。 3.卒業論文 これまでも印象深い卒業論文がいっぱいありました。これまのすべてをみると、通常の 大学の修士レベルに達しているような論文もいくつかあります。 いい卒業論文に対してわたしがもつイメージは、とても納得できる研究ができたので、 皆さんが、いくつになっても、「わたしの卒業論文は...」と語れるようなものがいい です。 卒業論文のなかには、わたしが学会発表でふれたり、論文で引用したりしたことがある ものから、短縮した形で出版されたものもあります。 卒業したての学年の卒論のうち何点かは、デジタルにシェアできるようにしてもらうよ うにします。 尾島 聡『E-motion――良質な怒り』1999 年 樋口リタ・シセラ『「時感」――日本人とアルゼンチン人の時間感覚』 ★ 樋口さんの卒論をはじめ、わたしがおこなったいくつかの対談は、つぎのウェブサイ トで見れます。 http://www.shc-creo.co.jp/webcreo/ 4.リサーチ・プロポーザル 研究テーマを考えるということは、絶えずリサーチ・プロポーザルを作成するか、改訂 することを指します。その作業になれることがいい卒業論文を導きます。フォーマットは、 このシラバスの末尾にあります。 13 VII. および ゼミの運営方法 TK セッションと AA セッション 隔週のうまい使い方 今年の特徴(昨年に引き続き、リーダーシップへの言及) 隔週ごとの2タイプの絶妙な組合せ なお、毎回のゼミの具体的な運営、司会や発表の工夫は、グループとしてゼミの発達に 応じて、皆さんでどんどんイノベーションや実験をするようにしてください。 ゲスト、ビデオ、プラント・ビジトなどは、わたしの方でも工夫しますが、皆さんの方 でもアイデアやアクセスがあればお教えください(先にも述べたゼミのメンバーの皆さん からのインプットも大切)。 わたしが中心におこなう日(隔週)の間に入る日を、自立的アクティビティ(AA)にあて ますので、そこをどのように運営するかを通じて、ゼミの団結や皆さんのリーダーシップ がいっそう高まることを期待したいです。大学でわたしがおこなう間の週は、どこでやっ てもいい(たとえば、六甲山でも)が、間の日も大学でおこなうときには、(わたしがそ の時間帯に大学にいて、会議などがない場合には)必要があれば、30分ほど顔を出すよ うにしますので、その場合は、わたしの出番も設計してください。 三年前から新たにおこなったことは、すべてのセッションでリーダーシップの問題と関 連づけて議論したいと思ってて、毎回のセッションについて、リーダーシップとの結びつ きを考えるヒントを付したことです。ゼミのオリエンテーションのときに、そのころから アチーブメントとリーダーシップの両面を取り上げるようになりました。今後は、リーダ ーシップをもっと前面に出すようにします。 VIII. その他の注意事項と希望 1.ファシズムではない全員参加 わたしは、むりして全員がくるというのは、たとえば、50人を越す組織では、ついつ い強制力が働くので、あまりすきではありません。ファシズムで皆が同じように振舞うと、 自立的の反対、つまり権威や集団の力にもろい人間ができあがってしまいます。 しかし、このゼミは,コミットメントの高いゼミにしたいです。この学年も。卒業後、 いつになっても、大学時代といえば、クラブ活動もよかったけれど、学業ではゼミだった と言えるような。そのために、「遊びの経営学部」という珍奇な(しかし、間違っていな い)現状表現があります。でも、若いときには、打ち込むものが必要で、大学に4年もい るのなら、2年間、学問に打ち込む場があってもいいはずですから、また、自己決定で金 井ゼミを選び、応募者多数のなかから選ばれて(その意味では二重の選択を経て)入って きた(金井ゼミを希望したのに入れなかったひとがおられることをお忘れなく)のだから、 14 必ず全セッションに、全員が参加するようにしてください。(これは、隔週の間の自律的 アクティビティ(以下、しばしば AA と略)についても希望します――それがある日には)。 最後に、ゼミは必ず全セッション参加するようにしてください。 さきにも述べていますので、繰り返しになりますが、万が一、やむをえない事情で欠席 せざるをえないときにも、事前課題は、郵送するかファックスしてください。同時に、必 ず欠席せざるをえない理由を、自宅電話、携帯電話あるいは自宅ファックス((ウェブ上 では略); (ウェブ上では略); fax (ウェブ上では略))で事前に通知してください。あ わせて、ゼミ生で当日出席するひとに必ず伝えておいてください。 AA は、ゼミ生の皆さんの自律性、グループをまとめる力、記録を残す練習など、いろん な効果があると思っています。これも、ぜひとも4年生の先輩(ゼミ幹は、島崎さん)と早め に相談してみてください。AA をうまくおこなうための注意事項が出てくることでしょう。 2. 3 商大学生研究討論会 金井ゼミは、伝統的にこれまでずっとこれに参加して多くを学んできました。