- 東芝ソリューション株式会社

< 企業統合におけるシステム統合 >
~業務プロセスに基づくシステム統合戦略の重要性~
ソリューション第三事業部 システム品質統括部長 貫井 春美
企業の合併 ・ 統合, すなわち “ 企業統合” は, 新たな収益源の確保や技術 ・ リソースの相互補完, 業界の成熟化を解消し
設備の合理化やスケールメリットの追求のために行われ, 日本でも 2000 年を境に増加傾向にあります。
企業統合における情報システムの統合 ( システム統合) は重要な検討項目の一つです。 現実に, システム統合を単純な複数
システムの接続と捉えたために, 大規模なトラブルが発生する事件が起き, 企業統合およびシステム統合のあり方の問題を顕在
化させました。
本稿では, “システム統合は新会社 ・ 新組織の IT 戦略そのものである” という考えから, 業務の視点を中心に, 企業統合に
おける IT 戦略 ・ システム統合戦略の考え方を述べ, 当社の取り組みを紹介します。
1. システム統合のあり方の重要性
企業統合という言葉に馴染みのない方も M&A という言
葉を耳にしたり活字を目にする機会が多くなったと思いま
開発方針, サービス提供の方法をはじめ, 従業員の人
材育成 ・ 人材評価方法の見直しを行うことなり, 新しい組
織の業務プロセスの変更が発生します。 業務プロセスの
す。 M&A とは, 企業の合併及び買収を総称したもので,
新規事業への参入, 企業グループの再編, 業務提携,
経営が不振な企業の救済などを目的として実施され, 広義
再定義を行うことにより, CRM,HRM,ERP などの情
報システムの方向性を明確にします。
(2) 変化に対応しやすい IT アーキテクチャ構造
には包括的な業務提携や OEM 提携なども含まれます。
日本でも産業構造の成熟化やデフレ経済の長期化に
伴って業界再編が進み, 企業の合併や統合も増加傾向
にありました。 代表的なものが大手都市銀行を中心とした
アプリケーション, データ, インフラストラクチャを定義
する際のポイントは, アーキテクチャ全体を戦略の変化に
対応しやすい構造とすること, (1) で定義した業務プロセ
スに適合した構造にすることです。 そのためには, アプリ
ケーションやデータが適切な単位で部品化されていること
が重要であり, システム全体でのデータ重複やコード体系
の不整合がないことが条件となります。
(3) 的確な IT マネジメントの仕組み
金融グループの再編です。 そうしたなか,2002 年に再編
後の某銀行での情報システムの大規模なトラブルが相次い
で発生し, 企業統合における情報システム戦略のあり方,
すなわち “システム統合のあり方” が問題となりました。
現在, 企業経営において情報システムがきわめて重要
IT 戦略を推進するために, 組織, 標準, プロセスを
定義します。 特に重要な点は組織です。 組織は IT 戦略
投資の実行部隊と運用 ・ 保守部隊が分離されている必要
な位置づけにあることは間違いありません。 また,IT の進
化により複雑,広範囲な 「CRM」,「e コマース」,「SCM」,
があり, 組織のスキルは IT 戦略に沿って育成されている
必要があります。
「ERP」 などが実現可能になってきました。 すなわち, 情
報システム, ひいては, IT に対する戦略の成否が企業
の競争優位性を決定づけるといっても過言ではありませ
ん。
企業統合の際の “システム統合の戦略” も,
新会社 ・ 新組織の競争優位性を生かすためにき
わめて重要な要素となります。 システム統合を二
つの既存システムの単なる合体作業と捉えるので
IT 戦略
指標
戦略の方向性
目的
はなく, 新会社または新組織の IT 戦略そのも
のであると捉えるべきです。
アプリケーション データ
ITアーキテクチャ
2. IT 戦略とシステム統合戦略
インフラストラクチャ
一般に企業の IT 戦略を策定する際には, 以
下の三つの視点が重要です。
(1) 明確な戦略の方向性
IT 戦略の目的, ビジョンを明確にします。
経営ビジョンとリンクした IT 戦略であること,
達成すべき目標は経営指標とリンクしていること
が重要です。 新しい経営ビジョンは営業方針,
2
ビジョン
標準
プロセス
ITマネージメント
組織
システム統合戦略
