専攻案内 東京工業大学理工学研究科 有機・高分子物質専攻 Department of Organic & Polymeric Materials T k Institute Tokyo I tit t off Technology T h l 専攻ホームページ http://www.op.titech.ac.jp/index.html 有機・高分子物質専攻にようこそ 本専攻は、材料工学を基礎においた“有機材料工学科”と応用化学系3学科を母体と した“高分子工学科”が大学院で融合した結果生まれた専攻であり、平成 11 年に改 組されて現在のかたちとなりました。本専攻の講座群は、その名の通り、有機低分子 物質・高分子物質の合成、反応、構造、物性、機能、加工について、幅広く研究する ことを目的として組織されています。 遠くギリシャ・ローマの時代から、文明の基礎となる都市、産業、そして人々の暮らし は、種々の材料を抜きにしては語れません。“石の文化”であるヨーロッパに対し、“木 と紙の文化”である日本そしてアジアでは、有機・高分子物質がわれわれの身近なと ころで常に重要な地位を占めてきました。 現在社会においても、身の回りに有機・高分子物質でないものを探すのが難しいほど です。もちろん、われわれの身体そのものが巨大な有機・高分子物質の高度組織体 にほかなりません。しかし、このように身近な物質も、学問の一分野として成立したの はたかだか数十年前に過ぎません。それまでは、材料として重宝されながらも(例え ば、衣服や住居材料など)、高分子物質がどのような物質かについてはあまり関心が もたれませんでした。しかし、第2次大戦後の有機・高分子工業そしてそれを支える有 機材料科学・高分子科学の発展により、高分子物質がどのような物質か次第に明ら かになってきています。 本 専 攻 は 、 日 本 の そ し て 世 界 の “ 有 機 ・ 高 分 子 物 質 研 究 の 中 心 ”(Center of Excellence)として、35年以上にわたり、素晴らしい研究成果と優秀な人材を輩出して きました。そして現在も高い研究のアクティビティを維持しながら、教育(人材育成)に 全力で取り組んでいます。 - 1 - 求める人材と育ってほしい人材 有機物とは炭素を主成分とし、水素、酸素、窒素などから構成されている物質で、そ の組み合せは無限にあります。数が無限であるだけではなく、それら原子の組み合 せ、並べ方をわずかに変えただけで性質が大きく変わり、予想もつかない特性が得ら れたり、機能が発現したりします。このように、有機・高分子物質の魅力を一言でいう なら、「限られた元素から生まれる無数の分子と、多彩な機能」ということになります。 それだけに研究は多岐にわたり、未知の分野も多いのです。 特性や機能は(高)分子を材料として組み上げて初めて使用可能になります。言い換 えれば、どのような(高)分子をどのように材料として組み上げるかが有用な材料を創 製する鍵です。このような事情から有機・高分子物質専攻では、新しい分子の合成、 高分子の重合を目指したい化学の好きな諸君から、新しい物質から生じる新しい物 理現象を発見し、解明することに興味を持つ物理の得意な諸君、さらに、有機・高分 子物質の機能を引き出すための成型・加工に興味のある諸君まで、幅広い諸君を歓 迎します。 有機・高分子物質専攻ではこのように広く人材を求めていますから、学部で有機材料 や高分子化学の勉強をしていないといって恐れることはありません。これまでも物理 学科や化学科、応用化学科などから多くの入学者があります。 入学したときには合成がまったく分からなくても、物理に拒否反応を示していても、修 士を出るころにはそれなりにどちらもわかるようになる人材に育ってくれることを望ん でいます。それが有機・高分子物質専攻で学んだことの証です。基礎科学の分野に 進むにせよ、企業で新しい製品、商品の開発や研究に従事するにせよ、このことは大 きな力になるはずです。 - 2 - 入試のためにはどんな勉強をすればいいの 上述したように、広い分野から人材を受け入れたいという理由で、修士課程の入学試 験問題は物理化学、有機化学、高分子科学(合成、物性)ばかりではなく、物理や数 学からも広く出題され、半数ほどの問題の選択になっています。ですから、化学は得 意だけど物理はどうもとか、逆に物理系は好きだけど合成はお手上げという諸君でも 十分に合格点が取れるようになっています。 過去問を見てみるのもいいでしょう。志望の研究室を訪ね、先生や院生に例年の試 験問題など聞いてみるのもいいでしょう。不得意な科目もこの際、勉強しなおせばきっ と役に立つはずです。 英語の試験に関しては、英語の筆答試験の結果と、TOEFL または TOEIC の成績証 明書に記された成績のうち、よりよい方を英語の成績とします。詳細は、有機・高分子 物質専攻ホームページを参照して下さい。 大学院に入ると英語の文献を読んだり、英語で論文を書いたり、英語で外国人と議論 したりする機会が増えますので、英語の能力が必要なのです。 - 3 - 他大学からの入学状況 他大学からの修士、博士 課程への入学者も増えて います。最近5年間の他大 学からの入学者(修士/博 士)を下にまとめます。 2名以上: 東京理科大学(15/1)、東京農工大学(1/2)、横浜国立大学(3/0)、東邦大学(2/0)、 立教大学(3/0)、立命館大学(2/0)、北海道大学(1/1)、学習院大学(1/1)、法政大 学(2/0)、上智大学(1/1) 1名: 茨城大学、東京学芸大学、横浜市立大学、静岡大学、名古屋工業大学、埼玉大学、新 潟大学、神奈川大学、国際基督教大学、芝浦工業大学、上智大学、東京電機大学、京 都工芸繊維大学、信州大学、青山学院大学(以上修士) 岩手大学、山形大学、東京大学、京都大学、大阪大学、慶應義塾大学、早稲田大学、金 沢大学、東北大学、名古屋大学 (以上博士) 外国: 韓国(3/6)、中国(10/10)、カザフスタン(1/0)、タイ(2/0)、ベトナム(1/0)、ロシア(1/ 0)、台湾(0/1)、フランス(1/1)、インドネシア(1/0) - 4 - 卒 業 後 の 進 路 有機・高分子物質専攻を卒業後の就職は非常に恵まれています。修士卒業後に企 業に就職するものばかりではなく、博士への進学も学内の他の専攻と比較して非常 に高いのが特徴です。最近の5年間に2人以上就職している企業を下にまとめました。 企業への就職のほかに、公務員、博士号取得後の大学等研究機関へのポスドクも 別枠で示しました。 【企業(修士卒/博士卒)】 住友化学(11/2)、富士フイルム(11/1)、ブリヂストン(6/0)、東レ(5/3)、三井化学 (1/1)、キヤノン(8/0)、帝人(5/1)、凸版印刷(5/0)、三菱ガス化学(7/0)、新日 本石油(2/1)、三菱化学(6/1)、三菱樹脂(2/0)、旭化成(3/1)、花王(5/0)、クラ レ(2/0)、JSR(1/1)、パナソニック(2/0)、LG電子(2/1)、日東電工(1/2)、旭硝子 (5/0)、コニカミノルタ(2/0)、JX 日鉱日石エネルギー(2/0)、信越化学工業(3/0)、 住友ベークライト(3/0)、ソマール(2/0)、大都技研(2/0)、トヨタ自動車(4/0)、野 村総研(2/0)、ポリプラスチックス(1/1)、リンテック(4/1)、ニコン(2/0)、積水化学 工業(4/0)、富士ゼロックス(4/0)、東洋紡(3/0)、昭和電工(4/0)、カネカ(0/2)、 日本ゼオン(1/1)、日立化成工業(1/1)、豊田自動織機(2/0)、昭栄化学工業(1/ 1)、デュポン(1/1) 1名入社:日立製作所、出光興産、ソニー、DIC、TOTO、本田技研工業、三菱レイヨ ン、サントリー、JR東日本、シャープ、新日鐵化学、TDK、東芝、HOYA、ヤマハ発動 機、ライオン、リコー、JFE ケミカル、スズキ、ライオン、LIXIL、DIC、小林洋行など。 【公務員(修士卒/博士卒)】 特許庁(1/0)、地方公務員(1/0) 【大学、研究機関、外国へのポスドク】 東京工業大学、東京理科大学、京都工芸繊維大学、山形大学、近畿大学、大阪大学、 大阪歯科大学、九州大学、産業技術総合研究所、物質材料研究機構、コーネル大学 その他 - 5 - どんな研究を行っているか 皆さんは有機・高分子物質と言われて何を想像するでしょう。