2010 年 10 月 16 日, 日本音響学会聴覚研究会資料,Vol.40,No.8, H-2010-115 [招待講演] 続・はじめての聴覚実験 -ディジタルな世界に棲む人々に伝えたい、 音を鳴らし、測り、聴き比べるときのお約束- 平原 達也† †富山県立大学 工学部 〒939-0398 富山県射水市黒河 5180 E-mail: あらまし †hirahara@pu-toyama.ac.jp 聴覚実験では信号波形をコンピュータ上でディジタル的に作成し、それを D/A 変換器でアナログ電圧信号に変換 し、アナログ音響機器を用いてレベルを調整し、電気音響変換器を用いて音波に変換して被験者に聴かせる。 「情報」化がすす む昨今、アナログアンプやスピーカを作ったりした経験もなく、アナログ信号を扱うノウハウと理論を知らないまま、聴覚実験 を行う「研究者」が増えている。その結果、あまり適切でない方法で音響機器や音信号が扱われることが増えつつあるように思 う。本稿では、音を鳴らしたり、測ったり、聴き比べたりするときに配慮してほしい、アナログ信号を取り扱う上で注意すべき いくつかのことがらについて述べる。 キーワード 聴覚実験,アナログ信号, D/A 変換器,増幅器,電気音響変換器 Getting started in hearing experiment, partⅡ -Analogue knowledge of playing-back, measuring and presenting sound stimuli for digital freaks- Tatsuya HIRAHARA† †Faculty of Engineering, Toyama Prefectural University, 5180 Kurokawa, Imizu, Toyama 939-0398, Japan E-mail: †hirahara@pu-toyama.ac.jp Abstract Modern experimental system for psychological and physiological acoustics research includes a digital computer for generating stimuli signal waveform, a digital-to-analogue converter, analogue audio equipment for adjusting signal levels, and electro-acoustic transducers for presenting sound stimuli. In today's information-oriented society, most newcomers in psychological and physiological acoustics have little experience in building an audio amplifier or a speaker system at home and few opportunities of learning theories of analogue signal-handling equipment at college. As a result, improper handling of analogue signal and analogue equipment in conducting hearing experiments seems to be increasing. This article gives some key "analogue" knowledge of playing-back, measuring and presenting sound stimuli for digital freaks. Keywords hearing experiment,analogue signal,DA converter, amplifier, electro-acoustic transducer ル信号処理は優れている、と。その一方で、ディジタ 1. は じ め に ル信号処理の対象となるアナログ信号の取り扱いにつ コ ン パ ク ト デ ィ ス ク (CD)が 登 場 し た の は 1983 年 。 10 年 後 に は 国 内 の ア ナ ロ グ レ コ ー ド 生 産 数 は 1983 年 い て は 一 昔 前 ほ ど 教 え ら れ る 機 会 が 少 な く な り 、ま た 、 の 0.6 % に ま で 減 少 し 、ア ナ ロ グ か ら デ ィ ジ タ ル へ の 気にされなくなりつつあるように思う。特に情報系の 世 代 交 代 が 一 気 に 進 ん だ 。 そ の CD の 生 産 数 も 近 年 は 学 科 で は こ の 傾 向 が 顕 著 で あ る よ う に 思 う 。そ の 結 果 、 減少している。携帯型ディジタルオーディオプレイヤ あまり適切でない方法で音響機器や音信号が扱われる ーとインターネット配信が普及したからであろう。音 ことが増えつつあるように思う。