欧州のパッケージ旅行における旅行者に対する 旅行業者の

欧州のパッケージ旅行における旅行者に対する
旅行業者の責任
廣 岡 裕 一
Ⅰ.はじめに
Ⅲ.英国におけるパッケージ旅行にかかる法制
Ⅱ.欧州(英・独)における旅行業の状況
1.ツアーオペレータとパッケージ旅行
1.欧州(英・独)における旅行業の区分
2.ツアーオペレータと旅行者
2.ツアーオペレータとトラベルエージェント
Ⅳ.ドイツにおけるパッケージ旅行にかかる法制
3.欧州(英・独)のパッケージ旅行
Ⅴ.まとめ
4.欧州(英・独)の旅行業の特徴
Ⅰ.はじめに
めたい。
なお、本論文で、英国及びドイツを取り上げるのは、
本論文では、英国を中心にドイツを含めた欧州のパッ
これらの国ではパッケージ旅行が外国旅行の市場で優位
を占めていると説明されているためである3)。
ケージ旅行における旅行業者の旅行者に対する責任につ
いて、当該国における旅行業の状況との関係を考慮に入
Ⅱ.欧州(英・独)における旅行業の状況
れながら論じる。
目的は、欧州におけるパッケージ旅行を考察すること
1.欧州(英・独)における旅行業の区分
により、欧州におけるパッケージ旅行の志向とその特性
本章では、英国を中心にドイツを含めて欧州における
を明らかにし、その下で、パッケージ旅行に関する法制
旅行業の状況を検証する。
度を検証することを通じて、日本の旅行・旅行業に関す
日本での旅行業は、流通チャネルでの位置づけから、
る企業戦略、法政策に寄与できる要素、あるいは、日本
の実情に適応させうる可能性のある要素を見出すことに
ホールセーラーとリテーラに大別されているが、日本の
ある。
大手旅行会社は、ホールセーラーの役割とリテーラの役
割をあわせて持つことが多い4)。しかし、欧州(英・独)
従来、日本においては、欧州の旅行産業について論じ
では、ホールセーラーとリテーラの役割がはっきりして
られることは少なく、報告書などの形ではいくらかは出
1)
版されているが 、学術書として公刊されているのは、
いる5)。欧州では、日本で、ホールセーラーと呼ばれる
おそらく玉村和彦『パッケージ観光論』(同文舘出版、
業種はツアーオペレータと呼ばれ、リテーラと呼ばれる
2003)くらいであると思われる。一方、日本における旅
業種はトラベルエージェントと呼ばれる。ローズはリテ
行業者の旅行者との契約による旅行業者の責任に関する
ーラを、個々の顧客に彼ら自身旅行をアレンジすること
判例は少ないながらも存在し、その評釈もされている。
で宿泊、旅行保険のような関連サービスを含めて旅行の
また、先行研究として欧州のパッケージ旅行にかかる法
全てを売る伝統的なトラベルエージェントと、どのパッ
2)
制や判例も紹介されている 。しかしながら、欧州のパ
ケージ旅行を選ぶかは顧客に任せ、ツアーオペレータに
ッケージ旅行にかかる法制の研究においては私法的見地
よりすでにパッケージされた旅行のカタログセールス外
からの論評にとどまることが多く、また、旅行産業研究
販店として活動するホリデーショップとを対称的に区別
からは法制に触れられることはあまりない。したがって、
している6)が、本論文では、欧州の「旅行業」の区別に
本論文では、欧州の旅行産業の現状を見据えた上で、そ
ついてはツアーオペレータ(日本でホールセーラーと呼
の中で法制がどのように演じられているかの視点を持
ばれる業種)とトラベルエージェント(日本でリテーラ
ち、日本に応用できる可能性を探索することに意義を求
と呼ばれる業種)と記すこととする。
−97−
政策科学 12 − 1,Sept. 2004
2.ツアーオペレータとトラベルエージェント
1993 年に国際化の一貫として TUI のパートナーとなっ
た 14)。
ツアーオペレータは TUI やトムソンのような大手のツ
アーオペレータと小さなスペシャリスト的なツアーオペ
また、伝統あるトーマスクックグループは、1992 年
レータに分けられる。大手は、たいてい大きな企業集団
にドイツの西ドイツランデス銀行(WestLB)と LTU グ
の一部である。これに対して、中小は、個人や家族経営
ループに買収され、1996 年サンワールドなどのツアー
で、「趣味」や副業として経営されることもある。大手
オペレータを買収した。1999 年には、複数のブランド
は、自らの主たる事業に利益の最大化を図ろうとするの
を取り込んだ JMC(John Mason Cook)というブランド
に対して、中小は、利益については重視をしていない向
を創造し、英国第3の旅行・航空企業集団となった。そ
きもある。また、航空会社など他の観光産業機関の副次
して、他の欧州のレジャーグループとして初めてフラン
7)
的活動であるツアーオペレータもある 。
スのアバボヤージュ(Havas Voyages)を買収したドイ
伝統的にはツアーオペレータは、その製品をトラベル
ツの C&N ツーリスティック(C&N Touristic AG)が、
エージェントを通じて流通させる。しかし、手数料を節
2001 年、トーマスクックの単独の所有者となった。な
約するために顧客に直接販売するオペレータも増えてい
お、同 2001 年、C&N ツーリスティックは、社名をトー
8)
マスクック AG(Thomas Cook AG)に変更した 15)。
る 。
ツアーオペレータは成長戦略として、垂直・水平統合、
一方、リテールトラベル、すなわちトラベルエージェ
言葉を替えれば、一方でサプライヤーや中間媒介者、他
ント部門は、ツアーオペレータ、ホテル、航空会社、運
方で競争者の所有権の取得をする。英国のリーディング
送機関などの生産者と顧客との間の中間者である 16)、と
ツアーオペレータであるトムソンは、自ら所有する航空
説明される。なお、ここでみるように、ツアーオペレー
会社、ブリタニアやトラベルエージェントチェーンのラ
タが生産者側に位置づけてられて説明されている例があ
ンポリを展開する。また、よく知られた既存のブランド
ることは、注目しておく必要がある。
を買収する。トムソンの例では、英国内の自炊別荘のリ
トラベルエージェントは、所有と規模から次の 4 つの
ーディングブランドを買収した。その他、他国に進出す
タイプにみることができる。
9)
る例も考えられる 。なお、現在、トムソンは、TUI 英
第一に、多くの支店チェーンをもつ観光産業以外の企
国に含まれる。TUI 英国は TUI ノーザンヨーロッパに含
業集団の一部であるトラベルエージェント、第二に、多
まれ、TUI ノーザンヨーロッパは、ドイツの最大の観光
くの支店チェーンをもつ観光産業の企業集団の一部であ
企業集団である TUI AG の傘下にある。したがって、従
るトラベルエージェントがある。これらは、数カ国に支
来、トムソンのグループにあったブリタニアやランポリ
店をもつ。この意味では国際企業である。その例として
も TUI 英国の傘下にある。TUI AG が、トムソングルー
は、トーマスクックやクレジットカードグループのアメ
プを獲得したのは 2000 年である。TUI(Touistik Union
リカンエクスプレスがある。
International)は、1968 年にドイツの主要なツアーオペ
次に、数軒程度の支店をもつ個人経営のトラベルエー
レータが合併してできたもので、つづいていくつかの大
ジェント、そして、支店をもたない個人経営のトラベル
きなツアーオペレータを加えていき、ヨーロッパに広く
エージェントである。これらは、レジャーに特化するも
10)
展開していった 。その後、プロイザック(Preussag)
のとビジネストラベルに集中するものとに区別される 17)。
に買収されたが、2002 年には、その名前を TUI AG に改
伝統的なトラベルエージェントは、ツアーオペレータ
11)
めた 。TUI AG グループには、ツアーオペレータやト
を含めて全ての範囲の供給者からホテル、交通、保険や