すぐ思いつくのはプラ スチック、ゴム、繊維などでしょうか。こうしてみると、私たちの身の回りには有機・高 分子物質があふれていることがよく分かるでしょう。しかし、工業材料として高分子材 料が広く使われるようになったのはせいぜいここ50年ほどのことです。従って、この ような材料は基礎から応用までまだまだ幅広く研究する必要があります。有機・高分 子物質の世界は皆さんの想像以上に広く深いのです。 我々の先輩であるノーベル賞受賞者、白川英樹博士の業績は金属のように電気を 流す高分子の研究でした。超伝導を示す有機物もあります。皆さんの使っているパソ コンの中でも半導体素子の微細加工用のレジスト材料(感光性高分子)、液晶などの 表示材料などが活躍しています。高温に耐える有機材料、金属をもしのぐ高強度・高 弾性材料もあります。現代はナノテクノロジーブームですが、分子1個の素子が実現 すればそれこそ究極のナノテク材料です。 皆さんが日常目に触れるもの、本やテレビなどマスコミ関係で取り上げられている 材料、さらにはプラスチックという通常の概念からは想像もできないものまで、有機・ 高分子材料の広がりはとどまるところを知りません。 本専攻の先生方の研究を次に紹介します。 - 6 - 講座・分野別教員名一覧 【高分子科学講座】 ・高分子合成分野 教 講 ・高分子設計分野 ・高分子構造分野 ・高分子物性分野 【ソフトマテリアル講座】 ・ソフトマテリアル設計分野 ・ソフトマテリアル物理分野 ・ソフトマテリアル化学分野 ・ソフトマテリアル機能分野 ・ソフトマテリアル構造分野 - 7 - 授 師 石曽根 隆 打 田 聖 助 教 丸 林 弘 典 教 授 高 田 十志和 准教授 斎 藤 礼 子 助 姜 聲 敏 准教授 古 屋 秀 峰 助 教 曽 川 洋 光 教 授 芹 澤 武 准教授 道 信 剛 志 教 授 鞠 谷 雄 士 助 教 宝 田 亘 教 授 森 川 淳 子 准教授 石 川 謙 助 教 岩 橋 崇 教 授 大 塚 英 幸 准教授 小 西 玄 一 助 教 後 関 頼 太 教 授 手 塚 育 志 助 教 山 本 拓 矢 助 教 平 田 修 造 教 授 野 島 修 一 准教授 戸木田 雅 利 助 澤 田 敏 樹 教 教 講座・分野別教員名一覧 【有機材料工学講座】 ・有機材料化学分野 授 柿 本 雅 明 准教授 早 川 晃 鏡 助 教 難波江 裕 太 教 授 大 内 幸 雄 准教授 川 内 進 助 教 川 本 正 助 教 芦 沢 実 教 授 森 助 教 梅 本 助 教 久保山 敬 一 助 教 ザメンゴ マシミリアーノ 教 授 バッハ マーティン 准教授 塩 谷 正 俊 ・エネルギー創成材料分野 准教授 松 本 英 俊 ・材料イノベーション分野 准教授 早 水 裕 平 ・物質科学専攻 教 授 安 藤 慎 治 准教授 佐 藤 満 教 授 扇 澤 敏 明 准教授 浅 井 茂 雄 助 教 赤 坂 修 一 助 教 石 毛 良 平 特任准教授 坂 尻 浩 一 中 薗 和 子 ・有機材料物理分野 ・有機材料加工分野 ・有機複合材料分野 ☆兼任協力講座 ☆関連講座等 ・特別講座 S-イノベ研究 ☆男女共同参画推進センター 教 助 教 健 彦 晋 (2015.4.1) - 8 - 高分子科学講座 高分子合成分野 石曽根研究室 研究室の紹介 石曽根研究室では、新規高分子の合成を目指して研究を進めてい ます。必要とされる知識、技術は、有機合成化学、高分子化学、ガラ ス細工(初心者でも問題ありません)などです。平成 25 年度は、博士 が 4 名、修士が 11 名、学部生が 3 名という構成です。3 年ほど前に、 耐震工事の終わった南 1 号館 5 階へ移転し、研究室は新たなスタート を切っています。皆さんと一緒に研究できる日を楽しみにしています。 研究目的 世の中には水に溶ける高分子もあれば、水に溶けず油と仲の良い 高分子もあります。また、室温で堅い高分子もあれば、軟らかい高分子もあります。こうした高分 子の示す性質はその分子構造とどのような関係にあるのか。興味ある性質、さらには機能を発 現するには、どのような構造を持つ高分子を設計し合成していけば良いのか。そのような疑問に 自問自答しながら、魅力ある新しい高分子を設計し合成していくことが、私たちの研究室の研究 目的であり楽しみです。いつの日にか自分の作り出した新規の高分子が、思わぬ性質、機能を 発現して世の中で認められ、実際の材料として使われることを夢見て研究を進めています。 研究テーマ 1) 剛直な主鎖構造を有するポリアダマンタンの合成 2) 側鎖、鎖末端にアダマンタン骨格を有する高分子の合成 3) アニオン重合による水溶性・感温性高分子の精密合成 4) エキソメチレン基を有するモノマー類のアニオン重合 5) ヘテロ環を有するビニルモノマー類のアニオン重合 現在の主要研究テーマは以上の通りです。具体的には、ダイヤモンドの基本骨格とも見なせ るアダマンタンという脂環式化合物がつながった新規高分子やアダマンタン骨格を分子内に有す る様々な高分子の合成を行っています。また、新しい水溶性・感温性高分子の精密合成を目指し て、極性モノマー類のリビングアニオン重合に挑戦しています。この他にヘテロ環やエキソメチレ ン基を有する新規モノマーの重合反応を検討し、生成ポリマーの構造や機能を明らかにしていき たいと考えています。有機合成や高分子合成に興味を持つ、熱意ある学生の研究への参加を期 待しています。 - 9 - 高分子科学講座 高分子設計分野 高田研究室 有機化学、高分子化学を基盤とする超分子化学分野で世界一を目指している研 究室です。「分子間相互作用の科学」が超分子科学、分子を超えた分子が超分子 です。わくわくしながら研究を楽しめる研究室に一度来てみて下さい。 1 ロタキサン分子 空間結合(インターロック結合)を利用する分子スイッチ、分子モーター、触 媒、分子素子などを合成し、デバイス開発の基礎を築きます。 Successive Catalytic Reaction using Rotaxane Catalyst 2 ポリロタキサン・ポリロタキサンネットワーク 空間結合や分子スイッチ等を組み込んだ新しいポリ マーを創成し、新素材開発に結びつけます。 3 人工らせん・新構造高分子・新反応剤 DNA やタンパクなどの生体分子が持つらせん構造をモチーフ に、自在な設計が可能な人工らせん分子を作り、その応用を行っ ています。また地球環境を守る環境関連高分子、光学・電子材料 用高分子など、新構造高分子の設計・合成・特性評価を通し、実 用化を目指します。さらに、Click 反応による新材料創成のための 新反応剤の開発も進めています。 実用化の例:シランカップリング剤の ◯研究室は? 製造プラント 研究はもちろんスポーツや遊びなどいろんなことにチャレンジ する“明るく元気”な研究室です。先輩方が暖かく親切に面倒を見てくれます。また、論文だけ でなく特許に名を残すことも推奨されています。 - 10 - 高分子科学講座 高分子設計分野 斎藤研究室 当研究室では、高分子単独の構造や自己凝集構造に着目し、その 構造を鋳型として、新たな高分子合成方法を確立すること、および、 高機能材料の開発を目的としています。鋳型とする構造は高分子鎖 一本の場合もあれば、自己凝集構造である場合もあります。これら の構造を基に、従来の方法では合成の難しい高分子を設計し、実際 に合成しています。また、有機高分子のみならず、有機高分子の自 己凝集構造を鋳型として有機ー無機、シリカー金属型の高機能性ナ ノ複合材料の開発も行っています。 研究テーマの詳細 ・ペルヒドロポリシラザンを用いた、有機・無機複合体の開発 ・鋳型重合による特殊構造ポリマーの設計と立体規則性制御法の開発 70000 60000 シクロデキストリンを鋳型と するマルチビニルモノマーの 化学構造 200 nm 200 nm ポリスチレン-シリカナノ複合材料 (左ポリスチレンリッチ、右シリカリッチ) - 11 - 高分子科学講座 高分子構造分野 古屋研究室 高分子化合物は、単量体の化合物とその組み合わせの多様性か ら、ほぼ無数に存在する可能性を持っていて、分子鎖の個性に 基づく固有の機能を発現します。