ディジタル信号処理 楽だけではない。手紙も電話もカメラもビデオも、そ では、電圧や音圧といった物理量との対応関係に気を してテレビや本までもディジデジタル化されつつある。 つかわなくても計算結果が出てくる。しかし、アナロ このようなディジタル・メディア機器の実現は、コ グ信号は物理現象に支配されているので、それを忘れ ると思わぬ落とし穴に陥る。 ンピュータ技術とディジタル信号処理技術抜きには考 えられず、それらについては学校でも充分に教えられ 本稿は日本音響学会誌に執筆した「はじめての聴覚 ている。曰く、コンピュータは万能である、ディジタ 実 験 」 [1] の 続 編 で あ る 。 重 複 す る 部 分 も 多 々 あ る が 、 635 Proc. Auditory Res. Meeting, The Acoustical Society of Japan, Vol. 40, No.8, H-2010-115 2010 年 10 月 16 日, 日本音響学会聴覚研究会資料,Vol.40,No.8, H-2010-115 ページ数制限により同解説で割愛した項目を加えて、 kHz だ け に 成 分 が 認 め ら れ る 。デ ィ ジ タ ル の 世 界 に ひ 音を鳴らしたり、測ったり、聴き比べたりするときに きこもっている場合はこれで何も問題は無い。 配慮してほしい、アナログ信号を取り扱う上で気をつ けた方がよいことがらについて、しつこく述べる。 Sine wave, f = 16 kHz (T = 62.5 μs) 1 Analogue signal Normalized Amplitude 0 2. 聴 覚 実 験 シ ス テ ム と 測 定 器 基本的な聴覚実験システムは、図1に示すような信 号発生器、増幅器、電気音響変換器から成る。信号発 生 器 は PC と D/A 変 換 器 で 、 そ の 出 力 は ア ナ ロ グ 電 気 信号である。増幅器は普通のオーディオアンプで、入 -1 1 Fs = 48 kHz (Ts = 20.8μs) 0 -1 1 Fs = 44.1 kHz (Ts = 22.7μs) 0 -1 出力はともにアナログ電気信号である。そして、電気 0 0.1 音響変換器はイヤホンやラウドスピーカで、アナログ 図2 電気信号を空気の微小な圧力変化である音に換える。 0.2 0.3 Time in ms 0.4 0.5 サンプリング周波数による波形の違い これらに加えて、音圧を測る計測器があれば一応の聴 3.2. D/A 変 換 器 覚実験は実施できる。この他、低周波発振器とオシロ 皆 さ ん は ど の よ う な D/A 変 換 器 を お 使 い だ ろ う か 。 スコープと電子電圧計とアナログフィルタがあれば、 PC 内 蔵 の オ ー デ ィ オ 入 出 力 デ バ イ ス ? PCI オ ー デ ィ オ いろいろな事柄を確認できる。 ボ ー ド や USB オ ー デ ィ オ イ ン タ フ ェ ー ス ? あ る い は 、 結論から言えば、使用する機器の諸特性をあらかじ 計 測 用 D/A 変 換 器 だ ろ う か ? め把握し、信号レベルを管理し、機器を適切に接続し さえすれば、実験システムのハードウエアはどのよう これらは何が違うのだろうか。基本的には大きな差 な機種を用いてもかまわない。一方、計測器類はそれ 異は無い。もちろん価格に応じて、使用している電子 なりの信頼性が必要である。計測した物理量に信頼が 部 品 、 つ ま り 、 D/A 変 換 LSI、 サ ン プ リ ン グ ・ ク ロ ッ おけないと、何を測っているのか分からなくなる。 クの精度、オペアンプ、コンデンサ、抵抗等の電子部 電気音響変換器 品、直流電源の精度などが異なっている。音楽を楽し 信号発生器 増幅器 むのであれば、何を使ってもよいと思う。しかし、こ PC れ ら を 聴 覚 実 験 シ ス テ ム の D/A 変 換 器 と し て 用 い る 場 D/A 合 に は 、 D/A 変 換 器 に 内 蔵 さ れ て い る デ ィ ジ タ ル LPF の 特 性 と 、出 力 の 周 波 数 範 囲 に は 注 意 す る 必 要 が あ る 。 01011000 ディジタル信号 昔 は マ ル チ ビ ッ ト 型 D/A 変 換 器 が 用 い ら れ て い た の アナログ電気信号 音 で、アンチ・エイリアジングおよび信号の補間を行う た め の 急 峻 な 減 衰 特 性 を 持 つ ア ナ ロ グ LPF を 外 部 接 続 図1 す る こ と が 必 須 で あ っ た 。一 方 、最 近 の D/A 変 換 器 は 基本的な聴覚実験システムの構成 ほ と ん ど Δ Σ 型 の DA 変 換 LSI を 用 い て い る 。こ の LSI 3. コ ン ピ ュ ー タ か ら 音 を 出 す では、まず、ディジタル信号をオーバーサンプリング 3.1. 信 号 波 形 をつくる し て 高 い Fs の 信 号 に 変 換 す る が 、そ の 際 に デ ィ ジ タ ル LPF で 補 間 処 理 が 行 わ れ る 。