Chapter 1 はじめに Section 01 GISとは 02 データの種類 03 データフォーマット 04 空間参照系 05 QGISとは Chap.1 É 01 GIS とは GIS ؤٌیئمإىوم GIS(Geographic Information System=地理情報システム)とは、位置情報を持った図形や その属性(⽂字や数字) 、画像データの⼀元管理を⾏い、視覚的にわかりやすい表示(可視 化) 、⾼度な情報の分析を実現し、意思決定を支援する仕組みだ。 GIS ؤىوٍن GIS は、単にパソコン上で地図を閲覧するた めのツールではない。 現実社会における課題解決のため、「位置情 報」をコアとした的確な情報把握と分析を実 ⾏し、課題解決に向けた意思決定を⽀援する ⾼度な仕組みだ。 ひとつ課題を解決すれば、新たな課題が浮き 彫りになるかもしれないし、複雑な問題は一 度のアクションでは解決できないかもしれな い。場合によっては、一連のプロセスを繰り 返す必要があるはずだ。 対象:現実社会 GIS は異なるデータを層状(レイヤ)に重ね て表示することができる。 レイヤ表⽰を⾏うアプリケーションは、 CAD、画像編集ソフト等もあり特別珍しいも のではないが、GIS で扱うデータは単なる図 形情報ではなく、それらに属性情報(データ ベース)が紐付いている点が⼤きく異なる。 これにより、GIS は単に視覚的表現や効率的 なデータ管理を⽀援するだけでなく、図形と 属性情報を絡めた複雑な空間解析を実現でき る点が最大の特徴である。 例えば、特定の属性値を持った図形だけ着⾊ することや、値の種類や階級別の色分けは簡 単にできるし、同じ属性値を持った図形をひ とまとめにくっつけたりもできる。 また異なるレイヤ同⼠を⽐較して属性情報 を結合したり、新たなレイヤを生み出したり することも可能だ。 簡単に言えば、ダイレクトに目に入ってくる 図形の「かたち」や「大きさ」以外の「目に ⾒えない」様々な情報を浮き彫りにできる、 ということだ。 GIS の使い道は扱うデータとアイデア次第 で限りなく広がるだろう。 画像編集ソフトのレイヤ表示(基本的には色・形の情報のみ) 根拠:データ 情報の抽象化 陸地 森林 芝生 道 建築物 ⼥神像 GIS ソフトのレイヤ表示(図形情報+属性情報) 課題整理 情報の一元化 課題解決に向けた⾏動 解析 国と地域の境界のみ表示した世界地図 面積が大きな国と地域をより濃い色で塗りつぶし 道具:GISソフトウェア 意思決定 情報の可視化 意思決定の支援 属性値の「大州」が同じ図形を結合し着色 3 名称が「M」で始まる国と地域を⻩⾊で着⾊ 4 Chap.1 É02 データの種類 ٭ڂӚ ラスタデータは碁盤目状のマスに位置情報 と属性の数値情報を持たせることで画像を描 GIS で扱うデータフォーマットは様々だが、画像の表現方法はベクタデータとラスタデータ に大別できる。GIS に触れる前にそれぞれのデータの特徴は確認しておきたい。 くものだ。 データを格納するマス(セル、ピクセル)の サイズが小さい程詳細なデータとなるが、デ ータ容量も⼤きくなるので注意が必要であ る。 GIS では航空写真やスキャニングした図面、 ﮨٸӚ ベクタデータは、点の座標や線の方向を定義 することにより図形を描いたものだ。 拡⼤縮⼩を⾏っても品質劣化がなく、変形処 理も容易に⾏うことができるため、測量デー タやロゴマーク、マスコットキャラクター、 フォントデザイン等には頻繁に使用される。 一方、風景写真や油絵等複雑な形状や色彩、 ボケ味等細かいニュアンスを正確に表現する のは困難だ。 GIS のデータは道路、建築物、河川、等⾼線、 各種境界や区域データ等ベクタデータを中心 に構成される。 例えば企業のマスコットキャラクタ ーは、ベクタデータで作成されるこ とがほとんどだ。 このため、あらゆるサイズの媒体に おいて同⼀の⾼精細品質で出⼒が可 能である。 また、線の⾊や太さを変更すること も容易だ。 DEM データ等がラスタデータに該当する。 右上図のように、ラスタデータは拡大する と、正方形のマスの集合体であることがよく ラスタデータの拡大表示 わかる。ラスタデータの拡大表示は単に画像 を虫眼鏡で覗いているような状態なので画像 の品質が劣化するのは当然だ。 つまりラスタデータは表示サイズと噛み合 った解像度のデータを⽤意しなければならな いということだ。例えば GIS で航空写真はす べての縮尺で表示する必要があるので、複数 の解像度の画像を⽤意し、表⽰サイズによっ て画像を切り換えるといった工夫が必要だ。 一方ベクタデータは点の座標や線の方向性 等を元に表⽰サイズに合わせてその都度描画 し直すので、常に鮮明な画像表示となる。た ベクタデータの拡大表示 だし先述のとおり、細かいニュアンスを表現 することは難しい。 様々なラスタデータ 2値画像:各マスの値は 0 か 1 のみ 各マスの値 0 0 0 0 ベクタデータは名刺のような⼩さなサイズのモノから、看板やポスターのような⼤きなモノまで同じ画質で出⼒が可能だ。 画像の⾒た目 グレースケール画像:0 から 255 の 256 階調 0 0 0 0 0 1 1 1 1 70 255 255 255 255 0 0 0 0 1 150 150 150 150 255 0 1 1 1 1 180 255 255 255 255 0 1 1 1 1 220 255 255 255 255 各マスの値 画像の⾒た目 各マスの値 マルチバンド画像:複数のバンドの値を合成して表示 0 画像の⾒た目 60 60 60 60 60 160 160 160 160 160 0 255 255 255 255 0 0 0 0 176 255 255 255 255 80 255 255 255 255 219 219 219 219 255 61 61 61 61 255 42 42 42 42 255 255 255 255 255 255 140 255 255 255 255 0 255 255 255 255 255 255 255 255 255 192 255 255 255 255 0 255 255 255 255 赤(R)の値 緑(G)の値 また、バリエーションが必要になった場合も、変形が容易なため短時間で柔軟な対応がしやすいのも特徴だ。 