たいへん な研究作業(データ収集、文献レビュー、データの分析、執筆、報告・討論の準備、実際 の討論会の参加)を伴いますが、それに値するだけの大きな栄養と収穫があるとわたしに は見えます。これについては、一度、4年生のゼミ幹ほか有志に、参加するかどうかを決 める日が近づく前に、3 年ゼミにゲストできてもらって、話を聞きましょう。そのときに、 彼らの学年が3商大学生研究討論会で発表したときの資料があれば、彼らにもってきても らうようにお願いします。 この3商大との関連で、後期に、ゼミ一丸となって探求したいゼミ・プロジェクトの課 題があれば、夏休み前から考え始めておくようにしてください。もし、3 ゼミをするなら、 後期の AA の持ち方は、それの影響を受けるでしょう。これまでは、コミュニケーション・ ネットワークの実験、朝シャンの普及とシャンプーの購買行動、RJP との関連で、就職活 動(会社の側からは採用活動)、日本の産業社会における転職などのテーマを取り上げて きました。たとえば、3 年前は、「タバコ産業、タバコの会社は、生き残るのか」、ディ ズニーの経営、三菱自動車生き残るのか、三越と伊勢丹の比較などがテーマでした。 3ゼミ以外では、大学祭に出店もしくは出展した学年が3回ありました。ひとつは、越 後屋というたこ焼き屋で(すごくおいしかったです)、もうひとつは、就職面接のシミュ レーションというめずらしい出展でした。3年前の卒業生たちが、小川ゼミと共同で、ク ラムチャウダーとミネストローネとポタージュのスープの模擬店で、むちゃおいしかった です。最近は、長らく大学祭での出店はありません。たぶん、3ゼミと両立するのは、時 間的に難しいからと思われます。 3大学学生研究討論会に参加するかどうか、あるいは、大学祭にゼミとして参加するか どうかなども、早め早めに自発的に(ゼミの後の時間などを使って)議論するようにして おいてください。先輩の意見を早めに聞いておくようにしてください。 15 3.ゼミソング ・ 覚えたいひとのために、この学年用に、CD を寄贈しますので、回して適当に録音した いひとは、録音して覚えていってください。譜面がいるひとは、今度、同窓会のときに でも、先輩の小島さんにリクエストしてください。(わたしのが見つかれば、お見せし ます)。 4.ゼミ間交流 あまりないのが残念です。神戸大学経営学部の他のゼミとコラボレしてできそうな活動 があった、それも提案してください。 You can’t always get what you want; but you only get what you really want. 「夢しか実現しない」(増田宗昭氏) XI. セッション全体の構成 より具体的で詳細な毎回の隔週セッション(♯印で提示)の授業プランの概要は、最後 の第 X 節で述べます。 わたしがある程度詳細に設計したのは、隔週でわたしが直接実施する#セッションです。 間に、自律的アクティビティを学内学外でやってほしいので、サジェスチョンがあれば、 ♭マークで示していますが、これは、本来「自律的」とうたっているとおり、ゼミ生の皆 さんが自分で決めるべきことですので、最初は、ある程度わたしのサジェスチョンを使っ ても、徐々に無視してできるようになってください。 <日付、間違って昨年の数字が残っていないか、まちがいをみつけたら、金井にお知らせ ください> スケジューリング(カレンダー)と全体の構成 1.#1 2.♭1 4 月 14 日 4 月 21 日 ゼミのオリエンテーション <AA※>として、楠木論文を刺激にして、大学の残りの2年間の過 ごし方について議論 3.#2 4 月 28 日 グループの力と暴力 ゴールデン・ウィークの間ごろから、#5 のセッションに備え始め(シャインの本) ※ AAは、Autonomous Activityの略 16 5月5日 4.♭2 <AA.> (GW 中なので神戸にいる有志のみで)うれしいグループ と息苦しいグループの違い 5.#3 5 月12日 グループや組織のなかのエモーション――EQ とリーダーシップ 5 月19日 6.♭3 <AA> 尾島さんの論文をボランティアで、2,3人が読んで、 卒業論文というずいぶん先のことだと思っていることのイメージ を高める。読んだひとがそれを紹介し、みなで質問しながら理解 を深める(★この日、創立記念日で、フォーマルには休講になっ ているかもしれません) 7.#4 5 月 26日 リーダーシップの持(自)論に取り組み始める(この日、4年生、ゲ スト参加とくに歓迎) 6月 2 日 8.♭4 9.#5 6 月9日 <AA> キャリア・アンカー 6 月 16 日 10.♭5 <AA> 伝記や自叙伝から長期的な生き方を学ぶ セッション 13(#7)で4年のゼミ先輩を何名か呼ぶのなら、この ころにコンタクト。 11.#6 6 月23日 12.♭6 6 月 30 日 有能感、自己決定、フロー経験、自己実現 <AA> フロー経験という観点から新しい自己紹介、ブックレッ ト作成 ■ 7 月 7 日は、休講 もし集まれるようでしたら、あと 1 回残っていますが、前期のゼミの振り返りを AA で おこなってください。 