ラベルエージェントなどの流通システムの他、航空会社、
多くの他のサービスを手配することができるようにして
ホテル、旅行先での対応会社、ビジネストラベル会社な
旅行の全てのサービス及び旅行商品を供給した 18)。この
どが含まれる 12)。その中でホテルは、ヨーロッパ、アフ
伝統的な旅行の流通チャネルは、自らの利益を最大化し
リカ、カリブ海周辺の 29 カ国・地域に 13 のホテル会社
ようとする小さな独立した小売店である 19)。一方、典型
で約 290 ホテルを展開している 13)。このうち、100 近く
的な新しい形のトラベルリテーラは供給者のパンフレッ
のホテルを有するリウ(Riu)ホテルズは、1953 年にマ
トや予約システムを使ってパッケージ旅行を売ることに
ヨルカ島で小さな家族経営のホテルとしてはじめられ、
特化した店舗である 20)。しかしながら、先に見たように
−98−
欧州のパッケージ旅行における旅行者に対する旅行業者の責任(廣岡)
最近 20 年間で、旅行のリテールは交渉力や所有の集中
いかに価格を変更するか、どのリゾートや目的地を販売
の影響を受けてきた。垂直、水平統合は旅行のリテール
促進するかという決定をなすに強い立場にある 22)。なお、
において大手のツアーオペレータの商品を効果的に売る
英国におけるトラベルエージェントを取り巻く環境とそ
という合理化を引き起こした。多くは限られた範囲のツ
の旅行販売の形態の変遷は、表1を参照されたい。
欧州では、トラベルエージェントはツアーオペレータ
アーオペレータのパンフレットしか置かない。それは、
大手の企業集団に所有され競争他社の商品は売りたがら
に所有されて成長する傾向にある。トムソンと TUI やト
ないことや特定のツアーオペレータとの間で専売契約が
ーマスクックの例のように国境を越えて展開することも
あったり、あるいは販売権が与えられていなかったりす
ある。しかし、顧客にとって最良の選択であるかどうか
21)
るからである 。統合したツアーオペレータとトラベル
を問わず親会社の商品を提供しがちであるという批判は
エージェントはよくできた指揮系統と常に変わる市場状
ある。この状況は、特に英国では典型的で、3大トラベ
況についてすばやい情報提供方法をもつ。そして、いつ、
ルエージェントが3大ツアーオペレータの所有もしくは
表1 英国におけるトラベルエージェントの変遷
時代
1950 年代
取り巻く環境
限られた休暇旅行や他の旅行への需要
旅行販売の形態
主要都市やビジネスセンターにおけるフルサービス型
スペシャリスト
限られた競争
都市の戦争からの復興
1960 年代
レジャー旅行の需要の発展に伴う都市中心部の旅行販 小さなバス会社や新しいエージェントを通じたバス旅
売店の漸増
行や他の国内旅行
1970 年代
休暇旅行の需要の急速な拡大
1980 年代
郊外型ショッピングモールや大規模タウンセンターの パッケージ旅行に初めてコンピュータ予約システムが
発展
導入
繁華街での閉店、一時テナント借用
大型トラベルエージェントチェーンによる小さな「よ
ろず」エージェントの買収、所有の合併、独立への圧迫
専門旅行店の発展とフルサービス型トラベルエージェ
ントの衰退
1990 年代
旅行小売業者に対する財政的圧迫の増加、買収や合併 商品の厳選化
の進行
テクノロジーの発展により自宅から顧客自身によるパ
ッケージ旅行の予約が可能になる
成功している旅行小売業者の店舗の拡大─繁華街にお
ける旅行小売業者の急増
出典: Eric Laws “Managing Packaged Tourism” p.122
より筆者訳
出発国:英国
出発国:ドイツ
フランス
17.5%
フランス
22.9%
イタリア
14.4%
その他計
43.2%
その他計
42.3%
スペイン
22.7%
米国
5.9%
スペイン
12.4%
アイルランド
6.2%
オーストリア
12.6%
図1 英独の外国旅行目的地国
※ 2002 年の数値。出典「WTO(世界観光機関)資料」『世界観光統計資料集(2004 年版)』(アジア太平洋観光交流セ
ンター、2004)25-29、88-92 頁より作成。受入国ベースのインバウンド統計を基に、逆集計したものであるため、合
計は目的地各国に来訪した出発地国の旅行者数を合計したものとなる。
−99−
政策科学 12 − 1,Sept. 2004
提携者である 23)。
やアドリア海であった。だが、その後の、航空チャータ
それと同時に、当然ながら、ツアーオペレータは、宿
ーパッケージの発展が地中海へのバス旅行に大きな減少
泊機関には、出資しているなど緊密な関係を持っている
を引き起こした 29)。航空機による旅行はスペインが多く、
ときは、特にマーケティングや発展戦略に大きくコント
チャーター航空機を利用したパッケージ旅行の半数以上
24)
ロールを及ぼしている 。
は海浜リゾートであった 30)。
3.欧州(英・独)のパッケージ旅行
4.欧州(英・独)の旅行業の特徴
英国では、地中海での1∼2週間のホリデーは大多数
以上の考察を踏まえて欧州(英・独)における旅行業
25)
のイギリス人にとっての慣習であった 。現在、英国を
の特徴をまとめてみる。
出発国とする旅行者数の最も多い目的国はフランス、2
第一に、現在はツアーオペレータとトラベルエージェ
番目はスペインである。また、ドイツにおいても、旅行
ントとは、同一の旅行・観光企業集団にあるが、そもそ
者数の最も多い旅行目的国はフランスで、2番目はイタ
も別の業種であり、ツアーオペレータはサプライヤー側
26)
リア、スペインが4番目であるため(図1参照) 、英
と認識されていると思える。旅行あっ旋業からはじまり
国と似て地中海への志向があるものと考えることができ
その発展過程でホールセール業を展開した日本で、いず
よう。また、旅行の傾向は国によって違いがあるものの、
れも合わせて旅行業と括られていることと相違が感じら
国内旅行においての目的地は、いずれの欧州諸国でも、
れる。
27)
海浜地域が強く好まれる傾向にある 。
次に、パッケージ旅行は、系列航空会社のチャーター
英国においては、1950 年代には定期便の飛ばない地
機を利用すること、地中海のリゾート地を中心に展開す
中海のリゾートにチャーター便で、3S(太陽[Sun]、
ることで、規格化された旅行を大量生産し規模の経済を
砂浜[Sand]、海[Sea])を求めるパッケージ旅行客を
追及した。英国旅行業協会の資料によれば、2002 年9
送り込んでいた。チャーター機の高い稼働率とピストン
月に実施されたインタビューでは過去 12 ヶ月以内にパ
運送、のちにジェット機の導入と高層ホテルにより多く
ッケージ旅行に参加した回答者の 71 %が「サマー・サ
28)
ン/ビーチ」タイプの参加であると回答している 31)(図
の同類のツアーが促進された 。
一方、1950 年代半ばのドイツにおいてはバス旅行の
2参照)。玉村は、定期航空便を利用することで多様な
割合が高く、1950 年代、1960 年代のバス休暇旅行の目
パッケージ旅行がある一方、旅行先での時間の使い方、
的地は、スペインのコスタブラバ、イタリアのリビエラ
旅行の特徴、実態行動パターンないしは内容という「観
質問:過去12ヶ月以内に次のパッケージ旅行の形態ではどれに参加しましたか。
夏,太陽・ビーチを求めて
Summer sun/beach
71%
冬,太陽・ビーチを求めて
Winter sun/beach
15%
スポーツ活動(例:マリンスポーツ,
サイクリング,スキー等)
Activity (i.e. water sports, cycling, skiing etc)
8%
探訪(例:新しいところ,珍しいところ,第三世界)
Discovery (i.e. new/unusual/third world destination)
7%
クルーズ
Cruising
6%
0
10 20 30 40 50 60 70 80