そ の 後 、高 い Fs の 信 号 を コンピュータ上で信号波形の離散数値データを作 成することはディジタル領域の作業で、プログラムと ΔΣ変調器で 1 ビットのパルス密度変調信号に変換し、 サ ン プ リ ン グ 周 波 数 (F s )の 設 定 さ え 間 違 え な け れ ば よ それをアナログ電圧信号に変換して、緩い減衰特性を い 。サ ン プ リ ン グ 定 理 は 信 号 に 含 ま れ る 最 も 高 い 成 分 持 つ ア ナ ロ グ LPF を 通 し て ア ナ ロ グ 信 号 を 出 力 す る 。 の 周 波 数 を F max と す る と 、 2 F max < F s を 満 た す サ ン アップサンプリング時の補間処理を行うディジタ プリング周波数を選べばよいと教えている。可聴音を ル LPF は 、通 過 帯 域 の 平 坦 性 を 確 保 す る た め に ナ イ キ 対 象 と す る の で あ れ ば F max = 20 kHz と す れ ば よ い の ス ト 周 波 数 (Fs/2) で も あ ま り 減 衰 さ せ て い な い も の や 、 で 、 通 常 は F s = 44.1 kHz あ る い は 48 kHz を 用 い る 。 直 線 位 相 性 を 重 視 し た も の や 、応 答 の 因 果 性 (立 ち 上 が 図 2 は 二 つ の F s で 作 成 し た 16 kHz の 正 弦 波 信 号 波 り )を 重 視 し た も の な ど 、LSI に よ っ て 異 な る 。こ れ に つ い て は 使 用 前 に 十 分 に 確 認 す る 必 要 が あ る [ 2 ] 。ま た 、 形 で あ る 。F s = 44.1 お よ び 48 kHz は と て も 正 弦 波 と は 思えない波形が描かれているが、これはサンプリング フルビットのディジタル信号を出力すると、補間処理 の仕業であり、見かけだけのものである。離散フーリ 時 に 波 形 の ピ ー ク が ク リ ッ プ す る こ と も あ る [3]。 計 測 用 D/A 変 換 器 は 直 流 ( DC) か ら Fs/2 ま で の 周 エ 変 換( DFT)し て パ ワ ー ス ペ ク ト ル を 描 く と 当 然 16 636 Proc. Auditory Res. Meeting, The Acoustical Society of Japan, Vol. 40, No.8, H-2010-115 2010 年 10 月 16 日, 日本音響学会聴覚研究会資料,Vol.40,No.8, H-2010-115 波 数 成 分 を 出 力 す る の に 対 し て 、「 オ ー デ ィ オ 」入 出 力 オ ー デ ィ オ イ ン タ フ ェ ー ス 装 置 や 計 測 用 D/A 変 換 器 を デ バ イ ス は 数 Hz 以 下 の 超 低 周 波 成 分 は 出 せ な い 。 例 用いる場合、かなり大きな信号電圧が出力されている え ば USB オ ー デ ィ オ イ ン タ フ ェ ー ス( Edirol, UA-101) ことは意識すべきである。 の D/A 変 換 LSI と 出 力 バ ッ フ ァ ア ン プ の 間 に は 、 100 UA-101 と オ ー デ ィ オ ア ン プ を 接 続 し て 、最 小 可 聴 閾 μF の電解コンデンサ入っていて、このコンデンサと を測るシステムを組んでいたときのことである。正弦 ポ ス ト ア ン プ の 入 力 抵 抗 と で RC 微 分 回 路 を 構 成 し て 波 信 号 を D/A 変 換 し た 信 号 を ア ン プ に 入 力 し た と こ ろ い る 。 そ の た め に 、 UA-101 で 1 Hz の 方 形 波 を 出 力 と 出力音が歪んでしまい、学生らが困り果てていた。オ す る と 、 そ の D/A 変 換 LSI の 出 力 で は 1 Hz の 方 形 波 シロスコープでアンプのヘッドホン端子に現れる信号 電圧が観測されるが、出力端子にはその微分波形に相 の電圧を観測してみると、波形の山がつぶれて平坦に 当 す る 電 圧 が 現 れ る ( 図 3)。 なっていた。フルビットの正弦波信号に対しては、 UA-101 の 出 力 端 子 に は 2.3 Vrms (6.6 Vp-p) も の 正 弦 C 波信号電圧が出力される。この電圧は当該アンプにと デジタル 入力 DAコンバータ LSI ポストアンプ 回路 R Vin アナログ 出力 っては大きすぎ、クリップしていたのである。 3.4. さまざまな信 号 レベル表 示 電 圧 の 単 位 は V で あ る が 、交 流 電 圧 で は そ の 実 効 値 Vout Vrms を 表 し て い る 。 rms は 二 乗 平 均 ( root mean V V t square) の 略 号 で あ る 。 一 方 、 p-p は peak-to-peak の t 略 号 で 、信 号 波 形 の 尖 頭 値( せ ん と う ち )を 意 味 す る 。 