分子鎖の特性は、分子鎖一本 の固有の性質と、分子が集まり互いに作用するときに現れる性 質に分けることができ、種々の興味深い物理現象は分子鎖一本 の性質と分子間相互作用の観点から説明されます。 我々の研究室では、各種測定方法(NMRなどの分光学的手 法)とコンピュータを用いた分子シミュレーションにより、高 分子鎖の溶液、液晶、及び溶融状態における構造と物性につい て分子論的に解釈しようと努力しています。テーマは以下の通りです。 1.ポリペプチドの構造転移の機構解明と機能化ナノバイオ材料の創製 2.らせん変換型高分子の表面垂直配向材料の機能発現 3.分子シミュレーションによる高分子物質のダイナミクスと構造特性 研究室のホームページ http://www.op.titech.ac.jp/polymer/lab/furuya/index.htm - 12 - 高分子科学講座 高分子物性分野 芹澤研究室 生体由来の高分子(ペプチド、タンパク質、多糖、ウイルスなど)が もつ秘めた機能や特性を発掘し、工学材料として応用する研究を行って います。高分子化学、有機化学、物理化学を基礎とし、最新のバイオテ クノロジーを駆使しながら、高分子科学における新たな学術領域の開拓 にチャレンジしています。斬新かつ独創的な発想をもとに医療・環境・ エネルギー・製造分野などに貢献することを目指します。以下に最近の 研究テーマの一部を概念図で示します。より詳細な情報は研究室のホー ムページをご覧ください。 加水分解触媒としてのセルロース 合成高分子の構造を見分けるペプチド 連絡先:serizawa@polymer.titech.ac.jp ホームページ:http://www.op.titech.ac.jp/lab/serizawa/index.html - 13 - 高分子科学講座 高分子物性分野 道信研究室 共役電子系の光・電子物性を利用した機能性高分子材料の開発 研究内容と目指すもの 共役系化合物はパイ電子に由来した光吸収や発光特性を示します。また、分 子間相互作用とキャリア発生を上手に制御すると電気を流すこともできます。 特に、高分子を用いると溶液プロセスで安価に薄膜を作製できる利点がありま す。これらの利点を組合せると、共役系高分子から成る高性能な太陽電池が実 現できると期待されています。当研究室では、精密な分子設計と効率的な合成 手法を駆使して様々な新しい共役系高分子を創り出し、その光電変換特性を調 査しています。また、共役系化合物の光物性を利用することで高感度なセンサ ーを創り出すこともできます。高分子センサーは面情報を得ることができるた め、新しい応用の可能性があります。 遂行する研究テーマ 1. 有機半導体高分子の合成と薄膜太陽電池応用 狭いバンドギャップを有する p 型半導体高分子・フラーレンを用いた n 型半導体高分子の合成 2. 高分子センサーの開発 金属イオンセンサー・酸素センサー・応力センサーの開発、金属含有高分子の作製と気体分離 膜・抗菌膜への応用 Homepage:http://www.op.titech.ac.jp/lab/michinobu/ E-mail:michinobu.t.aa@m.titech.ac.jp TEL:03-5734-3774, FAX:03-5734-3774 教員:准教授 道信 剛志(Tsuyoshi Michinobu) - 14 - ソフトマテリアル講座 ソフトマテリアル設計分野 鞠谷研究室 極限を目指す成形加工 究極の高速成形,高次構造,物性,計測,微細形態,高性能,環境対応・・・ 研究内容と目指すもの 高分子材料は,材料内の分子鎖の配列状態により性質が著しく変化するという特 徴があります.このような高次構造は成形加工プロセスを通じて形成されます. 我々は,分子配向,結晶化,分子鎖の絡み合いなど,多様な高次構造が形成され るしくみを理解し,さらにはこれを積極的に制御する手法の開発を行っています. 特に,超高速溶融紡糸プロセスと呼ばれる繊維の引取速度が時速 600 km に達する 極限条件下における高分子材料のふるまい,フィルムの1軸,2軸伸長における 3次元的高次構造形成,繊維・フィルムの高次構造・物性の解析,繊維強化複合 材料の微視力学など,高配向高分子材料に関連した幅広いテーマで研究を続けて います. 遂行する研究テーマ 1.高速溶融紡糸・延伸過程のオンライン計測と数値解析 2.新規材料の繊維化(組成分布制御、エラストマー、植物由来等) 3.複合高速溶融紡糸における繊維形態・繊維構造制御 4.非定常溶融紡糸過程の構築と実験・数値解析 5.フィルムの1軸・2軸伸長過程での分子配向と高次構造形成 6.溶融構造制御による高強度繊維開発 ラセミ体ポリ乳酸繊維の ステレオコンプレックス晶 7.溶融紡糸を利用した光学機能材料開発 傾斜した屈折率分布を有する 複合紡糸繊維の干渉顕微鏡像 θ ND TD インライン紡糸延伸装置の 糸掛け作業 MD フィルム伸長過程の その場複屈折計測装置 海-島繊維断面 Homepage : http://kikutani.op.titech.ac.jp/ E-mail : kikutani.t.aa@m.titech.ac.jp TEL : 03-5734-2468, FAX : 03-5734-2876 教員:教授 鞠谷 雄士(Takeshi Kikutani) 助教 宝田 亘 (Wataru Takarada) - 15 - ソフトマテリアル講座 ソフトマテリアル物理分野 森川研究室 熱を制する材料 ーHeat Transfer & Thermal imagingー 背景:n-アルカン結晶化発熱の赤外線画像 研究内容と目指すもの ・熱物理現象のサイエンス(Thermal Science)、および熱に関する機能的な材料開発ならびに、熱伝導/熱の可 視化に関する新規な計測法/解析法の研究を行っています。 ・有機・高分子材料は、環境や新エネルギーの観点から、幅広い分野で重要性を増 しています。なかでも、熱に関する機能をもつソフトマテリアルの開発に新たな注目 が集まっています。その熱特性は、力学・電場・磁場・温度場・相転移などを用いた 多層化や微細発泡、コーティングなど、さまざまなプロセッシング技術の構築とも密接 な関係を持ちます。さらに、LED や太陽電池,蓄熱材に代表される新エネルギーシ ステムのミクロ伝熱や放熱・断熱・蓄熱性などの熱物性に注目して、精密測定法や、 材料設計を行い、最新のグリーン・イノベーションへの応用を目指しています。 ・開発した新規なミクロ熱解析技術は、測定法として国際標準となるとともに、最新の バイオテクノロジーや食品分野へ応用する取り組みも進められています。 遂行する研究テーマ 1. Thermal Imaging 可視化熱分析・可視化熱伝導率・熱拡散率測定 赤外線2次元素子/顕微鏡光学系を用いた Thermal Imaging 法は、ミクロスケールの不均一系の熱伝導、相転 移など発熱を伴う現象の熱拡散、ミクロ欠陥検出、細胞の凍結現象(凍結保存薬の性能評価などへの展開)、電 子材料の絶縁破壊、回路発熱とその設計への応用、蒸発・沸騰などによる冷却解析、断熱圧縮膨張による吸発 熱の解析など、あらゆる材料設計の基礎として展開する可能性を秘めています(図1)。実際の熱の流れを観測 しながら、熱流分布と材料内部の構造分布を相関付けるシステム開発を行います(図2)。 2. 不均一系の熱伝導解析と熱を制御する材料の開発 逆問題解析や有限要素法、さらには回路設計技術など、最新の設計解析技術と、実験科学の両論をベースとし た、新しい熱機能性ソフトマテリアルの開発と、その熱物理の解明に力を注ぎます。 熱と光のイメージングにより、人と環境に優しい熱機能材料・次世代エネルギー開発への貢献を目指していま す。 図1 細胞冷凍過程の潜熱の赤 外線画像、Paris Tech (France) との共同研究。 図2 ポリイミドフィルム内部のフェムト秒レーザー微細加工域に変 調レーザー光を照射したときの、温度場の可視化。