5 0 0 6 ⻘(B)の値 Chap.1 |03 データフォーマット データフォーマットの特徴を理解することは、データ収集、作成、使⽤、受け渡しの上で、 非常に重要だ。 ラスタデータのフォーマット ラスタデータは、保存形式によりデータ容量や画像品質が異なるため、注意が必要だ。各データの特徴を理解 し、目的に合った形式を選択したい。 データフォーマット 拡張子 .tif TIFF ファイルに位置情報が埋め込まれたフォーマットで、ワールドファイ ル(後述)なしで、GIS で正しい位置に表示可能。 TIFF .tif 内部的にデータ圧縮し(圧縮形式は LZW を使えば画質劣化なく、互換性も 問題ない)、容量を抑えることが可能だ。 また、レイヤを保持したまま保存することも可能。 BMP .bmp Windows 標準のデータ保存形式。基本無圧縮のためデータ容量は⼤きい。 JPEG .jpg デジカメや Web サイトの画像で頻繁に用いられる。画像を圧縮しデータ容 量を抑制できるが、⼀度圧縮して保存したものは⼆度と元の画質には戻せな い。 また、⾼圧縮率で保存すると特有のブロックノイズが発生する。 GIF .gif 色数が最大で 256 ⾊であり、シンプルな図形やアイコン画像には良いが写真 の保存には向かない。 透明状態を保持できる点は JPEG にない利点だ。 PNG .png 元々は GIF の代替えとして開発されたが、GIF と異なりフルカラー対応。透 明状態も保持可能。 JPEG と異なり、可逆圧縮であるので保存と再編集時を繰り返しても画質が 劣化しないが、データ容量は JPEG よりも大きくなる。 ベクタデータのフォーマット ベクタデータは、シェープファイルで管理を⾏っていれば、使⽤上も交換上も問題がないだろう。他のフォー マットで入手したデータもシェープファイルに変換して使うのが基本だ。 データフォーマット シェープファイル 拡張子 .shp .dbf .shx 説明 米国 ESRI 社が提唱した事実上業界標準の GIS ベクタデータフォーマットだ。 シェープファイルがないと始まらないと言っても過言ではない。 第1の特徴は「.shp」「.dbf」「.shx」の 3 ファイルがすべて揃ってシェープフ ァイルを構成することだ(使用するアプリケーションによっては、 「.cpg」 「.prj」 等さらに追加ファイルを作成することがあるが、最低上記3ファイルが必要)。 例えば「sample」というシェープファイルを保存すると、「sample.shp」 「sample.dbf」 「sample.shx」という名称の3ファイルが作成される。 「.shp」は図形データ、「.dbf」は属性データ、「.shx」は図形と属性を紐づけ るデータがそれぞれ保存されているが、誰かにシェープファイルを渡す時は、 最低限上記3ファイルをセットで渡さなければ意味がないので注意したい。 また、ファイルネームを変更する際は、関連ファイルすべてを同じ名称に揃え ること、同じディレクトリに保存することがルールだ。 説明 GeoTIFF 第2の特徴はひとつのシェープファイルにおいて、図形のタイプは「点(ポイ ント) 」 、 「線(ライン) 」 、 「面(ポリゴン)」いずれか1つのみしか保存できない ことだ。関連深いデータであっても点と⾯、線と⾯、等図形のタイプが異なれ ばシェープファイルを複数作らなければならない。 低圧縮率 JPEG なお、シェープファイルを構成する「.shp」「.dbf」「.shx」の各ファイルサイ ズの上限は 2GB となっている。これを超える場合は(可能性があるのは「.shp」 「.dbf」 )シェープファイルを分割するしかない。 DXF .dxf 米国 Autodesk 社の AutoCAD の異バージョン間データ互換のため整備された が、仕様が公開されており他メーカ製 CAD 間におけるデータ交換フォーマット として広く普及している。 QGIS でも読込み可能だが、通常シェープファイルに変換して使用する。 KML .kml .kmz Google Earth で主に使⽤されるフォーマット。同アプリケーションは無料でダ ウンロードした直後からエンタテイメント性が高い電子地球儀ソフトとして楽 しめることもあり非専門家を含め世界中で広く普及しており、地理情報の共有 という観点では最も一般的なフォーマットといえるだろう。 Google Earth で「点」 「線」「面」は、それぞれ「目印」 「パス」 「ポリゴン」と 表現されている。 なお「.kmz」は「.kml」を圧縮したファイルだ。 GPX .gpx GPS 装置で取得したウェイポイントや軌跡のデータ交換フォーマットで、現 地調査結果等を簡単に GIS に移⾏することが可能だ。 7 ⾼圧縮率 JPEG (ブロックノイズが発生) 8 ワールドファイル GeoTIFF 以外のラスタデータは、位置情報を 内包しないため、それだけでは GIS で正確に配 置できない。 1ピクセルのX⽅向の⻑さ 「ワールドファイル」は、ラスタデータ配置に X⽅向の回転角度 際して、拡大縮小(サイズ) 、回転、位置を制御 Y⽅向の回転角度 1ピクセルのY⽅向の⻑さ するための重要なファイルである。 左上のピクセル中心のX座標 「ワールドファイル」はシンプルなテキストで 構成され、 「メモ帳」等テキストエディタで簡単 に編集可能だ。 左上のピクセル中心のY座標 「ワールドファイル」の内容は上図のとおり Point ワールドファイルには、記述内容以外にも以下ルールがある。 ■ファイルネームはラスタデータと同一 ■拡張子はラスタデータの拡張子末尾に「w」を付与 例:.tif→tifw、bmp→bmpw、jpg→jpgw ■ラスタデータと同一ディレクトリに格納 ■空間参照系(次のセクション参照)は記述されないので、読込時手動設定 50x25 ピクセルの画像 拡大 Point 左上のピクセル座標は左上隅で なく中心であることに注意したい。 