正 弦 波 信 号 に 対 し て は Vp-p = 2√2×Vrms、ガ ウ ス ノ イ 図3 オーディオインタフェース装置の出力回路 ズ に 対 し て は Vp-p = 6.6×Vrms で あ る 。 音 響 信 号 を 扱 う 場 合 、0.775 Vrms を 基 準 に し た dBu 3.3. 入 出 力 インピーダンスと信 号 レベルにご用 心 ( あ る い は dBv)や 、1 Vrms を 基 準 と し た dBV( あ る い は dBs)と い う 信 号 レ ベ ル の 単 位 も よ く 用 い ら れ る 。 電気回路で学んだことと思うが、電力の伝送におい ては、インピーダンスの整合が伝送効率を上げるため こ れ ら の dB は 負 荷 イ ン ピ ー ダ ン ス が 規 定 さ れ て い な に必要である。しかし、電圧信号を伝える場合には、 い 。こ れ に 対 し て 、dBm は 600 Ω の 負 荷 に 1 mW を 消 イ ン ピ ー ダ ン ス 整 合 は 必 ず し も 必 要 な く 、送 り( 出 力 ) 費 す る 電 力 を 基 準 と し た 単 位 で あ る 。 600 Ω は ア ナ ロ はローインピーダンス、受け(入力)はハイインピー グ 電 話 回 線 の イ ン ピ ー ダ ン ス で あ る 。 負 荷 が 600Ω の ダンスが基本となる。 場 合 に 限 ら れ る が 、 電 圧 に 換 算 す る と 0 dBm = 0.775 出力インピーダンスが低いということは大きな出 Vrms = 0 dBu で あ る 。な お 、高 周 波 な 人 々 が dBm と 言 力電流を取り出せるということで、出力インピーダン っ た 場 合 は 50 Ω の 負 荷 に 対 す る 1 mW の 電 力 を 基 準 と スが高いということは出力電流をあまり取り出せない し て い る の で 注 意 が 必 要 で あ る 。ま た 、dBμ は 75 Ω を ということである。低い高いは相対的なものである。 負荷とした場合である。プロ用音響機器の信号レベル 高出力インピーダンスの端子に低インピーダンスの負 モ ニ タ と し て 用 い ら れ る VU( volume unit)は 、0 VU = 荷を接続すると、大きな電流が負荷に流れこもうとす +4 dBm と し た dB 値 で あ る 。 VU メ ー タ は ア ナ ロ グ 電 るため、余裕の無い出力アンプは内部抵抗による電圧 話ラインの信号レベルをモニタするために開発された 降下によって出力電圧が低下するか、規定以上の電流 ものである。これらを表 1 にまとめて示す。 が流れるとトランジスタが壊れる。 PC の オ ー デ ィ オ 出 力 端 子 の 出 力 イ ン ピ ー ダ ン ス は 表 1 交流信号レベルを表すさまざまな記号 10~ 20 kΩ 、「 プ ロ 仕 様 」の オ ー デ ィ オ イ ン タ フ ェ ー ス 単位 基準量 Z 装 置 で は 600Ω 、計 測 用 D/A 変 換 器 で は 75Ω だ っ た り dBV 1 Vrms 規定無し 補足 50Ω だ っ た り す る 。 使 用 し て い る 機 器 の 筐 体 を 開 け て dBs 1 Vrms 規定無し dBV と 全 く 同 じ 入出力回路を探し出し、そこに接続している抵抗値を dBu 0.775 Vrms 規定無し Z=47 kΩ 等 読めば、入出力インピーダンスは把握できる。 dBv 0.775 Vrms 規定無し dBu と 全 く 同 じ PC の オ ー デ ィ オ 出 力 端 子 の 出 力 電 圧 は 、ア ン プ が 内 dBm 1 mW 600 Ω 0 dBm= 0.775 Vrms 蔵されたスピーカや民生用オーディオ機器に接続する VU +4 dBm 600 Ω 0 VU = +4 dBm こ と を 想 定 し て い る た め に 、数 百 mVrms 程 度 で あ る 。 dBm 1 mW 50 Ω 高周波系の場合 「プロ仕様」のオーディオインタフェース装置では数 dBμ 1 μW 75 Ω 高周波系の場合 Vrms、計 測 用 D/A 変 換 器 で は ±2.56 Vp-p な ど で あ る 。 637 Proc. Auditory Res. Meeting, The Acoustical Society of Japan, Vol. 40, No.8, H-2010-115 2010 年 10 月 16 日, 日本音響学会聴覚研究会資料,Vol.40,No.8, H-2010-115 Gain difference Lch - Rch in dB 3.5. 音 響 信 号 増 幅 器 (オーディオアンプ) D/A 変 換 器 か ら 出 力 さ れ た ア ナ ロ グ 信 号 電 圧 は 増 幅 器によって電力増幅する。ラウドスピーカを鳴らす場 合は、ボイスコイルに電流を流して動かさねばならな いため電力が必要である。