Opt. Exp. 19, 2054(2011) に Image of the week として掲載された。 研究室HP: http://www.morikawa.op.titech.ac.jp/ - 16 - ソフトマテリアル講座 ソフトマテリアル物理分野 石川研究室 有機物光電子デバイスの開発 有機太陽電池,液晶表示デバイスの高性能化 研究内容と目指すもの 有機材料は、電気製品の中では脇役でしかありませんでした。しかし、最近 は液晶や有機 EL 表示など、製品の主役となる有機材料も出てきました。 また、 有機太陽電池など、あらたな主役を開発する研究が進んでいます。 研究室では、有機半導体と液晶を対象に、有機光電材料の研究を行っていま す。研究のキーワードは「集合体で初めて発現する機能を使った高性能デバ イスの開発」です。有機太陽電池のお手本となる植物の光合成中心では、分 子が空間的に特別な配置をすることにより量子効率のよい電荷分離を行って います。また、液晶は分子が自己組織化して、分子単体からは想像できない 機能を発揮しています。とはいえ、自然界に存在するものは人間が使うため に最適化されてはいません。そこで、自然には存在しない構造を人工的に作り出したり、液晶のような 自己組織化した構造と人工的な構造を組み合わせたりすることによって、より人類にとって有効な構造 を作りだすとともに、機能発現の背後にある物理を解き明かそうとしています。 遂行する研究テーマ 1.配向薄膜の作製、評価手法の開発 2.多層積層型有機太陽電池の開発 3.異方性物質中の電荷担体移動の解析 4.液晶複合体を使ったデバイス開発 5.強誘電、反強誘電性液晶の物性評価 T o ta l R e sista n c e (k Ω cm ) 6.各種分光法を用いた新規液晶構造の解明 5000 4500 4000 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500 0 w/o ⊥ ∥ 0 トランジスタや太陽電池を作製するための蒸着装置(左)と試 料を精製するための自作の昇華炉(右)。 精製を自ら行うこと により、他では使えない物質を使ったデバイスも作れるように なる。 Homepage : http://www.op.titech.ac.jp/lab/Take-Ishi/index.html E-mail : iken@op.titech.ac.jp TEL : 03-5734-2437, FAX : 03-5734-2876 - 17 - 50 100 150 200 250 Channel Length (μm) 配向フタロシアニン膜(右)と無配向フタロ シアニン膜(左)の AFM 像。 配向の有無と 方向により抵抗が異なる(下)。 教員 : 准教授 石川 謙(Ken Ishikawa) ソフトマテリアル講座 ソフトマテリアル化学分野 大塚研究室 【研究室概要】 私たちの研究室は、平成25年4月に創設された新しい研究室で す。有機化学を巧みに利用し、特に平衡系の共有結合を駆使して、 新しいタイプのスマートポリマーの創製を目指しています。自己修 復性材料、力学応答性材料など、サステイナブルな視点だけでなく、 安全・安心な社会の実現にも貢献しうる次世代型高分子材料の研究 に取り組んでいます。 【研究室の方針】 私たちの研究室では、「スマート」な機能を有する次世代の高分子新素材の開発を目 的として、高分子の設計と合成に関する基礎研究を進めています。特に、有機化学→高 分子化学→高分子材料学という階層的な材料設計の考えを身につけさせ、分子レベルか ら材料レベルまで広い知識と研究能力を身につけさせたいと考えています。学生とのデ ィスカッションを密に行うことで、深い理解と自ら考える力を養います。 【ホームページ】 http://www.op.titech.ac.jp/polymer/lab/otsuka/index.htm - 18 - ソフトマテリアル講座 ソフトマテリアル化学分野 小西研究室 小西研究室では「光」をキーワードに新しい芳香族系高分子、光機 能分子、液晶分子の設計と合成、そして機能化(光をつくる、操る、 エネルギー変換する)を行っています。東工大高分子工学科のアイデ ンティティーである「構造物性」のセンスを培うことを常に意識しな がら、面白いものをつくります。斬新かつ挑戦的なテーマ設定を心が けており、JSTさきがけプログラムをはじめ、多数の注目プロジェ クトを推進中です。「研究は好奇心とひらめきから生まれる」とは、 故・田伏岩夫先生の言葉ですが、研究テーマは学生さんと教員の熱い ディスカッションを通して、日々刻々と変わっていきます。平成22 年度から重田雅之助教(化学専攻・鈴木啓介研修了)を迎えました。 小西准教授のバックグラウンド 高分子合成、有機合成、光化学、電子移動、光学、有機金属化学、構造有機化学 現在推進中の大型プロジェクト ①JST・さきがけ「新しい電子移動パラダイムに基づく有機触媒の創製」 (細野秀雄東工大教授統括) ②NEDO産業技術研究助成事業(若手研究グラント)「高屈折率透明樹脂の開発」 ③JST・戦略的イノベーション創出推進事業「高分子ナノ配向技術によるデバイス開発」 最近の研究テーマ(上記のプロジェクトとの関連性を番号で示しました) ①太陽光で駆動する新しい有機光触媒の開発とデバイスへの応用 ①光エネルギーの効率的利用を目指した色素の高密度集積法の開拓 ②新しい概念のフェノール樹脂と光学材料への応用(デザイン型フェノールの重合) ②縮合系高分子の構造特性解析(高分子構造物性) ②自動車の軽量化やポリマーリサイクルに貢献する高強度有機-有機ナノコンポジット ③超高効率発光色素の開発と液晶レーザーへの応用 ③高複屈折液晶の開発と光学材料への応用 最近の研究から 高強度透明樹脂: 世界初無色透明な フェノール樹脂 コールタールから得られる フルオレンを原料とする 高性能白色発光色素 n Emission Reflection Lasing 1.0 0.6 y t i 0.4s n e t n i 0.4 0.2 0.2n o i 0.0 0.0 -0.2 400 s s i m E -0.2 500 wav elength (nm) - 19 - 0.8 . s t i n u 0.6. b r a 0.8 e c n a t c e l f e r 1.0 ︶ OMe Extremely Low Threshold ︵ OMe MeO ピレン色素を用いた 低閾値の液晶レーザー 600 ソフトマテリアル講座 ソフトマテリアル機能分野 手塚研究室 高分子トポロジー化学 「かたち」からはじめる高分子機能設計 研究内容と目指すもの 私たちは、「かたち」をキーワードとしてマテリアルデザインを新しい 視点から展望する研究を進めています。特に高分子(柔らかくて長いひも としてイメージされるナノスケールの分子)の「かたち」は、トポロジー 幾何学を視座として展望すると、思いがけない魅惑的な世界が広がってき ます。たとえば、直感的には結び目のひもと環のひもはもちろん「区別さ れる」異なるかたちですが、やわらかい環のひもは、変形して四角や三角 にすることができます。この直感に対して、トポロジー幾何学は、結び目 と環でさえ、「4次元空間」ではお互いに変形させれば行き来することが 出来ると教えています。私たちの様々な直観は、しばしば固定観念として 常識化されてしまいますが、数学・幾何学からの挑発によってマテリアル デザインへの新たな視点が生まれるかもしれません。 遂行する研究テーマ 高分子の「かたち(トポロジー) 」のデザインには、ユークリッド幾何学の制約を超えた大きな 自由度があります。直線状(これまでのほとんどの合成高分子)だけでなく、分岐状や環状・多環 状の構造を自在に設計し、さらにこれらを組み合わせてお好みの高分子トポロジーを効率的に合 成する、新しい化学反応プロセス(高分子トポロジー化学)を開発中です。 