図2 参加したパッケージ旅行の形態(英国)
出典: ABTA, ABTA TRAVEL STATISTICS AND TRENDS, 2003, P.25.より筆者訳
http://www.abtamembers.org/research/abtastatstrends2003.pdf(2004 年6月 14 日)より。
2002 年9月 10 ∼ 25 日の間で、過去 12 ヶ月以内にパッケージ旅行に参加した英国各地の 16 歳以上の者を対象に、自宅
で対面方式により、リサーチ会社であるモリ(MORI)が実施したもの。
−100−
欧州のパッケージ旅行における旅行者に対する旅行業者の責任(廣岡)
光」がよく似た日本のパッケージ旅行を「同類観光異種
空券または他の航空証券を発行する場合は除かれる 37)。
ツアー」とするのに対して、英国のパッケージ旅行を同
ATOL を得ようとする者は、財政的安全性において
類ないし標準化された大量に生産された商品であるもの
CAA の基準を満たし、破産の際に消費者を保護するボ
の、旅行者は目的地に着くと団体行動から完全に自由に
ンド(Bond)に入らなければならない。ATOL で補償さ
32)
なる「異種観光同類ツアー」と論じている 。そして、
れるパッケージ旅行は、
「ライセンサブル(Licensable)」
その同類ツアーは、旅行・観光企業集団をより巨大化さ
として知られる。後述するパッケージ旅行規則の下では、
せることで、より競争力を高め、大規模な企業集団であ
ATOL を持つ会社は、航空旅行部分を含む旅行で破産の
れば、自らの企業集団の中で、パッケージ旅行の流通と
際の消費者の保護に関して以下に示すパッケージ旅行規
旅行サービスの提供を完結させることが可能となってき
則上の要求を満たしているとされる。ATOL システムは、
ている。また、ドイツにおいても、1990 年代の初頭に
成功しているといえるので、(航空旅行にかぎらず)す
おいては、英国のような垂直統合は、一般的でないとさ
べてのツアーオペレータに対しての資格付けのモデルと
れていたが 33)、先に2節で、TUI AG やトーマスクック
して財政的破産の際の消費者保護の方法として議論され
AGの例をみたように、大きな企業集団となってきている。
たが、政府に拒否された 38)。
一方、英国においてパッケージ旅行に関する規制は、
最後に、競争力を高めるための拡張された企業集団は、
さらに強力な資本により買収され、その企業集団は、国
パッケージ旅行規則(The Package Travel, Package
境を越えて展開していった。だが、買収した企業は、
Holidays and Package Tours Regulations [SI 1992/3288])
TUI やトーマスクックのように買収された企業のブラン
〔以下「パッケージ旅行規則」という〕がある。
1990年EC委員会でパッケージ旅行指令(The Package
ド力のある名を用い、社名を変えた。
Travel, Package Holidays and Package Tours Directive
Ⅲ.英国におけるパッケージ旅行にかかる法制
[90/314/EEC])〔以下「パッケージ旅行指令」という〕が
制定され、EC諸国は 1992 年 12 月 31 日までにこれを履
1.ツアーオペレータとパッケージ旅行
行しなければならないとされた。その結果、英国議会は、
ツアーオペレータとは、パッケージ旅行のそれぞれの
パッケージ旅行規則を 1992 年 12 月末に通過させ、ほと
構成要素を大量に購入または予約し、それぞれの構成要
んどの指令の意図が1992年12月23日から効力を持った 39)。
素を包括(パッケージ)旅行になるよう結合させる業者
なお、ヨーロッパ法の法源は、指令(Directives)と規則
34)
である 。つまり、旅行サービス素材を組み合わせ、パ
ッケージ旅行を商品化する者である。
(Regulations :この規則は上記の英国の規則ではない)
とがあるが、英国では一般的に指令の場合、議会が法令
英国では日本の旅行業法のように、旅行業についての
特別な立法は設けられておらず、旅行業や旅行の販売に
または委任立法により効力を与えなければ直接的には適
用されない 40)。
ついての条件が体系的に定められているわけではない 35)。
ただし、CAA(Civil Aviation Authority)が民間航空の
そこでの、パッケージ旅行の定義であるが、パッケー
ジ旅行指令第2条1項では次のようになっている。
経済的、安全的規定を担当し、旅行法に関しては、
「1.「パッケージ」とは、取引のため販売または提供さ
ATOL(an Air Travel Organiser’s Licence)システムが運
れるとき包括料金で、そのサービスは 24 時間を超えまた
36)
営され、CAA により管理されている 。
は宿泊を含む事前手配された以下の少なくとも2以上の
ATOL システムでは、航空旅行を販売しようとする者
結合物をいう。
は、CAA により ATOL を授与されなければならない。た
a
運送
だし、ATOL 保持者の代理で、フライトや旅行を販売す
b
宿泊施設
ることを権限づけられたエージェントが、代理人である
c
運送や宿泊に付随しないパッケージの重要な部分
立場と支払時顧客に ATOL 領収書、ATOL 保持証明書を
をもつそれ以外の旅行者サービス
交付する場合や IATA(International Air Transport
同じパッケージのさまざまな構成要素を分けて計
Association)代理店が航空券販売者として正規定期航空
算することがこの指令の責務からオガナイザーや
券を販売する場合で、支払と引き換えに直ちに、定期航
リテーラを解除するものではない。」
−101−
政策科学 12 − 1,Sept. 2004
また、パッケージ旅行規則でも、第2条中で多少表現
は異なる
41)
ものの同様の定義をしているが、
予約を望んだ場合などは、パッケージを編制したことに
なる。さらにいえば、トラベルエージェントが、通常の
「結合物が顧客の要求や特別の指示(修正があるか否かを
パッケージ旅行を売った際に、加えて空港までの運送あ
問わず)による手配である事実が、それ自体は事前手配
るいは宿泊を手配した場合、そのエージェントは、通常
と扱われない理由とはならない。」
のパッケージ旅行のリテーラとしての限られた責任に加
という規定が加わっている。
えて全体をパッケージとしたオガナイザーとされること
一方、ツアーオペレータの定義であるが、上記の条文
も想像できる。それと同時に、通常のパッケージ旅行の
に示されているように、パッケージ指令やパッケージ規
ツアーオペレータもまた、通常のパッケージ旅行に対し
則では、ツアーオペレータと表現されずオガナイザーと
てオガナイザーとして責任があるとされる 42)。
なお、GERARD HONE v. GOING PLACES LEISURE
表現されている。
オガナイザーの定義は、パッケージ旅行指令第2条2
TRAVEL LIMITED の事例は、原告である旅行者がトラ
ベルエージェント・ゴーイングプレイスを被告として訴
項では、
「2.「オガナイザー」とは、反復継続してパッケージを
えたものである。この事実は以下のとおりである。
原告の同行する兄弟が、その後清算されたツアーオペ
編制し、直接またはリテーラを通じて取引のため販売ま
レータ・サンツアーズのトルコへの 14 泊の航空パッケ
たは提供する者をいう。」
としている。パッケージ旅行規則第2条中のこの定義も
ージ旅行をトラベルエージェントであるゴーイングプレ
表現の違いはあるものの同様である。
イスで予約した。その旅行の帰路に、原告が搭乗したス
同様に、前章でトラベルエージェントと示した業態は、
リテーラと定義される。