もっとも、よほどの低能率 ス ピ ー カ で 無 い 限 り 、数 W も あ れ ば 90 dB 以 上 の 音 圧 が 出 る 。一 方 、イ ヤ ホ ン は 1 mW も 入 力 す れ ば 90 dB 以 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8 -1.0 上 の 音 圧 が 出 る の で 、ヘ ッ ド ホ ン ア ン プ で 十 分 で あ る 。 AT-HA20 @ 1 kHz min 2 3 4 5 6 max volume scale ( "4" is 12 o'clock) 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8 -1.0 TA-F501 @ 1 kHz -70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 attenuation display in dB 図 4 2 種 の ア ン プ の LR チ ャ ン ネ ル の 電 圧 利 得 差 L/R [dB]。 AT-HA20 の 横 軸 は 音 量 調 整 ボ リ ュ ー ム の 目 盛 り 、 TA-F501 の 横 軸 は 表 示 さ れ た 減 衰 量 [dB]。 音響信号の増幅器は増幅素子の直線領域に動作点 を 置 い た A 級 増 幅 器 に 限 る 、と 確 信 し て い る 。問 題 は 発熱である。なお、市販アンプではボリュームのバッ Vrms in dBV ( 0 dB = 1V ) クラッシュと左右チャンネルの利得差が気になる。た だ 、 最 近 の ΔΣ 方 式 の 1bit デ ィ ジ タ ル ア ン プ と 呼 ば れ る D 級増幅器も捨てたものではないかもしれない。 図 4 は パ ワ ー オ ペ ア ン プ (TEA2025L) を 使 用 し た ヘ ッ ド ホ ン ア ン プ (audiotechnica, AT-HA20)と デ ィ ジ タ ル ア ン プ (SONY, TA- F501)の 、 左 右 チ ャ ン ネ ル の 利 得 差 -20 -60 SG -80 ~ -100 Vrms in dBV ( 0 dB = 1V ) 図 5 は 低 歪 み 発 振 器 ( Kenwood, AG-204D) か ら 100 mV (-20 dBV) の 1 kHz の 正 弦 波 信 号 電 圧 を AT-HA2 と TA-F501 に 入 力 し た と き の イ ヤ ホ ン 端 子 で の 出 力 信 号 ス ペ ク ト ル を オ ー デ ィ オ ア ナ ラ イ ザ (Brüel & Kjær, 100 AT-HA20 TA-F501 B&K 3560C 1k 10k 30k Frequency in Hz -20 AT-HA20 TA-F501 -40 -60 -80 -100 -120 -140 3560C)で 測 定 し た 結 果 で あ る 。 増 幅 器 の 電 圧 利 得 は い 20 ず れ も 0 dB と し た 。 Audio Analyzer -140 20 必要な場合もあることがわかる。 AMP AG-204D -120 を 調 べ た 結 果 の 一 例 で あ る 。同 図 よ り 、AT-HA20 を 用 いて両耳聴の実験をする場合には左右のレベル補正が AG-204D -40 100 1k 10k 30k Frequency in Hz 100 1k 10k 30k Frequency in Hz 図 5 低 周 波 発 振 器 (AG-204D)か ら 1 kHz の 信 号( 左 上 ) を入力したときの 2 種のアンプのイヤホン端子におけ る 出 力 信 号 の ス ペ ク ト ル 。 縦 軸 は 電 圧 値 dBV. 発 振 器 の 出 力 に は 60 Hz と 180 Hz の ハ ム ノ イ ズ 成 分 ( 黒 ↓ ) と 、 2 kHz と 3 kHz の 高 調 波 成 分 ( 赤 ↓ ) と が 含 ま れ て い る が 、ハ ム ノ イ ズ の レ ベ ル は -120 dBV 以 下 、高 調 波 の レ ベ ル は 基 本 波 の -70 dB 以 下 で 十 分 低 い 。 AT-HA20 の 出 力 に は 120 Hz の ハ ム ノ イ ズ 成 分 が 出 現 ー ダ ン ス が 50 Ω あ る い は 75 Ω に 設 定 さ れ て い る こ とである。低周波用のものは入出力インピーダンスが 600 Ω で あ る 。 50/75 Ω は 同 軸 ケ ー ブ ル の イ ン ピ ー ダ し て い る が 、全 体 的 に ノ イ ズ フ ロ ア ー は -120 dBV 程 度 ン ス で あ る 。ち な み に 、50 Ω は 芯 線 と 円 筒 状 の 外 部 導 と 低 い 。 TA-F501 の 出 力 に は ハ ム ノ イ ズ 成 分 は 皆 無 だ 体の間に挟む誘電体としてポリエチレンを用いた場合 が 、ノ イ ズ フ ロ ア ー は -110 dBV 程 度 で 、20 kHz 辺 り の に 同 軸 ケ ー ブ ル が 最 低 損 失 に な る イ ン ピ ー ダ ン ス 、 75 ノイズレベルがやや高い。