単環状および多環状高分子トポロジーの系統図 Homepage:http://www.op.titech.ac.jp/lab/tezuka/ytsite/index.html E-mail :ytezuka@o.cc. titech.ac.jp TEL:03-5734-2498, FAX:03-5734-2876 - 20 - 教員:教授 手塚 育志(Yasuyuki Tezuka) 助教 山本 拓矢(Takuya Yamamoto) ソフトマテリアル講座 ソフトマテリアル構造分野 野島研究室 研究室の概要 高機能な高分子材料を設計・開発するためには、材料中に形成する 高次構造を詳細に理解する必要があります。私たちの研究室では、各 種高分子材料中の高次構造とその形成過程を調べ、高次構造制御技術 の確立を目指しています。そのために研究室所有の装置だけでなく、 全国にあるさまざまな大型実験設備(放射光施設など)を用い、最先 端の研究に取り組んでいます。研究室の構成は職員 2 名、博士課程学 生 2 名、修士課程学生 5 名、学部四年生 3 名、研究生 1 名の計 13 名で す(2013 年度) 。 研究室の方針 私たちの研究室では研究目的に最 適なモデル高分子系を得るために、ブ ロック共重合体などを基本的に自分た ちで合成しています。そこでは、分子 量や組成を精密に制御するために高真 空下でのリビングアニオン重合法が用 いられます。次に、合成された試料の ミクロ相分離や結晶化などにより高次 構造が形成される過程を観察します。 様々な実験結果をもとに、どのような 因子がどのようなメカニズムで高次構 造を制御しているかを明らかにします。 高次構造の観察には主に小角 X 線散 乱(SAXS)法を用います。KEK-PF(つ くば)や SPring-8(兵庫)などの放射 光施設で高輝度の X 線を利用して、試 料の高次構造形成過程を追跡すること も可能です。試料中の結晶構造や結晶 化度は広角 X 線回折(WAXD)や示差走 査熱量(DSC)測定により調べます。 学生には以上のような一連の研究を各自のアイデアのもとに進めていくことが求められます。 研究テーマの一例 ○ミクロ相分離構造由来の孤立ナノ空間内に閉じ込められたホモポリマーの結晶化 ○ 結晶性-結晶性二元ブロック共重合体におけるミクロ相分離と結晶化の相互作用 ○ 星型ブロック共重合体の合成と結晶化高次構造 連絡先 Email : snojima@polymer.titech.ac.jp Phone : 03-5734-2132 Web page: http://www.op.titech.ac.jp/polymer/lab/nojima/index.htm - 21 - ソフトマテリアル講座 ソフトマテリアル構造分野 戸木田研究室 戸木田研究室は構造ダイナミクスを活用してソフトマテリアルの構造を精 緻に制御し,材料のミクロな現象をマクロな機能発現に結びつける研究に 取り組みます.私は,流動性と配向の秩序を持つ液晶を示す高分子を研究 素材に下記のテーマに取り組んできました.熱意ある学生と一緒に新しい テーマを立ち上げ一緒に研究する日々を楽しみにしています. 1.液晶高分子のダイナミクスと配向制御 流動条件に依存して3種の配向が現れる (ダイナミクスとの相関はこれからです) flow 液晶の中にあるミクロシリンダーも 液晶と一緒に配向する (数nmの長さの液晶(小人)が数百 nmの長さのミクロシリンダー(ガリ バー)を動かす!!) 配向したミクロシリンダーは液晶を配向させる (新しい液晶配向技術だ!?) 液晶状態 冷却 加熱 液体状態 2.液晶状態における高分子鎖の形態の温度依存性を利用した新規機能性エラストマー High Temp. Low Temp 液晶高分子は主鎖中にある液晶メソゲン が配向するため局所的にはほぼ伸びきっ ていますが,エントロピーを稼ごうと, ところどころ折りたたまれています.温 度を上げると折りたたみの数が増え,液 晶配向方向に沿った末端間距離が縮まり ます.それを利用して,液晶温度領域の 昇降温サイクルで一つの方向に 1.5 倍可 逆に伸縮するエラストマーを創りまし た.(人工筋肉だ!!) 3.液晶高分子の構造解析 液晶高分子は,繰り返しユニットが液 晶構造を形成する一方,高分子鎖が構 成単位となって構造を形成します.繊 維試料の X 線回折パターンで液晶構 造を,X 線回折と電子顕微鏡観察で高 次構造を解析しました.自分で合成し た試料の回折パターンを使えば,難し い X 線回折も楽しく勉強できます. 研究室の構成(2013年4月 1 日現在) 戸木田雅利 准教授(本館 2 階 69 号室,mtokita@polymer.titech.ac.jp) 学生9名(博士課程1,修士課程5,学部生2,研究生(YSEP 留学生)1) (本館 2 階 75 号室) - 2 - 有機材料工学講座 有機材料化学分野 柿本研究室 縮合系高分子,多分岐高分子の合成と応用 研究内容と目指すもの 柿本研究室は,縮合系高分子,さらにその中でも多分岐高分子の合成を得意 としており,その合成技術を生かして,これまでにない機能性材料の開発に取 り組んでいます.最近ではこれらの高分子を原料とした新規炭素材料の開発, 新規材料を用いた固体触媒反応など,幅広い応用にも取り組んでいます.所属 する学生の皆さんは,分子設計,高分子合成,高分子を原料とした材料合成, 材料の機能解析までを横断的に取り組み,実践を通して有機材料工学のエッセ ンスを「広く,深く」学びます. 遂行する研究テーマ 1. 多分岐高分子:ハイパーブランチポリマーの合成と応用 分子が鎖状につながった高分子の中には,分岐構造を数多く有する「多 分岐高分子」があり,従来の直鎖状高分子とは全く異なる特徴を生かして, 新規機能性材料を開発できます.例えばリニアポリマーに少量のハイパー AB -Type 2 ブランチポリマーをブレンドすることで,ガラス転移点や粘度などが劇的に 変化する可能性があります.またハイパーブランチポリマーに多数存在す る末端に,触媒として作用する官能基を導入することで,環境負荷の少な Polymerization Monomer ハイパーブランチポリマーの合成 い新しい固体触媒の開発に繋がります. 2. 炭素とポリマーのハイブリッドによる固体触媒の開拓 現在アルコールなどの炭化水素類の酸化反応には,高価な貴金属や有な 遷移金属が多く使われています.私達の研究室では炭素材料を利用した触 媒によって,遷移金属触媒を代替する研究や,炭素材料の触媒活性をハイ パーブランチポリマーを利用して向上させる研究に取り組んでいます.遷移 金属の機能を,炭素や水素などのありふれた元素から成る“有機材料”で代 ハイパーブランチポリマー が固定化されたグラフェン 替する挑戦は,まさに「現代の錬金術」といえます. Homepage:http://www.op.titech.ac.jp/lab/kakimoto/index.html E-mail :mkakimot@o.cc.titech.ac.jp TEL:03-5734-2433, FAX:03-5734-2875 - 23 - 教員:教授 柿本 雅明(Masa-aki Kakimoto) 助教 難波江 裕太(Yuta Nabae) 有機材料工学講座 有機材料化学分野 早川研究室 超微細加工分子材料の創成と自己組織化技術の開発 ・精密機能・低環境負荷・省エネルギー性・ 研究内容と目指すもの 有機高分子材料研究の醍醐味のひとつとして、 「自己組織化」を巧みに利 用する機能性ソフトマテリアルの開発があります。分子間に働く比較的弱 い相互作用、すなわち、水素結合、配位結合、ファンデルワールス力、親 水・疎水的相互作用等を積極的に利用することにより、分子の配列や配向、 結晶・液晶構造、相分離構造がナノスケールで自在に制御された多様で精 密な高次構造を形成することができます。我々は、これらの自己組織化構 造を最大限に活かした機能性ソフトマテリアルを開発するために、分子自 身が有する潜在能力を活かすべく分子設計、精密重合、高次構造制御およ び構造解析に至る研究まで一貫した取り組みを行い、次世代材料の開発を 目指しています。自己組織化を利用するとわずかなエネルギーで目を奪わ れるほどの美しい構造を簡単に作り出すことができます。