TM 2O15 JAPAN TECHNOLOGIES & APPLICATIONS EMC設計. . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5. ノイズ対策 . . . . . . . . . . . . . . . . . 38. サージ保護. . . . . . . . . . . . . . . . . 44. 試験. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 63. 試験規格. . . . . . . . . . . . . . . . . . . 76 DIRECTORIES EMC関連企業一覧 . . . . . . . . . . . 79. Interference Technology 日本版「保存版ガイドブック2015 プリアンプ 低損失ケーブル ログペリオディック DRGホーン 磁界用ロッド バイコニカル プローブ コンパクトなオールインワンパッケージ バイロジカル ループ 標準ゲインホーン モノポール 三脚、付属品 EMC/EMI試験に関して言えば、すべて手に入れることは無理な話ではありません。A.H. Systemsは、お客様の評価 ・適合試験に対してエキサイティングな新製品や定評のある製品をお届けすることを誇りに思います。当社のアン テナは20Hzから40GHzまでの広周波数帯域を持つ、類のない特色あるアンテナです。試験アンテナの販売・レンタル ・再校正など、世界中でお役に立つことができます。当社の製品についてご質問があれば、総合オンラインカタログ にアクセスをどうぞ。製品の紹介、一般的AFプロット、VSWR、電力操作能力、製品データシートへのリンクなどの様 々な情報が満載で、カタログ送付のご注文もできます。30年にわたるEMIアンテナの開発とともに、当社は世界中に 販売代理店ネットワークを築いてまいりました。ウェブサイトを通じて27ヵ国以上で、各地の事情に精通した代理人 をお探しすることもできます。高品質の製品、卓越したサービス、翌日・定時配達対応のサポートをお届けする A.H. Systemに今すぐご連絡ください! あらゆるアンテナ キットのご要望は… 日本でのお問い合わせは、株式会社テクノサイエンスジャパン www.tsjcorp.co.jp または 03-5717-6130 へどうぞ contents 2015 5 EMC設計 スペクトラム拡散クロック発生-理論と議論...............................................5 変調あり Kenneth Wyatt 振幅 他とは違うCMOS:ノイズとEMIを低くするためのPCB設計....................13 変調なし EARL MCCUNE 物理法則に従った費用対効果の高いEMC設計:Q&A.............................18 Keith Armstrong 設計初期の段階でEMC(&安全性)を考慮すべき理由とは?..................28 J M Woodgate 周波数 7 電気的過渡現象からイーサネットポートを守る........................................30 TIMOTHY PULS EMC要求に適合するための基本的設計手法...........................................34 Paul Lee 38 ノイズ対策 新しい筐体構造が提供されたEMIシールド.............................................38 Justin Moll リニア電圧安定器のフィルタ用コンデンサ選定基準................................41 Steve Weir 44 35 サージ保護 サージ保護を誘電体に依存しないEMIフィルタの使用.............................44 Philip F. Keebler, D. Michael Evans and Nathan A. Reid サージによる電源自動切換スイッチ(ATS)とインバータの損傷...............54 Dion Neri オートメーション・制御システムのEMC..................................................57 Roberto Menna Barreto 63 試験 39 GHz帯挿入損失構成要素のシミュレーション..........................................63 Tracey Vincent 電磁気の「三大脅威」と重要な社会基盤の復旧......................................69 Dr. William A. Radasky ESDに弱いデバイスの帯電の発生:梱包によるESDリスクの実態............72 Bob Vermillion 76 試験規格 802.11acデバイス試験について:FCCガイダンスの解説..........................76 67 David A. Case 目次 index of advertisers.............................. 80 interference-technology.jp Company Directory..................................79 INTERFERENCE TECHNOLOGY 日本版 1 The Total EMC Source For Your Automotive Needs Radiated Immunity 車載EMCニーズに応えるトータルシステム。 放射イミュニティ Conducted Immunity 伝導イミュニティ Radiated/Conducted Emissions 放射/伝導エミッション 当社のEMCソリ ューションで試験プロセスはもっと簡単 ・正確なものになります。 校正、 試験手順、 AR’s EMC solutions make complicated test processes easier and more accurate. Everything is simplified – calibration, testingDUTのトラブルシューティ processes, DUT troubleshooting,ング and generation of reports directly into convenient formats, such as Microsoft Word orさまざまなことが単純化できるのです。 Excel. だけでなく、 WORD/Excelへダイレク トに生成できるレポートなど、 These products also have excellent speed, feature a modular design approach and allow theirISO、 integrated components to be used in a variety of automotive test また当社製品は、 抜群のスピードとモジュラー設計アプローチを特徴とし、 SAE、 CISPR、OEM要求などあらゆる種類の車載 standards such as ISO, SAE, CISPR, and OEM requirements. These products have the flexibility to handle engineering development, mitigation and testing to 多 試験に統合コンポーネントを使えます。また、MIL-STD-461、RTCA DO-160、CISPR、EN、ETSI、FCC、ICES、 AS/NZS、 VCCIなど、 numerous other standards such as:電磁妨害緩和、 MIL-STD-461, RTCA DO-160, CISPR, EN, ETSI, FCC, ICES, AS/NZS, and VCCI. くの規格に沿った技術開発、 試験に対応する柔軟性も持ち合わせています。 The DER2018, with 140 MHz instantaneous bandwidth, is the One Receiver that catches short duration transient disturbances, and scans in seconds. DER2018は140 MHzの瞬時帯域幅を有し、短期間過渡妨害をキャッチして瞬時にスキャ ンするレシーバです。 CISPR 16適合の By streamlining testing, this CISPR 16 compliant EMI receiver will change the way you approach testing. このEMIレシーバで試験を合理化すれば、試験へのアプローチ方法が変わるでしょう。 AR’s AS4000 radiated immunity system gives you a turnkey package to perform susceptibility tests, in one self-contained unit up to 40 GHz. 当社のAS4000放射イミュニティシステムは完成引渡しパッケージです。 内蔵ユニッ トで40 GHzまでの感受性試験が可能です。 Our standard systems can also be customized to include testing to both radiated and conducted immunity and emissions requirements. 標準システムはカスタマイズして放射および伝導イミュニティやエミッションの要求にも対応できます。 The Conducted Immunity (CI) platform offers flexibility to address any Bulk Current Injection (BCI) test method, as well as the ability to access components 伝導イミュニティ(CI)プラットフォームは、あらゆるバルク電流注入(BCI)試験法に対応し、試験用途で用いるパワーメータやア from the CI housing, such as the power meter and amplifier, to use in other test applications. With three Conducted Immunity Test Systems to choose from, you ンプなどのCI筐体から部品へアクセスすることもできます。3つのCI試験システムから選択するだけで、面倒なCI試験手順実施や結 should never again have to perform laborious manual CI test procedures or worry about the accuracy of the results. 果の正確性についての悩みから解放されます。 AR supplies a multitude of unique RF solutions to some of the best-known companies worldwide. Our products are backed by the strongest, ARは世界的に有名な企業に独自のRFソリューションを多数、提供しています。当社製品には、業界最強の総合保証と最高の most comprehensive warranty in the industry, and a global support network that’s second to none. Call your local AR sales associate for a demonstration. グローバルサポートネットワークをお約束します。製品デモが必要な場合は、お近くの地域営業担当までお電話ください。 To learn more, visit www.arworld.us/totalEMC. 製品詳細については、ARのウェブ www.arworld.usへ。 In Japan, contact Nippon Automatic Control Company 日本でのお問い合わせは、 日本オート マティックコントロール株式会社 www.naccjp.com or call 81-03-5434-1600 www.naccjp.com または 03-5434-1600 へどうぞ ISO 9001:2008 Certified rf/microwave instrumentation Other ar divisions: modular rf • receiver systems • ar europe USA 215-723-8181. For an applications engineer, call 800-933-8181. www.arworld.us Copyright © 2014 AR. The orange stripe on AR products is Reg. U.S. Pat. & TM. Off. 読者登録用紙 ウェブから簡単に登録できます 検索 www.Interference-Technology.jp a ウェブで読む EMC ウェブで読む、無料 EMC 技術情報誌 ※お名前・Email アドレス・勤務先および以下の質問すべてにご回答ください。 お フリガナ 名 姓 新規登録 更新 前 アカウント Email アドレス ( ログインに使用 ) 勤 フリガナ 務 会社名 部署名 先 住所 〒 ー キ リ TEL 送付先 〒 都道 FAX 府県 ※ 勤務先以外 ( 自宅など ) への送付を希望する方は↑ご記入↑ください。 都道 府県 TEL ④ 年齢層 (1つ) ① 担当製品 (1つ) 1 □ 航空宇宙・防衛関連 11 □ 産業機器 / 制御装置 1 □ 20 才未満 2 □ 自動車等、運送機器関連 12 □ 医療機器 2 □ 20 代 3 □ 通信・テレコム製品 13 □ 電力機器 / 電源関連製品 3 □ 30 代 4 □ 部品製造 14 □ 計測機器 4 □ 40 代 5 □ 50 代 6 □ 60 才以上 (電気・電子関連部品、各種対策部品等) 15 □ 試験所 ト リ 線 登録用紙の送信先 FAX: 044-980-2052 どちらかに丸をしてください 名 5 □ コンピュータ関連(ハードウェア) 16 □ 公共施設 6 □ ソフトウェア 7 □ コンサルタント 8 □ 家電製品 9 □ 代理店 10 □ 教育 / トレーニング 17 □ 政府 / 防衛機関 ⑤ 今後1年以内に購入予定の EMI 関連製品(複数回答可) < 試験装置 > 14 □ シールドルーム / 電波暗室 2 □ 計 スペクトルアナライザ 15 □ 試験 / コンサルティングサービス 3 □ 測 オシロスコープ 16 □ 設計&テスト用ソフトウェア 4 □ 機 ネットワークアナライザ 17 □ EMC トレーニング用教材 5 □ 器 ノイズシミュレータ 18 □ 校正 / 修理サービス その他:__________________ ② 職種 (1つ) 1 □ EMI/EMC エンジニア 8 □ 法規 / 認証担当 6 □ アンテナ / プローブ 19 □ フィルタ 2 □ 設計担当エンジニア 9 □ 特許 / 知的財産管理 7 □ アンプ 20 □ 静電気防止製品 /ESD 保護 3 □ R&D エンジニア 10 □ 役員 4 5 6 7 □ アプリケーションエンジニア 11 □ 営業&マーケティング □ テストエンジニア / テクニシャン 12 □ 購買 / 資材 □ コンサルタント 13 □ 教授 / 学生 □ 品質保証 / 評価担当 14 その他:__________________ ③ EMC への関心度をお教えください (1つ) 1 □ 高い 3 □ やや低い 2 □ やや高い 4 □ 低い Interference Technology の『個人情報保護指針』 - ITEM メディアと e・オータマの同意による < シールド > 21 □ 伝導性材料 / コーティング 9 □ 磁気シールド 22 □ フェライト対策部品 10 □ シールドケーブル 23 □ サージ / トランジェント部品 11 □ シールドコネクタ 24 □ 電波吸収材 / フェライトタイル 12 □ シールドガラス 13 □ フィンガー その他:__________________ ⑥ 上記の購入予定製品・サービスについての情報を 貴殿へ提供するため、個人情報指針に同意願えますか(下記参照) はい (1 □ HTML 2 □ テキスト) 3 □ いいえ Web 等を介して収集、又は紹介者などの適切な第三者 (2)公的機関より、法令に基づく照会を受けた場合 からの間接的収集。 (3)認定機関または認証機関による審査時に個人情報 ・個人情報の利用目的 が絡む記録の開示要求があった場合 ご提供いただきました個人情報は下記の目的に限り利用 (4)人の生命、健康、財産等の重大な利益を保護する させていただきます。 ために必要な場合 (1)資料請求や問合せ、当誌サービスへの申込みに対 ・個人情報の管理 する回答、確認連絡 収集した個人情報については、不正アクセスや紛失、破 壊、改ざん及び漏えいなどに対する予防ならびに是正に ■ 基本的な考え方 当社らが保有している個人情報について、ご本人から (2)イベント・キャンペーン案内、アンケートを含む電 子メール配信 努め、合理的な安全対策を講じます。 ・法令等の遵守 開示、訂正、及び利用停止を求められた場合 は、迅 (3)ご要望いただいた広告主への資料請求などの仲介 ・継続的改善 当社らは、全従業員(役員、契約社員、アルバイト等を 速且つ誠実に対応します。 (4)上記項目に付随する調査業務(アンケート等) 個人情報保護に関する法令およびその他の規範を遵守 含む。以下同じ)が、個人情報保護に関する法令 やそ ・安全管理 ・委託先の管理 ・ 監督 するとともに、この方針に基づく体制を定め、その内容 の他規範を遵守徹底し、個人情報保護に努めます。 当社らは、さまざまな脅威からお客様の個人情報を保 利用目的の遂行のために業務を委託する場合、個人情 を継続的に見直し、改善に努めます。 ・個人情報の収集及び利用目的 護するために、厳重なセキュリティ対策を実施し、不 報の取り扱いに関する委託先の適正な管理 ・ 監督を行い ・個人情報の訂正 ・ 削除・開示 本人から、登録されている個人情報について訂正・削除・ 当社らは、個人情報の利用目的を明確に定めるとともに、 正アクセス、情報の紛失、誤用、改変等の防止に努め ます。 ・第三者への提供 開示の請求があった場合は、迅速に対応すること。 弊 その利用目的の達成に必要な範囲内で適正に個人情報 ます。 ご提供いただきました個人情報は、下記を除き第三者へ 社らが保有する個人情報の取り扱い、及び訂正・削除・ を取り扱います。また、個人情報を正確かつ最新の内 ・継続的改善 の提供することは一切ございません。 開示等に関するお問い合わせ及び苦情、相談窓口は以下 容に保つよう努めます。 当社らは、保有するお客様の個人情報に関して適用さ (1) 「Interfere Technology」誌の無料会員登録申込み となります。 ・第三者への提供 れる法令、規範を遵守するとともに、上記各項におけ 時に、 「今後、1 年以内に指定あるいは購入を予定してい Interference Technology: るEMI関連製品・サービス」についての情報を入手する http://www.tuv-ohtama.co.jp/itj/comment.html 当社らは、収集した個人情報を正当な理由が無い限り、 る取組みを適宜見直し、改善していきます。 ことを希望されたお客様につきましては、製品・サービ TEL: 050-5538-2852 無断で個人情報を第三者に提供することは一切ござい ■ 個人情報の取り扱いについて スの情報を提供するため、当社らに提供された個報を、 ・個人情報の収集 ません。 「Interference Technology」誌の広告主のうち当該製品 ・ 資料請求やお申込み等の当誌事業活動の過程で、氏 ・個人情報の訂正 ・ 削除・開示 名、連絡先、勤務先等の個人情報を書面、電子媒体、 サービスに関連する ITJ 広告主に提供いたします。 ITEM メディアと e・オータマ(以下、当社ら)の同意により、Interference Technology における個人情報の 重要性を認識するとともに、個人情報保護に関する法令及びその他の規範を遵守し、 かつ国際的な動向にも配慮して自主的なルール及び体制を確立し、個人情報を安全に管理することにより、 個人の権利を擁護します。 わずかなコストで、 銀に匹敵する シールド性能と、 それを上回る 対腐食性を実現 E•Fill 新しいEMI / RFI導電シールディングフィルタ材料 E-Fill 2702は、鋳型や突き出しガスケット用途に適した ニッケルグラファイト材(D50 = 38 µm)です。 この材料でサイズの大きなものは柔らかいガスケットの製造に有用です。 直流電気による腐食が懸念されるような不利な環境で使われる シールドガスケットには、ニッケルめっきアルミニウムのフィラー材を ご利用ください。 NOW AVAILABLE! ニッケルめっきグラファイト (大きいサイズ) ニッケルめっきアルミニウム www.oerlikon.com/metco EMC設計 W yatt 2014年1月号 掲載 スペクトラム拡散クロック発生 – 理論と論争 Kenneth Wyatt Wyatt Technical Services LLC スペクトラム拡散の歴史 単一周波数の外部 RF 信号に妨害される 2 次 世 界 大 戦 中、 アメ リ カ 海 第 のに十分な時間、 信号周波数を決して滞 軍 は、 無 線 制 御 の 魚雷 が 送 留させることはなかった。 この技術は、 主 信電波と同じ周波数の強力な にピアノ自動演奏装置に使われているメカ RF 信号によって妨害されるという問題を ニズム、 つまりコード化された穴のある円 抱えていた。 オーストリアの女優の Hedy 盤状のものに基づいていた。 初めの周波 (Lamarr) Keisler Markey 氏 [1] とピアニス 数ホッピング順を合わせるために、 特別な トで作曲家の George Antheil 氏は、カリフォ 同期コードが用いられた。 ルニア工科大学の電気工学教授 George Hedy (Lamarr) Markey 氏 と George Antheil 氏の助け を 借りて、 この問 題 を Antheil 氏は、 自分たちの特許の用途に 解決し、 図2に示す 「暗号化通信システ ついて以下のように説明している。 ム」 [2] が U.S. パテント番号 2,292,387 とし て1942年8月11日に特許を取得した。 デ バイスには、 送信機の周波数を高速で切 り替えるメカニズム( 現在、 周波数ホッピ ングと呼ばれている) を使用した。 魚雷 搭載の受信機に類似のデバイスを追加し、 同様の周波数切り替えを行い、 送信信号 を捕らえた。 魚雷を制御している信号は、 「この発明は、異なる周波数の搬送波 の状態に関する暗号化通信システム に関連していて、例えば魚雷のような 操縦可能な移動体の遠隔制御に特 に役立つ。 手短に言えば、遠隔制 御する移動体の無線制御用に採用 された我々のシステムは、同期した一 対の記録の1つを送信機に、もう1つ を受信機に使って、送受信機の同調 を時間ごとに変える…。自動演奏ピア ノで長年使われている形式の記録を 採用しようと考えていて、それは記録 に従った複数の穿孔が、さまざまな 位置に縦に並んだ、長いロール紙か 図1.女優、数学者、発明家であるHedy Lamarr氏。 写真提供http://www.hedylamarr.com interference-technology.jp ら成り立っている。従来の自動演奏ピ アノの記録紙では、穿孔が88個の物 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 5 EMC設計 スペクトラム拡散クロック発生 が多い。我々のシステムでは、ある所から他の所の送信局と受 信局の両方が時間間隔を設けて、このような記録によって周 波数が異なる88個の搬送波を使用することが可能になる。」 試作システムでは50個までの穿孔または周波数ホッピング コードを使用したが、 これが現在使用されている周波数ホッピン グ ・ スペクトラム拡散システムの基礎を形作った。 残念なことに、 アメリカ海軍は第2次世界大戦中に、 そのシステムを使用する機 会は全くなかった。 だが特許が失効した途端、 キューバ危機の 最中に、 そのシステムを使い始めた。 残念なことに、 Lammarr 氏の功績はその後何年も明らかになることはなかった。 この技術のより洗練されたバージョンは、 後に軍の通信システ ムで妨害脆弱性を改善するために用いられ、 最終的にもう1つの 進展として、 現在の携帯電話やコードレス電話で使われている直 接スペクトラム拡散シーケンスが使用されることとなった。 ITE 製品用のスペクトラム拡散クロック発生 スペクトラム拡散クロック発生(SSCG)または「ディザリング」(クロッ ク周波数を変調) は、PC やプリンタのメーカーが時流に乗る以前も、 長年さまざまな分野で使われてきた。 ディスクリート ・ ロジックまた は FPGA を用いてクロック周波数を変調する方法もいくつかある。 1994年8月に、 Keith Hardin 氏、 John Fessler 氏、 Donald Bush 氏 (Lexmark International 社 : IBM からのスピンオフ) の エンジニアは、 その年の IEEE ・ EMC 国際シンポジウムで発表さ れた論文のコンセプトを導入した。 それは、 チャープ ・ スペクトラ ム拡散 (CSS: Chirp Spread Spectrum) 法に基づき、 矩形波ク ロック信号が低周波信号で変調され、 一連の固定周波数、 低い 振幅および高調波を生成する。 その論文 「放射エミッションを引 き下げるためのスペクトラム拡散クロック発生」 は、「優秀論文」 [3] 図2. 「暗号化通信システム」特許の原本。2つの暗号化ローラーストリップを 用いて、並んでいるコンデンサを切り替え、送信と受信の周波数変化を同期さ せていることに注意。 にも選ばれた。 この SSCG はプリンタの試作品に組み込んでシン ポジウム期間中に展示され、 出席者の間で大変な評判となった。 「FCCのスペクトラム拡散についての合法性に対する質問 プレゼンテーションの後で、 Art Wall 氏 (FCC のチーフ ・ エ は最も興味深い。FCCは、30~1000 MHzで120kHz帯域幅 ンジニアのうちの 1 人) が立ち上がって、 合法性について質問し に同意していたが、それは88~108 MHzのFM受信機に基い た。 簡単に言えば彼は IBM に、 この方法でテレビやラジオ、 特 ており、FCCはTVIに対する影響について、帯域幅が6MHzな にテレビに対する EMI が減ることを証明するよう依頼したのであ ので当然疑問を持ったが、合法性を問題にするならば、帯域 る。 妨害の可能性についての研究論文 [4] を1995年に発表した 幅120kHzを同意したときに、TV放送周波数帯の54~88MHz 後、 Hardin 氏、 Fessler 氏、 Bush 氏は、 FCC に 納 得 のい く 証 および108MHz超については1MHz程度の何がしかの帯域幅 拠を提示して、 最終的にチップメーカー数社に外部で特許を使用 するのを承諾することができた。 特許は変調スキームに関するも の使用を考慮すべきだった。 30~1000MHzで120kHzの帯域幅であるという根拠は、元々 ので、指数または 「Hershey Kiss」 と言われている波形 (図5) で、 1977年に遡ってCBEMA(計算機・事務用機器工業会)が 拡散クロックの平坦度を最適化した [5, 6, 7, 8, 9]。 変調周波数は通常、 支持したことによる[10]。これは、狭帯域と広帯域の放射源の 音声の範囲の高域よりちょっと上の約 30kHz あたりで設計された。 考慮およびTV帯域幅にいくらか妥協した現在のFMおよび EMC 規格ごとに、 30 ~ 1000MHz 範囲用のスペクトラムアナライ TV放送受信機技術に基いていた。 ザまたは EMI 受信機の分解能帯域幅 (resolution bandwidth) は 120kHz なので、周波数によるが、帯域幅を十分に超えてクロッ クを拡散させることで、 平均妨害レベルを 8 ~ 12dB 減らした。 EMC フェローエンジニア兼コンサルタントの Ken Javor 氏は 「EMC 専門家」 の LinkedIn グループ内で、 スペクトラム拡散につ いての進行中の論争において、 以下のコメントを加えた。 6 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 Lexmark 社と Intel 社に よる詳 細 な研 究の 後、 実 験 に より SSCG 技術は受信に影響を及ぼさないということがわかった。 1995年に、 SSCG について FCC 自身が調査を実施し、 以下の 結論を得た [11]。 「我々の研究所の調査では、意図的に変調をかけたクロッ 2015年版ガイドブック EMC設計 W yatt 変調なし 振幅 減衰(dB) 変調あり 周波数(MHz) 周波数 図3.120kHzの帯域幅で、周波数に対する減衰効果の実験値と理論値。出典: 図4.スペクトラム拡散をしていないクロック信号としたクロック信号の比 1944年8月EMC国際シンポジウムで発表されたHardin氏、Fessler氏、Bush 較。出典: 1944年8月EMC国際シンポジウムで発表されたHardin氏、Fessler 氏共著の論文「放射エミッションを減少させるためのスペクトラム拡散クロック 氏、Bush氏共著の論文「放射エミッションを減少させるためのスペクトラム拡 発生」。 散クロック発生」。 クが、変調をかけていないクロックと比べて、条件次第で、妨 害の原因として良いか悪いか観察した。しかし、実際の動作 図4は、 クロック発信器の拡散機能をオンにした場合とオフに 状況下で起こる変化を考慮に入れると、このような機器から した場合の例を示す。 この例は、 拡散させていないクロック信号 の妨害リスク全体について有意差はないだろうと思われる。」 に対して上側と下側の拡散が等しい場合の 「中心拡散」 を示す。 「重要な点として、多くの最新パソコンに使われている周波数 この方法には、 特にマイクロプロセッサまたは他のデジタルデバ シンセサイザーで作られたクロックは、しばしば不安定になる イスが 「高すぎるクロック周波数 (overclocked)」 になった場合、 ことがわかった。すでに販売されている中で、少なくともいくつ タイミングの問題があるかもしれない。 つまり拡散させていないク かの既存コンピュータ機器のスペクトラム分布は、SSCG機 ロック周波数が、 クロックで動作しているデバイスのメーカーが決 器と類似しているように見える。このように、SSCG機器から めた上限をすでに超えていることがある。 の妨害の可能性が既存パソコンからのものより大きいとは、 少しも思っていない」。 エミッションレベルの減少効果も同様に増加する。 システム設計問題およびチップメーカーにクロック発生用 IC 供 給を開始させるために、 SSCG IC が PC マザーボードおよび他の ITE 周辺機器に取り込まれるには、 さらに数年間を要した。 PC メーカーは、 内部に PLL シンセサイザ回路を設けて、 より高い 周波数のクロックを作り出して、 マイクロプロセッサを使い始めた。 主要なマイクロプロセッサメーカーの多くは、 自社のプロセッサを SSCG 設計と整合するようにし始めた。 SSCG IC が最終的に入 手可能になったとき、 メーカーは放射エミッションに対する FCC ク ラス B 限度値より低く維持するためにだけ熱心にこの技術を取り 入れた。 SSCG の理論 固定あるいは擬似ランダム変調 (標準的に 30kHz) の低周波 数でのクロック周波数拡散は、 変調信号が測定受信機器または スペアナの分解能帯域幅 (RBW) より極めて広くなるように、 ク ロック発振器と同期するすべての信号からのエミッションを効果的 に減少させる。 図3で示すように、 高調波の周波数が増加すると、 interference-technology.jp サイン波で変調した場合、 相対的な遅延またはサイン波の上 端と下端の時間変化率のために、 拡散信号の両端が上がってい るバットマンのような形になる。 拡散信号の平坦度を上げるため に、 波形の上端と下端での遅延がはるかに小さい三角波形が使 われるかもしれない。 Lexmark 社のエンジニアは、 高調波のエ ミッションの最も高い平坦度を作り出す指数波形つまり 「Hershey Kiss」 波形を開発することで、これをさらに改善した。 この波形は、 他にたくさんある中で、 Lexmark 社が最終的に特許権を取得する ことになったものであった。 SSCG の市販メーカーの多くは、 この 特許の変調波形を使うが、 うち何社かは三角波も使う。 スペクトラム拡散クロックの測定 私は数年前に、 IC Works 社から初期のスペクトラム拡散クロッ クのデモ基板を入手し、 自分の EMC セミナーで技術説明するた めに使っている。 このデモ基板は、 スペクトラム拡散クロック生成 を簡単にオンしたりオフしたりできるところが素晴らしい。 本稿の ために、 周波数に対して規定の帯域幅 120kHz の EMI 受信機を 用いて、 拡散クロックを発生させる前と後を測定した。 高次の高調波で拡散が次数倍になるので、 この手順では高 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 7 EMC設計 スペクトラム拡散クロック発生 システム性能に影響を及ぼすかもしれない。 特別な事前注意が必要となるもう1つの領域は、 SSCG 駆動 のダウンストリームを設計に含む場合である。 PLL は低域フィル タの特性を示し、 入力周波数を低く変化させることを可能にする。 SSCG は意図的にクロックを変調するので、 PLL のロックを維持 することができない場合がある。 PLL 帯域幅が低すぎると、 PLL はクロックを確実に追跡できずに、 トラッキングスキューと多くの ジッタを発生させる。 最初の SSCG IC を生産したメーカーの1つは、 IC Works 社 (1999年に Cypress Semiconductor 社によって買収された) で あった。 同社は、 Lexmark 社から指数 (最適化された) 波形の 特許使用を許可された会社の1つだった。 私のデモ用の基板は、 下側拡散技術の W42C31-09 SSCG チップを使っていた。 今日では、 SSCG IC メーカーは、 Analog Devices 社、 Maxim 社、 Linear Technology 社、 ON Semiconductor 社、 Fujitsu 社、 Silicon Labs 社、Cypress Semiconductor 社、Mercury Crystal 社、 NEL Frequency Controls 社、 Xilinx 社など、 複数ある。 SSCG についての論争 FCC がこの技術を公式に奨励し、 ほぼ全ての ITE や、 その周 辺機器メーカーが長年、 この技術を使用している一方で、 特に 最近使われている広帯域通信や放送システムに対する EMI が本 当に効果的に改善されるかどうか、 有効性に疑問を持つ人々が いまだにいる。 実際の測定 (下記) からわかるように、 受信機 またはスペクトラムアナライザの分解能帯域幅 (RBW) を広げる ことによって、 EMI を減少させる効果はゼロになるように見える。 図5.クロック信号の減衰を最大にする鍵は変調信号である。出典: 1944年8月 EMC国際シンポジウムで発表されたHardin氏、Fessler氏、Bush氏共著の論文 「放射エミッションを減少させるためのスペクトラム拡散クロック発生」。 事実、 こういった広帯域では、 基本クロックがある変調率で、 単 に周波数がスイープまたは前後にホッピングしているだけで、 ス ペアナが 「騙されて」 120 kHz の RBW で測定された振幅は実際 の振幅より低く測定されているという、思い違いがある。実際には、 調波の次数増加に比例して EMI 減少効果が増す。 このデモ基板 さらに後述する通り、 これは全く正しくない。 の基本クロック周波数 40MHz から始めて、 高調波の 200MHz と 200MHz の高調波を測定した図7と、 1MHz の広い分解能帯域 440MHz を比較する。 図を見れば分かるように、 各周波数で 6、 幅を使って同じものを測定した図 9 と比較した場合、 実際、 全く 12、 15 dB の EMI 減少効果があり、 周波数が高くなると EMI 減 減少効果がなくクロックが周波数ドメインで単に 「スイープしている」 少効果も高くなる。 容易に比較できるように、 拡散クロックの相 ように見える。 対的帯域幅が、 だいたい2つの部分を占めるよう周波数スパンを これは技術を批判する人の大部分が引っかかる点のように思 調整した。 また、 周波数の 「下側拡散」 を使用していることも観 える。 要するに、 SSCG に対しクロックは適用された変調に応じ 察できる。 て周波数が実際に、 ただ 「スイープする」 あるいは前後にホッピ ングするだけなので、 元々の振幅で最悪のケース (拡散信号が 事前注意 SSCG による問題は、 SSCG がシステム内にタイミングのス キューおよび応答したジッタをもたらす可能性があることである。 限度値において正しく、 120kHz 帯域幅で測定された場合) では、 製品設計者が放射エミッション限度値を 20dB 程度まで超えるこ とが許容されたかのように見えるのだ。 SSCG 使用における重大な欠点の1つは、 クロックの精度が重 2011年4月、 EE Times 誌の編集者 Bill Schweber 氏は 「EMI 要となるシステム、 例えばイーサネット、 CAN バス、 その他タイミ を減らすために、 スペクトラム拡散クロックは賢い方法か?あるい ングが重要な用途では使えないことである。 SSCG はクロック信 は詐欺なのか?」 号にかなりのジッタを発生させるので、 SSCG の仕様決定におい げた。 以下その記事からの抜粋である。 [12] で、 両方の立場から総合的な論争を繰り広 て、 その拡散量 (および方向) に十分な注意が必要である。 こ ▽ 「スペクトラム拡散を使うことに対する論争は、 実際のところ のジッタによって重要なセットアップやホールドの違反原因、 高い 設計の 「問題」 を他の誰かのせいにしているかもしれない、 と ビットエラー、 PLL の位相同期が取れなくなる問題などが発生し、 8 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015年版ガイドブック EMC設計 W yatt 図6.基本周波数40MHzにおける、SSCG使用前と使用後(120kHz帯域幅で測定)。注:これは、デジタルデバイスの動作クロック 周波数が上限に近い周波数で使う場合、より安全な「下側拡散」クロックの例である(次の事前注意セッション参照)。 図7.高調波周波数200 MHzにおけるSSCG使用前と使用後(120kHz帯域幅で測定)。注: EMI減少効果が向上している。 いうことである。 エネルギーを拡散した際、 確かに、 仕様には適 る有害な妨害を避けるため、電子デバイスからのRFエミッシ 合しているかもしれない。 だが拡散エネルギーが他の近くの、 あ ョンを制限することを目的とする。SSCGは、そのようなエミッ るいは接続されたシステム内で未知/未定義のエネルギーとそれ ション放射電力を減らすのに何も役立っておらず、単に基本 ぞれ独自の周波数と振幅でミックスされた場合には、 予想外の問 周波数の近傍で周波数を変化させているだけなので、EMC 題が起こる可能性も生むことになる。 要するに 「仕様には適合し 試験機器は個別のどの周波数においても、高すぎる電力レ たよ…だから後の事はこっちの問題じゃない!」 ということだ。 ベルを記録することはない。電子機器メーカーは、クロック周 ブロガーの Michael Ossmann 氏は、 2011年8月18日に投稿 したブログ 「スペクトラム拡散クロック発生、 エミッション、 安全性 波数の検出を巧みに回避するためにインチキをしている」。 そしてあなた」 [13] で、 この意見に同調している。 によれば、広帯域SSCG高調波はDAB(デジタル音声放送)お よびDVB-T(DVB規格の地上デジタルテレビジョン放送)を混 「SSCGはまずパソコンメーカーに普及し、最近では他の電 乱させる原因になりうるという 子デバイスにも広まっている。この技術が使われる唯一の 理由は、私の知る限り、FCC他、世界中の規制当局から要求 される電磁両立性(EMC)試験に簡単に合格させるためであ る。EMC規制は、無線システムや他の近接電子機器に対す interference-technology.jp さらに、ハートフォードシャー大学が2000年に発表した研究 [14] 。 「DABと DVB-TはCOFDM(直交周波数分割多重方式)を 使っている。COFDMは、ビット誤り率が特定の決定的レベル を超えるまで妨害が許容できる閾値を示す。この閾値を超え INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 9 EMC設計 スペクトラム拡散クロック発生 図8: 高調波周波数440 MHzにおけるSSCG使用前と使用後(120kHz帯域幅で測定)。注: EMI減少効果がさらに向上している。 図9.図7と同じく200MHzの高調波、ただし1MHzの分解能帯域幅で測定。明白な拡散クロックの減少はゼロであ ることに注意。これにより、批評家たちは騙されて変調したクロックが単に前後に「スイープ」し広帯域受信機技術 において実際のEMI減少効果はないと思ってしまう ると、DABまたはDVB-Tは多重通信によって、全てのプログラ 受信に使われている周波数に合った場合には、サービスの ムを完全に失うことになる急速な機能劣化がおこる。ディザー 完全な喪失がありそうだ」。 (dithered周波数変調)させていないクロックからの高調波、ま 「妨害調査という点では、COFDM放送信号より20dB低い広 たはアナログVSBテレビ信号からの同一チャンネル妨害のよ 帯域妨害信号(両方共同じ帯域幅で測定されるとき)はサー うな狭帯域妨害信号は、1つまたは少数の副搬送波に妨害す ビス喪失原因になりうるが、そのような信号源を見つけるのは るかもしれない。これは通常、許容されるが、広帯域信号がか 難しく、その存在を証明するのはさらに難しい」。 なりの数の副搬送波に妨害した場合は、結果としてサービス の完全な喪失が起こりうる」。 他 方、 2 0 0 1年 8 月、 Intel 社 の Harry Skinner 氏 と Kevin 「試験は、放射エミッションが広帯域ランダムノイズに似てい Slattery 氏は、 この技術が実際に電子システムに対する妨害の る妨害源にはDVB-TやDABの受信における最も大きな妨害 危険性を減らすことを示す実験結果を発表した [15]。 両氏によれ の可能性があることを示した。ある種のデジタル制御発振器 ば問題は以下のとおりである。 「クロックのディザリング(dithering) (DCO:Digital Controlled Oscillator)からのエミッションは、ラ は非意図的放射機器の妨害可能性を削減するだろうか?あるい ンダムノイズに似た妨害の可能性がある。そのようなDCOか は、 規則が保護する予定のサービスにおいて、 ノイズ拡散による らの放射エミッションや、その高調波のうちの1つが、DVB-T 新方法で混乱が生じるだろうか?」 そして 「信号の妨害可能性は、 受信機が信号を統合する時間の長さに著しく関係し、 サービス提 10 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015年版ガイドブック EMC設計 W yatt 供周波数帯において侵入する妨害波の存在に依 存するので、 変調の結果として生じる周波数/ 時間の関係は実際に妨害の可能性を低下させ る。 両氏の実験結果は、 FM 放送受信機 (ソニー のウォ ー クマン) に対する影 響を測定して、 5 MHz 帯域幅以上に拡散さたエネルギーは、 受 信周波数の非拡散信号全体の音声品質におい て、 明らかな劣化の原因にはならないことを、 確 かに示した。 その後2003年に Hardin 氏たちは、 広帯域 のデジタルシステムに対する妨害に関して、 さら なる調査結果を発表した [16]。 目指すものは、 基準レベルとして既存の技術 を使用している妨害可能性を測定し、 変調され 図10: 40MHzスペクトラム拡散信号の 拡大された信号、40MHzからちょっと下(38.4MHz)に 調整したので、拡散信号の低域が見られる。この場合、RBWは1kHzに設定。31.25MHzの高 調波の個々に固定された周波数と減少する振幅に注意。40MHzの基本信号はスイープされて いない! たクロック源と非変調クロック源の両方を使って いるデジタル TV (DTV と DVB-T) 受信機の妨害可能性を特定 するの方法を確立することだった。 両氏は、 DTV と DVB-T 受信機用に妨害マージンを評価する 試験手順を定めた。 DTV に用いられている COFDM 通信方式 には、 誤り訂正ルーチンが使用されているので、 アナログ PAL テレビ受信機より妨害信号に対してはるかに大きな耐性があり、 16dB 程度まで良いマージンが得られる。 PAL に対する電波障害 非拡散基本波と同じ振幅になるはずである。 SSCG の実際の物理的評価をするとき、 31.25kHz の変調周 波数よりかなり下回った RBW (この事例では 1kHz) を保つこと が重要である。 ビデオ BW (この事例では 300kHz) は、 RBW と等しいか上回らなければならない。 