13.#7 7 月14日 学生の就職活動と企業の RJP――キャリア・デザイン第一歩 3 年ゼミ生の希望があれば、この日、4 年ゼミ生有志をゲストとしてゼミに来てもらって、 昨年度の就職活動と、夏休みのよし過ごし方について、議論する のも一案です。その場合は、2,3週間前に自発的に4年生に呼 びかけてください。 このゼミ日以外の間の日は、自主的アクティビティ(AA)※ ※ もし学会や研究会、学外で金井にとって大きなチャンスでゼミ生にもあとからプラス の話ができそうな会合があるときにのみ、ゼミ日をずらしてもらうことがひょっとしたらあう かもしれませんが、必ず別の日に補講をします。 ♯のマーク ※※ わたしがメインにおこなうゼミ日の間の日も、必ず集まって、自主的にアクティビティ (AA と呼んでいるものです)をしてください。 ♭のマーク ゼミの教室は、AAのときも同 じです。なお、自主ゼミの活動内容の概要は、必ず担当を決めて、文書化するようにしてくだ さい。たえず、ドキュメンテーションをよくする癖をつけるようにしましょう。 17 X.シラバスの本体(各セッションの詳細な概要) 各セッションのテーマと事前課題、リーディング、エクササイズ 基本的には、 <目次> ●リーディング(コピーを配布するもの) ◎リーディング(本など各自で購入するもの) ○ 事前課題 LDSP リーダーシップに関連づけた課題や論点(ゴチック) という順で、説明しています。 #1 4 月14日 ゼミのオリエンテーション:ゼミというグループ経験 このシラバスに沿って、ゼミのあり方について、まず40分ほどイントロをして、10 分ほど質問を受けて、残りの時間は、サバイバル・ゲームというグループエクササイズを 30分の制限時間で実施します。あとはその結果について議論。 <目的> ゼミのコンセプト、大学での4年間の意味、大学ならではの知的トレーニング、 大教室ではできなくてゼミでできること、わたしの学生時代のことなど、ゼミでの2年間 にプラスになりそうなちょっとしたアドバイスをします。残りは、グループの形成につい てエクササイズを通じて体感すること。 ●リーディング1 この日の後に読んで欲しいのですが、つぎのものを配ります(次回-隔 週のものとあわせて) 楠木 建(1995)「大学での知的トレーニング――アタマがナマ っている人へのメッセージ」『一橋論叢』第 113 巻第 4 号、399-419 頁。 ●リーディング 2 金井壽宏(1992)「組織エクササイズを通じての定性的データの生成―― カジュアルな意味探索のすすめ」『国民経済雑誌』第 166 巻第 2 号、23-48 頁。 ○事前課題 読むものは、1回目なのでなし。レポートだけあり。 ○事後課題 リーディング2の 34 頁の 6 つの問いに答える形で、サバイバル・ゲームでの 経験についてレポートしてください。また、問いの(2)について考察を深めるために、この ゼミ(それはまだグループとして萌芽期にあるにすぎない)以外に、自分にとって「いい グループ」だった(あるいは、今もそうである)と思える集まりをひとつとりあげて、そ のグループについて、つぎの点を考えてください。 (1) その集まりは、なぜ、なにをきっかけにだれによって、どのように創られたのか。 (2) その集まりは、時間を経てどのように変化(成熟、衰退?)していったか。 (3) その集まりを「グループ」らしくしていたものは、なにだったと思うか。広範かつ柔 軟に考えること。 18 (4) そのグループを「いいグループ」と考える理由はなにか。 (5) LDSP 議論のプロセスで、だれがディスカッションのリーダーシップをとっていた と思うか。そのように思う理由はどこにあるのか。注 LDSP=リーダーシップにかか わる設問 LDSP2006 ディスカッションのプロセスをうまくリードできるということは、非常にわ かりやすいリーダーシップ入門です。このゼミでも、司会をするときにはそれぞれ、サー バント・リーダーでいくのかとか、考えてください。 ♭1 4 月21日 <AA※>として、なんのために、大学に来ているのかについて、上述の 楠木論文で議論。もし見たければ、(紛失していなければ)ビデオもありますので、ご覧 ください。そして、さっそく、金井というリーダーなし、つまりリーダーレス・ディスカ ッション・グループとして実施してください。自然に出てくるリーダーがいるはずです。 <サジェスチョン>ぜひ、さっそく4年生から、ひとりかふたり、ゲストに呼んで、彼ら なりに、ゼミのディスカッションの活発化をどのように図ってきたか聞いてみてください。 ★とくに、ゼミでの司会について、4年ゼミの先輩たちのリーダーシップ持(自)論を聞 いてみてください。それを意識すると、ディスカッションがどう変わるかも。 