それらの構造に基づいた新奇な機能や飛躍的 な物性の向上を追求しながら、エネルギーや環境問題に関わる新しいデバイス材料の創成を世界に先駆 けて取り組んでいます。 遂行する研究テーマ 1.リビングアニオン・ラジカル重合による精密構造制御されたブロック共重合体の合成 2.超微細シングルナノパターン加工に向けた有機・無機ハイブリッド材料の創成 3.テーラーメイド薄膜表面の創成を目指した自己組織化高分子の合成と分子構造制御 4.超高周期配列性ナノポーラスポリマー薄膜の開発 5.自己組織化エポキシ材料の硬化樹脂による超高熱伝導性材料の開発 Homepage : http://www.op.titech.ac.jp/lab/hayakawa/jpn/index.html E-mail : hayakawa.t.ac@m. titech.ac.jp TEL&FAX : 03-5734-2421 - 24 - 教員:准教授 早川晃鏡(Teruaki Hayakawa) 有機材料工学講座 有機材料物理分野 大内研究室 液体の常識を超える 次世代イオン液体の構造と電子構造:機能化への指針と構造制御の学理 研究内容と目指すもの 真空でも蒸発しない液体、有機溶媒の概念を覆し温室効果ガスとしてやり玉に 挙げられている CO2 を吸蔵・放出する。セルロースをいとも簡単に溶解し、 バイオマス資源の活用に新機軸を与えたかと思えば、電気二重層効果で超電導 状態を誘引したり酵素を生きながらえさせたりする。液体でありながら内部に 不可思議な構造単位を持ち、電子をも長時間保持する。極性溶媒の代表格であ る水やアルコールに溶解せず、さりとて CCl4 のような無極性溶媒にも溶解し ない液体に私達がこれまで獲得した溶液化学の常識は通用しない。液体の常識 を超える液体:イオン液体を構造化学、電子構造学、界面科学の3軸から科学 し、機能化への指針と構造制御の学理を確立する。最先端の非線形分光法、電 子状態計測、理論計算を駆使し、新世代の材料科学の扉を開く。 遂行する研究テーマ 1.非線形振動分光法(IV-SFG)を用いたイオン液体/分子液体界面の in-situ 構造化学 2.イオン液体/金属・半導体界面の電気二重層制御とキャパシター・電池・FET への応用 3.光電子分光法および逆光電子分光法によるイオン液体の電子状態解析 4.イオン液体と有機低分子材料・高分子材料との混和による構造制御と機能化 5.イオン液体のソフトインターフェース材料科学 電子状態計測用 UHV-UPS 界面計測用 IV-SFG システム IV-SFG で液体/液体界面 の分子配列が分かる。MD 計算結果とも対応 UHV-UPS でイオン液体の 電子状態が分かる。電子物 性・電子機能の根幹的情報 Homepage : http://www.op.titech.ac.jp/lab/ouchi/index.html E-mail : ouchi.y.ab@m.titech.ac.jp - 25 - TEL : 03-5734-2436, FAX : 03-5734-2876 教員:教授 大内 幸雄(Yukio Ouchi) 有機材料工学講座 川内研究室 有機材料物理分野 ―計算化学シミュレーションによる反応・物性予測― 研究室の概要: 川内研究室では、量子化学計算を中心とした計算 化学シミュレーションにより、有機・高分子物質の反応性から物 性まで、幅広い対象について未解明の現象を解明しています。究 極の目的はシミュレーションによる新しい化学概念の創出と、そ れらを適応した新しい化学反応や材料の開発です。 実験化学、理論化学に次ぐ第三の化学。計算機 計算化学とは: 実験とも呼ばれ、実験との相互連携が重要です。学内外の実験研 究者との積極的な共同研究を展開しています。以下に例として、 石曽根研究室、千葉大田村研究室との共同研究結果を示します。 代表的研究テーマ 2)RNA-ポリアミン相互作用の解明 1)環状メタクリルアミドの重合反応性 -240 ◆ R=Me ◆ R=H Energy (kJ/mol) -250 -260 -270 -280 -290 -300 -310 _ -320 R R R R R R R N N N N N N N 3 H C ΔGBind = -37.40 kcal/mol HOMO-1 (-4.411eV) ΔGBind = -33.61 kcal/mol O O O O O O 3 O H C HOMO (-4.275eV) CH3-付加エネルギー 35 30 無 Energy (kJ/mol) 25 重合性 20 有 15 ◆ R=Me ◆ R=H 10 5 0 _ R R R R R N O O O O N N O 3 O H C O N N N N 3 H C R R -5 平面構造への遷移エネルギー RNAの分子軌道と有力な複合体コンホメー ション - 2 - 有機材料工学講座 有機材料加工分野 森研究室 電気を流す有機材料 有機トランジスタ,有機超伝導 研究内容と目指すもの 有機物のなかには、半導体として電気を流すものから、金属と同じように高 伝導のもの、電気抵抗が完全にゼロになる超伝導性を示すものまであります。 有機半導体は有機トランジスタや有機 EL、有機太陽電池としての応用にむけ て注目を集めており、プラスティックのうえに曲がる電子回路やディスプレ ーを作ったり、有機半導体をインキにして印刷で IC を作ったりする有機エ レクトロニクスが活発に研究されています。有機トランジスタから有機超伝 導まで、新しい有機伝導体を開発してその性質や構造を調べ、すぐれた有機 エレクトロニクス材料の開発と、その原理を探る研究を行っています。 遂行する研究テーマ 1. 有機トランジスタ材料の開発 2. 簡便で高性能な有機トランジスタ作成法の開拓 3. 有機超伝導体の開発とその物性 4. 有機伝導体の電子状態・エネルギーバンドの計算 5. 有機半導体の特性の理論計算 有機伝導体を電極とする有機トラ ンジスタの特性 有機トランジスタ S S S S S S S S 有機超伝導体の 電解結晶成長 Homepage:http://www.op.titech.ac.jp/lab/mori/ E-mail :mori.t.ae@m.titech.ac.jp TEL:03-5734-2427, FAX:03-5734-2427 教員:教授 森 健彦(Takehiko Mori) 助教 川本 正(Tadashi Kawamoto) - 27 - 有機材料工学講座 VACHA 研究室 有機複合材料分野 有機材料のナノ世界を垣間見る 研究内容と目指すもの 近年、ナノ科学および計測技術の進歩によって、有機材料や高分子材料のナノ構造 と物性の評価・解析が進んでいる。特に、ナノスケールにおける物性解析のための新 手法として、単一分子分光法および計測法が着目されている。個々の分子や高分子 鎖からの蛍光を測定し、静的あるいは動的な特性の不均一性を観察することによって、 材料の構造と分子運動、さらには光物性について新たな知見が得られることが明ら かとなってきている。我々は、単一分子分光法を用いて有機材料や高分子材料のナ ノスケール構造及びそのダイナミックス、光物理特性及び過程、光電子デバイス のナノスケール特性の研究を行っている。 遂行する研究テーマ 共役系高分子の配座と光物理特性 高分子薄膜のナノスケール物性 thin polystyrene film conjugated polymer MEH-PPV defect cylinder Fluorescence single chain defect coil orientation and dynamics of doped PDI dyes Time organic electroluminescence device (OLED) N 単一分子 科学 green photosynthetic bacteria Ir single antenna EL intensity 3 dF transmission Time 有機EL素子のナノスケール特性 exciton gF dipole 光合成集光アンテナの構造と機能 Homepage : http://www.op.titech.ac.jp/lab/vacha/index.html E-mail : vacha.m.aa@m.titech.ac.jp TEL : 03-5734-2425, FAX : 03-5734-2425 - 28 - 教員:准教授 VACHA Martin(バッハ マーティン) 助教 平田 修造 有機材料工学講座 有機複合材料分野 塩谷研究室 炭素系材料の極限的な物性の追及 研究内容と目指すもの 炭素材料はほぼ炭素原子だけからできていますが,多様な物性を示し, 広範な分野で応用されています.