ウェーデンのチャーター航空会社と提携運航するトルコ
の航空会社の航空機が緊急着陸し、脱出シュートで脱出
パッケージ旅行指令第2条3項では、
する際に、脱出シュートの下で先に降りた大きな女性が
「3.「リテーラ」とは、オガナイザーによって組み立て
動かなかったために、原告はその女性に衝突した。そし
られたパッケージを取引のため販売または提供する者を
て、続いて脱出してきた原告の婚約者の靴が原告の背中
いう。」
に突き刺さり原告が負傷した。原告は、トラベルエージ
としている。パッケージ旅行規則第2条中の定義も同様
ェント・ゴーイングプレイスに、緊急時にシュートの上
である。
と下に訓練された人をつけず指示をしなかったなどとし
以上のように、パッケージ旅行指令、パッケージ旅行
て、パッケージ旅行規則 15 条(次節参照)の適切なサ
規則上は、流通チャネル上での位置の表現ではツアーオ
ービスを提供する固有の履行責任に反するとして請求を
ペレータといわれる業態はオガナイザーと、トラベルエ
求めたものである 43)。
ージェントといわれる業態はリテーラと表されることに
その高等法院の判決では、以下のような理由でゴーイ
なるが、認識の問題としてはそれらに大きな違いはない。
ングプレイスにオガナイザーとしての責任を認めている。
もっとも、パッケージ旅行指令、パッケージ旅行規則に
被告代理店は、よく知られた繁華街に店舗を構え
おいては、パッケージ旅行を取り扱う上で相対的に定義
るトラベルエージェントであり、ITV テレテキスト
をしたものであるため、当然ながら、業態的にはツアー
サービスの広告を通じて集客している。
オペレータと考えられないものも、反復継続してパッケ
原告はテレテキストの広告を見て、翌日、原告の
ージを編制し取引のため販売または提供をすればオガナ
兄弟が電話で予約した。空きを確認し、4名予約し
イザーと定義されることになる。
た。この際の会話では、サンツアーズについては触
この定義は、ほとんどのトラベルエージェントが、オ
れられなかった。電話を受けた者は、予約確認書は
ガナイザーとなってしまうかもしれない。もし、「注文
郵送しチケット類は空港で受取るようにと言った。
設計のパッケージ」が「事前手配」とされたら、ほとん
テレテキストのサンプルページには、「リテールエ
どのトラベルエージェントは、反復継続してパッケージ
ージェント、ATOL ホルダー」の語が含まれていた。
を組み立てているといえるだろう。
被告によれば、明確にツアーオペレータのエージェ
例えば、顧客が、特に指定をせずにフライトと宿泊の
−102−
ントをつとめ適切な資格保持者であると広告してい
欧州のパッケージ旅行における旅行者に対する旅行業者の責任(廣岡)
る。しかし現物は証拠として示されていない。旅行
ができなかった出来事
書類が到着した時、チケット類の引き換えになるバ
(3)パッケージに含まれるサービスの不履行または完全
ウ チ ャ ー に は 「 GOING PLACES DIRECT」 と
ではない履行による損害の場合において、契約で当該サ
「LATE ESCAPES」と大きく頭書きされていた。左
ービスが適用される国際協定に従う補償の限度を定める
上角のオペレータ「SUNTOURS」と印刷された横
ことができる。
に手書きで、代理人と書かれ、航空券の受取り場所
(4)パッケージに含まれるサービスの不履行または完全
は、サンツアーズのデスクとあった。裁判所は、も
ではない履行による人身傷害以外の損害の場合において、
し原告の、「SUNTOURS」の語をみてもそれに何の
契約で消費者に支払う補償の額を制限する制限が不合理で
意味を持たないということ、この旅行に関しては、
ない約定を含めることができる。
Going Place または Late Escapes が取り扱っている
【(5)∼(9)の各項略】」
という主張を認める 44)。
以上のように、英国のパッケージ旅行規則では、旅行
なお、本件は控訴されたが 45)、この点は控訴院では触
46)
れられていない 。
業者は、過失責任以上の厳格責任に近い責任の下にある
とされている。
この件に関して以下に英国におけるツアーオペレータ
2.ツアーオペレータと旅行者
の責任に関する判例をみてみる。
パッケージ旅行規則第2条で定義された、英国内
パッケージ旅行規則が成立する 1992 年までの契約の
(the territory of the United Kingdom)で販売または提供
不履行に対するツアーオペレータの責任はほとんどコモ
される、パッケージ旅行については、パッケージ旅行規
ンローの問題で、一般に過失によるものとされていた 49)。
則が適用される 47)。
1981年に判決のあったWALL v. SILVER WING SURFACE
そのパッケージ旅行規則第 15 条では、次のように旅
行業者
48)
の責任を定めている。
ARRANGEMENTS は、原告の旅行者が、英国航空系列
のツアーオペレータである被告の手配したカナリア諸島
「第 15 条(1)一方当事者は、その債務が、当該当事者ま
のテネリフェ島のホテルに宿泊したところ、火事に遭い、
たは他のサービスの供給者によって履行されるか否かに
非常口から脱出しようと試みたが鍵がかかっており開か
かかわらず、消費者に対して、契約の下、債務の固有の
なかったため、部屋からシーツを繋いでロープにして中
履行責任を負う。ただし、当該当事者が他のサービスの
庭に降りようとしたが途中で落ちて大怪我をした事例で
供給者に対するいかなる損害賠償権や訴訟の権利は妨げ
ある。原告は、合理的に安全にホテルを利用する黙示の
られない。
契約により被告に責任があるとするが、裁判所は、ツア
(2)契約の一方当事者は、契約の履行における債務不履
ーオペレータは通常ホテルを所有、支配、管理するので
行または完全ではない履行による消費者へのいかなる損
はなく、全ての部分においての過失に責任を負うという
害について、債務不履行または完全ではない履行が、次
ことは考えられない、として、訴えを斥けた 50)。
また、1991年に判決のあったWILSON v. BEST TRAVEL
に掲げる当該当事者または他のサービスの供給者の過失
でない場合以外は、消費者に対して、責任を負う。
Ltd の事例は、原告である旅行者が、1986 年被告である
a
ツアーオペレータで予約されたギリシャのホテルに宿泊
当該過失が契約の履行において消費者に起因して発
生した場合
していたが、つまずいて中庭のガラスにぶつかり怪我を
b
したもので、そのガラスはギリシャの安全基準には適合
過失がサービス契約条項と無関係の第三者に起因し、
予見可能性、回避可能性がない場合
していたものの英国の安全基準には適合していなかった
c
ため、原告は、被告を商品サービス提供法 13 条に基づ
過失が以下による場合
(¡)いかなる注意を尽したとしても結果の発生を避
き訴えたものである 51)。被告のパンフレットでは、ツア
けることができなかったと認められる当事者の想
ーオペレータは、旅行の全ての部分について日々管理し
定する管理外の通常起こりえない予見不可能な環境
ているわけでないので、その環境(amenity)について
(™)契約の一方当事者またはサービスの供給者がい
はさまざまな事情で引き上げられたり変更されたりする
かなる注意を尽したとしても予見または防ぐこと
ことがあるとした上で、その責は負えないとしているが、
−103−
政策科学 12 − 1,Sept. 2004
被告はホテルを検査して提供しているということが含ま
が被った損失の責任を負う、とするパッケージ旅行規則
れていると読み取れる。したがって、パンフレットに当
4条などに基づいた損害賠償請求を認めたものである。
該宿泊機関を含める時、旅行者が合理的に安全な旅行を
原告の宿泊するトルコのホテルのレストランは、パンフ
すごせないものではないとしたことに、合理的な注意を
