研究背景:使用済小型電子機器の金属資源化と課題 (データ:環境白書H24年度版) レアメタル等資源の安定確保 好酸性鉄酸化菌を用いた廃基板等廃棄物から 循環資源の国内利用の促進(国外へ の資源流亡の阻止) の効率的な有用金属回収・資源化技術 輸出先国での環境汚染・健康被害へ の対処 廃棄物の適正な管理 小型家電リサイクル法(H25~) 30品目のリサイクル・資源化を推進 秋田県立大学 生物資源科学部 生物環境科学科 准教授 宮田 直幸 使用済小型電子機器中の金属含量 量(トン) 対内需 22,789 1.3% 銅 649 0.1% 亜鉛 銀 68.9 3.7% 金 10.6 6.4% アンチモン 117.5 1.5% “都市鉱山”開発への期待が高まる中、 幾つかの課題をクリアする必要がある タンタル 33.8 9.4% 抽出可能な鉱種を拡大し、金属の資 源化率を向上 タングステン 33.0 0.8% ネオジム 26.4 0.4% コバルト 7.5 0.0% パラジウム 4.0 3.1% 広域からの収集を可能とする効率的 な回収システムの構築 本研究で開発する技術 廃棄物を減容化し、かつ有用金属を効率よく分離・濃縮でき る、効率的な中間処理プロセスを提供する。 =収集システムの効率化 =資源化可能な鉱種の拡大 使用済小型電子機器の発生量=65.1万t/年 その内の有用金属=27.9万t/年 (≒844億円) <微生物の金属代謝機能> ■ バイオリーチング(Bio-leaching) 鉱石等からの金属類の溶出 ■ バイオミネラリゼーション(Bio-mineralization) 金属類の不溶化、結晶形成 ■ バイオボラタリゼーション(Bio-volatilization) 金属類の揮発化 ■ バイオソープション(Bio-sorption) 金属類の吸着・吸収 微生物利用の利点 省エネルギー・低環境負荷型のプロセスを 構築することが可能 微生物を用いた廃電子基板等からの 金属回収技術(バイオリーチング) ■ 好酸性鉄酸化菌の利用 ・ 希硫酸(pH 2~2.5) □ 増殖により触媒機能が絶えず更新 ・ Fe2+ → Fe3+ □ 常温・常圧下のプロセス ・ 廃基板粉砕物 10 ~20 g/L 程度 □ 生物反応のため高い特異性(選択性) ・ 温度:30℃~45℃ 1 従来技術と問題点 国外(特にアジア諸国)で研究開発が活発化 課題: 廃基板のバイオリーチング/検討事例 非常に限定された菌種 (Acidithiobacillus ferrooxidans; +α) 高濃度(3~15 g/L)の第一鉄イオン(Fe2+)を添加 リーチング効率: 検討の余地多く残されている (試料の粉砕・選別方法の最適化が未検討) 本技術開発の概要 (1) 微生物の選出 集積培養系NE(中等度好熱タイプ) pH 1.8~2.5、32~55℃ → 希硫酸溶液中でリーチング Fe2+: 増殖には7 mM(=0.4 g/L)程度が最適(従来の1/10~1/40) 低濃度のペプトン等有機物を添加 (従属栄養的) → 低濃度のFe2+添加で済む 高い重金属耐性 (0.1 M Cu2+/Zn2+/Ni2+/Mn2+混合液) → 処理濃度を高く設定できる 0.1 M Cu/Zn/Ni/Mn存在下で増殖 7 mM Fe2+, pH 1.9, 45℃) , pH 1.9, 45 (7 mM Fe 0.1 M Cu = 6.4 g/L Zn = 6.5 g/L Ni = 5.9 g/L Mn = 5.5 g/L 本技術開発の概要 (2) 廃電子基板のリーチング 本技術開発の概要 (1) 微生物の選出 集積培養系NEの細菌叢 ・・・16S rRNA遺伝子をPCR増幅した後、 クローンライブラリーを作成、解析 優占する鉄酸化細菌: NE106G株を単離 集積培養系NE、NE106G株ともに、バイオリーチング への適用が可能 NE106G株 → (独)製品評価技術基盤機構(NITE) に寄託 本技術開発の概要 (2) 廃電子基板のリーチング (試験条件) 2 L容ジャーファーメンターを使用(温度とpHを制御) 廃基板濃度:10 g/L(粉砕物サイズ: <0.25 ~ <1.0 mm) 温度:45℃ pH:1.85 通気・撹拌あり ORP測定 上清の金属濃度: ICP‐OES、 ICP‐MSで測定 2 本技術開発の概要 (2) 廃電子基板のリーチング 本技術開発の概要 (2) 廃電子基板のリーチング 【集積培養系NE/微生物活性の影響】 集積培養系NEを含むリーチング液: 高い酸化還元電位を維持 微生物反応によりFeイオンの酸化還元サイクルが維持 本技術開発の概要 (2) 廃電子基板のリーチング 新技術の特徴・従来技術との比較 【集積培養系NEと既往研究との比較】 Fe2+ = 0.4 g/L pH 1.8‐1.9, 45C ⇒72時間 Cu: 88%, Zn: 81%, Co: 82% Mn: 73%, Ni: 69% (廃基板粒子サイズ: <0.25 mm) ◎ 従来の鉄イオン濃度の1/10あるいはそれ以下 • 廃基板等を対象とした従来のバイオリーチングでは、 高濃度の第一鉄イオン(3~15 g/L)を添加。本研究の 結果、従来の1/10程度の添加濃度でも、従来レベル またはそれ以上の効率(速度、浸出率)で金属イオン をリーチングできるようになった。 • 低濃度の鉄イオン添加のため、リーチング後の残渣 への酸化鉄の混入が最小限に抑えられる。このため、 残渣中に残存する有用金属(貴金属等)のさらなる回 収が容易であると期待される。 ◎ 少なくとも従来レベルか、それ以上のリーチング効率 (速度・浸出率) 想定される用途 実用化に向けた課題 • 廃基板や金属触媒等の使用済電子機器部品 からの有用金属回収。 • バイオリーチングの基礎的な反応系を確立し た。今後は反応条件を最適化し、より高い効 率で浸出できるように条件設定を行う。 • 金属含有スラッジなど有害廃棄物の無害化処 理、金属回収への適用も可能であると考えら れる。特に非金属など夾雑物を多く含む固形 分への適用が期待される。 • 試料の前処理(粉砕、選別方法)、並びにリー チング液からの金属回収を検討中である。 • リーチング残渣からの貴金属等の回収につい て検討する必要がある。 3 企業への期待 本技術に関する知的財産権 • 廃基板や触媒等の使用済電子機器部品から の金属回収や廃棄物処理など、リサイクル関 連企業との共同研究を希望している。 • 発明の名称: 好酸性鉄酸化細菌を用いた 金属浸出方法 • 出願番号 : 特願2014-181771 • 出願人 : 公立大学法人秋田県立大学、 静岡県公立大学法人 • 発明者 : 宮田直幸、東條ふゆみ、梁 瑞録、 福島 淳、谷 幸則 • 金属含有廃棄物を排出する企業との共同研 究も希望。本技術の導入により、廃棄物の減 容・無害化、資源化を図ることが可能であると 考えている。 お問い合わせ先 秋田県立大学 地域連携・研究推進センター コーディネーター 菅原 久春 TEL 018-872-1557 FAX 018-872-1673 E-mail sugawara@akita-pu.ac.jp 4
© Copyright 2024 Paperzz