一般に、 準尖頭 (QP) と 尖頭モードにおいてフィルタリング効果は異なるので、 低いビデ オ帯域幅を持つスペクトル ・ アナライザでは、 完全な適合性評 は、 今の CISPR 22 と FCC 規則パート 15 によって十分に管理さ 価受信機と異なる振幅が得られる。 我々が見ている高調波は、 れているので、 Hardin 氏は、 SSCG に対して、 更なる規則の必 実は変調された矩形波 f (x)のフーリエ級数展開の結果である。 要はないという結論である。 フーリエ級数の積分形に関する概要は、 関数 cos (nx) また SSCG の物理学 は sin (nx) と an または bn の掛算の和で、 時間を変数とし たクロック波形の関数を生成することである。 前述したように、 SSCG は基本波の高調波を単に高速でス イープしたりホッピングしたりしているのではない。 仮にもっと狭い RBW で拡散クロックを観測したならば、 拡散信号は実際に変調 周波数で固定された無限に連なっている高調波で成り立っている ことを観察できただろう。 我々の例では、 その場合は、 31.25kHz の高調波の大きさ (図10参照) は、基本周波数に近づくにつれ、 f (x) を一般的な近似式で表すとき、cos (nx) または sin (nx) 徐々に上昇している。 基本周波数から始めて、 その高次の全て は an 項および bn 項の高次の値を与える。 40MHz は SSCG を の高調波を観測し始めるまでは、 こういった無限に続く高次の高 止めたときの、 意図したクロックの基本周波数なので、 高調波 調波のほとんどは、 スペクトラムアナライザのノイズレベルに隠れ は 40 MHz の倍数だけだと予想するが、 40MHz 非拡散クロック ているだろう。 は、 f (x) =f (x+1/31.25 kHz) であ る限り、 31.25kHz でも周 実際に起こっているのは基本クロックのスイープではなく、 非拡 期的だと言う事もできる。 これは、ある周期の時間シフト関数は、 散基本波の振幅より減った 31.25kHz 間隔の一連の固定された(個 オリジ ナル 関 数と同じであ ると言える。 この場 合、 基 本 の 別の) 高調波であることがわかる。 この場合、 40MHz の非拡散 40MHz に近づくまで、高調波の全てが 31kHz からゼロである(い 基本波は、 およそ 95dBuV (図10内の緑線) であり、 31.25kHz くつかの数値の間違いは除く)。 振幅の全ては、 40MHz 間隔で の高調波はおよそ 18dB (RBW: 1kHz) 低下している。 受信通過 高調波を計算するので、 40MHz の倍数で正確に同じとなる。 帯域が 120kHz では、 そこに個々の 31.25 kHz の高調波が 4 ~ 5 こ れ は、 波入ってしまい、それぞれ加算されて全体としてより高い振幅になっ よびその高調波との類似点を多数持っているからである。 が、 40MHz の矩形波お てしまうので、 RBW がより広い 120kHz では、 これを見ることがで では SSCG をオンしてみよう。 31.25 kHz の高調波を <<40 きない。RBW をさらに広げて(変調周波数 31.25 kHz より広く)、個々 MHz で見ると、 an と bn の値は 40MHz の正弦波に殆ど似てい の高調波を全て集めて合計すると非変調信号のタイムドメイン信号 ないので、 ゼロに近い。 n=1229 に近づくと、 フーリエ級数展開 と同じ振幅でなければならないので、 個々の高調波を加算すれば の周波数は、31.25 kHz*1229 = 38.41MHz(図 10 の中心周波数) interference-technology.jp INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 11 EMC設計 なので、 これらの周波数は、 変調された矩形波 f (x) の現在の 時間パートである。 これにより、 スペクトル ・ アナライザで見える 通り高調波が上昇している。 高調波は、 40MHz を超える周波数 で再び低下し始める。 仮に時間領域で、 正しい位相 ( 逆フーリエ スペクトラム拡散クロック発生 Processing and Office Equipment” , 1977. 11. J. P. Knapp, Letter from Federal Communications Commission to Donald R. Bush, Feb. 24, 1995. 12. Bill Schweber,“ Spread spectrum clock to reduce EMI: 変換) で全ての高調波を加えた場合は、 元の変調された矩形波 clever or cheat?” , April 27, 2012, http://www.eetimes.com/design/ のクロックを再現できるだろう。 analog-design/4371865/Reducing-EMI-by-using-spread-spectrumtechniques 結論 13. 多くのエンジニアは、 SSCG が規格を実際に 「ごまかしている」 と思わされているが、 真相は事実と違う。 スペクトラム拡散クロッ クは、 実際には非拡散クロックと同じ振幅で前後に 「スイープ」 し Michael Mossman, Spread Spectrum Clock Generation, Emission Security, and You, http://ossmann.blogspot.com/2011/08/ spread-spectrum-clock-generation.html 14. Investigation into possible effects resulting from dithered ておらず、 実際には 31.25kHz の変調周波数の固定された周波 clock oscillators on EMC measurements and interference to radio 数の低い振幅の高調波のフーリエ級数で構成されている。 なぜ transmission systems, report to the Radiocommunications Agency by なら妨害を引き起こすのは、 実際には受信機の通過帯域内の電 the University of Hertfordshire, March 2000. 力密度なので、 SSCG 使用による電力拡散は妨害のリスクを減ら す傾向がある。 SSCG で製造される何億もの製品があったという事実および、 もしあったとしても SSCG が妨害問題の根本原因であると文書化 15. H.G. Skinner and K. P. Slattery, Why Spread Spectrum Clocking of Computing Devices is Not Cheating, IEEE International Symposium on EMC, August 2001. 16. Hardin, Oglesbee and Fischer, Investigation Into the されたケースはほとんどなかったという事実は、 設計者と規格の Interference Potential of Spread Spectrum Clock Generation to 実行に携わる人々にとっては、 ある程度の安心を与えることにな Broadband Digital Communications, IEEE Transactions on EMC, Vol. るはずである。 45, No. 1, February 2003. SSCG 関連の参考文献 謝辞 1. Richard Rhodes, Hedy’ s Folly – The Life and Breakthrough EMC Compliance 社 オ ー ナ ー の Ken Javor 氏、 Lexmark Inventions of Hedy Lamarr” , describes her most interesting life as a International 社 の Keith Hardin 博 士、 Morrow Technical silver screen star, mathematician and inventor. Services 社の Robert Morrow 博士に、本稿を執筆するにあたり、 2. H. K. Markey, et al, Secret Communication System, U.S. 計り知れないほどの貴重な支援に謝意を表する。 Patent 2 292 387, August 11, 1942. 3. Hardin, Fessler, and Bush, Spread-Spectrum Clock Generation for the Reduction of Radiated Emissions, International Symposium on EMC, August 1994. 筆者略歴 Wyatt Technical Services 社の上級 EMC エンジニア Kenneth Wyatt 氏は、 生物学と電子工学の学位を持ち、 航空宇宙産業 Hardin, Fessler and Bush, A Study of the Interference 関連のさまざまな会社で、 DCDC 電源コンバータから RF やマイ Potential of Spread Spectrum Clock Generation Techniques, IEEE クロ波システムまで、 船舶搭載や宇宙システム用の製品開発エ International Symposium on EMC, August 1995. ンジニアとして10年間勤務した。 また20年以上、 米国 Colorado 4. 5. K. Hardin, et al., Spread Spectrum Clock Generator and Associated Method, U.S. Patent 5 488 627, January 30 1996. 6. K. Hardin, et al., Spread Spectrum Clock Generator and Associated Method, U.S. Patent 5 867 524, January 30 1996. 7. K. Hardin, Spread Spectrum Clock Generator, U.S. Patent 5 631 920, May 20 1997. 8. K. Hardin, Variable Spread Spectrum Clock, U.S. Patent 6 167 103, December 26, 2000. Springs の Hewlett-Packard 社 と Agilent Technologies 社 で は EMC エンジニアとして勤めた。 2008年に独立し、 EMC コ ンサルタントとして活躍中。 RF アンプ設計、 RF ネットワークア ナライザのソフトウェア、 製品の EMC 設計などのトピックスに つ いて多 数の著 述、 講 演 をこ な して い る。 RF Design、 EMC Design & Test、 Electronic Design、 Microwave Journal、 HP Journal、 Safety & EMC (China)、 Interference Technology (ITEM)、 InCompliance Magazine、 Test & Measurement World K. Hardin, et al., Method and Apparatus for Compensating a などの雑誌に記事を発表したことがあり、 最近では、 Test & Spread Spectrum Clock Generator, U.S. Patent 6 292 507, September Measurement World 誌の 「The EMC Blog」 に執筆した。 Wyatt 18, 2001 氏は IEEE のシニアメンバーで、 長期にわたり EMC ソサエティの 9. 10. Computer and Business Equipment Manufacturers Association (CBEMA) , Document ESC5/77/29,“ Limits and Methods 公式カメラマンを務めている。またdB Society のメンバーでもあり、 アマチュア無線技士。 連絡先は、 ken@emc-seminars.com ■ of Measurement of Electromagnetic Emanations from Electronic Data 12 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015年版ガイドブック EMC設計 M accu n e 2014年5月号 掲載 他とは違うCMOS: ノイズとEMIを低くするためのPCB設計 EARL MCCUNE Consultant RF Communications Consulting 要約 良いほど使われることがなかったので、 そ 低い電源ノイズを達成したからといって の情報は皆に忘れられてしまったようだ。 自動的に低い EMI を保証できるわけでは 本稿は、 低い EMI の印刷回路レイアウ ない。 幸いなことに低い EMI にするため トを簡単に作る方法について思い出しても の PCB レイアウト設計を用いれば、 自動 らうために書いた。 プリント回路の優れた 的にノイズは低くなる。 ここで紹介する技 EMI 設計はそれほど難しくはないが、 そ 術によって、 目的を両方とも達成できるの の基礎となる物理的過程を詳しく認識す である。 ることが必要となる。 近道は存在しない。 低い EMI を実現するための印刷回路レ 法則に従えば、 成功はむしろ簡単である。 イアウト設計に数十年が費やされてきた [1] 急いで事に当たれば、 すぐに問題が発覚 [2] 。 それでもなお、 現役 RF エンジニアと する。 して膨大な量の EMI を発生するレイアウト 電磁気学の法則によると、 EMI を根本 の基板に何度も遭遇する。 情報はあふれ 的に低いレベルに維持するための必要条 ている時代なのに、 この種の問題がなぜ 件は2つある。 その条件とは下記の通り 終わらないのかと不思議に思う人もいるだ である。 ろう。 その答は、 驚くには値しない。 利用 可能な情報の多くは、 誤解を生むか、 間 違っているか、 だからである。 その良い例 が参考文献 [2] にある。 設計者はこの例 のように自分達だけで学ぶことを選択する interference-technology.jp 1. インピー ダンスを低くして、発生電 流を最小にする。 2. 各電 流 ル ープに囲ま れた面積を 最小にする。 ので、 恐ろしく能率が悪く、 コストも高くな EMI 関係の出版物では、 上記1番目の る。 ここで紹介される結果は、 長年わかっ 要求事項を達成する方法について大いに ていたことである [5]。 だが、 全くと言って 議論されている。 しかし、 2番目の要求 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 13 EMC設計 ノイズとEMIを低くするためのPCB設計 は、出力がそれぞれ 「1」 または 「0」 であるかどうかに関わらず、 ゲート出力を直接、 電源またはグランドのどちらかに接続するス イッチで構成されている。 電源電流スパイクは、 両方のスイッチが同時に OFF であるこ とが許されないチップ設計基準が原因で発生する。 したがって、 スイッチの一方が OFF に変わり、 他の一方が ON に変わるとき、 両方のスイッチが部分的に ON であるという非常に短い意図的 な瞬間がある。 この期間中の短い瞬間( 通常 1 ナノ秒以下) に、 電源とグランド間を直接結ぶ電流の経路 (抵抗) ができて、 出 力ロジック信号に関与しない電流の流れを引き起こす。 この電 図1.一般的なCMOS回路構造。電源レールのどちらか1つに接続 するスイッチを制御する。 流は瞬間的だが、 非常に大きい値になりうる。 図2は1個の小 さな CMOS IC の計測結果の一例で、 スパイク電流の大きさが 300mA を示している。 電流経路のリアクタンスは、 電流スパイ 事項については誰も取り扱っていない。 これは、 別な方法でノイ クによって励起し、 減衰振動で応答する。 すべては 15 ナノ秒で ズが低くなっている基板が、 依然として膨大な量の EMI を発生さ 終わっている。 せているという盲点である。 幸い、 解決策はわかりやすいので、 同位相のロジックは CMOS ロジックにおいては極めて一般的 手始めに PCB レイアウトを簡単に設計した。 本稿では、 基本 だが、 すべての出力変化がほぼ同じ時間に起こるため EMI を悪 的な技術がうまく作用する方法およびその理由、 また何をするべ 化させる。 これは、 IC 内のゲート全部に対しそれぞれ1回ずつ、 きかについて、 すべて明らかにする。 すべての電流スパイクが一緒に起こる原因になる。 これらの電 真っ先にやるべきなのは、 続流 (dynamic current) を作り出 流が加算されて、 もちろん、 非常に大きな続流を作り出す負荷 す負荷をすべて知ることである。 一番わかりやすい続流を作り出 ができる。 多くの EMI の発生を避けるため、 これについては非 す負荷は、 信号パターンに沿って流れる信号である。 これらの 常に慎重に対応しなくてはいけない。 また、 これはシグナルイン 信号が最高速 (2ナノ秒あるいはそれ以下) のとき、 基板レイア テグリティから完全に独立している。 ウトは制御されたインピーダンスと正確なラインへの信号源と負 電磁放射は、 電圧ではなく電流によって発生する。 低 EMI 荷終端を持つ必要がある。 これはシグナルインテグリティの標準 設計への鍵は、 結果として生じる妨害波放射を決してゼロには 的な対応なので、 本稿ではこれ以上の議論はしない。 しかし私 できないものの最小限になるように、 続流すべてを制御すること の経験から言うと、 特に CMOS 技術が使われる際には、 他の にある。これにより、どんな潜在的送信機も効果的に静かになる。 どんな信号電流よりもはるかに大きい EMI 問題となる別の 「隠 電磁気学の法則によれば、 この低い EMI を達成するためには、 れた」 続流を作り出す負荷がある。 それぞれの電流ループ領域を小さくしなければならない。 これを この続流は、 貫通回路電流 (crowbar current)、 短絡回路 電流 (short-circuit current)、 供給スパイク (supply spike) な どうやって実行するかということが、 低 EMI 設計のための秘訣 である。 ど他の名前で呼ばれることもある。 それは、 図1に示されている ここでもまたすべての電流がループを形成する [3]。 これは回 ように CMOS ゲートが集積回路内部でどうやって動作しているか 路分析クラスの最初に学ぶことである。 その後、 学習が進んで、 という人工物の自然現象である。 実際、 すべての CMOS ゲート 電流が電源から来て回路を流れ 「グランド」 に消えていくという 図3.一般的回路の電流ループ 図2.出力変化時に測定された標準的なCMOS電源電流スパイク。 縦軸200mA/目盛(下の波形) 14 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 図4.電源電流ループ上の各回路ブロック内での迂回(bypass)路 追加 2015年版ガイドブック EMC設計 M accu n e (b) (a) 図5.両面ともベタグランドの銅箔でレイアウトされ、各CMOS ICにバイパス・コンデンサを付けたときの a)電源ノイズ(下側パターン、200 mV / 目盛)、b)正式なEMIスキャン ことを知ると、 この基本的な事実をいとも簡単に忘れてしまう。 バイパス さらに悪いことには、 すべてのリターン電流は 「ノード 0」 を通る EMI 問題のすべてを引き起こす高周波電流スパイクの発生源 とシミュレートしてしまう。 こういった一般的な習慣により現実は については、 その発生源に非常に近いリターン経路を与えるこ 不明瞭となり、 リスクを負うことになる。 つまり、 性能劣化の原因 とが望ましい。 これがバイパス (bypass) するというアイデアで、 となり、 発生するべくして起こった余分な作業のためにスケジュー その原理を図4に示す。 回路ブロックを動作させるのに必要な全 ルが遅れ、 必要なかったはずの EMI 軽減と追加試験によりコス 電力が電源から流れ電源へ戻らなければならない一方、 問題 ト増を招いて、 市場投入が遅れ、 利益を失うことになる。 のある電流スパイク電流は発生源から電源ノードに戻らなけれ 実際の電流の流れを図3に示す。 信号電流ループは最初の ばならないだけである。 回路ブロックから始まり、 終わる。 電源電流ループの始まりと終 各 CMOS IC に バイパ ス ・ コン デン サを 付け たと きの両面 わりは電源内部である。 実際にはインピーダンスがゼロの回路 PCB の性能測定を図5に示す。 この PCB には表面と裏面にベ は存在しないので、 電源電流ループ上にあるすべてのインピー タ銅箔 (copper pour) があり、 両方ともグランド ・ ノードに接続 ダンスに対して電圧低下が必ず起こることを、 オームの法則は教 されている。 これらのベタ銅箔には、 非常に有益な効果 [4] があ えている。 これにはリターンパスも含まれているのだ!電源へ戻 るので、 ここでは基準となる性能を得るために使われる。 図5a る際に多くの電流が合流するにつれて、 インピーダンス全体にわ から電源ノイズがピーク ・ トー ・ ピークで 200mV であること、 図 たる電圧低下は実際、 「ブロック 1」 などの回路に対する供給電 5b の EMI スキャンでは EMI 発生が 500MHz 超から減り始め、 圧に影響を与える。 したがって、 すべての電源とリターン (この 150MHz 近辺にピークがあることに気づく。 用語は 「グランド」 よりずっと好ましい) インピーダンスを実現可 能な、 できるだけ小さな値に保つことが不可欠である。 元々30年以上前に計画された際、 バイパス・ コンデンサ (低 い AC インピーダンス、 高い DC インピーダンス) の追加は非常 に効果的だった。 というのも、 電源とリターン ・ ネットワークのイ (a) (b) 図6.各CMOS ICにバイパス・コンデンサを付けた内層に電源プレーンとグランドプレーンのある4層PCB: a)電源ノイズ(下の波形、200 mV / 目盛)、b) 正式のEMIスキャン interference-technology.jp INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 15 EMC設計 ノイズとEMIを低くするためのPCB設計 外の基板の中の1つである。 図5で使った基板と同じ回路、 同じ 配置にしてあるが、 ここでは内部に電源プレーンとグランドプレー ンのある4層の PCB を使っており、 図 5a の測定結果に比べ、 図 6a で電源ノイズが劇的に低下していることがわかる。 しかし、 EMI スキャン結果を比較すると、 図 6b は UHF 周波 図7.誘導素子が挿入された場合、電源電流ループは局所のバイパ ス・コンデンサを通り抜けることを強いられ、高周波電流は物理的に 閉じ込められる。 数帯で EMI 放射の顕著な増加を示している。 図 5b の 150MHz 近辺の最初のピークが消えているが、 500MHz 以上の放射が劇 的に増加している。 これは、 電源ノイズを減少させる従来の方 法例だが、 実際には EMI をより悪化させている。 電源プレーン の低いインピーダンスは、 CMOS に流れる電流による電圧変化 ンピーダンスが当時はかなり高かったからである。 多層 PCB 技 を明らかに減らしているが、 この低いインピーダンスによって高 術は、 まだ登場していなかった。 現在では多層技術が容易に使 周波電流は非常に広い領域に流れることが可能となるので、 高 用できるが、 利点もあれば問題点もある。 周波電流のループはより大きくなる。 これは、 EMI を減らすため には低いインピーダンスだけでは不十分であることの証明にな 電源プレーン る。 電流ループもまた小さくしなければならない。 求めているも 多層 PCB 技術により、 電源供給と戻り経路のインピーダンス を両方とも激減させることができる のを得るには、 もう1ステップ必要である。 [3] 。 これは、 低い EMI を達 成するための必要条件(1)に合った理想的なものである。 しかし、 これが実は必要条件 (2) の達成を難しくしていることがわかる。 その理由は図4が示している。 各バイパス ・ コンデンサは、 電 解決策:電源と負荷ブロック間に AC 高インピー ダンスを挿入 このトリックは、 高周波スパイク電流がバイパス ・ コンデンサ 源と回路ブロックに並列に直接接続されている。 回路分析クラス を通って戻りのプレーンから完全に離れるよう、 電源プレーンが の最初に、 どんな並列回路においてでも電流は主に最も低いイ 高周波で高いインピーダンスを持つと見せかけることにある。 し ンピーダンス経路に流れると学んだことをここで再度思い出して かし低周波では電流を低いインピーダンスに通す必要があり、 欲しい。 どの経路が最も低いインピーダンスを持つのか? 電源 そのために電源プレーンとグランドプレーンがある。 幸い、 図7 と戻り (グランド) プレーンが使われるとき、 最も低いインピーダ で示すように、 電源プレーンから回路ブロックへの入口に誘導素 ンス経路は、 これらのプレーンを通る経路であるとわかる。 する 子を挿入することによって、 これは簡単に達成できる。 と電子は、 この宇宙で最も怠惰 (ゆえに予測できる) 生き物な インダクタンスと静電容量があるときはいつも、 共振が起こる ので、 プレーンを通って流れることになる。 関連周波数において が、 それは我々には不要のものである。 これは、 フェライト・ビー 効果的に高いインピーダンスが出るような形にしない限り、 バイ ズのような非常に Q の低いインダクタを用いて対応する。 この パス ・ コンデンサはほとんど影響しない。 パーツ選択により、 共振応答を鈍らすだけでなく、 デカップリン 私は、 バイパス ・ コンデンサが取り付けられているか否かに グの効果を持つ帯域幅を広げることができ、 双方とも良い効果 関わらず、 多くの回路基板が同じ動作をするのを何度も見た。 そ をもたらす。 各々の CMOS から電源プレーンへの接続部にフェ れが理由である。 結果としてノイズ電圧の低い予想外の状況に ライト ・ ビーズを挿入する影響は、 図8で見ることができる。 なるが、 EMI は違う。 図6でわかるように、 サンプル基板は予想 (a) 図 8a の電源ノイズ波形と図 6a を比較すると、 波形の違いは (b) 図8.内部に電源プレーンとグランドプレーンを備え、電源プレーンと各負荷ブロックとの接続部にフェライト・ビーズを挿入した4層PCB: a)電源ノイズ(下の波形、200 mV / 目盛)、b) 正式のEMIスキャン 16 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015年版ガイドブック EMC設計 M accu n e 見受けられない。 両基板とも、 分配される電源にはほとんどノイ は、 ローカル ・ バイパス ・ コンデンサと電源分配ネットワークと ズはない。しかし EMI スキャン結果の図には、劇的な違いがある。 バイパス ・ コンデンサが並列接続された IC 間に誘導素子を加え フェライト ・ ビーズを挿入する事によって、 600MHz で EMI レベル るという賢明な選択によって達成される。 特定の IC の関連の有 が 15dB 以上低下した。 低い周波数帯も減衰しているが、 それ る電源 (VDD) ピンとグランドリターン (VSS) ピン間にバイパス ほど大きくは減っていない。 しかし、 バイパス ・ コンデンサの電 を確保することは、 重要である。 源プレーンへの接続部分それぞれにフェライト ・ ビーズを追加す こういった EMI を低くする設計技術を、 この技術をまだ組み込 るだけで、 CMOS 回路と電源分配プレーンを使ったどんな基板 んでいない既存の印刷回路基板に追加することは非常に難しく、 でも UHF EMI の発生は減らすことができるというのがポイントで 不可能と言ってもよい。 したがって、 低いノイズと EMI を同時に ある。 最小化するためには初期の設計が必要である。 そうすることで つまり、 CMOS IC 側にフェライト ・ ビーズ ・ インダクタンスとバ イパス ・ コンデンサが不可欠という意味である。 この2つは相乗 販売前に、 製品の EMI 認証試験中に発生する問題の多くを排 除することができる。 効果で動作するので、 電源分配プレーンを用いる際、 バイパス・ コンデンサのみ使っても役に立たない。 バイパス ・ コンデンサ 謝辞 を付けずに電源プレーンとの接続部へフェライト ・ ビーズのみを CKC Laboratories, Inc. (www.ckc.com ) のカリフォルニア州 挿入した場合 (これを私は見たことがある!)、 何もしないよりも フリーモント (Fremont) の施設を使って正式な EMI 測定をさせ EMI レベルが上がる。 しかし図 8b に見られるように、 両方の部 ていただいたことに深く感謝申し上げる。 品を同時に使えば、 強力な EMI 対策になる。 最初の PCB 設計時に、 フェライト ・ ビーズを組み込んでおくこ とは、 極めて重要である。 試験中に EMI 問題が発覚した場合、 この対策を後から追加することは、 ほとんど不可能である。 実 装密度の高い PCB に部品追加することが歓迎されないのは明 らかだが、 これを怠ると後になって EMI 問題が発覚することにな る。 この保険に必要な数センチ ・ 数ミリのスペースは、 EMI 試 験と問題軽減のコスト、 それに加えて、 製品の遅れと、 これらの 追加コストと比較して、 実に安上がりだと言える。 複数の電源ピントとグランドピンも持った大きな CMOS IC デバ イスで、 この技術を確実に機能させるためには、 あと 1 歩が必 要となる。 こういった大きな IC は、 通常チップの電源を別々の 領域に分割していて、 これは通常、 チップ上で電力供給 (VDD) ピンと 「グランド」 リターン (VSS) ピンすべての間に接続がない ことを意味する。 どの VDD ピンが、 どの VSS ピンが対になって いるか確認することが必要である。 所期の効果を発揮するため のバイパス ・ コンデンサは、 これら対になった VCC と VSS の間 に接続しなければならない。 ある領域の VDD と異なる領域の VSS を 「バイパス」 しても役に立たない。 しかしバイパス ・ コン デンサが、 IC の分割された電源領域の VDD ピンと VSS ピン間 に適切に接続され、 電源プレーンとの各接続部へフェライト・ビー ズを挿入すれば、 基板からの EMI は、 図 6b ではなく図 8b のよ うに見えるはずである。 まとめ 低いノイズ設計が、 低い EMI を保証するものではない。 その 逆は真なりで、 CMOS の低い EMI 設計は、 ノイズ供給が低くな る結果を生む。 高次のクロック高調波に一致するマイクロ波帯周 波数で低い EMI、 そして大きなデジタルプリント回路基板内の電 源分配ネットワーク上で低いノイズ電圧を同時に得ることは可能 である。キーポイントは、各 CMOS 近くの物理的に小さな領域に、 信号と過渡的な電源電流ループを閉じ込めることである。 これ interference-technology.jp 参考文献 [1]B. Archambeault, “Eliminating the MYTHS about printed circuit board power/ground plane decoupling, ITEM 2001 [2]L. Ritchie, “EMI: What It is, Where It Comes From and How to Control It,” The PCB Design Magazine, April 2013, pp. 10-18 [3]E. McCune, “Ground Current Control Enhances Dynamic Range in High Speed Circuits,” EDN Magazine, January 19, 1995 (available at http://www.edn.com/ ar ticle/493741- EDN _ Access _ 01_19_ 95 _Ground _cur rent _control_enhances_dynamic_range_in_high_speed_ circuits.php) [4]E. McCune, D. Wyskiel, “Low-EMI Printed Circuit Board Design for High Frequency Waveforms,” RF Technology International, August 2012, pp. 10-21 (available at ht t p: //r f ti .com/w p - con ten t /u ploads/2 012 /0 9/ RFTI0812_McCune-Wyskiel.pdf ) [5]M.J. Coenen, “ElectroMagnetic Compatibility (EMC) and Printed Circuit Board (PCB) constraints,” ESG 89001, Philips Components, 1989. http://alt.ife.tugraz. at/datashts/Philips/8096.pdf E arl M c Cune氏は、電波や無線通信の回路とシステムレベルの設計 で40年以上の経験がある。カリフォルニア大学(UC) バークレー校、スタ ンフォード大学、UCデービス校の卒業生で、シリコン・バレーのDigital RF Solutions (1986~1991)、Tropian (1996-2006)の共同設立者かつ次々 と起業する連続起業家(serial entrepreneur)でもある。定期的に国際会 議やワークショップを主催し、Besser Associatesのインストラクターも務め ている。発明者および共同発明者として64件の米国特許を出願。連絡先 は、emc2@wirelessandhighspeed.com ■ INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 17 EMC設計 EMC設計の基本 2013年11月号 掲載 物理法則に従った費用対効果の高いEMC設計 Q&A Keith Armstrong Cherry Clough Consultants Q&Aリスト Q1. 最近のデジタル回路のスルーレートはどの程度か、そして、どのような周波数スペ クトラムが発生するのか。 Q2. EMC設計とEMC緩和に用いる推薦図書は? Q3. ベタグランドは、信号トランスを横切って使われなければならないか? Q4. 金属エンクロージャとシールド・ケーブルを備えている製品の場合: 1. 金属エンクロージャを0Vの基準面に接続することを勧められるか? 2. シールド・ケーブルについて、ケーブルのシールドを接続するのは、金属エンク ロージャまたは 0Vの基準面のどちらが良いか? Q5. DC信号は、どのように電磁波として感知されるか? Q6. Mercury Electronic社の製品と同様のEMIスペクトラム拡散クロック発信器を 使うことについてどう思うか? Q7. 所定の目的に使う簡単なフィルタの選択方法はあるか? Q8. X2Yコンデンサは広告のような効果はあるのか? Q9. 不必要な信号がグラウドへと流れないなら、19インチの金属シャシー上の結束タ ーミナルの目的は何なのか? Q10 回路のグランド接続方法によってEMCが改善できると考えているが、ウェビナー では、安全グランド接続はEMIに効果がないとのことだった。ここのところをもう 少し詳しく説明してほしい。 Q11. コモンモードノイズとディファレンシャルモードノイズはオシロスコープによってど のように振り分けられるか? 注:上記の質問と回答は、Interference Technology が主催して2012年11月27日に行われたウェビナー (Webinar: ウェブセミナー )、Keith Armstrong 氏の「物理法則に従った費用対効果の高い EMC 設計」に 関するものである。このウェビナーは www.interferencetechnology.com より視聴できる。セミナー内容 は本誌 2013 年 3 月号(No.37)掲載の「EMC 設計の基本:製品が教えてくれる」と、ほぼ同じ。 18 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015年版ガイドブッ EMC設計 A r mstrong Q1.最近のデジタル回路のスルーレートはど の程度か、そして、どのような周波数スペクト ラムが発生するのか。 A1. シリコンチップの将来的サイズはムーアの法則に従って小 型化傾向にあるのと同様、 集積回路で発生するデジタル信号の スルーレートは増加する傾向がある。 れておらず、 実際の値は常にそれよりも小さく、 時間の経過と共 に減少し、 IC 内部のシリコンチップは、 ムーアの法則に従って、 ダイ ・ サイズ (die size) の小さなものに置き換えられる。 立ち上がりと立ち下り時間および/または周波数スペクトラム を決定する信頼できる唯一の方法は、 周波数が10倍になる毎 に 20dB/40dB の割合が変わる1/πtr ポイントに基づいて測定し、 計算することだと思う。 例えば、1980年代に初めて紹介された HC 型ロジック IC は、 出力ピンの立ち上がりと立ち下り時間が標準的に数ナノ秒 (ns) のことが多かった。 しかし、 2012年に購入した全く同じ型番 の IC は、 立ち上がりと立ち下り時間が 0.5ns 未満である。 PCI Express が最初に策定された2002年では、 それに使う IC の 標準的な立ち上がりと立ち下り時間は、 100 ピコ秒 (ps) であっ たが、 今では著しく短い時間になっている。 立ち上がりと立ち下り時間を測定するためには、 予想される周 波数帯域が大きいオシロスコープとプローブセットを用いて PCB に実装してある IC のデジタル出力ピンに、 プローブに合った小 型同軸コネクタを直接接続するのが最も簡単である。 つまり、 0.2ns の立ち上がりと立ち下り時間を測定したい場合 「周波数帯 域幅が少なくとも 3GHz のオシロスコープとプローブ」 を使わなけ ればならない。 特定の立ち上がり時間 (tr) を持つ短形波に関連した周波数 スペクトラムを得る通常の方法は、 短形波のスペクトラムが奇数 の高調波のみを含むこと、 およびその高調波の振幅は周波数 が10倍になる毎に 20dB の割合 (20dB/decade of frequency) で減少することを理解することである。 しかし、 計算式 1/πtr で 計算した値より高い周波数では、 高調波は周波数が 10 倍にな る毎に 40dB の割合 (40dB/decade of frequency) で減少する。 ここに示す図は、 私が実施したプリント回路基板の EMC トレー ニングコースで取り上げたものの1つで、 立ち上がりと立ち下り時 間を変えたとき、 100MHz のクロックの、 周波数スペクトラムの 包絡線がどうなるかグラフに示したものである。 し か し通常、 EMC 問 題 を 解 決 の 手 伝 い を 頼 ま れ る 場 合、 PCB の適当な場所に小型同軸コネクタを付けていないので、 小 さな近傍界ループ ・プローブを使用して、 それを IC の本体に対し て固定し、 その出力を十分な周波数帯域幅 (例えば 0.2ns の立 ち上がりと立ち下り時間の場合 3GHz) があるスペクトル ・ アナラ イザーで測定する。 IC または PCB パターンに近傍界ループ ・ プローブを極近い 場所に保持したとき、 実際の信号または電源の電流のディファレ ンシャルモード (DM) の磁界を取り込むので、 これらの測定には EMC 問題が現れない。 私がウェビナーで言ったように問題が出 てくるのはプローブが IC、 回路基板パターンなどから遠く離れた 下記は、 周波数範囲 10MHz ~ 10GHz で上記の数字に対応 するシミュレーションである。 ノイズを著しいレベルで取り込んだときである。 というのも、 これ は大きなループに流れる浮遊電流、 通常はコモンモード (CM) 100MHz のクロックの立ち上がりと立ち下り時間 2ns 100MHz のクロックの立ち上がりと立ち下り時間 0.2ns 100MHz のクロックの立ち上がりと立ち下り時間 20ps 1990年代では 2ns であったものが最近は通常約 0.2ns であ るが、 22nm のチップはそれより多分速いだろう。 ここ数年内に、 立ち上がりと立ち下り時間 20ps に対処しなければならない。 立ち上がり時間 tr の値が何を意味するか理解している時に は上記は問題ないが、 IC のデータシートには最大値しか書か ノイズを許すようなお粗末な EMC 設計を意味するからである。 十分に小さいプローブがあれば、 IC 本体の周囲で動かして1 つの領域のコア ・ ロジックで使われている信号のスペクトラムを 見ることができ、 別のドライバーの出力信号を見ることもできる。 「IC 本体に対して保持された小さな近傍界ループ ・ プローブ」 を用いる方法の利点は、 IC のデジタル動作の周波数スペクトラ ムを直接見るのが可能であることで、 それは EMC 設計技術に 必要な情報である。 そして、 同軸プローブを使うことに対して心 配する必要はない。 ( 注意事項 : オシロスコープのプローブにグ 100MHz クロックの立上り・立下り時間による 高調波の周波数成分レベル ランド用のフライングリードを取り付けたものはどんなものでも、 数 100MHz 以上の測定には役に立たない。 ) 実際、 スペクトル ・ アナライザに直接つながって、 各々の出力 ピンと関連したスペクトラムを決定するために、 直列に小型コン デンサをそのチップに持ち、 全くグランド ・ リードの無い 「ピン ・ 立上り・立下り時間 プローブ」 を使うこともできる。 ムーアの法則に従って、 これまで継続的にダイ ・ サイズが小さ くなっていることは、 次の2つと密接な関係があることに注意され たい。 (1)EMC設計は、常に変化しており、エミッションノイズの周波数 は上昇するので、常に費用対効果の高い設計技術は年々 変化して止まるところを知らず、もっと難しくなる。 図1. interference-technology.jp INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 19 EMC設計 EMC設計の基本 時間領域波形 周波数スペクトラム 図2.立上り・立下り時間 2ns 時間領域波形 周波数スペクトラム 図3.立上り・立下り時間 200ps 時間領域波形 周波数スペクトラム 図4.立上り・立下り時間 20ps 20 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015年版ガイドブッ EMC設計 A r mstrong (2)ある年に試験して適合した連続生産製品が、デジタルICの 全てにダイ・サイズが小さくなった新しいシリコンチップが使 われた場合には、2~3年経てば不適合となるかもしれな い。このため、量産メーカーは自身のEMC試験部門を持 ち、連続して生産される各製品および全製品を少なくとも 年1回は試験している。 EMC for Printed Circuit Boards – Basic and Advanced Design and Layout Techniques ▪▪ Nutwood UK December 2010, ISBN 978-0-9555118-5-1図 は全てカラー(第2版は第1版と本の体裁以外同じ) 。 ▪▪ 注文はwww.emcacademy.org/books.aspへ。 ▪▪ この本には、プリント回路基板(PCB)設計およびレイアウトに そこで、 連 続 生 産において少なくとも今後2年間は自身の ついて、電子回路設計者やPCB設計者自身にとってEMC設 EMC 試験に合格する製品を設計するために、 測定する立ち上 計技術の実用的な実践方法が書かれている。家庭用機器、 がり/立ち下がり時間をもっと短く、 周波数スペクトラムは高くな 商工業機器、自動車から航空宇宙、軍用品など全ての用途 るように予測し、 それに応じた設計をする。 多くの場合、 新設計 分野がカバーされている。 が EMC 試験を余裕を持ってパスすると技術過剰であると文句を 言う上司に、 2年以内にチップが次のダイ ・ サイズに縮小した場 合でも確実に再設計不要となるためには不可欠だと説明しなけ ればならない。 マイクロプロセッサや FPGA のコアロジックは、 その出力ドラ Physical Basis of EMC ▪▪ Nutwood UK October 2010, ISBN: 978-0-9555118-3-7図 は全てカラー。 ▪▪ 注文はwww.emcacademy.org/books.aspへ。 イバより常に非常に速くスイッチされる。 例えば、 Xilinx Vertex 2 ▪▪ 実践的な電子技術者が簡単に分るように電磁事象への FPGA には以前はコアロジックレール上で持続期間 15ps の電源 理解を提供する(私の本の「EMC Design Techniques for 過渡電流があった ( つまり、 立ち上がりと立ち下り時間がそれぞ electronic engineers」第2章(前述)は、この本と全く同じな れ 15ps)。 Vertex 2 はおよそ 5 ダイ・サイズ(電流 Xilinx FPGA は、 ので、両方を買う必要はない!)