レットでは、リフトで行けるとなっていたが、実はそう
尽したかということになる。判決は、英国の安全基準に
ではなかった。原告夫妻は乳児と幼児を手押し車に乗せ
適合していなかったとしても、被告が、ガラスの危険の
てそのホテルのレストランへの階段を下りたが、滑って
程度が旅行の価値を低下させるほどでないなら、ギリシ
落ちた。判決では、誤った表示と事故との間に十分に因
ャの基準に適合しているかを確認することで、注意義務
果関係があるとして被告の責任を認めた 57)。
を果たしたことになるとして斥けた 52)。
また、BENSUSAN v. AIRTOURS HOLIDAYS LTD の事
一方、WONG MEE WAN v. KWAN KIN TRAVEL SERVICE
例は、旅行者である原告が、ツアーオペレータである被
は、1995 年に判決があった事例である。ただし、香港
告を、パッケージ旅行規則 15 条の基づき、被告もしく
での事例のためパッケージ旅行規則は、適用されずコモ
はサービス供給者に契約履行の瑕疵があるとして、訴え
53)
ンローにより判決された 。この事例は、原告の娘が、
たものである。本件では、旅行者である原告が、パナマ
第1被告の香港の旅行業者のパッケージ旅行に参加中、
運河クルーズとロンドン・ガドウィックとジャマイカ・
中国本土の湖で本来乗船するフェリーに乗れず、その第
モンテゴベイの国際航空便が含まれたパッケージ旅行に
2被告のフェリー会社の手配した第3被告のスピードボ
参加したところ、往路の航空便が、機材到着の遅れ、機
ートに乗船したところジャンクと衝突し溺れて死亡した
材整備、滑走路の閉鎖、強い逆風に伴う燃料消費のため
ため契約違反及び過失(negligence)による損害賠償を
の途中寄航、遅れによる乗務員の勤務時間の超過に伴う
請求したものである。本件では、旅行業者である第1被
交替があったためモンテゴベイ到着が遅れ、クルーズ船
告の責任が認められた。理由は、契約を精査すれば、旅
が出港してしまったため、乗船できなかった。郡裁判所
行業者は手配だけでなく供給する責任を受け入れている
では、往路便の遅れた理由についての予見可能性も回避
と結論付けられるからである。それは、パンフレットや
可能性もなく、クルーズ船が原告を待つこともできなか
日程表を通じて、「我々(we)」が、旅行のさまざまな
った理由も認めたが、控訴審では、船の出発を遅らせる
要素の支給に責任を負うという趣旨の記述があるためで
ことに全ての注意義務を尽したかという点に、被告の証
ある。そのため、履行を他の者に委ねたことは責任を軽
明が十分でないとして覆した 58)。
減するものではないとされた 54)。
以上、検証したように、パッケージ旅行規則が施行さ
パ ッ ケ ー ジ 旅 行 規 則 下 の 事 例 で は 、前節で論じた
れた後も、旅行者が旅行中被った損害につき、ツアーオ
GERARD HONE v. GOING PLACES LEISURE TRAVEL の
ペレータは絶対的に責任を負うとは判示されていない。
例がある。前節でも示したように、被告はオガナイザー
それは、パッケージ旅行規則 15 条2項 c™ が契約当事
とみなされたが、原告の旅行者の訴えは高等法院で斥け
者又はサービス提供者が予見、回避可能性がない場合の
55)
られ、控訴院でも斥けられた 。控訴院では、次の2点
瑕疵は契約履行に対してオガナイザーはその責を負わな
について判断された。パッケージ旅行規則 15 条は厳格
い、としているからである。この法令上の規定は、オガ
責任を課しているかどうか、と、過失があったと請求者
ナイザーが自身もサプライヤーも過失がないと主張すれ
が証明するかあるいは被告が過失がなかったと証明する
ば責任から逃れられる。ツアーオペレータに求められる
か、である。判決では前者については、パンフレットや
のは合理的な注意義務で合理的水準のサービスではな
広告で約束したサービスに対しては厳格責任があるが、
い 59)。したがって、旅行業者が、厳格責任に近い責任の
表現されたものでなければ過失責任があるだけだとし、
下にあるとはいうものの実際は、そこまでは進んでいな
56)
後者については、過失の証明責任は請求者にあるとした 。
い、とも考えられている 60)。
反対に、MAWDSLEY v. COSMOSAIR PLC の事例は、
しかし、BENSUSAN v. AIRTOURS HOLIDAYS LTD の
原告の旅行者が被告のツアーオペレータを、オガナイザ
事例にみるようにツアーオペレータの注意義務に対して
ーやリテーラはパンフレットに「誤った情報」を含んで
より厳しく示される傾向があることは、確かであろう 61)。
提供してはならないという義務違反の結果として消費者
そして、MAWDSLEY v. COSMOSAIR PLC の事例でツ
−104−
欧州のパッケージ旅行における旅行者に対する旅行業者の責任(廣岡)
アーオペレータの責任が認められているように、パンフ
による一体性があり、ひとつの履行の束に融合され、旅
レットや契約書の記述が重視され、そこから消費者がイ
行主催者たる旅行提供者を通じて自己責任履行実現され
メージされる結果についてのツアーオペレータ等の説明
るパッケージ旅行と民法 675 条、631 条及び商法 84 条以
責任は広く認められると考えられる。これは、GERARD
下の代理契約や商法 93 条の営業仲介契約が係わる旅行
HONE v. GOING PLACES LEISURE TRAVEL でゴーイン
仲介、そして、個人旅行者が、自身で旅行を企画し、自
グプレイスがオガナイザーと認められた例、パッケージ
身で個々の旅行給付をする者と契約を締結する個人旅行 66)
旅行規則適用外の WONG MEE WAN v. KWAN KIN
に関する規定が設定されている。旅行仲介は、旅行代理
TRAVEL SERVICE の例からも認められる。
店がただ主催者と旅行者の間の旅行契約を仲介するもの
オペレータに厳格責任に近い責任があるのは、「公正
で、旅行の実施の債務は負わない。また、運送企業の乗
の達成」の手段である。これは、ツアーオペレータが一
車・乗船・航空券の仲介が典型的な旅行仲介と見なされ
次責任を受け入れるが、ツアーオペレータが次には、実
る 67)。
際責任のある下請人やサプライヤーを訴えることができ
パッケージ旅行契約については、1979 年 10 月1日の
るためである。この際、ツアーオペレータは、求償の可
旅行契約法施行までは民法 631 条以下の請負契約法か仲
能性が低い場合、傷害や死亡に関して適切な保険を付す
介法のどちらを適用するか、
特に評価が定まらなかった 68)。
ることを忘れてはならない 62)。
旅行契約法として施行された民法 651 a条1項の意味に
おける旅行主催者は、旅行者の契約の相方として自ら少
Ⅳ.ドイツにおけるパッケージ旅行にかかる法制
なくとも2つの旅行給付を提供し、かつ、実行者を履行
補助者として利用する。この際、反復性や事業性は問題
観光に関しては、ドイツにおいても、自己完結的な法
とならない 69)。パッケージ旅行契約は、旅行主催者が全
領域はなく、立法者は観光事業の問題を統一的なひとつ
体の旅行給付に対して義務を負うという請負的契約であ
の法典に編纂してこなかった。また、ツアーオペレータ
り、同条2項により旅行サービス提供者との契約の媒介
やトラベルエージェントを開業するに当たって法的許可
に過ぎないということは、旅行給付を自己の責任におい
を得る必要はなく、それらを特別に取り締まる組織や公
て履行する旨の外観があるときは認められないとされ
63)
的機関もない 。
た。ただし、民法 651 h条では、身体の傷害以外の場合
ただ、公法上、営業令(GewO)38 条1項4号により、
において故意または重過失がなく、あるいは、旅行サー
営業の監視を通じて旅行代理店は州法上の規定に従っ