画像解像度を変更すると、当然ながら中 心座標にズレが生じるのでワールドフ ァイルの数値は XY ⽅向の⻑さだけでな く、左上ピクセル中心座標も併せて修正 が必要だ。 なお、左上原点のため、Y ⽅向の⻑さは マイナス値となることにも注意が必要 だ。 左上ピクセルの中心座標 1 ピクセルの X ⽅向の⻑さ 1 ピクセルのY⽅向の⻑さ 9 10 Chap.1 É04 空間参照系 UTM 座標系と平面直角座標系 GIS を活⽤する上で、空間参照系の知識は不可⽋だ。空間参照系は測地系や座標系の組み合 わせで定義され、データを正しく表示するために極めて重要な要素である。 ڢ 地球は回転楕円体(に近い形)だ。その形状 を表現し、測量基準となるものを準拠楕円体 と呼ぶ。 準拠楕円体にはいくつか種類があり、どのモ デルを使うかということと、どこを緯度経度 原点とし、軸の傾きをどうするか(座標系) ということの組み合せを定義したものが測地 系だ。 日本では 2002 年までは日本測地系(Tokyo Datum)が⻑らく使⽤されてきたが法改正に より世界測地系(JGD2000)が使われるよう になった。 また GPS で使用する WGS84 もよく使用さ れる。これも世界測地系の1つでアメリカが 構築したものだ。 測地系 呼称 準拠楕円体+座標系 日本測地系 (Tokyo Datum) 日本測地系 旧日本測地系 Tokyo ベッセル楕円体 +天⽂観測に基づく経緯度原点 の値と原方位角 日本測地系2000 (JGD2000) 世界測地系 新(日本)測地系 JGD2000 GRS80 楕円体 +ITRF 座標系 WGS84 世界測地系 WGS84 WGS84 楕円体 +座標系も併せて定義 同じ測地系なのに様々な呼称があるせいで、理解しにくくなっている 参考 URL: http://www.gsi.go.jp/LAW/heimencho.htm 空間参照系 地理座標系と投影座標系 地球上の位置を数値で表現する方法には、緯 度経度(モデル重⼼からの角度)で表現する 地理座標系と、平⾯上に投影された図上にお いて XY 座標(原点からの距離)で表現する投 影座標系がある。 地理座標系は曲⾯上の座標であり、正確な距 離や⾯積計測が難しいが位置の記録に適して おり、GPS のログも緯度経度だ。 国⼟地理院発⾏の中縮尺(1:10,000〜1: 50,000)の地形図はユニバーサル横メルカト ル(UTM)図法が用いられる。この図法では、 地球全体を経度⽅向に 60 分割し東⻄⽅向の 歪みを抑え、中縮尺での地図利⽤においては 無視できるレベルにしている。 日本は右図のとおり、51 から 56 のゾーンに 位置する。 さらに、もっと限定的な狭い範囲の地図投影 には、平面直角座標系が用いられる。全国を 19 地域に分割し、原点からの距離で位置を表 現するものだ。 どの地域がどの原点を基準とした座標系を 使⽤するかは、国⼟交通省告⽰で定められて いる。例えば、福岡県は II 系、京都府は VI 系となっている。 北極 Y軸 (5,4) 緯度 (北緯) 赤道 経度(東経) X軸 GIS にデータを読込む際は、測地系や座標系 の組み合せで定義される空間参照系を的確に 指定しなければデータはただの画像にしかな らない(最悪、描画さえできない) 。 つまり、位置情報がコアの GIS にとって、ど の測量基準に準拠するデータなのかは、まず 確認すべきことだ。 この認識なくデータを扱うと後続作業の成 果がすべて不正確になる可能性があり注意が 必要だ。 主に日本で用いられる空間参照系は右上表 のとおりとなっている。 測地系 座標系 日本測地系 緯度経度座標系 日本測地系 UTM 座標系(zone51〜zone55) 日本測地系 平面直角座標系(I 系〜XIX 系) 世界測地系(JGD2000) 緯度経度座標系 世界測地系(JGD2000) UTM 座標系(zone51〜zone55) 世界測地系(JGD2000) 平面直角座標系(I 系〜XIX 系) 世界測地系(WGS84) 緯度経度座標系 (-2,-3) اڸ ڳ 3 次元の地球を紙や PC モニタ等の2次元平 面上に表現する方法を投影法という。 地球全体や⼤陸全域等巨大な面積を平面上 に正確に表現することは非常に難しく、距離 や面積、方位をすべて正しく表現すことはい かなる投影法を⽤いても不可能である。 故に使⽤の目的に応じた(優先度の⾼い要素 を正しく表示できる)投影法が選択され、各 種世界地図は作成されている。 対して、極端に広大でない一定の範囲であれ ば⽐較的無理なく平⾯に投影(曲⾯を平⾯に 近似)することは可能であり、ユニバーサル 横メルカトル(UTM)図法と平面直角座標系 が一般的に用いられる。 空間参照系を誤ると地物が本来の場所に表示されない 3次元の地球を平面に投影 11 12 Chap.1 |05 QGISとは QGIS は、地理空間情報の作成、編集、可視化、分析機能を備えたオープンソースの地理情 報システムソフトウェアだ。Windows だけでなく、OS X、Linux 等にも対応したクロスプ ラットフォームのアプリケーションで誰でも自由に使うことが可能である。 QGIS とは QGIS の歴史は古く、2002 年 7 月に最初の バージョンがリリース(ver.0.0.1-alpha)さ れた後、徐々に機能の追加、動作の安定化が 進み、2009 年 1 月に ver.1.0 が、2013 年 9 月に ver.2.0 がリリースされ、その後も年3、 4回程マイナーアップデートを続け現在に至 フリーでオープンソース QGIS は公式サイトで「フリーでオープンソースの 地理情報システム」と表現され、⾃由にダウンロード して誰でも使うことができる。 QGIS は無償で誰の断りもなく使えるだけでなく、 オープンソース(プログラムを公開)のため知識さえ あれば改変も自由だ。※ただし、改変したものを公開 するにはソース公開と更なる改変を認めなければな らない。 オープンソースソフトウェアのメリットは、ソース コードの⼊⼿と変更ができるため世界中の技術者に より日々バグ修正、機能拡張等ソフトウェアの進化、 洗練が期待できることだ。 