。 Vertex 7 である) 前だったので、 コアロジック電力供給ノイズ電 流が非常に短い立ち上りと立ち下がり時間、 すなわち 20GHz よ 私の良き友 Tim Williams 氏も、 非常に実用的な本を執筆した ので、 彼の本を推薦しておこう。 りはるかに大きい帯域幅があると想定しなければならない。 そこ で、 信号の立ち上りと立ち下がり時間と同様、 電源レールからの 過大なエミッションに悩まされないように、 電源レールを設計す る必要がある。 EMC for Product Designers, 4th Edition ▪▪ Newnes, December 2006, ISBN: 0-750-68170-5. ▪▪ 第1版が(記憶によると)1992年に発行以来、Tim氏のこの Q2.EMC 設計と EMC 緩和に用いる推薦図 書は? A2. もちろん私が書いた本を推薦するよ! ( 下記参照 ) しかし冗談ぬきで、 私の本は、 電子製品設計エンジニアの実 務に対して非常に良いと思うn。 なぜなら世界中で設計エンジニ アを教育した20年以上の経験から得た内容を基本に書かれた 本は非常に良い評価を得て、世界中で多数販売され、多く の大学でEMCの教科書として使われている。 しかし、 全ての本が、 必然的に時代遅れになる。 そして集積 回路のシリコンダイは速いペースで小さくなる ( 前記 Q1 参照 ) ので、 最新の良い設計の実行を望むならば、 最新のトレーニン グコースを受講することである。 ものだからだ。 私が担当する全コースに対し、 少なく見積もっても出席者の 80% の支持が得られたので、 このコースが実践的で役に立つと 思われていることがわかるし、 トレーニング内容を実践した設計 者からは非常に前向きなフィードバックをたくさんもらっている。 EMC Design Techniques for electronic engineers ▪▪ Nutwood UK November 2010, ISBN: 978-0-9555118-4-4 図は全てカラー。 ▪▪ 注文は、www.emcacademy.org/books.aspへ。 Q3.ベタグランドは、信号トランスを横切って 使われなければならないか? A3. 向こう側へ渡ってほしくない RF ノイズ被害を受けている、 少なくとも一方の側にある信号トランス分離について議論してい るものと推測する。 そう、 1次側と2次側の回路が PCB 上で厳格に分離 ( お互い に切り離される ) されるならば、 その両者の間にベタグランドを 持つことで回路パターン間のクロストークを減らすのを助けること ができ、 更にトランスの RF 分離も向上する。 しかし ▪▪ 電子機器の全用途を網羅しており、時間と費用を節約し、出 a) もしトランスの巻き線自体が、 達成必要とされるのと同程 荷までの時間を短縮し、品質保証費用と財務上のリスクを減 度の RF 分離 ( すなわち、 RF ノイズの減衰 ) に達しないならば、 らすので、良い設計を実現するのに非常に実用的な手引きで ベタグラウンドが魔法のような改善を実現したりはしない。 ある(この本の第2章は「The Physical Basis of EMC」の完全 版なので、この本と両方買わなくて良い)。 interference-technology.jp CM チョークおよび/またはたとえば分流コンデンサなど CM を減衰させる他のデバイスや逆に接続した CM チョークをロー INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 21 EMC設計 EMC設計の基本 カル RF 基準 (後述) に追加する必要があるかもしれない。 平 タグランドより1層下 (あるいは1層上) に設置すると、 利点も生 衡しているディファレンシャル信号が使われた場合、 追加された じる。 ベタグランドパターンが基板の内層にある場合、 ベタグラン CM 減衰器は、 トランスの1次および/または2次側巻き線のセ ドの上に1層、 下に1層、 2枚の RF 基準プレーンを平行に使える ンタータップ、 またはセンタータップ付き単巻変圧器を使って能力 という点である。 を発揮できる。 b) ベタグランドは、 減衰させることが必要な 最も高いノイズ周 RF 基準プレーン 波数において、 非常に低いインピーダンスでなければならない。 可能な限り大きく 厚い (つまり隙間も分割部も ない) 銅の この周波数を fmax と呼ぶことにする。 これが数 MHz を越えるな PCB 層で、 多くの場合、 全基板エリアをカバーし、 理想的には らば、 ベタグランドは、 薄い場合はその長さにわたり、 幅が広い 可能な限り広く全部品や基板上の配線パターンに拡大される。 なら全領域にわたって、 ビア ・ ホール付 RF 基準プレーンに 「RF 結合」 (後述) しなければならない。 これは EMC 目的で使われている PCB 板の用語として 「グラ ンドプレーン」 や 「0V プレーン」 などよりずっと良い。 なぜなら、 EMC 設計問題と安全用接地や DC 電位の回路を混同して、 非 RF 結合: RF 結合の一般的基準は、 RF 基準プレート (後述) との結 常に多くの設計業務遅延をもたらす混乱を防ぐ助けになるからで ある。 合を短く、 多点接続で作らなくてはならず、 それは最大 fmax まで 効果的である。 fmax までの周波数に対し少しでも効果的にするためには、 各 結合の長さと隣接結合間の間隔が、 fmax の波長の10分の1以 内でなければならない (もっと短い方が望ましい) 空気中の 「fmax における波長の10分の1」 は、 30/fmax で表 すことができる。 このとき fmax の単位は MHz、 結合間隔の単位 はメートルで、 fmax の単位を GHz にしたとき結合間隔の単位は ミリメートルになる。 Q4.金属エンクロージャとシールド・ケーブル を備えている製品の場合: 金属エンクロージャを0Vの基準面に接続す ることを勧められるか? 2 シールド・ケーブルについて、ケーブルの シールドを接続するのは、金属エンクロー ジャまたは 0Vの基準面のどちらが良いか? 1 しかし誘電率、 PCB 材料の k( すなわち比誘電率 ) は、 電磁 A4. 両方の質問に答えるには、 金属 (または金属化) エンク 波が PCB 内部を伝搬するとき、 同じ周波数の電磁波が空気中 ロージャをシールドとしていかに最適に使うべきか、 それをケーブ を伝搬するときと比べて波長が短縮 ( 実際には ) されることを意 ルシールドやフィルタ、 PCB RF 基準プレーン (通常、 それらの 味する。 回路が直流 0V 電位なので私は時々それを 0V 基準プレーンとも PCB の 比 誘 電 率 を 4.0 (1GHz 以 上 で FR4 の 標 準 値、 呼ぶが、 0V である必要はないので、 費用対効果を改善する好 100MHz 以上で十分良好な近似値 ) と想定すると、 これは囲い 機会を逃さないよう、 常に RF プレーンと呼ぶことにしている) に からグランドプレーンへのピン用のビア ・ ホールの長さと間隔は 接続する方法を理解することが必要である。 15/fmax 以下にしなければならないことを意味する (fmax の単位 が MHz のとき、 ビアの間隔の単位はメートル、 fmax の単位が GHz のとき、 ビアの間隔の単位はミリメートル )。 そのためには周波数が高くなると、 導体の表面近くに AC 電 流が流れる 「表皮効果」 の理解が必要となる。 私は短時間のウェビナーで47枚のスライドを見せたが、 スライ しかし 「fmax における波長の10分の1」 はシンプルに結合長 ドは全部で58枚ある。 No. 50~58のスライドでは表皮効果を と間隔を使用し、 減衰を望む場合は、 共振が利得の生じる原因 簡単に説明し、 金属エンクロージャとシールドされたコネクタや にならないよう注意する。 ケーブルフィルタ間の正しい RF 接合が表皮効果を使用し、 金属 良い減衰を得るために、 RF 結合長と間隔は、 fmax における 面の外側表面電流 (金属ボックス外側の RF フィールドから導体 波長の10分の1以下にしなければならない。 大きな減衰が望ま によってピックアップされたコモンモード RF 電流) が金属表面の れるにつれ、 結合長は短く、 間隔は狭くなる必要がある。 外側にのみ流れて、 EMC 設計の他の側面を考えれば、 可能な 例えば、 この質問で扱っている囲いに 1GHz まで作用してほし い場合、その囲いは異なった層の PCB 上の RF 基準プレーンに、 限り最適な RF イミュニティを提供するにはどのようにすれば確 実か、 を示している。 間隔が 15mm 以上にならないようビアを設ける必要がある (PCB スライドではまた、 金属エンクロージャとシールドされたコネク の厚みは常に 15mm よりはるかに薄いので、 ビアの長さは十分 タやケーブルフィルタ間の正しい RF 接合が表皮効果を使用し、 な短さになる) 金属面の内部表面電流 (不平衡信号およびボックス内部の回 しかし、 私はいつもその5分の1未満 (3mm) を推奨しており、 路の不平衡浮遊結合により発生したコモンモード RF 電流) が 1mm でもかまわないと思っている。 結局ビアはコストがかからな 金属表面の内側にのみ流れて、 最適な RF エミッションを確実に いのだし (いや、 全くというわけではないが)。 提供するにはどうすれば良いかについても示している。 ビア (RF 結合) 長が最小になるように RF 基準プレーンをベ 22 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 本質的に、 コモンモード電流を流すために短く低インピーダン 2015年版ガイドブッ EMC設計 A r mstrong スのリターンパスを提供し、 当然 「好ましい」 そのルートに沿っ 毎秒約 300,000 キロメートルで進行し、 分厚い PVC 絶縁層内 てコモンモード電流が流れるので、 EMC が改善する。 そして表 にある電線では毎秒約 210,000 キロメートルで進行する。 皮効果を使ってコモンモード電流を流れ込ませたくない代替電流 一方、 連続 DC 電流は、 電子の陰極端子から陽極端子への パスのインピーダンスを増加させ、 短いループに流入してもらい 連続的な流れと関係していて、 およそ毎時4キロメートル (およ たいコモンモード電流のパーセンテージを増やす。 そ3マイル) の速さで進行する! スライドの50~58ページの図は、 望むところに流れるコモン 私が最初に言ったように、 上記内容の理解に関する問題は、 モード電流を 100% 得るのが可能であることを意味する。 100dB 電子設計者の専門用語に起因している。 よく DC 電圧や電流に のシールド特性 ( またはフィルタ ) を望む場合、 それは、 確実に ついて話すものだが、その際本当に言いたいのは、過渡的なオー コモンモード電流がボックスの外側に 99.999% 留まり、 内部のコ バーシュートやリップルが次第に許容できる低レベルになった後、 モンモード電流の 99.999% が内部に留まるようにしなければな デジタル信号がロジック1または0に落ち着いた場合に、 変動し らないことを意味する。 しかし、 これには巨額のコストを費やし、 ない (フラットな) 数マイクロ秒の電圧だったりする。 あるいは、 設計の隅々にまで注意を払うことによってしか実現できない。 商 DC 電圧レールから IC に流れ込む 「DC 電流」 について話すこ 工業用製品のシールドやフィルタの大部分では、 40dB あたり、 ともある。 だがそのとき本当に言いたいことは、 0Hz までの低い つまりコモンモード電流を 99% を取り除くことを実現する必要があ 周波数全てを含むが、 本当の DC は含まない周波数スペクトラ る。 ムの波形である。 私はこの回答中で 「RF 結合」 と RF 基準プレーンという用語 設計者が DC 電圧レールについて話す際よく誤解するのは、 を使ったが、 これは前述の Q3 に対する回答内で簡潔に説明さ IC が DC レールから得る電流は DC 電流であると思われがちだ れている。 が、 実際には最近のデジタル機器では非常に強力な RF 電流プ PCB の RF 基準プレーンが十分良好に設計されているならば、 ラス DC 成分であることだ。 だからこそ、 無線周波数のエミッショ 金属エンクロージャがない場合にも同じ EMC 設計技術が効果 ンを制御するために DC レールを注意深く分離しなければならな 的であることに注意するのは重要である。 まるでそれが金属エン い。 クロージャの壁であるように、 我々は RF 基準プレーンの端を扱 う。 RF 基準プレーンの端は、 まるで金属エンクロージャの壁で あるかのように扱われる。 十分にシールドされた金属エンクロージャと同様とまではいか Q6.Mercury Electronic 社の製品と同様の EMI スペクトラム拡散クロック発信器を使うこ とについてどう思うか? なくても、 ほぼ同程度にできる PCB の EMC 設計技術があり、 A6. さて、 これは本当は本来私のウェビナーのテーマに関連 基板レベルのシールドを全く使用しないのではなく、 PCB の RF した質問ではないが、 長いフライトの時間つぶしに、 用意されて 基準プレーンにはんだ付けされる 「ブリキ缶」 を使う (だが、 最 いる映画を全て見たことがある。 新の基板レベルのシールド技術ではメッキしたプラスチックを使 い、 それはブリキ缶ではない)。 私はその会社が製造するスペクトラム拡散クロックをよく知らな いが、 この技術はかなり広まっており、 10年以上にわって多くの EMC 試験規格での測定で、 エミッションを減らすために好んで使 Q5.DC 信号は、どのように電磁波として感知 されるか ? われている。 非同期処理デバイスが何らかの理由で使われない場合には、 A5. DC 信号 (または電源 ) は変動しないので電磁波は出な デジタル回路に同期したスペクトラム拡散クロックは、 私が通常 い。 つまり波として伝搬することはできない。 推薦している強力な技術である。 変動している DC は存在しないと理解することは重要である。 スペクトラム拡散クロックは、適用されるであろう EMC エミッショ 変動するものは何でも、 実際には AC なのである。 しかし、 よく ン試験規格が準尖塔値、 平均値、 2乗平均平方根 (RMS) 値、 設計者が使っている用語 「DC」 は (漠然と使われている用語 「グ その他統合検波器を使用する場合のみ、 効果を発揮することを ランド」 のように ) どちらかといえば漠然と使われている。 認識することが重要である。 軍用品や通信機器のエミッション試 負荷への DC 電圧を接続した瞬間、過渡的な電流が導体 ( ワ イヤー、 PCB 回路パターンなど ) に流れ、 それらの静電容量を 験規格は、 応答時間 1 μ s のピーク検波器を使用するので、 ス ペクトラム拡散クロックで 「ごまかす」 ことはできない。 充電する。 この過渡電流は AC であり、 変動する電磁界 ( 磁気 非同期論理デバイス(「加工してないクロック」または「ハンドシェ と電気 ) を発生させ、導体に沿って、実際には電磁波を伝搬する。 イクされたクロック」 を使うことは、 エミッションを減らすためのス その後、 電流は DC となり、 電磁波の伝搬もなくなる。 電磁 界は変動から静止に変わる。 ペクトラム拡散よりも非常に優れている。 放射エネルギーの総量 ( 他に残ったものの全てと同じ ) は、 電気を導体に沿って流れる電子として考えたいならば、 連続 通常、 同期の取れたスイッチング ( 言い換えると、 クロックで制 AC 電流は、 前後に揺れ、 全体としてはどこにも行かない電子と 御された ) 回路のデジタル処理と同じ量の約 10 分の 1 で、 直ち 結び付く。 AC 電流 ( 過渡電流を含む ) は、 空気中の裸電線を に 20dB の減少をもたらす。 しかし最も重要な問題は、 非同期 interference-technology.jp INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 23 EMC設計 論理回路からのエミッションで、 クロック周波数やその高調波内 に制限されるのではなくスペクトラム全体に拡散するので、 測定 EMC設計の基本 Q8.X2Y コンデンサは広告のような効果はあ るのか ? されたエミッションレベルは、 EMC 受信機やスペクトラム ・ アナラ A8. さて、 上記 Q6 と Q7 同様、 この質問は私のウェビナーの イザに使われた検波器のタイプに関係なく、 実際、 全く非常に低 内容と関係はないが、 まだ持ち時間が残っているので回答する。 いということである。、 X2Y コンデンサは、 3セットの板と4セットの端子を使用して内 (非同期デジタルプロセッサの存在に気づいていないなら言う 部的に非常につり合いがとれているので、 普通のコンデンサ (2 が、 何億ものスマートカードや、 (全部ではないにしろ) 大部分 セットの板、 2セットの端子) より非常に低い等価直列インダクタ の携帯電話、 ペンティアム IV 以降の強力な IC 内でコアプロセッ ンス (ESL) を持っている。 シングに使用されている。) X2Y は3端子と2セットの板のコンデンサより低い ESL を持っ ているのではないかと私は思っているが、 3端子コンデンサのよ Q7.所定の目的に使う簡単なフィルタの選択方 法はあるか ? うなフィードスルー ・ コンデンサとして X2Y は使えないので、 この しかし、 源側と負荷側の両方の回路のコモンモードおよびディ ズを減らし、 特に約 300MHz を超えた周波数から PCB 電源層 ファレンシャルモードのインピーダンス、 およびそしてフィルタに少 をデカップリングするのに、 『普通』 の部品より非常に効果的に なくとも許容範囲内で実現してもらいたいコモンモードとディファレ なりえる。 A7. 残念ながら、 ない! 比較はあまり役に立たない。 X2Y は非常に平衡度が高いので、 効果的にコモンモードノイ ンシャルモード減衰に基づいた適切な設計技術を用いることは 残念なことに、 私は業務で X2Y を使う機会はまだないが、 可能である。 ( これは私のウェビナーに関連がないもう一つの質 X2Y のウェブサイト (www.x2y.com) には、 X2Y と他の部品とを実 問なのだが、 持ち時間はまだ残っている。) 際の用途で通常の EMC 測定に用いた比較例が多くの技術報告 問題になるのは、 フィルタされるべきコモンモードノイズの総量 書に掲載されているし、 その内容に偽りはなさそうである。 X2Y とコモンモードインピーダンスで、 そのすべては多様な小さな不 社とは何度かいっしょに仕事をする機会があったが、 優れた製品 平衡に起因することである。 そして、 通常はそれがどんな詳細お を持つ手堅い会社であると思う。 よび/またはフィルタを満足に設計するための正確さを備えてい ゼネラルモーターズ (GM) がワイパーのモーターのノイズを抑 るのか、 わからないのである。 「Ball-park」 ( 言いかえると正し えるため X2Y より大きくて高価なサブアッセンブリを X2Y に交換 いレベルの ) 性能は実はかなり良い ! し、 高いノイズ抑制効果を得たと聞いている。 1シートあたり相当のコストをかけてコモンモードおよびディファ X2Y は (まだ) 大量に購入されていないので、 大部分の X2Y レンシャルモードのレベル、 スペクトラムとインピーダンスを正確 は、 同等の普通のコンデンサより高価ではあるが、 普通のコン に予測し、 まず最初のフィルタリングを正確に得るため、 本格的 デンサを X2Y に置き換えると、回路基板上の占有面積が減って、 な3D フィールド ・ ソルバを使って、 (部品内部も含む) 設計にお 全体としては、 コストはしばしば低くなる。 ける多様な導体構造の不均衡すべてを解析することができる。 または、 我々は正しいフィルタレベルの確保を目的に、 フィル タの PCB パッドやパターン、 フィルタのために提供したパネルの スペースを確保し、 どんなフィルタが実際に必要か決定するため できるだけ早く予備 EMC 適合性試験を行うことができる。 しかし、 GM の電子サプライヤが購入する X2Y の真価を使うこ とができて、 同じ X2Y 製造会社から供給が可能ならば、 同サイ ズ、 同価格の普通のコンデンサに匹敵するに違いない! この設計において、 (PCB パターンまたはワイヤーどちらにせ よ ) 導体がバランスよく左右対称の配置で使われることは本当に 大部分の製造会社は、 高くつく 3D フィールド ・ ソルバとそのト 非常に重要である。 X2Y の2つのグランド端子 (G1 と G2) 間に レーニングに投資しないことで、 重要なトリックを見逃している。 は等しい 「グランド」 電流に分割されるように期待しているので、 設備投資としては、 これを使った最初のプロジェクトで総合的なタ もし G1 に関連したパッドや基板回路パターン、 ビアホール、 基 イムスケールの短縮によって1年以内にコストを簡単に回収でき 準面などの構造が、 G2 に関連したパッド、 基板回路パターン、 る。 さもなければ、 製品機能や EMC 仕様を満足させるために ビアホール、 基準面などの構造に対して、 異なるインピーダンス 設計を繰り返すことで時間を費やすことになる。 ( しかしもちろん、 を持つと、 このパートは良好に動作しない。 他の何らかの原因で市場投入が遅れたことに起因してクリティカ これが意味するのは実際には、 X2Y のための基板レイアウト ル ・ パス上に設計の繰り返しがない場合は、 フィールド ・ ソルバ は、 X2Y の A 端子と B 端子を通ってデバイスの中央を通った軸 が本来の能力を生かして競争力を向上させることはない。) について対称形でなければならないと言う事である。 デバイスの 注 : 主要な国際的会計会社による調査で、 2000年以降、 新しい電子製品の収益性上、 最も大きな影響を及ぼすものは、 その製品の市場投入までの時間であることが明らかになった。 製品の BOM (部品) コストは1位ではなく2位であった! 垂直軸で、 デバイスとパットパターンを回転させても、 異なるとこ ろが無いように見えなければならない。 ここに、 私の PCB EMC トレーニング ・ コースの1つから関連 した2枚の図を示す。 まだ一度も X2Y を使っていないので、 X2Y についてコメントす る立場にない!しかし、 私が話せる範囲では、 メーカーの要求 24 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015年版ガイドブッ EMC設計 A r mstrong デカップリングに X2Y® デバイスを使用 通り行なえば、 その設計ルールは正しく適用される。 メーカーが (この例は 0V プレーンと電源プレーン間に使用を想定 ) 主張しているより X2Y の性能が悪いということを聞いたり読んだ 電源プレーン りしたことは一度もない。 回路図 対称の配置 Q9.不必要な信号がグランドへと流れないな ら、19 インチの金属シャシー上の結束ターミナ ルの目的は何なのか? 0V プレーン 従来のコンデンサを全て並列接続 A9. 外部の金属化合物に結合した浮遊コモンモード電流に対 結果 し小さく局所的で低いインピーダンスのリターンパスを提供するた めに、 プレゼンのスライド31の写真に示されているとおり、 ワイ 0.47μ F の X2Y のみ使用 ヤあるいは編組線がフィットするよう結合端子がラック、フレーム、 キャビネット上に設置される。 図5. コモンモード電流は、 高いインピーダンスを持つ大きなループ に流れて周辺に広く拡散されるより、 こういった局所的なパスに 流れてコモンモード電流を生じる電子部品にリターンされることを 「好む」 ので、 放射エミッションを減らす。 この Xilinx FPGA は、132 個の 従来のコンデンサが必要 大部分のキャビネットメーカーは 「単一点での結合」 が必要 だと決め込んでいるので、 メーカー任せにすると結合端子は少 なくなりすぎ、 誤った場所に設けられることになる。 しかし、 これ は1980年以前から良くない EMC 設計手法であった。 各々の電子機器ユニットまたはケーブルは、 それらを収納する キャビネットへのコモンモード電流源なので、 コモンモード電流 または、32 個の X2Y® デバイスが必要 をリターンさせるために各々少なくとも1つの局所的な電線を必要 とする。 私が上記で概説した RF 結合の原則はこの状況にもあ てはまるので、例えば、2つのキャビネットを 150mm 間隔で置き、 それぞれ 150mm の電線でつないでいる場合、 1.5m (つまりおよ そ 200MHz 超の周波数を持つ) より短い波長ではコモンモード 電流のエミッションを減らすことは想定できない。 電線が4分の1 または2分の1波長 ( この例では 500MHz または 1GHz) の周波 数では、 この電線が共振してコモンモードの電流を増やすことを 予測できる。 このようなキャビネットと RF 結合電線の周波数制限を分析 することにより、 ある周波数以上 (上記の電線2本の例では 200MHz) の低いコモンモードエミッションを持つように電子ユニッ トやケーブルを設計したほうがよい、 そうでなければ、 例えば導 電性ガスケットを使ってユニットとキャビネット間の RF 結合を改 図6. 善するほうがよい、 ということがわかる。 別の方法としては、 設 計変更が最小のコスト、 最短の遅れで済む初期段階で EMC 設 計に取り組むことである。 (キャビネット上の RF 結合ポイントを安全用のアース/グラン ド用に提供される1つまたは複数の結合ポイントと混同しないよう 注意すること。 慎重な設計によって、 この2つの機能をいくつか のポイントで組み合わせることが可能な場合がある。 ) Q10.私は、回路のグランド接続方法によって EMC が改善できると考えているが、ウェビナー では、安全グランド接続は EMI に効果が無い とのことだった。ここのところをもう少し詳しく 説明してほしい。 A10. 浮遊コモンモード電流を含む全ての電流は、常に閉ルー プ内に流れるとウェビナーで私が言ったことで、 この件はかなり 解決していると思う。 これは、自然の法則 ( 物理法則でも可 ) で、 マクスウェルの有名な方程式のうちの1つである。 全ての電流が閉ループに流れるとすると 「ノイズの捨て場」 のようなものも決して有り得ない。 そうすると、 ノイズは 「安全グ ランドに分流して取り去ること」 が可能という一般的な考えは、 明らかに間違いであり、 常に成り立たない。 スライド31 interference-technology.jp 安全グランド回路または土壌に突き刺したグランド用の棒に流 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 25 EMC設計 EMC設計の基本 入する如何なる電流も、 グランド回路または土壌のループが完 き刺したグランド棒に流入し、地球の質量の中へ消えたとさえ思っ 全になるように、 どこかのポイントで、 再び回路や土壌から戻る たかもしれない) からだと考えたが、 この宇宙ではどちらも不可 流れがなければならない。 能である。 浮遊しているコモンモードノイズ電流は、 結局のところ、 トラン 2つ以上の相互接続された電子ユニットがあるシステムや装置 ジスターや IC 内の半導体で起こっている電子の活動によって発 では、 まずい EMC 設計が原因で信号相互接続 (信号ケーブル 生するので、 それらと同じ半導体への閉ループに 100%戻る流 自体は望ましいディファレンシャルモード電流の一部を不要なコ れがなければならない。 空気、 PVC、 ファイバーグラスを通して、 モンモード電流に変換し、 それは多様な周波数特性を持つケー リターンパスは通常、複数の並列パス (すなわち複数の並列ルー ブルの不平衡減衰量 (LCL) として測定される) に沿って流れる プ内の流れ) をとる。 そして銅や他のタイプの導体に沿って、 各 大きなコモンモード電流がよく見られた。 コモンモードチョークを ループ内の電流はループのインピーダンスに反比例して流れる。 信号ケーブルに加えることは、 一般的な助けとはなるが、 普遍 このように、 浮遊ノイズ電流のために良いとされる EMC 設計 は、望まないループのインピーダンス上昇 ( 例えば表皮効果シー ルドや RF 結合やコモンモードチョークフィルタを用いることによっ て ) および望まれるループのインピーダンス低下 ( 例えば表皮効 果シールドや RF 結合や分流コンデンサフィルタを用いることに よって ) から成り立っている。 私のウェビナーで扱った PCB を例にすると、 問題は、 良くな い EMC 設計に起因した PCB とそのケーブルからのエミッション であった。 良くできた EMC 設計は、 RF コモンモード電流に小さ 的な解決策ではない。 その理由は : ▪▪ ケーブルの品質が不十分ならば、エミッションが十分に減 少する前に、必要な信号が劣化しすぎてしまうポイントに度 々到達した。 ▪▪ 特にそれぞれ1~2メートルの長さを追加するコモンモードチ ョークを必要とする数百本のケーブルを持つ大規模な設備で は、十分な個数のコモンモードチョーク追加に伴い、重量、コ スト、アクセシビリティという問題が起こった。 く局所的で低いインピーダンスパスを提供して放射された元の回 下の写真 (図 7) は、コモンモードチョークの極端な例である。 路に戻れるようにしたので、 電流はケーブルに沿って流れず、 過 私は一種の冗談としてこの状態を取り扱ったが、 実際のところ、 大な伝導 ・ 放射エミッションの原因にならなかった。 本当の設備なのである ( 私のものではないにせよ !)。 メイン電源ケーブル内の安全グランドワイヤは、 他に導体らし ユニットの電源ケーブル内の安全グランドワイヤや、 それが設 きものがないので、 PCB 回路により発生したコモンモード電流の 置されている建物の金属構造は、 浮遊ノイズ電流ループにリター 一部に対し局所ループを提供する役割を果たすかもしれない。 し ンパスを提供するので、 ノイズエミッションを減らそうとする場合、 かし私が言いたいポイントは、 公共配電システムより引いた電源 通常は全ユニットシャシー間の RF 結合改善と周辺をサポートす リード内のグランド導体を通って建物下の土壌に突き刺したグラン る金属加工によりエミッションが減少することがわかった。 これは、 ド棒に戻るパスは、エミッション低減と無関係である、ということだ。 フェライト割コアー ・ チョークを1ダース、 ときには何百と、 ほとん RF ノイズ電流の捨て場のようなものは無い、 絶対ありえない。 ど/全てのケーブルに挟み込むよりも、 少ない原価で済むという ノイズ満載の望まない電流を捨てたり、 なかったことにできる場所 長所があった。 安全の理由から偶然そこにあった既存のサポー は、 安全グランドであれ何であれ、 どこにもないということである。 ト用金属加工を使って、 小さくて低いインピーダンスループを局所 しかし 「グランドにノイズを捨てる」 ために改善されたパスが 的にユニットやケーブルに提供し、 建物下の土壌に突き刺したグ 提供されていたと考えた多くの設計者は、 自分たちが何をやって ランド棒に接続するようにした、 というのが実際に起こったことで いるのか認識しないまま、 コモンモード電流が流入するための ある。 IEC 61000-5-2 「電磁両立性 (EMC) -第5部 : 据付け及 小さくて局所的なループを実際に提供していた。 び軽減の指針-第2章 : 接地及びケーブル敷設」 では、 この技 設計者たちはエミッション中のいくばくかの減少を見て、 ノイズ 術を共通接続回路 (CBN) を作るための RF 結合サポート金属加 がいわゆる 「グランド」 へ流入し、 失われた (ノイズが土壌の突 工と呼び、これはウェビナーのスライド30ページのポイントである。 図7. 26 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 スライド30 2015年版ガイドブッ EMC設計 A r mstrong 地球の質量がノイズ電流を吸収するという間違った思い込みを 得たことが原因で、 改善された金属加工への RF 結合がノイズエ ミッションを減らした理由であると、 よく誤解されていたのである。 を見たり測定したりできる。 与えられた信号または電源の送り ・ 戻り導体のまわりで電流 モニタクランプを挟むことで、 ディファレンシャルモード信号すべて しかし通常、 金属サポートに沿って相互接続ケーブルの経路 プラスコモンモードノイズ電流の割合 ( 半分またはそれ以下 ) を 指定することは、 いったんユニットの RF 結合を改善されれば、 測定する。 コモンモードノイズはディファレンシャル信号の非常に 著しく多くのエミッションを削減できることもわかっていた。 もし本 小さい一部分 (0.1%以下 ) なので、 このような測定では目で見る 当にノイズ電流が土壌に突き刺したグランド棒を経由して地球の ことさえできない。 質量に分流するならば、 これは起こり得ない。 実際にやった作 電流クランプは、 ケーブルや結束の異なるサイズに合う様々 業により浮遊ノイズ電流ループをエリアで小さくできる場合にの な直径、 周波数範囲のものが色々なメーカーから入手可能であ み、 それは起こりうる。 これはもちろん、 実際に起きていたこと る。 コモンモードノイズ ( 例えば電源コードを測定するとき ) を測 であるが、 (例えば) IEC 61000-5-2 が浮遊電流のリターン電 定するとき、 取り扱い可能なディファレンシャルモード電力の量で 流経路として金属ケーブルトレイ、 中継器、 ダクト、 コンジット管 も様々な制限がある。 の使用を強く推奨している理由なのである。 b) 電 源コード (他の EMC 規格では V- 回路 網または擬似 また電流も常にループ内を流れるので、 安全グランドは唯一 電源回路網 (AMN) と呼ばれているかもしれない ) 上の EMC エ 機能する。 建物への AC 電源ターミナルの1つは、 建物設備の ミッションを測るための、 ある電源インピーダンス安定化回路網 入口の土壌に突き刺したグランド棒に接続されている。 このグラ (LISN) は、 追加のコモンモードとディファレンシャルモードの出力 ンド接続された AC 電源ターミナルを中性線と呼ぶ。 電源コード を提供するために、 通常の出力合計と差異を生み出す追加の内 中の、コードを持つグランド線の全てもまた、このグランド棒に戻っ 部トランスとともに利用できる。 て接続されているので、 このコードにより電源供給されているユ LISN 外側にフィットし、 通常出力をディファレンシャルモードお ニット筐体すべても同様である。 そして、 建物の金属構造の全て よびコモンモード信号へ変換するトランスのサプライヤがかつて少 も、 そのグランド棒へ戻って接続されている。 なくとも1つはあった。 AC 電源を運ぶワイヤまたはケーブルに絶縁不良が起こると、 エミッション分析では、 オシロスコープは時にスペアナより好ま ライブ側ワイヤから閉じた電流ループ (ショート回路と呼ばれる) れることもある。 というのも、 オシロスコープはノイズ波形を時間 を生じる中性ワイヤへ流れてラインヒューズがオープンになる、 あ 経過との関係で直接示すので、 どの回路動作がノイズを生成し るいは近くの金属加工物へ流れるかのどちらかである。 金属 ているか判断するのが簡単だからである。 加工物すべての安全グランドはそこでグランド棒および AC 電源 もちろんスペクトルアナライザーで同じタイプの分析ができる に戻っていく閉じた電流ループを生じ、 ラインヒューズを飛ばす が、 高調波の出方に特有の繰返し周波数の間隔を確認する必 ショート回路を生成してライブシャシーによる電気ショックを防ぐ。 要があり、その後に基本周波数、つまり、エミッションの原因になっ 土壌中のグランド棒は、 私が今解説した機能安全とは無関係 ている回路作動を決定を試みる。 である。 グランド棒は、建物またはその近くに落雷があった場合、 特に一般的な寄せ集められた全ノイズの原因になっている複 重大な感電ショックを防ぐため、 金属加工物が土壌の潜在能力 数の潜在的基本周波数 (例えばスペクトラム拡散でない、 いくつ を超えた電圧に達しないように設置されている。 かの異なるデジタルクロックなど。 上記 Q6 を参照) があるとき、 ( 落雷電流もまたループ内に流れると雷の専門家が言ってい 両方の方法には利点と欠点がある。 るので、 私もそれは確かだと思うのだが、 私のような電子工学エ 一般的な寄せ集められたノイズの場合には、 オシロスコープ ンジニアにとっては自明ではないので、 どのように落雷電流が動 を使用して、 疑わしい各クロックの周波数で順次トリガをかけな 作するか、 ここでは述べないでおく。) がらの観察が役に立つ。 トリガの設定が正確に調節され、 その クロックがノイズ源ならば、 寄せ集められたノイズへの寄与は安 Q11.コモンモードノイズとディファレンシャル モードノイズはオシロスコープによってどのよう に振り分けられるか? A11. 私のウェビナーの主題と関連がない質問がもう1つ! オシロスコープまたはスペクトラム ・ アナライザを使用するかど うかにかかわらず、 私が知っているのは、 たった2つの方法で、 以下の通りである : a) Fischer Communications 社製造のような電流モニタクラン プを使用する。 定して表示され、 トリガのかからないその他の全てのノイズはボ ケてしまう。 順番にかけたトリガを全てのクロックに合わせていく と、 どの回路とデバイスが最もエミッションの原因になっているか 立証するのに役立つ。 私は上記内容が皆様に役立つ事を期待している。 いつも退屈で長いフライトが待っているとは限らないので、 今 後プレゼン予定のウェビナーへの質問や上記のような一般的な EMC 設計への質問に、 今回と同様の回答を約束することはでき ないのだが…。 あまり高価ではなく、 望ましい信号または電源に用いる送り ・ 戻り導体すべてが入っているケーブル (またはワイヤの束) まわ 連絡先 : Keith Armstrong www.cherryclough.com りを挟むことで、 クランプの出力をスペアナまたはオシロスコープ UK Office: +44 1785 660 247 に接続して、 ケーブル (またはワイヤ束) 上のコモンモード電流 Mobile/cell: +44 7785 726 643 ■ interference-technology.jp INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 27 EMC設計 設計初期におけるEMCと製品安全 2014年3月号 掲載 設計初期段階でEMC(と安全性)を 考慮すべき理由とは? J M Woodgate BSc(Eng) CEng MIET MIEEE FAES 損失50万ドルの事例 の両方に調整が必要だからです。さらにステージ1の予定し ていた日程が、生産時に仕様確認を保証できない程度にま 2013年4月2日 で削減されています。 From: 適合検査部門(JH) To: MJ54 チームリーダー(BB) 2013年7月31日 件名 : MJ54 試験 From: 適合検査部門の管理者 悪い知らせです。試験(MFT)モ デルは、 いくつかのEMC試験に不合格になり、安全性の問題も起き ています。詳細は以下の通り。この件について相談できま To: 研究開発部門の管理者 件名 : MJ54 すか? 調査しましたが、JHが要請した対策は十分に正しく、必須の ものであると判断します。明らかにBBがけしかけた議論の結 果としてJHとBBのやりとりが棚上げになっていることは、私も 2013年5月30日 非常に残念です。 From: BB To: JH 2013年9月29日 件名 : MJ54 試験 From: マーケティング部門の VP cc: Manager, R&D、研究開発部門の管理者 To: 研究開発部門の VP スケジュールが合わないせいで議論が遅れてしまい残念 です。 MJ54に対するそちらの提案はちょっと承知できかねます。 cc: 社長 件名 : MJ54 そ ちらから提出されたコストの増加とタイムスケールの修 というのは、EMIフィルタを大きくして収容するために、印刷 正は製品にストップをかけるものです。そのうえ、BGQQ互 回路基板と筐体を再設計して、5ドルの追加となると、マーケ 換性を可能なら入れてほしいというこちらからの元々の要 ティング部門に提出して承認も受けている原価計算と日程 請は却下され、もはやオプション扱いでもありません。現在 28 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015年版ガイドブック EMC設計 Woodgate Acme社と競合2社は、BGQQに完全互換を実現した製品 が、あなたが最初に提示したコスト計算より10%安い価格 で販売しています。 当社にもこれが達成できたでしょうか? 過去にも同様のこ とがよくあったが、そこから教訓を得ていない組織がまだあ るということです。 設計者を訓練し最新知識を持たせるようにするには、 関連し た EMC (そして安全性) 規格や意図する市場に関連した法律 規則に素早くアクセスできなければならない。 適合性評価要員 だけに規格へのアクセス権限を与える、 あるいは規格と法律規 則を研究開発の管理者のファイルキャビネット内にハードコピーと して保管することは明らかに不十分であり馬鹿馬鹿しいとさえ思え る。 では、 可能性のある使用法とは何か?使用法を理解してい なければならない設計者は、 機密の規格と同じぐらい情報を知 対立の排除 以下は、 上記のような損害を避けるガイドとなる指針である。 対 立は1つだけではなく、 数多く存在する。 ▪▪ 設計上の対立:EMC(および/または安全性)適合を達成 するのに必要な変更は、仕様適合性の達成をあっさりと危 うくしてしまう。 ▪▪ 原価上の対立:遅い段階での変更を強いることは、再度の開 発業務費用と、再設計費用の増加を招き、製品原価に著しい 上昇をもたらすことがよくある。 ▪▪ 日程遅れにおける対立:常に短くなる製品寿命のため、プロ 用の製品分野(例えばオシロスコープを考えてみてほしい) や大手卸売業者や代理店による予定された年間製品ポー トフォリオレビューにおいてさえ、相互運用に対する需要が 増えているので(ぎりぎり限界の費用で多くの機能を単一パ ッケージに詰め込んだ新開発の機器を用いて達成される ことが多い)著しい遅れは何であれ製品の実現を脅かす。 ▪▪ 人間関係の対立:疑いはフラストレーションとともに簡単に 大きくなり、適合性に関する批判のある部分は不当である という経営陣からの質問や不承認によってますます焚き 付けられていく。この対立は、設計者と適合性評価エンジニ ア、設計エンジニアと設計管理者の間(十分な訓練、時間、 試験機器、サポート、あるいはその全部が与えられなかっ たではないか!等)に起こりがちだが、殆どの場合、両方同 時に発生する。 あまり(大きな)改革のない問題解決 対立を取り除く方法は責任の再設定だが、 これには予備的な ステップが必要となる。 まずは、 設計エンジニアに設計段階で EMC (そして安全性) を考慮に入れる訓練が必要である。 いっ らされない状態に置かれている! 実際はほんのわずかしか無料入手できない現状とは対照的 に、 全ての規格が無料で入手できるならば、 もちろんベストに近 いのだが、 まだそこまでには至っていない。 それでも、 若干の 規格 (主にヨーロッパの) は、 さまざまな価格で入手できるので 「あちこち買物する」 のがルールであり、 また国立図書館が無料 アクセスを提供している国もある (適切な組織に対して問い合わ せが必須かもしれないが)。 訓練およびアクセスが適切ならば、 適合性に関する<内部の 責任>は研究開発部門に留まる。 言い換えると、 適合時に手渡 される MFT は、 不合格の見込みがあってはならない。 注 : 「合 格」 と 「合格する事が期待される」 は大きな段階のちがいである。 一般に、 正確に数百の変数の機能を正確に取り扱うことができ る場合のみ、 EMC は精密科学となる (しかし MFT は、 若干の 単純なケースではもっと余裕を持って安全試験に合格する見込 みである)。 適合性 (Compliance) とは、 言うまでもなく、 外部 に対する責任の維持である。 つまり、 大量生産品が、 販売され る市場で買い手が適用 (相互運用など) を期待しなくても、 適 用されることが予想される法律や非強制の規格に関連したすべ ての要求を満足し続けることを確保するという責任である。 エンジニアやライン管理者がどれほど啓蒙されても、 経営陣 自らの問題となるまではこういった変化は起こりようがない。 経営 陣は、 古い考えを改め、 提案されたシステムの基礎となるロジッ クを認識し、 その利点を確信し十分に支援しなければならない。 対立関係を解消することによる利点は、 以下の通りである。 ▪▪ 変更を無くすか減らすことによる開発費の削減 ▪▪ 開発時間の削減 ▪▪ 強制的に採用された「修正」をなくすことで、設計に自信が 増す たん良い EMC (そして安全性) 設計の原則が何であるか理解 変更されたシステムは、 コストに EMC と安全対策が追加され、 する訓練を受ければ、その適用は、そんなに難しくない。 同様に、 複雑な再設計の必要によって開発時間が調整されることもなく、 その原則を理解していない場合は、 該当する設計原則を適用す 筐体は全部品はもちろん大きな EMI フィルタさえ入れられる大き るのは奇跡でも起きない限り明らかに不可能である。 さになると予測され、 その影響は大きい。 最終的には、 対人関 必ずしも設計者が高度な専門家になる必要はないが (なる場 係の対立は解消され、 BB と JH は結婚することになった。 ただ 合もある)、 製品開発中は適合性エンジニアのサポートを得て正 し将来2人が EMC に関係ない話をする際、 50 オームの BNC しく職務を果たすのに十分な専門家にはなれる。 十分な専門家 終端が話題になるのではなく、 お皿が飛び交うような夫婦喧嘩 とは、 「知る必要」 がある際には、 絶えず変更される適用可能 になる可能性が否定されたわけではない。 ■ な規格および法律規則の詳細や、 社内や試験所で実施するか どうかにかかわらず必要な場合は試験方法の複雑さを、 理解し て設計者に伝えなければならない。 interference-technology.jp INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 29 EMC設計 電気的過渡現象からイーサネットポートを守る 2014年5月号 掲載 電気的過渡現象からイーサネットポートを守る TIMOTHY PULS Product Marketing Manager Semtech Corporation イ ーサネットは、 至る所に存在す 標に対しては、 前進を急ぐので、 チップの る。 基地局のバックホールから、 I/O に付ける保護クランプは頻繁に妥協を 無線アクセスポイントや IP 監視 余儀なくされている。 カメラへ、 イーサネットは至る所で見かけ チップ ・ メーカーにはチップ上の保護を る。 そして、 このイーサネット ・ トラフィッ 実行する上での物理的な制約により締め クを可能にするデバイス、 つまり通信イン 付けを受けており、 システム ・ エンジニア フラを駆動する小さなトランシーバ IC は、 も同様に、 最終製品が遭遇する多くの電 以前よりも格段に進歩している。 2010 気的過渡現象の脅威に対して堅牢度を証 年以前は、 イーサネットの物理 層トラン 明できるよう最終製品の設計課題につい シ ーバ (PHY) は 90 ナノメ ー トル の IC て厳しい制限を受けている。 そしてシステ 技術に基づいていた。 今日のマーケット ム ・ レベルの過渡現象イミュニティ規格は は、 45ナノメートルあるいはそれ以下に 緩和されていない。 それどころか、 より厳 する計画を伴う65ナノメートルで高い性 しい要求事項が出てきている。 能の PHY の採用を強く求めている。 新 しい PHY プラットホームは、 システム設 計者に驚くような性能の優位性をもたら システム・レベルの過渡現象 の脅威 すが、 EMC コミ ュ ニティに と っては オ ン 過去数十年間、 保護回路は設計サイ チップ ESD の保護レベル減少が厄介な クルのちょっとした付け足しであった。 今日 副作用と感じられる。 では、 外部保護アレイの必要性について 「小さいことは良いことだ」 という IC 業 の議論はほとんどなく、 設計段階のフロン 界のマントラは、 チップ ・ メーカーにとって トエンドについて、 ますます多くの設計者 新しいトレードオフに直面することを意味 が、 よく考えられた回路保護プランの価値 する。 IC 技術は、 ダイ ・ サイズと性能目 を認めるようになってきている。 30 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015年版ガイドブック EMC設計 P u ls e 静電気放電 ケーブル放電 電気的高速過渡現象 高速の立ち上がり 過渡現象 立ち上がり時間 パルス 人体放電によって生じる 立ち上がり時間 速い極性変化 帯電したケーブルによって生じる 立ち上がり時間 バーストの試験手順 PCBパターンに間接的に結合 サージ/誘導雷過渡現象の脅威 一般的なサージイミュニティ試験パルスの例 ショート電流波形 100A, 2/10μs(GR-1089) 25A, 8/20μs(IEC61000-4-5) 100A, 10/1000μs(GR-1089) 開放回路電圧波形 2kV, 10/700μs(ITU-K.20, K.21) 2kV, 1.2/52μs(GR-1089)100A, 低速の立ち上がり 過渡現象 立ち上がり時間とパルス継続時間はμsパルスの事象である 雷パルスから発生した高エネルギーパルス 表1.一般的な過渡現象の脅威が示す特性 これは特にイーサネットポートに当てはまる。 ネットワークのイ 秒 (しばしば 1 ナノ秒未満) 程度である。 この議論のため、 大 ンフラに入っているツイスト ・ ペア線のラックは、 いろいろな過度 雑把にこれら3つのイベントを高速の立ち上がり時間の過渡現 電圧の脅威に対する強力な防御を必要とする。 過渡電圧には、 象に分類するが、 3つの過渡現象がいくぶん異なる振る舞いを 静電放電 (ESD)、 ケーブル放電 (CDE)、 電気的高速過渡現 する点には注意する必要がある。 CDE の発生または EFT バー 象 (EFT)、そして、もちろん非常に破壊的な雷サージなどかある。 ストの範囲内のエネルギーは、 人間の接触によって発生する 強力な保護手法のゴールは、 2つの部分から成り立っている。 ESD 事象より抑えるのが厄介であるとわかるだろう。 表1の上段 第1に、 遭遇する過渡現象の脅威から PHY を守らなければなら で、 こういったパルス特性の顕著な違いのいくつかが明らかであ ない。 第2に、 これはもっとやりがいがあるだろうが、 保護する る。 回路は、 リンクしている信号伝送に関して影響が緩やかでなけ 過渡現象の脅威の2番目はサージの脅威である。 サージ事 ればならない。 初期のイーサネットからギガビット ・ イーサネット、 象とは、 雷に誘導された低速の立ち上がり時間のパルスである。 10 ギガビット ・ イーサネットへと状況が変わるにつれて、 これは 波形は通常、 マイクロ秒の事象である。 誘導雷サージは ESD、 今やさらにやりがいのある提案となっている。 CDE、 EFT と比較して低速の立ち上がり時間であるが、 パルス 強力な防御は、 脅威の特徴を考慮しなければならない。 最も 波形では、 桁違いに高い電力が現れる。 それは、 ピーク電圧 基本的なレベルでは過渡現象の脅威を、 高速の立ち上がり時間 がある電圧波形またはピークパルス電流がある電流波形のどち の脅威と低速の立ち上がり時間 の脅威の2つのカテゴリに大きく らかとして定義できる。 テレコム市場のセグメントでは、 最終製 分けることができる。 こういったスパイクがポートや PCB パターン 品メーカーは、 誘導雷の脅威に対し非常に高いレベルのイミュ 上に結合するような方法は全く異なる可能性があり、 スパイクを ニティを要求するかもしれない。 表1の下段は、 誘導雷サージに 捕捉するのに必要な部品のタイプも異なる可能性がある。 対するイミュニティを示すのに用いられる一般的な試験パルスの ESD、 CDE (ケーブル放電)、 EFT (電気的高速過渡現象) 例を示す。 は高速の立ち上がり時間の事象 で、 その立ち上がり時間は1ナノ interference-technology.jp INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 31 EMC設計 電気的過渡現象からイーサネットポートを守る 特に高速の立ち上がり時間の事象(ESD およびケーブル放電) では、 ダイオード接合部が、 最初の誘導スパイク期間中に過渡 電圧を捉えるため、 低電圧閾値でブレークダウンしなければな らない。 雷の場合、 TVS 接合部は高いサージ電流を吸収する 必要がある。 したがって TVS 接合部は雷用定格のデバイスとし 図1.分流保護要素を持たせたTVSデバイス て大きくなる。 シリコン TVS 接合部については、 デバイスの電流の取扱い 電源 と静電容量の間にトレードオフがある。 基本的な法則としては、 TVS 部分の最大ピークパルス (Ipp) 定格が高い値になれば、 デバイスの静電容量も高くなる。 逆に、 デバイスが低い静電容 量だと、 一般的にはより弱いサージ吸収に相関する。 S1 S2 イーサネット線で、 デバイスは、 信号品質を低下させる過大な 静電容量負荷を持ち込むことなく強いサージ定格を提示しなけ 低静電容量 「ステアリング ダイオード」 TVSダイオード ればならない。 TVS アレイは 「レール ・ クランプ」 ダイオード構 造によって、 このように高いサージイミュニティと低い静電容量を GND 差動信号S1・S2 (イーサネット) 図2. 「レール・クランプ」TVS構造 過渡電圧抑制(TVS)アレイ イーサネットポート保護時の課題は、 最終機器が上記すべて の異なる過渡現象タイプに曝される可能性があるということであ る。 そのため保護構造には万能性が必要である。 従来のシステ 実現することができる。 非常に低い静電容量の 「ステアリングダ イオード (steering diodes)」 を TVS ダイオードに架橋すること によってサージ定格を維持し、 TVS アレイの静電容量を最小に することができる (図2参照)。 クランプ電圧 保護アレイの性能評価には 「保護している」 クランプ電圧を 考慮する必要がある。 クランプ電圧は、 入って来るサージ過渡 ム設計者はさまざまな低価格帯の回路保護部品から選ぶことが できたが、 これからのシステム設計では、 最適な解決策を選択 するのに、 もう少し用心深く注意して選択する必要がある。 低 電 圧 ブ レ ー ク ダ ウ ン や 応 答 時 間 の 短 さ、 低 い ク ラ ン プ 電 圧 に よ っ て、 過 渡 電 圧 抑 制 (TVS: Transient Voltage Suppression) ダイオードは、 低電圧イーサネットラインを保護す る際に、 ある範囲の過渡現象の脅威に対して他とは異なる利点 を発揮する。 もちろん他の部品も使えるが、 TVS デバイスはいく つかのレベルで、 おそらく必要とされるだろう。 図3.TVSダイオードの一般的クランプ応答 TVS ダイオードはどのように働くか TVS ダイオードは、 データ ・ ラインの両端に分流デバイスとし て接続する過電圧保護要素である (図1参照)。 信号が通常の 状態のとき、 TVS ダイオードは高いインピーダンスを示す。 TVS デバイスは定格静電容量と定格漏れ電流を持っており、 通常 0V と動作電圧で、 それぞれ測定される。 これらのパラメータは、 信 号インターフェイスのスピードに対応するよう選択され、 TVS ダイ パルス オードも通常動作中、 回路に対して 「透明に」 見えるよう、 十 分に小さい静電容量と漏れ電流でなければならない。 過渡的なスパイクがポートに達すると、 TVS ダイオードは過 渡電流をグランドに導く「捕捉ドア」のような働きをする。 ダイオー ド接合部はブレークダウンして低いインピーダンスの分流経路と なり、 危険な電流をダイオード接合部を通して逃がす。 効果的 な保護回路は、 この過渡電流を迂回させて、 過渡電圧スパイク を保護する IC が故障する閾値より低いレベルにクランプする。 32 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 図4.TVSダイオードでESDをクランプしたときの応答 2015年版ガイドブック EMC設計 P u ls e 図6.パルス8×20µs サージがクランプされる特性比較 図5.I-V特性の比較:低電圧TVSと標準「5V」TVS 電圧を TVS デバイスがクランプした結果の電圧である (図3およ び図4参照)。 この 「クランプされた電圧」 は、 PHY の入力に現 れるが、 これは明らかに最小にされなければならない。 低い過 渡電圧にクランプするほど、 より良い保護マージンが得られる。 TVS の選択によって大きな差が出るのはここである。 図7.ギガビットイーサネット用RClamp3374N流入保護素子の挿入 低い動作電圧のデバイスも、 一助になる。 これは TVS の標 準 DC 動作電圧である。 動作電圧以下での TVS デバイスは高 いインピーダンス素子である。 動作電圧を少し超えると、 TVS に は導通電流が流れ始める。 最適な保護のためには低い動作電 圧のデバイスを選ぶことが好ましい。 例えば、 差動信号の振幅 がちょうど 2V 未満のギガビットイーサネット ・ ポートでは、 2.5V で動作する TVS は、 6V で動作する TVS より、 クランプをする 上で一般的にいくつか有利な点がある。 低い動作電圧は、 TVS が低い電圧閾値でスパイク電圧を捕捉し、 論理的に速く応答で きるようにする。 さらに 「スナップ ・ バック」 I-V 特性を持つ TVS が若干有利 になることもある。 この場合、 わずかな負性抵抗が I-V 特性に 表れる (図5参照)。 これにより急激な I-V 特性が生じ、 今度は パルス電流のピークでクランプ電圧を低くする助けとなる。 雷を想定した TVS のクランプ電圧は、 しばしば 8 / 20µ (立ち 上がり 8 μ s、 立ち下がり 20µs) のパルスを用いて測定された値が 基準となる。 8 / 20 μs パルスに対してクランプされる電圧特性は、 電圧クランプによって異なる TVS デバイスの相違を明らかにする (図6参照)。 シリコン PHY スケーリングが感度の高い IC インター フェイス規格へと導くので、 5V ツェナーダイオード ・アレイはハイエ ンドのイーサネット ・ システムの保護に適しているとは言えない。 代 由がある。 それでも大部分のイミュニティ条件では、 イーサネッ ト ・ トランスの PHY 側で保護する利点がライン側で保護する利 点を上回る。PHY 側保護の鍵となる理由の1つは、大部分のサー ジ事象ではトランスが数レベルの減衰をサージ事象に提供する ということである。 パルスは依然として非常に危険なサージであ るが、 インターフェイスの PHY 側で、 このように若干減らされる。 PHY 側に部品を置くことにより、 トランスや何であれサージに対し てなされたアクションに対し、 EMC イミュニティ計画をてこ入れす ることが可能となる (図7参照)。 まとめ 現在のネットワーク状況におけるイーサネットポートは、 業界 の歴史上どの時代より過渡現象の影響を受けやすい。 効率的 に電力消費し、 高度に小型化されたイーサネット PHY は、 過渡 現象の脅威からの保護に、 ますます先進の過渡電圧防護回路 を必要とする。 設計の最初の段階でよく考慮すれば、 TVS ダイ オードを効果的に実装でき、 システムレベルで遭遇する多くの過 渡電圧の脅威からイーサネットベースのシステムを保護すること ができる。 わりに、 低い動作電圧と低いクランプ電圧が必要とされる。 回路保護の実行 Timothy Puls氏は、 Semtech社お保護製品マーケティング・マネジャー 最後になったが、 保護デバイスをどこに取り付けるかに関して、 である。過去にはNational Semiconductor社のフィールドセールスエンジ よく質問を受ける。 ポート境界に近い側のライン上に保護を置く ニアや、Texas Instruments社のアプリケーション・エンジニアリング担当 方が良いか?あるいはイーサネット ・ トランスの後ろの PHY 側に も経験。Texas A&M大学の電気工学学士の学位を持っている。連絡先 保護を置く方が良いのか?このどちらにも選択するべき確かな理 は、tpuls@semtech.com ■ interference-technology.jp INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 33 EMC設計 EMC要求適合のための基本的設計 2013年9月号 掲載 EMC要求に適合するための基本的設計手法 Paul Lee るために、 エミッションとサセプタビリティ Director of Business Development Murata Power Solutions, Milton Keynes, UK の両方を減らす目的で適用できる多数の 技術がある。 電 磁 両 立 性 (EMC) 関 係 の 国 電源 では電源から始めよう。 どんな電源供 際 規 則や 国 内 規 則 を厳 守し 給ラインでもループは最小限にし、 負荷 なけ れば なら な い多くのエ ン 直近境界に Q の低いフィルタを用いて、 ジニアにとって、 電磁妨害 (EMI) は悩 電 源供 給 ラインからの影 響を 分離 する みの種である。 しかし、 EMC を 達 成 す (図1参照)。 図1.電源供給ライン-ループを削除し、負荷直近境界で影響を分離する。 34 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015年版ガイドブック EMC設計 Lee プリント回路基板で考慮すべき事柄 EMC を実現するための PCB レイ アウト を 最 適化する場合 に考慮すべき事柄はかなり多い。 まず、 特にグランドプレーン または電流経路の近くでは、 細長い切口の開口部は避ける。 また、 電源ラインに細いパターンは、 高インピーダンスと高い EMI を引き起こす場所を発生させるので使用してはならない。 さらに、 電源プレーンを重ねてはいけない。 システムノイズと電 源結合を減らすために、 共通グランド上で電源プレーン同士を 別々にしておく。 図2.HFが通る配線パターンは短く、配線パターン上のスタブは避ける、留め継ぎ 角(mitre corner)と分離した層のパターンを直行させる。 基板パターン上のスタブは、 反射や高調波の原因になるの で避けなければならない (図2参照)。 同様に、 ビアやスルー ホールパッドの場所を限定的に集中させてはいけない。 経路を システムの高速部分は、 電源ライン入力の最も近くに置き、 最も低速な部分は離して置いて、 電源ラインの過渡変動を減ら す助けとする。 必要最小限の帯域幅に狭めるために、信号線にローパスフィ ルタを使う。 広帯域信号線には送りと戻りのループを近くに保 つ。 HF 信号または RF 信号を伝送線路の終端は、 反射、 リ ンギング、 オーバーシュートを最小にするために実行する必要 がある。 信号を外部の基板へ伝送する信号線は、 リード線の 終端が基板内に入り込まないように、 また、 緩んだリードが基 板上を横切らないように、 基板端で最良の終端をする。 基板 上の全ての信号は 「空中配線のリード」 (単純に部品の 「リード」 を端子または他のリードに圧接し、 はんだ付けして配線する回 路) を通らずにトレースされることが重要である。 信号導体が共振しないように、 ケーブル敷設または配線パ ターンが信号周波数またはその倍数の周波数の、 およそ 4 分 の 1 波長に近づくことを避ける。 スルーレートの制限、 つまり 信号やクロックエッジの立ち上がり時間、 立下り時間を最小限 に抑えて、 波形の鋭いエッジが広帯域の HF スペクトラムを発 生させるためにおこるクロストークを軽減させる。 ループ状にすると非常に高い効率の受信または放射アンテナ となるので、 層間でさえループ形状を作ってはいけない。 同様 に、 浮いている導体は EMI 放射器のように動作するので、 こ の手の導体はどんなものであっても残してはいけない。 できれ ば、 これらをグランドプレーンに接続する。 しばしば、 これらの セクションは放熱のために設置されるので、 極性は重要でない が、 部品としてデータシートをチェックしなければならない。 全 て の 信 号 の 伝 送 経 路 は 「 ス ト リ ッ プ ラ イ ン 」 (TEM (transverse Electromagnetic) 伝送線路媒体) であり、 可能 ならばいつでもグランドプレーンと電源プレーンを含むことを確 実にしておく。 信号線からのリターン電流は、 その上か下のグ ランドプレーンに 「投影」 され、 これらの投影経路が遮断され ても結合されてもいけないことを忘れてはならない。 HF と RF の経路は可能な限り短くして、 最初に HF 経路のレイアウトを 行う。 留め継ぎ角 (角に円みをつける) の経路は、 電磁界の集中 を減らすのを助けるので、 EMC 性能を考慮するときに役立つ。 信号線の最終的なヒントは、 可能な場合は隣接した層間で回 路パターンを直交させることである。 こういったヒントは図2に図 解している。 図3.ガードリングとベタグランドの使用。パターン層の周囲のガードリングは基板からのエミッションを減らす。 interference-technology.jp INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 35 EMC設計 図4.基本的なSMPSとフィルタの構成例 EMC要求適合のための基本的設計 図5.インダクタによるアンプのフィルタ 感度が高い部品と終端用に、 周囲を囲ったグランドリングと ションへの影響が強くなる可能性がある。 したがって、 その使 ベタグランドを使うことができる (図3参照)。 配線はパターン層 用は 「最後の手段」 として残しておかなければならない。 シー の周囲のガードリングは基板からのエミッションを減らす。 ガー ルドが可能な場合、 高速スイッチング回路、 主電源部品、 低 ドリングのグランドへの接続は一点で行い、 他の用途には決し 電力回路で使用する。 トランスまたはインダクタの周囲に磁気 て用いないこと (つまり回路からのグランドリターンに使わない シールドまたは 「腹巻 (belly band)」、 そしてトランス巻線間の こと) 静電シールドの指定を考慮する。 一般的には、 可能な範囲で システムの全部品の帯域を最小にし、 回路を分離することは、 部品で考慮すべき事柄 サセプタビリティとエミッションを削減する。 ここでは、 特定の部品の周辺で EMC に関して考慮すべき事 柄を見てみよう。 第1ステップは、 バイアスとプルアップ/ダウン EMC 対策の部品 部品をドライバまたはバイアスポイントの近くに置くことである。 トランスの絶縁器、 標準的なインダクタ、 コモンモードチョー クロック回路からの出力ドライブは最小にしなければならない。 クなどの部品は、 既存の回路内で特定の EMC 問題に単純な 信号ラインとその信号の帰還ライン間の結合を増やし、 電流の 解決策を提供することができる。 流れと信号ライン間の浮遊磁界を打消しあう優れた方法は、 コ モンモードチョークを使うことである。 インダクタ 部品ノイズと電源ライントランジェントはチップに近い電源供 インダクタは、 電 源ラインの EMI を減らし、 高い電流信号 給ラインを結合遮断することによって減らすことができる。 結合 をフィルタするのに理想的である。 スイッチング電源 (SMPS) 遮断と迂回には、 低インピーダンス、 高い共振周波数、 安定 回路においてインダクタは、 エネルギー保存とラインフィルタの 性で、 セラミック多層コンデンサが選ばれる。 両方の目的に使われる。 EMC 問題が疑われるならば、 トロ 可能ならば、 最適なフィルタ効果が得られる個別部品の組 イダルインダクタまたはシールドしたインダクタが使用可能であ み合わせを用いる。 スルーホール部終端の低い寄生効果と低 る。 トロイダルインダクタは、磁界をコア形状内に保持するため、 いアンテナ効果という利点により、 表面実装が好ましい。 その 事実上の放射磁界はゼロである。 同じ理由で、 EMI に対する 終端でケーブルのフィルタと超過電圧保護を含むこと。 これは、 トロイダルインダクタのサセプタビリティも、 非常に低い。 特にシステムの外部にあるケーブルにとって重要である。 でき 回路の電源部分において、 内部の電源と外からの主電源 れば、 すべての外部ケーブルは、 機器の境界で絶縁されてい 供給との間にあるインダクタは、 電源供給に良好なフィルタを ること。 提供し、 システムの周辺回路からのノイズを減らし、 主電源線 特に相 補 型金 属 酸化膜 半 導体 (CMOS) IC に お いては、 からのノイズを防ぐ。 インダクタを選ぶ際には、 回路部分で対 IC ごとの負荷電流とサージ電流を減らすことができるので、ファ 応している電流と相対的なスイッチング ・ スピードを考慮する。 ンアウトを最小にすることでデジタル出力上の容量性負荷を最 一般的に、 インダクタンスの高い値は低い自己共振周波数を 小にすることが可能である。 持ち、 回路を妨害する可能性のある厄介なリンギングが生じる シールドは EMC 性能の向上に効果的である一方、 高価で、 ので、 必要なフィルタ効果が得られる最も低い値のインダクタ システム重量が増加するので、 システム全体の性能またはミッ ンスを用いる。 インダクタに並列抵抗を入れると、 フィルタ回路 36 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015年版ガイドブック EMC設計 Lee の Q が下ってリンギング波形が鈍って、 役に立つことが多い。 されたコモンモードチョークを賢く選択することにより、 同じ部品 低いインダクタンスは通常、 低い DC 損失となり、 負荷ステップ 内でフィルタされることが可能である。 これは結果として「漏洩」 を伴った低いトランジェント電圧が発生する インダクタンスとなり、 各ラインのシリーズモードチョークのよう リアクタンス負荷またはドライバが接続されている信号ライン に振る舞う。 の場合、 リアクタンスの受動回路 を使い、 整合の取れた終端 が必要とされるかもしれない。 負荷/ドライバの周波数応答 トランス を知っておく必要があるが、 比較的単純かつ簡単に特徴づけ 信号トランス使用による EMC 上の主なメリットは、 信号ライ られる RCL 回路によって整合させることが可能である。 インダ ンと付属回路との間に分離障壁を提供することである。 これは、 クタが使用可能なもう1つの領域は、 アンプのバイアス回路で、 特に信号線が基板またはシステムから出る場合である。 ライン 回路の EMI を減らすことができる (図5参照)。 バイアスまた を隔離させることで、 コモンモードノイズを減らして、 システム間 は補正回路内に誘導性要素を用いることによって、 インダクタ のグランド (または信号の戻り) 電位差を除くので、 これは駆 ンスを信号回路に追加せずに、 フィルタの追加ができる。 イン 動または受信する信号にとって有効である。 ダクタンス値の慎重な選択が必要であり、 アンプの近くに配置 することが重要である。 この方法は、 特にビデオやテレビの形 式の信号に乗る HF ノイズをフィルタするのに適切である。 DC-DC コンバータの入出力分離 入出力分離の DC-DC コンバー タは、 システム電 源からの 電源レールとグランドの両方を分離するので、 実質的にサセプ コモンモードチョーク タビリティと伝導エミッションを低下させることが可能である。 こ コモンモードチョークは、 コモンモードノイズおよび、 ケーブ の DC-DC コンバータは、 スイッチングデバイスであり、 それ自 ル上の EMI または信号パターンへの誘導 などを取り除くため 体のスイッチング素子とスイッチング周波数特性によって、 図 6 に、 信号ラインに使用できる。 コモンモードチョークは、 可能 に示すように、 追加のフィルタが必要になるかもしれない。 な限り、 ドライバ/レシーバ回路の近く、 または基板へ信号が こういった一般的な設計の勧めは、 EMI を最小にし、 短時 入ってくる場所に設置しなければならない。 コモンモードチョー 間でシステムの EMC 認証を得るのに役に立つガイドであると クは必要なディファレンシャルモードの信号と DC を通過させ、 言えるだろう。 信号と戻りのライン (すなわち誘導された EMI) の両方に現れ た妨害をキャンセルする ことによって働く。 正しいインダクタン スを選ぶことは、 ラインの特性インピーダンスを維持するように Paul Lee氏は、Murata Power Solutions (MPS)社で約20年にわたり勤 作用し、 終端の帯域幅制限フィルタの働きをするのを助ける。 務。電力変換を専門とし、低電力DC/DC、磁気製品の製品管理および事 電源ラインでは、 コモンモード EMI を減らすためにコモンモー 業開発すべてを担当している。MPSでの前職はエンジニアリングのディレ ドチョークを使用できる。 ディファレンシャルモードノイズもまた、 クター。Lee氏の拠点は英国である。■ 巻線間の完璧とはほど遠い結合を実現するように慎重に設計 図6.DC-DCコンバータのフィルタ interference-technology.jp INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 37 ノイズ対策 新しい筐体構造のEMIシールド 2014年7月号 掲載 新しい筐体構造が提供されたEMIシールド Justin Moll Director of Marketing VadaTech, Inc. M icroTCA* は、 PCI 工業用コンピュー タ 生 産 者 グ ル ー プ (PICMG:PCI Industrial Computer Manufacturer’ s Group)によって開発されたコンピューティング・ アーキテクチャを組み込んだオープン ・ スタン ダードである。 この技術は、 小さな形状係数 で相当な性能を提供する。 システム設計では、 設計および用途の全型式に対して、本来備わっ ている EMI 防御を提供する。 MicroTCA も、 シ ステム管理、 冗長性のあるオプション、 高速、 適応性のあるシリアルプロトコル、 厳しい産業 または MIL /航空用の設計から、 更に重要な 利益を提供する。 高 エ ネル ギ ー 物 理 学 の用 途 で は、 特 に MicroTCA.4 仕様によって対応する。 運輸、 エネルギーなど多くの用途である。 他のオープン ・ アーキテクチャに勝つ長所を 下記に挙げる。 ▪▪ 完全な冗長性(アーキテクチャ内の失敗 が全くない)- 99. 99999の稼働時間が 予想される ▪▪ 通電状態で交換可能のモジュール ▪▪ シリアル・バス ▪▪ 1ラインあたり10Gbまでの高速光ファイバ・ インターフェイス ▪▪ クロック ▪▪ 筐体管理 ▪▪ 垂直的市場 形状係数は、 19 インチのラックマウントま たは小さいベンチトップ ・ シャシーに約 75mm MicroTCA について × 3HP (6HP ま で) × 180mm の深 い ボー ド 多用途設計により、 MicroTCA は広範囲の をプラッギングしたモジュールを使用する。 多 用途で使われる。 例えば電気通信、 軍事 / 航 用途 ・ 小型サイズのアーキテクチャに対応し 空宇宙、 企業内通信網、 産業自動化、 診療、 て、 サイズが2倍のボードや種々の構成もあ 訳者注: * MicroTCA (Telecommunication Computing Architecture) 38 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 る。 MicroTCA Shelf モジュラー内で非常に多 様な Advanced Mezzanine Cards (AMC) の集 積を構成することによって、 多くの異なる用途 2014年7月 ノイズ対策 Moll のアーキテクチャは容易に実現で きる。 AMC は、 シャシーに差し込 み、論理処理、通信網、画像処理、 記憶、 棚管理など多くの機能を持 つ様々なタイプになる。 MicroTCA によって定義される共通の要素は、 こういった AMC を、 電源供給とそ の管理など多くの興味深い方法で すべてを高効率かつ低コストで相 互接 続することがで きることであ る。 プロトコルの柔軟性は、 以下の 通りである。 ▪▪ AMC.0基本仕様 ▪▪ AMC.1 PCIe 図1.この写真は、トップと片面をガスケッチングしたAMCボードのパネルブロックを示している。右 下をよく見ると、ガスケット断面形状が丸みを帯びた「二等辺三角形」なのが分かる。 ▪▪ AMC.2 GbE と10GbE ▪▪ AMC.3 SAS/SATA ▪▪ AMC.4 シリアル高速I/O モジュール ガスケッチング 接続可能な AMC モジュールは、 CuNi コーティングをした織 物外装材を備えたコアーファームスリーブを利用する。 スリーブ は、 丸みを帯びた二等辺三角形のような形をしている。 変形 可能なガスケットは、 囲いを確実にシールするのに十分柔軟で ある。 いろいろな製造供給元の生産ラインで EMC 性能の整合 性を保つため、 すべての AMC には類似したガスケッチングがあ る。 AMC の側面には、 ボードの片端に類似したガスケッチング がある。 ガスケットの形状により確実なシールが可能となる力が 生じるので、 ガスケッチングは全ての側面には必要ない。 更に、 ガスケットの形状は、 AMC パネルブロックの一番上の上方領域 を覆うので、 封じ込めを支援する重要な領域がある。 図1を参 照のこと。 MicroTCA の EMC 要求事項 MicroTCA.0 仕様からの EMC 要求事項の抜粋を以下に示す。 「全ての MicroTCA 機器はクラス A 限度値に適合しなければ ならない。 そして、 以下の規制規格 / 要求事項のクラス B 限度 値に適合しなければならない。 ヨーロッパの IT 機器 : EN 55022 と EN 55024 (CISPR22 と CISPR24 と同等で、 大部分の国で CISPR24 が使われている ) ヨーロッパの有線電気通信機器: EN 300 386、 公衆電話回線用機 器の電磁両立性 (EMC) 要求事項、 電磁両立性 (EMC) 要求事 項 (EN 55022 と EN55024 の組み合わせと 類似 )。 米 国 : FCC CFR 47 Part 15, Subpart B このように、 MicroTCA は、 信頼 性を保証するため、 確立され証明 された電気通信や他の EMC 規格 を利用する。 図2.最新のシールドレベルを必要としない限り、標準的な MicroTCAシャシーに対する追加のガスケッチングは通常は 最小である。写真は、簡単に実装できる非常に標準的な金属 ガスケット。 EMC 試験 最初の MicroTCA シャ シーに対する EMC 試 験は、 IEC TS 61587-3 (2 GHz) に従い実施される。 周波数範囲は 30 MHz ~ 3,000 MHz で、 減衰量はキャビネットのシールド性能レベルの定 interference-technology.jp INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 39 ノイズ対策 新しい筐体構造のEMIシールド 図3.この表は、フィールド入れ替え可能なユニット(FRU: Field Replaceable Unit)に基づくEMC試験事項MicroTCA.0仕様推奨事項を 示している 義より選ばれ、 IEC 60297* と IEC 60917* はサブラック用である。 を提供する。 追加のガスケッチングが必要かもしれないが、 簡 システム ・ レベルの試験は、 仕様のもう一つの重要な側面で 単に設置できる。 接続するプラグインのボードの様々なタイプの ある。 規制 EMC 要求事項は、 システム ・ レベルで適合を必要 ほかに、 冷却ユニット (しばしば余分なプッシュプル) があって、 とする。 したがって、 FRU (Field Replaceable Unit : フィールド 製造供給元が提供する解決策次第では、 ガスケッチングが必 で入れ替え可能なユニット) レベルで適合を主張することは受け 要になるかもしれない。 入れられない (若干の管轄の PC 周辺機器を除く)。 試験は、 フル装備のシステム ・ レベル (代表的な最悪のケース) で行わ なければならない。 上の表は、 FRU タイプに基づき推奨された 試験事項を表す。 図3は、 FRU タイプに基づく推薦された試験事項を表す。 上 記の図3を参照のこと。 高性能、固有の EMC MicroTCA は、 拡張性があり強力で小型 ・ 多用途のプラット ホームを、 様々なコンピューティング ・ アプリケーションに提供す る。 証明された EMC 技術を使って、 仕様のシールド性能がアー キテクチャへ組み込まれている。 これによりエンジニアのリスク が減り、 一貫して能力を発揮できるようになる。 PICMG も、 短 シャシーのガスケッチング MicroTCA シャシーには、 いくつかのサイズとフォームファクタ い書式の仕様を技術背景に興味がある人々にオンラインで、 提 供する。 がある。 最も一般的なものは、 水平マウント ・ シャシーで、 多く の場合高さは 1U-3U である。1U の高さでさえ MicroTCA シャシー は最高 12 の AMC を保持することができ、 小さなスペースで相 以上は、PICMG®のMTCA.0マイクロ電気通信、コンピューティング、ア ーキテクチャ(MicroTCA.0)仕様より抜粋。 当な性能を提供する。 4U から 8U までの高さでは典型的に、 エ ンクロージャーは縦置きの方向にもなる。 これらは、 標準的な Justin M oll氏は、VadaTech社でマーケティングの責任者を務めてい 幅 75mm (この場合は高さ) のボードまたは2倍の幅で、 およそ る。組み込みコンピューティングにおける15年以上の経験があり、電子機 サイズが 150mm のものを保持することができる。 器パッケージ会社でのマネジメント経験もある。カリフォルニア大学で経 AMC はシャシーのそのような領域で、 度々、 十分なシールド 営管理学のBS学位を取得。PICMGとVITAのコミュニティで活躍し、さま ざまなマーケティンググループの議長もこなしている。連絡先は、Justin@ vadatech.com ■ 訳者注: * IEC 60297: 電子装置用筐体の試験法 * IEC 60917:電子機器方式用機械構造物の開発のためのモジュラー オーダー 40 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2014年7月 ノイズ対策 Weir 2014年1月号 掲載 リニア電圧安定器の フィルタ用コンデンサ選定基準 Steve Weir MTS X2Y ATTENUATORS, LLC にコンデンサが内蔵されている場合もあ 要約 圧安定器販売会社は、 安定化 電 電源装置とともに一般的なフィ ル タ用コン デン サの使用を提 る。 PDN のフィルタを最適化する方法は、 以下の通りである。 案することが多いが、 VRM * の反応に対 ▪▪ 高周波性能を出すためにコンデン する、より大きな PDN * バイパス・ネットワー サを必要な数量だけ採用すること。 クの効果を考慮すると、 この推奨案は曖 ▪▪ 低周波性能を出すために必要とさ 昧かつ役立たずとなることが多い。 れる容量(ファラッド)値だけ採用 すること。 フィルタのコンデンサ回路 ▪▪ 必要に応じて、安定した応答 をさ 図 1 は、 一般的な PDN の概念上のモ デルを表している。 せるために周波 数補 償 を 挿入す ること。 図を左から右へ見ていくと、 SMPS * の VRM のスイッチング電源ステージ、 VRM PDN 設計は、 VRM 用大容量 (バル ク Bulk) コンデンサの効果的な周波数 の効果的伝達関数インピーダンス、 個別 およびバイパスのフィルタ内コンデンサの 分岐、 直列に内部接続されたインダクタン ス、 最後に IC 負荷を取り付け、 それ自身 範囲に応じて、 密結合あるいは疎結合 として分類される場合もある。 密結合の 設計は、 VRM の高域周波数の周波数 応答に対応した高周波用コンデンサの 並列等価インピーダンスと比べて、 相互 * 訳者注 PDN : Power Distribution Network (電源分配 回路) VRM : Voltage Regulator Module ( 電 圧 安 定 化モジュール) SMPS : Switch Mode Power Supply (スイッチ ング電源) ESR : Equivalent Series Resistor (等 価 直列 抵抗) MLCC : Multilayer Ceramic Capacitors (多層セラ ミックコンデンサ) interference-technology.jp 接続インピーダンスが小さい場合に適 用される。 大部分のリニア電圧安定器 の周波 数 制限は、 1MHz 未満であ る。 特にリニア電 圧安定器を持つ PCB の PDN の大部分は密結合されている。 密結合の設計において、 分布させた バイパス回路は、 VRM の閉ループ応答 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 41 ノイズ対策 リニア電圧安定器のフィルタ用コンデンサ選定基準 PCBのPDN一般モデル SMPS 電源ステージ ICの スイッチング された電流 図1.一般的なPDNモデル の範囲内で、 VRM に直結された負荷となる。 ジェント・シミュレーションを実行する。 分配させた高周波コンデンサは、 バルクコンデンサで複製さ 5. トランジェント・シミュレーションで1.5サイクル未満のリンギ せる必要が無いだけでなく、 VRM のエラー応答においても、 そ ングを示すならば、設計は安定している。C BULK_INITIAL が の原因になるはずの静電容量を提供する。 MLCCのようにコスト高の場合は、代わりに低コストの電 PDN の高周波性能は、 大多数のコンデンサの個数と容量を 界コンデンサを選んで、再度シミュレーションを行なう。そ 制約するので、 実際の VRM フィルタ設計は、 最初に高周波回 うでなければ、C BULK_INITIALのMLCCフォームが設計の最 路を設計することから始める。 なので、 この回路は VRM の要求 終的な選択となる。 事項に適合している。 すべての VRM は、 電圧安定器の重要な部分ではフィードバッ ク ・ コントロールシステムである。 PCB の PDN および出力アンプ の IC 負荷によって、 閉ループ伝達関数が変わる。 最も重要な ことは、 高周波バイパス回路や、 どんなに大きな IC パッケージ 内の静電容量があっても、 無条件で安定した応答を実現するこ とである。 残念なことに、 実際には大多数のリニア電圧安定器のデー タシートや利用説明書に、 許容できるフィルタ用コンデンサの数 値パラメータが記載されていない。 多くの場合、 製造供給元は、 トランジェント ・ シミュレーションで 1.5 サイクル以上のリンギ ングを示す場合は、 ESR に伴うドミナント ・ ポール (dominant pole) が必要になる。 次のタスクは、 ポールの値を決定し、 そ れに応じた最終的なバルクフィルタコンデンサの値を選択するこ とである。 ドミナント・ポール補償合成 1. C BULK _ INITIALを理想的なコンデンサC DPおよび理想的な 直列抵抗R DPに置きかえる。 例えばタンタル製またはアルミ製の電解コンデンサなど、 漠然と 2. C DPを2*C PDNより大きい、最小のE3値にセットする 一般的なコンデンサを推奨するだけである。 あるいは、 製造供 3. 最初にR DPを1mオームにセットする。 給元は、 低い ESR * の MLCC * を許容すると言う以上の詳細仕 4. R DPの値を1.4倍ステップで増やしながら、リンギングが1.5 様はないかもしれない。 以下の設計手順により、 シミュレーショ サイクル以内に落ち着くまで、繰返しトランジェント・シミュ ンでの VRM の特性を示し、 この曖昧さを回避させる。 レーションを行なう。 5. 少なくともR DP と等しいか、R DPの4倍未満で最小のESRに 設計手順 1. 大きなICパッケージ内の静電容量だけでなく、レールの上 なるように、最適のコンデンサを選ぶ。 6. 最終的に選択した値でシミュレーションする。 に並列に入ったC PDN としてレール上の全ての高周波コン デンサの等価並列容量を加算して、PDNの静電容量を合 計する。 2. 最初にバルクフィルタ用の静電容量を決定:VRMメーカー トランジェント・シミュレーションのセットアッ プ トランジェント ・ シミュレーションは、 テキサス ・ インスツルメン の推奨したバルク静電容量C PDN の違いがC BULK _ INITIAL ツ (TI) /ナショナル セミコンダクター (NS) 提供のフリー LT となる。 SPICE Linear Technology や WebBench な ど、 ど ん な SPICE 3. MLCCの選択、または静電容量が必要なところに合計が C BULK _ INITIAL .に等しいか超えた並列MLCCコンデンサを 選択する。 の変形においても実施可能である。 シミュレーションは、 負荷トランジェントの安定性を評価する。 それは、 理想的な電圧源から VRM へ供給する。 パルス電流 4. VRMにPDN回路と並列にC BULK_INITIALを接続して、トラン 42 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015年版ガイドブック ノイズ対策 Weir LT1083応答 470mF4個, 10mオーム, 700nH バイパス VRMトランジェント・シミュレーション回路 安 定 化 電 圧 理想的な 電圧源 パルス 負荷電流 バルク PDN または 等価並列 ドミナント・ポール HF等価回路 (必要な場合) 図2.VRMトランジェント・シミュレーションのセットアップ 源は VRM の負荷となる。 パルス幅は、ほぼ VRM メーカーのデー タシートのテスト波形にぴったり合うようセットされなければならな い。 しかし、 100 μ s で繰り返している 50 μ s のパルス幅は、 ほ とんどの場合は十分である。 立上りおよび立下り時間は 1/ (10 F0dB ) 以下でなければ成らない。 ここで F0dB は、 仕様が決まっ ている場合は、 負荷応答への妨害が 0dB、 または負荷応答仕 様が決まっていない場合は、 ライン拒否リニア電圧安定器の最 負 荷 電 流 図3.最初のPDNトランジェント応答 いくつかのコンデンサの選択によって、 ドミナント ・ ポール補 償回路を実現させることができる。 MLCC 22 μ F 厚膜抵抗を直列に伴う 35m オーム コスト予算 : $0.20 アルミニウムポリマー SMT* コンデンサ 22 μ F 40m オーム コスト予算 : $0.45 タンタルポリマー SMTコンデンサ 22μF 40m オーム も高い帯域幅以外、 概して 100ns は適切である。 コスト予算 : $1.33 設計例 要約 設計例用に普及型の3端子電圧安定器を使用する。 これは VRM は、 基本的にフィードバック・コントロールシステムである。 