これは炭素がカルビン,グラファイト, カーボンナノチューブ,フラーレン,ダイヤモンドなど多様な結合様式 と形態をとることに加えて,それらの集合体が多様な高次構造や組織を 形成するためです.また,これらを複合材料として用いる場合には,マ トリックスとの相互作用や分散状態などの因子がさらに多様性を生み ます.当研究室では,主として炭素材料,繊維材料,複合材料に関して, ミクロなレベルからマクロなレベルまで広範囲な次元の構造制御によ って,新たな物性を賦与すべく研究を進めています. 遂行する研究テーマ 1.放射光を利用した高分子材料・炭素材料の変形・破壊機構の解明 2.ナノチューブ・ナノファイバー集合体の力学的性質 3.酸化グラフェンを利用した炭素構造制御 4.自己組織化を利用した新規多孔質炭素の創生とその構造・電気化学的性質 5.各種フィラー分散複合材料の構造・物性(力学的性質・疲労特性・耐摩耗性・熱的性質) Nylon6 静水圧応力分布 Notch tip VGCF(1wt%)/Nylon6 VGCF(5wt%)/Nylon6 ω33|u3| D3 ω31|u1| ω32|u2| ω23|u3| ω22|u2| ω21|u1| D2 ω13|u3| u3 u2 u1 D1 ω11|u1| ω12|u2| 高分子の変形・破壊過程における放射光小角X線散乱パターンの変化から, 構造変化を追跡し,高強度の材料を得るための指針を検討しています. カーボンナノファイバー,カーボンナノ チューブを分散した高分子複合材料につ いて,有限要素法による変形・破壊過程 のシミュレーションや構造変化の測定結 果などに基づく物性解析を行っています. 炭素材料を吸着材料やリチウムイオン電池の電極として用いる場合には,細孔のサイズや配置の制御が重要です. - 29 - 有機材料工学講座 エネルギー創成材料分野 松本研究室 1次元ナノ材料を利用したエネルギー変換・貯蔵材料の創製 研究内容と目指すもの ナノファイバー,ナノチューブ,ナノワイヤなどの「1次元ナノ材料」は1次 元形状と表面積の大きさから注目を集めている機能材料です.1次元ナノ材 料は容易にネットワーク状の構造を形成することから,高速キャリア伝導パ スや高効率吸着・反応場として,有機太陽電池,2 次電池,キャパシタなど エネルギーデバイスへの応用が期待されています. 私たちの研究室では,1次元ナノ材料の構造と機能を最大限に活用したエ ネルギーデバイスの開発を目標に,分子設計(新規有機半導体),自己組織化, 微細加工技術(エレクトロスピニング)などのアプローチを駆使して,有機 半導体,機能性高分子,カーボンおよび金属ナノ材料などを利用した新規な 1次元ナノ材料の創製と機能発現メカニズムの解明を目指した研究を展開 します. 遂行する研究テーマ 1. 新規材料の合成(有機半導体・高分子半導体) 2. 1次元ナノ材料に関する基礎研究と新規ナノ材料の創製 (ナノファイバー内部構造の制御,表面機能化・階層構造化,ナノカーボン材料) 3. 1次元ナノ材料を利用したエネルギー変換デバイスの作製 (光電変換,圧電変換,熱電変換,フレキシブルエレクトロニクス) 4. 水処理材料(浸透圧発電) 研究室の構成(2013 年 4 月 1 日現在):松本英俊准教授,芦沢実助教, 研究員 1 名, 学生 7 名(大学院 5 名,学部 2 名) URL: http://www.op.titech.ac.jp/lab/matsumoto/index-j.html E-mail: matsumoto.h.ac@m.titech.ac.jp; TEL/FAX 03-5734-3640 - 30 - 有機材料工学講座 材料イノベーション分野 早水研究室 バイオ・ナノ界面の制御 研究内容と目指すもの 近年のナノテクノロジーにおいて、たんぱく質などのバイオ材料とナノ材料を 融合させることは、盛んに研究されている課題のひとつです。当研究室では、 バイオとナノの界面を制御し、新たなナノシステムを構築すること目指してい ます。具体的には、機能性固体吸着ペプチドという工学的に設計された微小な たんぱく質を用いて、原子 1 層の厚さをもつグラフェンなどナノ材料の表面に ペプチドのナノワイヤーやナノクラスターを自己組織化させます。ペプチドの 精緻な設計に加え、トップダウン手法によって作製されるナノ材料テンプレー トを用いて、二つの材料の特性・機能をあわせ持つ、バイオ・ナノ複合システ ムを設計、構築し、自律的に機能する新規ナノシステムの創製を目指します。 遂行する研究テーマ 1.新規材料探索、ペプチドの配列設計、自己組織化制御 2.ナノデバイスの設計、作製、評価およびバイオ材料による修飾 3.制御されたバイオ・ナノ界面を有する新規ナノデバイスの作製 4.ペプチド自己組織化の機構解明(実験・数値解析) 5.新規測定系の開発(バイオ・ナノ界面を理解する新たな手段) 6.光・電子系を用いたバイオ・ナノ界面のエネルギー伝達の理解 原子間力顕微鏡画像 グラフェン上のペプチド・ナノワイヤー グラフェン上のぺプチド 数値計算 ペプチドの自己組織化機構の模式図 Homepage:http://www.op.titech.ac.jp/lab/hayamizu/ E-mail :hayamizu.y.aa@m.titech.ac.jp 教員:准教授 早水 - 31 - 裕平(Yuhei Hayamizu) 物質科学専攻 物質設計講座 安藤研究室 - 32 - 物質科学専攻 物質設計講座 佐藤研究室 高分子/水系-常識の通用しない世界- 佐藤研究室では、この世で最もありふれていながら最も不 思議な物質「高分子と水」が生み出す数々の「非常識」の 解明に取り組んでいます。特に、 “新しい親・疎水性の概念 の確立”は主要テーマの一つです。 「高分子/水系」はこの 様な常識の間違いや思いこみであふれています。その一つ 一つを見出し、機構の本質を解明していくことで、新しい 機能材料設計への道が開かれると考えています。 □ Green Material としての「粉末化イオン液体」 ドライウォーターという物質があります。これは~100μm の水滴の周りが~100 nm の疎 水化シリカ微粒子で覆われたもので、見かけはさらさらの粉末状態です。水の代わりに高 分子水溶液を使うと後で架橋することにより「ドライゲル」をつくることもできます。同 様にしてイオン液体を粉末化した「ドライイオン液体」の調製には、佐藤研が世界に先駆 け て 成 功 し ま し た 。 現 在 純 粋 な イ オ ン 液 体 と し て は 、 Fig.1 に 示 す 1-butyl3-methylimidazolium iodide ([bmim][I])のみ調製可能であることが確認されていますが、さら に多くの種類への拡張を試みています。イオン液体には CO2 を高濃度に溶解する性質があ るので、表面積が非常に大きいドライイオン液体は、CO2 の選択分離機能材料として期待 されています。 □ 研究室の概要 博士0-1名、修士2-4名、学部2名のこぢんまりした研究室です。上記の他に「コロ イド分散系の安定性」と「高分子電解質の形態変化」に関する研究も含めて各テーマ1- 2名が担当しています。外部からの入室は過去10年で留学生なども含め8名います。内 進生を含めた就職先は化学全般が主ですが、ほかに家電、教員、広告代理店などバラエテ ィに富んでいます。 