雇用者による差別禁止と輸出規制法に関する 米国司法省のガイドライン

INTERNATIONAL TRADE LAW
May 2016
雇用者による差別禁止と輸出規制法に関する
米国司法省のガイドライン
3 月 31 日、米国司法省は、雇用上の差別禁止義務と輸出規制法
上の「みなし輸出」に関する遵守義務を調整するためのガイドラ
インを公表した。ITAR(International Traffic and Arms Regulations、
武器国際取引に関する規則)及び EAR(Export Administration
Regulations、輸出管理規則)は、外国人への特定の技術情報の開
示を輸出とみなし、輸出ライセンスの取得を義務付ける場合があ
る。この「みなし輸出」に関するライセンス取得は、H-1B ビザ
等の就労資格で就労する外国人を雇用する企業、特に防衛やハイ
テクに携わる米国企業にとって問題となっている。
概要
雇用者による差別禁止と輸出規制法上
の「みなし輸出」の遵守に関し、米国司
法省がガイドラインを発行した。
ITAR 及び EAR は、外国人に特定の情報
を開示するためにライセンスの取得を
義務付けているが、これは外国人の求人
又は雇用を制限するものではない。
今回米国司法省の公表したガイドラインでは、ITAR 及び EAR
は外国人による特定の技術情報へのアクセスに輸出ライセンス
ITAR 及び EAR のライセンス取得に関す
を義務付けるものの、外国人の求人及び雇用を制限するものでは
る手続と就労資格確認手続は明確に区
ないことを明らかにしている。また、いかなるポジションに対す
別して行う必要がある。
る求人においても、求職者に対して米国籍の有無や滞在資格につ
いて質問しないよう求めている。その一方で、ITAR 及び EAR
が対象とする情報を取り扱うポジションに雇用する場合には、滞
在資格を確認することを認めている。ただし、その場合は同ポジ
ションへの応募者全員に対して滞在資格を確認し、ITAR 及び
EAR の遵守のみを目的に確認していることを明確にしなければ
ならない。更に、ガイドラインには、人材派遣業者は個人の滞在資格によって ITAR 又は EAR が対象とする情報
を取り扱う職への斡旋を制限してはならないことも定められている。
また、ガイドラインには、ITAR 又は EAR に基づいてライセンス取得の必要性を判断するために行う手続は、就
労資格確認の手続とは明確に区別して行うよう注意喚起がなされている。
法令に抵触しないためには、ITAR 又は EAR が対象とする情報を取り扱うポジションを雇用する際に、採用オフ
ァーを行うまでは求職者に対し国籍や滞在資格について問い合わせないという取扱を検討されたい。また、ITAR
及び EAR に基づく輸出ライセンスの要否の判断のみのために国籍及び滞在資格に関して問い合わせている旨、書
面により従業員に通知することも良策だろう。本ガイドラインについては、輸出管理ポリシー及び輸出管理に関
する手続と併せ、雇用法弁護士と共に話し合うことが推奨される。
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