Linear Technology 社製 の LT1083 で 3.3V 安定器として用い、 内部接続インピーダンスが VRM の周波数全領域において低い 周波数補償用コンデンサに 1 μ F、バルクフィルタ用に指定されて 場合、 全体の PDN は、 VRM に密結合して負荷となる、 必要な いない 10 μ F のタンタルコンデンサを同社が推奨しているものと バルク静電容量を減らせるのだが、 潜在的に応答を不安定にさ した。タンタル10μF コンデンサは、ESR が 25m オームから10 オー せることもある。 ムまでの異なる形式の抵抗が使用できる。 データシートと取扱 シンプルなシミュレーション主導の手順によって、 コンパクトで 説明書にはほとんどガイダンスは載っていない。 不十分な ESR 低コストのソリューションが可能になる一方、 最適な VRM 応答 によって、 結果的にリンギングやトランジェントの回復が遅くなる。 を得ることができる。 ■ 過度の ESR は、 トランジェント電圧が大きく逸脱する結果となる。 我々の例では、 高周波 PDN は、 電源プレーンへの取り付 け部の公称インダクタンスに付随する主要な MLCC メーカーの LT1083応答 470nF 24個, 10mオーム, 700nH バイパス 22uF 32mオーム / 45mオーム ドミナント/ポール 470nF 0402 X5R コンデンサが24個で表される。 24個の 470nF コンデンサをまとめて、C PDN は 10 μ F 以上をメーカーは推奨して いる。 バルクコンデンサは全く使用せずにスタートする。 図3で 見られるように、 結果として生ずるトランジェント応答は、 相当な リンギングを示す。 ドミナント ・ ポール補償を追加する必要があ るだろう。 安 定 化 電 圧 元 々 の 応 答 2 2 u F 3 5 m オ ーム の 応 答 2 2 u F 4 5 m オ ーム の 応 答 手順に従って、 最初に PDN の並列静電容量の少なくとも2倍 の E3 コンデンサの値を選ぶ。 22uF が適切である。 次に、 ESR の値を変えながらトランジェントのリンギングが十分に鈍るまで、 トランジェント・シミュレーションを繰り返す。 その結果、 32m オー ムの ESR が適切な最小値であることがわかる。 図4で見られる 負 荷 電 流 ように、 補償された応答はピークの逸脱を約 50% 減少させて、 瞬時に安定する。 interference-technology.jp 図4.補償された応答 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 43 サージ保護 誘電体に依存しないEMIフィルタの使用 2013年7月号 掲載 製品設計で不可欠なサージ保護を 誘電体に依存しないEMIフィルタの使用に シフトする実用的な理由 Philip F. Keebler, D. Michael Evans and Nathan A. Reid KCE Engineering, LLC ての EMI フィルタは、 多段フィルタを作る ために追加フィルタ部品 (すなわちキャパ シタやインダクタ) を利用する。 EMI 問題 を避けようとする規則や法律に規定された とおりに、 米国あるいは国際的な適合性 はじめに を達成しようとすると、 日常的に何千とい 送電網や顧客の設備内部から発生す う新製品が伝導 EMC 試験に不合格とな る電気的妨害の脅威から機器を保護する る。 EMC 適合性達成を試みる際、 設計 ことと、伝導性妨害 (すなわちエミッション) 開発者はみな 「失敗談」 を封印する。 今 から機器を保護することは、 電子機器全 日、 市場に出回っている多くの故障製品 ての寿命や動作を確保する上で重要であ を論理的に分析すると、 故障は早い段階 る。 この2点は、 メーカーが軽視してはい の MOV 不良が原因で発生していると分 けない問題である。 メーカーは、 顧客の かった。 期待に応える性能を持つ製品を設計し、 また、 多くの製品が電圧サージからフィ 生産するというプレッシャーを絶えず受け ルタ部品の不適切な使用または保護の無 ている。 さらに、 メーカーは投資してくれ いことが原因で、 検出されない EMI フィル た投資家を満足させ、 売買によって利益 タの損傷も経験している。 本稿は、 EMI を得なければならないし、 現在のデジタ フィルタ設計の技術的な詳細を意図した ル社会に対し新製品を開発し続けなけれ ものではなく、 なぜ製品設計に効果的な ばならない。 EMI 問題や電圧サージが原 フィルタが必要なのか、 議論し事例を紹 因となる製品の故障や機能不全は、 製品 介するものである。 ここでは、 新しいパッ の保護や性能にダメージを与えることなく、 シブ EMI フィルタ技術が、 従来の EMI フィ 経済的かつ効果的な方法で対処できる。 ルタの設計と用途に伴う多くの課題および 過去20~30年間、 製品設計に一般的に 製品試験に伴う課題をどうすれば解決で 用いられるようになった2つの技術は、 主 きるかという点についても議論する。 この にキャパシタとインダクタを使用するパッシ 新技術は、 結果としてほんの少量の誘電 ブ EMI フィルタ、 および金属酸化物バリス 材料しか必要としないエミッション電流の タ (MOV) である。 EMI フィルタの方が、 キャンセル (すなわち誘電体から独立し MOV よりずっと長い期間、 使われている。 たフィルタを必須のものにする) およびコ EMI フィルタ用に多くの新しいトポロジーが モンモードチョークというインダクタンス要 設計、 導入されてきている。 本来、 すべ 素の除去を有効利用する。 さまざまな電 44 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015 サージ保護 Keebler 子機器の技術として使用されているものに関して、 性能と経済的 テグリティの特性に関した設計に時間を取らなければならない。 要素の分析を含む新しいフィルタ技術について、 2、 3の具体的 従来のプリント回路基板上のノイズ源は、 電源、 グランド、 信号 使用例を後述する。 のパターンに流れ、 最終的にプリント回路基板上の間違った場 所に行き着いてエミッションを発生させる電流となる。 ノイズ源か 製品の性能と互換性向上に対する経 済的プ レッシャー らさらにノイズ電流を遠ざけて緩和する試みは、 そうでなくても製 製品メーカーは、 経費削減の方法を絶えず探している。 製品 のある基板追加スペースや人的リソース追加が最終的に必要と 設計 ・ 試験 ・ 製造のコストは、 現代の経済状態において、 再評 品の主要性能に影響する部品や設計時間のせいになる可能性 なる設計課題の上乗せとなる。 価しなければならない問題として関心が高まっている。 製造ライ ンの海外移転で得ている経済的利益は、 米国内の製造設備で プリント回路基板のレイアウト の継続した利益を出すために必要なマージンをもはや支えきれ あらゆる回路の周波数特性にとって、 また基板を横切って伝 ない。 さらに、 保守 ・ 修理 ・ 無償保証の維持などの顧客サービ 達可能でなければならない電力と信号のための電圧および電 スは、 メーカーに回避できる余裕はない大きな財務上の危機に 流の大きさと位相に、 プリント回路基板の機構は決定的である。 なってきている。 メーカー設備内で顧客サイドの 「生産終了」 に 回路を作るための部品を相互に接続した回路図の線は、 設計 至るまで、 一貫して機器を 「概念実証」 段階から費用対効果の 時および回路がどのように動作するか理解しようとする際に、 概 高い生産に移行するという従来のアプローチ適用に伴う経済状 念化が単純で簡単である。 基板の機構は、 基板で使われるす 態は、 もはやメーカーおよび投資家に対して健全な利益限度を べての材料の抵抗、 キャパシタンス、 インダクタンスの各要素を 保つことができない。 今日の経済状態で製品を買うための投資 含んでいる。 これには銅箔のパターンと基板の材料などがある。 をするという財務的制約を考えると、 エンドユーザーは性能が維 銅箔パターンは個別に、 長さ、 幅、 厚みを持っている。 これら 持でき寿命の長い製品を望んでもいる。 の寸法は、 配線パターンの抵抗、 キャパシタンス、 インダクタン スとなる。 配線パターン間の距離も重要である。 配線パターン間 製品設計 には静電容量がある。 部品から部品への配線パターンの経路 製品設計者は、 製品の主要な性能を設計するために必要な は、 振幅、 位相、 周波数の応答に影響を与える。 電圧と電流 専門知識を駆使して、 与えられた時間内に設計しなければなら の周波数が低いとき、 基板の機構は実際の回路動作に対して ない。 主要な性能とは、 その製品が顧客のために何をするのか 重要な振舞いはしない。 しかし、 周波数が増加するにつれ、 こ ということを定義することである。 製品が、 十分な速度で機能を れらの要素の機構は、 放射と伝導エミッションの制御にとって極 発揮し、 高品質な最終結果を生み出せるか ? 最終製品は機能 めて重要になる。 不良を発生することなく、 機能できるか? 軽さは十分か ? 大 たとえば設計者が回路基板上に抵抗を置く場合、 回路の内 きすぎないか ? 例えば製品が HDTV の場合、 製品設計者は 部に抵抗を置こうとする。 同じことは、 実際のインダクタやキャパ 映像と音声の品質に集中して時間を費やさなければならないが、 シタのような他の部品にも言える。 しかし、 2つの抵抗を同じ銅 同時に顧客の期待に合ったテレビの機能を確実に発揮すること 箔パターンを使う経路に置く場合、 小さな 「インダクタンス」 は回 にも時間を費やさす必要がある。 効果がない EMI フィルタに戻っ 路の一部になる。 この 「インダクタンス」 は、 手にとって触った てまでエミッションを追いかけ、 なぜ電気ノイズが映像品質に影 り見たりできる実物のインダクタ (またはコイル) ではなく、 抵抗 響するのか明らかにするという時間の無駄をすべきではない。 ノ の 「寄生的な」 (または内部の) インダクタンスである。 寄生イ イズの発生源が、 高解像度信号処理が必要なデジタル回路か ンダクタンスは他のインダクタと同様、 「抵抗━寄生インダクタン らではなく、 そしてノイズを画面領域に印加するとき、 これは特に ス━抵抗」 の回路を通る周波数が増え、 2つの抵抗がもはや電 重要である。 ノイズレベルより低いデジタル設計でノイズ ・ フロア 気的に接続しなくなるまでになると、 基本的に開回路になる。 も で動作可能ならば、 設計者は最終的に良い映像を得ることがで ちろん、 これはインピーダンス (すなわち周波数依存的な抵抗) きる。 「映像品質を決定する信号に実際に影響する信号整形部 が周波数増加に比例して増加するからである。 インダクタのイン 品に対し、 基板レベルでのノイズ抑制部品がいくつ必要か」 と、 ピーダンス XL は、XL = j2 π fL Ω (オーム)で、ここで、f は周波数、 設計者は自問すべきである。 放射および伝導エミッションをよく L は寄生インダクタンスの値である。 この式から、 周波数が増加 制御すれば、 プリント回路基板上のノイズフロアに極めて影響を すると、 インピーダンスが増加することがわかる。 また、 インダク 及ぼす。 タンス L が増加すると、 インピーダンスが増加する。 それゆえに、 別の例では、 冷蔵庫のようなスマート家電の通信リンクに取り 設計者は抵抗から抵抗への回路を可能な限り確実に小さなイン 組んでいる製品設計者は、 リンクの品質に影響するエミッション ダクタンスにするために、 寄生インダクタンスをできるだけ低くして 電流源を追いかけたり、 ユーザーまたはエネルギー管理会社が おきたい。 始めた命令が機器を動作させる機能を正しく起動するかどうかと EMI フィルタは定義上、 フィルタの下流部へ電子機器の動作 いうことを突き詰めたりするよりも、 リンクの通信とシグナル ・ イン によって発生する伝導エミッション電流 (すなわち電気ノイズ) を interference-technology.jp INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 45 サージ保護 誘電体に依存しないEMIフィルタの使用 吸収 (または取り込む) および迂回させるように設計されている。 がある。 これではフィルタが大きく、 重く、 高価になる。 これは、 伝導エミッションは AC や DC 波形に 「乗る」 非常に小さい電流 従来のフィルタの部分で生じる寄生インピーダンスと、 それらの を作り出した非常に小さい電圧信号である。 エミッションは、 可 部品がエミッションのフィルタに顕著な影響を及ぼす理由の1つで 能な限り最も低いインピーダンスを見つけ出し、 機器の外側へ達 ある。 しようとして電源と制御信号に 「乗る」。 フィルタによって捕捉さ れたエミッションは機器のグランド導体に注入される。 エミッショ 試験、EMI ラインフィルタ、エミッション性能 ンは建物のグランドシステムに集積され循環する。 残りのエミッ メーカーは、 製品を試験を実施するのに巨額の費用を使って ションが AC ラインのコード内に流入する際、 ノイズが建物のグ いる。 製品は、 安全性、 適合性、 その他さまざまな目的のため ランドシステムや配線内および配電網に流れる場合に、 EMI 問 に、 試験を剃る必要がある。 一部のメーカーは、 性能証明書を 題の原因になることは殆どありえないようにするため、 伝導エミッ 与えられる実際の適合試験に備えて、 メーカー内の開発実験室 ションは制御されなければならない。 これらのエミッションの大 で予備適合性試験をする。 予備適合性試験または適合性試験 きさが低いと、 AC ラインのエミッションの許容限度値も同様に低 の、 どちらに時間を費やすのであれ、 その時間のためにメーカー い。 このため、 EMI フィルタは非常に小さなノイズの電圧と電流 は年間何百万ドルの費用を支払う。 実行しなければならない適 を取り除くように設計されているが、 AC (DC 発生源および負荷 合性試験の重要なセットのうちの1つは、 EMC 試験一式である。 の場合は DC) 電源がフィルタの下流の配電網から電子機器へ 製品に実施する EMC 試験の主要な2グループは、 放射試験お と流れるようにしなければならない。 また、 建物内の配電網や よび伝導試験である。 負荷によって発生する電気妨害 (例えば電圧サージや一時的な 放射エミッションは、 部品、 基板上の回路パターン、 ワイヤー 過電圧) から 「撃退」 するようにも設計されていなければならな 配線から空気中へ伝搬する。 伝導エミッションは、部品や基板・ い。 従来のディスクリート EMI フィルタの設計は、その性質上、ディ ワイヤ上の回路パターンから、 導体( AC ラインのコード、 そのグ スクリート・フィルタ部品 (すなわち、 キャパシタやインダクタ) が、 ランド導体、 データやネットワークケーブル、 制御ケーブル) へと プリント回路基板上に取り付けられている場合、 エミッションを制 伝搬する放射および伝導のエミッションは物理法則によって関連 御するのを難しくする。 各ディスクリート内の損失は、 フィルタの 付けられている。 マクスウェル方程式が予測するとおり、 互いに エミッション低減能力に著しく影響を及ぼす。 フィルタ設計者は、 顕著に影響し合っている。 互いの影響は、 エミッション抑制デバ フィルタの損失を克服するためにこれらの部品を大きくする必要 イス (すなわちフィルタ) が、基板上、導体内に挿入、部品の周辺、 図1.伝導エミッション制御に影響するコモンモードチョークと寄生の欠点 46 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015 サージ保護 Keebler 図2.従来のチョーク対チョークレス誘電体独立フィルタのコモンモード挿入損失比較 製品など、どこで使われても、鍵となる関与を示す。 フィルタがシー レベルの部品も含め、 エミッション制御に影響するすべての要因 ルド缶を使用せず基板に設置するディスクリート設計か、 部品を を考慮することである。 基板上または機器筐体の側壁に置いたシールド缶の内部にある シールド設計か、 どちらであっても、 この影響はフィルタの性能 を簡単に悪化させる。 シールド缶が使われる場合、 フィルタの機 コモンモード挿入損失 コモンモード挿入損失とは、 フィルタ ・ エレメントのコモンモー 器側のエミッションはフィルタ缶周辺に漏洩する。この漏洩は、フィ ド機能が伝導エミッションプロフィールに適用する損失の尺度で ルタ缶の内部や近くのグランド導体の使用や、 フィルタ缶周囲に ある。 適切な周波数範囲の損失は、 機器の AC ラインコードか ある他の金属物に影響されている。 漏洩は、 チョークが缶の内 ら外部へ伝搬する前に、 許容できるエミッション電流の大きさを 部または基板上に直接取り付けたかには関わらず、 コモンモー 減らすために、 機器内部の電子装置により発生したエミッション ドチョークの様にフィルタ部品間で起こることもありうる。 エミッショ 電流に適用しなければならない。 機器内部から1本の電線 (例 ンの漏洩は、 設計者がしばしば見落す伝導性エミッション限度 えばホット) を通り、 グランドを通って戻るエミッション電流と、 機 値適合性を実現しようとして失敗する原因の1つである。 器から他の電線 (例えば中性線) を通り、 グランドを通って戻る メーカーは安全および適合性試験を何度も何度も繰り返さな エミッション電流は、 一般的にグランド線を共有する。 ければならなくなる。 試験の繰返しは、 製品の試験予算をかな これが、 コモンモードエミッションを引き起こす。 大部分の EMI り使うことになる。 従来の EMI フィルタ技術を使用する場合、 製 問題は、 コモンモードエミッションに起因しているので、 この測定 品は最初に試験に合格しなかったら、 試験の繰返しが必要であ 基準は EMI フィルタの性能結果を予測する際に重要である。 図 る。 多くの製品は2回や3回の試験では簡単に合格したりしない。 2は異なる8種類の EMI フィルタ部品の周波数範囲 100 kHz ~ 最初の試験で合格するのは現実的でないと言われるかもしれな 10 GHz におけるこの挿入損失をグラフ化したものである。 8種 いが、 注意深く設計すれば試験時間とコストを削減できる。 注 類のうち4種類は、 最近の EMI フィルタ最終製品で多く見られ 意深い設計方法とは、 エミッション制御の要求レベルと適用に最 る典型的なコモンモードチョークを使っている。 また、 別の1種 も効果的な (つまり希望する伝導エミッションの限度値に適合す 類は回路基板上で使うチップインダクタである。 2種類は、 回路 る) フィルタの設計と導入だけでなく、 フィルタに関連しない基板 基板上または個別の導体上で使うフェライトビーズである。 残り interference-technology.jp INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 47 サージ保護 誘電体に依存しないEMIフィルタの使用 は、 新しい EMI フィルタ技術が使われている5つの異なるキャパ 入力側と出力側の線間に1個ずつ、 計2個を使い、 その両方で シタンスの事例で、 損失の改善を示している。 グラフから、 各々 缶の中に基板スペースのかなりの広さを取っている。 多くの標準 の比較対象よりも損失が大幅に向上していることがわかるだろ 的なフィルタは、 わずか1個のインダクタ (コモンモードチョーク) う。 この損失の改善は、 低い周波数および中間の周波数だけで と、 ライン間( X) キャパシタ2個 (チョークの入力側も1つ、 出 なく、 GHz レンジの高い周波数でも見られる。 現在、 ますます 力側にもう1つ、 両方で缶の中に相当なスペースを取る) を使う。 多くの民生製品で、 基板上に GHz 帯の低い帯域 (例えば 1 ~ この種のフィルタは、パイ型フィルタと呼ばれている。また多くのフィ 6 GHz) の無線機が使われている。 これら高い周波数の信号は、 ルタは、 グランド ・ 線間と線 ・ ニュートラル間に、 1個または2個 多くの製品の伝導エミッションプロフィール (すなわち試験結果) の Y キャパシタも用いる。 フィルタ内にどれぐらい多くの Y キャパ で検出されている。 1GHz の信号を例に取ると、 新しいフィルタ シタを使用可能かということについては制限がある。この制限は、 技術では、 おおよそ 20dB の損失改善を提供することができる フィルタからグラウンドへ流れることを許される漏洩電流の量に のに対して、 現在使われているフィルタ設計に使われる素子では 基づいている。 漏洩電流は、 ノイズ電流がフィルタで捕えられて、 およそ 10dB の損失を提供するだけであることがわかる。 この改 グラウンドに注入されることを表す。 善は、 AC 電源線から GHz- 周波数成分を遠ざけ、 無線機ベー スの製品性能改善を助ける。 フィルタおよび製品の設計者は、 複雑なフィルタを使用する方 向に進んでいる。 これは、 電子負荷のノイズが多くなり、 高いレ ベルの伝導エミッションが生じるからである。 複雑なフィルタの使 2つの基本的フィルタタイプとフィルタ部品 用はまた、 低い伝導エミッション限度によって定義される厳しい 適合性限度値に合うよう伝導エミッション試験を行う際に、 明 エミッション管理のせいでもある。 引き続き世界中の規格整合化 らかにエミッション制御に影響を及ぼす製品内部のシステムまた の実現に向かっているのに対応して、 米国の規格は徐々に厳し はデバイスは、 EMI フィルタである。 製品設計者は、 EMI フィル くなっている。 しかし、 ヨーロッパやアジアの国々によって義務づ タの設計で、 ディスクリート設計またはシールド缶 (シールド箱、 けられている限度値は、 EMI 問題を起こす製品の可能性をさら すなわち一体) 設計の2つのアプローチのうち、どちらかを選ぶ。 に減らす努力において、 はるかに厳しい。 複雑なフィルタは、 1 ディスクリート設計では、 EMI フィルタの各々の部品は、 専用の つ以上のインダクタと複数の X および Y キャパシタを使う。 これ 回路基板の上に、 または他の部品 (例えば、 電源部品) と共 らのフィルタは、 インダクタと X と Y キャパシタの周囲で、 他の配 に回路基板上に、 個々に置く。 ディスクリートフィルタ設計は、 4 置のキャパシタさえ使う。 単純なフィルタを用いたときに提供され ~5個までの部品を使う単純なフィルタから、 最高20個の部品 る損失量が十分得られないという理由だけで、 複雑なフィルタが を使う複雑なフィルタまでを通常、 その範囲としている。 各ディス 使われる。 クリートフィルタ部品は、 印刷回路基板上の銅パターンを使って 他と接続されている。 パターン設計もまた、 フィルタの性能と製 EMI ラインフィルタ市販品 品のエミッション制御に対して影響を与える重要な要因である。 ある設計者が市販品のフィルタを使うことに決めた。 これら パターンは、 漏洩と結合において重要な役割を果たす。 基板上 のフィルタは予め設計されていて、 適所にフィルタ部品を保持す の部品とパターン間のカップリングはエミッション漏洩を引き起こ るために、 シールド缶の使用が必要である。 市販品フィルタは、 す伝達手段である。 全てのフィルタ ・ メーカーの大きな市場である。 多くの場合、 市 シールド缶設計で、 各々のフィルタ部品は、 シールドを形作る 販品のフィルタを使用した製品が伝導エミッション試験に不合格 金属材料によって、 缶外部の電磁環境から電磁気的に保護され になったとき、 EMC 試験所に置いてある 「便利な」 フィルタ群か る。 シールドは、 機器のグランドに接続しなければならない。 こ ら急ぎ引き寄せる。 ここでの目的は、 もちろん、 伝導エミッション れは、 シールド缶の帯電開放強化の維持を助け、 缶がエミッショ 試験に合格する結果をもたらすフィルタを時間をかけずに見つけ ンから作られる電界に対して確実にシールドに似た動作をするこ ることである。 このアプローチは非常によく目的にかなって試験 とを助ける。 しかし、 フィルタ缶のグランドを取る方法、 そして基 合格に結果をもたらす一方、 何らかの点で不十分なフィルタ、 ま 板上のグランド導体と缶との間のインターフェイスは、 エミッショ たは何らかの点で過剰なフィルタの使用を促進しうる。 製品で使 ン性能に大きく影響する。 用するため市販品のフィルタを選ぶ前には、 慎重に考慮されな フィルタが、基板上に置いたディスクリート部品でできているか、 ければならない多くの要素がある。 あるいはシールド缶内部にある小さな基板上の部品システムでで 挿入損失 (それが知られてさえいれば)、 減衰、 定常定格電 きているか、 どちらであっても、 フィルタを作るにはキャパシタとイ 圧、 定常定格電流に加えて、 その他の要素も、 フィルタの性能 ンダクタの特別の配置が使われる。 ヒューズ、 過熱防止器のよ や寿命にとって重要である。 たとえば、 フィルタ内部のフロント うな他の部品や、 金属酸化物バリスタ (MOV) でさえも、 製品 エンドのキャパシタのトランジェント定格電圧は何か? そのキャ 設計者が完全なソリューションを提供するためにフィルタ缶内部 パシタが損傷し始め、 最終的に壊れるまでに、 どれくらいのトラ に入れる場合がある。 多くの標準的なフィルタは、 インダクタ (コ ンジェント ・ エネルギーを扱うことができるか? 製品設計者は、 モンモードチョーク) をたった1個で、 X キャパシタがチョークの 顧客設備のどれかが、 フィルタ内部で使われるキャパシタの信 48 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015 サージ保護 Keebler 特性 コモンモードチョーク (従来の EMI ライン フィルタを使用) コモンモードチョークなし (誘電体独立フィルタを 使用) サイズ 大きい 小さい 重さ 重い 軽い 線形歪電流を発生するか? 製品が、 高 自動挿入 不可能 ほとんどのフィルタで可能 いレベルの歪んだライン電流を必要とす 材料 銅とコアー材 銅は不使用 コスト 高い 低い フィルタの性能は、 入力インピーダンスお 信頼性 低い 高い よびインピーダンスの変動に対してどのよ 組み立てコスト 高い 低い 高周波性能 不十分 優れている 故障モード 振動、過電流 過電圧 ライン電流 コイルを通過しなければなら ない 真っすぐなラインピンを 通過するのみ 温度 熱い 冷たい 頼性を低下させ始める電圧トランジェント の対象とならないだろうということをどのよ うにして知るか?フィルタ内部のコモンモー ドチョークが飽和状態になる原因となる非 線形歪 AC 電流は、 どれくらいか?製品 は、 フィルタ性能に影響を及ぼす多くの非 る異なる動作モードに変えられたとき、 突 然フィルタの効果が損なわれるだろうか? うに変化するか? これらすべては、 製品 の AC ラインで使われるどんな EMI フィル タであっても、 うまくいくために重要である。 市販品のフィルタを使用することの困難 を示すもう1つの課題は、 基板上および製 品内部の取り付け位置のスペースである。 フィルタを市販品より選んだ代用フィルタ が、 元のフィルタに合うように設計されたス 表1.コモンモードチョークとチョーク無しのフィルタの基本特性比較 ペースよりも大きいということがよくある。 こ の問題によって基板の完全な再設計が必要となることがあり、 こ シタおよびコモンモードチョーク (またはコイル) である。 この部 れはメーカーが管理しようとする製品開発と試験予算を次々と使 品は両方とも、 必要なサイズ次第で大きく、 嵩高くなる。 多くの い果たすなど、他のあらゆる問題 (既に達成できていたエミッショ 場合、 エミッション制御の希望レベルを得るための十分な減衰に ン制御の機能低下などを含む) の発生原因となることもありうる。 なるように、 複数のコモンモードチョークを多段フィルタにして使 このアプローチを用いた一部のメーカーは、 結局、 不良品を われなければならない。 作った。 その失敗は、 不適切な仕様の EMI フィルタの使用 (お フィルタで使われる部品に関連した損失量は非常に大きいの よび選択) が原因であった。 製品不良になる原因とは関係なく、 で、 希望する減衰を提供するため、 部品は特大サイズになる必 フィルタの失敗は顧客にとっては依然として製品故障である。 製 要がある。 コモンモードチョークは重量もあり、 大きな磁気コアと 品にどの種類の EMI フィルタを使用するべきかという選択に注 多くの銅ワイヤを使う。 そのうえ、 製品設計者はワイヤ温度が信 意すれば、 これらの落し穴は避けることができる。 頼できないレベルに達する原因となる作動状態ならないよう、 常 に見張っていなければならない。 これらのチョークの使用は、 製 生産 品効率にも影響を及ぼし、 製品動作温度を上げる。 EMI フィル 製品生産コストは、 メーカーにとって常に一番上位の関心事 タでコモンモードチョークの使用をやめることは、 フィルタ設計に の1つである。 多くの生産ラインは、すでに海外工場へ移動した。 おいて大きな前進であり、 多くの利益をもたらす。 表1は、 コモン 多くの場合、 製品保証要求は、 期待されるレベルを超えて増加 モードチョークコイルの不利な点、 および誘電体 ・ 独立フィルタ している。 その他の場合、 計画どおりの利益を維持するために の有利な点を要約したものである。 製品予算から 「しぼりとる」 ものは全く何も残っていない。 製品 コストのさらなる引き下げは、 今日の低迷している経済を活性化 するために、 何か他のコスト管理方法を使って実現しなければな 保守、修理、保証 あらゆる製品メーカーは、 製品の保守・修理・保証など、 様々 らない。 ロボット工学を使い、 小さな部品をピックアップして回路 なカスタマーサービスを提供することができなければならない。 基板上の正しい場所に慎重に置く自動挿入機械の発明は、 メー 電源の品質が機器の性能に直接、 影響を与えるので、 顧客施 カーにとって何百万ドルもの人件費を必ず節約できる、 コスト管 設内の電力品質は、 顧客に提供されるこれらのサービスのレベ 理の優れた1例である。 残念なことに、 この方法は従業員も減ら ルとコストに影響を及ぼす。 より良い電力品質を提供することが すことになる。 しかし、 EMI フィルタのような大きな部品の多くは、 電力会社の任務にもかかわらず、 普通の日常的な電気妨害は避 依然として人間の手によって基板に設置する必要がある。 これ けることができない。 気象パターンは著しく変化しており、 送電網 はメーカーが耐えなければならない、 高価な労働要素である。 にインパクトを与え、 頻繁な落雷と自然災害を引き起こすように 多くの場合、 EMI ラインフィルタ内に手で挿入しなければなら なっている。 電柱の絡む交通事故は常に起こるものである。 多 ない 2 つの一般的な使用部品は、 ライン間 (または X) キャパ くの自動車が高速道路や道路上に存在する。 電力会社にとって interference-technology.jp INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 49 サージ保護 誘電体に依存しないEMIフィルタの使用 動物の管理は常に、 リスや蛇、 齧歯類からトランスやホット側導 たという事実を除いて、 製品は問題なく稼働を続けた。 いくつか 体を遠ざける奮闘努力以外の何物でもない。 建設作業員は、 新 の製品は、 建物の内部の他の機器の深刻な EMI 問題の原因と しい社会資本を設置するために、 常に地面を掘って、 その掘削 なったことが報告された。 機械が電源線ダクトを貫通するのを発見する。 同じ送配電また コモンモード ・ チョークおよび非常に小さい X キャパシタや Y は変電所を使う他の電力会社の顧客は、 いつも電力会社に通 キャパシタを使わない誘電体独立フィルタでは、 こういった問題 知することなく大きな負荷を接続する。 こういう出来事は、 電力 は起こらない。 この種のフィルタが実際に使うのは、 ピンを通っ 会社では対処不能で、 顧客が依存する電気システムと電気機器 て AC ライン電流をサポートする各直線ラインのピン導体の周囲 に絶えず破壊的な電気妨害をもたらす。 にある小さい静電容量 (一般的には 1,000 ~ 4000 ピコファラッ 医療用画像診断システム (例えば、 MRI、 CT、 X線など) や ドの範囲) である。 キャパシタの小さい静電容量は、 実際に実 可変速ドライバ、 コピー機など大きな機器の所有者は、 機器の 行されたエミッションの許容値レベルを減らすために必要なフィル 稼働を維持するため、 常に数種類のメンテナンスやサービス契 タリングのレベルを提供するために必要な唯一の量である。 その 約をしているものである。 そのようなサービスを提供するメーカー うえ各々のピンの周囲で使われる容量性材料は、 金属酸化物バ および契約を実行することに同意したサービス会社は、 顧客か リスタ (MOV) を使わずに内部的なサージ保護の働きをする固 ら電話があった場合、 機器の故障および機能不全を調査しなけ 有のトランジェント電圧でクランプできる能力を持っている。 その ればならない。 機器の故障または機能不全に陥る原因になった 容量性材料は、 おそらくフィルタ設計から除去され耐サージ保護 建物内の電気システムで起こったいくつかの電気妨害が関わる例 能力のレベルをアップする MOV 材料に取って代わられるだろう。 がかなりある。 いずれにせよ、これは、ディスクリートの MOV がフィルタ外部 (上 突然の機器故障は一般的に、 機器保護に使われるフロント 流、 下流、 または、 若干のケースではチョークと平行の何らか エンド AC ライン回路内部の部品をいくつかを損傷する恐れのあ の場合は)に必要ないことを意味する。 プリント回路基板上のディ る電圧サージまたは一時的な過大電圧の発生に関わっている。 スクリート MOV の除去により、基板搭載 MOV に関わる故障 (例 サージと過大電圧は顧客設備の内外が発生源になる。 機能不 えば以下で詳述する熱暴走) が排除される。 これらの故障モー 全は一般的に、 機器内部の電源が出力バス上にある種の DC ドは、設計者にとって長年にわたり大きな懸念であった。 このモー 妨害を起こしてしまう反応の原因になるような断続的あるいは繰 ドは、 AC ライン電圧が名目値 (例えば120ボルト) を超え、 あ り返し起こる妨害のせいである。 高周波の現象と電気ノイズは、 る値まで徐々に増加する場合に起こる MOV の熱暴走と関係して 機器の EMI 問題が発生している建物の電気システム上に生じる いる。 サージエネルギーを繰り返し吸収することから起こる MOV こともある。 の単なる疲労に関連する典型的な MOV 故障モードも、 顕著に いま だ に 稼 働 して い る古 い 機 器 内の 従 来 型 EMI フィル タ 減少する。 は、 おそらく 450 kHz ~ 30 MHz 伝導妨害を緩和することが可 メーカーが製品に対して保証プログラムを提供する場合、 予算 能であろう。 現在の送電網上の新しい電子負荷の大部分は、 が割り当てられる。 その予算は、 機器の性能および類似製品の 150KHz 以下のエミッション規制に適合していなくてはいけない。 故障履歴という知識を考慮に入れて予想した故障頻度に基づい 無線デバイスの増加と無線に使用する周波数の増加に伴い、 新 ている。 エミッション抑制要求は、 現在のレベルをはるかに超え、 高い周 ここでの問題は 「電気環境 (または電力品質) の知識あるい 波数になっていくだろう。 1 GHz 近辺および 1GH z超の周波数エ は知識の不足が、 メーカーの保証プログラム設計にどのように ミッション規制で目指すものの1つは、 AC ラインコード上の無線 関わってきたのか?」 ということである。 保証プログラムを設計す 信号の維持管理である。 るとき、 配電網や顧客の施設内で起こる電気妨害の全ては考慮 この範囲の外側で起こる妨害は、 深刻な機能不全を引き起こ されているだろうか? よくある日常的な電気妨害に関連した故 すのに十分な規模でフィルタを通り抜け、 機器内部の重要な電子 障の増加すべてをメーカーは把握しているか? 落雷が原因で起 回路へ達する伝播過程を生き残る可能性がある。従来の EMI フィ こる配電網、 電力会社の配電システム、 顧客施設の突発的な ルタは、 今日の電気環境で発生している電圧サージのほとんど 機器故障を増やす突然の雷雨増加に備えるメーカーの計画はど に対して保護を提供していない。ライン間(または X)および Y キャ のようなものか? 現在の電気環境において自分たちが使用して パシタ(ラインとグランド間および中性線とグランド)キャパシタは、 いる機器内部のサージ保護機器 (およびフィルタ部品) の信頼 電圧サージが発生すると、 隠れた被害を被ることもある。 結局、 性について、 メーカーは本当にわかっているか? メーカーは、 サージが継続すれば、 これらのキャパシタは故障する。 国際電 保証請求数を減らす必要があるか? メーカーは、 保証請求中 気標準会議 (IEC) が2005年に報告したところによれば、 メー に記録される機器故障の実際の原因を本当に理解しているか? カーに返却された EMI フィルタを使った製品のエミッションレベル こういった請求のうち、 電力品質、 および機器設計で使用され が 55dB (これはノイズ電圧の 562 μ V 増加に相当) ほど増加し ている現在のサージ保護機器 (ディスクリート MOV) のレベル ていたことがわかった。 そういったフィルタの故障があった場合、 に関連するものはどれぐらいあるのか? 保証請求の数は、 基 建物の電気システムに高レベルの伝導エミッションを注入してい 板上にディスクリート MOV を使う代わりにサージ保護を集積した 50 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015 サージ保護 Keebler 図3と4(左と右) .民生電子機器で熱暴走した MOV の写真 異なる種類の EMI フィルタを使用することによって減らすことがで からグランドまで、 そして、 中性線からグランドまで見られる。 こ きるだろうか? こでの利点は、 この静電容量が非常に小さくて、 2、 3千ピコファ ラドあるいはそれより小さい程度ということである。 このように、 安全 誘電体から独立したフィルタが使われた場合、 こういったキャパ 安全は、 メーカーにとって機器の設計と動作において最優先 シタからグランドへの漏れ電流への関与は、一般的にマイクロファ の課題であることに疑いの余地はない。 電子機器を動作させる ラッドサイズの大きいライン間 (X) およびライン ・ グランド (Y) キャ AC ライン電源の使用は、 顧客に対して安全に対する若干の懸 パシタが使われている従来の EMI フィルタと比較すると、 非常に 念を提示することになる。 漏れ電流が発生し、 機器のフレーム 小さい。 から人体を通って流れる場合があるからだ。 安全工学の専門家 回路保護デバイスの安全性についてもう一つ非常に重要な点 は、 長年これを心配していた。 設計者は、 電気ショックの危険 は、 熱暴走の防止である。 図3と4の写真は、 金属酸化物バ 性や、 電力会社の配電網上およに顧客施設内部にある機器の リスタ (MOV) が熱暴走して発火した例である。 これらの MOV 動作に起因する火災を減らすよう努力しなければならない。 効果 は、 保護なしで MOV 本体の回路基板上に直接取り付けられた 的な接地と洩れ電流の引き下げは、 何十年もの間、 安全に関 別々のデバイスであった。 AC ライン電圧が、 MOV の最大連続 連した多くの設計トピックスにおいて首位をキープしている。 動作電圧 (MCOV) 定格まで徐々に増えるとき、 熱暴走が起こ 配電網に電気妨害が生じ顧客施設と電子機器へと進入すると る。 MOV は、 電圧サージに起因する多くの高い電流を受け入 いう事実は、 電子機器が人間のいる場所で使われる際に安全 れることができる。 どんな実際の電気環境でも発生可能な、 こ でない状況を作り出すリスクを増大させている。 人体を通して 60 の電流印加が MOV 劣化の原因になる。 サージがより頻繁に発 ヘルツの電流が流れることによる電気ショックは、 長年、 研究さ 生する既知の環境では、 早期の劣化が起こりうる。 劣化は、 結 れてきた安全の課題であった。 安全機関および組織は、 電子機 果的に MCOV レベルの低下となる。 MCOV レベルが弱くなった 器の負荷からの漏れ電流の流れを制限するための規格と要求事 場合、 業界規格限度範囲内の許容ライン間電圧レベルでさえプ 項を制定した。グランド電流の 60 ヘルツ(または AC 電源周波数) リント回路基板上で炎と煙を引き起こす熱暴走状態をつくること の部分からの漏れ電流量については、 機器の安全規格に測定 ができる。 一部の MOV メーカーは、 サージの繰り返しに耐える 要求がある。 機器表面のグランド部分、 または機器に接続され MOV を設計しているが、 落雷が頻繁にあるエリアや、 潜在的に ているグランド導体に流れるどんな電流でも、 漏れ電流全体に 高いサージが発生可能な顧客の負荷を支えている電力会社の 関与している。 電力供給回路上など、 サージの多い環境では、 早期の MOV 劣 ラインとグランド間および中性線とグランド間に接続されている 化は依然として起こりうる。 EMI フィルタ内部のキャパシタは、 漏れ電流に大きく関与してい 最近の電力の品質試験と調査が、 MOV とパネルに取り付け る。 こういったキャパシタによって、 60 ヘルツの部品だけでなくエ た保護デバイスを使用したサージ保護デバイスを使用した最終 ミッション ・ プロフィールを伴う全周波数の電流が流れうる。 従来 使用の機器 (例えば、 パネルの外側に取り付けられた、 回路 の EMI フィルタで大きく不利益になることは、 これらのキャパシタ 遮断器スロットに取り付けられるように設計されたモジュールに がフィルタ内に存在することによって、 大きく漏れ電流に影響す 入っている、サージ保護モジュール) で過去 10 年間実施された。 ることである。 誘電体から独立したフィルタ技術では、 静電容量 そして、 テーブルタップが生み出すデータは、 UL 1449 (サージ がラインと中性線の間にある。 その静電容量の一部は、 ライン 保護デバイスの安全規格) の改定を支持している。 パネル取り interference-technology.jp INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 51 サージ保護 誘電体に依存しないEMIフィルタの使用 付け保護装置 (例えばパネル外側に取り付けて、 回路遮断器 要がある。 この機器の大部分は、 電力配分システム施設に近 スロット内に設置するよう設計された保護モジュールに入っている い設備から離れた遠い地域で増加している曝露されたエリア内 サージ保護モジュール) やテーブルタップに使用されている MOV に設置されている。 エンドユーザーは、 指先で操作する最新の およびサージ保護機器を使うエンドユース機器について、 過去 便利さを望んでいる。 1つの例は、 過去2、 3年の現金自動預 10 年間に実施された最近の電力品質試験および調査によると、 け払い機 (ATM) の台数増加と、ユーザーにコンパクトビデオディ UL 1449 (サージ保護デバイスの安全規格) の改定を支持する スクを提供する自動販売機の台数増加である。 もう1つの例は、 というデータが得られた。 この結果、 機器が公称ライン電圧 120 顧客施設に設置される電子照明デバイスの増加で、 これは建 ボルトで動作する設計の場合、 MCOV が 130 ボルトの MOV を 物外壁の側や電柱の上に設置される事例に次ぐものである。 使って製品設計するという新しい要求ができた。 ほとんどの米国 電気自動車の充電器は、 顧客施設から離れた場所にも何ヵ所 電力会社が従っている ANSI C84.1 (2011) 「電力システムと機 か設置されている。 交通量の多い交差点に置かれている赤外 器-定格電圧」 で指定されている電力会社の線間電圧は ±10% 線カメラの数の増加は、 配電網のすぐそばで電子妨害の脅威 の変動とみなすため、 現在 MCOV 定格 150 ボルトの MOV も使 に曝されている電子負荷増加の、 もう1つの典型的な例である。 える。 130 ボルトと 150 ボルトの MOV が同一価格とはいえ、 一 これらの遠い負荷の全ては、 電気ケーブル (電力、 制御、 信号) 部の製品設計者はいまだに MCOV 定格 130 ボルトの MOV を の地下埋設を必要とする。 これらのケーブルを地下に埋設すれ 使うことを選ぶ。 高い費用を払えば、 今日では組み込み型で熱 ば、 落雷時、 地下に流れる高い電流によって誘導される有害な を防ぐ MOV が手に入る。 残念なことに、 過度の温度状態を検 電圧の 「集電装置」 の働きをするループを作ることができる。 出すると、 熱防御デバイスは、 回路から MOV の 1 つの脚を切り 風力タービンやマイクロタービン、燃料電池、太陽光発電 (PV) 離して永久に開放状態になる。 これは AC ライン回路から MOV システムなど多くの分散型電源の増加は、 配電網や顧客施設内 を取り去る結果となり、 AC ラインで起こっているサージと過電圧 部にある電子機器の動作に影響を与える放射および伝導のエ に対して機器は無防備のままとなる。 ミッションレベルが増加する原因となっている。 電力会社は、 各 誘電体から独立した EMI フィルタでは、 MOV 材料がディス 顧客サイトで使われる電気エネルギーの量を電子的に記録する クリートのサージ保護デバイスで使われるよりはるかに少ない量 ためのソリッドステート (スマート) 課金メーターを何百万個も設 で、 フィルタ内部に使われている。 さらに MOV 材料は、 材料の 置している。 このメーターは、 使用および需要データを電力会社 まわりに注がれるポッティング材料によって物理的に保護されて に報告するだけでなく、 施設内の負荷を制御するのに使用する いる。 EMI フィルタのまわりを完全な金属エンクロージャで作る こともできる。 