いずれのアンプもヘッドホ Ωは空気絶縁の同軸ケーブルが最低損失になるインピ ン (HDA200)で 聴 い た 限 り 、 極 め て 静 か で あ っ た 。 ーダンスである。 3.6. 抵 抗 減 衰 器 (アッテネータ) そ の 昔 、 イ ン ピ ー ダ ン ス 50 Ω の 高 周 波 用 ア ッ テ ネ 最近はあまり使用されることがなくなったが、アッ ー タ を D/A 変 換 器 用 LPF と オ ー デ ィ オ ア ン プ の 間 に 挿 テネータは信号レベルを増減するときに便利な装置で 入したところ、表示されたとおりの減衰量が得られな あ る 。 ア ン プ に つ い て い る ボ リ ュ ー ム ( variable-ohm) く て 往 生 し た こ と が あ る 。抵 抗 を π 型 あ る い は T 型 に はその名のとおり可変抵抗器を用いて連続的に信号レ 接続したアッテネータ回路は、出力に公称インピーダ ベルを変化させるものだが、アッテネータは減衰量を ンスの負荷が接続されたときに所定の減衰量が得られ ステップ状(ディジタル的)に変えるものである。 る よ う に な っ て い る 。例 え ば 、50 Ω で 設 計 さ れ た -3 dB アッテネータには高周波用のものと低周波用のも の π 型 ア ッ テ ネ ー タ に 出 力 イ ン ピ ー ダ ン ス 10 kΩ の 機 の が あ る 。回 路 と し て は π 型 か T 型 の 抵 抗 ネ ッ ト ワ ー 器 を 接 続 す る と 、そ の 減 衰 量 は 0.5 dB に 下 が る( 図 6)。 クで同じである。何が違うかというと、高周波用アッ 聴 覚 実 験 シ ス テ ム を 提 供 し て い る Tucker-Davis テネータはシールドを厳重にして浮遊容量による信号 Technologies (TDT) 社 の PA5 と い う ア ッ テ ネ ー タ は 、 の通り抜けを少なくしているとともに、入出力インピ デ ジ タ ル ・ ポ テ ン シ ョ メ ー タ と 呼 ば れ る 可 変 抵 抗 LSI 638 Proc. Auditory Res. Meeting, The Acoustical Society of Japan, Vol. 40, No.8, H-2010-115 2010 年 10 月 16 日, 日本音響学会聴覚研究会資料,Vol.40,No.8, H-2010-115 (AD7376) を 利 用 し て い る 。 そ し て 、 入 出 力 に は オ ペ R2=17.6Ω ア ン プ (OPA134UA) に よ る バ ッ フ ァ ア ン プ が 入 っ て お り 、 入 力 イ ン ピ ー ダ ン ス は 10 kΩ 、 出 力 イ ン ピ ー ダ ン Vin ス は 10 Ω に 設 定 さ れ て い る ( 図 7)。 そ の た め 、 こ の R3 R1 Vout RL 296.5Ω アッテネータは概ねオーディオ機器と同じような使い 方ができる。しかしながら、過去の失敗がトラウマと し て 残 る 筆 者 は 、機 器 に 表 示 さ れ た 減 衰 量 を 信 じ な い 。 アッテネータを利用する場合には使用する機器を接続 した状態での減衰量を必ず確認することにしている。 3.7. 不 平 衡 伝 送 と平 衡 伝 送 不 平 衡( ア ン バ ラ ン ス )伝 送 は 二 線 式 の 伝 送 方 式 で 、 図6 RL 50 Ω 10 kΩ R3 // RL 42.8Ω 288 Ω R2+R3 // RL 60.4Ω 306 Ω Vout / Vin 0.71 (-3 dB) 0.94 (-0.5 dB) イ ン ピ ー ダ ン ス 50 Ω で 設 計 さ れ た π 形 ア ッ テ ネ ー タ を 50 Ω お よ び 10 kΩ で 終 端 し た 場 合 の 減 衰 量 オーディオ機器の接続に標準的に用いられている。不 平 衡 伝 送 で は 信 号 伝 送 ラ イ ン の 片 側 (COLD) を 接 地 Zin 10 kΩ (GND)す る た め 、 外 来 ノ イ ズ は ノ ル マ ル ・ モ ー ド と し Zout 10Ω デジタル・ ポテンショメータ AD7376 て HOT ラ イ ン と ア ー ス 間 に 生 じ る ( 図 8)。 強 力 な 電 磁雑音源が近くに無い場合、数mの距離を結ぶのであ OPA 134UA れば、シールド線による不平衡伝送で全く問題ない。 OPA 134UA 図 7 TDT 社 の ア ッ テ ネ ー タ (PA5)の 構 成 一 方 、平 衡( バ ラ ン ス )伝 送 は 三 線 式 の 伝 送 方 式 で 、 長い距離ケーブルを引き回すときに誘導ノイズが信号 不平衡伝送(unbalanced transmission) ラ イ ン に 載 る こ と を 防 げ る た め 、 放 送 や PA ( Public HOT Address)業 界 で は 標 準 的 に 利 用 さ れ て い る 。