Bu N + N I - Me Fig.1 世界初の「粉末化イオン液体」 (左写真:ロートからの free-flowing 性、右写真:光学 顕微鏡写真)とイオン液体の分子構造 - 33- 物質科学専攻 物質設計講座 扇澤研究室 高分子高次構造および機能発現の本質に迫る ポリマーアロイ,結晶・非晶・薄膜構造,表面・界面,熱膨張機構,光学特性,生分解性樹脂 研究内容と目指すもの 私たちの身の回りにあるプラスチックやゴムなどのポリマー材料の多くは複合系材 料です。用途に適した特性を実現するため、異種高分子や無機材料などとの複合 化が行われており,先端材料や構造材料などとして幅広い分野で用いられています。 当研究室では、ポリマーハイブリッド材料研究のパイオニアとして、複合系材料を中 心としたポリマーの物性発現メカニズムを探る基礎的な研究を行うとともに、ナノ・マ イクロスケールの構造制御により材料の高性能化・高機能化を図るなど応用研究に も力を入れ、企業との共同研究も活発に行っています。さらに、ポリマー材料の本質 に迫るべく、複合系材料のみでなくポリマー単体の構造・特性についても実験と計 算機シミュレーションを併用することにより多面的な検討を行っています。 遂行する研究テーマ 1. ハイブリッドによる高性能化・高機能化 高耐衝撃性材料、新規異種物質間接着材料、高性能光学フィルム バイオマスプラスチック、熱可塑性エラストマー 2. 高性能化手段・プロセスの検討 エネルギー・環境関連材料のナノおよびマイクロスケール構造制御 3. 高分子高次構造解析と基礎物性 熱膨張機構、ガスバリア機構、接着機構、計算機シミュレーション ナノポリマーアロイの分散構造 (高機能膜等への応用) 結晶・非晶・薄膜の構造解析 ポリトリメチレンテレフタレート球晶の ガスバリア材料中の水素結合に 高複屈折性と干渉色 関する分子動力学シミュレーション Homepage:http://www.op.titech.ac.jp/lab/ougizawa/ E-mail :tougizawa@op.titech.ac.jp TEL:03-5734-2423, FAX:03-5734-2423 教員:教授 助教 - 34 - 無機酸化物微粒子のナノ微分散化 (屈折率や強度等の制御による高性能化) 扇澤 敏明 (Toshiaki Ougizawa) 久保山 敬一(Keiichi Kuboyama) 物質科学専攻 物質設計講座 浅井研究室 高性能高分子ハイブリッドを目指して 導電性,ナノカーボン,イオン伝導性,生分解性,超臨界 CO2 ,マイクロセルラープラスチック,制振・吸音 研究内容と目指すもの 導電性,イオン伝導性,生分解性など,様々な機能を有する高分子あるいは 高分子系複合材料を対象に,その構造と物性との関係,目的の物性を得るた めの材料設計,構造を制御するための方法などについて,幅広く研究を行っ ています.最近では,超臨界二酸化炭素を利用した,結晶性高分子,高分子 ブレンド,高分子複合系の高次構造形成や物性改善,マイクロセルラープラ スチックの作製について研究しています.また,ナノカーボン充填系導電性 高分子複合材料やイオン伝導性高分子について,新規な手法によりそれらの 電気的性質などの物性を制御することも試みています.さらに,高分子系の 制振材料や吸音材料についての研究も行っています. 遂行する研究テーマ 1.超臨界二酸化炭素を利用した高分子及び高分子複合材料の構造と物性の制御 2.超臨界二酸化炭素を利用した高分子の微細発泡(マイクロセルラープラスチック) 3.生分解性高分子の高次構造と物性の制御 4.ナノカーボン充填系導電性高分子複合材料の構造と電気的性質 5.イオン伝導性高分子の構造と電気的性質 6.外部電気回路接続した圧電性高分子の粘弾性特性と音響特性 7.板・膜振動型吸音材料の吸音機構の解明と設計指針の確立 100/0 PLLA/PMMA 80/20 50/50 5 µm 導電性マイクロセルラーコンポジット amorphous coldcrystallization CO2 treatment re-annealing after CO2 treatment PLLA および PLLA/PMMA フィルムの透明性 (非晶フィルム,熱処理フィルム,高圧CO2処理フィルム) Homepage : http://www.op.titech.ac.jp/lab/suato/index.html E-mail : asai.s.aa@m. titech.ac.jp TEL : 03-5734-2432, FAX : 03-5734-2431 - 35 - 板振動型吸音材料の吸音率と 振動変位の周波数依存性 教員:准教授 浅井 茂雄(Shigeo Asai) 助教 赤坂 修一(Shuichi Akasaka) 特別講座 科学技術振興機構 S-イノベ 研究 本講座は、独立行政法人科学技術振興機構の戦略的イノベーション創 出推進事業による助成を母体として実施中の「フォトニクスポリマーによる 先進情報通信技術の開発 」にかかわる基礎及び応用科学を行うために 2009 年 10 月にスタートしました。 高度コミュニケーション社会を実現し安心安全でエネルギー消費の少な い低炭素社会を実現するためには、現存の情報通信技術の限界を越えた 革新的な情報通信技術、とりわけ革新的フォトニック通信技術の開発が不 可欠です。本研究開発テーマではフォトニック通信技術を革新することによ り高度コミュニケーション社会の基盤技術を確立します。開発の要点は 様々な特性を自在に操作できるポリマーフォトニクス材料をベースに光技 術を展開することです。開発した技術を10年後には実用技術や産業技術 として確立することを目指します。対象としては、超高速大容量フォトニック通信から高度のセキュリティを 保証する量子通信にわたる諸技術を扱い、具体的には、光子発生を含む光発生、光変調、光伝送、光信 号処理、光メモリ、ディスプレイ等がその対象となります。 本講座は、これら諸技術の開発(5テーマ)の一翼を担うもので、適切な分子設計で、ポリマー分子を規 則的に配列させたナノ構造体を作成し、新規デバイス技術の開発を行っています。特に、液晶、コロイドな どの自発的なナノ高次構造形成能力を用いて、様々な光機能を有する光学フィルムを、メルト圧延法、溶 液塗布、インクジェット法などの単純プロセッシングにより、大面積で、歩留まり高く実現することを目指し ます。具体的には、偏光制御素子や回折格子等の光学素子、大面積の面発光レーザー、ファイバーシス テムに組込み容易なポリマーフォトニック結晶、光導波路など次世代の光通信に必要な要素光学部材の 開発を行うとともに、レーザー発振型液晶ディスプレイを一つの最終製品として目指しています。 開発技術のアプリケーション例:液晶レーザーLCD 【高性能液晶ディスプレイ用フィルム】 ①高性能拡散フィルム ②ワイヤーグリッド偏光フィルム ③液晶レーザーフィルム ④高熱伝導フィルム 微粒子のサイズ、屈折率、分散制御により散乱を制御 金属ナノ細線構造の活用(非吸収型)で低損失 液晶構造制御と高性能色素の組合せでレーザー発振 カーボンナノチューブを液晶場中で配向制御 液晶レーザーLCDの構成 ①高性能拡散 フィルム ②ワイヤーグリッド 偏光フィルム ③液晶レーザー フィルム 液晶パネル(カラーフィルター、画素分割不要) 赤 緑 青 赤 緑 青 赤 緑 青 広帯域λ/4 フィルム 励起用光源 (近紫外LED、OLED) ④高熱伝導 フィルム ・パネル構成が簡単で超高精細化が可能 ・色再現性、視野角特性、エネルギー効率が良い 講座構成: 戸木田雅利 専任准教授、小西玄一 専任准教授 姜聲敏 専任助教、坂尻浩一 特任准教授 連絡先: mtokita@polymer.titech.ac.jp (本館 269 号室) - 36 - 10 nm Cell Culture Beads 200 nm Carbon Alloy Catalysts Branched Polymers Organic & Polymeric Materials Electronic Materials Self-Assembled Materials 20 μm 300 nm
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