ソリッドステート ・ メーターと太陽光発電システム間 電磁シールドにより、 さらなる保護が提供されている。 こういった の深刻な EMI 事例が、 米国での類似した数例に続き、 ヨーロッ 設計特性で、 AC ライン間電圧がその MCOV 定格を上回る場 パの4ヵ国で、 すでに報告されている。 統合サージ保護を伴う 合は、 MOV 材料は安全面の懸念にはなりそうもない。 これによ 誘電体独立 EMI フィルタなどのさらに効果的な回路保護デバイ りメーカーは回路基板上で空気にさらした状態で取り付けたディ スの使用は、 顧客施設内部の同じ電圧バスに接続している電子 スクリートの MOV の使用を避けることができるので、 顧客に対 機器に起因する脅威を減少させるだけでなく、 電子機器に提供 し、 炎や煙のリスクなしに EMI フィルタ固有の安全なサージ保護 される保護の規模を増大させる。 を提供できる。 金属エンクロージャに囲まれた MOV 材料のまわ りに注入されるポッティング材料は、 MOV 材料からの熱伝導率 顧客施設内部の電気環境は、 同様に電子機器に対し、 より 高い曝露環境になってきている。 を高める。 これを決定するために、 現在試験が行われている。 多くの施設は、 顧客施設内の暖房、 換気、 空気調節に使わ MCOV 試験は、 1,000 アンペアと同じ高さのサージ電流で実施 れているモーターのような電子機器に電源供給しているライン電 可能である。 圧の品質の継続的な劣化だけでなく、 放射および伝導のエミッ ションレベルを増加させる可変速ドライバを設置している。 電気 電気環境で高まる脅威 電子機器の性能に影響を与える電気環境の脅威は、 増加し 妨害を起こす他の電子スイッチング負荷の設置も、 同様に上昇 中である。 続けている。 これは発電、 送電、 配電がさらに悪化しているか らではない (確かに配電網は古くなり、 経年劣化が続いている 規格 が)。 配電網や顧客の設備への曝露が増加しているので、 厳し エンドユーザーの電子機器で発生する放射および伝導エミッ さと頻度の両方において脅威が高まり続けている。 どのようにし ションレベルを制限するために、 現在、 多数の EMC 規格が存 てサージ電圧等への曝露が増加するのか ? これは、 電力シス 在する。 現在使用中の規格の限度値は、 数十年前に確立され テムや顧客設備内の電力品質に影響を及ぼす電力システム周辺 たポリシーに基づいていた。 米国内で実施されている規格の限 および顧客設備内で起こる事象による、 と回答できる。 度値は、 欧州連合や他の国際機関の加盟国が作った規格より 電子機器を損傷するリスクを増やすような多くの事象が連続し 緩い。 微小信号を扱うエンジニアの多くは、 一部の機器内で発 て発生し、 制御することができなくなっている。 そのうえ、 社会 生し、 AC 電源ラインやデータ、 ネットワークケーブル、 制御ケー の要望として、 電気環境にさらに多くの電子機器を設置する必 ブル上に出て行く放射 ・ 伝導エミッションレベルを制限する利点 52 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015 サージ保護 Keebler がわかっている。 信号対雑音比は、 患者に接続したプローブか このアプローチは、 最重要懸案の1つである機器故障や保証 ら非常に小さな信号を測定するように設計された電子医療機器 請求の削減を促進するので、 メーカーと投資家に対して収支が のような多くの種類のエンドユーザー用機器の動作に、 極めて 改善される。 重要である。 AC 電源ライン上に、 そして、 機器のグランドを通っ て流れる伝導エミッションは、 信号対雑音比および、 どんな小さ 結論 な信号のインテグリティーに対しても影響を与える。 研究者は、 エンドユース機器からの伝導エミッションを制限するために 既存の限度値規格に適合すると判明したエンドユース機器に関 AC 電源ライン上で使われる現在の EMI フィルタは、 設計の進 わる EMI 事例を何千例も収集 ・ 調査してきた。 活発な電磁環 歩が何年も遅れている従来のフィルタ設計に基づいている。 こう 境の増大に対処するため、 エンドユース機器の性能をさらに向 いう旧来の設計では、 何百万ドルもの逸失利益や、 機器性能 上させうる、 より厳しい限度値の研究開発を継続する必要があ の制限、 回避しなければならない機器の故障や機能不全の発 る。 多くの産業では、 限度値に必要な改善の度合いがまだわか 生が絶えず起こる。 エミッション制御が 「十分に良い」 状態でも、 らない一方で、 現代のデジタル社会でオンラインでつながる電子 機器の使用可能時間とデジタル社会の維持に必要な性能を今 機器が増えるにつれ、 信号インテグリティを改善し多数におよぶ 後数十年間確保し、 メーカーとエンドユーザーの利益を実現す EMI 問題を避けるために、より厳しい限度値が必要であることに、 ることはできない。 エンドユース機器は、 高度に洗練されてイン 研究者や製品設計者は強く同意している。 エンドユーザー機器 テリジェント化し、 伝導エミッションとイミュニティのより厳しい管 の制御や配電網と負荷のモニターに、 通信と接続性の使用が 理を必要としている。 無線機を使う製品は、 AC 電源ラインの 増加状況で、 放射と伝導のエミッションに対する厳しい限度値が 無線信号を避ける際、 新しいフィルタ技術を使用することで効果 必要な正当性をサポートしなければならない。 を得ることができる。 KCE Engineering LLC で EMC 工学グルー 2005年に IEEE が発行した新しい規格 IEEE 1560 「IEEE 規 プによる研究が進行中で、 会社はテネシー州ノックスビルにあ 格 -100 Hz ~ 10 GHz の無線周波数の電源ライン妨害フィルタ る。 この研究への参加に興味を持つメーカーは、 詳細につい の測定方法」 は、 電源ラインフィルタの性能記述に関連した挿 て本稿の著者の誰かに問い合わせいただきたい。 入損失と他の重要なパラメータを測るための新しい試験方法を 定めている。 勢いづいているこの規格の用途の 1 つは、 従来の P hilip F. K eebler 氏は、KCE Engineering社の筆頭エンジニ EMI フィルタに対する挿入損失データの生成である。 メーカーは アで、電力研究所(EPR I)勤務18年のベテランである。EPR I これにより、 製品を現代の電気環境に設置する際、 その性能が では、エンドユーザー向け製品と電源ラインフィルタのEMC研 どう変わるか実際に理解することができる。 この結果、 フィルタ 究に従事。その間、新しいIEEE 1560規格「IEEE規格-100 Hz が必要以上に大きく重くなる原因となるフィルタ内の損失および ~ 10 GHzの無線周波数の電源ライン妨害フィルタの測定方 「フィルタ性能を低下させる」 フィルタ部品内の寄生要素の重要性 法」のメイン作成者の一人となった。 この規格は、電源ライン が増す。 またフィルタおよびエミッション試験のコストに対しても関 フィルタの性能を定めることに関連した挿入損失と他の重要な 心が高まる。 IEEE 1560 は、 誘電体から独立した EMI フィルタ パラメータを測るための、新しい試験方法を定めている。現在 に対しても適用され、 従来のフィルタに対する性能比較において Keebler氏は、テネシー州ノックスビルにあるKCE Engineering, さらなる実態を把握することができる。 LLC会社の共同経営者である。KCE Engineering社の重点分 EMC イミュニティの基本規格 IEC 61000-6-19 のような他の 野の1つは、エンドユース機器のEMC研究と電磁環境に関する 規格は、 IEC によって草案開発中である。 この新しい規格は、 専門化である。連絡先:pfkeebler@kceengineeringllc.com 2kHz ~ 150kHz の周波数範囲の伝導妨害イミュニティ試験実施 D. M ichael Evans氏はKCE Engineering社の技術サービス 方法を定めていて、 エミッションと EMI 問題を継続的に制御する 部門の副社長である。KCE社で担当する重点分野の1つは、 論拠を示す助けとなるものである。 現在進行中のこの規格の開 エミッ ションプロフィールのEM C研究と、エンドユース機器の 発は、 ソリッドステート ・ メーターに関わる伝導 EMI 問題を回避 動作に起因してプロフィールに影響する要素である。フィルタ するための必要性によって大きく加速されたが、 厳密に言えば、 性能およびエンドユース機器性能の信頼性に影響するフィル PV インバータにより発生するこの周波数範囲での伝導エミッショ タ設計やプリント基板のデザイン変数など消費者向け、市販 ンの場合、 この EMI 事例はソリッドステート ・ メーターに関わる 用、産業機器のEM Iラインフィルタ用途も研究している。連絡 EMI 事例問題であった。 誘電体から独立したフィルタのような高 先:dmevans@kceengineeringllc.com 性能 EMI フィルタを使用せず、 従来の EMI ラインフィルタを用い Nathan A. R eid 氏はKCE Engineering社の研究所マネージャー て 2kHz ~ 150kHz の範囲や他の範囲も同様にして伝導エミッショ で、KCE Engineering社の工学訓練中の学生である。IEEE 1560の ンを制御することは、 さらに挑戦的な課題である。 用途、伝導エミッションの測定値と関連した新しい試験方法、EMI EMI フィルタ、 サージ保護デバイス、 電流制限デバイス、 熱 遮断デバイスのような集積回路保護デバイスを統合解決策として ラインフィルタに関する他の性能変数について、研究している。連 絡先:nareid@kceengineeringllc.com ■ 使う件について研究を続けなければならない。 これにより保護デ バイスを効果的かつ効率的に稼働させることができる。 さらに、 interference-technology.jp INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 53 サージ保護 サージによるATS&インバータ損傷 2013年9月号 掲載 問題の真実とは: サージによる電源自動切換スイッチ(ATS)と インバータの損傷 Dion Neri Chief Engineer MCG Surge Protection, Inc. 照的に誘電体表面のアーク放電が原因 になることもある。 いずれの場合も、 危 うくされた間隔に印加されるどんな電圧 (公称またはサージ) の存在も、 導体を 橋渡しする原因になりうる。 エネルギーの落雷だけで機器 導体が十分な大きさと持続時間のある を損傷で きるという一般 な 認 サージ電流を通過させると、 導体損傷が 識に反して、 何が真実か別の 起こり、 結果的に導体の分子構造が変 やり方で証明する。 雷以外の損傷はどの 化する。 その結果、 もはや導体に公称電 ように起こるのか。 流を流す能力がなくなる場合があり、サー 高 サージは毎日配電網切換や他の発生 ジ電流を通す能力は大きく減少する。 小 源から、 AC 送電線を通って施設内に入 さい導体が、 サージ電流をもう通すこと る。 こ れらのサージは一般的に速 過ぎ ができなくなると、 導体はヒューズのよう て十分なエネルギーがないため、 ブレー に切断する。 半導体において、 電極間 カーを作動させ、 ヒューズを溶断させる原 の最大定格を絶えず上回ることは、 結局 因にはならない。 しかし、 そのサージエ デバイス内部のブレークダウンの原因と ネルギーは、 機器で使われる半導体部 なり、 結果的に故障を引き起こす。 サー 品の最大定格を上回っている。 時間とと ジ保護は、 サージに起因する過電圧や もに、 導体間の電気的隔間と導体自身 過電流ストレスを除くことによって損傷を の両方が、 危うくなる。 防止し、 半導体部品の動作電圧を安全 導体間の誘電体または絶縁体が壊れ な範囲に保つ。 小型で高密度に作られた て、その絶縁特性を失うと、かつてはオー 現在の電子機器は、 従来よりもサージで プン回路だったものが低抵抗 (予想外の 損傷されやすい。 経路) になるので、その間隔が危うくなる。 サー ジによる損傷に非常に影 響さ 間隔の破壊は、 それを通 過するのと対 れや す い 機 器 の 一 般 例 と して、 保 護 54 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015年版ガイドブック サージ保護 Neri したことによる機会損失と、 サージによる損傷修理の実費が加 わる。 そして、 サージ保護が適用されない限り、 故障して交換 した基板は元の基板と同じ故障確率になる。 この地域で時折 発生する雷とは異なり、 電源サージは反復的で、 定期的に現 れる。 視覚的にドラマチックなダメージではなく、 陰湿な損傷を もたらす。 では視点を変えて、ESD(静電気放電)について考えてみよう。 ESD はサージの形ではあるが、低いエネルギーである。とは言っ ても、 多くの部品は ESD に敏感で、 単に取扱が不適切なだけ で損傷する。 例えば、 集積回路を運んでいる人に静電気が帯 電し、 次にその部品を誰かに手渡す。 もしかすると両者間の電 位差がわずか 15 ~ 30kV 程度であることが原因で、 小さなス パークが生じる。 このスパークのエネルギーは、 部品組立や 電源投入前の集積回路および他の静電気に敏感な部品を損 傷させるのに十分な大きさである。 サージが発生している最中 に既に公称電圧と電流の負荷を運んでいる電源部品は、 今や 重畳されるサージ電圧と電流に対処する必要があるが、 それ に対処した設計になっていない。 このように、 損傷を起こしたり 図1.電源自動切換スイッチ(ATS)と重要な負荷を保護するためのSPD (TVSS)の機器を動作停止させるのに、 多くのエネルギーは不要である。 場所 ATS は、 施設へ電力を送る出入り口にあり、 重要な負荷 への全ての電力が ATS を通って送られる。 ATS は電力会社 対策なしの電 源自動切換スイッチ (ATS: Automatic Transfer ( 通常) および発電機 (非常用) の電力の両方を通し、 万一 Switches) の制御盤がある。 ATS は、 配電用トランスに接続 電力会社の電力が落ちたときには、 自動で発電機に切り替え している最初の部品の1つなので、 全面的にサージを受ける部 る。 もし、 ATS が機能停止したら、 施設の電力供給が中断す 分に取り付けられている。 下流に位置する機器は、 サージのエ る。 このような組立品の交換コストや、 損傷したスイッチが原因 ネルギー損失と拡散により、 あまりエネルギーを受けない。 (し の収益損失を考慮すると、 この重要なハードウェア部分の保護 かし、 システム深部の機器に関して間違った安心感に浸るのは は必須である。 図1を参照のこと。 賢明ではない。 「データ ・ ライン保護上の問題」 補足記事参 機器の故障は一般的だが、 1回限定の適切なサージ保護デ 照。) ある特定の ATS アプリケーション上で、 制御盤はおよそ バイス (SPD) を施すことによって、 防ぐことができる。 ATS の 6ヵ月間、 適切に動作していたが、 突然、 機能停止した。 制御 通常入力が1相当りサージ電流定格が最低 160,000 アンペアと 装置は目視検査されたが、 損傷は観察されなかった。 より詳 細な電子検査とトラブルシューティングによって、 2個の集積回 路がショートしていたことがわかった。 2個の部品が動作を中止 しただけでなく、 DC バスを引きずりおろし、 他の部品は必須機 能を実行するのに十分な電源がないまま放置した。 組立品を交換しなくてはならず、 その間スイッチは動作しない ので、 このようなシナリオはコストのかかる苦境といえる。 これ は、 雷の発生がそう頻繁ではない、 カリフォルニア州の一部地 域での記録である。 故障の原因は、 電源設備から毎日発生す るスイッチングサージに起因していた。 電源設備のスイッチング サージは、 実際の電源会社のスイッチングまたは、 近所の配 電網に接続されている重機械 (例えば製造工場、プレス、クレー ン、 コンベヤ) の運転および電源供給の増加 / 減少が原因か もしれない。 新しい制御盤は、 設置費用を除き 4,000 ドルかか る。 それに、 電源自動切換スイッチおよびサービス業務が停止 interference-technology.jp 図2.インバーターおよびACパネル負荷用保護器の設置場所 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 55 サージ保護 サージによるATS&インバータ損傷 なる AC 保護装置を使う。サービス・サイズと雷の頻度によるが、 側に AC サージ保護器が必要である。 図2は、 系統連系イン 直面するであろう高いサージエネルギーに対して巨大なユニッ バーターの保護例を示す。 パネルに配線される AC 負荷も保 トが必要とされるかもしれない。 小さな容量の保護器は、 非常 護するので、 AC 保護器の機能は2倍であることに注意。 用パネル上と非常用送電を保護するために必要である。 そうす ることによって、 収益の損失と損傷したハードウェアを継続して 忘れてはならないデータ・ラインの保護 取り替えることを防げる。 簡単に取り付けられる高品質のサー 図3は、 データ ・ ラインでサージが原因で損傷した典型的な ジ保護装置は、 保護対象の機器を長期間持たせるために設計 例を示す。 動作不良になるまでは、 ネットワークスイッチは一見 されている。 適切に設計されたサージ保護デバイスの寿命が して滑らかに動いているようである。 トランジスタ Q1 と Q2 に代 20年以上と言うのは稀な事ではない。 機器が劇的に近くで発 表されるポート間のグランド電位差が、 高速過渡現象の原因 生した雷や、 油断のならない繰り返しサージにさらされるかに である。 関わらず、 適切な定格の SPD を採用すれば、 その機器は設 この問題に対処するために、 ケーブルの終端に機器を接続 計寿命を実現し、 長期間にわたり、 確実な動作を続けるだろう。 点としてサージ保護器を追加する。 これらの保護器は一般的 「適切な定格」 が意味するのは、 何十年も所定の場所で、 繰り に RJ45 コネクタを使うので、 取り付けは5分以下で済む。 ねじ 返されるサージを処理するように設計された保護器である。 品 込み端子または IDC 110ブロックのような IDC (絶縁置き換え 質が悪くて低い定格のサージ保護器を使うと、 散々な結果を招 コネクタ) を必要とする取り付けもあるが、 どちらもすぐに入手 きコストも高くつくので、これは避けること。サージ保護アプリケー 可能である。 データ ・ ラインに取り付けた保護器により、 ネット ションエンジニアに連絡を取れば、 簡単に保護器の正しい選択 ワーク接続した全部門が、 インターネットに接続できず休止状 を遂行できる。 態になるのを防ぐ。 太陽エネル ギーまたは太陽電池システムを別にして、 イン バーターは ATS と同様、 電力の出入り口でもある。 太陽発電 電力はインバーターに流入し、 直流電圧から AC 電圧に変換さ D ion N eri 氏は、ニューヨークDeer ParkにあるMCG Surge Pro- れる。 このデバイスを保護するために、 インバーターの入力に tection社のチーフエンジニアである。連絡先は、800-851-1508 DC サージ保護器が必要であり、 特に系統連系インバーターの または dion@mcgsurge.com ■ 場合には配電系からのサージに常に曝されているので、 出力 図3.雷電流I1Bによるグランド電位シフト 56 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015年版ガイドブック サージ保護 Barreto 2014年3月号 掲載 オートメーション・制御システムのEMC 工場内の電磁妨害を取り除くグランドの役割 Roberto Menna Barreto QEMC - Engenharia, Qualidade e Compatibilidade Eletromagnética Ltda. 要旨 面での損失が発生することになる。 号と機器の保護は、 通常、 電 オートメーションと制御システムは、 こ 磁両立性 (EMC) と いう用語 のように機器および信号のインテグリティ で表現され、 その本質は、 自 に直 接 関 係 しており、 通常 EMC と いう 身のグランドシステムに言い換えることが 用語で特徴づけられているこのインテグ できる。 オートメーションと制御システム リティは電磁環境に許容できない電磁妨 の据え付けに際して適切な EMC 改善を 害を持ち込むことなく、 その環境内で正 実施することで、 壊滅的な結果を招く可 常に機能する機器および機器 ・ システム 能性のある 機 器の故障関連のリスクや ユニットの能力として定義される。 信 コストを著しく削減できるが、 経験則をい こういった適切な EMC 構成に対 する くつか決めるほど効果的ではないので、 最 も 費 用対 効 果 の高 い取り 組 み には、 グランドシステムについて論理的なア プ 機器および相互接続する各アイテムが特 ローチが正当であると示すことが筋であ 定の EMC 規格に適合することが必要だ ろう。 が、 この特定の規格は追加の保護処置 が実施される場合、 特定の設置におけ interference-technology.jp 1.グランドシステムとの目的 とその役割 る全てのニーズに対する回答としては不 オ ー トメ ー シ ョ ンと 制 御 システム は、 事 実 上、 電 磁 妨 害 (EMI) を 避ける 様々なプロセスのニーズを満たすため、 ための全ての保護処置は、 直接グランド エレクトロニクスに依存している。 このプ システムに関連している。 確かに、 工場 ロセスに関連する機器が電磁妨害により 内で 使われてい る全ての電気 ・ 電子 技 損傷 ・ 故障した場合、 安全および費用 術は、 必然的にグランドシステムへ集中 十分なこともある。 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 57 サージ保護 オートメーション・制御システムのEMC 低インピーダンス・ケーブル・ダクト(CBN 要素) システムブロックのフレームを ボンディングマットで相互接続 SP1 とケーブルダクト 床 SPC1 ボンディングマット 1 ケーブルシールド部を フレームへ接続することを推奨 床の鋼鉄製補強材 無関係の電流を阻止するために、 ボンディングマットと CBN 間を システムブロック3 SPC3 SPC2 CBN 上に設置された既存機器 (システム4) システムブロック2 SPC 一点接続(Single Point Connection) 同電位接続導体 鋼鉄製補強材 非シールドのイントラ/インターシステムのケーブ シールドのイントラ/インターシステムのケーブル ボンディングマットの端に沿ったドット ( ─●─●─●─)は、システムブロック に入るイントラネットケーブルが、SPC の近くから入らなければならない。 図1.メッシュ-IBN-ボンディングマット 注: 1.システム・ブロック1、2、3は、メッシュ-IBN方式に適合した新しい施設である。あらゆる接着方式を使う既存の施設(システム4) に接続している可能性がある。 2.SPCはメッシュ-IBNとCBN間の唯一の金属インターフェースで、床の鋼鉄製補強材に直接接続しなければならない。システムへ 至る全てのケーブルはここから入る。メッシュ-IBNへ接続されている全ての導体は、SPCで接続されていなければならない(例えば、 ケーブルのシールド、電池の戻りなど)。 (出展: K-27 ITU Recommendation K.27, 1996「電気通信局舎内の接続配置とアース取り」) するので、 ノイズ結合問題が発生するのはグランドシステム内で ダンスならば、 異なる信号レベルが何の妨害もなく混合可能に あり、 解決すべき問題もグランドシステム内にある。 なって、 理想的な計画となる。 しかし実際には理想的な状態 従って、 オートメーションと制御システムにおける電磁的両立 は不可能なので、 特定の接地に対するグランドシステムの適切 性の本質は、 単一の電子回路として理解可能な自身のグラン な設計によってこの理想的な状態をシミュレーションすることで ドシステムに置き換えられるだろう。 それは接地電極サブシステ ある。 そして、 2つの狙いの補完的なゴールは下記の通りであ ムからプリント基板内の部品、 全ての保護対策組込部品にお る。 よび、 電源システムの安全性、 雷に対する保護、 電磁妨害の 制御など多様な役割の調整を目的としている。 この目的 (電源システムの安全性、 雷に対する保護、 電磁 妨害の制御) を実現するには、 グランドシステムがゼロインピー 58 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 第1番目 : 安全グランド-電力障害および雷放電による危険 な電圧が、 主に産業用周波数に基づき電極システムが支える 設計により、 人々あるいは設置されている機器自身に対しどん な危害も加えないよう保証する。 2015年版ガイドブック サージ保護 Barreto 第2番目 : EMC グランド-システムに対する外部妨害 (第3 者から設置電子システム内へ、 またはその逆の両方) およびシ れる場合の問題を避ける目的で、 工場内の制御盤で作ること もできる、 ステムへの内部妨害電磁妨害、 つまりシステムに対する電磁妨 電極サブシステム用アース抵抗の価値は、 結果として生じる 害を避ける方法は、 設計をこれ以上電極システムに関与させ 電極の電位と、 それを通して地中に注入される電流との間の関 ずに、 全システム相互接続の高周波作用に向けさせることで実 係として定義されうるが、 EMC には重要ではない。 現する。 その理由は以下の通り。 a. 検討中の回路に結合することによる、電磁妨害を防ぐ a. 故障または誤動作の原因となる回路への結合による電 磁妨害を防ぐ 可能な場合はいつでも、 低い抵抗を基本的なゴールにしな ければならないが (安全と雷からの保護が理由の場合)、 電 子システムの適切な EMC 性能を保証することは必要ではない。 一点アースまたは多点アースで構成できる 「保護アース」 が 施設に配線されることが、 オートメーションと制御システムの正 オートメーションと制御システムの電磁的両立性を保証する しい性能を保証する主因である。 方法として、 グランドシステムは安全性を確保し、 電磁妨害問 一点アースは、 一点でアース / グランドに接続することによっ 題および/または機器損傷に関するリスクとコストを大幅に削 て特徴づけられ、そこから、常に閉ループがなくて開いている 「ツ 減する。 直接的なコストとは損傷した機器の交換に伴うもので、 リーまたはスター」 のコンセプトで、 施設中至る所に配線され 間接的コストは、 る。 この構成は低周波に適していて、 ワイヤの長さが信号波長 壊滅的な結果を招きかねない運転停止や機能不良に関す るものである。 の 1/10 より長くないということであり、工場内のパネル用に度々 使われる。 またデータ通信曲 (シェルター) の場合と同様、 小 さな領域に設置された高周波数の電子システムにさえ使用され 2.グランドシステムおよび電源システムとの 関係 る。 しかし、 そのような低周波をグランドしているシステムを考慮 アース導電面に関する電源導体の電位はアースシステムに するとき、 非常に注意しなければならない。 考慮すべきポイン よって定義され、 実際、 XY-Z 3文字によって確認される中性 トは、 たとえ、 システムが必要とする送信 / 処理する信号が低 アーススキームである。 最初の文字 X は中性線のアースへの 周波カテゴリーに属していても、 不要な周囲雑音ノイズあるい 接続を意味する (T : アースへの直接接続、 I : 高いインピーダ は、デジタル処理、至るところに普及した通信デバイスや、音声・ ンスにより絶縁または接続)。 2番目の文字 Y は供給されてい データの無線通信 (つまり無線機器) 使用の著しい普及が原 る電気デバイスとアース間の接続を意味する (T : アースへの直 因で電子機器各アイテムから発生する伝導ノイズに対して、 同 接接続、 N : アースに接続されている設置元で中性線に接続)。 じことは決して当てはまらないということである。 3文字目の Z は、 保護アース (PE) に関連する中性線のこと 高い周波数に対しては多点 (網目状) グランドが好ましい。 で、 民生設備の露出した金属部分に接続した導体である (S : 高い周波数では機器間 (網目に沿って延びる信号ケーブル) 分離した中性線と保護アース、 C : 単一/結合した導体内の中 でこのように低いノイズの通信が好まれるので (こういった周波 性線と保護アース – PEN) 数に対し仮想の 「等電位面」 のように機能する) グランド構造 これは異なった型式の電源配電システム用に使われる頭字 による制御が要求され、 最も高い周波数の波長の1/10以下 語 TT, IT, TN-S, TN-C となり、 それぞれが特定の電源条件を の網目寸法の信号基準格子 (Signal Reference Grid) を通し 満たしている。 て実行される。 電磁的両立性の観点からは、 とりわけ雷の活動が活発な場 機器室、 特に放射電磁妨害が高いレベルの環境において、 合のベストの構成は N-C-S アースシステムで、 最も近い変電 このような信号基準格子の使用は常に推奨されるが、 新技術 所とサービス遮断 (メーター前のヒューズ) の間で中性線とアー はノイズに対し高いイミュニティレベルを提供するので (例えば ス結合が起こり、 その後は分かれたアースと中性線コアが全て イーサネットや光ファイバー)、 自身の回路については必ずしも の内部配線で使われる。 ある場所から施設の入り口のみでアー 必要というわけではなく、 元々 RS-232 データ接続の不十分さ スに接続される (中性線からアースへの単一接続)。 配電シス を補うために要求されたローカルのグランド構造への完全対応 テムからローカルアースシステムの間に存在する可能性のある というニーズは解消される。 中性線と PE のコモンモード (CM) 電圧は、 TN-C-S 配電シ ステムを使うことにより、 民生設備の入り口で除去される。 ある重要な状況に際して、 コモンモード電圧の問題を解決す るために新しい独立アース ・ システム (TN-S) を作成するのに 非常に高い強度の電磁界が周囲に存在する場所、 または 意図的な電磁界が安全性を脅かす可能性のある時でさえも、 工場によっては信号基準格子のほかに (構造的な) シールド ルームが必要となる場合もある。 電源トランスを使うのが適切な場合がある。 独立してアースさ れた新しい電源システムは、 同様のコモンモード電圧 (グラン ドループ) をより確実に分離するためシールド ・ トランスが使わ 3.グランドシステムと雷保護との関係 工場は人 里離れた場所に あ ること が多く 広い地 域にま た がっており、 特に工場の計装回路は地域内で発生する全ての interference-technology.jp INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 59 サージ保護 落雷にさらされる。 2つの補完的なアプローチを使用してオートメーションと制御 システムを雷とその影響から保護しなければならない ▪▪ 雷に対する構造物の保護 ▪▪ 雷に対する電子機器の保護 オートメーション・制御システムのEMC れるかに依存している。 ▪▪ 非磁気シールドは、信号ケーブルの電界シールド部分が如 何に「グランドされているか」によって決まるノイズ電流が流 れる「ループ」範囲を減らすならば、信号ケーブル内への磁 気結合削減に使用可能。 ▪▪ 同様のグランド状態は他の多くのEMC技術についても重 直接落雷に対して建物を保護するために、 雷保護システム 要である。 (LPS) は、 結果として生じる雷電流をアースシステムへ導く下 降導体と雷電流を土壌内部へ拡散させるアース電極システムか ら構成され、 落雷は途中で捕捉される。 雷保護システムは国際規格 IEC 62305 第2版 : 2010 「雷に 対する保護」 に適合しなければならない。 これには、 特定の ロケーション (土壌抵抗、 襲雷頻度 / 雷密度、 地勢図、 その 他) で保護対象となるそれぞれに異なった構造 (ビル、 アンテ ナタワー、 タンク他) や、 爆発性雰囲気( ATEX) 区分など可 能性のある関連問題を考慮した保護レベル決定用のリスクアセ スメントを含む。 リスクアセスメント、 設置時および初期の検査、 定期検査によって特定された技術検討を実施すると、 雷に対 する保護構造は完璧なものとなる。 ここでも再びアース抵抗は重要ではない。 可能性において 大きな違いを生じることなくアース電極システムで雷電流を土壌 に拡散するグランドシステムのトポロジーのほうがアース抵抗の 値が低いことよりはるかに重要であるが、 可能ならばアース抵 抗は低い方が良い。 雷に対する電子機器およびサービスの保護には (国際規格 IEC 62305 「雷に対する保護」 でもカバーされている) では、 EMC の定義に該当する雷保護を考慮し、 雷およびその影響が 実際に電磁妨害であることも考慮することで、 問題の本質およ びグランドシステムの重要性に対する深い理解を達成する。 EMC を背景とした電磁妨害除去の保護手段は、 電磁妨害 源 (何が電磁妨害を起こしているか、 システムの内部あるいは 外部の可能性)、 結合メカニズム (発生した電磁妨害がどのよ うに回路に結合するか) および受信部 (影響を受けている回路) を最初に識別する際に定義される。 次に結合ノイズつまり EMI を減らすためには、 1つまたはそれ以上の上記構成要素に取り 組むことにより問題解決が可能である。 雷に対するオートメーションと制御システムの保護に関して、 受信部 (機器は既にメーカーにより定義されている) または電 磁妨害源 (雷) で作業することはどちらも不都合で不可能だと さえ判断するかもしれない。 なので、 結合メカニズムのみに取 り組むことができるというわけだ! 再び EMC の観点に戻ると、 電磁妨害は、 容量性結合 (電 界)、 誘導結合 (磁界)、 コモン ・ インピーダンス (グランド) と いう3つの主要な基本的結合メカニズムによって電子回路に結 合している。 この結合メカニズムを減らすために適用可能な技術のほとん どは、 グランドシステムの設計に直接関連がある。 例えば、 グランドシステムは実際、 EMC に関わる範囲内で、 ノイズ 結合メカニズムを少なくする主要な要因であり、 同様にグランド システムは雷およびその影響から保護するオートメーションと制 御システムを設置する際に主要な役割を果たし、 そこからいく つかのガイドラインが導き出される。 雷電流 (間接雷) により発生した電磁界に対して計測機器 を保護するためには、 雷保護領域 (LPZ) 内にある全ての信 号ケーブルは、大きな電流 「ループ」 領域の生成を避けるため、 網目状のグランドシステムの個々のエレメントの近くを通る必要 がある。 網目状グランド構造の一部を形成する金属トレイおよ び/またはケーブルと結合したグランドケーブル (並列アース 導体 : PEC) は、 このニーズを満たす。 そして金属トレイはワイ ヤー PEC よりも高周波で良好な制御を提供して保護領域内を 拡大させなければならない。 ある建物やエリア内での落雷時に、 その建物やエリア内で 互いに離れたところにある計測機器を相互接続する計装ケー ブル上の高いサージ電圧/電流に対する保護も、 取り組むべ き重要事項である。 個々の建物または領域は自身のアース電 極システムを持つことができるが、長いケーブル (接続が必要) で相互接続した場合、 このようなサージを避けるために高い周 波数成分も含めて 「等電位」 にすることは不可能である。 こ の状態は、 ガルバニック絶縁に非金属媒体を使用することで 回避可能であり、 信号伝送に光ファイバーや無線を使うことも あるが、 ガルバニック絶縁を使わない場合はサージ保護デバ イス (SPD) の使用が必要となる。 間接的 (電磁界結合) あるいは直接の雷によるサージか ら保護するのに SPD を使用するには、 SPD 自身の特性考察 に加えてグランドシステムの考察も必要である。 放電電流は SPD によって迂回されて常に回路のどこかに流れ、 消えること はない!グランドシステムは、これらの回路の行き着く先である。 この 種の デバイス (SPD) は SPD と 呼 ば れて い るが、 SPD (サージ保護デバイス) は使用目的を意味する一方、 TGD (ト ランジェント ・ グランド ・ デバイス) は実際の機能を示すため、 TGD と名づけたほうがよいという事実から誤解が生じる。 その ため、 実際には違うにもかかわらず SPD を内部および機器自 身で使用することで十分であると想像する余地が出てきてしま う。 SPD が迂回させた電流は、 保護回路のまったく同じ (グラ ンド) 基準に流れなければならない (必ずしもアースシステム 電極へ流れる必要はない)。 そして回路内の過渡電圧または 近くの回路内で誘導された過渡ノイズがあまり高くならないこと ▪▪ フィルタの性能は、どう設置されるか、つまりどうグランドさ 60 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 を確実にする目的で、 放電経路は直列インダクタンスを減らす 2015年版ガイドブック サージ保護 Barreto ために可能な限り短く直接的になるべきである。 周波 CM 電流は、 経路に沿って1点または複数の点で空気中 を流れることによって、 非常に首尾よくグランドループを形成し、 4.グランドシステムと信号伝送との関係 1点グランド効果の目的を無にする。 工場内での信号分配に求められることは、 回路内へのノイ 結果としてセンサーは、 デジタル 処理、 デジタル/無線 通 ズ結合全体が妨害の原因にならないよう、 つまり信号は歪む 信、スイッチング電源コンバータ (DC/DC と同様にオフライン)、 可能性があるが情報は維持されるように、 それぞれの電磁妨 A/D コンバータ内のサンプリング回路からの高周波コモンモー 害源間で妥協することである。妥当な構成を達成するためには、 ドノイズを常に被ることになる。 機器が適切な EMC 仕様に適 各信号経路上で結合するが配電と雷保護に対して常に安全要 合していない場合、 こういった高周波ノイズは、 大きな影響が 求を維持しながら、 放射または伝導ノイズを制御する目的で適 あり、 (グランドに関連した!) 緩和技術、 つまり高い周波数の 切な技術が適用されるべきである。 CM ループを遮断するような技術 (例えば高周波絶縁トランス、 一般的に 「グランドループ」 と呼ばれているコモンモード電 光ファイバー、 CM チョークなどの使用による) によって制御す 流の制御は、 工場内の計測機器への配分に関連したグランド る必要がある。 それにはシールドケーブル (無線周波数に対 システムにとって最も重要な切り口である。 回路(発生源、負荷、 応して両端できちんとグランドを取る) を使用、 あるいはコモン 2つの導体) 内の2つの導体を考慮するとき、 電流循環の形を モード電流に高い耐性のある回路 (例えば平衡回路) を使用、 識別しなければならない。 必要な信号であるディファレンシャル または、 そのような高い周波数まで効果的な、 通常必要なグ モードは、 1つの導体と他の導体を通って戻る発生源から負荷 ランドシステムに通常要求する他の手段を用いる。 つまり本稿 へ流れる電流を意味する。 通常は予想外で不必要な信号 (ノ で前述し、 IEC 61000-5-2 や末尾の参考文献リストに掲載さ イズ) であるコモンモードは、 回路の両方の導体に同じ方向に れている他の規格内で十分考察されている 「EMC グランド」 で 流れ、普通は第3の導体 「グランド基準」 (なので 「グランドルー ある。 プ」 と呼ぶ) によって戻ってくるノイズ電流を意味する。 特 に低 周波 で コモ ン モ ー ド 電 流 ル ープに直列の高い イン コモンモード電流循環回路は、 信号源と負荷の両方が基準 ピーダンスを挿入することでコモンモード電流問題解決を支援 (「グランド」) の異なるポイントに直接接続する場合と同様 「具 できるので、 信号伝送にフローティング電源の計測システムが 体的な存在」 を有する場合もある (「電位の均等化」 のコンセ 使われることがある。 しかし保守管理問題のために、 この技術 プトは、 数 kH 以上の周波数では誘導性リアクタンスが支配す の使用にはいくつか問題があり (EMI 問題が増加する最中でも るのは抵抗ではなくグランド構造のインピーダンスなので、 実 システムは動作状態なので不測のグランドへの短絡を特定する 用的な目的に使用しないことに注意)。 この場合、 コモンモー のが難しくなる可能性がある)、 信号導体内で誘導した電圧が ド電流は2つの基準点 (「グランド」) 間の電位差となりうるので、 高い値になって危険な状態に陥るかもしれない。 電流は両方の導体内で同じ方向に流れるよう強いられる。 温度測定システムは、 ノイズ感受性のため特別な注意を必 このシナリオに基づくと、 グランドシステムが1点効果で信号 要とする。 熱電対回路では、 センサーのできるだけ近くに信号 回路を実現するには非常に都合がよく、 つまり信号源または負 状態条件付け回路( 温度送信機と呼ばれることが多い) を設 荷が回路の一端でグランドされることによって、 コモンモード電 置し、 センサーから制御室へ信号を送るのに単一の信号条件 流の循環を回避する。 センサーからの信号を伝送するための 付け (例えば 4 ~ 20 mA または 0 ~ 10 Vdc) を使うことが望 測定機器回路は、 その大部分が低周波フローティングデバイス ましい。 センサーを調整機に接続するケーブルは、 シールド ・ で、長年1点効果を使っていた。 工場の電源周波数 (50/60Hz) ツイスト ・ ペア用い、 長さはできるだけ短く、 シールドは送信機 の電圧と電流が主要なノイズの脅威であったので、シールド (電 (グランド接続されていないセンサー) にだけグランド接続する 解結合を避けるためシールドは通常、 回路がグランドされてい か、 センサー (グランド接続されたセンサー) にだけグランド る機器室において一端のみでグランドされる) ツイストペアケー 接続、 あるいは両端をグランドに接続する。 ケーブルのシール ブル (電流ループ範囲を減らして磁界結合を避けるため) が主 ドにグランド接続されたセンサーは、 グランド接続されていない に使われている。 センサーよりノイズに対し弱くなる。 電磁妨害が起こる可能性の だが、 この従来の対策は、 工場内での使用が急増している 高い環境では、 測温抵抗体 (RTD) か、 さらに高性能の赤外 マイクロプロセッサ、 デジタル/無線データ通信、 スイッチング 線温度計を使用すると熱電対 (T/C)よりノイズに対し高いイミュ 電源などの高周波デバイスのせいで、 どんどん効果がなくなっ ニティレベルが可能となる。 てきている。 高い周波数を考慮に入れると、 コモンモード電流 だが、 さまざまな部分および特殊な1つの要素に制限しない が流れる回路は、 循環 「ループ」 を閉じる 「物質」 で接続さ という折衷案のもと、 EMC への配慮が常に必要である。 デジ れているのではなく、 通常は基準 (例えばグランド) で接続さ タルバスシステム (例えば Profibus) に接続する電子機器内に れている。 これは、 高周波では回路のグランドされていない終 組み込まれたセンサーの場合、 それが T/C か RTD 検出部分 端の浮遊容量が電流ループを閉じるのに十分に低いインピー であるかどうかは大きな違いではない。 そういうわけで、 全シ ダンスを持っていることを考慮すると理解することができる。 高 ステムを相互接続するグランドは EMC の重要なファクターなの interference-technology.jp INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 61 サージ保護 オートメーション・制御システムのEMC である。 5.グランドシステムと技術手順の関係 グランドシステムの主な目的は、 電気安全の確保および、 そ の結果として妨害問題発生を減らすことであり、 この2つの目的 は設計および設置段階の両方において、 さらにオートメーショ ンと制御システムの正常かつ信頼性の高い作動を確実にする a. EMCの記録:電源品質、電磁界強度、電気的導通、サー ジなど測定の一式や、雷や機器の故障などによって結果 的に生じた事象の詳細について1年を通じて記録する。 b. EM Cのガイドライン:期間中、工場内で適用されるべき EMC関連の方法論、要求、技術についての取り組み ため維持管理段階においても、 十分に考慮する必要がある。 5.1. 設計および設置段階での妨害コントロールプラン 各設備には、 特定の電磁環境およびオートメーションと制御 システムに関する独自の特色があり、 起こりうる EMI 問題すべ てに対処するグランドシステムに、 シンプルで低コストの 「標準 謝辞 著者の初稿 を推敲し 興味深く完全な原稿にしてくださった Mrs. Belinda Stas と Mr. Keith Armstrong に心からの謝意を 捧げるものである。 設計」 または 「経験則」 を使用することはむずかしい。 EMC への取り組み計画は費用対効果が最も高い方法論で あり、 システム特有の複雑さと、 電磁妨害の問題および解決策 に関する高度な性質との、 両方に応えるものである。 「妨害コントロールプラン」 は、 妨害問題が発生するための 全ての状況に対応することが目的である。 参考文献 ▪▪ IEEE 1100-2005 IEEE Recommended Practice for Powering and Grounding of Sensitive Electronic Equipment (Emerald Book), Institute of Electrical and Electronic a. 