逆に、緊急時のサポート体制が十分でない点、安全 性・信頼性・品質への不安、英語以外のマニュアルや 解説書が入手困難なことについては、しばしばデメリ ットとして語られる。(逆にこれをビジネスチャンス と捉え、有償サポートやユーザトレーニングを⾏う企 業も) 対するプロプライエタリソフトウェア(ソースコード は最⾼機密扱いであり、ソフトウェアの実⾏コードの みをユーザに与える場合が多い)の利⽤においては、 ベンダの手厚いサポートや解説書の類が豊富にある一 ⽅で、旧バージョンサポートの終了によるバージョン アップ課⾦等べンダの⽅針や経営戦略にユーザは逆ら えず、また独自技術を多く搭載したソフトウェアであ るほど他ベンダの同種ソフトウェアへの乗り換え自体 が困難な状況になる(=ベンダロックイン)場合もあ り、一概にどちらの形態のソフトウェアが良いか判断 するのは困難である。 いずれにせよ、オープンソースソフトウェアは、あら ゆる分野において、高機能高品質なものが多数公開さ れ企業や官公庁を含め広く利⽤されており、趣味的な 利⽤だけでなく、業務利⽤の検討を⾏う価値は⼗分に あるといえるだろう。 Note 似た⾔葉にフリーウェアあるいはフリーソ フトというものがあるが、こちらは無償利⽤できて もソースコードが非公開のものも多く、意味合いが 異なる点注意が必要である。 る(2015 年 10 月時点での最新は ver.2.12) 。 高機能の GIS アプリケーションは以前から 複数存在するが、多くが非常に高額であるた め、気軽に触れることや、導入することは困 難であった。その点 QGIS は無償提供されて いる上、海外産ソフトでありながら、近年リ 分野 リースされたバージョンではセットアップウ オープンソースソフトウェア プロプライエタリソフトウェア オペレーティングシステム Linux、FreeBSD Windows、Apple OS X 対応しており、動作も非常に安定しているこ オフィススイート OpenOffice、LibreOffice Microsoft Office とから GIS の学習から業務利活⽤まで広く気 グラフィック(ビットマップ) GIMP、ImageMagick Adobe Photoshop グラフィック(ベクタ) Inkscape Adobe Illustrator、CorelDRAW CAD FreeCAD AutoCAD、Vectorworks Web ブラウザ FireFox、Google Chrome(一部プロプライエタリ) Internet Explorer、Edge、Safari 電子メールクライアント Thunderbird Outlook 地理情報システム QGIS、SAGA、GRASS GIS Arc GIS、SIS ィザードからメニュー画面に至るまで日本語 軽に使うことが可能だ。 QGIS の Web サイト。頻繁に新バージョンがリリースされる。 様々な分野で活用されるオープンソースソフトウェア Web ブラウザ「Firefox」 ベクタ画像編集ソフト「Inkscape」 QGIS の操作画面。公開されている既存データを上手く活用すれば、工夫次第で好みの背景地図も自由に作成可能だ。 また、様々な機能がプラグイン形式で提供され、ユーザが必要なものを任意で追加可能となっている。 13 14 ダウンロード インストール 1 公 式サイト トップ ペ QGIS は公式サイト (http://www.qgis.org) から、簡単にダウンロード可能だ。 最新バージョンだけでなく、過去にリリース されたものもダウンロードできる。 ージの[ダウンロードす る]をクリック。 セットアップウィザードはすべて日本語化 されており、迷うことはない。 ※ライセンス条件のみ原文のまま表示される ので、インターネットの翻訳ツール等で中身 は確認しよう。プログラムの取り扱いルール 等が示されている。 1 インストーラを起動する。 2 セットアップウィザードが起動するので、[次へ] をクリック。 クリック 3 ライセンスに同意する。 4 インストールフォルダを選択する。 5 コンポーネントを選択(※サンプルデータセッ トのインストール有無)し、インストール開始。 6 インストールの完了(PC 再起動)。 2 使用する OS、QGIS バージョンを確認し、リンクをクリックしてダウンロードする。 なお、最近のものはどれも安定しているので、OS さえ間違えなければ好みで良い。 「Long term release」はリリースから1 年間メンテナンスされるとのこと。 7 デスクトップに「QGIS Desktop x.x.x」が作成される。 3 [ファイルを保存]をクリックしイ ※他にも同時にアイコンが作成されるが、 「QGIS を使う」時はこのアイコンから ンストーラをダウンロードする。 15 16 Chapter 2 QGISの基本操作と設定 Section 01 起動と操作画面 02 基本操作① データの読込み 03 基本操作② 地図移動・ズーム 04 基本操作③ 属性テーブル 05 プロジェクトファイル 06 オプション設定 07 プラグインの追加と削除 Chap.2 | 01 起動と操作画面 まずは QGIS を起動してみよう。 詳しい操作方法を学ぶ前に、操作画面の構成と各部の名称について確認しておこう。 QGIS の操作画面 ⼀度にすべてを覚える必要はない。ひとつひとつ機能を覚 えていけば自然と身に付くので、まずは全体像を把握する程 度で OK だ。 QGIS は GUI(グラフィカルユーザインターフェイス)によ り直感的な操作感を実現している。 GUI の構成と各部の名称、機能概要について理解しておく と、効率的でスピーディな作業に直結する。 1 メニューバー 操作を実⾏するための メニュー項目 QGIS の起動 1 QGIS Desktop x.x.x アイコンをダブルクリック。 2 ツールバー 機能を素早く実⾏する ためのアイコン 2 起動処理中(スプラッシュスクリーンの表⽰)。 3 地図凡例 レイヤ凡例と表⽰・ 非表示等の制御 4 ステータスバー 5 マップビュー 地図縮尺や座標値を 表示 レイヤの図形が表示さ れる領域 1 メニューバー 操作の目的ごとにメニュー項目が設定され、様々なコマンドが格納されている。