も っ と も 、 ノルマル・モード 最 近 は 音 響 機 器 間 を 光 ケ ー ブ ル や LAN ケ ー ブ ル で 結 Z んでディジタル伝送する場合が増えてきたと聞く。 COLD = GND 平衡伝送の原理は単純である。送信側で正逆ふたつ 平衡伝送(balanced transmission) の 位 相 の 信 号 を 作 り 、 そ れ ら を ふ た つ (HOT と COLD) の信号ラインで送り、受信側で片側を位相反転して加 コモン・モード HOT 算して元の信号を再現する。両信号ラインは共通のア Z COLD ー ス ラ イ ン (GND)を 用 い る の で 三 線 と な る 。 外 来 ノ イ ズは二つの信号ラインとアース間にそれぞれ生じるの GND で( コ モ ン・モ ー ド )、受 信 側 で 片 側 を 位 相 反 転 し て 加 図 8 平衡/不平衡伝送線路に混入するノイズ 算 す る こ と に よ り ノ イ ズ 成 分 は 無 く な る ( 図 8)。 不平衡ライン用のコネクタとしては、ミニジャック、 TS フ ォ ー ン ジ ャ ッ ク( モ ノ ー ラ ル 標 準 ジ ャ ッ ク )、RCA Tip TS フォーンジャック (male) Tip Sleve Sleve ピ ン コ ネ ク タ 、BNC コ ネ ク タ な ど が 用 い ら れ る 。一 方 、 平 衡 ラ イ ン 用 の コ ネ ク タ と し て は 、XLR コ ネ ク タ( キ TRS フォーンジャック (male) ャ ノ ン コ ネ ク タ )や TRS フ ォ ー ン ジ ャ ッ ク が 用 い ら れ る ( 図 9)。 な お 、T は tip、 S は sleeve、 R は ring の 頭 Tip (HOT or Left) Ring (COLD or Right) Sleve (GND) Tip Ring Sleve 文 字 、RCA は Radio Corporation of America と い う 今 は 無 き 電 気 機 器 メ ー カ 名 、 BNC は Baby Neill Connector XLR(キャノン)コネクタ (female) の 略 で あ る 。Neil は こ の 小 型 の 高 周 波 用 コ ネ ク タ を 開 発 し た AT&T ベ ル 研 究 所 の Paul Neil 氏 に 由 来 す る 。 2: HOT 1: GND 3: COLD 図 9 TS/TRS フ ォ ー ン ジ ャ ッ ク と XLR コ ネ ク タ 同じ形状のコネクタがついているケーブルでない と接続してはいけないのではないか、と不安がる人も 少 な く な い 。 し か し 、 音 響 信 号 は 20 kHz 以 下 の 低 周 3 番 ( GND) を 接 続 し 、 そ れ と 2 番 ( HOT) と の 間 に 波信号なので、何も気にすることはない。信号ライン 不平衡信号を入れればよい。一方、平衡出力端子に不 を電気的につなげばよいだけである。また、平衡入出 平衡ラインを接続することは、内部の電子回路によっ 力端子に不平衡ケーブルを接続することも可能である。 ては問題が生じる場合があるので、ケース・バイ・ケ 平 衡 入 力 端 子 で は 、 XLR コ ネ ク タ の 1 番 ( COLD) と ースである。 639 Proc. Auditory Res. Meeting, The Acoustical Society of Japan, Vol. 40, No.8, H-2010-115 2010 年 10 月 16 日, 日本音響学会聴覚研究会資料,Vol.40,No.8, H-2010-115 3.8. たかがノイズ、されどノイズ 4. 電 気 音 響 変 換 器 聴覚実験で問題となるノイズは二種類ある。一つは D/A 変 換 器 や 増 幅 器 は 電 子 回 路 を ベ ー ス と す る 機 器 広帯域ノイズで、アンプのゲインを上げるとシャーと であるのに対して、電気音響変換器には機械的な可動 いう音として聴こえる。これは系のノイズフロアーの 部分があり、聴覚実験系のボトルネックである。 問題であり、静かな音響機器を用いればよい。もう一 閉空間に音圧を発生させるイヤホンやヘッドホンは、 つ は ハ ム ノ イ ズ (hum noise)で 、 ブ ー ン と い う 低 周 波 音 実耳への装着状態によってその周波数特性が大きく変 として聴こえる。これは機器に電源を供給している商 わる。その結果、広帯域の刺激音を扱う場合、ディジ 用 交 流 電 源 周 波 数 で あ る 50/60 Hz の 第 二 高 調 波 タル信号の波形やスペクトルと実耳に呈示した音の波 (100/120 Hz)、第 三 高 調 波 (150/180 Hz) な ど の 成 分 が 信 形やスペクトルとが同じになることは稀である。この 号ラインに混入しているためである。このハムノイズ ことを承知の上で実験をデザインすることが重要であ の有無は聴けばすぐに分る。