機器の各アイテムが適合し なければならない EMC 規格 Engineers, New York, NY, ISBN 1-55937-231-1 は、 エミッション (機器が電磁妨害の発生源で構成されている) ▪▪ API 2003 - Protection Against Ignitions Arising out of およびイミュニティ( 環境内で許容不可能な程度まで影響を受 Static, Lightning, and Stray Current, American Petro- けない機器)両面をカバーする。EMC 規格 IEC 61326-1 Ed. 2.0 leum Institute, Washington, DC, 1991 :2012「計測,制御及び試験所用の電気機器- EMC 要求事項」 ▪▪ IEC/TR 61000-5-2 ed1.0 1997 Electromagnetic com- は、 機器のユニットが多様な設置条件で正常に動作するのに patibility (EMC) - Part 5: Installation and mitigation 適切であるという保証に必要な EMC 適格性を定義している。 guidelines - Section 2: Earthing and cabling グランドシステムの適切な設計を通じて特別な設置のための ▪▪ IEC/TR 61000-5-6 ed1.0 2002 Electromagnetic com- EMC ニーズを完遂することによる。 この作業は、 EMC 分析を patibility (EMC) – Part 5: Installation and mitigation 通じて実行される。 分析では、 さまざまな電磁妨害源 (システ guidelines - Section 6: Mitigation of external EM influ- ムの内部および外部) および影響を受けやすい回路に関わる ences EMI リスク状況のマトリックスを詳述し、 起こりうる EMI 状況の ▪▪ ITU Recommendation K.27, 1996, “Bonding configura- すべてを、 IEEE や IEC ほか発行の EMC 推奨の方法やガイド tions and earthing within a telecommunications building” ラインの支援を得て改善する。 ▪▪ EN 50174-2:2001, “Information Technology – Cabling Installation – Part 2: Installation planning and practice 5.2. EMC 手順の維持管理 inside buildings” あらゆる工場では、 最初の設計は2~3年もすれば変更され ▪▪ “EMC for Systems and Installations” by Tim Williams and る。 少し例を挙げるなら、 データ収集システムの修正、 新しい Keith Armstrong, Newnes, 2000, ISBN: 0-7506-4167-3, 機器とその制御は変更可能、 新技術が実現され、 偶然および RS Components part number 377-6463. /あるいは壊れた接続やゆるい接合が生じる。 結論としては、 電磁環境内で絶え間なく繰り返される変更に 対しオートメーションと制御システムの性能を保証するために特 別な 「EMC 維持管理手順」 が必要である。 そして極めて重要 なことだが、 整備要員は稼働寿命期間中に使われる新技術に 従ってこういった電磁妨害制御手順を適用し完遂しなくてはなら ない。 ▪▪ “Designing Electronic Systems for EMC” by William G Duff, Scitech Series on EMC edited by Dr Alistair Duffy, 2011, ISBN: 978-1-891121-42-5) ▪▪ “EMC and Lightning Protection for Telecommunications Systems” by R. Menna Barreto, ITEM 2002. ▪▪ “The role of the grounding system in reducing risks in Industrial Plants –Portuguese IBP305_12” by R. Menna Barreto, 4th Latin American Conference on Process 「EMC 維持管理手順」 には下記内容が含まれていること。 62 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 Safety, IBP Brazil 2012 ■ 2015年版ガイドブック 試験 Vincent 2013年11月号 掲載 GHz帯挿入損失構成要素のシミュレーション: 導体損失に対する横断面形状の影響 Tracey Vincent Application Engineer, CST 要約 その物理的な特性を以下で検討し、 適切 ミュレーションされた挿入損失の なフルウェーブシミュレーションの詳細を 現実的な推定を達成するために 記述する。 3D のフルウェーブソルバでは、 は、 すべての挿入損失構成要素 より良好かつ詳細なパラメータ化を備え、 を考慮し、 計上する必要がある。 特に誘 複雑なモデルの取り扱いが増加している。 電体損失と導体損失の構成要素は、 3D そのうえ、 何百万ものメッシュ ・ セルを持 シミュレーションされた損失が現実的であ つ特定のモデルは、 高性能計算処理に るために慎重なパラメータ化が要求され よって妥当な実行時間で利用できるように る。 こういったパラメータ化の概要は、 導 なる。 シ 電損失に対する基板の回路パターン横断 区別可能な GHz 帯の高周波の4つの 面形状の影響についての注目という見過 挿入損失構成要素は、 放射性、 反射性、 ごしがちな点も含め、 明らかになる。 導体、 誘電体である。 放射性および反射 キーワード:損失構成要素、 導体損失、 性の損失は設計/トポロジーに関係し、 誘電体損失、 誘電正接 (tan δ)、 エッジ 一般的には、 関連する幾何学的特徴に 効果、表面の粗さ、シミュレーション、物質、 注意して、 フルウェーブ電磁ソルバにより パラメータ化。 正確に推定される。 誘電体損失と導体損 失は、 物質パラメータ、 加工パラメータ、 はじめに 設計とトポロジーに依存する。 誘電体損 デジタルスイッチング時間がどんどん短 とは、 絶縁体または誘電体 (回路基板) くなるのに伴い、 高い周波数によって、 挿 によって吸収される信号の比率である。 入損失が増加する。 大きな損失は、 いく 導体損失は、 回路パターンの導体 / 金属 つかの物理的な特性に起因し、 異なる損 によって吸収される信号で、 この導体損 失の構成要素によって分類される。 残念 失は抵抗損失または I²R 損失としても知ら なことだが、 こういった損失構成要素がシ れている。 誘電体損失と導体損失は、 フ ミュレーションで十分に捉えきれないこと ルウェーブシミュレーションのために不適 は度々ある。 また予測される測定損失よ 切にパラメータ化されることがよくある。 り大きいこともよくある。 損失構成要素と interference-technology.jp 誘電体損の物理的メカニズムおよび誘 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 63 試験 GHz帯挿入損失構成要素のシミュレーション 電体損のパラメータ、 誘電正接は、 この損失メカニズムについて 物質のパラメータ化 シミュレーションを単純化して高速で実施するために、 物質は 十分な概念上の理解を得るために調査され、誘電体をシミュレー 「完全な導電性」 または 「真空」 のような基本的な物質タイプ ションするガイドラインとなる。 回路のトポロジーは、 導体損失要素に影響する。 DC でさえ であると、よく特徴付けられる。このアプローチは多くのシミュレー 抵抗は断面積で割った長さと関係し、 この断面積が大きくなれ ションで十分であるが、 特に周波数が高くなるときには不適切な ば DC 抵抗は小さくなるので、 導体または回路パターンの幾何 挿入損失を算定することがある。 学的形状か全体的な電気抵抗を決定する。 幾何学的形状ファ 損失構成要素 (そして、 その損失のメカニズム) を理解し、 クタは周波数が高くなると複雑になる。 マイクロ波の周波数では、 その理解を慎重に物質パラメータ化とモデルのセットアップに反 表皮効果が金属パターン内で信号を生じて導体の先端に集中す 映することは、 妥当にシミュレートした挿入損失結果を得るため るので、 信号はこれら導体の先端部の幾何学的形状に敏感に に極めて重要である。 なる。 鋭い先端の回路パターンは、 丸まった先端よりも著しく大 きな導体損失があるかもしれないが、 この現象は多くの場合考 誘電体 / 基材 慮されない。 異なる断面形状の回路パターンの例をシミュレー 誘電体は、 電界を加えることによって分極化することができる ションして、 結果を比較し、 導体損失のこの重要な側面を図解す 電気絶縁体である。 誘電体を電界に置くと、 電荷は導体の中を る。 流れるのと同じように物質中を流れず、 誘電分極を引き起こして、 10GHz またはそれ以上の周波数で、 銅のような高い導電率 平均的平衡位置からわずかに動くだけである。 電界強度 E の の物質では、 表皮効果の深さは、 およそ1ミクロンである。 この 値と方向が変わったとき、 誘電分極の値と方向も変化するので、 物差しを適用すると、 導電性物質の金属導体の先端形状は、 交番電界1サイクル中に、 分極化が2回と分極化消失が2回おこ 信号の流れに影響する [1,2]。 これは表面の粗さと考えられていて、 る。 マイクロ波の周波数における主要な分極化メカニズムは、 電 導体損失について重要だがよく過小評価される一因として認識さ 子と原子の分極化である。 核の周囲の電子に対し電界が電子 れている。 導体損失の表面の粗さの影響は、 言及されているが、 核を置き換えるとき、 中性の原子で電子分極化が生じ、 適用さ 本稿では深く追求しない。 れた電界で隣接する正イオンと負イオンが 「伸びる」 とき、 原子 マイクロエレクトロニクス回路は、 設計経費を減らし設計プロ 分極化が起こる。 緩和時間は物質の中に存在する分極の移動 セスを短くするために、 電磁気 (EM) シミュレーションを使って 度の尺度である。 これは、 電界に整列して置き換えられたシス 設計される。 したがって、 回路設計は、 回路試作が迅速かつ テムが、 ランダムな平衡値 (または電界中で分極が正しい位置 経済的にできるシミュレーション ・ ツールの正確さに依存する。 に置かれるのに必要な時間) の 1/e に戻るために必要な時間 CST ™のような EM シミュレーション ・ パッケージは、 誘電体損 である。 一定の衝突は内部摩擦 (誘電体物質内の損失の物理 失および導体損失を注意深く扱うなら、 伝送損失の総量を推定 的メカニズム) の原因になるので、 分子はゆっくり回転し、 一定 できる。 の緩和時間を伴って指数関数的に分極化方向に近づく。 適用 緩和周波数 第1次 デバイ (Debye) の分散 ε’(複素誘電率の実数部) ε "(複素誘電率の虚数部/誘電損率) 双極子が電磁界に遅れを取ることはなく、 ε '' は周波数に比例して増加する。 ε " は周波数に比例して増加 するが、ε'( 保存されたエネル ギー ) は電界の変化に双極子 の向きの追従が遅れるために 減少する。 ε 'とε " は両方とも、電界の変化に追従して双極子を回転させる ためには速過ぎるので減少し、双極子が消滅する。 図1. 1つの物質の緩和を示すデバイ関数の分布事例 64 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015年版ガイドブック 試験 Vincent 周波数領域シミュレーション 時間領域シミュレーション 誘電体/ /絶縁体のパラメータ 絶縁体のパラメータ化 誘電体 誘電正接が固定値に適している のは、多くの物質で狭帯域の周 波数帯 / 範囲ではしばしば適切で ある。 誘電正接の分散的モデルが必要に なる場合もある。物質は、広い周 波数範囲で定義されることが必要 である。 金属 / 導体のパラメータ化 測定された表面インピーダンスデータに関して データは周波数間隔の間を補間 する。 クラーマース・クローニッヒの関 係により、データの合理的で適 切な処理が実行される。 図2.時間領域ソルバと周波数領域ソルバによ る物質のパラメータ化の概要。異なるソルバに 注 : 過渡現象のシミュレーションにおいては、完璧な導体より損失性金属の方がエネルギー 減少 / 収束を助けることができる。 は、物質のパラメータ化に対する異なる扱いが 必要である。 する交番電界の期間より緩和時間が何倍も大きいならば、 分極 が異なる周波数ポイントや補間された間のポイントで決定される 化の達成がかろうじて可能で、 誘電体損失は非常に小さい。 低 場合もある。 FR4は実質的な損失を持っており、 その誘電正接 周波で、 緩和時間がピーク間の時間よりかなり短い場合、 分極 損失は、 広い周波数範囲で非常に安定している。 化は電界に追従する。 そして単位時間当たりの再方向付けされ る個数は少ないので、 誘電損失も小さい。 最大の分極化は最大電界強度と同時に起こらないので、 電 物質には異なる周波数範囲にわたって電界に影響する異なる 特徴があり、 複雑化する場合がある。 多項式のような他の関数 の助けを借りて、 誘電正接を表すことができる。。 界と分極化の間には位相シフトがある。 このため、 電界強度と 電気誘導間にも位相差がある。 電気誘導ベクトルは特定の角度 によって電界ベクトルより遅れる。 そして、 それは誘電体損失角 導体 / 金属-表面インピーダンスモデル 金属物質の表面インピーダンスのパラメータ化は、 信号回路 度 「誘電正接 (タンジェントデルタ)」 として知られている。 誘電 パターン表面に接する電界と磁界に関係している。 金属の内側 正接 (tan δ) の値は誘電体損失を意味するパラメータであり、 の電界の影響は、 信号回路パターンの表面と等しい電流によっ それは複素誘電率の虚数部ε " と実数部 ε ' 間の負の比率とし て記述される。 非常に伝導性のある金属は、 電界と磁界は導体 て得られる。 内に (表皮厚) 浅く浸透するだけなので、 この方法でモデル化 周波数領域ソルバを使用するモデルでは、 その周波数範囲の 誘電正接がよく知られて安定している場合、 比較的狭い周波数 できる。 この方法は、 メッシュ数を大幅に減らせるので、 モデル を単純化できる。 バンドにおいて誘電正接の値を 「定数適用」 としてパラメータ化 金属の表面インピーダンスの代表値は、 多くのモデル用に的 することができる。 実際には、 広い周波数範囲で完全に定数の 確に使われているが、 急カーブのような特定の幾何学的形状を 誘電正接値を提供する物質は存在しない。 (関心のある周波数 捕えていない。 この件は後で議論する。 範囲が狭くても広い周波数範囲を使う) 広帯域シミュレーション 表にされた表面インピーダンスは、 周波数に対して、 その抵 またはトランジェント時間領域ソルバ用に誘電正接パラメータは、 抗とリアクタンスを記入した表の形で得られる。 周波数領域ソル 定数適用よりもよりよいパラメータ化が必要になることが多い。 と バは、 所定のポイントの向こう側で線形に挿入されたモデルを計 いうのも高速スイッチングは明らかに広帯域スペクトラムを含むか 算する。 時間 / トランジェント領域ソルバでは、 この表が 「非物 らである。 理的」 または 「非因果関係」 の動作と対応可能である。 例えば、 1つの緩和時定数を示す物質は第1次 デバイ (Debye) 関数 不確かさや測定誤差のために、いわゆるクラーマーズ・クローニッ /分散によってモデル化することができる。 図1にその例を挙げ ヒ関係は成立できないこともある。したがって時間領域シミュレー る。 ションのためにはデータを合理的にフィッティングする。 いくつか 2つの緩和を示す複数の物質 (例えば電子と原子の分極緩 和) については、 第2次デバイ分布は、 2つの別々の第1次の分 散を加算したものである。 物質の誘電正接がある周波数範囲で測定されたならば、 数 interference-technology.jp 2に示す。 表に示した表面インピーダンスは、 表面の粗さが挿入損失に 値を表にして、 データとして入力できるようになる。 これは FR4 などの複合材料には良い方法である の物質の時間領域と周波数領域の間のパラメータ化の違いを図 関与する料が増加するのを反映させるために生成されることもあ る。 [3] 。 複数の誘電正接の値 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 65 試験 GHz帯挿入損失構成要素のシミュレーション 伝送線路の構造 で高くなる。 回路パターンの片側のみにグランドプレーンがあるマ イクロストリップラインの構造により、 電磁界および電流密度は下 導体 のグランドプレーン側に偏り、 回路パターンの下側角に集中する。 横断面領域の違いは、 導電体損失要素の違いにつながる。 導体領域が角の部分などに制限されている場合、 電流密度は 増加するが、 これは周辺電磁界によるものである。 [4] 電流を流 誘電体 同軸ケーブル ストリップライン 電界と磁界 マイクロストリップライン している2本の導体は、 互いに磁力を及ぼしあうことになる。 磁 力つまり磁界は、 各々の導体のまわりにループ状にあるので、 磁界 それに直角の電界は、 電流ストリップの下側で垂直、 角で水平 である。 これは周辺電磁界として知られている。 垂直と水平の電 界が加わって、 角の部分に電流密度が増加する。 大きな導体損 失が導体の角の部分で起こりうることが注目された [5]。 数学的な 表皮効果による電流密度 電界 解決法では、 電流密度が導体の角で増加し、 角部分の角度が 鋭くなると電流密度が高くなるとしている。 [6] 分布した電界および磁界は周波数の関数として変動し、 電流 密度の分布は周波数の関数として変わる。 DC に近い周波数で、 電流密度と抵抗は、 導体の横断面形状全体に均等に分布する。 電流の周波数が高くなるにつれ、 電界や磁界が変化するので、 電流分布は変動し始める。 電流密度は図3に示すように角の部分に集中し、 この効果は、 中波において表皮深さのおよそ1~5倍の導体厚さで起こると推 電流密度 定されることが多い。 中波はトランジェント周波数範囲としても知 られている。 中波および中波より高い周波数において、 導体の 図3.電界と磁界と流れている電流密度の分布。この図に示されている回路構造 は、比較するために、同程度の寸法、伝導率、誘電率、周波数を想定している。 導体 / 金属-導体損失に対する幾何学的形状 の影響 通常 PCB/ パッケージは銀や銅、 時には金で製作される。 と いうのもこの3種の金属はすべて導電性が高いからである。 この 高い導電率は、 DC ~ kHz の周波数範囲で低い導体損失をも たらす。 周波数が kHz より上の帯域で、 電磁的現象は、 導体損 失の構成要素を悪化させる表皮効果を誘発する。 表皮効果は、 導体の内部に磁界を誘導する交流電流に起因 する。 内部の磁界は、 信号と接地導体板間の磁界に追加され 厚さが表皮深さの5倍ならば、 電流密度は表皮深度の導体表面 に集中することが想定される。 正確に導体損失を予測するため に、 多くの場合、 この両方のマコ (maco) 効果を考慮する必要 がある [7]。 同じ横断面領域を持つが異なる横断面の形状をしている2つ のストリップラインの回路パターンは、 シミュレーションした結果、 導体損失に著しい違いがあることが分った。 ストリップライン回 路が同一のパラメータを持つ、 誘電体損失を無視できるよう誘 電体は空気であり、 グランドプレーンは銀、 同じ長さのストリップ ライン、 同じ厚みの回路基板である。 1つの回路パターン横断面 の形状は、 図4a に示すように標準的な長方形で、 幅 0.1mm、 ている。 内部の磁界は、 導体内部で誘導された誘導電流ルー プを作成する。 電流ループは自身の磁界を発生させ、 それは最 初の磁界と反対方向なので、 効果的に、 電子を運ぶ電流を導 体先端の表面の方向に押し出す。 高周波信号を送るのに用いることが可能な構造にはいろいろ あり、 同軸ケーブル、 ストリップライン、 マイクロストリップラインな どが含まれる。 これらの構造は、 異なる横断面の幾何学的形 図4a.回路パターンの横断面が長方形 状を持ち、 それぞれ違う損失を生じる。 GHz 周波数領域の同軸 ケーブルのトポロジーにでは、 表皮効果によって電流が中心導 体の先端へ引き寄せられるのだが、 中心導体は円筒形なので、 電流密度は円周のまわりに均等に分布する。 ストリップラインの 構造は、 中心導体 / 回路パターンの両側にグランドプレーンを 持つ。 横断面が長方形のストリップラインは電磁界を発生させ、 その結果、 電流密度の分布は、 図3のように、 外側と角の部分 66 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 図4b.回路パターンの横断面がアーモンド形状 2015年版ガイドブック 試験 Vincent S パラメータ(値は dB 表示) アーモンド形状の S21 長方形の S21 周波数(GHz) 図5.回路パターンの横断面がアーモンド形状と長方形のときの挿入損失 厚み 0.025mm、 これは一般にシミュレーションに使われている の周波数に正比例して増加する。 測定結果から損失要素を分離 回路パターンの形状である。 「アーモンド形状」 は、 図 4b に示 するのは簡単な作業ではないが、 図7に示すように、 シミュレー すように、 幅 0.2mm、 厚み 0.025mm、 したがって両方の形状に ションでは容易である。 この2種類の損失は、 パターン長 10mm は面積は 0.0025mm² の横断面領域がある。 アーモンド形状の のものである。 この周波数帯では導体損失が誘電体損失より ほうが、 たとえば厚膜プリント LTCC 回路のパターンで、 より忠 も大きいが、 誘電体損失の周波数に対する増加割合は大きい。 実かもしれない。 ストリップライン構造の放射性損失は、 多くの場合は小さく、 こ 両方のストリップライン ・ モデルは、 CST TM でシミュレーショ ンした [8]。 回路パターンは 0.01 メッシュ ・ セルサイズの通常の 材質としてモデル化され、 結果として、 横断面が長方形の回路 パターンモデルでは130万メッシュ ・ セル、 アーモンド形状の方 では110万メッシュ ・ セルとなった。 図5に伝送損失の違いを示 す。 横断面が長方形の回路パターンはアーモンド形状のものより 周波数帯域全域で損失が小さく、 この差は周波数が高くなるほ ど大きくなる。 これらのストリップライン回路は Lim 氏 [9] によって 試験され、 1GHz では断面がアーモンド形状のパターンの伝送 損失は、 長方形の伝送損失の1.3倍であることが分かった。 図6a.回路パターンの横断面が長方形の場合の磁界分布 図6a と図6b の磁界分布は、 2種類のパターン断面形状の電 流密度の違いについて考えるヒントをくれる。 両方の回路パター ンで磁界の集中があるので、 その角 (先端) に電量密度が集 中する。 回路パターン横断面が長方形の図6a と比べると、 図6 b のアーモンド形状の両端に磁界/電流密度の高いレベル集中 が観られる。 導体損失は、 電線の導電表面によって電力が消費されること に起因する。 低損失誘電体基板上のマイクロストリップ線の挿入 損失は、 導体損失によって支配されることが多い。 一般的に、 これらの損失構成要素全ては、 率は異なるもの interference-technology.jp 図6b.回路パターンの横断面がアーモンド形状の場合の磁界分布 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 67 試験 GHz帯挿入損失構成要素のシミュレーション 電力(実効値) ワット(値は dB 表示) 導体損失 誘電体損失 電力許容値 周波数(GHz) 図7.ストリップライン回路の断面形状が長方形の損失構成要素。ストリップライン構造の放射性損失は、多くの場合は小さくて、このときは損失ゼロと見なせる。 のケースでは損失ゼロと見なせる。 [3]A. R. Djordjevic, R. M. Biljic, V. D. Likar-Smiljanic, and すべてのシミュレーションにおいて、 各モデルのために特定の T. K. Sarkar“ Wideband Frequency-Domain Characterization 仮定が作られる。 しばしば物質はマコ ・ スケール (maco scale) of FR-4 and Time-Domain Causality” IEEE Transaction on で、 欠陥が無く、 均一だと考えられている。 これは、 何時でも真 Electromagnetic Compatibility, Vol. 43, No. 4, Nov 2001, pp. 実だとは限らないので、 物質と加工に応じて物質の効果をさらに 662-667. 考慮することが必要である。 [4] J. D. Kraus and D. A. Fleisch, Electromagnetics with applications, 5th Edition McGraw-Hill International Editions, 結論 1999, p 35-115. すべての損失構成要素が網羅されているときのみ、 挿入損失 は正確にシミュレーションされる。 これは、 しばしば、 物質の特 性の知識に依存した、 誘電体損失の要素を適切にパラメータ化 [5] E. L. Barsotti, Effect of Strip Edge Shape on Microstrip Conductor Loss, MS Thesis University of Colorado 1990. (誘電正接 (tan δ)) して、 数値計算において、 特性が複製でき る適切なモデルを見つけ出すことを含む。 これにはよく、 物質特性の知識および数値計算において特性 を複製する適切なモデルの発見に依存するような誘電体損失要 [6]J. Meixner "The behavior of electromagnetic fields at edges", IEEE Trans. Antennas Propagat., vol. AP-20, pp.442 -446 1972. 素の適切なパラメータ化 (誘電正接 : tan δ) が含まれる。 ソル バ領域が異なれば、 物質の特性を複製する方法も異なる。 [7] B. Curran , I . Ndip, S . G ut towski , H . Reichl , "A 信号回路パターンの形状は、 導体損失に大きく影響すること Methodology for Combined Modeling of Skin, Proximity, Edge, もあるので、 全体の挿入損失に影響を与える。 これは、 回路パ and Surface Roughness Effects," Microwave Theory and ターンの横断面形状だけが違い、他は全て同じだとしても、異なっ Techniques, IEEE Transactions on , vol.58, no.9, pp.2448-2455, た導体損失を持つ2つの回路パターンにより図示されている。 導 Sept. 2010 doi: 10.1109/TMTT.2010.2058271 体損失は、 導体の輪郭 / 角 (先端) などの幾何学的形状の影 響を捉えず表面インピーダンスを用いる方法で、 しばしば数値的 に計算されている。 [8]CST STUDIO SUITE ™ , CST AG, Germany, www.cst.com. [9]M. Lim, J. Wyk“ Impact of Conductor Cross-Sectional Shape on Component Performance and Total Losses in a Microsystem” iMAPS/ACerS International Conference and 参考文献 [1]S. P. Morgan,“ Effects of surface roughness on eddy Exhibition on Ceramic Microsystems Technologies (CICMT) 2006. ■ current losses at microwave frequencies,” J. Applied Physics, vol. 20, Apr. 1949, pp. 352-362. [2]E. Hammerstad, Ǿ. Jensen “accurate models of computer aided microstrip design” IEEE MTT-S May 1980, pp. 407-409. 68 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015年版ガイドブック 試験 R adasky 2014年1月号 掲載 電磁気の「三大脅威」と重要な社会基盤の復旧 Dr. William A. Radasky Ph.D., P.E. Metatech Corporation 用可能だとわかっているからである。 保護については、 電磁妨害 (EMI) を 引き起こす日常的なその他の 「問題」 の はじめに 電 磁 気 (EM) の 3 つ の 深 刻 な 動送信機器 (例えば携帯電話、 タブレッ 脅威を記述するために、 著者 ト 他 ) が急 増 し、 WIMAX、 RFID、 自動 が 初 め て 「三 大 脅 威 (triple 車レーダーなど高い周波数で動作する送 threat)」 という表現を使ったのは2009 信機が追加されている状況がある。 さら 年である。 これは、 高層大気圏 (宇宙) に、 個々のコンピュータ機器を新しく設計 での核爆発によって作り出される高高度 する際には、 こういった 「新しい」 日常的 電磁パルス (HEMP)、 犯罪者やテロリス な電磁的脅威から、 一定レベルの EMC トが使う電磁兵器によって作り出される意 イミュニティを実現することを考慮しなけ 図的電磁妨害 (IEMI)、 太陽活動が引き ればならない。 EMC 分野では周知の通 起こす強烈な磁気嵐の3つで、 これらの り、 高い周波数は小さな継ぎ目 (開口部) 脅威から商用設備を保護する方法につい から機器のケース内に簡単に侵入するの て述べる [1]。 以前の記事では、 電磁気の で、 高いレベルの電磁界が回路基板に 三大脅威はそれぞれ発生頻度の低い事 到達することになる。 今まで長年にわたり 象ではあるが、 保護すべき重要な商業資 回路基板の EMC 設計が進歩したとはい 産への影響は非常に深刻だという事実に え、基板の保護対策をしやすくするために、 焦点を絞った。 電磁界レベルを減らす必要がある。 それはさておき、 「三大脅威」 という表 このような理由で、 著者は HEMP およ 現は、 元は、 1900年代初めにアメフト選 び IEMI の高周波部分に対して、 建物ま 手がボールを持って走ること、 ボールを蹴 たは部屋レベルで電磁気防護対策を考慮 ること、 そして投げることから来たものであ する必要があると確信しており、 これは同 る。 この表現は、 スポーツやビジネスで人 時に 「日常的」 な EMI の脅威を減らせる または物が三つの別々の 「能力」 を発揮 利点もある。 そのうえ、 この種の保護を できることを表す。 本記事にこの表現を使 建物の新築あるいは増築のタイミングで うのは何か奇異に感じるかもしれないが、 考慮した場合、 追加コストは数パーセント 3つの電磁気の脅威は、 発生方法は全く 増の範囲で収まる。 違う反面、 保護には類似した方法 interference-technology.jp 存在がよく知られている。 今日では、 移 [1] が適 この 「三大脅威」 に関して2009年以 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 69 試験 電磁気の「三大脅威」と重要な社会基盤の復旧 来、 最も重要な進展の 1 つが、 2013年1月14日にロンドンで英 を発生させ、 ある条件下では電力システムの構成要素が損傷さ 国工学技術学会 (IET) が開催した特別セミナーである。 最近、 せるのか、 そのような事象からの回復がなぜ遅くなるのか、 につ 英国下院国防特別委員会が調査した話題でもあり、 このセミ いても言及した。 私は講演の最後で、 こういった脅威に対する緩 ナーは英国の研究者が電磁気脅威への理解を深める良い機会 和コンセプト (予測や保護、回復を含む) はよく知られているが、 [3] となった 。 英国で IEC HPEM 標準化活動のメンバーとして活動 どんな保護であっても費用対効果の高い方法で設計することが する Anthony Wraight 博士は、このセミナーの主催を引き受け「三 重要であると述べた。 IEC は HEMP および IEMI 保護のために 大脅威」 の潜在的な影響と保護対策に関して広範囲にわたる 規格を開発しているが、 その詳細についてはセミナー後半の講 技術的なプレゼンテーションを成功裏に実施した。 本記事では、 演で触れることになる。 読者にセミナーの要約と詳細情報が掲載されたリンク情報を掲 RAL Space の Mike Hapgood 教授は、 非常に興味深い太陽 フレアのビデオを見せて、 太陽がもたらす宇宙天気の概要につ 載している。 いて講演した。 Hapgood 教授は、史実に基づく太陽活動の例と、 セミナープログラム 表題 : 極めて強い電磁気 – 社会基盤への三大脅威 それが地球に与える影響についても概説した。 教授はこういった [2] 1.歓迎の挨拶と開催に当たって Anthony Wraight博士 2.基調講演:重要な社会基盤への三大脅威 Metatech、William Radasky博士 3.宇宙天気~自然界にある電磁気の危険 RAL Space、Mike Hapgood教授, 4.英国の送電網に対する地磁気妨害 National Grid、Andrew Richards博士, 5.英国の高電圧送電網における極めて強い地磁気に よる誘導電流の予測 The British Geological Survey、Ciarán Beggan博士, 6.IEMI源研究における進展調査 University of New Mexico、 Edl Schamiloglu教授 7.意図的なEMI~スウェーデンにおける研究・試験・脆弱 性評価の経験 より Saab AB and Royal Inst. of Technology (KTH)、 Mats Bäckström教授 8.重要な社会基盤に対する三大脅威の潜在的意味 QinetiQ、Colin Harper氏 9.STRUCTURESプロジェクト(重要な社会基盤の電磁気 攻撃に対する復元力の改善戦略) University of York、John Dawson博士 10.EMP事象に対するシステムの危険性と復元力の 理解と管理 CMC、Andy Titley氏 および Parsons Brinckerhoff、 James Kimmance博士 11.規格適用によるHEMPやIEMIからの社会基盤保護 QinetiQ、Richard Hoad博士 プレゼンテーションの内容について セミナー主催者の Anthony Wraight 博士は、 まずセミナーの 目的を紹介し、 講演が電磁気の三大脅威の説明から始まる論 理的構成であることを説明した。 その後に、 宇宙天気への脅威、 英国の高電圧送電網に対する磁気嵐の脅威に対処する講演が 3つあり、 次の2つは IEMI 関連。 それから、 電磁気の脅威への 対応策、 また保護と復元力をどのように向上させるかについて3 つの講演が続いた。 当日最後の講演は、 このような電磁気の脅 威に関連した規格作成活動についてであった。 著者は基調講演者になる栄誉に預かり、 3つの脅威の電磁 環境の特徴について発生の仕組み、 時間波形、 周波数成分、 影響するそれぞれの地域という観点から紹介した。 私は電磁気 の三大脅威のそれぞれが、 どうやって広域の電力システム停止 70 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 事象によって理解が深まると考えたのである。 また、 大衆的メ ディアは、 理解を深める助けにならないことが多いとも指摘した。 荷電粒子が地球に到達する前に太陽の事象から起こる可能性 を誇大に報道するからである。 この太陽周期において最近、 太 陽事象発生時に地球への影響があったが、 比較的小さなもの だったにもかかわらず、人々は太陽の脅威が 「大袈裟」 だと思っ てしまう。 残念なことに、 過去に強烈な磁気嵐が起こったこと、 そしていつか再び起こることを知っているからだ。 Hapgood 教授 は、 メディアによる問題はさておき、 やってくる磁気嵐を科学者 が正確に評価し、 重要な社会基盤の状況がどうなるかについて の認識を広めることが重要であると力説した。 UK National Grid の Andrew Richards 博士は、 地球上に磁 気嵐が 「到達する」 ことによって起こる異なったタイプの影響に まつわる話で講演の口火を切った。 次に、 時間変化する地球 磁場が長い高電圧送電線にどのように連結し、 厳しい状況下で どうやって大きなトランスに磁束の漏れや不安定な電圧、 歪んだ AC 波形、 壊滅的破損などの問題を発生させるのか、 そのプロ セスについて話した。 また1400個以上のトランスを持つ国内高 電圧送電網についての磁気嵐研究結果概要も発表した。 研究結果は、 各トランスを設計タイプ、 使用年数、 さまざまな 磁気嵐のシナリオにおいて高いレベルの地磁気誘導電流 (GIC: Geomagnetically Induced Current) が観測される可能性に基づ き、 危険度に対応したクラス分けを行ったものである。 Richards 博士は、 運転操作および工学的対応の両方で磁気嵐の影響を 軽減する計画で講演を締めくくった。 次 の 講 演 者 は、 The British Geological Survey の Ciarán Beggan 博士で、 英国の高電圧送電網内最大の地磁気誘導電 流 (GIC) 発生と、 この現象の計算について話した。 博士は、 地球の電界の計算過程は主として dH/dt (水平成分) と局地的 な地球の導電率に依存することを指摘した。 そのアプローチは 周波数領域で問題を解決することで、 時間ドメインの磁場変動 のフーリエ解析を必要とする。 英国送電網のモデリングは、 準 備的なモデルおよび最近の詳細な計算モデルという点から説明 され、 このモデルを使用して将来起こる可能性がある磁気嵐の 極端な例を確率的な見込みから検討された。 HEMP 末期(E3)[4] において可能性のある影響についても解説し、 それより短いパ ルス幅が原因で、 多くのトランスを損傷させるよりも、 急速な停 2015年版ガイドブック 試験 R adasky 電になる可能性が高いと結論づけた。 険を適切に評価するためには、 その性質、 可能性、 結果、 不 Edl Schamiloglu 教授による次の講演は IEMI に対する対処に 確かさを理解することが重要であると指摘。 また、 直ちに認識 関するもので、 意図的電磁妨害 (IEMI) の研究の進展につい できる周波数および因果関係とは異なる 「新たに発生する危険 てである。 Schamiloglu 教授は、 高電力マイクロ波 (HPM) を発 (emergent risks)」 という用語について話した。 この危険は新 生させ IEMI 兵器から発射する可能生のある狭帯域の発生源を 技術と社会への新しい依存性に関連するので 「新たに発生する 調査。 IEMI 兵器のピーク電力対動作周波数に関する狭帯域発 (emerging)」という用語が使われる。この新たに発生する危険は、 生源のさまざまな種類の特性について説明し、 さらに1940年か データまたは統計値の欠如、 そして脅威が発生した場合の因果 ら現在までの、 この種の発生源のピーク電力容量が歴史的に増 関係のある周波数と大きさを推定することが困難になる特徴も 加していることを話した。 講演の最後には、 最近の IEMI 発生源 持ち合わせている。 さらに、 不確かさの重要な役割と、 危険を がどんどん小型化されている状況下で商業施設が IEMI の脅威 評価する能力にどんな影響を及ぼすことが可能か、 についての に遭遇する懸念を述べた。 議論があった。 その後、 危険を評価するためにさまざまな三大 次に Mats Bäckström 博士が一般市民の社会基盤に対する 脅威を適切な背後関係に入れる方法を述べた。 意図的電磁妨害 (IEMI) の脅威の背景について発表し、 過去 特別セミナー最後の講演者は QinetiQ の Richard Hoad 博士 25年間にわたりスウェーデンの国防コミュニティ内で実行された で、 いくつかの国際規格作成組織が達成した規格作成業務に IEMI の総括的な研究開発の概要について話した。 狭帯域と広 ついて発表した。 規格が最も多く取り扱うのは、 HEMP および 帯域の波形など、 放射と伝導の脅威が話題となった。 またフロ IEM 関連の脅威となる波形、 脅威による機器 ・ システムへの影 ント ・ ドア (例えば帯域内のアンテナ) とバック ・ ドア (非意図 響、 耐性または脆弱性の試験方法、 保護方法などで、 ジュネー 的経路) の結合による相互作用の問題も取り上げた。 標準的な ブの国際電気標準会議 (IEC) で作成されたものである。 Hoad 市販電子機器の性能を評価するために長年にわたってスウェー 博士は IEC SC 77C のセクレタリーで、こういった規格を作成した。 デンで実行された、 いくつかの電磁感受性の研究についても概 また HEMP および IEMI の脅威に対して電気通信設備を保護す 説した。 Bäckström 博士は最後に、 コミュニティが将来、 機器 る観点から、 ITU-T の仕事についても言及し、 高電圧発電所の の特定部分だけでなく、 全システムへの影響について研究する 制御用電子機器に対する IEMI の脅威について評価する Cigré 必要があると結論づけた。 の仕事についても発表した。 こういった強烈な電磁気の脅威に 続 く3 つ の 講 演 は、 強 力 な 電 磁 界 の 影 響 を 扱 って お り、 対する保護設計方法は電磁気学専門家集団では既知である点 QinetiQ の Colin Harper 氏は、 現代社会の機能に対する三大 が強調されたが、 保護を必要とする要求事項とレベルを評価す 脅威の評価方法の説明から話を始めた。 こういった厳しい電磁 ることが必要である。 的脅威に対処して、 米国 EMP Comission および米議会法案の いくつかが実行した業績の一部を概説し、 商用システムに対す る IEMI 攻撃について文書化された例を取り上げた。 続けて、 ス 結論 電磁気の三大脅威は長年にわたり論じられてきたが、 ロンド マートグリッドは自身の動作に要求される複雑な通信能力のせい ンで行われたこの 1 日セミナーにおいて、 英国および各国にて で、犯罪者にとって 「楽な標的」 になる可能性があると指摘した。 進行中の技術面での業績をアップデートすることに成功したのは 講演の最後では、 IEMI 発生源の技術的能力、 コスト、 それらを 特筆すべきである。 関心を持った人は、 理解を深めるためにプ 使用した結果生じる影響の種類などいくつかの要因をともに考慮 レゼンテーション資料をダウンロードして読むことを勧めたい (最 する必要があると述べた。 この情報は、 各々の状況で保護の適 初に下記の参考文献 [2] のリンクをクリックすること)。 著者は、 切なレベルを定めるために必要である。 この重要な問題に関する現在の進展を正確に把握するため、 今 York 大 学 の John Dawson 博 士 は、 重 要 な 社 会 基 盤 が 回のようなセミナーが繰り返し開催されることを期待している。 電磁 気 攻 撃 を受け た時の 復 元力改善戦 略 (STRUCTURES: Strategies for The impRovement of critical infrastrUCTUre Resilience to Electromagnetic attackS ) の新 EU プロジェクト 参考文献 [1] W. Radasky,“ Protection of commercial installations from the について講演した。 これは2012年7月に開始された3年間のプ “ triple threat” of HEMP, IEMI, and severe geomagnetic storms,” ロジェクトで、 2015年6月までに完了する予定である。 プロジェ Interference Technology EMC Directory and Design Guide 2009, クトには、 12人のパートナーと数人のエンドユーザーが参加して April 2009. [2] http://www.theiet.org/communities/electromagnetics/tripleいる。 プロジェクトの目的は、 IEMI の既存研究収集、 重要な社 threat/smart-grid-threat.cfm 会基盤への危険分析、 保護方法と検出方法の評価、 エンドユー [3] House of Commons Defence Committee,“ Developing ザーと政策立案者のための指針作成、 プロジェクトにおけるエン Threats: Electro-Magnetic Pulses (EMP) ,” HC1552, 22 February ドユーザーとの相互交流などである。 