ビス提供者の過失による場合は、旅行代金の3倍に制限
て、監視されるなど、旅行主催者、旅行代理店又は飲食
することができることや損害賠償請求権が国際協定等で
店業に対する公法上の義務は設定されている 64)。
制限されている場合にそれに準じることができることを
もっとも、営業令は、業種を問わず新たに営業を開始
定めている。また、ドイツ旅行業協会による普通取引約
するに当たって管轄権のある地方機関に報告する義務を
款では、第9条3項で、旅行主催者は運送証票が発行さ
負わすもので、資格や免許や証明は求められない。地方
れた定期交通便の運送で、この件につき公告され、明確
機関は、税務当局と商業会議所に報告する。営業令 38
に示されている限り、当該運送給付に対する責を負わな
条に従ったほとんどのドイツの州で発布している旅行代
いとし、第 11 条の責任の制限で1項に民法 651h 条で認
理業令(Reisebüroverordnungen)では、各企業は、各
められる3倍の制限を規定し、3項で、スポーツ行事、
契約についてツアーオペレータ、顧客の名称、顧客の住
劇場訪問、展覧会などを他人の給付の単なる仲介である
所、生年月日、同意したサービス、旅行代金、支払方法
と旅行の募集の際明示した場合の給付障害に関しては責
を記録しなければならないとし、独自の簿記体系を持た
任を負わないとしている。
なければならないとしている。また、全ての広告物を保
なお、旅行主催者の破産等の場合の支払済みの旅行代
存し、以上の問題に対して地方機関から質問があった際
金や帰路の旅行にかかる保証を定めた民法 651k 条は、
65)
1994 年に定められた 70)。これは、主催者が、支払不能や
には、答える義務があるとされる 。
旅行契約法に関しては、民法 651a 条から 651m 条に規
破産の時、支払われた金額や帰路が確保されることを証
定される、少なくとも2つの主たる旅行サービスの給付
明するという、パッケージ旅行指令7条の立法責任を果
−105−
政策科学 12 − 1,Sept. 2004
たしたものである。この点も含めて、パッケージ旅行指
を及ぼしやすい。また、サービス提供者に原因がある場
令9条1項では、1992 年 12 月 31 日までに、当時の 12 の
合でツアーオペレータが賠償したとしても、その事後的
EC構成国が、パッケージ旅行の領域において共通の最
な処理については他人である場合と比べその負担ははる
少標準規定を達成する目的を据えた。旅行契約法の調整
かに小さくなるであろう。これを旅行者の観点からみれ
の枠組みにおいて、また、旅行主催者の破産危険の効果
ば、ツアーオペレータとサービス提供者が同一企業集団
的な対応も期日までになされるべきであったが、ドイツ
でありながら、ツアーオペレータに責任を追及できず、
71)
では、ほぼ2年、国内法化期限に遅れた 。
遠隔地に存するサービス提供者にのみ責任追及が可能で
あるとすれば、いたずらに旅行者にのみ責任追及の可能
Ⅴ.まとめ
性を困難にすることになり、公平を失すると考えられる。
これらのことを考慮すると、ツアーオペレータの統合、
本論文では、まず、欧州(英・独)における旅行の傾
向を考察した。そこでは、目的地として、特に志向する
寡占化とツアーオペレータの責任強化とは何らかの関連
性があるのでないかと考える。
太陽や海浜リゾートを享受できる地中海が好まれる傾向
もちろん、観光企業集団の統合、寡占化は企業経営戦
がみられた。パッケージ旅行では、チャーター機が用い
略に基づくものであり、パッケージ旅行指令は、EU統
られ、これらの宿泊施設に顧客は大量に送り込まれる。
合のなかで旅行取引の均質化を図ろうとする趣旨がある
このようなパッケージ旅行は、規格化しやすく、したが
とは考えるが、ツアーオペレータの責任が強化されるこ
って、規模の経済が追及できる。
とが受け入れられる背景には、特に、観光企業における
そのため、観光企業集団は、旅行素材たる航空機、宿
垂直統合が進められたことも理由としてあげてよいので
泊施設、旅行素材をパッケージするツアーオペレータ、
はないだろうか。垂直統合が、ツアーオペレータの責任
流通チャネルであるトラベルエージェントを垂直統合す
強化を可能にするのは、自らの企業集団に属さないサー
ることで経営を効率化でき、特に 1990 年代以降、より
ビス提供者による旅行素材によりパッケージを編制する
規模の経済を追及するため、各部門で買収を進めた。
場合にくらべて、サービス提供者へのコントロール可能
一方、EC委員会は、1990 年、パッケージ旅行指令
性が高いためで、これは、企業集団中にサービス提供者
を制定し、その国内法化を通じて、ツアーオペレータの
をもたない中小のツアーオペレータに対して優位性をも
責任は強化された。ドイツでは、1979 年より、民法中
つこととなる。これは、さらに寡占化を進めることも導
に旅行契約法にかかる規定を置いていたが、英国ではパ
く。このツアーオペレータの統合、寡占化の流れと責任
ッケージ旅行指令を受けてはじめてパッケージ旅行に特
強化の流れとの関連性についてはさらなる研究が必要と
化したパッケージ旅行規則が制定された。
なろう。
これらの規定では、例外や制限があるもののツアーオ
さて、本論文でこれまでみたような状況を踏まえ、日
ペレータが、原則的には、サービスの提供がツアーオペ
本においてこのような欧州型のツアーオペレータの責任
レータ以外のサービス提供者によって履行される場合で
の引き受けが可能であるかを検討する。
あっても、契約の完全ではない履行について固有の履行
欧州のパッケージ旅行は、先にみたように垂直統合さ
責任を負うことを指向している。これにより、旅行者に
れた企業集団の中で、規格化できる旅行が大部分を占め
とって、外国にある個々のサービス提供者に責任を追及
る。本論文で検討した英国の判例の事案についても、目
しなくとも、ツアーオペレータから賠償を得られるメリ
的地はリゾートでチャーター機を使ったものが多い。こ
ットが生じる反面、ツアーオペレータにとっては、理屈
れは、ツアーオペレータにとってコントロールの枠には
の上では求償できるものの自らのコントロールが及ぼし
めやすい。一方、日本においては、旅行企業はサプライ
難い他人の企業に専属するサービスの履行に責任を負う
ヤーと垂直統合されることは少なく、パッケージ旅行自
ことへの負担が生じた。
体は、定期航空便を使い多様性に富み、周遊型も多い。
しかし、ツアーオペレータとパッケージ旅行に含まれ
るサービスの提供者とが同一の企業集団に属していれ
これをコントロールすることは、欧州で主流のパッケー
ジ旅行と比べると格段に困難と考えられよう。
ば、ツアーオペレータはサービス提供者にコントロール
−106−
以上のように日欧間の旅行業界を取り巻く環境の相違
欧州のパッケージ旅行における旅行者に対する旅行業者の責任(廣岡)
を考慮すると、日本で主催旅行業者(ツアーオペレータ)
者の債務と責任(一)」『法政論集(名古屋大学)』198 号
が欧州型に責任を引き受けることは、現時点では困難で
(2003)67 頁以下に旅行契約にかかる欧州の法理と日本の状
況を比較して考察しようとする試みがみられる。ここでは、
あると考える。もっとも、欧州においても相対的には少
旅行契約にかかる日本と海外のいずれの問題についても、い
ないものの探訪型のパッケージ旅行も存在している。日
ままで発表された日本における法学的視角を持ったほとんど
本の周遊型パッケージ旅行と類似するところもあると思
の先行研究について網羅して挙げられているものと思える。
えるこれらの旅行も、同様にパッケージ旅行指令の対象
現時点では全6章中第2章半ばまで発表されたところまでし
となり、ツアーオペレータは、それに基づく義務を負っ
か捕捉できていないが、第4章でサービス提供機関との関係
ている。本論文においては、この部分については検証で