春休み中の課題レポート、楠木論文とビデオと AA の議論をふまえて、あらためて、3 年生、4年生をどのようにすごすのがいいか、自分なりに作文してみてください(金井へ の再提出は有志のみ-――コメントします。 AA活動の司会と記録係、つぎのゼミでの金井へのフィードバックの方法など、この日に 話し合ってみてください。 先輩などで、いい大学生活を送っていると思うひとに可能ならインタビューしてみてく ださい(クラブやサークル、バイト先の先輩など)。彼らがなんらかの活動でリーダーシップ をとっているなら、そこからどのような教訓、充実感をえているかも、インタビューのと き聞いてみてください。 LDSP 残りの2年間を過ごす間に取り組みたいテーマのなかに、リーダーシップの発揮 が入るひとは、そのことが、テクニカルスキルより、ほかのふたつのスキルにおおいに強 く依拠している点についても、理解を深めてください。 LDSP ヒューマン・スキルは、リーダーシップと直結しているし、コンセプチュアル・ス キルは、ゆくゆく皆さんにゼミでも説明していく、持(自)論の形成や、self-regulation にかかわってきます。 LDSP もうひとつの希望は、映画が好きなひとは、ぜひ、『12人の怒れる男』(シド ニー・ルメット監督、ヘンリー・フォンダ主演)を借りて、ゼミ生を誘って、見てください。 (経営管理でも見ていますが、もう一度いっそう注意深く見てください、あるいは『12 ※ AAは、Autonomous AAtivityの略 19 人のやさしい日本人』を見るという手もあります)。グループ・ディスカッションのプロ セスという観点から。これは、さらに♯2とも関連していきます。あらゆる議論の機会、 部活、アルバイト先で、ディスカッションの場でのリーダーシップを意識するようにして ください。どうやれば、議論がうまくいくか、自分なりの考え、持(自)論をたえず形成 するくせを。 #2 4 月 28 日 グループ・ダイナミクスとグループシンク(集団のダークサイド) (この日、万が一、本部での会議が入ってしまったら、時間を変えるか日を変えて、補講 にします) <目的>グループとはいったいなにかということを、前回のサバイバルと、皆さんが「い いグループだった」と回想できる(あるいは、今経験している)ひとの集まりでの経験を もとに議論します。グループがあるおかげで、個人ではできないことができるといういい 面と、個人では自由に発想できることをグループが抑えつけるという面もあります。つま りグループにはポジティブな力とネガティブな力(暴力)とがあります。ゼミもひとつの グループなので、この両面について気をつける必要があります。経営管理の講義でもこの 問題についてはふれますので、それを深めることになります。セッション#1のサバイバ ルなどで体感されたことでしょうが、大教室の講義ではなくゼミのような小集団ではない と学べないこと、身に付かないことはなにかについて、あらためて考えてみましょう。あ わせて、どうすればゼミというグループのいい面がより多く引き出せるのかも、考察しま しょう。 ●リーディング 金井壽宏(1989)「ピア・ディスカッションを通じての『気づき』の共有」 『組織科学』第 23 巻第 2 号、80-90 頁。 ●(こちらは課題とはしませんが、グループシンクについて、深く理解したいと思ってい るひとは、つぎの本を探し出して読むことを勧めます。I.L.ジャニス『リーダーが決断す るとき――危機管理と意思決定について』首藤信彦訳、日本実業出版社、1991 年。) LDSP 集団のダークサイドとあわせて、ヒットラーまで極端なケースでなくても、J.F. ケネディなどのリーダーシップにもダークサイドがなかったかどうか検討する。 LDSP ベストアンドブライテストといわれたケネディー政権がグループとしては間違っ た意思決定も犯していることについて、もっと深くしらべてみたいと思うひとは、サイマ ル出版会から同名の本が出ている(3冊セットですが)ので、挑戦してみてください。い い本がいっぱいあるし、だれかが先導して、どんどん読み始めたら、ほかのゼミ生にもい い刺激になりますので。 エクササイズ (『ニューウェーブ・マネジメント』をまだ読んでいないひとが都合良く 20 4、5名いたいら)、そのひとたちをロの字の中に入ってもらって、フィッシュボール(金 魚鉢)で箱エクササイズを実施してみます。 LDSP ★★金井 箱を忘れぬよう 集団意思決定の場面におけるリーダーシップについても考えてみる。リーダーシ ップの参加次元。 ゴールデン・ウィークの間ごろから、#5 のセッションに備えて、 そこでリーディングにあがっているシャインの本を読んだり、ま た、インタビュー調査にとりかかり始めてください。元気のある ひとは、金井のキャリア・アンカー系、3部作(すべて白桃書房) も目を通してみてください。『キャリア・アンカー』『キャリア・ サバイバル』『キャリア・デザイン・ガイド』 ♭2 5月 5 日 ★GW 中なので、神戸にいる有志だけで、可能なら<AA.