2012. Link: http://www.publications.parliament.uk/pa/cm201012/ CMC の Andrew Titley 氏 と Parsons Brinckerhoff の James cmselect/cmdfence/1552/1552.pdf Kimmance 博士は、 社会への高いリスクを評価し、 管理する方 [4] Intereference Technology 日本語版 2012 年 5 月号 (32 号) 法について、 それぞれの見解を発表した。 特定の脅威による危 記事 「高強度電磁界 (HPEM) のスマートグリッドに対する脅威 ■ interference-technology.jp INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 71 試験 梱包によるESDリスクの実態 2014年5月号 掲載 ESDに弱いデバイスの帯電の発生: 梱包によるESDリスクの実態 Bob Vermillion CPP/Fellow Certified ESD & Product Safety Control Engineer-iNARTE RMV Technology Group, LLC NASA-Ames Research Center (RH) で は、 波 型 ク ラ フ ト 紙 の 電 圧 が 12,870 ボルトでピークに達した。 No.3 の 漂白された白いライナーでは 16,790 ボル トが生じた注 1。 輸送中や配送中、 典型的なコロラドの 冬、 あるいはカリフォルニアのサンタ ・ ア ナウインドが吹く状況下では、 相対湿度 N ASA ケネディ宇宙センター所属 は4パーセントを割ることがある。 飛行中 の Ray Gompf 博 士 と 筆 者 は、 の航空機キャビンでは、 相対湿度が20 数年 前、 ク ラフト 紙 と 漂白した 分後に 60%から 9.33%に落ちた (図1参 B フルート波型基材でできた 7 × 7 インチ 照)。 7 × 7 インチの波形クラフト紙のシー (約 18 × 18cm) の ESD 段ボールについ トは、 -4,403 ボルト帯電した。 離陸前、 て、 摩擦による帯電状況を低い相対湿度 この同じシートの帯電は、 10ボルト未満 (RH) 環境下で評価した。 相対湿度 45% だった。 (RH) では、 全サンプルでピーク100ボル 従来、 筆者の現場測定では、 相対湿 ト未満の電 圧が発生。 しかし相対湿 度 度 が 70 ~ 30 % の 静電 放 電 (ESD) 安 12 % 全領域で、 波形ボール紙は 100 ボルト未 満の測定値を得た。 しかし、 アジア ・ 太 平洋地域で使われる円網抄紙機(cylinder machine : 紙を漉く機械) で生 産された 波形ライナーに対する最近の現場試験で は、 100ボルトを越える結果が出た。 ク ラフト波形段 ボール原紙の USA 等 級の含水量は約 5%、 高くて 9%で、 灰 色がかった白色の1番と3番のライナーは 6 ~ 7 %で あ る。 波 形 中芯 (corrugated 図1.飛行中の低い湿度 72 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 注 1: 「A STUDY OF ESD CORRUGATED」Bob Vermillion(ARP Engineering 社 CPP、 Certified ESD Engineer NARTE) & Larry Fromm(Hewlett-Packard 社 PE)1999 年 9 月 2015年版ガイドブック 試験 vermillion 図2.アメリカおよびヨーロッパの製紙工程 図3.アジア太平洋地域の製紙工程(円網抄紙機) medium) の含水量は 5 ~ 7%である。 紙の水分による弾力性 対湿度 40%の比較試験では、 抵抗試験はボール紙が十分な の問題は、 相対湿度が 5%未満で発生しうる。 水分を含んでいるかどうかを区別する際に1つの方法を用いる。 豊富な森林地帯、 製紙工場、 箱生産能力を持つ USA およ 波形外装ライナーの含水量が 5%あるいはそれ以上になると、 び EU の総合製紙会社の多くは、 John Gamble 氏が1801年に 帯電量が低くなる可能性が大きくなる。 したがって、 表1で示す 特許取得した長網抄紙機製紙工程を採用している。 長網抄紙 ように表面抵抗と相対湿度の間には関連性がある。 機製のボール紙は、 木材パルプ、 繊維、 水、 そして強度を出す 故 John Kolyer 氏 (元ボーイング社勤務) が執筆した 「ESD [2] によれば、 相対湿度が変動するとき、 湿度依 ため湿気を保持して整えられた木質繊維などの添加物から成る from A to Z」 均質な混合物である。 存的な材料の表面抵抗は上下する。 アジア太平洋地 域の森林地帯の大部分は、 長期に渡り減 注意事項 : 静電気放散性を失う標準的な抵抗値の上限とし 少し続けている。 円網抄紙機の製紙工程 (1809年に John て ANSI/ESD S541 では、 1.0 × 1011 オームを掲載している。 し Dickinson 氏によって発明された) は、 新聞紙やボロ布、 竹、 リ かし実際問題として輸送 ・ 取り扱い時に乾いた空気に曝される サイクル段ボールなどから成る多層波形ライナー ・ シートを生産 こともあるので、 梱包材には低いレベルの切り捨てがしばしば する。 したがって、 水分量の多い新木質繊維の不足により、 帯 要求される。 冷たく乾燥した気候条件では、 相対湿度が 4%か 電しやすいボール紙を作り出す恐れがある。 それ以下になる可能性がある。 図 4 では、 クラフト紙袋が相対 長網抄紙機工程はボール紙の高い水分含有を保証し、 クラフ ト紙外装用ライナーの相対湿度が 15 ~ 30%未満で高い電導性 湿度 13%で -4,970 ボルトおよび 2,403 ボルトに帯電するのが 観察できる。 を持つことが可能となる。 ANSI/ESD STM11.11 (表面抵抗) ま 1990年代半ばから、 著者は帯電している紙の影響につい たは ANSI/ESD STM11.12 (体積抵抗) を使っているボール紙 て紹介を続けている。 さらに著者は最近の現場調査により、 通 の電気抵抗は、 水分を含む波形ライナーの静電気放散環境が 常の相対湿度レベルで円網抄紙機ボール紙が、 かなりの帯電 作り出される。 源であることを確認した。 相対湿度 12%の条件で試験するのと同じライナーを使う相 図5左の画像を見ると、 長網抄紙機製のライナーは木のチッ プが豊富だが、 円網抄紙機製のライナー (右の写真) は、 再 生されたボール紙やインク顔料、 無関係な繊維、 他のよくわか らない成分などが積層化されている。 相対湿度 20%で、 灰色がかった白色の円網抄紙機製の紙 は、 絶縁体の範囲に入る 1.6 × 1011 オームおよび 5,234 ボル トを測定した。 相対湿度 9%では、 16,901 ボルトであった。 対 照的に、 相対湿度 43%だと、 同じ紙で 1.9 x 10 9 オーム、 99 ボルトの発生が測定された。 組織に対するもう1つのリスクは、 受け入れ部門が、 ESD に弱い機器を帯電しやすい段ボールコ ンテナから (イオン化を使用しないで) 移動させる手法である。 つまり 1 フィート (約 30cm) 以下の距離に ESD に弱いデバイ スがあるというリスクを意味する。 表 1. 抵抗値の分類 interference-technology.jp RFID 配置 (図7参照) 中にタグが間違って設置される可能 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 73 試験 梱包によるESDリスクの実態 図5.アメリカおよびヨーロッパのクラフト・ライナー(左)アジア太 平洋クラフト・ライナー(右) 図4. 冬期のクラフト紙袋の帯電 性もあり、 そうなると別のリスクが生じる。 RFID タグが段ボール 図6.アジア太平洋地域で使用される漂白ライナー:室内条件(左)、 低い相対湿度(右) 箱の新しい底部分にくるように、 箱を 「逆さまの」 状態でコンベ ヤに載せて移動することがよくある。 ローラーの1つが (シャフ トとサイドレールの間で) ESD 事象を発生させると、 タグは2つ が 20 ~ 37%まで落ちると ESD 事象が発生。 1 回は相対湿度 あるいはそれ以上の鋼鉄製ローラーの間を通過する。 議論の 43%では 667 ボルト帯電した。 アメリカおよび EU の円網抄紙 余地はあるにせよ、 相対湿度 30%以上で梱包が ESD に弱い 機製のボール紙では相対湿度 9 ~ 15%以下で帯電する。 読 デバイスに悪影響を与えないものとして、 ESD ワークステーショ 者諸氏は、 静電界電圧 (Prox V) と放電 (ESD ピーク電圧) ンの上に段ボール箱を置くことができると考えてほぼ間違いな を何百回も発生させた段ボール製バルクコンテナの低い相対 い。 ボール紙の帯電については考慮すべきである。 例えば図8 湿度でのシミュレーション試験を観察できるだろう。 シールドの に示すように、 円網抄紙機製の段ボール原紙は相対湿度 35% 予防措置が実施されないならば、 電界によって誘導されたモ で -4,450 ボ ル ト 帯 電 し た。 NASA Workmanship NASA-STD デル (FIM) は、 放電によって ESD に弱いデバイスに損害を 8739.6 の16ページでセッション 6.1 の温度と相対湿度レベルを 与えることになる。 18 ~ 30°C (65 ~ 85°F) そして最大相対湿度 70%に設定している。 したがって一見すると、 表2では円網抄ボール紙にはアメリカお ESD に弱いハードウェアに対しては、 最小相対湿度は 30%である。 よびヨーロッパのクラフト紙と漂白されたライナーより高い相対湿 人体モデル (HBM) クラス 0 の ESD に弱いデバイス (<250 ボルト) 度レベルで静電気を発生させる傾向があることを示している については、 最小相対湿度は 40%である。 まとめると、 この分野における詳細な研究は、 円網抄紙機と ESD に弱いデバイスを収納する IC キャリア (ディップチュー ヨーロッパ ・ アメリカの長網抄紙機によって生産されるボール紙 ブ) は、 図8の RFI/EMI が減衰する湿気遮断バッグという静 のグレード比較について過去の事例を集約する目的で実施され 電シールドによって保護されなかった。 結果として、 アジア太平 る。 アジア ・ 太平洋地域で生産されている円網抄紙機製のボー 洋地域の長網抄紙機製のボール紙では、 輸送中の相対湿度 ル紙は、 アメリカとヨーロッパで長網抄紙機によって生産される 表2.クラフト紙と漂白したボール紙の表面抵抗 図7.クラフトRSC*箱上のRFID *訳者注:Regular Slotted Containerの略。米国における0201形段 ボール箱の呼称。 74 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015年版ガイドブック 試験 vermillion 図8.帯電が発生する箱の中にあるESDに弱いデバイス 波形段ボール原紙よりも帯電が発生しやすいと言える。 参考文献 [1]ANSI/ESD S541, ESD Packaging & Materials Standard [2]ESD from A to Z, Second Edition, Kolyer & Watson, Chapman & Hall, 1996 [3]Humidity & Temperature Effects on Surface Resistivity, John Kolyer and Ronald Rushworth, Evaluation Engineering, October 1990, pp. 106-110 図9.相対湿度35%でのアジア太平洋地域のボックスライナー [4]Packaging's Fight Against ESD (RFID) Medical Devicenetwork.com, March 2010 By Doug Smith and Bob Vermillion [5]Military Handbook-263-A , 22 February 1991/2 May 1980, p. 46 [6]Tribocharging Test, NASA, Kennedy Space Center, Ray Gompf, Ph.D., PE [7]RMV Charge Generation Testing, NASA-Ames Research Center, Moffett Field, CA RMV Resistance Testing, NASA-Ames Research Center, Moffett Field, CA Bob Vermillion氏は材料および梱包におけるESD緩和の専門家であ 表3.さまざまな湿度におけるボール紙の帯電電圧 り、ESDA標準化委員会の委員である。彼は2010年、NASA-QLFのサ プライチェーンにおける偽りのESD梱包への疑いを最初に認識し、発表 した。RMVは、NASA-Ames Research Center現場にある。Vermillion氏 は、航空宇宙/防衛、医学、エレクトロニクス関係分野で、製造の際およ び材料の取り扱い時あるいは輸送および長期保管中における先進材 料、梱包の不適合、疑わしい偽物について多くの記事と白書を発表してい る。DOD、DOE、NASAなどから、材料および梱包に対するサプライヤにつ いて講演依頼を受けている。RMVは、NASA-AmesにあるNASA認可の ESD研究所である。国際的に有名な執筆者・発明家として、Vermillion氏 はプロレベルのESD梱包セミナーをCal Poly大学(California Polytechnic interference-technology.jp State University)、SJSU(San Jose State University)、UC(University of California)Berkeley校、Loyola Marymount大学、Clemson大学、Oxford 大学向けに開発している。RMVは、ESD材料を試験する第三者機関で あり、訓練およびコンサルタントも行っている。Vermillion氏は、SAE G-19 Counterfeit Components(偽造部品委員会)とSAE G-21 Counterfeit Materiel Committees(偽造材料委員会)の主要メンバー。 連絡先は電 話650.964.4792または、bob@esdrmv.com ■ INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 75 試験規格 802.11acデバイス試験 2013年7月号 掲載 802.11acデバイス試験について: FCCガイダンスの解説 David A. Case NCE, NCT (KDB: Knowledge Data Base) を 開 発 することによって、 これらの問題に対処し ている。 かに最新版の規格が計画され こ の ガイダ ンス ノー ト は 業 界 に 対 し、 ても、 時に規格の最新版はあ 機器の試験方法についてガイダンスを提 らゆる点で 最 新技術を決して 供する推奨試験規格や、 TCB がこういっ 完璧に表現していないように思える。 そ た新技術をレビューするガイダンスなどと れが実際に悪いとは言わないが、 新技 共に、 補助的に使われている い 術のいくつかをどうやって試 験 するかに C 63 ワークグループが C 63.10 rev 2 ついて限られた経験しかないので、 事は を投票に送った直後、 FCC は 802.11ac 全く正反対なのである。 したがって、 短 無線に提案された試 験方法について新 期で 解決すべき問題は、 いかに適切な しいガイダンス草案を発行し、 コメントを 製品試験をするかである。 求めた。 802.11ac は、 規格草案に基づ これに取り組むいくつかの方法があり、 いてまだ整理中で市場に対し 準備中の 例 えば 数年 前、 この問 題 が WiMAX に 技術が規格草案に基いていることを考え 存在したが、 メーカー数社が集まり、 顧 ると、 これを規格に加えるのは、 よく見 客のデバイス試 験用に暫定的手順を開 ても時期尚早であろう。 発した際、 問題は部分的に解決された。 したがって、 これで発行された KDB に FCC が この 件 に つ いて 綿 密 に 調 査 し、 より、 TCB レビュワーも含めメーカーから その手順はある特定の構成を試 験 する 試験所までの業界関係者がこういった製 ために使うことができた。 品の試験経験を積むことが可能になり、 米 国 の 連 邦 通 信 委 員 会 (FCC) 認 その結果、 規格の今後のバージ ョンに 証部門は、 多種多様な試験技術につい 将来採用するため KDB そのものを改善 てガイダンス ノート の知 識 デー タベース することができるようになった。 76 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015年版ガイドブック 試験規格 Case 図1.IEEE 802.11ac デバイスの5~6 GHz帯域内米国動作チャンネル 要求事項 システムを試 験 する前に、 802.11ac が 正確に何であるか、 きちんと理解する必要がある。 一般的な試験要求事項に関す る限り、ほとんどの場合、我々が 802.11 b, g, n または 802.11 a, n 用に使用する現在の手順は、 一般的に十分である。 しかし 802.11n に現在許されている最大帯域幅 40MHz と比 較すると、 802.11ac は、 80 MHz と 160MHz のチャンネル帯域 ナや DFS の試験について草案作成した他の KDB と同様、 C 63.10 規格について補助的な試験に用いる必要がある。 起草した 802.11ac ガイダンスは、 2.4 GHz 帯と 5GHz 帯だ けでなく、 公安の 4.9 GHz 帯についても対応した。 802.11ac 認証が 現在必要としているのは、 FCC のファイリ ングあるいは TCB PBA (Permit But Ask) 手順を通すかの、 どちらかである。 幅の使用を許容している。 つまり、これら増加した帯域幅によっ て、 いくつか問題が起こる。 第1に、 試験機器の帯域幅のいくつかを超える、 これらの広 帯域信号を測定する点である。 第2に、 より広い広帯域が要求するだろう点は、 チャンネル 考慮すべき 802.11ac の問題 802.11ac 試験は試験エンジニアにある課題を突きつけるだ ろう。 課題とは下記の通りである。 A) チャンネル帯域幅が 160 MHz まで が特定の帯域内において許容されたスペクトラム使用を超える B) 隣接していない 80MHz プラス 80 MHz チャンネル こと、 そしてそれ相応にチャンネルが異なる技術規定要求にカ C) 8個までの MiMo アンテナ出力を許容 バーされる周波数内で動作するだろうということである。 D) 高い次数の 256K QAM 変調 802.11ac によって直面させられる課題は、 いくつかのケース E) 周波数帯域間の新チャンネル動作 において、 さまざまな規制制度の要求を修正したり、 こういった 考慮すべき規定の問題は多いが、 まずチャンネル帯域幅が 条件下で動作を許容する方法についてガイダンスを適合させる 2つの異なる周波数帯域に分かれた場合、 両方の帯域につい 必要性などである。 ての要求が必要である。 チャンネルが U-NII と U-NII-2 と呼 FCC は KDB の #.644545 について、 このガイダンスを発行 することによって、 対処した。 こ の ガイダ ンス は、 FCC が DTS、 U-NII、 スマー トア ン テ interference-technology.jp ばれる周波数帯の間に入る場合、 動作は室内のみの使用に 制限される。 動的周波数 選択 (DFS) 動作のための必要事項は、 DFS INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 77 試験規格 802.11acデバイス試験 周波数範囲内に入るチャンネルからの信号のどの部分も全て も、 FCC 規則のセクション 15.215 (c) により、 5.25GHz 超で 適用対象となる。 20dB 下がっていなければならない。 エミッションが意図的に KDB 443999 に従って、5600-5650 MH z の飛行場ドプラー 気象レーダーの周波数帯内での作動は禁止されており、 そうな 5.25-5.35 GHz 帯域に拡大した場合、 DFS と TPC を FCC 規 則のセクション 15.407 (h) により実施しなければならない。 ると1チャンネルがその周波数帯全体にわたり動作することも、 (ii) 5.25-5.35 GHz 帯域 で 動 作し、 室内動 作に制 限され どれかのチャンネルが同帯域内に入ることもできない。 参照さ るデバ イス の た め に、 ピー ク EIRP 限 度 値 27 dBm/MHz を れる KDB のすべての要求を適用しなければならない。 U-NII 帯、 すなわち 5.15-5.35 GHz 帯域の低い方のペアの外 CFR 47 パート 15.247 に従って 5725 – 5850 MHz 帯域で動 側に適用する。 作する場合、 CFR 47 パート 15.407 規則に従って 5725 -5825 (iii) 5.25-5.35 GHz 帯域内で動作し、 室内動作に制限さ MHz 帯域においても同時に動作することはできない。 FCC が、 れないデバイスのために、 5.25-5.35 GHz 帯域の外側 (すな 広いチャンネル用の 5725- 5850 MHz 帯域 (注 : 5725- 5850 わち、帯域の外側と 5.25GHz 以下にスプリアス限度値を適用) MHz 帯域内の 20MHz パート 15.407 チャンネルは動作不可) にはピーク EIRP 限度値として -27 dBm/MHz を適用する。 の全帯域内で動作させる事を許容するような、 パート 15.407 したがって、 試験に取りかかる際、 チャンネル帯域幅 (BW) の 5725 – 5850 MHz バンド内で動作させるための代替試験手 と占有周波数幅 (Occupied BW) 次第で 帯域外エミッ ション 順の KDB も発行したことに注意すべきである。 (OOBE: Out-of-band emission) 試験は、 以前の 802.11n デ エ ミッ シ ョンに限って 言えば、 KDB から引用され るように、 特にバンド外のエミッションに関して KDB を綿密に調査する必 バイスのように単純ではない。 送信機の出力電力は、 チャンネルの広い帯域での試験対応 が必要なため、 難問でもある。 さらにチャンネル電力が異なる 要がある。 (i) 5.15-5.25 GHz バ ンド内で動作するデバイスについて、 最大電力レベルを持つ不確定な帯域間にありそうだと仮定す -27dBm/MHz のピー クの EIRP 制限は、 U-NII バ ンド (す な れば、 実行される電力全体が最大電力スペクトル密度を超え わち 5.15-5.35GHz) の低い方のペアの外側に 適 用する。 し ないことを立証する必要がある。 802.11ac は8個までのアンテ かし、 5.25-5.35GHz バンドに意図的に拡大しないどんな送信 ナポートを許容するので、 適合を保証するためにスマートアン テナや MiMo アンテナに関して、 この DB だけでなく KDB のガ イダンスを慎重に理解する必要がある。 802.11n や他の技術と同様、 全ての従来モードを試験する アン プリファイア レ ス キュー 隊 必要があるが、 それはむしろ大きなレポートに役立つ。 この製 品が性能基準契約 (PBA: Performance Based Agreement) 過程で、 認可されなければならないとしたら、 試験前に認可を 得るために、 試験プログラムを TCB と FCC によって実行する 見積り、アップグレード 修理 - サービスはそれ だけではありません! IFI社のサービス 精神はお客様の アンプご購入後 必要がある。 また、 KDB のガイダンスは現時点で SAR 問題に対応してい ないため、 将来の対応に向けた何の情報も得られない。 も続きます。 我が社の 注 : ANSI C 63.10 Rev 2 の最新草案バージョンは投票中で、 広帯域 技術専門家は の信号を測ることに若干の背景を提供するだけでなく、 MiMo アンテナ ోࡔࠞ㧒ࡕ࠺࡞ あらゆるブランド その他のメーカー を試験に対する問題のいくつかに対処している。 のアンプの修理 またアップグレード David A. Case氏(NCE, NCT KB8GXI)は、Cisco Systemsで規制や を25年に渡リ提供 規格対応を担当する技術リーダーである。WL AN、3G、WiMA Xその他 して参りました。 技術のための無線アドレス取得問題を主に手がけている。US World お見積りは今すぐ Radio Conference Advisory Committeeの委員で、Mobile Manufactur- お電話で。 ers Forum Standards Workgroup委員長、Wi-Fi Alliance Health and Science Group副委員長、ITI TC 8 Wireless work group副委員長、C 63.26 licensed wireless test standards group委員を務めている。■ 78 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015年版ガイドブック EMC関連企業一覧 company directory ITEM ™ 株式会社エーイーティー 〒215-0033 神奈川県川崎市麻生区栗木 2-7-6 TEL:044-980-0505 info@aetjapan.com ・ www.aetjapan.com ● ハードウェア(誘電率測定装置、高周波測 定システム、電子銃・イオン源、光電圧装置・ 部品、加速器・X線・放射線、マイクロ波・ミリ 波応用装置、マイクロ波コンポーネント、プラ ズマ装置)、ソフトウェア、解析サービス、設 計・試作サービス、測定サービス、技術コン サルティングおよび教育 岡谷電機産業株式会社 〒158-8543 東京都世田谷区等々力6-16-9 TEL:03-4544-7040・www.okayaelec.co.jp ● ノイズ製品・サージ製品・表示製品・コイル フィルタ(電源雑防用フィルムキャパシタ、スナ バキャパシタ、アクティブフィルタ用キャパシタ、 サージアブソーバ・サージプロテクタ、その他) 沖電線株式会社 〒211-8585 神奈川県川崎市中原区下小田 中2-12-8 TEL:044-754-4360 ・ www.okidensen. co.jp ● 電 線・ケーブル、ワイヤカット放電加工 機用電極線、フレキシブルプリント配線板 (FPC)、光ケーブル、コネクタ、放熱製品 株式会社オータマ 〒206-0811 東京都稲城市押立1744 TEL:042-377-4311 ・ www.ohtama.co.jp ● 磁気シールド・遮蔽部品、磁気シールドル ーム・チャンバー、磁場キャンセラー、磁界環 境測定サービス、熱処理 菊水電子工業株式会社 〒224-0023 神奈川県横浜市都筑区東山 田1-1-3 TEL:045-593-7530 (首都圏営業所) hanbai@kikusui.co.jp ・ www.kikusui.co.jp ● 電源機器(直流電源・交流電源・パワーサ プライコントローラ、電子負荷、バッテリテス タ)、電子測定器(EMC関連試験機器:車載 電子機器用EMC試験システム、 ・静電気放電 シミュレータ、安全関連試験機器、高調波・フ リッカ、ジッタメータ、信号発生器、FC試験、そ の他測定器、エアロフレックス製品、その他) 株式会社テクノサイエンスジャパン 〒158-0096 東京都世田谷区玉川台2-28-5 コ ンド玉川台 TEL:03-5717-6130 ・ www.tsjcorp.co.jp ● 【EMI/EMS測定関連製品】自動車測定ソフ トウェア、RFパワーアンプ、ジェネレータ各種、 【電源装置関連製品他】パワーアナライザ、ト ランスフォーマーテスタ・電力品質監視装置 自動測定システム(一般電子機器、車両/車載 機器、TV/VTR/AUDIO機器、その他)、測定器 (アンテナ、LISN、EMIテストデバイス、基本 信号発生器、G・TEMセル、EMIレシーバ、電界 センサ、その他)、RFパワーアンプ、パワーアナ ライザ、ノイズシミュレータ、ソフトウェア(測 定) interference-technology.jp テセック株式会社 〒150-0011 東京都渋谷区東2-21-2CKヒル ズ103号 TEL:03-5774 -5771 japansales@teseq.com ・ www.teseq.jp ● EMCエミッション・イミュニティ試験器、ケ ーブル・機能試験機器、EMC校正サービス、 車載電子機器用イミュニティ/エミッション 試験システム、BCI、静電気発生器、伝導EMC パルス発生器、ISN、RFパワーアンプ、EMIレシ ーバ、GTEM、バイログアンテナ 株式会社e・オータマ ………………………81 〒215-0033 神奈川県川崎市麻生区栗木 2-8-20 TEL:044-980-2050 ・www.@e-ohtama.jp ● EMC試験、EMCノイズ対策支援、製品安全 試験、電磁環境調査、磁界測定、環境試験、 申請代行 株式会社東陽テクニカ 〒103-8284 東京都中央区八重洲1-1-6 TEL:03-3245-1244 emc@toyo.co.jp ・ www.toyo.co.jp ● EMIテストレシーバ、RFパワーアンプ、EMI 自動測定システム・ソフトウェア、EMS自動試 験システム・ソフトウェア、簡易EMI測定システ ム・ソフトウェア、アンテナパターン測定ソフト ウェア、シールド袋、等 株式会社村田製作所 〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3-29-12 東 京支社 TEL:0120-443-015 (営業本部) www.murata.co.jp ● コンデンサ、インダクタ、電源モジュール、 ノイズ対策部品/EMI除去フィルタ、抵抗機 /サーミスタ、圧電マイクロブロア、リチウム イオン2次電池、ソフトウェア、近距離無線モ ジュール 株式会社リケン環境システム 〒360-0031 埼玉県熊谷市末広4-14-1 TEL:048-525-7233 www.riken-kankyo.com ● 電波暗室・シールドルーム・吸収体・磁気シ ールド・EMC機器装置販売 A.H. Systems, Inc. …………………………表2 9710 Cozycroft Ave., Chatsworth, CA 91311; TEL: +1-818-998-0223・Fax 818-998-6892 sales@ahsystems.com・www.AHSystems.com 担当:Arthur C. Cohen, President;Travis Samuels, Ops. Dir. 【代理店】 株式会社テクノサイエンスジャパン 〒158-0096 東京都世田谷区玉川台2-28-5 コンド玉川台 TEL:03-5717-6130 postmaster@tsjcorp.co.jp www.tsjcorp.co.jp ● アンテナ AR Worldwide RF/Microwave Instrumentation ……………………………2 株式会社TFF 〒108-6106 東京都港区港南2-15-2 品川インターシティB棟 6階 TEL:0120-441-046 ・ jp.tek.com/ ● 汎用計測器、ビデオ計測器、ネットワーク 計測・監視機器などの開発、販売、アフター・ サービス (オシロスコープおよび関連機器、 ロジック・アナライザ、リアルタイム・スペクト ラム・アナライザ、半導体測定機器、無線通信 用測定機器、シグナル・ジェネレータ、TV信号 測定機器、伝送特性/ネットワーク測定機器、 他) 株式会社ノイズ研究所 〒252-0237 神奈川県相模原市中央区千代田1-4-4 TEL:042-712-2031(首都圏営業所) syutoken@noiseken.com ・ www.noiseken.co.jp ● 静電気試験器、半導体用静電気試験器、 ノイズシミュレータ、ファスト・トランジェント /バースト試験器、雷サージ試験器、電源電圧 変動試験器、電磁波解析測定システム、減衰 振動波試験器、車載用過渡サージ試験器、 DC電圧変動試験器、EMCテストシステム、 EMC受託試験 、修理・校正 160 School House Rd., Souderton, PA 18964, USA TEL:+1-215-723-8181 info@arworld.us ・ www.arworld.us 【代理店】 日本オートマティックコントロール株式会社 〒141-0032 東京都品川区大崎1-6-4 新大 崎勧業ビル TEL:03-5434-1600 www.naccjp.com ● RF高出力アンプ、アンテナ、レーザー電界 プローブ Instruments For Industry (IFI) ……………78 903 South Second Street, Ronkonkoma, NY 11779, USA TEL:+1-631-467-8400 ・ Fax:631-467-8558 info@ifi.com ・ www.ifi.com 【代理店】 株式会社テクノサイエンスジャパン 〒158-0096 東京都世田谷区玉川台2-28-5 コンド玉川台 TEL:03-5717-6130 postmaster@tsjcorp.co.jp www.tsjcorp.co.jp ● アンプ、アンテナ、TEMセル、 センサ/プローブ ITEM Media ………………………………表3 【Interference Technology 日本版】事務局 〒215-0033 神奈川県川崎市麻生区栗木 2-8-20 TEL:050-5538-2852 www.interference-technology.jp 【日本広告代理店】 株式会社アド・バイオ 〒135-0016 東京都江東区東陽3-15-3岩 瀬ビル2F TEL:03-6458-6361 www.bio.co.jp 【米国本社】1000 Germantown Pike, Suite F-2, Plymouth Meeting, PA 19462 TEL:+1-484-688-0300 Fax: 484-688-0303 ・ info@interferencetechnology.com www.interferencetechnology.com 【Interference Technology 中国版】 c/o Beijing Hesikang Consulting Co.,Ltd. TEL:+86-10-65250537 ・ Cecilybian_ itc@163.com www.interferencetechnology.cn ・ 担 当: Ritter Wang ● 無料EMCノイズ対策情報誌(英語版・中国 版・日本版) [1] 英語版(オンライン誌&紙媒体にて年 3回発行|EMC Directory & Design・IEEE Symposium Guide・EMC Test & Design Guide) [2] 中国版(紙媒体のみ、隔月発行) [3] 日本版(オンライン誌:隔月発行、紙媒 体:年1回) Montrose Compliance Services, Inc.2353 Mission Glen Dr. Santa Clara, CA 95051-1214, USA TEL:+1- 408-247-5715 ・ FAX:408-247-5714 mmontrose@earthlink.net ・ www.montrosecompliance.com・担当:Mark Montrose, Prin.Consult. ● 電磁適合性・製品安全性コンサルティン グ・デザインサービス、セミナー(パブリック・ プライベート)、プリント基板レイアウトデザ イン、CEテスト研究所(ISO 17025 取得)、ITE先 行・CEコンプライアンスの工業製品 Oerlikon Metco (Canada) Inc. ………………4 10108-114 Street, Fort Saskatchewan, AB, Canada T8L 4R1 TEL:+1 905 309-3240・FAX : +1 905 309-0170 info.metco@oerlikon.com www.oerlikon.com/metco/en/productsservices/coating-materials/conductive-filler/ ● E-Fill™ニッケルグラファイト、ニッケル鍍金 カーボンファイバ、金メッキニッケル、金メッ キニッケルグラファイト Thermo Scientific 200 Research Drive, Wilmington, MA018874442, USA TEL : +1-978-275-0800 ・FAX : 978-275-0850 ron.ahlquist@thermofisher.com・www. thermofisher.com 担当:Ron Ahlquist, Product/Tech Manager 【代理店】 雄山株式会社 〒650-0047 兵庫県神戸市中央区港島南町 1-4-6 TEL : 078-304-5151 info4@oyama-company.co.jp www.oyama-web.com/guide4/ ● [ESD試験装置] MKシリーズ(MM, HBM)、 Orion2(CDM)、Celestron(TLP)、Pegasu s(HMM) (50音順&アルファベット順) INTERFERENCE TECHNOLOGY 日本版 79 index of advertisers REQUEST INFORMATION FROM OUR ADVERTISERS お問い合わせの際は「interference technologyを見て」とお伝えください A.H. SYSTEMS, INC. 表2 AR Worldwide RF/Microwave Instrumentation 2 A.H. SYSTEMS, INC. Cover2 AR Worldwide RF/Microwave Instrumentation 2 株式会社e・オータマ 81 e-OHTAMA, LTD. 81 Instruments For Industry (IFI) 78 Instruments For Industry (IFI) 78 Oerlikon Metco 4 Oerlikon Metco 4 2015 年 保存版 ガイドブック ISSN 0190-0943 ITEM Media e・オータマ Japan Publisher Emeritus Robert D. Goldblum テクニカルスタッフ President Graham S. Kilshaw 遠藤清 Publisher Paul Salotto 藤本昌司 Editor 田路明 Graphic Designer Evan Schmidt 浜野碧 進藤誠一 瀬川真 翻訳 Belinda Stasiukiewicz 編集 編集長 松田昌典 Editorial Assistant Aliza Becker Administrative Manager Product Development Manager Helen S. Flood [ 日本事務局 ] 営業&マーケティング 浜野碧 www.interference-technology.jp USA 1000 Germantown Pike, F-2 Plymouth Meeting, PA 19462-2486 info@interferencetechnology.com TEL:+1-(484) 688-0300・FAX: +1-(484) 688-0303 China, Taiwan, Hong Kong Ritter Wang c/o Beijing Hesikang Consulting Co.,Ltd. TEL:+86-10-6525 0537・Email: Cecilybian_itc@163.com ITEM メディアは正確な情報の提供に最善を尽くしますが、過失および Eileen M. Ambler Marketing Jacqueline Gentile Interference Technology 日本事務局 TEL: 050-5538-2852・FAX: 044-980-2052 怠慢への義務を負わないものとします。これらの情報は刊行時点で最 ● 広告に関するお問い合わせ も新しい情報に基づくものとします。本誌に掲載されている技術情報 Ad・Bio|株式会社 アド・バイオ を利用することにより発生した損害などに関しては、ITEM メディアおよ Interference Technology 日本総合代理店 び著作者は責任を負うことはできませんのでご了承ください。ITEMTM Tel:03-6458-6361・Fax:03-5632-2280 ・ InterferenceTechnology ™ ま た InterferenceTechnology.comTM は Email: item_japan@e-ohtama.jp ITEM メディアの商標です。無断で使用することを禁じます。ITEMTM ・ ● 読者登録のお申し込み InterferenceTechnology ・InterferenceTechnology.com は ITEM メディ www.interference-technology.jp アの著作権によって保護された刊行物であり、内容をいかなる手段に ● 記事へのご意見・お問い合わせ おいて無断で転用することを禁じます。 item_japan@e-ohtama.jp ● 印刷・製本 Copyright © 2014 • ITEM Media • ISSN 0190-0943 株式会社吉田印刷所 80 INTERFERENCE TECHNOLOGY日本版 2015年版ガイドブック 試験 信頼のテストラボ 株式会社e・オータマ EMC 梱包によるESDリスクの実態 e・オータマは、豊富な経験と高い技術力を持つEMC試験所です。 ISO17025に基づいた運営を行っております。 車載EMC 国内外のEMC規制適合に必要な エミッション(EMI)測定 イミュニティ (EMS)試験に対応 オープンテストサイト 設 備 電波暗室(10m法、3m法、簡易) シールドルーム他 防衛・航空 テュフズードオータマ株式会社 信頼の CISPR・ISO規格や、大半の国内外 テストラボ 自動車メーカー規格に対応 申請代行サービス 規格例 ◎ グローバル展開をサポート! CISPR25、 E/eマーク、ISO11452, 世界各国のEMC/製品安全/無線試験&認証取得の代行をいたします。 7637、JASO D 、SAEJ1113 他 ■ 欧州、北米、ロシア、アジア、オセアニアなど、各国への対応可能。 防衛・航空・宇宙関連用途の電子・ 電気機器に必要なEMC試験に対応 規格例 MIL-STD-461,462 NDS C 0011、RTCA/DO-160 JIS W 0812 ■ 特に「韓国向け申請」では多くの実績を有し、高い評価を頂いております。 R T * その他の国についても、ご相談ください。 製品安全 申請代行 技適・認証 各 国 認 証 取 得・適 合 申 請 代 行 サ ー ビ ス で 、ス ピ ー デ ィ な 認 証 取 得 を 提 供 電 波 法・電 気 通 信 事 業 法 の 登 録 機関として技適・認証、SAR測定を 実施。海外認証の申請代行・支援。 ErP指令に基づく待機電力測定 情 報・計 測・医 療 機 器 、半 導 体 製 造 装 置 などの 電 気 安 全 試 験 や 振 動・温 湿 度・防 水 試 験 に 対 応 ErP指令(2009/125/EC) に基づく待機電力測定 www.tuv-ohtama.co.jp 規格例 IEC/EN60601、60825、61010、60950 他 北米、南米、欧州、東アジア、南アジ ア、オセアニア、 アフリカ 他 PC用無線LAN機器、 対象機器例 Bluetooth® 、ZigBee、PHS端末、携帯 電話、 コードレス電話、基地局 EMCノイズ対策 環境・出張試験 教育・情報発信 製 品 開 発 期 間 短 縮 の 鍵 を 握 る ノ イ ズ 対 策 支 援 E M C 出 張 試 験 、電 磁 波 環 境 測 定 対策支援実績例 情報機器、医療機器、産業工作機械、 制御装置、計測機器、車載機器、半導 体製造装置、他 取扱地域例 利用例 ・大型産業機器 ・半導体製造装置 ・工場・建築現場・送電線下の 環境調査 【 教育 】各種セミナー実施 EMC、車載関連、製品安全、 ノイズ対策支援、他 【 情報発信 】 オンラインEMC技術情報誌 「Interference Technology」の当社 エンジニアによる翻訳、および掲載 ■東 京 試 験 所 EMC 044-980-2050 ■ 山 梨 EMC セ ン タ ー EMI測定 055-298-2141 EMS試験 0555-88-2580 芦川試験所 〒 409-3704 山梨県笛吹市芦川町鶯宿 1661 上九一色試験所 〒 409-3712 山梨県甲府市古関町 3415 ■ 東 海 EMC セ ン タ ー 〒 215-0033 神奈川県川崎市麻生区栗木 2-8-20 車載部品EMC試験 0566-26-2890 戸 試 験 所 ■登 EMI測定/無線試験 044-819-8601 TECHNOLOGY日本版 32 INTERFERENCE 〒 448-0008 愛知県刈谷市今岡町吹戸池 68 〒 214-0014 神奈川県川崎市多摩区登戸 294 www.e-ohtama.jp 2014年5月 e - OH TAM A
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