を視野に入れて論じられるようなので、この点大きな期待を
きなかったが、実態を把握し、研究を進めることで日本
寄せている。
における応用の可能性を見出しうるかもしれない。ただ、
3)Horner, S. and Swarbroooke, J., Marketing Tourism
Hospitality and Leisure in Europe , International
本論文で検証できた範囲においては、これらの旅行業界
Thomson Bushiness Press, 1996, p68. なお、同書では、フラ
を取り巻く環境を考慮することなしに、日本の主催旅行
ンスにおいては、パッケージ旅行が外国旅行市場で優位を占
業者により強い責任を求めることは、主催旅行業者自身
めたことはないとしている(p68)。なお、多少データは古く
以上に立場の弱い旅行サービス提供者に過酷な条件を強
なるが、1991 / 92 年のヨーロッパのパッケージ旅行会社上
いることにもなりかねない 72)。
位は 20 社中、英国が3社、ドイツが5社を占め、上位 10 社
に限れば、英国が2社、ドイツが5社を占めている(p95)。
もっとも、欧州の旅行業を取り巻く環境やツアーオペ
また、国際観光振興会『JNTO 国際観光白書 2003 年版』(国
レータの責任の引き受けについては、現在の日本の旅行
際観光サービスセンター、2003)332-333 頁では、2000 年の
業者にとっても、商品開発をするにあたって、サービス
数を基にした出国率を掲載しているが、ここでは英国 98.0 %、
提供者に強いコントロールを及ぼし、それを自らの優位
ドイツ 90.7 %であるのに対し、フランスでは 29.5 %となって
いる。
性とするための参考となりうるだろう。
4)ホールセーラーとは卸売り会社で、自社の製作した商品を、
小売会社を通じて販売している。そして、その小売会社のこ
とをリテーラと呼ぶ。ただ、日本では、一つの会社で、ホー
注
ルセール部門とリテール部門をあわせて持つことが多い。そ
1)1997 年に創刊された『JNTO 国際観光白書』(国際観光サ
のため、総合旅行会社と呼ばれる。もっとも最近の大手旅行
ービスセンター)は、主要国の旅行関係業界の動向の概要を
会社では、もともと総合旅行会社の部門であったものが分社
示している。このほかに、国際観光開発研究センター『欧州
化され、別の会社となっている例も多いが、これは、例えば
旅行事業者調査(英国、フランス、ドイツ、デンマーク)報
JTB グループの場合、従来の体制では、「激しい時代の変化
告書』(国際観光開発研究センター、1993)、国際観光振興会
に対応しにくい状況が生まれている、という判断から、小回
『英国旅行市場要覧 1993 / 1994』(国際観光サービスセンタ
りの利く体制を整備する目的で」「1980 年代半ば以降の分社
ー、1993)がある。
化政策の中から生まれた」(「JTB グループ徹底研究」『一冊
2)例えば、高橋弘は「西ドイツ旅行契約法の成立過程─パッ
まるごと JTB』(経営塾、1997)97 頁)もので、別の会社で
ク旅行契約の私法的規制」『広島法学』5巻1号(1981)55
あるのは経営効率を高めるためで、事業としては親会社と一
頁以下以来、ドイツを中心として欧州の旅行契約関係につき
体となって行なわれているためグループとして一総合旅行会
多く法制の紹介や論文を発表している。池上俊雄は「EC 指
社と考えることもでき、消費者はそのようにみていると思え
令に基づくイギリス旅行業者の規制─パック旅行契約締結
る。なお、日本の旅行業を実態から考察した分類は、廣岡裕
前の責任」『英米法学』34 号(1994)39 頁以下や「EC 指令
一「旅行取引の枠組みと法制度の変化」『変化する旅行ビジ
に基づくイギリス旅行業者の規制─契約締結後の責任につ
ネス』(文理閣、2003)119-121 頁参照。
いて」『帝京法学』19 巻2号(1996)61 頁以下など英国のパ
ッケージ旅行の契約を中心としていくつかの論文を発表して
5)国際観光振興会『JNTO 国際観光白書 2002 年版』(国際観
光サービスセンター、2002)299、307 頁。なお、同書による
いる。また、ECパッケージ旅行指令とドイツの旅行契約法
と、フランスでは、ホールセーラーとリテーラの分化はあま
についての青野博之「ドイツ旅行契約法の改正とEC指令」
りしていない(319 頁)。
『法学論集(駒澤大学)』51 号(1995)71 頁以下や、フラン
スにおける主催旅行契約の旅行業者の責任を素材とした章が
6)Laws, E., Managing Packaged Tourism. International
Thomson Business Press, 1997, p.111
含まれる森田宏樹『契約責任の帰責構造』(有斐閣、2002)
がある。最近では、森嶋秀紀「主催旅行契約における旅行業
7)Horner and Swarbroooke, op. cit. p.308.
−107−
政策科学 12 − 1,Sept. 2004
8)Ibid., p.310.
その多寡による単純な比較はできないが、ここでは大まかな
9)Ibid., pp.313-314.
目安として示したものと捉えていただきたい。
10)http://www.tui-uk.co.uk/companyback/index.htm(2004 年
27)Horner and Swarbroooke, op. cit. p.78.
28)玉村、前掲書、59-78 頁。
6月 14 日);
http://www.britanniaairways.com/index.html(2004 年6月
29)Gauf, D., “Diversification and German tour operators: the
case of TUI and coach tourism”, Tourism Economics 4(4),
14 日)
11)http://www.tui.com/en/pressemedien/tui_profile/index.html
1998, p.328.
30)Ibid., p.329.
(2004 年6月 14 日)
12)http://www.tui.com/en/konzern/companies_brands/index.
31)ABTA, ABTA TRAVEL STATISTICS AND TRENDS,
2003, p.25. http://www.abtamembers.org/research/abtastatstrends
html(2004 年6月 14 日)
2003.pdf(2004 年6月 14 日)より。
13)http://www.tui.com/en/konzern/companies_brands/hotel_
32)玉村、前掲書、217-232 頁。
companies/destinations.html(2004 年6月 14 日);
http://www.tui.com/en/konzern/companies_brands/
33)Hill, R., “Tourism in Germany”, in Tourism in Europe,
ed. by Pompl, W., Cab International. 1993, p.233.
hotel_companies/each_hotelcompany/index.html(2004 年6
34)Evans. N., Campbell. D., Stonehouse. G., Strategic
月 14 日)
Management for Travel and Tourism., Butterworth-
14)http://www.riu.com/index.php(2004 年6月 14 日)
Heinemann, 2003, p.392.