> わたしがそ こにいていちばんうれしいグループと、せっかく入ったのに、息 苦しいグループの違い 各人の経験を特にレポートもなく自由に 語るというのはいかがですか(その場合も、ドキュメンテーショ ンはお忘れなく)。 LDSP そのグループの雰囲気の違いは、そのグループでリー ダーシップをとっていたひとの発想の仕方は行動パターンにどの ようにつながっていたかも、検討。 LDSP そもそもいいグループとはなにを議論するのも、リー ダーシップを考えるうえでいいです。ただ、居心地がいいグルー プがいいのか、多少ぎすぎすしたり、ぶつかりあい(今フロンテ ーション)があっても、みんなが言いたいことをきちんといえて いる(アサーティブ、言いたいこと言える=わがまま とは違い ます、相手のためにも、全体のためにも、伝えたことをきちんと 言えるということです)。 #3 5 月12日 <目的> グループや組織のなかのエモーション――EQ とリーダーシップ ひとは、機械ではないので、グループや組織での活動に参加するときに、そ のに、まるごとの人間としての期待や感情を持ち込みます。なのに、それを認めないと、 組織やグループのなかでの活動がぎこちなくなります(それを意識しすぎても、ぎこちな くなりますが)。 21 ●リーディング#1 金井壽宏(1997)「組織の中に蠢くエモーション」『CREO』(神鋼ヒュ ーマン・クリエイト刊)第 9 巻第1号、pp.7-16。 ●リーディング#2 金井壽宏(2000)「経営組織論における感情の問題――人びとが組織に 持ち込む感情をめぐるリサーチ・アジェンダ」pp.43-70。 ●リーディング#3 野田正彰(2000)「戦争と感情」『学士会会報』 この問題にとくに、深い興味のあるひとは、EQ 関連のほう、とりわけ D.R.カルーソと P. サロベイ『EQ マネジャー』東洋経済新報社 の著作などを読むことを勧めます。あるいは、 サロベーからさらに源流に遡るなら、ハワード・ガードナー『MI:個性を活かす多重知能の 理論』新曜社。『組織科学』という雑誌で、2008 年に組織における感情についての特集号 が出ています。 ○事前課題 自分の感情、相手の感情がうまく読めなかったために、苦労したり困った という経験をレポートしてください。あきらかにだれかが怒っていたり、悲しんでいたり、 怯えていたり、エモーションが感知できたと思える場面のなかから、もっとも印象深いも のをまずひとつ選んでください。集団としての、また個人としてその場における具体的な 経験、そのときの自分の感情を振り返り、内省し、分析してつぎの4点についてレポート を作成してください。(A4 で、2,3枚)(1)だれがだれに対して(なにに対して)そ のようなエモーションをもっていたのか、(2)どうしてそのひとは、そのようなエモー ションを持つに至ったのか、(3)そのエモーションの発露に対して、だれかがなんらか のアクションをおこしたか、(4)そのアクションはどのような効果をもったか。これら の4点についての最初の提出レポート LDSP エモーションの喚起とリーダーシップの関連を、たとえば、高度のリーダーシッ プを発揮したひとのスピーチなどから探ることもしたいと思っています。(経営管理の講 義をすでに取っているひとは、M.L.キング牧師の演説などを思い出してください) LDSP 自分がリーダーシップをとっている場面で、あるいは、自分が居合わせた場面で だれかがリーダーシップをとっている場面で、自分にどのような感情がその場で感じられ たか内省して、リーダーシップと感情の喚起、感情のコントロール、感情のリリースとど うかかわるのか考えてみてください。 ♭3 5 月 19日 <AA> <案1>尾島さんの論文金井の研究室でみつかっていなかっ たら、案2へ)をボランティアで、2,3人が読んで、卒業論文というずいぶん先のこと だと思っていることのイメージを高める。読んだひとがそれを紹介し、みなで質問しなが ら理解を深める。 尾島さんの論文をそのために、事前に手渡す必要があります。大事に 輪読してください。<案2>ピーター・サロベイのビデオを見る(その場合は、ビデオを 見れる部屋を予約して、金井からビデオを事前に借りてください) について、いいルールづくりをしてください。 22 また、ビデオの管理 LDSP 尾島さんの論文でも、良質の怒りと子どもにいいリーダーシップを取れることが 関連していると思われるところをチェックしてください。また、尾島さん自身、このとき の経験が、リーダーシップの観察、自分のリーダーシップの発揮の経験になったと思った いたことも大切。 #4 5 月 26日 <目的> リーダーシップの持(自)論に取り組み始める(New to this year) ここでいよいよ、本格的にリーダーシップそのものを取り上げ、実践というこ とを念頭に、そして自分なりの持論――持(自)論と書きますが――を、リーダーシップ に対してもつ第一歩を踏み出したいと思います。 ◎金井壽宏『リーダーシップ入門』日経文庫。 ○事前課題 この本を読み出す前に、これまでの自分の経験、観察、ゼミでの議論も踏ま えて、自分なりのリーダーシップの持(自)論を書いてみてください。箇条書きで、4, 5個から 10 個ぐらいまでの箇条書きで。それぞれの箇条書きの項目が、どうしてうまくリ ーダーシップをうまく発揮するうえで大事だと思うのか、理由を書いてください。読み出 す前にそれを書いたあと、今度は、『リーダーシップ入門』を熟読して、読み出す前に書 いた持(自)論を改訂してください。つまり、今回は、読み出す前レポートと、読後のそ の改訂版レポートを出してもらうことになります。これは、皆さんが、自分なりのリーダ ーシップ持論を持ち始めた記念すべき日となります。それをこのあと、経験、観察が深ま り、考えが進むたびに改訂していくようにします。 LDSP だれもの問題としてのリーダーシップにまず、持(自)論を書いてみることによ り、実践をしっかり念頭において入門する日にします。 ♭4 6月2日 <AA> ★こういう機会がないと持(自)論を探し出すつもりで、真剣 に読むことがむつかしい、解読型の読書を試みてもらいます。ヘビーですので、準備は早 めから。経営者に限らず、そのひとなりのすばらしいリーダーシップをとっていると皆さ んひとりひとりが考えるひと、たとえば、オーケストラの指揮者、バンドのリーダー、ス ポーツの監督やコーチ、歴史上の人物、政治家などから、しっかりとした信頼のできる自 叙伝か伝記のある人物をひとり選び、その本の記述から、その人物のリーダーシップの持 (自)論を、抽出してください。2,3人でグループワークにしてもいいです。この日は、 AA としては、準備が通常以上にたいへんですが、実り多いものになると思っています。自 分が持(自)論をもつだけでなく、すぐれた実践家がどんなリーダーシップ持(自)論を もっているのかに、これ以後、いつも敏感であるようになりましょう。 23 #5 6 月9日 <目的> キャリア・アンカー 経営管理の講義では、学校から会社へというキャリアの節目を捉えました、こ れをより長いスパンで考えることを目的とします。キャリアを歩むうえでの拠り所となる キャリア・アンカーの概念で、身近なひとの長期的な仕事生活にまつわる物語を持ち寄る ことになります。 また、若いときからキャリアをデザインするという発想、個人と組織のかかわり方につ いての変化についても、経営管理の講義でもふれますが、ここでもより徹底して議論をし たいと考えています。 ◎リーディング1エドガー・H.シャイン『キャリア・ダイナミクス』白桃書房より、第 10 章、第11章、第12章、付録 1。注意 ●リーディング2 リーディング#15 早めに発注して購入しておいてください。 エドガー・H.シャイン(聞き手、金井)「洗脳から 組織のセラピーまで――その心は「ヘルプフル」」『CREO』(神鋼ヒューマン・クリエ イト刊)2000Special Issue, pp.137. ○事前課題レポート 仕事を 20 年以上しているひとひとりと、入社後10年ぐらいのひとをひとり、合計ふた り選び、リーディング 1 の三つの章をよく読み、付録 1 のインタビュー・ガイドラインに 基づいて、キャリア・アンカーを診断するためのインタビューを実施してください。ふた りのアンカーがどこにありそうか、あなたなりの考えをご本人にフィードバックしてくだ さい。あなたの診断についてその方々がどのような感想をもたれたかも含め、このインタ ビューとフィードバックの分析結果をレポートしてください。 LDSP キャリア・アンカーが管理能力だったひとに限らず、インタビューさせていただ いたひとのこれまでのリーダーシップ経験についても聞いてみてください。 LDSP しかし、同時に、リーダーシップがうまく発揮できるというのは、成人以後の発 達のひとつの有力な経路であるけれども、それが唯一ではないことを知るうえで、キャリ ア・アンカーのいろんなカテゴリーを知るのは重要。 ♭5 6 月 16日 <AA> それぞれが自分がいちばん好きだと思う作家、音楽家、探検家、 歴史上の英雄などの、伝記や自叙伝を読んで、それをキャリアという観点から多様性のな かの共通点、共通のように見えるなかのかけがえのないユニークさにふれてみる。エジソ ン、ココ=シャネル、(ジョン・コールマンによる)クラプトンの伝記、(アーネスト・ ジョーンズの)フロイト伝、(ハロッドによる)ケインズ伝など、いろいろ、実に入手可 能なはずです。(この日、金井は出張の予定になっています)。 セッション 13(#7)で4年のゼミ先輩を何名か呼ぶのなら、このころにコンタクト。 #6 6 月23日 有能感、自己決定、フロー経験、自己実現――とくにフロー経験に注 目 24 <目的> 経営管理の講義でも強調するが、だれよりもうまくできる経験」、「自分で決 めたことをやっているときの喜び」、「あまりに面白くて自然に流れるような経験」、「自 己実現にかかわることをする」という4つの問題について考察する。 ◎リーディング1 M.