項目はプラグインの追加に より増加する。代表的なメニュー項目は次のとおり。 3 起動完了。 19 [プロジェクト] [編集] QGIS プロジェクトファイルの読み込み、保存、地図の印刷 ベクタレイヤの編集を⾏う際のツールが収められている。実際 等を実⾏する。 はツールバーから選択することが多い。 [ビュー] [レイヤ] 地図の移動、拡大縮小等とパネルとツールバーの表示制御を レイヤの読込、新規作成、保存、表示・非表示等レイヤの ⾏う。 制御を⾏う。 [設定] [プラグイン] QGIS の様々な設定を⾏う。 プラグインの追加と削除により QGIS の機能を拡張・縮小。 [ベクタ] [ラスタ] ベクタレイヤを使用した解析を実⾏する。 ラスタレイヤを使用した解析を実⾏する。 20 2 ツールバー [属性] QGIS の機能を素早く実⾏するためのアイコンが並ぶ。アイコンは機能の種類ごとにグループ化されており、 グループ単位での表示 ON/OFF や、表示箇所の移動も簡単に設定できる。 1 1 [ファイル] 2 3 4 5 6 7 地物情報表示 2 マウスクリックした地物の属性を表示する。 3 1 2 3 4 5 6 新規 2 QGIS プロジェクトファイルを新規作成する。 開く 既存の QGIS プロジェクトファイルを開く。 保存 4 QGIS プロジェクトファイルを上書保存する。 名前を付けて保存 QGIS プロジェクトファイルを別名で保存する。 新規プリントコンポーザ 6 プリントコンポーザを新規作成する。 コンポーザマネージャ プリントコンポーザの管理と作成を⾏う。 10 11 12 地物アクションの実⾏ 4 すべてのレイヤから地物選択を取り消す 地物選択を解除する。 式を使った地物選択 6 属性テーブルを開く 属性テーブル(データベース)を開く。 フィールド計算機を開く 8 関数を使って属性テーブルを更新する。 9 5 地物の選択 条件式を使って地物を選択する。 7 3 9 あらかじめ登録した条件で地物の属性表示等を実⾏。 地物を選択する。 5 1 8 計測ツール 線⻑、⾯積、角度を計測する。 マップチップス 10 マウスポインタを合わせた地物(選択中レイヤのもの)の情 新しいブックマーク 現在の表示範囲を保存する。 報をポップアップ表示する。 11 ブックマーク一覧 12 ブックマーク(保存した表示範囲)を呼び出す。 文字注記 コメント枠を作成する。 [地図ナビゲーション] 1 1 2 3 4 5 6 7 8 パンとズーム 2 9 10 11 12 地図移動 パンとズーム:ダブルクリックで地図移動+縮尺が 200% パン:マウスクリックでマウスポインタの位置に地図移動 パン:マウスクリックでマウスポインタの位置に地図移動 地図移動:マウスドラッグ 3 選択部分に地図をパン 5 7 4 拡大 マウス左クリックでポインタの位置を中心に縮尺が 200%。 縮小 マウス左クリックでポインタの位置を中心に縮尺が 50%。 6 ネイティブピクセル解像度にズーム ラスタデータを実際のサイズにズームする。 全域表示 8 選択部分にズーム 表示中のすべての地物の画面中央にパンし、画面に表示可 選択中のすべての地物の中央にパンし、画面に表示可能な 能な最大サイズにズームする。 最大サイズにズームする。 9 レイヤの領域にズーム 選択中のレイヤ領域の中央にパンし、画⾯に表⽰可能な最 10 直前の表⽰領域にズーム 移動と拡大縮小を「一手前の状態」に戻す。 大サイズに拡大縮小。 11 12 再読み込み 3 4 5 6 3 5 4 6 12 ラスタレイヤの追加 SpatiaLite Oracle Spatial レイヤの追加 8 WMS/WMTS レイヤの追加 WMS のデータ、WMTS のデータを読み込む。 10 WFS レイヤの追加 WFS のデータを読み込む。 デリミティッドテキストレイヤの追加 12 新規シェープファイルレイヤ 新たなシェープファイルを作成する。 新規 GPX レイヤの作成 GPX データを読み込む。 地図移動:マウスホイール押込+ドラッグ 地図拡大縮小:マウスホイール奥回転(拡大) 、手前回転(縮小) 21 11 Oracle Spatial データを読み込む。 WCS レイヤの追加 位置情報を含む CSV ファイルを読み込む。 10 SpatiaLite のデータを読み込む。 Oracle ジオラスタレイヤの追加 WCS のデータを読み込む 13 2 9 ラスタデータ(GeoTiff、jpeg 等)を読み込む。 MSSQL 空間レイヤの追加 Oracle ジオラスタデータを読み込む。 9 8 PostGIS レイヤの追加 MSSQL Spatial データを読み込む。 7 7 ベクタレイヤの追加 PostGIS のデータを読み込む。 画⾯表⽰領域を再度レンダリングする。 Tips ツールを選択しなくても、地図移動とズームはマウス操作で常に実⾏可能となっている。 2 ベクタデータ(シェープファイル、DXF 等)を読み込む。 11 次表⽰領域へズーム 「前の状態」に戻した移動と拡大縮小を一手進める。 1 1 地図移動:マウスドラッグ 選択中の地物を画面中央に表示する。 [レイヤ管理] 22 13 3 地図凡例(レイヤパネル) [デジタイズ] 各レイヤの凡例を⽰すとともに、表⽰・非表⽰の切替を⾏ったり、関連するレイヤをグループ化したり、表 ⽰順を変更したり、レイヤに係る様々な制御を⾏う。 1 1 2 3 4 5 6 7 現在の編集 2 レイヤの編集結果保存やキャンセルを⾏う。 3 8 9 「レイヤ順序」パネルも関連が深いので併せて紹介する。 10 編集モード切替 ボタン押下状態の時にレイヤが編集可能。 レイヤ編集内容の保存 4 レイヤの編集結果を上書き保存する。 地物の追加 編集中のレイヤに新たな地物を作成する。 1 2 3 4 5 6 9 5 地物の移動 6 選択中の地物を移動する。 7 頂点を編集(新規、削除、修正)する。 選択物の削除 8 選択中の地物を削除する。 9 ノードツール 地物の切り取り 選択中の地物を切り取る。 