なお、http://www.european-travel-market.com/search.asp
(2004 年6月 14 日)によれば、現在は、Riu family と World
35)Bedford. B., Taylor. I, Parratt. D., Yaqub. Z., and Turkington.
of TUI Accommodation Division(TUI Hotels & Resorts)がそ
J. “United Kingdom” in The European Travel Law, ed. by
れぞれ、50 %ずつ所有している。
Yaqub and Bedford, John Wiley & Sons, 1997, p529.
15)http://www.thomascook.info/tck/de/en/abu/0,2773,0-0-
36)Grant D. and Mason, S., Holiday Law 3rd. ed., Sweet &
Maxwell, 2003, p.12.
491258,00.html#Thomas%20Cook%20&%20Son(2004 年6月
37)http://www.caa.co.uk/cpg/atol/trade/travel_agency/default.
14 日)
asp?page=784(2004 年6月 14 日)
なお、http://www.thomascook.info/tck/de/en/nws/0,2773,0-029100,00.html(2004 年6月 14 日)によれば、トーマスクッ
38)Grant and Mason, op. cit. p.12.
ク AG は、2004 年3月現在、ドイツルフトハンザ AG
39)Ibid., p.31.
(Deutsche Lufthansa AG)が 50 %、カルシュタットクヴェレ
40)Ibid., p.16.
AG(KarstadtQuelle AG)が 50 %の株式を持ち、2002 / 2003
41)例えば、「以下の少なくとも2以上の」は、パッケージ指
会計年度においては、その取扱額の 46 %がドイツ、31 %が
令では not fewer than two of the following と、パッケージ規
英国で取り扱われている。
則では at least two of the following と規定されている。
16)Horner and Swarbroooke, op. cit. p.335.
42)Grant and Mason, op. cit. pp.54-55.
17)Ibid., pp.335-336.
43)CASE REPORT: GERARD HONE v GOING PLACES
18)Laws, op. cit. p.116.
LEISURE TRAVEL LIMITED, Court of Appeal (Wednesday,
19)Ibid., p.118.
13th June 2001), http://tlc.northumbria.ac.uk/hone.rtf(2004
20)Ibid., p.116.
年6月 14 日)
21)Ibid., p.118.
44)2000 年 11 月 16 日判決(QBD unreported)(Grant and
22)Ibid., p.118.
Mason, op. cit. pp.431-432.より)。
23)Horner and Swarbroooke, op. cit. p340.
45)原告の請求自体は、高等法院の判決では、本件においては、
24)Medina-Munoz,R.D., Medina-Munoz,D,R. and Garcia-
完全ではない履行(improper performance)であったが、絶
Falcon,J.M., “Understanding European tour operator’s control
対責任や厳格責任ではなく、原告は誰かの過失により傷害を
on accommodation companies: an empirical evidence”,
被ったと証明していなし、緊急時の客室乗務員の義務につい
Tourism Management 24, 2003, p146.
ての専門家の証明もないなどとして斥けられた。また、控訴
25)玉村和彦『パッケージ観光論』
(同文舘出版、2003)219 頁。
院でも訴えは斥けられている。(CASE REPORT: GERARD
26)2002 年の数値。出典の「WTO(世界観光機関)資料」は
HONE v GOING PLACES LEISURE TRAVEL LIMITED, op.
cit.)
受入国ベースのインバウンド統計を基に、逆集計したもので
ある(『世界観光統計資料集(2004 年版)』(アジア太平洋観
46)Grant and Mason, op. cit. p.149.
光交流センター、2004)25-29、88-92 頁)。そのため各受入
47)パッケージ旅行規則第3条第1項。
国の来訪者数は当該受入国の基準により計算されているため
48)第 15 条第1項の主語は、“the other party”である。“the
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欧州のパッケージ旅行における旅行者に対する旅行業者の責任(廣岡)
other party”については、第2条で「『契約の一方当事者
(the other party to the contract)』とは、消費者以外の契約
docs/bensus.zip(2004 年6月 14 日)
59)Grant and Urbanowicz, op. cit. pp.271-272.
当事者、すなわち、場合により、オーガナイザまたはリテー
60)Grant and Mason, op. cit. pp.139-140.
ラ、あるいはその両方を意味する」と定義されている。なお、
61)AIRTOURS は、2001 年の英国航空包括旅行の実輸送シェア
ーではトップである(Evans, Campbell and Stonehouse, op.
この定義は、パッケージ旅行指令にはない。
49)Grant D. and Urbanowicz, P. “Tour operators, package
cit. p.388)。本件に関しては、船の出発を遅らせることの義
holiday contracts and strict liability” The Journal of
務の可能性を示しているが、遅れた航空便の到着を待って船
Business Law, May, 2001, p.253.
の出発をさせるように旅行業者が管理を及ぼしたり、船会社
50) CASE REPORT: WALL v SILVER WING SURFACE
が配慮したりするなどは定期便では考えにくい。判決からは
ARRANGEMENTS (High Court 1981, Unreported),
読み取れなかったが、航空、クルーズ船のオペレーションが、
http://tlc.unn.ac.uk/app3.rtf (2004 年6月 14 日)
全てツアーオペレータの傘下にある可能性が考えられる。
51)商品サービス供給法 13 条:供給者が業として行なうサー
ビス供給契約では、供給者は合理的な注意義務をもってサー
62)Grant and Urbanowicz, op. cit. p.269.
63)Hasche C. “Germany” in The European Travel Law, ed.
by Yaqub and Bedford, John Wiley & Sons, 1997, pp 251-252.
ビスを履行するという黙示条項が存在する。
52)[1993]1 All England Law Report, QBD, 29 January
64)Führich. E., Reiserecht 4.Aufl., C.F.Müller Verlag, 2002,
1993, pp.353-358.
pp6-7.
53)Grant and Mason, op. cit. p.118.
65)Hasche C., op. cit. p 252.
54)[1995]4 All England Law Report, PRIVY COUNCIL,
66)運送契約(民法 631 条以下)、接遇契約(民法 535 条以下)、
29 November 1995, pp.745-755; Grant and Urbanowicz, op.
レストラン滞在(民法 651 条、433 条以下)。
67)Führich, op. cit. pp.7-9.
cit. p.255.
55)注 43 参照。
68)Ibid., p.12.
56)Grant and Mason, op. cit. pp.150-151.
69)Ibid., p.8.
57)CASE REPORT: MAWDSLEY V COSMOSAIR PLC [2002]
70)Ibid., p.431.
EWCA Civ 587, http://tlc.northumbria.ac.uk/docs/mawcos.zip
(2004 年6月 14 日)
71)Ibid., pp.21-22.
72)石井昭夫「国際観光における消費者保護」『立教大学観光
58) IN THE BRENTFORD COUNTY COURT CASE NO:
学部紀要』1号(1999)22-27 頁では、パッケージ旅行指令
CL004519; BETWEEN MR MICHAEL A BENSUSAN MRS
とEU各国の国内法化の結果、世界の観光業界に波及するだ
AMALIA BENSUSAN APPELLANTS and AIRTOURS
ろう問題点を挙げている。
HOLIDAYS LTD RESPONDENTS, http://tlc.northumbria.ac.uk/
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