・システム統合の目的の明確化
・統合したシステムの全体像
・IT戦略との整合性
・システムアーキテクチャの拡張性
・データの整合性と移行手順
・アプリケーションの整合性
・要素の整合性
・組織の全体像
・開発標準とプロセスの策定
・システム移行
図1.IT戦略とシステム統合戦略
企業はIT戦略を策定する場合,三つの視点から必要項目の定義をします。
「東芝ソリューション テクニカルニュース」2006年(秋季号)
統合会社・
B/S
新・財務指標
経営指標
新・
会
業務プロセス
計
販
売
・
・
・
P/L
購
買
人
事
給
与
・
・
・
給与システム
・
・
・
新・
情報システム
会計システム
販売システム
アプリケーション
購買システム
人事システム
データ
システム構築
変更/構成管理
保守・運用
セキュリティ
網羅性
正確性
有効性
職務権限
職務分掌
データベース
インフラストラクチャ
OS
ネットワーク
ハードウェア
図 2. 業務プロセスと情報システム
経営指標,業務プロセスの実現は,情報システムによって支えられています。
また, 設計 ・ 開発の方法論を標準化し, 明確なプロセ
スを構築することで, 的確に運営 ・ 管理していく仕組み作
りが重要です。
システム統合も新会社または新組織の IT 戦略そのものと
考えると, 上記の三つの視点からシステム統合における課
題を識別し, それぞれ定義を明確にしなければなりません。
様の課題に直面するケースが少なくありません。 すなわ
ち, システム統合への潜在的ニーズは, 多くの企業が抱
えているといえます。
東芝グループも例外でなく,2001 年頃から戦略的な組
織再編の歴史を刻んできました。 このなかで, 当社は企
業統合 ・ システム統合の当事者として, また, システム
統合の一ベンダとして東芝グループ再編の一翼を担って
きました。
図 1 に, 上述した IT 戦略とシステム統合戦略を整理しま
す。 また,IT 戦略, システム統合戦略でキーとなる経営
指標 ・ プロセス ・ 情報システム (IT) の関係を図 2 にまとめ
ます。
当社では CRM (コールセンター,顧客データベース),
人事 ・ 給与, 人財育成, 電子調達などの業務ノウハウを
IT でパッケージングした業務ソリューションを種々有してい
ます。 これらソリューションは, 図 3 に示すように, お客
様の課題を抽出, 整理し, 解決策を提案する導入コンサ
ルテーションからシステム構築, 運用, 保守に至るシステ
ムのライフサイクル全般でお客様にサービスを提供してい
ます。
当社は, 企業統合はもとより, それに限らず東芝およ
び東芝グループでの実績 ・ 経験によって蓄積したノウハウ
に基づいて, お客様の IT 戦略立案, システム構築・運用 ・
保守を継続し, 更に進化させていきます。
3. 当社の取り組み
業界再編の波はあらゆる業種に拡大しており, 今後も
企業統合は続くと考えられます。 また, 企業統合には至
らないまでも, 業種や業態の垣根を越えた戦略的な業務
提携に伴うシステム連携や, グループ企業や取引先をよ
り密に連携させるといったアプリケーションの構築というシ
ステム案件は確実に増加していきます。
当社がお客様にソリューションの提供やお客様のシステ
ム構築のお手伝いをするにあたっても, システム統合と同
業務パッケージソリューション
企業経営課題
コンサルティング
拝聴
部門課題
ご確認
ご提案
・ ベストプラクティスの
ご紹介
・ Fit & Gap 分析
ソリューション
・ HRM (人事, 給与, 教育)
・ CRM (コールセンター,
東芝
システム運用
・ ヘルプデスク
東芝
グループ
フィールドサービス, 顧客 DB)
・ ERP (会計, 販売)
・ 調達
ご提供
当社の
改革事例
業 務 改 革
ご確認
効 果 測 定
図3.当社のソリューションビジネスモデル
当社のビジネスモデルは,お客様の経営課題を拝聴し,当社のノウハウを活かして,コンサルティング,ソリューション,システム
運用を総合した提案を行うことにより,業務改革の実行,効果測定を可能にします。
「東芝ソリューション テクニカルニュース」2006年(秋季号)
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