地物のコピー 10 選択中の地物をコピーする。 7 地物の貼り付け 切り取りまたはコピーした地物を貼り付ける。 [先進的なデジタイズ] 8 1 1 2 3 4 5 6 7 8 先進的なデジタイズツールを有効にする 線⻑や角度を指定して製図する。 3 9 13 14 15 16 取り消し・再実⾏ 1 地物の簡素化 地物の頂点を間引きする。 6 部分の追加 選択中の地物に“飛び地”を追加する。(マルチ地物作成) 8 リングの削除 ポリゴン内部の空洞を削除する。(周囲のポリゴンに吸収される) 10 地物の変形 3 5 ラインデータのオフセット曲線を作成する。 13 12 地物の分割 地物を分割する。(属性も増える) 部分の分割 14 選択した地物を一つの地物にする。ただし、選択地物が接合し のまま) ていない場合はマルチ地物となる。 15 選択地物の属性結合 16 6 レイヤ/グループの削除 レイヤ⼀覧(凡例) 8 描画順序の管理 当該プロジェクトファイルにおいて読み込まれているすべての チェックをいれた場合「レイヤ順序」パネルにおいてレイ レイヤが表示される。 ヤ順序を制御する。チェックしない場合は、 「レイヤ」パネ ルでの表示順がそのままレイヤ順序となる。 レイヤ一覧(順序) 「描画順序の管理」にチェックを⼊れた場合、レイヤ順序 を制御することが可能。 ポイントシンボルの回転 ポイントシンボルの回転を⾏う。 23 すべて展開する 選択したレイヤ(グループ)を削除する。 選択地物の結合 地物を分割し、マルチ地物として取り扱う。 (属性はひとつ 選択中の地物属性をすべて同じ内容に修正する。 4 地物の部分的な拡張、切り取りを⾏う。 曲線のオフセット レイヤ可視性の管理 ツリー表示をすべて展開する。 すべて折りたたむ ツリー表示をすべて折りたたむ。 7 2 表示レイヤのプリセットを登録・削除できる。 地図コンテンツによる凡例のフィルター 表⽰されているレイヤのみ凡例表⽰する。 9 11 グループ追加 なもの)を新規に作る。 4 部分の削除 マルチ地物の一部(飛び地)を削除する。 12 した編集結果を一手進めたりする。 リングの充填 ポリゴン内部に別のポリゴンを作成する。 11 レイヤを仕分けするための「グループ」 (フォルダのよう リングの追加 ポリゴン内部に空洞を作成。(ドーナツポリゴンの作成) 7 2 10 編集結果を「一手前の状態」に戻したり、 「前の状態」に戻 地物の回転 選択中の地物を回転する。 5 9 24 4 ステータスバー GUI のカスタマイズ | ツールバーの表⽰・非表⽰の切替 表示されている地図の位置情報(座標)や縮尺、空間参照系が示される。 ツールバーは機能を素早く呼び出すことが でき⼤変便利だが、すべてのアイコンを表⽰ してしまうと、目的の機能を探しづらくなる ので使用目的に合わせてよく使うもののみ表 1 2 3 4 5 6 示するようにしたい。 ツールバーは機能別にグループ化されてお り、グループ単位で表示・非表示を制御でき 1 座標表⽰⽅法の切替 2 座標(範囲) ②欄に表示される座標を「範囲」とするか「点」とするか選 座標が 1 点のみの場合は、マウスポインタ位置の座標を示し、2 択する。 点の場合は地図左下及び右上の座標を示す。 3 縮尺 現在の地図の縮尺。 5 4 回転 現在の地図の時計回り方向の回転を調整する。 レンダ チェックを外すと地図のレンダリングを停止する。 る。 6 メニューバーかツールバー上で右クリックするとパネルとツールバー の一覧が表示されるので、表示するものについて項目名称左のチェッ CRS クボックスを × にする。 座標参照系が表示される。 GUI のカスタマイズ | ツールバーの配置変更 デフォルトでツールバーはメニューバーの 下(ドック)に整列している。この順序を単 純に⼊れ替えることは無論、画⾯下部のステ 5 マップビュー ータスバーの上や画面左右端に移動すること 地図が表⽰される領域。 ツールバー左端をマウスで掴みドラッグすることで移動できる。 もできる またドラッグ中のツールバーをマップビュ ー領域でドロップするとツールバーはドック から切り離されフロートする。 GUI のカスタマイズ | パネルの制御 「レイヤ」を始め「全体図」「地物情報」等 フロートしていないパネル のパネルは、地図の操作や解析を円滑に⾏う 上に別のパネルをドラッグ ための必要な情報を表示する等、GIS オペレ するとタブ表示される。 ーションの補助的な役割を担う。 パネルはツールバー同様の方法で表示・非表 パネル右上の × をクリック ⽰を変更可能だ。 するとパネルを閉じ、その左 横の □ をクリックするとパ デフォルトの配置は画面右端にセットされ るが、左端に移動することと、ツールバー同 ネルがフロートする。 様フロートさせることも可能となっている。 またツールバーと異なり、タブ表⽰に対応し ているので限られたスペースに複数のパネル を配置できる。 25 26 Chap.2 | 02 基本操作① 4 データがマップビューエリアに表示される。 データの読込み QGIS を起動しただけでは地図は何も表示されない。必要なデータを正しい空間参照系で読 込もう。 ベクタレイヤの追加 地図データは「ベクタデータ」と「ラスタデ ータ」に大別される。 (※Chap1-2 参照) 既に作成されたデータを読込む場合と、新規 に作成する場合とあるが、本セクションでは 前者について説明する。 ラスタレイヤの追加 1 【ベクタレイヤの追加】ツールをクリック 2 ダイアログが開くので、[ソースタイプ]=「ファイ ル」とし、[エンコーディング]を選択する。 [エンコーディング]は、読込むデータによるが、 「System」で読込んで日本語が文字化けするような ら「Shift_JIS」や「UTF-8」を試すと良い。 次に、[ブラウズ]をクリックし、データを指定したら [OK]をクリック。 2 読込むラスタデータを選択する。 1 【ラスタレイヤの追加】ツールをクリック 3 空間参照系を指定するダイアログが開くので、[世 界中の空間参照システム]から読込むデータの空間参 照系を探し、選択し、[OK]をクリック。 