もっとも、常にブーンと るし、使用するイヤホンやヘッドホンの実耳特性をあ 鳴っている実験系を使っている場合、おかしな状態で らかじめ把握しておくことは必須と考える。イヤホン あ る こ と に 全 く 気 づ か な い( 某 所 で 現 実 に あ り ま し た )。 の 較 正 に 利 用 さ れ る IEC60711 カ ッ プ ラ の 適 用 周 波 数 ハムノイズの成因はさまざまで、その対処方法もケ は 100~ 8 kHz で 、 こ れ を 組 み こ ん だ HATS (Brüel & ース・バイ・ケースである。例えば、電源プラグのホ Kjær, 4128C)で は イ ヤ ホ ン の 形 式 に よ ら ず 6~ 10 kHz ット側とアース側を区別して挿す、複数機器の金属筺 の カ ッ プ ラ 応 答 は 実 耳 応 答 よ り 最 大 10 dB も 大 き い [ 4 ] 。 体の間を接続する、あるいは外す、コネクタ部分の接 触を確認する、高インピーダンスの小信号ラインを電 5. お わ り に 源 ケ ー ブ ル や AC ア ダ プ タ か ら 離 す 、 な ど に よ っ て 解 筆者が工学部電子工学科 3 年生のとき、同級生の半 決 す る こ と も あ る 。UA-101 の 電 源 プ ラ グ を 差 し 替 え る 数以上がアンプすら作った経験が無かった。その事実 と魔法のようにハムノイズが消えたことがある。 を知った電子計測を講義していた若手教授は仰天し、 私たちが使用している単相三線式の商用交流電源回 翌週の講義は一石トランジスタアンプ製作実習になっ 路 を 図 10 に 示 す 。正 し く 結 線 さ れ て い る 電 源 コ ン セ ン た 。 30 余 年 を 経 た 今 、 状 況 は さ ら に 深 刻 化 し て い る 。 トでは、少し長めの細長い差しこみ口がアース側であ 音を扱う聴覚実験を行っているといろいろな問題に る。なお、電源コンセントのアースはあくまでも感電 出会う。問題の原因の多くはたわいも無いことなので 防止の保安アースで、第一種アース等ではない。 解決は容易である。しかし、ディジタル機器に満ち溢 録音系では信号レベルが低く高入力インピーダンス れる世界で育ってきた学生諸君らにとっては、必ずし で高ゲインのマイクアンプを利用するので、さまざま もそうでもないようである。アナログ系に問題がある な雑音が混入しやすい条件が整っている。場合によっ ことに気づかないまま、あるいは、問題があることに ては、全ての機器を電池駆動にするなど本質的な対策 気づいてもそれを無視して実験を進めたり、問題解決 が必要なこともある。現在、筆者の研究室では、ある の糸口すらつかめずに困り果ててしまう。 高級マイクプリアンプを実験室内に設置するとノイズ 問題を無視したまま、あるいは、問題に気がつかず が 混 入 し て 困 っ て い る 。電 磁 誘 導 性 の ノ イ ズ の よ う で 、 に実験を進められたり、困り果てて実験を投げ出され 磁気方式のモーションセンサの送信機の傍に持ってい たりすると後始末が大変なので、アナログ(アナク ったときも同様のノイズが混入する。音響測定を含め ロ?)な筆者は、マメに実験室に足を運んでアナログ た音響信号録音系の諸問題については稿を改めたい。 信号が適切に扱われているかどうかを見守ろうと思う。 柱上トランス 単相三線式 電力線 6600 V 200 V 文 100 V 100 V 柱上トランス 緑 赤 白 黒 引き込み線 ニュートラル ライブ 保安アース アース 図 10 日本の単相三線式商用電源回路の一例 献 [1] 平 原 達 也 , “ は じ め て の 聴 覚 実 験 ― デ ィ ジ タ ル な 世 界 に 棲 む 人 々 に 伝 え た い 、音 を 鳴 ら し 、測 り 、 聴 き 比 べ る と き の お 約 束 ―,” 音 響 学 会 誌 65(2), 81-86, (2009). [2] 金 田 豊 , “ は じ め て の 音 響 信 号 処 理 - デ ィ ジ タ ル 録 音 と 補 間 の 話 - ,” 音 響 学 会 誌 65(10), 531-536, (2009). [3] 志 賀 正 徳 , 金 田 豊 , “オ ー デ ィ オ ・ イ ン タ フ ェ ー ス の DA 変 換 器 に お け る ク リ ッ ピ ン グ 歪 に つ い て ,” 音 響 学 会 講 演 論 文 集 , 653-654, (2010.09). [4] 平 原 達 也 , 青 山 裕 樹 , 大 谷 真 , “イ ヤ ホ ン の 音 響 特 性 と IEC60711 カ プ ラ の 問 題 点 ,” 音 響 学 会 誌 66(2), 45-55, (2010). 640 Proc. Auditory Res. Meeting, The Acoustical Society of Japan, Vol. 40, No.8, H-2010-115
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