チクセントミハイ『楽しむということ』思索社、1991 年。 ●リーディング2 金井壽宏(1996)「有能感、自己決定、フロー経験と自己実現――こ れまでの経営学のモティベーション論を超えて――」日本経営学会発表資料。 ○事前課題1 これまでの自分の全生涯(まだ 20 年程度の短さですが)を振り返って、最 もフロー経験に近いと思われる経験、最も自己実現とつながっていると思われる経験、 それぞれについて、記述してください。その際に、(1)それがいつのことか、(2) なにがきっかけで生じたことか、(3)だれのイニシャティブでそれを始めたのか、(4) その経験は、その後の自分にどのような影響を与えているか、についてふれるようにし てください。もしも、フロー経験と自己実現というのがどうしてもわかりにくければ、 それぞれ「われを忘れるほどにすごく楽しかった経験」、「これをやっている自分、追 求している自分がもっとも『自分らしい』と感じられた経験」と理解してもらったらい いです。もしも、そういう経験がなければ、(1)∼(4)の問いの代わりに、(5) なぜ、そのような経験にめぐりあえなかったのか、(6)今度、どのようなことに目を むければ、それにめぐりあえそうだと思うか、について回答してください。 ○事前課題2 セッション#4 でインタビューしたひとに、もう一度アクセスして、コンピ ュータやゲームの世界にのめり込んでいる状態を、今度は、「楽しみ」や「フロー経験」 という観点から、分析してみてください。 LDSP 英語が苦にならないひとは、チクセンチミハイが去年リーダーシップの本を書い ているので、GoodBusiness というタイトルですがアマゾンで調べて、根性あるひとは読 んでみてください。創造性の問題も著作があります。Creativity という本。リーダーシッ プの問題も、創造性の問題も、フローという観点から、チクセントミハイは捉えています。 ♭6 6 月30日 <AA> 運動部・サークルの活動、趣味(音楽や刺繍)、プライベー ト・ライフ、アルバイト、コンピュータ、各種の遊びのなかに、どのようなフロー経験が あるか、その観点から、新しい自己紹介を試みてみる。新しいゼミ生プロフィールブック レットができるかも。<フロー経験からみたこのわたし>というようなブックレット。 ■7 月 7 日 休講ですが、 もし集まれるようでしたら、あと 1 回残っていますが、前期 のゼミの振り返りを AA でおこなってください。 25 #7 7 月14日 学生の就職活動と企業の RJP――キャリア・デザイン第一歩 RJP(Realistic Job Preview)という考え方をもとに、企業の側の採用戦略と、学生の 側から見た就職活動のあり方について、議論したい。うまく会社の採用担当の方がゲスト にきてもいいといわれたら、採用のためでなく、ゲスト講師としてゼミを訪れてもらうよ うにします。キャリア・アンカーについてインタビューしたり、自分がどういうことを楽し めたか(フロー経験)などを議論したあと、けっしてもう遠い先ではない、就職活動のこ とと、またキャリアの入り口に立つ前後に考えるべきことを、議論するようにしましょう。 ●リーディング 金井壽宏(1995)「個人と組織の短期的適応力と長期的適応力――日本 企業でのエントリー・マネジメントをめぐる試論」企業行動研究グループ編『日本企業 の適応力』日本経済新聞社、71-112 頁。 ◎金井壽宏『働くひとのためのキャリア・デザイン』PHP 新書。 ○事前課題 リーディングとキャリア・デザインに関するわたしの書籍を読んで、RJP に ついて理解したうえで、RJP について、自分なりの意見を自由に記述してください。 ◆回覧 今年の NRI の入社案内――もしまだ ていたら 金井の素材が使われていて、送付されてき (場合によっては、該当ページのコピーを配布します) 夏期休業中の課題 卒論のテーマの候補を、ラフでいいから3,4とおり考えてください。それら4つそれ ぞれについて、末尾につけたフォーマットに基づいてリサーチ・プロポーザルを作成して ください。 これ以外にもいいテーマがあれば、考えます。それはせっかく休みなのにというよう課 題でなく、それを意識したほうが、休み中の生活が充実するというようなテーマを考えま す。皆さんも考えてください。思いつかなければ、上記だけでも十分です。 なお、後期の教材選びは、もっと書籍を増やし、そして、リーダーシップとの関連をも ちつつ、多様なトピックを組織行動論のなかで探っていきます。 夏休み中の課題 究極の AA(ただしソロ活動) 卒論の頭だし4つ以外にいいものがわ たしか皆さんから思いつけば、メイルをください。★7月14日 のセッションまでに、夏季休業中に、組織行動論の理解を深める ための知的鍛錬のサジェスチョンが出てくれば、最終回の日にア ナウンスします。 26 付録1 リサーチ・プロポーザルのフォーマット (1)研究テーマ(タイトル) 研究の全体を最も簡潔に表す言葉をつける。必要ならば、 どのような研究なのかもっとよくわかるように、サブタイトルを付ける。 (2)研究動機(研究関心) なぜ、このテーマに興味をもつようになったのか、そのき っかけ、理由についてふれる。その際、必要ならば、個人的な関心や背景にも言及 する。 (3)研究課題(リサーチ・クウェスチョン、RQ) いったいなにについて知りたいのか を、疑問文の形でリストする。その疑問文は、それなら実際に研究調査を実施しる ことが可能だという意味で、オペレーショナルな問いでなければならない。つまり、 「よいリーダーシップとはなにか」では、RQ としては茫漠としている。「異質なメ ンバーから成るグループでも成果を上げるリーダーと、成果をあげられないリーダ ーの間には、行動面でどのような違いがあるか」なら、よりオペレーショナル(操 作可能)である。 (4)作業仮説 仮説を事前に構築するのが難しい場合がある(そのような場合には、仮 説検証よりも仮説発見型の研究調査をすればよい)。しかし、そのような場合でも、 この研究調査を誘導していく(最終的に捨ててもいいから)なんらかの作業仮説を 事前に設定しておく。作業仮説は、既存研究、日常の観察、事前調査などから、練 り上げる。 (5)研究調査方法 どのような調査対象に、どのような方法でアプローチして、いった いどのようなデータ収集方法を用いるのか。 (6)データの種類と分析方法 上述の方法で、いったいどのようなデータが収集される のかについての計画をここで述べる。あわせて、それらのデータをどのように料理 していく予定なのかについても、ここでふれる。 (7)研究成果のもつ意味 ここで、この研究の成果があがってきたときに、それが(1) 自分にとってどのような意味をもつのか、(2)経営学にとってどのような意味を もつのか(theoretical/conceptual implications)、(3)経営の実践にとってどの ような意味をもつのか(managerial/practical implications)について、述べる。 絶えずこれらの問いを念頭に、前期の早い段階から、テーマの候補を探索するクセをつけ るようにしてください。 27 付録2 ゼミ生 リスト これに、住所、電話番号、メイルアドレス(あれば)、(差し支えなく、また情報価値 がけっこうあるなら)出身地か出身高校、性格・特技などを書き足して、第2回目(#2、 4 月24日)までに、しっかりとしてゼミ生リストを作成しておいてください。(ゼミの 始まる、20分ほど前に、研究室にもってきてください)。なお、ゼミ生リストのデジタ ル版(ファイルでのデータ)は、そのまま金井に、(ウェブ上では略)に送るか、フロッ ピー等で渡してください。先輩の谷口さん(上述)に問い合わせて、どうやれば、皆さん を金井ゼミ同窓会のMLに登録してもらえるかをお聞きください。これで、いっきに金井ゼ ミの先輩の世界と4年生ともつながります。 <3年生リスト> (ウェブ上では略) <4 年生リスト> (ウェブ上では略) 28 付録3 掲示した文書 学部3年金井ゼミの皆さんへ ゼミの初日は、4月14 日です。初回のゼミは、つぎの要領でプロフィ ールを作成する以外に特に準備はいりません。当日は、ゼミのシラバスを 配って年間の予定を説明し、さっそくエクササイズをひとつしますが、こ れも事前の準備はいりません。 以下の項目についてのプロフィールは、14部コピーをとって、当日、 教室にもってきてください。A4で2枚ぐらいまでの長さでレポートして ください。 プロフィール (1) 名前 (2) 出身(場所、学校、等) 故郷、母校への思い クラブ、サーク ルその他の学校時代の活動((3)とかかわるが) (3) これまでの特筆すべき経験、特技、打ち込んでいるもの等 (4) 趣味、特技、(自覚している自分の)性格、特徴、自覚している 弱点 (5) (分野を問わず)最も感銘した書物とそこから学んだこと (6) 経営学の分野では、(感銘とまでいかなくても)興味深いと思っ た書物とそこから学んだこと (7) 座右の銘、あるいは、そこまで仰々しくなくても、自分の生き方 に影響を与えたひとの好きな言葉 なぜそれが座右の銘、あるい は好きな言葉なのか、その理由 (8) 最もすきなもの(書物以外に、音楽、絵画、映画、TV番組、な んでもいい)とそれのどこが自分にとって特別にいいのか (9) このゼミで身につけたいこと (10) これから新たに、ゼミ以外でも、打ち込んでいきたいと思 っていること (11) ゼミは複数の人びとから成り立つグループですが、以上の プロフィールのようなこのわたしは、ゼミの場、ゼミの運営で、ど のような貢献をしたいですか。ゼミ幹事ひとりでなく、みながそれ ぞれにリーダーシップをとる(つまり、リーダーシップ・シェアリ ングのある)ゼミにしたいと思っています。 (12) その他、自由に この12番目の項目、工夫して、な にか書いてください。アピール 29
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