フィルタ Tips フィルタにキーワードを⼊⼒すれば、候補が絞 られる。また、⼀度使⽤した空間参照系は次回からは、 [最近使用した空間参照システム]に追加されるので、2 回目以降はそちらを使うと良い。 Note 読込むデータによっては、あらかじめ空間参照 系を定義づけたファイル(.prj)が準備されている。 この場合は空間参照系は自動で選択されるため、ダイ アログは省略される。 3 空間参照系を指定する。 4 データがマップビューエリアに表示される。 Note 読込むデータが GeoTIFF の場合は、自動 配置されるためダイアログは省略される。 選択した CRS 27 28 Chap.2 | 03 基本操作② 地図の拡大・縮小 地図移動・ズーム 地図の拡大・縮小は、[地図ナビゲーション] ツールバーでも実⾏可能だが、マウスホイー ルを奥に回せば、地図を拡大表示し、手前に 回せば縮小表示できるので通常はマウス操作 で十分である。 任意の縮尺で地図を表示する場合は[ステー タスバー]の【縮尺】に値を⼊⼒すればよい。 QGIS には、非常に多くの機能があるが、細かい使い方を学ぶ前に最低限「地図を閲覧」す る術を学んでおきたい。 地図の移動 地図の移動は、[地図ナビゲーション]ツール バーの【パンとズーム】 (もしくは【地図移動】 ) ツールとマウス操作が基本となる。 【パンとズーム】 (もしくは【地図移動】 )ツ ールを選択し、地図上の任意の地点をクリッ クすれば、そこが画面中央に移動し、ドラッ グすれば地図を掴んで動かすことが可能。 また、【パンとズーム】は任意の地点をダブ ルクリックすることで地図移動と拡大を同時 に実⾏できる。 Point マウスホイールを押し込んでドラッ グすることでも地図を掴んで動かせる。この 操作は他のツール( 【地物の選択】や【地物情 報表示】 )使用中でも有効。 拡大 縮小 縮尺 ツールバーでも拡大・縮小できるが、手数が増えるので、使うことは ほとんどない。 また、レイヤパネルの任意のレイヤ上で 右クリック→[レイヤの領域にズームす る]をクリックすることで、当該レイヤ全 領域を表⽰できる。 パンとズーム 地図移動 どちらを使っても⼤差ないので好みで良いが、慣れれば常にマウスホ イール押し込みで地図移動した方が迅速にコントロールできる。 ※ツールバー【レイヤの領域にズーム】 も同じ効果。 また、属性テーブル(次のセクション参照)を活用するようになると、 【選択部分に地図をパン】と【選択部分にズ-ム】も頻繁に使用する。 属性情報の検索や抽出により選択した図形の位置に瞬時に移動(及び ズーム)ができるため、⼤変便利。 【属性テーブル】 Note ツールバーの【全域表示】はすべての表示レイヤの 全領域を表⽰する。 29 30 Chap.2 | 04 基本操作③ 属性テーブル 属性テーブル QGIS で属性情報は【属性テーブル】と呼ば れる表計算ソフトのような⼀覧表で整理され る。 【属性テーブル】は並び替えや、条件抽出を ⾏うことができるので、多くのデータから目 的の地物を探し出すことが簡単にできる。 それだけでなく、情報の⼀括更新や、データ 項目の作成や削除等できることが多いが、本 項では地図を閲覧する上で必要最低限のこと のみ触れることとしたい。 属性情報の操作は、覚えるべきことが多いが、まずは地図を閲覧する上でも欠かせない最 低限のことだけ学んでおこう。 地物情報表示 GIS において属性情報は、常に地図と連動し ている。 地図表示されている地物の属性はツールバ ーの【地物情報表示】で簡単に調べることが できる。 属性テーブルを開くレイヤをクリック 属性テーブルを開くレイヤを選択 →【属性テーブルを開く】をクリック 調べる地物のレイヤをクリック 3 4 5 2 1 1 属性を調べたい地物が登録されているレイヤを選択→【地物情報 表示】ツールを選択→地物をクリック 2 【地物情報】が表示される。 6 1 ⾏番号 2 フィールド名 ⾏番号が 0 から整数昇順で振られる。番号をクリックすると図形 属性の項目名称を示したヘッダ部。名称をクリックすることで、 を選択できる。CTRL を押したままクリックすると、複数の地物を 昇順、降順に並び替えが可能。 選択したり、選択を取り消したりできる。 Point ※選択中の地物(⾏、レコード)は⻘⾊に反転表⽰される。 3 すべての選択を解除 地物の選択状態をすべてキャンセルする。 4 選択された⾏のデータに地図をパン 選択中の地物を地図の中⼼に表⽰する。表⽰縮尺は変更し ない。 Tips 【地物情報】パネルは、レイヤパネル同様フロートだけでなく、 固定表示も可能。※Chap2-1 参照。 5 選択された⾏のデータに地図をズーム 選択中の地物を地図の中⼼に表⽰する。 また地物全領域を画 6 面に表示可能な最大サイズにズームする。 31 フィルタ 地物(⾏、レコード)にフィルタをかける。 32 Chap.2 | 05 プロジェクトファイル プロジェクトプロパティ プロジェクトプロパティでは、プロジェクト の設定変更ができる。 QGIS では読込む地図データの種類やそれらの表⽰⽅法等各種取り決めの管理をプロジェ クトと呼び、プロジェクトファイル(.qgs) 」として保存する。 いくつか項目があるが、最初は「一般情報」 と「CRS」のみ設定を⾏えば⼗分だ。 プロジェクトファイルの保存 プロジェクトファイルは、QGIS 上で、読み 込む地図データ(種類と保存場所) 、レイヤ表 示設定(線や塗りの色や太さ・濃さ等) 、縮尺 と表示範囲等の情報を記録し、同一条件によ る地図描画を再実⾏するための仕様書のよう なものだ。 つまり注意しなければならないのは、プロジ ェクトファイル自体が図形やデータベースの 情報を内包するわけではないということであ る。 故にデータのバックアップや受け渡しは、プ ロジェクトファイルだけでなく図形データや 画像データについてもセットで⾏うのが基本 となる。 [メニューバー:プロジェクト]→[プロジェクトプロパティ] Point 保存パスを「相対パス」にして プロジェクトを保存し、プロジェクトフ ァイルと参照する地図データを格納し ているフォルダごとコピーすれば、簡単 に別の PC にデータを移⾏できるように なる。 1 [メニューバー:プロジェクト]→[名前をつけて保存] Point プロジェクトが参照しているデータの ファイルネームやハードドライブのフォルダ 構成の変更を⾏うとプロジェクトへのデータ の読込みができなくなるので(再度関連付け が必要となる) 、ファイルネームやフォルダ構 成は最初にしっかりルールを決めて構築する ことが⼤切だ。 Point ‘オンザフライ’CRS 変換を有 2 ダイアログでファイル名を⼊⼒し、[保存] 効にするにチェックを入れると、異なる 空間参照系のデータを同時に読込んだ 場合、現実上同じ位置にあるものは、⾒ かけ上重ねて描画できるようになる。 プロジェクトファイルを開く 保存したプロジェクトファイルを開けば、読 込むレイヤの種類や色の設定、順序、表示箇 所等が復元される。 メニューバーから開く以外にも、プロジェク トファイル(.qgs)を直接ダブルクリックする か、QGIS の GUI 上にドラッグ&ドロップし ても開くことができる。 空間参照システムは最もよく使うもの を選択しておけば良いだろう。 [メニューバー:プロジェクト]→[開く]、もしくは[最近使用したプロ ジェクト]のリストから選択 33 34 Chap.2 | 06 オプション設定 「システム」での設定項目 [▼QSettings]で GUI をデフォルト設定に 戻すことができる。 その他は上級者向けだ。 QGIS の細かい制御は「オプション」で設定可能だ。マニアックな項目も多いが、最初は、[一 般情報][キャンバス&凡例][マップツールズ]あたりを押さえておけば十分だ。 オプションダイアログの起動 QGIS の各種オプション設定を⾏うことがで きるが、最初は最低限の設定だけで十分だ。 アプリケーションの操作に慣れてきたら細 かい設定を目的に合わせて変更すると良いだ ろう。 [メニューバー:設定]→[オプション]で【オプション】ダイアログが 起動する。 「一般情報」での設定項目 GUI の全体的な⾒た目やツールバーのアイ コンサイズ、メニューバーのフォントと文字 サイズ等を変更ができる。 「データソース」での設定項目 属性テーブルの表⽰や動作等の変更ができ る。 35 36 「レンダリング」での設定項目 「マップツールズ」での設定項目 レンダリング動作や品質設定を変更できる。 地物情報検索ルールや縮尺のプルダウンリ ストの変更ができる。 Point [▼地物情報表示]はデフォルト状態の 場合、検索半径が 2.00mm のため⼤雑把な検索 をしてしまう(参照不要の地物情報まで拾い上げ る) 。 また、アウトラインも⾒⾟いので変更しておいた 方が無難。 例 > 検 索 半 径 = 0.01mm 、 バ ッ フ ァ = 0.00mm、最小幅=0.70mm 「コンポーザ」での設定項目 プリントコンポーザにおけるデフォルトフ ォント、グリッドの種類や色を変更できる。 「色」での設定項目 レイヤの色付け時にリスト表示される「スタ ンダードカラー」を定義できる。 「デジタイズ」での設定項目 地物編集に関係する細かな設定を変更でき る。 「キャンバス&凡例」での設定項目 地物選択⾊の変更やレイヤ凡例に関係する 設定変更が可能。 Point 作業中のプロジェクトの「選択色」 変更はプロジェクトプロパティで⾏う必要 がある。 37 38 「GDAL」での設定項目 「ネットワーク」での設定項目 GDAL ドライバ(ラスタデータ作成等に関 係)の設定を⾏うことができる。 かなり上級者向け。 Web 接続がプロキシサーバ経由の場合、設 定変更が必要。 「CRS」での設定項目 CRS に関する設定を⾏う。 デフォルトのままで支障ないが、新プロジェ クト開始時の CRS は良く使うものに変更し ておいても良い。 「ロケール」での設定項目 システムの⾔語を変更できる。 ほぼ使用することはないだろう。 39 40 Chap.2 | 07 プラグインの追加と削除 プラグインの削除 使用しなくなった、あるいは思っていたもの と違った等不要になった外部プラグインは削 QGIS はアプリケーションをインストールした時点で使える機能だけでなく、プラグインと 除しておこう。 呼ばれるプログラムの追加により機能を拡張することができる。 プラグインの追加 プラグインにはアプリケーションインスト ール時に同時に組み込まれる「コアプラグイ プラグイン一覧からインストールする削除プラグインを選択し、[プ ラグインのアンインストール]をクリック。 ン」とユーザが目的に応じて任意に追加でき る「外部プラグイン」がある。 外部プラグインには、属性テーブル編集機能 を強化する「Table Manager」、インターネ 1 [メニューバー:プラグイン]→[プラグインの管理とインストー ル...]で【プラグインダイアログ】が起動。 Web ブラウザからダウンロード 公式サイト(https://plugins.qgis.org/)に ットで公開されているオープンストリートマ Web ブラウザでアクセスし、プラグインを直 ップやグーグルマップを QGIS 上に表示する 接ダウンロードすることも可能。 「OpenLayers Plugin」等有用なものが多数 プラグインは ZIP ファイルで提供されるの ある。 で、解凍後以下のディレクトリに保存しよう。 C:\Users\ユーザ名\.qgis2\python\plugins 2 プラグイン一覧からインストールするプラグインを選択し、[プラ グインをインストール]をクリック。 3 インストールが完了す るとダイアログ上部にメッ セージが表示された後、プ ラグイン一覧の当該プラグ インのアイコンが変化する とともに、[プラグインのア ンインストール]ボタンが 追加される。 41 左サイドバーに⼈気のプラグインや更新されたプラグインが表⽰さ れるほか、右上の検索ボックスからキーワード検索も可能だ。 最新のものだけでなく、古いバージョンも提供されている。 42 43 44
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